(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】強化ポリマー材料及び強化ポリマー材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241129BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20241129BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241129BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20241129BHJP
C08L 31/00 20060101ALI20241129BHJP
C08L 63/02 20060101ALI20241129BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20241129BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241129BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20241129BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08L63/00 C
C08L67/06
C08L31/00
C08L63/02
C08L23/06
C08K3/04
C08J5/04 CES
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
C08J5/24
(21)【出願番号】P 2021512230
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 MY2019050050
(87)【国際公開番号】W WO2020050709
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】PI2018001522
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】501492605
【氏名又は名称】ペトロリアム・ナシオナル・ベルハド(ペトロナス)
【氏名又は名称原語表記】Petroliam Nasional Berhad (PETRONAS)
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・シアン・スム
(72)【発明者】
【氏名】イン・リオン・レオン
(72)【発明者】
【氏名】コック・フン・レオン
(72)【発明者】
【氏名】シャムスル・ファリード・サムスディン・モード
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128850(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051095(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146213(WO,A1)
【文献】特開平06-279615(JP,A)
【文献】特開2013-224424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/24
C08J 5/04-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ポリマー材料であって、
充填ポリマー・マトリックス材料において、組成物の0.05~0.5体積%である2次元材料であって、2次元材料が100~2000の平均アスペクト比を有するグラフェンである、2次元材料;
充填ポリマー・マトリックス材料において、組成物の50~70体積%である繊維強化材料;及び
充填ポリマー・マトリックス材料と、
充填ポリマー・マトリックス材料が熱硬化性材料である場合の硬化剤とで構成される残部
を含んで成り、
繊維強化材料が炭素繊維である、強化ポリマー材料。
【請求項2】
充填ポリマー・マトリックス材料が熱硬化性材料である、請求項1に記載の強化ポリマー材料。
【請求項3】
熱硬化性材料が、エポキシ樹脂、ポリエステル、及びビニルエステルから成る群の1つ以上から選択される、請求項2に記載の強化ポリマー材料。
【請求項4】
エポキシ樹脂が、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル樹脂である、請求項3に記載の強化ポリマー材料。
【請求項5】
充填ポリマー・マトリックス材料が熱可塑性材料である、請求項1に記載の強化ポリマー材料。
【請求項6】
熱可塑性材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、及びポリエーテルエーテルケトンから成る群の1つ以上から選択される、請求項5に記載の強化ポリマー材料。
【請求項7】
熱可塑性材料が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び低密度ポリエチレンから成る群の1つ以上から選択される、請求項6に記載の強化ポリマー材料。
【請求項8】
2次元材料が180~500の平均アスペクト比を有する、請求項1に記載の強化ポリマー材料。
【請求項9】
硬化剤が、ポリアミン、アミノアミド、及びフェノール化合物から成る群の1つ以上から選択される、請求項
2に記載の強化ポリマー材料。
【請求項10】
請求項
2に記載された強化ポリマー材料から形成された、プリプレグ材料。
【請求項11】
請求項1に記載された強化ポリマー材料から形成された、成形品。
【請求項12】
請求項10に記載されたプリプレグ材料から形成された、成形品。
【請求項13】
2次元材料を含まない、他の点において同一の強化ポリマー材料から形成された成形品と比較して、得られた成形品が、20~100%、例えば45~99%、例えば46~90%の変形の減少を示す、請求項11に記載の成形品。
【請求項14】
2次元材料を含まない、他の点において同一の強化ポリマー材料から形成された成形品と比較して、得られた成形品が、20~100%、例えば45~99%、例えば46~90%の変形の減少を示す、請求項12に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された強化ポリマー材料、及び改良された強化ポリマー材料を製造する方法、並びに精密な表面を要する複合構成要素などの複合構成要素の形成におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行公開文献のリスト又は議論は、決して、文献が最新技術の一部であるか、又は共通の一般的な知識であるということを承認するものとされるべきではない。
【0003】
強化ポリマー材料は、様々な複合構成要素の製造によく用いられる。強化ポリマー材料は「事前含浸された」複合繊維であり、エポキシ又はポリアミドなどの熱硬化性又は熱可塑性ポリマー・マトリックス材料が既に存在している。これらの複合繊維は、通常、織り、不織、チョップ・ストランド・マットの形態で供され、ポリマー・マトリックス材料は、繊維を共に結合するため、及び(必要に応じて)最終製品の製造中に他の構成要素に繊維を結合するために用いられる。
【0004】
強化ポリマー材料の使用は複合構成要素を製造する(例えば、表面を制御する)非常に便利な方法に思われるものの、残念ながら、硬化した材料によって歪み及び変形に悩まされる傾向にある。これは、構成要素の適切なアッセンブリ又は結合の問題である。
【0005】
上述の問題を克服するため、現在のプロセスは、所望の型を作製し、次いで所望の製品を形成し、上述の問題に関してそれを試験するという本質的に反復性のプロセスに従っている。試験された製品が上述の変形に悩まされる場合、型及び/又はプロセスに修正がなされ、サイクルが繰り返される。このプロセス自体は、所望の硬化寸法を有する使用可能な製品に類似したものが得られるまで多くのサイクルを要する可能性がある。しかしながら、この反復プロセスは非常に時間がかかり、場合によっては、変形に対応するために材料のレイ・アップも必要となる。結果として、複合材料の完全な可能性は実現されない。
【0006】
したがって、上述の問題を克服又は軽減する強化ポリマー材料を提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、ポリマー・マトリックスに2次元材料を加えることによって、そのような材料の変形が低減されることが見出された。このことは、例えば、そのような材料から作られた成形品において見出された。したがって、本発明の第1の態様において提供される強化ポリマー材料は以下を含んで成る:
充填ポリマー・マトリックス材料(又は充填されたポリマー・マトリックス材料、filled polymeric matrix material)において、組成物の0.002~6体積%である2次元材料であって、100~2000の平均アスペクト比を有する、2次元材料;
充填ポリマー・マトリックス材料において、組成物の20~75体積%である繊維強化材料;並びに
充填ポリマー・マトリックス材料と、任意には(又は必要に応じて、optionally)硬化剤とで構成される残部。
【0008】
本発明の第1の態様の実施形態において:
(a)充填ポリマー・マトリックス材料は熱硬化性材料であってよい(例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、及びビニルエステルから成る群の1つ以上から選択される;任意には、エポキシ樹脂にはビスフェノール-Aジグリシジルエーテル樹脂を選択してよい);
(b)充填ポリマー・マトリックス材料は熱可塑性材料であってよい(例えば、充填ポリマー・マトリックス材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、及びポリエーテルエーテルケトンから成る群の1つ以上から選択されてよい;任意には、熱可塑性材料は高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンから成る群の1つ以上から選択されてよい);
(c)2次元材料は、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン・ナノプレートレット、1~5層(例えば、1~3層)を有するグラフェン(例えば、2層グラフェンなど)、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、シリコーン及びゲルマネンから成る群の1つ以上から選択されてよく、これら材料の混合物の層状アッセンブリ(ISO/TS 80004-13)を含む。例えば、2次元材料は、グラフェン、化学修飾グラフェン、還元型酸化グラフェン及び窒化ホウ素から成る群の1つ以上から選択されてよく、任意には、2次元材料はグラフェンである;
(d)2次元材料は、180~500の平均アスペクト比を有してよい;
(e)強化ポリマー材料は、ポリマー・マトリックスにおいて組成物の0.05体積%~1体積%である2次元材料を含んで成ってよい;
(f)繊維強化材料は、ガラス、炭素繊維、ケブラー(Kevlar)及びエンジニアリング強化繊維(engineering reinforcing fiber)から成る群の1つ以上から選択されてよい(例えば、遷移強化材料は、炭素繊維であってよい);
(g)強化ポリマー材料は、組成物の50体積%~70体積%である繊維強化材料を含んで成ってよい;
(h)硬化剤は、ポリアミン、アミノアミド及びフェノール化合物から成る群の1つ以上から選択されてよい。
【0009】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様に記載された強化ポリマー材料、及びその実施形態の技術的に賢明な任意の組合せから成形品を形成する方法が提供される。プロセスは、以下の工程を含んで成る:
(a)本発明の第1の態様に記載された強化ポリマー材料、及びその実施形態の技術的に賢明な任意の組合せを準備し、型において材料のレイ・アップを行う(又はレイ・アップ・プロセスを実施する若しくは設ける(又は保持する)、laying up)工程;並びに
(b)型において強化ポリマー材料を硬化させ、成形品を形成する工程。
【0010】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様に記載された強化ポリマー材料、及びその実施形態の技術的に賢明な任意の組合せから形成されるプリプレグ材料が提供される。
【0011】
本発明の第4の態様では、本発明の第1の態様に記載された強化ポリマー材料、及びその実施形態の技術的に賢明な任意の組合せから形成される成形品、並びに/又は本発明の第3の態様に記載されたプリプレグ材料が提供される。この態様の実施形態において、得られる成形物品は、2次元材料を含まないこと以外の点では同一の強化ポリマー材料から形成された成形物品と比較して、20~100%、例えば45~99%、例えば46~90%の変形の低減を示し得る。
【0012】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、以下の条項で説明される。
【0013】
1.強化ポリマー材料であって:
充填ポリマー・マトリックス材料における組成物の0.002~6体積%である2次元材料であって、100~2000の平均アスペクト比を有する、2次元材料;
充填ポリマー・マトリックス材料における組成物の20~75体積%である繊維強化材料;並びに
充填ポリマー・マトリックス材料、及び、任意には硬化剤から構成される残部
を含んで成る、強化ポリマー材料。
【0014】
2.充填ポリマー・マトリックス材料が熱硬化性材料である、条項1に記載の強化ポリマー材料。
【0015】
3.熱硬化性材料が、エポキシ樹脂、ポリエステル及びビニルエステルから成る群の1つ以上から選択される、条項2に記載の強化ポリマー材料。
【0016】
4.エポキシ樹脂がビスフェノール-Aジグリシジルエーテル樹脂である、条項3に記載の強化ポリマー材料。
【0017】
5.充填ポリマー・マトリックス材料が熱可塑性材料である、条項1に記載の強化ポリマー材料。
【0018】
6.熱可塑性材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド及びポリエーテルエーテルケトンから成る群の1つ以上から選択される、条項5に記載の強化ポリマー材料。
【0019】
7.熱可塑性材料(thermoplastic)が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンから成る群の1つ以上から選択される、条項6に記載の強化ポリマー材料。
【0020】
8.2次元材料が、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン・ナノプレートレット、1~5層(例えば、1~3層)を有するグラフェン(例えば、2層グラフェンなど)、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、シリコーン及びゲルマネンから成る群の1つ以上から選択され、これら材料の混合物の層状アッセンブリ(ISO/TS 80004-13)を含む、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0021】
9.2次元材料が、グラフェン、化学修飾グラフェン、還元型酸化グラフェン及び窒化ホウ素から成る群の1つ以上から選択され、任意には2次元材料がグラフェンである、条項8に記載の強化ポリマー材料。
【0022】
10.2次元材料が180~500の平均アスペクト比を有する、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0023】
11.強化ポリマー材料が、ポリマー・マトリックスにおいて組成物の0.05体積%~1体積%である2次元材料を含んで成る、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0024】
12.繊維強化材料が、ガラス、炭素繊維、ケブラー及びエンジニアリング強化繊維から成る群の1つ以上から選択される、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0025】
13.繊維強化材料が炭素繊維である、条項12に記載の強化ポリマー材料。
【0026】
14.強化ポリマー材料が、組成物の50体積%~70体積%である繊維強化材料を含んで成る、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0027】
15.硬化剤が、ポリアミン、アミノアミド及びフェノール化合物から成る群の1つ以上から選択される、前述の条項のいずれか一項に記載の強化ポリマー材料。
【0028】
16.条項1~15のいずれか一項に記載された強化ポリマー材料から成形品(又は成形製品、moulded product)を形成する方法であって:
(a)条項1~15のいずれか一項に記載された強化ポリマー材料を準備し(又は提供し、provide)、型において該材料のレイ・アップを行う工程;及び
(b)型において強化ポリマー材料を硬化させて、成形品を形成する工程
を含んで成る。
【0029】
17.条項1~15のいずれか一項に記載された強化ポリマー材料から形成されたプリプレグ材料。
【0030】
18.条項1~15のいずれか一項に記載された強化ポリマー材料、及び/又は条項17に記載されたプリプレグ材料から形成された成形品。
【0031】
19.2次元材料を含まない以外の点では同一の強化ポリマー材料から形成された成形品と比較して、得られる成形品が、20~100%、例えば45~99%、例えば46~90%の変形の減少を示す、条項18に記載の成形品。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、前述の問題のいくつか又は全てを克服する材料を提供する。したがって:
充填ポリマー・マトリックス材料において組成物の0.002体積%~6体積%である2次元材料であって、100~2000の平均アスペクト比を有する、2次元材料;
充填ポリマー・マトリックス材料において組成物の20~75体積%である繊維強化材料;及び
充填ポリマー・マトリックス材料と、任意には硬化剤とで構成される残部
を含んで成る強化ポリマー材料が開示される。
【0033】
本明細書の実施形態において、「含んで成る(comprising)」という語は、言及された特徴を要するものの、他の特徴の存在を限定するものではないと解釈され得る。代替的には、「含んで成る」という語は、列挙された構成要素/特徴のみが存在することを意図している場合にも関する(例えば、「含んで成る」という語は、「~から成る(consists of)」又は「本質的に(又は実質的に、essentially)~から成る」という句に置き換えられ得る)。より広い解釈及びより狭い解釈の両方が、本発明の全ての態様及び実施形態に適用され得ることが明示的に企図されている。換言すれば、「含んで成る」という語及びその同意語は、「~から成る」又は「本質的に~から成る」、若しくはそれらの同意語に置き換えられてよく、その逆もまた同様である。
【0034】
本明細書での使用において、「平均アスペクト比」は、材料の平均の横方向の寸法を材料の平均厚さで割った値を指す。この比は、一般的に1原子厚さのみである材料と見なされる2次元材料に適用される。しかしながら、本明細書での使用において、この用語は原子の数層の厚さ(例えば、1~3層、1~2層の厚さなど、1~5層の厚さ)であり得る材料を包含することが意図されている。他の構成要素との化学的適合性があるという条件で、変形を減少可能であるいずれの適当な2次元材料も、本明細書で説明される強化ポリマー材料を形成するために用いられ得る。本明細書で言及され得る適当な2次元材料には、限定されないものの、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、グラフェン・ナノプレートレット、1~5層(例えば、1~3層)を有するグラフェン(例えば、2層グラフェンなど)、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、シリコーン及びゲルマネンが含まれ、これら材料の混合物の層状アッセンブリ(ISO/TS 80004-13)を含む。本明細書で言及され得る特定の例示において、2次元材料は、グラフェン、化学修飾グラフェン、還元型酸化グラフェン及び窒化ホウ素から成る群の1つ以上から選択されてよい。例えば、2次元材料はグラフェンであってよい。
【0035】
上述のように、2次元材料は、100~2000の平均アスペクト比を有してよい。本明細書で言及され得る特定の実施形態において、2次元材料は、180~500、例えば150~750などの平均アスペクト比を有してよい。疑義を避けるために、任意の数値に関して、数値範囲のリストで供される下限値及び上限値は、いずれの方法でも組み合わせられ得るということが特に意図されている。例えば、本明細書で開示される2次元材料は、以下の数値範囲の値を有し得る:100~2000、180~500、150~750、100~180、100~500、100~750、180~750、180~2000、500~750、500~2000及び750~2000。
【0036】
上述のように、2次元材料は組成物の0.002~6体積%を含んで成ってよい。特定の例示において、2次元材料は、組成物の0.05~1体積%、例えば組成物の0.1~0.5体積%を含んで成ってよい。本明細書で用いられる場合、組成物の体積%は、一度形成された組成物の全体積に関連する。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「充填ポリマー・マトリックス材料」という用語は、他の構成要素をカプセル化した(又は封入した、encapsulate)(したがって、それらによって充填された)ポリマー材料を指すことを意図している。いずれの適当なポリマー材料も用いられてよい。例えば、ポリマー材料は熱可塑性材料又は熱硬化性材料であってよい。
【0038】
本明細書で言及され得る熱硬化性材料の例としては、限定されないものの、エポキシ樹脂、ポリエステル、ビニルエステル及びそれらの組合せが含まれる。本明細書で言及され得る特定の実施形態において、熱硬化性材料は、エポキシ樹脂のビスフェノール-Aジグリシジルエーテル樹脂であってよい。
【0039】
本明細書で言及され得る熱可塑性材料の例としては、限定されないものの、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン及びそれらの組合せが含まれる。例えば、熱可塑性材料は、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンの1つ以上から選択されてよい。
【0040】
理解されるように、1つより多くのポリマー材料が用いられる場合、得られるポリマー・マトリックスは選択されたポリマー材料のブレンドである。これは、特定の特性が要求される場合に用いられ得る。いくつかの実施形態では、ポリマー材料は熱可塑性材料及び熱硬化性材料の両方を含んで成るブレンドであってよいということが企図されている。
【0041】
いずれの適当な繊維強化材料も本明細書で用いられてよい。例えば、繊維強化材料は、限定されないものの、ガラス、炭素繊維、ケブラー、エンジニアリング強化繊維及びそれらの組合せを含む群から選択されてよい。本明細書で言及され得る特定の実施形態において、繊維強化材料は炭素繊維であってよい。
【0042】
上述のように、繊維強化材料は、組成物の20~75体積%の量で存在してよい。組成物における繊維強化材料の他の適当な範囲の例としては、組成物の25~72体積%、及び組成物の50~70体積%が含まれる。
【0043】
組成物の特定の実施形態において、強化ポリマー材料は硬化剤を含んでよい。本明細書で用いられる場合、「硬化剤」はポリマー材料のポリマー鎖間に架橋を形成し得る材料を指す。充填ポリマー・マトリックス材料を形成するポリマー材料の少なくとも1つと適合性を有するという条件で、いずれの適当な硬化剤も本明細書で用いられてよい。言及され得る適当な架橋剤の例としては、限定されないものの、ポリアミン、アミノアミド、フェノール化合物及びそれらの組合せが含まれる。当業者が理解するように、組成物において必要な架橋剤の量は(存在する場合)、用いられるポリマー材料及びその後に硬化される材料の所望の特性に基づいて、当業者が容易に決定できる。
【0044】
本明細書で開示された強化ポリマー材料は、いずれの適当な方法によっても形成してよい。例えば、2次元材料は、例えば溶媒1mL中に0.01~1g、例えば0.05g含まれるような適当な濃度で、適当な溶媒(例えば、イソプロパノール)中に分散させ、その後、適当な時間超音波処理してよい(例えば、37kHzで30分間)。次いで、得られた懸濁液をポリマー・マトリックス材料とブレンドし、ベントして(又は通気して、vent)溶媒を除去してよい(例えば、0.5gの2次元材料に対して250gの樹脂)。次いで、いずれの適当な方法(例えば、機械的含浸装置)を用いて、所望の強化を供するのに必要な量(所望の使用に基づいて当業者によって決定できる;及び体積%で決定される)で、繊維強化材料を組成物と組み合わせてよい。硬化剤(又は硬膜剤(若しくは硬化剤、hardener))を組成物に加える場合は、繊維強化材料と組み合わせる前に加えてよい。上述の手順の例は、以下の実施例のセクションで供される。このような材料(硬化及び/又は硬膜前)は、プリプレグ材料として説明され得る。したがって、本発明は、プリプレグ材料の形成及びプリプレグ材料自体にも関連し、材料は、本明細書で上述されるように、本質的に強化ポリマー材料である。
【0045】
本明細書で開示される強化ポリマー材料は、ポリマー品を形成するために用いられてよい。本明細書に記載された強化ポリマー材料を用いて作製された成形品に関連する利点は、2次元材料を含まない以外の点では同一の強化ポリマー材料から形成された成形品と比較して、変形の低減を示すことである。前記変形の低減は、20~100%、例えば45~99%、例えば46~90%であってよい。
【0046】
本明細書に記載された成形品は、上述の強化ポリマー材料から以下の工程を含むプロセスによって形成されてよい:
(a)上述された強化ポリマー材料を準備し、型において材料のレイ・アップを行う工程;及び
(b)型において強化ポリマー材料を硬化させ、成形品を形成する工程。
【0047】
本発明のさらなる態様及び実施形態は、実施例及び特許請求の範囲において以下に説明される。
【実施例】
【0048】
実施例1
強化ポリマー材料の調製
最初に、グラフェンなどの2次元フィラー材料(又は2次元充填材料、2-dimensional filler material)を、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル(BADGE)樹脂と、樹脂に関して約0.10体積%でブレンドした。
【0049】
ブレンドのための2次元フィラー材料を調製するため、最初に、約0.05gフィラー/1mlイソプロパノールの濃度で、イソプロパノールを2次元フィラー材料と混合した。次いで、少なくとも30分間、37kHzの周波数で混合物を超音波処理した。調製工程の後、フィラーと溶媒との混合物をビスフェノール-Aジグリシジルエーテル(BADGE)とブレンドし、室温で8時間より長くベントしながらブレンド樹脂を形成した。用いた樹脂の量は250gであって、0.5gのグラフェンを有していた。
【0050】
次いで、ブレンド樹脂を87.5gのアミン硬膜剤と混合し、自社の機械的含浸装置の補助により0/90 NCF(656gsm)炭素繊維(約0.8~0.9mm厚さ)などの繊維強化剤(fibre reinforcements)に予備含浸し、プリプレグとして強化ポリマー材料を製造した。含浸装置は樹脂浴槽から成り、樹脂浴槽は一方の端部から「乾燥した」繊維強化布(fibre reinforcement fabric)を引き込み、続いて、プリプレグとしてピックアップ・ローラー(pickup roller)で共に巻く。含浸の速度は、ピックアップ・ローラーに関して毎分約4回転で制御される。全体の組成は、約60体積%の繊維強化剤の含有量、0.10体積%のグラフェンを有し、残部はポリマー・マトリックス材料及び硬化剤で構成される。
【0051】
試験及び分析のためのL型ブラケット部品の製造
得られた硬化された強化ポリマー材料で認められる変形の程度を測定するため、プリプレグ強化ポリマー材料を用いてL型ブラケット部品を製造し、曲げの内角を測定した。
【0052】
最初に、プリプレグ強化ポリマー材料の4層を切断し、半径3mmを有する直角の型に積み重ねた。次いで、型及び積み重ねた層を真空バッグ(vacuum bag)し、少なくとも6時間、真空下において80℃の温度で硬化させた。硬化後、積み重ねられた強化ポリマー層を型から外し、L型ブラケット部品を準備した。L型ブラケットは、幅が約35mmで、両側の長さが約70mm、及び内径が3mmであった。
【0053】
対照として、強化ニート・プリプレグ樹脂(reinforced neat prepreg resin)(いずれのフィラー材料も加えていない)から作製されたL型ブラケット部品も上述の方法で製造した。
【0054】
角度定規を用いてL型ブラケットの角度を測定することにより、完全に硬化した際、及び型から外した際のL型ブラケット部品の2つのセット間の変形の差を比較した。
【0055】
全体として、ニート強化樹脂(すなわち、フィラー材料を含まない樹脂)と比較して、本発明の含浸樹脂によって形成されたL型ブラケットは変形に対する耐性の増加を示す。具体的には、本発明の強化ポリマー材料から製造されたL型ブラケット部品は、0.217°の変形(ニート)から0.1°(充填)の変形にまで、最大46%の減少を示す。
【0056】
実施例2
グラフェンのような2次元フィラー材料を用いて熱可塑性マトリックスを調製するためには、約0.5重量%のグラフェンをHDPEと混合し、例えば45gのグラフェンと8955gのHDPEとを共に混合し、合計9kgにする。HDPEは、ペレット又は粉体、若しくはペレットと粉体との組合せの形態である。混合は、バッグ内に密封された材料を有する攪拌器において実施される。次いで、約600rpmのスクリュー測度及び180℃~220℃のダイ温度を有する押出機に、混合した材料を供給する。押し出された材料をペレットに細断し、「充填ペレット」を形成する。ペレット内のフィラーの分散を改善するため、押出を繰り返してよい。
【0057】
充填ペレットは、熱可塑性の繊維強化部品を作製するために用いることができ、例えば射出成形又は押出プロセスでは、製造プロセス中に繊維強化剤が加えられる。
【0058】
熱硬化性の実施例(実施例1)のように、2次元フィラーの存在により、未充填部品と比較して、製造された部品の変形を低減することが可能となる。