(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】光電変換素子および撮像素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20241129BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20241129BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20241129BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241129BHJP
H10K 85/20 20230101ALI20241129BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20241129BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241129BHJP
【FI】
H10K30/60
H01L27/146 E
H01L27/146 A
H10K30/30
H10K85/60
H10K85/20
H10K39/32
H10K101:30
(21)【出願番号】P 2021553445
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039330
(87)【国際公開番号】W WO2021085227
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】P 2019200097
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 英孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】榎 修
(72)【発明者】
【氏名】八木 巖
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 雅美
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026559(JP,A)
【文献】特開2016-119471(JP,A)
【文献】特開2015-050331(JP,A)
【文献】堀洋祐ほか,青色光に感度を持つ有機光導電膜の高効率化,応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,Vol.64,2017年03月01日,講演番号 17a-P4-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
H01L 31/08-31/119
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む光電変換層と
を備え、
前記正孔輸送性材料は、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体である
光電変換素子。
【化1】
(R1,R2,R3,R4は、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、カルバゾール基またはその誘導体である。)
【請求項2】
前記光電変換層は、互いに吸収極大波長が異なる複数の有機半導体材料を含み、
前記正孔輸送性材料の吸収極大波長は、前記複数の有機半導体材料の中で最も短波長である、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記正孔輸送性材料は、結晶性を有する、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記正孔輸送性材料は、へリングボーン型の分子配列をとる、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第2の有機半導体材料をさらに含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第3の有機半導体材料をさらに含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第2の有機半導体材料および第3の有機半導体材料を含む、請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記第1の有機半導体材料、前記第2の有機半導体材料および前記第3の有機半導体材料は、互いに異なる吸収極大波長を有し、
前記第1の有機半導体材料の吸収極大波長は最も短波長である、請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記第2の有機半導体材料は、フラーレンまたはフラーレン誘導体であり、
前記第1の有機半導体材料は、前記第2の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位よりも浅いHOMO準位を有する、請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記正孔輸送性材料は、下記式(1-1)~式(1-5)に示した化合物である、請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】
【請求項11】
1または複数の有機光電変換部として光電変換素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記光電変換素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む光電変換層と
を有し、
前記正孔輸送性材料は、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体である
撮像素子。
【化3】
(R1,R2,R3,R4は、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、カルバゾール基またはその誘導体である。)
【請求項12】
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、
請求項11に記載の撮像素子。
【請求項13】
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、
請求項12に記載の撮像素子。
【請求項14】
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、
請求項13に記載の撮像素子。
【請求項15】
前記有機光電変換部は可視光領域の光電変換を行い、
前記無機光電変換部は赤外光領域の光電変換を行う、
請求項12に記載の撮像素子。
【請求項16】
各画素では、互いに異なる波長域の光電変換を行う複数の前記有機光電変換部が積層されている、
請求項11に記載の撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば有機材料を用いた光電変換素子およびこれを備えた撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、3種類の材料を用いて光電変換層を形成した光電変換素子が開示されている。この光電変換素子では、3種類の材料のうちの1種として、所定の波長域に極大吸収を有する有機半導体材料を用い、残り2種類の材料として可視光領域の透明性が高い有機半導体材料を用いている。これにより、光電変換素子は、所定の波長域に対して高い光電変換効率を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、撮像素子では、吸収スペクトルの拡大が求められている。
【0005】
広範囲な吸収スペクトルを有する光電変換素子および撮像素子を提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施形態の光電変換素子は、第1電極と、第1電極と対向配置された第2電極と、第1電極と第2電極との間に設けられ、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む光電変換層とを備えたものである。正孔輸送性材料は、後述する一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体である。
【0007】
本開示の一実施形態の撮像素子は、複数の画素毎に、1または複数の上記本開示の一実施形態の光電変換素子を備えたものである。
【0008】
本開示の一実施形態の光電変換素子および一実施形態の撮像素子では、光電変換層を、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いることにより、光電変換層における吸収スペクトルの拡大を図る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る光電変換素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図2】
図1に示した光電変換素子を備えた撮像素子の構成を表すブロック図である。
【
図3】本開示の変形例1に係る光電変換素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図4】本開示の変形例1に係る光電変換素子の概略構成の他の例を表す断面模式図である。
【
図5】本開示の変形例2に係る光電変換素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図6】本開示の変形例3に係る光電変換素子の概略構成の一例を表す断面模式図である。
【
図7】
図2に示した撮像素子を有する電子機器の構成例を表すブロック図である。
【
図8】内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図9】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図10】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【
図12】式(1-1)に示した化合物および式(5)に示した化合物の吸収スペクトル図である。
【
図13】有機光電変換層を形成する3種の化合物の吸収スペクトル図である。
【
図14】式(1-1)に示した化合物または式(5)に示した化合物を含む3元系の有機光電変換層の吸収スペクトル図である。
【
図15】式(1-1)に示した化合物または式(5)に示した化合物を含む2元系の有機光電変換層の吸収スペクトル図である。
【
図16】式(1-1)に示した化合物からなる薄膜のX線回折パターンである。
【
図17】式(1-1)に示した化合物を含む3元系の有機光電変換層のX線回折パターンである。
【
図18】式(1-1)に示した化合物の結晶構造を表す図である。
【
図19】式(1-1)に示した化合物の回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比等についても、それらに限定されるものではない。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.実施の形態(青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む有機光電変換層を有する光電変換素子の例)
1-1.光電変換素子の構成
1-2.撮像素子の構成
1-3.作用・効果
2.変形例
2-1.変形例1(分光調整層を追加した例)
2-2.変形例2(青色光を検出する有機光電変換部と赤色光および緑色光を検出する無機光電変換部を積層した例)
2-3.変形例3(互いに分光特性の異なる有機光電変換層を積層した例)
3.適用例
4.応用例
5.実施例
【0011】
<1.実施の形態>
図1は、本開示の一実施の形態に係る光電変換素子(光電変換素子10A)の断面構成の一例を表したものである。
図2は、
図1に示した光電変換素子10Aを備えた撮像素子(撮像素子1)の全体構成の一例を表したものである。光電変換素子10Aは、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器に用いられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子1おいて1つの画素(単位画素P)を構成するものである。本実施の形態の光電変換素子10Aは、有機光電変換部20を有し、この有機光電変換部20に含まれる有機光電変換層22が、青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いて形成されたものである。
【0012】
(1-1.光電変換素子の構成)
光電変換素子10Aは、例えば、1つの有機光電変換部20を有する。有機光電変換部20は、対向配置された下部電極21(第1電極)と上部電極23(第2電極)との間に、有機材料として、上記有機半導体材料を用いて形成された有機光電変換層22を有する。有機光電変換部20では、可視光領域(例えば、400nm以上760nm以下)の波長一部または全部を検出する。
【0013】
本実施の形態では、有機光電変換部20の上方(光入射側)には、赤色光(R)、緑色光(G)および青色光(B)を選択的に透過させるカラーフィルタ51(カラーフィルタ51R,51G,51B)が、それぞれ、単位画素P(単位画素Pr,Pg,Pb)毎に設けられている。これにより、カラーフィルタ51Rが設けられた単位画素Prでは、有機光電変換部20において、カラーフィルタ51Rを透過した赤色光が検出され、赤色光(R)に対応する信号電荷が生成される。カラーフィルタ51Gが設けられた単位画素Pgでは、有機光電変換部20において、カラーフィルタ51Gを透過した緑色光が検出され、緑色光(G)に対応する信号電荷が生成される。カラーフィルタ51Bが設けられた単位画素Pbでは、有機光電変換部20において、カラーフィルタ51Bを透過した青色光が検出され、青色光(B)に対応する信号電荷が生成される。
【0014】
光電変換素子10Aは、さらに、例えば、1つの無機光電変換部32を有する。無機光電変換部32は、半導体基板30内に埋め込み形成されている。無機光電変換部32は、有機光電変換部20とは異なる波長域の光を検出して光電変換を行うものである。即ち、有機光電変換部20と、無機光電変換部32とは、互いに異なる波長域の光を検出して光電変換を行うものである。具体的には、有機光電変換部20では可視光領域の波長を検出し、無機光電変換部32では赤外光領域(例えば、700nm以上1000nm以下)の波長を検出する。
【0015】
有機光電変換部20と、無機光電変換部32とは、例えば、縦方向に積層されている。具体的には、有機光電変換部20は、例えば、光入射側S1側に配置され、例えば、半導体基板30の第1面30A(裏面)側に設けられている。
【0016】
これにより、各カラーフィルタ51R,51G,51Bを透過した光のうち、可視光領域の光(R,G,B)はそれぞれ有機光電変換部20で吸収され、それ以外の光、具体的には、赤外光領域の光は、有機光電変換部20を透過する。この有機光電変換部20を透過した赤外光領域の光(以下、単に赤外光(IR)と称す)は、各単位画素Pr,Pg,Pbの無機光電変換部32において検出され、各単位画素Pr,Pg,Pbでは赤外光(IR)に対応する信号電荷が生成される。即ち、光電変換素子10Aを備えた撮像素子1では、可視光画像および赤外光画像の両方を同時に生成可能となっている。
【0017】
なお、本実施の形態では、光電変換によって生じる電子および正孔の対(電子-正孔対)のうち、電子を信号電荷として読み出す場合(n型半導体領域を光電変換層とする場合)について説明する。また、図中において、「n」に付した「+(プラス)」は、n型の不純物濃度が高いことを表している。
【0018】
半導体基板30の第2面30B(表面)には、例えば、電荷保持部33と、図示していないが、画素トランジスタと、多層配線層40とが設けられている。多層配線層40では、例えば、配線層41,42,43が絶縁層44内に積層されている。
【0019】
なお、図面では、半導体基板30の裏面(第1面30A)側を光入射側S1、表面(第2面30B)側を配線層側S2と表している。
【0020】
有機光電変換部20は、上記のように、下部電極21、有機光電変換層22および上部電極23が、半導体基板30の第1面30Aの側からこの順に積層された構成を有している。下部電極21は、例えば、光電変換素子10Aごとに分離形成されている。
図1では、有機光電変換層22および上部電極23が各単位画素Pr、Pg,Pbに共通した連続層として設けた例を示したが、下部電極21と同様に、有機光電変換層22および上部電極23は単位画素Pr、Pg,Pb毎に分離形成されていてもよい。
【0021】
半導体基板30の第1面30Aと有機光電変換部20との間には、例えば、層間絶縁層34が設けられている。上部電極23の上方には、上記のように、例えば、カラーフィルタ51が設けられている。カラーフィルタ51の上方には、図示していないが、例えば、平坦化層やオンチップレンズ等の光学部材が配設されている。
【0022】
半導体基板30の第1面30Aと第2面30Bとの間には、貫通電極35が設けられている。下部電極21は、この貫通電極35を介して、電荷保持部33と電気的に接続されている。即ち、貫通電極35は、有機光電変換部20と電荷保持部33とのコネクタとしての機能を有すると共に、有機光電変換部20において生じた信号電荷の伝送経路となっている。これにより、光電変換素子10Aでは、半導体基板30の第1面30A側の有機光電変換部20で生じた信号電荷(ここでは、電子)を、貫通電極35を介して半導体基板30の第2面30B側に良好に転送し、特性を高めることが可能となっている。貫通電極35と周囲には、例えば、絶縁膜36が設けられており、これにより、貫通電極35とpウェル31とは電気的に絶縁されている。
【0023】
本実施の形態の有機光電変換部20では、上部電極23側から入射した光は、有機光電変換層22で吸収される。これによって生じた励起子は、有機光電変換層22を構成する電子供与体と電子受容体との界面に移動し、励起子分離、即ち、電子と正孔とに解離する。ここで発生した電荷(電子および正孔)は、キャリアの濃度差による拡散や、陽極(ここでは、上部電極23)と陰極(ここでは、下部電極21)との仕事関数の差による内部電界によって、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流として検出される。また、下部電極21と上部電極23との間に電位を印加することによって、電子および正孔の輸送方向を制御することができる。
【0024】
以下、各部の構成や材料等について説明する。
【0025】
有機光電変換部20は、可視光領域の一部または全部の波長域に対応する光を吸収して、電子-正孔対を発生させる有機光電変換素子である。
【0026】
下部電極21は、有機光電変換層22内で発生した電荷のうち、信号電荷として電子を引き寄せると共に、引き寄せられた信号電荷を電荷保持部33に転送するためのものである。下部電極21は、光透過性を有する導電膜により構成され、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)により構成されている。但し、下部電極21の構成材料としては、このITOの他にも、ドーパントを添加した酸化スズ(SnO2)系材料、あるいは亜鉛酸化物(ZnO)にドーパントを添加してなる酸化亜鉛系材料を用いてもよい。酸化亜鉛系材料としては、例えば、ドーパントとしてアルミニウム(Al)を添加したアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム(Ga)添加のガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウム(In)添加のインジウム亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。また、下部電極21の構成材料としては、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIN2O4、CdO、ZnSnO3またはTiO2等を用いてもよい。更に、スピネル形酸化物やYbFe2O4構造を有する酸化物を用いてもよい。
【0027】
有機光電変換層22は、光エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。有機光電変換層22は、例えば、p型半導体またはn型半導体として機能する有機材料を2種以上含んで形成されている。有機光電変換層22は、層内に、バルクヘテロ接合構造を有している。バルクヘテロ接合構造は、p型半導体およびn型半導体が混ざり合うことで形成されたp/n接合面であり、光を吸収した際に生じる励起子は、このp/n接合界面において電子と正孔とに分離する。p型半導体は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能するものであり、n型半導体は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能するものである。有機光電変換層22は、光を吸収した際に生じる励起子が電子と正孔とに分離する場を提供するものであり、具体的には、励起子は、電子供与体と電子受容体との界面(p/n接合面)において電子と正孔とに分離する。
【0028】
有機光電変換層22は、p型半導体およびn型半導体の他に、さらに、所定の波長帯域の光を光電変換する一方、他の波長帯域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料の3種類を含んで構成されていてもよい。p型半導体、n型半導体および色素材料は、互いに異なる吸収極大波長を有していることが好ましい。これにより、可視光領域の光を広い範囲で吸収することが可能となる。
【0029】
本実施の形態では、有機光電変換層22を形成する2種または3種の有機材料の1種として、青色光を吸収する正孔輸送性材料が用いられている。この青色光を吸収する正孔輸送性材料は、例えば、有機光電変換層22を形成する2種または3種の有機材料の中で、最も短波長側に吸収極大波長を有している。また、青色光を吸収する正孔輸送性材料は、後述する、有機光電変換層22を構成する第2の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位よりも浅いHOMO準位を有することが好ましい。更に、青色光を吸収する正孔輸送性材料は、結晶性を有し、例えば、有機光電変換層22の層内においてへリングボーン型の分子配列をとっていることが好ましい。
【0030】
このような青色光を吸収する正孔輸送性材料としては、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体(以下、DTBDT誘導体と称す)が挙げられる。この一般式(1)または一般式(2)で表されるDTBDT誘導体が、本開示の「第1の有機半導体材料」の一具体例に相当する。
【0031】
【化1】
(R1,R2,R3,R4は、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、カルバゾール基またはその誘導体である。)
【0032】
R1,R2,R3,R4に導入される具体的な置換基としては、下記式(A-1)~式(A-53)が挙げられる。式中のAと結合した炭素原子が、一般式(1)または一般式(2)に示したR1,R2,R3,R4と結合した炭素原子と結合を形成する。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
上記一般式(1)または一般式(2)で表されるDTBDT誘導体の具体例としては、例えば、下記式(1-1)~式(1-5)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【0038】
有機光電変換層22は、さらに、電子輸送性を有する有機半導体材料を含んでいてもよい。この電子輸送性を有する有機半導体材料が、本開示の「第2の有機半導体材料」の一具体例に相当する。電子輸送性を有する有機半導体材料としては、例えば、下記式(3)で表されるフラーレンC60または式(4)で表されるフラーレンC70あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0039】
【0040】
有機光電変換層22は、有機光電変換層22を形成する2種または3種の有機材料の1種として、さらに、可視光領域のうちの所定の波長帯域の光を光電変換する一方、他の波長帯域の光を透過させる有機材料、いわゆる色素材料を用いて形成することができる。この色素材料が、本開示の「第3の有機半導体材料」の一具体例に相当する。
【0041】
色素材料としては、例えば、500nm以上600nm以下の波長帯域の光を吸収する、サブフタロシアニン、ジピロメテン、メロシアニン、またはスクアリリウムまたはそれらの誘導体が挙げられる。この他、色素材料としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、およびフルオランテンあるいはそれらの誘導体のうちのいずれかを用いてもよい。あるいは、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体やそれらの誘導体を用いてもよい。加えて、金属錯体色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、フェニルキサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ロダシアニン系色素、キサンテン系色素、大環状アザアヌレン系色素、アズレン系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、アントラセンおよびピレン等の縮合多環芳香族および芳香環あるいは複素環化合物が縮合した鎖状化合物、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基を結合鎖として持つキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール等の二つの含窒素複素環、または、スクアリリウム基およびクロコニツクメチン基により結合したシアニン系類似の色素等を好ましく用いることができる。なお、上記金属錯体色素としては、ジチオール金属錯体系色素、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素、またはルテニウム錯体色素が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0042】
このように、互いに吸収極大波長が異なる複数の有機半導体材料、具体的には、青色光を吸収する正孔輸送性材料と、フラーレンまたはその誘導体と、いわゆる色素材料とを用いて有機光電変換層22を形成することにより、可視光領域の光を広い範囲で吸収することが可能となる。
【0043】
なお、上記有機半導体材料は、その組み合わせによってp型半導体またはn型半導体として機能する。
【0044】
有機光電変換層22は、例えば、上記各種有機半導体材料を混合し、真空蒸着法を用いることで形成することができる。この他、例えば、スピンコート技術やプリント技術等を用いてもよい。
【0045】
上部電極23は、下部電極21と同様に光透過性を有する導電膜により構成されている。
【0046】
有機光電変換層22と下部電極21との間および有機光電変換層22と上部電極23との間には、他の層が設けられていてもよい。具体的には、例えば、下部電極21側から順に、電子ブロッキング膜、有機光電変換層22、正孔ブロッキング膜および仕事関数調整層等が積層されていてもよい。更に、下部電極21と有機光電変換層22との間に下引き層および正孔輸送層や、有機光電変換層22と上部電極23との間にバッファ層や電子輸送層を設けるようにしてもよい。
【0047】
半導体基板30は、例えば、n型のシリコン(Si)基板により構成され、所定領域にpウェル31を有している。
【0048】
無機光電変換部32は、例えばPIN(Positive Intrinsic Negative)型のフォトダイオードPDによって構成されており、半導体基板30の所定領域にpn接合を有する。無機光電変換部32は、赤外光領域の一部または全部の波長域の光(赤外光(IR))を検出する。半導体基板30の第2面30Bには、電荷保持部33の他に、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ等を含む画素トランジスタが設けられている。
【0049】
層間絶縁層34は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、TEOS、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等のうちの1種よりなる単層膜か、あるいはこれらのうちの2種以上よりなる積層膜により構成されている。
【0050】
貫通電極35は、例えば、PDAS(Phosphorus Doped Amorphous Silicon)等のドープされたシリコン材料の他、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ハフニウム(Hf)およびタンタル(Ta)等の金属材料を用いて形成することができる。
【0051】
絶縁膜36は、半導体基板30と貫通電極35との間を電気的に分離するためのものであり、層間絶縁層34と同様に、酸化シリコン(SiOx)、TEOS、窒化シリコン(SiNx)および酸窒化シリコン(SiON)等を用いて形成することができる。
【0052】
(1-2.撮像素子の構成)
撮像素子1は、例えば、CMOSイメージセンサであり、光学レンズ系(図示せず)を介して被写体からの入射光(像光)を取り込んで、撮像面上に結像された入射光の光量を画素単位で電気信号に変換して画素信号として出力するものである。撮像素子1は、半導体基板30上に、撮像エリアとしての画素部100を有すると共に、この画素部100の周辺領域に、例えば、垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112、水平駆動回路113、出力回路114、制御回路115および入出力端子116を有している。
【0053】
画素部100には、例えば、行列状に2次元配置された複数の単位画素Pを有している。この単位画素Pには、例えば、画素行ごとに画素駆動線Lread(具体的には行選択線およびリセット制御線)が配線され、画素列ごとに垂直信号線Lsigが配線されている。画素駆動線Lreadは、画素からの信号読み出しのための駆動信号を伝送するものである。画素駆動線Lreadの一端は、垂直駆動回路111の各行に対応した出力端に接続されている。
【0054】
垂直駆動回路111は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、画素部100の各単位画素Pを、例えば、行単位で駆動する画素駆動部である。垂直駆動回路111によって選択走査された画素行の各単位画素Pから出力される信号は、垂直信号線Lsigの各々を通してカラム信号処理回路112に供給される。カラム信号処理回路112は、垂直信号線Lsigごとに設けられたアンプや水平選択スイッチ等によって構成されている。
【0055】
水平駆動回路113は、シフトレジスタやアドレスデコーダ等によって構成され、カラム信号処理回路112の各水平選択スイッチを走査しつつ順番に駆動するものである。この水平駆動回路113による選択走査により、垂直信号線Lsigの各々を通して伝送される各画素の信号が順番に水平信号線121に出力され、当該水平信号線121を通して半導体基板30の外部へ伝送される。
【0056】
出力回路114は、カラム信号処理会おr112の各々から水平信号線121を介して順次供給される信号に対して信号処理を行って出力するものである。出力回路114は、例えば、バッファリングのみを行う場合もあるし、黒レベル調整、列ばらつき補正および各種デジタル信号処理等が行われる場合もある。
【0057】
垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112、水平駆動回路113、水平信号線121および出力回路114からなる回路部分は、半導体基板30上に直に形成されていてもよいし、あるいは外部制御ICに配設されたものであってもよい。また、それらの回路部分は、ケーブル等により接続された他の基板に形成されていてもよい。
【0058】
制御回路115は、半導体基板30の外部から与えられるクロックや、動作モードを指令するデータ等を受け取り、また、撮像素子1の内部情報等のデータを出力するものである。制御回路115はさらに、各種のタイミング信号を生成するタイミングジェネレータを有し、当該タイミングジェネレータで生成された各種のタイミング信号を基に垂直駆動回路111、カラム信号処理回路112および水平駆動回路113等の周辺回路の駆動制御を行う。
【0059】
入出力端子16は、外部との信号のやり取りを行うものである。
【0060】
(1-3.作用・効果)
本実施の形態の光電変換素子10Aおよびこれを備えた撮像素子1では、有機光電変換層22を、青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いて形成することにより、有機光電変換層22における吸収スペクトルを拡大することが可能となる。以下、これについて説明する。
【0061】
CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOSイメージセンサ等では、有機光電変換膜を用いたイメージセンサが開発されている。例えば、青色光(B)に感度を持つ有機光電変換膜、緑色光(G)に感度を持つ有機光電変換膜、赤色光(R)に感度を持つ有機光電変換膜が順次積層された多層構造の有機光電変換膜を用いた有機撮像素子が提案されている。このイメージセンサでは、1画素から、B/G/Rの信号を別々に取り出すことで、感度向上が図られている。この他、無機光電変換部としてフォトダイオードが形成された半導体基板の上方に、前述したような、所定の波長域に極大吸収を有する有機半導体材料1種と、可視光領域の透明性が高い有機半導体材料2種を用いて形成した有機光電変換膜を積層した撮像素子が提案されている。この撮像素子では、有機光電変換膜において1色の信号が取り出され、シリコン(Si)バルク分光において2色の信号が取り出される。
【0062】
ところで、近年、可視光および赤外光(IR)の両方から得られる画像を撮像可能なイメージセンサの開発が求められている。例えば、上述した有機撮像素子を適用した場合、より広い範囲の可視光領域を吸収できるものの、現在の技術では商用性のある大きさでの製造は難しいという課題がある。
【0063】
一方、上記無機光電変換部としてフォトダイオードが形成された半導体基板の上方に積層された3種の有機半導体材料からなる有機光電変換膜を、上記イメージセンサの可視光用の光電変換膜として適用した場合には、この有機光電変換膜は可視光領域の所定の範囲を選択的に吸収するように構成されているため、十分な感度が得られないという課題がある。
【0064】
これに対して、本実施の形態では、有機光電変換層22を構成する有機材料として、青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いるようにした。これにより、有機光電変換層22における吸収スペクトルを拡大することが可能となる。
【0065】
例えば、有機光電変換層22を、この青色光を吸収する正孔輸送性材料と共に、正孔輸送性材料とは互いに吸収極大波長が異なる1種または2種の有機材料を用いて形成することにより、上記所定の波長域に極大吸収を有する有機半導体材料1種と、可視光領域の透明性が高い有機半導体材料2種を用いて形成した場合と比較して、青色領域に対する光吸収が増加する。
【0066】
以上により、本実施の形態の光電変換素子10Aでは、有機光電変換層22を構成する有機材料として、青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いるようにしたので、有機光電変換層22における吸収スペクトルを拡大することが可能となる。よって、広範囲な吸収スペクトルを有する光電変換素子10Aおよびこれを備えた撮像素子1を提供することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態では、上記青色光に吸収を有する正孔輸送性材料と共に用いる色素材料を適宜選択することにより、青色光(B)と赤色光(R)とを検出する有機光電変換層や、青色光と緑色光(G)とを検出する有機光電変換層を形成することができる。これにより、上述した3つの有機光電変換膜を積層した有機撮像素子の、有機光電変換膜の積層数を3層から2層あるいは、1層に減らすことが可能となる。即ち、簡易な工程で、広範囲に光吸収を有する光電変換素子10Aおよびこれを備えた撮像素子1を製造することが可能となる。
【0068】
次に、本開示の変形例1~3について説明する。以下では、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0069】
<2.変形例>
(2-1.変形例1)
図3は、本開示の変形例1に係る光電変換素子(光電変換素子10B)の断面構成の一例を表したものである。上記実施の形態において説明した光電変換素子10Aには、さらに、分光調整層として、例えば、デュアルバンドパスフィルタ71を設けるようにしてもよい。
【0070】
デュアルバンドパスフィルタ71は、可視光領域および赤外光領域のそれぞれに、透過バンドを有するものである。デュアルバンドパスフィルタ71は、例えば、カラーフィルタ51の上方に設けられている。
【0071】
上記実施の形態のように、半導体基板30の光入射面である第1面30Aの上方にカラーフィルタ51R,51G,51Bおよび有機光電変換部20を配置した場合、各単位画素Pr,Pg,Pbの無機光電変換部32で吸収される赤外光(IR)は、各カラーフィルタ51R,51G,51Bおよび有機光電変換部20を透過した光となる。即ち、各単位画素Pr,Pg,Pbの無機光電変換部32で吸収される赤外光(IR)のスペクトルは互いに異なっている。そのため、各単位画素Pr,Pg,Pbごとに感度が異なるため、各単位画素Pr,Pg,Pbを、同一の赤外光画像を生成するためのIR画素として用いることできないという課題がある。
【0072】
これに対して本変形例では、デュアルバンドパスフィルタ71を設けることにより、無機光電変換部32で検出される赤外光(IR)は、デュアルバンドパスフィルタ71の赤外光領域側の透過バンドの波長領域内の光となり、各単位画素Pr,Pg,Pbにおいて検出される赤外光(IR)のスペクトルをそろえることが可能となる。これにより、光電変換素子10Bでは、2次元状に配列されたすべての単位画素Pr,Pg,Pbから得られるIR信号を用いたIR画像を得ることができるようになる。よって、上記実施の形態の効果に加えて、高解像度なIR画像を得ることが可能な撮像素子1を提供することが可能となる。
【0073】
また、分光調整層としては、デュアルバンドパスフィルタ71の他に、例えば、
図4に示した光電変換素子10Cのように、多層膜フィルタ81を用いることができる。多層膜フィルタ81は、例えば、高屈折率な無機材料からなる膜と、低屈折率な無機材料からなる膜とが、周期的に交互に繰り返し積層されたものである。高屈折率な無機材料としては、例えば、窒化ケイ素(Si
3N
4)および酸化チタン(TiO
2)等が挙げられる。低屈折率な無機材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO
2)等が挙げられる。多層膜フィルタ81は、例えば、有機光電変換部20と層間絶縁層34との間に設けることができる。
【0074】
この他、例えば、有機光電変換部20と半導体基板30との間に、プラズモンフィルタを設けることでも、同様の効果を得ることができる。
【0075】
(2-2.変形例2)
図5は、本開示の変形例2に係る光電変換素子(光電変換素子10D)の断面構成を模式的に表したものである。光電変換素子10Dは、例えば、可視光から得られる画像を、カラーフィルタを用いることなく撮像可能なCMOSイメージセンサ等の撮像素子(撮像素子1)において1つの単位画素Pを構成するものである。本変形例の光電変換素子10Dは、例えば、1つの有機光電変換部20と、2つの無機光電変換部32G,32Rとが縦方向に積層された、いわゆる縦方向分光型のものである。
【0076】
有機光電変換部20と、無機光電変換部32G,32Rとは、互いに異なる波長域の光を選択的に検出して光電変換を行うものである。具体的には、有機光電変換部20では、例えば、青(B)の色信号を取得する。無機光電変換部32G,32Rでは、吸収係数の違いにより、それぞれ、緑(G)および赤(R)の色信号を取得する。これにより、撮像素子10では、カラーフィルタを用いることなく一つの画素において複数種類の色信号を取得可能となっている。
【0077】
無機光電変換部32G,32Rは、半導体基板30内に埋め込み形成されており、半導体基板30の厚み方向に積層されている。半導体基板30の第2面(表面)30Bには、例えば、フローティングディフュージョン(浮遊拡散層)FD1,FD2,FD3と、転送トランジスタTr2,Tr3と、アンプトランジスタAMPと、リセットトランジスタRSTと、選択トランジスタSELと、多層配線層40とが設けられている。
【0078】
半導体基板30の第1面30Aと下部電極21との間には、例えば、層間絶縁層34と、絶縁層37とが設けられている。絶縁層37は、固定電荷を有する層(固定電荷層)37Aと、絶縁性を有する誘電体層37Bとから構成されている。上部電極23の上には、保護層52が設けられている。保護層52の上方には、平坦化層(図示せず)やオンチップレンズ53Lを含むオンチップレンズ層53等の光学部材が配設されている。
【0079】
このように、本技術は、可視光画像を撮像する撮像素子にも適用することができる。また、本変形例では、1つの有機光電変換部20と、2つの無機光電変換部32R,32Gとが積層された光電変換素子10Dを示したが、本技術の光電変換素子は、例えば、青色光(B)および緑色光(G)をそれぞれ検出する2つの有機光電変換部と、赤色光(R)を検出する1つの無機光電変換部とが積層された構成としてもよい。
【0080】
(2-3.変形例3)
図6は、本開示の変形例3に係る光電変換素子(光電変換素子10E)の断面構成を表したものである。光電変換素子10Eは、上記変形例2の光電変換素子10Dと同様に、例えば、可視光から得られる画像を、カラーフィルタを用いることなく撮像可能なCMOSイメージセンサ等の撮像素子(撮像素子1)において1つの単位画素Pを構成するものである。本変形例の光電変換素子10Eは、半導体基板30上に絶縁層96を介して赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bがこの順に積層された構成を有する。
【0081】
赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bは、それぞれ一対の電極の間、具体的には、第1電極91Rと第2電極93Rとの間、第1電極91Gと第2電極93Gとの間、第1電極91Bと第2電極93Bとの間に、それぞれ有機光電変換層92R,92G,92Bを有する。
【0082】
青色光電変換部90B上には、保護層97およびオンチップレンズ層98を介してオンチップレンズ98Lが設けられている。半導体基板30内には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bが設けられている。オンチップレンズ98Lに入射した光は、赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bで光電変換され、赤色光電変換部90Rから赤色蓄電層310Rへ、緑色光電変換部90Gから緑色蓄電層310Gへ、青色光電変換部90Bから青色蓄電層310Bへそれぞれ信号電荷が送られるようになっている。信号電荷は、光電変換によって生じる電子および正孔のどちらであってもよいが、以下では、電子を信号電荷として読み出す場合を例に挙げて説明する。
【0083】
半導体基板30は、例えばp型シリコン基板により構成されている。この半導体基板30に設けられた赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bは、各々n型半導体領域を含んでおり、このn型半導体領域に赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bから供給された信号電荷(電子)が蓄積されるようになっている。赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bのn型半導体領域は、例えば、半導体基板30に、リン(P)またはヒ素(As)等のn型不純物をドーピングすることにより形成される。なお、半導体基板30は、ガラス等からなる支持基板(図示せず)上に設けるようにしてもよい。
【0084】
半導体基板30には、赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bそれぞれから電子を読み出し、例えば垂直信号線(
図2の垂直信号線Lsig)に転送するための画素トランジスタが設けられている。この画素トランジスタのフローティングディフュージョンが半導体基板30内に設けられており、このフローティングディフュージョンが赤色蓄電層310R、緑色蓄電層310Gおよび青色蓄電層310Bに接続されている。フローティングディフュージョンは、n型半導体領域により構成されている。
【0085】
絶縁層96は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiON)および酸化ハフニウム(HfOx)等により構成されている。複数種類の絶縁膜を積層させて絶縁層96を構成するようにしてもよい。有機絶縁材料により絶縁層96が構成されていてもよい。この絶縁層96には、赤色蓄電層310Rと赤色光電変換部90R、緑色蓄電層310Gと緑色光電変換部90G、青色蓄電層310Bと青色光電変換部90Bをそれぞれ接続するためのプラグおよび電極が設けられている。
【0086】
赤色光電変換部90Rは、半導体基板30に近い位置から、第1電極91R、有機光電変換層92Rおよび第2電極93Rをこの順に有するものである。緑色光電変換部90Gは、赤色光電変換部90Rに近い位置から、第1電極91G、有機光電変換層92Gおよび第2電極93Gをこの順に有するものである。青色光電変換部90Bは、緑色光電変換部90Gに近い位置から、第1電極91B、有機光電変換層92Bおよび第2電極93Bをこの順に有するものである。赤色光電変換部90Rと緑色光電変換部90Gとの間には絶縁層44が、緑色光電変換部90Gと青色光電変換部90Bとの間には絶縁層95が設けられている。赤色光電変換部90Rでは赤色(例えば、波長600nm以上700nm未満)の光が、緑色光電変換部90Gでは緑色(例えば、波長480nm以上600nm未満)の光が、青色光電変換部90Bでは青色(例えば、波長400nm以上480nm未満)の光がそれぞれ選択的に吸収され、電子・正孔対が発生するようになっている。
【0087】
第1電極91Rは有機光電変換層92Rで生じた信号電荷を、第1電極91Gは有機光電変換層92Gで生じた信号電荷を、第1電極91Bは有機光電変換層92Bで生じた信号電荷をそれぞれ取り出すものである。第1電極91R,91G,91Bは、例えば、画素毎に設けられている。この第1電極91R,91G,91Bは、例えば、光透過性の導電材料、具体的にはITOにより構成される。第1電極91R,91G,91Bは、例えば、酸化スズ系材料または酸化亜鉛系材料により構成するようにしてもよい。酸化スズ系材料とは酸化スズにドーパントを添加したものであり、酸化亜鉛系材料とは例えば、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加したアルミニウム亜鉛酸化物,酸化亜鉛にドーパントとしてガリウムを添加したガリウム亜鉛酸化物および酸化亜鉛にドーパントとしてインジウムを添加したインジウム亜鉛酸化物等である。この他、IGZO,CuI,InSbO4,ZnMgO,CuInO2,MgIn2O4,CdOおよびZnSnO3等を用いることも可能である。
【0088】
第1電極91Rと有機光電変換層92Rとの間、第1電極91Gと有機光電変換層92Gとの間、および第1電極91Bと有機光電変換層92Bとの間には、それぞれ例えば、電子輸送層が設けられていてもよい。電子輸送層は、有機光電変換層92R,92G,92Bで生じた電子の第1電極91R,91G,91Bへの供給を促進するためのものであり、例えば、酸化チタンまたは酸化亜鉛等により構成されている。酸化チタンと酸化亜鉛とを積層させて電子輸送層を構成するようにしてもよい。
【0089】
有機光電変換層92R,92G,92Bは、それぞれ、選択的な波長域の光を吸収して光電変換し、他の波長域の光を透過させるものである。ここで、選択的な波長域の光とは、有機光電変換層92Rでは、例えば、波長600nm以上700nm未満の波長域の光、有機光電変換層92Gでは、例えば、波長480nm以上600nm未満の波長域の光、有機光電変換層92Bでは、例えば、波長400nm以上480nm未満の波長域の光である。
【0090】
有機光電変換層92R,92G,92Bは、上記実施の形態における有機光電変換層12と同様の構成を有する。例えば、有機光電変換層92R,92G,92Bは、例えば2種以上の有機半導体材料を含んで構成されており、例えば、p型半導体およびn型半導体のどちらか一方あるいは両方を含んで構成されていることが好ましい。例えば、有機光電変換層92R,92G,92Bがそれぞれp型半導体およびn型半導体の2種類の有機半導体材料によって構成される場合には、p型半導体およびn型半導体は、例えば、一方が可視光に対して透過性を有する材料、他方が選択的な波長域の光を光電変換する材料であることが好ましい。あるいは、有機光電変換層92R,92G,92Bは、それぞれ選択的な波長域の光を光電変換する材料(色素材料)と、可視光に対して透過性を有するn型半導体およびp型半導体との3種類の有機半導体材料によって構成されていることが好ましい。
【0091】
例えば、有機光電変換層92Rは、例えば、波長600nm以上700nm未満の波長域の光を光電変換可能な材料(色素材料)を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、サブナフタロシアニンまたはその誘導体およびフタロシアニンまたはその誘導体が挙げられる。例えば、有機光電変換層92Gは、例えば、波長480nm以上600nm未満の波長域の光を光電変換可能な材料(色素材料)を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、サブフタロシアニンまたはその誘導体等が挙げられる。有機光電変換層92Bは、例えば、波長400nm以上480nm未満の波長域の光を光電変換可能な材料(色素材料)を用いることが好ましい。このような材料としては、一般式(1)または一般式(2)で表されるDTBDT誘導体等が挙げられる。この他、有機光電変換層92Bは、上記材料に加えて、例えば、クマリンまたはその誘導体およびポルフィリンまたはその誘導体を混合して用いるようにしてもよい。
【0092】
有機光電変換層92Rと第2電極93Rとの間、有機光電変換層92Gと第2電極93Gとの間、および有機光電変換層92Bと第2電極93Bとの間には、それぞれ、例えば正孔輸送層が設けられていてもよい。正孔輸送層は、有機光電変換層92R,92G,92Bで生じた正孔の第2電極93R,93G,93Bへの供給を促進するためのものであり、例えば酸化モリブデン,酸化ニッケルあるいは酸化バナジウム等により構成されている。PEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))およびTPD(N,N'-Bis(3-methylphenyl)-N,N'-diphenylbenzidine)等の有機材料により正孔輸送層を構成するようにしてもよい。
【0093】
第2電極93Rは有機光電変換層92Rで発生した正孔を、第2電極93Gは有機光電変換層92Gで発生した正孔を、第2電極93Bは有機光電変換層92Gで発生した正孔をそれぞれ取りだすためのものである。第2電極93R,93G,93Bから取り出された正孔は各々の伝送経路(図示せず)を介して、例えば半導体基板30内のp型半導体領域(図示せず)に排出されるようになっている。第2電極93R,93G,93Bは、例えば、金,銀,銅およびアルミニウム等の導電材料により構成されている。第1電極91R,91G,91Bと同様に、透明導電材料により第2電極93R,93G,93Bを構成するようにしてもよい。光電変換素子10Eでは、この第2電極93R,93G,93Bから取り出される正孔は排出されるため、例えば、後述する撮像素子1において複数の光電変換素子10Eを配置した際には、第2電極93R,93G,93Bを各光電変換素子10E(単位画素P)に共通して設けるようにしてもよい。
【0094】
絶縁層94は第2電極93Rと第1電極91Gとを絶縁するためのものであり、絶縁層95は第2電極93Gと第1電極91Bとを絶縁するためのものである。絶縁層94,95は、例えば、金属酸化物,金属硫化物あるいは有機物により構成されている。金属酸化物としては、例えば、酸化シリコン,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化タングステン,酸化マグネシウム,酸化ニオブ,酸化スズおよび酸化ガリウム等が挙げられる。金属硫化物としては、硫化亜鉛および硫化マグネシウム等が挙げられる。絶縁層94,95の構成材料のバンドギャップは3.0eV以上であることが好ましい。
【0095】
以上のように、本技術は、それぞれ、有機半導体材料を用いて構成された光電変換層(有機光電変換層92R,92G,92B)を有する赤色光電変換部90R、緑色光電変換部90Gおよび青色光電変換部90Bがこの順に積層された光電変換素子(光電変換素子10E)にも適用することができる。
【0096】
<3.適用例>
上記撮像素子1は、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、撮像機能を有する携帯電話等、撮像機能を備えたあらゆるタイプの電子機器に適用することができる。
図7は、電子機器1000の概略構成を表したものである。
【0097】
電子機器1000は、撮像素子1と、DSP(Digital Signal Processor)回路1001と、フレームメモリ1002と、表示部1003と、記録部1004と、操作部1005と、電源部1006とを有し、バスライン1007を介して相互に接続されている。
【0098】
DSP回路1001は、撮像素子1から供給される信号を処理する信号処理回路である。DSP回路1001は、撮像素子1からの信号を処理して得られる画像データを出力する。フレームメモリ1002は、DSP回路1001により処理された画像データをフレーム多いんいで一時的に保持するものである。
【0099】
表示部1003は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等のパネル型表示装置からなり、撮像素子1で撮像された動画または静止画の画像データを、半導体メモリやハードディスク等の記録媒体に記録する。
【0100】
操作部1005は、ユーザによる操作に従い、電子機器1000が所有する各種の機能についての操作信号を出力する。電源部1006は、DSP回路1001、フレームメモリ1002、表示部1003、記録部1004および操作部1005の動作電源となる各種の電源を、これら供給対象に対して適宜供給するものである。
【0101】
<4.応用例>
<内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0102】
図8は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0103】
図8では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0104】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0105】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0106】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0107】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0108】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0109】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0110】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0111】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0112】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0113】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0114】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0115】
図9は、
図8に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0116】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0117】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0118】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0119】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0120】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0121】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0122】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0123】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0124】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0125】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0126】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0127】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0128】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0129】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0130】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0131】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0132】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、検出精度が向上する。
【0133】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0134】
<移動体への応用例>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0135】
図10は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0136】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図10に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0137】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0138】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0139】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0140】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0141】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0142】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0143】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0144】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0145】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図10の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0146】
図11は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0147】
図11では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0148】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0149】
なお、
図11には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0150】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0151】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0152】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0153】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0154】
<5.実施例>
次に、本開示の実施例について詳細に説明する。実験1では、青色光を吸収する正孔輸送性材料として、上記式(1-1)で表される化合物および上述した有機光電変換層22の薄膜を形成し、その分光特性を評価した。実験2では、上記薄膜の結晶性を評価した。実験2では、上記式(1-1)で表される化合物の結晶構造を評価した。実験4では、上述した有機光電変換層22を有するデバイスサンプルを作成し、その電気特性を評価した。
【0155】
(実験1:薄膜の分光特性の評価)
以下の方法を用いて分光特性の評価用サンプルを作製した。まず、UV/オゾン処理にて洗浄した石英ガラス基板を真空蒸着装置に移し、1×10-5Pa以下に減圧された状態で、基板温度0℃にて、基板ホルダを回転させながら抵抗加熱法を用いて式(1-1)で表される化合物の成膜を行った。蒸着速度は0.1nm/秒とし、膜厚は50nmとなるように蒸着した(実験例1-1)。同様に、式(1-1)で表される化合物と同様に、正孔輸送性材料として用いることができる下記式(5)で表される化合物(rBDT)(実験例1-2)の成膜を行った。また、式(1-1)で表される化合物および式(5)で表される化合物と共に、有機光電変換層の材料として用いられる、下記式(6)で表されるサブフタロシアニン(SubPc)(実験例1-3)および上記式(3)に示したフラーレンC60(実験例1-4)の成膜を行った。
【0156】
【0157】
また、同様にして、式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC60の3種の有機材料を含む薄膜(実験例1-5)を製膜した。蒸着速度は、それぞれ0.5nm/秒、0.5nm/秒、0.25nm/秒とし、膜厚は200nmになるようにした。同様に、式(5)で表される化合物(rBDT)、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC60の3種の有機材料を含む薄膜(実験例1-6)を製膜した。蒸着速度は、それぞれ0.5nm/秒、0.5nm/秒、0.25nm/秒とし、膜厚は200nmになるようにした。この実験例1-5および実験例1-6を3元系の有機光電変換層の分光特性評価用のサンプルとした。
【0158】
また、同様にして、式(1-1)で表される化合物およびサブフタロシアニン(SubPc)の2種の有機材料を含む薄膜(実験例1-7)を製膜した。蒸着速度は、それぞれ0.5nm/秒、0.5nm/秒とし、膜厚は100nmになるようにした。同様に、式(5)で表される化合物(rBDT)およびサブフタロシアニン(SubPc)の2種の有機材料を含む薄膜(実験例1-8)を製膜した。蒸着速度は、それぞれ0.5nm/秒、0.5nm/秒とし、膜厚は100nmになるようにした。この実験例1-7および実験例1-8を2元系の有機光電変換層の分光特性評価用のサンプルとした。
【0159】
分光特性は、紫外可視分光光度計を用い、波長λ=350~700nmの波長領域における波長毎の透過率および反射率を測定し、各薄膜で吸収された光吸収率(%)を求めた。この光吸収率および薄膜の膜厚をパラメータとして、ランベルトベールの法則から、各薄膜の波長毎の線吸収係数α(cm-1)を評価した。λmax(nm)は、ある吸収スペクトルにおいて観測される線吸収係数の極大値を示す波長のうち、最も長波長に観測される波長とした。
【0160】
図12は、式(1-1)で表される化合物からなる薄膜(実験例1-1)および式(5)で表される化合物(rBDT)からなる薄膜(実験例1-2)の吸収スペクトルを表したものである。
図13は、実験例1-1、サブフタロシアニン(SubPc)からなる薄膜(実験例1-3)およびフラーレンC
60からなる薄膜(実験例1-4)の吸収スペクトルを表したものである。
図14は、上記実験例1-5および実験例1-6の3元系の有機光電変換層を構成する薄膜の吸収スペクトルを表したものである。
図15は、上記実験例1-7および実験例1-8の2元系の有機光電変換層を構成する薄膜の吸収スペクトルを表したものである。
【0161】
図12から、式(1-1)で表される化合物は、式(5)で表される化合物(rBDT)と比較してλ=350~500nmの領域における線吸収係数が高いことがわかった。つまり、式(1-1)で表される化合物は、光吸収能が増大された正孔輸送性材料であることがわかった。例えば、λ=450nmにおけるαは、式(1-1)で表される化合物が7.3×10
4cm
-1、式(5)で表される化合物(rBDT)が0.5×10
4cm
-1であった。つまりこの波長において、式(1-1)で表される化合物の光吸収能は15倍にまで増大されていることがわかった。更に、式(5)で表される化合物はλ=450~500nmにおけるαがほぼ0であり、光吸収しないのに対して、式(1-1)で表される化合物はこの波長域でも光吸収を示すことがわかった。このことから、式(1-1)で表される化合物は、式(5)で表される化合物(rBDT)と比較して、高い光吸収能を有する材料であることがわかった。
【0162】
図13から、式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC
60は、それぞれ、効率的に吸収する波長領域は互いに異なることがわかった。例えば、式(1-1)で表される化合物は400nm~430nmの青色領域のαが最も高く、この範囲の光を効率的に吸収することがわかった。サブフタロシアニン(SubPc)は500nm~580nmの緑色領域のαが最も高く、この範囲の光を効率的に吸収することがわかった。フラーレンC
60は600nm~650nmの赤色領域のαが最も高く、この範囲の光を効率的に吸収することがわかった。
【0163】
また、表1は、式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC60の各λmax(nm)をまとめたものである。表1から、式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC60は、それぞれ、λmax(nm)が異なり、その中でも式(1-1)で表される化合物のλmaxが最も短波長であることがわかった。
【0164】
【0165】
以上のことから、3元系の有機光電変換層22を形成する3種の有機材料が、それぞれ異なる波長領域の光を吸収することは、有機光電変換層の光吸収能を向上させるのに効果的であることがわかった。このことは、
図14からもわかる。
【0166】
また、
図14から、2元系の有機光電変換層においても、正孔輸送性材料として式(1-1)で表される化合物を用いた場合、式(5)で表される化合物(rBDT)を用いた場合と比較して、350nm~500nmの範囲の光吸収係数が大きくなることがわかった。これは、
図12からもわかるように、式(1-1)で表される化合物の350nm~500nmの範囲における光吸収係数が、式(5)で表される化合物(rBDT)を用いた場合に比較して高いことに由来している。即ち、正孔輸送性材料として高い光吸収能を有する式(1-1)で表される化合物を用いることにより、3元系の有機光電変換層22を、パンクロマチックな分光形状とすることができることがわかった。なお、この有機光電変換層22(実験例1-5)では、青色領域の光吸収は正孔輸送性材料が、緑域の光吸収は色素が、赤域の光吸収は電子輸送材料が担う。
【0167】
更に、
図15から、正孔輸送性材料として式(1-1)で表される化合物を用いた場合、式(5)で表される化合物を用いた場合に比較して、350nm~500nmの範囲の光吸収係数が大きくなることがわかった。これは、3元系の有機光電変換層(実験例1-5)と同様に、式(1-1)で表される化合物の350nm~500nmの範囲における光吸収係数が、式(5)で表される化合物を用いた場合に比較して高いことに由来している。即ち、正孔輸送性材料として高い光吸収能を有する式(1-1)で表される化合物を用いることにより、2元系の有機光電変換層22を、パンクロマチックな分光形状とすることができることがわかった。なお、この有機光電変換層22(実験例1-7)では、青色領域の光吸収は正孔輸送性材料が、緑域の光吸収は色素が担う。
【0168】
(実験2:薄膜の結晶性の評価)
以下の方法を用いて薄膜の結晶性の評価用サンプルを作製した。まず、ガラス基板上にスパッタリング装置を用いて厚さ50nmのITO膜を成膜した。このITO膜を、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングし、ITO電極とした。続いて、ITO電極付きのガラス基板をUV/オゾン処理にて洗浄した後、真空蒸着装置にて1×10-5Pa以下に減圧された状態で、基板温度20℃にて、基板ホルダを回転させながら抵抗加熱法によって式(1-1)で表される化合物の成膜を行った。真蒸着速度は0.1nm/秒とし、膜厚は50nmとなるように蒸着した。これを式(1-1)で表される化合物の薄膜の結晶性評価用サンプルとした(実験例2-1)。
【0169】
同様にして、UV/オゾン処理にて洗浄した膜厚50nmのITO電極が設けられたガラス基板上に、真空蒸着装置にて1×10-5Pa以下減圧された状態で、基板温度20℃にて、基板ホルダを回転させながら抵抗加熱法によって式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)、フラーレンC60を同時に蒸着した。蒸着速度はそれぞれ0.5nm/秒、0.5nm/秒、0.25nm/秒とし、膜厚は230nmになるようにした。これを3元系の薄膜の結晶性評価用サンプルとした(実験例2-2)。
【0170】
上記薄膜の結晶性の評価は、CuKαをX線の発生源としたX線回折装置を用い、それぞれにX線を照射し、斜入射法を用いて面外方向のX線回折測定を2θ=2~30°の範囲で行った。
【0171】
図16は、式(1-1)で表される化合物からなる薄膜(実験例2-1)のX線回折パターンを表したものである。
図17は、式(1-1)で表される化合物、サブフタロシアニン(SubPc)およびフラーレンC
60からなる薄膜(実験例2-2)のX線回折パターンを表したものである。
【0172】
いずれのサンプルにおいても、2θ=18~29°の範囲におおよそ3つの明瞭なピークが存在することがわかった。また、いずれのサンプルにおいても、それ以外の領域にはピークは確認されなかった。更に、
図16においてこれらの3つの明瞭なピークがみられることから、これらのピークは式(1-1)で表される化合物に由来するものであることがわかった。即ち、式(1-1)で表される化合物は、薄膜としたときに結晶性を有することがわかった。また、
図17においてこれらのピークが同様の位置に表れることから、3元系の有機光電変換層でも式(1-1)で表される化合物は結晶性を有することがわかった。
【0173】
また、以下の方法を用いて実験例2-1および実験例2-2のピーク位置および結晶子径を評価した。以下、明瞭な3つのピークを、低角側から順に第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークと定義する。
【0174】
第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークのそれぞれのピーク位置は、バックグラウンド減算後のスペクトルからPearsonVII関数を用いて各ピークをフィッティングして求めた。結晶子径は、PearsonVII関数を用いて第2のピークをフィッティングし、その半値幅を求め、シェラーの式に代入することで求めた。その際、シェラー定数Kは0.94を用いた。
【0175】
表2は、第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークのそれぞれのピーク位置および結晶子径をまとめたものである。
【0176】
【0177】
式(1-1)で表される化合物の薄膜(実験例2-1)および3元系の薄膜(実験例2-2)のそれぞれの第1ピークのピーク位置は19.0°、19.0°、第2ピークのピーク位置は23.4°、23.4°および第3ピークのピーク位置は27.9°、27.9°であった。第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークのピーク位置は、実験例2-1と実験例2-2とで、それぞれ、変化していない。これは、第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークが、それぞれ、式(1-1)で表される化合物に由来することを意味している。実験例2-1および実験例2-2の結晶子径は、それぞれ、第1のピークに対して13.8nm、15.2nm、第2のピークに対して10.9nm、16.7nm、第3のピークに対して10.5nm、12.8nmであり、3元系の薄膜では粒子径が全体的に増加することがわかった。これは式(1-1)で表される化合物が他の材料と混合され、共蒸着膜となっても、その結晶性を変化させない、安定な材料であることを示唆している。
【0178】
(実験3:結晶構造の評価)
実験3では、実験2において観測された第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークが、式(1-1)で表される化合物のどのような分子配列の特徴によって表れているかを調べた。
【0179】
(実験3)
結晶構造の評価用サンプルとして、昇華精製法により0.13mm×0.09mm×0.07mmのブロック状の式(1-1)で表される化合物の単結晶を作製した。このサンプルを用について、XtaLab AFC11(RINC)を用いて波長0.71073ÅのMoKα線をX線源としたX線構造解析を行った。θ=2.067~27.484°の範囲で合計14584の反射を測定し、集めた回折データを用いて直接法SIR-2004で構造を解き、構造因子F2に対する最小二乗法で構造最適化を行った。得られた構造最適化の結果から、CuKαをX線源とした場合の粉末X線回折パターンを求めた。
【0180】
表3は、式(1-1)で表される化合物の結晶データおよび構造最適化の結果をまとめたものである。
図18は、c軸から見た場合の式(1-1)で表される化合物の分子配列を示したものである。
図19は、式(1-1)で表される化合物の、CuKαをX線源とした場合の粉末X線回折パターンをシミュレーションしたものである。
【0181】
【0182】
表3から、構造最適化の結果得られたR1因子は、6.28%であることがわかった。このことから、式(1-1)で表される化合物の構造解析は問題なく行うことができたことがわかった。
【0183】
図18からは、式(1-1)で表される化合物は、へリングボーンと呼ばれる分子配列を取ることがわかった。a軸方向には、式(1-1)で表される化合物骨格のπ電子の重なりによる相互作用およびπ―πスタックが存在する。b軸方向には、式(1-1)で表される化合物骨格の水素原子および骨格のπ電子の相互作用によるCH-π相互作用が存在する。これらの相互作用が存在することで、式(1-1)で表される化合物は、へリングボーンと呼ばれる分子配列を形成する。
【0184】
図19のシミュレーション結果では、CuKαをX線源とした場合、19.03°、23.67°、28.09°の3カ所に強い回折ピークが確認できた。これら3つの回折ピークは、それぞれ面方位(111)、(020)、(121)からの回折ピークに相当する。これらの回折ピークはいずれもヘリングボーン構造の形成を示すピークである。従って、式(1-1)で表される化合物は、その薄膜および3元系の薄膜とした際に、膜中でへリングボーン構造をとっていることがわかった。
【0185】
また、光電変換素子としては、正孔輸送性材料が有機光電変換層内においてへリングボーン構造をとることで、正孔輸送性材料がランダムに分散した状態と比較して、空間的に互いに近い位置に存在することになる。これにより、有機光電変換層内における電荷輸送性が向上することが期待できる。
【0186】
(実験4:電気特性の評価)
次に、以下の方法を用いて電気特性の評価用のデバイスサンプルを作製し、その暗電流特性および外部量子効率(EQE)を評価した。
【0187】
まず、実験例3-1として、石英ガラス基板上にスパッタリング装置を用いて厚さ100nmのITO膜を成膜した。このITO膜を、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングし、ITO電極とした。続いて、ITO電極付きの石英ガラス基板をUV/オゾン処理にて洗浄した後、石英ガラス基板を真空蒸着装置に移し、1×10-5Pa以下に減圧された状態で基板ホルダを回転させながら抵抗加熱法を用いて、下記式(7)に示した電子ブロッキング材料を、蒸着速度1Å/secにて5nmの厚みで成膜し、電子ブロック層を形成した。次に、有機光電変換層として、C60フラーレン(上記式(3))と、下記式(6)で表されるサブフタロシアニン(SubPc)と、下記式(1-1)で表される化合物とを、基板温度20℃にて、それぞれ、0.025nm秒、0.050nm/秒、0.050nm/秒の成膜レートで、混合層の厚さが230nmとなるように成膜した。これにより、組成比20vol%(C60フラーレン):40vol%(SubPc):40vol%(式(1-1))の有機光電変換層を得た。続いて、下記式(8)に示した正孔ブロッキング材料を、蒸着速度0.3Å/secにて5nmの厚みで成膜し、正孔ブロック層を形成した。最後に、正孔ブロック層上に、AlSiCu膜を蒸着法にて膜厚100nmで成膜し、これを上部電極とした。以上の作製方法により、1mm×1mmの光電変換領域を有する光電変換素子(実験例3-1)を作製した。
【0188】
【0189】
また、実験例3-2として、正孔輸送性材料として、式(1-1)で表される化合物の代わりに式(5)で表される化合物(rBDT)を用い、実験例3-1と同様の方法を用いて光電変換素子(実験例3-2)を作製した。
【0190】
EQEおよび暗電流特性の評価は、半導体パラメータアナライザを用いて行った。具体的には、具体的には、フィルタを介して光源から光電変換素子に照射される光の光量を1.62μW/cm2とし、電極間に印加されるバイアス電圧を-2.6Vとした場合の電流値(明電流値)および光の光量を0μW/cm2とした場合の電流値(暗電流値)をそれぞれ測定し、これらの値から、EQEおよび暗電流特性を算出した。素子に照射する光の波長は、それぞれの有機光電変換層の可視域における極大吸収波長に相当する波長を選択した。選択した光の照射波長は、実験例3-1および実験例3-2いずれも560nmである。
【0191】
表4は、実験例3-1および実験例3-2のEQEおよび暗電流特性をまとめたものである。実験例3-1の数値は、実験例3-2を基準(1.0)とした場合の相対値である。この結果から、実験例3-1は、実験例3-2と比較して、同等のEQEを有すると共に、暗電流特性が改善することがわかった。このことから、有機光電変換層の構成材料として式(1-1)で表される化合物を用いることにより、良好なEQEおよび暗電流特性が得られることがわかった。
【0192】
【0193】
また、実験1の結果から、実験例3-1の有機光電変換層は、幅広い領域の波長を吸収できることがわかっている。これらの結果から、有機光電変換層の構成材料として一般式(1)または一般式(2)で表される化合物を用いることにより、優れた電気特性を有すると共に、光吸収能が高い光電変換素子を作製できることがわかった。
【0194】
以上、実施の形態、変形例1~3および実施例ならびに適用例および応用例を挙げて説明したが、本開示内容は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等において例示した光電変換素子10A等の構成要素、配置および数等は、あくまで一例であり、すべての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素をさらに備えていてもよい。
【0195】
上記実施の形態等では、可視光領域を検出する有機光電変換部20と、赤外光領域の光を検出する無機光電変換部32とが積層された例を示したが、有機光電変換部20は、単独でも用いることができる。
【0196】
また、上記実施の形態等では、下部電極21が1つの電極からなる例を示したが、2つあるいは、3つ以上の複数の電極を用いるようにしてもよい。更に、上記実施の形態等では、半導体基板30の表面(第2面30B)側に多層配線層40を設け、裏面(第1面30A)側から光が入射する、所謂裏面照射型のイメージセンサを例に挙げて本技術を説明したが、本技術は、表面照射型のイメージセンサにも適用できる。
【0197】
更にまた、上記変形例2では、可視光領域を検出する光電変換素子10Dとして、半導体基板30において、赤色光(R)および緑色光(G)を検出し、この半導体基板30の上方に青色光(B)を検出する例を示したが、これに限らない。例えば、半導体基板30において、赤色光(R)を検出し、この半導体基板30の上方に緑色光(G)および青色光(B)をそれぞれ検出する2つの有機光電変換部を設けるようにしてもよい。
【0198】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0199】
なお、本開示は以下のような構成をとることも可能である。以下の構成の本技術によれば、光電変換層を、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を用いて形成するようにしたので、光電変換層における吸収スペクトルの拡大することができるようになり、広範囲な吸収スペクトルを有する光電変換素子および撮像素子を提供することが可能となる。
[1]
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む光電変換層と
を備え、
前記正孔輸送性材料は、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体である
光電変換素子。
【化1】
(R1,R2,R3,R4は、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、カルバゾール基またはその誘導体である。)
[2]
前記光電変換層は、互いに吸収極大波長が異なる複数の有機半導体材料を含み、
前記正孔輸送性材料の吸収極大波長は、前記複数の有機半導体材料の中で最も短波長である、前記[1]に記載の光電変換素子。
[3]
前記正孔輸送性材料は、結晶性を有する、前記[1]または[2]に記載の光電変換素子。
[4]
前記正孔輸送性材料は、へリングボーン型の分子配列をとる、前記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[5]
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第2の有機半導体材料をさらに含む、前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[6]
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第3の有機半導体材料をさらに含む、前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[7]
前記光電変換層は、前記第1の有機半導体材料とは異なる吸収極大波長を有する第2の有機半導体材料および第3の有機半導体材料を含む、前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[8]
前記第1の有機半導体材料、前記第2の有機半導体材料および前記第3の有機半導体材料は、互いに異なる吸収極大波長を有し、
前記第1の有機半導体材料の吸収極大波長は最も短波長である、前記[7]に記載の光電変換素子。
[9]
前記第2の有機半導体材料は、フラーレンまたはフラーレン誘導体であり、
前記第1の有機半導体材料は、前記第2の有機半導体材料のHighest Occupied Molecular Orbital(HOMO)準位よりも浅いHOMO準位を有する、前記[5]乃至[8]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
[10]
前記正孔輸送性材料は、下記式(1-1)~式(1-5)に示した化合物である、前記[1]乃至[9]のうちのいずれかに記載の光電変換素子。
【化2】
[11]
1または複数の有機光電変換部として光電変換素子がそれぞれ設けられている複数の画素を備え、
前記光電変換素子は、
第1電極と、
前記第1電極と対向配置された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、第1の有機半導体材料として青色光を吸収する正孔輸送性材料を含む光電変換層
を有し、
前記正孔輸送性材料は、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるジチエノ[2,3-d:2’,3’-d’]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン誘導体である
撮像素子。
【化3】
(R1,R2,R3,R4は、各々独立して、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフタレン基、フェニルナフタレン基、ビフェニルナフタレン基、ビナタレン基、チオフェン基、ビチオフェン基、ターチオフェン基、ベンゾチオフェン基、フェニルベンゾチオフェン基、ビフェニルベンゾチオフェン基ベンゾフラン基、フェニルベンゾフラン基、ビフェニルベンゾチオフェン基、アルカン基、シクロアルカン基、フルオレン基、フェニルフルオレン基、カルバゾール基またはその誘導体である。)
[12]
各画素には、1または複数の前記有機光電変換部と、前記有機光電変換部とは異なる波長域の光電変換を行う1または複数の無機光電変換部とが積層されている、
前記[11]に記載の撮像素子。
[13]
前記無機光電変換部は、半導体基板に埋め込み形成され、
前記有機光電変換部は、前記半導体基板の第1の面側に形成されている、
前記[12]に記載の撮像素子。
[14]
前記半導体基板は前記第1の面と対向する第2の面を有し、前記第2の面側に多層配線層が形成されている、
前記[13]に記載の撮像素子。
[15]
前記有機光電変換部は可視光領域の光電変換を行い、
前記無機光電変換部は赤外光領域の光電変換を行う、
前記[12]乃至[14]のうちのいずれかに記載の撮像素子。
[16]
各画素では、互いに異なる波長域の光電変換を行う複数の前記有機光電変換部が積層されている、
前記[11]乃至[15]のうちのいずれかに記載の撮像素子。
【0200】
本出願は、日本国特許庁において2019年11月1日に出願された日本特許出願番号2019-200097号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願の全ての内容を参照によって本出願に援用する。
【0201】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。