IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-造水器 図1
  • 特許-造水器 図2
  • 特許-造水器 図3
  • 特許-造水器 図4
  • 特許-造水器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】造水器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/14 20230101AFI20241129BHJP
   B01D 1/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C02F1/14 A
B01D1/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021055380
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152562
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正晃
【審査官】黒木 花菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-067576(JP,A)
【文献】特開2011-031157(JP,A)
【文献】特開2020-022937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0060808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/14
B01D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を貯留する原水タンクと、前記原水タンクに、下部が前記原水に浸漬し前記下部以外が前記原水の水面より上方にある状態で設置され前記原水を吸い上げるように構成された吸上蒸発部と、前記原水タンク及び前記吸上蒸発部を密閉状態で全体的に覆う、透光性を有するカバーを有し、
前記吸上蒸発部に前記カバーを透過させる態様によって太陽光を照射して前記原水を蒸発させ、前記カバーの内面において凝縮させることによって蒸留水が製造される造水器であって、
前記吸上蒸発部は、活性炭素繊維フェルト又は不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状又は折り山が上下方向に沿って延びたコルゲート形状に形成された構造体、又は、上下方向に延びて水平断面がハニカム形状に形成された構造体により構成されて、前記原水タンクに自立して設置されており、少なくとも太陽光が照射される表面が黒色である造水器。
【請求項2】
前記構造体は、炭素粉末を含む着色料により黒色に着色されている請求項1に記載の造水器。
【請求項3】
前記吸上蒸発部は、前記プリーツ形状又は前記コルゲート形状に形成された構造体を複数備え、複数の前記構造体は、各構造体同士が当接する状態で水平方向に沿って並設されている請求項1又は2に記載の造水器。
【請求項4】
前記カバーは、内面に親水性コーティングが施されている請求項1から3のいずれか一項に記載の造水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を貯留する原水タンクと、前記原水タンクに、下部が前記原水に浸漬し前記下部以外が前記原水の水面より上方にある状態で設置され前記原水を吸い上げるように構成された吸上蒸発部と、前記原水タンク及び前記吸上蒸発部を密閉状態で全体的に覆う、透光性を有するカバーを有し、前記吸上蒸発部に前記カバーを透過させる態様によって太陽光を照射して前記原水を蒸発させ、前記カバーの内面において凝縮させることによって蒸留水が製造される造水器に関する。
【背景技術】
【0002】
海水、河川水、雨水等の直接の飲用や使用に適さない原水から動力源を有することなく蒸留水を製造するために造水器が用いられる。
【0003】
このような造水器として、特許文献1には、吸上蒸発部がティッシュペーパーから構成されたものが開示されている。また、特許文献2には、吸上蒸発部が天然繊維、合成繊維、又は炭素繊維等から構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-223696号公報
【文献】特開2020-22937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、造水においては、吸上蒸発部における吸水速度と蒸発速度とのバランスが重要である。すなわち、吸水速度に対して蒸発速度が遅くても、吸水速度に対して蒸発速度が速くても造水効率は良くない。
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2に開示されたような造水器では、吸上蒸発部における原水の吸上量と蒸発量とのバランスが好ましい状態ではなく、また、長期間の使用に対する耐久性の点においても、改良の余地があった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、吸上蒸発部において原水の吸上量と蒸発量とのバランスが向上し、また長期間の使用に対する耐久性が向上した造水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するための本発明に係る造水器の特徴構成は、原水を貯留する原水タンクと、前記原水タンクに、下部が前記原水に浸漬し前記下部以外が前記原水の水面より上方にある状態で設置され前記原水を吸い上げるように構成された吸上蒸発部と、前記原水タンク及び前記吸上蒸発部を密閉状態で全体的に覆う、透光性を有するカバーを有し、前記吸上蒸発部に前記カバーを透過させる態様によって太陽光を照射して前記原水を蒸発させ、前記カバーの内面において凝縮させることによって蒸留水が製造される造水器であって、前記吸上蒸発部は、活性炭素繊維フェルト又は不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状又は折り山が上下方向に沿って延びたコルゲート形状に形成された構造体、又は、上下方向に延びて水平断面がハニカム形状に形成された構造体により構成されて、前記原水タンクに自立して設置されており、少なくとも太陽光が照射される表面が黒色である点にある。
【0009】
上述の構成によると、活性炭素繊維フェルト又は不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状又は折り山が上下方向に沿って延びたコルゲート形状に形成された構造体、又は、上下方向に延びて水平断面がハニカム形状に形成された構造体から構成されていることから、原水タンクに貯留された原水を毛細管現象によって効率的に吸い上げることができる。吸上蒸発部に吸い上げられた原水は太陽光が照射されることによって吸上蒸発部が加熱されるのに伴って蒸発し、カバーの内面で結露させられ蒸留水となる。
【0010】
この蒸発にあたり、発明者の鋭意研究の結果、吸上蒸発部に備えられた構造体は少なくとも太陽光が照射される表面が黒色であることから、例えば青色であるような場合に比べて太陽光によって効率的に加熱され、原水の蒸発が促される。これにより、吸水速度と蒸発速度とのバランスをよくすることができる。
【0011】
なお、構造体は、活性炭素繊維フェルト又は不織布から構成されていることから、長期間の使用に対する耐久性も良い。また、構造体は、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状又は折り山が上下方向に沿って延びたコルゲート形状、又は、上下方向に延びて水平断面がハニカム形状であることから、単なる平板状の構造体である場合に比べて設置面積に対する受熱面積が広い。このような構造体としては、例えば、販売されている加湿器用フィルタを用いることができる。
【0012】
本発明に係る造水器の別の特徴構成は、前記構造体は、炭素粉末を含む着色料により黒色に着色されている点にある。
【0013】
上述の構成によると、炭素粉末を含む着色料により黒色に着色されていることから、太陽光からの吸熱量を容易に大幅に増加させることができる。
【0014】
本発明に係る造水器の更に別の特徴構成は、前記吸上蒸発部は、前記プリーツ形状又は前記コルゲート形状に形成された構造体を複数備え、複数の前記構造体は、各構造体同士が当接する状態で水平方向に沿って並設されている点にある。
【0015】
上述の構成によると、原水タンクの限られた面積内に複数の構造体を効率よく配設することができる。
【0016】
また、活性炭素繊維フェルト又は不織布は多孔構造をしていることから、受熱面積あたりの蒸発速度を大きくすることができる。
【0017】
本発明に係る造水器の更に別の特徴構成は、前記カバーは、内面に親水性コーティングが施されている点にある。
【0018】
上述の構成によると、吸上蒸発部において蒸発した原水は、カバーの内面において凝縮するのであるが、その際当該カバーの内面に施された親水性コーティングにより、当該カバーの内面を伝って下方へ流れ回収される。したがって、太陽光が、カバーの内面に凝縮した水の粒によって散乱したり、透過が阻害されたりすることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る造水器の説明図である。
図2】造水試験の結果を示すグラフである。
図3】造水試験の結果を示すグラフである。
図4】造水試験の結果を示すグラフである。
図5】造水試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る造水器を図面に基づいて説明する。図1に示されるように、造水器10は、原水を貯留する原水タンク11と、原水タンク11に、下部が原水に浸漬し、下部以外が原水の水面より上方にある状態で設置された吸上蒸発部12と、原水タンク11及び吸上蒸発部12を密閉状態で全体的に覆う、透光性を有するカバー13と、原水タンク11、吸上蒸発部12及びカバー13を収容する蒸留水バット14と、蒸留水バット14に貯留された蒸留水の取水管15を有している。
【0021】
原水タンク11は、原水を貯留するためのタンクであり、プラスチックなどの樹脂により構成されている。
【0022】
吸上蒸発部12は、複数の構造体を備えている。各構造体は、不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状に形成された構造体であるとともに、少なくとも太陽光が照射される表面が黒色である。複数の構造体は、各構造体同士が当接する状態で水平方向に沿って並設されている。
【0023】
具体的には、各構造体は、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリエステルなどの原料をスパンボンド法などによってシート状の不織布とし、当該シート状の不織布をプリーツ状に折り曲げたあと、プリーツとは交差する方向に、プリーツの間隔を等間隔に保持する態様によってホットメルトして所定形状とし、その後、炭素粉末を含む着色料により黒色に着色されることによって製造される。なお、吸上蒸発部12は、少なくとも太陽光が照射される表面が黒色であればよい。
【0024】
吸上蒸発部12が備える構造体を製造するにあたって、シート状の不織布をプリーツ状に折り曲げたあと、ホットメルトに代えて、針金等によって形状を固定してもよい。
【0025】
なお、吸上蒸発部12が備える構造体は自立することが好ましいが、例えば、カバー13の内面に吊り下げられるように構成されていてもよい。
【0026】
また、吸上蒸発部12が備える構造体は不織布から構成される場合に限らず、活性炭素繊維(ACF)フェルトから構成されていてもよい。さらに、吸上蒸発部12が備える構造体は上述のようなプリーツ形状に形成された構造体ではなく、折り山が上下方向に沿って延びたコルゲート形状に形成された構造体、又は、上下方向に延びて水平断面がハニカム形状に形成された構造体であってもよい。
【0027】
なお、例えば吸上蒸発部12は、刻々と変化する太陽の位置に応じて定期的に、太陽光に対する姿勢が調節可能に構成されていてもよい。
【0028】
上記の構造により、吸上蒸発部12に吸い上げられた原水は、太陽光によって加熱された吸上蒸発部12によって蒸発させられ、カバー13の内面において凝縮させられて蒸留水となる。
【0029】
カバー13は、原水タンク11及び吸上蒸発部12を密閉状態で全体的に覆うものであって、直方体状、円錐状、多角錐状、半球状などの形状を有した、透光性のある材料から構成されている。例えば、透光性を有する材料として、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アモルファスポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル、ガラス等が例示される。
【0030】
カバー13の内面は、水接触角が10°以下となるような親水性コーティングが施されている。したがって、カバー13の内面において凝縮した蒸留水は、当該カバー13の内面を伝って下方へ流れやすい。
【0031】
造水器10は屋外に設置されることから、カバー13は雨風に対して当該カバー13の形状を維持するのに十分な剛性が確保できるように構成されていればよい。また、カバー13には、一体的又は別に形成された枠体が設けられていてもよい。
【0032】
カバー13は、凹凸形状を有していてもよく、この場合は、当該凹凸形状が凸レンズや凹レンズとして機能することによって、集光された太陽光が吸上蒸発部12に照射されるため発熱効率が良い。また、カバー13の内面において凝縮した蒸留水は、当該内面の凸部ないし凹部を伝って下方へ流れやすい。
【0033】
吸上蒸発部12において蒸発した水は、カバー13の内面で凝縮し、当該内面を伝って下方へ流れ、流れ落ちた蒸留水は、蒸留水バット14により回収される。
【0034】
蒸留水バット14の材質は、回収した蒸留水の品質に悪影響を及ぼさないものであればよい。
【0035】
取水管15は、蒸留水バット14に貯留された蒸留水を外部に取り出すための、例えば樹脂製の配管であって、蒸留水バット14に接続されている。取水管15には、バルブが設けられており開閉することによって、通水と止水とが容易に可能となっている。なお、取水管15は設けられていなくてもよい。
【0036】
上述の実施形態においては、蒸留水バット14は、原水タンク11、吸上蒸発部12及びカバー13を収容するように構成されていたが、これに限らない。カバー13の内面を伝って下方へ流れ落ちた蒸留水を回収できる形状であればよく、例えばカバー13の下縁のみを収容するような形状であってもよい。
【0037】
上述の構成により、造水器10は効率的に蒸留水の造水が可能となった。本発明に係る造水器10の構成による効果を確認するために以下のように各造水実験を行った。
【0038】
吸水蒸発部の形状が造水量に及ぼす影響を確認するために造水試験1を行った。造水試験1においては、実験例1に係る造水器と比較例1に係る造水器とのそれぞれの原水タンクに同量の原水を貯留した状態で、屋外において並べて設置し、一日で得られる蒸留水の造水量を測定し比較することを、複数の測定日毎に行った。造水試験1の結果は図2の表に示す。
【0039】
(実験例1)
実験例1に係る造水器は、以下のとおり構成されている。
吸水蒸発部が備える構造体として市販の気化式加湿器フィルタ(アイリスオーヤマ株式会社製 EHH-F2310、PET不織布使用、プリーツ山高さ30mm、プリーツ山-山ピッチ5mm、全体寸法220mm×60mm×高さ100mm、青色)を、市販の黒色塗料(モノタロウ株式会社製黒染めスプレー、カーボンブラック含有量1%未満)により、全体を黒色に着色したものを用いた。原水タンクには、当該黒色の気化式加湿フィルタが9個並列に設置されている。なお、当該9個の気化式加湿フィルタは、各気化式加湿フィルタ同士が当接する状態で水平方向に沿って並設されている。
【0040】
原水タンクは、アクリル製タンク(250×580mm)を用いた。
蒸留水バットは、PP製バット(640×380×高さ140mm)を用いた。
カバーは、透明容器(アカサカ株式会社製 苗帽子 角型5号)を用いた。
【0041】
(比較例1)
比較例1に係る造水器は、以下のとおり構成されている。
吸水蒸発部が備える構造体として炭素繊維フェルト(大阪ガスケミカル株式会社製 目付300g/m、厚み5mm)を用いた。
【0042】
比較例1においては、当該炭素繊維フェルトを原水タンクに1枚水平に原水タンクに設置した。
【0043】
原水タンク、蒸留水バット、及びカバーは、実験例1と同じ構成のものを用いた。
【0044】
図2に示すように、実験例1に係る造水器は、ほとんどの測定日において、1日当たり200~300mlの蒸留水を造水することができた。
【0045】
一方、比較例1に係る造水器においては、ほとんど測定日において、1日当たり100~150mlの蒸留水しか造水することができなかった。
【0046】
測定日において天候が異なったが、いずれの測定日においても、実験例1に係る吸上蒸発部は、比較例1に係る造水器よりも約2倍の蒸留水を造水することができた。当該結果から、吸水蒸発部が備える構造体がどちらも黒色である場合には、その形状によって造水量が変化することが確認できた。
【0047】
これは、吸水蒸発部が備える構造体が、不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状に形成された構造体から構成されていることから、原水タンクに貯留された原水を毛細管現象によって効率的に吸い上げることができることによると考えられる。また、構造体は、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状に形成された構造体であることから、単なる平板状の構造体である場合に比べて設置面積に対する受熱面積が広いことにもよると考えられる。こうして吸上蒸発部に吸い上げられた原水は太陽光が照射されることによって吸上蒸発部が加熱されるのに伴って蒸発し、カバーの内面で結露させられ蒸留水となる。
【0048】
次に、蒸発部の着色が造水量に及ぼす影響を確認するために造水試験2を行った。造水試験2においては、比較例1に係る造水器と比較例2に係る造水器とのそれぞれの原水タンクに同量の原水を貯留した状態で、屋外において並べて設置し、一日で得られる蒸留水の造水量を測定し比較することを、複数の測定日毎に行った。造水試験2の結果は図3の表に示す。なお、比較例1に係る造水器は造水試験1におけるものと同じである。
【0049】
(比較例2)
比較例2に係る造水器は、以下のとおり構成されている。
吸上蒸発部が備える構造体として、実験例1に係る市販の気化式加湿器フィルタを黒色に着色せずに青色のままで用いた。9個の気化式加湿フィルタの配置については実験例1と同様である。
【0050】
また、原水タンク、蒸留水バット、及びカバーは、実験例1と同じ構成のものを用いた。
【0051】
図3に示すように、比較例1に係る造水器も比較例2に係る造水器も、いずれの測定日においても、造水量は100~200ml程度にすぎず、むしろ測定日によっては比較例1に係る造水器のほうが、比較例2に係る造水器のよりも造水量が多い日もあることが確認された。当該結果から、比較例2に係る造水器のように吸水蒸発部が黒色でない場合には、比較例1に係る造水器よりも性能が良いことは確認できなかった。
【0052】
造水試験1の結果及び造水試験2の結果から、吸上蒸発部は、当該吸水蒸発部が備える構造体が、不織布から構成された構造体であって、折り目が上下方向に沿って延びたプリーツ形状に形成された構造体から構成されており、かつ、黒色であることが有利であることが確認できた。吸上蒸発部に備えられた構造体は少なくとも太陽光が照射される表面が黒色であることから、例えば青色であるような場合に比べて太陽光によって効率的に加熱され、原水の蒸発が促されるものと考えられる。
【0053】
次に、蒸発部の材質が造水量に及ぼす影響を確認するために造水試験3を行った。
【0054】
造水試験3においては、実験例2に係る造水器と比較例1に係る造水器とのそれぞれの原水タンクに同量の原水を貯留した状態で、屋外において並べて設置し、一日で得られる蒸留水の造水量を測定し比較することを、複数の測定日毎に行った。造水試験3の結果は図4の表に示す。
【0055】
(実験例2)
実験例2に係る造水器は、以下のとおり構成されている。
吸水蒸発部が備える構造体は、活性炭素繊維(ACF)のフェルト(大阪ガス株式会社製 BET比表面積500m/g、目付100g/m、厚み4mm)を、アルミ製金網(JISII型F450号)と接着剤で張り合わせ、プリーツ加工によりプリーツ山高さ30mm、プリーツ山-山ピッチ30mm、外寸法220mm×30mm×高さ120mmとしたものを用いた。原水タンクには、当該活性炭素繊維(ACF)のフェルトが12個並列に設置されている。なお、当該12個の活性炭素繊維(ACF)のフェルトは、各活性炭素繊維(ACF)のフェルト同士が当接する状態で水平方向に沿って並設されている。
【0056】
なお、原水タンク、蒸留水バット、及びカバーは、実験例1と同じ構成のものを用いた。
【0057】
図4に示すように、実験例2に係る造水器は、いずれの測定日においても、1日当たり概ね200~300mlの蒸留水を造水することができた。測定日において天候が異なったが、いずれの測定日においても、実験例2に係る造水器は、比較例1に係る造水器よりも約2~3倍の蒸留水を造水することができた。当該結果から、吸水蒸発部が同じ形状であっても、その材質によって造水量が変化することが確認できた。
【0058】
本発明に係る造水器は、清浄な飲料水の乏しい開発途上国や、災害時の上水不足時、又は船舶等の遭難時などに飲料水の確保のために用いることができる。その際、調達容易な材料から構成されていることから製造が容易である。
【0059】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 :造水器
11 :原水タンク
12 :吸上蒸発部
13 :カバー
14 :蒸留水バット
15 :取水管
図1
図2
図3
図4
図5