(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】がんを処置するための医薬剤を局所送達するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/592 20060101AFI20241129BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241129BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20241129BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241129BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241129BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K31/592
A61K31/4745
A61K31/352
A61P17/00
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021500148
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019040343
(87)【国際公開番号】W WO2020010108
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-07-01
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】デメーリ,シャドメア
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0115821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)
カルシポトリエン、および(ii)イミキモド
またはDMXAAを含む、対象の皮膚における増殖障害の処置に使用するための医薬。
【請求項2】
細胞毒性薬剤の投与を含まない、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記(i)および(ii)を、対象の皮膚における増殖の部位に直接投与するための、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
前記皮膚における前記増殖障害が、非ケラチン生成細胞がんであり、任意に、前記非ケラチン生成細胞がんが、黒色腫、乳房外ページェット病または乳がん転移であり、または、任意に、前記非ケラチン生成細胞癌腫が、扁平上皮細胞癌腫(「SCC」)、基底細胞癌腫(「BCC」)またはケラチン生成細胞がんでない、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項5】
前記皮膚において増殖性障害の前記部位が腫瘍である、請求項3または4に記載の医薬。
【請求項6】
前記皮膚において増殖障害の前記部位が、前記対象の前記胸壁内の転移を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
前記(i)および(ii)が、同時にまたは連続して投与される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項8】
前記(i)および(ii)を含む単一組成物が投与される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
前記(i)および(ii)の一方または両方が、局所的に投与される、請求項1~
8のいずれか1項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2018年7月5日に出願された米国特許仮出願第62/694,100号明細書;および2018年10月3日に出願された第62/740,514号明細書の利益を主張する。前述の内容の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって授与された補助金番号OD021353の下で政府支援により行われた。政府は、発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、少なくとも一部において、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)誘導因子(例えば、カルシポトリエン)および自然免疫活性化剤(例えば、イミキモド、TLRアゴニスト、STINGアゴニストおよび腫瘍崩壊性ウイルス)を含む組成物(例えば、局所組成物)、ならびに、例えば、皮膚がん[例えば、マークル細胞癌腫、黒色腫、乳房外ページェット病、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)]、乳がん(原発性および胸壁転移)および他のがんを含めた悪性腫瘍を処置するためのそれの使用の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
がんの場所、疾患の程度および手術に関連する病的状態のため、外科的切除の芳しくない候補と考えられるいくつかの皮膚悪性腫瘍が存在する。これらの皮膚悪性腫瘍には、乳がん皮膚転移、乳房外ページェット病および皮膚黒色腫(特にin situ病変および悪性黒子)1~3がある。全身性処置および放射線が、利益が大きくなく、有意な副作用がある切除不能なこれらがんの処置に使用されてきた1~3。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に示されるように、1つまたは複数のT細胞/胸腺ストローマリンホポエチン(TSLP)活性化薬剤(即ち、カルシポトリエン、レチノイン酸)と1つまたは複数の自然免疫細胞活性化薬剤(即ち、イミキモド、STINGアゴニスト)との併用は、がん、例えば、非ケラチン生成細胞皮膚悪性腫瘍(例えば、乳房外ページェット病および乳転移)および黒色腫を含めた皮膚のがんに対して強力な抗腫瘍性免疫活性化を提供する相乗効果をもたらす。特に、局所的なカルシポトリエン+イミキモド、レチノイン酸+イミキモド、およびカルシポトリエン+DMXAA処置は、乳がんおよび黒色腫の成長の遮断においてカルシポトリオール、レチノイン酸、イミキモドまたはDMXAA単独療法より有意に効果的であった。加えて、カルシポトリエン+イミキモドの短期間の局所的処置は、患者における乳房外ページェット病の処置に効果的だった。したがって、自然免疫活性化剤と胸腺間質リンホポエチン(TSLP)活性化薬剤による直接T細胞誘導の併用、および増殖障害、特に皮膚悪性腫瘍におけるその使用が、本明細書に提供される。
【0006】
(i)TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤および(ii)自然免疫細胞活性化薬剤の治療有効量を、好ましくは対象の皮膚における増殖の部位に直接投与するステップと、それにより対象の皮膚における増殖障害を処置するステップとを含む、それを必要とする対象の皮膚における増殖障害を処置する方法が本明細書に提供される。好ましくは細胞毒性薬剤の非存在下での、それを必要とする対象の皮膚における増殖障害の処置における使用のための、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤、および自然免疫細胞活性化薬剤方法も、本明細書に提供される。
【0007】
一部の実施形態において、皮膚における増殖障害は、非ケラチン生成細胞がん、例えば、黒色腫、乳房外ページェット病または乳がん転移である。
【0008】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、腫瘍である。
【0009】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、対象の胸壁内の転移を含む。
【0010】
一部の実施形態において、本方法は、細胞毒性薬剤を投与するステップを含まない。
【0011】
一部の実施形態において、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤は、ビタミンD類似体、例えば、カルシポトリエンまたはレチノイン酸である。
【0012】
一部の実施形態において、自然免疫細胞活性化薬剤は、TLRアゴニスト、STINGアゴニストまたは腫瘍崩壊性ウイルスである。
【0013】
一部の実施形態において、TLRアゴニストは、イミキモド、レジキモド、852A、モトリモッド(motolimod)(VTX-2337);CpG-ODN;またはODN2395である。
【0014】
一部の実施形態において、STINGアゴニストは、DMXAA、MK-1454またはADU-S100である。
【0015】
一部の実施形態において、腫瘍崩壊性ウイルスは、タリモジーンラハーパレプベック(T-Vec)である。
【0016】
一部の実施形態において、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤を含む組成物および自然免疫細胞活性化薬剤を含む組成物は、同時にまたは連続して投与される。
【0017】
一部の実施形態において、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤および自然免疫細胞活性化薬剤を含む単一の組成物が投与される。
【0018】
一部の実施形態において、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤と自然免疫細胞活性化薬剤の一方または両方が、局所的に投与される。
【0019】
それを必要とする対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除する方法であって、前記方法が、対象の皮膚における増殖の部位にカルシポトリエンおよびイミキモドを含む組成物を局所的に投与するステップと、それにより対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除するステップとを含み、皮膚の増殖障害が、ケラチン生成細胞癌腫を含まない方法も本明細書に記載される。
【0020】
一部の実施形態において、皮膚における増殖障害は、皮膚悪性腫瘍である。
【0021】
一部の実施形態において、皮膚悪性腫瘍は、黒色腫、乳房外ページェット病または乳がんである。
【0022】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、腫瘍である。
【0023】
一部の実施形態において、腫瘍重量(サイズ)は、相乗的に減少する。
【0024】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、対象の胸壁内の転移を含む。
【0025】
一部の実施形態において、ケラチン生成細胞癌腫は、扁平上皮細胞癌腫(「SCC」)、基底細胞癌腫(「BCC」)またはケラチン生成細胞がんである。
【0026】
一部の実施形態において、カルシポトリエンおよびイミキモドを含む組成物は、レチノイン酸をさらに含む。
【0027】
加えて、それを必要とする対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除する方法であって、前記方法が、黒色腫、乳房外ページェット病または乳がんと診断された対象の皮膚における増殖の部位にカルシポトリエンおよびイミキモドから本質的になる組成物を局所的に投与するステップと、それにより対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除するステップとを含む方法が、本明細書に記載される。
【0028】
加えて、それを必要とする対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除する方法であって、前記方法が、対象の皮膚における増殖の部位にカルシポトリエンを含む組成物およびイミキモドを含む組成物を局所的に投与するステップと、それにより対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除するステップとを含み、皮膚の増殖障害が、ケラチン生成細胞癌腫を含まない方法も本明細書に記載される。
【0029】
一部の実施形態において、カルシポトリエンを含む組成物およびイミキモドを含む組成物は、同時にまたは連続して投与される。
【0030】
一部の実施形態において、レチノイン酸を含む組成物は、カルシポトリエンを含む組成物およびイミキモドを含む組成物と同時か連続してかいずれかで投与される。
【0031】
さらに、それを必要とする対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除する方法であって、前記方法が、対象の皮膚における増殖の部位にカルシポトリエンおよびSTINGアゴニストを局所的に投与するステップと、それにより対象の皮膚における増殖障害を減少させるまたは排除するステップとを含む方法が本明細書にさらに記載される。
【0032】
一部の実施形態において、カルシポトリエンは局所的に投与される。
【0033】
一部の実施形態において、皮膚における増殖障害は、皮膚悪性腫瘍である。
【0034】
一部の実施形態において、皮膚悪性腫瘍は、黒色腫、乳房外ページェット病または乳がんである。
【0035】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、腫瘍である。
【0036】
一部の実施形態において、腫瘍重量は、相乗的に減少する。
【0037】
一部の実施形態において、皮膚における増殖の部位は、対象の胸壁内の転移を含む。
【0038】
一部の実施形態において、本方法は、0.001~0.01%、例えば、0.005%カルシポトリエンもしくは別のビタミンD類似体を含む組成物、および1~10%、例えば、5%イミキモドもしくは別のTLRアゴニスト、またはレチノイン酸を含む組成物の局所的適用を含み;一部の実施形態において、0.001~0.01%、例えば、0.005%カルシポトリエンまたは別のビタミンD類似体、および1~10%、例えば、5%イミキモドまたは別のTLRアゴニストを含む単一の組成物が使用される。
【0039】
一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、軟膏剤、塗剤、ゲル剤またはクリーム剤である。
【0040】
一部の実施形態において、2つの組成物が使用される場合、一方の組成物は局所的に適用され(例えば、TSLP誘導因子)、他方の組成物は注射、例えば、病巣内/腫瘍内注射(例えば、STINGアゴニスト)によって投与される。
【0041】
定義
別段の規定がない限り、本明細書に使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含めて本出願が支配することになる。
【0042】
本明細書では、「対象」は、ヒト、家畜および飼育動物、ならびにマウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、牛およびより高等な霊長類などの動物園、スポーツまたはペット動物を含めた任意のメンバーの哺乳類クラスを含めた脊椎動物である。
【0043】
本明細書では、用語「処置する」「処置している」、「処置」、等は、障害および/またはそれに関連する徴候を減少させるもしくは改善することを指す。除外されるものではないが、障害または症状の処置は、障害、症状またはそれに関連する徴候が完全に排除される必要がないことはいうまでもない。
【0044】
本明細書に提供される範囲は、範囲内の全ての値の短縮形と理解される。例えば、範囲1~50は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50を構成する群の任意の数、数の組合せまたは部分的範囲(および文脈に別段の明確な指図がない限りその分数)を含むと理解される。
【0045】
本明細書では、「腫瘍重量における相乗効果的減少」を含めて、相乗作用または相乗効果への言及は、併用での2つ以上の治療的薬剤の使用から予想される加法的効果より大きい効果のことを指す。
【0046】
本明細書では、「減少」または「減少させる」は、無処置の対照または参照基準より少なくとも約0.05倍少ない(例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、5、10、25、50、100、1000、10000倍またはより少ない)量である。「減少」または「減少させる」は、無処置の対照または参照基準より少なくとも約5%少ない(例えば5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99もしくは100%またはより少ない)量のことを指すこともできる。
【0047】
特に記述がないまたは文脈から明らかでない限り、本明細書では、用語「約」は、当業者における通常の許容限度内、例えば平均の2標準偏差内にあると理解される。「約」は、記載されている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%内と理解される。文脈から明らかでない限り、本明細書に提供される全ての数値は用語約によって修飾される。
【0048】
本開示において、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」および「有する(having)」、等は、米国特許法に帰する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含む(including)」、などを意味することができ;「から本質的になる」または「本質的になる」は、同様に米国特許法に帰する意味を有し、用語には、制限がなく、列挙される基本的または新規の特徴が、列挙されるその他の存在によって変更されない限り列挙されるその他の存在を考慮するが、先行技術の実施形態を除外する。
【0049】
他の定義は、この開示の全体を通じて文脈中に記載される。
【0050】
本発明の他の特徴および優位性は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。したがって、本発明の他の態様が、以下の開示に記載され、本発明の範囲内である。
【0051】
以下の詳細な説明は、例のために提供されるが、本発明を記載されている特定の実施形態に限定することを意図するものではなく、付随する図と併せて理解され得、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1-1】
図1A~
図1Dは、カルシポトリエン+イミキモドが、乳がんの成長を遮断したことを示す図である。群当たりn=4;エラーバーは、平均+SDを表す;両側マンホイットニーU検定が有意性の検定として使用される;目盛りバー:1cm。 (1A)乳がんに対する局所的免疫療法としてのカルシポトリエン+イミキモドの有効性を決定するために使用した実験プロトコルの概念図である。PyMTtg原発性乳がん細胞が、野生型C57BL/6マウスの鼠径部に皮下移植される。腫瘍が直径5mmに達したら(13日目)、以下の局所的処置を腫瘍部位に2回適用した:(a)100% EtOH 20マイクロリットル中の80nmolカルシポトリエン、その後5%イミキモドクリーム、(b)100% EtOH 20マイクロリットル中の80nmolカルシポトリエン、その後保湿(対照)クリーム、(c)100% EtOH 20マイクロリットル、その後5%イミキモドクリーム、および(d)100% EtOH 20マイクロリットル、その後保湿(対照)クリーム。 (1B)終点における各処置群内の代表的な乳腫瘍の巨視的画像は、他の群内のマウスと比較してカルシポトリエン+イミキモド処置マウスにおいて有意により小さい腫瘍を示した。 (1C)経時的な腫瘍容積測定が示される。腫瘍成長は、カルシポトリエン+イミキモド処置により遮断される(p=0.011)。矢印は、処置時点を強調する。 (1D)終点の腫瘍重量が示される。カルシポトリエン+イミキモドで処置された乳腫瘍は、他の処置群におけるそれより有意に小さい(*:p<0.05)。
【
図1-2】
図1E~
図1Fは、カルシポトリエン+イミキモドが、乳がんの成長を遮断したことを示す図である。群当たりn=4;エラーバーは、平均+SDを表す;両側マンホイットニーU検定が有意性の検定として使用される;目盛りバー:1cm。 (1E)乳腫瘍のフローサイトメトリー分析は、カルシポトリエン+イミキモド処置腫瘍におけるT細胞(CD3+)の誘導を示す。 (1F)カルシポトリエン+イミキモド処置腫瘍におけるCD4+およびCD8+T細胞は、他の処置コホートの腫瘍から単離されたT細胞と比較して高度に増殖的である(Ki67+)。
【
図2-1】
図2A~
図2Dはカルシポトリエン+STINGアゴニスト(DMXAA)が、黒色腫の成長を遮断したことを示す図である。群当たりn=3;エラーバーは、平均+SDを表す;両側マンホイットニーU検定が有意性の検定として使用される;目盛りバー:1cm。 (2A)黒色腫に対する限局性免疫療法としてのカルシポトリエン+DMXAAの有効性を決定するために使用した実験プロトコルの概念図である。B16-F10黒色腫細胞が、野生型C57BL/6マウスの横腹に皮下移植される。腫瘍が直径5mmに達したら(14日目)、以下の処置を3回適用した:(a)100% EtOH 20マイクロリットル中の40nmolカルシポトリエン、その後生理食塩水100μL中のDMXAA 400μgのIP注射、(b)100% EtOH 20マイクロリットル中の40nmolカルシポトリエン、その後生理食塩水100μLのIP注射、(c)100% EtOH 20マイクロリットル、その後生理食塩水100μL中の400μg DMXAAのIP注射、および(d)100% EtOH 20マイクロリットル、その後生理食塩水100μLのIP注射。 (2B)終点における各処置群内の代表的な黒色腫腫瘍の巨視的画像は、他の群内のマウスと比較してカルシポトリエン+DMXAA処置マウスにおいて有意により小さい腫瘍を示した。 (2C)経時的な腫瘍容積測定が、示される。腫瘍成長は、カルシポトリエン+DMXAA処置により遮断される(p=0.019)。矢印は、処置時点を強調する。 (2D)終点の腫瘍重量が示される。カルシポトリエン+DMXAAで処置された黒色腫腫瘍は、他の処置群におけるそれより有意に小さい(*:p<0.05)。
【
図2-2】
図2E~
図2Fはカルシポトリエン+STINGアゴニスト(DMXAA)が、黒色腫の成長を遮断したことを示す図である。群当たりn=3;エラーバーは、平均+SDを表す;両側マンホイットニーU検定が有意性の検定として使用される;目盛りバー:1cm。 (2E)黒色腫腫瘍のフローサイトメトリー分析は、カルシポトリエン+DMXAA処置腫瘍におけるT細胞(CD3+)の誘導を示す。 (2F)カルシポトリエン+DMXAA処置腫瘍におけるCD4+およびCD8+T細胞は、他の処置コホートの腫瘍から単離されたT細胞と比較して高度に増殖的である(Ki67+)。
【
図3】
図3A~
図3Dは、カルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモドが、黒色腫の成長を遮断したことを示す図である。群当たりn=3;エラーバーは、平均+SDを表す;両側マンホイットニーU検定が有意性の検定として使用される;目盛りバー:1cm。 (3A)黒色腫に対する限局性併用免疫療法としてのカルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモドの有効性を決定するために使用した実験プロトコルの概念図である。B16-F10黒色腫細胞が、野生型C57BL/6マウスの横腹に皮下移植される。腫瘍が触診可能になったら(4日目)、以下の処置を3回適用した:(a)100% EtOH 20マイクロリットル中の20nmolカルシポトリエン、その後5%イミキモドクリーム、(b)100% EtOH 20マイクロリットル中の20nmolレチノイン酸、その後5%イミキモドクリーム、(c)100% EtOH 20マイクロリットル中の20nmolカルシポトリエン、その後保湿(対照)クリーム、(d)100% EtOH 20マイクロリットル中の20nmolレチノイン酸、その後対照クリーム、および(e)100% EtOH 20マイクロリットル、その後5%イミキモドクリーム。 (3B)終点における各処置群内の代表的な黒色腫腫瘍の巨視的画像は、単独療法群内のマウスと比較してカルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモド処置マウスにおいて有意により小さい腫瘍を示した。 (3C)経時的な腫瘍容積測定が示される。腫瘍成長は、イミキモド単独療法処置と比較してカルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモド処置により遮断される(p=0.05)。矢印は、処置時点を強調する(ns:有意でない)。 (3D)終点の腫瘍重量が示される。カルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモドで処置された黒色腫腫瘍は、他の処置群におけるそれより有意に小さい(*:p<0.05;ns:有意でない)。
【
図4】
図4A~
図4Bは、カルシポトリエン+イミキモドの併用が、患者のEMPD病変サイズを減少させたことを示す図である。 (4A)2名のEMPD患者を処置するために使用した4日間のカルシポトリエン+イミキモド処置の概念図である。 (4B)患者2名の処置前後の性器上のEMPD病変の巨視的画像である。なお、「処置後」画像は手術時に撮像される。黄色の点線は、処置前後の病変の縁を強調する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発見は、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤(例えば、カルシポトリエンまたはレチノイン酸)と自然免疫細胞活性化薬剤(例えば、イミキモド、TLRアゴニスト、STINGアゴニストまたは腫瘍崩壊性ウイルス)との併用が、がんに対する相乗的有効性を生じ得ることを実証した。これらの併用は、乳がん皮膚病変、乳房外ページェット病、黒色腫および現在イミキモドで処置されている他の病変を含めた悪性腫瘍に対する適応免疫の最適な活性化をもたらす。これらの発見は、骨髄性細胞における生来のシグナル伝達をTSLPによる直接のT細胞刺激と併用することによってコールド(cold)(非免疫原性)がんをホット(hot)(炎症を起こした)がんに形質転換して、がんに対する強力な免疫を誘導する処置モダリティも提供する。これらの併用療法は、樹状細胞およびマクロファージによる最適な抗原提示を誘導する(イミキモド/DMXAA効果)ならびに腫瘍関連抗原の検出により完全なT細胞活性化を誘導する(カルシポトリエン/レチノイン酸効果)ことによってがん細胞(標的)を破壊する。完全なT細胞活性化のためにシグナル1、シグナル2およびシグナル3を標的とするこれらの併用は、強力な抗腫瘍性適応免疫および効果的ながん処置をもたらす。これらの併用を開発して腫瘍へそれを送達することにより内部がんを処置することができるが、局所的併用でこれら薬剤を送達する能力は、黒色腫、乳房外ページェット病および乳からの皮膚転移の様な皮膚悪性腫瘍ならびに他の内部がんを効果的に処置する固有の機会を創出する。これら悪性腫瘍の中で、乳房外ページェット病は、アポクリン腺支持皮膚の希少な腺癌(乳腺/がんと類似の発達起源を持つ)である2。このがんは、管理が困難であることがよく知られている2。これら患者における手術の再発率は30%と高く、ほとんどの場合鼠径部および性器にある病変の場所のため有意な病的状態の原因になる13、14。加えて、このがんに対する化学療法および放射線の有効性に関するデータは限定されている15。したがって、本併用は、乳房外ページェット病に対する効果的な治療手法として使用され得、この消耗性疾患の患者の医療に革命をもたらし得る。
【0054】
処置の方法
本明細書に記述される方法は、増殖障害、特に皮膚悪性腫瘍の処置方法を含む。一般に、本方法は、本明細書に記載の併用療法、即ち、TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤(例えば、カルシポトリエンまたはレチノイン酸)および自然免疫細胞活性化薬剤(例えば、イミキモド、TLRアゴニスト、STINGアゴニストまたは腫瘍崩壊性ウイルス)を含む併用療法の治療有効量をそのような処置を必要とする、または必要とすると決定された対象に投与するステップを含む。
【0055】
一般的に言って、本組成物および方法は、例えば、米国特許出願公開第2017/0246299号明細書に記載の細胞毒性薬剤の使用を含まない。
【0056】
この文脈に使用される場合、「処置する」は、増殖障害の少なくとも1つの徴候を改善することを意味する。増殖障害の処置に対する本明細書に記載の化合物の治療有効量の投与は、病変もしくは腫瘍成長速度の低下、病変もしくは腫瘍の退縮、および/または病変もしくは腫瘍サイズの減少をもたらすことになり、ならびに寿命を増大させ、再発の危険性を減少させ、および/または外科的介入の必要性を減少させ得る。
【0057】
本明細書に記載される併用は、例えば、活性な免疫を生じることにより、異常なアポトーシスまたは分化過程に関連する障害、例えば、細胞増殖障害もしくは細胞分化障害、例えば、がんの処置に有用である。細胞の増殖および/または分化障害の例には、がん、例えば、癌腫、肉腫、転移性障害または造血新生物障害、例えば、白血病がある。転移性腫瘍は、前立腺、結腸、肺、乳および肝臓起源の型を含むがこれに限定されない原発腫瘍型の多数に起因し得る。
【0058】
本明細書では、用語「がん」、「高増殖性」および「新生物」とは、自律増殖の能力、即ち、急速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態または症状を有する細胞のことを指す。高増殖性および新生物疾患状態は、病的である、即ち、疾患状態を特徴付けるもしくは構成すると分類されてもよく、または非病的、即ち、正常からは逸脱しているが疾患状態には関連していないと分類されてもよい。本用語は、組織病理学的型または浸潤の段階に関係なく、全ての型のがん性成長もしくは発癌過程、転移性組織または悪性に形質転換した細胞、組織もしくは器官を含むことを意味する。「病理学的に高増殖性の」細胞は、悪性腫瘍の成長によって特徴付けられる疾患状態に存在する。非病的高増殖性細胞の例には、傷の修復に関連する細胞の増殖がある。
【0059】
用語「がん」または「新生物」は、肺、乳、甲状腺、リンパ、胃腸、および尿生殖器路などに影響を及ぼす様々な器官系の悪性腫瘍、ならびに大部分の大腸がんなどの悪性腫瘍を含む腺癌、腎細胞癌、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞性癌、小腸のがんおよび食道のがんを含む。
【0060】
用語「癌腫」は、当業者に認識されており、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、睾丸癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、内分泌系癌腫および黒色腫を含めた上皮または内分泌組織の悪性腫瘍のことを指す。典型的な癌腫は、頸部、直腸、肺、前立腺、乳、頭頸部、結腸および卵巣の組織から形成するものを含む。用語は、例えば、癌性および肉腫性組織で構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫も含む。「腺癌」とは、腺組織から得られる癌腫、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
【0061】
用語「肉腫」は、当業者に認識されており、間葉性起源の悪性腫瘍のことを指す。
【0062】
一部の実施形態において、障害は、皮膚非ケラチン生成細胞がん、例えば、乳房外ページェット病、乳がん皮膚転移、および皮膚黒色腫(例えば、in situ病変および悪性黒子)である。
【0063】
一部の実施形態において、障害は、ケラチン生成細胞癌腫ではない、即ち、基底細胞癌腫または皮膚扁平上皮癌腫(SCC)ではない。
【0064】
増殖性障害の追加的な例には、造血性新生物障害がある。本明細書では、用語「造血性新生物障害」には、例えば、脊髄、リンパもしくは赤血球系統、またはその前駆細胞から生ずる造血性起源の過形成/新生物細胞に関係する疾患がある。好ましくは、疾患は皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)である。
【0065】
一部の実施形態において、増殖性障害は前癌性皮膚障害を含む。皮膚障害は、真皮、表皮もしくは皮下層における細胞もしくは細胞の群または層の異常な活性、または真皮-表皮接合部における異常に関係する場合がある。
【0066】
胸腺間質リンホポエチン(TSLP)誘導剤
本併用は、TSLP誘導剤の使用を含む。本明細書では、「TSLP誘導因子」は、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)を誘導する能力がある任意の化合物である。TSLPは、インターロイキン-7(IL-7)サイトカインファミリーに属する上皮由来サイトカインである。多数のそのような薬剤が、当業者に公知である。化合物がTSLPを誘導するかどうか決定する方法は、当業者に公知である。例えば、TSLP核酸発現、TSLPタンパク質発現またはTSLP活性は、米国特許出願公開第2017/0246299号明細書により詳細に記載の通り測定されてもよく、その特許はその全体が本明細書に組み込まれる。TSLP誘導因子の非限定的な例には、レチノイン酸、ビタミンD類似体、ポリイノシン-ポリシチジル酸[ポリ(I:C)および他のTLR3リガンド]、FSL-1(および他のTLR2-TLR6リガンド)、フラジェリン(および他のTLRSリガンド)、ベータ2-アドレナリンアゴニスト、cAMP上昇薬剤(例えば、フォルスコリン)、脂肪酸(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸およびデカン酸)、キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、12-O-テトラデカノイルホルボール-13-酢酸[TPA、テトラデカノイルホルボール酢酸、テトラデカノイルホルボール酢酸、およびホルボール12-ミリスチン酸13-酢酸(PMA)]、フタル酸ジブチル(DBP)、およびフタル酸ジイソノニル(DINP)がある。
【0067】
レチノイン酸は、ビタミンA(レチノール)の代謝産物であり、TSLPの誘導因子である。それは、トレチノイン、ビタミンA酸、ATRAおよび全トランス型レチノイン酸として公知である。
【0068】
一部の実施形態において、TSLP誘導因子は、ビタミンDまたはその類似体でもよい。ビタミンDとは、脂溶性セコステロイドの一群のことを指す。セコステロイドは、典型的な4つのステロイド環のうちB環炭素原子の2つが、ステロイドにおいては結合しているのに対して、セコステロイドにおいては結合していないことを除いて、ステロイドに構造が非常によく似ている。例には、活性ビタミンD(またはカルシトリオール)、およびビタミンD3、別名コレカルシフェロール(光エネルギーが前駆体分子7-デヒドロコレステリンによって吸収されると動物の皮膚において生成されるビタミンDの形態)がある。
【0069】
ビタミンDの構造的に修飾された誘導体は、ビタミンD類似体と称されてもよい。ビタミンD類似体は、無修飾バージョンと比較して生物学的利用能、可溶性が改善され、改善された安定性および/または取扱い特性を有するように修飾されてもよい。ビタミンD類似体のプロドラッグも予測される。ビタミンD受容体に結合し、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)を誘導する能力がある任意のビタミンD類似体が、本明細書に記載の組成物に適切であり得る。ビタミンD類似体は多く存在し、当業者によって認識されることになる。適切なビタミンD類似体の非限定的な例には、1,24-(OH)2D3(カルシトロール)、26,27-Ffl-I,25-(OH)2D3(ST-630)、I.アルファ-(OH)D2、1α-(OH)D3、1,24-(OH)2D3(TV-02)、22-オキサカルシトリオール(OCT)、カルシポトリオール(MC 903)、1,25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3(Ro 23-7553)、EB 1089、ED-71、PRI-2191、PRI-2205、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、カルシフェロール、カルシジェックス、カルシトリオール、ドキセルカルシフェロール、ヘクトロール、パリカルシトール、ロカルトロール、ドボネックスおよびゼンプラー、ならびに例えば、米国特許第6,753,013号明細書に記載の他の類似体がある。本発明の文脈において用語「類似体」は、合成類似体およびビタミンD代謝産物を含むことが意味される。
【0070】
一部の実施形態において、ビタミンD類似体は、カルシポトリオール(別名カルシポトリエンまたはカルシトレン)である。カルシポトリエンは、カルシトリオールの合成誘導体であり、ビタミンDの形態である。それは、乾癬の処置に使用される。Leo Pharmaは、カルシポトリエン局所軟膏剤について1993年にFDA承認を確保した。ジェネリックバージョンが承認された(GlenMarkおよびTolmar)。表皮由来サイトカイン、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)の誘導は、皮膚および乳がん発症に対して保護する7~9。この保護は、TSLPに直接応答するT細胞によって媒介される7、8。カルシポトリエン、低カルシウム血症ビタミンD類似体およびTSLPの誘導因子は、乳がん処置に使用されてきた免疫療法である8。
【0071】
自然免疫活性化剤
本併用は、抗原提示細胞を活性化する自然免疫活性化剤の使用も含む。自然免疫系の活性化因子には、toll様受容体(TLR)のアゴニスト;STINGアゴニスト;または腫瘍崩壊性ウイルスがある。
【0072】
いくつかのTLRアゴニスト、例えば、TLR7、TLR8もしくはTLR9のアゴニストもしくは活性化因子が当業者に公知であり、イミキモド(TLR7)、レジキモド(TLR7)、852A{(N-[4-(4-アミノ-2-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)ブチル]メタンスルホンアミド}(TLR7);モトリモッド(VTX-2337)(TLR8);CpG-ODN(TLR9)、ODN2395(TLR9)があり;使用され得る他のTLRアゴニストには、BCG(TLR 2/4/9);ポリI:C/ポリICLC(TLR3);またはMPL(TLR4)がある。例えば、Mifsud et al., Front Immunol. 2014; 5:79;Adams, Immunotherapy. 2009 Nov 1; 1(6): 949-964;Kaczanowska et al., J Leukoc Biol. 2013 Jun; 93(6): 847-863を参照のこと。一部の実施形態において、TLRアゴニストはLPSでない。イミキモドは、免疫応答修飾因子として作用する処方薬であり、性器疣贅、表在性扁平型基底細胞上皮腫および光線性角化症を処置するために使用される。3Mは、銘柄アルダラでイミキモドについて1997年に最初のFDA承認を得た。2015年現在、イミキモドはジェネリック品であり、多くの商標(Medicis、Apotex、Fougera、Glenmark、Perrigo Israel、Strides、TaroおよびTolmar)で世界的に利用可能である。乳がん、皮膚転移、乳房外ページェット病および黒色腫の処置としての潜在性を評価するために実験的に使用されてきた唯一の局所的薬剤がイミキモドである1、4~6。イミキモドは、皮膚における自然免疫応答の活性化を通じて働くtoll様受容体(TLR)7アゴニストであるが、適応免疫細胞を直接活性化することはない4。
【0073】
本明細書では、「STINGアゴニスト」は、合成環状ジヌクレオチド(CDN)およびインターフェロン遺伝子タンパク質の刺激物質(STING)の他のアゴニストであり、細胞内のcGAS-STING細胞質DNA検知経路を活性化し、樹状細胞の様な自然免疫細胞の活性化を引き起こすことができる(例えば、DMXAA、MK-1454およびADU-S100)。DMXAA(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、ASA404またはバジメザン)は、脈管破壊剤として機能するSTINGアゴニストである。一部の実施形態において、STINGアゴニストが使用される場合、それは、例えば、病巣内/腫瘍内注射によって、例えば、当技術分野で公知であるように局所的に投与される。
【0074】
腫瘍崩壊性ウイルス(OV)は、がん細胞内で複製することができるが、正常細胞内では複製できず、腫瘍塊の溶解および自然免疫系の起動を引き起こす。OVには、タリモジーンラハーパレプベック(T-Vec)(Amgen);TBI-1401(HF10)(Takara);G207(MediGene);HSV1716(Virtu Biologics);ADV/HSV-tk(Merck);LOAd703(Lokon);CG0070(Cold Genesys);ColoAd1[エナデノチュシレブ(Enadenotucirev)](PsiOxus);ONCOS-102(Targovax Oy);DNX-2401(DNAtrix);VCN-01(VCN);Ad-MAGEA3およびMG1-MAGEA3(Turnstone);NSC-CRAd-サバイビン-pk7(Northwestern);Ad5-yCD/mutTKSR39rep-hIL12(Henry Ford);Ad5-yCD/mutTKSR39rep-ADP(Henry Ford);MV-NIS(Mayo);MV-NIS(アーカンソー大学);GL-ONC1(Genelux);[ペクサスチモジーンダバシレプベック(Pexastimogene Devacirepvec)](Pexa-Vec)(Jennerex);レオライシン(Oncolytics);CVA21[カバタク(CAVATAK)](Viralytics);H-1PV(ParvOryx)(Oryx GmbH);PVSRIPO(Duke);ならびにVSV-hIFNbeta-NIS(Mayo)がある。例えば、Raja et al., Journal for ImmunoTherapy of Cancer (2018) 6:140;Marelli et al., Front Immunol. 2018; 9: 866を参照のこと。
【0075】
医薬組成物および投与の方法
本明細書に記述される方法は、活性成分としてTSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤と自然免疫細胞活性化薬剤の一方または両方を含む医薬組成物の使用を含む。本方法は、両方の薬剤を含む単一の組成物、または薬剤のうちの1つをそれぞれ含む2つの組成物の使用を含み得る。一部の実施形態において、これらは、活性薬剤のみであり、即ち、他のいかなる活性薬剤も組成物または方法に含まれない。
【0076】
医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を一般に含む。本明細書では、言語「薬学的に許容可能な担体」は、医薬品投与と適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、等を含む。補助活性化合物も、組成物に組み込まれ得る;しかしながら、一部の実施形態において、他のいかなる活性化合物も使用されない。
【0077】
本組成物および方法は、例えば、米国特許出願公開第2017/0246299号明細書に記載の細胞毒性薬剤の使用を含まず、および/または抗炎症薬、例えば、ジクロフェナクなどのNSAIDSの使用を含まず、および/またはステロイド性化合物、例えば、ヒドロコルチゾン吉草酸の使用を含まない。
【0078】
医薬組成物は、意図された投与経路と適合するように一般に製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、真皮内、病巣内/腫瘍内、皮下;経皮もしくは局所;経粘膜;または直腸もしくは経腟投与がある。
【0079】
適切な医薬組成物を製剤化する方法は当業者に公知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;およびDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)シリーズの書籍を参照のこと。例えば、非経口、真皮内もしくは皮下適用に使用される溶液または懸濁剤は、以下の成分:注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張力調整のための薬剤を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの、酸または塩基で調整され得る。非経口調合剤は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用の小瓶に封入され得る。
【0080】
一部の実施形態において、TLSP誘導因子は、カルシポトリオールまたは別のビタミンD類似体であり、本方法が、局所的適用を含む場合、例えば米国特許第6,753,013号明細書に記載のビタミンD/D類似体の安定性を促進する溶媒も含まれ、その非限定的な例には:アラモルE[ポリオキシエチレン(15)ステアリルエーテル];アラモルDoA(アジピン酸のジイソオクチルエステル);アラソルブ200(ポリオキシエチレン-20-イソヘキサデシルエーテル);オイタノールG(2-オクチルドデカノール);フィンソルブ(安息香酸イソステアリル);フィンソルブP(ポリオキシプロピレン-15-安息香酸ステアリルエーテル);ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピル(linolate)およびモノオレイン酸イソプロピルなどの直鎖もしくは分枝C10~C18アルカンまたはアルケン酸のイソプロピルエステル;ミグリオール840(カプリル酸のプロピレングリコールジエステルおよびカプリン酸);DPPG[ジペラルゴン酸プロピレングリコール(dipelagonate)];ならびにプロセチルAWSがある。
【0081】
注射可能な使用に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌の注射可能な溶液もしくは分散液を即時調製するための無菌粉末を含み得る。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理的食塩水、静菌水、クレモホールEL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)がある。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール、等)およびその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合、必要とされる粒子サイズの維持によっておよび界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等によって実現され得る。多くの場合、組成物中に等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましいことになる。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0082】
無菌の注射可能な溶液は、適当な溶媒中の必要量の活性化合物を上で掲げた成分のうちの1つまたは組み合わせと合わせ、必要に応じて、その後濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、活性化合物を無菌ビヒクルに組み込むことによって調製され、その無菌ビヒクルは、基本的な分散媒および上で掲げたものから必要とされる他の成分を含有する。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、予め無菌濾過した溶液から活性成分+任意の追加的な所望の成分の粉末を生じる。
【0083】
吸入による投与の場合、化合物は、適切な推進体、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくは分注器からのエアロゾルスプレー、またはネビュライザーの形態で送達され得る。そのような方法には、米国特許第6,468,798号明細書に記載される方法がある。
【0084】
本明細書に記載の治療的化合物の全身性投与は、経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与の場合、透過させようとする障壁に適切な浸透剤が、製剤に使用される。そのような浸透剤は、一般に当業者に公知であり、例えば、経粘膜投与用の界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体がある。経粘膜投与は、鼻腔用スプレー剤または坐剤を使用することにより達成され得る。局所または経皮投与の場合、活性化合物は、一般に当業者に公知の軟膏剤、塗剤、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化される。
【0085】
一部の実施形態において、局所的適用のために一方または両方の薬剤を含む組成物は、美容的に許容可能な担体またはビヒクルおよびいずれかの任意選択の成分をさらに含み得る。そのような美容的に許容可能ないくつかの担体、ビヒクルおよび任意選択の成分が当業者に公知であり、皮膚への適用(例えば、軟膏剤、日焼け防止剤、クリーム剤、乳剤、ローション剤、マスク、血清、など)に適した担体およびビヒクルを含む、例えば、米国特許第6,645,512号明細書および第6,641,824号明細書を参照のこと。特に、望ましい場合がある任意選択の成分には、吸着剤、抗ざ瘡活性物質、抗固化剤、抗脂肪沈着剤、消泡剤、抗真菌活性物質、抗炎症活性物質、抗微生物活性物質、抗酸化剤、制汗/脱臭活性物質、抗皮膚萎縮活性物質、抗ウイルス剤、抗しわ活性物質、人工日焼け剤および促進剤、収斂剤、障壁修復剤、結合剤、緩衝剤、増量剤、キレート化剤、着色剤、色素、酵素、精油、被膜形成剤、矯味剤、芳香剤、湿潤剤、親水コロイド、光拡散剤、マニキュア液、不透明化剤、光学的光沢剤、光学的修飾剤、微粒子、香料、pH調節剤、金属イオン封鎖剤、皮膚調整剤/保湿剤、皮膚感触修飾剤、皮膚保護剤、皮膚知覚剤、皮膚処置剤、皮膚角質除去剤、皮膚美白剤、皮膚緩和および/または治癒剤、皮膚肥厚化剤、日焼け防止活性物質、局所麻酔薬、総合ビタミン剤、およびその組み合わせがあるが、これに限定されない。一部の実施形態において、組成物は、ベンジルアルコール、セチルアルコール、グリセリン、イソステアリン酸、メチルパラベン、ポリソルベート60、プロピルパラベン、精製水、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリルアルコール、白色ワセリンおよび/またはキサンタンガムのうちの1つまたは複数を含む。
【0086】
組成物は、直腸もしくは経腟送達のための坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなど従来通りの座薬基剤を用いる)または停留浣腸の形態でも調製され得る。そのような坐剤は、生殖路または消化管に存在する病変もしくは腫瘍に関連する症状の処置に特に使用され得る。
【0087】
医薬組成物は、投与のための説明書と一緒に容器、包みまたは分注器に含まれ得る。
【0088】
TSLP誘導によってT細胞を活性化する薬剤と自然免疫細胞活性化薬剤の一方または両方、例えば、イミキモドおよび/もしくはカルシポトリエンならびに/またはレチノイン酸を含む局所組成物は、濃度の範囲内で安全かつ効果的な使用に適している。したがって、本明細書に記載される組成物中の局所的活性薬剤の量は、5μg/mL~2000μg/mLの間、例えば、25μg/mL、100μg/mL、500μg/mL 1000μg/mL、1500μg/mLまたは2000μg/mLである。特定の実施形態において、カルシポトリエン(0.005%μg/mL)および約5%μg/mL~約3.75%μg/mLイミキモドが併用して使用される。他の特定の実施形態において、レチノイン酸は、0.01%、0.025%、0.04%、0.05%もしくは0.1%用量のクリームまたはゲル形態で局所的に投与される。この使用のための投与計画、即ち、投薬レジメンは、疾患または症状の段階、疾患または症状の重症度、患者の健康の一般的な状態、患者の身体的な状態、年齢、等を含めた様々な因子によって決まることになる。最低でも、投薬は少なくとも1ヵ月間継続するべきである。
【0089】
局所的組成物は、pH範囲内での安全かつ効果的な使用にも適しているべきである。したがって、本明細書に記載される局所的組成物のpHは、6.0~7.5の間である。
【0090】
一部の実施形態において、本明細書に記載の製剤は局所的投与に適している。本明細書に記載の方法は、対象の皮膚領域内の表皮、または表皮および真皮において少なくとも1つの薬剤の量を増大させるのに理想的に適している。本明細書に記載される局所的組成物は、血流に入るのに適した投薬量で投与され得る。したがって、薬剤は、血流への直接の全身投与前に、または同時に、アジュバントとして局所的に投与され得る。
【0091】
製剤は、単位剤形の形態で都合よく存在してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製され得る。製剤は、製造に適した無毒の薬学的に許容される賦形剤と混合され得る。製剤は、1つまたは複数の希釈剤、乳化剤、保存剤、緩衝剤、賦形剤、などを含んでもよく、患者の局所的投与に適した液剤、軟膏剤、パスタ剤、乳剤、スプレー剤、クリーム剤、ローション剤、スラリー剤、懸濁剤、泡剤、放出制御製剤、ゲル剤、パッチ剤、植込錠、水油二重層組成物、水油粉末三重層組成物、血清、散剤、ムース剤、ヒドロゲル剤、使い捨てアプリケーター、等のような形態で提供されてもよい。
【0092】
本明細書に記載される製剤は、組成物のために皮膚科学的に許容可能な担体(本明細書では単純に「担体」とも称する)を含むことができる。本明細書では慣用句「皮膚科学的に許容可能な担体」は、担体が、毛髪/頭皮への局所的適用に適しており、優れた審美特性を有し、組成物中のETAと適合しており、いかなる不合理な安全性または毒性懸念も引き起こさないことになることを意味する。適切な担体は、所望の産物形態を生じるように選択される。さらに、成分の可溶性または分散性は、担体の形態および特徴に影響し得る。一部の実施形態において、担体は、組成物の重量で約50重量%~約99重量%、約60重量%~約98重量%、約70重量%~約98重量%、または、別法として、約80重量%~約95重量%のレベルで存在する。
【0093】
担体は、様々な形態であり得る。非限定的な例には、単性溶液(例えば、水溶性、有機溶解性または油性)、乳剤、および固体剤形(例えば、ゲル剤、スティック剤、流動性固体または非晶質材料)がある。特定の実施形態において、皮膚科学的に許容可能な担体は、乳剤の形態である。乳剤は、連続的な水相(例えば、水中油型および水中の油中水型)または連続的な油相(例えば、油中水型および油中の水中油型)を有すると一般に分類され得る。本発明の油相は、シリコーンオイル、炭化水素油などの非シリコーンオイル、エステル、エーテル、等、およびその混合物を含んでもよい。
【0094】
水相は、例えば、脱塩水または蒸留水などの水を含む。水溶性担体に使用され得る他の許容可能な担体には、エタノールなどのアルコール化合物があるが、これに限定されない。一部の実施形態によれば、組成物は、アルコール、ジプロピレングリコールおよび/または水を含む。
【0095】
乳剤は、乳化剤をさらに含んでもよい。組成物は、担体を十分に乳化するために任意の適切なパーセンテージの乳化剤を含んでもよい。適切な重量範囲には、組成物の重量に基づいて、約0.1重量%~約10重量%または約0.2重量%~約5重量%の乳化剤がある。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性であり得る。適切な乳化剤は、例えば、米国特許第3,755,560号明細書および第4,421,769号明細書ならびにMcCutcheon's Detergents and Emulsifiers, North American Edition, pages 317-324 (1986)に開示されており、その全体を参照により本明細書に組み込む。適切な乳剤は、所望の産物形態に応じて広範囲にわたる粘度を有し得る。乳化剤の非限定的な例には、ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート60、およびGattefosseによってTrefose(登録商標)という名前で販売されているPEG-6/PEG-32/ステアリン酸グリセロール混合物がある。乳剤は、組成物の約5重量%~約80重量%(例えば、約5重量%~約50重量%)の間の範囲であり得る脂肪相を含有してもよい。本明細書に記載される乳剤のいずれも、油、ワックス、乳化剤および共乳化剤の群から選択される1つまたは複数の薬剤を含有し得る。製剤に使用される油、ワックス、乳化剤および共乳化剤の例は、当業者に周知である。乳化剤および共乳化剤は、組成物の0.3重量%~約30重量%(例えば、約0.5重量%~約20重量%の間)の割合で組成物中に存在し得る。乳剤は、脂質小胞を含有してもよい。
【0096】
局所的組成物は、皮膚がん、炎症性疾患、良性新生物(例えば血管腫)、色素障害の処置のための他の薬剤、診断薬および美容薬剤を含むがこれに限定されない他の薬剤と一緒に製剤化され得る。そのような製剤は、異なる速度で複数の薬剤を連続または同時のいずれかで制御放出するように形状が決められ得る。
【0097】
一緒にまたは投与後に投与され得る他の薬剤には、それだけには限らないが、抗微生物剤、防腐剤および鎮痛剤がある。そのような薬剤は、連続して投与され得る(例えば、局所的組成物の事前投与後)または同時に、例えば、二重放出投与製剤で投与され得る。
【0098】
一部の実施形態において、本方法は、毎日、例えば、1日1~2回、少なくとも2、3、4、5、6、7、8 9、10、11、12、13または14日間、例えば4日間本明細書に記載される処置を投与し、例えば処置の7、10、12、14、21または28日後、例えば7~28、14~21日後に残存する病変を外科的に切除するステップ含む。一部の実施形態において、本方法は、任意選択の外科的介入の前に少なくとも2、3、4、5、6またはより多くの回数処置レジメンを反復するステップを含む。一部の実施形態において、処置レジメンは、本明細書に記載の処置を毎日、例えば、1日1~2回、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間、例えば4日間投与するステップを含む処置間隔、次いで処置間隔の間に、例えば、少なくとも7、10、12、14、21または28日間、例えば7~28、14~21日間の休止間隔を含む。
【0099】
本発明は、本発明およびその多くの優位性のより良い理解を提供する以下の例示的、非限定的な実施例により追加的に記載される。
【実施例】
【0100】
以下の実施例は、本発明の一部の実施形態および態様を例示する。様々な修正、追加、置換、等が、本発明の精神または範囲を改変することなく実行され得、そのような修正および変更が、続く特許請求の範囲に定義される本発明の範囲に包含されることは、関連する当業者にとって明らかであろう。以下の実施例は、発明を決して限定しない。
【0101】
[実施例1]
カルシポトリエンおよびイミキモドを含む組成物は、抗腫瘍有効性を呈する
本発明者らは、T細胞活性化薬剤(例えば、カルシポトリエンおよびレチノイン酸10)と自然免疫細胞活性化薬剤(例えば、イミキモドの様なTLRアゴニストおよびDMXAA11の様なSTINGアゴニスト)の併用が、皮膚悪性腫瘍に対する強力な抗腫瘍性免疫をもたらす可能性があると仮定した。この仮説を検証するために、カルシポトリエン+イミキモド、カルシポトリエン+DMXAAおよびレチノイン酸+イミキモドの有効性を、皮膚乳がんおよび黒色腫の成長を阻害する有効性について調査した。
【0102】
T細胞活性化薬剤(即ち、カルシポトリエン)と自然免疫細胞活性化薬剤(即ち、イミキモド)の併用が、皮膚悪性腫瘍に対する強力な抗腫瘍性免疫をもたらす可能性があるという仮説を検証するために、マウスの皮膚乳がんの成長の阻害におけるカルシポトリエン+イミキモドの有効性を調査した。
【0103】
乳がん細胞を、ヒトの管腔型乳がんに似ている特発性乳がんを発症するPyMTtgマウスから得た
12。PyMTtgマウスの乳がんを、腫瘍が直径2cmに達する前に採取した。がんを切除し、単一の細胞懸濁液に解離させた。乳がん細胞を、比1:1のRPMIとMatrigel Membrane Matrix(Corning)100μL当たり1×10
6個細胞の濃度で再懸濁した。レシピエントマウスの鼠径部を、がん細胞注射の前に剃毛した。0日目に1×10
6個細胞を皮下注射した。腫瘍サイズが直径5mmに達したら、局所的処置を適用した。マウスを4つの群に分け、腫瘍部位に直接カルシポトリエン(80nmol)または担体であるエタノール(EtOH)のいずれかで処置した。カルシポトリエンまたはEtOHの処置後、腫瘍部位をイミキモド5%クリームまたは保湿クリーム(対照クリーム)のいずれかの局所的適用でも処置した。カルシポトリエン/EtOHおよびイミキモド/対照クリーム処置を、3日後にもう1回再適用した(
図1A)。動物を毎日モニタリングし、腫瘍を経時的に測定して、乳がんの成長に対する局所的処置の影響を決定した。採取時に、腫瘍を秤量し、腫瘍浸潤T細胞を、フローサイトメトリーを使用してプロファイルした。
【0104】
カルシポトリエン+イミキモド併用の2回の適用は、EtOH+対照クリーム処置した乳腫瘍と比較して、皮膚乳腫瘍の成長の有意な阻害をもたらした(p=0.011、
図1B~
図1D)。単独で適用したカルシポトリエンまたはイミキモドのどちらも、2回の適用後に乳がんの成長に対して有意な影響を示さなかった(
図1B~
図1D)。驚くべきことに、カルシポトリエン+イミキモドの併用は、処置した腫瘍内でT細胞(CD3+CD19-)浸潤(
図1E)ならびにCD4+およびCD8+腫瘍浸潤Tリンパ球の増殖(Ki67+)(
図1F)の有意な誘導を引き起こした。これらの発見は、乳がんに対するカルシポトリエン+イミキモド処置の効果を媒介する抗腫瘍性免疫の役割を強調する。
【0105】
[実施例2]
カルシポトリエン+DMXAAは、黒色腫の進行を遮断した。
黒色腫細胞(B16-F10、ATCC、Manassas、VA)を、0日目に比1:1のDMEM(Corning)100μL当たり2×10
5個細胞でマウスの横腹に皮下注射した。レシピエントマウスの脇腹を、がん細胞注射の前に剃毛した。腫瘍サイズが直径5mmに達したら、DMXAA(マウスSTINGアゴニスト、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸、ASA404またはバジメザン)または生理食塩水の腹膜内(IP)注射と一緒にカルシポトリエンまたはEtOHによる局所的処置を開始した。マウスを4つの群に分け、腫瘍部位に直接カルシポトリエン(40nmol)または担体であるエタノール(EtOH)のいずれかを局所的に処置した。カルシポトリエンまたはEtOH(対照)の処置後、マウスを、生理食塩水100μL中の400μg DMXAAまたは生理食塩水単独(対照)のいずれかでIP注射した。カルシポトリエン/EtOHおよびDMXAA/生理食塩水処置を、さらに2回再適用した(
図2A)。動物を毎日モニタリングし、腫瘍を経時的に測定して、黒色腫の成長に対する処置の影響を決定した。採取時に、腫瘍を秤量し、腫瘍浸潤T細胞を、フローサイトメトリーを使用してプロファイルした。
【0106】
カルシポトリエン+DMXAA併用の3回の適用は、EtOH+生理食塩水処置した黒色腫と比較して、皮膚黒色腫の成長の有意な阻害をもたらした(p=0.019、
図2B~
図2D)。カルシポトリエン単独は、黒色腫の成長の阻害に有効性を示したが、DMXAA単独は、3回の適用後に黒色腫の進行に対して有意な影響を示さなかった(
図2B~
図2D)。カルシポトリエン+DMXAAの併用は、処置した腫瘍内でT細胞(CD3+CD19-)浸潤(
図2E)ならびにCD4+およびCD8+腫瘍浸潤Tリンパ球の増殖(Ki67+)(
図2F)の有意な誘導を引き起こした。その誘導は、カルシポトリエン単独、DMXAA単独およびEtOH+生理食塩水対照群には存在しなかった。これらの発見は、抗腫瘍性免疫が、黒色腫に対するカルシポトリエン+DMXAA処置の効果を媒介したことを実証する。
【0107】
[実施例3]
カルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモドは、黒色腫の成長を抑制した
実験の相補的な組において、B16-F10黒色腫細胞を、マウスの横腹に皮下注射した。腫瘍が触診可能になったら、局所的処置を適用した。マウスを5つの群に分け、腫瘍部位に直接カルシポトリエン(20nmol)、レチノイン酸(20nmol)または担体であるエタノール(EtOH)のいずれかで処置した。カルシポトリエン、レチノイン酸またはEtOHのいずれかの処置後に、腫瘍部位をイミキモド5%クリームまたは保湿クリーム(対照クリーム)いずれかの局所的適用でも処置した。カルシポトリエン/レチノイン酸/EtOHおよびイミキモド/対照クリーム処置を、3日間隔でさらに2回再適用した(
図3A)。動物を毎日モニタリングし、腫瘍を経時的に測定して、黒色腫の成長に対する局所的処置の影響を決定した。採取時に、腫瘍を撮影し、その重量を記録した。
【0108】
カルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモド併用の3回の適用は、巨視的画像、経時的な腫瘍容積および採取時の腫瘍重量によって実証されるようにカルシポトリエン、レチノイン酸またはイミキモドによる単独療法と比較して黒色腫の腫瘍成長の有意な阻害をもたらした(p<0.05、
図3B~
図3D)。これらの発見は、黒色腫に対するカルシポトリエン+イミキモドおよびレチノイン酸+イミキモド処置の効果を媒介する抗腫瘍性免疫の役割を強調する。
【0109】
[実施例4]
カルシポトリエンおよびイミキモドの併用は、患者においてEMPD病変を改善する
患者のEMPDの処置におけるカルシポトリエン+イミキモド併用の有効性を決定するために、男性EMPD患者2名を、朝に局所的なカルシポトリエン0.005%軟膏、夜にイミキモド5%クリームで4日間処置し、処置の14~21日後に残存する病変を外科的に切除した(
図4A)。疾患の程度を、処置前および手術時における臨床的画像によって記録し、興味深いことに、カルシポトリエン+イミキモド併用による4日間の処置は、EMPD病変部位に有意な炎症(即ち、免疫活性化)をもたらし、炎症は処置後2週間で鎮静した。重要なことに、この処置は、手術の時までに病変サイズの有意な減少をもたらし、その減少は、切除した病変の外科的断端陰性の減少で確認された(黄色の点線、
図4B)。
参照
【0110】
各独立した特許および刊行物が、あたかも具体的および個別に示されて参照により組み込まれるかのように、この明細書において言及される特許、特許出願および刊行物の全ては、同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
【0112】
【0113】