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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】圧縮機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20241129BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20241129BHJP
   F04D 27/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F04B39/06 H
F04B49/10 331K
F04D27/00 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021043713
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143280
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】福島 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】竹内 昂輝
(72)【発明者】
【氏名】濱田 克徳
(72)【発明者】
【氏名】依田 和行
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-013843(JP,A)
【文献】特開2015-185781(JP,A)
【文献】特開2018-031267(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198459(WO,A1)
【文献】特開2021-050667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F04B 49/10
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧縮ガスを吸い込んで圧縮する圧縮機本体と、
冷却対象である前記圧縮機本体からの吐出ガス又は前記圧縮機本体に供給される油を内部に流通させながら冷却するための熱交換器と、
ファンモータによって駆動され前記熱交換器の外表面に冷却ガスを流して抜熱させるファンと、
前記熱交換器の抜熱に供していない状態の前記冷却ガスの温度である冷却ガス初期温度を検出するための温度センサと、
前記ファンモータの回転周波数の制御上限である上限周波数を設定可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、前記温度センサで検出された個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される電流が許容電流値となる回転周波数以下となるように前記上限周波数を設定する圧縮機。
【請求項2】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、
前記関係は、前記冷却ガス初期温度が低いほど前記上限周波数が低くなるように設定されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、
前記関係は、前記冷却ガス初期温度の低下に伴って、前記上限周波数が連続的又は段階的に低くなるように設定されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、
前記関係は、個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される前記電流が一定値となるように前記上限周波数が設定されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮機本体、前記ファン、前記ファンモータおよび前記熱交換器を収容するパッケージを備えている請求項1から4のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記温度センサは、前記パッケージの吸気開口に配置され、前記冷却ガス初期温度として、前記吸気開口から取り込まれる前記冷却ガスの温度を測定する、請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記温度センサは、前記ファンの上流側に配置され、前記冷却ガス初期温度として、前記ファンに吸い込まれる冷却ガスの温度を測定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記温度センサは、前記ファンの下流側で前記熱交換器までの間に配置され、前記冷却ガス初期温度として、前記ファンから吐き出される冷却ガスの温度を測定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記被圧縮ガスと前記冷却ガスが同一のガスであり、
前記温度センサは、前記圧縮機本体の吸込流路に配置され、前記冷却ガス初期温度として、前記吸込流路から前記圧縮機本体に吸い込まれる前記同一ガスの温度を測定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記冷却対象として前記圧縮機本体からの吐出ガスを冷却するためのガスクーラを備え、
前記ガスクーラは前記熱交換器を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項11】
前記冷却対象として前記圧縮機本体に供給される油を冷却するためのオイルクーラを備え、
前記オイルクーラは前記熱交換器を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項12】
被圧縮ガスを吸い込んで圧縮する圧縮機本体と、
冷却対象である前記圧縮機本体からの吐出ガス又は前記圧縮機本体に供給される油を内部に流通させながら冷却するための熱交換器と、
ファンモータによって駆動され前記熱交換器に冷却ガスを送風して抜熱させるファンと
を備える圧縮機の制御方法であって、
温度センサで前記熱交換器の抜熱に供していない状態の前記冷却ガスの温度である冷却ガス初期温度を検出し、
前記温度センサで検出された個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される電流が許容電流値となる回転周波数以下となるように、前記ファンモータの回転周波数の制御上限である上限周波数を設定する、圧縮機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転数を制御可能なファンモータで駆動するファンを有する冷却ファンと、冷却ファンを駆動して冷却対象と外気との間での熱交換を行う熱交換器(ガスクーラやオイルクーラ)とを有する空冷式クーラを備えた圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような空冷式クーラにおいては、通常、ファンモータの過負荷防止のため、ある一定以上にファンモータの回転数が上昇しないように一定の上限周波数が設定されることが行われている。これは、ファンモータの過回転を防ぐことで過電流(過負荷)によるファンモータのトリップ(ファンモータ保護のためのファンモータへの電力供給遮断)の防止を意図している。
【0004】
また、一般的にファンモータの回転周波数が一定でもファンを駆動させる動力は空気密度に比例することから設置場所の周囲温度が低くなるほど、ファンモータの負荷が高くなる。また同様にファンの吸込みから吐出までの流路抵抗が変化することでもファンモータの負荷は増減する。そのため、ファンモータの回転数制御を行う際には、ファンモータの許容電流値を設定することで、許容値を超える一定以上の電流値が出力された場合にファンモータ保護のためにファンモータへの電力供給が遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-61402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には示されていないが、圧縮機においては、熱交換器とファンは一定の熱量を奪うように構成されることが多い。熱交換器での冷却風の交換熱量Qは下記(1)式を用いて求めることができる。
【0007】
【数1】
【0008】
この(1)式において、ρは空気密度、cは比熱比、Vは冷却風量、Toは熱交換器通過後の冷却風温度、Taは熱交換器通過前の冷却風温度(周囲温度)である。上記(1)式から良く理解されるように、熱交換器通過後の冷却風温度Toが一定で周囲温度Taが上昇した場合に交換熱量を一定とするには、冷却風量Vを増やす必要がある。また、熱交換器通過後の冷却風温度Toは、周囲温度Taの上昇に伴い上昇するが、冷却対象の温度に影響を受ける。その為、実際には、冷却風温度Toの上昇は周囲温度Taの上昇に比べると小さくなる。冷却風量Vはファンの回転周波数に比例することから、ファンの回転周波数の上限は周囲温度Taが最大となる条件で決定されることが多い。一方でファンを駆動するためのファン動力は回転周波数の3乗に比例し、ファンモータの電流値はファン動力に比例することから、小さな回転周波数の増加がファンモータの電流値を大幅に増加させる。さらに周囲温度が低下した場合には、空気密度が増加しファン動力は増加するため、ファンモータが過電流となるおそれがある。
【0009】
本発明は、圧縮機において、周囲温度の変化によるファンモータでの過電流の発生防止を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、被圧縮ガスを吸い込んで圧縮する圧縮機本体と、冷却対象である前記圧縮機本体からの吐出ガス又は前記圧縮機本体に供給される油を内部に流通させながら冷却するための熱交換器と、ファンモータによって駆動され前記熱交換器の外表面に冷却ガスを流して抜熱させるファンと、前記熱交換器の抜熱に供していない状態の前記冷却ガスの温度である冷却ガス初期温度を検出するための温度センサと、前記ファンモータの回転周波数の制御上限である上限周波数を設定可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記温度センサで検出された個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される電流が許容電流値となる回転周波数以下となるように前記上限周波数を設定する圧縮機を提供する。
【0011】
一般的にファンモータの回転周波数が一定でもファンを駆動させる動力は空気密度に比例することから周囲温度が低くなるほど、ファンモータの負荷が高くなる。制御部は、温度センサで検出された個々の冷却ガス初期温度において、ファンモータに供給される電流が許容電流値となる回転周波数以下となるようにファンモータの上限周波数を設定する。そのため、周囲温度の変化によってファンモータに過電流が生じるのを防止できる。
【0012】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、前記関係は、前記冷却ガス初期温度が低いほど前記上限周波数が低くなるように設定されている。
【0013】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、前記関係は、前記冷却ガス初期温度の低下に伴って、前記上限周波数が連続的又は段階的に低くなるように設定されてもよい。
【0014】
前記制御部は前記冷却ガス初期温度と前記上限周波数の関係を記憶し、前記関係は個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される前記電流が一定値となるように前記上限周波数が設定されてもよい。
【0015】
圧縮機は、前記圧縮機本体、前記ファン、前記ファンモータおよび前記熱交換器を収容するパッケージを備えてもよい。
【0016】
前記温度センサは、前記パッケージの吸気開口に配置され、冷却ガス初期温度として、前記吸気開口から取り込まれる前記冷却ガスの温度を測定するものであってもよい。
【0017】
前記温度センサは、前記ファンの上流側に配置され、前記ファンに吸い込まれる冷却ガスの温度を測定するものであってもよい。
【0018】
前記温度センサは、前記ファンの下流側で前記熱交換器までの間に配置され、前記ファンから吐き出される冷却ガスの温度を測定するものであってもよい。
【0019】
前記被圧縮ガスと前記冷却ガスが同一のガスであり、前記温度センサは、前記圧縮機本体の吸込流路に配置され、前記吸込流路から前記圧縮機本体に吸い込まれる前記同一ガスの温度を測定するものであってもよい。
【0020】
前記冷却対象として前記圧縮機本体からの吐出ガスを冷却するためのガスクーラを備え、前記ガスクーラは前記熱交換器を含んでもよい。
【0021】
前記冷却対象として前記圧縮機本体に供給される油を冷却するためのオイルクーラを備え、前記オイルクーラは、前記熱交換器を含んでもよい。
【0022】
本発明の第2の態様は、被圧縮ガスを吸い込んで圧縮する圧縮機本体と、冷却対象である前記圧縮機本体からの吐出ガス又は前記圧縮機本体に供給される油を内部に流通させながら冷却するための熱交換器と、ファンモータによって駆動され前記熱交換器の外表面に冷却ガスを流して抜熱させるファンとを備える圧縮機の制御方法であって、温度センサで前記熱交換器の抜熱に供していない状態の前記冷却ガスの温度である冷却ガス初期温度を検出し、前記温度センサで検出された個々の前記冷却ガス初期温度において、前記ファンモータに供給される電流が許容電流値となる回転周波数以下となるように、前記ファンモータの回転周波数の制御上限である上限周波数を設定する、圧縮機の制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧縮機において、周囲温度変化によってファンモータに過電流が生じるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の模式的な系統図。
図2】本発明の第1実施形態に係る圧縮機における制御の概念を説明するためのブロック図。
図3】従来の圧縮機における制御の概念を説明するためのブロック図。
図4】冷却ガス初期温度とファン上限周波数の関係を示す模式的なグラフ。
図5】本発明の第2実施形態に係る圧縮機の模式的な系統図。
図6】本発明の第3実施形態に係る圧縮機の模式的な系統図。
図7】本発明の第4実施形態に係る圧縮機の模式的な系統図。
図8】筐体内部の構成に関する変形例を示す模式図。
図9】筐体内部の構成に関する変形例を示す模式図。
図10】筐体内部の構成に関する変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照すると、第1実施形態の圧縮機1は、圧縮機本体2、油分離回収器3、筐体4、コントローラ(制御部)5、及びこれらを収容したパッケージ6を備える。
【0027】
圧縮機本体2は、本実施形態では、油冷式スクリュ圧縮機である。圧縮機本体2は、メインモータ2aにより回転駆動される一対のスクリュロータ2bを備える。メインモータ2aの回転数は、メインインバータ7により制御される。個々のスクリュロータ2aのロータ軸2cは、軸受2dによって回転可能に支持されている。フィルタ2eと吸気弁2fを介して吸込流路2gから吸い込まれた被圧縮ガス(本実施形態では空気)は、一対のスクリュロータ2bにより圧縮されて吐出口2hから吐出される。被圧縮ガスは、空気に限定されず、空気以外の窒素ガス等であってもよい。なお、本明細書中では、便宜上、吸込流路2gから吸い込まれるガスを「被圧縮ガス」、吐出口2hから吐出されるガスを「吐出ガス」と呼ぶ。
【0028】
油分離回収器3は、ガス流路8aを介して圧縮機本体2の吐出口2hに接続され、ガス流路8bを介して、ガスクーラである後述のアフタクーラが含む熱交換器11に接続されている。圧縮機本体2の吐出口2hからの吐出ガスは、ガス流路8aを介して油分離回収器3に送られる。圧縮機本体2の吐出口2hからの吐出ガスに含まれる油は、油分離回収器3で吐出ガスから分離され、油分離回収器3の底部の油溜まり3aに溜められる。油分離回収器3からの吐出ガスは、ガス流路8bを介して熱交換器11に送られ、熱交換器11で冷却された後、ガス流路8cを介して供給先(図示せず)に送られる。
【0029】
油分離回収器3の油溜まり3aは、油流路9aを介して、後述するオイルクーラが含む熱交換器12に接続されている。油溜まり3aの油は油流路9aを介して熱交換器12に送られ、熱交換器12で冷却された後、油流路9bを介し、給油対象、具体的には圧縮機本体2のメインモータ2a、軸受2d、及びスクリュロータ2bが収容されたロータ室2jに供給される。メインモータ2aと軸受2dとに供給された油は、最終的にはロータ室2jに流入する。ロータ室2に流入した油は吐出ガスと共に油分離回収器3へ送られる。
【0030】
コントローラ5は、後述するパッケージ吸気温度センサ21と油温度センサ22を含む各種センサからの入力と、上位の制御機器やオペレータによって入力される指令とに基づいて、ファンインバータ15を含む圧縮機1の制御可能な要素を統括的に制御する。
【0031】
パッケージ6には、圧縮機1の設置場所の冷却ガス及び被圧縮ガスをパッケージ6内に取り込むための吸気開口6aと、パッケージ6内のガスをパッケージ6の外部に排出するための排気開口6bとを備える。冷却ガスをパッケージ6外から取り込む吸気開口と、被圧縮ガスをパッケージ6外から取り込む吸気開口とは別に設けてもよい。
【0032】
筐体4は、熱交換器11,12とファン14とを収容する。熱交換器11,12は、内部に冷却対象を流通させながら冷却する。より詳細には、熱交換器11,12は、筐体4の外部から取り込んだ冷却ガスが外表面に流されて内部を流通する冷却対象との間で熱交換が行われることにより、冷却対象を冷却する。本実施形態では、アフタクーラが熱交換器11を含み、オイルクーラが熱交換器12を含む。アフタクーラは、冷却対象として前記圧縮機本体からの吐出ガスを冷却する。オイルクーラは、冷却対象として前記圧縮機本体に供給される油を冷却する。ファン14は、交流モータであるファンモータ13で駆動されて回転し、吸込口14aから冷却ガス(本実施形態では空気)を吸い込んで吐出口14bから吐出する。ファン14は、本実施形態ではターボファンであるが、シロッコファン等の他の形式のものであってもよい。また、冷却ガスは、空気に限られず、窒素等であってもよい。
【0033】
本実施形態では、ファン14は、ファンモータ13によって駆動され熱交換器11,12に冷却ガスを送風して抜熱させる。つまり本実施形態のファン14は送風型のファンである。ファン14は、ファンカバーで囲われており、筐体4の外部の冷却ガスを取り込み、ファンカバーの吸込口14aから吸い込む。本実施形態では、ファンカバーの吐出口14bから吐出された冷却ガスは、アフタクーラ11とオイルクーラ12の外表面を流れながら冷却対象から抜熱(冷却)した後、筐体4の外部に排出される。つまり、本実施形態では、アフタクーラが含む熱交換器11とオイルクーラが含む熱交換器12はファン14の下流に配置されている。熱交換器11では、ファン14から供給される筐体4の外部から取り込んだ冷却ガスと、吐出ガスとの間で熱交換が行われ、吐出ガスが冷却される。オイルクーラ12では、ファン14から供給される筐体4の外部から取り込んだ冷却ガスと、油との間で熱交換が行われ、油が冷却される。なお、本実施形態では、ファン14が熱交換器11、12の上流側に配置されているため、ファン周囲の冷却ガス密度(本実施形態では空気密度)が熱交換に影響され難い。そのため、ファン14が熱交換器11、12の下流側に配置されているものと比較して本発明を適用した場合の有用性が高い。
【0034】
ファンモータ13、従ってファン14の回転数は、ファンインバータ15により制御可能である。後に詳述するように、ファンインバータ15は、ファンモータ13に供給する電流の上限周波数を設定可能である。
【0035】
圧縮機1は、パッケージ6の外部から取り込まれる冷却ガス(本実施形態では空気)の温度(以後、周囲温度という。)、つまり熱交換器11,12通過前の冷却ガスの温度(以後、冷却ガス初期温度という)を検出するための温度センサとして、パッケージ吸気温度センサ21を備える。パッケージ吸気温度センサ21は、パッケージ6の吸気開口6aに設けられ、冷却ガス初期温度として、吸気開口6aから吸い込まれる冷却ガスの温度を測定する。冷却ガスが空気である本実施形態では、パッケージ吸気温度センサ21により外気の温度を直接的に検出している。パッケージ吸気温度センサ21の測定したガス温度Ta1(冷却ガス初期温度の一例)は、コントローラ5に送られる。
【0036】
圧縮機1は、圧縮機本体2の吐出口2hからの吐出ガスの温度を検出するための吐出温度センサとして、油分離回収器3の油溜まり3aの油温を測定する油温度センサ22を備える。つまり、本実施形態では、油温度センサ22により、圧縮機本体2からの吐出ガスの温度を間接的に検出している。油温度センサ22の測定した油温度Td1は、コントローラ5に送られる。油温度センサ22に代えて、圧縮機本体2の吐出口2hに設けられ、吐出ガスの温度、つまり吐出温度Td2を測定してコントローラ5に送る吐出温度センサ23を採用してもよい。
【0037】
次に、コントローラ5とファンインバータ15により実行される制御を説明する。
【0038】
図2を併せて参照すると、コントローラ5は、ファンインバータ15がファンモータ13に供給する電流の周波数の下限値(下限周波数)と上限値(上限周波数)とを記憶しており、下限周波数と上限周波数の間で、ファンインバータ15の周波数、つまりファンモータ13の回転数を制御する。本実施形態では、コントローラ5は、油温度センサ22から入力される油温度Td1に応じて、ファンインバータ15の周波数を制御する。例えば、油温度Td1が所定の温度よりも高い場合、コントローラ5はファンインバータ15の周波数を上昇(ファンモータ13の回転数を上昇)させてアフタクーラ11とオイルクーラ12の冷却力を高める。その逆に、油温度Td1が所定の温度よりも低い場合、コントローラ5はファンインバータ15の周波数を降下(ファンモータ13の回転数を降下)させてアフタクーラ11とオイルクーラ12の冷却力を抑制する。
【0039】
ファンインバータ15は、ファンインバータ15からファンモータ13への供給電流の電流値と、予め定められた閾値(例えば、ファンモータ13の定格電流値に尤度を加えた値)とを比較する。ファンモータ13への供給電流の電流値が当該閾値に達すると、ファンインバータ15は、ファンモータ13を保護するためトリップ(ファンインバータ15からファンモータ13への電力供給遮断)を実行する。
【0040】
ここまでの制御については、図2に示す本実施形態においてコントローラ5が実行する制御と、図3に示す従来の制御と同じである。特に、ファンインバータ15の下限周波数が固定(すなわち、油温度Td1やガス温度Ta1等によらず一定)である点は、図2に示す本実施形態においてコントローラ5が実行する制御と、図3に示す従来の制御とで共通している。しかし、図3に示す従来の制御では、ファンインバータ15の上限周波数も固定(すなわち、油温度Td1やガス温度Ta1等によらず一定)であるのに対して、図2に示す本実施形態においてコントローラ5が実行する制御はファンインバータ15の上限周波数が可変である。以下、この点について説明する。
【0041】
ファンモータ13の回転周波数が一定でも、圧縮機1の設置場所におけるパッケージ6の外部の外気の温度(周囲温度)、つまり冷却ガスとして使用される外気の温度(冷却ガス初期温度に相当)が低いほど、ファンモータ13の負荷が高くなり、トリップを起こしやすい。これはファン14によって送風される冷却ガスのガス密度が高いほど動力が増加し、冷却ガスの温度が低いほど冷却ガス密度が高くなることに起因する。そこで、コントローラ5は、検出された冷却ガス初期温度(本実施形態ではパッケージ吸気温度センサ21によって測定されたガス温度Ta1)が低い程、つまりガス密度が高くなり動力が増加するほどファンインバータ15の上限周波数を低く設定する。これにより、圧縮機1の設置場所の周囲温度変化によって筐体4内のファンモータ13に過電流が生じ、トリップが起きるのを防止できる。
【0042】
図4はコントローラ5が記憶する冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数の関係の種々の例(関係L1~L5)を示す。
【0043】
関係L1~L5では、冷却ガス初期温度t0~t4の範囲において、個々の冷却ガス初期温度において、ファンモータ13に供給される電流が許容電流値以下となるように、上限周波数が設定されている。関係L1~L3では、周囲温度の低下に伴って、上限周波数が連続的に低くなるように設定されている。関係L5では、冷却ガス初期温度の低下に伴って、上限周波数が段階的に低くなるように設定されている。
【0044】
関係L1は、冷却ガス初期温度t0~t4の範囲において、個々の冷却ガス初期温度において、上限周波数がファンモータ13に供給される電流が許容電流値となるように、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数が設定されている。関係L1は、冷却ガス初期温度t0においてファンモータ13に供給される電流が許容電流値となる上限周波数f1と、冷却ガス初期温度t4においてファンモータ13に供給される電流が許容電流値となる上限周波数f5とを含む一次関数である。図4のグラフにおいて、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数の関係が関係L1を示す太実線よりも下側の領域では、個々の冷却ガス初期温度に対する上限周波数は、ファンモータ13に供給される電流が許容電流値を下回るものとなる。従って、冷却ガス初期温度と上限周波数が関係L1を満たすか又は、両者の関係がこの領域内で定められていれば、冷却ガス初期温度t0~t4の範囲における冷却ガス初期温度の低下に起因するファンモータ13での過電流発生を防止できる。関係L2~L5はいずれも、この領域内にある。
【0045】
関係L2では、関係L1と同様に、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数が一次関数として定められている。また、関係L2では、個々の冷却ガス初期温度において、ファンモータ13に供給される電流が一定値となるように上限周波数が設定されている。
【0046】
関係L3では、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数の関係が2つの一次関数で定められている。つまり、関係L3は、冷却ガス初期温度t0における上限周波数f1と冷却ガス初期温度t2における上限周波数f2とを含む一次関数と、冷却ガス初期温度t2における上限周波数f2と冷却ガス初期温度t3における上限周波数f4を含む一次関数で定められている。
【0047】
関係L4では、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数の関係が、冷却ガス初期温度t0における上限周波数f1と冷却ガス初期温度t3における上限周波数f4とを結ぶ下に凸の滑らかな関数、すなわち、下に凸の多項式関数として定められている。
【0048】
関係L5では、冷却ガス初期温度とファンインバータ15の上限周波数の関係が、3段階で段階的ないしステップ関数状に変化する。まず、冷却ガス初期温度t3~t4の冷却ガス初期温度では一定の上限周波数f4である。また、この温度範囲よりも低い、冷却ガス初期温度t1~t3の温度範囲では、上限周波数f4よりも低い一定の上限周波数f3である。また、この温度範囲よりも低い、冷却ガス初期温度t0~t1の温度範囲では、上限周波数f3よりも低い一定の上限周波数f1である。
【0049】
以下、本発明の第2及び第3実施形態を説明する。これらの実施形態について、特に言及しない点は、第1実施形態と同様である。
【0050】
(第2実施形態)
図5に示す本発明の第2実施形態に係る圧縮機1は、冷却ガス初期温度を検出するための空気温度センサとして、パッケージ吸気温度センサ21(図1参照)に代えて、ファン14の上流側(例えば吸込口14aの直前)に設けられ、吸込口14aからファン14に吸い込まれる冷却ガスの温度を測定するファンガス温度センサ24Aを備える。コントローラ5はファンガス温度センサ24Aによって測定されたガス温度Ta2(冷却ガス初期温度の一例)に基づいて、第1実施形態と同様に、ファンインバータ15の上限周波数を設定する。
【0051】
(第3実施形態)
図6に示す本発明の第3実施形態に係る圧縮機1では、冷却ガス初期温度を検出するための空気温度センサとして、パッケージ吸気温度センサ21(図1参照)に代えて、ファン14の下流側で熱交換器11,12までの間(例えば吐出口14aの直後)に、ファン14の吐出口14bから吐出される冷却ガスの温度を測定するファンガス温度センサ24Bが配置されている。コントローラ5はファンガス温度センサ24Bによって測定されたガス温度Ta3(冷却ガス初期温度の一例)に基づいて、第1実施形態と同様に、ファンインバータ15の上限周波数を設定する。
【0052】
(第4実施形態)
図7に示す本発明の第4実施形態に係る圧縮機1は、冷却ガス初期温度を検出するための空気温度センサとして、パッケージ吸気温度センサ21(図1参照)に代えて、圧縮機本体2の吸込流路2gに設けられ、吸込流路2gから圧縮機本体2に吸い込まれる被圧縮ガスの温度を測定する圧縮機吸気温度センサ25を備える。本実施形態では被圧縮ガスと冷却ガスとが同一のガスであるので、コントローラ5は圧縮機吸気温度センサ25によって測定されたガス温度Ta4(冷却ガス初期温度の一例)に基づいて、第1実施形態と同様に、ファンインバータ15の上限周波数を設定する。
【0053】
図8から図10は、筐体4内部の構成に関する種々の変形例を示す。これらの変形例は、第1から第4実施形態のいずれにも適用できる。
【0054】
図8に示す変形例では、熱交換器11,12は、ファン14の吐出口14b側ではなく吸込口14a側に配置されている。筐体4に導入されてファン14の吸込口14aに吸い込まれる冷却ガスがアフタクーラ11とオイルクーラ12の外表面を流れ、熱交換に供される。つまり、本実施形態では、アフタクーラ11とオイルクーラ12はファン14の上流に配置されている。
【0055】
図9に示す変形例では、2個のファン14の吐出口14bから吐出された冷却ガスがアフタクーラ11とオイルクーラ12の外表面を流れ、熱交換に供される。ファン14の個数は3個以上であってもよい。
【0056】
図10に示す変形例では、熱交換器11,12のそれぞれに筐体4およびファンが設けられている。
【0057】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、本発明の他の実施形態では、圧縮機本体2は、オイルフリー式スクリュ圧縮機であってもよい。また、本発明の実施形態では、冷却ガスとして外気(空気)を例に説明したが外気以外の冷却ガスであってもよい。また、本発明の実施形態では、パッケージ6が圧縮機本体2、油分離回収器3、筐体4及びコントローラ5を収容した構成について説明したが、圧縮機1はパッケージ6を備えていなくてもよい。さらに、ファンモータ13の回転数を制御し、かつ上限周波数を設定可能な回転数制御部として、インバータ15以外のものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 圧縮機
2 圧縮機本体
2a メインモータ
2b スクリュロータ
2c ロータ軸
2d 軸受
2e フィルタ
2f 吸気弁
2g 吸込流路
2h 吐出口
2j ロータ室
3 油分離回収器
3a 油溜まり
4 筐体
5 コントローラ
6 パッケージ
6a 吸気開口
6b 排気開口
7 メインインバータ
8a ガス流路(圧縮機本体~油分離回収器)
8b ガス流路(油分離回収器~アフタクーラ)
8c ガス流路(アフタクーラ~供給先)
9a 油流路(油溜まり~オイルクーラ)
9b 油流路(オイルクーラ~潤滑対象)
11 熱交換器(アフタクーラ)
12 熱交換器(オイルクーラ)
13 ファンモータ
14 ファン
14a 吸込口
14b 吐出口
15 ファンインバータ
21 パッケージ吸気温度センサ
22 油温度センサ
23 吐出温度センサ
24A,24B ファンガス温度センサ
25 圧縮機吸気温度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10