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特許7595476電力需要予測装置、及び電力需要予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電力需要予測装置、及び電力需要予測方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241129BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021016684
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119504
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 満文
(72)【発明者】
【氏名】小鍛冶 聡司
(72)【発明者】
【氏名】田邉 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】片野 英明
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135040(JP,A)
【文献】特開2017-200297(JP,A)
【文献】特開2018-057092(JP,A)
【文献】特開2018-92445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の時間帯における需要家の電力需要を予測する電力需要予測装置であって、
前記第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出する予測値算出部と、
前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得する実測値取得部と、
前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が予め定められた許容誤差閾値よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値を差し引く予測値補正部と、を備え、
前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい、
電力需要予測装置。
【請求項2】
前記第1の時間帯は、デマンドレスポンス時間帯であり、
前記予測値算出部は、前記第1の時間帯が設定される設定日よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記設定日の前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記設定日の前記第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出し、
前記実測値取得部は、前記設定日の前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得する、
請求項1に記載の電力需要予測装置。
【請求項3】
前記補正採用値は、
前記補正基準値が0以上である場合、前記補正基準値から予め決められた許容誤差逸脱抑制値を差し引いた値であり、
前記補正基準値が0未満である場合、前記補正基準値に前記許容誤差逸脱抑制値を足した値である、
請求項1又は2に記載の電力需要予測装置。
【請求項4】
前記需要家が発電可能な発電装置を備える場合、前記許容誤差閾値は前記発電装置の発電容量に基づいて決められる、
請求項3に記載の電力需要予測装置。
【請求項5】
前記許容誤差逸脱抑制値は、前記許容誤差閾値以上、且つ前記許容誤差閾値の2倍以下である、
請求項3又は4に記載の電力需要予測装置。
【請求項6】
前記許容誤差逸脱抑制値と前記許容誤差閾値とは互いに同じ値である、
請求項3から5の何れか一項に記載の電力需要予測装置。
【請求項7】
前記予測値補正部は、前記補正基準値の絶対値が前記許容誤差閾値よりも小さい場合、前記第1予測値を補正しない、
請求項1から6の何れか一項に記載の電力需要予測装置。
【請求項8】
第1の時間帯における需要家の電力需要を予測する電力需要予測方法であって、
前記第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出するステップと、
前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得するステップと、
前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が予め定められた許容誤差閾値よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値を差し引くステップと、を備え、
前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい、
電力需要予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力需要予測装置、及び電力需要予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要と供給のバランスを取るための手段として、需要家に電力需要(消費電力)の調整を働きかけるデマンドレスポンス(以下、DRとする)がある。一般的に、DRイベントに従って消費電力を調整した需要家には、インセンティブが付与される。需要家がDRイベントに従って消費電力を調整したか否かを確認するには、DR時間帯における実際の消費電力と、DRイベントが発生していない場合における需要家の電力需要の予測値とが必要となる。
【0003】
特許文献1には、DRイベントの実施日よりも過去の複数の日のうち、DRイベントの実施日と似た状況の日(例えば、気温の差が小さい日)を選択し、その選択した日の消費電力に基づいて、電力需要の予測値(ベースライン)を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6128624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、DRイベントの実施日よりも過去の日の消費電力からDRイベントの実施日の電力需要を予測しているため、DRイベントの実施日における電力需要の傾向が反映されず、電力需要の予測値は大きな誤差を含んでしまう虞がある。
【0006】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、任意の時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる電力需要予測装置、及び電力需要予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る電力需要予測装置は、第1の時間帯における需要家の電力需要を予測する電力需要予測装置であって、前記第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出する予測値算出部と、前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得する実測値取得部と、前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が予め定められた許容誤差閾値よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値を差し引く予測値補正部と、を備え、前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る電力需要予測方法は、第1の時間帯における需要家の電力需要を予測する電力需要予測方法であって、前記第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出するステップと、前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得するステップと、前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が予め定められた許容誤差閾値よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値を差し引くステップと、を備え、前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電力需要予測装置及び電力需要予測方法によれば、任意の時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る電力需要予測システムの構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】一実施形態に係る電力需要予測装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】第1予測値、第2予測値、及び補正後の第1予測値を示すグラフである。
図4】第1予測値を補正採用値で補正した場合と第1予測値を補正基準値で補正した場合を示す図である。
図5】一実施形態に係る電力需要予測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態による電力需要予測装置及び電力需要予測方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
<電力需要予測システム>
図1は、一実施形態に係る電力需要予測システム100の構成を概略的に示す概略構成図である。本開示に係る電力需要予測システム100は、デマンドレスポンス時間帯(第1の時間帯)における需要家102の電力需要を予測するためのシステムである。尚、本開示において、第1の時間帯はデマンドレスポンス時間帯に限定されない。幾つかの実施形態では、電力需要予測システム100は、デマンドレスポンス時間帯以外の任意の時間帯における需要家102の電力需要を予測する。
【0013】
デマンドレスポンス(以下、DRとする)は、電力の需要と供給のバランスを取るための手段であって、需要家102が電力需要(消費電力)の調整を行うことである。電力供給事業者は、DR時間帯における需要家102の電力需要を予測し、この予測値に基づいて、需要家102に調整してもらう消費電力量や需要家が受け取るインセンティブを算出する。電力供給事業者は、例えば、発電所などである。需要家102は、例えば、工場、商業施設、家庭などである。
【0014】
図1に例示するように、一実施形態に係る電力需要予測システム100は、通信ネットワークの1つであるインターネット101に接続可能な電力需要予測装置1を含む。電力需要予測装置1は、インターネット101を介して、需要家102に接続する。つまり、電力需要予測装置1と需要家102とは、インターネット101を介して、互いに情報のやり取りが可能となっている。尚、電力需要予測装置1と需要家102とが互いに情報のやり取りが可能であるならば、通信ネットワークはインターネット101に限定されない。
【0015】
電力需要予測装置1は、DR時間帯における需要家102の電力需要を予測する。このような電力需要予測装置1は、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。電力需要予測装置1は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、電力需要予測装置1が備える各機能部を実現する。図2を参照して、一実施形態に係る電力需要予測装置1の各機能部について説明する。
【0016】
<電力需要予測装置の構成>
図2は、一実施形態に係る電力需要予測装置1の概略的な機能ブロック図である。図3は、第1予測値50、第2予測値52、及び補正後の第1予測値54を示すグラフであって、横軸を時刻とし、縦軸を電力としている。
【0017】
図2に示すように、電力需要予測装置1は、予測値算出部2と、実測値取得部4と、予測値補正部6と、を備える。
【0018】
予測値算出部2は、第1予測値50及び第2予測値52を算出する。第1予測値50は、DR時間帯における需要家102の電力需要の予測値であり、DR時間帯が設定される設定日よりも過去に需要家102が消費した消費電力(以下、過去消費電力51とする)に基づいて算出される。第2予測値52は、設定日のDR時間帯より前の所定の時間帯(第2の時間帯)における需要家102の電力需要の予測値であり、第1予測値50と同様に、過去消費電力51に基づいて算出される。このように、第1予測値50及び第2予測値52は、過去消費電力51に基づいて算出されるようになっている。尚、過去消費電力51は、DR時間帯が設定される設定日よりも過去であることに限定されない、DR時間帯よりも過去であればよい。
【0019】
尚、図2に例示する形態では、予測値算出部2は、電力需要予測装置1の外部から過去消費電力51を取得しているが、本開示はこの実施形態に限定されない。例えば、過去消費電力51は電力需要予測装置1のメモリに予め記憶されており、予測値算出部2はメモリから過去消費電力51を取得してもよい。
【0020】
図3を参照して、第1予測値50及び第2予測値52について説明する。図3において、第1予測値50及び第2予測値52の両方は実線で図示されている。実線のうち時刻A1から時刻A2までの時間帯に含まれる部分が第1予測値50であり、時刻A3から時刻A4までの時間帯に含まれる部分が第2予測値52である。つまり、本実施形態において、DR時間帯は時刻A1から時刻A2までの時間帯であり、所定の時間帯は時刻A3から時刻A4までの時間帯である。
【0021】
幾つかの実施形態では、所定の時間帯はDR時間帯の直前に設定され、例えば、時刻A3(所定の時間帯の開始時刻)は時刻A1(デマンドレスポンスの開始時刻)の5時間前から時刻A1の間に設定される。このような構成によれば、DR時間帯に対する所定の時間帯のずれが小さくなるので、DR時間帯及び所定の時間帯における温度や天候などの需要家102の消費電力を増減させる条件の違いを小さくできる。
【0022】
ここで、第1予測値50及び第2予測値52を算出する方法の一例について説明する。本開示では、「High X of Y」と呼ばれる手法について説明する。この場合、過去消費電力51とは、設定日直前のY日分の需要家102の消費電力である。
【0023】
一実施形態では、予測値算出部2は、1時間単位(例えば、0時から1時までの間)で設定日直前の5日間(Y=5)のうち消費電力の多い4日間(X=4)を選択し、この4日間の0時から1時までの消費電力の平均値を算出し、この算出された平均値を設定日の0時から1時までの予測値(ベースライン)とする。同様の方法で、少なくともDR時間帯及び所定の時間帯を含む各時間帯の平均値を算出する。尚、平均値の算出は、需要家102ごとに行われてもよいし、複数の需要家102についてまとめて行われてもよい。
【0024】
実測値取得部4は、設定日の所定の時間帯に需要家102が消費する消費電力の実測値56b(56)を取得する。例えば、実測値取得部4は、需要家102の消費電力を計測する計測器から実測値56をリアルタイムで受信する。図3において、実測値56は、一点鎖線で図示されている。以下では、説明のため、DR時間帯における実測値56を実測値56a(56)、所定の時間帯における実測値56を実測値56b(56)とする。
【0025】
予測値補正部6は、第2予測値52から実測値56bを差し引いた補正基準値57の絶対値が予め定められ、正の数である許容誤差閾値53よりも大きい場合、第1予測値50から補正採用値59を差し引き、第1予測値50を補正する。そして、補正採用値59の絶対値は、補正基準値57の絶対値より小さい。図3において、補正後の第1予測値54は、第1予測値50や第2予測値52を示す実線より太い太線で図示されている。一方で、本実施形態では、予測値補正部6は、補正基準値57の絶対値が許容誤差閾値53よりも小さい場合、第1予測値50を補正しない。
【0026】
許容誤差閾値53について説明する。許容誤差閾値53は、実測値56に対して予測値が十分な精度を有しているか否かを決めるために予め定められている値である。幾つかの実施形態では、需要家102が発電可能な発電装置を備える場合、許容誤差閾値53は、発電装置の発電容量に基づいて決められる。例えば、許容誤差閾値53は、定格運転時における発電装置の発電容量の上限誤差から下限誤差を差し引いた値(例えば、200kw)である。このような構成によれば、発電装置の発電容量は予め決まっているので、許容誤差閾値53を簡単に決めることができる。
【0027】
図3に例示する形態では、補正基準値57が0以上(第2予測値52>実測値56b)であるので、第1予測値50から補正採用値59を差し引き、補正後の第1予測値54を算出している。補正採用値59は補正基準値57から予め決められた許容誤差逸脱抑制値55を差し引いた値である。許容誤差逸脱抑制値55は、補正基準値57の大きさ(絶対値)を抑制するための値である。不図示であるが、本実施形態において、補正基準値57が0未満(第2予測値52<実測値56b)である場合には、補正採用値59は補正基準値57に許容誤差逸脱抑制値55を足した値である。
【0028】
<電力需要予測装置の作用・効果>
第1予測値50及び第2予測値52は、過去消費電力51に基づいて同様の手法で算出される。このため、第2予測値52(所定の時間帯における需要家102の電力需要の予測値)が、実測値56b(所定の時間帯における需要家102の電力需要の実測値)と大きくずれていると、第1予測値50も、DRイベントが発生していない場合における電力需要の実測値56a(DR時間帯における需要家102の電力需要の実測値)と大きくずれている虞がある。
【0029】
これに対して、本実施形態によれば、予測値補正部6は、補正基準値57の絶対値が許容誤差閾値53よりも大きい場合、第1予測値50から補正採用値59を差し引くことで、第1予測値50を補正する。そして、補正採用値59の絶対値は、補正基準値57の絶対値より小さい。このため、補正後の第1予測値54が第2予測値52と同様に実測値56に対して大きくずれてしまうことを抑制し、DR時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0030】
電力需要予測装置1の作用・効果について、より具体的に説明する。図4は、第1予測値50を補正採用値59で補正した場合と第1予測値50を補正基準値57で補正した場合を示す図である。本実施形態によれば、補正基準値57(第2予測値52と実測値56bとの乖離分)の絶対値が許容誤差閾値53より大きい場合には第1予測値50から補正基準値57を差し引く補正ではなく、第1予測値50から補正採用値59を差し引く補正を行っている。つまり、実測値56bに対する第2予測値52の精度が低い場合には、実測値56aに対する第1予測値50の精度も十分でなく、第1予測値50を補正している。ここで、図4に示すように、第1予測値50を補正基準値57で補正すると、補正基準値57の絶対値が大き過ぎるため、実測値56aに対する補正基準値57で補正した第1予測値61の予測精度は低い場合がある。これに対して、本実施形態では、第1予測値50の補正に補正基準値57を採用するのではなく、補正基準値57よりも絶対値が小さい補正採用値59を採用することで、予測精度の高い補正後の第1予測値54を得ることができる。
【0031】
一方で、本実施形態によれば、補正基準値57の絶対値が許容誤差閾値53より小さい場合には補正しない。つまり、実測値56bに対する第2予測値52の予測精度が高い場合には、実測値56aに対する第1予測値50の予測精度も十分に高い可能性が大きい。よって、予測精度の高い第1予測値50を得ることができる。
【0032】
本実施形態によれば、補正採用値59は、補正基準値57が0以上である場合、補正基準値57から許容誤差逸脱抑制値55を差し引いた値であり、補正基準値57が0未満である場合、補正基準値57に許容誤差逸脱抑制値55を足した値である。このため、第2予測値52が実測値56bよりも小さい場合、及び第2予測値52が実測値56bよりも大きい場合の両方において、第1予測値50の予測精度を向上させることができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、許容誤差逸脱抑制値55は、許容誤差閾値53以上、且つ許容誤差閾値の2倍以下である。第1予測値50の補正は第1予測値50から補正採用値59(=補正基準値57-許容誤差逸脱抑制値55)を差し引くことであるため、許容誤差逸脱抑制値55を許容誤差閾値53以上とすることで、補正後の第1予測値54をより実測値56aに近づけることができる。一方で、許容誤差逸脱抑制値55が大きくなりすぎると、補正後の第1予測値54が実測値56aから遠ざかる。このため、許容誤差逸脱抑制値55を許容誤差閾値53の2倍以下とするとことで、補正後の第1予測値54の予測精度を一定以上に確保することができる。幾つかの実施形態では、許容誤差逸脱抑制値55と許容誤差閾値53とは互いに同じ値である。このような構成によれば、補正後の第1予測値54の予測精度を一定以上に確保することができる。
【0034】
<電力需要予測方法>
図5は、一実施形態に係る電力需要予測方法のフローチャートである。図5に例示するように、電力需要予測方法は、算出ステップS1と、取得ステップS2と、補正ステップS3と、を備える。
【0035】
算出ステップS1は、過去消費電力51に基づいて、第1予測値50及び第2予測値52を算出する。取得ステップS2は、設定日の所定の時間帯に需要家102が消費する消費電力の実測値56bを取得する。補正ステップS3は、第2予測値52から実測値56bを差し引いた補正基準値57の絶対値が許容誤差閾値53よりも大きい場合、第1予測値50から補正採用値59を差し引く。そして、この電力需要予測方法において、補正採用値59の絶対値は、補正基準値57の絶対値より小さい。
【0036】
このような電力需要予測方法によれば、補正後の第1予測値54が第2予測値52と同様に実測値56に対して大きくずれてしまうことを抑制し、DR時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0037】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
[1]本開示に係る電力需要予測装置(1)は、第1の時間帯における需要家(102)の電力需要を予測する電力需要予測装置であって、第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力(51)に基づいて、第1の時間帯における電力需要の第1予測値(50)、及び第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値(52)を算出する予測値算出部(2)と、前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値(56b)を取得する実測値取得部(4)と、前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値(57)の絶対値が予め定められた許容誤差閾値(53)よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値(59)を差し引く予測値補正部(6)と、を備え、前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい。
【0039】
電力需要の第1予測値及び電力需要の第2予測値は、第1の時間帯よりも過去に需要家が消費した消費電力に基づいて同様の手法で算出される。このため、電力需要の第2予測値が電力需要の実測値と大きくずれていると、電量需要の第1予測値も電力需要の実測値と大きくずれている虞がある。これに対して、上記[1]に記載の構成によれば、予測値補正部は、補正基準値の絶対値が許容誤差閾値よりも大きい場合、第1予測値から補正採用値を差し引く。そして、この補正採用値の絶対値は、補正基準値の絶対値より小さい。このため、補正後の第1予測値が第2予測値と同様に大きくずれてしまうことを抑制し、任意の時間帯(第1の時間帯)における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0040】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、前記第1の時間帯は、デマンドレスポンス時間帯であり、前記予測値算出部は、前記第1の時間帯が設定される設定日よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記設定日の前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記設定日の前記第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出し、前記実測値取得部は、前記設定日の第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得する。
【0041】
上記[2]に記載の構成によれば、デマンドレスポンス時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0042】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、前記補正採用値は、前記補正基準値が0以上である場合、前記補正基準値から予め決められた許容誤差逸脱抑制値(55)を差し引いた値であり、前記補正基準値が0未満である場合、前記補正基準値に前記許容誤差逸脱抑制値を足した値である。
【0043】
上記[3]に記載の構成によれば、第2予測値が実測値よりも小さい場合、及び第2予測値が実測値よりも大きい場合の両方において、DR時間帯における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0044】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の構成において、前記予測対象が発電可能な発電装置を備える場合、前記許容誤差閾値は前記発電装置の発電容量に基づいて決められる。
【0045】
上記[4]に記載の構成によれば、発電装置の発電容量は予め決まっているので、許容誤差閾値を簡単に決めることができる。
【0046】
[5]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]に記載の構成において、前記許容誤差逸脱抑制値は、前記許容誤差閾値以上、且つ前記許容誤差閾値の2倍以下である。
【0047】
上記[5]に記載の構成によれば、第1予測値の補正は第1予測値から補正採用値(=補正基準値-許容誤差逸脱抑制値)を差し引くことであるため、許容誤差逸脱抑制値を許容誤差閾値以上とすることで、補正後の第1予測値の予測精度を高めることができる。一方で、許容誤差逸脱抑制値が大きくなりすぎると、補正後の第1予測値が実測値から遠ざかる。このため、許容誤差逸脱抑制値を許容誤差閾値の2倍以下とするとことで、補正後の第1予測値の予測精度を一定以上に確保することができる。
【0048】
[6]幾つかの実施形態では、上記[3]から[5]の何れか1つに記載の構成において、前記許容誤差逸脱抑制値と前記許容誤差閾値とは互いに同じ値である。
【0049】
上記[6]に記載の構成によれば、補正後の第1予測値の予測精度を一定以上に確保することができる。
【0050】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、前記予測値補正部は、前記補正基準値の絶対値が前記許容誤差閾値よりも小さい場合、前記第1予測値を補正しない。
【0051】
第2予測値の予測精度が高い場合には、第1予測値の予測精度も十分に高い可能性が大きい。上記[7]に記載の構成によれば、補正基準値の絶対値(第2予測値-実測値)が許容誤差閾値よりも小さい場合には、第1予測値を補正しないので、予測精度の高い第1予測値を得ることができる。
【0052】
[8]本開示に係る電力需要予測方法は、第1の時間帯における需要家の電力需要を予測する電力需要予測方法であって、前記第1の時間帯よりも過去に前記需要家が消費した消費電力に基づいて、前記第1の時間帯における電力需要の第1予測値、及び前記第1の時間帯より前の第2の時間帯における電力需要の第2予測値を算出するステップ(S1)と、前記第2の時間帯に前記需要家が消費する消費電力の実測値を取得するステップ(S2)と、前記第2予測値から前記実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が予め定められた許容誤差閾値よりも大きい場合、前記第1予測値から補正採用値を差し引くステップ(S3)と、を備え、前記補正採用値の絶対値は、前記補正基準値の絶対値より小さい。
【0053】
上記[8]に記載の方法によれば、第2予測値から実測値を差し引いた補正基準値の絶対値が許容誤差閾値よりも大きい場合、第1予測値から補正採用値を差し引く。そして、この補正採用値の絶対値は、補正基準値の絶対値より小さい。このため、第1予測値が第2予測値と同様に大きくずれてしまうことを抑制し、任意の時間帯(第1の時間帯)における電力需要の予測精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電力需要予測装置
2 予測値算出部
4 実測値取得部
6 予測値補正部
50 第1予測値
51 過去消費電力
52 第2予測値
53 許容誤差閾値
54 補正後の第1予測値
55 許容誤差逸脱抑制値
56 実測値
56a DR時間帯の実測値
56b 所定の時間帯の実測値
57 補正基準値
59 補正採用値
100 電力需要予測システム
101 インターネット
102 需要家

S1 算出ステップ
S2 取得ステップ
S3 補正ステップ
図1
図2
図3
図4
図5