IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7595499鉄道システム、通過時刻調整装置、通過時刻調整方法、および通過時刻調整プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】鉄道システム、通過時刻調整装置、通過時刻調整方法、および通過時刻調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20241129BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B61L27/12
B60L15/40 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021052078
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149776
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】藤原 麻帆
(72)【発明者】
【氏名】立石 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀男
(72)【発明者】
【氏名】島吉 翔太
(72)【発明者】
【氏名】上田 健詞
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-283163(JP,A)
【文献】特開2013-251953(JP,A)
【文献】特開平04-252769(JP,A)
【文献】特開2017-165237(JP,A)
【文献】特開2019-122171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行の制御が行われる列車が前記停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、前記列車の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって前記列車が前記通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記通過予測時刻に基づいて、変更後の前記通過予定時刻に応じた時刻で前記通過駅を前記列車が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択する選択部と、
前記列車のランカーブを前記修正ランカーブに切り替えるための切替情報を前記列車の車上装置へ出力する切替情報出力部と、を備える
ことを特徴とする鉄道システム。
【請求項2】
前記算出部は、
前記列車が前記停車駅間を走行中に、前記通過予定時刻の変更がある場合に、前記通過予測時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道システム。
【請求項3】
前記停車駅間には、
前記通過駅が複数あり、
前記選択部は、
複数の前記通過駅の前記通過予定時刻の変更がある場合に、変更後の前記通過予定時刻毎に前記修正ランカーブを選択し、
前記切替情報出力部は、
前記選択部によって前記通過予定時刻毎の前記修正ランカーブが決定された後、前記通過予定時刻毎の前記切替情報を前記列車の車上装置へ出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道システム。
【請求項4】
前記停車駅間には、
前記通過駅が複数あり、
前記選択部は、
前記列車が前記停車駅間を走行中に、前記通過駅の前記通過予定時刻が変更されると、前記修正ランカーブを選択し、
前記切替情報出力部は、
前記選択部によって前記修正ランカーブが選択されると、前記切替情報を前記列車の車上装置へ出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道システム。
【請求項5】
前記算出部は、
前記停車駅間を前記列車が走行中に、前記列車が前記停車駅に到着する予定時刻である到着予定時刻の変更がある場合に、前記列車で用いられるランカーブが切り替えられた場合に前記列車が前記停車駅に到着すると予測される到着予測時刻を算出し、
前記選択部は、
前記算出部によって算出された前記到着予測時刻に基づいて、変更後の前記到着予定時刻に応じた時刻で前記停車駅に前記列車が到着するランカーブを前記修正ランカーブとして選択する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項6】
前記選択部は、
前記列車のランカーブを前記修正ランカーブに切り替える前記列車の位置である切替位置を決定し、
前記切替情報出力部は、
前記選択部によって決定された前記切替位置で、前記列車のランカーブが前記修正ランカーブに切り替えられるように、前記切替情報を前記列車の車上装置へ出力する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項7】
前記算出部は、
前記通過予測時刻を前記列車のランカーブの切替位置を変えながら算出し前記通過予測時刻が一致する切替位置を前記修正ランカーブの切替位置として決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の鉄道システム。
【請求項8】
前記算出部は、
前記列車で用いられるランカーブが前記修正ランカーブに切り替えられた場合の前記停車駅間の走行時分を算出し、
前記切替情報出力部は、
前記算出部で算出された前記停車駅間の走行時分の情報を前記列車の車上装置へ出力する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項9】
前記算出部は、
前記列車で用いられるランカーブが惰行運転によって切り替えられた場合に前記列車が前記通過駅を通過すると予測される時刻を前記通過予測時刻として算出する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項10】
前記算出部は、
走行シミュレーションによって前記通過予測時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項11】
前記ランカーブの切り替えに必要な距離または時間を示す第1切替判定情報と前記停車駅間の各位置から前記通過駅までの間の前記列車の走行時分の情報である第2切替判定情報とを記憶する記憶部を備え、
前記算出部は、
前記第1切替判定情報と前記第2切替判定情報と前記列車の位置とに基づいて、前記通過予測時刻を算出する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の鉄道システム。
【請求項12】
停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行する列車が前記停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、前記列車の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって前記列車が前記通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記通過予測時刻に基づいて、変更後の前記通過予定時刻に応じた時刻で前記通過駅を前記列車が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択する選択部と、を備える
ことを特徴とする通過時刻調整装置。
【請求項13】
停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行の制御が行われる列車が前記停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、前記列車の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって前記列車が前記通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出するステップと、
算出された前記通過予測時刻に基づいて、変更後の前記通過予定時刻に応じた時刻で前記通過駅を前記列車が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択するステップと、
前記列車のランカーブを前記修正ランカーブに切り替えるための切替情報を前記列車の車上装置へ出力するステップと、を含む
ことを特徴とする通過時刻調整方法。
【請求項14】
停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行の制御が行われる列車が前記停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、前記列車の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって前記列車が前記通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出するステップと、
算出された前記通過予測時刻に基づいて、変更後の前記通過予定時刻に応じた時刻で前記通過駅を前記列車が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択するステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする通過時刻調整プログラム。
【請求項15】
前記列車のランカーブを前記修正ランカーブに切り替えるための切替情報を前記列車の車上装置へ出力するステップをさらにコンピュータに実行させる
ことを特徴とする請求項14に記載の通過時刻調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行の制御にランカーブが用いられる列車が通過駅を通過する時刻を調整することができる鉄道システム、通過時刻調整装置、通過時刻調整方法、および通過時刻調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、停車駅間の走行速度を規定するランカーブが用いられる列車の走行が行われる鉄道システムが知られている。例えば、特許文献1には、列車の次駅での駅停車時間がダイヤ上の駅停車時間よりも長いと予測した場合、次駅での出発遅れを防止するために、走行中のランカーブよりも駅間走行時分が短いランカーブに切り替えて走行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-144754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、停車駅間にある通過駅を列車が通過する予定時刻である通過予定時刻が変更される場合のランカーブの切り替えについては検討されておらず、列車が通過駅を実際に通過する時刻は調整されていない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、通過予定時刻が変更される場合において通過時刻を調整することができる鉄道システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の鉄道システムは、算出部と、選択部と、切替情報出力部とを備える。算出部は、停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行の制御が行われる列車が停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、列車の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって列車が通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出する。選択部は、算出部によって算出された通過予測時刻に基づいて、変更後の通過予定時刻に応じた時刻で通過駅を列車が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択する。切替情報出力部は、列車のランカーブを修正ランカーブに切り替えるための切替情報を列車の車上装置へ出力する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、通過予定時刻が変更される場合において通過時刻を調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図
図2】実施の形態1にかかる鉄道システムで実行される時刻調整処理を説明するための図
図3】実施の形態1にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図
図4】実施の形態1にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図
図5】実施の形態1にかかるランカーブ情報の一例を示す図
図6】実施の形態1にかかる複数のランカーブの一例を示す図
図7】実施の形態1にかかる対象列車が停車駅に停車中に選択されたランカーブの一例を示す図
図8】実施の形態1にかかる第2選択ランカーブ候補の一例を示す図
図9図8に示す第2選択ランカーブ候補の中から1つの第2選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図
図10】実施の形態1にかかる第3選択ランカーブ候補の一例を示す図
図11図10に示す第3選択ランカーブ候補の中から1つの第3選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図
図12】実施の形態1にかかる対象列車が停車駅間を走行中に選択されるランカーブの一例を示す図
図13図12に示す第1選択ランカーブ候補の中から1つの第1選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図
図14】実施の形態1にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図
図15】実施の形態1にかかる通過時刻調整装置の処理部による処理の一例を示すフローチャート
図16】実施の形態1にかかる通過時刻調整装置のハードウェア構成の一例を示す図
図17】実施の形態2にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図
図18】実施の形態2にかかる対象列車が停車中に選択される2つのランカーブの一例を示す図
図19】実施の形態2にかかる対象列車が走行中に選択される修正ランカーブの一例を示す図
図20】実施の形態2にかかる修正ランカーブの切替位置の調整方法を説明するための図
図21】実施の形態3にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図
図22】実施の形態3にかかる対象列車が停車駅間を走行中に選択されるランカーブの一例を示す図
図23】実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図
図24】実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶される第1切替判定情報の一例を示す図
図25】実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶される第2切替判定情報の一例を示す図
図26】実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶されるランカーブ情報の一例を示す図
図27】実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶されるランカーブ情報を説明するための図
図28】実施の形態5にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図
図29】実施の形態5にかかる車上装置の構成の一例を示す図
図30】実施の形態5にかかる車上装置の通過時刻調整部の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる鉄道システム、通過時刻調整装置、通過時刻調整方法、および通過時刻調整プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図である。実施の形態1にかかる鉄道システム1は、複数の列車2~2と、複数の無線装置3と、地上制御装置4と、連動制御装置5と、運行管理装置6と、通過時刻調整装置7とを備える。mは、2以上の整数である。鉄道システム1は、例えば、運行ダイヤにおける列車の間隔が数分程度であるような高密度線区に適用されるが、鉄道システム1の適用対象は、高密度線区に限定されない。
【0011】
鉄道システム1は、CBTC(Communications Based Train Control)とも呼ばれ、複数の列車2~2と地上設備との間での通信を使って複数の列車2~2の運行と制御を行う信号保安技術を含む。以下、複数の列車2~2の各々を個別に区別せずに示す場合、列車2と記載する場合がある。
【0012】
複数の無線装置3と地上制御装置4とは、ネットワーク8を介して互いに通信可能に接続される。地上制御装置4、連動制御装置5、運行管理装置6、および通過時刻調整装置7は、ネットワーク9を介して互いに通信可能に接続される。ネットワーク8,9はイントラネットであるが、インターネット、またはイントラネットおよびインターネット以外のネットワークであってもよい。
【0013】
無線装置3は、列車2に搭載された車上装置10と地上制御装置4との間で送受信される情報を中継する。例えば、無線装置3は、列車2の車上装置10から送信される無線信号を受信し、無線信号に含まれる列車状態情報を地上制御装置4へ送信する。列車状態情報は、例えば、列車2の位置を示す位置情報と列車2の速度を示す速度情報とを含む。
【0014】
また、無線装置3は、無線装置3の無線通信範囲内に存在する列車2の車上装置10への列車制御情報を地上制御装置4から取得した場合、取得した列車制御情報を含む無線信号を車上装置10へ送信する。列車制御情報は、保安用途の情報であり、例えば、列車2の経路情報および停車位置情報を含む。
【0015】
経路情報は、列車2が進行する経路を判定する情報を含む。停車位置情報は、列車2が停車すべき停車限界位置を示す情報を含み、列車2は経路内を停車限界位置まで進行することができる。停車限界位置は、経路内に先行列車および他の支障物が存在しない場合には、経路終端に設定される。また、出発進路または場内進路が進行現示でない場合には、停車限界位置は、進路の手前の位置に設定される。
【0016】
地上制御装置4は、無線装置3から列車状態情報を取得し、取得した列車状態情報に基づいて、各列車2の現在位置を示す位置情報を取得する。また、地上制御装置4は、後述するように列車制御情報を列車2毎に生成する。地上制御装置4は、各列車2の列車状態情報および列車制御情報を含む列車情報を運行管理装置6へ出力する。
【0017】
連動制御装置5は、運行管理装置6から出力される進路制御情報を受信する。連動制御装置5は、受信した進路制御情報に基づいて、不図示の転てつ機を制御して各列車2の進路を形成したり、各列車2の信号情報を生成し、生成した各列車2の信号情報を地上制御装置4へ出力したりする。かかる信号情報は、進路への進行許可を与える信号を現示する進行現示を示す情報を含む。
【0018】
また、連動制御装置5は、運行管理装置6から進路制御情報が受信されない進路については、進路への進行許可を与えない信号を現示する停車現示を示す情報を含む信号情報を生成し、地上制御装置4へ出力する。
【0019】
地上制御装置4は、連動制御装置5から送信される信号情報に基づいて、上述した列車制御情報を列車2毎に生成する。地上制御装置4は、列車2の列車状態情報と信号情報とに基づいて、列車2が走行可能な経路を示す経路情報を生成する。また、地上制御装置4は、経路内に存在する先行列車および他の支障物に基づいて停車位置情報を生成し、生成した停車位置情報を経路情報および信号情報に加えることで、列車制御情報を生成することができる。
【0020】
運行管理装置6は、地上制御装置4から各列車2の列車情報を取得する。運行管理装置6は、取得した各列車2の列車情報と、記憶しているダイヤ情報とに基づいて、列車2がダイヤ情報に従った時間でダイヤ情報に従った進路を走行するように、各列車2の進路制御情報を生成する。進路制御情報には、例えば、列車2の情報および進路の情報が含まれる。運行管理装置6は、生成した各列車2の進路制御情報を連動制御装置5へ出力する。
【0021】
また、運行管理装置6は、地上制御装置4および無線装置3を介して、設定情報および切替情報などを車上装置10へ送信する。設定情報および切替情報には、例えば、停車駅間の走行時分の情報またはランカーブIDなどが含まれる。
【0022】
列車2の車上装置10には、互いに特性が異なる複数のランカーブに関する情報であるランカーブ情報が記憶されている。ランカーブ情報には、ランカーブの情報と走行時分の情報とがランカーブ毎に含まれる。各ランカーブは、停車駅間の列車2の走行速度を規定する。
【0023】
車上装置10は、運行管理装置6から通知される設定情報または切替情報に基づいて、複数のランカーブの中から走行に用いるランカーブを選択する。車上装置10は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、選択したランカーブに基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、車上装置10は、ランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0024】
また、車上装置10は、制御モードが手動運転モードに設定されている場合、選択したランカーブを不図示の表示部に表示させることができる。列車2の運転手は、不図示の表示部に表示されたランカーブに従って列車2を操作することで、ランカーブに従った速度で列車2の走行を制御することができる。なお、車上装置10は、自動運転モードおよび手動運転モードのうち一方の制御モードのみ実行可能な構成であってもよい。
【0025】
実施の形態1に係る鉄道システム1は、何らかの理由によって列車2が遅延する場合、列車2の停車駅への到着時刻に加えて、停車駅間の通過駅を列車が通過する時刻である通過時刻を調整する時刻調整処理を行う。以下、鉄道システム1で実行される時刻調整処理について説明する。図2は、実施の形態1にかかる鉄道システムで実行される時刻調整処理を説明するための図である。
【0026】
図2に示す例では、列車2が時刻調整処理の対象となる対象列車であり、列車2の停車駅がA駅とD駅であり、A駅とD駅との間の通過駅がB駅である。通過駅は、停車駅間にある駅であって列車2が停車せずに通過する駅である。また、列車2の車上装置10は、ランカーブC1,C2,C3に関する情報であるランカーブ情報を記憶しており、列車2がA駅から出発する前にランカーブC2が選択されている。以下、ランカーブC1,C2,C3の各々を個別に区別せずに示す場合、ランカーブと記載する場合がある。
【0027】
運行管理装置6は、列車2がA駅に停車中または列車2がA駅とB駅との間を走行中に、列車2の前を走行する先行列車に遅延などが生じた場合または先行列車の遅延が回復した場合などにおいて、列車2の時刻変更処理を行う。列車2の時刻変更処理は、列車2がB駅を通過する予定時刻であるB駅の通過予定時刻を変更する処理を含む。運行管理装置6は、例えば、各列車2の位置情報とダイヤ情報とに基づいて、列車2の時刻変更処理が必要か否かを判定する。
【0028】
運行管理装置6は、変更後のB駅の通過予定時刻を含む時刻調整要求を通過時刻調整装置7へ送信する(ステップS1)。通過時刻調整装置7は、運行管理装置6からの時刻調整要求を受信した場合、列車2がB駅の通過予定時刻に応じた時刻で通過駅を通過するように、列車2のランカーブを決定する(ステップS2)。
【0029】
通過時刻調整装置7は、B駅の通過予定時刻が変更される場合、ランカーブの切り替え無しに変更後の通過予定時刻に応じた時刻で列車2がB駅を通過できるか否かを判定する。通過予定時刻に応じた時刻は、通過予定時刻との差が予め設定された閾値以内の時刻であり、通過予定時刻だけでなく通過予定時刻から許容範囲内にある時刻を含む。通過時刻調整装置7は、ランカーブの切り替え無しに変更後の通過予定時刻に応じた時刻で列車2がB駅を通過できると判定した場合、列車2がB駅を通過するまでランカーブの切り替えは必要ないと判定する。
【0030】
通過時刻調整装置7は、ランカーブの切り替え無しに変更後の通過予定時刻に応じた時刻で列車2がB駅を通過できないと判定した場合、列車2のランカーブをランカーブC2からランカーブC1,C3に切り替えた場合の列車2のB駅の通過予定時刻を走行シミュレーションによって算出する。通過時刻調整装置7は、例えば、ランカーブC1,C3に切り替えた場合の列車2のB駅の通過予定時刻のうち変更後の通過予定時刻に最も近いランカーブを修正ランカーブとして決定する。ランカーブの切り替えは、力行ノッチによる加速またはブレーキによる減速によって行われる。
【0031】
図2に示す例では、ランカーブC1,C2,C3のうち、変更後の通過予定時刻に通過予定時刻が最も近いランカーブは、ランカーブC1であり、通過時刻調整装置7は、列車2のランカーブをランカーブC2からランカーブC1に切り替えた場合のA駅とD駅との間の走行時分を算出する。かかる走行時分は、A駅からランカーブの切替位置までの走行時分とランカーブの切替位置からD駅までの走行時分とを含む。切替位置は、ランカーブの切り替えを開始する位置であり、切替開始位置ということもできる。
【0032】
ランカーブの切替位置からD駅までの走行時分には、例えば、列車2のランカーブがランカーブC2からランカーブC1への切り替えを開始してから切り替えが完了するまでの列車2の走行時間と、列車2のランカーブがランカーブC1に切り替わってからD駅までの列車2の走行時間とが含まれる。
【0033】
通過時刻調整装置7は、算出した走行時分の情報とランカーブの切替位置の情報とを含む通知情報を運行管理装置6に通知する(ステップS3)。運行管理装置6が時刻調整要求を送信してから列車2のランカーブの切り替えが開始されるまでのタイムラグが無視できる程度であれば、ランカーブの切替位置は、列車2の現在位置であり、タイムラグが無視できない場合には、ランカーブの切替位置は、列車2の現在位置からタイムラグの時間だけ列車2が走行すると仮定した場合の列車2の位置である。
【0034】
運行管理装置6は、通知情報で示される切替位置に列車2が到達したタイミングで通知情報に含まれる走行時分の情報を切替情報として列車2の車上装置10へ出力する。運行管理装置6から出力された切替情報は、ネットワーク9、地上制御装置4、ネットワーク8、および無線装置3を介して、列車2の車上装置10で受信される。
【0035】
列車2の車上装置10は、記憶しているランカーブ情報に含まれる複数のランカーブのうち切替情報に含まれる走行時分と一致するランカーブを選択し、選択したランカーブに列車2のランカーブを切り替える(ステップS4)。これにより、列車2が通過予定時刻に応じた時刻でB駅を通過することができる。
【0036】
なお、通過時刻調整装置7は、走行時分の情報に代えて、ランカーブID(IDentifier)を通知情報に含めて運行管理装置6へ通知することもできる。この場合、運行管理装置6は、通知情報で示される切替位置に列車2が到達したタイミングで通知情報に含まれるランカーブIDを切替情報として列車2の車上装置10へ出力する。列車2の車上装置10は、切替情報に含まれるランカーブIDのランカーブを選択し、選択したランカーブに列車2のランカーブを切り替える。
【0037】
以下、鉄道システム1における運行管理装置6、通過時刻調整装置7、および車上装置10についてさらに具体的に説明する。図3は、実施の形態1にかかる運行管理装置の構成の一例を示す図である。
【0038】
図3に示すように、実施の形態1にかかる運行管理装置6は、通信部11と、記憶部12と、処理部13とを備える。通信部11は、ネットワーク9に通信可能に接続され、地上制御装置4、連動制御装置5、通過時刻調整装置7、または列車2との間で情報の送受信を行う。なお、通信部11は、さらにネットワーク8に接続され、地上制御装置4の介在なしに無線装置3を介して列車2と情報の送受信を行う構成であってもよい。また、通信部11は、不図示の移動体通信網を介して列車2と情報の送受信を行う構成であってもよい。
【0039】
記憶部12は、ダイヤ情報30および列車情報31などを記憶する。ダイヤ情報30には、例えば、列車ID毎に走行経路情報および停車駅時間情報などが含まれる。走行経路情報は、列車2の走行経路を示す情報である。停車駅時間情報は、列車2の各停車駅への到着予定時刻を示す情報、列車2の各停車駅からの出発予定時刻を示す情報、および列車2の各通過駅の通過予定時刻を示す情報を含む。列車情報31には、各列車2の列車状態情報および列車制御情報が含まれる。列車状態情報には列車2の走行位置を示す情報および列車2の走行速度を示す情報が含まれる。
【0040】
処理部13は、情報取得部20と、進路制御部21と、設定情報出力部22と、変更時刻算出部23と、時刻調整要求部24と、切替情報出力部25とを備える。情報取得部20は、地上制御装置4を介して各列車2の列車情報31を取得し、取得した各列車2の列車情報31を記憶部12に記憶する。
【0041】
進路制御部21は、記憶部12に記憶された各列車2の列車情報31およびダイヤ情報30に基づいて、各列車2がダイヤ情報30に従った時間でダイヤ情報30に従った進路を走行するように、各列車2の進路制御情報を生成する。進路制御部21は、生成した各列車2の進路制御情報を連動制御装置5へ通信部11およびネットワーク9を介して出力する。
【0042】
設定情報出力部22は、記憶部12に記憶された各列車2の列車情報31およびダイヤ情報30に基づいて、列車2が停車駅を出発する前に、停車駅に位置する列車2の車上装置10にランカーブを選択させるための情報である設定情報を生成する処理を例えば停車駅間毎および列車2毎に実行する。
【0043】
設定情報は、例えば、停車駅間の走行時分の情報またはランカーブIDであるが、列車2がランカーブを選択できる情報であればよく、これらに限定されない。停車駅間の走行時分は、ランカーブで規定された走行速度で列車2が走行した場合に停車駅間を列車2が走行する時間である。設定情報出力部22は、生成した設定情報を列車2の車上装置10へ出力する。運行管理装置6から送信される設定情報は、ネットワーク9、地上制御装置4、ネットワーク8、および無線装置3を介して、列車2の車上装置10で受信される。
【0044】
変更時刻算出部23は、記憶部12に記憶された各列車2の列車情報31およびダイヤ情報30に基づいて、通過予定時刻および到着予定時刻の変更が必要な列車2である対象列車があるか否かを判定する。変更時刻算出部23は、対象列車があると判定した場合、対象列車の変更後の通過予定時刻および到着予定時刻を算出する。
【0045】
時刻調整要求部24は、変更時刻算出部23によって変更後の通過予定時刻および到着予定時刻が算出された場合、時刻調整要求を通過時刻調整装置7へ通信部11およびネットワーク9を介して送信する。時刻調整要求には、変更時刻算出部23によって算出された対象列車の変更後の通過予定時刻および到着予定時刻の情報と対象列車の現在位置の情報とが含まれる。
【0046】
切替情報出力部25は、通過時刻調整装置7からの通知情報がネットワーク9を介して通信部11で受信された場合、通知情報で示される切替位置に対象列車が到達したタイミングで切替情報を対象列車の車上装置10へ出力する。切替情報は、停車駅間の走行時分の情報またはランカーブIDである。
【0047】
次に、通過時刻調整装置7について説明する。図4は、実施の形態1にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図である。通過時刻調整装置7は、通信部41と、記憶部42と、処理部43とを備える。通信部41は、ネットワーク9に通信可能に接続され、運行管理装置6との間で情報の送受信を行う。
【0048】
記憶部42は、ランカーブ情報50を記憶する。ランカーブ情報50は、ランカーブの情報と停車駅間の走行時分の情報とを停車駅間毎に含む。図5は、実施の形態1にかかるランカーブ情報の一例を示す図である。図5に示すランカーブ情報50は、「出発駅」、「到着駅」、「方向」、「走行時分」、「ランカーブID」、および「ランカーブ」を含み、これらの情報が互いに関連付けられている。
【0049】
「出発駅」は、列車2の停車駅であって列車2が出発する駅である出発駅を示す情報である。「到着駅」は、列車2の停車駅であって列車2が出発駅を出発してから次に停車する駅である到着駅を示す情報である。「方向」は、列車2の進行方向であり、上りまたは下りの情報である。
【0050】
「走行時分」は、ランカーブに従って列車2が出発駅から到着駅まで走行した場合における出発駅から到着駅までの列車2の走行時間であり、単位は、秒である。「ランカーブID」は、各ランカーブに固有の識別情報である。「ランカーブ」は、ランカーブの情報を含む。ランカーブの情報は、例えば、出発駅から到着駅までの各位置と速度とを関連付けた情報である。
【0051】
図6は、実施の形態1にかかる複数のランカーブの一例を示す図である。図6において、縦軸は、列車2の速度を示し、横軸は、出発駅と到着駅との間の位置を示す図である。出発駅は、列車2が出発する駅を示し、到着駅は、出発駅を出発した列車2が次に到着する駅を示す。
【0052】
図6に示す例では、出発駅はA駅であり、到着駅はD駅であり、A駅とD駅との間には、列車2が通過する通過駅としてB駅とC駅とが存在する。図6に示すように、ランカーブC1,C2,C3,C4は、A駅とB駅との間における列車2の走行速度の変化を規定する速度曲線である。
【0053】
図4に戻って、通過時刻調整装置7の構成の説明を続ける。通過時刻調整装置7の処理部43は、時刻調整要求で示される通過予定時刻に応じた時刻で対象列車が通過駅を通過し、時刻調整要求で示される到着予定時刻に応じた時刻で対象列車が停車駅に到着するように、列車2で用いられるランカーブを選択する。
【0054】
処理部43は、情報取得部60と、算出部61と、選択部62と、通知情報出力部63とを備える。情報取得部60は、運行管理装置6から送信され通信部41で受信された時刻調整要求に含まれる対象列車の通過予定時刻および到着予定時刻の情報と対象列車の現在位置の情報とを取得する。
【0055】
算出部61は、走行シミュレーションを用いて、現在位置から最初の通過駅までの区間の対象列車の走行時分、通過駅間の区間の対象列車の走行時分、最後の通過駅から停車駅までの区間の対象列車の走行時分を算出する。
【0056】
算出部61は、算出した走行時分とランカーブ情報50とに基づいて、対象列車が通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻と、対象列車が停車駅を到着すると予測される時刻である到着予測時刻とを算出する。
【0057】
選択部62は、算出部61によって算出された通過予測時刻および到着予測時刻に基づいて、現在位置から最初の通過駅までの区間のランカーブ、通過駅間の区間のランカーブ、最後の通過駅から停車駅までの区間のランカーブを選択する。
【0058】
選択部62は、時刻調整要求で示される通過予定時刻に応じた時刻で対象列車が通過駅を通過し、時刻調整要求で示される到着予定時刻に応じた時刻で対象列車が停車駅に到着するように上述した各区間のランカーブの選択を行う。選択部62は、1つ前の区間と異なるランカーブを選択した場合、選択したランカーブを修正ランカーブとして決定する。
【0059】
通知情報出力部63は、選択部62によって修正ランカーブが決定された場合、対象列車で修正ランカーブを選択するための選択情報と修正ランカーブに切り替える対象列車の位置である切替位置を示す切替位置情報とを含む通知情報を通信部41およびネットワーク9を介して運行管理装置6へ送信する。
【0060】
選択情報は、対象列車のランカーブを修正ランカーブに切り替えた場合の停車駅間の走行時分の情報、または修正ランカーブのランカーブIDであるが、切替対象がランカーブを選択できる情報であればよく、これらに限定されない。切替位置情報は、例えば、対象列車の現在位置または通過駅の位置であるが、上述したタイムラグがある場合には、対象列車の現在位置からタイムラグだけ対象列車が走行すると仮定した場合の対象列車の位置である。
【0061】
図7は、実施の形態1にかかる対象列車が停車駅に停車中に選択されたランカーブの一例を示す図である。図7では、対象列車がA駅に停車中にランカーブC3が選択された後に、対象列車がランカーブC3に従ってA駅とB駅との間を走行中に時刻調整要求が通過時刻調整装置7で受信された場合の例を示している。
【0062】
図7に示す例では、対象列車がランカーブC3に従ってD駅まで走行した場合、算出部61で算出されるB駅の通過予定時刻が時刻調整要求で示されるB駅の通過予定時刻を満たすが、算出部61で算出されるC駅の通過予定時刻が時刻調整要求で示されるC駅の通過予定時刻を満たさない。
【0063】
ここで、算出部61によるB駅の通過予定時刻およびC駅の通過予定時刻の算出方法の一例について説明する。算出部61は、A駅とB駅との間を走行中に時刻調整要求が情報取得部60で取得された場合、走行シミュレーションを用いて、対象列車で現在用いられているランカーブで対象列車が走行した場合に対象列車が現在位置から次の通過駅を通過するまでの走行時分を第1走行時分として算出する。
【0064】
そして、算出部61は、第1走行時分を現在時刻に加算することによって、対象列車で現在用いられているランカーブで対象列車が走行した場合に対象列車がB駅を通過すると予測される時刻をB駅の通過予測時刻として算出する。選択部62は、B駅の通過予測時刻が時刻調整要求で示されるB駅の通過予定時刻を満たすか否かを判定する。
【0065】
B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たすとは、B駅の通過予定時刻に応じた時刻で対象列車が通過駅を通過することを意味し、例えば、選択部62は、B駅の通過予測時刻とB駅の通過予定時刻との差が予め設定された閾値以内である場合にB駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たすと判定する。閾値は、例えば、10秒以内の値である。図7に示す例では、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たす。
【0066】
選択部62は、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たすと判定した場合、対象列車で現在用いられているランカーブを第1選択ランカーブとして決定する。また、選択部62は、算出部61によって算出されたB駅の通過予測時刻を第1通過予測時刻として決定する。
【0067】
なお、算出部61は、対象列車で現在用いられているランカーブで対象列車が走行した場合のB駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たさない場合、第1選択ランカーブを決定し、かかる第1選択ランカーブを第1修正ランカーブとするか否かを決定する。かかる処理については、図12および図13を用いて後述する。
【0068】
次に、算出部61は、走行シミュレーションを用いて、対象列車が第1選択ランカーブで走行した場合のB駅からC駅までの走行時分を第2走行時分として算出する。そして、算出部61は、第2走行時分を第1通過予測時刻に加算することによって、対象列車が第1選択ランカーブで走行した場合に対象列車がC駅を通過すると予測される時刻をC駅の通過予測時刻として算出する。
【0069】
選択部62は、C駅の通過予測時刻が時刻調整要求で示されるC駅の通過予定時刻を満たすか否かを判定する。選択部62は、C駅の通過予測時刻がC駅の通過予定時刻を満たすと判定した場合、対象列車で現在用いられているランカーブを第2選択ランカーブとして決定し、C駅の通過予測時刻を第2通過予測時刻として決定する。
【0070】
選択部62は、C駅の通過予測時刻がC駅の通過予定時刻を満たさないと判定した場合、ランカーブを探索するために、B駅とC駅との間の選択ランカーブ候補である第2選択ランカーブ候補を決定する。例えば、選択部62は、C駅の通過予測時刻がC駅の通過予定時刻よりも遅ければ、ランカーブC3よりも走行時分が短いランカーブC1,C2とランカーブC3とを第2選択ランカーブ候補として決定する。また、選択部62は、C駅の通過予測時刻がC駅の通過予定時刻よりも早ければ、ランカーブC3よりも走行時分が長いランカーブC4とランカーブC3とを第2選択ランカーブ候補に決定する。
【0071】
図8は、実施の形態1にかかる第2選択ランカーブ候補の一例を示す図である。図7に示す例では、C駅の通過予測時刻がC駅の通過予定時刻よりも遅いため、選択部62は、図8に示すように、ランカーブC1,C2,C3を第2選択ランカーブ候補として決定する。図8に示す例では、ランカーブC3が候補1であり、ランカーブC2が候補2であり、ランカーブC1が候補3である。候補1,2,3は、第2選択ランカーブ候補であることを示す。
【0072】
算出部61は、対象列車がB駅を通過してからC駅を通過するまでの走行時分を第2走行時分として第2選択ランカーブ候補毎に算出する。図8に示す例では、算出部61は、対象列車のランカーブをB駅でランカーブC1に切り替えた場合に対象列車がB駅からC駅を通過するまでの走行時分をランカーブC1の第2走行時分として算出する。
【0073】
算出部61は、対象列車のランカーブをB駅でランカーブC2に切り替えた場合に対象列車がB駅からC駅を通過するまでの走行時分をランカーブC2の第2走行時分として算出する。算出部61は、対象列車のランカーブをランカーブC3に維持した場合に対象列車がB駅からC駅を通過するまでの走行時分をランカーブC3の第2走行時分として算出する。
【0074】
選択部62は、ランカーブC1,C2,C3の第2走行時分の各々を第1通過予測時刻に加算することによって、C駅の通過予測時刻をランカーブC1,C2,C3毎に算出する。選択部62は、ランカーブC1,C2,C3毎のC駅の通過予測時刻のうち、C駅の通過予定時刻に最も近いC駅の通過予測時刻に対応するランカーブを第2選択ランカーブとして判定する。
【0075】
選択部62は、C駅の通過予定時刻に最も近いC駅の通過予測時刻に対応するランカーブがランカーブC3である場合、第2選択ランカーブを第2修正ランカーブとして決定しない。選択部62は、C駅の通過予定時刻に最も近いC駅の通過予測時刻に対応するランカーブがランカーブC1,C2のいずれかである場合、C駅の通過予定時刻に最も近いC駅の通過予測時刻を第2通過予測時刻として決定し、第2選択ランカーブを第2修正ランカーブとして決定する。
【0076】
図9は、図8に示す第2選択ランカーブ候補の中から1つの第2選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図である。図9に示す例では、選択部62は、ランカーブC1,C2,C3のうちランカーブC2を第2選択ランカーブとして決定している。
【0077】
次に、算出部61は、対象列車のランカーブをB駅でランカーブC3からランカーブC2に切り替えた場合に対象列車がC駅を通過してからD駅に到着するまでの走行時分をランカーブC2の第3走行時分として算出する。
【0078】
そして、算出部61は、第3走行時分を第2通過予測時刻に加算することによって、対象列車がB駅とC駅との間の区間を第1選択ランカーブで走行し、C駅とD駅との間の区間を第2選択ランカーブで走行した場合に対象列車がD駅に到着すると予測される時刻をD駅の到着予測時刻として算出する。
【0079】
選択部62は、D駅の到着予測時刻が時刻調整要求で示されるD駅の到着予定時刻を満たすか否かを判定する。選択部62は、D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻を満たすと判定した場合、対象列車で現在用いられているランカーブを第3選択ランカーブとして決定する。
【0080】
D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻を満たすとは、D駅の到着予定時刻に応じた時刻で対象列車が停車駅に到着することを意味し、例えば、選択部62は、D駅の到着予測時刻とD駅との到着予定時刻との差が予め設定された閾値以内である場合にD駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻を満たすと判定する。閾値は、例えば、10秒以内の値である。
【0081】
選択部62は、D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻を満たさないと判定した場合、ランカーブを探索するために、C駅とD駅との間の選択ランカーブ候補である第3選択ランカーブ候補を決定する。例えば、選択部62は、D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻よりも遅ければ、ランカーブC2よりも走行時分が短いランカーブC1とランカーブC2とを第3選択ランカーブ候補として決定する。また、選択部62は、D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻よりも早ければ、ランカーブC2よりも走行時分が長いランカーブC3,C4とランカーブC2とを第3選択ランカーブ候補として決定する。
【0082】
図10は、実施の形態1にかかる第3選択ランカーブ候補の一例を示す図である。図9に示す例では、D駅の到着予測時刻がD駅の到着予定時刻よりも早いため、選択部62は、図10に示すように、ランカーブC2,C3,C4を第3選択ランカーブ候補に決定している。図10に示す例では、ランカーブC4が候補1であり、ランカーブC3が候補2であり、ランカーブC2が候補3である。候補1,2,3は、第3選択ランカーブ候補であることを示す。
【0083】
算出部61は、対象列車がC駅を通過してからD駅に到着するまでの走行時分を第3走行時分として第3選択ランカーブ候補毎に算出する。図10に示す例では、算出部61は、対象列車のランカーブをランカーブC2に維持した場合に対象列車がC駅を通過してからD駅に到着するまでの走行時分をランカーブC2の第3走行時分として算出する。
【0084】
また、算出部61は、対象列車のランカーブをC駅でランカーブC3に切り替えた場合に対象列車がC駅を通過してからD駅に到着するまでの走行時分をランカーブC3の第3走行時分として算出する。算出部61は、対象列車のランカーブをC駅でランカーブC4に切り替えた場合に対象列車がC駅を通過してからD駅に到着するまでの走行時分をランカーブC4の第3走行時分として算出する。
【0085】
選択部62は、ランカーブC2,C3,C4の第3走行時分の各々を第2通過予測時刻に加算することによって、対象列車がD駅に到着すると予測される時刻であるD駅の到着予測時刻をランカーブC2,C3,C4毎に算出する。
【0086】
選択部62は、ランカーブC2,C3,C4毎のD駅の到着予測時刻のうち、D駅の到着予定時刻に最も近いD駅の到着予測時刻に対応するランカーブを第3選択ランカーブとして判定する。選択部62は、D駅の到着予定時刻に最も近いD駅の到着予測時刻に対応するランカーブがランカーブC2である場合、第3選択ランカーブを第3修正ランカーブとして決定しない。
【0087】
選択部62は、D駅の到着予定時刻に最も近いD駅の到着予測時刻に対応するランカーブがランカーブC3,C4のいずれかである場合、第3選択ランカーブを第3修正ランカーブとして決定する。
【0088】
図11は、図10に示す第3選択ランカーブ候補の中から1つの第3選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図である。図11に示す例では、選択部62は、ランカーブC2,C3,C4のうちランカーブC4を第3選択ランカーブおよび第3修正ランカーブとして決定している。
【0089】
図11に示す例では、通知情報出力部63から出力される通知情報には、第2修正ランカーブの情報と第3修正ランカーブの情報とが含まれる。第2修正ランカーブの情報には、第2修正ランカーブとしてランカーブC2を選択するための情報と、第2修正ランカーブの切替位置としてB駅の位置を示す情報とが含まれる。また、第3修正ランカーブの情報には、第3修正ランカーブとしてランカーブC4を選択するための情報と、第3修正ランカーブの切替位置としてC駅の位置を示す情報とが含まれる。
【0090】
ランカーブC2を選択するための情報は、対象列車のランカーブをB駅でランカーブC3からランカーブC2に切り替えた場合のA駅とD駅との間の対象列車の走行時分の情報またはランカーブC2のランカーブIDである。ランカーブC4を選択するための情報は、対象列車のランカーブをB駅でランカーブC3からランカーブC2に切り替え且つC駅でランカーブC2からランカーブC4に切り替えた場合のA駅とD駅との間の対象列車の走行時分の情報またはランカーブC4のランカーブIDである。
【0091】
この場合、運行管理装置6の切替情報出力部25は、対象列車がB駅に到達したタイミングで第2修正ランカーブとしてランカーブC2を示す情報を対象列車の車上装置10へ出力し、対象列車がC駅に到達したタイミングで第3修正ランカーブとしてランカーブC4を示す情報を対象列車の車上装置10へ出力する。これにより、対象列車は、図11に示すランカーブに従ってA駅とD駅との間を走行する。
【0092】
すなわち、対象列車は、A駅からB駅の間の区間ではランカーブC3に従って走行し、B駅でランカーブをランカーブC3からランカーブC2に切り替えてB駅とC駅との間の区間を走行し、C駅でランカーブをランカーブC2からランカーブC4に切り替えてC駅とD駅との間の区間を走行する。
【0093】
ここで、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たさない場合について説明する。図12は、実施の形態1にかかる対象列車が停車駅間を走行中に選択されるランカーブの一例を示す図である。図12では、対象列車がA駅に停車中にランカーブC3が選択され、対象列車がランカーブC3に従ってA駅とB駅との間を走行中に時刻調整要求が通過時刻調整装置7で受信された場合の例を示している。
【0094】
図12に示す例では、対象列車がランカーブC3に従ってD駅まで走行した場合、算出部61で算出されるB駅の通過予定時刻が時刻調整要求で示されるB駅の通過予定時刻を満たさない。算出部61は、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻を満たさない場合、ランカーブの探索のために、B駅までの選択ランカーブ候補である第1選択ランカーブ候補を決定する。
【0095】
例えば、選択部62は、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻よりも遅ければ、対象列車で現在用いられているランカーブと対象列車で現在用いられているランカーブよりも走行時分が短いランカーブとを第1選択ランカーブ候補として決定する。
【0096】
また、選択部62は、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻よりも早ければ、対象列車で現在用いられているランカーブと対象列車で現在用いられているランカーブよりも走行時分が長いランカーブを第1選択ランカーブ候補として決定する。
【0097】
図12に示す例では、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻よりも遅いため、選択部62は、対象列車で現在用いられているランカーブC3とランカーブC3よりも走行時分が短いランカーブC1,C2とを第1選択ランカーブ候補として決定する。図12に示す例では、ランカーブC3が候補1であり、ランカーブC2が候補2であり、ランカーブC1が候補3である。候補1,2,3は、第1選択ランカーブ候補であることを示す。
【0098】
算出部61は、走行シミュレーションを用いて、対象列車で現在用いられているランカーブから現在位置でランカーブC1,C2に切り替えて対象列車が走行した場合に対象列車が現在位置から次の通過駅を通過するまでの走行時分を第2走行時分として算出する。そして、算出部61は、現在時刻に第2走行時分をランカーブC1,C2毎に加算することによって、B駅の通過予測時刻をランカーブC1,C2毎に算出する。
【0099】
選択部62は、第1選択ランカーブ候補毎のB駅の通過予測時刻のうち、B駅の通過予定時刻に最も近いB駅の通過予測時刻に対応する第1選択ランカーブ候補を第1選択ランカーブとして判定し、かかる第1選択ランカーブを第1修正ランカーブとして決定する。算出部61は、第1選択ランカーブ候補毎のB駅の通過予測時刻のうち、B駅の通過予定時刻に最も近いB駅の通過予測時刻を第1通過予測時刻として決定する。
【0100】
図13は、図12に示す第1選択ランカーブ候補の中から1つの第1選択ランカーブ候補が対象列車のランカーブとして決定された状態の一例を示す図である。図13に示す例では、選択部62は、ランカーブC1,C2,C3のうちランカーブC2を第2選択ランカーブとして決定している。
【0101】
なお、上述した例では、時刻調整要求には、複数の通過駅の通過予定時刻の情報と停車駅の到着予定時刻の情報とを含むが、時刻調整要求に含まれる通過予定時刻の情報は、複数の通過駅のうちの1つの通過駅の通過予定時刻の情報だけが含まれてもよい。この場合、変更後の通過予定時刻毎に各通過予定時刻の情報を含む時刻調整要求が運行管理装置6から通過時刻調整装置7へ順次送信される。この場合、処理部43は、時刻調整要求を取得する毎に、時刻調整要求で示される修正ランカーブを選択する。
【0102】
また、選択部62は、停車駅間で通過駅がない場合であっても、対象列車が停車駅間を走行中に到着予定時刻が変更される場合、算出部61によって算出される対象列車の到着予測時刻に基づいて、切替ランカーブを選択することができる。
【0103】
また、上述した例では、選択部62は、通過予定時刻に最も近い通過予測時刻に対応する選択ランカーブ候補を選択ランカーブとしたが、かかる例に限定されない。例えば、通過予定時刻よりも対象列車が早く通過すべきでないといった条件がある場合、選択部62は、通過予定時刻よりも早い通過予測時刻を除いた通過予測時刻のなかから、通過予定時刻に最も近い通過予測時刻に対応する選択ランカーブ候補を選択ランカーブとする。
【0104】
また、通過予定時刻よりも対象列車が遅く通過すべきでないといった条件がある場合、選択部62は、通過予定時刻よりも遅い通過予測時刻を除いた通過予測時刻のなかから、通過予定時刻に最も近い通過予測時刻に対応する選択ランカーブ候補を選択ランカーブとする。
【0105】
到着予定時刻よりも対象列車が早く停車駅に到着すべきでないといった条件がある場合、選択部62は、到着予定時刻よりも早い到着予測時刻を除いた到着予測時刻のなかから、到着予定時刻に最も近い到着予測時刻に対応する選択ランカーブ候補を選択ランカーブとする。
【0106】
また、到着予定時刻よりも対象列車が遅く停車駅に到着すべきでないといった条件がある場合、選択部62は、到着予定時刻よりも遅い到着予測時刻を除いた到着予測時刻のなかから、到着予定時刻に最も近い到着予測時刻に対応する選択ランカーブ候補を選択ランカーブとすることができる。
【0107】
ここで、列車2が有する車上装置10の構成について説明する。図14は、実施の形態1にかかる列車が有する車上装置の構成の一例を示す図である。図14に示すように、車上装置10は、通信部71と、検出部72と、記憶部73と、処理部74と、制御部75と、表示部76とを備える。
【0108】
通信部71は、無線で無線装置3と通信可能に接続されており、地上制御装置4または運行管理装置6との間で情報の送受信を行う。通信部71は、例えば、地上制御装置4から無線装置3を介して列車制御情報を受信したり、運行管理装置6から地上制御装置4および無線装置3を介して設定情報または切替情報を受信したりする。
【0109】
検出部72は、列車2の位置および速度を検出する。検出部72は、列車2に設けられた不図示の回転検出器で検出された車輪回転数に基づき、列車2の位置および速度を検出するが、列車2に設けられた不図示のGPS(Global Positioning System)受信機から出力される位置情報に基づき、列車2の位置および速度を検出することもできる。
【0110】
検出部72は、列車2の位置および速度を検出した結果に基づいて、列車状態情報を通信部71へ出力する。列車状態情報は、例えば、列車IDと、列車2の位置を示す位置情報と、列車2の速度を示す速度情報と、列車2の進行方向を示す運転方向情報とを含む。通信部71は、検出部72から出力される列車状態情報を地上制御装置4へ無線装置3を介して送信する。
【0111】
記憶部73は、ランカーブ情報を記憶する。ランカーブ情報は、図5に示すランカーブ情報50と同じである。処理部74は、通信部71で受信された設定情報に基づいて、記憶部73に記憶された複数のランカーブのうち通信部71で受信された設定情報に応じたランカーブを選択する。例えば、処理部74は、設定情報が走行時分の情報である場合、複数のランカーブのうち設定情報で示される走行時分に一致するランカーブを選択する。また、処理部74は、設定情報がランカーブIDである場合、複数のランカーブのうち設定情報で示されるランカーブIDのランカーブを選択する。
【0112】
また、処理部74は、通信部71で切替情報が受信された場合、記憶部73に記憶された複数のランカーブのうち通信部71で受信された切替情報に応じたランカーブを選択する。例えば、処理部74は、切替情報が走行時分の情報である場合、複数のランカーブのうち切替情報で示される走行時分に一致するランカーブを選択する。また、処理部74は、切替情報がランカーブIDである場合、複数のランカーブのうち切替情報で示されるランカーブIDのランカーブを選択する。
【0113】
制御部75は、制御モードが自動運転モードに設定されている場合、処理部74によって選択されたランカーブに基づいて、列車2の走行速度を制御する。これにより、制御部75は、ランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。
【0114】
また、制御部75は、制御モードが手動運転モードに設定されている場合、処理部74によって選択されたランカーブを表示部76に表示させることができる。列車2の運転手は、表示部76に表示されたランカーブに従って列車2を操作することで、ランカーブに従った速度で列車2を走行させることができる。なお、車上装置10は、自動運転モードおよび手動運転モードのうち一方の制御モードのみ実行可能な構成であってもよい。
【0115】
つづいて、フローチャートを用いて通過時刻調整装置7の処理部43による処理を説明する。図15は、実施の形態1にかかる通過時刻調整装置の処理部による処理の一例を示すフローチャートである。
【0116】
図15に示すように、通過時刻調整装置7の処理部43は、運行管理装置6からの時刻調整要求が通信部41で受信されたか否かを判定する(ステップS10)。処理部43は、時刻調整要求が受信されたと判定した場合(ステップS10:Yes)、未選択の駅のうち選択済みの駅の次の駅を選択する(ステップS11)。例えば、図6に示すA駅、B駅、C駅、およびD駅がある場合、いずれの駅も選択されていなければ、A駅が選択される。また、前回選択された駅がA駅であれば、B駅が選択される。
【0117】
次に、処理部43は、ステップS11で選択した駅が対象列車の現在位置から直近の駅であるか否かを判定する(ステップS12)。処理部43は、ステップS11で選択した駅が対象列車の現在位置から直近の駅ではないと判定した場合(ステップS12:No)、1つ前の通過駅をランカーブの切替位置として決定する(ステップS13)。
【0118】
また、処理部43は、ステップS11で選択した駅が対象列車の現在位置から直近の駅であると判定した場合(ステップS12:Yes)、対象列車が走行中であるか否かを判定する(ステップS14)。処理部43は、対象列車が走行中であると判定した場合(ステップS14:Yes)、対象列車の現在位置をランカーブの切替位置として決定する(ステップS15)。
【0119】
処理部43は、ステップS13の処理が終了した場合、またはステップS15の処理が終了した場合、通過予定時刻または到着予定時刻に最も近い通過予測時刻または到着予測時刻のランカーブを修正ランカーブに決定する(ステップS16)。
【0120】
また、処理部43は、対象列車が走行中ではないと判定した場合(ステップS14:No)、通過予定時刻または到着予定時刻に最も近い通過予測時刻または到着予測時刻のランカーブを選択する(ステップS17)。対象列車の現在位置から直近の駅であり且つ対象列車が走行中ではない場合とは、例えば、図6に示す例では、対象列車がA駅に停車している場合である。
【0121】
次に、処理部43は、ステップS16の処理が終了した場合、またはステップS17の処理が終了した場合、ステップS11で未選択の駅があるか否かを判定する(ステップS18)。処理部43は、未選択の駅があると判定した場合(ステップS18:Yes)、処理をステップS11に移行する。また、処理部43は、未選択の駅がないと判定した場合(ステップS18:No)、または時刻調整要求が受信されていないと判定した場合(ステップS10:No)、動作終了のタイミングであるか否かを判定する(ステップS19)。処理部43は、通過時刻調整装置7の不図示の電源がオフされた場合または不図示の操作部への動作終了の操作が行われた場合に、動作終了のタイミングであると判定する。
【0122】
処理部43は、動作終了のタイミングではないと判定した場合(ステップS19:No)、処理をステップS10へ移行し、動作終了のタイミングであると判定した場合(ステップS19:Yes)、図15に示す処理を終了する。
【0123】
図16は、実施の形態1にかかる通過時刻調整装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図16に示すように、通過時刻調整装置7は、プロセッサ101と、メモリ102と、通信装置103とを備えるコンピュータを含む。
【0124】
プロセッサ101、メモリ102、および通信装置103は、例えば、バス104によって互いに情報の送受信が可能である。通信部41は、通信装置103によって実現される。記憶部42は、メモリ102によって実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部43の機能を実行する。プロセッサ101は、例えば、処理回路の一例であり、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、およびシステムLSI(Large Scale Integration)のうち一つ以上を含む。
【0125】
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、およびEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)のうち一つ以上を含む。また、メモリ102は、コンピュータが読み取り可能なプログラムが記録された記録媒体を含む。かかる記録媒体は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルメモリ、光ディスク、コンパクトディスク、およびDVD(Digital Versatile Disc)のうち一つ以上を含む。なお、通過時刻調整装置7は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を含んでいてもよい。
【0126】
通過時刻調整装置7は、1つの装置で構成されてもよく、2つ以上の装置で構成されてもよい。通過時刻調整装置7が2つ以上の装置で構成される場合、2つ以上の装置の各々は、例えば、図16に示すハードウェア構成を有する。なお、2つ以上の装置間の通信は、通信装置103を介して行われる。また、通過時刻調整装置7は、運行管理装置6に含まれてもよい。
【0127】
以上のように、実施の形態1にかかる鉄道システム1は、算出部61と、選択部62と、切替情報出力部25とを備える。算出部61は、停車駅間の走行速度を規定するランカーブに従って走行の制御が行われる列車2が停車駅間にある通過駅を通過する予定時刻である通過予定時刻の変更がある場合、列車2の走行の制御に用いられるランカーブの切り替えによって列車2が通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出する。選択部62は、算出部61によって算出された通過予測時刻に基づいて、変更後の通過予定時刻に応じた時刻で通過駅を列車2が通過するランカーブを修正ランカーブとして選択する。切替情報出力部25は、列車2のランカーブを修正ランカーブに切り替えるための切替情報を列車2の車上装置10へ出力する。これにより、鉄道システム1は、通過予定時刻が変更される場合において通過時刻を調整することができ、例えば、運行効率または現場の作業効率の向上に資することができる。
【0128】
また、算出部61は、列車2が停車駅間を走行中に、通過予定時刻の変更がある場合に通過予測時刻を算出する。これにより、鉄道システム1は、列車2が停車駅間を走行中に通過予定時刻が変更される場合において、通過時刻を調整することができる。
【0129】
また、停車駅間には、通過駅が複数あり、選択部62は、複数の通過駅の通過予定時刻の変更がある場合に、変更後の通過予定時刻毎に修正ランカーブを選択する。切替情報出力部25は、選択部62によって通過予定時刻毎の修正ランカーブが決定された後、通過予定時刻毎の切替情報を列車2の車上装置10へ出力する。これにより、鉄道システム1は、複数の通過予定時刻の変更がある場合において、各通過駅の通過時刻を一度に調整することができる。
【0130】
また、停車駅間には、通過駅が複数あり、選択部62は、列車2が停車駅間を走行中に、通過駅の通過予定時刻の変更がある毎に、修正ランカーブを選択する。切替情報出力部25は、選択部62によって修正ランカーブを選択する毎に、切替情報を列車2の車上装置10へ出力する。これにより、鉄道システム1は、列車2が停車駅間を走行中に、通過予定時刻の変更がある毎に通過時刻を調整することができる。
【0131】
また、算出部61は、停車駅間を列車2が走行中に、列車2が停車駅に到着する予定時刻である到着予定時刻が変更される場合に、列車2で用いられるランカーブが切り替えられた場合に列車2が停車駅に到着すると予測される到着予定時刻を算出する。選択部62は、算出部61によって算出された到着予測時刻に基づいて、変更後の到着予測時刻に応じた時刻で停車駅に列車2が到着するランカーブを修正ランカーブとして選択する。これにより、鉄道システム1は、到着予定時刻が変更される場合において到着時刻を調整することができる。
【0132】
また、算出部61は、列車2で用いられるランカーブが修正ランカーブに切り替えられた場合の停車駅間の走行時分を算出する。切替情報出力部25は、算出部61で算出された停車駅間の走行時分の情報を列車の車上装置10へ出力する。これにより、鉄道システム1は、ランカーブの選択を走行時分の情報で行う車上装置10を備える列車2の通過時刻を調整することができる。
【0133】
また、算出部61は、走行シミュレーションによって通過予測時刻を算出する。これにより、鉄道システム1は、精度よく通過時刻を調整することができる。
【0134】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる鉄道システムの通過時刻調整装置では、駅間でランカーブを切り替える場合にランカーブの切替位置を調整する点で、実施の形態1にかかる鉄道システム1の通過時刻調整装置7と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の通過時刻調整装置7と異なる点を中心に説明する。
【0135】
図17は、実施の形態2にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図である。図17に示すように、実施の形態2にかかる通過時刻調整装置7Aは、処理部43に代えて、処理部43Aを備える点で、通過時刻調整装置7と異なる。処理部43Aは、算出部61および選択部62に代えて、算出部61Aおよび選択部62Aを備える点で、処理部43と異なる。
【0136】
選択部62Aは、停車駅に停車中に情報取得部60によって時刻調整要求が取得された場合、第1ランカーブと第2ランカーブとを選択する。第1ランカーブは、時刻調整要求で示される次に通過する通過駅の通過予定時刻よりも早い通過予測時刻のうち最も通過予定時刻に近い通過予測時刻に対応するランカーブである。第2ランカーブは、次に通過する通過駅の通過予定時刻よりも遅い通過予測時刻のうち最も通過予定時刻に近い通過予測時刻に対応するランカーブである。
【0137】
図18は、実施の形態2にかかる対象列車が停車中に選択される2つのランカーブの一例を示す図である。図18に示す例では、選択部62Aは、第1ランカーブとしてランカーブC2を選択し、第2ランカーブとしてランカーブC3を選択する。
【0138】
選択部62Aは、第1ランカーブおよび第2ランカーブの一方のランカーブを対象列車が停車駅を出発する際に用いるランカーブとして選択する。例えば、後続列車の駅進入を妨げないために速度を上げて対象列車を走行させたい場合、第1ランカーブを選択する。
【0139】
次に、算出部61Aは、走行シミュレーションを用いて、一方のランカーブから他方のランカーブに切り替える列車2の位置である切替位置を変えながら繰り返し通過予測時刻を算出し、通過予測時刻が通過予定時刻と一致する切替位置を修正ランカーブの切替位置として判定する。なお、対象列車は、走行開始位置から一定の区間はフル加速運転で走行するため、算出部61Aは、フル加速運転から等速運転または惰行運転に切り替わって以降の列車位置を切替位置として通過予測時刻を算出する。なお、惰行運転は、ノッチオフの状態での走行である。
【0140】
そして、通知情報出力部63は、一方のランカーブの情報と一方のランカーブへの切替位置である出発駅の情報とを含む第1情報と、他方のランカーブの情報と他方のランカーブへの切替位置の情報とを含む第2情報とを含む通知情報を運行管理装置6へ出力する。これにより、対象列車は、通過予定時刻と同じ時刻で通過駅を通過することができる。
【0141】
また、算出部61Aは、停車駅間を走行中に時刻調整要求が情報取得部60によって取得された場合、対象列車で現在用いられているランカーブで走行した場合に対象列車が現在位置から次の通過駅を通過するまでの走行時分を算出し、算出した走行時分に基づいて、次の通過駅の通過予測時刻を算出する。選択部62Aは、次の通過駅の通過予測時刻が時刻調整要求で示される次の通過駅の通過予定時刻を満たすか否かを判定する。
【0142】
算出部61Aは、次の通過駅の通過予測時刻が次の通過駅の通過予定時刻を満たさない場合、対象列車のランカーブを切り替えた場合の次の通過駅の通過予測時刻を算出する。選択部62Aは、対象列車で現在用いられているランカーブで走行した場合の次の通過駅の通過予測時刻が次の通過駅の通過予定時刻よりも遅い場合、対象列車のランカーブを切り替えた場合の次の通過駅の通過予測時刻のうち、次の通過駅の通過予定時刻よりも早く且つ次の通過駅の通過予定時刻に最も近い通過予測時刻に対応するランカーブを修正ランカーブとして決定する。
【0143】
図19は、実施の形態2にかかる対象列車が走行中に選択される修正ランカーブの一例を示す図である。図19に示す例では、選択部62Aは、ランカーブC3に従って走行中の対象列車の修正ランカーブとして、B駅の通過予定時刻よりも早く且つB駅の通過予定時刻に最も近いB駅の通過予測時刻に対応するランカーブC2が選択される。
【0144】
また、選択部62Aは、対象列車で現在用いられているランカーブで走行した場合の次の通過駅の通過予測時刻が次の通過駅の通過予定時刻よりも早い場合、対象列車のランカーブを切り替えた場合の次の通過駅の通過予測時刻のうち、次の通過駅の通過予定時刻よりも遅く且つ次の通過駅の通過予定時刻に最も近い通過予測時刻に対応するランカーブを修正ランカーブとして決定する。
【0145】
次に、算出部61Aは、走行シミュレーションを用いて対象列車のランカーブを修正ランカーブへ切り替える列車2の位置である切替位置を次の通過駅に近づく方向にずらしながら繰り返し通過予測時刻を算出し、通過予測時刻が通過予定時刻と一致する切替位置を修正ランカーブの切替位置として判定する。
【0146】
図20は、実施の形態2にかかる修正ランカーブの切替位置の調整方法を説明するための図である。図20に示す例では、算出部61Aは、走行シミュレーションを用いてランカーブC3をランカーブC2に切り替える切替位置をB駅に近づく方向にずらしながら繰り返しB駅の通過予測時刻を算出し、B駅の通過予測時刻がB駅の通過予定時刻と一致する切替位置をランカーブC2の切替位置として判定する。
【0147】
実施の形態2にかかる通過時刻調整装置7Aのハードウェア構成例は、図16に示す通過時刻調整装置7のハードウェア構成と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部43Aの機能を実行することができる。
【0148】
以上のように、実施の形態2にかかる鉄道システムの算出部61Aは、列車2のランカーブを修正ランカーブに切り替える列車2の位置である切替位置を決定する。切替情報出力部25は、算出部61Aによって決定された切替位置で、列車2のランカーブが切替後のランカーブに切り替えられるように、切替情報を列車2の車上装置10へ出力する。これにより、実施の形態2にかかる鉄道システムは、通過予定時刻が変更される場合において通過時刻を精度よく調整することができる。
【0149】
また、算出部61Aは、通過予定時刻を列車2のランカーブの切替位置を変えながら算出し通過予測時刻が一致する切替位置を修正ランカーブの切替位置として決定する。これにより、実施の形態2にかかる鉄道システムは、通過予定時刻が変更される場合において通過時刻をより精度よく調整することができる。
【0150】
実施の形態3.
実施の形態3にかかる鉄道システムは、惰行運転によって減速するランカーブを切り替える点で、実施の形態1,2と異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の通過時刻調整装置7と異なる点を中心に説明する。
【0151】
図21は、実施の形態3にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図である。図21に示すように、実施の形態3にかかる通過時刻調整装置7Bは、処理部43に代えて、処理部43Bを備える点で、通過時刻調整装置7と異なる。処理部43Bは、算出部61および通知情報出力部63に代えて、算出部61Bおよび通知情報出力部63Bを備える点で、処理部43と異なる。
【0152】
算出部61Bは、走行シミュレーションを用いて、対象列車のランカーブを切り替える際に惰行運転による減速を行った場合の現在位置から次の通過駅までの走行時分を算出し、算出した走行時分に基づいて、次の通過駅の通過予測時刻を算出する。
【0153】
惰行運転では、空気抵抗によって列車2が減速するため、列車2のブレーキをかけることなく減速することができる。また、惰行運転では、下り勾配の場合に加速するため、力行ノッチにすることなく加速することができる。このように、路線によっては、惰行運転によって減速する場合と加速する場合とがあるため、算出部61Bは、路線の勾配に基づいて、惰行運転でランカーブを切り替えることが可能か否かを判定する。
【0154】
そして、算出部61Bは、惰行運転でランカーブを切り替えることができると判定した場合に、対象列車のランカーブを切り替える際に惰行運転による減速を行った場合の通過予測時刻を算出する。選択部62は、算出部61Bによって算出された通過予測時刻に基づいて、修正ランカーブを決定する。
【0155】
図22は、実施の形態3にかかる対象列車が停車駅間を走行中に選択されるランカーブの一例を示す図である。図22に示す例では、選択部62は、ランカーブC3に従って走行中の対象列車の修正ランカーブとしてランカーブC4を選択しており、ランカーブC3からランカーブC4への切り替えは惰行運転によって行われる。
【0156】
また、算出部61Bは、惰行運転でランカーブを切り替えることができないと判定した場合、実施の形態1,2の場合と同様に、力行ノッチによる加速またはブレーキによる減速でランカーブを切り替えた場合の通過予測時刻を算出する。
【0157】
また、算出部61Bは、惰行運転でランカーブを切り替えることができると判定した場合であっても、力行ノッチによる加速またはブレーキによる減速と比較して、エネルギー消費量が少ない加速方法または減速方法を選択したり、通過予測時刻がより通過予定時刻に近い加速方法または減速方法を選択したりすることができる。
【0158】
また、算出部61Bは、惰行運転でランカーブを切り替える際に対象列車の現在位置をランカーブ切替位置とせずに、実施の形態2の場合と同様に、ランカーブの切替位置を調整することができる。
【0159】
通知情報出力部63Bは、選択情報および切替位置情報に加え、加速方法または減速方法を示す切替方法情報を含む通知情報を通信部41およびネットワーク9を介して運行管理装置6へ送信する。
【0160】
運行管理装置6の切替情報出力部25は、通知情報で示される切替位置に対象列車が到達するタイミングで切替情報を対象列車の車上装置10へ出力する。切替情報は、停車駅間の走行時分の情報またはランカーブIDに加え、切替方法情報を含む。対象列車の車上装置10は、切替情報に含まれる切替方法情報に基づいて、惰行運転でランカーブを切り替える。
【0161】
なお、車上装置10がランカーブの切り替えの際に惰行運転ができるか否かを自動的に判断し、かかる判断結果に基づいて惰行運転を行う場合には、運行管理装置6から対象列車の車上装置10への切替方法情報の送信は行われなくてもよい。
【0162】
実施の形態3にかかる通過時刻調整装置7Bのハードウェア構成例は、図16に示す通過時刻調整装置7のハードウェア構成と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部43Bの機能を実行することができる。
【0163】
以上のように、実施の形態3にかかる鉄道システムは、算出部61Bは、列車2で用いられるランカーブが惰行運転によって切り替えられた場合に列車2が通過駅を通過すると予測される時刻を通過予測時刻として算出する。これにより、実施の形態3にかかる鉄道システムでは、列車2が力行ノッチを使用しない区間が長くなるため、列車2のエネルギー消費量の増加を抑制しつつ通過時刻を調整することができる。
【0164】
実施の形態4.
実施の形態4にかかる鉄道システムは、走行シミュレーションを用いずに通過予測時刻および到着予測時刻を算出する点で、実施の形態1~3の鉄道システムと異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1の通過時刻調整装置7と異なる点を中心に説明するが、実施の形態2,3の通過時刻調整装置7A,7Bに、走行シミュレーションを用いずに通過予測時刻および到着予測時刻を算出する機能を適用してもよい。
【0165】
図23は、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の構成の一例を示す図である。図23に示すように、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置7Cは、記憶部42および処理部43に代えて、記憶部42Cおよび処理部43Cを備える点で、通過時刻調整装置7と異なる。記憶部42Cは、ランカーブ情報50に代えてランカーブ情報50Cを記憶する点、および、第1切替判定情報51および第2切替判定情報52をさらに記憶する点で、記憶部42と異なる。処理部43Cは、算出部61に代えて、算出部61Cを備える点で、処理部43と異なる。
【0166】
図24は、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶される第1切替判定情報の一例を示す図である。図24に示す第1切替判定情報51は、「切り替え前のランカーブID」と「切り替え後のランカーブID」との組み合わせに対して、ランカーブの切替に必要な時間である切替所要時間の情報が含まれる。
【0167】
「切り替え前のランカーブID」は、切り替え前のランカーブのランカーブIDである。「切り替え後のランカーブID」は、切り替え後のランカーブのランカーブIDである。なお、ランカーブC1,C2,C3,C4のランカーブIDは、1,2,3,4である。
【0168】
図24に示す例では、ランカーブC1からランカーブC2への切り替えに必要な時間が3秒であり、ランカーブC1からランカーブC3への切り替えに必要な時間が6秒であり、ランカーブC2からランカーブC1への切り替えに必要な時間が3秒であることが示される。また、図24に示す例では、ランカーブC2からランカーブC3への切り替えに必要な時間が3秒であり、ランカーブC3からランカーブC1への切り替えに必要な時間が6秒であり、ランカーブC3からランカーブC2への切り替えに必要な時間が3秒であることが示される。
【0169】
図25は、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶される第2切替判定情報の一例を示す図である。図25に示す第2切替判定情報52は、「切り替え前のランカーブID」と「切り替え後のランカーブID」との組み合わせに対して、ランカーブの切り替え過程で対象列車が進む距離の情報が含まれる。
【0170】
図25に示す例では、ランカーブC1からランカーブC2への切り替え過程で進む距離が50mであり、ランカーブC1からランカーブC3への切り替え過程で進む距離が100mであり、ランカーブC2からランカーブC1への切り替え過程で進む距離が50mであることが示される。また、図25に示す例では、ランカーブC2からランカーブC3への切り替え過程で進む距離が50mであり、ランカーブC3からランカーブC1への切り替え過程で進む距離が100mであり、ランカーブC3からランカーブC2への切り替え過程で進む距離が50mであることが示される。
【0171】
ランカーブで規定される速度は、停車駅間の位置によって異なる場合があるため、ランカーブ切り替えに必要な時間およびランカーブの切り替え過程で対象列車が進む距離は、対象列車が走行している位置によって異なる場合がある。そのため、第1切替判定情報51および第2切替判定情報52は、例えば、停車駅間における位置毎または区間毎に記憶部42Cに記憶されてもよい。区間は、停車駅間を複数に分割して得られる区間であり、例えば、速度が予め設定された範囲内になる区間である。
【0172】
なお、記憶部42Cの記憶容量の制限などによって、位置毎または区間毎に第1切替判定情報51および第2切替判定情報52を記憶部42Cに記憶できない場合、切替所要時間の平均値、最大値、または最小値などの任意の値を第1切替判定情報51に設定してもよく、切替所要時間の平均値、最大値、または最小値などの任意の値を第2切替判定情報52に設定してもよい。
【0173】
図26は、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶されるランカーブ情報の一例を示す図である。図26に示すランカーブ情報50Cは、「ランカーブID」、「位置」、「B駅」、「C駅」、および「D駅」が「位置」毎に含まれる。
【0174】
「ランカーブID」は、ランカーブのランカーブIDである。「位置」は、ランカーブの切り替え後の位置の情報であり、停車駅からの距離を示す情報である。ランカーブの切り替え後の位置は、修正ランカーブに切り替わった直後の列車2の位置である。停車駅からの距離は、例えば、キロ程で表される。「位置」は、例えば、速度が変化する位置または各駅の位置などの情報である。
【0175】
「B駅」は、ランカーブの切替位置からB駅までの走行時分の情報であり、「C駅」は、ランカーブの切替位置からC駅までの走行時分の情報であり、「D駅」は、ランカーブの切替位置からD駅までの走行時分の情報である。
【0176】
図26に示す例では、ランカーブC2で走行中の対象列車が停車駅からのキロ程が200である位置でランカーブを切り替えた場合のB駅までの走行時分が30秒であり、C駅までの走行時分が170秒であり、D駅までの走行時分が300秒であることが示されている。
【0177】
また、図26に示す例では、ランカーブC2で走行中の対象列車が停車駅からのキロ程が500である位置でランカーブを切り替えた場合のB駅までのキロ程が0であり、C駅までのキロ程が140であり、D駅までのキロ程が270であることが示されている。
【0178】
算出部61Cは、第1切替判定情報51と第2切替判定情報52とに基づいて、ランカーブの切り替えに必要な時間とランカーブの切り替え後の位置を算出し、算出したランカーブの切り替え後の位置から通過駅または停車駅までの走行時分をランカーブ情報50Cに基づいて算出する。
【0179】
そして、算出部61Cは、ランカーブの切り替えに必要な時間と通過駅または停車駅までの走行時分とを足し合わせることで、現在位置からランカーブを切り替えた際の通過予測時刻または到着予測時刻を算出する。
【0180】
ランカーブ情報50Cに含まれる「位置」は、離散的な位置であり、算出部61Cで算出されるランカーブの切り替え後の位置がランカーブ情報50Cに含まれる「位置」と一致しない場合がある。そこで、算出部61Cは、ランカーブ情報50Cに含まれる「位置」のうちランカーブの切り替え後の位置に近い2つの「位置」に対応付けられた「B駅」、「C駅」、および「D駅」の走行時分を補間することで、ランカーブの切り替え後の位置から通過駅または停車駅までの走行時分を算出する。
【0181】
図27は、実施の形態4にかかる通過時刻調整装置の記憶部に記憶されるランカーブ情報を説明するための図である。図27に示す例では、ランカーブ情報50Cの「位置」が、ランカーブ上に黒丸で示されている。黒丸は、A駅からのキロ程が200の位置、A駅からのキロ程が500の位置、および惰行運転で速度が変化する範囲における一定間隔の位置にある。
【0182】
図27では、B駅の通過予測時刻を調整するためにランカーブがランカーブC1からランカーブC2に切り替えられる例を示している。算出部61Cは、ランカーブの切り替え後の位置から対象列車の前方の最も近い「位置」の情報と対象列車の後方の最も近い「位置」の情報とをランカーブ情報50Cから取得する。
【0183】
対象列車の前方は対象列車の進行方向であり、対象列車の後方は、対象列車の進行方向と逆方向である。以下において、対象列車の前方の最も近い「位置」を前方位置と記載し、対象列車の後方の最も近い「位置」を後方位置と記載する場合がある。
【0184】
算出部61Cは、例えば、下記式(1)の演算によって、ランカーブの切り替え後の位置から通過駅または停車駅までの走行時分を算出することができる。
【0185】
【数1】
【0186】
上記式(1)において、「f」は、前方位置のキロ程を表し、「r」は、後方位置のキロ程を表し、「x」は、ランカーブの切り替え後の位置を表し、「T」は、前方位置から通過駅または停車駅までの走行時分を表し、「T」は、後方位置から通過駅または停車駅までの走行時分を表し、「T」は、ランカーブの切り替え後の位置から通過駅または停車駅までの走行時分を表す。
【0187】
例えば、図26および図27に示す例では、ランカーブの切り替え後の位置がキロ程「400」である場合、前方位置は、キロ程「500」であり、後方位置は、キロ程「200」である。この場合、ランカーブの切り替え後の位置からB駅までの走行時分は「10」であり、ランカーブの切り替え後の位置からC駅までの走行時分は「150」であり、ランカーブの切り替え後の位置からD駅までの走行時分は「280」である。
【0188】
実施の形態4にかかる通過時刻調整装置7Cのハードウェア構成例は、図16に示す通過時刻調整装置7のハードウェア構成と同じである。記憶部42Cは、メモリ102によって実現される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部43Cの機能を実行することができる。
【0189】
以上のように、実施の形態4にかかる鉄道システムは、ランカーブの切り替えに必要な距離または時間を示す第1切替判定情報51と停車駅間の各位置から通過駅までの間の列車の走行時分の情報である第2切替判定情報52とを記憶する記憶部42Cを備える。算出部61Cは、第1切替判定情報51と第2切替判定情報52と列車2の位置とに基づいて、通過予測時刻を算出する。これにより、実施の形態4にかかる鉄道システムは、走行シミュレーションを用いずに通過予測時刻を算出できるため、処理負荷を抑えることができ、低スペックな装置での処理が可能になる。
【0190】
実施の形態5.
実施の形態5にかかる鉄道システムは、通過時刻調整装置に代えて車上装置で時刻調整処理が実行される点で、実施の形態1~4の鉄道システムと異なる。以下においては、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略し、実施の形態1~4の鉄道システムと異なる点を中心に説明する。
【0191】
図28は、実施の形態5にかかる鉄道システムの構成の一例を示す図である。実施の形態5にかかる鉄道システム1Dは、通過時刻調整装置7が設けられておらず、複数の列車2~2に代えて複数の列車2D~2Dを備える点で、鉄道システム1と異なる。mは、2以上の整数である。以下において、列車2D~2Dの各々を個別に区別せずに示す場合、列車2Dと記載する場合がある。
【0192】
列車2Dは、車上装置10に代えて、車上装置10Dを備える点で、列車2と異なる。車上装置10Dは、実施の形態1,2,3,4の通過時刻調整装置7,7A,7B,7Cのうちいずれかの通過時刻調整装置の時刻調整処理と同じ処理を行うことができる点で、車上装置10と異なる。
【0193】
図29は、実施の形態5にかかる車上装置の構成の一例を示す図である。図29に示すように、実施の形態5にかかる車上装置10Dは、通過時刻調整部77を備える点で、車上装置10と異なる。通過時刻調整部77が実行する処理は、通過時刻調整装置の一例であり、通過時刻調整装置7,7A,7B,7Cのうちいずれかの通過時刻調整装置の時刻調整処理を含む。通過時刻調整部77は、通過時刻調整装置の一例である。
【0194】
通過時刻調整部77は、運行管理装置6から時刻調整要求が通信部71で受信された場合、時刻調整要求で示される通過予定時刻に応じた時刻で列車2Dが通過駅を通過し、時刻調整要求で示される到着予定時刻に応じた時刻で対象列車が停車駅に到着するように、列車2Dで用いられる修正ランカーブを選択する。
【0195】
通過時刻調整部77は、列車のランカーブを修正ランカーブに切り替えるための切替情報を処理部74へ出力する。切替情報は、修正ランカーブの走行時分または修正ランカーブのランカーブIDである。処理部74は、切替情報に基づいて、記憶部73に記憶された複数のランカーブのうち通信部71で受信された切替情報に応じたランカーブを選択する。
【0196】
図30は、実施の形態5にかかる車上装置の通過時刻調整部の構成の一例を示す図である。図30に示すように、通過時刻調整部77は、記憶部80と、処理部81とを備える。記憶部80は、ランカーブ情報82を記憶する。ランカーブ情報82は、ランカーブ情報50またはランカーブ情報50Cと同じである。
【0197】
処理部81は、情報取得部83と、算出部84と、選択部85と、切替情報出力部86とを備える。情報取得部83は、情報取得部60と同一の機能を有する。算出部84は、算出部61,61A,61B,61Cのいずれかと同一の機能を有する。選択部85は、選択部62,62Aのいずれかと同一の機能を有する。切替情報出力部86は、算出部84で決定された切替位置に対象列車が到達するタイミングで切替情報を処理部74へ出力する。
【0198】
実施の形態5にかかる通過時刻調整部77のハードウェア構成例は、図16に示す通過時刻調整装置7のハードウェア構成と同じである。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、処理部81の機能を実行することができる。
【0199】
これにより、実施の形態5にかかる鉄道システム1Dでは、地上装置を拡張することなく、通過時刻を調整することができる。
【0200】
実施の形態1~5にかかる鉄道システムでは、列車2,2Dが走行中の通過時刻調整は、運行管理装置6からの時刻調整要求で行われるが、時刻調整要求がない場合にも行ってもよい。例えば、列車2,2Dが何らかの影響でランカーブに従った走行から逸脱した走行をした場合、通過予定時刻に変更がなくとも通過予定時刻を守れない場合がある。このような場合において、通過時刻調整装置7,7A,7B,7Cは、上述した通過時刻調整を行うことで、何らかの影響による通過遅れを修正し、通過時刻を守ることができる。
【0201】
例えば、算出部61,61A,61B,61C,84は、列車2,2Dがランカーブに従った走行から逸脱したと判定すると、列車2,2Dで用いられるランカーブが切り替えられた場合に列車2Dが通過駅を通過すると予測される時刻である通過予測時刻を算出する。このように、列車2Dがランカーブに従った走行から逸脱して通過予定時刻に通過駅を通過できないような場合においても、通過時刻を守ることができる。
【0202】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0203】
1,1D 鉄道システム、2,2~2,2D,2D~2D 列車、3 無線装置、4 地上制御装置、5 連動制御装置、6 運行管理装置、7,7A,7B,7C 通過時刻調整装置、8,9 ネットワーク、10,10D 車上装置、11,41,71 通信部、12,42,42C,73,80 記憶部、13,43,43A,43B,43C,74,81 処理部、20,60,83 情報取得部、21 進路制御部、22 設定情報出力部、23 変更時刻算出部、24 時刻調整要求部、25,86 切替情報出力部、30 ダイヤ情報、31 列車情報、50,50C,82 ランカーブ情報、51 第1切替判定情報、52 第2切替判定情報、61,61A,61B,61C,84 算出部、62,62A,85 選択部、63,63B 通知情報出力部、72 検出部、75 制御部、76 表示部、77 通過時刻調整部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30