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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】繊維吹付け装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/14 20060101AFI20241129BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241129BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20241129BHJP
   E04F 21/08 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B05B7/14
E04B1/94 E
E04B1/76 400G
E04F21/08 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021062339
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157869
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】谷辺 徹
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-035165(JP,A)
【文献】特開2019-166492(JP,A)
【文献】特開昭61-155558(JP,A)
【文献】特開2002-128270(JP,A)
【文献】国際公開第2008/130310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 7/14
E04B 1/94
E04B 1/76
E04F 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一端が繊維噴射口及び他端が繊維圧送用ホース接続口である繊維用通路、1個又は複数個の液状添加材用の噴射口、並びに1個又は複数個の液状添加材用ホース接続口を具備する繊維吹付けノズルと、
(B)繊維圧送用ホースと、
(C)繊維投入口、解綿装置、定量供給装置、モーター及び繊維圧送管を具備する解綿機と、
(D)送風機と、
(E)液状添加材用ホースと、
(F)入口と排出口を具備する液状添加材用ポンプを具備し、
前記繊維吹付けノズルの繊維圧送用ホース接続口に前記繊維圧送用ホース、及び前記液状添加材用ホース接続口に前記液状添加材用ホースがそれぞれ接続され、
前記解綿機の繊維圧送管の一端に前記繊維圧送用ホース、他端に前記送風機が接続され、前記解綿機の繊維圧送管から前記繊維吹付けノズルの繊維噴射口までの繊維圧送経路が形成されており、
前記液状添加材用ポンプの排出口に前記液状添加材用ホースが接続され、当該液状添加材用ポンプの入口に液状添加材供給源が連通している繊維吹付け装置であって、
更に、
(H)圧力データを送信可能な圧力計と、
(I)許容圧力上限値用メモリと、
(J)許容圧力下限値用メモリと、
(K)演算装置と、
(L)制御装置
を具備し、
前記圧力計が繊維圧送経路に配置されており、当該圧力計で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを前記演算装置に伝達し、
前記許容圧力上限値用メモリ内に格納されている許容圧力上限値データPmaxを前記演算装置に伝達した上で、次式(1)となる場合に、前記制御装置からの抑制命令により前記解綿機の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が抑制され、
前記許容圧力下限値用メモリ内に格納されている許容圧力下限値データPminを前記演算装置に伝達した上で、次式(2)となる場合に、前記制御装置からの増加命令により前記解綿機の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が増量されることを特徴とする繊維吹付け装置。
m>Pmax ・・・・・(1)
m<Pmin ・・・・・(2)
【請求項2】
更に、
(O)目標圧力上限値用メモリ及び/又は(P)目標圧力下限値用メモリが具備されており、
前記目標圧力上限値用メモリに格納されている目標圧力上限値データPTmax及び前記目標圧力下限値用メモリに格納されている目標圧力下限値データPTminを前記演算装置に伝達した上で、次式(3)となる場合に、前記制御装置からの保持命令により前記解綿機の定量供給装置から繊維圧送管への単位時間当たりの繊維の供給量を一定に保持するように当該解綿機を制御することを特徴とする請求項1記載の繊維吹付け装置。
Tmin≦Pm≦PTmax ・・・・・(3)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式吹付け工法又は半乾式吹付け工法のロックウール吹付け工事等に使用する繊維吹付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性、防火性、吸音性および/または断熱性などを付与する目的で、構造物表面にロックウールからなる繊維層を設けることが広く行われている。繊維層の形成には、粒状繊維(直径数mm~数cmの繊維塊)および水を主成分とする凝集材を用いた吹付工法が用いられることも多い。ロックウール吹付工法としては、湿式工法、乾式工法、半乾式工法が知られている。
【0003】
湿式工法は、主材(ロックウール粒状繊維やセメント)に副材(界面活性剤や増粘剤)を配合してなる吹付施工用被覆材を用い、これに水を加えミキサで練混ぜた混練物を圧縮空気によりノズルから吹付ける方法である。
【0004】
乾式工法は、予め、ロックウール粒状繊維とセメントとを乾式混合した乾燥混合物(乾式混合物、以下「ロックウール・セメント混綿」又は「混綿」と言うこともある。)が、ロックウール吹付機(岩綿吹付機)や解綿機等と呼ばれている解綿装置に投入され、内蔵されている回転式カッタや回転棒等の解綿部により解され、当該解綿装置に内蔵されているロータリフィーダ等により定量的に圧送経路内に送り出され、ブロワ(送風機)によりホース内を圧送され、吹付ノズルから吐出し、これと同時に吹付ノズルの周縁に配置した複数個の噴水口又は/及び吹付ノズルの中心軸付近に配置されている1個の噴水口より圧力水を噴射し、両者を合流・混合し吹付ける工法である。
【0005】
半乾式工法は、予め、ロックウール粒状繊維とセメントとを混合しない工法である。半乾式工法において、ロックウール粒状繊維は、乾式工法における混綿同様に解綿装置に投入され、内蔵されている回転式カッタや回転棒等の解綿部により細粒化され(細かく粒状(直径数mm~数cm程度の繊維塊)にされ)、当該解綿装置に内蔵されているロータリフィーダ等により定量的に圧送経路内に送り出され、ブロワ(送風機)によりホース内を圧送され、吹付ノズルに供給される。セメントはミキサで水と混合されてセメントスラリーとされた後、スラリーポンプにより搬送パイプ(セメントスラリー圧送用ホース)を通って粒状繊維吹付ノズルに配置されている液状材用(セメントスラリー用)噴霧ノズルに供給される。そのセメントスラリーは、粒状繊維吹付ノズルの周縁に配置されている液状材用(セメントスラリー用)噴霧ノズルから噴射されるか、或いは粒状繊維吹付ノズルの中心軸付近に配置されている液状材用(セメントスラリー用)噴霧ノズルから噴射され、ロックウールと合流・混合し、ロックウールとセメント水和物からなる繊維層が形成される。半乾式工法によれば、浮遊粉塵が少なく、乾式工法に近い嵩密度の被覆層が形成できる。このようなことから、半乾式工法がロックウール吹付工法の主流となっている(例えば特許文献1(第2頁、第3図)、特許文献2(第4図)及び非特許文献1参照。)。
【0006】
乾式工法や半乾式工法は、湿式工法に比べて圧送できる距離が長いため、広い施工現場や施工する階が複数ある施工現場でも、ミキサ等の練混ぜに用いる機材や材料を吹付施工する付近に何度も移動させる必要が無く手間が掛からない。また、乾式工法および半乾式工法は、湿式工法に比べて、ロックウール吹付け工法により形成される被覆層(吹付けロックウール層)の嵩密度を小さくできる。これにより、乾式工法や半乾式工法は、湿式工法に比べて一般的に行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-348978号公報
【文献】特開平07-166618号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】″耐火被覆工事″ [online]、株式会社ファーストビルト、[2021年 3月 5日検索]、インターネット〈 URL:http://www.firstb.co.jp/fireproofing_01.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、乾式工法および半乾式工法においては、施工条件によってはロックウール粒状繊維又は混綿(以下、適宜「ロックウール類」または「繊維類」という)を圧送するときに脈動が起こり、ロックウール類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留しているロックウール類の微粒分が繊維吐出口から噴出続け、又はロックウール類が繊維圧送経路内で詰まることがあった。
【0010】
脈動が起きると、形成される繊維組成物の品質が不安定となる。ロックウール類の微粒分が排出されると、粉塵が周囲に舞い作業環境が悪化する。繊維圧送経路内が詰まれば、ただちに施工中断となる。これらは予期せず発生するため、施工中の施工者にとって、心理的負担が大きい。
【0011】
本願発明は上記課題を解決するものであり、乾式工法又は半乾式工法による繊維組成物の吹付け工法に用いる繊維吹付け装置において、繊維圧送経路内での脈動が起こり難く、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり難く、且つ繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こり難い技術を提供することを目的とする。
【0012】
本願発明は上記課題を解決するものであり、乾式工法又は半乾式工法による繊維組成物の吹付け工法に用いる繊維吹付け装置において、繊維圧送経路内での脈動が起こることを抑制し、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こることを抑制し、繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こることを抑制して、施工性を向上できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題解決のため鋭意検討した結果、繊維圧送経路内の圧力を圧力計で測定し、その時の繊維圧送経路内の圧力データPmを(K)演算装置に伝達し、許容圧力上限値用メモリ内に格納されている許容圧力上限値データPmaxおよび許容圧力下限値用メモリ内に格納されている許容圧力下限値データPminと比較し、許容圧力範囲から外れたときに、制御装置から抑制命令又は増加命令により、解綿機の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給を抑制又は増加させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の(1)又は(2)で示す繊維吹付け装置である。
(1)(A)一端が繊維噴射口及び他端が繊維圧送用ホース接続口である繊維用通路、1個又は複数個の液状添加材用の噴射口、並びに1個又は複数個の液状添加材用ホース接続口を具備する繊維吹付けノズルと、
(B)繊維圧送用ホースと、
(C)繊維投入口、解綿装置、定量供給装置、モーター及び繊維圧送管を具備する解綿機と、
(D)送風機と、
(E)液状添加材用ホースと、
(F)入口と排出口を具備する液状添加材用ポンプを具備し、
前記繊維吹付けノズル(A)の繊維圧送用ホース接続口に前記繊維圧送用ホース(B)、及び前記液状添加材用ホース接続口に前記液状添加材用ホース(E)がそれぞれ接続され、
前記解綿機(C)の繊維圧送管の一端に前記繊維圧送用ホース(B)、他端に前記送風機(D)が接続され、前記解綿機(C)の繊維圧送管から前記繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口までの繊維圧送経路が形成されており、
前記液状添加材用ポンプ(F)の排出口に前記液状添加材用ホース(E)が接続され、当該液状添加材用ポンプ(F)の入口に液状添加材供給源(G)が連通している繊維吹付け装置であって、
更に、
(H)圧力データを送信可能な圧力計と、
(I)許容圧力上限値用メモリと、
(J)許容圧力下限値用メモリと、
(K)演算装置と、
(L)制御装置
を具備し、
前記圧力計(H)が繊維圧送経路に配置されており、当該圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを前記演算装置(K)に伝達し、
前記許容圧力上限値用メモリ(I)内に格納されている許容圧力上限値データPmaxを前記演算装置(K)に伝達した上で、次式(1)となる場合に、前記制御装置(L)からの抑制命令により前記解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が抑制され、
前記許容圧力下限値用メモリ(J)内に格納されている許容圧力下限値データPminを前記演算装置(K)に伝達した上で、次式(2)となる場合に、前記制御装置(L)からの増加命令により前記解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が増量されることを特徴とする繊維吹付け装置。
m>Pmax ・・・・・(1)
m<Pmin ・・・・・(2)
(2)更に、(O)目標圧力上限値用メモリ及び/又は(P)目標圧力下限値用メモリが具備されており、
前記目標圧力上限値用メモリ(O)に格納されている目標圧力上限値データPTmax及び前記目標圧力下限値用メモリ(P)に格納されている目標圧力下限値データPTminを前記演算装置(K)に伝達した上で、次式(3)となる場合に、前記制御装置(L)からの保持命令により前記解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への単位時間当たりの繊維の供給量(以下、単に「供給量」ということがある。)を一定に保持するように前記解綿機(C)を制御することを特徴とする上記(1)の繊維吹付け装置。
Tmin≦Pm≦PTmax ・・・・・(3)
【発明の効果】
【0014】
本願発明は上記課題を解決するものであり、本願発明によれば、繊維圧送経路内での脈動が起こり難く、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり難く、且つ繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こり難い、乾式工法又は半乾式工法による繊維組成物の吹付け工法に用いる繊維吹付け装置が得られる。
【0015】
また、本願発明によれば、乾式工法又は半乾式工法による繊維組成物の吹付け工法に用いる繊維吹付け装置において、繊維圧送経路内での脈動が起こることを抑制し、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こることを抑制し、繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こることを抑制して、施工性を向上できる。脈動が抑制されることにより、繊維類と液状添加材との混合割合が安定し、形成される繊維組成物の品質が安定する。微粒分の噴出が抑制されることにより、粉塵の発生が抑制され、作業環境が改善される。繊維圧送経路内で詰まることが抑制されることにより、中断されることなく施工完了となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の繊維吹付け装置の模式図である。
図2図2は、ホース長毎の繊維圧送経路内への繊維供給量と、ホース圧及び搬送速度との関係を示す図である。
図3図3は、繊維圧送経路内の圧力のイメージ図である。
図4図4は、繊維圧送経路内の圧力のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の繊維吹付け装置は、
(A)一端が繊維噴射口及び他端が繊維圧送用ホース接続口である繊維用通路、1個又は複数個の液状添加材用の噴射口、並びに1個又は複数個の液状添加材用ホース接続口を具備する繊維吹付けノズルと、
(B)繊維圧送用ホースと、
(C)繊維投入口、解綿装置、定量供給装置、モーター及び繊維圧送管を具備する解綿機と、
(D)送風機と、
(E)液状添加材用ホースと、
(F)入口と排出口を具備する液状添加材用ポンプを具備し、
前記繊維吹付けノズル(A)の繊維圧送用ホース接続口に前記繊維圧送用ホース(B)、及び前記液状添加材用ホース接続口に前記液状添加材用ホース(E)がそれぞれ接続され、
前記解綿機(C)の繊維圧送管の一端に前記繊維圧送用ホース(B)、他端に前記送風機(D)が接続され、前記解綿機(C)の繊維圧送管から前記繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口までの繊維圧送経路が形成されており、
前記液状添加材用ポンプ(F)の排出口に前記液状添加材用ホース(E)が接続され、当該液状添加材用ポンプ(F)の入口に液状添加材供給源(G)が連通している繊維吹付け装置であって、
更に、
(H)圧力データを送信可能な圧力計と、
(I)許容圧力上限値用メモリと、
(J)許容圧力下限値用メモリと、
(K)演算装置と、
(L)制御装置
を具備し、
前記圧力計(H)が繊維圧送経路に配置されており、当該圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを前記演算装置(K)に伝達し、
前記許容圧力上限値用メモリ(I)内に格納されている許容圧力上限値データPmaxを前記演算装置(K)に伝達した上で、次式(1)となる場合に、前記制御装置(L)からの抑制命令により前記解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が抑制され、
前記許容圧力下限値用メモリ(J)内に格納されている許容圧力下限値データPminを前記演算装置(K)に伝達した上で、次式(2)となる場合に、前記制御装置(L)からの増加命令により前記解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が増量されることを特徴とする。
m>Pmax ・・・・・(1)
m<Pmin ・・・・・(2)
【0018】
本発明における繊維は、粒状繊維又は短繊維、或いは粒状繊維又は短繊維にセメント等の結合材を配合し乾式混合したもの(但し、結合材の嵩よりも繊維の嵩が上回るもの。)をいう。ここで、結合材の嵩は含まれる結合材の質量を当該結合材の嵩密度で除した値をいい、繊維(粒状繊維又は短繊維)の嵩は含まれる繊維(粒状繊維又は短繊維)の質量を当該繊維の嵩密度で除した値をいう。本発明における繊維として短繊維を用いる場合は、好ましくは繊維長60mm以下のものを用い、より好ましくは繊維長30mm以下のものを用いる。繊維長が長いと、繊維圧送用ホース(B)、繊維吹付けノズル(A)の繊維用通路、解綿機(C)の繊維圧送管の断面積、つまり、繊維圧送経路の断面積が大きなものが必要となり、繊維圧送用ホース(B)及び繊維吹付けノズル(A)が大きく且つ重くなり吹付け作業が行い難い。
前記の粒状繊維とは、直径数mm~数cm程度の繊維塊、好ましくは直径5mm~5cmの繊維塊である。ロックウール等の鉱物繊維の場合は、繊維化された鉱物繊維を集めただけの原綿を解砕、解綿、切断、分級(例えば、篩い分け)、造粒などの工程の一種又は二種以上の組み合わせを経て得られる粒状綿である。ロックウールの粒状綿としては、ロックウールの細粒綿及び微粒綿を含むものであり、日本ロックウール社製「エスファイバー粒状綿」(商品名)、JFEロックファイバー社製「ロクセラム粒状綿」(商品名)、太平洋マテリアル社製「太平洋ミネラルファイバー粒状綿」(商品名)等の市販のロックウールの粒状綿、細粒綿、微粒綿を好適に用いることが出来る。斯かる粒状ロックウールが用いられた場合、熱がロックウールを被覆する下地に伝わり難く、断熱性、耐火性又は不燃性が得られ、また、吸音性も得られる。
【0019】
本発明における繊維の材質としては、無機繊維、有機繊維、無機繊維と有機繊維との混合物が挙げられる。無機繊維としては、例えば金属繊維、炭素繊維、ロックウール、グラスウール、セラミックスウール等が挙げられ、有機繊維としては、例えばセルロース繊維やジュート繊維等の植物性繊維、羊毛や羽毛等の動物性繊維、ポリプロピレン繊維やポリビニルアルコール繊維等の合成繊維等が挙げられ、例えば、ロックウール、グラスウール、セラミックスウール等から選ばれる綿状無機繊維が耐久性、吸音性又は断熱性の点で好ましく、ロックウール又はセラミックスウールが800℃以上に晒されても溶融せずに形状を維持でき、耐熱性又は耐火性の点で優れることからより好ましい。ここでロックウールとは、溶融炉で溶融された岩石や高炉スラグ等を主体とする材料が、急冷されながら、繊維化された素材(鉱物繊維)である。例えば、高炉スラグを主体とする材料より製造されたスラグウールなども含まれる。
【0020】
本発明における液状添加材としては、例えば水、水溶液、無機質スラリー、樹脂エマルジョン、無機質含有樹脂エマルジョン(樹脂含有無機質スラリー)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。より好ましい例としては、水、水溶液、セメントや高炉スラグ粉末等の水硬性無機粉末スラリー、セメントや高炉スラグ粉末等のAl2O3,CaO及び/又はSiO2が組成に含まれる無機質粉末と珪酸アルカリと水とを含有するスラリー、合成樹脂エマルジョン(ポリマー)、セメント含有樹脂エマルジョン(樹脂含有セメントスラリー)が挙げられる。前記液状添加材に用いられる樹脂エマルジョンとしては、例えば合成ゴム(例えば、スチレン・ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体又はメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等)のエマルジョン、天然ゴムのエマルジョン、合成樹脂(例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等)、ポリクロロピレン、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、酢酸ビニル系樹脂(例えば、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル・アクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体、変性酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体、アクリル・酢酸ビニル・ベオバ(t‐デカン酸ビニルの商品名)共重合体等)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等)のエマルジョン、瀝青質材(例えば、アスファルト、ゴムアスファルト等)のエマルジョンが挙げられる。前記液状添加材は、液状添加材自体の粘性により、繊維同士を凝集させる凝集材としての役割が期待される。従って、セメントスラリー等の水硬性無機粉末スラリー、、セメントや高炉スラグ粉末等のAl2O3,CaO及び/又はSiO2が組成に含まれる無機質粉末と珪酸アルカリと水とを含有するスラリー、合成樹脂エマルジョン(ポリマー)並びにセメント含有樹脂エマルジョン(樹脂含有セメントスラリー)は、特に、好ましい。なぜならば、硬化又は/及び分散媒の蒸発により、繊維同士をより強固に結合させるからである。
【0021】
本発明における繊維吹付けノズル(A)は、一端が繊維噴射口及び他端が繊維圧送用ホース接続口である繊維用通路、1個又は複数個の液状添加材用の噴射口、並びに1個又は複数個の液状添加材用ホース接続口を具備する。繊維吹付けノズルに備わる繊維用通路は、繊維用導管により形成されていることが好ましく、当該繊維用導管の内部の空洞が繊維用通路であり、当該繊維用導管の開口の一端が繊維噴射口であり、他端の開口が繊維圧送用ホース接続口である。繊維用導管の材質は、特に限定されずに金属,ゴム等の樹脂,セラミックス,ガラス,石材,木材及び竹から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせたものが好ましいものとして例示できるが、成形のし易さ及び丈夫さから、金属,ゴム等の樹脂及びセラミックスから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせたものがより好ましい。
【0022】
本発明に使用する繊維吹付けノズル(A)に備わる液状添加材用の噴射口は、繊維用通路を形成する壁,繊維用通路の内部又は/及び繊維噴射口の外周に1個又は複数個配置することが好ましい。繊維用通路の内部に液状添加材用の噴射口を1個配置するときは、繊維用通路の中心軸に凝集材噴射口を配置することが好ましく、繊維用通路を形成する壁又は繊維噴射口の外周に液状添加材用の噴射口を配置するときは、繊維用通路内の繊維の流れ又は繊維噴射口より噴射される繊維の流れの中心軸と、液状添加材用の噴射口から噴射される液状添加材の流れの中心軸が交差するように当該液状添加材用の噴射口を配置することが好ましい。
【0023】
本発明に使用する繊維圧送用ホース(B)及び液状添加材用ホース(E)の材質は特に限定されずに、金属及びゴム等の樹脂から選ばれる1種又は2種以上を組み合わせたものが好ましいものとして例示できるが、取り扱い易さから樹脂製のものがより好ましく、両ホースとも内圧が掛かることから樹脂製耐圧ホースとすることが好ましい。
【0024】
本発明における解綿機(C)は、繊維投入口、解綿装置、定量供給装置、モーター及び繊維圧送管を具備している。繊維投入口、解綿装置、定量供給装置、モーター及び繊維圧送管は、2個以上備わっていてもよい。繊維投入口に投入された繊維が、解綿装置により解された後に定量供給装置に送られ、単位時間当たり一定量の繊維が繊維圧送管に供給される。上記解綿装置は、回転軸に突起(例えば、I字状、L字状、板状、針状等の突起)、羽根、刃又は鎖が1個又は複数個取り付けられ又は形成されており、解綿機(C)に備わるモーターの駆動により当該回転軸が回転する構造となっている。
【0025】
本発明における解綿機(C)の繊維投入口は、繊維が解綿機(C)内に投入できる構造であれば形状及び材質は限定されないが、ホッパ状又はスロープ状であると継続的に繊維を解綿機(C)内に投入できることから好ましい。
【0026】
本発明における解綿機(C)の定量供給装置は、繊維を定量供給できる装置であればよく、スクリューフィーダ、ベルトフィーダ及びロータリーフィーダが好ましい例として例示できるが、解綿機(C)の繊維圧送管への繊維の定量供給には、密閉状態で繊維を繊維圧送管へ供給し易いことから、ロータリーフィーダが好ましい。当該解綿機(C)の定量供給装置は、解綿機(C)に備わるモーターの駆動によりスクリュー、ローラー、ローター等が回転する構造となっており、当該モーターの単位時間当たりの回転数に応じてスクリュー、ローラー、ローター等の単位時間当たりの回転数が変動する。
【0027】
本発明における送風機は、繊維圧送経路に圧力を掛けて空気を供給できるものであれば特に限定されないが、リングブロワ及び/又はルーツブロワが好ましい。当該送風機は、解綿機(C)の繊維圧送管に接続されている。尚、本発明で云う接続は、直接接続されている場合の他、直接接続されている場合と同じ効果が得られない場合を除いて、間接的に接続している場合も含まれている。本発明における送風機は、解綿機(C)の一部であってもよい。
【0028】
本発明に使用する液状添加材用ポンプ(F)は、入口と排出口を具備する。液状添加材用ポンプ(F)の入口は、液状添加材供給源(G)が連通しており、液状添加材用ポンプ(F)の排出口は、液状添加材用ホース(E)が接続されている。本発明に使用する液状添加材用ポンプ(F)は、液状添加材を圧送できるものであれば如何なるものでも良い。例えば、往復ポンプ(例えば、ダイヤフラム式ポンプ、ピストン式ポンプ、プランジャポンプ等)、回転ポンプ(例えば、スクリュー式ポンプ、ギヤ式ポンプ等)、遠心ポンプ(例えば、タービンポンプ、ボリュートポンプ等)、スクイズ式ポンプ等が挙げられる。本発明に使用する液状添加材用ポンプ(F)としては、液状添加材を定量圧送することが行い易いことから、往復ポンプ、回転ポンプ及びスクイズ式ポンプが好ましい例として挙げられる。
【0029】
本発明における液状添加材供給源(G)は、液状添加材が貯留してある液状添加材貯留槽及び液状添加材用供給栓が好ましい例として挙げられる。液状添加材が水の場合において、液状添加材用供給栓は例えば水道の栓(蛇口)である。液状添加材用ポンプ(F)の入口と、液状添加材供給源(G)とは、多くはホース(管)を介して接続されている。
【0030】
本発明における圧力計(H)は、計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを演算装置(K)に送信し伝達可能なものであれば特に限定されない。当該圧力計は、繊維圧送経路内に配置されているが、解綿機(C)の繊維圧送管又は該繊維圧送管から10m以内の繊維圧送経路内に配置することが、圧力損失の影響をほぼ無視でき、繊維圧送経路における不具合発生の影響が圧力変動として表れ易いことから好ましい。圧力計(H)は、解綿機(C)の繊維圧送管又は繊維圧送用ホース(B)に直接配置してもよいし、鋼管等の金属管に配置した上で解綿機(C)の繊維圧送管及び繊維圧送用ホース(B)、或いは2つの繊維圧送用ホース(B)で当該交換を挟むように接続することで繊維圧送経路内に配置してもよい。
【0031】
本発明における制御装置(L)は、解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給を制御できるものであれば、どのような仕組みのものでも良い。例えば、解綿機(C)の定量供給装置を駆動しているモーターの電圧又は周波数を制御する方式、解綿機(C)の定量供給装置をギヤ装置(ギヤボックス)を介して駆動しているときに、ギヤ装置のギヤ比を調整する方式等が好ましい例として挙げられる。
【0032】
本発明における許容圧力上限値用メモリ(I)内には、許容圧力上限値データPmaxが格納されている。また、許容圧力下限値用メモリ(J)内には、許容圧力下限値データPminが格納されている。許容圧力上限値データPmax及び許容圧力下限値データPminは、繊維圧送用ホース(B)のホース長さや取り回し条件(配置条件)、繊維圧送管への繊維の供給を行わないときの送風機の風速、単位時間当たりの繊維の目標吐出量(繊維圧送管への繊維の供給量)等の施工条件から求められるようにしておいても良いし、本施工前に試験的に繊維圧送管へ繊維を供給して繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口より噴射(吐出)し、繊維圧送経路内での脈動及び詰まりが発生していないこと並びに繊維圧送経路内の圧力の大きな変動が起こっていないことを確認し、そのときの圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmより求めてもよい。また、本施工前に、単位時間当たりの繊維圧送管への繊維供給量を変化させて、試験的に繊維圧送管へ繊維を供給して繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口より噴射(吐出)し、繊維圧送経路内での脈動及び詰まりが発生していないこと並びに繊維圧送経路内の圧力の大きな変動が起こっていないことを確認し、そのときの圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmの最大値を許容圧力上限値データPmax、繊維圧送経路内の圧力データPmの最小値を許容圧力下限値データPminとしてもよい。
【0033】
本発明において、圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを演算装置(K)に伝達し、許容圧力上限値用メモリ(I)内に格納されている許容圧力上限値データPmaxを演算装置(K)に伝達した上で、次式(1)となる場合に、制御装置(L)からの抑制命令が発せられる。この抑制命令により解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が抑制される。
m>Pmax ・・・・・(1)
つまり、繊維圧送経路内の圧力データPmが許容圧力上限値データPmaxより大きいときに、単位時間当たりの繊維圧送管への繊維供給量を抑制(減少)させることで、繊維圧送経路内の圧力を低下させ、繊維圧送経路内の圧力データPmが許容圧力上限値データPmax以下とする。
【0034】
本発明において、圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを演算装置(K)に伝達し、許容圧力下限値用メモリ(J)内に格納されている許容圧力下限値データPminを演算装置(K)に伝達した上で、次式(2)となる場合に、制御装置(L)からの増加命令が発せられる。この増加命令により解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が増量される。
m<Pmin ・・・・・(2)
つまり、繊維圧送経路内の圧力データPmが許容圧力下限値データPminより小さいときに、単位時間当たりの繊維圧送管への繊維供給量を増加(増量)させることで、繊維圧送経路内の圧力を増大させ、繊維圧送経路内の圧力データPmが許容圧力下限値データPmin以上とする
【0035】
本発明は、更に、(O)目標圧力上限値用メモリ及び/又は(P)目標圧力下限値用メモリが具備されており、(O)目標圧力上限値用メモリに格納されている目標圧力上限値データPTmax及び(P)目標圧力下限値用メモリに格納されている目標圧力下限値データPTminを(K)演算装置に伝達した上で、次式(3)となる場合に、(L)制御装置からの保持命令により(C)解綿機の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給量を一定に保持するように(C)解綿機制御することが好ましい。
Tmin≦Pm≦PTmax ・・・(3)
【0036】
本発明における目標圧力上限値用メモリ(O)内には、目標圧力上限値データPTmaxが格納されている。また、目標圧力下限値用メモリ(P)内には、目標圧力下限値データPTminが格納されている。目標圧力上限値データPTmax及び目標圧力下限値データPTminは、許容圧力上限値データPmax及び許容圧力下限値データPminと同様に、繊維圧送用ホース(B)のホース長さや取り回し条件(配置条件)、繊維圧送管への繊維の供給を行わないときの送風機の風速、単位時間当たりの繊維の目標吐出量(繊維圧送管への繊維の供給量)等の施工条件から求められるようにしておいても良いし、本施工前に試験的に繊維圧送管へ繊維を供給して繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口より噴射(吐出)し、繊維圧送経路内での脈動及び詰まりが発生していないこと並びに繊維圧送経路内の圧力の大きな変動が起こっていないことを確認し、そのときの圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmより求めてもよい。また、本施工前に、単位時間当たりの繊維圧送管への繊維供給量を変化させて、試験的に繊維圧送管へ繊維を供給して繊維吹付けノズル(A)の繊維噴射口より噴射(吐出)し、繊維圧送経路内での脈動及び詰まりが発生していないこと並びに繊維圧送経路内の圧力の大きな変動が起こっていないことを確認し、そのときの圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmの最大値を目標圧力上限値データPTmax、繊維圧送経路内の圧力データPmの最小値を目標圧力下限値データPTminとしてもよい。目標圧力上限値データPTmaxは次式(4)となる範囲で、目標圧力下限値データPTminは次式(5)となる範囲で、それぞれ設定する。好ましくは、繊維圧送経路内の圧力を許容圧力の下限値から許容圧力の上限値の範囲内とし易いことから、目標圧力上限値データPTmaxを次式(6)となる範囲で、目標圧力下限値データPTminを次式(7)となる範囲で、それぞれ設定する。目標圧力上限値データPTmaxと目標圧力下限値データPTminは同じ値でも良い。
min≦PTmax≦Pmax ・・・・・(4)
min≦PTmin≦Pmax ・・・・・(5)
min<PTmax<Pmax ・・・・・(6)
min<PTmin<Pmax ・・・・・(7)
【0037】
圧力計(H)で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを演算装置(K)に伝達し、許容圧力上限値用メモリ(I)内に格納されている許容圧力上限値データPmaxを演算装置(K)に伝達した上で、上記式(1)となる場合に、制御装置(L)からの抑制命令が発せられる。この抑制命令により解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への繊維の供給が抑制される。その結果、繊維圧送経路内の圧力データPmが小さくなる。その後、繊維圧送経路内の圧力データPmが上記式(3)を満たす、つまり、繊維圧送経路内の圧力データPmが目標圧力下限値データPTminから目標圧力上限値データPTmaxの範囲内に入ったときに、制御装置(L)からの保持命令により解綿機(C)の定量供給装置から繊維圧送管への単位時間当たりの繊維の供給量を一定に保持するように解綿機(C)を制御する。このことにより、繊維圧送経路内の圧力データPmを目標圧力下限値データPTminから目標圧力上限値データPTmaxの範囲内、つまり、許容圧力下限値データPminから許容圧力上限値データPmaxの範囲内とすることができることから、維圧送経路内での脈動が起こり難く、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり難く、且つ繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こり難い。
【実施例
【0038】
以下に本発明の実施例を基に説明するが本発明はその実施例に限定されない。図1に本発明の繊維吹付け装置の一例の模式図を示した。繊維吹付け装置10は、繊維吹付けノズル1と、繊維圧送用ホース9と、解綿機20と、ブロワ14と、管内の圧力を測定できるように圧力計2を取り付けた鋼管と、液状添加材用ホース6と、液状添加材用ポンプ7と、変換装置31と、演算装置30と、許容圧力上限値用メモリ32と、許容圧力下限値用メモリ33と、目標圧力上限値用メモリ34と、目標圧力下限値用メモリ35と、制御装置40とを具備している。
【0039】
繊維吹付けノズル1は、開口の一端が繊維噴射口であり他端の開口が繊維圧送用ホース接続口である繊維用導管と、繊維用導管の内部(繊維用通路)の中心軸に液状添加材用の噴射口3が1個配置されている。液状添加材用の噴射口3は金属管の開口の一端であり、当該金属管の他端の開口は、繊維用導管の外側に突出しており、液状添加材用ホース接続口として液状添加材用ホース6が接続されている。液状添加材用ホース6の他端は、液状添加材用ポンプ7の排出口に接続されている。液状添加材用ポンプ7の入口には吸引ホース接続されており、吸引ホースの他端は、液状添加材用貯留槽8の中に貯留されている液状添加材4に差し込まれている。
【0040】
繊維吹付けノズル1の繊維圧送用ホース接続口には、繊維圧送用ホース9が接続されており、繊維圧送用ホース9の他端は、圧力計2が内部の圧力を測定できるように設置されている金属管の開口に接続されている。金属管の他端は、解綿機20の繊維圧送管26に接続されている。当該繊維圧送管26の他端は、ブロワ(ルーツブロワ)14に接続されている。ブロワ(ルーツブロワ)14、解綿機20の繊維圧送管26、圧力計2を設置してある金属管、繊維圧送用ホース9及び繊維吹付けノズル1の繊維用導管は連通しており、解綿機20の繊維圧送管26~繊維吹付けノズル1の繊維用導管(繊維噴射口)までが、繊維圧送経路を形成している。
【0041】
解綿機20には、繊維圧送管26と、ホッパ23からなる繊維投入口と、第一解綿部21(解綿装置)と、第二解綿部22(解綿装置)と、スクリューフィーダ24(定量供給装置)と、ロータリーフィーダ25(定量供給装置)と、モーター(図示せず)が具備されている。第一解綿部21は、回転軸に複数のL字鋼棒が具備されており、モーターの駆動で当該回転軸を回転させることで当該L字鋼棒が回転するときにホッパ23に投入された繊維11に当たることで繊維11が解され、スクリューフィーダ24の上に落下する。スクリューフィーダ24がモーターの駆動で回転することで、解された繊維が第二解綿部22に定量供給される。第二解綿部22は、回転軸に複数本の鋼製突起(I字状鋼棒)が取り付けられた構造を有する。第二解綿部22に送られてきた繊維はモーターの駆動により回転しているI字状鋼棒に当たり更に解された繊維5となる。当該粒状繊維5は、第二解綿部22の下に配置されているロータリーフィーダ25の回転軸に溶接されている平板2枚により形成されているポケットに入った後に、ロータリーフィーダ25の回転軸がモーターの駆動で回転することにより、ロータリーフィーダ25の下に配置されている繊維圧送管26に定量供給される。繊維が混綿等の粒状繊維又は短繊維にセメント等の結合材を配合した乾式混合物の場合は、粒状繊維又は短繊維が解され細かくなった乾式混合物が繊維圧送管26に定量供給される。
【0042】
繊維圧送管26に定量供給された解された繊維5は、ブロワ14からの空気の流れにより繊維圧送経路を繊維吹付けノズル1の繊維噴射口まで圧送され、当該繊維噴射口より噴射(吐出)される。一方、液状添加材用圧送ポンプ7により、液状添加材用貯留槽8の中に貯留されている液状添加材4が吸われた後に、液状添加材用ホース6を通って繊維吹付けノズル1に備わる液状添加材用の噴射口3より噴射され、繊維噴射口より噴射(吐出)された解された繊維5と合流混合されて、被覆対象物13に吹付けられることにより、被覆対象物13の表面に合流混合物からなる繊維層が形成される。
【0043】
圧力計2により、繊維圧送経路内の圧力が測定される。ホース長を20m、40m、60mとして、繊維として混綿(ロックウール・セメント混綿)を用いて、繊維圧送管26(繊維圧送経路)への単位時間当たりの供給量を変化させて、ホース圧(繊維圧送経路内の圧力)及び次に示す通りに繊維の排出時間を測定し繊維の搬送速度を求めた。その結果を図2に示した。
【0044】
・混綿の単位時間当たりの供給量
繊維圧送用ホースから吹付けノズルを外し、繊維圧送用ホースのホース先に麻袋を取り付け、30秒間混綿のみを吹き出してそのときに麻袋内に入った材料の質量Wを測定し、次式により混綿の単位時間当たりの供給量Sを次式(8)により求めた。なお、供給量は制御装置40からの命令(指令)に基づいて解綿機20のモーターの単位時間当たりの回転数を制御することで設定可能である。
S=W/0.5 ・・・・・(8)
【0045】
・混綿の排出時間
解綿機のロータリーフィーダ25の回転を止め、即ち、混綿の繊維圧送管26への供給を止めてから、混綿に含まれるロックウール粒状繊維が繊維圧送経路内から排出が完了するまでの時間を測定し、混綿の排出時間tとした。さらに繊維圧送用ホースの長さ(ホース長)Lを排出時間tで割った値を搬送速度Vとして、次式(9)により求めた。
V=L/t ・・・・・(9)
【0046】
図2から、繊維(混綿)の繊維圧送管26(繊維圧送経路)への単位時間当たりの供給量が増加すると、ホース圧力(繊維圧送経路内の圧力)が増大し、且つ搬送速度が低下する傾向であることが分かる。搬送速度が低下し過ぎると、繊維圧送経路内で繊維が詰まる虞がある。また、ホース圧力(繊維圧送経路内の圧力)により、繊維(混綿)の繊維圧送管26(繊維圧送経路)への単位時間当たりの供給量を推定することもできる。ホース圧力(繊維圧送経路内の圧力)が高過ぎると、繊維圧送経路内で繊維が詰まり易く、脈動が起こり易く、繊維の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり易い。また、ホース圧力(繊維圧送経路内の圧力)が低過ぎると、繊維(混綿)の繊維圧送管26(繊維圧送経路)への単位時間当たりの供給量が少な過ぎることから、施工時間が長くなる。
【0047】
図1に示した繊維吹付け装置10では、圧力計2で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを変換装置31を介して、演算装置30、許容圧力上限値用メモリ32、許容圧力下限値用メモリ33、目標圧力上限値用メモリ34、目標圧力下限値用メモリ35に送ることができる。本施工前に、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を変化させて、試験的に繊維圧送管26へ繊維を供給して繊維吹付けノズル1の繊維噴射口より噴射(吐出)し、繊維圧送経路内での脈動及び詰まりが発生していないこと並びに繊維圧送経路内の圧力の大きな変動が起こっていないことを確認し、そのときの圧力計2で計測され変換装置31で変換した繊維圧送経路内の圧力データPmを4点取り、圧力の小さい順に許容圧力下限値用メモリ33、目標圧力下限値用メモリ35、目標圧力上限値用メモリ34、許容圧力上限値用メモリ32に送り、それぞれ、許容圧力下限値データPmin、目標圧力下限値データPTmin、目標圧力上限値データPTmax、許容圧力上限値データPmaxとすることができる。許容圧力下限値データPmin、目標圧力下限値データPTmin、目標圧力上限値データPTmax、許容圧力上限値データPmaxの各データは、数値入力を行ってもよいし、繊維吹付け装置10に具備されているリードオンリーメモリ(ROM),ランダムアクセスメモリ(RAM)等の記録媒体や外部の装置(例えば、サーバー)の記録媒体に記録されているデータを読み込んで用いてもよい。
【0048】
繊維吹付けの本施工時に、圧力計2で計測された繊維圧送経路内の圧力データPmを変換装置31を介して、演算装置30に送る。また、許容圧力上限値用メモリ32内に格納されている許容圧力上限値データPmax及び許容圧力下限値用メモリ33内に格納されている許容圧力下限値データPminを演算装置30に伝達する。演算装置30内で次式(1)又は次式(2)となるか否かを確認する。
m>Pmax ・・・・・(1)
m<Pmin ・・・・・(2)
【0049】
上記式(1)が成り立つ場合は、繊維圧送経路内の圧力が高過ぎる、つまり、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量が多過ぎることから、上記式(1)が成り立つ旨の信号を演算装置30から制御装置40に送信する。当該信号を受信した制御装置40は、解綿機20に抑制命令を送信する。抑制命令を受信した解綿機20はモーターの単位時間当たりの回転数を抑制し、このことにより、スクリューフィーダ24、第二解綿部22及びロータリーフィーダー25のそれぞれの回転軸の単位時間当たりの回転数が抑制され、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を減少させる。制御装置40からの抑制命令を解綿機20に備わるモーターが直接受け取り、モーターの単位時間当たりの回転数を抑制し、スクリューフィーダ24、第二解綿部22及びロータリーフィーダー25のそれぞれの回転軸の単位時間当たりの回転数を抑制させ、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を減少させてもよい。
【0050】
上記式(2)が成り立つ場合は、繊維圧送経路内の圧力が低過ぎる、つまり、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量が少な過ぎることから、上記式(2)が成り立つ旨の信号を演算装置30から制御装置40に送信する。当該信号を受信した制御装置40は、解綿機20に増加命令を送信する。抑制命令を受信した解綿機20はモーターの単位時間当たりの回転数を増加させる、このことにより、スクリューフィーダ24、第二解綿部22及びロータリーフィーダー25のそれぞれの回転軸の単位時間当たりの回転数が増加する、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を増加させる。制御装置40からの増加命令を解綿機20に備わるモーターが直接受け取り、モーターの単位時間当たりの回転数を増加し、スクリューフィーダ24、第二解綿部22及びロータリーフィーダー25のそれぞれの回転軸の単位時間当たりの回転数を増加させ、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を増加させてもよい。
【0051】
これらを繰り返すことで、繊維圧送経路内の圧力が許容の範囲内、つまり、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量が許容範囲内となり、繊維圧送経路内での脈動が起こり難く、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり難く、且つ繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こり難い。繊維圧送経路内の圧力のイメージ図を図3に示した。
【0052】
更に、上記式(1)が成り立ち、上記式(1)が成り立つ旨の信号を演算装置30から制御装置40に送信し、当該信号を受信した制御装置40は、解綿機20に抑制命令を送信し、抑制命令を受信した解綿機20はモーターの単位時間当たりの回転を抑制し、このことにより、ロータリーフィーダー25の回転軸の単位時間当たりの回転が抑制され、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量を減少させた後に、目標圧力上限値用メモリ34内に格納されている目標圧力上限値データPTmax及び許目標圧力下限値用メモリ35内に格納されている目標圧力下限値データPTminを演算装置30に伝達する。演算装置30内で次式(3)となるか否かを確認する
Tmin≦Pm≦PTmax ・・・・・(3)
【0053】
上記式(3)となる場合に、上記式(3)が成り立つ旨の信号を演算装置30から制御装置40に送信し、当該信号を受信した制御装置40は、解綿機20に保持命令を送信し、保持命令を受信した解綿機20はモーターの単位時間当たりの回転を保持し、このことにより、ロータリーフィーダー25の回転軸の単位時間当たりの回転が保持され、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量が保持される。このため、繊維圧送経路内の圧力が目標の範囲内、つまり、単位時間当たりの繊維圧送管26への繊維供給量が目標範囲内となり、更に、繊維圧送経路内での脈動が起こり難く、ロックウール類等の繊維類の繊維圧送経路内への供給を止めても繊維圧送経路内に滞留している繊維類の微粒分が繊維吐出口から噴出続けることが起こり難く、且つ繊維類が繊維圧送経路内で詰まることが起こり難い。繊維圧送経路内の圧力のイメージ図を図4に示した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば、構造物の部材に、耐火性、防火性、吸音性、及び/又は断熱性等を付与する目的で採用されるロックウール等の繊維、又は繊維組成物を吹付け繊維組成物層を形成する工事において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 繊維吹付けノズル 2 圧力計
3 液状添加材用の噴射口 4 液状添加材
5 粒状繊維 6 液状添加材圧送用ホース
7 液状添加材用圧送ポンプ 8 液状添加材用貯留槽
9 繊維圧送用ホース 10 繊維吹付け装置
11 繊維又は繊維乾燥組成物 12 合流混合物からなる繊維層
13 被覆対象物 14 ブロワ(送風機)
20 解綿機 21 第一解綿部
22 第二解綿部 23 ホッパ
24 スクリューフィーダ 25 ロータリーフィーダ(定量供給装置)
26 繊維圧送管
30 演算装置 31 変換装置
32 許容圧力上限値用メモリ 33 許容圧力下限値用メモリ
34 目標圧力上限値用メモリ 35 目標圧力下限値用メモリ
40 制御装置
図1
図2
図3
図4