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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】半割切断制御装置及び半割切断制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20241129BHJP
   B23D 21/02 20060101ALI20241129BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20241129BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20241129BHJP
   B23D 55/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B23Q17/09 B
B23D21/02 B
B23Q17/09 A
B23Q17/24 B
B23Q17/00 F
B23D55/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021003359
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108397
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】王 ゴウ
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 智規
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆
(72)【発明者】
【氏名】屋代 裕一
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005884(JP,A)
【文献】特開2017-205839(JP,A)
【文献】特開平03-221355(JP,A)
【文献】特開2003-340684(JP,A)
【文献】特開2002-254239(JP,A)
【文献】実開平06-075622(JP,U)
【文献】特開平05-096418(JP,A)
【文献】特開2007-296248(JP,A)
【文献】特開2019-125946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 21/02
B23D 53/00
B23D 55/00
B23Q 17/00、09、24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半割切断装置の移動中の送り台に貼付されて切断対象物の情報を記録した二次元コードと切断中の鋸刃の切断位置を撮影するカメラと、
切断中の前記鋸刃の刃の形状を計測する二次元センサと、
予め求めた前記カメラと前記送り台の位置により変化する前記カメラで撮影した前記二次元コードの面積比から前記送り台の移動距離及び移動速度とを算出し、さらに前記二次元コードに記録された切断対象物の情報と前記鋸刃の厚さに基づいて切断対象物の切断体積を算出して、前記切断体積の累積値を算出し、切断中の前記鋸刃の刃の面積と前記鋸刃の刃の当初面積の差から前記鋸刃の損傷率を算出し、前記累積値が前記鋸刃の最大切断体積の閾値を超えて、かつ前記鋸刃の損傷率が閾値を超えたときに鋸刃交換する制御部と、
を備えたことを特徴とする半割切断制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された半割切断制御装置であって、
切断中の前記鋸刃の切断音を検出する指向性マイクを備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影した安全切断速度時の鋸刃切断ラインとその後の鋸刃切断ラインの線形近似曲線が交差した角度が閾値を超えたとき、又は前記指向性マイクで取得した切断音の周波数成分が閾値を超えたときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された半割切断制御装置であって、
前記制御部は、前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが切断対象物の厚み相当長さのとき、又は前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが前記切断対象物の直径相当長さのときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御装置。
【請求項4】
半割切断装置の移動中の送り台に貼付されて切断対象物の情報を記録した二次元コードと切断中の鋸刃の切断位置をカメラで撮影する工程と、
切断中の前記鋸刃の刃の形状を二次元センサで計測する工程と、
予め求めた前記カメラと前記送り台の位置により変化する前記カメラで撮影した前記二次元コードの面積比から前記送り台の移動距離及び移動速度とを算出し、さらに前記二次元コードに記録された切断対象物の情報と前記鋸刃の厚さに基づいて切断対象物の切断体積を算出して、前記切断体積の累積値を算出し、切断中の前記鋸刃の刃の面積と前記鋸刃の刃の当初面積の差から前記鋸刃の損傷率を算出し、前記累積値が前記鋸刃の最大切断体積の閾値を超えて、かつ前記鋸刃の損傷率が閾値を超えたときに鋸刃交換する工程と、
を備えたことを特徴とする半割切断制御方法。
【請求項5】
請求項に記載された半割切断制方法であって、
切断中の前記鋸刃の切断音を検出する指向性マイクを備え、
前記鋸刃交換する工程は、安全切断速度時の鋸刃切断ラインとその後の鋸刃切断ラインの線形近似曲線が交差した角度が閾値を超えたとき、又は前記指向性マイクで取得した切断音の周波数成分が閾値を超えたときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御方法。
【請求項6】
請求項又は請求項に記載された半割切断制御方法であって、
前記鋸刃交換する工程は、前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが切断対象物の厚み相当長さのとき、又は前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが前記切断対象物の直径相当長さのときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管、フランジ付配管、バルブなどを半割に切断するバンドソー式半割切断装置の半割切断制御装置及び半割切断制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より配管などの鋼材を切断するバンドソー式切断装置があり、鋸刃使用期間の長期化や鋸盤の切断効率向上を図る各種の制御装置や方法が検討されてきた。
特許文献1に開示の装置は、ワークの切断面積と鋸刃摩耗量との関係を予めデータベース化し、ワークの総切断面積を演算して切断終了時の鋸刃摩耗量の予想値を求め、ワークの切断可能性を判定している。
また、前述のバンドソー式切断装置には、複数の配管などを並べて、これら配管等を長手方向に沿って同時に半割に切断する半割切断装置がある(特許文献2)。この装置は配管の長手方向に沿って切断するため切断長が長く、切断時間も長いため、送り台の移動速度、鋸刃の回転速度の調整には熟練を要し、鋸刃も損傷し易い。
近年、熟練工の高齢化に伴う減少や、原子力発電所の廃炉に伴う汚染された配管の半割切断の大量化によって、切断作業の効率化の要請が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-340684号公報
【文献】特許第6388143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、切断効率が高く、かつ鋸刃の使用時間を長くできる半割切断制御装置及び半割切断制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、半割切断装置の移動中の送り台に貼付されて切断対象物の情報を記録した二次元コードと切断中の鋸刃の切断位置を撮影するカメラと、
切断中の前記鋸刃の刃の形状を計測する二次元センサと、
予め求めた前記カメラと前記送り台の位置により変化する前記カメラで撮影した前記二次元コードの面積比から前記送り台の移動距離及び移動速度とを算出し、さらに前記二次元コードに記録された切断対象物の情報と前記鋸刃の厚さに基づいて切断対象物の切断体積を算出して、前記切断体積の累積値を算出し、切断中の前記鋸刃の刃の面積と前記鋸刃の刃の当初面積の差から前記鋸刃の損傷率を算出し、前記累積値が前記鋸刃の最大切断体積の閾値を超えて、かつ前記鋸刃の損傷率が閾値を超えたときに鋸刃交換する制御部と、
を備えたことを特徴とする半割切断制御装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、鋸刃の切断体積の累積値がメーカー推奨の最大値を超えても、鋸刃の損傷状態を示す損傷率から交換時期を判断でき、鋸刃の使用期間を延長できる。
なお本実施形態の当初とは鋸刃を初めて使うとき、例えば、新品、あるいは長期間倉庫等に保管されていた未使用の鋸刃などを使い始めたときをいう。
またカメラで二次元コードを撮影して読み取ることにより距離センサなどの手段を用いずとも二次元コードの面積比から移動距離、移動速度が算出でき、切断対象物の情報に基づいて切断体積を容易に求めることができる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段であって、
切断中の前記鋸刃の切断音を検出する指向性マイクを備え、
前記制御部は、前記カメラで撮影した安全切断速度時の鋸刃切断ラインとその後の鋸刃切断ラインの線形近似曲線の交差した角度が閾値を超えたとき、又は前記指向性マイクで取得した切断音の周波数成分が閾値を超えたときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、必ずしも第1の手段で得られる鋸刃の刃の損傷が明確に表れない初期段階において、切断速度と鋸刃の摩耗による鋸刃切断ラインの曲がり具合と、切断音から切断装置の異常判定を検出できる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段であって、
前記制御部は、前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが切断対象物の厚み相当長さのとき、又は前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが前記切断対象物の直径相当長さのときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、前記第1の手段における鋸刃の損傷率としては捉えにくい鋸刃が配管に噛み込んだ場合などの鋸刃の部分的な損傷が生じた際の切断異常を検出することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第の手段として、半割切断装置の移動中の送り台に貼付されて切断対象物の情報を記録した二次元コードと切断中の鋸刃の切断位置をカメラで撮影する工程と、
切断中の前記鋸刃の刃の形状を二次元センサで計測する工程と、
予め求めた前記カメラと前記送り台の位置により変化する前記カメラで撮影した前記二次元コードの面積比から前記送り台の移動距離及び移動速度とを算出し、さらに前記二次元コードに記録された切断対象物の情報と前記鋸刃の厚さに基づいて切断対象物の切断体積を算出して、前記切断体積の累積値を算出し、切断中の前記鋸刃の刃の面積と前記鋸刃の刃の当初面積の差から前記鋸刃の損傷率を算出し、前記累積値が前記鋸刃の最大切断体積の閾値を超えて、かつ前記鋸刃の損傷率が閾値を超えたときに鋸刃交換する工程と、
を備えたことを特徴とする半割切断制御方法を提供することにある。
上記第の手段によれば、鋸刃の切断体積の累積値がメーカー推奨の最大値を超えても、鋸刃の損傷状態を示す損傷率から交換時期を判断でき、鋸刃の使用期間を延長できる。
またカメラで二次元コードを撮影して読み取ることにより距離センサ-などの手段を用いずとも二次元コードの面積比から移動距離、移動速度が算出でき、切断対象物の情報に基づいて切断体積を容易に求めることができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第の手段として、第の手段において、切断中の前記鋸刃の切断音を検出する指向性マイクを備え、
前記鋸刃交換する工程は、安全切断速度時の鋸刃切断ラインとその後の鋸刃切断ラインの線形近似曲線が交差した角度が閾値を超えたとき、又は前記指向性マイクで取得した切断音の周波数成分が閾値を超えたときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御方法を提供することにある。
上記第の手段によれば、必ずしも第の手段で得られる鋸刃の刃の損傷が明確に表れない初期段階において、切断速度と鋸刃の摩耗による鋸刃切断ラインの曲がり具合と、切断音から切断装置の異常判定を検出できる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第の手段として、第又は第の手段において、前記鋸刃交換する工程は、前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが切断対象物の厚み相当長さのとき、又は前記二次元センサで取得した前記鋸刃の刃の形状が損傷した長さが前記切断対象物の直径相当長さのときに切断異常と判定することを特徴とする半割切断制御方法を提供することにある。
上記第の手段によれば、前記第の手段における鋸刃の損傷率としては捉えにくい鋸刃が配管に噛み込んだ場合などの鋸刃の部分的な損傷が生じた際の切断異常を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次元コードの読み取りによって切断対象物に応じた切断速度(送り台の移動速度、鋸刃の回転速度)を自動制御できる。従って半割切断作業を熟練者でなくても少人数で実現できる。
鋸刃の切断面積が累積閾値を超えていても鋸刃の状態を確認して継続使用できるか判断し鋸刃を無駄なく使用できる。
鋸刃の刃の形状、鋸刃切断ライン、切断音によって鋸刃の異常を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の半割切断制御装置の正面構成概略図である。
図2】本発明の半割切断制御装置の側面構成概略図である。
図3】本発明の半割切断制御装置を用いた半割切断制御方法の処理フローである。
図4】送り台位置とカメラが撮影した二次元コード面積の関係を示すグラフである。
図5】送り台の移動距離及び移動速度の処理フローである。
図6】切断体積の算出フローである。
図7】正常切断の鋸刃交換の処理フローである。
図8】鋸刃面積の算出フローである。
図9】鋸刃損傷率の算出フローである。
図10】鋸刃切断ラインの説明図である。
図11】鋸刃切断ラインの判定処理フローである。
図12】部分的な連続鋸刃損傷の処理フローである。
図13】鋸刃損傷と配管の直径及び厚みの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半割切断制御装置及び半割切断制御方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。本発明はバンドソー式半割切断装置(一例として特許第6388143号公報に開示、以下単に半割切断装置ということあり)に適用可能な制御装置である。
【0016】
[半割切断制御装置10]
図1は本発明の半割切断制御装置の正面構成概略図である。図2は本発明の半割切断制御装置の側面構成概略図である。本発明の半割切断制御装置10は、半割切断装置12の移動中の送り台14に貼付されて切断対象物の情報を記録した二次元コード22と切断中の鋸刃18の切断位置を撮影するカメラ20と、切断中の前記鋸刃18の刃の形状を計測する二次元センサ30と、二次元コード22を撮影し読み取って送り台14の移動距離と、切断速度と、切断体積を算出して、前記切断体積の累積値を算出し、切断中の前記鋸刃18の刃の面積と前記鋸刃18の刃の当初面積の差から前記鋸刃18の損傷率を算出し、前記累積値が前記鋸刃18の最大切断体積の閾値を超えて、かつ前記鋸刃18の損傷率が閾値を超えたときに鋸刃交換する制御部50と、を備えている。
なお本実施形態中の鋸刃の刃とは、図13に示すように小さな山形の鋭利な凸部の一つ一つ、あるいはそれら全体の総称をいう。
【0017】
(二次元コード22)
二次元コード22は後述するカメラ20と対向する送り台14、具体的には切断対象物16(本実施形態では、配管、フランジ付配管、バルブなど)を載せる前方1枚目の支持板に貼り付けたコードである。支持板は、切断対象物16のサイズ(直径、長さ、厚み)、本数によって形状が異なり、板毎に載置する切断対象物16が予め決まっているため特定できる。本実施形態では一例としてARコードを用いて、送り台14上に載せる切断対象物16の本数、長さ、直径、厚みなどの情報をコード化している。
【0018】
(カメラ20)
カメラ20は、半割切断装置12の送り台14の進行方向の前方に取り付けている。カメラ20は送り台14の正面に貼り付けた二次元コード22を撮影し読み取り、また切断中の鋸刃18の鋸刃切断ラインを撮影するCCD(Charge-Coupled Device)カメラである。
本実施形態の鋸刃切断ラインとは、図10(2)に示すように、切断対象物の進行方向に沿って上流側から下流側を見た際に複数の切断対象物に亘って見られる鋸刃18の断面形状をいう。
【0019】
(二次元センサ30)
二次元センサ30は、半割切断装置12に取り付けて鋸刃18と対向するように配置した二次元非接触(レーザ)変位計である。二次元センサ30は、レーザ照射による反射光を用いて鋸刃18の刃の形状を計測している。
(指向性マイク40)
指向性マイク40は、半割切断装置12の鋸刃18付近に取り付けて周囲の雑音を低減して切断中の鋸刃18の切断音を測定してその周波数分布を取得している。
(制御部50)
制御部50は、半割切断装置12、カメラ20、二次元センサ30、指向性マイク40と電気的に接続し、後述する図3,5-9、11-12の処理を行うPLCなどのコントローラである。
【0020】
[半割切断制御方法]
(半割切断制御方法の処理フロー)
図3は本発明の半割切断制御装置を用いた半割切断制御方法の処理フローである。
[ステップ1]
カメラ20で二次元コード22を読み取る。図4は送り台位置とカメラが撮影した二次元コード面積の関係を示すグラフである。送り台14の進行方向前方に取り付けたカメラ20で移動中の二次元コード22を撮影する。送り台位置0は鋸刃18による切断対象物16の切断開始位置(切断対象物16と鋸刃18が接触する位置)となり、マイナス側は送り台14に切断対象物16を載せる位置側となりプラス側は切断対象物16を切断する側となる。送り台14が前進するとともにカメラ20で撮影した二次元コード22の面積も増加するため、予め二次元コード22の面積と送り台位置の関係を取得しておく。
【0021】
二次元コード22の読み取りによって送り台14上に載置した切断対象物16の本数、長さ、直径、厚みなどの情報を取得する。この他、切断後の体積(切断体積)を算出する。
本実施形態の切断体積とは、切断対象物の長さ方向に亘って鋸刃の厚み相当で削られる体積、換言すると切断対象物を切断した断面積×鋸刃の厚みをいう。
[ステップ2]
送り台14を移動する。
送り台位置が-100のときに鋸刃18のホイルを回転する。
(送り台14の移動距離及び移動速度)
図5は送り台の移動距離及び移動速度の算出フローである。
カメラ20で二次元コード22の座標を取得する(ステップ100)。
カメラ20で撮影した画像から二次元コード22の輪郭線抽出を行い四角形の部分を検出し、この輪郭線が交差した四角の座標を取得する。
取得した座標から二次元コード22の面積を算出する(ステップ101)。
この四角の座標から4つの輪郭線の長さを算出し、二次元コード22の面積を算出する。
【0022】
二次元コード22の面積から前記図4に示す二次元コードの面積と送り台位置との関係を用いて送り台14の移動距離を算出する(ステップ102)。
所定時間(例えば5秒間)計測して送り台14の移動速度を算出する(ステップ103)。
[ステップ3]
送り台位置が0のとき(切断対象物が鋸刃と接触)送り台をゆっくりと進める低速切断を開始する。実施形態では一例として送り台の移動速度が50mm/min、切断体積が390mm3/minの切断速度である。
【0023】
(切断体積算出)
図6は切断体積の算出フローである。
送り台14を移動する(ステップ110)。
カメラ20による二次元コード22の読み取りにより、切断対象物16を識別する(ステップ111)。
指向性マイク40により、切断音を検出する(ステップ112)。なお切断音が検出されると送り台位置は切断対象物が鋸刃18に接する位置である(図4中の横軸座標の0点)。二次元コードの面積による送り台位置の算出に位置ズレが生じている場合には、ここで送り台位置の0補正を行う。
送り台14の移動距離を算出する(ステップ113)。カメラ20による二次元コード22の面積から図4の関係式を用いて移動距離を算出する。
【0024】
切断体積を算出する(ステップ114)。
切断対象物16の情報と、送り台14の移動距離から切断体積を算出する。例えば切断対象物16が配管の場合、切断体積は、配管の厚み×2×配管長さ×本数×鋸刃の厚みによって求めることができる。
[ステップ4]
所定時間(例えば4分)経過後に切断速度を増加する。送り台14の移動速度を増加し、切断速度を増加する。
【0025】
[ステップ5]
送り台の移動速度を増加して高速切断か否かの判断を行う。本実施形態では一例として送り台の移動速度が100mm/min、切断体積が3120mm3/minより高い切断速度を高速切断という。
[ステップ6]
高速切断のとき、正常切断であり切断速度を維持して切断を継続する。
[ステップ7]
切断対象物を切断しながら、算出した切断体積が切断対象物の切断が完了した切断体積に達した場合、終了する。達していない場合にはステップ6に戻って切断を継続する。
なおステップ7には記載を省略しているが、切断対象物の切断中に鋸刃メータが鋸刃交換を推奨する切断体積(切断体積の閾値)に達した場合でも鋸刃の状態を計測しつつ切断を継続するフロー(図7)が含まれており、以下説明する。
【0026】
(鋸刃交換)
図7は正常切断の鋸刃交換の処理フローである。
本実施形態の正常切断とは、後述する鋸刃切断ラインによる異常判断、鋸刃の刃の損傷検出、異常切断音の検出が見られず、単に使用する鋸刃の摩耗(損傷)のみが生じる切断のことである。
切断体積の累積値を算出する(ステップ120)。使用した鋸刃18の切断体積の累積値を求める。
切断体積の閾値か否かの判断を行う(ステップ121)。鋸刃メーカーが推奨する最大切断体積(閾値)と切断体積の累積値(実測値)を比較して、累積値が閾値を超えたか否かを判断する。超えていない場合には(NO)、切断作業を継続できる。
【0027】
切断体積の閾値を超えた場合、さらに鋸刃18の損傷率の閾値を超えたか否か判断する(ステップ122)。
本実施形態の鋸刃18の損傷率は二次元センサ30による鋸刃18の形状データ(鋸刃面積)から求めている。
(鋸刃面積算出)
図8は鋸刃面積の算出フローである。
二次元センサ30により鋸刃18の形状を計測する(ステップ130)。計測値を画像化する。
鋸刃形状の画像の二値化処理を行う(ステップ131)。鋸刃形状の画像を白と黒の2階調に変換する
【0028】
鋸刃の輪郭線を鮮明化するための画像処理の一種で、縮小処理を行い、鋸刃の輪郭線周辺のノイズを除去する(ステップ132)。
鋸刃18の各刃の面積を算出する(ステップ133)。
鋸刃18に損傷があった場合、容易に特定することができるように、鋸刃18の各刃に番号を付与する(ステップ134)。
鋸刃18の数が設定数(鋸刃18の当初刃数)と同じか否かを判断する(ステップ135)。NOの場合、全ての鋸刃18の形状データが揃っていないためステップ130に戻り鋸刃18の形状を計測する。YESの場合、鋸刃18の面積を記録して終了する。
【0029】
(鋸刃損傷率算出)
図9は鋸刃損傷率の算出フローである。
鋸刃18の刃の当初面積の合計を算出する(ステップ140)。すなわち当初鋸刃についても予めステップ130-134を行い、これに基づいて面積を求める。
同様に切断中の鋸刃18の各刃の面積を算出する(ステップ141)。
鋸刃18の刃数をカウントする(ステップ142)。鋸刃18の刃に付与した順番をカウントする。
当初と切断中の鋸刃18の刃の一つ一つの面積差を算出する。(ステップ143)。
面積差の合計を算出する(ステップ144)。
鋸刃18の損傷率を算出する(ステップ145)。鋸刃18の損傷率(%)は、面積差の合計/当初鋸刃面積の合計×100により求めることができる。
【0030】
鋸刃18の損傷率の閾値を超えたか否かの判断を行う(ステップ146)。鋸刃18の損傷率の閾値は一例として30%とする。
閾値を超えていない場合(NO)、継続使用可能な摩耗範囲と判定し、ステップ120へ戻り、切断作業を継続する(ステップ147)。
閾値を超えている場合(YES)、鋸刃18の交換作業が必要となる。その際、損傷した刃数及び位置を記録して終了する(ステップ148)。鋸刃18の交換作業が必要となる。鋸刃18の交換後は、切断体積の累積がリセットされる。
[ステップ8]
ステップ5で高速切断(本実施形態では一例として送り台の移動速度が100mm/min、切断体積が3120mm3/minより高い切断速度)に達していない場合、切断速度を増加する。
【0031】
[ステップ9]
鋸刃18の異常判定か否かの判断を行う。
本発明の異常停止の要因は、異常音が発生した場合(後述するステップ164のYES)と、鋸刃18の損傷長さが配管厚み又は直径相当となり(後述するステップ169,171のYES)、あるいは鋸刃切断ラインと標準切断ラインの角度が閾値を超えた場合(後述するステップ170のNO)である。
鋸刃位置正常は、使用中、鋸刃切断ラインの近似曲線と安全切断速度時の切断ライン(基本的に直線)が交差し、この交差した角度αが閾値以内なら、鋸刃位置正常と判断する。一方、この角度αが閾値よりも大きい場合、鋸刃切断ラインが正常位置から離れていると判断する。(ステップ170)
【0032】
(鋸刃切断ライン)
図10は鋸刃切断ラインの説明図である。図11は鋸刃切断ラインの判定処理フローである。
カメラ20による鋸刃18の切断画像を取得する(ステップ150)。
画像処理の一種で、切断画像の色補正を行い、作業環境の明暗度による切断画像の明るさ、コントラストへの影響を低減する。(ステップ151)。
RGB値が0:0:0の黒色エリアを抽出する(ステップ152)。
鋸刃切断ラインを鮮明化するための画像処理の一種で、黒色エリアの膨張・縮小処理を行い、黒色エリアのノイズを除去する(ステップ153)。
鋸刃切断ラインを鮮明化するための画像処理の一種で、細線化処理を行うため幅が大きいエリアを細い線のラインにする(ステップ154)。
【0033】
鋸刃切断ラインの形状を表す細線の始点、中点、終点座標を取得する(ステップ155)。始点、中点、終点座標により鋸刃切断ラインに近似する細線(線形近似曲線)を求める。
予め安全切断速度(鋸刃18が安全に切断できる最高速度)時の鋸刃切断ラインを求めておく(ステップ150-155)。当初鋸刃切断ラインは始点、中点、終点を結ぶ線が直線であり、これが標準鋸刃細線となる。
細線(線形近似曲線)と標準鋸刃細線との角度α、換言すると安全切断速度時の鋸刃切断ラインとその後の鋸刃切断ラインの線形近似曲線が交差した角度を算出する(ステップ156)。
【0034】
角度αが閾値を超えたか否かの判断を行う(ステップ157)。角度αの閾値は一例として10°とし、閾値を超えた場合には鋸刃18と切断対象物16の摩擦が大きくなり、鋸刃18の摩耗が早まり、割れやすくなる。
閾値を超えない場合、正常と判定する(ステップ158)。
閾値を超えた場合、鋸刃18の位置ズレと判定する(ステップ159)。この場合、切断速度を落として閾値を超えないようにする。
(部分的な連続鋸刃損傷)
図12は部分的な連続鋸刃損傷の検出処理フローである。図13は鋸刃損傷と配管の直径及び厚みの関係を示す図である。
鋸刃18の損傷した刃数及び位置を読み取る(ステップ160)。前述の鋸刃面積を求める図8の処理フローによる。
【0035】
損傷率の閾値を超えたか否かの判断を行う(ステップ161)。前述の鋸刃損傷率を求める図9の処理フローによる。
損傷率の閾値を超えていない場合(NO)、正常な摩耗となる(ステップ162)。
指向性マイク40により切断音を収録する(ステップ163)。
FFT変換した切断音の周波数成分が閾値を超えたか否かの判断を行う(ステップ164)。
【0036】
閾値を超えていない場合(NO)、正常と判断する(ステップ165)。
閾値を超えた場合(YES)、異常と判断する(ステップ166)。
損傷率の閾値を超えた場合(YES)、損傷刃間の最短距離を算出する(ステップ167)。
二次元コード22から取得した切断対象物16の厚みtと直径Tを読み出す(ステップ168)。
損傷刃の最短距離Xが切断対象物16の直径T相当か否かの判断を行う(ステップ169)。
YESの場合、鋸刃切断ラインが正常か否かの判断を行う(ステップ170)。NOの場合、異常と判断する(ステップ166)。YESの場合、切断音を収録する(ステップ163)。
【0037】
ステップ169がNOの場合、損傷刃の最短距離xが切断対象物16の厚みt相当か否か判断を行う(ステップ171)。YESの場合、鋸刃切断ラインが正常か否かの判断を行う(ステップ170)。NOの場合、切断音を収録する(ステップ163)。
異常と判定されなければ、ステップ8に戻し、鋸刃切断速度を増加する。なお、損傷刃の最短距離Xが切断対象物16の直径T相当、または切断対象物16の厚みt相当を判断した場合、鋸刃切断ラインが正常であっても、損傷刃の拡大を防止する観点から、損傷刃と損傷刃の間の切断速度を一時停止する、または減速する。
【0038】
[ステップ10]
異常音が発生した場合と、鋸刃18の損傷長さが配管厚みと同じになり、かつ鋸刃切断ラインが閾値を超えた場合、異常と判定し、鋸刃切断速度を減速する。
[ステップ11]
安全切断速度か否か判断する。安全切断速度とは、鋸刃18が安全に切断できる最高速度であり、本実施形態では一例として、送り台の移動速度が100mm/min、切断体積が3120mm3/minの切断速度である。NOの場合、ステップ10に戻り、減速する。
[ステップ12]
安全切断速度に達した場合(YES)、ステップ9と同じ異常判定を行う。
異常と判定された場合には切断を中止する。異常と判定されなければステップ6に進み切断速度、すなわち安全切断速度を維持して以降のステップを行う。
【0039】
このような本発明によれば、二次元コードの読み取りによって切断対象物に応じた切断速度(送り台の移動速度、鋸刃の回転速度)を自動制御できる。従って半割切断作業を熟練者でなくても少人数で実現できる。
鋸刃の切断面積が累積閾値を超えていても鋸刃の状態を確認して継続使用できるか判断し鋸刃を無駄なく使用できる。
鋸刃の刃の形状、鋸刃切断ライン、切断音によって鋸刃の異常を検出できる。
【0040】
(通信部)
複数の半割切断制御装置の制御部に無線式の通信部を搭載する。
(管理部)
管理部は複数の半割切断制御装置の通信部からの制御信号を受信して動作状態を監視する。各半割切断制御装置の鋸刃の利用回数、切断面積を計算して、通常は自動切断制御が可能であり、鋸刃の交換時又は異常判定時に作業員を派遣するように管理できる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 半割切断制御装置
12 半割切断装置
14 送り台
16 切断対象物
18 鋸刃
20 カメラ
22 二次元コード
30 二次元センサ
40 指向性マイク
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13