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特許7595479フレキシブル表示パネル及びフレキシブル表示パネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】フレキシブル表示パネル及びフレキシブル表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20241129BHJP
   B08B 5/02 20060101ALI20241129BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241129BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20241129BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241129BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
G09F9/30 310
B08B5/02 Z
B23K26/00 G
B23K26/38 Z
G09F9/00 338
G09F9/30 308Z
G09F9/30 365
H10K59/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021023291
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125610
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】野田 真
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00ー9/46
B08B 5/02
B23K 26/00ー26/70
H05B 33/00ー33/28
44/00
45/60
H10K 50/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示を行うための表示部と前記表示部の周囲の端子部とを備えるフレキシブル表示パネルであって、
前記表示部及び前記端子部のそれぞれは、第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有し樹脂を含むフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の前記第一主面上に形成される配線層と、前記フレキシブル基板及び前記配線層の間に設けられる無機絶縁層とを含んで構成されており、
前記端子部は、前記第二主面側から前記第一主面側に向かうにつれ、前記表示部側に傾斜する傾斜面を有し、
前記フレキシブル表示パネルの平面視における前記傾斜面の幅は、13.1μm以上である
フレキシブル表示パネル。
【請求項2】
前記傾斜面の前記幅は、14.6μm以上である
請求項1に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項3】
前記傾斜面の前記幅は、46.7μm以下である
請求項1又は2に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項4】
前記第二主面と前記傾斜面とのなす角度は、86度以下である
請求項1~3のいずれか1項に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項5】
前記フレキシブル基板の前記第二主面側において、前記フレキシブル表示パネルの前記表示部及び前記端子部を覆う保護層を備え、
前記傾斜面は、前記保護層も含んで形成される
請求項1~4のいずれか1項に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項6】
前記フレキシブル表示パネルは、有機ELパネルである
請求項1~5のいずれか1項に記載のフレキシブル表示パネル。
【請求項7】
表示を行うための表示部と前記表示部の周囲の端子部とを備えるフレキシブル表示パネルの製造方法であって、
前記表示部及び前記端子部のそれぞれは、第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有し樹脂を含むフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の前記第一主面上に形成される配線層と、前記フレキシブル基板及び前記配線層の間に設けられる無機絶縁層とを含んで構成されており、
前記端子部を、前記第二主面側から前記第一主面側に向かうにつれ前記表示部側に傾斜するようにレーザによりカットするカット工程と、
前記カット工程により形成された傾斜面をドライ洗浄する洗浄工程とを含み、
前記カット工程により形成された前記傾斜面の、前記フレキシブル表示パネルの平面視における幅は、13.1μm以上である
フレキシブル表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記カット工程では、前記端子部の表面が前記レーザの焦点位置からずれたデフォーカ
ス位置に配置された状態で、前記レーザによりカットする
請求項7に記載のフレキシブル表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記レーザの出力は、3W以上10W以下であり、かつ、前記焦点位置と前記表面との距離は、前記表面を基準とし前記第二主面側に0mm以上2.0mm以下の距離である
請求項8に記載のフレキシブル表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記洗浄工程では、微粒子を含む洗浄ガスを前記傾斜面に吹き付けることにより行われる
請求項7~9のいずれか1項に記載のフレキシブル表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記微粒子は、ドライアイススノーであり、
前記洗浄ガスは、炭酸ガスを含む
請求項10に記載のフレキシブル表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブル表示パネル及びフレキシブル表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板にフレキシブル基板を用いたフレキシブル表示パネルの開発が行われている。フレキシブル表示パネルは、製造時に、メカ刃を搭載したスクライブ装置、又は、レーザ装置(レーザ加工装置)を用いて端子部等の加工が行われる(特許文献1参照)。加工は、例えば、カットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-71968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブル表示パネルでは、カット時の応力を低減してクラック(例えば、端子部のクラック)を抑制するために、スクライブ装置ではなくレーザ装置によるレーザカット加工が行われることがある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のレーザ装置では、カット端面に炭化物が残ることがある。
【0006】
そこで、本開示は、レーザカットが行われた場合にカット端面に炭化物が残ることを抑制することができるフレキシブル表示パネル及びフレキシブル表示パネルの製造方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るフレキシブル表示パネルは、表示を行うための表示部と前記表示部の周囲の端子部とを備えるフレキシブル表示パネルであって、前記表示部及び前記端子部のそれぞれは、第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有し樹脂を含むフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の前記第一主面上に形成される配線層とを含んで構成されており、前記端子部は、前記第二主面側から前記第一主面側に向かうにつれ、前記表示部側に傾斜する傾斜面を有し、前記フレキシブル表示パネルの平面視における前記傾斜面の幅は、13.1μm以上である。
【0008】
本開示の一態様に係るフレキシブル表示パネルの製造方法は、表示を行うための表示部と前記表示部の周囲の端子部とを備えるフレキシブル表示パネルの製造方法であって、前記表示部及び前記端子部のそれぞれは、第一主面及び前記第一主面と反対側の第二主面を有し樹脂を含むフレキシブル基板と、前記フレキシブル基板の前記第一主面上に形成される配線層とを含んで構成されており、前記端子部を、前記第二主面側から前記第一主面側に向かうにつれ前記表示部側に傾斜するようにレーザによりカットするカット工程と、前記カット工程により形成された傾斜面をドライ洗浄する洗浄工程とを含み、前記カット工程により形成された前記傾斜面の、前記フレキシブル表示パネルの平面視における幅は、13.1μm以上である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係るフレキシブル表示パネル等によれば、レーザカットが行われた場合にカット端面に炭化物が残ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るフレキシブル表示パネルの外観を示す側面図である。
図2図2は、実施の形態に係るフレキシブル表示パネルを製造する製造システムの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、実施の形態に係るフレキシブル表示パネルの製造方法を示すフローチャートである。
図4図4は、実施の形態に係るカット工程を示す模式図である。
図5図5は、実施の形態に係る端子部を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係るカット加工後のカット面を示す模式図である。
図7図7は、実施の形態に係る洗浄工程を示す模式図である。
図8図8は、実施の形態に係るテーパ角85度のときの端子間抵抗の測定結果を示す図である。
図9図9は、比較例に係るテーパ角88度のときの端子間抵抗の測定結果を示す図である。
図10図10は、実施の形態に係るレーザ条件と端子状態との関係を示す図である。
図11図11は、実施の形態に係るレーザ条件及びフォーカスと端子間抵抗との関係とを示す図である。
図12図12は、実施の形態に係る後退幅と抵抗値判定結果との検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ(工程)及びステップ(工程)の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
また、本明細書において、平行、等しいなどの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。また、一定などの表現も用いているが、実質的に一定な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0014】
また、本明細書および図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、Z軸方向をフレキシブル表示パネルの各構成要素の積層方向としている。また、Y軸方向を端子部の延在方向としている。また、本明細書において、「平面視」とは、Z軸方向から見ることを意味し、「側面視」とはX軸方向から見ることを意味する。
【0015】
(実施の形態)
[1.フレキシブル表示パネルの構成]
まずは、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネルの構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1の外観を示す側面図である。
【0016】
図1に示すように、フレキシブル表示パネル1は、フレキシブル基板10と、配線層20と、第一保護層30と、第二保護層40とを備える。フレキシブル表示パネル1は、第二保護層40、フレキシブル基板10、配線層20及び第一保護層30がこの順に積層されて構成される。なお、図1では、発光層等は、図示を省略している。
【0017】
フレキシブル表示パネル1は、屈曲可能な薄型ディスプレイであり、例えば、フレキシブル有機EL(Electro Luminescence)パネルであるが、これに限定されない。フレキシブル表示パネル1は、例えば、アクティブマトリクス型の表示パネルである。フレキシブル表示パネル1は、マトリクス状に配置された複数の画素を有し、回路基板モジュールによって複数の画素の発光が制御される。フレキシブル表示パネル1の平面視形状は、例えば、矩形状であるがこれに限定されない。
【0018】
フレキシブル表示パネル1は、表示を行うための表示部60(画素部)と表示部60の周囲の端子部50(配線部)とを備える。端子部50は、表示部60から引き出された電源配線及び信号配線(データ線及び走査線)が密集した部分であり、例えば、フレキシブル表示パネル1の外部の回路基板モジュールとの電気的な接続に用いられる。端子部50は、表示部60の周囲に形成される。端子部50では、配線(例えば、図5に示す配線21を参照)が露出している。表示部60は、複数の画素を有する。表示部60は、赤色(R)に発光する画素、緑色(G)に発光する画素、及び青色(B)に発光する画素(画素回路)を複数備え、複数の画素は、マトリクス状に配置されている。画素は、TFT(Thin Film Transistor)を有する画素回路を含む。表示部60は、画素に駆動電流を供給する電源配線と、画素の行方向に対応する信号配線である走査線と、画素の列方向に対応する信号配線であるデータ線とを有する。
【0019】
表示部60及び端子部50のそれぞれは、後述する第一主面10a及び第一主面10aと反対側の第二主面10bを有し樹脂を含むフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成される配線層20とを含んで構成されている。
【0020】
フレキシブル基板10は、可撓性を有する透光性の基板である。フレキシブル基板10は、シート状の基板である。フレキシブル基板10は、透光性の樹脂を含んで構成され、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかを含んで構成される。
【0021】
フレキシブル基板10は、端子部50及び表示部60の両方に跨って形成される。フレキシブル基板10は、例えば、矩形状であるが、これに限定されない。
【0022】
フレキシブル基板10は、表示面側(Z軸プラス側)の主面である第一主面10aと、表示面の反対側の主面である第二主面10bとを有する。第二主面10bは、第一主面10aと背向する主面である。フレキシブル基板10の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば、5μm以上50μm以下であるが、これに限定されない。
【0023】
配線層20は、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成され、フレキシブル表示パネル1が発光するための各種配線が形成された層である。配線層20は、端子部50及び表示部60の両方に跨って形成される。配線層20は、上記の電源配線及び信号配線が形成されている。配線層20の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば、0.1μm以上5μm以下であるが、これに限定されない。
【0024】
なお、フレキシブル基板10と配線層20との間には、フレキシブル基板10からナトリウムイオンなどの物質が上層(例えば、図示しない半導体層)に移動することを抑制するために設けられるバリア性を有する絶縁層(いわゆるアンダーコート層)である。無機絶縁層は、例えば、窒化シリコン層と、酸化シリコン層とを有し、フレキシブル基板10側から窒化シリコン層と、酸化シリコン層とがこの順に積層されている。窒化シリコン層は、例えば、窒化シリコン膜により構成され、厚みは50nm程度である。また、酸化シリコン層は、例えば、酸化シリコン膜により構成され、厚みは100nm程度である。
【0025】
第一保護層30は、配線層20上に形成され、配線層20を保護する透光性を有する樹脂層である。第一保護層30は、フレキシブル基板10の一部を覆う。第一保護層30は、表示部60を覆う。
【0026】
第二保護層40は、フレキシブル基板10の第二主面10b上(Z軸マイナス側)配線層20上に形成され、配線層20を保護する透光性を有する樹脂層である。第二保護層40は、フレキシブル基板10を覆う。第一保護層30は、フレキシブル基板10の第二主面10b側において、端子部50及び表示部60の両方を覆う。第二保護層40の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば、10μm以上1000μm以下であるが、これに限定されない。
【0027】
第一保護層30及び第二保護層40は、シート状の基板である。フレキシブル基板10は、透光性の樹脂を含んで構成される。第一保護層30及び第二保護層40は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかを含んで構成される。
【0028】
ここで、フレキシブル表示パネル1の端子部50について説明する。本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1は、端子部50に傾斜面51を有する。傾斜面51は、第二主面10b側から第一主面10a側(Z軸マイナス側からZ軸プラス側)に向かうにつれ、フレキシブル表示パネル1の中央部側(Y軸プラス側)に傾斜する。傾斜面51は、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ、端子部50から表示部60に向かう方向に傾斜するとも言える。
【0029】
本実施の形態では、傾斜面51は、第二保護層40、フレキシブル基板10及び配線層20により構成される。言い換えると、第二保護層40、フレキシブル基板10及び配線層20のそれぞれが、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ、フレキシブル表示パネル1の中央部側に傾斜する。傾斜面51は、第二保護層40、フレキシブル基板10及び配線層20がレーザ光により一体的にカットされたレーザカット面である。傾斜面51は、フレキシブル表示パネル1のX軸方向にわたって延在して設けられる。
【0030】
フレキシブル表示パネル1の平面視における傾斜面51の幅L(後退幅)は、5.7μm以上であり、好ましくは、幅Lは、13.1μm以上であり、さらに好ましくは、幅Lは、14.6μm以上である。また、幅Lは、傾斜面51に対するレーザカット時の汚れの付着を低減する観点から、46.7μm以下であるとよい。なお、幅Lに対する検証結果については、後述する。
【0031】
なお、傾斜面51の幅Lは、図1の例では、例えば、配線層20と第二保護層40とに基づいて算出される長さである。傾斜面51の幅Lは、例えば、配線層20のZ軸プラス側の端部と、第二保護層40のZ軸マイナス側の端部とのY軸方向における直線距離である。
【0032】
傾斜面51と第一主面10a又は第二主面10bとのなす角度θは、88度より小さい。本実施の形態では、傾斜面51と第二保護層40の裏面側の面(Z軸マイナス側の面)とのなす角度θは、88度より小さい。好ましくは、角度θは、86度以下であり、より好ましくは、角度θは、82度以下である。また、角度θは、81度以下であってもよい。例えば、角度θは、以下の式1に基づいて算出されてもよい。
【0033】
COSθ=幅L/傾斜面51の長さ (式1)
【0034】
なお、傾斜面51の長さは、図1の例では、例えば、配線層20と第二保護層40とに基づいて算出される長さである。傾斜面51の長さは、例えば、配線層20のZ軸プラス側の端部と、第二保護層40のZ軸マイナス側の端部とを結ぶ直線距離である。
【0035】
フレキシブル表示パネル1は、例えば、上記の幅L及び角度θの少なくとも一方の条件を満たしていればよい。フレキシブル表示パネル1は、例えば、少なくとも上記の幅Lの条件を満たしていてもよい。
【0036】
なお、フレキシブル表示パネル1は、少なくともフレキシブル基板10及び配線層20を備えていればよい。つまり、傾斜面51は、少なくともフレキシブル基板10及び配線層20を含んで形成されていればよい。
【0037】
上記のように、フレキシブル表示パネル1は、表示を行うための表示部60(例えば、複数の画素を有する表示部60)と、表示部60の周囲の端子部50とを備えるフレキシブル表示パネル1である。表示部60及び端子部50のそれぞれは、第一主面10a及び第一主面10aと反対側の第二主面10bを有し樹脂を含むフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成される配線層20とを含んで構成されている。そして、端子部50は、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ、表示部60側に傾斜する傾斜面51を有し、フレキシブル表示パネル1の平面視における傾斜面51の幅L(端子部50と表示部60とを結ぶ方向(Y軸方向)の幅L)は、13.1μm以上である。
【0038】
また、上記のように、フレキシブル表示パネル1は、第一主面10a及び第一主面10aの裏側の第二主面10bを有し樹脂を含むフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成される配線層20とを備えるフレキシブル表示パネル1である。フレキシブル表示パネル1は、それぞれがフレキシブル基板10及び配線層20を含んで形成される表示部60及び表示部60の周囲の端子部50を有する。そして、フレキシブル基板10及び配線層20を含んで構成される端子部50は、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ、フレキシブル表示パネル1の中央部側に傾斜する傾斜面51を有し、フレキシブル表示パネル1の平面視における傾斜面51の幅Lは、13.1μm以上であるとも言える。
【0039】
[2.フレキシブル表示パネルの製造方法]
続いて、上記のようなフレキシブル表示パネル1の製造方法について、図2図7を参照しながら説明する。まずは、フレキシブル表示パネル1を製造するための製造システムについて、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1を製造する製造システム100の概略構成を示す模式図である。図2では、フレキシブル表示パネル1の端子部50をレーザカットする工程のみを図示している。
【0040】
なお、端子部50には、通常動作で用いられる配線及びパッド、並びに、点灯検査で用いられるテスト回路等が形成されている。テスト回路には、点灯検査用のパッド(以下、「検査用パッド」とも記載する)、点灯検査用の複数のESD(Electro Static Discharge)配線等が含まれる。ESD配線は、静電気を放電させるための配線である。検査用パッドは、点灯検査を含む製造時の検査で用いられるパッドであり、専用のパッドである。製造システム100は、このようなテスト回路をカットするためのシステムである。
【0041】
図2に示すように、製造システム100は、レーザ加工装置110と、洗浄装置120と、制御装置130と、移動装置140とを備える。
【0042】
レーザ加工装置110は、端子部50がカットされていないフレキシブル表示パネル1(積層体の一例)をレーザで加工する装置である。レーザ加工装置110は、端子部50の一部をレーザ切断する装置である。レーザ加工装置110は、端子部50のカットラインをレーザ切断する。レーザ加工装置110は、レーザ発信器と加工ヘッドとを有する。
【0043】
レーザ発振器は、例えば、YAGレーザ発振器(発振波長1064nm、355nm等)、フェムト秒レーザ発振器(発振波長780nm)、又は、ピコ秒レーザ発振器(発振波長1040nm)であり、加工ヘッドの光学部品に向けてレーザを出力する。レーザとしては、加工用レーザ、および、加工用レーザと異なるプリショットレーザの2種類のレーザが挙げられる。加工用レーザは、フレキシブル表示パネル1を実際に加工するためのレーザである。プリショットレーザは、加工用レーザのフォーカス位置を調整するためのレーザであり、加工用レーザがフレキシブル表示パネル1に照射される前に、フレキシブル表示パネル1に照射される。加工用レーザの光軸とプリショットレーザの光軸とは一致している。加工用レーザおよびプリショットレーザの波長は、例えば、同じである。
【0044】
加工ヘッドは、コリメートレンズ、反射ミラー(全反射ミラー)、集光レンズ等の光学部材を有する。
【0045】
レーザ加工装置110は、YAGレーザ等の固体レーザを用いるが、これに限定されず、COレーザ等の10μm帯のガスレーザ、又は、ファイバレーザを用いたものであってもよい。
【0046】
レーザ加工装置110は、例えば、さらに加工ヘッドをZ軸方向(フォーカス方向)へ移動可能な移動部を有していてもよい。
【0047】
洗浄装置120は、レーザ加工装置110によりカットされた傾斜面51を洗浄する。洗浄装置120は、傾斜面51をドライ洗浄する。洗浄装置120は、微粒子を含む洗浄ガスを傾斜面51に吹き付けることにより、傾斜面51を洗浄する。微粒子は、例えば、ドライアイススノー(COスノー)であり、洗浄ガスは、例えば、炭酸ガスを含んでいてもよい。つまり、洗浄装置120は、ドライアイススノー洗浄装置であってもよい。
【0048】
ドライアイススノーは、液化炭酸ガスから生成されるドライアイス微粒子である。ドライアイススノー洗浄装置は、ドライアイススノーを高速で洗浄対象物(例えば、傾斜面51)に衝突させ、洗浄対象物に付着したパーティクル又は有機物(例えば、炭化物)を除去する。ドライアイススノーの粒径は、例えば、10μm以上200μm以下であるが、これに限定されない。なお、粒径は、平均粒径であるが、最大粒径、最小粒径、粒径の中央値等であってもよい。また、ドライアイススノーの衝突圧力は、例えば、5MPa程度であるがこれに限定されない。また、ドライアイススノーの吐出圧力(噴射ガス圧)は、0.5Mpa程度、吐出時間は60秒程度であるが、これに限定されない。
【0049】
洗浄装置120は、例えば、ドライアイススノーを含む炭酸ガスと噴射用ガスとを混合して混合ガスを生成する混合部と、混合ガスを噴射するノズルとを含んで構成される。
【0050】
なお、洗浄装置120は、ドライアイススノーを用いることに限定されず、イオンミリング、Oアッシング等の洗浄方法であってもよい。
【0051】
なお、洗浄装置120は、有機溶剤等を用いるウェット洗浄を行わない。
【0052】
制御装置130は、製造システム100が有する各構成要素を制御する。制御装置130は、例えば、レーザ加工装置110を制御して、レーザの出力、焦点距離等を制御する。また、制御装置130は、例えば、洗浄装置120を制御して、衝突圧力、吐出時間等を制御する。また、制御装置130は、例えば、移動装置140を制御して、フレキシブル表示パネル1をY軸方向、Z軸方向等に移動させる。
【0053】
移動装置140は、フレキシブル表示パネル1を支持して移動させる。移動装置140は、例えば、フレキシブル表示パネル1をY軸方向(工程の上流から下流)に移動(搬送)可能である。また、移動装置140は、例えば、フレキシブル表示パネル1をZ軸方向(フォーカス方向)に移動可能であってもよい。移動装置140は、例えば、アクチュエータ、モータを含んで構成される。
【0054】
続いて、フレキシブル表示パネル1の製造方法について、図3図7を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1の製造方法を示すフローチャートである。図4は、本実施の形態に係るカット工程(S10)を示す模式図である。
【0055】
図3に示すように、フレキシブル表示パネル1の製造方法は、カット工程(S10)と、洗浄工程(S20)とを含む。
【0056】
カット工程では、フレキシブル基板10と配線層20とが積層された積層体の端子部50を、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれフレキシブル表示パネル1の中央部側(平面視における中央部側)に傾斜するようにレーザによりカットする。
【0057】
図4に示すように、カット工程では、制御装置130は、移動装置140を制御して、フレキシブル表示パネル1の端子部50をレーザカットする位置に移動させ、かつ、レーザ加工装置110を制御して、レーザ110aを出射させる。カット工程では、第二保護層40、フレキシブル基板10及び配線層20を一体的にカットする。
【0058】
レーザ加工装置110のフォーカスは、端子部50の表面(例えば、配線層20)に合っていない。言い換えると、レーザ加工装置110は、デフォーカスされている状態で、レーザカットする。制御装置130は、レーザ加工装置110の移動部、及び、移動装置140の少なくとも一方を制御して、端子部50をデフォーカスされたデフォーカス位置に移動させてもよいし、レーザ加工装置110の光学部品を制御することで端子部50がデフォーカスされた状態となるように焦点距離を変更させてもよい。
【0059】
カット工程では、端子部50がカットされていないフレキシブル表示パネル1(積層体の一例)の表面がレーザ110aの焦点位置よりレーザ110aの出射側(Z軸プラス側)のデフォーカス位置に配置された状態で、レーザ110aによりカットする。例えば、カット工程では、レーザ110aが端子部50の表面にフォーカスされている(焦点が合っている)状態から、端子部50をレーザ加工装置110側(Z軸プラス側)に移動した位置(デフォーカス位置の一例)に移動させた後に、端子部50のカットが行われる。言い換えると、レーザ110aは、カット時には、端子部50の表面よりZ軸マイナス側の位置にフォーカスされている。端子部50の表面と、レーザ110aのフォーカスが合っている位置までのZ軸方向の距離Fは、例えば、端子部50の厚み(Z軸方向の長さ)以下であってもよいし、端子部50の厚みより長くてもよい。
【0060】
なお、上記では、フォーカス位置を配線層20より下方(Z軸マイナス側)にずらすことについて説明したが、フォーカス位置を配線層20より上方(Z軸プラス側)にずらすことも、傾斜面51を形成することに有効である。例えば、カット工程では、端子部50がカットされていないフレキシブル表示パネル1の表面がレーザ110aの焦点位置より第二保護層40側(Z軸マイナス側)のデフォーカス位置に配置された状態で、レーザ110aによりカットされてもよい。例えば、カット工程では、レーザ110aが端子部50の表面にフォーカスされている状態から、端子部50を第二保護層40側(Z軸マイナス側)に移動した位置(デフォーカス位置の一例)に移動させた後に、端子部50のカットが行われてもよい。言い換えると、レーザ110aは、カット時には、端子部50の表面よりZ軸プラス側の位置にフォーカスされていてもよい。
【0061】
なお、カット工程では、第一保護層30はレーザカットされない。
【0062】
ここで、レーザ加工装置110により端子部50がカットされたフレキシブル表示パネル1について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る端子部50を示す図である。図6は、本実施の形態に係るカット加工後のカット面(傾斜面51)を示す模式図である。なお、図5は、洗浄工程後の端子部50の状態を示す。図5は、顕微鏡での拡大写真である。
【0063】
図5に示すように、傾斜面51は、幅Lであり、X軸方向に沿って設けられる。幅Lは、例えば、X軸方向に沿って設けられた傾斜面51の幅の平均値であるが、最大値、最小値、最頻値、中央値等であってもよい。なお、端子部50には、配線21が形成されている。
【0064】
図6に示すように、レーザカット後に傾斜面51(カット端面)には、炭化物Cが形成される。炭化物Cは、樹脂を含むフレキシブル基板10がレーザカットされることで樹脂が変質して形成される。例えば、炭化物Cは、傾斜面51を覆うように形成される。傾斜面51に形成された炭化物Cを介して端子部50の配線21間が低抵抗化するので、配線21と炭化物Cとの接触を抑制する必要がある。そこで、カット工程の後に、洗浄工程が行われる。
【0065】
図3を再び参照して、洗浄工程では、カット工程により形成された傾斜面51をドライ洗浄する。例えば、カット工程の後に連続して洗浄工程が行われる。
【0066】
図7は、本実施の形態に係る洗浄工程を示す模式図である。
【0067】
図7に示すように、洗浄工程では、制御装置130は、移動装置140を制御して、フレキシブル表示パネル1の端子部50を洗浄する位置に移動させ、かつ、洗浄装置120を制御して、微粒子Pを含む洗浄ガスを出射させる。洗浄工程は、傾斜面51に形成された炭化物Cを除去するための工程である。
【0068】
上記でも説明したように、フレキシブル基板10と配線層20との間には、無機絶縁層が形成されている。無機絶縁層は、カット工程においてレーザ110aによりカットされない。そのため、無機絶縁層が残っている状態で洗浄が行われる。この場合、無機絶縁層はY軸マイナス側に突出しており洗浄のための微粒子Pを遮蔽することにより、当該無機絶縁層よりZ軸マイナス側の部分に微粒子Pが届かず、洗浄が十分に行えないことがある。
【0069】
本実施の形態では、傾斜面51の幅Lが13.1μm以上又は角度θが86度以下であることで、端子部50がZ軸と平行にカットされた場合に比べて、無機絶縁層の突出長さが長くすることができる。そのため、微粒子Pが無機絶縁層に衝突することにより、無機絶縁層に加わるモーメントが大きく、当該無機絶縁層は、微粒子Pの衝突により割れてとれやすい。無機絶縁層が除去されることで傾斜面51の全面に微粒子Pが衝突可能となり、十分な洗浄効果を得ることができる。
【0070】
[3.評価結果]
続いて、上記の製造方法で製造されたフレキシブル基板10における評価結果について、図8図11を参照しながら説明する。まずは、傾斜面51の角度θによる端子部50の端子間抵抗(配線21間抵抗)について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態に係るテーパ角85度のときの端子間抵抗の測定結果を示す図である。図9は、比較例に係るテーパ角88度のときの端子間抵抗の測定結果を示す図である。なお、端子間抵抗が高いことは、洗浄装置120による洗浄が適正に行われている、つまり炭化物Cが洗浄により除去されていることを意味する。
【0071】
図8及び図9に示す縦軸は端子間抵抗を示しており、横軸は、端子間位置を示す。また、基準値は、端子間抵抗の下限値である。
【0072】
図8に示すように、テーパ角(角度θ)が85度のときの端子間抵抗は、4点とも基準値以上であり、端子間は高抵抗を維持している。
【0073】
図9に示すように、テーパ角(角度θ)が88度のときの端子間抵抗は、基準値以上となる位置と、基準値より小さくなる位置とが混在する。つまり、端子間抵抗が安定しておらず、低抵抗化している。このことから、角度θは、85度以下であることが望ましい。
【0074】
図10は、本実施の形態に係るレーザ条件と端子状態との関係を示す図である。図10では、レーザ110aのパワーは10Wであり、スキャンは10又は30Cycleであり、フォーカス(距離F)は、0mm、-2.0mm又は-4.0mmである。なお、フォーカスは、配線層20を基準とし、Z軸マイナス方向における距離である。例えば、-2.0mmは、レーザ110aの焦点位置が、配線層20からZ軸マイナス側に2.0mmの位置であることを示す。また、フォーカスが0mmとは、レーザ110aの焦点が配線層20の表面に合っていることを意味する。
【0075】
図10に示すように、フォーカスが長いほど、端子部50の傾斜面51の幅Lが長くなる傾向がある。幅Lが長いほど、カット時に無機絶縁層が突出する突出長さが長くなるので、突出している無機絶縁層をより容易に取り除くことができる。このことから、フォーカスは、長いとよい。例えば、0mm以上であるとよい。
【0076】
図11は、本実施の形態に係るレーザ条件及びフォーカスと端子間抵抗との関係を示す図である。図11に示す「OK」は、端子間抵抗が基準値を満たすことを示し、「NG」は、端子間抵抗が基準値を満たさないことを示す。
【0077】
図11に示すように、レーザパワーが1.7W、スキャンが18Scan(18Cycle)であり、かつ、フォーカスが+0.2mm(距離F=+2.0mm)である場合は、「NG」であり、端子間抵抗が基準値を満たしていない。また、レーザパワーが3.0W、スキャンが10Scanであり、かつ、フォーカスが0mm(距離F=0mm)である場合は、「OK」であり、端子間抵抗が基準値を満たしている。また、フォーカスが長くなる(マイナスの値が大きくなる)、又は、レーザパワーが高くなるにつれ、端子間抵抗は高くなる傾向がある。よって、例えば、破線領域の条件であれば、端子間抵抗は「OK」となり得る。
【0078】
これらにより、レーザ110aの出力は、3W以上10W以下であり、かつ、フォーカス(焦点位置と配線層20の表面との距離F)は、-2.0mm以上0mm以下であるとよい。焦点位置と端子部50の表面との距離Fは、当該表面を基準とし第二主面10b側に0mm以上2.0mm以下の距離であるとも言える。
【0079】
図12は、本実施の形態に係る後退幅と抵抗値判定結果との検証結果を示す図である。図12は、傾斜面51の幅L(後退幅)と抵抗値(端子間抵抗)の判定結果とを示す。
【0080】
図12に示すように、幅Lが6.8μmのときは抵抗値判定結果がNGであり、幅Lが13.1μm以上のときは抵抗値判定結果がOKである。このことから、幅Lは、13.1μm以上であるとよく、より好ましくは14.6μm以上であるとよい。
【0081】
なお、幅Lが6.8μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが3Wであり、かつ、フォーカスが-0.5mm(距離F=-0.5mm)であり、幅Lが13.4μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが3Wであり、かつ、フォーカスが0mm(距離F=0mm)である。また、幅Lが14.6μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが5Wであり、かつ、フォーカスが-0.5mm(距離F=-0.5mm)であり、幅Lが19.8μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが5Wであり、かつ、フォーカスが-1.0mm(距離F=-1.0mm)である。また、幅Lが24.7μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが10Wであり、かつ、フォーカスが0mm(距離F=0mm)であり、幅Lが46.7μmのときのレーザ条件は、レーザパワーが10Wであり、かつ、フォーカスが-2.0mm(距離F=-2.0mm)である。
【0082】
なお、図12の結果では、幅Lが6.8μmのときに抵抗値結果はNGとなっているが、幅Lが0mmである場合に比べて、抵抗値の上昇を抑えることが可能である。例えば、洗浄条件によっては、幅Lが6.8μm以下であっても抵抗値の上昇を抑えることが可能である。例えば、幅Lが5.7μmのときであっても、幅Lが0mmである場合に比べて、抵抗値の上昇を抑えることが可能である。洗浄条件は、ドライアイススノーの吐出圧力、吐出時間等の条件である。
【0083】
[4.効果等]
以上のように、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1は、表示を行うための表示部60と、表示部60の周囲の端子部50とを備えるフレキシブル表示パネル1である。表示部60及び端子部50のそれぞれは、第一主面10a及び第一主面10aと反対側の第二主面10bを有し樹脂を含むフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成される配線層20とを含んで構成されている。そして、端子部50は、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ、表示部60側に傾斜する傾斜面51を有し、フレキシブル表示パネル1の平面視における傾斜面51の幅Lは、13.1μm以上である。
【0084】
これにより、フレキシブル表示パネル1の幅Lが13.1μm以上の傾斜面51を有していることで、傾斜面51がレーザカットにより形成された場合であっても、洗浄工程によってレーザカットにより生成された炭化物Cを取り除くことができる。よって、本開示の一態様に係るフレキシブル表示パネル1によれば、レーザカットが行われた場合にカット端面に炭化物Cが残ることを抑制することができる。
【0085】
また、傾斜面51の幅Lは、14.6μm以上であってもよい。
【0086】
これにより、レーザカットにより生成された炭化物Cをより取り除くことができる。
【0087】
また、傾斜面51の幅Lは、46.7μm以下であってもよい。
【0088】
これにより、レーザカット後の傾斜面51に汚れが付着することを抑制することができる。
【0089】
また、第二主面10bと傾斜面51とのなす角度θは、86度以下であってもよい。
【0090】
これにより、レーザカットにより生成された炭化物Cをさらに取り除くことができる。
【0091】
また、フレキシブル基板10の第二主面10b側において、フレキシブル表示パネル1の表示部60及び端子部50を覆う第二保護層40(保護層の一例)を備える。そして、傾斜面51は、第二保護層40も含んで形成される。
【0092】
これにより、フレキシブル表示パネル1が第二保護層40を備える構成である場合、当該第二保護層40において傾斜面51を構成する部分に炭化物Cが残ることを抑制することができる。
【0093】
また、フレキシブル表示パネル1は、有機ELパネルである。
【0094】
これにより、有機ELパネル(フレキシブル有機ELパネル)の端子部50の傾斜面51に炭化物Cが付着することを抑制することができる。
【0095】
また、以上のように、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネル1の製造方法は、表示を行うための表示部60と表示部60の周囲の端子部50とを備えるフレキシブル表示パネル1の製造方法である。表示部60及び端子部50のそれぞれは、第一主面10a及び第一主面10aと反対側の第二主面10bを有し樹脂を含むフレキシブル基板10と、フレキシブル基板10の第一主面10a上に形成される配線層20とを含んで構成されている。そして、当該製造方法は、端子部50を、第二主面10b側から第一主面10a側に向かうにつれ表示部60側に傾斜するようにレーザによりカットするカット工程(S10)と、カット工程により形成された傾斜面51をドライ洗浄する洗浄工程(S20)とを含み、カット工程により形成された傾斜面51の、フレキシブル表示パネル1の平面視における幅Lは、13.1μm以上である。
【0096】
これにより、カット工程において、フレキシブル表示パネル1の幅Lが5.7μm以上の傾斜面51がレーザカットにより形成されるので、洗浄工程によってレーザカットにより生成された炭化物Cをウェット洗浄に比べて取り除くことができる。よって、本開示の一態様に係るフレキシブル表示パネル1の製造方法によれば、レーザカットが行われた場合にカット端面(傾斜面51)に炭化物Cが残ることを抑制することができる。
【0097】
また、カット工程では、端子部50の表面がレーザ110aの焦点位置からずれたデフォーカス位置に配置された状態で、レーザ110aによりカットする。
【0098】
これにより、端子部50をデフォーカス位置に配置させるだけで、容易に傾斜面51を形成すること可能である。
【0099】
また、レーザ110aの出力は、3W以上10W以下であり、かつ、焦点位置と端子部50の表面との距離Fは、当該表面を基準とし第二主面10b側に0mm以上2.0mm以下の距離である。
【0100】
これにより、端子部50の端子間抵抗の低下が抑制されたフレキシブル表示パネル1、つまり傾斜面51から炭化物Cをより取り除くことができるフレキシブル表示パネル1を実現することができる。
【0101】
また、洗浄工程では、微粒子Pを含む洗浄ガスを傾斜面51に吹き付けることにより行われる。
【0102】
これにより、微粒子Pを炭化物Cに衝突させることにより、傾斜面51を効果的に洗浄することができる。
【0103】
また、微粒子Pは、ドライアイススノーであり、洗浄ガスは、炭酸ガスを含む。
【0104】
これにより、傾斜面51を安価に洗浄することができる。また、洗浄後に液体が傾斜面51に残らないので、洗浄後の乾燥工程が不要であり、製造工程を簡素化することができる。
【0105】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係るフレキシブル表示パネルについて、実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示に係るフレキシブル表示パネルは、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係るフレキシブル表示パネルを内蔵した各種機器も本開示に含まれる。
【0106】
例えば、上記実施の形態等におけるフレキシブル表示パネルと、当該フレキシブル表示パネルを駆動させるための回路基板モジュールとを備えるフレキシブル表示装置として実現されてもよい。
【0107】
上記実施の形態では、フレキシブル表示パネルは、有機ELパネルである例について説明したが、これに限定されず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネルであってもよい。
【0108】
また、上記実施の形態における製造システムが備える各装置間の通信方法は、特に限定されない。通信方法は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよいし、その組み合わせであってもよい。
【0109】
また、上記実施の形態等において説明された複数の処理の順序は一例である。複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。また、複数の処理の一部は、実行されなくてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態で説明した製造方法における各工程は、1つの工程で実施されてもよいし、別々の工程で実施されてもよい。なお、1つの工程で実施されるとは、各工程が1つの装置を用いて実施される、各工程が連続して実施される、又は、各工程が同じ場所で実施されることを含む。また、別々の工程とは、各工程が別々の装置を用いて実施される、各工程が異なる時間(例えば、異なる日)に実施される、又は、各工程が異なる場所で実施されることを含む。
【0111】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素(例えば、制御装置など)は、プロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large Scale Integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、一つのチップに集積されていてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよし、複数の装置に備えられていてもよい。
【0112】
また、上記の少なくとも1つの装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムであってもよい。そのRAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、上記の少なくとも1つの装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本開示は、フレキシブル表示パネルに広く利用できる。
【符号の説明】
【0114】
1 フレキシブル表示パネル
10 フレキシブル基板
10a 第一主面
10b 第二主面
20 配線層
21 配線
30 第一保護層
40 第二保護層
50 端子部
51 傾斜面
60 表示部
100 製造システム
110 レーザ加工装置
110a レーザ
120 洗浄装置
130 制御装置
140 移動装置
C 炭化物
F 距離
L 幅
P 微粒子
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12