(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H02S 40/12 20140101AFI20241129BHJP
H02S 30/10 20140101ALI20241129BHJP
【FI】
H02S40/12
H02S30/10
(21)【出願番号】P 2021047236
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 謙慈
(72)【発明者】
【氏名】田結荘 明
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 裕一
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/043658(WO,A1)
【文献】特開2016-008482(JP,A)
【文献】特開2014-127556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0333305(US,A1)
【文献】特開2015-224508(JP,A)
【文献】特開2004-308409(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 30/00-40/42
E04D 13/10
E04D 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルが封止されることで集合したセル集合体の周囲に位置する外周フレームを備え、
前記外周フレームは、モジュール設置位置において傾斜して設置された場合に下方に位置する下部フレームを有し、
前記下部フレームは、前記セル集合体を支持する基部と、前記基部の外方に取り付けられるカバー部と、を有し、
前記カバー部は、モジュール受光面における積雪の下方への滑り止めとなる雪止め突起
及び厚帯部を一体に有した第1カバー部、または、前記雪止め突起
及び前記厚帯部を有さない第2カバー部を、前記基部と前記カバー部とに亘って設けられる締結部材の着脱により選択可能とした
ものであって、
前記第1カバー部は、前記基部に当接する下面部と、前記下面部に対して直交し、前記モジュール受光面の一部を覆う受光面対応部と、を有し、
前記厚帯部は、前記第1カバー部の前記下面部において、前記雪止め突起が形成された側の端部であり前記受光面対応部とは反対側に、前記第1カバー部の長手方向に連続して延びるように形成された、板厚の拡大された部分であり、
前記雪止め突起は、前記受光面対応部から前記下面部と反対方向に延び、かつ、モジュール設置状態での水平方向に延びる板状部分であって、更に、厚さ方向に貫通した連通部を有し、
前記雪止め突起の、前記受光面対応部に近い基端部での板厚が、先端部での板厚よりも大きく、当該基端部が斜面または湾曲面を有しており、前記連通部は前記斜面または湾曲面を有する部分には形成されておらず、前記斜面または湾曲面を有する部分よりも前記雪止め突起の先端側に形成されている太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記締結部材はねじであって、
前記基部に対し、モジュール設置状態での傾斜方向に沿う方向で下方から上方に前記締結部材が差し込まれることにより、前記カバー部の前記取り付けがなされる、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記カバー部は、前記基部よりも軽量な材質とされている、請求項1
または2に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪地に設置可能な太陽電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪地に設置される太陽電池モジュールのうち、特に建築物の傾斜した屋根に設置されるものには、屋根からの落雪を抑制するため、モジュール受光面における積雪の下方への滑り止めとなる雪止めが設けられることがある。特に、瓦等の、屋根材と一体とされた太陽電池モジュールでは、太陽電池モジュールが建築物の屋根の一部となることから、雪止めを付加することが要求される。
【0003】
特許文献1には、太陽電池モジュールの有するフレームが一体的に雪止めを有する構成が記載されている。この構成では、積雪地向けと非積雪地向けで異なる形状の太陽電池モジュールを用意しなければならないことから、製造及び在庫管理に関するコスト面で不利である。
【0004】
一方、特許文献2には、雪止めを太陽電池モジュールとは別体とした構成が記載されている。この構成では、太陽電池システムを構成する全体の部品点数が増加することから、在庫管理及び設置現場での工数に関するコスト面で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-13725号公報
【文献】特開2003-262017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、積雪地への設置に対応しつつもコスト面を改善した太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の太陽電池セルが封止されることで集合したセル集合体の周囲に位置する外周フレームを備え、前記外周フレームは、モジュール設置位置において傾斜して設置された場合に下方に位置する下部フレームを有し、前記下部フレームは、前記セル集合体を支持する基部と、前記基部の外方に取り付けられるカバー部と、を有し、前記カバー部は、モジュール受光面における積雪の下方への滑り止めとなる雪止め突起を一体に有した第1カバー部、または、前記雪止め突起を有さない第2カバー部を、前記基部と前記カバー部とに亘って設けられる締結部材の着脱により選択可能とした太陽電池モジュールである。
【0008】
この構成によれば、下部フレーム自体が雪止め機能を発揮するので、太陽電池モジュールとは別に雪止め部材を設ける必要がない。また、外周フレームのうちカバー部以外の部分を共通化できる。
【0009】
また、前記締結部材はねじであって、前記基部に対し、モジュール設置状態での傾斜方向に沿う方向で下方から上方に前記締結部材が差し込まれることにより、前記カバー部の前記取り付けがなされるものとできる。
【0010】
この構成によれば、モジュール設置状態での傾斜方向に沿う方向に延びるセル集合体と平行に締結部材を差し込むことができる。このため、セル集合体との干渉を考慮しなくてよい。
【0011】
また、前記第1カバー部は、前記基部に当接する下面部と、前記下面部に対して直交し、前記モジュール受光面の一部を覆う受光面対応部と、を有し、前記雪止め突起は、前記受光面対応部から前記下面部と反対方向に延び、かつ、モジュール設置状態での水平方向に延びる板状部分であって、更に、厚さ方向に貫通した連通部を有するものとできる。
【0012】
この構成によれば、連通部により、雪止め突起に接して溜まる水を流し去ることができる。
【0013】
また、前記雪止め突起は、前記受光面対応部に近い基端部での板厚が、先端部での板厚よりも大きいものとできる。
【0014】
この構成によれば、雪止め突起に雪の圧力に耐える強度を持たせられる。
【0015】
また、前記雪止め突起の前記基端部が斜面または湾曲面を有しており、前記連通部は前記斜面または湾曲面を有する部分よりも前記雪止め突起の先端側に形成されているものとできる。
【0016】
この構成によれば、雪止め突起において、斜面または湾曲面を有する部分が途切れずに形成されるため、下部フレームの強度を保ちつつ、連通部による排水が可能である。
【0017】
また、前記カバー部は、前記基部よりも軽量な材質とされているものとできる。
【0018】
この構成によれば、太陽電池モジュールの軽量化に貢献できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、太陽電池モジュールとは別に雪止め部材を設ける必要がない。また、外周フレームのうちカバー部以外の部分を共通化できる。よって、積雪地への設置に対応しつつもコスト面を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールを複数、家屋の屋根に設置した状態の例を示す側面図(家屋側の構成については断面図)である。
【
図2A】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有しないものを示す平面図である。
【
図2B】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有しないものを示す正面図である。
【
図2C】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有しないものを示す右側面図である。
【
図3】
図2CにおけるIII囲み部の拡大図である。
【
図4A】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有するものを示す平面図である。
【
図4B】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有するものを示す正面図である。
【
図4C】前記太陽電池モジュールのうち雪止め突起を有するものを示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明につき、一実施形態に係る太陽電池モジュール1を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0022】
本実施形態の太陽電池モジュール1は瓦型であって、複数枚連なった瓦と同じ寸法に形成されており、例えば屋根材である瓦の一部を置き換えるようにして建築物(家屋等)の屋根Rに配置することができる。太陽電池モジュール1は、単体の平面視形状が
図2Aまたは
図4Aに示すような長方形形状であって、
図1に示すように、複数の太陽電池モジュール1の短辺側が一部重なるようにして屋根R上に配置される。太陽電池モジュール1は、屋根Rの下地材R1に対して例えばねじ止めにより固定される。なお、
図1には、雪止め突起3223を有しない太陽電池モジュール1(1B)を示している。
【0023】
本実施形態の太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル21が封止されることで集合したセル集合体2の周囲に位置する外周フレーム3を備える。各太陽電池セル21は短冊状とされている。短辺側が一部重なり合うようにされることで複数(具体的には10枚)の太陽電池セル21が電気的に直列接続(シングリング接続)されたことにより、平面視で略長方形状の太陽電池ストリング22が形成される。本実施形態の太陽電池モジュール1では、複数(具体的には6個)の太陽電池ストリング22が横並びに配置されて電気的に並列接続されている。前記「セル集合体」とは、本実施形態では、複数(6個)の太陽電池ストリング22が集合し、封止されたものを指す。セル集合体2は、両面がガラス板(強化ガラス製)によって、または、受光面(主面)側に配置されたガラス板と、受光面(主面)に対する反対面に配置された樹脂フィルムとによって、封止樹脂が介在した形で挟まれ、一かたまりで板状の形態を有する封止体とされている。モジュール設置状態(
図1参照)でのセル集合体2の上端部と下端部とには樹脂製のガスケット4が取り付けられている。
【0024】
外周フレーム3は、屋根R上等のモジュール設置位置において傾斜して設置された場合に上方に位置する上部フレーム31、下方に位置する下部フレーム32、側方に位置する側方フレーム33を有する。各フレーム31~33のうちで下部フレーム32は、セル集合体2を支持する基部321と、基部321の外方(太陽電池モジュール1の外方であって、本実施形態ではモジュール設置状態で斜め下方)に取り付けられるカバー部322と、を有する。
【0025】
基部321は、セル集合体2の反対面に隣接して配置される、断面視で変形「コ」字形状の部材である。変形「コ」字形状のうち表側部分3211は、セル集合体2の受光面(主面)に対して平行であり、
図3及び
図5に示すように、セル集合体2の下端部をガスケット4越しに支持する。表側部分3211に平行な裏側部分3212は、
図1に示すように、複数の太陽電池モジュール1が重ねられた場合に、他の太陽電池モジュール1が備えるセル集合体2の受光面(主面)に当接する。表側部分3211と裏側部分3212とを結び、セル集合体2の受光面(主面)に対して直交する下側部分3213には、
図3及び
図5に示すように、後述するカバー部322の下面部3221が外方から当接する。
【0026】
基部321は、例えばめっき鋼板が折り曲げられて形成されている。一方、カバー部322は、例えばアルミニウム合金の押し出し成形で形成されている。つまり、カバー部322は基部321よりも軽量な材質とされている。このため、太陽電池モジュール1の軽量化に貢献できる。また、カバー部322は太陽電池モジュール1において着脱可能な部分であることから、軽量な材質を用いることにより、着脱に係る作業性を良好にできる。
【0027】
カバー部322は、形状の異なる第1カバー部322Aと第2カバー部322Bとが、基部321への取り付けに当たって選択可能とされている。第1カバー部322Aは、
図5Cに示すように、モジュール受光面(具体的にはセル集合体2の受光面(主面))における積雪の下方への滑り止めとなる雪止め突起3223を一体に有している。これに対して第2カバー部322Bは、
図3Cに示すように、雪止め突起3223を有さない。
【0028】
カバー部322は基部321に対して着脱可能である。着脱は通常、太陽電池モジュール1の製造時に行われるが、モジュール設置現場で行うこともできる。基部321へのカバー部322の取り付けは、基部321とカバー部322とに亘って設けられる締結部材によりなされる。本実施形態では締結部材がねじ323とされている。
図2A、
図2B、
図4A、
図4Bに示すように、複数(具体的には6本)の、ボルトやビスであるねじ323が間隔をおいて設けられる。こうして、本実施形態の太陽電池モジュール1は、第1カバー部322Aまたは第2カバー部322Bを、基部321に対するねじ323の着脱により選択可能に備えることができる。このため、外周フレーム3のうち、カバー部322以外の部分を共通化できる。第1カバー部322Aを取り付けた太陽電池モジュール1(1A)は、積雪地(寒冷地)への設置に適する。また、第2カバー部322Bを取り付けた太陽電池モジュール1(1B)は、非積雪地(暖地)への設置に適する。
【0029】
下部フレーム32が第1カバー部322Aを備えた場合には、下部フレーム32自体が雪止め機能を発揮するので、太陽電池モジュール1とは別に雪止め部材を設ける必要がない。また、前述のように、外周フレーム3の大部分の構成を共通化できるメリットがある。
【0030】
本実施形態では、基部321に対し、例えば屋根R上におけるモジュール設置状態での傾斜方向に沿う方向で下方(斜め下方)から上方(斜め上方)にねじ323が差し込まれることにより、カバー部322の取り付けがなされる。モジュール設置状態で、太陽電池モジュール1のうち、発電がなされるセル集合体2はモジュール設置状態での傾斜方向に沿って位置する。このように、モジュール設置状態での傾斜方向に沿う方向に延びるセル集合体2と平行にねじ323を差し込むことができる。このため、セル集合体2はねじ323と関係しないようにできるため、ねじ323のセル集合体2との干渉を考慮しなくてよく、また、ねじ323の取り付けによって発電効率が影響されない。
【0031】
第1カバー部322Aは、
図5に示すように、基部321に当接するものであって、セル集合体2の受光面(主面)に対して直交する下面部3221と、下面部3221に対して直交し(つまり、セル集合体2の受光面(主面)に対して平行であり)、モジュール受光面(具体的にはセル集合体2)の一部を覆う受光面対応部3222と、を有する。雪止め突起3223は、受光面対応部3222から下面部3221と反対方向に延び、かつ、モジュール設置状態での水平方向に延びる板状部分である。また、第1カバー部322Aは、下面部3221において雪止め突起3223が形成された側の端部であって、受光面対応部3222と反対側に、板厚が拡大され、第1カバー部322Aの長手方向に連続して延びる厚帯部3226が形成されている。
【0032】
一方、第2カバー部322Bは、
図3に示すように、基部321に当接する下面部3221と、下面部3221に対して直交し、モジュール受光面の一部を覆う受光面対応部3222と、を有する点は第1カバー部322Aと同じである。ただし、雪止め突起3223、厚帯部3226を有しない。
【0033】
雪止め突起3223は、受光面対応部3222に近い根元側である基端部での板厚が、突出端である先端部での板厚よりも大きい。このため、雪止め突起3223に雪の圧力に耐える強度を持たせられる。また、本実施形態では、受光面対応部3222と反対側に厚帯部3226が形成されている。このため、雪止め突起3223の基端部の板厚が更に大きくなっており、より一層強化されている。
【0034】
また、雪止め突起3223は、厚さ方向に貫通した連通部3224を有する。本実施形態の連通部3224は、
図4Bに示すように、モジュール設置状態での水平方向中央と両端の3箇所に設けられている。なお、両端側の連通部3224は、第1カバー部322Aの長手方向の一方が開放された形態である。この連通部3224により、雪止め突起3223に接して溜まる水(雨水や雪解け水)を斜め下方に流し去ることができる。このため、溜まり水の残留により、セル集合体2の受光面(主面)に、溜まり水に含まれていた塵埃が付着したり、苔が発生したりすることを抑制できる。
【0035】
また、雪止め突起3223の基端部が湾曲面3225を有していてアール形状とされている。なお、この部分は、湾曲面ではなく平面状の斜面を有していてもよい。また、連通部3224は湾曲面3225(または斜面)を有する部分よりも先端側に形成されている。つまり、連通部3224は雪止め突起3223の先端部から基端寄りに凹むように設けられた凹部である。雪止め突起3223において、湾曲面3225(または斜面)を有する部分、つまり、先端部よりも厚い部分が途切れず連続的に形成されるため、下部フレーム32の強度を保ちつつ、連通部3224による斜め下方への排水が可能である。
【0036】
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、前記実施形態の太陽電池モジュール1は瓦型であり、例えば屋根材(瓦)の一部を置き換えるようにして建築物(家屋等)の屋根Rに配置することができるものであった。しかし、これに限定されず、屋根材(瓦)の上方に重ねて配置することもできる。更に、建築物(家屋等)の屋根Rとは関係なく設けられる架台上に配置されるものであっても、雪止めの必要性がある場合には適用してよい。
【0038】
また、前記実施形態では雪止め突起3223は板状とされていたが、これに限られず、例えば、複数の柱状部分が並んで形成されていてもよい。また、前記実施形態では一つの第1カバー部322Aに凹部である連通部3224が設けられていた。しかしこれに限られず、第1カバー部322Aを複数の部材から構成し、各部材間に隙間を空けて配置した場合のその隙間を連通部3224としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 太陽電池モジュール
1A 雪止め突起を有する太陽電池モジュール
1B 雪止め突起を有しない太陽電池モジュール
2 セル集合体
21 太陽電池セル
22 太陽電池ストリング
3 外周フレーム
31 上部フレーム
32 下部フレーム
321 基部
322 カバー部
322A 第1カバー部
322B 第2カバー部
3221 下面部
3222 受光面対応部
3223 雪止め突起
3224 連通部
3225 湾曲面
3226 厚帯部
323 締結部材、ねじ
33 側方フレーム
4 ガスケット
R 屋根