(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】部品交換作業登録システム及び部品交換作業登録方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2021181624
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓杜
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩彦
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-084191(JP,A)
【文献】特開2007-091381(JP,A)
【文献】特開2018-90392(JP,A)
【文献】特開2018-147156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者による昇降機の保守作業時に、現場に設置された部品を取り外して別の部品に交換する際に、交換前後の部品を登録する部品交換作業登録システムであって、
部品を撮影した画像データから、特定の図形を検出する特定画像検出部と、
前記特定画像検出部が特定の図形を検出した画像データを、取り外した部品の画像データと判定し交換前部品画像フォルダに格納し、特定の図形を検出しない画像データを交換後部品画像フォルダに格納する分析結果出力部と、を備える
部品交換作業登録システム。
【請求項2】
前記交換前部品画像フォルダに格納された画像データを、電子帳票で設けられた任意の台紙の、交換前の部品の画像添付欄に貼り付ける処理を実行する
請求項1に記載の部品交換作業登録システム。
【請求項3】
さらに、前記電子帳票で設けられた任意の台紙の、交換後の部品の画像添付欄に、前記交換後部品画像フォルダに格納された画像データの内で、前記交換前の部品の画像添付欄に貼り付けた画像と同じ形状の部品を探索して貼り付ける処理を実行する交換後部品選択部を備える
請求項2に記載の部品交換作業登録システム。
【請求項4】
さらに、前記分析結果出力部は、前記電子帳票の交換前の部品の画像添付欄に貼り付けた画像と、交換後の部品の画像添付欄に貼り付けた画像とを認識して、前記電子帳票で示された作業内容と一致するかを判定する作業内容判定部を備える
請求項3に記載の部品交換作業登録システム。
【請求項5】
作業者による昇降機の保守作業時に、現場に設置された部品を取り外して別の部品に交換した際に、交換前後の部品を、情報処理端末で登録する部品交換作業登録方法であって、
前記情報処理端末が行う処理として、
部品を撮影した画像データから、特定の図形を検出する特定画像検出処理と、
前記特定画像検出処理により特定の図形を検出した画像データを、取り外した部品の画像データと判定し交換前部品画像フォルダに格納し、特定の図形を検出しない画像データを交換後部品画像フォルダに格納する分析結果出力処理と、を含む
部品交換作業登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品交換作業登録システム及び部品交換作業登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降機などの設備機器の保守作業時には、その設備機器に取り付けられた一部の部品を取り外して、新たな部品に交換することがある。この新たな部品への交換を行った際には、通常、交換前の部品と、交換後の部品を、作業者が所持した端末で撮影して、撮影した画像を、作業報告書に添付することが行われている。
【0003】
特許文献1には、文字が含まれる物体を撮影した画像から、文字の認識を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昇降機などの保守作業時に行われる部品の交換作業では交換前の部品を撮影した画像と交換後の部品を撮影した画像とは、見かけ上区別がつかないことが多々ある。したがって、作業報告書を作成する作業者は、部品の汚れ状況などのわずかな違いから、交換前の部品を撮影した画像と交換後の部品を撮影した画像とを区別して、作業報告書に添付するようにしていた。
【0006】
特許文献1に記載されるように、交換を行う部品にシリアル番号や製造番号などが記載されている場合には、画像に含まれる文字や数字を認識することで、交換前の部品と交換後の部品を区別することが可能である。
しかしながら、実際の保守作業時に交換する部品は、シリアル番号などが記載される部品は稀であり、交換前の部品と交換後の部品とを画像から認識することは困難であった。
【0007】
本発明は、交換前の部品の画像の登録を容易に行うことができる部品交換作業登録システム及び部品交換作業登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、作業者による昇降機の保守作業時に、現場に設置された部品を取り外して別の部品に交換した際に、交換前後の部品を登録する部品交換作業登録システムであって、部品を撮影した画像データから、特定の図形を検出する特定画像検出部と、特定画像検出部が特定の図形を検出した画像データを、取り外した部品の画像データと判定し交換前部品画像フォルダに格納し、特定の図形を検出しない画像データを交換後部品画像フォルダに格納する分析結果出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者は、取り外す部品に、予め決められ特定の図形を書き込むだけで、その図形が書き込まれた部品を撮影した画像を、交換前の部品を撮影した画像と判定することができ、撮影した画像を交換前の部品か交換後の新品かを容易に分類することが可能になる。したがって、作業完了報告書の作成を省力化できるという効果がある。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態例による部品交換作業登録システムを適用する昇降機の保守作業が行われる例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例による部品交換作業登録システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例による部品交換作業登録システムとして機能するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施の形態例による部品に書き込む画像の例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施の形態例による部品交換作業の流れを示すフローチャート(その1)である。
【
図6】本発明の一実施の形態例による部品交換作業の流れを示すフローチャート(その2)である。
【
図7】本発明の一実施の形態例による作業報告書の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)による部品交換作業登録システムを、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[保守作業が行われる例]
図1は、本例の部品交換作業登録システムを適用する保守作業の例を示す。
ここでは、昇降機であるエレベーターの保守点検作業を行う例を示す。
図1に示すエレベーター10は、乗りかご11と錘12とが主ロープに接続され、機械室13に設置された巻き上げ機14での主ロープの巻き上げで、乗りかご11が昇降する。また、機械室13には、エレベーター制御盤(不図示)が設置されている。作業者が保守点検作業を行う際には、機械室13などに入って、設置された機器の点検、調整、交換などを行う。
【0013】
例えば、作業者は、保守点検作業時に、エレベーター制御盤に設置された一部の部品を取り外して、新たな部品に交換することがある。この場合、作業者は、携帯端末100を常時所持して、携帯端末100に表示される作業計画に基づいて、交換作業を行う。携帯端末100は、保守点検作業用の専用の端末であるが、スマートフォンやタブレット端末などの汎用の端末に、専用のアプリケーションプログラムを実装して構成してもよい。
【0014】
携帯端末100は、無線電話回線などのネットワークNを介して、作業計画管理サーバ20及び管理者端末30と通信を行う。そして、携帯端末100は、作業計画管理サーバ20から保守点検作業についての作業計画を受信する。また、作業者が携帯端末100で作業の開始や終了などを登録したとき、管理者は、管理者端末30で登録状況を確認することができる。また、管理者は、後述する作業完了報告書が携帯端末100で作成されたとき、その作業完了報告書を管理者端末30で確認することもできる。
【0015】
[携帯端末の構成]
図2は、作業者が所持する携帯端末100が、部品交換を登録する際に行われる処理を示す機能ブロック図である。
図2に示す構成による処理は、作業者が携帯端末100を、交換部品の画像の登録を行う操作を行ったときに実行される処理である。
携帯端末100は、カメラ101を備え、部品交換時には、作業者は取り外す前の部品と、交換後の部品の双方を写真撮影して、静止画像データを得る。
【0016】
なお、取り外す前の部品については、作業者自身により、部品の表面に、特定の色のペン(油性ペンなど)などの筆記具で、特定の図形を記入する。本例の場合には、
図4に示すように、取り外す前の部品15の表面に、×の印B1の周囲を円B2で囲った図形を記入する。そして、作業者が取り外す前の部品15を撮影する際には、
図4に示すように記入した×の印B1と円B2とが、画像内に含まれるようにする。
ここで使用する図形は、一般的な機器や機材に見られがちな図形(円や直線など)ではなく、かつ部品交換以外の目的で描かれがちな図形(×印やチェックマーク)ではないものが望ましく、かつ誰にでも簡単に描ける図柄である必要がある。
図4の例では、これらの事項を考慮して、以上のことから、×の印B1の周囲を、円B2で囲った図形としている。
【0017】
図2の説明に戻ると、カメラ101が撮影した画像データは、画像入力部102で携帯端末100内に取り込まれ、画像分析部110に送られる。
画像分析部110は、円画像検出部111と、円領域正規化部112と、画像白黒化部113と、マッチング検知部114と、画像テンプレート記憶部115とを有する。
円画像検出部111は、部品に記入された印を検出する特定画像検出処理を行う特定画像検出部であり、本例の場合には画像内の円を検出する。ここでは、例えばHough変換などの技術を用いて画像中から円の領域を検出する。
【0018】
円画像検出部111は、円を検出すると、その画像データを円領域正規化部112に供給する。円領域正規化部112は、検出した円の領域を拡大又は縮小して、所定の大きさに正規化する。さらに、円領域正規化部112は、正規化した円の領域を画像白黒化部113に送り、画像白黒化部113は、正規化された円の領域を白黒の2値化の画像データとする。
【0019】
画像白黒化部113は、2値化した円の領域の画像データを、マッチング検知部114に供給する。マッチング検知部114は、供給された円の領域の画像データを、画像テンプレート記憶部115に記憶された特定画像のテンプレートと比較し、類似度を得る。
そして、マッチング検知部114は、この類似度が一定以上であるとき、特定画像のテンプレートとマッチングしたと検知する。このマッチング検知部114での検知時には、円領域正規化部112での正規化と画像白黒化部113での2値化が行われているので、比較的簡単な演算処理で、テンプレートとの一致又は不一致を検知することができる。
【0020】
マッチング検知部114で検知した結果は、画像分析部110の出力として、分析結果出力部103に供給される。分析結果出力部103は、マッチングしたか否かの検知結果に基づいて、画像入力部102に入力した画像データの格納フォルダを決定する。すなわち、分析結果出力部103は、マッチング検知部114で特定画像のテンプレートとの一致を検知したとき、検知した画像データを、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104に保存する。また、分析結果出力部103は、マッチング検知部114で特定画像のテンプレートとの一致を検知しないとき、検知した画像データを、新部品の画像データ専用格納フォルダ105に保存する。
【0021】
旧部品の画像データ専用格納フォルダ104に保存された画像データと、新部品の画像データ専用格納フォルダ105に保存された画像データは、帳票作成部106により読み出される。帳票作成部106は、交換前部品選択部107と交換後部品選択部108を有する。帳票作成部106が作成する帳票に貼り付ける交換前部品の画像は、交換前部品選択部107により、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104から選択される。また、帳票作成部106が作成する帳票に貼り付ける交換後部品の画像は、交換後部品選択部108により、新部品の画像データ専用格納フォルダ105から選択される。
さらに、帳票作成部106に作成された帳票は、作業内容判定部109で判定される。作業内容判定部109は、電子帳票の交換前の部品の画像添付欄に貼り付けた画像と、交換後の部品の画像添付欄に貼り付けた画像とを認識して、電子帳票でテキストなどにより示された作業内容と一致するかを判定する。例えば作業内容でリレー交換と示されたとき、交換前の部品と交換後の部品が、リレーであるかどうかを判定する。
【0022】
図3は、携帯端末100として構成される情報処理装置(コンピュータ装置)のハードウェア構成例を示す。
【0023】
携帯端末(コンピュータ装置)100は、バスにそれぞれ接続された、CPU(Central Processing Unit)100a、主記憶部100b、不揮発性ストレージ100c、カメラ100d、ネットワークインタフェース100e、入出力部100f、及び表示部100gを備える。
【0024】
CPU100aは、携帯端末100が行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを主記憶部100b又は不揮発性ストレージ100cから読み出して実行する演算処理部である。ここでのソフトウェアには、保守点検作業を支援するためのものが含まれる。
CPU100aが主記憶部100b又は不揮発性ストレージ100cからプログラムコードを読み出して、主記憶部100b内のワークエリアで演算処理を実行することで、主記憶部100bに様々な処理機能部が構成される。例えば
図2に示す画像分析部110や分析結果出力部103が主記憶部100bに構成される。
【0025】
不揮発性ストレージ100cには、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ100cには、携帯端末100が行う機能を実現するソフトウェアと、そのプログラムの実行で得られたデータも、不揮発性ストレージ100cに記憶される。すなわち、不揮発性ストレージ100cは、
図2に示す旧部品の画像データ専用格納フォルダ104及び新部品の画像データ専用格納フォルダ105を構成する。
【0026】
カメラ100dは、静止画像や動画像の撮影を行う。
ネットワークインタフェース100eは、接続されたネットワークを経由して、他の装置とのデータの送受信を行う。例えば、ネットワークインタフェース100eでは、
図1に示す作業計画管理サーバ20や管理者端末30とのデータの送受信が行われる。
入出力部100fは、この携帯端末100の所持者(作業者)による操作を受付けると共に、受付け結果を出力する。
表示部100gは、作業支援を行う際に必要な情報などを表示する。例えば、表示部100gには、作業計画管理サーバ20から送信される作業計画などの作業予定が表示される。また、作業終了後には、作業完了報告書が表示部100gに表示される。さらに、表示部100gには、カメラ100dで撮影された画像も表示される。
【0027】
[昇降機の保守作業における部品交換作業の流れ]
次に、
図5及び
図6を参照して、昇降機の保守作業における部品交換作業の流れを説明する。
まず、管理者端末30にて、管理者の操作による各作業者の作業計画が立案され(ステップS11)、立案された作業計画が、作業計画管理サーバ20に保管される(ステップS12)。保管された作業計画は、該当する作業計画が割り当てられた作業者が常時携帯する携帯端末100に表示される(ステップS13)。作業者は、作業日当日までに自身の携帯端末100にて表示された作業内容を確認する(ステップS14)。
【0028】
ここで、確認した作業がエレベーター制御盤内の部品交換作業の場合、作業者は、エレベーター制御盤に設置されている既存の部品(以下、これを「旧部品」と称す)に対する交換用の部品(以下、これを「新部品」と称す)を用意する(ステップS15)。そして作業日当日、作業者は新部品を持参し作業現場へ向かう(ステップS16)。作業現場は昇降機の設置されている建物であり、建物の管理人室には建物の管理人が在室しているため、作業者は管理人に保守作業を開始する旨を告げ、作業の許可を得る(ステップS17)。
【0029】
次に、作業者は、エレベーターの制御盤が設置されている機械室に入室し(ステップS18)、エレベーターの電源を遮断し安全を確認した後(ステップS19)、制御盤の蓋を開く(ステップS20)。
そして作業者は、目視にて制御盤内の旧部品の設置位置を確認し(ステップS21)、持参した新部品が旧部品と互換性のある部品であることも目視確認する(ステップS22)。
【0030】
ここで作業者は、旧部品に油性ペン等で、
図4に示すような特定図形(×の印B1の周囲を円B2で囲った図形)を描き込む(ステップS23)。その後、作業者の操作により、携帯端末100のカメラ機能を起動させる(ステップS24)。そして、作業者は携帯端末100のカメラ機能を使い、旧部品を撮影する(ステップS25)。撮影後、作業者は旧部品を取り外し(ステップS26)、新部品を取り付ける(ステップS27)。新部品を取り付けた後、作業者は携帯端末100のカメラ機能で新部品を撮影する(ステップS28)。
【0031】
なお、交換作業が複数ある場合には、同様の手順で、旧部品に図形を描き込んだ後に撮影し、その後に交換作業を実施し、さらに新部品の撮影を行う処理を繰り返す。一通りの交換作業が完了したら、作業者はエレベーターの制御盤の電源を投入し、エレベーターが使用できる状態に復旧させる(ステップS29)。
一方、携帯端末100では、撮影終了後に
図2に示す画像分析部110による画像判定システムが起動する(ステップS30)。
【0032】
図6に移って、画像判定システムは、画像データの画像上に
図4に示す特定図形があるか否かを判定する(ステップS31)。
このステップS31で、特定図形がある場合には(ステップS31のYES)、特定図形が描かれた部品の画像データが、旧部品の画像データ専用の格納フォルダ104に保存される(ステップS32)。一方、ステップS31で、特定図形がない場合には(ステップS31のNO)、画像データは新部品の画像データ専用格納フォルダ105に保存される(ステップS33)。
【0033】
続いて、作業者は、携帯端末100の作業完了報告書作成機能を起動し、作業者が作業完了報告書を作成する(ステップS34)。作業完了報告書の具体例については後述するが、作業完了報告書には旧部品と新部品の画像データを貼り付ける必要があるため、まず作業者は、携帯端末100の旧部品の画像データ専用格納フォルダ104を開き、携帯端末100に旧部品の画像データを一覧表示する(ステップS35)。なお、この段階では、携帯端末100は、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104を自動的に開いてフォルダ内の一覧を表示してもよい。
【0034】
作業者は、この表示された旧部品の画像データから、いずれかの画像データを選択し、作業完了報告書の旧部品の写真添付欄に貼り付ける(ステップS36)。なお、交換した部品が複数ある場合には、旧部品の画像データも複数になるが、いずれも旧部品の画像データなので、全ての画像データを選択して作業完了報告書の旧部品の写真添付欄に貼り付ければよい。
【0035】
続いて、作業者は、携帯端末100の新部品の画像データ専用格納フォルダ105を開き、新部品の画像データを一覧表示する(ステップS37)。
作業者は、この表示された新部品の画像データから、旧部品の写真添付欄と同じ仕様や形状の画像データを目視で選別する(ステップS38)。そして作業者は、選別した画像データを、作業完了報告書の新部品の写真添付欄に貼り付ける(ステップS39)。これで作業完了報告書が完成する。
【0036】
次に、作業者は、作成された作業完了報告書を建物の管理人に提出し、作業完了を報告する(ステップS40)。さらに、作業現場である建物を退館した作業者は勤務先に戻り、作業者の管理者にも作業完了報告書を提出し、作業完了を報告する(ステップS41)。報告を受けた管理者は、作業完了報告書を承認し(ステップS42)、作業計画管理サーバ20に管理者が承認した作業完了報告書を登録する(ステップS43)。これで、1つの作業が完結となる。
【0037】
[作業報告書の例]
図7は、本例の携帯端末100で作成される作業完了報告書の例を示す。
作業完了報告書は電子帳票であり、作業を行った作業現場の情報を記載する欄E1、作業内容を記載する欄E2、旧部品の画像データを貼り付ける欄E3、並びに、新部品の画像データを貼り付ける欄E4がある。
図7の例では、3つの部品の交換を行った場合の作業完了報告書のため、旧部品の画像データを貼り付ける欄E3と新部品の画像データを貼り付ける欄E4は3箇所(E3-1~E3-3、E4-1~E4-3)用意されている。
【0038】
作業を行った作業現場の情報を記載する欄E1と、作業内容を記載する欄E2は、作業計画管理サーバ20に登録された情報があらかじめ入力されており、特に変更がない限りは修正せずそのまま流用できる。よって、作業者が作業完了報告書を完成させるために必要な主な作業は、欄E3と欄E4に部品の画像データを貼り付けることである。
【0039】
ここで、欄E3に旧部品の画像を貼り付ける際には、
図6のステップS35で説明したように、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104が開かれており、そのフォルダから選択する操作を行うだけで、3つの欄E3-1~E3-3に、それぞれ旧部品の画像を間違いなく貼り付けることができる。
そして、欄E4に新部品の画像を貼り付ける際についても、
図6のステップS37で説明したように、新部品の画像データ専用格納フォルダ105が開かれているので、そのフォルダから欄E3-1~E3-3に貼り付けた旧部品と同じ仕様や形状の画像を選ぶだけで、新部品の画像を間違いなく貼り付けることができる。
【0040】
以上説明したように、本例の部品交換作業登録システムによると、旧部品の画像と新部品の画像とを目視で選別する必要がなくなる。特に、旧部品の画像は、作業完了報告書の該当欄に機械的に貼り付けるだけの単純作業になるので、作業完了報告書の作成を大幅に省力化することが可能となる。
【0041】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0042】
例えば、
図7に示す作業完了報告書の作成時には、旧部品の画像データを貼り付ける欄E3には、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104に格納された画像を、撮影順などに基づいて、携帯端末100が自動的に貼り付ける作業を行ってもよい。あるいは、自動的に貼り付けない場合でも、携帯端末100は、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104に格納された画像は、旧部品の貼り付け欄E3にだけ、貼り付けることができるようにし、新部品の貼り付け欄E4に貼り付ける操作を作業者が行っても、該当する操作を受付けないようにしてもよい。
【0043】
さらに、作業者の操作、又は自動的に、旧部品の貼り付け欄E3に旧部品の画像を貼り付けたとき、携帯端末100は、ほぼ同様の仕様や形状の新部品の画像を新部品の画像データ専用格納フォルダ105から探し出して、対応した新部品の貼り付け欄E4に自動的に貼り付けるようにしてもよい。例えば、
図7に示す旧部品の貼り付け欄E3-1に、旧部品としてのリレーの画像を貼り付けたとき、携帯端末100は、その欄E3-1に対応した新部品の貼り付け欄E4-1に、同じリレーの形状の画像を新部品の画像データ専用格納フォルダ105から探し出して、貼り付ける処理を実行する。
このように自動的に旧部品と新部品の画像を貼り付けることで、作業完了報告書の作成がより簡単に行うことができるようになる。
【0044】
あるいは、携帯端末100で作業完了報告書に画像の添付が完了したとき、それぞれの旧部品の貼り付け欄E3と新部品の貼り付け欄E4とが対応しているか否かを携帯端末100が判断して、電子帳票としての作業完了報告書が適正に作成されたか否かを判定するようにしてよい。例えば、旧部品の貼り付け欄E3-1に、旧部品としてのリレーの画像を貼り付け、新部品の貼り付け欄E4-1にリレーとは別の新部品の画像を貼り付けたとき、携帯端末100は、画像認識で旧部品と新部品の不一致を検出して、作業完了報告書が適正でないと警告表示を行う。
これにより、作業完了報告書の作成ミスを防止できるようになる。
さらに、作業完了報告書に記載された作業内容に、交換を行う部品名が記載されている場合には、携帯端末100がその部品名に相当する形状の部品の画像を画像認識で自動的に探し出して、作業完了報告書の旧部品の貼り付け欄E3と新部品の貼り付け欄E4に貼り付けてもよい。
【0045】
また、例えば、
図2及び
図3に示す携帯端末100は、作業者が作業時に常時携帯する保守作業専用の携帯端末に搭載するものとしているが、特に使用機器を限定するものではなく、例えば一般的に普及しているスマートフォンやタブレット端末に搭載してもよい。また、カメラと携帯端末とは別体の装置として、ノート型パーソナルコンピュータ装置などの携帯端末が、カメラで撮影した画像データを受信して、処理を行うようにしてもよい。
【0046】
また、本発明は、部品交換への使用に限定するものではなく、作業前か作業後かを判断する手段として用いることもできる。例えば保守点検時に点検前か点検後かを判別する手段として使ってもよい。
【0047】
また、上述した実施の形態例では、昇降機の一例としてエレベーターの保守作業時に部品交換を行う場合とした。これに対して、その他の各種設備機器の部品交換を行う場合に適用が可能である。
また、上述した実施の形態例では、作業者が所持する携帯端末100で、現場で作業終了時に作業完了報告書を作成するようにしたが、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104と新部品の画像データ専用格納フォルダ105に格納された画像データを使って、別の端末装置で後日作業完了報告書を作成してもよい。この旧部品の画像データ専用格納フォルダ104と新部品の画像データ専用格納フォルダ105は、作業者が所持する携帯端末100内に用意する代わりに、作業計画管理サーバ20などの任意のサーバ上に用意してもよい。また、旧部品の画像データ専用格納フォルダ104と新部品の画像データ専用格納フォルダ105の構成については特に説明しなかったが、例えば作業日や撮影場所ごとに各フォルダ内の画像データを分類して保存するようにしてもよい。また、作業完了報告書の作成が完了した時点や、作業日から所定日数が経過したとき、携帯端末100が自動的に各フォルダ内の画像データを削除してもよい。
【0048】
また、
図2,
図3などに示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、本例のシステムをコンピュータなどの情報処理装置で構成した場合に、部品交換作業登録方法を実現するプログラムについては、携帯端末を構成するコンピュータ内の不揮発性ストレージやメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…エレベーター、12…錘、13…機械室、14…巻き上げ機、15…部品、20…作業計画管理サーバ、30…管理者端末、100…携帯端末、100a…CPU、100b…主記憶部、100c…不揮発性ストレージ、100d…カメラ、100e…ネットワークインタフェース、100f…入出力部、100g…表示部、101…カメラ、102…画像入力部、103…分析結果出力部、104…旧部品の画像データ専用格納フォルダ、105…新部品の画像データ専用格納フォルダ、110…画像分析部、111…円画像検出部、112…円領域正規化部、113…画像白黒化部、114…マッチング検知部、115…画像テンプレート記憶部