(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20241129BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20241129BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20241129BHJP
【FI】
G02B7/00 F
B23K1/00 330Z
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2021020296
(22)【出願日】2021-02-11
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 孝樹
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-094043(JP,A)
【文献】特開2006-288423(JP,A)
【文献】特開2006-258919(JP,A)
【文献】特開2008-129133(JP,A)
【文献】特開2000-031444(JP,A)
【文献】特開2005-275349(JP,A)
【文献】特開2016-214661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00 - 7/24
B23K 1/00 - 3/08
B23K 33/00
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と第2の部品とが接合材によって接合された接合体の製造方法であって、
前記第1の部品は前記接合材との接合面に先端部から幅方向の寸法が外側に向かって段階的に広く形成された先端外側面部を備え、前記第1の部品における前記先端外側面部上に前記接合材となる接合部材を載置する工程と、
前記第1の部品は前記接合面の前記先端部に凹部を備え、前記第1の部品の前記凹部に前記第2の部品が収容されるように、前記第1の部品上に前記第2の部品を載置する工程と、
前記接合部材を溶融し、溶融された前記接合部材は、前記先端
外側面部に濡れ上がりながら、前記凹部と前記第2の部品との間に形成された隙間に充填され、固化して前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する工程と、を備えたことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の部品における前記先端外側面部は、少なくとも一つの段差部を備えることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の部品における前記先端外側面部は、傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つ以上の部材を部材間に配置した接合材によって接合する技術が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1の光学ユニットでは、筒状の枠に光学部材を収容してはんだ接合することにより、筒状の枠と光学部材とを接合している。
【0004】
この光学ユニットは、筒状の枠と円柱状の光学部材とを用いており、筒状の枠の一端側には、他端側より内径が増大されている凹部が形成されている。光学部材を筒状の枠に接合する際には、筒状の枠に形成された凹部が上を向くように立置し、筒状の枠の凹部へと光学部材を収容する。この際、凹部の内面と光学部材の外周面との間に隙間が形成される。この隙間の上部開口を覆うように、半田材料によって形成されている円環状の接合材を筒状の枠の環状面に載置する。このとき、筒状の枠の凹部に収容されている光学部材の先端面は、筒状の枠の環状面より所定量突出しており、枠の環状面に載置された円環状の接合材は枠から突出した光学部材の外周面と所定の隙間をもってその内周面が対向するよう挿入されている。
【0005】
そして、治具によって光学部材に負荷を与えて筒状の枠の凹部の環状底面に光学部材を押圧し、この状態で光学部材、筒状の枠及び接合材を加熱炉内に投入する。接合材が加熱炉内で加熱されると接合材は溶融し、溶融した半田材料の所定量の半田材料は隙間に充填され、残りの半田材料は筒状の枠の環状面に滞留する。この後、接合材を冷却固化することにより、光学部材と筒状の枠とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2つの部材を接合材によって接合する際に、接合材を一方の部材上に載置した状態で加熱炉へ投入した場合、接合材が加熱されることによって、接合材が収縮しながら部材上を移動して光学部材の上に乗り上げることがある。例えば特許文献1記載の光学部材と枠との接合においては、光学部材の先端面が枠の環状面より所定量突出しており、環状の接合材の内周を光学部材の突出部位に挿入した上で枠の環状面上に接合材を載置するため、光学部材の突出部位が収縮した接合材の動きを規制し、接合材は光学部材の上に乗り上げないが、接合材が載置される枠の先端面より光学部材が突出しておらず収縮した接合材の乗り上げを規制するものがない場合、収縮した接合材は光学部材の上に乗り上げてしまう。接合材が光学部材の上に乗り上げた状態で接合材を溶融し各部材と接合すると、接合体の接合位置のずれや、接合強度の不足、複数の接合体を製造した際の各接合体間の接合材外観形状の相違等が発生し、接合体の信頼性が損なわれることが課題であった。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、2つ以上の部材を接合材により接合した接合体において、接合部の信頼性を確保できる接合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の部品と第2の部品とが接合材によって接合された接合体の製造方法であって、前記第1の部品は前記接合材との接合面に先端部から幅方向の寸法が外側に向かって段階的に広く形成された先端外側面部を備え、前記第1の部品における前記先端外側面部上に前記接合材となる接合部材を載置する工程と、前記第1の部品上に前記第2の部品を載置する工程と、前記接合部材を溶融、固化して前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する工程とを備えた接合体の製造方法とする。前記第1の部品における前記先端外側面部は、少なくとも一つの段差部を備える。前記第1の部品における前記先端外側面部は、傾斜面である。また、前記第1の部品は前記接合面の前記先端部に凹部を備えた筒状であり、前記第2の部品は円柱状であり、前記第2の部品は前記第1の部品の凹部に収容される。さらに、前記接合部材を溶融させて前記凹部の内面と前記第2の部品の外周面との間に充填することで前記第1の部品と前記第2の部品とを接合する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接合体の製造方法によれば、2つ以上の部材を接合材により接合した接合体において、接合部の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の接合体の一実施例を示す図であり、(a)は接合体の平面図であり、(b)は(a)のA-Aの断面図である。
【
図2】閉塞部材を示す図であり、(a)は閉塞部材の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図3】枠体を示す図であり、(a)は枠体の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図5】接合部材を示す図であり、(a)は接合部材の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。また図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
図1は、本発明の接合体の一実施例を示す図であり、(a)は接合体の平面図であり、(b)は(a)のA-Aの断面図である。接合体10は、筒状の枠体12(第1の部品12)と、枠体12の一端に接合材13を介して取り付けられた円柱状の閉塞部材11(第2の部品11)とを備える。
【0013】
図2は、閉塞部材を示す図であり、(a)は閉塞部材の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。閉塞部材11は、例えば、ガラスや水晶などからなる透光性部材からなる円柱状の部材である。図示しないが閉塞部材11の外周面(側面)には接合材13の濡れ性を向上するための金属膜が形成されている。金属膜は、下地層にNi膜、表面層にAu膜の積層膜により構成されている。金属膜はNi膜とAu膜との積層膜に限らず、閉塞部材11や接合材13との密着性を考慮して適宜選択することができる。なお、本実施例において、閉塞部材11の外径は5mm、高さは1mmである。
【0014】
図3は枠体を示す図であり、(a)は枠体の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。枠体12は筒状であり、例えば、ステンレス製部材からなる。枠体12は、中心軸に沿って貫通孔12bを有し、枠体12の一端側の先端部である環状先端面12aに、貫通孔12bの直径より大きな直径を有し、貫通孔12bと同軸に形成された凹部12cを備える。また、環状先端面12aをレーザやサンドブラストなどで加工し、環状先端面12aの幅方向(枠体12の中心軸と直交する方向)の寸法が外側に向かって段階的に広く形成された先端外側面部を形成している。ここでの先端外側面部は、環状先端面12aの幅方向に形成された二つの段差部からなる。また、図示しないが枠体12の凹部12cの内面、環状先端面12a及び段差部には、接合材13との濡れ性を向上するための金属膜が形成されている。金属膜は、下地層にNi膜、表面層にAu膜の積層膜により構成されている。金属膜はNi膜とAu膜との積層膜に限らず、閉塞部材11や接合材13との密着性を考慮して適宜選択することができる。なお、本実施例において、枠体12の外径は6mm、高さは12mmであり、凹部12cの内径は5.2mm、高さは1mm、貫通孔12bの内径は4mmであり、環状先端面12aの片側の幅方向に形成された二つの段差部の幅寸法はそれぞれ略0.1mmであり、段差部と段差部との間の高さは略0.2mmである。
【0015】
接合体10は、枠体12の凹部12cに閉塞部材11が収容され、閉塞部材11と枠体12とが接合材13により接合されている。接合材13は、AuSnはんだであり、閉塞部材11の外周面に形成された金属膜と、枠体12の凹部12cの内面、環状先端面12a及び段差部に形成された金属膜とに濡れ広がり、また、それぞれの金属膜間に架橋し、閉塞部材11と枠体12との接合部において接合部を挟んで一方の側より大気成分の侵入がない、つまりリークが生じないよう閉塞部材11と枠体12とを接合している。
【0016】
次に、前述した接合体10の製造方法について説明する。
図4は、本発明の接合体の製造方法を示す模式図である。接合体10は、以下の工程により製造される。
【0017】
[枠体載置工程:
図4(a)]
まず、枠体12の外形に対応する収容部14aを備えたトレイ14を準備し、枠体12を凹部12cが上を向くように収容部14a内に立置する。
【0018】
[閉塞部材載置工程:
図4(b)]
次に、閉塞部材11を枠体12の凹部12cへ載置する。このとき閉塞部材11の外径が凹部12cの内径より小さいことから、閉塞部材11は閉塞部材11の外周面と凹部12cの内面との間に所定の隙間が形成された状態で、凹部12c内に収容される。
【0019】
[接合部材載置工程:
図4(c)]
次に、接合部材13aを枠体12の環状先端面12aの段差部上に載置する。
図5は接合部材を示す図であり、(a)は接合部材の平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。接合部材13aは、円環状のAuSnはんだ材であり、その内径と外径及び厚みは枠体12の環状先端面12aに形成された段差部と同一であり、円環状の接合部材13aの内径は略5.8mm、外径は6mmである。また、厚みは略0.2mmである。なお、この実施例では接合部材13aは最も外側の段差部に載置している。また、先端外側面部が傾斜面の場合は傾斜面の最も外側に接合部材13aが載置される。
【0020】
[接合工程:
図4(d)]
次に、枠体12、閉塞部材11及び接合部材13aを搭載したトレイ14を加熱炉に搬送、投入して接合部材13aを溶融し、その後、溶融した接合部材13aを冷却固化することで閉塞部材11と枠体12とを接合する。加熱炉内に投入された各部材は、例えば、大気雰囲気、窒素雰囲気下、真空雰囲気下において、接合部材13aの融点以上の温度で加熱され、溶融された接合部材13aは、最下段にあるため、上方向にある段差部へ濡れ上がりながら環状先端面12aに形成された金属膜及び閉塞部材11に形成された金属膜上に濡れ広がる。溶融した接合部材13aの所定量は、凹部12cの内面と閉塞部材11の外周面との間に形成された隙間に充填される。また、この隙間に充填されない残りの接合部材13aは、環状先端面12aの表面に滞留する。この後、溶融された接合部材13aを冷却固化することで、接合部材13aは接合材13となり閉塞部材11と枠体12とを接合し
図1に示す接合体10が得られる。なお、先端外側面部が傾斜面の場合も前述した作用が働く。すなわち、傾斜面の最も外側に載置された接合部材13aが溶融すると、溶融された接合部材13aは傾斜面を濡れ上がりながら環状先端面12aに形成された金属膜及び閉塞部材11に形成された金属膜上に濡れ広がる。溶融した接合部材13aの所定量は、凹部12cの内面と閉塞部材11の外周面との間に形成された隙間に充填される。また、この隙間に充填されない残りの接合部材13aは、環状先端面12aの表面に滞留する。この後、溶融された接合部材13aを冷却固化することで、接合部材13aは接合材13となり閉塞部材11と枠体12とを接合し
図1に示す接合体10が得られる。
【0021】
この工程において、枠体12、閉塞部材11及び接合部材13aを搭載したトレイ14を加熱炉に投入すると、接合部材13aが加熱されることによって、接合部材13aが収縮してしまう。しかし、本実施例では接合部材13aは段差部に載置される。言い換えれば、接合部材13aは、閉塞部材11の外径よりも外側に載置され、さらに凹部12cと接していない閉塞部材11の主面より低い位置に載置されるため、接合部材13aが加熱されることによって、接合部材13aが収縮しても環状先端面12aに形成された段差部があるため閉塞部材11の上に乗りあがることを抑制できる。その結果、接合体の接合位置ずれや、接合強度の不足、複数の接合体を製造した際の各接合体間の接合材外観形状の相違等を抑制し、信頼性の高い接合体を提供することができる。
【0022】
以上、本発明の接合体の製造方法について、実施例に基づき説明してきたが、本発明の範囲は前述の実施例に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、接合材13、接合部材13aをAuSnはんだとしたが、AuSnはんだに限定されずAgSnはんだ等その他のろう材を用いても構わない。また、接合体10の一例として、閉塞部材11と枠体12とを接合した例を示したが、本発明の接合体は閉塞部材11と枠体12との接合に限らず、接合材を介して2つ以上の部材を接合したあらゆる接合体に適用することができる。また、接合体の製造方法の一例では、環状先端面12aに形成される先端外側面部を段差部としたが、先端外側面部を傾斜面としても構わない。さらに、段差部と傾斜面からなる先端外側面部としても構わない。第1の部品が、例えば、角柱の場合は先端外側面部を枠体の先端部から幅方向の寸法が外側に向かって段階的に広くなるように形成しても構わない。また、枠体の先端部から幅方向の外側に向かって傾斜する先端外側面部としても構わない。接合部材載置工程と閉塞部材搭載工程とを順に行った例を示したが、例えば閉塞部材搭載工程の後に接合部材載置工程を行ってもよい。接合部材13aを最も外側の段差部に載置する例を示したが、例えばそれぞれの段差部(二つの段差部)に、接合部材13aを載置しても構わない。また、段差部と段差部との間の高さと接合部材13aの厚みを同一にした例を示したが、例えば段差部と段差部との間の高さより接合部材13aの厚みを厚くしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10 接合体
11 閉塞部材
12 枠体
12a 環状先端面
12b 貫通孔
12c 凹部
13 接合材
13a 接合部材