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特許7595464全LNAオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】全LNAオリゴヌクレオチドのハイブリダイズ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6816 20180101AFI20241129BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20241129BHJP
   C12Q 1/6832 20180101ALI20241129BHJP
   C12Q 1/6834 20180101ALI20241129BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
C12N15/10 Z ZNA
C12Q1/6832 Z
C12Q1/6834 Z
G01N33/531 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020570932
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066132
(87)【国際公開番号】W WO2019243391
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】18178946.2
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ハインドル,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】シュレームル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュテッケル,ヨハネス
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】荒木 英則
【審判官】小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-273065(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131236(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070510(WO,A1)
【文献】J.Am.Chem.Soc.,1998年,vol.120,p.13252-13253
【文献】Analytical Biochemistry,2009年,vol.390,p.181-188
【文献】Chem.Commun.,1998年,Issue 4,p.455-456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
CAplus(STN)
MEDLINE(STN)
EMBASE(STN)
BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物特異的受容体及び固相を含む不均一イムノアッセイにおいて用いるための、水性溶媒と、第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる結合対とを含む液体組成物であって、
前記結合対は、固相上に分析物特異的受容体を固定化する、
各オリゴヌクレオチドは、8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなり、各モノマーは核酸塩基を含み、前記モノマーの核酸塩基は前記第1のオリゴヌクレオチドの第1の核酸塩基配列及び前記第2のオリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成し
前記第1の核酸塩基配列及び前記第2の核酸塩基配列は、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができるように選択され、そして
前記第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び前記第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる前記結合対は、
5’tgctcctg3’及び5’caggagca3’、
5’gcctgacg3’及び5’cgtcaggc3’、
5’ctgcctgacg3’及び5’cgtcaggcag3’、
5’gactgcctgacg3’及び5’cgtcaggcagtc3’、
5’tgctcctgt3’及び5’acaggagca3’、
5’gtgcgtct3’及び5’agacgcac3’、
5’gttggtgt3’及び5’acaccaac3’、
5’caacacaccaac3’及び5’gttggtgtgttg3’、
5’acacaccaac3’及び5’gttggtgtgt3’、および
5’acaccaac3’及び5’gttggtgt3’
からなる群から選択される、
組成物。
【請求項2】
一本鎖オリゴヌクレオチドの核酸塩基のうち、各シトシンが、5-メチルシトシンに置換されている、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
分析物特異的受容体及び固相を含む不均一イムノアッセイにおける、結合対を有する組成物の使用であって、前記組成物は、請求項1または2に記載される組成物であり、前記結合対が、固相上に分析物特異的受容体を固定化する使用。
【請求項4】
分析物を検出するための不均一イムノアッセイを実施するためのキットであって、前記キットは、別個の容器中に、請求項1または2に記載の前記結合対の前記第1の一本鎖オリゴヌクレオチドが付着した固相、及び請求項1または2に記載の前記結合対の前記第2の一本鎖オリゴヌクレオチドが付着した分析物特異的受容体を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本報告書は、完全にロック核酸(LNA)モノマーからなる一本鎖(ss-)オリゴヌクレオチドのハイブリダイズに関するものである。本文書は、予想外に所定の時間間隔内で二本鎖を形成することができない、完全に相補的なss-オリゴヌクレオチド対を用いたハイブリダイゼーション実験を示す。本報告書は、そのような互換性のないオリゴヌクレオチド対を特定するための効率的な方法を提供する。別の態様において、本報告書は、驚くべきことに、事前の変性がない場合に、迅速な二本鎖形成が可能であるロック核酸(LNA)モノマーから全てが構成される、相補的一本鎖オリゴヌクレオチド対を提供する。本報告書はまた、そのような互換性のある全LNAssオリゴヌクレオチド対を特定及び選択する方法を提供する。さらに別の態様において、本報告書は、結合アッセイ、イムノアッセイなどの生化学的アッセイにおける結合パートナーとしての互換性オリゴヌクレオチド対の使用を提供する。特定の実施形態では、互換性LNAオリゴヌクレオチド対が、サンプル中の分析物を検出または定量するためのアッセイにおいて、例えば分析物に特異的な捕捉分子などの異なる標的分子を固定化するために使用されることについて、考察する。
【背景技術】
【0002】
特に焦点を当てるのは、結合対の2個のパートナーの特定の相互作用と、それらの最終的な相互連結が機能的な役割を果たす、一般的な生化学的用途である。非常に頻繁に、不均一イムノアッセイでは、ビオチン:(ストレプト)アビジン結合対を使用して、分析物特異的捕捉受容体を固相に固定化する。本報告書は、他の用途の中でも、イムノアッセイに適した代替の結合対を概念化し、説明し、実証する。具体的には、ハイブリダイゼーションによって、二本鎖を形成することができる2個の一本鎖全LNAオリゴヌクレオチドからなる代替の結合対は、ビオチン:(ストレプト)アビジン結合対の技術的な代替を提供する。
【0003】
本開示の重要な焦点は、イムノアッセイの過程で、捕捉受容体が固相に係留される手段である。特に、本開示は、分析物を含むサンプルの存在下で捕捉受容体の固定化を容易にする、及び/又は複合体が形成された後に検出複合体を係留することができる、結合対に焦点を当てている。イムノアッセイにおける結合対は、特異的な特徴を有することが技術的に必要である。したがって、2個の結合パートナーの相互作用は特異的でなければならない。さらに、連結形成の動力学、すなわち、結合対の2個の別個のパートナーが相互作用し、最終的に会合する速度、すなわち互いに結合する速度は、高いことが望まれる。さらに、2個の結合パートナーの連結は、一度形成されると安定であることが望ましい。さらに、結合パートナーは、イムノアッセイに適用するために、分析物特異的受容体や固相表面などの他の分子との化学的抱合に適している必要がある。イムノアッセイでは、受容体及び通常は検出される分析物も、特定の受容体又は特定の検討中の分析物に応じて異なる可能性がある特定の条件下でのみ、立体構造及び機能を保持することを理解することが重要である。したがって、受容体分子又は分析物は、これらの条件からの限られた逸脱のみを許容し得る。そのような条件は、ほんの数例を挙げると、約pH6~約pH8の範囲のpHを有する緩衝水溶液、1つ以上の溶解塩、1つ以上のヘルパー物質、20℃~40℃の範囲の事前に選択された温度で、約250~約400mosm/kgの溶質の総量を含み得る(ただしこれらに限定されない)。
【0004】
結合対の別個のパートナーは、抱合、特に捕捉分子すなわち受容体との抱合、及び固相表面との抱合に、互いに特異的に会合及び結合する能力を失うことなく、適している必要がある。イムノアッセイにおける抱合に関して、代替結合対の各別個の結合パートナーは、アッセイ条件下で機能的でなければならない。同じ理由が、分析物、担体材料、固相、及びアッセイの過程で存在する可能性のある他の物質又は化合物など、結合パートナーとの抱合に必要な他のすべての材料に当てはまるが、これらに限定されない。
【0005】
相補的配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチド、すなわち、ハイブリダイゼーションによって二本鎖を形成することができるオリゴヌクレオチドは、高分子を連結するための、または分子を固相に付着させるための結合対手段として以前に提案されてきた。EP0488152は、抗体と固相を連結する核酸二本鎖によって分析物特異的捕捉抗体が固定化された固相を用いた不均一イムノアッセイを開示する。一実施形態では、1個のハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドが抗体に付着し、相補的なオリゴヌクレオチドが固相に付着し、それによって連結二本鎖を形成することが示されている。同様の開示は、文献EP0698792、WO1995/024649、WO1998/029736、及びEP0905517で提供される。WO2013/188756は、フローサイトメトリーの方法と、第1のオリゴヌクレオチドに結合した抗体、第1のオリゴヌクレオチドと同一の配列を有する第2のオリゴヌクレオチドに結合したオリゴスフェア、及びラベルと第1及び第2のオリゴヌクレオチドに相補的な第3の配列を有するオリゴヌクレオチドプローブを含む組成物を開示している。特定の実施形態では、オリゴスフェアは磁性を有する。この文書は、標準化手順の参照としてオリゴスフェアの特定の使用を報告している。
【0006】
ペプチド核酸(PNA)やロック核酸(LNA)などの修飾オリゴヌクレオチドは、生理学的用途のために探索されてきた。LNAは、リボース部分の2’-酸素と4’-炭素の間にメチレンリンカーを持っており、その結果、糖がC3-エンド立体構造にロックされるため、「ロック核酸」という名前が付けられている。この化学修飾は、ハイブリダイゼーションによる二本鎖形成を含む技術的用途において、ヌクレアーゼ耐性、ならびにオリゴヌクレオチド標的に対するより高い親和性及びより高い特異性を与える。WO1998/39352は、ロック核酸(LNA)構造を開示している。WO2000/056746は、LNAの特定の立体異性体の中間生成物を含むLNAモノマーの合成を開示している。化学合成により、LNAヌクレオシド類似体モノマーのみからなる(「全LNA」)一本鎖を合成することができる。
【0007】
上記のように、ロック核酸(LNA)モノマーは、リボース環に余分の2’-O、4’-C-メチレンブリッジが追加された、立体構造的に制限されたヌクレオチド類似体である。LNAモノマーは、2’-O、4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオシドモノマーとして提供される(Singh S.K.ら,Chem.Commun.4(1998)455-456;Koskin A.A.ら,Tetrahedron 54(1998)3607-3630;Wengel J.Acc.Chem.Res.32(1999)301-310)。WO2000/066604及びWO2000/056746は、LNAヌクレオシドモノマーの特定の立体異性体を開示している。DNA及びLNAモノマーを含む混合DNA-LNAオリゴヌクレオチドは、3’-エキソヌクレアーゼ分解に対する安定性を示し、相補的DNA及びRNAにハイブリダイズされる場合に、熱安定性が大幅に向上する。実際、合成された他の高親和性核酸模倣物、例えば、ペプチド核酸(PNA)、ヘキシトール核酸(HNA)、及び2’-フルオロN3’-ホスホルアミデートと比較して、LNAは、並外れた結合親和性を示す。「ミキシマー(mixmer)」としても知られるLNA-DNA混合オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション速度論は、Christensen U.らによって報告された(Biochem J 354(2001)481-484)。それぞれが7個のLNAモノマーからなる2個の相補的なss-オリゴヌクレオチドからの二本鎖の結晶構造がEichert A.らによって報告された。(Nucleic Acids Research 38(2010)6729-6736)。
【0008】
WO1999/14226は、目的の分子及び固体支持体に付着するための親和性対の構築におけるLNAの使用を提案する。しかしながら、相補的な全LNA一本鎖のハイブリダイゼーションが技術的問題を引き起こすことも当技術分野で知られている。全LNAハイブリダイゼーションの熱力学的分析は、主に実験によって立証できるものであり、事前の変性ステップ(ハイブリダイゼーション前の加熱など)なしで、ハイブリダイズするモノマーの配列予測は、これまでのところ不可能であるように思われる。
【0009】
これまでのところ、ほとんどの場合、混合LNA-DNAオリゴヌクレオチド(「ミキシマー一本鎖」または「ミキシマー」とも呼ばれる)が分析された。これまでのところ、特にKoshkin A.A.ら(J Am Chem So 120(1998)13252-13253)及びMohrle B.Pら(Analyst 130(2005)1634-1638)によって、LNAモノマーのみから作られたハイブリダイズする一本鎖オリゴヌクレオチド(すなわち、「全LNA」一本鎖オリゴヌクレオチド)の特性評価に関する報告はほとんどない。Eze N.A.ら(Biomacromolecules 18(2017)1086-1096)は、DNA-LNAミキシマーとDNAプローブからの結合率が、10-1-1未満であると報告している。これらの著者によると、溶液中のハイブリダイゼーション速度は、置換に利用可能なモノマーの3分の1を考慮すると、1つまたは複数のDNAモノマーをLNAモノマーで置換しても影響を受けないように思われる。
【0010】
LNA含有オリゴヌクレオチドの熱力学的挙動に関する予測は、Tolstrup Nらによって参照される専用のコンピュータープログラムによって支援される。(Nucleic Acids Research 31(2003)3758-3762)。ただし、この報告書では、実験データが不足しているのではなく、これらLNAオリゴヌクレオチドの特性がより複雑であるため、LNAオリゴヌクレオチドの予測誤差がより高いことに明示的に言及する。具体的には、本報告書は、8つ以上のLNAモノマーからなる相補的なss-オリゴヌクレオチドが、ワトソン・クリック塩基対を有する二本鎖分子を形成する能力に関して予測できないことを示す。
【0011】
したがって、本報告書の一般的な目的は、ハイブリダイズすることができ、それによってワトソン・クリック塩基対を有する二本鎖分子を形成することができる一本鎖全LNAオリゴヌクレオチドの結合対の同定及び提供である。より具体的には、非変性条件下で、より具体的には、分析物検出アッセイ(イムノアッセイなどであるが、これに限定されない)における分析物特異的受容体の機能と互換性のある条件下で、二本鎖形成が可能な結合対を探求する。重要なことには、相補的オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション非互換性を引き起こす分子内二次構造を除去するための断続的な加熱ステップなしで、室温(これに限定されないが)などの周囲温度で、水溶液中において、保存及び相互にハイブリダイズすることが可能な一本鎖の全LNAオリゴヌクレオチドを探求する。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、本明細書に開示される他のすべての態様及び実施形態に関連する第1の態様において、結合対を提供するための方法であって、この結合対は、第1の一本鎖LNAオリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖LNAオリゴヌクレオチドからなり、この2個のオリゴヌクレオチドは、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができ、
(a) 8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなる第1の一本鎖(=ss-)オリゴヌクレオチドを提供し、各モノマーは、核酸塩基を含み、前記第1のss-オリゴヌクレオチドの前記核酸塩基は、第1の核酸塩基配列を形成するステップ;
(b) 8~15個のLNAモノマーからなる第2のss-オリゴヌクレオチドを提供し、前記第2のss-オリゴヌクレオチドは、少なくとも前記第1のss-オリゴヌクレオチドの数のモノマーからなり、前記第2のss-オリゴヌクレオチドの各モノマーは、核酸塩基を含み、前記第2のss-オリゴヌクレオチドの前記核酸塩基は、前記第2のss-オリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成し、前記第2の核酸塩基配列は、逆平行配向で前記第1の核酸塩基配列に相補的な核酸塩基配列を含むか、又はそれらからなること、及び理論的には、前記第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドが互いに二本鎖を形成する能力を予測すること、前記二本鎖は、8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対からなるステップ;
(c)等モル量の第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドを水溶液中で20℃~40℃の温度、20分以下の時間間隔で、混合及びインキュベートし、それによりss-オリゴヌクレオチドの混合物又は二本鎖含有混合物を得るステップ;続いて、
(d) ステップ(c)で得られた前記混合物を20℃~40℃の温度で分離し、続いて、前記分離された二本鎖を検出及び定量し、及び前記分離されたssオリゴヌクレオチドを検出及び定量するステップ;続いて、
(e)ステップ(d)で二本鎖が検出できるほど存在する場合、及び二本鎖のモル量がss-オリゴヌクレオチドのモル量よりも高い場合、前記結合対を選択するステップ;
これにより、前記結合対を提供するステップ
を含む方法を提供する。
【0013】
本開示は、本明細書に開示される他のすべての態様及び実施形態に関連する第2の態様において、水性溶媒と、第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる結合対とを含む液体組成物であって、
各オリゴヌクレオチドは、8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなり、各モノマーは、前記第1のオリゴヌクレオチドの第1の核酸塩基配列及び前記第2のオリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成する前記モノマーの核酸塩基を含み、
前記第1の核酸塩基配列及び前記第2の核酸塩基配列は、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができるように選択され、
及び前記結合対は、本明細書に開示される第1の態様による方法によって得られる組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
結合対は、非変性条件下で、特定の非共有分子間結合を互いに形成することができる2個の異なる結合パートナーのセットであると理解されている。本開示の文脈において、非変性条件の最も広い理解は、加熱や一定量の変性化合物の添加など、標的物質を分子的に展開し、それによってその二次構造または高次構造を破壊するための外部から加えられる影響がないことを意味する。これに関して、加熱としては、温度を実質的に40℃、50℃、60℃、またはさらに高い温度よりも所望の期間上昇させることが例示され、変性化合物としては、洗浄剤、カオトロープ、またはホルムアミドなどの核酸二本鎖の融解温度を下げることができる化合物が例示される。
【0015】
重要なことに、各第1及び第2の結合パートナーは、同じ種のパートナーと特定の結合を形成しない。つまり、2個の第1のパートナーまたは2の第2のパートナー間の特定の分子内結合は生じない。同時に、非変性条件下では、それぞれの別個のパートナーは、他のパートナーを結合する能力を示す。具体的には、非変性条件下では、別個のパートナーは、他の種のパートナーとの結合を形成できなくなる状態にする分子内結合を全く形成しない。例えば、分子内フォールディングは、非変性条件下で、2個の異なる種の結合パートナーの所望の分子間結合を阻害または防止するのに十分に安定である、二次構造をもたらす可能性がある。
【0016】
ただし、一方または両方の結合パートナーに影響を与える分子内フォールディングは、2つの異なる種の望ましい分子間結合を必ずしも完全に阻害するとは限らない。分子間結合の動力学は、分子内フォールディングのない無妨害の結合パートナーと比較して、遅くなると予想される。自動イムノアッセイ(ただしこれに限定されない)などの標準化されたハイスループットなアッセイの仕組みを特に考慮すると、そのような設定は、通常、以前の別個の結合パートナーからの結合対の分子間連結形態の迅速な形成を必要とする。したがって、各結合パートナーに分子内フォールディングがないか、大幅に最小化されていることが、望ましい技術的特徴である。
【0017】
本開示の文脈において、そして特にイムノアッセイ及び受容体とその標的物質(分析物)との相互作用に関して、非変性状態は、受容体とその標的物質(分析物)との相互作用及び結合を可能にする立体構造を達成及び/又は維持することにおいて、受容体(例えば、抗体)を許容する環境の集合的特徴としてより具体的に理解される。同時に、非変性条件によって与えられる環境は、標的物質が、受容体に結合するようになる、及び/又は結合したままになることを可能にする立体構造を達成及び/又は維持することを許容する。
【0018】
特に、全LNAオリゴヌクレオチドは、当業者が利用できる本ツールでは確実に予測できない特徴を有する。実用上の理由から、本研究は最大15個のLNAモノマーからなるss-オリゴヌクレオチドに限定された。
【0019】
したがって、本開示は、本明細書に開示される他のすべての態様及び実施形態に関連する第1の態様において、結合対を提供するための方法であって、この結合対は、第1の一本鎖LNAオリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖LNAオリゴヌクレオチドからなり、この2個のオリゴヌクレオチドは、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができ、
(a)8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなる第1の一本鎖(=ss-)オリゴヌクレオチドを提供し、各モノマーは、核酸塩基を含み、前記第1のss-オリゴヌクレオチドの前記核酸塩基は、第1の核酸塩基配列を形成するステップ;
(b)8~15個のLNAモノマーからなる第2のss-オリゴヌクレオチドを提供し、前記第2のss-オリゴヌクレオチドは、少なくとも前記第1のss-オリゴヌクレオチドの数のモノマーからなり、前記第2のss-オリゴヌクレオチドの各モノマーは、核酸塩基を含み、前記第2のss-オリゴヌクレオチドの前記核酸塩基は、第2の核酸塩基配列を形成し、前記第2の核酸塩基配列は、逆平行配向で前記第1の核酸塩基配列に相補的な核酸塩基配列を含むか、又はそれらからなること、及び相補性として、前記第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドが互いに二本鎖を形成する能力を予測すること、前記二本鎖は、8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対からなるステップ;
(c)等モル量の第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドを水溶液中で20℃~40℃の温度、20分以下の時間間隔で、混合及びインキュベートし、それによりss-オリゴヌクレオチドの混合物又は二本鎖含有混合物を得るステップ;続いて、
(d)ステップ(c)で得られた前記混合物を20℃~40℃の温度で分離し、続いて、前記分離された二本鎖を検出及び定量し、存在する場合は、及び前記分離されたssオリゴヌクレオチドを検出及び定量するステップ;続いて、
(e)ステップ(d)で二本鎖が検出できるほど存在する場合、及び二本鎖のモル量がss-オリゴヌクレオチドのモル量よりも高い場合、前記結合対を選択するステップ;
これにより、前記結合対を提供するステップ
を含む方法を提供する。
【0020】
ここで指定されている全LNAss-オリゴヌクレオチドは、8、9、10、11、12、13、14、及び15からなる群から選択された数のモノマーを含むことができる。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の一実施形態では、第1のss-オリゴヌクレオチドは、8~12個のモノマー(すなわち、8、9、10、11及び12個のモノマーから選択される数)からなり、また本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のより具体的な実施形態では、第1のss-オリゴヌクレオチドは、8個のモノマーからなる。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、第1のssオリゴヌクレオチドは、8~10個のモノマー(すなわち、8、9、及び10個のモノマーから選択される数)からなり、また本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のより具体的な実施形態では、第1のss-オリゴヌクレオチドは、9個のモノマーからなる。第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドは、同じサイズである必要はない、すなわち、同じ数のモノマーからなる必要はない。しかしながら、第1及び第2のss-オリゴヌクレオチドを構成する同数のモノマーは、本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態である。
【0021】
2個のオリゴヌクレオチドは、互いに平行に走るが反対の配列で走る場合、逆平行である。具体的な例は、核酸二本鎖の2本の相補鎖であり、これらは互いに並んで反対方向に走っている。結果として、二本鎖の各末端は、反対側の第2の鎖の3’末端に隣接する/整列する第1の鎖の5’末端を含む。DNA及びRNAと同様に、LNAはワトソン・クリック塩基対を示す(Koshkin,A.A.ら、J Am Chem Soc 120(1998)13252~13260)。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の一実施形態において、各LNAモノマーは、アデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニンからなる群から選択される核酸塩基を含む。相補的な反対の鎖上のこれらの塩基を含む特定のワトソン・クリック塩基対形成は、当業者によく知られており、当技術分野で広く公開されている受け入れられた特徴である。記載された核酸塩基とは別に、全LNAss-オリゴヌクレオチドに組み込むことができる他のものも当業者に知られている。一般的に、これらには、C-5原子で誘導体化されたピリミジンが含まれる。
【0022】
重要なことに、2個の異なる(すなわち、第1と第2の)ss-オリゴヌクレオチドが接触した後、本方法のステップ(c)は、20分以下の時間間隔でのインキュベーションを明記する。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、時間間隔は、1秒~20分、1秒~15分、1秒~10分、1秒~5分、1秒~1分、1秒~30秒、1秒~20秒、1秒~10秒、及び1秒~5秒からなる群から選択される。非常に有利な時間間隔は、1秒~10秒及び1秒~5秒から選択される。
【0023】
ステップ(c)では、温度はステップ(d)の温度とは独立して選択され、その逆も同様である。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、ステップ(c)及び(d)の温度は5℃を超えて異ならない。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、ステップ(c)及び/又はステップ(d)において、温度は20℃~25℃である。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の特定の実施形態では、ステップ(c)及び/又はステップ(d)において、温度は25℃~37℃である。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の特定の実施形態では、ステップ(c)の前に、第1のss-オリゴヌクレオチド及び第2のss-オリゴヌクレオチドは、80℃~40℃で、具体的には20℃~40℃、より具体的には20℃~25℃、さらにより具体的には25℃~37℃の温度で保たれる。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、ステップ(c)において、水溶液は、溶液のpHをpH6~pH8、より具体的にはpH6.5~pH7.5に維持する緩衝液を含む。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、ステップ(c)において、水溶液は塩を含む。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、ステップ(c)において、水溶液は、10mmol/L~500mmol/L、より具体的には、200mmol/L~300mmol/L、より具体的には、10mmol/L~150mmol/L、より具体的には50mmol/L~200mmol/Lの溶解物質の総量を含む。
【0024】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、ステップ(d)が、ステップ(c)のインキュベートされた混合物を、移動相として水性溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーに供することを含む。したがって、カラムクロマトグラフィーは、ss-オリゴヌクレオチドから別個の二本鎖分子を分離するために使用される。HPLCなどの適切なクロマトグラフィー方法は、この点に関して当業者によく知られている。
【0025】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態では、(a)及び(b)のss-オリゴヌクレオチドは、ベータ-D-LNAモノマーからなる。つまり、第1のss-オリゴヌクレオチドは完全にベータ-D-LNAモノマーからなり、第2のss-オリゴヌクレオチドは完全にベータ-D-LNAモノマーからなる。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のさらに別の実施形態では、(a)及び(b)のss-オリゴヌクレオチドは、ベータ-L-LNAモノマーからなる。つまり、第1のss-オリゴヌクレオチドは、完全にベータ-L-LNAモノマーからなり、第2のss-オリゴヌクレオチドは完全にベータ-L-LNAモノマーからなる。
【0026】
そこに開示される方法によって、またその実施形態のいずれかによって、本開示は、それぞれが8~15個のLNAモノマーを含む、相補的な一本鎖全LNAオリゴマーの非変性対から、25℃~40℃の事前に選択された温度で形成される全LNA二本鎖を提供する。
【0027】
本開示は、本明細書に開示される他のすべての態様及び実施形態に関連する第2の態様において、水性溶媒及び第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる結合対を含む液体組成物を提供し、各オリゴヌクレオチドは、8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなり、各モノマーは、第1のオリゴヌクレオチドの第1の核酸塩基配列及び第2のオリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成するモノマーの核酸塩基を含み、第1の核酸塩基配列そして、第2の核酸塩基配列は、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができ、結合対が本明細書に開示される第1の態様による方法によって得られる。
【0028】
すべての態様及び実施形態に関連する特定の態様において、水性溶媒及び第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる結合対を含む液体組成物を提供し、各オリゴヌクレオチドは、8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなり、各モノマーは、第1のオリゴヌクレオチドの第1の核酸塩基配列及び第2のオリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成するモノマーの核酸塩基を含み、第1の核酸塩基配列そして、第2の核酸塩基配列は、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができ、結合対が本明細書に開示される第1の態様による方法によって得られる。
【0029】
すべての態様及び実施形態に関連する特定の態様において、水性溶媒及び第1の一本鎖オリゴヌクレオチド及び第2の一本鎖オリゴヌクレオチドからなる結合対を含む液体組成物を提供し、各オリゴヌクレオチドは、8~15個のロック核酸(=LNA)モノマーからなり、各モノマーは、第1のオリゴヌクレオチドの第1の核酸塩基配列及び第2のオリゴヌクレオチドの第2の核酸塩基配列を形成するモノマーの核酸塩基を含み、第1の核酸塩基配列そして、第2の核酸塩基配列は、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で8~15個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成することができ、結合対が本明細書に開示される第1の態様による方法によって得られる。
【0030】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の一実施形態において、各オリゴヌクレオチドは、9~15個のLNAモノマーからなり、第1の核酸塩基配列及び第2の核酸塩基配列は、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、20℃~40℃の温度で、9個の連続するワトソン・クリック塩基対の逆平行二本鎖を形成できるように選択され、結合対は、第1の態様の方法及びその実施形態によって得られうるか、又は得られる。
【0031】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の一実施形態において、各ss-オリゴヌクレオチドは、2個又は3個の異なる核酸塩基を含む。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の実施形態において、各ss-オリゴヌクレオチドの核酸塩基のG+C(G及びCの類似体を含む)含有量は、75%未満である。特定の実施形態では、G+C含有量は、74%、73%、72%、71%、及び70%から選択される値よりも低い。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のさらに別の実施形態において、結合対における各LNAモノマーは、アデニン、チミン、ウラシル、グアニン、シトシン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニンからなる群から選択される核酸塩基を含む。より具体的な実施形態では、各ss-オリゴヌクレオチド中の核酸塩基のうち、各シトシンは、5-メチルシトシンによって置換されている。
【0032】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の一実施形態において、2個の別個の互換性結合パートナーの結合対は、以下からなる群から選択される全LNAss-オリゴヌクレオチド対である。
【0033】
5’tgctcctg3’及び5’caggagca3’、
5’gcctgacg3’及び5’cgtcaggc3’、
5’ctgcctgacg3’及び5’cgtcaggcag3’、
5’gactgcctgacg3’及び5’cgtcaggcagtc3’、
5’tgctcctgt3’及び5’acaggagca3’、
5’gtgcgtct3’及び5’agacgcac3’、
5’gttggtgt3’及び5’acaccaac3’、
5’caacacaccaac3’及び5’gttggtgtgttg3’、
5’acacaccaac3’及び5’gttggtgtgt3’、
5’acaccaac3’及び5’gttggtgt3’
【0034】
特定の実施形態において、前述の群の任意の選択された対におけるss-オリゴヌクレオチドのモノマーは、ベータ-D-LNAモノマーである。さらに別の特定の実施形態において、前述の群の任意の選択された対におけるss-オリゴヌクレオチドのモノマーは、ベータ-L-LNAモノマーである。
【0035】
本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の実施形態において、結合対の1個のss-オリゴヌクレオチドは、磁性ビーズ、常磁性ビーズ、合成有機ポリマー(ラテックス)ビーズ、多糖ビーズ、試験管、マイクロウェルプレートキャビティ、キュベット、膜、足場分子、水晶、フィルム、濾紙、ディスク、及びチップからなる群から選択される固相に付着する。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態の別の実施形態において、結合対の1個のssオリゴヌクレオチドは、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、糖、グリカン、ハプテン、及び色素からなる群から選択される分子に連結する。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のさらに別の実施形態では、ss-オリゴヌクレオチドは、リンカーに共有結合的に付着する。本明細書に開示されるすべての態様及び実施形態のさらに別の実施形態において、ss-オリゴヌクレオチドは、イムノアッセイなどであるがこれに限定されない受容体ベースの分析物検出アッセイにおいて、有用な分析物特異的受容体に、共有結合的に付着する。
【0036】
その最も広い意味で、また生化学で一般的に受け入れられている理解に沿って、受容体は、特定の標的分子全体に対する親和性、又は特定の分子領域及び/又は標的分子の三次元的側面に対する親和性を有する構造である。本開示の目的のために、受容体は、標的分子と相互作用し、そして結合すると理解される。生化学的アッセイでは、受容体を使用してその標的分子を捕捉し、標的を複雑な混合物から分離し、標的分子を分析物として定量することができる。例として、イムノアッセイは通常、抗体又は抗体由来分子を受容体として使用する。捕捉受容体は、固定化された形態で(すなわち、固相に付着して)提供されるか、又は好ましくは、固定化されることができる形態で提供される受容体である。固定化は、固相と受容体を連結する、又は連結することができる結合対によって行うことができる。
【0037】
非常に一般的に言えば、イムノアッセイは、標的分析物に特異的に結合することができる1つ又は複数の受容体を提供する。このような受容体としては、分析物特異的イムノグロブリンが例示され得る。そのために、この名前がイムノアッセイである。しかしながら、本開示の目的のために、他のタイプの分析物特異的受容体もまた考慮される。したがって、より一般的な用語である、受容体ベースの分析物検出アッセイが適切である。
【0038】
通常、標的分析物はサンプルに含まれ、このサンプルは異なる分子の複雑な混合物である。本開示の目的のために、液体サンプルが考慮される。液体サンプルは、液相、すなわち大抵は水性溶媒である液体溶媒を含む。水性溶媒中には、複数の分子が溶解状態で存在する。したがって、特定の実施形態では、サンプルは液体の凝集状態にあり、それは単相の均一な混合物である。特定の実施形態では、分析物は、溶解形態の混合物に含まれ、さらに、1つ又は複数のさらなる分子が、溶解形態のその混合物中に存在する。
【0039】
受容体ベースの分析物検出アッセイによる、液体サンプル中に存在する、又はその中に存在すると疑われる標的分析物の検出に関して、第1の必須のステップにおいて、分析物は特異的に結合する。特異的結合は、受容体が、存在する又は存在するようになることを意味し、この受容体は、標的分析物に対して高い結合親和性及び結合特異性を有し、またサンプル中にまた存在するさらなる分子に対して低い又は存在しない。特定の実施形態(及び例示する多数の既存のアッセイ)では、分析物に特異的に結合することができる受容体を含む化合物をサンプルに添加する。重要なことに、サンプルと受容体を含む化合物の混合物は、サンプル中の受容体と標的分析物との特定の相互作用を許容する条件を提供しなければならない。これは、混合物における条件は、受容体による分析物の実際の結合に許容的でなければならないことを含み、また、その条件は、結合された標的分析物で受容体を安定化することが望ましい。同時に、サンプルと化合物の混合物は、受容体、又は受容体全体を含む化合物へのさらなる分子の非特異的結合を支持又は安定化しないことが望ましい。
【0040】
続いて、分析物を固定化する。固定化は、分析物を周囲の複雑な混合物、特にサンプルのさらなる分子から分離できる、検出プロセスの重要なステップである。固定化には、標的分析物が付着するようになる固相が必要である。固定化されると、相分離によって分析物を混合物から分離することができる。次に、混合物から分離されて(すなわち、精製されて)、分析物が検出される。
【0041】
受容体ベースの分析物検出アッセイ及び固定化ステップを考慮すると、固相を提供し、固相と標的分析物との間の連結を構築する必要がある。連結は、自己組織化プロセスで構築されることが望ましい。
【0042】
イムノアッセイは、分析物の検出又は定量化を行い、分析物と少なくとも1つの分析物特異的受容体との反応に依存し、その結果、分析物:受容体の複合体を形成する、確立された生物分析法である。非限定的な例は、それぞれ、抗原と抗体との間の反応である。「サンドイッチ」イムノアッセイの特定の実施形態は、複数の認識エピトープを有する分析物に使用することができる。したがって、サンドイッチアッセイには、分析物上の重複しないエピトープに付着する少なくとも2つの受容体が必要である。「不均一サンドイッチイムノアッセイ」では、受容体の1つが分析物特異的捕捉受容体の機能的役割を果たす。この受容体は、固相に固定化されているか、又は(アッセイの過程で)固定化される。第2の分析物特異的受容体は、液相中の溶解形態で供給される。それぞれの分析物が第1及び第2の受容体によって結合されると、サンドイッチ様複合体が形成される(受容体-1:分析物:受容体-2)。サンドイッチ状の複合体は、「検出複合体」とも呼ばれる。検出複合体内では、分析物は受容体の間に挟まれている。すなわち、そのような複合体内では、分析物は、第1の受容体と第2の受容体との間の連結要素を意味する。
【0043】
(「均一」に対するものとして)「不均一」という用語は、アッセイ手順における2つの必須で別個のステップを示す。第1のステップでは、ラベルを含む検出複合体が形成され、固定化されるが、結合していないラベルがまだ複合体を囲んでいる。ラベル依存信号を判定する前に、非結合ラベルは固定化された検出複合体から洗い流される。そのため、第2のステップに相当する。対照的に、均一アッセイは、シングルステップインキュベーションによって分析物依存の検出可能なシグナルを生成し、洗浄ステップを必要としない。
【0044】
不均一アッセイでは、固相は、分析物と接触する前に、その表面に機能的捕捉受容体(第1の受容体)に結合する場合があるように機能化される。又は、固相の表面は、分析物と反応した後、第1の受容体を係留できるように機能化される。後者の場合、係留プロセスは、分析物を特異的に捕捉して結合する受容体の能力を妨げてはならない。液相に存在する第2の受容体は、結合した分析物の検出に使用される。したがって、不均一イムノアッセイでは、分析物は第1(捕捉)及び第2(検出)受容体に結合することができる。それにより、分析物が、捕捉受容体と検出器受容体との間に挟まれる、「検出複合体」が形成される。典型的な実施形態では、検出器受容体は、分析物と接触する前にラベルされる。あるいは、分析物が結合した後、ラベルが検出器受容体に特異的に付着する。検出複合体が固相に固定化されている場合、固相で検出可能なラベルの量は、サンドイッチされた分析物の量に相当する。洗浄ステップで未結合のラベルを除去した後、分析物の存在と量を示す固定化されたラベルを検出できる。
【0045】
別のよく知られている実施形態は、その最も単純な形態では、第2の検出器受容体の欠乏によって、サンドイッチ型フォーマットとは異なる、競合的不均一イムノアッセイである。対照的に、分析物を含むサンプルは、分析物特異的受容体と交差反応することができる人工的に生成されてラベルされた類似体と混合される。アッセイでは、分析物と類似体は、固定化されている、又は固定化されるようになる捕捉受容体への結合をめぐって競合する。この結合ステップに続いて、固定化されたラベルの量が多いほど、捕捉受容体をめぐって競合することができた非ラベル分析物の量が少なくなる。固定化されたラベルは、洗浄ステップの後に定量される。したがって、固相で検出可能なラベルの量は、サンプルに最初に存在した分析物の量に反対に相応する。
【0046】
不均一イムノアッセイにおいて洗浄ステップは、十分に安定するために、第1の結合パートナーと第2の結合パートナーの非共有の連結を必要とする。ただし、連結に必要な安定性の程度は、適用する洗浄ステップの強度によって異なる。重要かつ予想外に、本明細書に示されるような結合対は、イムノアッセイにおける固定化ステップを容易にするのに並外れてよく適している。つまり、イムノアッセイでは、例えば、固相に付着した結合対の第1の結合パートナー、及び分析物特異的(捕捉)受容体に付着した結合対の第2の結合パートナーは、固相への受容体の固定化を容易にするのに。非常に適している。
【0047】
以下の実施例及び図は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の精神から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】一本鎖LNA1のHPLC分析(実施例2)
図2】一本鎖LNA2のHPLC分析(実施例2)
図3】混合LNA1とLNA2のHPLC分析、HPLCシステムへの即時注入(実施例2)
図4】注入(実施例2)前の熱変性後の混合LNA1とLNA2のHPLC分析 陽性対照:二本鎖形成
図5】一本鎖LNA3のHPLC分析(実施例2)
図6】一本鎖LNA4のHPLC分析(実施例2)
図7】混合LNA3とLNA4のHPLC分析、HPLCシステムへの即時注入(実施例2)より遅い二本鎖形成(比率<0.05)
図8】混合LNA3及びLNA4のHPLC分析、50分後の注入(実施例2)より遅い二本鎖形成(比率=0.05)
図9】注入(実施例2)前の熱変性後の混合LNA3とLNA4のHPLC分析 陽性対照:二本鎖形成
【0049】
実施例1
LNAオリゴヌクレオチドの合成
【0050】
LNAオリゴヌクレオチドは、標準の自動固相DNA合成手順を使用し、ホスホロアミダイト化学を適用して、ABI 394 DNAシンセサイザーで1μmolスケールの合成で合成された。Glen UnySupport PS(Glen Research cat no.26-5040)及びLNAホスホロアミダイト(Qiagen/Exiqon cat.No.33970(LNA-A(Bz),339702(LNA-T),339705(LNA-mC(Bz)及び339706(LNA-G(dmf);β-L-LNA類似体は、A.A.Koshkinら,J.Org.Chem 2001,66,8504-8512)に従って、L-グルコース(Carbosynth,cat.No.MG05247)から出発するD-β-LNAホスホロアミダイトと類似的に合成された。また、スペーサーホスホロアミダイト18(Glen Research cat.No.10-1918)及び5’-ビオチンホスホロアミダイト(Glen Research cat.No.10-5950)を構成要素として使用した。
すべてのホスホロアミダイトは、DNAグレードのアセトニトリルに0,1Mの濃度で適用された。LNAオリゴヌクレオチドの組み立てには、延長したカップリング時間(180秒)、延長した酸化(45秒)、脱トリチル化時間(85秒)での標準DNAサイクル、及び標準合成試薬と溶媒を使用した。5’-ビオチン化LNAオリゴヌクレオチドは合成されたDMToffであったが、未修飾のLNAオリゴヌクレオチドはDMTonとして合成された。次に、標準的な切断プログラムを適用して、濃縮アンモニアによって、支持体からLNAオリゴヌクレオチドの切断を行った。残留保護基は、濃縮アンモニアでの処理によって切断された(56℃で8時間)。粗LNAオリゴヌクレオチドを蒸発させ、RP HPLC(カラム:PRP-1、7μm、250×21.5mm(Hamilton、part no.79352)又はXBridge BEH C18 OBD、5μm、10x250mm(Waters part no.186008167)で、0,1M酢酸トリエチルアンモニウム pH7/アセトニトリルグラジエントを使用して、精製した。生成物画分を合わせ、水に対する透析(MWCO 1000、SpectraPor 6、part no.132638)によって3日間脱塩し、それによってDMTon精製オリゴヌクレオチドのDMTグループも切断した。最後に、LNAオリゴヌクレオチドを凍結乾燥した。
【0051】
収量は、85~360nmolの範囲だった。
【0052】
LNAオリゴヌクレオチドは、0,1M酢酸トリエチルアンモニウム pH7/アセトニトリルグラジエントを使用して、RP18 HPLC(Chromolith RP18e,Merck part no.1.02129.0001)で分析した。典型的な純度は、≧90%だった。LNAオリゴヌクレオチドの同一性は、LC-MS分析によって確認された。
【0053】
実施例2
【0054】
RP-HPLC分析を適用した事前の変性なしに二本鎖を形成できるLNAオリゴヌクレオチド配列の同定
a)一般的な方法:
【0055】
実施例1のLNAオリゴヌクレオチドを緩衝液(0.01MのHepes pH7.4、0.15MのNaCl)に溶解し、0.1M酢酸トリエチルアンモニウムpH7/アセトニトリルグラジエント(10分間で8~24%アセトニトリル、260nmで検出)を使用して、RP18 HPLC(Chromolith RP18e,Merck part no.1.02129.0001)で、分析した。
【0056】
鎖及び対応する対向鎖LNAオリゴヌクレオチドを等モル濃度で室温で混合して、それから0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウムpH7/アセトニトリルグラジエント(10分で8-24%B、260nmで検出)を使用して、RP18 HPLC(Chromolith RP18e,Merck part no.1.02129.0001)で直ちに分析した。
【0057】
第1の対照実験では、鎖及び対応する対向鎖LNAオリゴヌクレオチドを等モル濃度で室温で混合し、室温で1時間インキュベートした。その後、0.1M酢酸トリエチルアンモニウムpH7/アセトニトリルグラジエント(10分で8~25%アセトニトリル、260nmで検出)を使用して、RP18 HPLC(Chromolith RP18e,Merck part no.1.02129.0001)で分析した。
【0058】
二本鎖形成(陽性対照)鎖及び対応する対向鎖LNAオリゴヌクレオチドを示す第2の対照実験では、室温で等モル濃度で混合し、95℃(10分)で熱変性させ、それから室温に達した後、0.1M酢酸トリエチルアンモニウムpH7/アセトニトリルグラジエント(10分で8~24%アセトニトリル、260nmで検出)を使用して、RP18 HPLC(Chromolith RP18e,Merck part no.1.02129.0001)で再度分析した。
【0059】
個々の一本鎖LNAオリゴヌクレオチドと比較して異なる保持時間で新しいピークが形成される場合、二本鎖形成を検出することができる。陽性対照では、混合鎖と対向鎖が注入前に熱変性され、二本鎖が生成される。室温で、鎖と対向鎖LNAを混合した後の時間依存注入によって、事前の変性なしで、二本鎖形成の動態をモニターすることができる。
【0060】
LNA配列は、事前に変性させずに室温で5~60分間焼き戻した後(HPLC%は吸光係数で補正され、二本鎖の高色度は考慮されてない)、形成された二本鎖と両方の一本鎖LNAの一方のHPLC%比(吸光係数で補正され、両方の鎖が正確に等モルではない場合は、より高い比率の値が考慮される)が、0.9の場合、迅速に二本鎖を形成できると判断される。
【0061】
b)二本鎖を高速で形成する配列の同定
LNA1:5’-tgctcctg-3’
LNA2:5’-Bi-Heg-caggagca-3’
Heg=ヘキサエチレングリコール
Bi=ビオチンの吉草酸部分のカルボキシ機能を介して付着したビオチンラベル
結果を図に示す。
【0062】
c)ゆっくりと二本鎖を形成する配列の同定
LNA3:5’-ctgcctgacg-3’
LNA4:5’-Bi-Heg-cgtcaggcag-3’
結果を図に示す。
【0063】
比率の計算:
【表1】
HPLC%*ε-1*1000(LNA3/LNA4二本鎖)/HPLC%*ε-1*1000(LNA3一本鎖)=0.023/0.456=0.05
HPLC%*ε-1*1000(LNA3/LNA4二本鎖)/HPLC%*ε-1*1000(LNA4一本鎖)=0.023/0.457=0.05
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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