IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特許7595518ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法
<>
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図1
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図2
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図3
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図4
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図5
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図6
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図7
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図8
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図9
  • 特許-ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20241129BHJP
   B66B 3/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 S
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021085176
(22)【出願日】2021-05-20
(65)【公開番号】P2022178403
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 豊和
(72)【発明者】
【氏名】出野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高星 知和
(72)【発明者】
【氏名】助川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】藪内 達志
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215692(JP,A)
【文献】特開2017-186126(JP,A)
【文献】特開2008-254885(JP,A)
【文献】特開2007-302388(JP,A)
【文献】特開2007-001734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0102185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの制御対象で用いられるソフトウェアを格納するソフトウェア格納部と、
前記エレベーターが設置されるビルのビル管理情報が格納されるビル管理情報格納部と、
前記制御対象に転送される前記ソフトウェアへの変更点が大きい場合に、前記ビル又は前記エレベーターへの作業時間が長いほど前記ビル又は前記エレベーターに対する作業の作業内容に高い優先度を割り当て、前記ソフトウェアへの変更点が小さい場合に、前記作業時間が短いほど前記作業内容に対して高い前記優先度を割り当て、前記ビル管理情報格納部から取得する前記ビル管理情報に基づき、前記制御対象で用いられる前記ソフトウェアを、前記ソフトウェア格納部から前記制御対象に提供されるソフトウェアに切り替える切り替えタイミングとして、前記ビル管理情報に含まれる前記ビルの管理スケジュールで決定される前記優先度、及び前記制御対象における前記ソフトウェアの書き換えに要する時間に基づいて、前記切り替えタイミングを生成し、前記管理スケジュールに含まれる前記作業内容及び作業スケジュール、又は前記ビルの不使用時間で規定される前記優先度と、前記ソフトウェアに対する変更点の大小に応じた前記優先度とを基に、前記優先度が高い順に複数の前記切り替えタイミングの候補を生成し、複数の前記切り替えタイミングの候補を前記ビルの管理者に出力し、前記ビルの管理者に前記切り替えタイミングの承認を依頼する切り替えタイミング生成部と、
を備える
ソフトウェア書き換えシステム。
【請求項2】
前記ビルの管理者に承認された前記切り替えタイミングに合わせて前記ソフトウェア格納部から供給される前記ソフトウェアを前記制御対象に転送し、前記制御対象の前記ソフトウェアを書き換えた後、前記制御対象が用いる前記ソフトウェアを、書き換えた前記ソフトウェアに切り替えさせる制御部を備える
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項3】
前記切り替えタイミング生成部は、複数の前記切り替えタイミングの候補から前記ビルの管理者により承認された前記切り替えタイミングを前記ソフトウェア格納部に出力する
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項4】
前記優先度は、第1期間ごとに保守点検される前記エレベーターの保守点検日、不定期に行われる前記エレベーターのリニューアル工事、不定期に行われる前記ビルの停電日、前記第1期間より短い第2期間ごとに点検される前記エレベーターの点検作業の順に低くなる
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項5】
前記エレベーターから取得する利用者情報を解析して、前記エレベーターの利用頻度が少ない時間帯を求める利用者情報解析部を備え、
前記切り替えタイミング生成部は、前記切り替えタイミングより前の前記エレベーターの利用頻度が少ない時間帯に前記制御部に前記ソフトウェアを転送させる
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記エレベーターの利用頻度が少ない時間帯に、分割した前記ソフトウェアを順に転送し、分割した全ての前記ソフトウェアを転送した後、前記切り替えタイミングに合わせて前記制御対象に前記ソフトウェアを切り替えさせる
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記ソフトウェア格納部から前記制御対象に提供される前記ソフトウェアよりデータ量が少ないテストソフトウェアを前記制御対象に転送し、前記テストソフトウェアが正しく書き換えられた場合に、前記ソフトウェアを前記制御対象に転送する
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項8】
前記管理スケジュールを管理するビル管理部を備え、
前記ビル管理情報格納部は、前記ビル管理部から取得した前記管理スケジュールを格納し、
前記切り替えタイミング生成部は、前記ビル管理部又は前記ビル管理情報格納部から取得した前記管理スケジュールに基づいて前記切り替えタイミングを生成する
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項9】
前記制御対象は、前記制御部から転送された前記ソフトウェアを格納する制御対象側ソフトウェア格納部と、
前記制御対象側ソフトウェア格納部に前記ソフトウェアが格納された後、前記制御部からの指令により、前記制御対象で用いられる前記ソフトウェアを、前記制御対象側ソフトウェア格納部から読み出した前記ソフトウェアに切り替えるソフトウェア切り替え部と、を備える
請求項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項10】
前記ソフトウェアには、前記制御対象で実行可能なプログラム、前記プログラムで用いられるデータ、及びパラメータのうち、少なくとも一つが含まれる
請求項1~のいずれか一項に記載のソフトウェア書き換えシステム。
【請求項11】
エレベーターの制御対象に転送され、前記制御対象で用いられるソフトウェアへの変更点が大きい場合に、前記エレベーターが設置されるビル又は前記エレベーターへの作業時間が長いほど前記ビル又は前記エレベーターに対する作業の作業内容に高い優先度を割り当て、前記ソフトウェアへの変更点が小さい場合に、前記作業時間が短いほど前記作業内容に対して高い前記優先度を割り当て、前記ビルのビル管理情報が格納されるビル管理情報格納部から取得する前記ビル管理情報に基づき、前記制御対象で用いられる前記ソフトウェアを、ソフトウェア格納部から前記制御対象に提供されるソフトウェアに切り替える切り替えタイミングとして、前記ビル管理情報に含まれる前記ビルの管理スケジュールで決定される前記優先度、及び前記制御対象における前記ソフトウェアの書き換えに要する時間に基づいて、前記切り替えタイミングを生成し、前記管理スケジュールに含まれる前記作業内容及び作業スケジュール、又は前記ビルの不使用時間で規定される前記優先度と、前記ソフトウェアに対する変更点の大小に応じた前記優先度とを基に、前記優先度が高い順に複数の前記切り替えタイミングの候補を生成し、複数の前記切り替えタイミングの候補を前記ビルの管理者に出力し、前記ビルの管理者に前記切り替えタイミングの承認を依頼する処理を含む
ソフトウェア書き換え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エレベーターで用いられるソフトウェアのソフトウェア書き換えシステム及びソフトウェア書き換え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターで利用されるプログラムは、エレベーターを遠隔監視する監視センターから配信されるプログラムで書き換えられていた。エレベーターに配信されるプログラムは、ファイルサイズが大きく、プログラムを書き換えるための時間も必要である。そこで、エレベーターの保守員がプログラムの書き換え日時を決めることが多かった。例えば、保守員の経験に基づいて、利用者が少ない日時をプログラムの書き換え日時として決定することがあった。
【0003】
プログラムの書き換え時には、エレベーターを止める必要があるので、利用者がエレベーターを利用できない時間が発生する。このため、エレベーターの管理者や利用者から、プログラムの切り替えに伴うエレベーターの不稼働時間を最小限にしてほしいという要望があった。
【0004】
特許文献1には、「かごが無人である(かごに利用者が居ない)と判断した場合に、制御マイコンの記憶部に記憶された仕様に関するデータを、仕様情報に対応して書き換えることができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-193146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、ある瞬間にかご内が無人であることを検知できるが、かご内が無人になる時間が、プログラムの書き換え時間より長いかは判別できない。また、偶然、かご内が無人になったため、プログラムの書き換えが開始されても、書き換え途中でエレベーターに来た利用者は、プログラムの書き換えが終わるまでエレベーターを利用できなかった。
【0007】
また、プログラムの書き換え失敗が発生すると、ビルの管理者は、エレベーターの保守員の派遣を要請したり、エレベーターの不稼働時間の延長を利用者に知らせたりする対応が必要となる。しかし、ビルの管理者が不在であれば、これらの対応が行われず、エレベーターの不稼働時間が長くなってしまう。このようにビルの管理者が、プログラムの書き換えがいつ行われるかを管理できなければ、不測の事態に対応が遅れてしまう。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、利用者に不便をきたさないタイミングで制御対象のソフトウェアを書き換えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るソフトウェア書き換えシステムは、エレベーターの制御対象で用いられるソフトウェアを格納するソフトウェア格納部と、エレベーターが設置されるビルのビル管理情報が格納されるビル管理情報格納部と、制御対象に転送されるソフトウェアへの変更点が大きい場合に、ビル又はエレベーターへの作業時間が長いほどビル又はエレベーターに対する作業の作業内容に高い優先度を割り当て、ソフトウェアへの変更点が小さい場合に、作業時間が短いほど作業内容に対して高い優先度を割り当て、ビル管理情報格納部から取得するビル管理情報に基づき、制御対象で用いられるソフトウェアを、ソフトウェア格納部から制御対象に提供されるソフトウェアに切り替える切り替えタイミングとして、ビル管理情報に含まれるビルの管理スケジュールで決定される優先度、及び制御対象におけるソフトウェアの書き換えに要する時間に基づいて、切り替えタイミングを生成し、管理スケジュールに含まれる作業内容及び作業スケジュール、又はビルの不使用時間で規定される優先度と、ソフトウェアに対する変更点の大小に応じた優先度とを基に、優先度が高い順に複数の切り替えタイミングの候補を生成し、複数の切り替えタイミングの候補をビルの管理者に出力し、ビルの管理者に切り替えタイミングの承認を依頼する切り替えタイミング生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、利用者に不便をきたさないタイミングで制御対象のソフトウェアを書き換えられるようにすることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステムの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るホール端末部の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る計算機のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る切り替えタイミング生成部の処理の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る切り替えタイミング生成部が切り替え優先度を提案する処理の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るスケジューラの登録項目に設定される優先度の例を示す一覧表である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るプログラム変更点の量、並びに作業種及び作業時間に応じて優先度が変わる様子を示す図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る号機制御部のホール端末制御部が行うプログラム切り替え処理の例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施の形態に係るホール端末部が行う処理の例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステム1の構成例を示すブロック図である。
ソフトウェア書き換えシステム1は、保守管理部2、号機制御部3、ビル管理部4及びエレベーター10を備える。以下、エレベーター10で用いられるソフトウェアの一例としてプログラムを書き換え及び切り替える処理について説明する。ソフトウェアには、かご部5、ホール端末部6又はモータ部7(制御対象の一例)で実行可能なプログラムの他、このプログラムで使用される各種のパラメータ、及びデータ(例えば、閾値)の少なくとも一つが含まれる。そして、ソフトウェアの書き換え及び切り替えの処理には、プログラムの書き換え及び切り替えの処理の他、パラメータ又はデータの書き換え及び切り替えの処理が含まれる。
【0014】
保守管理部2は、エレベーター10の動作を遠隔監視する監視センターに設けられる。保守管理部2は、図1に示したエレベーター10だけでなく、他のビルに設置された他のエレベーター10(不図示)の動作も遠隔監視している。この保守管理部2は、エレベーター10を保守するための保守情報を管理する。保守情報には、例えば、エレベーター10の運行状況の他、エレベーター10に配信されるプログラムがある。例えば、保守管理部2は、エレベーター10のホール端末部6(制御対象の一例)で用いられるプログラムを号機制御部3に配信する。
【0015】
ビル管理部4は、例えば、エレベーター10が設置されるビルの管理室等に設置される情報処理端末である。ビル管理部4は、ビルの管理スケジュール等を含むビル管理情報を管理する。ビルの管理スケジュールには、停電日、メンテナンス日等が記録される。ビル管理部4は、号機制御部3の要求に従って、号機制御部3にビルの管理スケジュールを渡す。また、ビル管理部4は、切り替えタイミング生成部31が生成する、プログラムの切り替えタイミング(書き換え及び切り替え日時を含む)を取得する。ビルの管理者は、ビル管理部4を通じて、プログラムの切り替えタイミングの承認又は不承認を行うことができる。そして、ビル管理部4は、ビルの管理者が、プログラムの切り替えタイミングを承認し、又は承認しなかったことを示す情報を切り替えタイミング生成部31に出力する。
【0016】
なお、ビル管理部4の機能は、クラウドに設けられたカレンダー機能を含むスケジューラで実現されてもよい。例えば、号機制御部3は、クラウドのスケジューラにログインID及びパスワードを入力して、所定期間内におけるビルの管理スケジュールを取得することもできる。
【0017】
エレベーター10は、かご部5、ホール端末部6及びモータ部7を備える。かご部5、ホール端末部6及びモータ部7は、本実施の形態に係る制御対象の一例である。
かご部5は、ビルに設けられた不図示の昇降路を昇降する。
ホール端末部6は、ビルのホール階に設けられ、利用者がホール呼びを登録するために用いられる。
モータ部7は、かご部5及び錘りに取り付けられたロープを巻回して、かご部5を昇降する。
【0018】
号機制御部3は、切り替えタイミング生成部31、利用者情報解析部32、ビル管理情報格納部33、プログラム格納部34、かご制御部35、ホール端末制御部36、及びモータ制御部37を備える。かご制御部35、ホール端末制御部36、及びモータ制御部37は、本実施の形態に係る制御部の一例である。
【0019】
利用者情報解析部32は、エレベーター10から取得する利用者情報を解析して、エレベーター10の利用頻度が少ない時間帯を求める。利用者情報解析部32は、かご制御部35から取得するかご情報(例えば、時間毎のかご内の利用者有無)、及びホール端末制御部36から取得するホール端末情報(例えば、時間毎のホール内の利用者有無)を利用者情報として解析する。ここで、利用者情報解析部32は、ホール端末制御部36を介してアップロードされた、ホール端末部6周辺のセンサーが取得した情報のログを利用者情報として解析し、利用者がエレベーター10を利用する時間帯を把握することができる。利用者情報解析部32による利用者情報の解析結果(例えば、エレベーター10の利用頻度が少ない時間帯)は、切り替えタイミング生成部31に出力される。
【0020】
ビル管理情報格納部33は、任意のタイミングでビル管理部4から取得した、エレベーター10が設置されるビルのビル管理情報を格納する。ビル管理情報として、主にビルの管理スケジュールがある。ビル管理情報格納部33が予めビル管理情報を格納することで、例えば、ビル管理部4の機能を実行する管理室のPCが停止したり、ビル管理部4との通信が切断したりする場合であっても、切り替えタイミング生成部31が、ビル管理情報格納部33に予め格納されたビル管理情報を用いて、プログラムの切り替えタイミングを生成することが可能となる。
【0021】
ただし、号機制御部3は、ビル管理情報格納部33を備えない構成としてもよい。この場合、切り替えタイミング生成部31が切り替えタイミングを生成する時に、ビル管理部4から直接、ビル管理情報を取得してもよい。
【0022】
プログラム格納部34は、かご部5、ホール端末部6及びモータ部7等のエレベーター10で用いられるプログラム(ソフトウェア)を格納するソフトウェア格納部の一例として用いられる。プログラム格納部34には、エレベーター10で用いられるプログラムに付随するパラメータ、データ等が格納されてもよい。本実施の形態において、切り替えタイミング生成部31により切り替えタイミングが生成されるプログラムは、ホール端末部6で用いられるプログラムとする。ただし、切り替えタイミングが生成されるプログラムは、かご部5又はモータ部7で用いられるプログラムとしてもよい。また、切り替えタイミング生成部31は、エレベーター10で用いられるプログラムに付随するパラメータ、データ等の切り替えタイミングを生成してもよい。
【0023】
プログラム格納部34に格納されるプログラムは、保守管理部2から号機制御部3に配信され、プログラム格納部34に格納される。ホール端末制御部36は、切り替えタイミング生成部31が生成し、ビルの管理者に承認された切り替えタイミングに合わせてプログラム格納部34から供給されるプログラムをホール端末部6(制御対象の一例)に転送する。そして、ホール端末制御部36は、ホール端末部6のプログラムを書き換えた後、ホール端末部6が用いるプログラムを、書き換えたプログラムに切り替えさせる。このため、プログラム格納部34からホール端末制御部36には、エレベーター10が利用されていない時間帯にプログラムが転送される。
【0024】
かご制御部35は、かご部5のかご動作を制御する。かご動作として、例えば、ホール階におけるかご部5の到着を知らせるランタンの点灯、かご部5内の行先階ボタンの登録に応じた行先呼びの設定、かご部5のかごドアの開閉制御等がある。また、かご部5内には、かご内カメラが設けられており、かご制御部35は、かご内カメラから取得するかご内映像に基づいて、かご部5への利用者の乗車人数を求め、乗車人数を利用者情報解析部32に出力する。なお、かご制御部35は、かご部5の床に設置された重量センサーから取得する重量変化の情報を利用者情報解析部32に出力してもよい。利用者情報解析部32は、乗車人数、又は重量変化の情報に基づいて、かご部5内に利用者が乗車していない時間を把握する。
【0025】
また、かご制御部35は、かご内の行先階ボタンが登録されたことを示す情報を利用者情報解析部32に出力してもよい。通常、かご部5に乗車した利用者は、行先階ボタンを登録する。このため、かご部5がホール階に到着した後、一定時間以上(例えば、1分以上)、行先階ボタンの登録がされない時間を、利用者情報解析部32は、かご部5内が無人となる時間として把握できる。
【0026】
ホール端末制御部36は、ホール端末部6の動作を制御する。そして、ホール端末制御部36は、ビルの管理者により承認された切り替えタイミングに合わせて、プログラム格納部34から読み出したプログラムをホール端末制御部36に転送する。さらに、ホール端末制御部36は、切り替えタイミングでプログラムに切り替える切り替え指令をホール端末制御部36に出力する。
【0027】
ホール端末制御部36は、ホール端末部6に登録されたホール呼びの情報を取得して、かご制御部35にホール呼びの情報を出力する。ホール端末制御部36は、ホールボタンが押されたことを示す情報、ホールカメラが撮影したホール内の映像をかご制御部35に出力してもよい。これらの情報は、利用者情報解析部32がホール内に利用者が滞在している時間、又は滞在していない時間を把握するために用いられる。ホール内に利用者が滞在していれば、この利用者は、エレベーター10を利用すると考えられる。
【0028】
モータ制御部37は、ホール呼びが登録された乗り場階、行先呼びが登録された行先階にかご部5が停止するように、モータ部7の動作を制御する。モータ制御部37の動作は、かご制御部35により制御される。モータ部7は、プログラム格納部34から読み出したプログラムに従って動作する。
【0029】
切り替えタイミング生成部31は、ビル管理情報格納部33から取得するビル管理情報に基づき、ホール端末部6(制御対象の一例)で用いられるプログラムを、プログラム格納部34から制御対象に提供されるプログラムに切り替える切り替えタイミングを生成し、切り替えタイミングを出力する。そこで、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理情報に含まれるビルの管理スケジュールで決定される優先度、及びホール端末部6におけるプログラムの書き換えに要する時間に基づいて、ホール端末部6がプログラムを切り替える切り替えタイミングを生成する。この際、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4又はビル管理情報格納部33から取得した管理スケジュールに基づいて切り替えタイミングを生成する。そして、切り替えタイミング生成部31は、ビルの管理者に切り替えタイミングを出力し、ビルの管理者に切り替えタイミングの承認を依頼する。ビルの管理者に切り替えタイミングが承認された後、切り替えタイミング生成部31は、ビルの管理者に承認された切り替えタイミングをプログラム格納部34に出力する。
【0030】
切り替えタイミング生成部31は、プログラムの切り替えタイミングの生成時に、ビル管理スケジュールに含まれるビル又はエレベーター10に対する作業の作業内容及び作業スケジュール、又はビルの不使用時間で規定される優先度に従って複数の切り替えタイミングの候補を生成し、複数の切り替えタイミングの候補をビルの管理者に出力する。優先度は、後述する図5図6に示すように、第1期間ごと(月単位)に保守点検されるエレベーター10の保守点検日、不定期に行われるエレベーター10のリニューアル工事、不定期に行われるビルの停電日、第1期間より短い第2期間ごと(毎日)に点検されるエレベーター10の点検作業の順に低くなる。本実施形態では、「1」を最も高い優先度とし、「4」を最も低い優先度とする。
【0031】
切り替えタイミング生成部31は、複数の切り替えタイミングの候補からビルの管理者により承認された切り替えタイミングをプログラム格納部34に出力する。プログラム格納部34は、切り替えタイミングより前に、ホール端末部6で書き換えられるプログラムをホール端末部6に供給する。例えば、切り替えタイミングより前の時間(30分前)であって、利用者がエレベーター10を利用する頻度が少ない時間帯に、プログラム格納部34からホール端末制御部36に供給されたプログラムがホール端末部6に転送される。
【0032】
図2は、ホール端末部6の内部構成例を示すブロック図である。
ホール端末部6は、通信部61、プログラム格納部62、プログラム切り替え部63、及び入出力制御部64を備える。
【0033】
通信部61は、号機制御部3と各種のデータを送受信可能である。通信部61は、例えば、号機制御部3のホール端末制御部36から切り替え対象のプログラムを受信する。また、通信部61は、号機制御部3のホール端末制御部36に対して、入出力制御部64から入力されたホール呼びの情報を送信する。ホール呼びの情報は、ホール端末制御部36からかご制御部35及びモータ制御部37に出力され、ホール階にかご部5が移動する。
【0034】
プログラム格納部62は、ホール端末制御部36から転送され、通信部61が受信したプログラムを格納する機能を有しており、制御対象側ソフトウェア格納部の一例として用いられる。プログラム格納部62に格納されたプログラムは、ホール端末制御部36の切り替え指令により、切り替えタイミングでプログラム切り替え部63から読み出され、入出力制御部64で動作可能に適用される。
【0035】
プログラム切り替え部63は、プログラム格納部62に全ての分割されたプログラムが格納された後、号機制御部3のホール端末制御部36からプログラムの切り替え指令が入力されると、ホール端末部6で用いられるプログラムをプログラム格納部62から読み出したプログラムに切り替える。プログラム切り替え部63が切り替えるプログラムとは、例えば、ホール端末部6の入出力制御部64を動作させるために入出力制御部64に適用されるプログラムである。
【0036】
入出力制御部64は、プログラム切り替え部63が切り替えたプログラムに従って動作する。入出力制御部64は、切り替えられたプログラムに応じた入出力制御データを制御対象65に出力する。制御対象65として、例えば、ホール端末部6に接続された、ホール呼びを登録するための呼び登録釦、かご部5のホール階への到着を点灯して利用者に知らせるホールランタン、移動中のかご部5の階床数を表示する液晶表示器等がある。そして、入出力制御データは、例えば、ホールランタンの点滅パターンを変えたり、液晶表示器の表示形態を変えたりするために用いられる。入出力制御データの内容は、書き換え及び切り替え対象のプログラムにより更新される。
【0037】
本実施の形態に係る書き換え及び切り替え対象のプログラムとして、例えば、ホール端末部6の周囲にオプションで追加された機能を実行可能とするためのプログラムがある。また、ホール端末部6の周囲に配置されたセンサーが取得した情報のログを、号機制御部3にアップロードするようなプログラムもある。ここでは、新たに追加されるプログラムやアップグレードされるプログラムについても、書き換え及び切り替え対象のプログラムの一例に含める。
【0038】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、ソフトウェア書き換えシステム1の各装置を構成する計算機20のハードウェア構成を説明する。
図3は、計算機20のハードウェア構成例を示すブロック図である。計算機20は、本実施の形態に係る号機制御部3及びホール端末部6として動作可能なコンピューターとして用いられるハードウェアの一例である。本実施の形態に係る号機制御部3及びホール端末部6は、計算機20(コンピューター)がプログラムを実行することにより、図1図2に示した各機能ブロックが連携して行うプログラム書き換え方法を実現する。
【0039】
計算機20は、バス24にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、及びRAM(Random Access Memory)23を備える。さらに、計算機20は、表示装置25、入力装置26、不揮発性ストレージ27及びネットワークインターフェイス28を備える。
【0040】
CPU21は、本実施の形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM22から読み出してRAM23にロードし、実行する。RAM23には、CPU21の演算処理の途中で発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメータ等がCPU21によって適宜読み出される。ただし、CPU21に代えてMPU(Micro Processing Unit)を用いてもよい。号機制御部3が備える各部の機能は、CPU21の動作によって実現される。
【0041】
表示装置25は、例えば、液晶ディスプレイモニターであり、計算機20で行われる処理の結果等をビルの管理者、又は保守員に表示する。入力装置26には、例えば、キーボード、マウス等が用いられ、ビルの管理者、又は保守員が所定の操作入力、指示を行うことが可能である。表示装置25及び入力装置26は、保守管理部2及びビル管理部4で用いられる。
【0042】
不揮発性ストレージ27としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ又は不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージ27には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、計算機20を機能させるためのプログラムが記録されている。ROM22及び不揮発性ストレージ27は、CPU21が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録しており、計算機20によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記憶媒体の一例として用いられる。プログラム格納部34の機能は、不揮発性ストレージ27により実現される。
【0043】
ネットワークインターフェイス28には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、NICの端子に接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを装置間で送受信することが可能である。号機制御部3から、保守管理部2、ビル管理部4及びエレベーター10への通信機能は、ネットワークインターフェイス28により実現される。
【0044】
<ソフトウェア書き換えシステムの処理の例>
次に、ソフトウェア書き換えシステム1の各部で行われる処理の例について、図4図9を参照して説明する。
図4は、切り替えタイミング生成部31の処理の例を示すフローチャートである。
【0045】
始めに、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4からスケジュール(ビル管理情報の一例)を取得し(S1)、後述する図6に示すスケジュールの優先度に基づいて切り替えタイミングを生成する(S2)。この時、切り替えタイミング生成部31は、利用者情報解析部32が解析した利用者情報の解析結果に基づき、エレベーターの利用頻度が少ない時間帯を、ホール端末制御部36がホール端末部6にプログラムを転送し、ホール端末部6のプログラムを書き換えるタイミングとして求める。
【0046】
次に、切り替えタイミング生成部31は、生成した切り替えタイミングをビル管理部4に出力し、ビルの管理者の承認を待つ(S3)。ここで、ビルの管理者とは、例えば、エレベーター10が設置されたビルの管理スケジュールを管理する者である。そして、ビルの管理者は、ステップS2で生成された切り替えタイミングを確認し、切り替えタイミングの承認又は不承認を行う。
【0047】
ビルの管理者が切り替えタイミングを不承認とした場合(S3のNO)、切り替えタイミング生成部31は、ステップS1に戻って、再び切り替えタイミングを生成する。この切り替えタイミングは、前回のステップS2の処理で生成した切り替えタイミングよりも低い優先度で生成される。
【0048】
一方、ビルの管理者が切り替えタイミングを承認とした場合(S3のYES)、切り替えタイミング生成部31は、自身が持つスケジューラに切り替えタイミングを登録する(S4)。この際、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4にも切り替えタイミングを通知する。このため、ビル管理部4が持つスケジューラに切り替えタイミングが登録される。本フローチャートでは、ビルの管理者が承認した切り替えタイミングが含まれる日時を「承認日時」と呼ぶ。また、切り替えタイミング生成部31は、プログラム格納部34に切り替えタイミングを登録する。
【0049】
次に、プログラム格納部34は、例えば、現在日時が承認日時の30分前になると、プログラムの書き換え処理を開始する(S5)。以下の説明では、プログラム格納部34からホール端末部6に提供されるプログラムを「書き換え用のプログラム」と呼ぶ。プログラム格納部34からホール端末制御部36に、書き換え用のプログラムが送信されるが、本実施の形態では、書き換え用のプログラムよりデータ量が少ないテストプログラムが、書き換え用のプログラムより先に送信される。
【0050】
そして、ホール端末制御部36は、テストプログラムをホール端末制御部36からホール端末部6に転送し、ホール端末部6でテストプログラムが正しく書き換わるかを確認する。本フローチャートでは、実際にホール端末部6で書き換えられ、プログラム切り替え部63により切り替えられるプログラムを本番プログラムと呼んで、テストプログラムと区別して説明する。
【0051】
ホール端末部6におけるテストプログラムの書き換え処理が始まると、ホール端末制御部36は、ホール端末部6におけるテストプログラムの書き換え結果をホール端末部6から取得し、書き換え結果がOKであったか否かを判断する(S6)。
【0052】
テストプログラムが正しく書き換えられたため、テストプログラムの書き換え結果がOKであれば(S6のYES)、ホール端末制御部36は、プログラム格納部34から提供される本番プログラムをホール端末部6に転送する(S7)。全ての本番プログラムがホール端末部6に転送されると、ホール端末制御部36が切り替えタイミングに合わせてホール端末部6に切り替え指令を出力する。切り替え指令が入力されたホール端末部6では、現在使用しているプログラムが本番プログラムに切り替えられる。
【0053】
そして、ホール端末制御部36は、プログラム格納部34にテストプログラム及び本番プログラムの書き換え結果を格納する。切り替えタイミング生成部31は、プログラム格納部34に格納された書き換え結果を参照し、ホール端末部6における本番プログラムの書き換えが正常に完了したか否かを判断する(S8)。本番プログラムの書き換えが正常に完了していれば(S8のYES)、切り替えタイミング生成部31は、保守管理部2及びビル管理部4に対して本番プログラムの書き換えが正常に完了したことを通知し(S9)、本処理を終了する。
【0054】
一方、切り替えタイミング生成部31は、ステップS6にてテストプログラムの書き換えに不具合が生じ、書き換え結果がNGであったと判断した場合(S6のNO)、又は、ステップS8にて本番プログラムの書き換えが正常に完了しなかったと判断した場合(S8のNO)、保守管理部2及びビル管理部4に対して、テストプログラム又は本番プログラムの書き換え不具合を発報する(S10)。発報を受けた保守管理部2の管理者、又はビルの管理者は、不具合対応を行い(S11)、本処理を終了する。
【0055】
不具合対応として、例えば、ビルの管理者がホール端末部6の故障を確認する作業がある。そこで、テストプログラム又は本番プログラムの書き換え不具合が発生すると、ホール端末制御部36は、ホール端末部6への本番プログラムの転送を中止する。また、保守管理部2においても、号機制御部3に対して本番プログラムの書き換え停止を指示する。書き換え不具合が解消した後、切り替えタイミング生成部31は、新たに切り替えタイミングを生成し、ビルの管理者に切り替えタイミングの承認を受ける。
【0056】
図5は、切り替えタイミング生成部31が優先度に従って、ビルの管理者にプログラムの切り替えタイミングを提案する処理の例を示すフローチャートである。本処理は、図4のステップS2の切り替えタイミング生成処理を詳細化したものである。
【0057】
切り替えタイミング生成部31は、ビルの管理スケジュールと、利用者情報の解析結果とを参照し、エレベーター10の利用頻度が低く、かつビルのメンテナンスのスケジュールに影響が少ない優先度の順で切り替えタイミングを生成する。
【0058】
始めに、切り替えタイミング生成部31は、エレベーター保守点検日が、プログラムの書き換え及び切り替えが行われる対象月にあるか否かを判定する(S21)。エレベーター保守点検日が、対象月にある場合(S21のYES)、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4に対して、保守点検と合わせてのプログラム切り替えを提案し(S22)、本処理を終了する。
【0059】
一方、エレベーター保守点検日が、対象月にない場合(S21のNO)、エレベーター10のリニューアル工事が予定されているか否かを判定する(S23)。エレベーター10のリニューアル工事が予定されている場合(S23のYES)、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4に対して、リニューアル工事と合わせてのプログラム切り替えを提案し(S24)、本処理を終了する。
【0060】
一方、エレベーター10のリニューアル工事が予定されていない場合(S23のNO)、停電日が、対象月にあるか否かを判定する(S25)。停電日が、対象月に予定されている場合(S25のYES)、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4に対して、停電前後の時間でのプログラム切り替えを提案し(S26)、本処理を終了する。
【0061】
一方、停電日が、対象月にない場合(S25のNO)、切り替えタイミング生成部31は、ビル管理部4に対して、点検作業に合わせて、エレベーター10の利用者の少ないタイミングでのプログラム切り替えを提案し(S27)、本処理を終了する。ステップS27で提案される切り替えタイミングは、ステップS22,S24,S26で提案される切り替えタイミングと異なり、利用者がエレベーター10を利用する時間帯に含まれる可能性がある。この切り替えタイミングがビルの管理者により承認された場合、承認日時に利用者が一時的にエレベーター10を利用できなくなるが、エレベーター10の利用頻度は他の日時と比べて低いので、利用者の利便性を大きく損なわずにすむ。
【0062】
図6は、スケジューラの登録項目に設定される優先度の例を示す一覧表である。
この一覧表は、スケジューラ登録項目、頻度、作業者、エレベーター使用状況、及び優先度の項目で構成される。図5のフローチャートに示したように、エレベーター保守点検、設備リニューアル工事、停電、点検作業の順に優先度が「1」~「4」まで設定される。以下、優先度の順にスケジューラ登録項目の内容を説明する。
【0063】
エレベーター保守点検の頻度は月単位(第1期間ごと)であり、作業者はエレベーター保守業者である。そして、エレベーター保守点検の間は、エレベーター10が不稼働状態となるため、プログラムの切り替えに最も適している。
【0064】
設備リニューアル工事は不定期に行われ、リニューアル対象の設備によって不稼働状態及び稼働状態が混在する。また、ビルの停電は不定期に行われ、エレベーター10が不稼働状態となる。このため、設備リニューアル工事及び停電時には、エレベーター保守点検時よりも低い優先度が設定される。
【0065】
点検作業の頻度は毎日(第2期間ごと)である。点検作業は、エレベーター10が稼働状態で行われる。このため、点検作業には、最も低い優先度が設定される。
【0066】
図7は、プログラム変更点の量、並びに作業種及び作業時間に応じて優先度が変わる様子を示す図である。この一覧表は、スケジューラ登録項目、作業種、作業時間、及び優先度の項目で構成される。
【0067】
ホール端末制御部36がホール端末部6への書き換え用のプログラムの転送を完了するまでに要する時間は、書き換え用のプログラムの変更点の大小により異なる。例えば、ホール端末部6にのみ影響する変更が行われたため、書き換え用のプログラムの変更点が少なければ、書き換え用のプログラムのファイルサイズが小さいので、書き換え用のプログラムの転送が完了するまでに要する時間が短くなる。一方、ホール端末部6だけでなく号機制御部3にも影響する変更が行われたことで、書き換え用のプログラムの変更点が多ければ、書き換え用のプログラムのファイルサイズが大きいので、書き換え用のプログラムの転送が完了するまでに要する時間が長くなる。
【0068】
ソフトウェア書き換えシステム1では、原則として、プログラムの書き換え時に不測の事態が生じた場合に、エレベーター10の不稼働時間を最小限にすることを目的としている。このため、プログラムの書き換え時に不具合が生じ、エレベーター10の不稼働時間が長引いても、エレベーター10に行われる作業の作業時間が長ければ、作業時間内に保守員がプログラムの復旧対応を行う時間を確保できるので、エレベーター10の利用者への影響を抑えることができる。そこで、切り替えタイミング生成部31は、スケジューラに登録された管理スケジュールと、書き換え用のプログラムの変更点の大小に基づき、エレベーター10に行われる作業の作業時間が大きい作業項目に対して高い優先度を設定することができる。
【0069】
図7の一覧表(a)には、書き換え用のプログラムの変更点が大きい場合における作業時間及び優先度の例が示される。
書き換え用のプログラムの変更点が大きいので、プログラムの書き換え時における不具合の可能性が多少なりともある。そこで、作業時間が大である作業種の項目の優先度を高くする。例えば、一覧表(a)では、塔内点検、かご上点検、かご内点検及び動作チェックの順に作業時間「大」、「中」、「小」、「小」と規定されている。そこで、作業時間が長い順、すなわち、作業時間「大」、「中」、「小」、「小」の順に「1」~「4」の優先度が定められる。
【0070】
図7の一覧表(b)には、書き換え用のプログラムの変更点が小さい場合における作業時間及び優先度の例が示される。
書き換え用のプログラムの変更点が少なければ、プログラムの書き換え時における不具合の可能性が限りなく低くなる。このため、作業時間が小である作業種の項目の優先度を高くする。例えば、一覧表(b)では、作業時間が短い順、すなわち、作業時間「小」、「小」、「中」、「大」の順に「1」~「4」の優先度が定められる。
【0071】
このようにホール端末部6に転送されるソフトウェアへの変更点が大きい場合に、ビル又はエレベーター10への作業時間が長いほど作業内容に高い優先度が割り当てられ、ソフトウェアへの変更点が小さい場合に、作業時間が短いほど作業内容に対して高い優先度が割り当てられる。このため、切り替えタイミング生成部31は、保守管理部2から取得する、書き換え用のプログラムの変更点の大小の情報に基づいて、優先度が高い順に複数の切り替えタイミングの候補を生成することができる。
【0072】
次に、プログラム切り替え処理の例について説明する。
図8は、号機制御部3のホール端末制御部36が行うプログラム切り替え処理の例を示すフローチャートである。
ホール端末制御部36は、切り替えタイミング生成部31のスケジューラに切り替えタイミングが登録された場合に、ホール端末部6で行われる通常処理の合間に、ホール端末制御部36がホール端末部6に対してプログラムを転送する。そして、ホール端末制御部36は、現在時刻が切り替えタイミングになると、ホール端末部6にプログラムの切替え指令を送信する。
【0073】
始めに、ホール端末制御部36は、プログラムの書き換えが登録されたか否かを判定する(S31)。プログラムの書き換えが登録されていなければ(S31のNO)、ホール端末制御部36は、通常処理を行い(S33)、再びステップS31に戻る。
【0074】
プログラムの書き換えが登録されていれば(S31のYES)、ホール端末制御部36は、現在時刻が、ホール端末部6の処理が行われていない空き時間であるか否かを判定する(S32)。現在時刻が処理空き時間でなければ(S32のNO)、ホール端末制御部36は、通常処理を行い(S33)、再びステップS31に戻る。
【0075】
一方、現在時刻が処理空き時間であれば(S32のYES)、ホール端末制御部36は、ホール端末部6に書き換え用のプログラム(本番プログラム)を送信する(S34)。この処理は、テストプログラムの送信及び書き換えがOKだった場合(図4に示すステップS6のYES)に行われる。
【0076】
上述したように本番プログラムのファイルサイズは大きいのでエレベーター10の空き時間に本番プログラムを転送しきれないことがある。このため、ホール端末制御部36は、プログラム格納部34から読み出したプログラムを、所定のファイルサイズで分割して、エレベーター10の利用頻度が少ない時間帯、例えば、ホール端末部6の処理が行われていない空き時間に、分割したプログラムを順に転送する。そして、ホール端末制御部36は、分割した全ての書き換え用のプログラムの転送を完了したか否かを判定する(S35)。
【0077】
分割した全ての書き換え用のプログラムの転送を完了していない場合(S35のNO)、ホール端末制御部36は、ステップS32に戻る。書き換え用のプログラムの転送が完了するまでに要する時間は、ステップS34~S35の処理が繰り返される時間に該当する。
【0078】
一方、分割した全ての書き換え用のプログラムの転送を完了した場合(S35のYES)、ホール端末制御部36は、現在時刻がプログラムの切り替えタイミングか否かを判定する(S36)。現在時刻がプログラムの切り替えタイミングでなければ(S36のNO)、ホール端末制御部36は、通常処理を行い(S33)、再びステップS31に戻る。
【0079】
一方、現在時刻がプログラムの切り替えタイミングであれば(S36のYES)、ホール端末制御部36は、ホール端末部6にプログラムの切り替え指令を送信し(S37)、ホール端末部6にプログラムを切り替えさせた後、再びステップS31に戻る。
【0080】
次に、ホール端末部6の処理の例について説明する。
図9は、ホール端末部6が行う処理の例を示すフローチャートである。
ホール端末部6は、号機制御部3から受信したデータを判別し、データの種類に応じた処理を行う。
【0081】
始めに、ホール端末部6の通信部61は、ホール端末制御部36から受信したデータが、ホール端末部6の通常処理で用いられる入出力制御データか否かを判定する(S41)。通信部61は、受信したデータが入出力制御データであると判定すると(S41のYES)、入出力制御部64に入出力制御データを出力する。そして、入出力制御部64は、入出力制御データに基づいて、入出力制御処理を行い(S42)、ステップS41に戻る。
【0082】
ステップS41で、通信部61は、受信したデータが入出力制御データでないと判定すると(S41のNO)、受信したデータがプログラムであるか否かを判定する(S43)。通信部61は、受信したデータがプログラムであると判定すると(S43のYES)、プログラム格納部62にプログラムを出力する。そして、プログラム格納部62は、入力したプログラムを格納する処理を行い(S44)、ステップS41に戻る。
【0083】
ステップS43で、通信部61は、受信したデータがプログラムでないと判定すると(S43のNO)、受信したデータがプログラムの切り替え指令であると判断する。このため、通信部61は、プログラム切り替え部63にプログラムの切り替え指令を出力する。そして、プログラム切り替え部63は、プログラム格納部62からプログラムを読み出して、プログラムの切り替え処理を行い(S45)、ステップS41に戻る。
【0084】
以上説明した第1の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステム1では、プログラムの切り替えタイミングが生成されると、切り替えタイミングが出力される。切り替えタイミングの出力先はビルの管理者である。そして、ビルの管理者が承認した日時で切り替えタイミングが決定される。ビルの管理者が承認した日時は、通常、管理者がビルにいる日時である。このため、ビルの管理者が切り替えタイミングを管理できる。また、ビルの管理者及び保守員は、プログラムの書き換え日時を把握しており、プログラムの書き換え又は切り替え不具合が発生した場合には、直ちに対応し、早期に復旧することができる。
【0085】
切り替えタイミング生成部31は、ビルの管理スケジュールの優先度に基づいて、プログラムの切り替えタイミングを生成する。このようにプログラムの切り替えタイミングが、ビル管理スケジュールで決定される優先度、及び制御対象におけるプログラムの書き換えに要する時間に基づいて生成されるので、利用者が少なく、かつ優先度の高い日時でプログラムの書き換え及び切り替えが行われる。このため、エレベーター10の利用者の利用時間帯と、エレベーター10の不稼働時間とが重なりにくくなり、エレベーター10の利用者は、ほぼエレベーター10を使用可能となり、利用者に不便をきたさない。
【0086】
また、実際に書き換えられる本番プログラムがホール端末部6に転送される前に、テストプログラムがホール端末部6に転送される。そして、ホール端末制御部36は、ホール端末部6がテストプログラムを書き換え可能であった場合に、ホール端末部6に本番プログラムを転送する。このようにホール端末制御部36は、ホール端末部6によってテストプログラムが正しく書き換えられたかを確認した後、本番プログラムを転送するので、最初から本番プログラムを転送する場合に比べて、本番プログラムの書き換え時における不具合の発生リスクを抑えることができる。また、切り替えタイミング生成部31は、管理者に承認された切り替えタイミングをプログラム格納部34に出力する。プログラム格納部34は、切り替えタイミングに合わせてホール端末制御部36にプログラムを提供することができるので、エレベーター10の利用者が少なく、かつ優先度の高い日時でホール端末部6におけるプログラムの切り替えが可能となる。
【0087】
なお、図6に示したスケジューラ登録項目ごとに決定される優先度は、切り替えタイミング生成部31が変更してもよい。例えば、保守管理部2から新しいプログラムが号機制御部3に配信されると、ホール端末部6で新しいプログラムに早く切り替える要望がビルの管理者から上がる可能性がある。この場合、切り替えタイミング生成部31は、頻度が月単位、又は不定期で行われるスケジューラ登録項目より、毎日行われる点検作業の優先度を高くしてもよい。このように優先度が変更されると、図5で示したフローチャートにおいても、高い優先度に変更されたスケジューラ登録項目の処理が、フローの始めに行われるよう処理順が変更される。
【0088】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステムの構成例について、図10を参照して説明する。第1の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステムは、1対の号機制御部3とエレベーター10を備えるエレベーターシステムに適用された。一方、第2の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステムは、複数の号機制御部3とエレベーター10を制御する群管理エレベーターシステムに適用される。
【0089】
図10は、第2の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステム1Aの構成例を示すブロック図である。
【0090】
ソフトウェア書き換えシステム1Aは、保守管理部2、号機制御部3(1)~3(n)、ビル管理部4、群管理制御部50、及びエレベーター10(1)~10(n)を備える。
【0091】
群管理制御部50は、号機制御部3(1)~3(n)を通じて、エレベーター10(1)~10(n)の群管理制御を行う。例えば、群管理制御部50は、特定の時間帯に、かご部5がホール階に集中しないように、かご部5を分散して走行させたり、特定の階ごとに使用可能なかご部5を限定したりする制御を行う。
【0092】
群管理制御部50は、切り替えタイミング生成部51及びビル管理情報格納部52を備える。切り替えタイミング生成部51及びビル管理情報格納部52の機能は、図1に示した切り替えタイミング生成部31及びビル管理情報格納部33の機能と同様である。
【0093】
ただし、切り替えタイミング生成部51は、ビル管理部4から直接取得したビル管理情報、又はビル管理情報格納部52から取得したビル管理情報と、利用者情報解析部32が解析した利用者情報の解析結果とに基づいて、切り替えタイミングを生成する。そして、切り替えタイミング生成部51は、号機制御部3(1)~3(n)に切り替えタイミングを送信する。
【0094】
また、ビル管理情報格納部52は、ビル管理部4から取得したビル管理情報を格納する。本実施の形態では、号機制御部3(1)~3(n)がビル管理情報格納部33を備えない構成とする。群管理制御部50がビル管理情報格納部52を備えることで、号機制御部3(1)~3(n)が同じ内容のビル管理情報を持つ必要がない。
【0095】
以上説明した第2の実施の形態に係るソフトウェア書き換えシステム1Aでは、群管理エレベーターシステムにおいても、号機制御部3(1)~3(n)を通じて、各エレベーター10(1)~10(n)のホール端末部6のプログラムが書き換えられる。このため、多くのエレベーター10(1)~10(n)が設置されたビルであっても、ビルの管理スケジュールに合わせて、利用者に支障が生じないようにプログラムの書き換え及び切り替えが行われる。
【0096】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…ソフトウェア書き換えシステム、2…保守管理部、3…号機制御部、4…ビル管理部、5…かご部、6…ホール端末部、7…モータ部、10…エレベーター、31…切り替えタイミング生成部、32…利用者情報解析部、33…ビル管理情報格納部、34…プログラム格納部、35…かご制御部、36…ホール端末制御部、37…モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10