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特許7595537周長可変スリーブ及びベルトコンベア用ローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】周長可変スリーブ及びベルトコンベア用ローラ
(51)【国際特許分類】
   B65G 39/07 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B65G39/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021122710
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018523
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 文香
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-30145(JP,U)
【文献】米国特許第5117970(US,A)
【文献】国際公開第2015/108074(WO,A1)
【文献】実開平4-22614(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 39/00-39/20
B65G 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルトが巻き掛けられる回転可能なローラの外周に装着される筒状のスリーブ本体を有し、
前記スリーブ本体は、
周面部を幅方向に切断して前記スリーブ本体を径方向に拡開可能なジグザグ状の切断線と、
前記切断線の周方向一方側に配置された、前記周面部の第1切断端部と、
前記切断線の周方向他方側に配置され、前記第1切断端部と対向する前記周面部の第2切断端部と、
を有し、
前記第1切断端部及び前記第2切断端部には、
それぞれ複数の凹部と凸部とが幅方向に沿って交互に形成され、
前記第1切断端部及び前記第2切断端部のそれぞれの前記凸部が、前記第2切断端部及び前記第1切断端部の対応する前記凹部に噛み合う構成を有する、
周長可変スリーブ。
【請求項2】
前記ローラの外周に装着された際には、前記ローラにより前記スリーブ本体が径方向に拡開され、前記第1切断端部及び前記第2切断端部の間にジグザグ状の隙間が形成される請求項1に記載の周長可変スリーブ。
【請求項3】
前記第1切断端部及び前記第2切断端部には、同一形状の前記凹部と、同一形状の前記凸部とがそれぞれ配置されている請求項1又は2に記載の周長可変スリーブ。
【請求項4】
前記第1切断端部及び前記第2切断端部には、前記凹部と前記凸部とが幅中心に対して対称に配置されている請求項1~3の何れか1項に記載の周長可変スリーブ。
【請求項5】
前記第1切断端部及び前記第2切断端部には、前記凹部と前記凸部とが幅方向に傾斜線上に沿って配置されている請求項1~3の何れか1項に記載の周長可変スリーブ。
【請求項6】
前記凹部と前記凸部との形状は、三角形、四辺形または台形である請求項1~5の何れか1項に記載の周長可変スリーブ。
【請求項7】
前記凸部の底辺から頂点までの高さは、前記底辺の長さよりも大きく設定されている請求項1~6の何れか1項に記載の周長可変スリーブ。
【請求項8】
前記凸部の前記高さは、前記凸部の前記底辺の長さの3倍以上に設定されている請求項7に記載の周長可変スリーブ。
【請求項9】
無端状のベルトが巻き掛けられるベルトコンベア用ローラであって、
請求項1~8の何れか1項に記載の周長可変スリーブが外周に装着されたベルトコンベア用ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径の異なる複数のローラに対して共用することができる周長可変スリーブとこの周長可変スリーブが装着されたベルトコンベア用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種物品(搬送物)を搬送するために広く用いられているベルトコンベアにおいては、回転するローラによってベルトを走行させる際、ベルトの蛇行を抑制する技術として、ローラの外周に、樹脂製でなる円筒状のスリーブを装着する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記スリーブは、金型を用いた射出成形によって、装着するローラの径に対応するサイズに個別に製造されている。このため、径が異なるローラの数だけサイズの異なるスリーブを製造する必要があり、金型費などが嵩んで製造コストが高くなるという問題がある。
【0004】
ところで、特許文献2,3には、ベルトコンベアのローラの外周に装着されるスリーブ(リブ、弾性リング)が耐久寿命に達したり、損傷した場合、このスリーブを容易に取り外して新しいものと交換することができる技術が提案されている。
【0005】
具体的には、特許文献2,3には、スリーブの外周の一部を切断して該スリーブを径方向に拡開可能とし、このスリーブをローラに対して容易に取り付け/取り外すことができるようにし、ローラに取り付けられたスリーブの切断端部同士を密着させた状態で該スリーブをビスや操作ねじなどの締結具によって、スリーブの切断端部同士を連結してローラに取り付ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6822663号公報
【文献】実開昭57-191715号公報
【文献】特公平7-098565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2,3において提案された技術は、径が異なるローラの外周にスリーブを装着できる場合があったとしても、スリーブの径方向の厚さを比較的厚く形成し、当該スリーブの切断端部に設けた締結具で当該切断端部同士を連結する必要があるため、切断端部に締結具などを設ける分だけスリーブの厚さを薄型化し得ないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、薄型化しつつ、径の異なる複数のローラに対して共用することができる経済的な周長可変スリーブとこの周長可変スリーブが装着されたベルトコンベア用ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る周長可変スリーブは、無端状のベルトが巻き掛けられる回転可能なローラの外周に装着される筒状のスリーブ本体を有し、前記スリーブ本体は、周面部を幅方向に切断して前記スリーブ本体を径方向に拡開可能なジグザグ状の切断線と、前記切断線の周方向一方側に配置された、前記周面部の第1切断端部と、前記切断線の周方向他方側に配置され、前記第1切断端部と対向する前記周面部の第2切断端部と、を有し、前記第1切断端部及び前記第2切断端部には、それぞれ複数の凹部と凸部とが幅方向に沿って交互に形成され、前記第1切断端部及び前記第2切断端部のそれぞれの前記凸部が、前記第2切断端部及び前記第1切断端部の対応する前記凹部に噛み合う構成を有する。
【0010】
また、本発明に係るベルトコンベア用ローラは、無端状のベルトが巻き掛けられるものであって、前記周長可変スリーブが外周に装着されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周長可変スリーブは、周面部が幅方向に切断されて径方向に拡開可能であって、その周長(内径)を調整することができる。このため、この周長可変スリーブは、径の異なる複数のローラに共用することができ、従来のように、径が異なる複数のローラごとにそれぞれ適切なサイズのスリーブを製造する必要がなくなる。換言すれば、径の異なる複数のローラに対して同一サイズの周長可変スリーブを共用することができる。この結果、金型を用いた樹脂の射出成形によって周長可変スリーブを製造する場合、サイズの異なる複数の金型を用いる必要がなくなり、金型費などが削減されて当該周長可変スリーブの製造コストを低く抑えることができるために経済的である。また、本発明では、周長可変スリーブの内部に締結具などを設ける必要がない分、内部に締結具などを設けた従来のスリーブよりも、周長可変スリーブを薄型化し得る。
【0012】
なお、周長可変スリーブは、切断線を境として該切断線の周方向両側の第1切断端部及び第2切断端部に、それぞれ複数の凹部と凸部が幅方向に沿って交互に形成され、第1切断端部及び第2切断端部のそれぞれの凸部が、第2切断端部及び第1切断端部の対応する凹部に噛み合う構成としたことから、周長可変スリーブの一方の端部から他方の端部まで幅方向に向けて直線的に切断された開口領域が周面部に形成されないので、周長可変スリーブの本来の機能であるベルトの蛇行を抑制する機能が損なわれることがなく、ベルトの高い走行安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ベルトコンベア要部の斜視図である。
図2】ベルトコンベア要部の破断平面図である。
図3】本発明に係る周長可変スリーブの斜視図であって、(a)はローラに装着する前の状態を示す斜視図、(b)はローラに装着した状態を示す斜視図である。
図4図2のA部拡大詳細図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】(a)は、第1切断端部と第2切断端部との間の隙間の状態を示した図2のA部拡大展開図、(b)は、第1切断端部と第2切断端部との間に最大幅の隙間が形成されたときの概略図である。
図7】本発明に係る周長可変スリーブの周長の変化とローラの外径との関係を示す図である。
図8】(a),(b)は本発明に係る周長可変スリーブの変形例1を示す正面図である。
図9】(a),(b)は本発明に係る周長可変スリーブの変形例2を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るベルトコンベア10は、不図示の搬送物を直線方向(図1の直線的に延びた矢印方向)に搬送するものであって、互いに平行に配された回転可能な複数のベルトコンベア用ローラ(以下、単にローラと称する)11(図1及び図2には1つのみ図示)に無端状のベルト12を巻き掛けた構成を有する。ベルトコンベア10は、ローラ11を図示矢印方向(図1の時計方向)へ回転させることによってベルト12を図示矢印方向に走行させるものである。
【0016】
本実施形態に係るベルトコンベア10においては、周長可変スリーブ1がローラ11の外周の複数箇所に装着されており、複数の周長可変スリーブ1によって、ベルト12の走行時に当該ベルト12が幅方向へ蛇行することを抑制している。本実施形態では、ベルト12の幅方向端縁に近い2箇所に周長可変スリーブ1が装着されており、図1及び図2では、そのうち1箇所に装着された周長可変スリーブ1を示している。なお、本実施形態においては、ローラ11の材質には、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウム合金などの金属が用いられている。また、ベルト12は、均等な厚さを有するシートによって無端状に成形されており、例えば、ポリウレタン繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維などからなる芯体帆布に、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を含浸させることによって構成されている。
【0017】
ここで、本実施形態に係る周長可変スリーブ1の具体的な構成を以下説明する。周長可変スリーブ1は、図3(a)及び図3(b)に示すように、ローラ11の外周に装着される筒状のスリーブ本体2を有し、スリーブ本体2の孔部2bにローラ11が挿入されることにより当該ローラ11の外周に外嵌可能な構成を有する。スリーブ本体2には、周面部2aの一部に、当該周面部2aを幅方向に切断したジグザグ状の切断線L1が形成されている。スリーブ本体2は、周面部2aが切断線L1によって幅方向に切断されることによって径方向に拡開可能に構成されている。なお、ここで、ジグザグ状とは、スリーブ本体2の一方の端部4aから他方の端部4bまで幅方向に沿って複数回、周方向に折れ曲がった形状をいう。このように周長可変スリーブ1は、スリーブ本体2が径方向に拡開することによって、当該周長可変スリーブ1の内径と周長が可変となる。なお、周長可変スリーブ1は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂が用いられることが望ましく、このような弾性力のある材質により形成されることにより、ローラ11に装着した際に、ローラ11の外径に応じて拡開可能な構成となっている。
【0018】
周面部2aには、切断線L1を境として第1切断端部3aと第2切断端部3bとが設けられている。この場合、第1切断端部3aは、切断線L1の周方向一方側(図3(a)及び図3(b)の上側)に設けられ、第2切断端部3bは、切断線L1の周方向他方側(図3(a)及び図3(b)の下側)に、第1切断端部3aと対向するように設けられている。本実施形態に係る第1切断端部3a及び第2切断端部3bは、櫛歯状(鋸刃状)に形成されており、それぞれ複数の凹部1aと凸部1bが幅方向(図3(a)及び図3(b)の左右方向)に沿って交互に配置されており、第1切断端部3a及び第2切断端部3bのそれぞれの凸部1bが、他方の第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aに噛み合う構成を有する。なお、本実施形態に係る第1切断端部3a及び第2切断端部3bには、それぞれ凹部1aと凸部1bとが、幅中心に対して対称に配置されている。
【0019】
ここで、ローラ11に装着される前の周長可変スリーブ1は、図3(a)に示すように、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの凸部1bと、第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aとが密着して噛み合い、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの間に隙間Gが形成されない状態となっている。このときの周長可変スリーブ1の内径をDminとすると、周長可変スリーブ1が装着可能なローラの最小外径はDminとなる。
【0020】
周長可変スリーブ1は、Dminよりも大きい外径Dのローラ11に装着された場合(D>Dmin)、スリーブ本体2に対して弾性力に抗する外力がローラ11から周面部2aに加えられることにより、図3(b)に示すように、スリーブ本体2の周面部2aが切断線L1に沿って切断されて、第1切断端部3aと第2切断端部3bとが離間する。これにより、周長可変スリーブ1は、第1切断端部3aと第2切断端部3bとの間にジグザグ状の隙間Gが形成され、スリーブ本体2が拡開した状態となる。
【0021】
図4は、Dminよりも大きい外径Dのローラ11の外面に周長可変スリーブ1を装着したときの、図2におけるA部拡大詳細図であり、図5は、図4のB-B線断面図である。周長可変スリーブ1は、Dminよりも大きい外径Dのローラ11に装着された際、スリーブ本体2の周面部2aが切断線L1に沿って切断されて、第1切断端部3aと第2切断端部3bとが離間し、弾性復元力により孔部2bの内周面がローラ11の外面に密着する。このようにして、周長可変スリーブ1は、スリーブ本体2が径方向に拡開し、スリーブ本体2の内径がローラ11の外径Dと同じ大きさになる。
【0022】
ここで、図6(a)は、第1切断端部3aと第2切断端部3bとの間の隙間Gの状態を示した、図2のA部拡大展開図である。図6(a)に示すように、本実施形態では、凹部1aと凸部1bの形状は、二等辺三角形とされており、各二等辺三角形の底辺の長さをb、高さをhとした場合、高さhの方が底辺の長さbよりも大きく設定されている(h>b)。なお、本実施形態では、二等辺三角形の高さhは、底辺の長さbの3倍以上(h/b≧3)に設定されている。
【0023】
周長可変スリーブ1は、ローラ11への装着時にも、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの凹部1aの領域内に、周方向に対向する第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応した凸部1bが収まり、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの凸部1bと、他方の第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aとが噛み合う構成となっていることが望ましい。このように、周長可変スリーブ1は、ローラ11への装着時、第1切断端部3a及び第2切断端部3bのそれぞれの凸部1bが、他方の第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aに噛み合う構成とすることで、周長可変スリーブ1の一方の端部4aから他方の端部4bまで幅方向に向けて直線的に切断された開口領域(幅方向に延びる直線状の隙間G)が周面部2aに形成されないので、周長可変スリーブ1の本来の機能であるベルト12の蛇行を抑制する機能が損なわれることなく、ベルト12の高い走行安定性を確保することができる。
【0024】
なお、第1切断端部3aと第2切断端部3bとが密着しているときの周長可変スリーブ1の周長Lの可変量ΔLは0(ΔL=0)である。一方、外径Dのローラ11に周長可変スリーブ1を装着した場合、径方向に拡開された周長可変スリーブ1の周長Lの可変量は、第1切断端部3aと第2切断端部3bとの間に形成される隙間Gの周方向長さであるΔLとなる。
【0025】
また、周長可変スリーブ1は、図6(b)に示すように、ローラ11の装着時、例えば、第1切断端部3aの凸部1bにおける頂点(二等辺三角形の頂点)と、第2切断端部3bの凸部1bにおける頂点とが、周方向での位置で一致する状態(すなわち、第1切断端部3aの凸部1bの頂点と、第2切断端部3bの凸部1bの頂点とが、幅方向に向かって直線的に並んだ状態)まで、径方向に拡開させるようにしてもよい。このとき、第1切断端部3aと第2切断端部3bとの間には最大幅が「h」の隙間Gが形成される。この最大幅「h」は、周長可変スリーブ1の周長Lの最大可変量ΔLmaxとなる。すなわち、周長可変スリーブ1の周長Lの可変量ΔLの範囲は、0~ΔLmax(=h)となる。
【0026】
このように、第1切断端部3aと第2切断端部3bとの間に最大幅「h」の隙間Gが形成されても、幅方向に向けて周長可変スリーブ1の一方の端部4aから他方の端部4bまで直線的に切断された開口領域(隙間G)が周面部2aに形成されてないので、周長可変スリーブ1の本来の機能であるベルト12の蛇行を抑制する機能が損なわれることがなく、ベルト12の高い走行安定性を確保することができる。
【0027】
ここで、図7に示すように、ローラ11への装着時における周長可変スリーブ1の周長Lの可変量をΔLとすると、周長可変スリーブ1の周長Lと、周長Lの可変量ΔLと、ローラ11の外径Dとの間には、次式の関係が成立する。
【0028】
L=πD=πDmin+ΔL …(1)
【0029】
したがって、上式(1)より、ローラ11の外径Dは、次式にて求められる。
【0030】
D=Dmin+ΔL/π …(2)
【0031】
また、図6(b)及び図7に示すように、周長可変スリーブ1が径方向に最も大きく拡開された状態の周長Lの可変量ΔLの最大値をΔLmax(=h)とした場合、周長可変スリーブ1の周長Lとその最大可変量ΔLmaxとローラ11の外径Dの最大値Dmax(図7参照)との間には、次式の関係が成立する。
【0032】
L=πDmax=πDmin+ΔLmax …(3)
【0033】
したがって、上式(3)より、周長可変スリーブ1が装着可能なローラ11の外径Dの最大値Dmaxは、次式にて求められる。
【0034】
Dmax=Dmin+ΔLmax/π …(4)
【0035】
したがって、周長可変スリーブ1は、外径DがDmin~Dmaxの範囲の異なる複数のローラ11に装着可能となり、(4)式から、外径の変動幅ΔDが次式にて求められる範囲のローラ11に共用することができる。
【0036】
ΔD=0~(Dmax-Dmin)
=0~ΔLmax/π …(5)
【0037】
つまり、周長可変スリーブ1を共用することができるローラ11の外径Dの変動幅ΔDの最大値ΔDmaxは、次式となる。
【0038】
ΔDmax=ΔLmax/π …(6)
【0039】
ここで、以上のように構成された周長可変スリーブ1のローラ11への装着方法の一例を説明する。この場合、例えば、周長可変スリーブ1を拡開させて、周長可変スリーブ1の切断線L1に沿って形成された隙間Gからスリーブ本体2の孔部2bにローラ11を挿入する。このようにして、ローラ11を横切るように周長可変スリーブ1を跨がせて該ローラ11に周長可変スリーブ1を被せる。この際、周長可変スリーブ1は、縮径する復元力によってローラ11の外周に位置決めされる。そして、周長可変スリーブ1をローラ11の外周に接着することによって、周長可変スリーブ1をローラの外面に装着させることができる。
【0040】
或いは、他の方法として、周長可変スリーブ1を、その内径がローラ11の外径よりも大きくなるまで拡開させ、その状態を維持したまま該周長可変スリーブ1の孔部2b内にローラ11を軸方向から通す。次いで、ローラ11の軸方向に沿ってローラ11の所定位置まで周長可変スリーブ1を移動させて位置決めする。この際、周長可変スリーブ1は、縮径する復元力によってローラ11の外周に位置決めされる。そして、周長可変スリーブ1をローラ11の外周に接着することによって、周長可変スリーブ1をローラの外面に装着させることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る周長可変スリーブ1は、周面部2aの一部が幅方向に切断されて径方向に拡開可能であって、その周長(内径)を調整することができる。このため、この周長可変スリーブ1は、径の異なる複数のローラ11に共用することができ、従来のように径が異なる複数のローラ11ごとにそれぞれ適切なサイズのスリーブを製造する必要がなくなる。換言すれば、径の異なる複数のローラ11に対して同一サイズの周長可変スリーブ1を共用することができる。この結果、金型を用いた樹脂の射出成形によって周長可変スリーブ1を製造する場合、サイズの異なる複数の金型を用いる必要がなくなり、金型費などが削減されて当該周長可変スリーブ1の製造コストを低く抑えることができるために経済的である。また、本実施形態に係る周長可変スリーブ1は、周長可変スリーブ1の内部に締結具などを設ける必要がない分、内部に締結具などを設けた従来のスリーブよりも、周長可変スリーブ1を薄型化し得る。
【0042】
また、本実施形態に係る周長可変スリーブ1は、ジグザグ状の切断線L1を境として該切断線L1の周方向両側の第1切断端部3a及び第2切断端部3bに、それぞれ複数の凹部1aと凸部1bとが幅方向に沿って交互に形成され、第1切断端部3a及び第2切断端部3bのそれぞれの凸部1bが、第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aに噛み合う構成としたことから、周長可変スリーブ1の一方の端部4aから他方の端部4bまで幅方向に向けて直線的に切断された開口領域が周面部2aに形成されない。そのため、周長可変スリーブ1では、周長可変スリーブ1の本来の機能であるベルト12の蛇行を抑制する機能が損なわれることがなく、ベルト12の高い走行安定性を確保することができる。
【0043】
ここで、周長可変スリーブ1をローラ11に取り付けて回転させている際、ベルト12の裏面が周長可変スリーブ1の第1切断端部3a及び第2切断端部3bに接触する場合がある。この際、本実施形態に係る周長可変スリーブ1では、頂点を鋭角とした三角形の凸部1bを第1切断端部3a及び第2切断端部3bにそれぞれ設けるようにしたことで、ベルト12が凸部1bに接触し始めた瞬間は、当該ベルト12に対して凸部1bの鋭角頂点から接触し始め、凸部1bとベルト11とが接触し始める瞬間、点での接触となる。
【0044】
一方、例えば、後述する図9(a)及び図9(b)のように、頂点に直線部分を有する四辺形又は台形の凸部1bとした周長可変スリーブ1では、ベルト12が凸部1bに接触し始めた瞬間は、当該ベルト12に対して凸部1bの直線的な頂点から接触し始め、凸部1bとベルト11とが接触し始める瞬間、線での接触となる。そのため、頂点に直線部分を有する四辺形又は台形の凸部1bとした周長可変スリーブ1では、上述したように頂点を鋭角とした三角形の凸部1bとした場合よりも、凸部1bがベルト12に接触し始める瞬間の接触面積が大きくなる。
【0045】
以上のように、頂点を鋭角とした三角形の凸部1bとした場合には、凸部1bとベルト11とが接触し始める瞬間、点での接触となるため、図9(a)及び図9(b)に示すような頂点に直線部分を有する四辺形又は台形の凸部1bとした場合に比して、凸部1bがベルト12に接触し始める瞬間の接触面積が極めて小さく、その分、凸部1bとベルト12との接触時に発生する騒音値を低減させることができる。
【0046】
そして、本実施形態では、周長可変スリーブ1に形成された凹部1aと凸部1bの形状を二等辺三角形とし、二等辺三角形の高さhを底辺の長さbよりも大きく(h>b)設定した(本実施形態では、h/b≧3)ため、当該周長可変スリーブ1の周長Lの可変量ΔLの最大値であるΔLmax=hを大きくすることができ、前記(6)式によって表されるΔDmax、つまり、周長可変スリーブ1を共用することができるローラ11の外径Dの変動幅ΔDの最大値ΔDmaxが大きくなって、当該周長可変スリーブ1のローラ11に対する適用範囲が拡大する。因みに、ローラ11としては、外径がφ48.6mmのものが一般的に多く使用されているが、外径がφ50.0mmのものも使用されている。
【0047】
また、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの凸部1bが、他方の第2切断端部3b及び第1切断端部3aの対応する凹部1aに収まる量を大きくして隙間Gの周方向での幅を小さくすることで、これらの凹部1aと凸部1bが形成された領域において周面部2aとベルト12との接触状態(接触面積)が急変することを抑制し得、その分、ベルト12の走行時における騒音の発生を抑制し得る。
【0048】
さらに、第1切断端部3a及び第2切断端部3bに形成された複数の凹部1aと凸部1bとを、切断線L1を境として該切断線L1の周方向両側にほぼ対称に配置すれば、ローラ11が正逆転したときに、周面部2aとベルト12との接触面積が急変することを抑制し得、その分、ベルト12の走行時における騒音の発生を抑制し得るとともに、周長可変スリーブ1のめくれなどの不具合の発生も防止できる。
【0049】
なお、本実施形態では、第1切断端部3a及び第2切断端部3bに、同一形状(二等辺三角形)・同一寸法の複数の凹部1aと凸部1bを、スリーブ本体2の中心軸と並走する、幅方向に延びる一直線上に沿って配置したが、例えば、図8(a)に示すように、同一形状・同一寸法の凹部1aと凸部1bを幅方向に傾斜線上(スリーブ本体2の中心軸に対して傾斜した傾斜線上)に沿って配置しても良い。このような構成であっても、周長可変スリーブ1の一方の端部4aから他方の端部4bまで幅方向に向けて直線的に切断された開口領域が周面部2aに形成されないので、周長可変スリーブ1の本来の機能であるベルト12の蛇行を抑制する機能が損なわれることがなく、ベルト12の高い走行安定性を確保することができる。なお、寸法を変えた同一形状の凹部1aと凸部1bとを形成するようにしてもよい。
【0050】
或いは、図8(b)に示すように、第1切断端部3a及び第2切断端部3bに、凹部1aと凸部1bとを幅中心に対して対称に配置させるとともに、大きさの異なる凹部1aと凸部1bを幅方向に交互に配置するようにしても良い。なお、図8(b)は、周長可変スリーブ1の幅中心に配置された第2切断端部3bの凸部1bの高さが、両側に配置された第2切断端部3bの凸部1bの高さよりも大きく形成されている例である。
【0051】
また、以上の実施の形態では、周長可変スリーブ1に二等辺三角形の凹部1aと凸部1bを形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、正三角形などの種々の三角形や、長方形又は正方形などの種々の四辺形、台形、半円、鋭角な角部がない湾曲形など、その他種々の形状の凹部1aと凸部1bとを適用してもよい。例えば、図9(a)に示すように、長方形などの四辺形の凹部1aと凸部1bを第1切断端部3a及び第2切断端部3bに形成したり、図9(b)に示すように、台形の凹部1aと凸部1bを第1切断端部3a及び第2切断端部3bに形成しても良い。なお、図9(a)及び図9(b)では、凸部1bの底辺から頂点までの高さが、当該底辺の長さよりも大きく設定されている。そして、この場合でも、図8(a)に示した例と同様に、凹部1aと凸部1bを幅方向に傾斜線状に配置したり、図8(b)に示した例と同様に、凹部と凸部の大きさを幅方向に交互に変えるようにしても良い。
【0052】
以上の説明で明らかなように、図8(a)、図8(b)、図9(a)及び図9(b)に示すような本発明に係る周長可変スリーブ1でも、周面部2aの一部が幅方向に切断されて径方向に拡開可能であって、その周長(内径)を調整することができるため、この周長可変スリーブ1を、径の異なる複数のローラ11に共用することができるという効果が得られる。また、同様に、周長可変スリーブ1の内部に締結具などを設ける必要がない分、内部に締結具などを設けた従来のスリーブよりも、周長可変スリーブ1を薄型化し得る。
【0053】
なお、上述した実施の形態においては、第1切断端部3aの凸部1bと、第2切断端部3bの凸部1bとを同一形状としているが、本発明はこれに限らず、例えば、第1切断端部3aの凸部1bを二等辺三角形とし、第2切断端部3bの凸部1bを四辺形(長方形や正方形など)とするなど、異なる形状としてもよい。この場合、第1切断端部3a及び第2切断端部3bの各凹部1aは、それぞれ他方の第2切断端部3b及び第1切断端部3aの凸部1bに対応した形状となる。
【0054】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 周長可変スリーブ
1a 凹部
1b 凸部
2 スリーブ本体
2a 周面部
3a 第1切断端部
3b 第2切断端部
10 ベルトコンベア
11 ローラ
12 ベルト
b 三角形の底辺の長さ
h 三角形の高さ
L1 切断線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9