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  • 特許-ランフラットタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ランフラットタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20241129BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20241129BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B60C17/00 B
B60C5/14 Z
B60C9/18 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021062013
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157662
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】向山 知尚
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088593(JP,A)
【文献】特開2019-107999(JP,A)
【文献】特開2015-214306(JP,A)
【文献】特開2019-031235(JP,A)
【文献】特開2017-121911(JP,A)
【文献】特開2007-069775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/00
B60C 5/14
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
前記トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部と、
前記各サイドウォール部に連なるビード部と、
前記サイドウォール部に配設された断面三日月状のサイド補強ゴムと、
一対の前記ビード部間でトロイダル状に跨るカーカスと、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた、ランフラットタイヤであって、
タイヤ内面にインナーライナー及び内層ゴムが配置され、
記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端と、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端とが、互いに突き合わされて配置されており、又は、前記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端部と、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端部とが、重なり幅30mm以下で重なっており、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端部は、前記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ内面側に位置し、
前記ランフラットタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、前記インナーライナーのタイヤ幅方向の幅をW1(mm)とし、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ幅方向の幅をW2(mm)とするとき、W2≦W1≦W2+20(mm)、を満たし、
前記内層ゴムの損失正接tanδ1は、前記インナーライナーの損失正接tanδ2の80%以下であり、
内層ゴム8は、JIS K6270:2001に準じ、8号ダンベルの中心部を試験片繰り返し引張方向と垂直に1mm切り欠いた試験片を用いて、150℃の条件下で、10Hzの周波数で繰り返し引張を与えた際に、試験片が破壊するまでの繰り返し回数が、与えた引張歪が10%~30%の範囲において、前記サイド補強ゴムの場合の2倍以上であることを特徴とする、ランフラットタイヤ。
【請求項2】
前記基準状態において、前記カーカスから前記タイヤ内面に下ろした垂線の方向に計測した際の前記サイド補強ゴムの厚さが最大となる最大厚さT1に対する、前記垂線の方向に計測した際の前記内層ゴムの厚さT2の比T2/T1は、0.05~0.30である、請求項に記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】
前記サイド補強ゴムの弾性率に対する、前記内層ゴムの弾性率の比は、0.75以下である、請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランフラットタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤとして、サイドウォール部に断面三日月状のサイド補強ゴムを有するランフラットタイヤが知られている(例えば、特許文献1)。このようなランフラットタイヤによれば、例えばタイヤがパンクして内圧が低下した状態でも、サイド補強ゴムが荷重を肩代わりすることによって相当な距離の走行が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-184000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランフラットタイヤは、ランフラット走行状態における高い耐久性が求められる一方で、サイド補強ゴムを配置していることにより、重量増による転がり抵抗の増大を招いてしまうという問題があった。特に、ランフラット走行状態では、サイド補強ゴムの最内部は大きな撓みにより,高温・高歪な状態となり、サイド補強ゴムに亀裂が入ってしまうことでランフラット耐久性が低下するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ランフラット耐久性を確保しつつも、転がり抵抗の増大を抑制した、ランフラットタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド部と、
前記トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部と、
前記各サイドウォール部に連なるビード部と、
前記サイドウォール部に配設された断面三日月状のサイド補強ゴムと、
一対の前記ビード部間でトロイダル状に跨るカーカスと、
前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた、ランフラットタイヤであって、
タイヤ内面にインナーライナー及び内層ゴムが配置され、
記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端と、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端とが、互いに突き合わされて配置され、又は、前記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端部と、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端部とが、重なり幅30mm以下で重なっており、前記内層ゴムのタイヤ径方向外側端部は、前記インナーライナーのタイヤ幅方向外側端部よりもタイヤ内面側に位置し、
前記ランフラットタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、前記インナーライナーのタイヤ幅方向の幅をW1(mm)とし、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層のタイヤ幅方向の幅をW2(mm)とするとき、W2≦W1≦W2+20(mm)、を満たし、
前記内層ゴムの損失正接tanδ1は、前記インナーライナーの損失正接tanδ2の80%以下であることを特徴とする、ランフラットタイヤ。
【0007】
ここで、本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
また、「損失正接」とは、動的引張粘弾性測定試験機を用いて、加硫ゴムの、厚さ2mm、幅5mm、長さ20mmの試験片に、温度60°C、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%の条件において得た動的損失弾性率E"の値と動的貯蔵弾性率E'の値との比(E"/E')を指す。
【0008】
(2)前記内層ゴムは、JIS K6270:2001に準じ、8号ダンベルの中心部を試験片繰り返し引張方向と垂直に1mm切り欠いた試験片を用いて、150℃の条件下で、10Hzの周波数で繰り返し引張を与えた際に、試験片が破壊するまでの繰り返し回数が、与えた引張歪が10%~30%の範囲において、前記サイド補強ゴムの場合の2倍以上である、上記(1)に記載のランフラットタイヤ。
【0009】
(3)前記基準状態において、前記カーカスから前記タイヤ内面に下ろした垂線の方向に計測した際の前記サイド補強ゴムの厚さが最大となる最大厚さT1に対する、前記垂線の方向に計測した際の前記内層ゴムの厚さT2の比T2/T1は、0.05~0.30である、上記(2)に記載のランフラットタイヤ。
【0010】
(4)前記サイド補強ゴムの弾性率に対する、前記内層ゴムの弾性率の比は、0.75以下である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のランフラットタイヤ。
ここで、「弾性率」とは、25℃における25%伸長時モジュラス引張弾性率(JIS K 6251:2017)に基づき、加硫ゴムをダンベル状8号形の試験片に加工し、測定温度25℃で25%伸長時の引張弾性率をいうものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ランフラット耐久性を確保しつつも、転がり抵抗の増大を抑制した、ランフラットタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤのタイヤ幅方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかるランフラットタイヤのタイヤ幅方向部分断面図である。図1は、上記基準状態における、ランフラットタイヤのタイヤ幅方向断面を示している。
【0014】
図1に示すように、このランフラットタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)10は、トレッドゴムからなるトレッド部1と、トレッド部1の両側に連なる一対のサイドウォールゴムからなるサイドウォール部2と、各サイドウォール部2に連なるビード部3と、を備えている。
【0015】
図1に示すように、各ビード部3には、ビードコア3aが埋設されている。また、本例では、ビードコア3aのタイヤ径方向外側にはビードフィラ3bが配置されている。
【0016】
このタイヤ1は、一対のビード部3間でトロイダル状に跨る1枚以上のカーカスプライからなるカーカス4をさらに備えている。カーカスプライは、本例では有機繊維コードからなる。カーカス4は、ビードコアに係止されるカーカス本体部4aと、該カーカス本体部4aから延びてビードコア3aの周りに折り返されてなるカーカス折り返し部4bとからなる。図示例では、カーカス折り返し部4bは、ベルト端よりもタイヤ幅方向内側まで延びて終端おり、いわゆるエンベロープ構造となっているが、この例には限られず、カーカス折り返し部4bの端は、例えば、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側に位置していても良い。
【0017】
また、カーカス4のクラウン部のタイヤ径方向外側には、1層以上(図示例では2層)のベルト層5a、5bからなるベルト5が配置されている。2層のベルト層のベルトコードは、層間で互いに交差するように延びており、ベルトコードは、例えばタイヤ周方向に対して30~60°の傾斜角度で傾斜して延びることができる。ベルトコードは、本例ではスチールコードである。
【0018】
また、このタイヤ1は、サイドウォール部2に、断面三日月状のサイド補強ゴム6が配設されている。このようなサイド補強ゴム6を配設することにより、パンク等によってタイヤの内圧が低下した状態においても、車体重量の支持に寄与するサイド補強ゴム6が、ある程度の距離を安全に走行することを可能にする。図示例では、サイド補強ゴム6は、タイヤ幅方向断面において、該サイド補強ゴム6のタイヤ径方向中央位置付近からタイヤ径方向内側及び外側に向かってタイヤ幅方向の厚さが漸減し、かつ、タイヤ幅方向外側に凸に突出した形状をしている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ内面にインナーライナー7を備えている。本例では、インナーライナー7は、ブチルゴムからなる。そして、このタイヤ1では、タイヤ内面に、内層ゴム8が配置されている。内層ゴム8は、JIS K6270:2001に準じ、8号ダンベルの中心部を試験片繰り返し引張方向と垂直に1mm切り欠いた試験片を用いて、150℃の条件下で、10Hzの周波数で繰り返し引張を与えた際に、試験片が破壊するまでの繰り返し回数が、与えた引張歪が10%~30%の範囲において、サイド補強ゴム6の場合の2倍以上(好ましくは10倍以上)である。材質としては、内層ゴム8は、イソブチレンとイソプレンとの共重合体を有しないゴム(例えば、ブタジエンゴムと天然ゴムを配合したゴム)からなる。
【0020】
また、上記基準状態において、カーカス4からタイヤ内面に下ろした垂線の方向に計測した際のサイド補強ゴム6の厚さが最大となる最大厚さT1に対する、該垂線の方向に計測した際の内層ゴムの厚さT2の比T2/T1は、0.05~0.30である。
【0021】
また、このタイヤ10では、インナーライナー7のタイヤ幅方向外側端と、内層ゴム8のタイヤ径方向外側端とが、互いに突き合わされて配置され、又は、図示のように、インナーライナー7のタイヤ幅方向外側端部と、内層ゴム8のタイヤ径方向外側端部とが、重なり幅30mm以下で重なっている。なお、図示例では、インナーライナー7が内層ゴム8のタイヤ径方向外側に位置するように重なっているが、この場合に限られず、インナーライナー7が内層ゴム8のタイヤ径方向内側に位置するように重なっていても良い。
さらに、上記基準状態において、インナーライナー7のタイヤ幅方向の幅をW1(mm)とし、1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層5aのタイヤ幅方向の幅をW2(mm)とするとき、W2≦W1≦W2+20(mm)、を満たす。
【0022】
また、内層ゴム8の損失正接tanδ1は、インナーライナー7の損失正接tanδ2の80%以下であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
以下、本実施形態のランフラットタイヤの作用効果について説明する。
【0023】
本発明者は、ランフラットタイヤにおいてはサイドウォール部にサイド補強ゴム6が配置されていることにより、サイド補強ゴム6がエア透過を抑制することから、インナーライナー7が必ずしも配置されていなくても良いことに着目し、サイドウォール部において損失正接の大きいインナーライナーを除去することで、転がり抵抗を低減し得ることの着想を得た。一方で、サイド補強ゴム6がタイヤ最内面に露出してしまうとランフラット耐久性が低下するおそれがあり、これに対しては、インナーライナーの損失正接より小さい損失正接を有する内層ゴムを配置することで、上記の転がり抵抗の低減効果を大きく失うことなく、ランフラット耐久性の低下を抑制し得ることの知見を得た。
具体的には、本実施形態のタイヤにおいては、インナーライナー7のタイヤ幅方向外側端と、内層ゴム8のタイヤ径方向外側端とが、互いに突き合わされて配置され、又は、図示例のように、インナーライナー7のタイヤ幅方向外側端部と、内層ゴム8のタイヤ径方向外側端部とが、重なり幅30mm以下で重なっている。また、上記基準状態において、インナーライナー7のタイヤ幅方向の幅をW1(mm)とし、1層以上のベルト層のうちタイヤ径方向最内側のベルト層5aのタイヤ幅方向の幅をW2(mm)とするとき、W2≦W1≦W2+20(mm)、を満たしている。このようにインナーライナー7の配置量を低減することで転がり抵抗を低減することができる。すなわち、重なり幅が30mm超だと転がり抵抗を低減する効果を十分に得ることができない。また、W1>W2+20(mm)でも転がり抵抗を低減する効果を十分に得ることができない。なお、W2>W1だとベルト端付近でのエアの入り込みによるベルト端付近での故障の発生を十分に抑制することができない。また、インナーライナー7自体が発熱源となるため、インナーライナー7の配置量を上記のように低減することによれば、ランフラット耐久性を向上させることもできる。
さらに、本実施形態では、サイド補強ゴム6インナーライナー7によって覆われていない内面に、内層ゴム8が配置されていることで、サイド補強ゴム6がタイヤ最内面に露出する場合と比べて、ランフラット耐久性の低下を抑制することができる。そして、そのような内層ゴム8の損失正接tanδ1は、インナーライナー7の損失正接tanδ2の80%以下であるため、タイヤ内面全体にインナーライナー7が配置されている場合と比べて、転がり抵抗を低減することができる。
以上のように、本実施形態のランフラットタイヤによれば、ランフラット耐久性を確保しつつも、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0024】
インナーライナー7の配置量をなるべく低減して、上記の転がり抵抗の低減効果や、発熱量を低減することによるランフラット耐久性の向上効果を得るという観点からは、上記重なり幅は小さい方が好ましく、インナーライナーのタイヤ幅方向外側端と、内層ゴムのタイヤ径方向外側端とが、互いに突き合わされて配置されていることがより好ましい。
同様の観点からは、W1≦W2+10(mm)、を満たすことがより好ましい。
なお、エア漏れを抑制する観点からは、インナーライナーのタイヤ幅方向外側端と内層ゴムのタイヤ径方向外側端との間は、隙間がないことが好ましい。
【0025】
転がり抵抗の増大を抑制する観点からは、内層ゴム8の損失正接tanδ1は、インナーライナー7の損失正接tanδ2の70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0026】
ところで、ランフラット走行中のサイド補強ゴムの最内部は、大きな撓みにより、高温・高歪な状態となる。そのためサイド補強ゴムには、ランフラット状態において、荷重を支えるという機能に加え、高温・高歪な状態での耐破壊性という機能も求められる。
そこで、内層ゴム8は、JIS K6270:2001に準じ、8号ダンベルの中心部を試験片繰り返し引張方向と垂直に1mm切り欠いた試験片を用いて、150℃の条件下で、10Hzの周波数で繰り返し引張を与えた際に、試験片が破壊するまでの繰り返し回数が、与えた引張歪が10%~30%の範囲において、サイド補強ゴム6の場合の2倍以上(より好ましくは10倍以上)であることが好ましい。このようなゴムは、耐剥離性が高いものである。これにより、サイド補強ゴム6に荷重支持を担わせ、一方で、内層ゴム8にタイヤ内面側からの破壊抑制を担わせることができ、ランフラット耐久性をより一層向上させることができる、また、内層ゴム8は、JIS K6270:2001に準じ、8号ダンベルの中心部を試験片繰り返し引張方向と垂直に1mm切り欠いた試験片を用いて、150℃の条件下で、歪30%,10Hzの周波数で繰り返し引張を与えた際に、試験片が破壊するまでの繰り返し回数が7万回以上であることが好ましい。このような内層ゴム8を用いることで、より一層耐剥離性を高めて、ランフラット耐久性をより向上させることができるからである。
【0027】
上記のような耐剥離性が高い内層ゴム8を用いる場合、上記基準状態において、カーカスからタイヤ内面に下ろした垂線の方向に計測した際のサイド補強ゴム6の厚さが最大となる最大厚さT1に対する、該垂線の方向に計測した際の内層ゴム8の厚さT2の比T2/T1は、0.05~0.30であることが好ましい。
これにより、ランフラット耐久性をさらに向上させることができる。すなわち、上記比T2/T1が0.30以下であることにより、サイド補強ゴム6の体積を確保して、荷重支持能力をさらに十分なものとすることができる。一方で、比T2/T1を0.05以上とすることで、耐剥離性が高い内層ゴム8の体積を確保して、高温・高歪の状態での耐破壊性を十分に確保することができる。
【0028】
ここで、サイド補強ゴム6の弾性率に対する、内層ゴム8の弾性率の比は、0.75以下(好ましくは0.6以下)であることが好ましい。乗り心地性の低下を抑制することができるからである。
【実施例
【0029】
本発明の効果を確かめるため、タイヤサイズPSR 235/60F18の発明例1
、2及び比較例にかかるタイヤを試作して、タイヤ性能を評価する試験を行った。
比較例:サイド補強ゴムを1種類のゴムからなるものとした。
発明例1:サイド補強ゴム対比35%の弾性率を有する内層ゴムを、サイド補強ゴムゲージ最厚部において内層ゴムのゲージ/サイド補強ゴムのゲージの比が0.09となるように配置した構造とした。また、インナーライナーと内層ゴムとの重なり部においては、内層ゴムをインナーライナーよりもサイド補強ゴム側とした。その他の構成は、比較例と同様である。
発明例2:サイド補強ゴム対比31%の弾性率を有する内層ゴムを、サイド補強ゴムゲージ最厚部において内層ゴムのゲージ/サイド補強ゴムのゲージの比が0.09となるように配置した構造とした。また、インナーライナーと内層ゴムとの重なり部においては、インナーライナーを内層ゴムよりもサイド補強ゴム側とした。その他の構成は、比較例と同様である。
【0030】
<ランフラット耐久性>
ISO規格に準拠したリム、内圧、及び荷重条件において、ランフラット耐久性を評価した。比較例の結果を100とした指数で表示し、指数が大きい方が性能に優れている。
<転がり抵抗>
各タイヤを、空気圧210kPa、速度80km/h、荷重6890Nで、ドラム上でフリー回転させ、転がり抵抗を測定した。比較例の結果を100とした指数で表示し、指数が小さい方が性能に優れている。
<縦バネ係数>
JATMAに準拠したリムにリム組みし、230kPaの内圧を充填し、6010Nの荷重を負荷した際の縦バネ係数を算出した。比較例の結果を100とした指数で表示し、指数が小さい方が性能に優れている。
評価結果を以下の表1に示している。
【0031】
【表1】
【符号の説明】
【0032】
10:ランフラットタイヤ、
1:トレッド部、
2:サイドウォール部、
3:ビード部、
4:カーカス、
5:ベルト、
6:サイド補強ゴム、
7:インナーライナー、
8:内層ゴム
図1