(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】長尺管の引抜切断装置及び引抜切断方法
(51)【国際特許分類】
B23D 21/00 20060101AFI20241129BHJP
B23D 33/00 20060101ALI20241129BHJP
B21C 3/08 20060101ALI20241129BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20241129BHJP
B21C 1/16 20060101ALI20241129BHJP
B23D 17/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B23D21/00 520Z
B23D33/00 H
B21C3/08 A
B21C51/00 J
B21C1/16
B23D17/00 Z
(21)【出願番号】P 2021002625
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 遼児
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 智規
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-212715(JP,A)
【文献】特開平09-209029(JP,A)
【文献】実開平02-016099(JP,U)
【文献】実開昭58-113414(JP,U)
【文献】特開平01-168597(JP,A)
【文献】特開平09-141521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0240169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 15/00、17/00、21/00
B23D 33/00
B21C 1/16、51/00
B21C 3/08
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺管の断面形状を維持したまま又は前記長尺管の断面を潰した後、引き抜く引抜ローラと、
前記引抜ローラで引き抜いた前記長尺管の長さを測定する測距部と、
前記測距部の測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する切断手段と、
前記切断手段と、前記切断手段で切断した切断物を収容する回収箱の間に蛇腹式シュートを備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された長尺管の引抜切断装置であって、
前記引抜ローラと前記切断手段の間に前記長尺管を前記切断手段に案内するガイドローラを備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の長尺管の引抜切断装置であって、
前記引抜ローラは、駆動ローラと従動ローラからなり、前記駆動ローラと前記従動ローラのローラ間距離を調整するグリップ調整部を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項
3のいずれか1に記載の長尺管の引抜切断装置であって、
前記長尺管と前記引抜ローラの間で垂直方向の位置調整を行う高所作業車と、前記長尺管と前記引抜ローラの間で水平方向の位置調整を行う台車を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置。
【請求項5】
長尺管の断面形状を維持したまま又は前記長尺管の断面を潰した後、引抜ローラで引き抜く工程と、
前記引抜ローラで引き抜いた前記長尺管の長さを測距部で測定する工程と、
前記測距部の測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する工程と、
前記所定長さに切断した切断物を蛇腹式シュートに受け入れて下方の回収箱に落下させて回収する工程を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の長尺管の引抜切断方法であって、
高所作業車により前記長尺管と前記引抜ローラの間で垂直方向の位置調整を行う工程と、台車により前記長尺管と前記引抜ローラの間で水平方向の位置調整を行う工程を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電プラントの復水器に配置された細管などの長尺管の引抜切断装置及び引抜切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、原子力発電所などの発電プラントの復水器には複数の細管(チューブ)が設置されている。細管は一例として材質に銅(真鍮)、銅合金、チタンが用いられ、直径25.4mm~31.75mm(1.0~1.25inch)、全長数十メートルの長尺の円筒管である。この復水器を解体する際には、本体から細管を引き抜く作業がある。
【0003】
図7は従来の細管の引抜装置及び減容装置の説明図である。図示のよう発電プラントの復水器1を配置しているエリアには、長尺の細管2を引き抜く広い作業エリアが必要となる。図示の作業エリアでは、床面から数メートル上の復水器1付近にクレーン吊りした細管2の引抜装置3と、現場作業員を載せた高所作業車4を配置し、高所作業車4を介して復水器1と反対側に引き抜いた細管2を現場作業員が支持して運ぶための作業用足場5を配置して、さらに細管2を引き抜いた箇所には細管2を切断して、その寸法を小さくする減容装置6を配置していた。そして高所作業車4上の現場作業員が引抜装置3を用いて復水器1から細管2を引き抜いていく。引き抜いた細管2を作業用足場5上で現場作業員が減容装置6側へ送る。減容装置6には細管2を切断する機構が備えられており、これを用いて細管2を切断してドラム缶7に収容する。
【0004】
他の従来の細管の引抜装置として特許文献1に開示の装置は、細管を復水器から取り外すタッピング装置と、引きぬかれた細管を押し潰して扁平にする押潰装置と、扁平にされた細管を巻き取る巻取装置を備え、細管を嵩張らずに巻き取ることができる。
【0005】
しかしながら、
図7に示す従来の引抜減容工法では、引抜工程と減容工程で別々の装置を用いており、互いに離れた箇所で行っていたため、少なくとも長尺の細管分の長さに相当する広範囲の作業スペースが必要となり、多くの作業人員を必要としていた。
【0006】
また特許文献1に開示の装置は、熱交換機の側面の支持板に一対のレールを敷設し、このレール上を移動可能な支持アームに吊り下げチェーンを介して引抜・巻取装置を吊り下げ保持している。このため、あらかじめレール等の敷設作業が必要になり、作業が多工程で長時間となってしまう。また細管の内部が放射能で汚染されている場合には、線量検査のために半割しなければならないが、この装置では扁平にしてしまうために適用することができない。さらに、巻取した細管を立方形状の回収箱に入れると円形のために隙間が多くなり収納率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、長尺管を引き抜いて切断する作業スペースを低減できる長尺管の引抜切断装置及び引抜切断方法を提供することにある。
また管内汚染の有無によって、後処理に適した断面形状で切断できる長尺管の引抜切断装置及び引抜切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、長尺管の断面形状を維持したまま又は前記長尺管の断面を潰した後、引き抜く引抜ローラと、
前記引抜ローラで引き抜いた前記長尺管の長さを測定する測距部と、
前記測距部の測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する切断手段と、
前記切断手段と、前記切断手段で切断した切断物を収容する回収箱の間に蛇腹式シュートを備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、復水器から細管を引き抜く引抜ローラの直近の切断手段で切断しているため作業スペースを低減化できる。このため、残りのスペースを利用して細管の引抜切断作業と並行して他の解体、除染などの作業を行うことができる。
また細管を所定長さで切断しているため回収箱の隙間を低減して収容率を高めることができる。
さらに従来法と比べて作業人数を大幅に低減することができる。
また切断物を回収箱に収納する作業を無人化できる。
高所作業車上に切断物を収納する回収箱を載せるためにスペースを設ける必要がなく、かつ作業車上に切断物の回収箱を載せておく必要がなく高所作業車の積載重量を低減できる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記引抜ローラと前記切断手段の間に前記長尺管を前記切断手段に案内するガイドローラを備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、引抜ローラで断面形状が潰れた細管は湾曲し易く、湾曲した細管が切断手段に導入されずに引き抜かれ続けて切断手段の手前で詰まることを防止できる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記引抜ローラは、駆動ローラと従動ローラからなり、前記駆動ローラと前記従動ローラのローラ間距離を調整するグリップ調整部を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、引抜作業中に細管の断面形状を潰すことなく適度なグリップ力を維持した状態で引き抜くことができる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし第3のいずれか1の手段において、
前記長尺管と前記引抜ローラの間で垂直方向の位置調整を行う高所作業車と、前記長尺管と前記引抜ローラの間で水平方向の位置調整を行う台車を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、装置を設置するために足場等をあらかじめ組む必要がなく、容易かつ短時間で細管と装置の位置合わせを行うことができる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、長尺管の断面形状を維持したまま又は前記長尺管の断面を潰した後、引抜ローラで引き抜く工程と、
前記引抜ローラで引き抜いた前記長尺管の長さを測距部で測定する工程と、
前記測距部の測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する工程と、
前記所定長さに切断した切断物を蛇腹式シュートに受け入れて下方の回収箱に落下させて回収する工程を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断方法を提供することにある。
上記第5の手段によれば、復水器から引き抜いた細管を直近で切断しているため作業スペースを低減化できる。このため、残りのスペースを利用して細管の引抜切断作業と並行して他の解体、除染などの作業を行うことができる。
また細管を所定長さで切断しているため回収箱の隙間を低減して収容率を高めることができる。
さらに従来法と比べて作業人数を大幅に低減することができる。
また切断物を回収箱に収納する作業を無人化あるいは省力化できる。
高所作業車上に切断物を収納する回収箱を載せるためにスペースを設ける必要がなく、かつ作業車上に切断物の回収箱を載せておく必要がなく高所作業車の積載重量を低減できる。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第5の手段において、高所作業車により前記長尺管と前記引抜ローラの間で垂直方向の位置調整を行う工程と、台車により前記長尺管と前記引抜ローラの間で水平方向の位置調整を行う工程を備えたことを特徴とする長尺管の引抜切断方法を提供することにある。
上記第6の手段によれば、装置を設置するために足場等をあらかじめ組む必要がなく、容易かつ短時間で細管と装置の位置合わせを行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長尺管の引抜と切断作業の間を狭めて作業スペースを低減することができる。
管内汚染の有無によって、後処理に適した断面形状で切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の長尺管の引抜切断装置の構成概略図である。
【
図2】実施例1の長尺管の引抜切断装置の斜視図である。
【
図4】実施例2の長尺管の引抜切断装置の切断手段側から見た斜視図である。
【
図5】実施例2の長尺管の引抜切断装置の圧縮部側から見た斜視図である。
【
図6】本発明の長尺管の引抜切断装置を用いた処理フロー図である。
【
図7】従来の細管の引抜装置及び減容装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の長尺管の引抜切断装置及び引抜切断方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0020】
[長尺管の引抜切断装置10]
図1は、本発明の長尺管の引抜切断装置の構成概略図である。図示のように本発明の長尺管の引抜切断装置10は、長尺管との位置合わせ(心出し)の際に垂直方向の位置調整を行う高所作業車4とさらにその上に配置されて長尺管との位置合わせ(心出し)の際に水平方向の位置調整を行う台車14の上に配置可能に構成している。長尺管の引抜切断装置10は、そのケーシング本体12が直接台車14上に載置され、引抜切断装置10から排出される細管2の端部が蛇腹式シュート16に内包されるように蛇腹式シュート16が高所作業台車4に支持されている。
【0021】
(実施例1:長尺管の断面形状を維持)
図2は実施例1の長尺管の引抜切断装置の斜視図である。実施例1の長尺管の引抜切断装置10aは、ケーシング12に長尺管の断面形状を維持したまま引き抜く引抜ローラ20aと、前記引抜ローラ20aで引き抜いた前記長尺管の長さを測定する測距部30aと(
図3参照)、前記測距部30aの測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する切断手段40aと、を備えている。
引抜ローラ20aは駆動ローラ22と、駆動ローラ22に従動する従動ローラ24からなる。駆動ローラ22は駆動モータ26aに一例としてステッピングモータを用いている。
【0022】
図3はグリップ調整部の説明図である。
従動ローラ24は、従動ローラシャフト24aと、ベアリング24bと、シフトテーブル付きフレーム24cと、全ねじ24dとで一体化している。そしてシフトテーブル付きフレーム24cはケーシング12のガイドレール24eに沿って上下方向(駆動ローラ22と従動ローラ24が接近又は離間する方向)に移動する。また全ねじ24dの端部にはグリップ調整部となるトグルクランプ24fを設けている。
図3(1)に示すようにトグルクランプ24fを全ねじ24dから外すとシフトテーブル付きフレーム24cはガイドレール24eに沿って上下に移動、換言すると従動ローラ24は上下に移動できる。
図3(2)に示すようにトグルクランプ24fにより全ねじ24dを加圧すると従動ローラ24が駆動ローラ22側に移動して細管2を加圧してグリップできる。
【0023】
駆動ローラ22はゴム製ローラを用いている。これにより長尺管のグリップ時に弾性変形して、ローラが空回りすることがなく確実に引き抜くことができる。
測距部30aは駆動モータ26aとなるステッピングモータのパルス電圧を検知して駆動ローラ22の回転数から長尺管の引抜長さを測定している。測距部30aは長尺管の引抜長さを測定できればよく、この構成に限らず従動ローラ24にエンコーダを取り付けて測定する構成であっても良い。
【0024】
切断手段40aは所定長さの長尺管を切断するものであり、本実施形態では一例として電動パイプカッターを用いている。電動パイプカッターはケーシング12に支持されたパイプ把持機構とパイプ円周上を回転する回転刃と、回転刃の動力となるモータから構成されている。電動パイプカッターを用いることにより長尺管の断面形状を潰さず、かつ切断屑を出さずに切断することができる。
引抜ローラ20aと切断手段40aの間にはガイドローラ50を取り付けている。ガイドローラ50は、上下2つのローラ構成であり、ローラ間の距離は長尺管の直径よりも大きく設定している。
【0025】
このような構成の実施例1の長尺管の引抜切断装置10aは、長尺管の断面形状を維持したまま長尺管を所定長さで切断することができる。このため長尺管の管内の汚染状態を検査する場合に適用できる。
なお、1本の長尺管の一番最後の切断の際、ガイドローラ50に引っ掛かるおそれがあるため、手動で引き抜いている。それ以外は、切断後に自重で下方の蛇腹式シュート16内に落下する。
【0026】
(実施例2:長尺管の断面形状を潰す)
図4は実施例2の長尺管の引抜切断装置の切断手段側から見た斜視図である。
図5は実施例2の長尺管の引抜切断装置の圧縮部側から見た斜視図である。実施例2の長尺管の引抜切断装置10bは、ケーシング12に長尺管の断面を潰しながら引き抜く引抜ローラ20bと、前記引抜ローラ20bに取り付けて引き抜いた前記長尺管の長さを測定する測距部30bと、前記測距部30bの測定値に基づいて前記長尺管を所定長さで切断する切断手段40bと、を備えている。
【0027】
引抜ローラ20bは引抜圧延駆動ローラ23と、引抜圧延駆動ローラ23に従動する引抜圧延従動ローラ25からなる。引抜圧延駆動ローラ23の駆動モータ26bとして油圧モータを用いている。油圧ポンプはケーシング12と台車14の間に配置している。実施例2で用いる駆動モータ26bは、長尺管の断面形状を潰すために実施例1の駆動モータ26aよりも高出力のモータを用いている。
引抜圧延駆動ローラ23及び引抜圧延従動ローラ25はいずれも、ギア27とローレット29を外周に形成し(
図4参照)、ローラ回転時にギア27同士が嵌合して空回りすることなく回転できる。またローレット29間で平坦で滑り易い表面の長尺管を噛み込んで空回りして滑ることなく引き抜くことができる。
【0028】
引抜ローラ20bの前段には圧縮部60を設けている(
図5参照)。圧縮部60は、上下の圧縮ブロック62,64と油圧シリンダ66からなる。圧縮ブロック62,64は2つのブロック間に長尺管の断面円形を平坦に押し潰すように長尺管の入口側から出口側に向けて先細となるクサビ状の凹部を備えている。圧縮ブロック62,64は油圧シリンダ66により互いに接近又は離間し、接近時にブロック間で挟んだ長尺管を平坦に押し潰す。油圧シリンダ66は油圧モータと同じ油圧ポンプを用いることができる。
このような圧縮部60の構成により、長尺管を押し潰す際には引抜ローラ20bの回転を停止して行っている。長尺管を押し潰した後、圧縮部60を解除してから押し潰した長尺管を引抜ローラ20bで引き抜いている。
【0029】
実施例2の測距部30bは、引抜圧延従動ローラ25に取り付けたエンコーダであり、エンコーダでローラの回転数を検知して長尺管の引抜長さを測定している。
実施例2の切断手段40bは実施例1と同様に所定長さの長尺管を切断するものであり、本実施形態では一例として油圧ハサミを用いている。油圧ハサミを用いることにより切断屑を出さずに切断することができる。なお油圧ハサミは油圧モータと同じ油圧ポンプを用いている。
【0030】
このような構成の実施例2の長尺管の引抜切断装置10は、断面円形の長尺管を押し潰した後、引き抜いて所定長さに切断することができる。
測距部30a,30bは駆動モータ26a,26bと電気的に接続し、駆動モータ26a,26bは設定長さまで長尺管を引き抜いたときに切断中に切断物が詰まることを防止するため、所定時間一時停止するように制御されている。また設定長さは任意に変更できる。
【0031】
ケーシング12は、長尺管と引抜ローラ20a,20bの間で水平方向の位置調整を行う台車14上に設置している。引抜切断装置の自重によりチューブ引抜時の反力を支えるため、台車14は車輪にストッパー14aを設けて所定箇所で停止、固定する(
図2参照)。
蛇腹式シュート16は、切断物を切断手段40a,40bから回収箱18に導入するものである。作業中の装置は高所作業車4上に配置し、回収箱18は床面に配置している。蛇腹式シュート16は、筒状の可撓性部材を用いて蛇腹式で全長を任意長さに変更できる。蛇腹式シュート16の一方の開口を切断手段40a,40bの下方で切断物の落下する箇所に配置し、他方の開口は下方の回収箱18の上面開口に配置する。このような構成の蛇腹式シュート16は、切断手段40a,40bにより切断された切断物が落下しながら回収箱18に導入されて回収できる。
【0032】
[長尺管の引抜切断方法]
図9は本発明の長尺管の引抜切断装置を用いた処理フロー図である。
ステップ1:装置移動
長尺管の引抜切断装置10を載せた台車14を移動して現場内の高所作業車4に配置する。高所作業車4を復水器1の作業対象の引き抜く細管2付近まで上昇させる。長尺管と引抜ローラ20a,20bの間で垂直方向の位置調整は高所作業車4で行う。また長尺管と引抜ローラ20a,20bの間で水平方向の位置調整は台車14で行う。これにより装置を設置するために足場等をあらかじめ組む必要がなく、容易かつ短時間で細管と装置の位置合わせを行うことができる。
【0033】
なお復水器を設置する現場(発電プラント)ごとに細管内の汚染状況が分かっているため、細管の断面形状を維持したまま、又は断面形状を潰す引抜ローラ20a,20bを備えた長尺管の引抜切断装置10a,10bを選択して適用する。
ステップ2:細管引抜(手作業)
現場作業員により復水器1から作業対象の細管2を手作業で引き抜く。
【0034】
ステップ3:心出し 固定
引き抜いた細管2と引抜ローラ20a,20bの心出しを行い、台車14のストッパーを用いて長尺管の引抜切断装置10を固定させる。
ステップ4:ローラ回転 細管引抜
断面形状を維持した状態で引き抜く場合、細管2を引抜ローラ20aに供給してローラ回転して細管2を引き抜く。
断面形状を潰して引き抜く場合、圧縮部60の圧縮ブロック62,64で細管2の先端を平坦に押し潰す。次に先端が平坦の細管2を引抜ローラ20bの引抜圧延駆動ローラ23と引抜圧延従動ローラ25のローレット29間に導入して、ローラを回転させて細管2を潰した後、引き抜く。
【0035】
ステップ5:引き出す細管の長さ測定
測距部30a,30bにより引き出す細管2の長さを測定する。
ステップ6:細管の所定長さでローラ停止
設定長さまで細管2が引き出されると、引抜ローラ20a,20bが自動停止する。
ステップ7:細管の切断
切断手段40a,40bにより細管2を設定長さで切断する。
【0036】
ステップ8:切断物の回収
切断手段40a,40bから切断物が落下して蛇腹式シュート16に入り、下方の回収箱18に導入されて回収される。1本の細管2が引き出されるまでステップ4からステップ8の作業が繰り返される。切断物を収容した回収箱18が一杯になった場合には、回収箱18を交換するか、または別の回収箱18に蛇腹式シュート16を移動させることにより回収作業を継続できる。
ステップ9:復水器1の細管2の有無の判定を行う。細管2が無ければ作業が終了し、復水器1に他の細管2がある場合にはステップ1に戻り、以降のステップが繰り返される。
【0037】
このような本発明によれば、復水器から細管を引き抜く引抜ローラの直近の切断手段で切断しているため作業スペースを低減化できる。このため、残りのスペースを利用して細管の引抜切断作業と並行して他の解体、除染などの作業を行うことができる。
また細管を所定長さで切断しているため回収箱の隙間を低減して収容率を高めることができる。
さらに従来法と比べて作業人数を大幅に低減することができる。
なお、長尺管の引抜切断装置は、現場内の天井クレーンを用いて移動させても良い。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 復水器
2 細管
3 引抜装置
4 高所作業車
5 作業用足場
6 減容装置
7 ドラム缶
10,10a,10b 長尺管の引抜切断装置
12 ケーシング
14 台車
16 蛇腹式シュート
18 回収箱
20a,20b 引抜ローラ
22 駆動ローラ
23 引抜圧延駆動ローラ
24 従動ローラ
24a 従動ローラシャフト
24b ベアリング
24c シフトテーブル付きフレーム
24d 全ねじ
24e ガイドレール
24f トグルクランプ
25 引抜圧延従動ローラ
26a,26b 駆動モータ
27 ギア
29 ローレット
30a,30b 測距部
40a,40b 切断手段
50 ガイドローラ
60 圧縮部
62,64圧縮ブロック
66 油圧シリンダ