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特許7595512生産ライン分析システム、生産ライン分析方法、学習装置、および推論装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】生産ライン分析システム、生産ライン分析方法、学習装置、および推論装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241129BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021068479
(22)【出願日】2021-04-14
(65)【公開番号】P2022163504
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 亮
(72)【発明者】
【氏名】玉谷 基亮
(72)【発明者】
【氏名】二村 政範
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-113965(JP,A)
【文献】特開2019-159853(JP,A)
【文献】特開2005-128721(JP,A)
【文献】特開2000-123085(JP,A)
【文献】特開2004-326481(JP,A)
【文献】特開2004-280324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産装置を含んだ生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析システムであって、
それぞれの前記生産装置から、前記生産装置ごとの動作履歴および前記生産装置ごとの装置状態を含んだ装置データを取得する取得部と、
前記装置データに基づいて前記生産装置ごとのリードタイムおよび前記生産装置ごとのサイクルタイムを算出するとともに、前記装置データの中から、前記リードタイムが第1の設定値を超過し且つ前記サイクルタイムが第2の設定値を超過した場合の装置データを第1の抽出データとして抽出するデータ判定部と、
前記第1の抽出データに基づいて、前記生産装置ごとのダウンタイムを算出するとともに、前記第1の抽出データに含まれる前記動作履歴および前記装置状態に基づいて前記生産ラインの停止要因を特定する分類部と、
前記第1の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式で表示させる指示を出力する集計部と、
前記集計部からの指示に従って、前記第1の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式で表示する表示部と、
を備える、
ことを特徴とする生産ライン分析システム。
【請求項2】
前記集計部は、前記停止要因ごとの前記ダウンタイムを積算し、
前記表示部は、積算された前記停止要因ごとの前記ダウンタイムをグラフで表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生産ライン分析システム。
【請求項3】
前記集計部は、特定の前記停止要因に対して前記生産装置ごとの前記ダウンタイムの平均値を算出するとともに、算出した前記ダウンタイムの平均値を1日の期間内で積算し、
前記表示部は、積算された前記ダウンタイムの平均値をグラフで表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生産ライン分析システム。
【請求項4】
前記装置データには、それぞれの前記生産装置に配置されたシグナルタワーの表示色と、前記装置状態を識別する識別情報とが含まれ、
前記分類部は、前記シグナルタワーの表示色および前記識別情報に基づいて、前記生産ラインの停止要因を特定する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1つに記載の生産ライン分析システム。
【請求項5】
前記データ判定部と、前記分類部とは、ネットワークによって接続されており、
前記データ判定部は、前記第1の抽出データを、前記ネットワークを介して前記分類部に送る、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の生産ライン分析システム。
【請求項6】
前分類部と、前記集計部とは、ネットワークによって接続されており、
前記分類部は、前記生産ラインの停止要因を、前記ネットワークを介して前記集計部に送る、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1つに記載の生産ライン分析システム。
【請求項7】
前記データ判定部は、前記生産装置によるワークの加工中に、前記装置データに基づいて前記生産装置ごとのリードタイムの見込み値および前記生産装置ごとのサイクルタイムの見込み値を算出するとともに、前記装置データの中から、前記リードタイムの見込み値が前記第1の設定値を超過し且つ前記サイクルタイムの見込み値が前記第2の設定値を超過した場合の装置データを第2の抽出データとして抽出し、
前記分類部は、前記第2の抽出データに基づいて、前記生産装置ごとのダウンタイムを算出するとともに、前記第2の抽出データに含まれる前記動作履歴および前記装置状態に基づいて前記生産ラインの停止要因を特定し、
前記集計部は、前記第2の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式でリアルタイム表示させる指示を出力し、
前記表示部は、前記集計部からの指示に従って、前記第2の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式でリアルタイム表示する、
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の生産ライン分析システム。
【請求項8】
前記集計部は、前記ダウンタイムの平均値と、前記生産装置の状態とを、リアルタイム表示させる指示を出力し、
前記表示部は、前記ダウンタイムの平均値と、前記生産装置の状態とを、リアルタイム表示する、
ことを特徴とする請求項7に記載の生産ライン分析システム。
【請求項9】
複数の生産装置を含んだ生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析方法であって、
それぞれの前記生産装置から、前記生産装置ごとの動作履歴および前記生産装置ごとの装置状態を含んだ装置データを取得する取得ステップと、
前記装置データに基づいて前記生産装置ごとのリードタイムおよび前記生産装置ごとのサイクルタイムを算出するとともに、前記装置データの中から、前記リードタイムが第1の設定値を超過し且つ前記サイクルタイムが第2の設定値を超過した場合の装置データを第1の抽出データとして抽出するデータ判定ステップと、
前記第1の抽出データに基づいて、前記生産装置ごとのダウンタイムを算出するとともに、前記第1の抽出データに含まれる前記動作履歴および前記装置状態に基づいて前記生産ラインの停止要因を特定する分類ステップと、
前記第1の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式で表示させる指示を出力する集計ステップと、
前記第1の抽出データに対応する前記生産ラインの停止要因を特定の形式で表示する表示ステップと、
を含む、
ことを特徴とする生産ライン分析方法。
【請求項10】
複数の生産装置を含んだ生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析システムから、それぞれの前記生産装置のサイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムと、それぞれの前記生産装置が正常状態であるか異常状態であるかを示す状態情報と、それぞれの前記生産装置の停止要因ごとのダウンタイムの平均値である平均ダウンタイムと、前記生産装置間にあるワーク仕掛量と、前記平均サイクルタイム、前記状態情報、前記平均ダウンタイム、および前記生産装置間にあるワーク仕掛量における前記生産装置の復旧優先度と、を含む学習用データを取得するデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記平均サイクルタイム、前記状態情報、前記平均ダウンタイム、および前記生産装置間にあるワーク仕掛量から前記復旧優先度を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備える、
ことを特徴とする学習装置。
【請求項11】
複数の生産装置を含んだ生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析システムから、それぞれの前記生産装置のサイクルタイムの平均値である平均サイクルタイムと、それぞれの前記生産装置が正常状態であるか異常状態であるかを示す状態情報と、それぞれの前記生産装置の停止要因ごとのダウンタイムの平均値である平均ダウンタイムと、前記生産装置間にあるワーク仕掛量とを取得するデータ取得部と、
前記平均サイクルタイム、前記状態情報、前記平均ダウンタイム、および前記生産装置間にあるワーク仕掛量における前記生産装置の復旧優先度を推論するための学習済モデルを用いて、前記データ取得部で取得した、前記平均サイクルタイム、前記状態情報、前記平均ダウンタイム、および前記生産装置間にあるワーク仕掛量から前記復旧優先度を出力する推論部と、
を備える、
ことを特徴とする推論装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析システム、生産ライン分析方法、学習装置、および推論装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生産装置が配置された生産ラインでは、生産ラインによる出来高を向上させるため、生産ラインの稼働状況を分析またはモニタリングすることが広く行われている。例えば、各生産装置から収集した稼働状態のデータを元に、稼働率、設備総合効率といった各種指標を生産装置ごとに算出して比較することで、生産ラインの出来高を低下させている要因を特定する方法がある。
【0003】
特許文献1のモニタリング装置は、各生産装置における正常稼働、異常停止、手動停止、およびワークの状況による停止のそれぞれの時刻を収集し、自らの生産装置が原因の停止時間と他の生産装置が原因の停止時間とを算出する。このモニタリング装置は、生産に割り当てられた時間を負荷時間とし、負荷時間から自らの生産装置が原因の停止時間を除いた時間を稼働時間とし、稼働時間を負荷時間で除算することで各生産装置の単体稼働率を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-112209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、各生産装置から大量の情報を収集して蓄積しておく必要がある。このため、上記特許文献1の技術では、収集時にデータ抜けが発生しないシステムの構成と、収集するデータ量に対して十分なサーバ容量の確保が必要であり、システム構築に多大なコストがかかってしまうという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、安価なシステム構成で生産ラインを分析することができる生産ライン分析システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、複数の生産装置を含んだ生産ラインの停止要因を分析する生産ライン分析システムであって、それぞれの生産装置から、生産装置ごとの動作履歴および生産装置ごとの装置状態を含んだ装置データを取得する取得部を備える。また、生産ライン分析システムは、装置データに基づいて生産装置ごとのリードタイムおよび生産装置ごとのサイクルタイムを算出するとともに、装置データの中から、リードタイムが第1の設定値を超過し且つサイクルタイムが第2の設定値を超過した場合の装置データを第1の抽出データとして抽出するデータ判定部と、第1の抽出データに基づいて、生産装置ごとのダウンタイムを算出するとともに、第1の抽出データに含まれる動作履歴および装置状態に基づいて生産ラインの停止要因を特定する分類部とを備える。また、生産ライン分析システムは、第1の抽出データに対応する生産ラインの停止要因を特定の形式で表示させる指示を出力する集計部と、集計部からの指示に従って、第1の抽出データに対応する生産ラインの停止要因を特定の形式で表示する表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる生産ライン分析システムは、安価なシステム構成で生産ラインを分析することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムを有した生産システムの構成を示す図
図2】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、装置データの要否判定処理の処理手順を示すフローチャート
図3】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止要因の分類処理の処理手順を示すフローチャート
図4】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが算出するダウンタイムを説明するための図
図5】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止要因の出力処理の処理手順を示すフローチャート
図6】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが表示させるライン停止要因の分析結果の第1例を示す図
図7】実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが表示させるライン停止要因の分析結果の第2例を示す図
図8】実施の形態2にかかる生産ライン分析システムを有した生産システムの構成を示す図
図9】実施の形態3にかかる生産ライン分析システムによる、装置データの要否判定処理の処理手順を示すフローチャート
図10】実施の形態3にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止状況のリアルタイム表示処理の処理手順を示すフローチャート
図11】実施の形態4にかかる学習装置の構成を示す図
図12】実施の形態4にかかる学習装置による学習処理の処理手順を示すフローチャート
図13】実施の形態4にかかる推論装置の構成を示す図
図14】実施の形態4にかかる推論装置による推論処理の処理手順を示すフローチャート
図15】実施の形態4に係る学習装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
図16】実施の形態4に係る学習装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示にかかる生産ライン分析システム、生産ライン分析方法、学習装置、および推論装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムを有した生産システムの構成を示す図である。生産システム1Aは、生産ライン20と、生産ライン分析システム10Aとを有している。
【0012】
生産ライン分析システム10Aは、複数の生産装置101が連結された生産ライン20の停止要因を分析するシステムである。生産ライン分析システム10Aは、生産ライン20を構成する生産装置101から、生産装置101の稼働の情報である装置データを収集し、装置データに基づいて、生産ライン20の停止要因を分析する。
【0013】
生産ライン20は、連結された複数の生産装置101によってワークを順次加工していく生産ラインの例である。生産装置101は連結されているので、生産装置101が1つでも停止すれば生産ライン20の生産能力が低下する。
【0014】
なお、図1では生産装置101が一列に一台ずつ並んだ場合を示しているが、生産装置101は、途中で分岐するように配置されても構わない。例えば、生産ライン20は、第N(Nは自然数)番目の生産装置101の後に、第(N+1)番目の生産装置101が3台配置され、第N番目の生産装置101と、第(N+1)番目の各生産装置101とがそれぞれ連結されるような構成を含んでいてもよい。なお、実施の形態1での連結は、生産装置101間がフリーフローコンベア等で物理的に連結されている場合に限らず、自走ロボット、AGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)、人手などで生産装置101間のワークの搬送がシステム的に連結される場合も含まれる。
【0015】
生産ライン分析システム10Aは、ネットワーク104と、分類部201と、集計部202と、出力部301と、複数の仮取得部102と、複数のデータ判定部103とを備えている。
【0016】
生産ライン20は、複数の生産装置101を有している。1つの生産装置101に対して1つの仮取得部102が接続され、1つの仮取得部102に1つのデータ判定部103が接続されている。図1では、生産ライン20が4つの生産装置101を有し、生産ライン分析システム10Aが、4つの仮取得部102と、4つのデータ判定部103とを備えている場合を示している。
【0017】
なお、仮取得部102は、生産装置101が備えていてもよいし、生産装置101とは別構成の装置であってもよい。また、データ判定部103は、生産装置101が備えていてもよいし、生産装置101とは別構成の装置であってもよい。
【0018】
各データ判定部103は、ネットワーク104を介して分類部201に接続されている。また、分類部201は、集計部202に接続され、集計部202は、出力部301に接続されている。
【0019】
生産装置101は、ワークに加工を行う種々の生産装置である。例えば、生産装置101は、はんだ付け装置、塗布装置、ケース組立装置、ねじ締め装置、画像検査装置などである。
【0020】
各生産装置101は、時刻の情報である時刻情報を管理している。例えば、生産装置101は、時刻情報として、生産装置101内におけるワークの加工着手時刻とワークの加工完了時刻とを示す時刻データを保持する。時刻データに含まれるワークの加工着手時刻は、ワークの加工に着手した日時を示す情報である。時刻データに含まれるワークの加工完了時刻は、ワークの加工が完了した日時を示す情報である。なお、1つめのワークの加工完了時刻から、2つめのワークの加工着手時刻までの時間は、2つめのワークに対する加工着手待ちの時間である。
【0021】
また、生産装置101は、センサのONまたはOFF、センサの測定値、駆動軸の位置、モータのトルク、撮像した画像、シグナルタワーの表示色、2D(Dimensions、次元)コードリーダの読取結果、後述する装置状態No.などの各種情報を装置データとして個々に保持する。コードリーダの読取結果の例は、ワークを識別するワークID(Identification、識別)である。実施の形態1における装置データは、時刻情報に対応付けされている。
【0022】
また、生産装置101は、通常通りの加工であるか否かを判定するために、リードタイム(L/T:Lead Time)とサイクルタイム(C/T:Cycle Time)とを個々に設定する。実施の形態1におけるリードタイムは、生産装置101によるワークの加工着手時刻とワークの加工完了時刻との差分時間である。実施の形態1におけるサイクルタイムは、生産装置101によるワークの加工完了時刻と、1つ前に加工されたワークの加工完了時刻との差分時間である。なお、リードタイムおよびサイクルタイムは、生産装置101ごとに設定できるものとする。
【0023】
仮取得部(取得部)102は、装置状態を仮取得する装置状態仮取得部である。仮取得部102は、生産装置101内で保持されている装置データを全て取得する。仮取得部102は、取得した装置データを記憶しておく記憶媒体を有している。仮取得部102は、生産装置101から時刻情報に対応付けされた装置データを収集している。このため、仮取得部102は、時刻情報に基づいた装置データの推移の情報、すなわち装置データの変遷の情報を取得できる。
【0024】
データ判定部103は、生産ライン20の停止要因であるライン停止要因の分析に使用されるデータを判定する使用データ判定部である。ライン停止要因は、生産装置101が停止した要因に対応している。したがって、以下の説明では、ライン停止要因を、生産装置101の停止要因、または単に停止要因という場合がある。
【0025】
データ判定部103は、時刻情報に対応付けされた装置データを仮取得部102から読み出す。データ判定部103は、仮取得部102が取得した装置データのうち、実際にライン停止要因を分析する際に用いる装置データを選択する演算機器である。実施の形態1における装置データの選択は、何れの期間の装置データを分析に使用するかを決定することを意味し、選択した期間内における装置データは全て分析時の使用対象となる。データ判定部103は、選択して抽出した装置データを、ネットワーク104を介して分類部201に送る。データ判定部103が選択して抽出した装置データが第1の抽出データである。
【0026】
ネットワーク104は、データ判定部103が使用すると判定した装置データを生産ライン20の上位に位置する分類部201に送信するための通信網である。図1では理解を容易にするために、ネットワーク104を実線で示しているが、データ判定部103と分類部201との間を接続するネットワーク104は、有線接続であっても無線接続であってもよい。
【0027】
分類部201は、生産ライン20の停止要因を分類する停止要因分類部である。分類部201は、データ判定部103が使用すると判定した装置データを、データ判定部103から受け付ける。分類部201は、データ判定部103から受け付けた装置データに基づいて、ダウンタイムの算出と、ライン停止要因の特定とを行った後、ダウンタイムと特定したライン停止要因とを1対1で対応付けする。
【0028】
分類部201は、ダウンタイムと、特定したライン停止要因とが対応付けされた後述の対応テーブル情報を、集計部202に送る。なお、対応テーブル情報には、生産ライン20が停止した時刻の情報(後述する停止発生時刻)が含まれていてもよい。
【0029】
集計部202は、対応テーブル情報に基づいて、ラインの停止要因を集計するライン停止要因集計部である。集計部202は、分類部201にて対応付けされたダウンタイムとライン停止要因とを集計する。
【0030】
集計部202は、例えば、ライン停止要因のダウンタイムを生産装置101ごとに算出する。また、集計部202は、ライン停止要因のダウンタイムが大きい順番に対応テーブル情報を並べ替えてもよい。すなわち、集計部202は、ダウンタイムの大きい順番でライン停止要因を並べてもよい。以下、ダウンタイムの大きい順番でライン停止要因が並び替えられた情報を、並び替え情報という。
【0031】
集計部202は、例えば、出力部301に表示させる情報として、並び替え情報を生成する。また、集計部202は、出力部301に表示させる情報として、特定のライン停止要因に関連するダウンタイムの変遷を示す変遷情報を生成してもよい。集計部202は、並び替え情報、変遷情報などの出力部301に表示させる情報を出力部301に送る。
【0032】
分類部201および集計部202は、プロセッサおよびメモリを有した処理回路によって実現される。分類部201および集計部202のハードウェア構成については後述する。
【0033】
出力部301は、モニター、タブレット、ウェアラブルデバイスといった、情報を生産現場の作業者に伝えることができる表示機器である。表示部である出力部301は、例えば、集計部202が生成したダウンタイムの並び替え情報を表示する。また、出力部301は、集計部202が生成したダウンタイムの変遷情報を表示する。
【0034】
出力部301が、並び替え情報を表示することで、作業者は、生産ライン20への影響度順にライン停止要因を把握することができる。また、出力部301が、変遷情報を表示することで、作業者は、特定のライン停止要因に関連するダウンタイムの推移を把握することができる。これにより、作業者は、生産ライン20のライン停止要因を特定することができる。
【0035】
つぎに、生産ライン分析システム10Aが、装置データの要否を判定する処理について説明する。図2は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、装置データの要否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0036】
生産装置101がワークの加工を行っている間、仮取得部102は、生産装置101内の種々の情報を含んだ装置データの変遷を時刻情報とともに収集し(ステップS10)、時刻データに対応付けされた装置データを保持しておく。
【0037】
生産装置101によるワークの加工が終了すると(ステップS20)、データ判定部103が、ワークの加工完了時刻から今回のワークの加工におけるリードタイムおよびサイクルタイムを算出する(ステップS30)。
【0038】
続いて、データ判定部103が、今回のワーク加工におけるリードタイムが、生産装置101に設定された基準のリードタイムである設定リードタイムを超過しているか否かを判定する(ステップS40)。
【0039】
今回のリードタイムが、設定リードタイムを超過している場合(ステップS40、Yes)、データ判定部103が、今回のワーク加工におけるサイクルタイムが、生産装置101に設定された基準のサイクルタイムである設定サイクルタイムを超過しているか否かを判定する(ステップS50)。設定リードタイムが第1の設定値であり、設定サイクルタイムが第2の設定値である。
【0040】
今回のサイクルタイムが、設定サイクルタイムを超過している場合(ステップS50、Yes)、データ判定部103は、生産装置101において今回のワークの加工中に何らかの停止があったと判定する。すなわち、データ判定部103は、今回のリードタイムが設定リードタイムを超過し、且つ今回のサイクルタイムが設定サイクルタイムを超過している場合、今回のワークの加工中に生産装置101が停止したと判定する。この場合、データ判定部103は、今回のサイクルタイム内の装置データ、すなわち、今回のワークの加工完了時刻と1つ前のワークの加工完了時刻との差分時間における仮取得部102の装置データを、ネットワーク104を介して分類部201に送る(ステップS60)。このように、データ判定部103は、装置データのうち、リードタイムおよびサイクルタイムが基準値を超えた場合の装置データを分類部201に送る。この後、生産装置101によって、次のワークの加工が開始される(ステップS70)。
【0041】
一方、今回のリードタイムが、設定リードタイムを超過していない場合(ステップS40、No)、データ判定部103は、今回のサイクルタイム内の装置データを分類部201に送らず破棄する(ステップS65)。この後、生産装置101によって、次のワークの加工が開始される(ステップS70)。
【0042】
同様に、今回のサイクルタイムが、設定サイクルタイムを超過していない場合(ステップS50、No)、データ判定部103は、今回のサイクルタイム内の装置データを分類部201に送らず破棄する(ステップS65)。この後、生産装置101によって、次のワークの加工が開始される(ステップS70)。
【0043】
このようにして、データ判定部103は、ライン停止要因の分析に必要となる装置データのみを分類部201に送る。生産ライン分析システム10Aおよび生産装置101は、生産装置101が次のワークの加工を開始すると、ステップS10の処理に戻り、ステップS10からS70の処理を繰り返す。
【0044】
なお、生産装置101は、ワークの加工が終了した後、すなわちステップS20の処理後であれば、何れのタイミングで次のワークの加工を開始してもよい。すなわち、生産装置101による次のワークの加工と、生産ライン分析システム10AによるステップS30からS65の処理とは、並行して実行されてもよい。また、データ判定部103は、ステップS40の処理およびステップS50の処理の何れを先に実行してもよい。
【0045】
つぎに、生産ライン分析システム10Aが、装置データに基づいて、ライン停止要因を分類する処理について説明する。図3は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止要因の分類処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0046】
分類部201は、データ判定部103から送られてくる装置データを受け付ける(ステップS110)。分類部201は、装置データに基づいて、ダウンタイムを算出する(ステップS120)。
【0047】
ここで、分類部201が算出するダウンタイムについて説明する。図4は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが算出するダウンタイムを説明するための図である。図4の横軸は時間軸である。図4に示される情報は、分類部201がデータ判定部103から受け付ける装置データに含まれる情報である。図4では、第M(Mは自然数)番目のワークの加工を前のワークの加工といい、第(M+1)番目のワークの加工を次のワークの加工という。
【0048】
図4では、前のワークの加工完了時刻を時刻T1で示し、次のワークの加工完了時刻を時刻T4で示している。時刻T1から時刻T4までの時間が、今回のサイクルタイムである。
【0049】
生産装置101は、前のワークの加工完了時刻(時刻T1)から時刻T2まで、次のワークの加工着手を待つ。加工着手待ちは、生産装置101と連結された前工程に該当する生産装置101からワークが流れてこないために発生する生産装置101の停止時間を表している。加工着手待ちの後、ワークが生産装置101に搬送された時刻T2になると、生産装置101が次のワークの加工を開始し、時刻T4で次のワークの加工が完了する。時刻T3から時刻T4までの時間を設定サイクルタイムとすれば、その時間を超過した時刻T2から時刻T3までの時間がダウンタイムである。
【0050】
分類部201は、今回のワークにおけるサイクルタイムから、設定サイクルタイムおよび加工着手待ちの時間を減算することで、今回のワークにおけるダウンタイムを算出する。
【0051】
分類部201は、生産装置101の設定サイクルタイムを超過した時間から加工着手待ちの時間を除外することによって生産装置101に起因する停止時間を算出し、この算出した停止時間をダウンタイムと定める。したがって、分類部201は、ダウンタイムが負の値となった場合は加工着手待ちの影響による装置停止であるので装置データを破棄し、ダウンタイムが正の値となった場合のみ、次の処理へ移行する。
【0052】
具体的には、分類部201は、ダウンタイムが正の値となっているか否かを判定する(ステップS130)。ダウンタイムが正の値となっている場合(ステップS130、Yes)、分類部201は、装置データを分析し、ダウンタイムが発生する原因となったライン停止要因を特定する(ステップS140)。
【0053】
ここで、分類部201による、ライン停止要因の特定方法の一例について説明する。なお、ここで説明するライン停止要因の特定方法は、実施の形態1における一例であり、ライン停止要因の特定方法は、個々の生産装置101の装置仕様に応じて、好ましい方法が採用される。
【0054】
実施の形態1では、分類部201が、生産装置101に備えられたシグナルタワーの動作履歴と、シグナルタワーが動作した際の生産装置101の装置状態に基づいて、ライン停止要因を特定する。シグナルタワーの動作履歴および生産装置101の装置状態は、装置データに含まれている情報である。生産装置101の装置状態は、装置状態を示す識別情報、例えば、装置状態の番号である装置状態No.(番号)によって示される。
【0055】
分類部201は、第1段階として、シグナルタワーの動作履歴に基づいて、シグナルタワーの表示色状態を抽出する。これにより、分類部201は、ダウンタイムの原因であるライン停止要因が発生した際の装置状態を特定する。例えば、装置異常による停止であれば、シグナルタワーの色が正常生産である緑色の点灯から、異常を示す赤色の点灯に変化するので、分類部201は、ダウンタイムの原因が装置異常によるものと判定できる。他にも、作業者呼出による停止であれば、シグナルタワーの色が正常生産である緑色の点灯から黄色の点灯に変化するので、分類部201は、ダウンタイムの原因が作業者呼出、つまり作業者の対応遅れであると分かる。仮に、ライン停止が発生した際にシグナルタワーの表示色に変化がない場合であっても、分類部201は、正常生産中である緑色の点灯時に起きたダウンタイムであると判定できる。
【0056】
分類部201は、第2段階として、第1段階で特定した装置状態における装置状態No.を装置データから抽出する。例えば、装置異常によるライン停止であれば、装置状態No.は、エラーの種類ごとに設定された番号である。他にも、作業者呼出であれば、装置状態No.は、部材供給、部材排出、副資材交換の種類ごとに設定された番号である。正常生産中であれば、装置状態No.は、指定された時間を超過したサイクル動作の番号である。実施の形態1では、分類部201が装置状態No.に基づいてライン停止要因を分類するので、分類部201は、容易にライン停止要因を分類することが可能となる。
【0057】
以上のようにして、分類部201が生産装置101のライン停止要因を特定した後、分類部201は、ライン停止要因とダウンタイムとの対応付けを行う(ステップS150)。この際、分類部201は、出力時のグラフによる分析を容易にするため、ライン停止要因の発生時刻である停止発生時刻も併せて対応付けしておくことが望ましい。
【0058】
この場合、分類部201は、生産装置101が停止した時刻を示す停止発生時刻と、装置状態と、装置状態No.と、生産装置101が停止した期間を示すダウンタイムとを対応付けする。そして、分類部201は、対応付けした情報を一行に並べて格納したデータテーブルを生成する。例えば、分類部201は、データテーブルに第1列から第4列を設けておく。第1列には、停止発生時刻を示す「2020/10/5 11:49:37」、第2列には、装置状態を示す「装置異常」、第3列には、装置状態No.を示す「11」、第4列には、ダウンタイムを停止秒数によって示す「178」などが格納される。分類部201は、このようにして対応付けしたデータである対応テーブル情報を、集計部202に送る(ステップS160)。
【0059】
分類部201は、ダウインタイムが正の値となっていない場合(ステップS130、No)、データ判定部103から受け付けた装置データを破棄する(ステップS170)。生産ライン分析システム10Aは、ステップS160またはステップS170の後、ステップS110の処理に戻り、ステップS110からS170の処理を繰り返す。
【0060】
つぎに、生産ライン分析システム10Aが、ライン停止要因を出力する処理について説明する。図5は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止要因の出力処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0061】
集計部202は、分類部201から送られてきた対応テーブル情報を保管する。すなわち、集計部202は、ダウンタイムと対応付けされたライン停止要因を保管する(ステップS210)。例えば、集計部202は、行と列からなるリスト形式で生成された対応テーブル情報を保管する。
【0062】
分類部201は、特定のタイミングで、保管しておいた対応テーブル情報を出力部301に送る(ステップS220)。集計部202は、対応テーブル情報内のライン停止要因の情報を特定の形式で表示させる指示を出力部301に送る。なお、集計部202は、対応テーブル情報をそのまま出力部301に送る場合に限らず、対応テーブル情報を用いて算出した特定の情報、すなわちライン停止要因の情報を出力部301に送ってもよい。
【0063】
集計部202は、例えば、ダウンタイムを各生産装置101のライン停止要因ごとに積算し、積算した各生産装置101のライン停止要因ごとのダウンタイムを出力部301に表示させる。
【0064】
また、集計部202は、特定のライン停止要因に対応するダウンタイムの1日ごとの推移を出力部301に表示させてもよい。この場合、集計部202は、特定のライン停止要因について、各生産装置101のダウンタイムの平均値である平均ダウンタイムを日単位で算出する。そして、集計部202は、1日に含まれる平均ダウンタイムを積算し、積算した1日ごとの平均ダウンタイムを出力部301に表示させる。
【0065】
出力部301は、ライン停止要因の情報を、集計部202からの指示に従って特定の形式で表示する(ステップS230)。生産ライン分析システム10Aは、ステップS230の処理の後、ステップS210の処理に戻り、ステップS210からS230の処理を繰り返す。
【0066】
図6は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが表示させるライン停止要因の分析結果の第1例を示す図である。図6のグラフは、特定の生産装置101におけるライン停止要因とダウンタイムとの関係を示している。
【0067】
出力部301は、ライン停止要因の情報を、例えば、棒グラフとして表示する。図6の横軸は、ライン停止要因を示し、縦軸は、累積されたダウンタイムである累積ダウンタイムを示している。図6に示す要因XのX(Xは、33,5など)は、ライン停止要因を識別する情報である。
【0068】
集計部202は、ダウンタイムを各生産装置101のライン停止要因ごとに積算することで、累積ダウンタイムを算出する。集計部202は、積算した各生産装置101のライン停止要因ごとのダウンタイムを出力部301に表示させる。
【0069】
ここでの出力部301は、ダウンタイムの長い順番で、ライン停止要因の情報を表示する。すなわち、出力部301は、生産ライン20の能力低下の原因となったライン停止要因を、ダウンタイム、すなわち生産ライン20の停止時間が長い順番で表示する。
【0070】
図7は、実施の形態1にかかる生産ライン分析システムが表示させるライン停止要因の分析結果の第2例を示す図である。図7のグラフは、ライン停止要因の1日ごとの変遷を示している。出力部301は、ライン停止要因の変遷を、例えば、折れ線グラフとして表示する。図7の横軸は、生産ライン20が停止した日を示し、縦軸は、累積された平均ダウンタイムである累積平均ダウンタイムを示している。図7では、ライン停止要因の識別番号が「23」である要因23の変遷、すなわちトレンドを示している。
【0071】
集計部202は、特定のライン停止要因について、各生産装置101のダウンタイムの平均値である平均ダウンタイムを1日の期間内で積算し、積算した各生産装置101の1日ごとの平均ダウンタイムを出力部301に表示させる。
【0072】
このように実施の形態1によれば、生産ライン分析システム10Aが、設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過した場合の装置データのみを分析に用いるので、生産中の全てのデータを分析する必要がない。このため、生産ライン分析システム10Aにおけるネットワーク負荷、および総データ量を削減できるので、生産ライン分析システム10Aのシステム構築に必要となる費用を抑制できる。したがって、生産ライン分析システム10Aは、安価なシステム構成で生産ライン20を分析することができる。
【0073】
また、生産ライン分析システム10Aが、生産ライン20の停止時間であるダウンタイムと、生産ライン20のライン停止要因とを対応付けするので、各生産装置101における停止要因を、生産ライン20への影響度順に比較することができる。これにより、作業者は、的確な順序で生産ライン20の改善活動を進めることができる。
【0074】
実施の形態2.
つぎに、図8を用いて実施の形態2について説明する。実施の形態2では、1つのデータ判定部103に対して1つの分類部201が接続され、各分類部201は、ネットワーク104を介して集計部202に接続される。
【0075】
図8は、実施の形態2にかかる生産ライン分析システムを有した生産システムの構成を示す図である。図8の各構成要素のうち図1に示す実施の形態1の生産システム1Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0076】
生産システム1Bは、生産ライン分析システム10Bと、生産ライン20とを有している。生産ライン分析システム10Bは、生産ライン分析システム10Aと同様に生産ライン20に接続されている。生産ライン分析システム10Bは、ネットワーク104と、複数の分類部201と、集計部202と、出力部301と、複数の仮取得部102と、複数のデータ判定部103とを備えている。このように、生産ライン分析システム10Bは、生産ライン分析システム10Aと比較して、複数の分類部201を備えている。なお、分類部201は、生産装置101が備えていてもよいし、生産装置101とは別構成の装置であってもよい。
【0077】
生産ライン分析システム10Bでは、1つのデータ判定部103に対して1つの分類部201が接続されている。そして、各分類部201が、ネットワーク104に接続されている。また、集計部202がネットワーク104に接続されている。
【0078】
生産ライン分析システム10Bは、生産ライン分析システム10Aと同様の手順で生産ライン20のライン停止要因を特定することができる。生産ライン分析システム10Bでは、ネットワーク104を経由して集計部202に送られる情報は、特定されたライン停止要因、ダウンタイムなどに限定される。
【0079】
このように、実施の形態2によれば、ネットワーク104を経由して集計部202に送られる情報が一部の数値データに限定されるので、生産ライン分析システム10Bを安定化することができる。加えて、生産ライン20の停止要因の分析を生産装置101側で実行できるので、生産ライン分析システム10Bは、生産装置101といった生産設備の経時変化を考慮した複雑な分析処理であっても実行可能となる。これにより、生産ライン分析システム10Bは、生産ライン20の停止要因を詳細に特定することができる。
【0080】
実施の形態3.
つぎに、図9および図10を用いて実施の形態3について説明する。実施の形態3では、ワークの加工中であっても設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過した時点でラインの停止要因の分析が行われ、停止要因が特定される。
【0081】
実施の形態3の生産ライン分析システム10Aは、実施の形態1の生産ライン分析システム10Aと同じ構成である。実施の形態3の生産ライン分析システム10Aは、実施の形態1の生産ライン分析システム10Aと比較して、装置データの要否を判定する処理の処理手順が異なる。
【0082】
図9は、実施の形態3にかかる生産ライン分析システムによる、装置データの要否判定処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図9における処理のうち、図2で説明した処理と同様の処理については、その説明を省略する。
【0083】
生産装置101がワークの加工を行っている間、仮取得部102は、生産装置101内の種々の情報を含んだ装置データの変遷を時刻情報とともに収集し(ステップS310)、時刻データに対応付けされた装置データを保持しておく。
【0084】
生産装置101によるワークの加工中に、データ判定部103が、今回のワークの加工におけるリードタイムおよびサイクルタイムの見込み値を算出する(ステップS320)。リードタイムの見込み値は、現時刻とワークの加工着手時間の差分時間であり、サイクルタイムの見込み値は、現時刻と1つ前に加工されたワークの加工完了時刻の差分時間である。データ判定部103は、ワークの加工中、常時見込み値を算出し続ける。
【0085】
データ判定部103は、今回のワーク加工におけるリードタイムの見込み値が、設定リードタイムを超過しているか否かを判定する(ステップS330)。
【0086】
今回のリードタイムの見込み値が、設定リードタイムを超過していない場合(ステップS330、No)、データ判定部103は、ステップS320の処理に戻る。
【0087】
今回のリードタイムの見込み値が、設定リードタイムを超過している場合(ステップS330、Yes)、データ判定部103は、今回のワーク加工におけるサイクルタイムの見込み値が、設定サイクルタイムを超過しているか否かを判定する(ステップS340)。
【0088】
今回のサイクルタイムの見込み値が、設定サイクルタイムを超過していない場合(ステップS340、No)、データ判定部103は、ステップS320の処理に戻る。
【0089】
今回のサイクルタイムの見込み値が、設定サイクルタイムを超過している場合(ステップS340、Yes)、データ判定部103は、生産装置101において今回のワークの加工中に何らかの停止があると判定する。すなわち、データ判定部103は、今回のリードタイムの見込み値が設定リードタイムを超過し、且つ今回のサイクルタイムの見込み値が設定サイクルタイムを超過している場合、今回のワークの加工中に生産装置101が停止したと判定する。この場合、データ判定部103は、設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過した時点における仮取得部102の装置データを分類部201に送る(ステップS350)。すなわち、データ判定部103は、設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過した時点における装置データを選択して抽出し、抽出した装置データを、ネットワーク104を介して分類部201に送る。データ判定部103が選択して抽出した装置データが第2の抽出データである。
【0090】
この後、生産装置101による今回のワークの加工が終了すると(ステップS360)、データ判定部103は、リードタイムおよびサイクルタイムを分類部201に送る(ステップS370)。この後、生産装置101によって、次のワークの加工が開始される(ステップS380)。生産ライン分析システム10Aおよび生産装置101は、ステップS310の処理に戻り、ステップS310からS380の処理を繰り返す。
【0091】
なお、生産装置101は、ステップS360の後であれば、何れのタイミングで次のワークの加工を開始してもよい。すなわち、生産装置101による次のワークの加工と、データ判定部103によるステップS370の処理とは、並行して実行されてもよい。このように、実施の形態3では、ワークの加工中であっても、データ判定部103が、設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過した時点における装置データを分類部201に送る。
【0092】
図10は、実施の形態3にかかる生産ライン分析システムによる、ライン停止状況のリアルタイム表示処理の処理手順を示すフローチャートである。実施の形態3で説明するライン停止状況は、生産装置101の状態が「異常」状態であるか、「正常」状態であるかを示す情報、すなわち状態情報である。
【0093】
分類部201は、データ判定部103が見込み値に基づいて選択した装置データを、データ判定部103から受け付ける(ステップS410)。分類部201は、装置データを分析し、ダウンタイムが発生する原因となったライン停止要因を特定する(ステップS420)。
【0094】
分類部201は、ライン停止要因の平均ダウンタイムを、集計部202から取得する(ステップS430)。分類部201は、特定したライン停止要因と、ライン停止要因の平均ダウンタイムとを、対応付けして集計部202に送る。
【0095】
集計部202は、現在の生産装置101の状態が「異常」状態であることを示す情報を、出力部301にリアルタイム出力させる。また、集計部202は、「異常」状態のライン停止要因および平均ダウンタイムとして、分類部201から受け付けた、ライン停止要因と、ライン停止要因の平均ダウンタイムとを出力部301にリアルタイム出力させる。すなわち、集計部202は、現在の生産装置101の「異常」状態と、ライン停止要因と、平均ダウンタイムとを出力部301にリアルタイムで表示させる(ステップS440)。
【0096】
集計部202は、ワークの加工が完了し、ダウンタイムが確定した時点で現在の生産装置101の状態が「正常」状態であることを示す情報を出力部301に表示させる(ステップS450)。すなわち、集計部202は、現在の生産装置101の状態を示す情報を、「異常」状態から「正常」状態に戻す。この場合も、実施の形態1と同様に、生産ライン分析システム10Aは、図3および図5で説明したフローチャートの処理手順に従って、確定したダウンタイムおよびライン停止要因を集計結果として出力部301が表示する。
【0097】
この後、生産ライン分析システム10Aおよび生産装置101は、ステップS410の処理に戻り、ステップS410からS450の処理を繰り返す。なお、生産ライン分析システム10Bが、図9および図10で説明した処理を実行してもよい。
【0098】
このように実施の形態3では、生産ライン分析システム10Aが、ワークの加工完了を待たずにライン停止要因と、生産装置101の停止状況と、生産装置101の見込み停止時間である平均ダウンタイムとを、リアルタイムに出力部301が表示している。これにより、作業者は、ライン停止要因と、生産装置101の停止状況と、平均ダウンタイムとを、把握することができるので、生産現場での生産装置101の復旧作業の順序を適正化できる。
【0099】
実施の形態4.
つぎに、図11から図16を用いて実施の形態4について説明する。実施の形態4では、実施の形態3で説明したようにリアルタイムで生産装置101の停止状況を表示した場合の、復旧優先度を機械学習する。復旧優先度は、作業者が生産装置101を復旧させる処理の優先度を示す情報である。
【0100】
<学習フェーズ>
図11は、実施の形態4にかかる学習装置の構成を示す図である。学習装置50は、実施の形態3で説明した生産ライン分析システム10Aが「異常」状態である場合の復旧優先度を学習するコンピュータである。
【0101】
学習装置50は、データ取得部51と、モデル生成部52とを備えている。データ取得部51は、行動データと、状態データとを学習用データとして取得する。データ取得部51は、作業者などから行動データを取得し、生産ライン分析システム10Aから状態データを取得する。
【0102】
データ取得部51が取得する行動データは、生産装置101の復旧優先度である。データ取得部51が取得する状態データは、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101のライン停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量である。
【0103】
各生産装置101の停止状況は、生産装置101が「正常」状態であるか「異常」状態であるかの装置状態だけでなく、設定リードタイムおよび設定サイクルタイムを超過してから何秒が経過したかといった時間情報も含んでいる。「異常」状態である場合の装置状態は、シグナルタワーの表示色の状態、装置状態No.などによって停止要因が示されている。
【0104】
モデル生成部52は、生産装置101の復旧優先度と、各生産装置101の平均サイクルタイムと、各生産装置101の停止状況と、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイムと、各生産装置101間にあるワーク仕掛量とを含む学習用データに基づいて、入力された状態における生産装置101の復旧優先度を学習する。すなわち、モデル生成部52は、生産ライン20の生産ライン分析システム10Aにおける、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量から、これらが入力された場合の生産装置101の復旧優先度を推論する学習済モデルを生成する。入力された状態における生産装置101の復旧優先度は、入力された状態データに対応する、生産装置101の適切な復旧優先度である。
【0105】
モデル生成部52が用いる学習アルゴリズムは、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、モデル生成部52が、学習アルゴリズムに強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合について説明する。強化学習では、ある環境内におけるエージェント(行動主体)が、現在の状態(環境のパラメータ)を観測し、取るべき行動を決定する。エージェントの行動により環境が動的に変化し、エージェントには環境の変化に応じて報酬が与えられる。エージェントはこれを繰り返し、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られる行動方針を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-learning)やTD学習(TD-learning)が知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式は、以下の式(1)で表される。
【0106】
【数1】
【0107】
式(1)において、stは時刻tにおける環境の状態を表し、atは時刻tにおける行動を表す。行動atにより、状態はst+1に変わる。rt+1はその状態の変化によってもらえる報酬を表し、γは割引率を表し、αは学習係数を表す。なお、γは0<γ≦1、αは0<α≦1の範囲とする。生産装置101の復旧優先度が行動atとなり、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量が状態stとなり、時刻tの状態stにおける最良の行動atを学習する。
【0108】
式(1)で表される更新式は、時刻t+1における最もQ値の高い行動aの行動価値Qが、時刻tにおいて実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、式(1)で表される更新式は、時刻tにおける行動aの行動価値Qを、時刻t+1における最良の行動価値に近づけるように、行動価値関数Q(s,a)を更新する。それにより、或る環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播していくようになる。
【0109】
上記のように、強化学習によって学習済モデルを生成する場合、モデル生成部52は、報酬計算部53と、関数更新部54と、を備えている。
【0110】
報酬計算部53は、生産装置101の復旧優先度、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量に基づいて報酬を計算する。報酬計算部53は、生産ライン20の出来高に基づいて、報酬rを計算する。例えば、生産ライン20の出来高が増加の場合には報酬rを増大させ(例えば「1」の報酬を与える。)、他方、生産ライン20の出来高が減少の場合には報酬rを低減させる(例えば「-1」の報酬を与える。)。なお、生産ライン20の出来高としては、生産ライン20の最終工程にあたる生産装置101の出来高を採用する以外にも、生産ライン20のネック工程にあたる生産装置101の出来高を採用するなど、自由に決定できる。すなわち、生産ライン20の出来高として、何れの生産装置101における出来高を採用するかは、各生産現場の運用形態に応じて適切なものが選択されればよい。
【0111】
関数更新部54は、報酬計算部53によって計算される報酬に従って、入力された状態における生産装置101の復旧優先度を決定するための関数を更新し、学習済モデルとして学習済モデル記憶部70に出力する。例えばQ学習の場合、関数更新部54は、式(1)で表される行動価値関数Q(st,at)を、入力された状態における生産装置101の復旧優先度を算出するための関数として用いる。
【0112】
モデル生成部52は、以上のような学習を繰り返し実行する。学習済モデル記憶部70は、関数更新部54によって更新された行動価値関数Q(st,at)、すなわち、学習済モデルを記憶する。
【0113】
つぎに、図12を用いて、学習装置50が復旧優先度を学習する処理について説明する。図12は、実施の形態4にかかる学習装置による学習処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0114】
データ取得部51は、生産装置101の復旧優先度、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を、学習用データとして取得する(ステップS510)。
【0115】
モデル生成部52は、生産装置101の復旧優先度、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量に基づいて報酬を計算する(ステップS520)。具体的には、報酬計算部53は、生産装置101の復旧優先度、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を取得し、予め定められた生産ライン20の出来高に基づいて報酬を増加させるか、または報酬を減じるかを判断する。
【0116】
報酬計算部53は、報酬を増大させると判断した場合に(ステップS520、生産ライン20の出来高が増加)報酬を増やす(ステップS530)。すなわち、報酬計算部53は、生産ライン20の出来高が増加したことで、報酬増大基準を満たす場合に、報酬を増大させる。
【0117】
一方、報酬計算部53は、報酬を減少させると判断した場合に(ステップS520、生産ライン20の出来高が減少)、報酬を減らす(ステップS540)。すなわち、報酬計算部53は、生産ライン20の出来高が減少したことで、報酬減少基準を満たす場合に、報酬を減少させる。
【0118】
関数更新部54は、報酬計算部53によって計算された報酬に基づいて、学習済モデル記憶部70が記憶する式(1)で表される行動価値関数Q(st,at)を更新する(ステップS550)。
【0119】
学習装置50は、以上のステップS510からS550までのステップを繰り返し実行し、生成された行動価値関数Q(st,at)を学習済モデルとして、学習済モデル記憶部70に記憶させる。
【0120】
実施の形態4にかかる学習装置50は、学習済モデルを学習装置50の外部に設けられた学習済モデル記憶部70に記憶させる場合について説明したが、学習済モデル記憶部70は、学習装置50の内部に配置されていてもよい。
【0121】
<活用フェーズ>
図13は、実施の形態4にかかる推論装置の構成を示す図である。推論装置60は、実施の形態3で説明した生産ライン分析システム10Aが「異常」状態である場合の復旧優先度を推論するコンピュータである。
【0122】
推論装置60は、データ取得部61と、推論部62とを備えている。データ取得部61は、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を取得する。
【0123】
推論部62は、学習済モデル記憶部70に記憶されている学習済モデルを利用して、入力された状態における生産装置101の復旧優先度を推論する。すなわち、推論部62は、この学習済モデルにデータ取得部61が取得した各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を入力することで、これらの入力に適した、生産装置101の復旧優先度を推論することができる。
【0124】
なお、実施の形態4では、推論装置60が、生産ライン20に接続された生産ライン分析システム10Aに対してモデル生成部52が学習した学習済モデルを用いて、生産装置101の復旧優先度を出力するものとして説明したが、推論装置60は、他の生産ラインに接続された他の生産ライン分析システムに対して学習された学習済モデルを取得してもよい。この場合、推論装置60は、他の生産ラインに接続された他の生産ライン分析システムに対して学習された学習済モデルを用いて、生産装置101の復旧優先度を出力する。
【0125】
つぎに、図14を用いて、推論装置60が復旧優先度を推論する処理について説明する。図14は、実施の形態4にかかる推論装置による推論処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0126】
データ取得部61は、各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を、推論用データとして取得する(ステップS610)。
【0127】
推論部62は、学習済モデル記憶部70で記憶されている学習済モデルに各生産装置101の平均サイクルタイム、各生産装置101の停止状況、各生産装置101の停止要因ごとの平均ダウンタイム、および各生産装置101間にあるワーク仕掛量を入力し(ステップS620)、入力した情報に対応する復旧優先度を得る。推論部62は、得られた復旧優先度を生産ライン分析システム10Aの出力部301に出力する(ステップS630)。
【0128】
生産ライン分析システム10Aの出力部301は、推論部62から送られてきた復旧優先度を表示することで、生産現場の作業者に生産装置101の復旧優先度を通知する。
【0129】
この後、生産現場の作業者は、出力部301に表示された生産装置101の復旧優先度を確認しながら生産装置101の復旧作業を行う(ステップS640)。
【0130】
上述した学習装置50および推論装置60が生産ライン分析システム10Aに適用されることにより、推論装置60は、各生産装置101の停止状況に応じて、生産ライン20の出来高を大きくする復旧優先度を自動的に提示できる。そして、生産現場の作業者が、生産装置101の復旧優先度に従って生産装置101の復旧作業を行うことにより、各ライン停止要因によるダウンタイムによってもたらされる生産ライン20の出来高の低下を抑制することができる。
【0131】
なお、実施の形態4では、推論部62が用いる学習アルゴリズムに強化学習を適用した場合について説明したが、学習アルゴリズムは強化学習に限られるものではない。推論部62が用いる学習アルゴリズムについては、強化学習以外にも、教師あり学習、教師なし学習、または半教師あり学習等を適用することも可能である。
【0132】
また、モデル生成部52に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもできる。また、モデル生成部52は、他の公知の方法、例えばニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
【0133】
なお、学習装置50および推論装置60は、例えば、ネットワーク104などのネットワークを介して生産ライン分析システム10Aに接続された、生産ライン分析システム10Aとは別個の装置であってもよい。また、学習装置50および推論装置60は、生産ライン分析システム10Aに内蔵されていてもよい。さらに、学習装置50および推論装置60は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0134】
また、モデル生成部52は、複数の生産ライン分析システム10Aから取得される学習用データを用いて、入力された状態における生産装置101の復旧優先度を学習するようにしてもよい。なお、モデル生成部52は、同一のエリアで使用される複数の生産ライン分析システム10Aから学習用データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の生産ライン分析システム10Aから収集される学習用データを利用して入力された生産装置101の復旧優先度を学習してもよい。また、学習用データを収集する生産ライン分析システム10Aを途中で対象に追加してもよいし、対象から除去することも可能である。さらに、ある生産ライン分析システム10Aに対して復旧優先度を学習した学習装置50を、これとは別の生産ライン分析システム10Aに適用し、当該別の生産ライン分析システム10Aに対して復旧優先度を再学習して更新するようにしてもよい。なお、生産ライン分析システム10Bに対して、学習装置50および推論装置60を適用してもよい。
【0135】
ここで、学習装置50および推論装置60のハードウェア構成について説明する。学習装置50および推論装置60は同様のハードウェア構成を有しているので、ここでは学習装置50のハードウェア構成について説明する。
【0136】
学習装置50は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用回路などの専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0137】
図15は、実施の形態4に係る学習装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。図15に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、学習装置50の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を学習装置50に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。上記プログラムは、学習処理を学習装置50に実行させるプログラムであるとも言える。
【0138】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。プロセッサ91は、PC(Personal Computer)、またはPLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)に含まれている。PLCは、シーケンサとも呼ばれる。
【0139】
また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0140】
図16は、実施の形態4に係る学習装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。図16に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0141】
なお、仮取得部102およびデータ判定部103も、図15および図16で説明したハードウェア構成を有している。また、分類部201および集計部202も、図15および図16で説明したハードウェア構成を有している。
【0142】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0143】
1A,1B 生産システム、10A,10B 生産ライン分析システム、20 生産ライン、50 学習装置、51 データ取得部、52 モデル生成部、53 報酬計算部、54 関数更新部、60 推論装置、61 データ取得部、62 推論部、70 学習済モデル記憶部、90,93 処理回路、91 プロセッサ、92 メモリ、101 生産装置、102 仮取得部、103 データ判定部、104 ネットワーク、201 分類部、202 集計部、301 出力部。
図1
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