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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】テープ配列機構
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20241129BHJP
   B29C 70/38 20060101ALI20241129BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20241129BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/38
B29C70/16
B29K105:08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021029124
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022130133
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2024-01-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」委託研究(管理法人:JST)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 勲
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059145(JP,A)
【文献】特開2017-209902(JP,A)
【文献】特表2011-527648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/54
B29C 70/38
B29C 70/16
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂が含浸された繊維で構成される複数のテープ材それぞれが通過する複数のガイドローラと、
前記複数のガイドローラを移動させて、隣り合う前記ガイドローラの、前記テープ材が通過する方向における位置を異ならせることにより、前記隣り合うガイドローラ間の距離を変更する移動部と、
を備えるテープ配列機構。
【請求項2】
前記移動部は、
前記複数のガイドローラのうちの第1グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、前記第1グループに分類されるガイドローラを軸支する第1支持部と、
前記複数のガイドローラのうちの前記第1グループとは異なる第2グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、前記第2グループに分類されるガイドローラを軸支する第2支持部と、
前記第1支持部の一方の端部と前記第2支持部の他方の端部とを、回転可能に軸支する軸部と、
前記第1支持部の他方の端部と前記第2支持部の一方の端部とが離隔する方向、または、近接する方向に、前記第1支持部および前記第2支持部を回動させる駆動部と、
を備える請求項1に記載のテープ配列機構。
【請求項3】
樹脂が含浸された繊維で構成される複数のテープ材それぞれが通過する複数のガイドローラと、
前記複数のガイドローラを移動させて、隣り合う前記ガイドローラ間の距離を変更する移動部と、
を備え
前記移動部は、
前記複数のガイドローラのうちの第1グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、前記第1グループに分類されるガイドローラを軸支する第1支持部と、
前記複数のガイドローラのうちの前記第1グループとは異なる第2グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、前記第2グループに分類されるガイドローラを軸支する第2支持部と、
前記第1支持部の一方の端部と前記第2支持部の他方の端部とを、回転可能に軸支する軸部と、
前記第1支持部の他方の端部と前記第2支持部の一方の端部とが離隔する方向、または、近接する方向に、前記第1支持部および前記第2支持部を回動させる駆動部と、
を備えるテープ配列機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のテープ材を配列するテープ配列機構に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維に樹脂(プラスチック)を複合させた複合材(繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics))は、比強度、比剛性に優れた材料である。このため、複合材は、自動車、航空機、および、宇宙分野における構造材料等に利用されている。複合材は、プリプレグ(樹脂が含浸された繊維)を積層させて積層体を形成した後、樹脂を硬化させることで製造される(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、3次元曲面等の複雑な形状を有する部材を、高精度かつ高速に製造できる成形加工法として、AFP(Automated Fiber Placement)法が注目されている。AFP法は、複数本のテープ形状のプリプレグ(以下、単に「テープ材」という)を、幅方向に隙間なく並べて積層する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-093276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記テープ材を用いて3次元曲面等の複雑な形状を有する部材を成形する際、並列された複数本のテープ材の幅(以下、隙間なく並べられた複数本のテープ材で構成される並列体における隣り合うテープ材の中心線の間隔を「テープピッチ」という)を適宜変更して積層したいという要望がある。テープピッチを変更する場合、テープ材自体の幅も変更する場合がある。このため、テープ材の幅が変更された場合にも、複数本のテープ材を隙間なく並べる技術の開発が希求されている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、複数本のテープ材を任意のテープピッチで並べることが可能なテープ配列機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のテープ配列機構は、樹脂が含浸された繊維で構成される複数のテープ材それぞれが通過する複数のガイドローラと、複数のガイドローラを移動させて、隣り合うガイドローラの、テープ材が通過する方向における位置を異ならせることにより、隣り合うガイドローラ間の距離を変更する移動部と、を備える。
【0009】
また、移動部は、複数のガイドローラのうちの第1グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、第1グループに分類されるガイドローラを軸支する第1支持部と、複数のガイドローラのうちの第1グループとは異なる第2グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、第2グループに分類されるガイドローラを軸支する第2支持部と、第1支持部の一方の端部と第2支持部の他方の端部とを、回転可能に軸支する軸部と、第1支持部の他方の端部と第2支持部の一方の端部とが離隔する方向、または、近接する方向に、第1支持部および第2支持部を回動させる駆動部と、を備えてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の他のテープ配列機構は、樹脂が含浸された繊維で構成される複数のテープ材それぞれが通過する複数のガイドローラと、複数のガイドローラを移動させて、隣り合うガイドローラ間の距離を変更する移動部と、を備え、移動部は、複数のガイドローラのうちの第1グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、第1グループに分類されるガイドローラを軸支する第1支持部と、複数のガイドローラのうちの第1グループとは異なる第2グループに分類される、隣り合うガイドローラそれぞれの回転軸が略平行となるように、第2グループに分類されるガイドローラを軸支する第2支持部と、第1支持部の一方の端部と第2支持部の他方の端部とを、回転可能に軸支する軸部と、第1支持部の他方の端部と第2支持部の一方の端部とが離隔する方向、または、近接する方向に、第1支持部および第2支持部を回動させる駆動部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数本のテープ材を任意のテープピッチで並べることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態にかかる複合材製造装置を説明する図である。
図2】テープ配列機構の斜視図である。
図3】テープ配列機構の側面図である。
図4】テープ配列機構の上面図である。
図5】リンク部による第1支持部および第2支持部の移動を説明する図である。
図6】回動によるガイドローラ210間の距離を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
[複合材製造装置100]
図1は、本実施形態にかかる複合材製造装置100を説明する図である。図1に示すように、複合材製造装置100は、送出機構110と、加熱装置120と、幅調整機構130と、テープ配列機構140と、中央制御部150とを含む。本実施形態における図1をはじめとする以下の図では、テープ配列機構140に対し、垂直に交わるX軸、Y軸、Z軸を図示の通り定義している。また、図1中、破線の矢印は、送出機構110によるテープ材Tの送出方向を示す。
【0014】
送出機構110は、テープ材Tが巻付けられたストック用のローラ等から供給されるテープ材Tを送り出す。本実施形態において、送出機構110は、複数本(ここでは、7本)のテープ材Tを送り出す。
【0015】
テープ材Tは、プリプレグ(樹脂が含浸された繊維)で構成される。プリプレグは、CFRPやGFRP等のFRP(複合材)の材料として用いられる。
【0016】
テープ材Tを構成する繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、および、ポリアリレート繊維(例えば、ベクトラン(登録商標)繊維)のうち、いずれか1または複数で構成される。
【0017】
テープ材Tを構成する樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。
【0018】
熱硬化性樹脂は、例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ベンゾオキサジン、および、ポリビスマレイミド(BMI)のうち、いずれか1または複数である。
【0019】
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、プリテトラフルオロエチレン、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、および、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)のうち、いずれか1または複数である。
【0020】
図1に示すように、送出機構110は、コンパクションローラ112と、下流支持ローラ114a、114bと、上流支持ローラ116a、116bとを含む。
【0021】
コンパクションローラ112、下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bは、円柱形状である。コンパクションローラ112、下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bは、回転軸が図1中、X軸方向となるように配される。
【0022】
コンパクションローラ112、下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bは、テープ材Tの流れ方向において互いに異なる位置に設けられる。本実施形態において、コンパクションローラ112は、下流支持ローラ114a、114bよりも、テープ材Tの送出方向の下流側に設けられる。下流支持ローラ114a、114bは、上流支持ローラ116a、116bよりも、テープ材Tの送出方向の下流側に設けられる。つまり、テープ材Tの送出方向の上流側から、上流支持ローラ116a、116b→下流支持ローラ114a、114b→コンパクションローラ112の順で、これらが設けられる。
【0023】
また、本実施形態において、下流支持ローラ114aと下流支持ローラ114bとは、図1、Y軸方向およびZ軸方向の位置が異なるように設けられる。また、上流支持ローラ116aと上流支持ローラ116bとは、図1中、Y軸方向の位置が異なるように設けられる。
【0024】
コンパクションローラ112は、型に押し当てながら移動させることで、テープ材Tの粘着力や摩擦力により自動的に回転する。
【0025】
下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bには、テープ材Tが張架される。下流支持ローラ114aおよび上流支持ローラ116aには、4本のテープ材Tが張架される。下流支持ローラ114bおよび上流支持ローラ116bには、3本のテープ材Tが張架される。
【0026】
下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bは、テープ材Tがテープ配列機構140内部を垂直に通るようにテープ材Tの向きを変える。下流支持ローラ114a、114b、および、上流支持ローラ116a、116bは、積層によってテープ材Tが送り出される際の摩擦力や粘着力によって回転される。
【0027】
加熱装置120は、テープ材Tを加熱する。加熱装置120は、例えば、電気ヒータ、熱交換器、温風送風機で構成される。加熱装置120は、幅調整機構130よりも、テープ材Tの送出方向の上流側に設けられる。
【0028】
幅調整機構130は、加熱装置120と、上流支持ローラ116a、116bとの間に設けられる。幅調整機構130は、不図示の架台に固定される。幅調整機構130は、後述する中央制御部150による制御指令に応じて、加熱装置120を通過したテープ材Tの幅を変更する。本実施形態において、幅調整機構130は、複数(テープ材Tの本数分、ここでは、7個)設けられ、幅調整機構130それぞれが、1本のテープ材Tの幅を変更する。なお、本実施形態において、複数の幅調整機構130は、それぞれ、テープ材Tを実質的に同一の幅に変更する。幅調整機構130は、間隔が漸減する一対の壁面と底面とによって形成され、テープ材Tが通過する経路を有する本体を備え、本体の回転角度を変更することにより、経路におけるテープ材の出口の壁面間の間隔を変更する技術等の既存の様々な技術を利用できるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0029】
複数の幅調整機構130は、コンパクションローラ112から送出される、隙間なく並べられた複数本のテープ材Tで構成される並列体のテープ幅(テープピッチ)に基づいて、各テープ材Tの幅を調整する。
【0030】
複数の幅調整機構130によって幅が変更された複数本のテープ材Tは、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bを通過した後、テープ配列機構140によって隙間なく並べられ、下流支持ローラ114a、114bおよびコンパクションローラ112を通過した後、成型型上に積層され、所定の温度に維持されて、複合材に成形される。テープ配列機構140については、後に詳述する。
【0031】
中央制御部150は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。中央制御部150は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。中央制御部150は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して複合材製造装置100全体を管理および制御する。本実施形態において、中央制御部150は、幅調整機構130と、後述するテープ配列機構140のリンク部260(駆動部)を制御する。
【0032】
[テープ配列機構140]
テープ配列機構140は、幅調整機構130によって幅が変更された複数本のテープ材Tを隙間なく並べる。
【0033】
図2は、テープ配列機構140の斜視図である。図3は、テープ配列機構140の側面図である。図4は、テープ配列機構140の上面図である。なお、図4中、ガイドローラ210をガイドローラ210A~210Cで示す。
【0034】
図2図4に示すように、テープ配列機構140は、複数のガイドローラ210と、移動部220とを含む。
【0035】
テープ配列機構140は、ガイドローラ210を複数(テープ材Tの本数分、ここでは、7個)備える。図4に示すように、ガイドローラ210は、1対のローラ本体212と、接続部214とを含む。ローラ本体212は、円筒形状または円柱形状である。1対のローラ本体212は、回転可能に接続部214に軸支される。1対のローラ本体212は、回転軸が互いに略平行となるように接続部214に軸支される。接続部214は、後述する第1支持部230または第2支持部240に回転可能に軸支される。なお、接続部214は、ローラ本体212の回転軸と、接続部214の回転軸とが略平行となるように、第1支持部230または第2支持部240に軸支される。
【0036】
上記上流支持ローラ116a、116bを通過したテープ材Tは、ガイドローラ210を構成する1対のローラ本体212間を通過する。本実施形態において、1のガイドローラ210を1本のテープ材Tが通過する。また、図2に示すように、本実施形態において、上流支持ローラ116aを通過したテープ材Tは、ガイドローラ210のうち、図2中-Y軸側の対向面を通過し、上流支持ローラ116bを通過したテープ材Tは、ガイドローラ210のうち、図2中+Y軸側の対向面を通過する。
【0037】
移動部220は、ガイドローラ210を移動させて、隣接するガイドローラ210間の距離を変更する。本実施形態において、移動部220は、第1支持部230と、第2支持部240と、軸部250と、リンク部260とを含む。
【0038】
図4に示すように、第1支持部230は、2つの支持棒232と、連結棒234とを含む。2つの支持棒232は、所定間隔離隔して設けられる。2つの支持棒232の間に3つのガイドローラ210A(第1グループに分類されるガイドローラ)が軸支される。なお、支持棒232は、3つのガイドローラ210Aの回転軸(ローラ本体212および接続部214の回転軸)が略平行(図4中、Y軸方向)となるようにガイドローラ210Aを軸支する。連結棒234は、支持棒232の端部232a(他方の端部)同士を連結する。
【0039】
第2支持部240は、2つの支持棒242と、連結棒244とを含む。2つの支持棒242は、所定間隔離隔して設けられる。支持棒242は支持棒232と略平行に設けられる。2つの支持棒242の間に3つのガイドローラ210B(第2グループに分類されるガイドローラ)が軸支される。なお、支持棒242は、3つのガイドローラ210Bの回転軸(ローラ本体212および接続部214の回転軸)が略平行(図4中、Y軸方向)となるようにガイドローラ210Bを軸支する。連結棒244は、支持棒242の端部242a(一方の端部)同士を連結する。
【0040】
軸部250は、支持棒232(第1支持部230)の端部232b(一方の端部)と、支持棒242(第2支持部240)の端部242b(他方の端部)とを、回転可能に軸支する。軸部250は、不図示の架台に固定される。軸部250には、ガイドローラ210Cが軸支される。軸部250は、ガイドローラ210Cの回転軸(ローラ本体212および接続部214の回転軸)が、ガイドローラ210A、210Bの回転軸と略平行(図4中、Y軸方向)となるように、ガイドローラ210Cを軸支する。
【0041】
つまり、ガイドローラ210A、210B、210Cは、回転軸が略平行となるように第1支持部230、第2支持部240および軸部250に軸支される。
【0042】
図2図3に戻って説明すると、ガイドローラ210の回転軸(図2、3中、Y軸方向)と、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bの回転軸(図2図3中、X軸方向)とは、直交する。このため、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bから送出され、ガイドローラ210に到達するテープ材Tは、図2図3中、Z軸周りに90度捻れる(回転される)ことになる。
【0043】
同様に、ガイドローラ210の回転軸(図2、3中、Y軸方向)と、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bの回転軸(図2図3中、X軸方向)とは、直交する。このため、ガイドローラ210から送出され、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bに到達するテープ材Tは、図2図3中、Z軸周りに90度捻れることになる。
【0044】
リンク部260(駆動部)は、連結棒234(第1支持部230の端部232a)と連結棒244(第2支持部240の端部242a)とが離隔する方向、または、近接する方向に、第1支持部230および第2支持部240を回動させる。本実施形態において、リンク部260は、リンク部材262a、262bと、不図示のアクチュエータとを含む。リンク部材262aは、連結棒234に接続される。リンク部材262bは、連結棒244に接続される。アクチュエータは、リンク部材262a、262bを図2図3中、+-Z軸方向に移動させる。
【0045】
リンク部260は、テープピッチを大きくする場合、連結棒234と連結棒244とが離隔する方向に、第1支持部230および第2支持部240を回動させる。一方、リンク部260は、テープピッチを小さくする場合、連結棒234と連結棒244とが近接する方向に、第1支持部230および第2支持部240を回動させる。
【0046】
図5は、リンク部260による第1支持部230および第2支持部240の移動を説明する図である。図5(a)は、第1の位置を説明する図である。図5(b)は、第2の位置を説明する図である。図5(a)、図5(b)中、破線の矢印は、テープ材Tの送出方向(通過方向)を示す。また、図5(a)、図5(b)中、テープ材Tをクロスハッチングで示す。さらに、図5中、ガイドローラ210をガイドローラ210A~210Cで示す。
【0047】
図5(a)に示すように、第1の位置は、ガイドローラ210A、ガイドローラ210B、および、ガイドローラ210Cが、図5中、X軸方向に並列する位置である。本実施形態において、複数のガイドローラ210が第1の位置に配された場合に、目標とされる最大の全幅TP1となるように、隣り合うガイドローラ210間の距離が設計される。全幅は、ガイドローラ210を通過した複数本のテープ材Tが、テープ材Tの幅方向(図5(a)、図5(b)中、X軸方向)に隙間なく並べられた際の複数本のテープ材Tの幅である。
【0048】
また、本実施形態において、テープ配列機構140は、複数のガイドローラ210によって、複数本のテープ材Tを、投影面(図5(a)、図5(b)中、XZ平面)において隙間なく並べる。このため、複数のガイドローラ210を通過した、複数本のテープ材Tは、図5(a)、図5(b)中、Y軸方向において離隔している(非接触である、図2参照)。
【0049】
第1の位置において、リンク部260によって、連結棒234(第1支持部230)および連結棒244(第2支持部240)が、図5(a)中、-Z軸方向に移動されると、軸部250を回転軸として、第1支持部230および第2支持部240が回動する(図5(a)、白抜き矢印で示す。)。そうすると、図5(b)に示すように、第1支持部230の連結棒234と、第2支持部240の連結棒244とが近接し、軸部250を基点として第1支持部230および第2支持部240がV字状となる。これにより、第1の位置のガイドローラ210を通過した複数本のテープ材Tの全幅TP1(図5(a)参照)と比較して、図5(b)に示す全幅TP2は小さくなる。
【0050】
図6は、回動によるガイドローラ210間の距離を説明する図である。図6(a)は、第1の位置におけるガイドローラ210間の距離を説明する図である。図6(b)は、回動後のガイドローラ210間の距離を説明する図である。なお、図6(a)、図6(b)中、理解を容易にするために、ガイドローラ210Aを省略する。
【0051】
図6(a)に示すように、第1の位置おいて、ガイドローラ210Bは、それぞれ、軸部250を中心とした直線上に同じ距離rずつ離隔して、第2支持部240上に設置される。同様に、第1の位置おいて、ガイドローラ210Aは、それぞれ、軸部250を中心とした直線上に同じ距離rずつ離隔して、第1支持部230上に設置される。
【0052】
図6(b)に示すように、第1支持部230および第2支持部240を回動角θだけ回動させ、V字状に変形したとき、隣り合うガイドローラ210A間の距離、および、隣り合うガイドローラ210B間の距離は、常に等間隔でrcosθとなる。つまり、第1支持部230および第2支持部240を回動角θだけ回動させ、V字状に変形させると、テープピッチ(隣接するテープのテープ中心間の距離)は、常に等間隔でrcosθとなる。このように回動角θを変更することによって、テープピッチを変更することができる。
【0053】
また、本実施形態において、リンク部260によって第2の位置に配されたガイドローラ210を通過することで得られるテープピッチが、最小のテープピッチとなる。
【0054】
なお、上記したように、幅調整機構130は、所望されるテープピッチに合わせて、各テープ材Tの幅を調整する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態にかかるテープ配列機構140は、第1支持部230および第2支持部240を回動させるだけといった簡易な構造で、テープ材Tの本数を維持したまま、テープピッチを容易に変更することが可能なる。したがって、テープ配列機構140を備える複合材製造装置100は、構造物を容易に成形することができる。また、テープ配列機構140を備える複合材製造装置100は、繊維の方向を変化させながら積層するステアリング積層を行うことも可能である。
【0056】
なお、テープ材Tの端部を押してテープピッチを変更しようとすると、テープ材Tの端部がつぶれてテープ幅が変わってしまう。このため、テープ配列機構140によってテープピッチを変更する際に、ガイドローラ210は、テープ材Tの面を押圧することになる。これにより、テープ配列機構140は、テープ材Tの端部を押圧する場合と比較して、テープ材Tの破損を防止して、テープピッチを変更することができる。
【0057】
また、中央のテープ材Tの位置を変更せずテープピッチを変更する場合、中央のテープ材Tに近い位置にあるテープ材Tの移動距離を相対的に小さく、中央のテープ材Tから遠い位置にあるテープ材Tの移動距離を相対的に大きくする必要がある。
【0058】
このため、テープ材Tごとに移動機構を備える比較例では、移動機構が複雑になり、制御が困難であったり、そもそも移動機構の干渉のために多くの移動機構を積層装置に搭載できない問題がある。
【0059】
これに対し、本実施形態にかかるテープ配列機構140は、上記したように、ガイドローラ210、第1支持部230、テープ配列機構140、軸部250、および、リンク部260を備える。これにより、テープ配列機構140は、第1支持部230および第2支持部240を回動させるだけといった簡易な構造で、中央のテープ材Tに近い位置にあるテープ材Tの移動距離を相対的に小さく、中央のテープ材Tから遠い位置にあるテープ材Tの移動距離を相対的に大きくすることができる。したがって、テープ配列機構140は、テープピッチの変更に関する制御が容易となる。また、テープ配列機構140は、比較例と比べて、低コストである。
【0060】
また、上記したように、上流支持ローラ116aと上流支持ローラ116bとは、図2中、Y軸方向の位置が異なる。これにより、テープ材Tがガイドローラ210に進入する際に、隣り合うテープ材T同士が接触してしまう事態を回避することができる。
【0061】
また、テープ材Tには粘着性があり、テープ材T同士の接触によって一体化されてしまうと、積層時に曲げられなくなるおそれがある。そこで、下流支持ローラ114aと下流支持ローラ114bの、図2中、Y軸方向およびZ軸方向の位置を異ならせる。これにより、ガイドローラ210から送出された隣り合うテープ材T同士が接触してしまい、積層時に曲げられなくなる事態を回避することができる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば、上記実施形態において、ガイドローラ210が、1対のローラ本体212を備える構成を例に挙げた。しかし、ガイドローラ210は、1つのローラ本体212を含んでもよい。上記実施形態ではガイドローラ210に-Z軸方向からテープ材Tが導入されるため、テープピッチを広げる場合と狭める場合とで接触するガイドローラ210が異なる。しかし、XY軸方向からガイドローラ210へテープ材Tを導入し、ガイドローラ210においてテープ材Tの送り出し方向を変える場合、テープ材Tは、常に片側のローラ本体212に接触しているため、もう一方のローラ本体212が不要となる。
【0064】
また、上記実施形態において、テープ配列機構140は、軸部250を1つ備える構成を例に挙げた。しかし、軸部250は、複数であってもよい。つまり、移動部220によって、複数の支持部がW字(M字)形状に移動されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、ガイドローラ210Cが軸部250に軸支される場合を例に挙げた。しかし、ガイドローラ210Cは、必須の構成ではない。例えば、テープ材Tが偶数本の場合、ガイドローラ210Cを省略してもよい。また、ガイドローラ210Aと、ガイドローラ210Bとの数を異ならせてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bが、図1中、Y軸方向の位置が異なるように設けられる場合を例に挙げた。しかし、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bは、位置が等しくてもよい。また、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bを1本のローラに代えてもよい。同様に、上記実施形態において、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bが、図1中、Y軸方向の位置が異なるように設けられる場合を例に挙げた。しかし、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bは、位置が等しくてもよい。また、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bを1本のローラに代えてもよい。
【0067】
また、上記実施形態において、複合材製造装置100が、下流支持ローラ114a、114b、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bを備える構成を例に挙げた。しかし、下流支持ローラ114a、114b、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bは、必須の構成ではない。例えば、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bに代えて、コンパクションローラ112を略下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bの位置に設置することで、下流支持ローラ114a、下流支持ローラ114bを省略することができる。また、テープ材Tの受け入れ方向を変更して、テープ材Tの経路を変更することで、上流支持ローラ116a、上流支持ローラ116bを省略することもできる。
【0068】
また、上記実施形態において、複合材製造装置100が、幅調整機構130を備える構成を例に挙げた。しかし、幅調整機構130は、必須の構成ではない。なお、幅調整機構130を備えない場合、テープ幅は変えずに、テープピッチのみが調整される。
【符号の説明】
【0069】
T テープ材
140 テープ配列機構
210 ガイドローラ
210A ガイドローラ
210B ガイドローラ
210C ガイドローラ
220 移動部
230 第1支持部
240 第2支持部
250 軸部
260 リンク部(駆動部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6