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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 9/14 20060101AFI20241129BHJP
   B66C 23/44 20060101ALI20241129BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B66C9/14
B66C23/44 B
E02F9/02 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021058965
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155635
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】古川 覚一
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-348843(JP,A)
【文献】特開2020-051090(JP,A)
【文献】特開2000-257120(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0011993(KR,A)
【文献】米国特許第04341276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-11/26
B66C 23/44
E02F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの幅方向両側に配置されるサイドフレームと、
前記車体フレームから前記幅方向に延出され、前記サイドフレームに挿入されるアクスルビームと、
前記アクスルビームに対して伸長位置と折り畳み位置との二位置の間で回動ピンを支軸として回動可能な延長ビームと、
を有する作業機械であって、
前記回動ピンは、前後方向を支軸方向とする
作業機械。
【請求項2】
前記アクスルビームは、前記折り畳み位置にある前記延長ビームの少なくとも一部を格納可能とする
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記延長ビームは、前記伸長位置にある場合に、前記サイドフレームに対して下方から当接可能なあて面部材を有する
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記あて面部材は、前記延長ビームから取り外し可能である
請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記延長ビームから取り外された前記あて面部材は、前記サイドフレームに取り付け可能である
請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記サイドフレームの前記車体フレームに対する前記幅方向の内側への移動に伴い、前記延長ビームを前記折り畳み位置側に回動させる連動機構を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記サイドフレームは、前記延長ビームが折り畳み位置に位置するときに、ウエイト部材を取り付け可能である
請求項1から6のいずれか一項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンは、車体フレームがその幅方向に延出されたアクスルを備え、当該アクスルの先端部に設けられた延長ビームによってサイドフレームを支持している。
サイドフレームは、アクスルを挿入可能な孔部を有し、クレーンの非作業時(運搬時等)には、サイドフレームを車体フレームの幅方向内側に移動させて、車体フレームを幅方向に小型化させることが可能である。
その際、アクスルの先端部に設けられた延長ビームは、鉛直方向に沿った支軸によって回動し、折り畳むことが可能であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-221994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クレーンは、延長ビームの鉛直方向に沿った支軸がせり上がりを生じる場合があり、せり上がりを生じると、サイドフレームと干渉して、当該サイドフレームの拡縮の妨げとなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、サイドフレームを車体フレームに対して円滑に移動可能とする作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
車体フレームと、
前記車体フレームの幅方向両側に配置されるサイドフレームと、
前記車体フレームから前記幅方向に延出され、前記サイドフレームに挿入されるアクスルビームと、
前記アクスルビームに対して伸長位置と折り畳み位置との二位置の間で回動ピンを支軸として回動可能な延長ビームと、
を有する作業機械であって、
前記回動ピンは、前後方向を支軸方向とする構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サイドフレームを車体フレームに対して円滑に移動可能とする作業機械を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る作業機械の下部走行体の斜視図である。
図2】アクスルビームの先端部の一部を切り欠いた斜視図である。
図3】左側の走行装置のサイドフレームとアクスルビームとの連結部分の拡大斜視図である。
図4】左側の走行装置の延長ビームが伸長状態である場合のサイドフレームとアクスルビームとの連結部分の断面図である。
図5】左側の走行装置の延長ビームが折り畳み状態である場合のサイドフレームとアクスルビームとの連結部分の断面図である。
図6】サイドフレームに設けられた凸部材、当接部材、固定ピンのそれぞれの格納部の斜視図である。
図7】走行装置に連動機構を設けた場合の側面図である。
図8】延長ビームが伸長位置にある場合の連動機構を示した延長ビーム周辺の断面図である。
図9】延長ビームが折り畳み位置にある場合の連動機構を示した延長ビーム周辺の断面図である。
図10】走行装置にサイドウェイトを設けた場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概略]
以下、図面を参照して、本発明による作業機械の実施形態を説明する。
本実施形態の作業機械としてのクローラクレーンを例示する。
クローラクレーンは、下部走行体1と、旋回輪を介して下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体に起伏回動可能に軸支されたブームとを有する。
なお、本実施形態では、下部走行体1以外については周知の構成であるため、その図示と詳細な説明は省略する。
【0010】
図1はクローラクレーンの下部走行体1の斜視図である。
以下の説明では、クローラクレーン(作業機械)の前進方向を前、後退方向を後、前後方向に直交し且つ水平な方向を左右方向、鉛直方向の一方を上、他方を下とする。また、左右方向は、幅方向という場合がある。
【0011】
下部走行体1は、上部に旋回輪を備える車体フレーム11、車体フレーム11の前部及び後部において左方と右方とに延出された合計4本のアクスルビーム12、車体フレーム11の左右に設けられた一対の走行装置13、車体フレーム11の前側と後側とに設けられたウェイト14を有する。なお、車体フレーム11には、後述する走行装置13の移動作業のために、車体フレーム11を昇降させるジャッキアップ装置を設けてもよい。
【0012】
[アクスルビーム]
図2はアクスルビーム12の先端部を上下方向及び左右方向に沿った断面で一部を切り欠いた斜視図である。各アクスルビーム12は、上部プレート121と、下部プレート122と、一対の縦プレート123(図5では一方のみ図示)と、隔壁124とを備えている。
上部プレート121、下部プレート122及び一対の縦プレート123は、左右方向から見て断面矩形状となる中空のフレームを構成するように接合されている。アクスルビーム12の先端部は、広く開口し、その深部を閉塞するように隔壁124が設けられている。このアクスルビーム12の先端開口部から隔壁124までのスペースは、後述する延長ビーム20の格納領域Hとなる。
【0013】
左右の縦プレート123(図5では一方のみ図示)の先端下部には、アクスルビーム12を延長する方向に延びる支持ブラケット125が設けられている。これら支持ブラケット125は、後述する延長ビーム20を回動可能に支持する。一対の支持ブラケット125は、前後方向に貫通する貫通孔126を有し、延長ビーム20の回動支軸となる回動ピン21を前後方向に平行に支持する。後述する延長ビーム20は、一対の支持ブラケット125の間で回動ピン21により回動可能に支持される。
【0014】
[走行装置:概略構成]
左右の走行装置13は、それぞれ、車体フレーム11の前後二つのアクスルビーム12によって支持される。
左側の走行装置13と右側の走行装置13とは、前後方向に沿った鉛直平面を対称面として面対称な構造となっている。つまり、左側の走行装置13の左右を入れ替えることで右側の走行装置13と同一の構造となる。このため、以下の説明では、左側の走行装置13の構成について説明し、右側の走行装置13の構成については、左側の走行装置13と同じ符号を付して説明を省略する。
【0015】
図3は左側の走行装置13のサイドフレーム131とアクスルビーム12との連結部分の拡大斜視図、図4及び図5は同連結部分の左右方向に沿った鉛直平面を断面とする断面図である。
走行装置13は、サイドフレーム131、走行用駆動装置132、クローラベルト(履帯)133を備えている。
走行用駆動装置132は、各サイドフレーム131の後端近傍にそれぞれ回転可能に支持された駆動輪と駆動輪を駆動する走行用油圧モータ(いずれも図示略)とを備えている。
サイドフレーム131の上部、下部及び後部には、それぞれ上部ローラ(図示略)、下部ローラ134及びアイドラ(図示略)が設けられている。クローラベルト133は、上部ローラ、下部ローラ134、アイドラ及び駆動輪に掛け渡されるようにこれらに装着されている。
【0016】
[走行装置:嵌め込み部]
サイドフレーム131には、前後のアクスルビーム12が個別に嵌挿される嵌め込み部135が前後二箇所に設けられている。図4及び図5に示すように、各嵌め込み部135は、側面視で矩形となる枠状を呈し、その内側にアクスルビーム12が挿入されて連結される。
【0017】
また、走行装置13は、嵌め込み部135にアクスルビーム12が挿入された状態において、当該アクスルビーム12に沿って左右方向に移動可能である。図1における実線の走行装置13は、車体フレーム11に対して左方(左右方向の内側)に移動した車体幅の収縮状態を示し、図1における二点鎖線の走行装置13は、車体フレーム11に対して右方(左右方向の外側)に移動した車体幅の拡張状態を示す。
なお、各サイドフレーム131と車体フレーム11との間には、例えば、油圧で駆動する図示しない伸縮シリンダが設けられており、走行装置13を収縮状態と拡張状態とに切り替えることができる。
【0018】
[延長ビーム:概略構成]
図3図5に示すように、アクスルビーム12の先端部には、延長ビーム20が回動ピン21によって回動(折り畳み)可能に軸支されている。
前述したように、回動ピン21は、アクスルビーム12により前後方向に平行に保持されている。
従って、延長ビーム20の回動により、伸長位置(回動端部が左方(アクスルビーム12の延出方向)に延出された状態)と折り畳み位置(その回動端部が上方を向いた状態)とに切り替えることができる。
【0019】
延長ビーム20は、回動ピン21によって回動可能に支持された延長ビーム本体部22と、延長ビーム本体部22から回動端部側に延出され、サイドフレーム131の嵌め込み部135と連結される延長ビーム連結部23と、延長ビーム本体部22に対して着脱可能に取り付けられたあて面部材24と、延長ビーム連結部23と嵌め込み部135とを連結する固定ピン25とを有する。
【0020】
[延長ビーム:延長ビーム本体部]
延長ビーム本体部22は、前後に並んだ一対の縦板221を有する。これら一対の縦板221は、延長ビーム20が伸長位置にある状態で右端部と下端部とに相当する位置おいて一体的に連結されている。
【0021】
各縦板221は、左右方向に沿った鉛直面に平行な平板である。延長ビーム20が伸長位置にある状態で、各縦板221の右下となる位置に、回動ピン21が挿通される第1挿通孔222が設けられている。また、各縦板221の上端から左端にかけては、回動ピン21を中心とする円弧状に形成されている。これは、延長ビーム20の回動時にアクスルビーム12との干渉を避けるためである。
延長ビーム本体部22は、あて面部材24を取り外した状態で伸長位置から折り畳み位置に回動させると、図5に示すように、アクスルビーム12の先端部に設けられた格納領域Hに格納することができる。
延長ビーム本体部22は、延長ビーム連結部23と共に回動し、図5に示すように、折り畳み位置では、延長ビーム連結部23は、左右方向についてクローラベルト133の内側に収まるように配置されている。
【0022】
延長ビーム20が伸長位置にある状態で、各縦板221の第1挿通孔222の上方には第2挿通孔224が形成されている。各縦板221の第2挿通孔224には、着脱可能なストッパピン26が挿入される。ストッパピン26は、アクスルビーム12の一対の支持ブラケット125の上部に形成された凹部127に嵌合して、延長ビーム20が伸長位置よりも下方に移動しないように延長ビーム20の回動を規制する。つまり、ストッパピン26は、延長ビーム20が伸長位置よりも下方に移動しないように延長ビーム20の回動を規制することができる回動規制部であればなんでもよい。例えば、縦板221の下方にアクスルビームの下部プレート122と接触するような回動規制部を設けてもよい。このような構成でも、延長ビーム20が伸長位置よりも下方に移動しないように延長ビーム20の回動を規制することができる。
【0023】
また、各縦板221の円弧状の外縁部の近傍には、あて面部材24を取り付けるための取付穴223が二つ形成されている。
あて面部材24は、凸部材241と当接部材242とを有し、凸部材241が二つの縦板221の間に取付けられる。凸部材241には二つの挿通孔241dが形成されており、当該挿通孔241dが両側の縦板221の二つの取付穴223に位置合わせされて取付ピン27が挿入される。これにより、延長ビーム本体部22にあて面部材24の凸部材241が固定される。
なお、各取付ピン27の挿入端部には、不慮の抜脱が生じないように、バネ性のロックピン271が装着される。
【0024】
[延長ビーム:延長ビーム連結部及び固定ピン]
延長ビーム連結部23は、延長ビーム20が伸長位置にある状態で、延長ビーム本体部22の下部に水平に固定された平板体である。延長ビーム連結部23は、延長ビーム本体部22よりも回動端部側(左方)に延出されている。そして、延長ビーム連結部23の延出端部には、上下に貫通した固定ピン25の挿通孔231が形成されている。
【0025】
固定ピン25は、延長ビーム連結部23の挿通孔231に上から挿入されると、下端部が延長ビーム連結部23の下面から下方に突出した状態となる。
サイドフレーム131の嵌め込み部135における下板135aには、固定ピン25の下端部が挿入される連結孔135bが形成されている。
延長ビーム連結部23の下面から下方に突出した固定ピン25の下端部を嵌め込み部135の連結孔135bに挿入すると、走行装置13を前述した車体幅の拡張状態となる位置に固定することができる。
【0026】
また、延長ビーム連結部23の上面における固定ピン25の取り付け位置の近傍には、止めピン251を装着することができる。止めピン251は、挿通孔231に挿入された固定ピン25の頭部を横切るように設けられ、固定ピン25の抜け止めとなっている。
【0027】
[延長ビーム:あて面部材]
あて面部材24は、前述したように、凸部材241と当接部材242とを有する。
図3及び図4に示すように、凸部材241は、二枚重ねの厚板からなり、前後方向から見て二叉に延出されたエルボ形状を呈している。
凸部材241の一方の延出部241bには、前述した二つの挿通孔241dが形成されており、当該延出部241bが延長ビーム本体部22に保持される。
凸部材241の他方の延出部241aは、延長ビーム20が伸長位置にある状態で、アクスルビーム12の延出方向(嵌め込み部135への挿入方向)に延出されている。
そして、延出部241aは、その延出方向のほぼ全長に渡って、嵌め込み部135の上板135cの下面に近接している。
通常は、凸部材241の延出部241aは、嵌め込み部135の上板135cから僅かに離隔して接触しないが、下部走行体1に大きな荷重が加わった場合等に、延出部241aは嵌め込み部135の上板135cに当接し、下部走行体1の姿勢を維持させることができる。
【0028】
凸部材241は、延出部241aの延出方向とは逆側の端部に、アクスルビーム12の上部プレート121の先端面(左端面)に対向する対向面241cを有する。
そして、図3及び図4に示すように、延長ビーム20が伸長位置にある状態で、凸部材241の対向面241cと上部プレート121の先端面とは、所定の隙間が生じるように設定されている。あて面部材24の当接部材242は、この隙間に挿入された状態で、延長ビーム本体部22の上部に装着される。
【0029】
当接部材242は、厚板状であって、下端部に延長ビーム本体部22の前後方向幅と同一又は幾分幅の広い凹部242aが形成されている。そして、当接部材242は、凹部242aに延長ビーム本体部22の上部を嵌合させることができる。
【0030】
当接部材242は、前後方向の幅が凸部材241の前後方向の幅よりも十分に広く設定されている。
そして、当接部材242は、凸部材241の対向面241cと上部プレート121の先端面との隙間に介挿される。かかる配置において、車体フレーム11に荷重が加わると、延長ビーム20には、折り畳み位置側へ回動するように力が加わる。このとき、凸部材241の対向面241cと上部プレート121の先端面との隙間には、当接部材242が介挿されているので、当接部材242は、凸部材241の対向面241cから大きな押圧力が加えられる。当接部材242は、対向面241cよりも十分に前後幅が広く、上部プレート121の先端面に対しても、前後に広い範囲で当接するので、凸部材241からの押圧力を分散させることができるようになっている。
従って、凸部材241、当接部材242又は上部プレート121の変形を抑制し、長期間に渡って、下部走行体1の姿勢を安定的に維持することが可能である。
【0031】
また、当接部材242は、アクスルビーム12の上部にある上部プレート121に当接するようにしているため、回転軸となる回動ピン21に対する距離が長くなり、延長ビーム12に掛かる押圧力が軽減できる。
尚、当接部材242は、アクスルビーム12を押圧できれば上部プレート12に当接しなくてもよい。例えば、アクスルビーム12の縦プレート123に当接してもよい。さらに、当接部材242が上部プレート121よりも低い位置で縦プレート123に当接する構造とした場合、一対の縦板221の上端部(延長ビーム20の伸長位置で上端部)にアクスルビーム12の縦プレート123に対向する対向面を形成し、当該対向面と縦プレート123との間に当接部材242を配置しても良い。これにより、当接部材242を取り外すのみで伸長位置と折り畳み位置の切り替えを行うことができる。この場合、凸部材241は必須ではなくなるので、省略することが可能となる。
【0032】
また、凸部材241を省略せずに、一対の縦板221の間に格納可能としても良い。例えば、凸部材241を一端部が連結されてV字状をなす二本のリンク部材から構成し、V字の二又側の先端部をいずれも、一対の縦板221の間で当該縦板221に対して前後方向に沿った軸回りに回動可能に連結する。これにより、二本のリンク部材の連結部(V字の底部)が斜め上方に延出された姿勢となり、延出された当該リンク部材の連結部が前述した延出部241aの替わりとなって、下部走行体1に大きな荷重が加わった場合等に、嵌め込み部135の上板135cに当接して下部走行体1の姿勢を維持する機能を果たす。
また、この二本のリンク部材は、互いの連結部を分離可能とする、或いは、いずれか一方のリンク部材を長手方向の途中部分で二分割可能とすることで、一対の縦板221の内側に回動させて格納することができる。この場合、サイドフレーム131に後述する凸部材241の格納部136を設けるスペースが不要となり、サイドフレーム131の側面のスペースの省スペース化或いは他の用途に利用可能となる。
【0033】
[格納部]
図6はサイドフレーム131に設けられた凸部材241、当接部材242、固定ピン25のそれぞれの格納部136,137,138の斜視図である。
延長ビーム20は、折り畳み位置となる状態において、あて面部材24の凸部材241及び当接部材242が延長ビーム本体部22から取り外され、固定ピン25が延長ビーム連結部23から取り外される。
従って、延長ビーム20を折り畳み位置としたときに、各格納部136,137,138に凸部材241、当接部材242、固定ピン25を格納する。
【0034】
凸部材241の格納部136は、サイドフレーム131の左面から左方に突出した丸棒状の突起である。格納部136の二本の突起を凸部材241の二つの挿通孔241dに個別に挿入した状態で凸部材241を係止状態とする。格納部136の二本の突起の先端部には、上方に向いた係止爪が設けられ、二本の突起から凸部材241が脱落することを抑制することができる。
【0035】
当接部材242の格納部137は、当接部材242の凹部242aの内底面から当接部材242の左面と前面及び後面を支えるブラケットである。当該格納部137は、凹部242aの両側で凹部242aに対して相対的に下方に突出した部位の周囲を保持するので、前後左右いずれの方向に力が加わった場合でも当接部材242を安定的に保持することが出来る。
【0036】
固定ピン25の格納部138は、当該固定ピン25を上から差し込む凹部が形成されたブラケットである。この格納部138にも固定ピン25の頭部を横切るように止めピン251を取り付けることができ、固定ピン25を格納部138に安定的に保持することが出来る。
【0037】
なお、一つのサイドフレーム131には、二つの嵌め込み部135が設けられ、これらには、個別に延長ビーム20が挿入される。従って、上記格納部136,137,138は、各延長ビーム20に対応して2組設けられている。
【0038】
[走行装置の位置切り替え作業]
次に、図4図6に基づいて、クローラクレーンの下部走行体1における走行装置13の位置切り替え作業について説明する。
まず、走行装置13が左右方向の内側に位置している車体幅の収縮状態から車体幅の拡張状態に切り替える場合を説明する。
【0039】
図5及び図6に示すように、折り畳み位置にある延長ビーム20の延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23を伸長位置に向かって回動させる。そして、伸長位置において、延長ビーム本体部22の第2挿通孔224にストッパピン26を挿入し、アクスルビーム12の凹部127にストッパピン26を嵌合させる。これにより、延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23が伸長位置より下方に回動せず、伸長位置に位置決めされる。
さらに、格納部136から凸部材241を取り出して、取付ピン27により延長ビーム本体部22に装着する。そして、格納部137から当接部材242を取り出して、凸部材241の対向面241cとアクスルビーム12の上部プレート121の先端面との間に介挿する。
この状態で、サイドフレーム131と車体フレーム11との間に設けられた伸縮シリンダを作動させて、走行装置13を車体幅の拡張状態となる位置まで移動させる。
そして、格納部138から固定ピン25を取り出し、図4に示すように、延長ビーム連結部23の挿通孔231及び嵌め込み部135の下板135aの連結孔135bに挿入し、止めピン251で固定ピン25を固定する。
これにより、延長ビーム20がサイドフレーム131と連結され、車体幅の収縮状態から車体幅の拡張状態への切り替えが完了する。
【0040】
次に、走行装置13が左右方向の外側に位置している車体幅の拡張状態から車体幅の収縮状態に切り替える場合を説明する。
図4に示すように、伸長位置にある延長ビーム20の延長ビーム連結部23から止めピン251及び固定ピン25を引き抜いて、格納部138に格納する。
その状態で、サイドフレーム131と車体フレーム11との間に設けられた伸縮シリンダを作動させて、走行装置13を車体幅の収縮状態となる位置まで移動させる。
そして、当接部材242を凸部材241の対向面241cとアクスルビーム12の上部プレート121の先端面との間から取り外して、格納部137に格納する。
また、延長ビーム本体部22からロックピン271a及び取付ピン27を引き抜き、凸部材241を取り外して、格納部136に格納する。
さらに、延長ビーム本体部22からストッパピン26を引き抜いて、延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23を伸長位置から折り畳み位置に回動させる。
これにより、延長ビーム本体部22がアクスルビーム12の先端部の格納領域に格納され、車体幅の拡張状態から車体幅の収縮状態への切り替えが完了する。
【0041】
[発明の実施形態の技術的効果]
上記クローラクレーンの下部走行体1は、アクスルビーム12に対して伸長位置と折り畳み位置との二位置の間で回動可能な延長ビーム20の回動ピン21が鉛直方向に対して垂直となる前後方向を支軸方向としている。
このため、回動ピン21が鉛直方向を向いている場合と異なり、せり上がりによるサイドフレーム131との干渉が抑制され、サイドフレーム131を有する走行装置13の拡縮動作を円滑に行うことが可能となる。
【0042】
また、アクスルビーム12は、折り畳み位置にある延長ビーム20の一部を格納領域Hに格納可能としているので、車体幅の収縮状態において、延長ビーム20を内側に納めることができ、下部走行体1をより小型に収縮させることが可能となる。
特に、延長ビーム本体部22が格納領域Hに格納されるので、延長ビーム20の主要部が格納されて、下部走行体1をより効果的に小型に収縮させることが可能となる。
【0043】
また、延長ビーム20は、伸長位置にある場合に、サイドフレーム131に対して鉛直方向となる下方から当接可能なあて面部材24を有するので、あて面部材24が嵌め込み部135の上板135cを下から支え得る構造として、車体フレーム11に荷重が加わった場合でも、下部走行体1の安定性を維持することが可能となる。
また、このあて面部材24は、延長ビーム20に対して着脱可能であるため、当該延長ビーム20を格納し易くなり、下部走行体1をより小型に収縮させることが容易となる。
【0044】
さらに、あて面部材24は、凸部材241と当接部材242とを有し、当接部材242は、凸部材241よりも前後方向の幅が大きい。このため、車体フレーム11に荷重が加わることにより、凸部材241からアクスルビーム12に向かって大きな押圧力が加わる場合でも、当接部材242がこれを分散し、部材同士の負担を軽減することが可能となる。
また、凸部材241と当接部材242とが別体であるため、あて面部材24の設計の自由度を広げることができる。例えば、両部材を板状に形成する等、強度を高めつつ格納が容易な構造を実現することも可能となる。
【0045】
また、延長ビーム20から取り外されたあて面部材24の凸部材241及び当接部材242の格納部136,137や固定ピン25の格納部138をサイドフレーム131の側面部に設けたので、サイドフレーム131周辺の空きスペースの有効利用を図ることができる。さらに、車体幅の拡張作業において、嵌め込み部135の近傍に凸部材241や当接部材242、固定ピン25を用意しておくことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0046】
[連動機構の追加]
図7は走行装置13に連動機構15を設けた場合の側面図、図8は延長ビーム20が伸長位置にある場合の連動機構15を示した延長ビーム20周辺の断面図、図9は延長ビーム20が折り畳み位置にある場合の連動機構15を示した延長ビーム20周辺の断面図である。
これらの図示のように、下部走行体1の走行装置13には、サイドフレーム131の車体フレーム11に対する幅方向の内側への移動(車体幅の収縮状態への移動)に伴い、延長ビーム20を折り畳み位置側に回動させる連動機構15を設けてもよい。
【0047】
連動機構15は、サイドフレーム131の移動に延長ビーム20の延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23を連動させるリンク部材151と、リンク部材151の一端部を嵌め込み部135に連結する第1連結部152と、リンク部材151の他端部を延長ビーム連結部23に連結する第2連結部153とを備えている。
また、連動機構15は、図7に示すように、サイドフレーム131の嵌め込み部135の内側に設けられている。
【0048】
第1連結部152は、嵌め込み部135の上板135cの下面に設けられたブラケットであり、前後方向に沿った支軸154を介してリンク部材151の一端部と回動可能に連結されている。
第2連結部153は、延長ビーム20が伸長位置にある姿勢で延長ビーム連結部23の先端部の上面となる面に設けられたブラケットであり、前後方向に沿った支軸155を介してリンク部材151の他端部と回動可能に連結されている。
なお、リンク部材151の他端部は、当該リンク部材151の長手方向に沿った長穴151aを介して、第2連結部153の支軸155と連結されている。
【0049】
上記構成において、車体フレーム11に対して走行装置13のサイドフレーム131が車体幅の収縮状態への移動を行うと、図8の状態から図9の状態に移行する。即ち、サイドフレーム131の移動に伴って、延長ビーム20の延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23がリンク部材151に引っ張られて折り畳み位置まで回動する。
【0050】
また、車体フレーム11に対して走行装置13のサイドフレーム131が車体幅の拡張状態への移動を行うと、図9の状態から図8の状態に移行する。即ち、サイドフレーム131の移動に伴って、延長ビーム20の延長ビーム本体部22及び延長ビーム連結部23がリンク部材151に押されて伸長位置まで回動する。
上記連動機構15により、走行装置13の拡縮動作において、作業負担を軽減することが可能となる。
【0051】
なお、リンク部材151の長穴151aは、延長ビーム20の折り畳み位置と伸長位置との間の移動量に対してサイドフレーム131の移動量が余剰となる場合に、余剰分の移動量を吸収するためのものである。従って、余剰分の移動量が生じない場合には、リンク部材151の他端部と第2連結部153の支軸155とは丸穴で連結しても良い。
また、よりフレキシブルに、第1連結部152と第2連結部153とをバネで連結しても良い。
【0052】
なお、連動機構15に示した構成は一例であり、サイドフレーム131の移動と延長ビーム20の回動動作を連動可能なあらゆる構成を利用することが出来る。
例えば、ラックとピニオン、その他の歯車を用いて、サイドフレーム131の直線的な移動動作を回転動作に変換して延長ビーム20に伝達する機構を連動機構としても良い。
また、油圧機構やモータ、その他の駆動源となるアクチュエーターを用いて、サイドフレーム131の移動に連動して延長ビーム20に回動動作を付与しても良い。
【0053】
[サイドウェイトの追加]
図10は走行装置13にウェイト部材としてのサイドウェイト16を設けた場合の側面図である。
なお、ウェイト部材とは、サイドフレームよりも重い重りである。例えば、ウェイト部材は、鉛部材等、密度の大きな金属を含んで構成される場合もある。また、ウェイト14と同様の部材或いは箱状部材に別部材(固体に限らず液体の場合もある)が封入されているものも含まれる。
図示のように、下部走行体1には、ウェイト14に替えて又はウェイト14と共に、サイドウェイト16を搭載しても良い。なお、図10では、左側のサイドウェイト16のみを図示しているが、下部走行体1の右側にも設けられている。
【0054】
サイドウェイト16は、ウェイト本体161と、ウェイト本体161を下部走行体1のサイドフレーム131の車体幅方向における外側面に取り付けるための係止フック162とを有する。
係止フック162は、ウェイト本体161のサイドフレーム131側の側面において、前後方向に二つ並んで設けられている。各係止フック162は、上方に向かって凹んだ被係止部を有する。
一方、サイドフレーム131の外側面には、ブラケット139aによって前後方向に沿って支持された支持軸139bが設けられ、係止フック162の被係止部が係止される。
また、ウェイト本体161には、サイドフレーム131側に延びる連結ネジ軸163が設けられており、サイドフレーム131側の対応する位置には、連結ネジ軸163を螺入可能な固定用ナット139cが取り付けられている。これら連結ネジ軸163と固定用ナット139cの連結により、係止フック162と支持軸139bの係止状態を維持することが可能となっている。
【0055】
なお、サイドウェイト16のサイドフレーム131に対する連結構造は、一例に過ぎず、周知となるいかなる連結構造を用いても良い。
このように、下部走行体1にサイドウェイト16を装備可能とすることにより、下部走行体1の重量増加を図ることができ、作業時の動作の安定性を向上させることが可能となる。
また、サイドウェイト16をサイドフレーム131の側面部に設けたので、サイドフレーム131周辺の空きスペースの有効利用を図ることができる。特に、二つのアクスルビーム12の中央部に設けることにより、この空きスペースをより有効活用することができる。
なお、サイドウェイト16は、延長ビーム20が組立部品でない場合、それらの格納部136,137,138も不要となるので、その分、サイドウェイト16を余分に内側に格納するように搭載することが可能となる。
また、サイドウェイト16は、取り外し可能な構成を例示したが、取り外し可能でなく、常時、設置されたままの構成でもよい。
【0056】
[その他]
上記発明の実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、延長ビーム20の回動ピン21が前後方向に平行である場合を例示したが、伸長位置の延長ビーム20がおおむねアクスルビーム12の延長方向に延出されるのであれば、厳密に前後方向に平行でなくとも良い。
例えば、回動ピン21は車体における厳密な前後方向に対して一定範囲で傾斜していてもよい。上記前後方向に対して幅方向または鉛直方向に傾斜しすぎると、延長ビーム20をサイドフレーム131に対して挿入する際にサイドフレーム131の嵌め込み部135の内壁に干渉して挿入できなくなるので、挿入できる程度に傾斜している分には上記発明の実施の形態で延長ビーム20について言及した前後方向に含まれる。
例えば、延長ビーム20とサイドフレーム131が連結される方向(鉛直方向:連結ピン25の挿入方向)においては、その連結のがた防止のために延長ビーム20とサイドフレーム135の間の隙間はわずかである。したがって、前後方向に対して鉛直方向には5度以下ならば連結に影響がなく許容される。つまり、前後方向に対して鉛直方向に5度以内の傾斜は、前述した前後方向に含まれる。しかし、好ましくは、2度以下、より好ましくは1度以下である。一方で、延長ビームとサイドフレームが連結される方向ではない幅方向においては、サイドフレーム131の嵌め込み部135の内壁と延長ビームの間には、挿入をしやすくするための隙間が存在するので15度までの傾斜なら連結に影響がなく許容される。つまり、前後方向に対して幅方向に15度以下の傾斜は前後方向に含まれる。しかし、好ましくは、10度以下であり、より好ましくは2度以下である。
【0057】
また、上記実施形態では、作業機械としてクローラクレーンを例示したが、本発明はこれに限定されず、油圧ショベル、その他、サイドフレームが車体フレームに対して拡縮移動を行う各種の作業機械に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 下部走行体
11 車体フレーム
12 アクスルビーム
124 隔壁
13 走行装置
131 サイドフレーム
135 嵌め込み部
135a 下板
135b 連結孔
135c 上板
136,137,138 格納部
14 ウェイト
15 連動機構
151 リンク部材
151a 長穴
152 第1連結部
153 第2連結部
16 サイドウェイト
161 ウェイト本体
162 係止フック
163 連結ネジ軸
20 延長ビーム
21 回動ピン
22 延長ビーム本体部
23 延長ビーム連結部
231 挿通孔
24 あて面部材
241 凸部材
241a 延出部
241b 延出部
241c 対向面
242 当接部材
242a 凹部
25 固定ピン
26 ストッパピン
H 格納領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10