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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】半導体回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/10 20060101AFI20241129BHJP
   H03M 1/46 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/10 C
H03M1/46
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021543087
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032770
(87)【国際公開番号】W WO2021040029
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019156598
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】入口 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 陽介
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128203(JP,A)
【文献】特開2017-046252(JP,A)
【文献】特開2011-188097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253351(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141785(US,A1)
【文献】特開2009-118488(JP,A)
【文献】特開2013-005185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、
入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、
前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、
前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、
前記補正素子の機能または前記補正素子の重み付けを検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、
前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査し、
前記デジタル回路は、
前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを生成する自己診断用コード生成回路と、
前記自己診断用コードに対応して出力される前記アナログ回路の量子化出力信号と、所定の閾値との差分を誤差信号として検出する誤差検出回路と、
前記誤差信号に基づいて前記補正素子群の診断結果を示す自己診断信号を生成する自己診断回路と
を備え、
前記自己診断用コードは、第1固定コードおよび最適値コードを含み、
前記第1固定コードは、前記補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、
前記最適値コードは、前記第1固定コードに対して前記誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、
前記自己診断回路は、
前記第1固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号の積算値を算出し、
前記積算値が所定の範囲内か否かを判定し、所定の範囲内でないときは補正素子群の不良と判定する
導体回路。
【請求項2】
被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、
入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、
前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、
前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、
前記補正素子の機能または前記補正素子の重み付けを検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、
前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査し、
前記デジタル回路は、
前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを生成する自己診断用コード生成回路と、
前記自己診断用コードに対応して出力される前記アナログ回路の量子化出力信号と、所定の閾値との差分を誤差信号として検出する誤差検出回路と、
前記誤差信号に基づいて前記補正素子群の診断結果を示す自己診断信号を生成する自己診断回路と
を備え、
前記自己診断用コードは、第1固定コード、第2固定コードおよび最適値コードを含み、
前記第1固定コードは、前記補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、
前記最適値コードは、前記第1固定コードに対して前記誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、
前記被測定信号は、第1極性信号と第2極性信号とを含む差動信号であり、
前記補正素子群は、前記第1極性信号の伝送経路に接続された第1素子群と、
前記第2極性信号の伝送経路に接続された第2素子群とを含み、
前記第1固定コードは、第1素子群に対応し、第2素子群をディスエーブルにし、
前記第2固定コードは、前記第1素子群において検査対象として選択された1つの補正素子をディスエーブルにし、他の補正素子のうち当該補正素子よりも小さい重みの補正素子をイネーブルにし、検査素子をイネーブルにするコードであり、
前記最適値コードは、第2素子群に対応し、第1素子群をディスエーブルにし、
前記自己診断回路は、
前記第1固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号を積算した第1積算値を算出し、
前記第2固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号を積算した第2積算値を算出し、
前記第1積算値と前記第2積算値との大小関係を判定し、当該大小関係が所定条件を満たさないときは検査対象の補正素子の不良と判定する
導体回路。
【請求項3】
前記自己診断回路は、前記補正素子群から検査対象として1つの補正素子を順次選択する
請求項1または2に記載の半導体回路。
【請求項4】
前記補正素子群のうち、1つ以上の補正素子を前記検査素子として兼用する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項5】
被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、
入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、
前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、
前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、
前記補正素子の機能または前記補正素子の重み付けを検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、
前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査し
前記アナログ回路は、
前記補正素子群による補正後の被測定信号または参照信号を量子化し、量子化器出力信号に変換するための量子化器を備え、
前記デジタル回路は、
前記量子化器出力信号を所定の重みづけされたデジタル出力信号に変換出力するエンコード部と、
前記量子化器出力信号と所定の閾値との差分を複数回積算した積算結果を誤差信号として出力する誤差検出回路と、
前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを出力する自己診断用コード生成回路と、
前記誤差信号を受けて前記補正素子群の良否を示す自己診断出力信号を出力する自己診断回路と、
を備え、
前記自己診断回路によって前記補正素子群の各々の補正素子の自己診断を行い、
前記自己診断用コード生成回路は、
前記誤差信号を受けて、前記量子化器の量子化誤差が最小となるように最適補正コードを出力する最適補正コード出力モードと、
前記最適補正コードのうち検査対象の補正素子を制御する第一ビット信号を論理反転させた論理反転コードを出力する、論理反転コード出力モードと、
を有し、
前記デジタル回路は、
検査時に、前記最適補正コード出力モードに設定して、前記最適補正コードを前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、
前記論理反転コード出力モードに設定し、前記論理反転コードを前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、
前記第一誤差信号と前記第二誤差信号の大小関係を比較し、検査対象となる補正素子の故障診断を行う
導体回路。
【請求項6】
被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、
入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、
前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、
前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、
前記補正素子の機能または前記補正素子の重み付けを検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、
前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査し
前記アナログ回路は、
前記補正素子群による補正後の被測定信号または参照信号を量子化し、量子化器出力信号に変換するための量子化器を備え、
前記デジタル回路は、
前記量子化器出力信号を所定の重みづけされたデジタル出力信号に変換出力するエンコード部と、
前記量子化器出力信号と所定の閾値との差分を複数回積算した積算結果を誤差信号として出力する誤差検出回路と、
前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを出力する自己診断用コード生成回路と、
前記誤差信号を受けて前記補正素子群の良否を示す自己診断出力信号を出力する自己診断回路と、
を備え、
前記自己診断回路によって前記補正素子群の各々の補正素子の自己診断を行い、
前記自己診断用コード生成回路は、第一の重み検査コード出力モードと、第二の重み検査コード出力モードと、を有し、
前記第一の重み検査コード出力モードにおいて、
検査対象の第一補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、
調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号と反転論理値とし、
前記検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、
それ以外のビット信号を所定の固定信号として、
出力し、
前記第二の重み検査コード出力モードにおいて、
前記第一ビット信号を、前記第一の重み検査コード出力モード設定時の反転論理値とし、
前記第二補正ビット信号群を前記第一ビット信号の反転論理値とし、
前記検査素子を制御する検査ビットを第一ビット信号の反転論理値とし、
それ以外のビット信号は所定の固定信号として、
出力し、
前記デジタル回路は、
検査時に、前記第一重み検査コード出力モードに設定して、前記誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、
前記第二重み検査コード出力モードに設定して、前記誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、
前記第一誤差信号と前記第二誤差信号の差を演算し、前記補正素子群の重みづけ診断を行う
導体回路。
【請求項7】
被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、
入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、
前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、
前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、
前記補正素子の機能または前記補正素子の重み付けを検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、
前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査し
前記アナログ回路は、
前記補正素子群による補正後の被測定信号または参照信号を量子化し、量子化器出力信号に変換するための量子化器を備え、
前記デジタル回路は、
前記量子化器出力信号を所定の重みづけされたデジタル出力信号に変換出力するエンコード部と、
前記量子化器出力信号と所定の閾値との差分を複数回積算した積算結果を誤差信号として出力する誤差検出回路と、
前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを出力する自己診断用コード生成回路と、
前記誤差信号を受けて前記補正素子群の良否を示す自己診断出力信号を出力する自己診断回路と、
を備え、
前記自己診断回路によって前記補正素子群の各々の補正素子の自己診断を行い、
前記データコンバータは、
前記データコンバータに入力する信号を被測定信号とするか前記参照信号とするかを切り替える入力切替部を備え、
前記自己診断用コード生成回路は、
前記量子化器の量子化誤差が最小となる最適補正コードを出力する最適補正コード出力モードを有し、
前記デジタル回路は、
検査時に、最適補正コード出力モードに設定し、かつ、前記入力切替部により第一の参照信号を選択し、前記最適補正コードを第一の最適補正コードとして求め、
最適補正コード出力モードに設定し、かつ、前記入力切替部により第二の参照信号を選択し、前記最適補正コードを第二の最適補正コードとして求め、
前記第一の最適補正コードと前記第二の最適補正コードの差を演算し、前記補正素子群の補正レンジ診断を行う
導体回路。
【請求項8】
前記量子化器は、一つ以上の比較器を備え、
前記誤差検出回路は、一つの比較器の出力結果、又は、二つ以上の比較器の出力結果を所定重みでデジタル演算した結果を前記量子化器出力信号として、積算することにより前記誤差信号を生成する
請求項5乃至7のいずれか1項に記載に記載の半導体回路。
【請求項9】
前記補正素子群のうち、1つ以上の補正素子を前記検査素子として兼用する
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項10】
前記補正素子群は、重みづけされた複数の補正素子を有し、
前記検査素子は、補正素子群のうちの最小の重みに対応する補正素子と同じ、または、小さい重みを有する
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項11】
前記補正素子と検査素子は、容量素子、抵抗素子、MOSトランジスタの少なくとも1つで構成され、アナログ電圧の補正、又は、時間の補正に使用される
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項12】
前記アナログ回路は、差動回路で構成され、
前記差動回路の正側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第一素子群と、
前記差動回路の負側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第二素子群と、
を備え、
前記第一素子群および第二素子群は、前記補正素子群および前記検査素子群を構成し、
前記自己診断用コード生成回路は、
前記第一素子群を検査する第一セット検査モードと、
前記第二素子群を検査する第二セット検査モードと、
を有し、
前記第一素子群と前記第二素子群とを個々に検査を実施する
請求項乃至のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項13】
前記アナログ回路は、
1つのノードに属する、前記補正素子群と前記検査素子群を含む第一素子群と、
第一素子群と同一重みと構成を持った第二素子群と、
を含む、冗長となる構成を備え、
前記自己診断用コード生成回路は、
前記第一素子群を検査する第一セット検査モードと、
前記第二素子群を検査する第二セット検査モードと、
を有し、
第一素子群と第二素子群とを個々に検査する
請求項乃至のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項14】
前記自己診断用コード生成回路は、
前記第一セット検査モードにおいて、
前記第一素子群に対して、
検査対象の補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、
調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号の反転論理値とし、
前記検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、
それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力し、
前記第二素子群に対して、
前記量子化器の量子化誤差が最小となるように最適補正コードを、出力し、
前記デジタル回路は、
前記第一セット検査モードにおいて、前記誤差検出回路の誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、
前記第一素子群の制御コードについて、
前記第一ビット信号を第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、
前記第二補正ビット信号群を前記第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、
前記検査素子を制御する検査ビットを前記第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、
それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力するとともに、
前記第二素子群に対して、
前記最適補正コードを維持出力し、
前記誤差検出回路の出力として第二誤差信号を生成し、
量子化誤差が最小となる量子化器の遷移点で、第一の誤差信号と第二の誤差信号の大小を判定することにより、重みが規定値以下かを検査し、
前記第二セット検査モードにおいて、
前記第一セット検査モードにおける前記第一素子群と前記第二素子群の関係を入れ替えて同様の処理を行う
請求項12または13に記載の半導体回路。
【請求項15】
前記第一素子群に含まれる補正素子を検査する場合には、
前記第二素子群に含まれる検査素子を使用し、
前記第二素子群に含まれる補正素子を検査する場合には、
前記第一素子群に含まれる検査素子を使用する
請求項12または13に記載の半導体回路。
【請求項16】
前記データコンバータはアナログ・デジタル変換器である、
請求項乃至15のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項17】
前記アナログ・デジタル変換器は、1つ以上の比較器を備え、
前記比較器は、差動回路によって構成され、
前記比較器のオフセットを補正するために差動回路内の正側伝送経路と負側伝送経路の各々に補正素子群と検査素子群と、
を備え、
正側伝送経路と負側伝送経路の前記補正素子群に含まれる補正素子を個々に前記検査素子群に基づいて検査を行う
請求項16に記載の半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体回路に関し、より詳細は、データコンバータ内部の補正素子を検査・診断することができる検査・診断回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種用途で、物理量を測定するために、AD変換器(ADC、アナログ-デジタル変換器)やTD変換器(TDC、時間-デジタル変換器)といった、データ変換器(以下、データコンバータと呼称する)が使用されている。
【0003】
一例として、マイクロコンピュータに内蔵される逐次AD変換器、センサAFE(アナログフロントエンド)に使用される高精度なAD変換器、電池残量検知のAD変換器、ソフトウェア無線を実現する広帯域AD変換器、ToF(Time-Of-Flight)用途でピコ秒オーダーの時間計測を行う高精度TD変換器、無線用途で使用される全デジタルのADPLL(ALL-Digital-PLL)の要素として使用されるTD変換器等、が挙げられる。
【0004】
データコンバータ分野において、高速化、高精度化、低消費電力化、省面積化といった、高性能化と低コスト化の要求がある。
【0005】
例えば、汎用使用される逐次比較型ADコンバータ(以下、SAR-ADCと称する)の場合、素子精度の限界により、分解能は10~12ビット程度が限界である。
【0006】
これに対して、近年、アナログ回路内部の各種の素子ばらつきをデジタル回路で積極的に補正する技術が開示され、回路のデジタル化が進展している。
【0007】
以下、特許文献や非特許文献によって開示されている、補正技術の例を示す。
【0008】
特許文献1に開示されるADCでは、オフセットや内部DACの上位容量を補正するために、補正用の容量アレイが具備され、非線形性を補償するように容量値が設定される。
【0009】
特許文献2では、ADCの要素である比較器(コンパレータ)のオフセット補償回路が記載されている。
【0010】
この比較器のオフセット補償回路では、差動プリアンプ回路の出力にオフセット電圧補償回路が備えられており、差動出力のそれぞれに可変容量が備えられている。
【0011】
差動出力の正側と負側に接続する容量値のバランスを回路オフセットと相殺するように調整することで、比較器のオフセットをゼロにする。
【0012】
比較器のオフセット補正技術は、ADCの線形性(精度)に関わる。
【0013】
上記、特許文献1や特許文献2に示されるように、補正素子をアナログ回路内部に具備して、製造ばらつきによる素子ばらつきを相殺するようにデジタル回路を用いて補正することで、素子のつくりこみサイズを小さくすることができ、回路面積を縮小するとともに高精度化を図ることができる。
【0014】
以下、特許文献や非特許文献によって開示されている、検査技術の例を示す。
【0015】
特許文献3や特許文献4には、AD内部のDAC容量を検査する技術が開示されている。
【0016】
特許文献3に開示される検査方法は、検査用キャパシタを複数備え、内部の容量DACの電位と検査用キャパシタの電位を比較することによって、キャパシタの精度判定を行う。
【0017】
特許文献4に開示される検査方法は、内部の容量DACのノードに検査用MOSトランジスタをアレイで配置し、ANDとOR論理を形成して、容量DAC(メイン素子)の個々の故障を検出する。
【0018】
特許文献3記載の手法では、複数の検査用キャパシタ自体の故障や精度が悪い場合、検査精度が落ちる懸念があるため、検査用キャパシタの精度担保が必要である。
【0019】
また、特許文献4記載の手法では、容量DACのアナログノードに追加のMOSトランジスタのゲートをぶらさげるため、容量DACの整定時間が遅くなり、変換速度が低下する懸念がある。
【0020】
上記のように、検査手法は通常、AD変換に主に寄与するDACの容量などの構成素子(以下、メイン素子と呼称する)を検査する手法であって、補正素子を検査する手法ではなく、補正素子自体を検査する方法がない。
【0021】
特許文献3や特許文献4のアナログ的な検査アプローチに対して、アナログ誤差を反映するデジタル値を使って、故障を診断するといったデジタル的な手法が、非特許文献2や特許文献5に開示されている。
【0022】
非特許文献2に記載されるように、検査時には、自己校正用メモリの値を積極的に読みにいってテストに利用するとよいとされる。
【0023】
すなわち、レジスタの値が誤差量に対する補正量を示しているので、レジスタ値が過度に大きければ、アナログ内部の誤差が大きすぎると間接的に判定し、故障としてリジェクトできる。
【0024】
しかしながら、このようなデジタル的な手法は、間接的な手法であって、メイン素子が劣化/故障したのか、補正素子が劣化/故障したのか、補正素子を駆動するドライバ回路が劣化/故障したのか、といった区別がつかず、真の故障個所の特定が困難であるといった課題がある。
【0025】
また、特許文献6は、データコンバータとしてTD変換器(TDC、時間-デジタル変換器)を開示している。
【0026】
非特許文献3は、低消費電力化を進展させるためのオープンループ積分型アンプを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】米国特許第8638248号明細書
【文献】特許第5412369号公報
【文献】特開2015-128203号公報
【文献】米国特許第5175547号明細書
【文献】特開2017-38200号公報
【文献】特開2010-273118号公報
【非特許文献】
【0028】
【文献】Bob Verbruggen, “A 2.1mW 11b 410MS/s Dynamic Pipelined SAR ADC with Background Calibration in 28nm Digital CMOS”, VLSI Symposium 2013
【文献】デジタルアシスト・アナログテスト技術、小林春夫、電子情報通信学会、2010.7.22
【文献】Badr malki, “A complementary dynamic residue amplifier for a 67 dB SNDR 1.36 mW170 MS/s pipelined SAR ADC”, ESSCIRC 2014図31にゲイン補正機能
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
高精度化・高速化・低消費電力化のために、補正素子を内部に持つデータコンバータにおいて、バックグラウンド補正など製造出荷後の通常使用時に補正量が変わりうる場合、全ての補正状態を担保するために、製造出荷前の検査方法や、出荷後の自己診断機能が求められる。
【0030】
本開示は、コンバータを有する半導体回路において、データコンバータの補正機能を検査する半導体回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本開示に開示される開示は、課題を解決するための手段として、概略以下のように構成される。
【0032】
なお、以下の構成において、括弧()内の数字や記号は、開示の実施形態のうち、対応するものの数字や記号を示しており、あくまでその対応関係を明白にするものであり、本開示を限定するものではない。
【0033】
本開示の一態様に係る半導体装置は、被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータ(100)を含む半導体回路(1)であって、前記被測定信号を入力するアナログ回路(101)と、前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路(102)と、を備え、前記アナログ回路(101)は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群(10)と、前記補正素子を検査するための検査素子を含む検査素子群(20)と、を有し、前記デジタル回路(102)は、前記検査素子群(20)を用いて前記補正素子群(10)を検査する。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、データコンバータを有する半導体回路における補正機能検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、第一の実施形態に係るデータコンバータを備える半導体回路の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第一の実施形態の補正回路の構成例を示す図である。
図3図3は、第二の実施形態に係るデータコンバータを備える半導体回路の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、図3中の比較器の一例を示す回路図である。
図5図5は、比較器オフセット符号の便宜上の定義を示す図である。
図6図6は、比較器の出力波形の一例を示す図である。
図7図7は、比較器のオフセット補正容量の影響を示す波形例の図である。
図8図8は、補正を含めた比較器オフセット符号の便宜上の再定義を示す図である。
図9図9は、比較器オフセット補正制御コードとオフセット補正量の第一の対応表の一例を示す図である。
図10図10は、比較器オフセット補正制御コードとオフセット補正量の第二の対応表の一例を示す図である。
図11図11は、補正制御コードとオフセット補正量の関係を示す図である。
図12図12は、比較器のノイズの影響を示す図である。
図13図13は、比較器の非線形性の影響を示す図である。
図14図14は、第二の実施形態における、オフセット制御部の回路図を示す。
図15A図15Aは、第二の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の各重みの検査・診断の手続きを示す図である。
図15B図15Bは、図15Aの続きであり、比較器のオフセット補正素子の各重みの検査・診断の手続きを示す図である。
図16図16は、第二の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の検査・診断用デジタル部の一例を示す図である。
図17図17は、第二の実施形態における、第一固定コード設定時の補正オフセット量を示す表である。
図18図18は、第二の実施形態における、第二固定コード設定時の補正オフセット量を示す表である。
図19図19は、第二の実施形態における、第一固定コードの生成と2分探索の実行を示す模式図である。
図20図20は、第二の実施形態における、CDF判定を示す模式図である。
図21図21は、第二の実施形態における、第二固定コードの生成とCDF比較による重み判定を示す模式図である。
図22図22は、第二の実施形態における、検査用ビットを用いた重み判定を示す模式図である。
図23A図23Aは、第三の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の補正レンジ検査・診断の手続きを示す図である。
図23B図23Bは、図23Aの続きであり、比較器のオフセット補正素子の補正レンジ検査・診断の手続きを示す図である。
図24図24は、第三の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の検査・診断用デジタル部の一例を示す図である。
図25図25は、第三の実施形態における、レンジ判定を示す模式図である。
図26図26は、第四の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の補正機能の検査・診断の手続きを示す図である。
図27図27は、第四の実施形態における、比較器のオフセット補正素子の検査・診断用デジタル部の一例を示す図である。
図28図28は、第四の実施形態における、トグル検査を示す模式図である。
図29図29は、第四の実施形態における、検査・診断の順序の一例を示す図である。
図30図30は、第五の実施形態における、残差アンプの補正機構を示すブロック図である。
図31図31は、第五の実施形態における、ゲイン補正機能付き残差アンプの一例を示す回路図である。
図32図32は、第五の実施形態における、増幅時間調整部の一例を示す回路図である。
図33図33は、第六の実施形態における、増幅時間調整部の一例を示す回路図である。
図34図34は、第七の実施形態における、残差アンプの信号増幅部を示す回路図である。
図35図35は、第七の実施形態における、残差アンプのオフセット制御部を示す回路図である。
図36図36は、第八の実施形態における、DACのMSB容量の補正機構を示すブロック図である。
図37図37は、第八の実施形態における、容量補正部の一例を示す回路図である。
図38図38は、第九の実施形態における、ADCゲインの補正機構を示すブロック図である。
図39図39は、第九の実施形態における、容量補正部の一例を示す回路図である。
図40図40は、第十の実施形態における、TDC変換器(時間-デジタル変換器)の補正機構を示すブロック図である。
図41図41は、第十の実施形態における、遅延回路の一例を示す回路図である。
図42図42は、第十一の実施形態における、参照電圧回路の一例を示す回路図である。
図43A図43Aは、第十二の実施形態における、逆極性の検査用素子を制御した場合の一例を示す図である。
図43B図43Bは、図43Aの続きであり、逆極性の検査用素子を制御した場合の一例を示す図である。
図44A図44Aは、第十二の実施形態における、逆極性の検査用素子を制御した場合の一例を示す図である。
図44B図44Bは、図44Aの続きであり、逆極性の検査用素子を制御した場合の一例を示す図である。
図45図45は、第十三の実施形態における、比較器のオフセット制御部の一例を示す。
図46図46は、AD変換器の補正の一例を示す図である。
図47図47は、AD変換器の補正の一例を示す図である。
図48図48は、従来のオフセット制御部の回路図を示す。
図49図49は、補正素子の重みづけによる補正分解能の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載したデータコンバータに関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0037】
詳しく説明すると、製造出荷後の通常使用時に補正量が変わりうる場合、全ての補正状態を担保するために、製造出荷前の検査方法や、出荷後の自己診断機能が求められる。
【0038】
特に、車載部品として使用される場合、アナログ内部の故障検知や故障個所の特定といった、内部の制御性が必要要件であり、補正素子自体の検査が必要であるという課題を、本発明者らは見出した。
【0039】
検査・診断のためにアナログ回路を付加する手法をとる場合、AD変換自体の変換速度が落ちるといった課題がある。
【0040】
また、検査・診断のために補正量を示すメモリのレジスタ値を読むデジタル的な手法をとる場合、間接的な手法であるために故障個所の特定が困難である、といった課題がある。
【0041】
さらには、上記示したように、従来構成は、データコンバータに主に寄与するメイン素子(DACや比較器、アンプなど)、または、メイン素子と補正素子を加算した値や状態を対象とする検査手法であって、補正素子自体を網羅的に検査・診断できない、といった課題がある。
【0042】
また、本明細書で後述するように、補正素子が差動回路の正負両方に入っている場合において、正負のどちら側のどの素子が故障したのかといった、差動回路における故障個所の特定が困難であるといった課題がある。
【0043】
さらには、本明細書で後述するが、比較器のオフセット補償回路の検査・診断において、比較器の入出力関数が非線形であるため、比較器用のオフセット補正素子の重みづけの全てを検査できないといった課題がある。
【0044】
一方、補正を行うためには、通常動作と異なる制御を行う必要がある。
【0045】
補正の制御方法として、製造出荷前に行うトリミングや通常動作を停止した期間に行うフォアグラウンド補正があるが、温度、電圧、経年劣化といった環境変動に弱いという課題がある。
【0046】
非特許文献1に開示されるADCでは、通常動作と並行して素子の補正を行う、バックグラウンド補正技術が開示されている。
【0047】
非特許文献1では、比較器のオフセットやパイプラインADCの残差アンプのゲインを、通常動作と並行して補正している。
【0048】
トリミングやフォアグラウンド補正では対応できなかった、環境変動(温度、電圧、経年劣化等)に対して生じる特性劣化について、通常動作と並行して補正を行うことができるため、システムのロバスト性が保てる。
【0049】
一方、環境変動に応じて補正するために補正素子の選択状態が切り替わるため、全ての補正状態を担保するための製造出荷前の検査や、通常使用時に故障した場合の診断の方法に課題がある。
【0050】
上記では、補正を行うためにアナログ回路に補正素子を具備することと、補正するタイミングによって、トリミングやフォアグラウンド補正、バックグラウンド補正といった方法があることを示した。
【0051】
このような補正回路では、補正のための特殊な制御を行ってアナログ回路の誤差を検知し、データコンバータの構成要素に帰還をかけて補正する。
【0052】
帰還のかけ方を大別すると二通りある。
【0053】
一つ目として、従来例である図46に示すAD変換器(500)では、アナログ回路(501)からアナログ情報をデジタル情報に変換した量子化器出力信号が出力される。
【0054】
さらに、量子化器出力信号が入力されるデジタル回路(502)では、デジタル回路内部の誤差検出回路(504)においてアナログ回路の誤差を検知して誤差信号を出力し、前記誤差信号が入力されるデジタル回路内部のエンコード部(502)において量子化器出力信号に対して誤差信号に応じた補正演算が行われる。
【0055】
この方法は、デジタルからデジタルへ帰還する補正方法の一つである。
【0056】
二つ目として、従来例である図47に示すAD変換器(510)では、アナログ回路(511)から量子化器出力信号が出力される。
【0057】
さらに、量子化器出力信号が入力されるデジタル回路(512)では、デジタル回路内部の誤差検出回路(514)においてアナログ回路の誤差を検知して誤差信号を出力し、前記誤差信号が入力されるデジタル回路内部の補正用コード生成回路(515)においてアナログ回路内部の素子を補正するための制御コードを出力し、前記制御コードが入力されるアナログ回路では素子の定数が補正されるととともに補正された状態の量子化器出力が出力され、デジタル回路内部のエンコード部(513)で通常通りの重みづけされたデジタル演算が行われる。
【0058】
この方法は、デジタルからアナログへ帰還する補正方法の一つである。
【0059】
図46に示すデジタルからデジタルへの帰還の補正方法では、アナログ回路内部の素子が過度にばらついた場合、すなわち、AD変換器の1LSB以上に相当する誤差を持っている場合、デジタル演算のみで補正しきれないという欠点がある。
【0060】
一方で、図47に示すデジタルからアナログへの帰還の補正方法では、アナログ回路内部の素子が過度にばらついたとしても、過度なばらつきを補正する補正素子を具備すれば補正することができ、回路の小面積化と高精度化を維持できる。
【0061】
一方、デジタルからアナログへ帰還される前記制御コードのバスが、多数供給されるため、回路の複雑さが増す欠点を持つ。
【0062】
上記に述べたように、特性観点やロバスト性では、デジタルからアナログへの帰還補正、及び、バックグラウンド補正を行うことが最良であるが、製造出荷前の検査や診断が必要となる。
【0063】
補正素子に要求される仕様を説明するために、補正素子の重みづけと分解能の関係について、補足説明する。
【0064】
図49の(a)~(c)に補正素子の重みづけによる補正分解能の違いを示す。
【0065】
図49では、横軸に補正コード(制御コードの値)、縦軸にオフセット補正電圧を示している。
【0066】
図49の例では、オフセット補正素子の重みづけを変えて、オフセット補正量を計算している。
【0067】
すなわち、図49の(a)では、補正素子の隣接間の重みづけが“2“とし、LSBからMSBまでの重みづけは、LSBを1として、”1:2:4:8”としている。
【0068】
図49の(b)では、補正素子の隣接間の重みづけを“1.8”とし、LSBからMSBまでの重みづけは、“1.0:1.8:(1.8の2乗):(1.8の3乗)”としている。
【0069】
図49の(c)では、補正素子の隣接間の重みづけを“2.2”とし、LSBからMSBまでの重みづけは、“1:(2.2):(2.2の2乗):(2.2の3乗)”としている。
【0070】
補正分解能は、隣接コード間のステップ電圧の最大値で決まる。
【0071】
図49の(a)では、すべて1mVであるため、補正分解能は1mVとなる。
【0072】
図49の(b)の場合、“Code=0”と“Code=1”の差が1mVに相当し、“Code=7”と“Code=8”の差が0.208mVに相当するので、補正分解能は1mVとなる。
【0073】
図49の(c)では、“Code=7”と“Code=8”の差が最大であり、2.608mVに相当するため、補正分解能は2.608mVとなる。
【0074】
図49の例で補足説明したように、補正素子に要求される検査仕様としては、DAC容量などのメイン素子に対して行われる線形性の担保は不要であって、分解能の検査(ステップ電圧の最大値)が必要であり、隣接間の重みづけ要求は、“2以下(≦2)”となることを検査する必要がある。
【0075】
上記のような問題を解決するために、本開示の一態様に係る半導体装置は被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータを含む半導体回路であって、入力される前記被測定信号を量子化するアナログ回路と、前記デジタル出力信号を出力するデジタル回路と、を備え、前記アナログ回路は、前記アナログ回路内で前記被測定信号から前記デジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群と、前記補正素子を検査するための検査素子を含む検査素子群と、を有し、前記デジタル回路は、前記検査素子群を用いて前記補正素子群を検査する。
【0076】
これにより、補正素子の機能や重みづけを検査・診断することができるため補正素子群を検査することができる。
【0077】
たとえば、前記デジタル回路は、前記補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、前記検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを生成する自己診断用コード生成回路と、前記自己診断用コードに対応して出力される前記アナログ回路の量子化出力信号と、所定の閾値との差分を誤差信号として検出する誤差検出回路と、前記誤差信号に基づいて前記補正素子群の診断結果を示す自己診断信号を生成する自己診断回路とを備えてもよい。
【0078】
これにより、データコンバータ内部の補正素子に対して、自己診断用コード生成回路によって生成された制御コードを補正素子に供給し、自己診断回路によって、補正素子の機能や重みづけを検査・診断することができる。言い換えれば、補正素子群に含まれる個々の補正素子の検査を容易にする。
【0079】
たとえば、前記自己診断用コードは、第1固定コードおよび最適値コードを含み、前記第1固定コードは、前記補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、前記最適値コードは、前記第1固定コードに対して前記誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、前記自己診断回路は、前記第1固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号の積算値を算出し、前記積算値が所定の範囲内か否かを判定し、所定の範囲内でないときは補正素子群の不良と判定してもよい。
【0080】
これにより、誤差を所定の範囲内に最小化できない場合には、補正素子群の不良つまりいずれかの補正素子の不良と判定する。
【0081】
たとえば、前記自己診断用コードは、第1固定コード、第2固定コードおよび最適値コードを含み、前記第1固定コードは、前記補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、前記最適値コードは、前記第1固定コードに対して前記誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、前記被測定信号は、第1極性信号と第2極性信号とを含む差動信号であり、前記補正素子群は、前記第1極性信号の伝送経路に接続された第1素子群と、前記第2極性信号の伝送経路に接続された第2素子群とを含み、前記第1固定コードは、第1素子群に対応し、第2素子群をディスエーブルにし、前記第2固定コードは、前記第1素子群において検査対象として選択された1つの補正素子をディスエーブルにし、他の補正素子のうち当該補正素子よりも小さい重みの補正素子をイネーブルにし、検査素子をイネーブルにするコードであり、前記最適値コードは、第2素子群に対応し、第1素子群をディスエーブルにし、前記自己診断回路は、前記第1固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号を積算した第1積算値を算出し、前記第2固定コードと前記最適値コードとの組み合わせに対応する前記誤差信号を積算した第2積算値を算出し、前記第1積算値と前記第2積算値との大小関係を判定し、当該大小関係が所定条件を満たさないときは検査対象の補正素子の不良と判定してもよい。
【0082】
これにより、最適値コードによって、自己診断するための動作ポイントを、上記の誤差を最小化する動作ポイントに設定することができる。つまり、どの補正素子が検査対象であっても、上記の誤差を最小化する動作ポイントを利用でき、検査対象の補正素子の自己診断を容易にすることができる。言い換えれば、個々の補正素子の検査を容易にする。
【0083】
たとえば、前記自己診断回路は、前記補正素子群から検査対象として1つの補正素子を順次選択してもよい。
【0084】
これにより、前記被測定信号が差動信号であっても、誤差を所定の範囲内に最小化できない場合には、補正素子群の不良、つまりいずれかの補正素子の不良と判定することができる。
【0085】
たとえば、前記補正素子群のうち、1つ以上の補正素子を前記検査素子として兼用してもよい。
【0086】
これにより、前記被測定信号が差動信号であっても、個々の補正素子の自己診断を容易にする。
【0087】
本開示本開示の一態様に係る半導体装置は、被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータは、アナログ回路(101)とデジタル制御回路(102)と、を備え、前記アナログ回路(101)は、被測定信号を量子化するための基準用重みを各々持つメイン素子群(114)と、各種アナログ量を補正するための調整用重みを各々持つ補正素子群(140)と、前記補正素子群の重みを検査するための検査用重みを各々持つ検査素子群(141)と、被測定信号の情報をデジタル信号に変換する量子化器(116)と、アナログ回路内の制御を行うアナログ制御部(117)と、を少なくとも備え、前記デジタル回路(102)は、前記量子化器(116)の量子化器出力信号を所定の重みづけされたデジタル出力信号に変換出力するエンコード部(103)と、前記検査素子群(141)の1つ以上の検査用重みを参照して、前記補正素子群(140)のうちの1つの調整用重みの誤差を検出するために、前記デジタル出力信号を所定回積算した積算結果を所定閾値と比較して誤差信号を出力する誤差検出回路(104、119)と、前記補正素子群(140)の制御を行い、個々の補正素子を診断するための複数のビット信号を含む制御コードを出力する自己診断用コード生成回路(107、122)と、前記誤差信号を受けて自己診断出力信号を出力する自己診断回路(120)と、を少なくとも備え、前記自己診断回路によって前記補正素子群(140)の各々の補正素子の自己診断を行う。
【0088】
本開示の一実施形態である量子化器(116)は、1つでも1つ以上の複数であってもよい。
【0089】
また、検査・診断に使用する比較器の出力結果は1つでも1つ以上の複数であってもよい。
【0090】
本開示の一実施形態である検査素子群(141)のサイズを、検査素子(140)のLSBのサイズと同一か、又は、それ以下に設定することにより重みづけを検査・診断をできる構成としてもよい。
【0091】
本開示の一実施形態で補正素子群(140)と検査素子群(141)は、容量(400、401)であってもよいし、MOSトランジスタ(372、373、374、375)であってもよいし、抵抗(456、457)であってもよい。
【0092】
本開示の一実施形態である自己診断用コード生成回路(170)は、前記誤差出力信号を受けて、前記量子化器の量子化誤差が最小となるように最適補正コード(292、288、289)を出力する最適補正コード出力モードと、前記最適補正信号のうち検査対象の補正素子を制御する第一ビット信号を論理反転させた論理反転コード(301A、301B)を出力する、論理反転コード出力モードと、を備え、検査・自己診断時に、前記最適補正コード出力モードに設定して、前記最適補正コードを前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路の出力を第一誤差信号として得る第一ステップ(261、262、263)と、前記論理反転コード出力モードに設定し、前記論理反転コードを前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路の出力を第二誤差信号として得る第二ステップ(265、266)と、前記第一誤差信号と前記第二誤差信号の大小関係を比較し、検査対象となる補正素子の故障診断を行う第三ステップ(267、268、269)と、を備える。
【0093】
また、他の実施形態である前記自己診断用コード生成回路は、検査対象の第一補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号の反転論理とし、前記検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理とし、それ以外のビット信号を所定の固定信号として、出力する、第一の重み検査コード出力モード(182、185)と、前記第一ビット信号を、前記第一の重み検査コード出力モード設定時のビット信号の反転論理とし、前記第二ビット信号群を前記第一の重み検査コード出力モード設定時のビット信号の反転論理とし、前記検査素子を制御する検査ビットを前記第一の重み検査コード出力モード設定時のビット信号の反転論理とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力する、第二の重み検査コード出力モード(184、187、188、189)と、を備え、検査・自己診断時に、前記第一重み検査コード出力モードに設定して、前記指定した複数のビット信号を前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路の出力を第一誤差信号として得る第一ステップ(152、153)と、前記第二重み検査コード出力モードに設定して、前記指定した複数のビット信号を前記アナログ回路に供給し、前記誤差検出回路の出力を第二誤差信号として得る第二ステップ(156、157)と、前記第一誤差信号と前記第二誤差信号の差を演算し、前記補正素子群の重みづけ診断を行う第三ステップと(158、159、160)、を備える。
【0094】
また、他の実施形態として、差動構成をとる(または2つのセットを持つ)回路(114、130)の補正素子群の検査・診断を行う際、前記第一ステップ(152、153)において、検査対象でない側の極性の補正素子群を用いて、量子化誤差が最小となるように最適補正コード(184、187、188、189)を得ることによって、CDFを0.5付近に持っていき、検査・診断を行いやすくする。
【0095】
また、他の実施形態として、第一参照信号(252)を入力して、前記最適補正コードを第一最適補正コードとして得る第一ステップ(217、218)と、第二参照信号を入力して、前記最適補正コードを第二最適補正コードとして得る第二ステップ(219、220)と、前記第一の最適補正コードと前記第二の最適補正コードの差を演算して補正素子群のレンジ診断を行う第三ステップ(221、222、224)を経てもよい。
【0096】
また、他の実施形態として、差動構成をとる(または2つのセットを持つ)回路(114、130)の補正素子群の検査を行う際、検査の基準となる検査素子群の選択として、検査対象側の極性(または検査対象側のセット)の検査素子群(355)を用いてもよいし、反対側の極性(または検査対象でない側のセット)の検査素子群(357)を用いてもよい。
【0097】
また、他の実施形態として、前記データコンバータは、アナログ・デジタル変換器(ADC、110)であってもよいし、時間・デジタル変換器(TDC、440)であってもよい。
【0098】
また、他の実施形態として、検査素子群(471)は、補正素子群(470)として使用してもよい。
【0099】
ただし、この実施形態の場合、LSBの検査はできない。
【0100】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0101】
以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、繰り返しの説明を省略することがある。
【0102】
また、以下の説明や図面による詳細な説明は、請求の範囲に記載された主題を限定するものではない。
【0103】
<第一の実施形態>
以下、第一の実施形態の回路構成と機能について図面を用いて説明する。
【0104】
第一の実施形態では、本開示に係るデータコンバータを有する半導体回路の基本機能を示す。
【0105】
図1に、第一の実施形態に係るデータコンバータとしてAD変換器100を備える半導体回路1の構成例を示すブロック図である。また、図2は、第一の実施形態の補正回路109の構成例を示す図である。
【0106】
図1の半導体回路1は、LSIなどの半導体装置に形成される回路である。同図の半導体回路1は、データコンバータの一例としてAD変換器(ADC、アナログ-デジタル変換器)を備える。なお、データコンバータはAD変換器100に限らない。データコンバータは、AD変換器以外に、TD変換器(TDC、時間-デジタル変換器)を備えてもよい。
【0107】
AD変換器100は、アナログ回路101とデジタル回路102とを備え、アナログ回路101は、補正回路109を備える。補正回路109は、図2の例では、補正素子群10、検査素子群20およびドライバ15~18、20を備える。
【0108】
補正素子群10は、アナログ回路101内で被測定信号からデジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正する。ここでいう非線形性は、例えば、オフセット(信号に生じるずれ量)、ゲイン(倍率のずれ)、容量値(中の基準素子アレイ間の相対的なズレ)などを含む。以下では、補正素子群10による補正の対象となる非線形性の具体例としてオフセットをとりあげて説明する。同図のpath0は、外部アナログ信号である被測定信号を伝送する経路を示す。経路path0には、アナログ回路の特性ばらつきによって、ずれ量であるオフセットが生じるものとする。オフセットは、製造時の回路素子の特性ばらつき、環境変化や経年変化によって生じる特性ばらつき起因する。同図の制御コードは、通常動作時における補正素子群10を制御する補正用コードと、自己診断時に検査素子群20および補正素子群10を制御する自発補正用コードとを含む。
【0109】
補正素子群10は、補正素子11~14を備える。補正素子11~14は、例えば、1倍、2倍、4倍、8倍の重みを与えられている。補正素子11~14のそれぞれは、対応するドライバによりイネーブルまたはディスエーブルに制御される。イネーブルに制御された補正素子は、重みに応じた補正量を経路path0に付加する。ディスエーブルに制御された補正素子は、補正量を経路path0に付加しない。ここで補正量は、電圧、電流などの物理量である。補正素子11~14は、例えば、補正量を発生するための電圧源、電流源、容量性素子、または抵抗性素子で構成される。
【0110】
ドライバ15~16は、制御コード中の対応するビットに応じて対応する補正素子を駆動する、つまり、イネーブルまたはディスエーブルにする。ドライバ15~16は、例えば、制御コードのビットに応じた2値信号を出力するゲート回路や、スイッチ回路で構成される。
【0111】
なお、補正量は、電圧、電流に限らず、遅延時間、加熱量、または、加圧量などの物理量であってもよい。
【0112】
検査素子群20は、少なくとも1つの検査素子21を備える。図2の検査素子21は、補正素子11と同じ重みの同じ素子である。つまり、検査素子21は、補正素子群10に含まれる補正素子のうち、最小の重みの補正素子と同じ構成である。
【0113】
なお、検査素子群20は、検査素子21と同じ重みを有する他の検査素子を備えてもよいし、検査素子21と異なる重みを有する他の検査素子を備えてもよい。また、検査素子21は、最小の重みの補正素子よりも小さい重みをもつ構成としてもよい。
【0114】
図1において、デジタル回路102は、エンコード部103、誤差検出回路104、自己診断回路105、補正用コード生成回路106、自己診断用コード生成回路107、セレクタ108を少なくとも備える。
【0115】
AD変換器100の入力信号として外部アナログ信号が入力される。
【0116】
アナログ回路101は、内部に図示されない基準電圧を生成する基準電圧源を有しており、外部アナログ信号と内部の基準電圧のどちらかをAD変換できる。
【0117】
通常動作時は、外部アナログ信号が入力されたアナログ回路101で外部アナログ信号の情報が量子化されてデジタル信号となり、量子化器出力信号として出力する。
【0118】
量子化器出力信号は、エンコード部103に入力される。
【0119】
エンコード部103は、1つ以上の量子化器出力信号に所定の重みをつけてデジタル演算し、デジタル出力信号を出力する。
【0120】
アナログ回路101内部の図示されない補正素子を検査・診断するときは、内部の基準電圧をAD変換する。
【0121】
AD変換されたのち、量子化器出力信号は、誤差検出回路104に入力される。
【0122】
誤差検出回路104では、所定の閾値(例えば期待値)と比較して、誤差信号を出力する。
【0123】
誤差信号は、補正信号の検査・診断のための誤差情報を示唆しており、誤差情報の符号(正の誤差か、負の誤差か)であってもよいし、誤差情報の定量的な情報であってもよい。
【0124】
また、それらのノイズを除去すべく、1回以上積分したものであってもよい。
【0125】
誤差信号は、自己診断回路105および補正用コード生成回路106、自己診断用コード生成回路107に入力される。
【0126】
誤差信号が入力される補正用コード生成回路106は補正用コードを出力する。
【0127】
誤差信号が入力される自己診断用コード生成回路107は自己診断用コードを出力する。
【0128】
補正用コードは、アナログ回路101内部のアナログ特性を補正する補正素子の状態を制御するために使用される、複数のビット信号を持つデジタル信号である。
【0129】
自己診断用コードは、個々の補正素子の制御機能や重みづけを検査・診断するために使用される、複数のビット信号を持つデジタル信号である。
【0130】
誤差信号が入力される自己診断回路105は、補正素子の状態を検査するための誤差情報の保持や比較、演算を行い、自己診断信号を出力する。
【0131】
自己診断回路105は、誤差信号から、閾値を設けて診断判定を行ってもよいし、補正素子の相対的な重みづけを判定するために、2つの異なる状態の誤差情報を保持して重みづけの診断判定を行ってもよい。
【0132】
また、出力される自己診断信号は、補正素子のどの素子が故障したかという位置情報を出力してもよいし、検査・診断対象である補正素子の1つの重みづけを示唆する信号を出力してもよい。
【0133】
補正用コードおよび自己診断用コードは、セレクタ108に入力される。
【0134】
セレクタ108はアナログ回路101の補正素子状態を制御するための複数のビットを持つ制御コードを出力する。
【0135】
セレクタ108を制御するために、動作モード信号が入力され、動作モード信号によって、アナログ回路101の諸特性を補正するための補正モードとして補正用コードを出力するか、アナログ回路101の補正素子群の各々の補正素子を検査・診断するための自己診断モードとして自己診断用コードを出力するか、を切り替える。
【0136】
制御コードが入力されるアナログ回路101は、制御コードが補正用コードである場合には、アナログ回路101のアナログ諸特性が補正された状態で量子化器出力信号を出力する。
【0137】
また、制御コードが自己診断用コードである場合には、アナログ回路101内部の補正素子の重みづけ状態を示唆する量子化器出力信号を出力する。
【0138】
このように、第一の実施形態におけるAD変換器100は、被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータ100を含む半導体回路1であって、入力される被測定信号を量子化するアナログ回路101と、デジタル出力信号を出力するデジタル回路102と、を備え、アナログ回路101は、アナログ回路内で被測定信号からデジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群10と、補正素子を検査するための検査素子を含む検査素子群20と、を有し、デジタル回路102は、検査素子群20を用いて補正素子群10を検査する。
【0139】
これにより、補正素子の機能や重みづけを検査・診断することができるため補正素子群を検査することができる。
【0140】
ここで、デジタル回路102は、補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを生成する自己診断用コード生成回路107と、自己診断用コードに対応して出力されるアナログ回路の量子化出力信号と、所定の閾値との差分を誤差信号として検出する誤差検出回路104と、誤差信号に基づいて補正素子群の診断結果を示す自己診断信号を生成する自己診断回路105とを備えてもよい。
【0141】
これにより、データコンバータ内部の補正素子に対して、自己診断用コード生成回路によって生成された制御コードを補正素子に供給し、自己診断回路によって、補正素子の機能や重みづけを検査・診断することができる。言い換えれば、補正素子群に含まれる個々の補正素子の検査を容易にする。
【0142】
したがって、第一の実施形態の場合、アナログ回路101を補正するための補正用コード生成回路を備えるだけでなく、個々の補正素子の機能や重みづけを検査するための、自己診断用コード生成回路を備え、個々の補正素子に対応する自己診断用コード生成を行い網羅的に検査・診断するので、全ての補正素子の検査・診断できる。
【0143】
すなわち、従来技術では、メイン素子の状態、または、メイン素子と補正素子を加算した状態での、線形性や部分故障を検査して、限られた補正状態でしか、正常性を担保できていなかったことに対し、本実施形態では、個々の補正素子の正常性を担保することで、全補正状態を担保することができる、という効果を有する。
【0144】
以上のように、第一の実施形態に係る半導体回路は、被測定信号に対応するデジタル出力信号を出力するデータコンバータ100を含む半導体回路1であって、入力される被測定信号を量子化するアナログ回路101と、デジタル出力信号を出力するデジタル回路102と、を備え、アナログ回路101は、アナログ回路内で被測定信号からデジタル出力信号への変換過程で生じる非線形性を補正するための補正素子を含む補正素子群10と、補正素子を検査するための検査素子を含む検査素子群20と、を有し、デジタル回路102は、検査素子群20を用いて補正素子群10を検査する。
【0145】
ここで、デジタル回路102は、補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを生成する自己診断用コード生成回路107と、自己診断用コードに対応して出力されるアナログ回路の量子化出力信号と、所定の閾値との差分を誤差信号として検出する誤差検出回路104と、誤差信号に基づいて補正素子群の診断結果を示す自己診断信号を生成する自己診断回路105とを備えてもよい。
【0146】
ここで、アナログ回路107は、補正素子群による補正後の被測定信号または参照信号を量子化し、量子化器出力信号に変換するための量子化器を備え、デジタル回路は、量子化器出力信号を所定の重みづけされたデジタル出力信号に変換出力するエンコード部と、量子化器出力信号と所定の閾値との差分を複数回積算した積算結果を誤差信号として出力する誤差検出回路と、補正素子群に含まれる個々の補正素子をイネーブルまたはディスエーブルにし、かつ、検査素子群に含まれる個々の検査素子をイネーブルまたはディスエーブルにするための自己診断用コードを出力する自己診断用コード生成回路と、誤差信号を受けて補正素子群の良否を示す自己診断出力信号を出力する自己診断回路と、を備え、自己診断回路によって補正素子群の各々の補正素子の自己診断を行ってもよい。
【0147】
<第二の実施形態>
以下、第二の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0148】
第二の実施形態では、より具体的な構成例を示すために、データコンバータとして、逐次AD変換器(図2)を例にとり、比較器のオフセット補正を行う補正素子群の個々の補正素子を検査・診断対象とする構成例について説明する。
【0149】
なお、第二の実施形態~第十三の実施形態に登場する構成要素については、第一の実施形態または他の実施形態で同上する同じ名称の構成要素は、異なる符号であっても同一の構成要素をより具体化した例を示すものである。
【0150】
図3は、第二の実施形態に係るデータコンバータを備える半導体回路の構成例を示すブロック図を示す。図3では、データコンバータの一例として逐次比較型の逐次AD変換器110を示している。
【0151】
図3の逐次AD変換器110は、図1のAD変換器100の具体例であり、差動回路構成をとる一例を示している。本開示のAD変換器100は、これに限定するものではなく、シングルエンド回路構成においても適用可能である。
【0152】
以下、構成要素について示す。
【0153】
逐次AD変換器110は、アナログ回路111とデジタル回路112を含み、外部アナログ信号(VINP、VINM、VINPは正側、VINMは負側)が入力され、アナログ信号を時間離散化および振幅量子化したのちに、量子化器出力信号を出力し、不図示のエンコーダ回路によってデジタルの所定演算がなされて、AD変換結果となるデジタル信号を出力する。
【0154】
アナログ回路111は、補正対象となるアナログ要素部と要素制御部を含んでいる。
【0155】
アナログ要素部として、サンプルホールド回路113、DAC(デジタル・アナログ変換器)114、比較器116、ドライバ回路115を備える。
【0156】
要素制御部として、DAC制御部117、を備える。
【0157】
デジタル回路は、DACを制御する要素部と、補正対象を制御する要素部を含んでいる。
【0158】
DACを制御する要素部として、SAR制御部118、DAC直接制御モード用メモリ部124、セレクタ125を備えている。
【0159】
補正対象を制御する要素部として、誤差検出回路119、自己診断回路120、補正用コード生成回路121、自己診断用コード生成回路122、セレクタ123、を備えている。
【0160】
以下、構成要素の接続関係について示す。
【0161】
外部アナログ信号(VINP、VINM)はサンプルホールド回路へ入力される。
【0162】
サンプルホールド回路113では、通常動作時において入力信号をサンプリングして時間離散化し、アナログ情報信号を出力し、DAC114のトッププレート電圧ノード(topPlateP、topPlateN)に電圧が保持される。
【0163】
さらに、サンプルホールド回路113には、補正時に出力を中点参照電圧VCMに設定するための機構も具備される。
【0164】
DAC114のボトムプレート側にはドライバ回路115が接続され、高電位側参照電圧VRHとされるか、低電位側参照電圧VRLとされるかが、DAC制御部117によって決定される。
【0165】
また、DAC114は、複数の重みづけされたメイン素子の容量アレイで構成され、図2中の(8C、4C、2C、1C)はそれぞれ、DACの1LSBを基準にして重みづけが(8、4、2、1)であることを示している。
【0166】
補正対象となる比較器116には、トッププレート電圧ノード(topPlateP、topPlateN)が入力される。
【0167】
比較器116ではアナログ情報が量子化されてデジタル情報となって、量子化器出力信号として出力される。
【0168】
量子化器出力信号は、SAR制御部118と誤差検出回路119へ出力される。
【0169】
SAR制御部118は量子化器出力信号に基づき、DAC114の制御を行うための制御信号を、セレクタ125に出力する。
【0170】
一方、セレクタ125は、SAR制御部118の出力信号と、DAC直接制御モード用メモリ部124が入力され、入力されるDAC制御モード信号に応じて、DAC制御コードの元になる制御信号をDAC制御部117へ出力する。
【0171】
誤差検出回路119は、量子化器出力信号に基づいて所定の閾値(期待値や規格値、参照値など)と比較・演算され、誤差信号を出力する。
【0172】
誤差信号は、補正用コード生成回路121と自己診断用コード生成回路122へ出力される。
【0173】
補正用コード生成回路121は誤差信号に基づき補正用コードを決定して出力する。
【0174】
自己診断用コード生成回路122は誤差信号に基づき補正用コードを決定し出力する。
【0175】
補正用コードと自己診断用コードが、セレクタ123に入力される。
【0176】
セレクタ123は、入力される動作モード信号に基づき、補正用コードと自己診断用コードのいずれかを制御コードとして補正対象に出力する。
【0177】
自己診断回路120は、誤差信号、自己診断用コードおよび補正コードを受けて、自己診断出力信号を出力する。
【0178】
以下、構成要素の動作について示す。
【0179】
動作モードとして、(1)通常動作モード、(2)補正モード、(3)検査・自己診断モードを備える。
【0180】
(1)通常動作モード時は、外部アナログ信号(VINP、VINM)がサンプルホールド回路113を通して、DACトッププレート電圧ノード(topPlateP、topPlateN)にサンプリング(時間離散化)される。
【0181】
サンプリングされた電圧と、DAC制御部117とドライバ回路115によって制御されるDAC114の容量の電荷再分配によって生成される基準電圧との、2つの差(残差電圧と呼称する)が、比較器116に入力される。
【0182】
比較器116は、残差電圧の正側電圧(topPlateP)と負側電圧(topPlateN)を比較し、正側が大きければ“1”を出力し、負側大きければ“0”を出力する。
【0183】
通常動作モード時においては、DAC制御モード信号によって、セレクタ125の出力信号として、SAR制御部118の出力が選択される。
【0184】
SAR制御部118は、量子化器出力信号に基づき、DAC制御コードの元となる制御信号をDAC制御部117へ出力し、アナログ信号とDAC114で生成される電圧の信号の差分(残差電圧)を逐次比較し、残差電圧がゼロに近づくように動作して量子化する処理がなされる。
【0185】
なお、比較サイクルの回数は、本実施形態では、4ビットの例を示しているがこれに限定されるものではない。
【0186】
また、比較器116は、1個で複数の各逐次比較サイクルの処理をしてもよいし、複数個で各サイクルの処理をしてもよい。
【0187】
また、量子化器出力信号は、不図示の回路によって、サイクル毎の値を保持しているものとし、本実施形態では、4ビット構成で、4つの量子化器出力信号を出力する。
【0188】
比較器116から出力される量子化器出力は、SAR制御部118と誤差検出回路119の両方に帰還されるが、バックグラウンド補正を行う場合は、比較器のオフセット状態を誤差検出回路で検出し、補正用コード生成回路121で補正コードを随時更新し、オフセット制御コード(CCp、CCn)に反映して、オフセットを補正された状態でAD変換が行われる。
【0189】
次に、(2)補正モードについて説明する。
【0190】
(2)補正モード時は、フォアグラウンド補正とバックグラウンド補正の2通りある。
【0191】
フォアグラウンド補正時は、AD変換動作を停止し、内部の中点参照電圧(VCM)がサンプルホールド回路113を通して、DACトッププレート電圧ノード(topPlateP、topPlateN)にサンプリング(時間離散化)される。
【0192】
内部の中点参照電圧(VCM)をAD変換することにより、比較器の入力状態を所定の状態(たとえば、差動電圧ゼロ状態)に設定し、比較器出力(量子化器出力信号)における“1”と“0”の出現確率が、50%に近づくように、比較器116のオフセットを補正する。
【0193】
フォアグラウンド補正の際には、AD変換動作を停止した上で、セレクタ123の出力には補正用コード生成回路の出力が選択されて補正コードの最適値を追い込むとともに、セレクタ125の出力にはDAC直接制御モード用メモリ部124で保持される特定コードを示す出力コードが選択されてDAC114が制御される。
【0194】
バックグラウンド補正の際には、AD変換動作を継続させたうえで、セレクタ123の出力には補正用コード生成回路の出力が選択されて補正コードが環境変動に応じて最適値に変化するとともに、セレクタ125の出力には、SAR制御部118の出力が選択されて通常動作モードと同様のDAC制御動作を行う。
【0195】
本開示の主旨は、補正素子の検査・診断であることから、(2)補正モード時の詳細については省略する。
【0196】
次に、(3)検査・自己診断モードについて説明する。
【0197】
本実施形態の検査・自己診断対象は、比較器のオフセットを補正するための補正素子自体であるため、開示にかかる説明の前に、オフセット補正機構付きの比較器について説明する。
【0198】
図4は、図3中の比較器の一例を示す回路図である。図4の比較器130は、図3の比較器116の一例であり、オフセット補正機構としてオフセット制御部132を備える。オフセット制御部132は、図1に示した補正回路109の一例でもある。
【0199】
図4において、比較器130は、差動増幅部131およびオフセット制御部132、差動ラッチ回路133から構成される。
【0200】
オフセット制御部132には、差動の正負のそれぞれに、補正の為の可変容量であるCapPとCapNを備え、差動増幅部の正負の出力ノードVgp、Vgnにそれぞれ一端が接続される。
【0201】
補正素子(CapP、CapN)は、デジタル回路から供給される、オフセット補正量容量制御コード(CCp、CCn)によって、容量値を可変にできる。
【0202】
以下、比較器のオフセット補正作用とその課題点について示す。
【0203】
図は、オフセット制御部132を有する。
【0204】
デジタル回路から供給される補正制御コードバス(CC3p、CC2p、CC1p、CC0p、CC3n、CC2n、CC1n、CC0n)が補正素子ドライバ回路136に供給され、補正素子ドライバ回路136は、補正素子群にVDD(電源電圧)またはVSS(GND電圧)を供給する。
【0205】
補正素子群はMOSトランジスタで構成され、ドレインとソースがショートされたノードと、補正素子ドライバ回路136でドライブされるゲートのノードとの間で、容量値を持つ。
【0206】
NMOSトランジスタの場合、ドライバ回路がVDDを供給すると、MOSにチャネルが形成され、容量値が増える。
【0207】
一方、VSSを供給すると、チャネルが形成されず、容量値は対GNDに対する寄生容量となり、容量値が小さくなる。
【0208】
補正対象となる比較器130は、主に差動増幅部131の差動対の製造ばらつきに起因してランダムなオフセットVoffを持つ。
【0209】
本開示の説明において、便宜上オフセットの符号を定義しておく必要があるので、図5にオフセット符号の便宜上の定義を設定しておく。
【0210】
逆符号でも、同様の説明ができるため、あくまで便宜上のものである。
【0211】
比較器オフセット137がゼロである場合、比較器130は、正の入力VINCP、負の入力VINCM、正の出力VOUTCP、負の出力VOUTCMを持ち、差動入力(VINCP-VINCM)の値が0より大きい場合、VOUTCPは“1”を出力し、逆の場合にはVOUTCPは“0”を出力し、VOUTCMはVOUTCPの反転論理を出力する。
【0212】
オフセットVoffが製造ばらつきに起因する場合、比較器130の実質的な差動入力は(VINCP-Voff-VINCM)となり、この実質的な差動入力の値が0より大きい場合、VOUTCPは“1”を出力し、逆の場合は“0”を出力する。
【0213】
図6に比較器の出力波形例を示す。
【0214】
比較器の入力クロックCLKCが“Low”のとき、比較器はリセット状態とされ、内部ノード(Vgp、Vgn)が電源電位(VDD)となり、出力ノード(Voutp、Voutn)がGND電位(VSS)となる。
【0215】
比較器の入力クロックCLKCが“High”に遷移するとき、比較器は増幅状態とされ、差動増幅部131によって差動入力信号(VINCP、VINCM)が増幅され、内部ノード(Vgp、Vgn)がVSSに近づくともに、入力に応じた信号の開きを持つ。
【0216】
内部ノード(Vgp、Vgn)の信号の開きに応じて、差動ラッチ回路でリジェネレーション動作が行われ比較器出力状態に遷移し、出力電圧(VOUTCP、VOUTCM)の論理が確定する。
【0217】
図5の例の場合は、入力信号VINCPの電圧が入力信号VINCMに比べて大きいと判定し、VOUTCPが“1”、VOUTCM“0”を出力する例を示している。
【0218】
図7にオフセット補正容量の影響を示す波形例の図を示す。
【0219】
可変できる補正容量CapPを制御信号によって大きくした場合、増幅時のVgpノードのGNDへの引き動作が遅くなるため、Vgp>Vgnの開きを持つ方向にシフトする。
【0220】
したがって、このときの出力VOUTCPは“0”となる。
【0221】
一方、可変できる補正容量CapNを制御信号によって大きくした場合、増幅時のVgnノードのGNDへの引き動作が遅くなるため、Vgp<Vgnの開きを持つ方向にシフトする。
【0222】
したがって、このときの出力信号VOUTCPは“1”となる。
【0223】
このようにして、差動回路の負荷バランスを調整することでオフセットを調整する。
【0224】
前記のCapPによるオフセット補正作用、CapNによるオフセット補正作用の符号を考慮するため、図5の定義を再定義する。
【0225】
図8に、補正を含めた比較器オフセット符号の便宜上の再定義を示す。
【0226】
CapPを増加させた場合のオフセット補正量138をVcalpとし、CapNを増加させた場合のオフセット補正量139をVcalnとし、比較器オフセット137をオフセットVoffとし、差動入力(VINCP-VINCM)をVinとし、比較器出力をVOUTCPとする。
【0227】
このとき、比較器130の実質的な差動入力VinCPは、((VINCP-Voff-Vcalp)-(VINCM-Vcalm))となる。
【0228】
すなわち、(Vin-Voff-(Vcalp-Vcalm))となる。
【0229】
よって、CapPとCapNのオフセットに対する作用は、“逆符号”の関係となっている。
【0230】
さらに、正側に4ビット、負側に4ビットの補正容量を配するため、5ビット相当の補正作用をもつ。
【0231】
具体的にオフセット補正制御コードとオフセット補正量を計算した例を、図9および図10に示す。
【0232】
図9及び図10において、補正量の重みづけは、(1.8の3乗、1.8の2乗、1.8の1乗、1)に設定されている。
【0233】
また、各重みのオフセット作用量を(5.832、3.24、1.8、1)[mV]と設定している。
【0234】
図9および図10に示されるように、CapPとCapNの2つがオフセット補正容量として作用しているために、1つのオフセット補正量を実現するために複数の制御コードの割り当てが可能になっており、1対1の関係にはならないため、いずれの制御コード対応表をつかっても補正は実現できる。
【0235】
あくまで、(Vcalp-Vcalm)の総和がオフセット補正量として作用している。
【0236】
図11に補正制御コードとオフセット補正量の関係を示す。
【0237】
第一の対応表<Mapping1>と第二の対応表<Mapping2>に基づく補正量は、いずれも、同一の補正レンジを実現できる。
【0238】
図を見てわかるように、重みづけが2以下(1.8)であるために、制御コードの増加に対して、補正量が減るポイントが出てくる。
【0239】
すなわち、冗長性を持っているため、分解能は保たれるが、1つのオフセット補正量を実現するために複数の補正制御コードが該当すること(複数の解があること)が、場合によってはあることを示している。
【0240】
したがって、補正容量の冗長性により、オフセット補正量と制御コードが1対1の関係にならないケースがある。
【0241】
補正素子自体の検査・診断の観点においては、前記のように、1対1の関係にならないという冗長性が課題となる。
【0242】
補正素子の一部が故障する、または、補正素子のドライバ回路の出力の一部が故障する、といった場合を仮定したとき、直接的又は間接的な何らかの手法で、比較器のオフセット補正量を示唆する信号を検査・診断で知り得たとする。
【0243】
このとき、補正量を示唆する出力が正常値である場合、冗長性により正常であるだけであって、補正素子の全てが正常であるとは言い切れない(ただし、1か所故障しても冗長性によって、他の解を探して回復してくれるという利点も合わせ持つ)。
【0244】
また、診断出力が異常値である場合、差動回路の制御コード対応表の例で説明したように、補正量と制御コード状態が1対1にならないため、正側と負側どちらの故障であるか、また、どの補正素子の故障であるかといった故障素子の位置特定が、困難であるといった課題がある(この課題を以下、“冗長性による内部欠陥の隠蔽性の課題“と呼称する)。
【0245】
加えて、比較器のノイズの課題について説明する。
【0246】
データコンバータなどのアナログ回路が微細化に伴い、低電圧化が進んでいるため、AD変換や補正、また、検査・診断において、比較器のノイズが課題となっている。
【0247】
図12に比較器のノイズの影響を示す。
【0248】
図12において、横軸は比較器入力電圧であり、縦軸はCDF(CumulativeDistributionFunction、累積分布関数)を示しており、比較器出力が入力に応じて、“1”を出力する確率である。
【0249】
入力電圧ゼロのとき、CDFはおよそ0.5となり、“1”を出力する確率が50%、“0”を出力する確率が50%となる。
【0250】
図12(a)、図12(b)は、ノイズの影響を除去すべく、繰り返し比較器出力結果を測定した場合の、シミュレーション結果である。
【0251】
図12(a)が64回測定した結果であり、図12(b)が4096回測定した結果である。
【0252】
図を見てわかる通り、図12(a)は比較出力回数が少ないため、ノイズにより誤判定を起こしうることがわかる。
【0253】
この比較器のノイズの影響は、通常AD変換結果においては精度劣化の要因の一つであり、補正または検査・診断においては、結果の誤判定として課題となる(この課題を以下、“ノイズによる誤判定の課題”と呼称する)。
【0254】
加えて、比較器の非線形性の課題について説明する。
【0255】
図13に比較器の非線形性の影響を説明する図を示す。
【0256】
横軸に実質的な比較器の差動入力VinCP、縦軸にCDFを示している。
【0257】
補正制御コードを検査・診断するために、補正制御コードを幾つか選択してCDFを測定した例を示している。
【0258】
黒丸の比較器遷移点(0.5)付近の隣接した2つの制御コードを選択するとき、それぞれ“0.4”、“0.6”と測定され、正常・異常判定が容易である。
【0259】
一方、白丸の比較器遷移点でない箇所で、2つの制御コードを選択すると、両方とも、“0.0”と出力される。
【0260】
よって、補正のための制御コードが正常に機能・作用しているかといった機能判定や、個々の補正素子の大小関係の判定が意図したものなっているかといった精度判定が、CDFが“0.5”付近以外は、困難となる。
【0261】
このように、非線形性により、補正制御コードの一部しか正確に検査・診断できないという課題がある(この課題を以下、“比較器非線形性による状態推定の課題”と呼称する)。
【0262】
本開示の目的は、補正素子の検査・診断であるため、アナログ回路構成が限定されるものではないが、一例として図3の比較器を用いて説明する。
【0263】
図3の比較器のオフセット制御部132の構成として、本開示では、図14に示す回路図を用いる。
【0264】
従来のオフセット制御部が図48で示されるのに対して、本開示のオフセット制御部は図14で示されるが、従来のものと比べて、検査素子群141を追加している。
【0265】
この検査素子群141は、補正素子群140の重みを検査する際に使用するものであり、制御信号CCdp、CCdnによって制御され、かつ、補正素子群のLSB(1C)と同一の容量値を持つものとする。
【0266】
ただし、このサイズに限定されるものではなく、検査素子群のサイズとして、補正素子群のLSB(1C)以下の値を設定しても同様の効果を得られる。
【0267】
以下、図15Aおよび図15Bのフローチャートに基づき、図2および図16の回路構成を参照し、図17図21の表と模式図を用いて、本開示の重み検査の手続きについて説明する。
【0268】
図15Aおよび図15Bに、比較器のオフセット補正素子の各重みの検査・診断の手続き(フローチャート)を示す。
【0269】
図16に、デジタル部の構成の一例を示す。
【0270】
図17図18に検査・診断時の補正オフセット量を示す。
【0271】
図19図20図21に検査・診断時の補正オフセット量とCDFの計算例を示す。
【0272】
図22に、検査用ビットを用いた重み判定の模式図を示す。
【0273】
手続き150において、比較器補正素子の重みの検査・診断を開始する。
【0274】
図2の回路構成において、所定の動作モード信号が供給され、補正用コード生成回路121はディスイネーブルされ、自己診断用コード生成回路122がイネーブルされ、動作を開始する。
【0275】
手続き151において、検査対象の補正素子の選択動作を行う。
【0276】
補正素子は、正側(P側)と負側(N側)の両方に配されるため、個別に選択し、検査・診断を行う。
【0277】
さらに、補正素子のどのビット(どの補正素子)を検査するのかを選択する。
【0278】
これは、プログラムされたシーケンスで、順次選択するなり、レジスタに保持された情報により選択するシーケンスであってもよい。
【0279】
本実施形態では、ステート制御173より出力される検査対象ビット指定信号TestBitを、検査ビット選択部190で受けて、検査のための制御コードの元となる情報を、第1固定コード生成部と第2固定コード生成部183へ出力する。
【0280】
補正素子は、重みづけ2以下の値に設定されたアレイであるので、補正素子の1つ1つを指向した個々の検査・診断を行うことで、前記述べた“冗長性による内部欠陥の隠蔽性の課題“を解決することができる。
【0281】
手続き152、153において、第一固定コードの生成と2分探索の実行を行う。
【0282】
本開示は、全ての補正ビットに対して同様の操作を行い、全ビットを検査することを想定しているが、一例として、P側補正素子のMSBを検査する場合を述べる。
【0283】
第1固定コード生成部182より出力される自己診断用コードをP側制御コードの(CC3p、CC2p、CC1p、CC0p)(CCdp)に出力するが、値として(1、0、0、0)(0)の固定値に設定する。
【0284】
この固定値は第一固定コードレジスタ185に格納され維持される。
【0285】
一方、N側制御コードは2分探索制御部184によって、量子化誤差が最小(CDFが0.5近辺)となる最適コードを探索する。
【0286】
探索途中のコードは、探索コードレジスタ187に格納され、都度、最適コードレジスタ188に、CDFが0.5に近くなる場合のコードを格納するとともに、CDF中心である0.5からの誤差を、最小誤差レジスタ189に格納し、更新する。
【0287】
なお、2分探索の制御の際に、N側の検査素子の制御信号(CCdn)は(0)に固定しておく。
【0288】
図19に、2分探索の状態を示し、図17に第一固定コード設定時の補正オフセット量を示す。
【0289】
本実施形態では、オフセットVoffが4.05mVを一例としており、オフセットVoffとP側の第一固定コード設定(1000)(0)分の補正量Vcalpの総和に対して、量子化誤差が最小(CDF≒0.5)となるように、N側の補正量Vcalmを決め、N側の制御コードを決定している。
【0290】
量子化器出力信号は、積算期待値レジスタ191とともに、減算器199に入力され、減算された結果が積算器192(アキュムレータ)に蓄積される。
【0291】
積算器による繰り返し測定により、前記の“ノイズによる誤判定の課題”を解決することができる。
【0292】
積算器192の出力は、誤差信号として、2分探索制御部184に供給されるとともに、デマルチプレクサ181に供給される。
【0293】
2分探索が終了し最適コードが確定すれば、第一固定コードがセレクタ180C及びセレクタ180Aを通り、制御信号として、正側の補正素子に供給される。
【0294】
さらに、最適コードレジスタ188が確定後の最適コードを出力し、セレクタ180D及びセレクタ180Bを通り、制御信号として、N側の補正素子に供給される。
【0295】
この際の結果保持として、デマルチプレクサ181ではSTEP2にスイッチされ、誤差信号が第一積算結果193に格納される。
【0296】
第一積算結果はCDF判定部197に入力され、CDF規格値レジスタ195に格納されている上限値・下限値と比較される。
【0297】
図20に、CDFによる規格値判定の模式図を示す。
【0298】
図は一例であるが、0.2≦CDF≦0.8の場合(手続き154)、正常判定として次ステップ(155)へ移る。
【0299】
外れる場合(手続き156)は、分解能不足として異常と判定する。
【0300】
また、このCDF判定によってオフセット分解能異常と判定された場合、P側補正素子群とN側補正素子群のどちらに不良が生じているが故障位置の特定が困難であるが、どちらの不良であるかは、この手続き段階では問題にならない。
【0301】
すなわち、CDFを0.5付近に持っていくことで、次ステップにある特定ビットの検査を実行できることが主目的である。
【0302】
次ステップでは、P側を再構成し、N側を最適値に維持固定し、CDFの符号が、0.5から、どちらの符号に外れるかを見るのであって、検査のためにCDFを0.5付近に持っていけるかが本開示を実施する上で重要である。
【0303】
この一連の手続きによって、図13に示す、内部状態推定・可能な位置にオフセットを移動させることで、前記の“比較器非線形性による状態推定の課題”を解決することができる。
【0304】
手続き156において、セレクタ180C、180D、デマルチプレクサ181は、STEP2にスイッチされる。
【0305】
第2固定コード生成部183より出力される自己診断用コードを、(CC3n、CC2n、CC1n、CC0n)(CCdn)であり、(0、1、1、1)(1)の固定値に設定する。
【0306】
この固定値は第二固定コードレジスタ186に格納され維持される。
【0307】
一方、N側制御コードは最適コードレジスタ188によって出力される最適コード(本実施例では、(0、0、1、0)(0)に維持固定される。
【0308】
第二固定コードはセレクタ180C、180Aを通して、P側補正素子に供給される。
【0309】
最適コードは、セレクタ180D、180Bを通して、N側補正素子に供給される。
【0310】
この例では、この一連の操作で、N側制御コードがそのままであることが重要で、P側制御コードを再構成し、CDF結果の0.5付近からの変化量を判断しているので、故障と判定される時は、故障位置はP側と特定でき、ビット毎の検査なので、どのビットが故障しているかも検査・診断できる。
【0311】
手続き157~160について説明する。
【0312】
積算器192から出力される誤差信号(手続き157)は、第二積算結果レジスタ194に供給される。
【0313】
第一積算結果と第二積算結果の差が減算器200によって計算され、重み判定部198に供給され、どちらのCDFが大きいかを判定し(手続き158)、自己診断出力を行う(手続き159、手続き160)。
【0314】
本実施形態の例では、P側補正素子のMSBなので、CDF2≦CDF1ならば、正常判定とし、それ以外ならば、MSB補正素子は重みづけ2以上として異常と判断する。
【0315】
一連の操作の模式図を図21に補足として示す。
【0316】
さらに補足として、図22に、検査用ビットを用いた重み判定の模式図を示す。
【0317】
N側の補正量Vcalmは制御可能であり、製造ばらつき分のオフセットVoffは制御不可能である(一定範囲内にランダムにばらつく)。
【0318】
また、P側の特定ビットを検査するために、検査対象ビット“1”または“0”に固定化する必要がある。
【0319】
これらの制約条件のもと、本実施形態では、P側を固定(1000又は0111)とし、オフセットVoffを製造ばらつき分によって生じたオフセット量とし、検査対象外のN側の2分探索制御によって、CDFが0.5付近に来るように制御して課題を解決している。
【0320】
P側の固定値Vcalp(検査のために固定化)と製造ばらつきオフセットVoffの総和に対して、N側の補正量Vcalmを2分探索によって調整して、CDFを0.5近辺に持っていく検査・診断するための準備操作といえる。
【0321】
図15Aおよび図15Bのフローチャートに基づく手続きを、P側、N側の両方で個々に行い、また、個々のビット全てに対して検査・診断を行うことで、全ての補正素子の重みづけが、検査素子を基準にして、2以下であることが担保できる。
【0322】
以上のように、誤差検出回路内の積算器によって量子化器出力結果を積算することで“ノイズによる誤判定の課題”を解決できる効果を有する。
【0323】
さらには、検査対象でない極性側の補正素子を用いてCDFを0.5付近に移動させることで、2つの相対する積算結果の大小関係を判定できるので“比較器非線形性による状態推定の課題”を解決できる効果を有する。
【0324】
さらには、検査素子を基準にして、P側、N側の重みづけを個別に検査・診断し、各補正素子を個別に検査し不良を特定できるので、“冗長性による内部欠陥の隠蔽性の課題“を解決することができるという効果を有する。
【0325】
以上のように、第二の実施形態に係る半導体回路において、自己診断用コードは、第1固定コードおよび最適値コードを含み、第1固定コードは、補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、最適値コードは、第1固定コードに対して誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、自己診断回路105は、第1固定コードと最適値コードとの組み合わせに対応する誤差信号の積算値を算出し、積算値が所定の範囲内か否かを判定し、所定の範囲内でないときは補正素子群の不良と判定する。
【0326】
ここで、自己診断用コードは、第1固定コード、第2固定コードおよび最適値コードを含み、第1固定コードは、補正素子群から検査対象として選択された1つの補正素子をイネーブルにし、他の補正素子および検査素子をディスエーブルにするコードであり、最適値コードは、第1固定コードに対して誤差信号を最小化するコードであり、2分探索法により生成され、被測定信号は、第1極性信号と第2極性信号とを含む差動信号であり、補正素子群は、第1極性信号の伝送経路に接続された第1素子群と、第2極性信号の伝送経路に接続された第2素子群とを含み、第1固定コードは、第1素子群に対応し、第2素子群をディスエーブルにし、第2固定コードは、第1素子群において検査対象として選択された1つの補正素子をディスエーブルにし、他の補正素子のうち当該補正素子よりも小さい重みの補正素子をイネーブルにし、検査素子をイネーブルにするコードであり、最適値コードは、第2素子群に対応し、第1素子群をディスエーブルにし、自己診断回路105は、第1固定コードと最適値コードとの組み合わせに対応する誤差信号を積算した第1積算値を算出し、第2固定コードと最適値コードとの組み合わせに対応する誤差信号を積算した第2積算値を算出し、第1積算値と第2積算値との大小関係を判定し、当該大小関係が所定条件を満たさないときは検査対象の補正素子の不良と判定してもよい。
【0327】
ここで、自己診断回路は、補正素子群から検査対象として1つの補正素子を順次選択してもよい。
【0328】
ここで、補正素子群のうち、1つ以上の補正素子を検査素子として兼用してもよい。
【0329】
ここで、量子化器は、一つ以上の比較器を備え、誤差検出回路は、一つの比較器の出力結果、又は、二つ以上の比較器の出力結果を所定重みでデジタル演算した結果を量子化器出力信号として、積算することにより誤差信号を生成してもよい。
【0330】
ここで、補正素子群は、重みづけされた複数の補正素子を有し、検査素子は、補正素子群のうちの最小の重みに対応する補正素子と同じ、または、小さい重みを有してもよい。
【0331】
ここで、自己診断用コード生成回路は、第一の重み検査コード出力モードと、第二の重み検査コード出力モードと、を有し、第一の重み検査コード出力モードにおいて、検査対象の第一補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号と反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号を所定の固定信号として、出力し、第二の重み検査コード出力モードにおいて、第一ビット信号を、第一の重み検査コード出力モード設定時の反転論理値とし、第二ビット信号群を第一ビット信号の反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビットを第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力し、デジタル回路は、検査時に、第一重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、第二重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、第一誤差信号と第二誤差信号の差を演算し、補正素子群の重みづけ診断を行ってもよい。
【0332】
ここで、アナログ回路は、差動回路で構成され、差動回路の正側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第一素子群と、差動回路の負側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第二素子群と、を備え、第一素子群および第二素子群は、補正素子群および検査素子群を構成し、自己診断用コード生成回路は、第一素子群を検査する第一セット検査モードと、第二素子群を検査する第二セット検査モードと、を有し、第一素子群と第二素子群とを個々に検査を実施してもよい。
【0333】
ここで、アナログ回路は、1つのノードに属する、補正素子群と検査素子群を含む第一素子群と、第一素子群と同一重みと構成を持った第二素子群と、を含む、冗長となる構成を備え、自己診断用コード生成回路は、第一素子群を検査する第一セット検査モードと、第二素子群を検査する第二セット検査モードと、を有し、第一素子群と第二素子群とを個々に検査してもよい。
【0334】
ここで、自己診断用コード生成回路は、第一セット検査モードにおいて、第一素子群に対して、検査対象の補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号の反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力し、第二素子群に対して、量子化器の量子化誤差が最小となるように最適補正コードを、出力し、デジタル回路は、第一セット検査モードにおいて、誤差検出回路の誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、第一素子群の制御コードについて、第一ビット信号を第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、第二ビット信号群を第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビットを第一ステップ時のビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力するとともに、第二素子群に対して、最適補正コードを維持出力し、誤差検出回路の出力として第二誤差信号を生成し、量子化誤差が最小となる量子化器の遷移点で、第一の誤差信号と第二の誤差信号の大小を判定することにより、重みが規定値以下かを検査し、第二セット検査モードにおいて、第一セット検査モードにおける第一素子群と第二素子群の関係を入れ替えて同様の処理を行ってもよい。
【0335】
ここで、データコンバータはアナログ・デジタル変換器であってもよい。
【0336】
ここで、アナログ・デジタル変換器は、1つ以上の比較器を備え、比較器は、差動回路によって構成され、比較器のオフセットを補正するために差動回路内の正側伝送経路と負側伝送経路の各々に補正素子群と検査素子群と、を備え、正側伝送経路と負側伝送経路の補正素子群に含まれる補正素子を個々に検査素子群に基づいて検査を行ってもよい。
【0337】
<第三の実施形態>
以下、第三の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0338】
比較器のオフセット補正素子の検査・診断について述べる。
【0339】
以下、構成について説明する。
【0340】
第三の実施形態では、第二の実施形態と同様、逐次AD変換器(図2)を例にとり、比較器のオフセット補正を行う補正素子群の補正レンジを検査・診断対象とする構成例について説明する。
【0341】
構成は第二の実施形態と同様であるが、デジタル部のみ異なるものとする。
【0342】
第二の実施形態の課題として、検査素子を基準にして隣接間(たとえば制御コード(1000)と(0111)間)の重みを比較することで補正素子間の相対的精度を確認できるが、検査素子自体が故障しているとき、レンジが目減りする場合と大きすぎる場合に分かれる。
【0343】
第二の実施形態において、例えば、検査素子が補正素子1LSBより大きく検査・診断をパス(正常判定)した場合、レンジは大きくなり分解能は設計想定より荒くなっている。
【0344】
また、検査素子が補正素子1LSBより小さく検査・診断をパスした場合、分解能は十分細かいがレンジは設計想定より小さく、製造ばらつきのオフセットを補正するのに、レンジが狭く十分ではない。
【0345】
本開示の目的は、補正素子の検査・診断であるため、アナログ回路構成が限定されるものではないが、一例として図3の比較器を用いて説明する。
【0346】
図3の比較器のオフセット制御部132の構成として、本開示では、図14に示す回路図を用いる。
【0347】
以下、図23Aおよび図23Bのフローチャートに基づき、図2および図24の回路構成を参照し、図25の模式図を用いて、本開示のレンジ検査の手続きについて説明する。
【0348】
はじめに概要を述べると、2種類の電圧(±Δ)を逐次比較ADCの内部のDACを使用して生成し、その電圧を補正するように、比較器内の補正素子を制御し、2種類の制御コードをレジスタに記憶し比較することで、生成した電圧に相当するコードが何コード分に相当するかという、補正絶対量の検査・診断ができる、という主旨である。
【0349】
手続き211において、P側の補正素子を検査するかN側の補正素子を検査するか決定する。
【0350】
本実施形態では一例として、P側のレンジ検査・診断について述べる。
【0351】
手続き212、213において、P側補正素子制御コードCCp_TESTには、MSB固定コードレジスタ235より出力される固定コード((1000)(0)、(mmmm)(n)、mは各補正素子のビット信号、nは検査素子用のビット信号)がセレクタ234C、234Aを通して出力される。
【0352】
一方、N側補正素子制御コードCCn_TESTには、誤差信号を受けた2分探索制御部247によって、量子化誤差を最小(CDFを0.5近辺)にすべく探索コードレジスタ238の出力を更新し、最適コードを最適コードレジスタ244に格納し、誤差信号の最小値を最小誤差レジスタ241に格納する。
【0353】
手続き214、215、216は実施形態と同様、CDFが0.5近辺に来ているかどうかを判定して、分解能を正常・異常判定する手続きであり、省略可能であり、図24では、簡易説明のため、この部分を省略している。
【0354】
手続き217、218において、DAC直接制御モード用メモリ部から、一例として、+3.0mV相当(+Δ)を比較器入力(topPlateP、topPlateN)に印加するための制御コードを選択し、セレクタ254、255を通して出力される。
【0355】
この電圧を相殺するように、2分探索制御部245、探索コードレジスタ236を用いて、P側制御コードが制御される。
【0356】
量子化誤差が最小(CDFが0.5近辺)となるP側制御コードが、最適コードレジスタ242に保持されるとともに、第1コード結果レジスタ248に格納される。
【0357】
このとき、N側制御コードについては、最適コードレジスタ244の出力が、セレクタ234D、235Bを通して出力される。
【0358】
手続き219、220において、DAC直接制御モード用メモリ部から、一例として、-3.0mV相当(-Δ)を比較器入力(topPlateP、topPlateN)に印加するための制御コードを選択し、セレクタ254、255を通して出力される。
【0359】
この電圧を相殺するように、2分探索制御部246、探索コードレジスタ237を用いて、P側制御コードが制御される。
【0360】
量子化誤差が最小(CDFが0.5近辺)となるP側制御コードが、最適コードレジスタ243に保持されるとともに、第1コード結果レジスタ249に格納される。
【0361】
このとき、N側制御コードについては、最適コードレジスタ244の出力が、セレクタ234D、235Bを通して出力される。
【0362】
手続き221において、第一コード結果と第二コード結果の制御コード差分が計算され、レンジ規格値レジスタ250で保持される、許容最小値RMINと許容最大値RMAXの値の間に前記差分値があるかどうかをレンジ判定部251で判定する。
【0363】
レンジ正常の場合は、手続き222、223へ移る。
【0364】
レンジ不良の場合は、手続き224に移り、自己診断出力信号としてレンジエラー信号を出力する。
【0365】
図25に本実施形態の模式図を示す。
【0366】
テスト電圧+Δを印加した場合、P側制御コードは、((1011)(0))となる。
【0367】
一方、テスト電圧-Δを印加した場合、P側制御コードは、((0011)(0))となる。
【0368】
このとき、コード差分は(1000)相当になり、正常判定となる。
【0369】
この例では、補正レンジのMSBの半分に相当する電圧をDACで生成し、MSB±(MSB/2)に相当する制御コードを2分探索でそれぞれ割り出して、コード差をとることで、印加された電圧と制御コードの対応がとれるため、制御コードの絶対量を検査・診断することができる。
【0370】
よって、第二の実施形態の相対的精度を検査・診断と、第三の実施形態の絶対値の検査・診断とを合わせることで、補正素子の分解能・レンジともに、検査・診断できる、という効果を有する。
【0371】
以上のように、第三の実施形態に係る半導体回路において、データコンバータは、データコンバータに入力する信号を被測定信号とするか参照信号とするかを切り替える入力切替部、を備え、自己診断用コード生成回路は、量子化誤差が最小となる最適補正コードを出力する最適補正コード出力モードを有し、デジタル回路は、検査時に、最適補正コード出力モードに設定し、かつ、入力切替部により第一の参照信号を選択し、最適補正コードを第一の最適補正コードとして求め、最適補正コード出力モードに設定し、かつ、入力切替部により第二の参照信号を選択し、最適補正コードを第二の最適補正コードとして求め、第一の最適補正コードと第二の最適補正コードの差を演算し、補正素子群の補正レンジ診断を行う。
【0372】
<第四の実施形態>
以下、第四の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0373】
比較器のオフセット補正素子の検査・診断について述べる。
【0374】
以下、構成を説明する。
【0375】
第四の実施形態では、第二、第三の実施形態と同様、逐次AD変換器(図2)を例にとり、比較器のオフセット補正を行う補正素子群の機能を検査・診断対象とする構成例について説明するが、デジタル部のみ異なるものとする。
【0376】
第二の実施形態に示した、補正素子の重み検査の手法は補正素子の精度を調べるために、繰り返し測定回数をノイズ除去のために増やす必要があるという時間の課題がある。
【0377】
これに対して、第三の実施形態では、もっと簡易に、明らかな初期不良を、取り除く方法を提供する。
【0378】
本開示の目的は、補正素子の検査・診断であるため、アナログ回路構成が限定されるものではないが、一例として図3の比較器を用いて説明する。
【0379】
図3の比較器のオフセット制御部132の構成として、本開示では、図14に示す回路図を用いる。
【0380】
以下、図26のフローチャートに基づき、図2および図27の回路構成を参照し、図28の模式図を用いて、本開示の機能検査の手続きについて説明する。
【0381】
はじめに概要を述べると、2分探索によって内部状態が推定可能な量子化誤差最小付近(CDFが0.5付近)に比較器判定点を持っていき、その時点の制御コード(補正コード)の各ビットを反転させると、CDFが0.5から一定量ずれるが、ずれる符号方向が既知であるため、アナログ回路内部のドライバ回路の故障やデバイスの故障(反応しない、意図した符号にオフセット補正が働かないなど)を検知できる、という主旨である(図28に模式図を示す)。
【0382】
手続き261、262、263において、セレクタ284C、284D、デマルチプレクサ295は、STEP1にスイッチされる。
【0383】
本実施形態では、P側N側を組み合わせたコードマッピング表を用いる。
【0384】
一例として、図10のマッピング表を用いるものとする。
【0385】
P側4ビット、N側4ビットなので、5ビット相当の制御信号で管理できる。
【0386】
この5ビット相当の信号から正負の4ビット相当の信号へ変換するコードマッピング部(290A、290B)を備える。
【0387】
誤差信号を受けた2分探索制御部293と探索コードレジスタ291、そして、前記コードマッピング部290A、290B、さらに、正負それぞれの探索コードを保持する、正側探索コードレジスタ286、負側探索コードレジスタ287によって2分探索の実行と結果の保持がなされ、製造ばらつきVoffを補正すべく、制御コードが決定される(この手続きは、補正用コード生成部での補正実行ブロックと同一であるため、機能ブロックの共有は可能である)。
【0388】
また、誤差信号を第1積算結果レジスタ297に格納し、第一のCDF結果(CDF1)とする。
【0389】
手続き264において、どの極性(P側、N側)のどのビット(MSBからLSB及び検査素子)を検査・診断するか、1つ選択する。
【0390】
検査ビット選択部285から、選択した検査対象となるビット情報が、ビット反転信号として、ビット反転部301A、301Bへ出力される。
【0391】
手続き265、266において、セレクタ284C、285B、デマルチプレクサ295がSTEP2にスイッチされ、検査対象となるビットが反転した状態でのCDFを測定する。
【0392】
このとき、2分探索によって得られた最適コードを保持する最適コードレジスタ292からの出力が、コードマッピング部290Bを通って、正側最適コードレジスタ288と負側最適コードレジスタ289に供給され、セレクタ284C、284Dを通って、比較器の制御コードへ供給される。
【0393】
CDF結果は、第二のCDF結果(CDF2)として、デマルチプレクサ295を通って、第二積算結果レジスタ298に格納される。
【0394】
手続き267、268、269において自己診断が行われる。
【0395】
第1積算結果レジスタ297の出力と第2積算結果レジスタ298が減算器296に出力され、減算結果がトグル判定部300に供給される。
【0396】
トグル判定部300は、トグル規格値レジスタ299の出力を受けて、CDF1とCDF2の符号関係があるべき方向かどうかを判断する。
【0397】
CDF1とCDF2の符号関係について補足説明する。
【0398】
本実施形態では、Vinを0であり、VcalpとVcalmは補正量であり、Voffは製造オフセットであるので、実質的な比較器入力VinCPは、(-Voff-Vcalp+Vcalm)となる。
【0399】
ここで、VcalpとVcalmは作用として、“逆の符号関係“になる。
【0400】
すなわち、P側の補正ビットのいずれかのビットを、0から1に遷移させると、VinCPは減るため、CDF2は所定量下がるべき(0.5より下にいくべき)であるし、1から0に遷移させると、VinCPは増えるため、CDF2は所定量上がるべき(0.5より上にいくべき)である。
【0401】
こに対して、N側の補正ビットのいずれかのビットを、0から1に遷移させると、VinCPは増えるため、CDF2は所定量上がるべき(0.5より上に行くべき)であるし、1から0に遷移させると、VinCPは減るため、CDF2は所定量下がるべき(0.5より下に行くべき)である。
【0402】
このことから、わかるように、比較器のどちらの極性を検査しているかの情報(PosNegFlag)を、トグル判定部に入力することによって、異常が判定できる。
【0403】
トグル規格値は、0.5から期待する符号方向に、所定量のオフセット(閾値)を設けたものを設定し、CDF2の変化を見ることで、補正容量を駆動するドライバ回路や補正容量素子が正常に機能しているかどうかを判定できる。
【0404】
本実施形態は、所定量離れた2つの値を比較判定するので、第二の実施形態のような精度判定ではなく、繰り返し測定数を減らすことができ、最初にこの検査を行うことで、検査時間の時短につながる。
【0405】
図29は検査・診断順序の一例を示す。
【0406】
手続き311において、前記、第四の実施形態で記したトグル検査・診断(図26図27)を実行する。
【0407】
重み検査に比べて測定時間を短くでき、手続き311で不良であるものは、不良品として取り除ける。
【0408】
手続き312(図15Aおよび図15B図16)は、第二の実施形態で説明した個々の補正素子の重みづけ検査であり、手続き313(図23Aおよび図23B、24)は、第四の実施形態で説明した補正レンジの検査である。
【0409】
これら一連の検査によって、個々の補正素子の機能・精度ともに保証することができる。
【0410】
以上のように、第四の実施形態に係る半導体回路において、自己診断用コード生成回路は、誤差信号を受けて、量子化器の量子化誤差が最小となるように最適補正コードを出力する最適補正コード出力モードと、最適補正コードのうち検査対象の補正素子を制御する第一ビット信号を論理反転させた論理反転コードを出力する、論理反転コード出力モードと、を有し、デジタル回路は、検査時に、最適補正コード出力モードに設定して、最適補正コードをアナログ回路に供給し、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、論理反転コード出力モードに設定し、論理反転コードをアナログ回路に供給し、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、第一誤差信号と第二誤差信号の大小関係を比較し、検査対象となる補正素子の故障診断を行う。
【0411】
<第五の実施形態>
以下、第五の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0412】
残差アンプのゲイン補正素子の検査・診断について述べる。
【0413】
第五の実施形態では、パイプラインAD変換器320を例にとり、残差アンプのゲイン補正素子を検査・診断対象とする構成例について説明する。
【0414】
以下、構成について説明する。
【0415】
図30において、アナログ部は、サンプルホールド回路323、第一サブADC324、残差アンプ325、第二サブADC326で構成される。
【0416】
サンプルホールド回路323は、通常動作時は、差動信号(VINP、VINM)をサンプリングし、補正や検査・診断時は、中点参照電圧VCM(差動信号ゼロに相当する)をサンプリングする。
【0417】
第一サブADC324は、一例としては図2に示すような逐次比較ADCで構成され、通常動作時においては、サンプリングした電圧(VINP、VINM)を量子化して残差電圧をホールドし、補正・検査・診断時においては、差動信号ゼロに対して、内部のDAC電圧をDAC直接制御用モード用メモリ部332に保持されるコードに応じて制御して所定の電圧を発生させて残差としてホールドする。
【0418】
残差アンプ325は、第一サブADC324でホールドされた残差電圧を、第一サブADCのAD変換終了後に所定倍率に増幅する。
【0419】
第二サブADC326は、一例として、逐次比較ADCで構成され、残差アンプ出力によって得られた電圧に対して量子化を行う。
【0420】
パイプラインADCでは、残差アンプの倍率(ゲイン)精度を保つために、消費電力の高いアンプが必要であるが、低電圧化や補正技術の進展により、非特許文献3に示すような、オープンループ積分型アンプが使用され、低消費電力化が進展している。
【0421】
ただし、オープンループ積分型アンプは、製造ばらつきによって、ゲインのばらつきが大きいが、低消費電力である。
【0422】
そのため、残差アンプのゲインばらつきは、デジタル回路による補正技術が適用され、低消費電力化と高精度化を両立させている。
【0423】
補正技術の代表例としては、非特許文献1記載のディザによるゲイン推定の方法がある。
【0424】
第一サブADCの内部DACを直接制御して、残差電圧に所定のランダム電圧を加えて、残差アンプ増幅後の電圧から、第二サブADCの内部DACを使用して所定のランダム電圧に相当する分を差し引く。
【0425】
この操作によって、ゲイン誤差が第二サブADCにホールドされる残差電圧に残り、第二サブADCの変換結果に混入したゲイン誤差の情報を処理して、残差アンプのゲイン誤差を推定し、補正する。
【0426】
図31は、ゲイン補正機能付き残差アンプ325の一例を示す回路である。
【0427】
残差アンプ325は、信号増幅部350と、増幅時間調整部351を含む。
【0428】
オープンループ積分型アンプの場合、増幅時間が長いほどゲインを大きくすることができるため、増幅時間の調整によってゲインの調整がなされる。
【0429】
図32に本開示で使用する、増幅時間調整部351の一例を示す。
【0430】
増幅時間調整部351は、補正素子群354、検査素子群355を含む。
【0431】
補正素子群354は重みづけが2以下(≦2)のMOS容量素子で構成され、検査素子群355は、一例として、補正素子群のLSBと同一の重みづけのMOS容量素子で構成される。
【0432】
本開示においては、検査素子群のサイズは、前記のサイズに限定されるものではなく、補正素子群の1LSB以下であれば同様の効果を得ることができる。
【0433】
補正素子群は、制御コード(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)で制御され、検査素子群は、制御コード(CGdp)で制御される。
【0434】
以下において、制御コードのビット信号が“1”のとき、容量素子が有効にされゲインが増えるとし、制御コードのビット信号が“0”のとき、容量素子が無効にされゲインが減るものとする。
【0435】
制御コードの記述方法として、(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)は(xxxx)(y)という記述の仕方を行うものとする。
【0436】
以下、動作について説明する。
【0437】
補正素子群の個々の補正素子の重みを、図15Aおよび図15Bで示した比較器の補正素子の重み検査と同様の手続きを用いて、検査・診断する。
【0438】
すなわち、サンプリング電圧はVCMとし、MSB補正素子検査の一例として、第一の手続きにおいて、自己診断用コード生成回路336によって(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)を(1、0、0、0)(0)と設定し、前記ディザ法と同一のゲイン誤差測定方法を使用して、第二サブADC326のAD変換結果(複数ビットの量子化器出力結果)を得て、積算し、第一の積算結果とする。
【0439】
さらに、第二の手続きにおいて、自己診断用コード生成回路336によって(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)を(0、1、1、1)(1)と設定し、前記ディザ法と同一のゲイン測定方法を使用して、第二サブADC326のAD変換結果を得て、積算し、第二の積算結果とする。
【0440】
第一の積算結果と第二の積算結果を比較し、ゲイン補正素子の重み誤差を測定し、自己診断回路で判定する。
【0441】
MSB以下も同様の方法によって、重みづけの診断・検査を行うことができる。
【0442】
ここで、注意されたいのは、最適ゲイン設定(第一サブADCと第二サブADCが、線形性を保って接続されるゲイン設定)近辺での検査・診断ではないことであるため、後段の比較器のCDFが0.5近辺とは限らず、検査・診断用の誤差測定にAD変換が必要なことである。
【0443】
すなわち、前記ゲイン誤差が混入した残差電圧は、第二サブADCの1LSBよりも場合によっては大きくなる場合があり、重みづけ測定のためには複数の比較器を使ったAD変換(量子化)が必要となる。
【0444】
比較器のオフセット補正素子重み検査の場合には量子化器出力結果を1つ(補正される比較器自身の回路)のみ使用していたのに対して、本実施形態のアンプのゲイン補正素子の重み検査では、第二サブADCの複数の量子化器出力結果の積算結果に基づいて、検査・診断を行う。
【0445】
比較器の重み測定手続き(図15Aの手続き153、及び、図15Bの手続き157)は、残差アンプゲイン誤差測定の場合には、第二サブADCのAD変換結果(複数の量子化器出力結果)の積算値をレジスタに保存と、置き換えることで、図15Aおよび図15Bと同様の手続きで、残差アンプのゲイン補正素子を検査・診断することができる。
【0446】
以上述べたように、残差アンプのゲイン補正素子に加えて検査素子を具備し、自己診断用コード生成回路による検査・診断用の入力コード生成と、パイプライン後段のサブADCのAD変換結果の積算値を利用することによって、個々のゲイン補正素子の重みづけを検査・診断することができるという効果を有する。
【0447】
以上のように、第五の実施形態に係る半導体回路において、自己診断用コード生成回路は、第一の重み検査コード出力モードと、第二の重み検査コード出力モードと、を有し、第一の重み検査コード出力モードにおいて、検査対象の第一補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号と反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号を所定の固定信号として、出力し、第二の重み検査コード出力モードにおいて、第一ビット信号を、第一の重み検査コード出力モード設定時の反転論理値とし、第二ビット信号群を第一ビット信号の反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビットを第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力し、デジタル回路は、検査時に、第一重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、第二重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、第一誤差信号と第二誤差信号の差を演算し、補正素子群の重みづけ診断を行う。
【0448】
<第六の実施形態>
以下、第六の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0449】
残差アンプのゲイン補正素子の検査・診断について述べる。
【0450】
以下、構成について説明する。
【0451】
回路構成として、第五の実施形態のブロック図(図30)、および、残差アンプ構成(図31)を使用し、増幅時間調整部として、図33の増幅時間調整部を使用する。
【0452】
増幅時間調整部351は、第一セット素子群358と第二セット素子群359から構成され、それぞれ補正素子群(354、356)と検査素子群(355、357)を備えている。
【0453】
第一セット素子群358は、制御コード(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)で制御され、第二セット素子群359は、制御コード(CG3n、CG2n、CG1n、CG0n)(CGdn)で制御される。
【0454】
以下、動作について説明する。
【0455】
補正素子群の個々の補正素子の重みを、図15Aおよび図15Bで示した比較器の補正素子の重み検査と同様の手続きを用いて、検査・診断する。
【0456】
本実施形態では、第一セット素子群358と第二セット素子群359の2つのセットを持つので、最適ゲイン設定で検査・診断を行うことができる。
【0457】
たとえば、第一セット素子群のMSBを検査する場合、第一手続きとして、制御コード(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)を(1、0、0、0)(0)とし、制御コード(CG3n、CG2n、CG1n、CG0n)(CGdn)を2分探索によって最適値(最適ゲイン設定)を探索したコード(y、y、y、y)(0)とする。
【0458】
第二手続きとして、制御コード(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)を(1、0、0、0)(0)とし、制御コード(CG3n、CG2n、CG1n、CG0n)(CGdn)を(y、y、y、y)(0)とし、第二サブADC326の初めの量子化器出力結果を積算し、第一の積算結果とする。
【0459】
第三手続きとして、制御コード(CG3p、CG2p、CG1p、CG0p)(CGdp)を(0、1、1、1)(1)とし、制御コード(CG3n、CG2n、CG1n、CG0n)(CGdn)を(y、y、y、y)(0)とし、第二サブADC326の初めの量子化器出力結果を積算し、第二の積算結果とする。
【0460】
第一の積算結果と第二の積算結果を比較することにより、アンプゲイン素子の補正素子の重みづけを検査できる。
【0461】
第六の実施形態は、第五の実施形態にくらべて、最適ゲイン近辺での重みづけ測定ができるため、利用する量子化器出力は1つ(1ビット分の処理)で済むため、検査・診断回路の規模縮小が可能となる。
【0462】
以上のように、第六の実施形態に係る半導体回路において、自己診断用コード生成回路は、第一の重み検査コード出力モードと、第二の重み検査コード出力モードと、を有し、第一の重み検査コード出力モードにおいて、検査対象の第一補正素子を制御する第一ビット信号を1又は0とし、調整用重みが第一補正素子未満の補正素子を制御する第二補正ビット信号群を第一ビット信号と反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビット信号を第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号を所定の固定信号として、出力し、第二の重み検査コード出力モードにおいて、第一ビット信号を、第一の重み検査コード出力モード設定時の反転論理値とし、第二ビット信号群を第一ビット信号の反転論理値とし、検査素子を制御する検査ビットを第一ビット信号の反転論理値とし、それ以外のビット信号は所定の固定信号として、出力し、デジタル回路は、検査時に、第一重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第一誤差信号を生成し、第二重み検査コード出力モードに設定して、誤差検出回路からの誤差信号に基づいて第二誤差信号を生成し、第一誤差信号と第二誤差信号の差を演算し、補正素子群の重みづけ診断を行う。
【0463】
ここで、アナログ回路は、差動回路で構成され、差動回路の正側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第一素子群と、差動回路の負側入力経路に接続された補正素子と検査素子とを含む第二素子群と、を備え、第一素子群および第二素子群は、補正素子群および検査素子群を構成し、自己診断用コード生成回路は、第一素子群を検査する第一セット検査モードと、第二素子群を検査する第二セット検査モードと、を有し、第一素子群と第二素子群とを個々に検査を実施してもよい。
【0464】
<第七の実施形態>
以下、第七の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0465】
残差アンプのオフセット補正素子の検査・診断について述べる。
【0466】
回路構成として、ブロック図(図30)、および、残差アンプ構成(図31)の信号増幅部を変形した図34に示される信号増幅部、図35に示す残差アンプのオフセット制御部、を使用する。
【0467】
図34に示す信号増幅部では、NMOSトランジスタがオフセット補正のために、可変制御される。
【0468】
すなわち、オフセット調整機能付き差動対371を持つ。
【0469】
図35に示す、オフセット制御部では、不図示のドライバ信号によって、検査素子群374、375および補正素子群372、373のスイッチが選択される。
【0470】
オフセットは、差動対のサイズの正負のバランス調整によって、補正制御がなされる。
【0471】
この回路において、検査素子群374、375を具備するために、第二の実施形態と同様の手続きを用い、かつ、第二サブADC326の変換結果の積算値を用いることで、各補正素子の重みづけを検査・診断することができる。
【0472】
オフセットを調整するために、図34図35に示すような使用する差動対のMOSのバランスを変える方法以外に、図34の差動対出力に可変容量を付加してオフセットを調整してもよいし、MOSのバックゲートを調整してもよいし、いずれのオフセット調整方法をとった場合においても、本実施形態の検査・診断回路は補正素子の重みを検査可能である。
【0473】
以上のように、第七の実施形態に係る半導体回路において、アナログ/デジタル変換器は、パイプライン型のアナログ・デジタル変換器であって、残差アンプと一つ以上の比較器と、を備え、残差アンプはオープンループ積分型アンプで構成され、残差アンプのオフセットを調整するための回路構成として、差動回路内部出力の正側と負側の各々に補正素子群を備えて、正負のバランスでオフセットを調整する回路構成とし、比較器の積算結果を用いて、補正素子群の検査を行う。
【0474】
<第八の実施形態>
以下、第八の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0475】
DACの線形性を補正するためのDAC容量の補正素子の検査・診断について述べる。
【0476】
回路構成として図36のブロック図、および、補正部として図37の回路を使用する。
【0477】
アナログ回路ブロック構成は、第二の実施形態と同様であるが、DAC部分が異なる。
【0478】
DACのMSB容量(397A、397B)を、期待値としての容量値からΔ引いた値(8C-Δ)が設定されるとともに、MSB容量と連動してスイッチングを行える補正容量(398A、398B)を備える。
【0479】
補正容量(398A、398B)は、図37に示す構成をとり、DAC制御部から供給される信号と、制御コード(CD3p、CD2p、CD1p、CD0p)(CDdp)、(CD3n、CD2n、CD1n、CD0n)(CDdn)とのNAND論理をとることによって、通常DAC動作において、補正容量が連動してスイッチングされる。
【0480】
補正容量(398A、398B)を多く選択すると、見かけ上のMSB容量が増え、MSBのステップ電圧が増え、線形性を調整することができる。
【0481】
この補正方法は、DACのMSB以下についても適用可能である。
【0482】
検査・診断の手法としては、第二の実施形態の比較器の重みづけ検査・診断や、第五の実施形態のアンプゲインの重みづけ検査・診断方法と、同様の手続きで、重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0483】
具体的には、P側補正素子のMSBを検査する場合には、(CD3p、CD2p、CD1p、CD0p)(CDdp)を(1、0、0、0)(0)とし、(CD3n、CD2n、CD1n、CD0n)(CDdn)を2分探索によって決まる最適値(比較器の量子化誤差が最小となる遷移点)として第一積算結果を得て、CD3p、CD2p、CD1p、CD0p)(CDdp)を(0、1、1、1)(1)とし、(CD3n、CD2n、CD1n、CD0n)(CDdn)を最適値として第二積算結果を得て、第一積算結果と第二積算結果の比較により、検査素子を基準にした補正素子間の相対的な重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0484】
以上のように、第八の実施形態に係る半導体回路において、アナログ/デジタル変換器は、逐次比較型のアナログ・デジタル変換器であって、複数の容量(M個)を正側伝送経路および負側伝送経路のそれぞれに備える差動回路構成の内部デジタル・アナログ変換器と、一つ以上の比較器と、を備え、複数の容量のうちのN個(N<M)の個々について線形性を補正する補正素子群と検査素子群を備え、比較器の積算結果を用いて、内部デジタル・アナログ変換器用の補正素子の検査を正側の補正素子群、及び、負側の補正素子群について個々に行う。
【0485】
<第九の実施形態>
以下、第九の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0486】
ADCゲインを補正するためのDACゲイン補正素子の検査・診断について述べる。
【0487】
回路構成としては図38のブロック図、および、補正部として図39の回路を使用する。
【0488】
アナログ回路ブロック構成は、第二の実施形態と同様であるが、DAC部分が異なる。
【0489】
DACのバイナリ容量アレイ(427A、428A、429A、427B、428B、429B)に対して、DACゲインを調整するための補正容量(430A、430B)が具備される。
【0490】
補正容量(430A、430B)は、図39に示す構成をとり、DAC制御部から供給される信号と、制御コード(CE3p、CE2p、CE1p、CE0p)(CEdp)、(CE3n、CE2n、CE1n、CE0n)(CEdn)によって、制御される。
【0491】
通常DAC動作において、この補正容量は、VCM電位に定常的に接続される容量であるので、接続される補正容量が増えるほど、DACの出力電圧が下がり、ひいてはADCゲインが上がる。
【0492】
検査・診断の手法としては、第二の実施形態の比較器の重みづけ検査・診断や、第五の実施形態のアンプゲインの重みづけ検査・診断方法と、同様の手続きで、重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0493】
以上のように、第九の実施形態に係る半導体回路において、前記アナログ・デジタル変換器は、逐次比較型のアナログ・デジタル変換器であって、複数の容量(M個)を正側伝送経路および負側伝送経路のそれぞれに備える差動回路構成の内部デジタル・アナログ変換器と、一つ以上の比較器と、を備え、前記補正素子群は、前記複数の容量のうちのN個(N<M)の個々についてゲイン補正用であり、前記比較器の積算結果を用いて、前記内部デジタル・アナログ変換器用の補正素子の検査を正側伝送経路、及び、負側伝送経路について個々に行う。
【0494】
<第十の実施形態>
以下、第十の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0495】
TD変換器(時間-デジタル変換器)における遅延制御のための補正素子の検査・診断について述べる。
【0496】
本開示は、アナログを所定電圧と比較し量子化するAD変換器だけでなく、入力クロックを参照クロックと比較し時間量子化するTD変換器の補正素子の検査・診断においても適用できることを述べる。
【0497】
回路構成として、特許文献6に示されるTD変換器を変形した例を示す。
【0498】
基本動作・機能は、特許文献6と同一であるが、検査・診断を行う機能ブロックが異なる。
【0499】
図40に本開示の回路ブロックを示し、図41に可変遅延制御部を示す。
【0500】
本開示では、可変遅延制御部(DL0、DL1、DL2、DL3)に検査素子群451を追加し、セレクタ441、補正用コード生成回路442、自己診断用コード生成回路443、誤差検出回路444、自己診断回路445を有する補正・検査・診断のためのブロックを追加している。
【0501】
図41に示されるように可変遅延制御部は、補正素子群450と検査素子群451を含み、制御コード(CT3、CT2、CT1、CT0)(CTd)でバイアス電流量を調整して、遅延量を制御する。
【0502】
バイアス電流源は、MOSトランジスタによって具備される。
【0503】
検査・診断の手法としては、第二の実施形態の比較器の重みづけ検査・診断や、第五の実施形態のアンプゲインの重みづけ検査・診断方法と、同様の手続きで、重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0504】
具体的には、補正素子のMSBを検査する場合には、(CT3、CT2、CT1、CT0)(CTd)を(1、0、0、0)(0)とし、フリップフロップ(FF0、FF1、FF2、FF3)から得られる量子化情報を積算して、第一積算結果を得て、(CT3、CT2、CT1、CT0)(CTd)を(0、1、1、1)(1)とし、フリップフロップ(FF0、FF1、FF2、FF3)から得られる量子化情報を積算して、第二積算結果を得て、第一積算結果と第二積算結果の比較により、検査素子を基準にした補正素子間の相対的な重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0505】
以上のように、第十の実施形態に係る半導体回路において、被測定信号を1または0をとるパルス信号とし、データコンバータは、パルス信号と参照クロック信号の位相差を比較してデジタル信号に変換する、時間・デジタル変換器であり、補正素子群は、パルス信号の1と0との遷移タイミングを補正する。
【0506】
ここで、時間・デジタル変換器は、遅延量が制御可能な複数段の遅延回路と、遅延回路の遅延量を補正する補正素子群と、補正素子群を検査する検査素子群と、遅延回路の各出力の論理を前記パルス信号のエッジタイミングに応じて取り込むことによって、パルス信号と遅延段出力との比較動作を行うフリップフロップ群と、フリップフロップ群のデジタル出力信号を積算した積算結果を得るカウンタと、フリップフロップ群のデジタル出力信号を取込みエンコードするエンコーダと、を備え、積算結果に基づいて、補正素子群の自己診断を行ってもよい。
【0507】
<第十一の実施形態>
第二の実施形態ではMOSのバラクタ容量が補正素子である場合(図14)を示し、第七の実施形態ではMOSの差動対アレイが補正素子である場合(図35)を示し、第八の実施形態では容量アレイが補正素子である場合(図37)を示し、第十の実施形態では電流源アレイ(実際はMOSトランジスタのアレイ)である場合(図41)を示した。
【0508】
このように、補正素子にはさまざまなデバイスが適用される。
【0509】
以下、第十一の実施形態として、抵抗を使用した、補正素子の例を示す。
【0510】
図42に、本開示の第十一の実施形態における、参照電圧回路の一例を示す回路である。
【0511】
以下、構成を述べる。
【0512】
入力抵抗458(RI-Δ)と帰還抵抗459(RF)は直列に接続されるとともに、その共通接続点は、アンプ455の反転入力端子に接続され、アンプ455の非反転入力端子には参照電圧VCMが接続され、帰還抵抗459の他端はアンプ455の出力に接続される。
【0513】
入力抵抗458の入力には参照電圧VRが入力される。
【0514】
このように、反転増幅構成をとり、電圧レベルを増幅する。
【0515】
入力抵抗458(RI-Δ)には、微調整用の補正素子群456と、その補正素子群を検査するための補正素子群457が並列に接続され、補正素子群と検査素子群の入力は、VRとするかVCMとするか、不図示の制御信号によって、制御され、電圧レベルが補正される。
【0516】
検査時にのみ、457の入力をVRとVCMの切替可能とし、検査時以外は457の入力をVCMとすることで、補正素子群456の抵抗の重みづけ検査を行う。
【0517】
出力電圧VREFOUTは、一例としてAD変換器の参照電圧として、DACゲインを調整する場合や、バイアス電流を調整するための電圧として使用する場合、など、各アナログブロックの特性を補正するために使用できる。
【0518】
検査・診断の手法としては、第二の実施形態の比較器の重みづけ検査・診断や、第五の実施形態のアンプゲインの重みづけ検査・診断方法と、同様の手続きで、重みづけ検査・診断を行うことができる。
【0519】
VREFOUTを参照電圧として受けるAD変換器内部の比較器やサブADC変換結果を利用して、補正素子群の検査・診断を行う。
【0520】
このように、補正素子として使用する抵抗についても、本開示の方法によって、重みづけを検査・診断ができる。
【0521】
以上のように、第十一の実施形態に係る半導体回路において、補正素子と検査素子は、容量素子、抵抗素子、MOSトランジスタの少なくとも1つで構成され、アナログ電圧の補正、又は、時間の補正に使用される。
【0522】
<第十二の実施形態>
比較器のオフセットを対象にする、第二の実施形態において、P側補正素子を検査する場合(図14)にN側の検査素子を使用し、といったような逆の極性側の検査素子を基準として、同様の検査・診断が可能である。
【0523】
図43Aおよび図43Bに、逆極性の検査素子を制御した場合の一例を示す。
【0524】
図43Aおよび図43Bでは、P側のMSB検査をする場合の一例を示しているが、他のビットでも同様の原理でコードを生成できる。
【0525】
図43Aでは、第二の実施形態を示しているが、P側補正素子を検査する基準としてP側検査素子を使用する。
【0526】
一方、図43Bでは、第十二の実施形態を示しているが、N側補正素子を使用する。
【0527】
比較器のオフセットでは、P側の補正量VcalpとN側の補正量Vcalmが“逆符号で作用”するために、第一固定コードでは、N側の検査ビットに“1”をたてる。
【0528】
これは、P側のコードが十進数8に対して、十進数1を引く作用に相当する。
【0529】
次に、第二固定コードでは、N側の検査ビットに“0”を立てる。
【0530】
これは、P側のコードが十進数7に対して、十進数0を引く(何もしない)ことに相当する。
【0531】
よって、第一固定コードと第二固定コードで得られる、第一積算結果と第二積算結果を比較することで、P側補正素子のMSBの重みづけを検査・診断できる。
【0532】
DACゲイン補正素子を対象にする、第九の実施形態における、容量補正部の一例を示す回路(図39)においても、同様に逆極性側の検査素子を基準にした、同様の検査・診断が可能である。
【0533】
図44Aおよび図44Bに、逆極性の検査素子を制御した場合の一例を示す。
【0534】
図44Aおよび図44Bでは、P側のMSB検査をする場合の一例を示しているが、他のビットでも同様の原理でコードを生成できる。
【0535】
図44Aでは、第九の実施形態を示しているが、P側補正素子を検査する基準としてP側検査素子を使用する。
【0536】
一方、図44Bでは、第十二の実施形態を示しているが、N側補正素子を使用する。
【0537】
DACゲイン補正素子のような、差動の正側・負側に補正容量を備える場合、それぞれの補正量は“同符号で作用”する。
【0538】
すなわち、どちらの極性の補正容量を上げても、DACゲインが下がる。
【0539】
したがって、逆極性側の検査素子を制御する方法をとる場合、第一固定コードでは、N側の検査ビットに“0”をたてる。
【0540】
これは、P側のコードが十進数8に対して、十進数0を足す(何もしない)作用に相当する。
【0541】
次に、第二固定コードでは、N側の検査ビットに“1”を立てる。
【0542】
これは、P側のコードが十進数7に対して、十進数1を足すことに相当する。
【0543】
よって、第一固定コードと第二固定コードで得られる、第一積算結果と第二積算結果を比較することで、P側補正素子のMSBの重みづけを検査・診断できる。
【0544】
前記のように、差動回路の両方に補正素子及び検査素子がある場合、検査素子として、どちらの極性を使用してもよいし、その組み合わせを使用してもよいことは明らかである。
【0545】
以上のように、第十二の実施形態に係る半導体回路において、アナログ/デジタル変換器は、パイプライン型のアナログ・デジタル変換器であって、残差アンプと一つ以上の比較器と、を備え、残差アンプはオープンループ積分型アンプで構成され、残差アンプのゲインを調整するための回路構成として、比較器内部の正側伝送経路と負側伝送経路の各々に補正素子群を備える、又は、残差アンプの増幅時間を調整するための遅延量調整用として補正素子群を備える、回路構成とし、デジタル回路は、比較器の積算結果を用いて、補正素子群の検査を行う。
【0546】
<第十三の実施形態>
以下、第十三の実施形態の回路構成と動作について図面を用いて説明する。
【0547】
第二の実施形態の比較器のオフセット補正素子を検査・診断対象とし、図45に示す、比較器のオフセット制御部の一例を使用する。
【0548】
図45において、補正素子群の1LSBを検査素子群として兼用している。
【0549】
図に示す場合では、(LSB+1)の2Cを検査する術がないが、(LSB+2)以上(すなわち、(MSB-1)以上)の容量重みづけを検査・診断ができる。
【0550】
ただし、図中の(6C、3C、2C、1C)は言い換えると、(3C、1.5C、1C、0.5C)と比関係が等価なため、検査素子を0.5Cとした、重みづけ1.5以下の補正容量アレイとしてみることができる。
【0551】
一方、検査素子0.5C相当であることから、ビット数に対する補正レンジが目減りするという欠点を有する。
【0552】
以上、本開示の実施の形態、について説明した。
【0553】
なお、本開示は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、本開示の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形や修正を含むことは勿論である。
【0554】
以上のように、第十三の実施形態に係る半導体回路において、補正素子群のうち、1つ以上の補正素子を検査素子として兼用する。
【0555】
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る半導体回路について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0556】
本開示の半導体回路は、データコンバータ、例えばアナログ・デジタル変換器、時間・デジタル変換器などに利用可能である。
【符号の説明】
【0557】
100、500、510 AD変換器
101、111、321、381、411、501、511 アナログ回路
102、112、322、382、412、502、512 デジタル回路
103、447、503、513 エンコーダ部
104、119、172、231、283、334、395、425、444、504、514 誤差検出回路
105、120、171、233、282、335、396、426、445 自己診断回路
106、121、336、393、423、442、515 補正用コード生成回路
107、122、170、232、281、337、394、424、443 自己診断用コード生成回路
108、123、125、180A、180B、180C、180D、234A、234B、234C、234D、254、255、284C、284D、333、338、389、390、419、420、441、472 セレクタ
110、380、410 逐次AD変換器
113、323、383、413 サンプルホールド回路
114、328、385、415 DAC(デジタル・アナログ変換器)
115、329、386、416 ドライバ回路
116、130、327、384、414 比較器
117、340、387、417 DAC制御部
118、253、331、339、391、421 SAR制御部
124、252、332、392、422 DAC直接制御モード用メモリ部
131 差動増幅部
132 オフセット制御部
133 差動ラッチ回路
134 補正容量制御部
135、140、352、354、356、372、373、400、402、435、437、456、470 補正素子群
136、353 補正素子ドライバ回路
137 比較器オフセット
138、139 補正量
141、355、357、374、375、401、403、436、438、457、471 検査素子群
150~163、210~226、260~271、310~314 検査・診断手続き
173、230、280 ステート制御部
181、295 デマルチプレクサ
182 第1固定コード生成部
183 第2固定コード生成部
184、245、246、247、293 2分探索制御部
185 第1固定コードレジスタ
186 第2固定コードレジスタ
187、236、237、238、291 探索コードレジスタ
188、242、243、244、292 最適コードレジスタ
189、239、240、241、294 最小誤差レジスタ
190、285 検査ビット選択部
191 積算期待値レジスタ
192 積算器
193 第1積算結果レジスタ
194 第2積算結果レジスタ
195 CDF規格値レジスタ
196 重み規格値レジスタ
197 CDF判定部
198 重み判定部
199、200、256、296 減算器
235 MSB固定コードレジスタ
248 第一コード結果レジスタ
249 第二コード結果レジスタ
250 レンジ規格値レジスタ
251 レンジ判定部
286 正側探索コードレジスタ
287 負側探索コードレジスタ
288 正側最適コードレジスタ
289 負側最適コードレジスタ
290A、290B コードマッピング部
297 第1積算結果レジスタ
298 第2積算結果レジスタ
299 トグル規格値レジスタ
300 トグル判定部
301A、301B ビット反転部
320 パイプラインAD変換器
324 第一サブADC
325 残差アンプ
326 第二サブADC
330 パイプライン制御部
350 信号増幅部
351 増幅時間調整部
358 第一セット素子群
359 第二セット素子群
370 信号増幅部
371 オフセット調整機能付き差動対
397A、397B DACのMSB容量
398A、398B、430A、430B DACの補正容量部
427A、428A、429A、427B、428B、429B DACのバイナリ容量
440 TD変換器(時間-デジタル変換器)
446 エッジ検出・カウンタ回路
455 アンプ
458 入力抵抗
459 帰還抵抗
topPlateP 正側の比較器入力電圧
topPlateN 負側の比較器入力電圧
VRH 高電位側参照電圧
VRL 低電位側参照電圧
VCM 中点参照電圧
CCp 正側の比較器オフセット補正用補正容量の制御コード
CCn 負側の比較器オフセット補正用補正容量の制御コード
Vgp 比較器の差動増幅部の正側出力
Vgn 比較器の差動増幅部の負側出力
CapP 比較器の正側の補正容量
CapN 比較器の負側の補正容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43A
図43B
図44A
図44B
図45
図46
図47
図48
図49