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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】二重容器用注出キャップ及び二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/32 20060101AFI20241129BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20241129BHJP
   B65D 77/06 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B65D47/32 210
B65D47/06
B65D77/06 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021077595
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171144
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019513(JP,A)
【文献】特開2014-125267(JP,A)
【文献】特開2021-008299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 77/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する収容空間を有する内層体と、該内層体との相互間に内部空間を区画するとともに該内部空間に通じる通気口を有する外層体とを備える容器本体に装着され、該外層体を押圧することによって該収容空間の内容液を注出口から注出させる二重容器用注出キャップであって、
前記通気口を覆って前記外層体に装着され、外気を導入する外気導入口と前記注出口とを有するとともに、該外層体との間に該外気導入口と前記通気口とを通じさせる通気路を有するキャップ本体と、
前記収容空間を閉鎖する隔壁と、該隔壁に設けられ該収容空間と前記注出口とを通じさせる内容液用連通口とを有する中栓と、
前記キャップ本体及び前記中栓の少なくとも一方に保持される基部と、該基部に弾性変形可能に支持されて前記内容液用連通口から前記注出口に向かう内容液の流通は許容する一方、該注出口から該内容液用連通口に向かう内容液の流通は遮断する注出弁とを有する逆止弁と、を備え、
前記逆止弁は、一端部が前記基部に一体的に連結する弾性変形可能な連結片と、該連結片の他端部が一体的に連結して前記外気導入口の外縁部に対して当接及び離反可能であって、前記外気導入口から前記通気口に向かう空気の流通は許容する一方、該通気口から該外気導入口に向かう空気の流通は遮断する弁体と、を有し、
前記弁体は、筒壁と、該筒壁の内側に設けられる閉鎖壁とを有し、
前記隔壁は、該筒壁の内側に位置して該弁体が離反する際に該弁体を案内するガイド部を有する二重容器用注出キャップ。
【請求項2】
前記弁体は、前記外気導入口の外縁部に当接する部分が球面形状である請求項1に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体及び前記中栓の何れか一方は、該キャップ本体及び該中栓の何れか他方に設けた第一凹部に挿入され、該キャップ本体に対する該中栓の周方向位置を規定する第一凸部を有する請求項1又は2に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項4】
前記中栓及び前記逆止弁の何れか一方は、該中栓及び該逆止弁の何れか他方に設けた第二凹部に挿入され、該中栓に対する該逆止弁の周方向位置を規定する第二凸部を有する請求項1~の何れか一項に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項5】
前記容器本体と請求項1~の何れか一項に記載の二重容器用注出キャップとで構成される二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を収容する内層体と内層体を内側に収める外層体とを備える容器本体に装着され、外層体への押圧に伴って内容液を注出させる二重容器用注出キャップ、及び容器本体にこの注出キャップを装着した二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内容液を収容する容器本体に注出キャップを装着した容器として、例えば特許文献1、2に示されているような、内層体と外層体で構成した容器本体を用いた二重容器(デラミ容器、積層剥離容器ともいう)が使用されている。この種の外層体は可撓性を有していて、また表裏を貫く貫通穴(通気口)を通して内層体との相互間に形成される内部空間に空気を取り込むことができるよう構成されている。そして注出キャップには、内部空間から外界へ空気が漏れるのを防ぐ一方、内部空間が減圧されると外界から内部空間へ空気の導入が許容される空気弁が設けられている。
【0003】
このような二重容器によれば、外層体を押圧することによって内部空間が加圧され、これによって収容空間の圧力が高まって内容液を注出させることができる。また外層体への押圧を解除すれば、外層体の復元に伴って内部空間が減圧し、これによって通気口から内部空間へ空気が導入されて内層体のみを減容変形させることができる。すなわち、内容液が少なくなっても容器の自立性が維持されるという利点がある。また、外気と置換することなく内容液を注出させることができるので、収容した内容液の品質劣化が生じにくいという利点もある。このためこの種の容器は、例えば醤油、ソース、味醂、料理酒などの調味料やシャンプー、リンス、液体石鹸、化粧水などの化粧料を収容するのに好適なものとして多用されつつある。
【0004】
特許文献1、2に示されているように従来の二重容器用注出キャップは、外層体に装着されるキャップ本体を備えていて、キャップ本体には、外層体の通気口に通じる外気導入口が設けられている。また空気弁は、弾性変形可能な薄板状に形作られていて、キャップ本体の内側に設けられている。ここで空気弁の外縁部は、外気導入口を下方から覆うようにしてキャップ本体の裏面に当接している。このため、通常時は通気口と外気導入口との間での空気の流通が遮断される一方、内部空間が減圧状態になると空気弁の外縁部がキャップ本体の裏面から離反するため、外気導入口から通気口に向けて空気を流通させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-31932号公報
【文献】特開2014-24569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内部空間に導入される空気の量や流速などによっては、キャップ本体の裏面から離反した空気弁が振動して音鳴りが発生することがある。このため特許文献2では、空気弁の外縁部に対して径方向外側から接触して空気弁の振動を抑える凸部を設けることで、音鳴りの発生を抑えている。
【0007】
一方、空気弁の音鳴りは、これが振動しやすい薄板状であることが一つの要因であるといえる。このため、空気弁の形状を変更することによっても音鳴りの発生を抑えられる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、空気弁に起因する音鳴りの発生を抑えることが可能な二重容器用注出キャップ、及び二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内容液を収容する収容空間を有する内層体と、該内層体との相互間に内部空間を区画するとともに該内部空間に通じる通気口を有する外層体とを備える容器本体に装着され、該外層体を押圧することによって該収容空間の内容液を注出口から注出させる二重容器用注出キャップであって、
前記通気口を覆って前記外層体に装着され、外気を導入する外気導入口と前記注出口とを有するとともに、該外層体との間に該外気導入口と前記通気口とを通じさせる通気路を有するキャップ本体と、
前記収容空間を閉鎖する隔壁と、該隔壁に設けられ該収容空間と前記注出口とを通じさせる内容液用連通口とを有する中栓と、
前記キャップ本体及び前記中栓の少なくとも一方に保持される基部と、該基部に弾性変形可能に支持されて前記内容液用連通口から前記注出口に向かう内容液の流通は許容する一方、該注出口から該内容液用連通口に向かう内容液の流通は遮断する注出弁とを有する逆止弁と、を備え、
前記逆止弁は、一端部が前記基部に一体的に連結する弾性変形可能な連結片と、該連結片の他端部が一体的に連結して前記外気導入口の外縁部に対して当接及び離反可能であって、前記外気導入口から前記通気口に向かう空気の流通は許容する一方、該通気口から該外気導入口に向かう空気の流通は遮断する弁体と、を有し、
前記弁体は、筒壁と、該筒壁の内側に設けられる閉鎖壁とを有し、
前記隔壁は、該筒壁の内側に位置して該弁体が離反する際に該弁体を案内するガイド部を有する二重容器用注出キャップである。
【0010】
前記弁体は、前記外気導入口の外縁部に当接する部分が球面形状であることが好ましい。
【0013】
前記キャップ本体及び前記中栓の何れか一方は、該キャップ本体及び該中栓の何れか他方に設けた第一凹部に挿入され、該キャップ本体に対する該中栓の周方向位置を規定する第一凸部を有することが好ましい。
【0014】
前記中栓及び前記逆止弁の何れか一方は、該中栓及び該逆止弁の何れか他方に設けた第二凹部に挿入され、該中栓に対する該逆止弁の周方向位置を規定する第二凸部を有することが好ましい。
【0015】
また本発明は、前記容器本体と上述した何れかの二重容器用注出キャップとで構成される二重容器でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二重容器用注出キャップは、一端部が逆止弁の基部に一体的に連結する弾性変形可能な連結片と、この連結片の他端部が一体的に連結して外気導入口の外縁部に対して当接及び離反可能であって、外気導入口から通気口に向かう空気の流通は許容する一方、通気口から外気導入口に向かう空気の流通は遮断する弁体とを備えている。すなわち、このような連結片と弁体によって、空気弁としての機能を果たすことができる。また振動しやすい薄板状でもないため、音鳴りの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に従う二重容器の一実施形態を示した側面視での部分拡大断面図である。
図2図1に示した逆止弁に関し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図3図1に示した注出キャップ、中栓、及び逆止弁の位置関係について示した図である。
図4】(a)は図3に示した矢印Aに沿う矢視図であり、(b)は図3に示した矢印Bに沿う矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1を参照して、本発明に従う二重容器の一実施形態について説明する。なお本明細書等における上下方向とは、図示した軸線O(後述する容器本体1の軸線)に沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0019】
本実施形態の二重容器は、容器本体1(内層体2と外層体3で構成される)、注出キャップ4(中栓5、逆止弁6、移動弁7、キャップ本体8で構成される)、及び蓋体9を備えている。
【0020】
内層体2は、減容変形可能であって、その内側に内容液を収容可能な収容空間Sを備えている。
【0021】
外層体3は、軸線Oに沿って延在する円筒状の口部3aを備えている。口部3aの外周面には、環状になるシール部3bと、シール部3bの上方に位置する雄ねじ部3cが設けられている。また口部3aは、シール部3bの上方において口部3aを径方向に貫通する通気口3dを備えている。更に口部3aは、通気口3dが開口する部位において、上下方向に延在して雄ねじ部3cを分断する切欠き3eを備えている。図示は省略するが、口部3aの下方には中空状であって可撓性を有する胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられていて、外層体3はボトル状の形態をなしている。
【0022】
また内層体2と外層体3との相互間には、通気口3dに通じる内部空間Nが形成されている。
【0023】
本実施形態における内層体2と外層体3は、何れもポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)で形成されている。ポリエチレンテレフタレート樹脂を採用することによって、軽量で透明性が高く、またリサイクル性の高い容器とすることができる。本実施形態の容器本体1を形成するにあたっては、内層体2を形成するためのポリエチレンテレフタレート樹脂製の内プリフォームが、外層体3を形成するためのポリエチレンテレフタレート樹脂製の外プリフォームの内側に組み込まれたプリフォーム組立体を準備する。そしてプリフォーム組立体を二軸延伸ブロー成形することによって、ボトル状の容器本体1を形成する。
【0024】
なお本発明に係る容器本体は、上記のものに限定されず、例えば内層体2を形成する合成樹脂素材と外層体3を形成する合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、押出ブロー成形することによって得られるものでもよい。
【0025】
また内層体2と外層体3を形成するための合成樹脂も種々採用可能である。内層体2として採用されるものとしては、例えば、ナイロン樹脂(PA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)等が挙げられる。また外層体3として採用されるものとしては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)をはじめとするポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリプロピレン樹脂(PP)、ナイロン樹脂(PA)等が挙げられる。なお内層体2と外層体3は、単一の合成樹脂によってそれぞれが単層構造となるように形成されるものでもよいし、複数の合成樹脂を重ね合わせてそれぞれが積層構造となるように形成されるものでもよいし、一方が単層構造で他方が積層構造になるものでもよい。また、図示は省略するが、内層体2と外層体3との間に、縦方向に延在して内層体2と外層体3とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。
【0026】
中栓5は、合成樹脂(例えば高密度ポリエチレン樹脂(HDPE))で形成されている。本実施形態の中栓5は、口部3aの上方に位置して収容空間Sを閉鎖する隔壁5aを備えている。隔壁5aには、これを貫通する開口(内容液用連通口5b)と、全体として円筒状をなすとともに、上部に対して下部を縮径させた筒状壁5cが設けられている。
【0027】
隔壁5aは、内容液用連通口5b及び筒状壁5cの径方向外側に、上方を開放した環状凹部5dを備えていて、環状凹部5dの径方向外側には、下方に向けて延在して内層体2と液密に当接する環状のシール壁5eを備えている。更に、隔壁5aの外縁部には、上方に向けて起立する外側環状壁5fが設けられている。そして、図1図3に示すように隔壁5aと外側環状壁5fとが連結する部位には、隔壁5aにおける径方向外側部分と外側環状壁5fにおける下方部分を一体的に切り欠くようにして形成され、隔壁5aと外側環状壁5fの両方を貫通する空気用連通口5gが設けられている。本実施形態の空気用連通口5gは、図3に示すように周方向に間隔をあけて合計3個設けられている。
【0028】
また外側環状壁5fは、図3、及び図4(a)に示すように、これを上方から下方に向けて切り欠くように形成された凹部(第一凹部5h)を備えている。なお第一凹部5hは、同形状になるものが周方向に間隔をあけて3つ設けられているが、周方向の間隔は不均等になっている。すなわち、図3に示した後述する弁体6gを基準として説明すると、軸線Oを中心として弁体6gが位置するところを0°とする場合、一つ目の第一凹部5hは0°のところに設けられていて、二つ目の第一凹部5hは130°のところに設けられていて、三つ目の第一凹部5hは250°のところに設けられている。
【0029】
そして隔壁5aの上面において外側環状壁5fの内側には、図3に示すように周方向に沿って間隔をあけて延在する円弧状の内側位置決め壁5jが設けられている。隣り合う内側位置決め壁5jの間には、図4(b)に示すように凹部(第二凹部5k)が設けられている。第二凹部5kは周方向に間隔をあけて3つ設けられているが、周方向の間隔は不均等になっている。すなわち、図3に示すように軸線Oを中心として弁体6gが位置するところを0°とする場合、一つ目の第二凹部5kは50°のところに設けられていて、二つ目の第二凹部5kは180°のところに設けられていて、三つ目の第二凹部5kは295°のところに設けられている。なお内側位置決め壁5jは、二つ目の第二凹部5kが設けられた部位から径方向外側に向けて延在する延長壁5mを備えている。
【0030】
更に中栓5は、図1に示すように、環状凹部5dと外側環状壁5fの間に位置して隔壁5aの上面から上方に向けて延在するガイド部5nを備えている。本実施形態のガイド部5nは環状である。
【0031】
逆止弁6は、図1に示すように、内容液の流れを規制するための注出弁6aと、空気の流れを規制するための空気弁6bを有している。逆止弁6は、例えばゴムやエラストマー、ポリプロピレン樹脂(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)等で形成される。
【0032】
注出弁6aは、図1図2に示すように軸線Oを中心とする円環状であって且つ下端部が環状凹部5dによって支持される基部6cを備えている。基部6cの径方向内側には、円板状をなしていて、図1に示すように内容液用連通口5b及び筒状壁5cの上方に位置し、隔壁5aに着座して内容液用連通口5bを閉鎖する一方、筒状壁5cの一部は解放させたままとする注出弁本体部6dが設けられている。基部6cと注出弁本体部6dの間には、平面視で円弧状をなしていて、一端部が基部6cの内周面に一体的に連結するとともに他端部が注出弁本体部6dの外縁部に一体的に連結する薄板状の注出弁用連結片6eが設けられている。本実施形態の注出弁用連結片6eは、周方向に間隔をあけて合計3つ設けられている。すなわち本実施形態の注出弁6aは、所謂3点弁と称するものである。なお注出弁用連結片6eの数は適宜変更可能であって、注出弁6aは所謂1点弁と称するものでもよい。
【0033】
空気弁6bは、一端部が基部6cの外周面に一体的に連結する薄板状の連結片(空気弁用連結片6f)を備えていて、空気弁用連結片6fの他端部には、弁体6gが設けられている。本実施形態の空気弁用連結片6fは、図2に示すように円弧状をなしていて、その一端部の幅は、その他の部位よりも広くなっている。また図3に示すように軸線Oを中心として弁体6gが位置するところを0°とする場合、空気弁用連結片6fの一端部(一端部の幅方向中央部)は、基部6cの外周面に対して約110°のところで一体に連結している。ここで本実施形態の空気弁用連結片6fは、図示したように弁体6gを挟んで対向するように一対設けられている。このように、空気弁用連結片6fを比較的長く延在させて基部6cと弁体6gとを接続することによって、空気弁用連結片6fが弾性変形する際の力が過大になるのを防ぐことができる。また弁体6gに対して一対の空気弁用連結片6fが対称になるように設けられているため、弁体6gを偏りなく移動させることができる。
【0034】
なお空気弁用連結片6fは上記のものに限定されず、例えば基部6cと弁体6gとを直線状につなぐものでもよい。
【0035】
図1に示すように本実施形態の弁体6gは、円筒状になる筒壁6hの上端部に半球殻状の閉鎖壁6jを一体的に設けた有蓋筒状になるものである。弁体6gは、図1に示すようにガイド部5nの直上に設けられていて、筒壁6hは、ガイド部5nよりも一回り大きな外径で形作られている。このような弁体6gに対して空気弁用連結片6fは、図2(b)に示すように筒壁6hの外周面に一体に連結している。
【0036】
なお弁体6gは中実状になるものでもよいが、有蓋筒状とすることによって軽量化を図ることができる。また弁体6gは有蓋筒状になるものに限られず、筒壁6hの下端部に閉鎖壁6jを設けて有底筒状になるものでもよいし、筒壁6hの上下方向中間部に閉鎖壁6jを設けてもよい。なお閉鎖壁6jは、平板状でもよい。また弁体6gは、全体的に多角柱状になるものでもよいし、錐体状になるものでもよい。
【0037】
更に逆止弁6は、図3に示すように基部6cの外周面から径方向外側に向けて突出する凸部(第二凸部6k)を備えている。第二凸部6kは、図3図4(b)に示すように第二凹部5kに対応する位置に合計3個設けられていて、それぞれが第二凹部5kに嵌まるように構成されている。これにより逆止弁6は、中栓5に対して周方向に所定の向きで取り付けられる。なお、延長壁5mが設けられている第二凹部5kに嵌まる第二凸部6kは、他の第二凸部6kよりも径方向外側に長く延在している。
【0038】
移動弁7は、本実施形態では球状をなすものであって、筒状壁5c内に配置され、容器本体1の姿勢変更や収容空間Sの内圧に応じて筒状壁5cの内周面に沿って移動する。移動弁7は、図1に示すように容器本体1を正立姿勢にした状態においては、筒状壁5cの縮径した下部に着座して、筒状壁5cと収容空間Sとを非連通状態にしている。
【0039】
キャップ本体8は、本実施形態では合成樹脂で形成されていて、逆止弁6の上方に位置する天壁8aと、天壁8aの外縁部から下方に向けて延在して、外側環状壁5f、内層体2の上部、及び口部3aを取り囲む外周壁8bとを備えている。外周壁8bの内周面には、雄ねじ部3cに適合する雌ねじ部8cが設けられている。
【0040】
天壁8aには、天壁8aを貫く孔の縁部から上方に向けて延在し、その上部開口を内容液の注出口8dとする注出筒8eが設けられている。天壁8aの下面には、下方を開放するとともに基部6cの上部を支持する環状凹部8fが設けられている。環状凹部8fの径方向外側において弁体6gの直上には、天壁8aを貫通する外気導入口8gが設けられている。そして外気導入口8gの外縁部には、天壁8aの下面から下方に向けて延在する円環状の弁座部8hが設けられている。本実施形態の弁座部8hは、その下端部において、下方から上方に向かって縮径する円錐面形状の傾斜部8jを備えていて、傾斜部8jは、弁体6gの閉鎖壁6jに対して全周に亘って当接している。そして図1に示すように天壁8aの外縁部には、蓋体9を保持する爪部8kが設けられている。
【0041】
またキャップ本体8は、図1に示すように外周壁8bの内側において、通気口3dに通じる隙間(通気路T)を備えている。なお、図1に示すように外周壁8bの下部内周面は、シール部3bに当接していて、外周壁8bとシール部3bとの間は気密に維持されている。すなわち通気路Tは、外周壁8bとシール部3bで下方が閉鎖されている。また通気路Tは、中栓5に設けた空気用連通口5gを介して隔壁5aの上方と連通している。なお弁体6gの閉鎖壁6jは、通常時は図示したように傾斜部8jに当接していて、通気路Tは外気導入口8gと非連通となっている。
【0042】
更にキャップ本体8は、図1に示すように外周壁8bの内側上部に凸部(第一凸部8m)を備えている。第一凸部8mは、図3に示すように第一凹部5hに対応する位置に合計3個設けられていて、それぞれが第一凹部5hに嵌まるように構成されている。これにより中栓5は、キャップ本体8に対して周方向に所定の向きで取り付けられる。
【0043】
蓋体9は、本実施形態では合成樹脂で形成されていて、天壁8aの上方に位置する頂壁9aと、頂壁9aに一体に連結する蓋体外周壁9bとを備えている。頂壁9aの下面には、注出筒8eの内側に挿入されるとともに注出筒8eの内面と気密に当接するシール筒9cが設けられている。蓋体外周壁9bの内周面には、爪部8kに係合する係合凸部9dが設けられている。また蓋体外周壁9bの外周面には、キャップ本体8の外周壁8bに一体に連結するヒンジ部9eが設けられている。なお、本実施形態の蓋体9はキャップ本体8と一体に連結するものであるが、キャップ本体8とは別異に設け、ねじやアンダーカットによってキャップ本体8に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0044】
このような構成になる二重容器おいては、外層体3の胴部を押圧することによって内部空間Nが加圧され、これによって収容空間Sの圧力が高まるため、収容空間Sの内容液は、注出弁本体部6dを上昇させつつ、内容液用連通口5bから空気弁用連結片6fの周囲の隙間を通って基部6cの内側に流れ込み、注出筒8eの内部を通って注出口8dから注出される。ここで、上述した通気路Tは、弁体6gの閉鎖壁6jが弁座部8hの傾斜部8jに全周に亘って当接しているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。そして筒状壁5c内の移動弁7は、内容液を注出させるべく容器本体1を傾倒姿勢に変位させた状態において、自重や筒状壁5cの下方側の開口から流入する内容液によって、注出弁本体部6d側(図1に破線で示す位置)に移動している。
【0045】
その後、外層体3への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nの容積が増えることから内部空間Nは減圧状態になる。すなわち、外界との圧力差によって弁体6gが弁座部8hから離反するように空気弁用連結片6fが弾性変形して、閉鎖壁6jと傾斜部8jとの間に隙間ができるため、外気導入口8gから空気が導入される。そして外気導入口8gから導入された空気は、通気路Tを通って内部空間Nへ導入される。これにより内層体2を減容変形させたまま、外層体3を復元させることができる。
【0046】
上述したように従来の二重容器用注出キャップにおいては、薄板状の空気弁を使用していたため、外気導入口8gからの空気が通過する際にそれ自身が振動しやすい状況にあったが、本実施形態では比較的厚みのある弁体6gの周辺を空気が通過するため、音鳴りに起因する振動を抑えることができる。
【0047】
また外層体3への押圧を解除した際は、収容空間Sの圧力が元の状態に戻って注出弁本体部6dが隔壁5aの上面に着座するため、内容液用連通口5bから収容空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。ここで、内容液の注出を終えて容器本体1を元の正立姿勢に変位させた際、移動弁7は、それ自身の自重や収容空間S内の圧力低下によって下方に移動する。これによって筒状壁5cの上方内側には、移動弁7が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容液を注出筒8eから筒状壁5c内へ引き戻すことができ(サックバック機能)、注出筒8eからの液だれを有効に防止することができる。なお、下方に移動した移動弁7は、筒状壁5cの縮径した下部に着座するので、筒状壁5cから収容空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。
【0048】
なお、弁体6gが上下動する際、種々の要因(例えば内部空間Nに導入される空気の量や流速の他、各部材の個体差)によって移動中にその姿勢が変わる可能性があるが、本実施形態では筒壁6hの内側に位置するガイド部5nを設けているため、弁体6gが上下動する際にガイド部5nが弁体6gを所定の向き及び位置に案内する。このため、弁座部8hに対して弁体6gを安定的に当接、離反させることができる。また弁体6gの閉鎖壁6jの外面は球面形状であって、これが当接する弁座部8hの傾斜部8jは円錐面形状であるため、弁体6gの姿勢が多少傾くことがあっても、閉鎖壁6jと傾斜部8jとの当接具合は変わることがなく、空気弁6bの機能を安定させることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上述した実施形態の効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0050】
例えば本実施形態においては、外気導入口8gの外縁部に設けた円環状の弁座部8hに対して弁体6gを当接、離反させるように構成したが、例えば弁座部8hを廃止して天壁8aの下面に対して弁体6gを当接、離反させるようにしてもよい。また本実施形態では、中栓5に第一凹部5hを設けるとともにキャップ本体8に第一凸部8mを設けたが、これらを入れ替えて、キャップ本体8に第一凹部5hを設けるとともに中栓5に第一凸部8mを設けてもよい。また本実施形態においては、中栓5に第二凹部5kを設けるとともに逆止弁6に第二凸部6kを設けたが、これらを入れ替えて、中栓5に第二凸部6kを設けるとともに逆止弁6に第二凹部5kを設けてもよい。また本実施形態では、第一凹部5h、第一凸部8m、第二凸部6k、第二凹部5kを複数設ける際の周方向の間隔を不均等にすることで、中栓5、逆止弁6、キャップ本体8を組み立てる際に周方向の位置が一意に定まるようにしたが、例えば一つの第一凹部5hの幅を他の第一凹部5hよりも広くする(対応する第一凸部8mも同様に一つだけ幅を広くする)ことによっても、同様の効果を得ることができる。また基部6cは、本実施形態では環状凹部5d、8fによって中栓5とキャップ本体8に保持されるようにしたが、何れか一方に保持されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:容器本体
2:内層体
3:外層体
3a:口部
3b:シール部
3c:雄ねじ部
3d:通気口
3e:切欠き
4:注出キャップ(二重容器用注出キャップ)
5:中栓
5a:隔壁
5b:内容液用連通口
5c:筒状壁
5d:環状凹部
5e:シール壁
5f:外側環状壁
5g:空気用連通口
5h:第一凹部
5j:内側位置決め壁
5k:第二凹部
5m:延長壁
5n:ガイド部
6:逆止弁
6a:注出弁
6b:空気弁
6c:基部
6d:注出弁本体部
6e:注出弁用連結片
6f:空気弁用連結片(連結片)
6g:弁体
6h:筒壁
6j:閉鎖壁
6k:第二凸部
7:移動弁
8:キャップ本体
8a:天壁
8b:外周壁
8c:雌ねじ部
8d:注出口
8e:注出筒
8f:環状凹部
8g:外気導入口
8h:弁座部
8j:傾斜部
8k:爪部
8m:第一凸部
9:蓋体
9a:頂壁
9b:蓋体外周壁
9c:シール筒
9d:係合凸部
9e:ヒンジ部
N:内部空間
O:軸線
S:収容空間
T:通気路
図1
図2
図3
図4