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特許7595502人工毛髪用繊維、それを含む頭飾製品、及び人工毛髪用繊維の製造方法
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  • 特許-人工毛髪用繊維、それを含む頭飾製品、及び人工毛髪用繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】人工毛髪用繊維、それを含む頭飾製品、及び人工毛髪用繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20241129BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20241129BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20241129BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20241129BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A41G3/00 A
D06M15/643
D06M15/564
D06M15/53
D06M13/463
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021057571
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154501
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-002014(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131117(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/069751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
D06M 15/643
D06M 15/564
D06M 15/53
D06M 13/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に繊維処理剤組成物が付着されている人工毛髪用繊維であって、
前記繊維処理剤組成物は、少なくともウレタン結合構造体及びシリコーン化合物を含み、
前記ウレタン結合構造体は架橋剤であり、前記人工毛髪用繊維の表面に架橋して被膜を形成しており、
前記シリコーン化合物は、アミノ変性シリコーンオイル及び/またはエポキシ変性シリコーンオイルを含み、
前記繊維処理剤組成物は、オキサゾリン基含有アクリル樹脂を含まない、人工毛髪用繊維。
【請求項2】
前記繊維処理剤組成物に含まれる、ウレタン結合構造体及びシリコーン化合物の重量比が、1:10~3:1である、請求項1に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項3】
人工毛髪用繊維は、前記繊維処理剤組成物を固形分換算で0.05重量%以上0.5重量%以下含む、請求項1または2に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項4】
人工毛髪用繊維は、前記ウレタン結合構造体を0.02重量%以上0.2重量%以下含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項5】
人工毛髪用繊維は、前記シリコーン化合物を不揮発分換算で0.01重量%以上0.3重量%以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項6】
人工毛髪用繊維は、ポリ塩化ビニル系繊維、アクリル系繊維及びポリエステル系繊維からなる群から選ばれる一つ以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項7】
前記シリコーン化合物は、アミノ変性シリコーンオイルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項8】
前記繊維処理剤組成物は、さらに、ポリアルキレンオキシド系化合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項9】
前記繊維処理剤組成物は、さらに、第4級アンモニウム塩を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項10】
前記ウレタン結合構造体は、トリメチロールプロパンの水酸基全てにトルエンジイソシアネートが付加された化合物である、請求項1~9のいずれかに記載の人工毛髪用繊維。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の人工毛髪用繊維を含む頭飾製品。
【請求項12】
請求項1~10に記載の人工毛髪用繊維の製造方法であって、
人工毛髪用繊維の表面に繊維処理剤組成物を付着させる工程を有する、人工毛髪用繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人工毛髪用繊維、それを含む頭飾製品、及び人工毛髪用繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアー等の頭飾製品においては、人毛以外に、人工毛髪が用いられている。人工毛髪用繊維としては、例えば、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維等の様々な合成繊維や再生コラーゲン繊維等のコラーゲン繊維等が用いられており、人工毛髪の触感や櫛通り性等を改善するために、繊維処理剤を付与することが行われている。例えば、特許文献1には、オキサゾリン基含有アクリル樹脂及び有機変性シリコーンを含む難燃性処理剤を人工繊維に付着させることで、櫛通り性や触感を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2019/131117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かつら等の頭飾製品は、長期間使用することが多く、長期間使用した後の櫛通り、すなわち櫛通り耐久性が著しく低下するという課題があり、改善の余地があった。また、先行文献1に記載の人工毛髪用繊維は、櫛に通すと静電気が発生してボリュームが出すぎてしまい、まとまりにくく、使用者の所望どおりの髪型や頭髪商品に施しにくいという課題が残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表面に繊維処理剤組成物が付着されている人工毛髪用繊維であって、前記繊維処理剤組成物は、少なくともウレタン結合構造体及びシリコーン化合物を含む、人工毛髪用繊維に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、滑らかな触感を有するとともに、櫛通り耐久性が良好な人工毛髪用繊維、及びそれを含む頭飾製品を提供することができる。更にボリュームが出すぎず、まとまりにくさを抑えることができる人工毛髪用繊維、及びそれを含む頭髪商品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、櫛通り耐久性を測定する方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、人工毛髪用繊維の表面に繊維処理剤組成物が付着されている人工毛髪用繊維及びそれを含む頭飾製品ついて、検討を重ねた結果、ウレタン結合構造体及びシリコーン化合物を含む繊維処理剤組成物を特定量、人工毛髪用繊維に付着させることで、従来の人工毛髪用繊維よりも滑らかな触感を有するとともに、優れた櫛通り耐久性に加えて、静電気発生が抑制されることでボリュームが抑えられまとまりやすい、優れた頭髪商品を得ることを見出し、本発明に到った。滑らかな触感を有するとともに、優れた櫛通り耐久性に加えてまとまりやすい、優れた頭髪商品が得られる理由としては推測の域を出ないが以下のように考えられる。ウレタン結合構造体はプレポリマーであり、比較的低温で架橋することができるため、人工毛髪用繊維表面に前記ウレタン結合構造体が架橋することで容易に繊維表面に被膜を形成することができ、当該被膜により触感等が向上すると推定される。架橋温度が高温の繊維処理剤組成物の場合、特にポリ塩化ビニル系繊維が溶解してしまうため好ましくないが、ウレタン結合構造体は比較的低温で架橋するため好ましい。さらに、シリコーン化合物をが共存されることで、さらに静電気発生を抑えるため、当該繊維を含む頭髪商品は優れた櫛通り性、滑らかな触感及び容易にまとまるため所望の髪型を得ることができる。
<ウレタン結合構造体>
本発明の人工毛髪用繊維表面には、繊維処理剤組成物が付着されている。前記繊維処理剤組成物は、少なくともウレタン結合構造体及びシリコーンオイル化合物を含む。
ウレタン結合構造体は、式(1)で表される構造を有する。特に限定されないが、例えばトリメチロールプロパンの水酸基全てにトルエンジイソシアネートが付加された化合物が挙げられ、中でもその末端イソシアネート基すべてをメチルエチルケトンオキシムで封止したブロック型のウレタンプレポリマーであり、式(2)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
ウレタン結合構造体は、人工毛髪用繊維に対して0.02重量%以上0.2重量%以下含み、好ましくは0.025重量%以上0.15重量%以下である。0.02重量%より少ない場合、前記被膜が形成されるものの、形成される被膜が少なく、優れた櫛通り耐久性が得られにくく好ましくない。また、0.2重量%より多い場合、形成される被膜が多くなりすぎて触感が悪くなるため好ましくない。
<シリコーン化合物>
シリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン及び/またはジメチルシリコーンのメチル基の一部を有機官能基で置換した有機変性シリコーンであれば、特に限定されないが、例えば、触感及び櫛通りを良好にする観点から、アミノ変性シリコーンオイル及び/またはエポキシ変性シリコーンオイル等が好ましい。
アミノ変性シリコーンオイルは、オルガノクロルシランのメチル基の一部をアミノ基に置き換えたものである。アミノ基は、モノアミン(-R-NH)であってもよく、ジアミン(-R-NH-R-NH)であってもよい。R及びRは、炭素数が1~6のアルキル基であってもよく、炭素数が1~6のアルキレン基であってもよい。
アミノ変性シリコーンオイルは、特に限定されないが、例えば、人工毛髪用繊維に平滑性を付与しやすい観点から、アミン当量は500以上4000未満の範囲であることが望ましい。また、人工毛髪繊維の触感及び櫛通り耐久性を良好にする観点から、重量平均分子量は5000~200000であることが好ましく、5000~170000であることがより好ましく、5000~150000であることがさらに好ましい。
アミノ変性シリコーンオイルはは、水や乳化剤等が配合されて水系エマルションや水溶液の状態で市販されている市販品を用いてもよい。
ジメチルシリコーンオイルは、特に限定されないが、くし通り性及び触感をより向上させる観点から、粘度が1万~5000万mm/sであることが好ましく、2万~100万mm/sであることがより好ましい。シリコーン化合物の粘度は、ASTM D 445-46Tによるウッベローデ粘度計により、25℃の動粘度(mm/s)を測定したものである。
前記ジメチルシリコーンオイルとしては、水や乳化剤等が配合されて水系エマルションや水溶液の状態で市販されている市販品を用いてもよい。これらのシリコーン化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上混合して用いてもよい。また、シリコーン化合物も2種以上用いてもよい。
シリコーン化合物は、人工毛髪用繊維に対して不揮発分換算で0.01重量%以上0.3重量%以下含むことが好ましい。人工毛髪用繊維におけるシリコーン化合物の含有量が上述した範囲内であると、触感及び櫛通り耐久性が向上する。前記シリコーン化合物の含有量は、後述するとおりに測定することができる。
<ポリアルキレンオキシド系化合物>
繊維処理剤組成物は、さらに、ポリアルキレンオキシド系化合物を含んでいてももよい。ポリアルキレンオキシド系化合物を含むことで、人工毛髪用繊維に帯電防止性を付与することができる。
前記ポリアルキレンオキシド系化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体を好適に用いることができる。またアルキレンオキシドの重合は公知の方法に従って行うことができ、アルキレンオキシドは、ランダムタイプでもよく、ブロックタイプでもよい。
触感及び帯電防止性の観点から、前記ポリアルキレンオキシド系化合物は、重量平均分子量が2000~25000であることが好ましく、より好ましくは5000~20000である。
ポリアルキレンオキシド系化合物は人工毛髪用繊維に対して0.005重量%以上0.025重量%以下含み、好ましくは0.01重量%以上0.02重量%以下である。0.005重量%未満の場合、量が少なすぎるため帯電防止性の観点から好ましくない。また、0.025重量%より多い場合、触感の観点から好ましくない。
<第4級アンモニウム塩>
繊維処理剤組成物は、さらに、第4級アンモニウム塩を含んでもよい。第4級アンモニウム塩を含むことで、人工毛髪用繊維に帯電防止性を付与することができる。前記第4級アンモニウム塩としては、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0012】
前記繊維処理剤組成物は、さらに、水性媒体を含んでもよい。上述したウレタン結合構造体、シリコーン化合物、ポリアルキレンオキシド系化合物、第4級アンモニウム塩等の繊維処理剤組成物は、水性媒体に分散又は溶解させたものを用いてもよい。水性媒体は、好ましくは水であり、例えば、蒸留水、イオン交換水、及び超純水等が使用できる。
第4級アンモニウム塩は、人工毛髪用繊維に対して0.005重量%以上0.027重量%以下含むことが好ましい。当該範囲であると帯電防止の観点から好ましい。
<人工毛髪用繊維>
人工毛髪用繊維としては、合成繊維及びコラーゲン繊維からなる群から選ばれる一種以上を用いることができる。前記合成繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維等が挙げられる。このうち、ポリ塩化ビニル系繊維、アクリル系繊維およびポリエステル系繊維からなる群から選ばれる一つ以上であるのが好ましい。
また、コラーゲン繊維としては、再生コラーゲン繊維等が挙げられる。
人工毛髪用繊維は、人工毛髪に適するという観点から、単繊維繊度が10~150dtexであることが好ましく、より好ましくは30~120dtexであり、さらに好ましくは40~100dtexである。
人工毛髪用繊維は、必要に応じて、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、安定化助剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、静電防止剤、充填剤、難燃剤、顔料、潤滑剤等の公知の各種添加剤を適宜含んでもよい。また場合によっては、発泡剤、架橋剤、粘着性付与剤、導電性付与剤、香料等の公知の添加剤を使用してもよい。
【0013】
ポリ塩化ビニル系繊維としては、ポリ塩化ビニルで構成された繊維を用いることができる。ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、塩化ビニルと他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。他の共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸ブチル及びアクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、エチレン及びプロピレン等のオレフィン類等が挙げられる。繊維物性や透明性等の面から、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が好適に用いられる。共重合体において、他の共重合可能な単量体の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜決めることができる。
【0014】
ポリ塩化ビニル系繊維は、紡糸安定性の観点から、熱安定剤を含んでもよい。熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、錫系熱安定剤、Ca-Zn系熱安定剤、ハイドロタルサイト系熱安定剤、エポキシ系熱安定剤、β-ジケトン系熱安定剤を用いることができる。熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱安定剤は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.2~5重量部を配合することができる。
【0015】
ポリ塩化ビニル系繊維は、紡糸安定性の観点から、滑剤を含んでもよい。滑剤としては、特に限定されないが、例えば、金属石鹸系滑剤、ポリエチレン系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、エステル系滑剤、高級アルコール系滑剤等を用いることができる。滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。滑剤は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.2~5重量部を配合することができる。
【0016】
ポリ塩化ビニル系繊維は、耐熱性の観点から、耐熱性向上剤を含んでもよい。耐熱性向上剤としては、特に限定されないが、例えば、塩素化塩化ビニル系樹脂やAS樹脂(アクリロニトリルとスチレンの共重合体)等が挙げられる。塩素化塩化ビニル系樹脂は、ポリ塩化ビニルを原料とし、これに塩素を反応せしめ、塩素含有量を58~72重量部に高めたものを使用することができる。前記耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記耐熱性向上剤は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、1~15重量部を配合することができる。
【0017】
ポリエステル系繊維としては、特に限定されないが、難燃性の観点から、例えば、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを80モル%以上含む共重合ポリエステルからなる群から選ばれる1種以上のポリエステル系樹脂に、臭素含有難燃剤及び/またはアンチモン系化合物を含むポリエステル系樹脂組成物を溶融紡糸した繊維を用いることが好ましい。
【0018】
ポリアルキレンテレフタレートとしては、特に限定されないが、例えば、入手しやすさ及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を用いることが好ましい。
【0019】
臭素含有難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、難燃性付与の点から、臭素含有リン酸エステル系難燃剤、臭素化ポリスチレン系難燃剤、臭素化ベンジルアクリレート系難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤、臭素化フェノキシ樹脂系難燃剤、臭素化ポリカーボネート系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA誘導体、臭素含有トリアジン系化合物、臭素含有イソシアヌル酸系化合物等が好ましく、繊維物性、耐熱性及び加工安定性の点から、臭素含有リン酸エステル系難燃剤、臭素化エポキシ系難燃剤、臭素化フェノキシ樹脂系難燃剤等がより好ましく、臭素化エポキシ系難燃剤がさらに好ましい。前記臭素含有難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。臭素含有難燃剤は、例えば、ポリエステル100重量部に対し、5~30重量部配合してもよく、6~25重量部配合してもよい。
【0020】
アンチモン化合物は、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。前記アンチモン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記アンチモン化合物は、例えば、ポリエステル系樹脂100重量部に対し、0.5~10重量部配合してもよく、0.6~9重量部配合してもよい。
【0021】
ポリアミド系繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドを含むポリアミド系樹脂組成物を溶融紡糸した繊維を用いることができる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12及びポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)の単独重合体、共重合体及びこれらの混合体が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、ナイロン6及び/又はナイロン66を80モル%以上含むポリアミドが好ましい。また、難燃性の観点から、ポリエステル系繊維の場合と同様に、臭素系難燃剤及びアンチモン化合物を含むことが好ましい。
【0022】
ポリアミド系繊維には、必要に応じて、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0023】
ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維及びポリアミド系繊維は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、まず、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用い、ポリ塩化ビニル、ポリエステル又はポリアミドと、必要に応じて各種配合剤を溶融混練し、従来公知の方法でペレット化して、ペレット状のポリ塩化ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、又はポリアミド系樹脂組成物を得ることができる。得られたペレット状の樹脂組成物を通常の溶融紡糸法で溶融紡糸し、未延伸糸得る。次に、得られた未延伸糸を延伸することができる。延伸は未延伸糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法で行ってもよく、未延伸糸を巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法で行ってもよい。熱延伸は、1段延伸法又は2段以上の多段延伸法で行うことができる。
【0024】
アクリル系繊維としては、アクリル系重合体で構成された繊維を用いることができる。アクリル系重合体としては、特に限定されないが、難燃性の観点から、例えば、アクリロニトリル35~75重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体25~65重量%と、これらと共重合可能なその他のビニル系単量体0~10重量%を含むアクリル系重合体を用いることができる。前記ハロゲン含有ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等が挙げられる。ハロゲン含有ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記その他のビニル系単量体としては、例えば、スルホン酸含有モノマーを用いてよい。前記スルホン酸含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸並びにこれらのナトリウム塩等の金属塩類及びアミン塩類等を用いることができる。前記その他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アクリル系繊維は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、前記アクリル系重合体を有機溶媒に溶解した紡糸液を湿式紡糸して得ることができる。有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0026】
コラーゲン繊維は、特に制限されず、公知の再生コラーゲン繊維を用いることができる。上記再生コラーゲン繊維は、例えば、コラーゲン原料を溶解処理し、可溶化して得られた可溶化コラーゲン溶液を紡糸することで得ることができる。
<繊維処理剤組成物>
繊維処理剤組成物において、特に限定されないが、例えば、化学繊維に繊維処理剤を付着させやすい観点から、ウレタン結合構造体:シリコーン化合物の重量比は、1:10~3:1であり、好ましくは、1:5~2:1である。1:10~3:1以外の範囲の場合、触感の低下及び静電気が発生し易くなる観点から好ましくない。前記繊維処理剤組成物において、特に限定されないが、例えば、人工毛髪用繊維に繊維処理剤組成物を付着させやすい観点から、ウレタン結合構造体100重量部に対して、前記ポリアルキレンオキシド系化合物を25~130重量部含んでもよい。また、前記繊維処理剤組成物において、特に限定されないが、例えば、人工毛髪用繊維に繊維処理剤を付着させやすい観点から、ウレタン結合構造体100重量部に対して、前記第4級アンモニウム塩を10~55重量部含んでもよい。
人工毛髪用繊維は、前記繊維処理剤組成物を固形分換算で0.05重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは0.08重量%以上含む。また、前記人工毛髪は、前記繊維処理剤組成物を固形分換算で0.5重量%以下含むことが好ましく、より好ましくは0.3重量%以下含む。前記人工毛髪用繊維における繊維処理剤組成物の含有量が上述した範囲内であると、触感及び櫛通り耐久性が向上する。前記人工毛髪中の繊維処理剤組成物(固形分)の含有量は、後述するとおりに測定することができる。なお、前記固形分は、不揮発分のシリコーン化合物(場合によっては、不揮発分の有機変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーン及び/またはジメチルシリコーンオイル)を含む。
【0027】
人工毛髪用繊維は、触感が滑らかになりやすい観点から、KES-SE摩擦感テスター(カトーテック社製)を用いて測定した平均摩擦係数(MIU値)が0.20以下であることがより好ましく、0.18以下であることがさらに好ましく、0.15以下であることが特に好ましい。前記平均摩擦係数は、後述するとおりに測定する。
【0028】
人工毛髪用繊維は、櫛通り耐久性に優れる観点から、振乱回数が50回以上であることが好ましく、55回以上であることがより好ましく、60回以上であることがさらに好ましく、65回以上であることがさらにより好ましく、70回以上であることが特に好ましい。前記振乱回数は、後述するとおりに測定する。
【0029】
人工毛髪用繊維は、静電気抑制の観点からについて、当該繊維を櫛で梳かした後の静電気が3.0kV以下が好ましく、より好ましくは2.0kV以下であり、さらに好ましくは1.5kV以下である。当該値以下であると、静電気による繊維のボリュームが抑えられ、所望の髪型を施すことができる。静電気の測定方法は特に限定されないが、例えば、繊維長20cm、重量15gの人工毛髪用繊維をプラスチック製のコームで10回梳かした後、シシド静電気株式会社製静電気測定器STATIRON-DZ4を用いて発生した電気量を測定し、静電気を評価することができる。
<頭飾製品>
人工毛髪用繊維を用いて頭飾製品を形成することができる。前記頭飾製品としては、例えば、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー及びドールヘアー等が挙げられる。
【0030】
前記頭飾製品は、前記人工毛髪用繊維のみで形成されていてもよい。前記頭飾製品は、前記人工毛髪用繊維に、他のポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、再生コラーゲン繊維等のコラーゲン繊維、人毛、獣毛等の天然繊維を組み合わせて形成してもよい。
<製造方法>
人工毛髪用繊維への繊維処理剤組成物の付着は、特に限定されないが、例えば、繊維処理剤組成物に当該繊維を浸漬することで行ってもよく、繊維処理剤組成物を人工毛髪用繊維表面に噴霧することで行ってもよく、繊維処理剤組成物を塗布したロールに合繊繊維を巻き付けることで行ってもよい。その後、必要に応じて、30~50℃で1~3時間乾燥してもよく、乾燥後緊張状態で80~150℃で2~10分間熱処理してもよい。なお、繊維処理剤組成物の付着は、人工毛髪用繊維を頭飾製品に加工した後に行ってもよい。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において、特に指摘がない場合、「%」及び「部」は、それぞれ、「重量%」及び「重量部」を意味する。
(繊維処理剤)
下記の繊維処理剤組を用いた。
【0032】
繊維処理剤1:ウレタン結合構造体(重量平均分子量1800、溶媒:水、40重量%)。なお、当該ウレタン結合構造体は、トリメチロールプロパン、TDI(2,4トルエンジイソシアネート)、MEKオキシムからなる架橋剤である。
繊維処理剤2:アミノ変性シリコーンオイル(重量平均分子量13000、エマルション、溶媒:水、40重量%)
繊維処理剤3:ジメチルシリコーンオイル(エマルション、溶媒:水、粘度10万mm/s、55重量%)
繊維処理剤4:ポリアルキレンオキシド系化合物(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、重量平均分子量20000、エマルション、溶媒:水、20重量%)
繊維処理剤5:第4級アンモニウム塩(エマルション、溶媒:水、29重量%)
(繊維処理剤組の組成分析)
前記繊維処理剤1について、GC-MS分析で組成を確認し、GPC測定により分子量分布測定を実施した後、NMR分析法により固形分に含まれる成分の組成比確認を下記の測定条件で行った。GC-MS分析では繊維処理剤1をアセトンで希釈し、供した。GPC測定では繊維処理剤1の固形分約30mg秤量し、HPLC用THF10mLに溶解させ、試料溶液をディスポーザブルフィルターでろ過した後、その一部をTFH系GPC測定に供した。NMR分析では繊維処理剤1の固形分に重クロロホルムを加えて分析に供した。
<GC-MS分析>
(a)装置 :島津製作所 GC-17A GCMS-QP5050A
(b)カラム:DB-5MS、0.25mmφ×30m
(c)カラム温度:45℃(2min)→10℃/min→320℃(10min)
(d)キャリアガス:ヘリウム、100kPa
(e)注入法:スプリットレス
(f)注入口温度:300℃
(g)インターフェイス温度:300℃
(h)測定質量範囲:m/z 29~900
<GPC測定>
(a)装置 :東ソー HLC-8220GPC
(b)ガードカラム:TSK guardcolumn HXL-H
(c)カラム:東ソー TSKgel GM HXL2本、TSKgel G3000 HXL 1本、TSKgel G2000 HXL 1本
(d)カラム温度:40℃
(e)溶離液:高速液体クロマトグラフ用THF
(f)溶離液流量:1.0mL/分
(g)試料溶液ろ過:PTFE製0.45μm孔径ディポーザブルフィルターユニット
(h)注入量:200μL
(i)分析時間:50分
(j)解析ソフト:東ソー GPC8020 modelII
(k)検出器:RI
(l)標準試料:Shodex STANDARD ポリスチレンSM―105、分子量3.73E+06、2.48E+06、6.66E+05、1.33E+05、5.51E+04、3.14E+04、1.3E+04、2.94E+03、1.28E+03
Shodex ポリスチレンA-300、分子量3.70E+02
<NMR分析>
(a)試料を重クロロホルムに溶解させ、VARIAN製VNMRS600により測定を行った。
【0033】

(実施例1)
<紡糸工程>
塩化ビニル単独重合体(カネカ社製、品名「S-1001」)100重量部に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(カネカ社製、品名「K1F」)1.4重量部、可塑剤0.9重量部、熱安定剤1.1重量部、加工助剤2.93重量部及び滑剤0.88重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで攪拌混合し、ポリ塩化ビニル系樹脂コンパウンドを得た。該コンパウンドを、口径40mmの単軸押出機のホッパー部へ投入し、シリンダー温度170℃、ノズル温度180±15℃の範囲で、コンパウンドを押し出し溶融紡糸した。ノズルの孔形状が繭型のノズルを用いた。押出されたフィラメントをノズル直下に設けた加熱筒内(330℃雰囲気)で約0.5~1.5秒熱処理し、熱処理後の未延伸糸を引取ロールによってボビンに巻いた。次に、未延伸糸を110℃に温度調整した熱風循環箱を通して約2~4倍へ延伸した。次に、110℃に温度調整した熱風循環箱の中で連続的に38%の緩和処理を実施し、マルチフィラメントを巻き取ることでポリ塩化ビニル系繊維(単繊維繊度約72dtex)を得た。
【0034】
<繊維処理剤組成物の付着工程>
(1)下記表1に示す割合で、繊維処理剤1、2、3、4及び5と、純水を混合して、繊維処理剤組成物aを調製した。
(2)ディスポカップへ繊維処理剤組成物aを300g入れ、前記で得られたポリ塩化ビニル系繊維25gを5分間浸漬した(浴比1:12)。
(3)ポリ塩化ビニル系繊維を絞り率24%になるように絞り、繊維処理剤組成物aを落とした。
(4)その後、40℃で2時間乾燥させた。
(5)緊張状態に固定し、130℃で5分間熱処理した。
(6)空冷後、緊張状態を解き、クシで梳かした。
(実施例2)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤1、2、3、4及び5と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物bを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(実施例3)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤1、2、3、4及び5と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物cを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(実施例4)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤1及び2と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物dを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(比較例1)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤2、3、4及び5と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物eを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(比較例2)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤1、3、4及び5と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物fを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(比較例3)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤3、4及び5と、純水を混合して調製した繊維処理剤組成物gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
(比較例4)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤4及び5と、純水を混合して調製した、繊維処理剤組成物hを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
【0035】
(比較例5)
下記表1に示す割合で、繊維処理剤1、4及び5と純水を混合して調製した、繊維処理剤組成物iを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニル系繊維に繊維処理剤組成物を付着させた。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例及び比較例の繊維において、繊維処理剤組成物(固形分)の付着量、平均摩擦係数、櫛通り耐久性、紡糸性を下記のように測定・評価し、その結果を下記表2に示した。
(繊維処理剤組成物の固形分換算での付着量)
実施例および比較例の核繊維2gをエタノール:シクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製)=1:1(重量割合)の混合溶剤30gに浸漬させて繊維処理剤組成物を溶解させた。得られた繊維処理剤組成物の溶解物から溶剤のみを抽出して気化させ、残った繊維処理剤組成物(固形分)の重量を測定した。次に繊維処理剤組成物をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させて、ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies社製、「GC6890N」)で溶解物の分析を行い、検出ピークのMSスペクトルをライブラリー検索して、繊維処理剤組成物(固形分)における各種繊維処理剤成分の特定と各種繊維処理剤成分(固形分)の含有量を求めた。そして、下記式により、繊維処理剤組成物の固形分の付着量及び各種繊維処理剤成分の固形分の付着量を算出した。なお、繊維処理剤組成物の固形分中の各種繊維処理剤成分とその含有量を予め分かっている場合は、繊維における繊維処理剤組成物(固形分)の重量を測定することのみで、下記式に基づいて各種繊維処理剤成分(固形分)の付着量を算出することができる。シリコーン化合物の固形分は、シリコーンオイルの不揮発分を意味する。実施例1~3では繊維処理剤組成物の固形分は、不揮発分のアミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル及びウレタン結合構造体を含み、実施例4の固形分は不揮発分のアミノ変性シリコーンオイル及びウレタン系プレポリマーを含み、比較例1では、固形分は、不揮発分のアミノ変性シリコーンオイル及びジメチルシリコーンオイルを含み、比較例2~3では、不揮発分のジメチルシリコーンオイルを含む。比較例4はウレタン結合構造体及びシリコーン化合物を含まず、比較例5はウレタン結合構造体を含み、シリコーン化合物を含まない。
繊維処理剤組成物(固形分)の付着量(重量%)=[(繊維処理剤組成物の固形分の重量/繊維の重量]×100
各種繊維処理剤成分(固形分)の付着量(重量%)=[(繊維処理剤組成物の固形分の重量×繊維処理剤組成物の固形分中の各種繊維処理剤成分の含有量)/繊維の重量]×100
(平均静摩擦係数・平均動摩擦係数)
静・動摩擦測定機(トリニティーラボ社製)のステージに人工毛髪用繊維の試料1(繊維長20cm、重量15g)を固定し、接触子にはウレタン樹脂製の指紋パターンを模した摩擦子の試料2を用い、すべり速度5mm/s、静重量500gの条件下で、試料1と試料2を摩擦させて、静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。なお、測定回数を5回として、その平均値を求め、当該平均値が低いほど、櫛通り性がよく滑らかな人工毛髪用繊維を意味する。
(櫛通り耐久性:振乱回数)
櫛通り耐久性として振乱回数を評価した。サンプルの作製、繊維長が24インチの繊維15gを束ね、ハックリングにて意図的に繊維間に4インチのズレを作り、繊維束の長さを28インチとした。その後、繊維束の中央を紐で括り、2つ折りにして、長さが14インチの櫛通り耐久性測定用の試料を作製した。次に、試料に、人工指脂液(林純薬工業株式会社製、品名「人工指脂液」)を6.7%omf(% on mass of fiber)になるように均一に噴霧し、40℃で2時間乾燥させ、図1の(a)に示すような、人工指脂液処理後の試料を得た。次に、図1の(b)に示すように、人工指脂液処理後の試料の紐で括った端部をマネキンに固定し、手揉みを2回行うことで、かつら等の頭飾製品を2週間程度長期間着用した状態と同程度のダメージを試料に付与した。次に、図1の(c)に示されているように、ダメージが付与された試料を手で振り回し、手櫛が通らなくなる回数(振乱回数)を測定した。振乱回数が多いほど絡みにくく、櫛通り耐久性が高いことを意味する。振乱回数が評価2回ともに、70回以上を合格とした。
(静電気発生によるボリュームやまとまり)
静電気について、人工毛髪繊維の試料(繊維長20cm、重量15g)をプラスチック製のコームで10回梳かした後、シシド静電気株式会社製静電気測定器STATIRON-DZ4を用いて発生した電気量を測定し、人工毛髪用繊維のボリュームやまとまり具合を評価した。当該試料が静電気発生のため、ボリュームが出て広がってしまい、まとまりに影響が出るレベルを×、ボリュームが出るが何とかまとまるレベルを△、ボリュームやまとまりに全く問題ないレベルを〇として評価した。
【0038】
【表2】
【0039】
表2の結果から分かるように、ウレタン結合構造体と、シリコーン化合物が付着されている実施例1~4の人工毛髪用繊維は、平均静摩擦係数・平均動摩擦係数が小さく、滑らかな触感を有するとともに、振乱回数の平均が70回以上であり、櫛通り耐久性が良好であり、ボリュームやまとまりも抑えられ、すべての特性が満たされることがわかった。一方、比較例では平均静摩擦係数・平均動摩擦係数、振乱回数、ボリュームやまとまりのいずれかが悪くなる結果となった。
図1