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特許7595603ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/03 20060101AFI20241129BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20241129BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K8/03
A61K8/891
A61K8/31
A61Q1/04
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022001516
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2018551342の分割
【原出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2022062016
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】62/316,309
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/445,634
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/253,114
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/144,622
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/445,684
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/144,698
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/253,071
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/144,716
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エル-クーリ, リタ ジャーキー
(72)【発明者】
【氏名】エバンクス, ジョディー
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド, ラビア
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520118(JP,A)
【文献】特表2000-501074(JP,A)
【文献】特表2011-507865(JP,A)
【文献】特表2016-503433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0226832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、
(a)以下を含む成分A:
組成物の総重量に対して0.01重量%~60重量%の、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤および/または少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤であって、ヒトの平熱よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤および/または少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤;および
(b)以下を含む成分B:
(i)組成物の総重量に対して0.01重量%~90重量%の、1000cSt~10000000cStの成分Bの粘度を得るのに十分な量の1種以上のシリコーン化合物;
を含み、
成分Aと成分Bは非混和性であり、
成分Aと成分Bは、ケラチン物質に塗布される前に化粧用組成物中で分離しており、成分Aと成分Bがケラチン物質への塗布時に一時的に混和するように化粧品組成物が混合され、ケラチン物質への塗布後、成分Aは成分Bから分離して多層構造をケラチン物質上に形成し、
成分A中のシリコーン含有膜形成剤(複数可)および/または炭化水素含有膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比が1:50~50:1であり、
1種以上のシリコーン化合物が、シリコーンゴム、シリコーン溶液、及びその混合物からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、
成分Aは、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤、並びに/又は多糖、高粘度エステル、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリ水素化ブテン、アクリルポリマー、アクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有ホモポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤を含む、
化粧用組成物。
【請求項2】
顔料をさらに含む、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項3】
無水である、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項4】
成分Aが、組成物の総重量に対して15重量%~60重量%を構成する、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項5】
成分Bが、組成物の総重量に対して0.01重量%~80重量%の、1000cSt~900000cStの粘度を得るのに十分な量の1種以上のシリコーン化合物を含む、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤がシルセスキオキサンを含む、請求項5に記載の化粧用組成物。
【請求項7】
フッ素化物を含まない、請求項1に記載の化粧用組成物。
【請求項8】
(a)請求項1に記載の化粧用組成物;(b)請求項1に記載の化粧用組成物を入れる少なくとも1つの容器;および(c)少なくとも1つのアプリケーターを含む、キット。
【請求項9】
少なくとも1つの容器が、化粧用組成物を混合するように構成される、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
化粧用組成物を混合して、成分Aと成分Bが一時的に混和性である混合組成物を形成することと、混合組成物をケラチン物質に塗布することとを含む、請求項1に記載の化粧用組成物をケラチン物質に塗布する方法。
【請求項11】
ケラチン物質が口唇を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ケラチン物質に塗布した後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、
(a)以下を含む成分A:
組成物の総重量に対して20重量%~40重量%の、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤および/または少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤であって、ヒトの平熱よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度を有し、シルセスキオキサン、アクリレートコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1種のシリコーン含有膜形成剤および/または少なくとも1種の炭化水素含有膜形成剤;および
(b)組成物の総重量に対して10重量%~30重量%の、ジメチコン、ジメチコノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のシリコーン化合物を、1000cSt~900000cStの成分Bの粘度を得るのに十分な量で含む成分B
を含み、
成分Aと成分Bは非混和性であり、
成分Aと成分Bは、ケラチン物質に塗布される前に化粧用組成物中で分離しており、成分Aと成分Bがケラチン物質への塗布時に一時的に混和するように化粧品組成物が混合され、ケラチン物質への塗布後、成分Aは成分Bから分離して多層構造をケラチン物質上に形成し、
成分A中のシリコーン含有膜形成剤(複数可)および/または炭化水素含有膜形成剤(複数可)対成分B中のシリコーン化合物(複数可)の重量比は50:1~1:2である、化粧用組成物。
【請求項13】
化粧用組成物を混合して、成分Aと成分Bが一時的に混和性である混合組成物を形成することと、混合組成物をケラチン物質に塗布することとを含む、請求項12に記載の化粧用組成物をケラチン物質に塗布する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本出願は、両方とも2016年8月31日出願の米国非仮特許出願第15/253114号及び同第15/253071号の部分継続出願であり、これらは、それぞれ2016年5月2日出願の特許出願第15/144622号、同第15/144698号及び同第15/144716号の部分継続出願であり、5つ全ての出願は、2016年3月31日出願の米国仮特許出願第62/316309号の優先権を主張するものである。この出願はまた、両方とも2017年2月28日出願の米国非仮特許出願第15/445684号及び同第15445634号の部分継続出願でもある。各出願の全内容は、本明細書に出典明示により援用される。
【0002】
本発明は、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物に関する。このような組成物は、複数工程の適用プロセスを行う必要なく、多層化粧品に付随する利益を可能にする。
【背景技術】
【0003】
適用するとロングウェアの特性を持つように試みて、ファンデーション、リップスティック及びアイシャドウ等の有色化粧品を含む多くの化粧用組成物が配合されてきた。残念ながら、これらの組成物の多くは、概して、良好なロングウェア/耐移り性並びに良好な適用特性、良好な快適さ及び/又は良好な審美特性(例えば、ツヤ、又はマット特性)の両方は持たない。
【0004】
例えば、リップ製品に関して、MQ樹脂等のシリコン樹脂を含有する市販製品が公知である。このような製品は、良好なロングウェア特性及び/又は耐移り性をもたらすことが公知である。しかし、このような製品は、適用特性に欠陥があり、適用の感触が悪く(例えば、粗さの感触)、MQ樹脂によって形成される膜に起因してツヤ又は光沢性(例えばマット感)に欠陥がある。したがって、該製品に第2の組成物(トップコート)を別々に適用して、組成物の不満足な特性を改善し、製品を消費者に許容できるようにする。更に、製品の消費者への許容が存続するようにトップコート組成物を継続的に再適用する必要があり、これは、常時、手入れ及び再適用を必要とすることから、製品が効果的に「ロングウェア」でないことを意味する。
【0005】
ファンデーションに関しては、該製品は、良好なロングウェア特性及び/又は耐移り性をもたらすことができる。しかし、このようなロングウェア/耐移り性のある製品は、適用特性及び/又は適用時の感触に欠陥があり、かつマット特性も不満足である。
【0006】
したがって、適用時に改善された美容特性、特に良好な耐久性、感触、輝き、明るさ、及び/又はマット感の特性を有する、改善された「単回工程」の化粧用組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物にも関する。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。
【0009】
本発明は、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができるエマルションの形態の化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物にも関する。エマルションの水性相は、不混和性構成要素の一又は複数中に存在しうる。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。
【0010】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる無水化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物にも関する。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。
【0011】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる分散体の形態の化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物にも関する。分散体は水を含有してもよく、又は分散体は無水でもよい。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。
【0012】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる着色化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物にも関する。組成物は更に、不混和性構成要素の一又は複数中に存在しうる少なくとも1つの着色料を含む。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。このような着色組成物は、例えば、リップ組成物(例えば、液体リップ組成物又はリップスティック)、ファンデーション、アイライナー、アイシャドウ、マスカラ、マニキュア液等の化粧用組成物であってもよい。
【0013】
本発明はまた、ケラチン物質(例えば、皮膚、毛髪、睫毛、爪又は口唇)を処置、ケア及び/又はメーキャップするために十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによって、ケラチン物質を処置、ケア及び/又はメーキャップする方法にも関する。
【0014】
本発明はまた、ケラチン物質(例えば、皮膚、毛髪、睫毛、爪又は口唇)の外観を強化するために十分な量の本発明の組成物をケラチン物質に適用することによって、ケラチン物質の外観を強化する方法にも関する。
【0015】
本発明はまた、本発明の組成物を、ケラチン物質(例えば、皮膚、毛髪、睫毛、爪又は口唇)に適用する方法であって、不混和性構成要素が一時的に混和性になるように組成物を混合又はブレンドすることと、一時的に混和性の構成要素を含む組成物をケラチン物質に適用することとを含む方法にも関する。ケラチン物質に適用された後、構成要素が分離してケラチン物質上に多層構造を形成する。
【0016】
本発明はまた、(1)少なくとも1つの容器と、(2)少なくとも1つの塗布器と、(3)ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる少なくとも1つの化粧用組成物であって、適用前に少なくとも2つの不混和性構成要素を含む組成物とを含むキットにも関する。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。好ましくは、少なくとも1つの容器は、少なくとも1つの化粧用組成物中の不混和性構成要素を混合するように構成されている。
【0017】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物、好ましくはファンデーション、アイライナー、アイシャドウ、マスカラ、又はマニキュア液等の組成物であって、少なくとも2つの不混和性構成要素A及びBを含む化粧用組成物にも関する。構成要素Aは、組成物の総重量に対して約0.01重量%から60重量%の、好ましくは60℃未満、好ましくは正常なヒトの体温より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤を含むことが好ましい。好ましい実施態様において、少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤は、多糖、高粘度エステル、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリ水素化ブテン、アクリルポリマー、アクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有ホモポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、並びにこれらの混合物からなる群から選択される膜形成剤を含む。構成要素Bは、組成物の総重量に対して約0.01重量%から90重量%の、好ましくは約1000cStから22000000cStの粘度を実現するのに十分な量の一又は複数のシリコーン化合物を含む。構成要素A中のシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤と構成要素B中のシリコーン化合物との重量比は、好ましくは、約1:50から約50:1、好ましくは約1:50から1.5:1である。
【0018】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、少なくとも2つの不混和性構成要素A及びBを含み、少なくとも1つの顔料及び/又は少なくとも1つのマット化剤を含む化粧用組成物にも関する。好ましい実施態様において、顔料は、好ましくは酸化鉄、酸化チタン、ウルトラマリンブルー及びこれらの組合せからなる群から選択される無機顔料である。好ましい実施態様において、マット化剤は、タルク、シリカ、シリコーンエラストマー、ポリアミド、ワックス、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、少なくとも2つの不混和性構成要素A及びBを含み、構成要素Bが、ケラチン物質への適用後に化粧用組成物にツヤを付与するようにセルフレベリングする化粧用組成物にも関する。
【0020】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、少なくとも2つの不混和性構成要素A及びBを含み、構成要素A及び構成要素Bが、0.001-1kg/mの密度差を有する化粧用組成物にも関する。好ましい実施態様において、構成要素A及び構成要素Bは、0.01-0.6kg/mの密度差を有する。
【0021】
本発明はまた、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物であって、少なくとも2つの不混和性構成要素A及びBを含み、構成要素Aが、M<wMw(ここでw=重量分率、Mw=ポリマーの分子量である)になるようなエンタングルメントの臨界分子量(M)を有する少なくとも1つのポリマーを含む、化粧用組成物にも関する。好ましい実施態様において、構成要素Aは、M<wMw(ここでw=重量分率、Mw=ポリマーの分子量である)になるようなエンタングルメントの臨界分子量(M)を有する少なくとも1つのポリマーを含む。好ましい実施態様において、構成要素Bは、M≦wMw≦10g/mol(ここでw=重量分率、Mw=ポリマーの分子量である)になるようなエンタングルメントの臨界分子量(M)を有する少なくとも1つのポリマーを含む。
【0022】
前述の概要及び以下の詳細な説明は共に、例示及び説明のためのみのものであり、本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書で用いる場合、「少なくとも1」という表現は、一又は複数を意味し、したがって個々の要素並びに混合物/組合せを含む。
【0024】
実施例を実施する以外は、又は別段の指定がない限り、成分の量及び/又は反応条件を表す全ての数は、何れの場合も、用語「約」によって修飾されるものであり、指示された数の10%から15%の範囲内を意味するものと理解されたい。
【0025】
「成膜剤」又は「膜形成剤」は、本明細書で用いる場合、それを適用した基材上に膜を残すポリマー又は樹脂を意味する。
【0026】
「ポリマー」は、本明細書で用いる場合、少なくとも2つのモノマーで構成される化合物を意味する。
【0027】
「置換された」とは、本明細書で用いる場合、少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。置換基の非限定的な例としては、酸素原子及び窒素原子等の原子、並びにヒドロキシル基、エーテル基、アルコキシ基、アシルオキシアルキル基、オキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、カルボン酸基、アミン基、アシルアミノ基、アミド基、ハロゲン含有基、エステル基、チオール基、スルホン酸基、チオ硫酸基、シロキサン基、ヒドロキシアルキル基、及びポリシロキサン基等の官能基が挙げられる。置換基は、更に置換されていてもよい。
【0028】
「揮発性」は、本明細書で用いる場合、約100℃未満の引火点を有することを意味する。
【0029】
「不揮発性」は、本明細書で用いる場合、約100℃超の引火点を有することを意味する。
【0030】
「無水」は、組成物が1%未満しか水を含まないことを意味する。好ましくは、本発明の組成物は、0.5%未満の水しか含まず、最も好ましくは水を含まない。
【0031】
「耐移り性」は、本明細書で用いる場合、例えば飲食時に、例えばガラス、衣類品目又は皮膚等の別の物質との接触によって容易には落ちない組成物が示す特質を指す。耐移り性は、そのような特質を評価する当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、組成物の耐移り性は、「キス」試験によって評価してもよい。「キス」試験は、毛髪、皮膚又は口唇等のヒトケラチン物質へ組成物を適用し、後続して、適用後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15分等、適用してから特定の時間が経過した後、物質(例えば、一枚の紙)を毛髪、皮膚又は口唇に対してこすることを要しうる。同様に、組成物の耐移り性は、組成物を毛髪、皮膚又は口唇へ適用してから特定の時間が経過した後に衣類を着たとき、個人の毛髪、皮膚又は口唇から襟への移動など、着用者から任意の他の基材へ移った製品の量によって評価することができる。次いで、基材(例えば、襟又は紙)へ移った組成物の量を評価し、比較することができる。例えば、大部分の製品が着用者の毛髪、皮膚又は口唇に残っていれば、組成物は耐移り性でありうる。更に、移った量を、市販の組成物等、他の組成物で移った量と比較してもよい。本発明の好ましい実施態様において、毛髪、皮膚又は口唇から基材へ移る組成物はわずかしか無い又は全く無い。
【0032】
「接着性」は、本明細書で用いる場合、適用後に基材に接着する組成物が示す特質を指す。接着性は、そのような特質を評価する当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、接着性について検査するサンプルを、Bioskin基材又はByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)等の表面上に付着させてもよい。乾燥後、一片のASTMクロスハッチテープ(Permacel 99/PA-28060/51596)をサンプル上に置き、180°の角度で取り外すことができる。次いで、テープに接着したサンプルの量を決定することができる。例えば、尺度1-3等の評価尺度を用いて、基材からテープ上へのサンプルの取り外しの度合いを評価することができ、その場合、1を本質的に外れない、2を一部が外れる、3を本質的に完全に外れるとする。
【0033】
用語「耐摩耗性」は、本明細書で用いる場合、手又は衣類又はその他の物理的相互作用でヒトの皮膚をこするような物理的摩耗を指す。また、これは、皮膚上の有効成分を保持する、あるいは、皮膚又はByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)若しくはBioskin等の基材から、摩耗又はその他の物理的相互作用によって有効成分が除去されるのを防止する能力としても説明することができる。
【0034】
組成物における「光沢度」は、本明細書で用いる場合、60°で測定して、100中35以上、例えば40、好ましくは45、55、60又は65(35-65、40-65等の間の全ての範囲及び部分的範囲を含む)の平均光沢度を有する組成物を指す。
【0035】
用語「平均光沢度」は、例えば検査する組成物の層を、50μmから500μmの間の厚さで、Lenetaコントラストカード又は参照名Form1A PenopacのBYK不透明度チャート上に自動スプレッダーを使用してスプレッドすることによって、光沢計を使用して測定することができる光沢度を示す。層は、少なくともカードの白色及び/又は黒色の背景を覆う。付着層を室温で24時間放置して乾燥し、次いで参照名Micro TRI-GLOSSのByk Gardner光沢計を使用して白色の背景上にて60°で光沢度を測定する。この測定(0から100の間)を少なくとも3回繰り返し、平均光沢度は、少なくとも3つの平均である。
【0036】
「粘着性」は、本明細書で用いる場合、基材への適用後に物体へ接着する組成物が示す特質を指す。粘着性は、例えばテクスチャー分析器を使用して、そのような特質を評価する当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、サンプルを基材に適用し、乾燥させ、1/2インチのステンレス鋼ボールプローブ等の物体によって接触することができ、その後、物体の除去に関連する力を測定することができる。
【0037】
「ロングウェア」組成物は、本明細書で用いる場合、長期間の後、肉眼で見たとき、適用時と同じ又はほぼ同じ色がとどまる組成物を指す。ロングウェア特性は、そのような特質を評価する当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、ロングウェアは、組成物を皮膚に適用し、長時間の後で組成物の色を評価することを要する試験によって評価することができる。例えば、組成物の色は、皮膚に適用した直後に評価することができ、次いである程度時間が経過した後でこれらの特性を再評価し、比較することができる。更に、これらの特性を、市販の組成物等の他の組成物と比較して評価してもよい。あるいは又は追加として、ロングウェア特性は、サンプルを適用し、乾燥し、次いでサンプルをこすって、サンプルの除去/損失を決定することによって評価することができる。
【0038】
本発明の組成物は、任意の形態であってもよく、液体又は非液体(半固体、軟らかい固体、固体など)のいずれであってもよい。例えば、ペースト、固体、ゲル、又はクリームであってもよい。組成物は、水中油型若しくは油中水型エマルション等のエマルション、油中水中油型エマルション若しくは水中油中水型エマルション等の多重エマルション、又は固体、硬質若しくは滑らかなゲルであってもよい。本発明の組成物は、例えば、外部又は連続脂肪相を含んでもよい。組成物はまた、スティック又は皿状の成形組成物又はキャストであってもよい。
【0039】
本発明の化粧用組成物及び方法は、本明細書に記載の本発明の必須要素及び制約、並びに本明細書に記載の又はそうでなければパーソナルケアに有用な任意の追加の又は任意選択的な成分、構成要素、又は制約を含むことができる、からなってよい、又はから本質的になってよい。
【0040】
多層構造を形成することができる組成物
本発明の様々な実施態様によれば、ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる化粧用組成物が提供される。このような組成物は、複数工程の適用プロセスを行う必要なく、多層化粧品に付随する利益を可能にする。例えば、このような組成物は、ファンデーション、下塗り、アイシャドウ及びその他の皮膚用組成物として適することができ、かつ/又はリップスティック、リップグロス、リップバーム及びその他のリップ用組成物として適することができる。
【0041】
本発明の一又は複数の実施態様によれば、本発明の化粧用組成物は、以下、「構成要素A」及び「構成要素B」と呼ぶ、少なくとも2つの構成要素を含む。一又は複数の実施態様において、構成要素A及び構成要素Bは両方とも、シリコーンを含む。構成要素Aは、例えば、シリコーン含有膜形成剤を含んでもよい。構成要素Bは、例えば、シリコーンゴムを含んでもよい。いくつかの実施態様において、構成要素Aは、炭化水素膜形成剤を含み、構成要素Bは、シリコーン化合物を含む。ここでも、構成要素Bは、例えば、シリコーンゴムを含んでもよい。一又は複数の実施態様において、構成要素Aは、シリコーン含有膜形成剤及び炭化水素含有膜形成剤の両方を含みうる。
【0042】
構成要素Aは、組成物をケラチン物質へ適用した後、ケラチン物質に最も近い多層構造の層を形成する本発明の組成物の構成要素である。多層構造のこの層を、以下、「層A」と呼ぶ。好ましい実施態様によれば、構成要素A/層Aは、2つの間の表面エネルギー特性に起因するケラチン物質の表面に対する親和性を有する。
【0043】
構成要素Bは、組成物をケラチン物質へ適用した後、ケラチン物質から最も遠い多層構造の層を形成する本発明の組成物の構成要素である。多層構造のこの層を、以下、「層B」と呼ぶ。好ましい実施態様によれば、構成要素B/層Bは、空気界面に対して親和性を有する。
【0044】
本発明によれば、構成要素A及び構成要素Bに関する本明細書に記載の全重量及び比率は、これらの構成要素中の活性物質(すなわち、不揮発性物質)の量を指す。同様に、層A及び層Bに関する本明細書に記載の全重量及び比率は、層A及び層Bが、揮発性溶媒が蒸発した後に存在する場合の活性物質の量を指す。
【0045】
ケラチン物質へ適用する前、構成要素A及び構成要素Bは、本発明の組成物中で不混和性である。好ましくは、不混和性構成要素の不混和性は、組成物を静置したときの2構成要素間の非相溶性、ケラチン物質へ適用した後の2構成要素間の非相溶性、又は両方に起因する。
【0046】
一又は複数の実施態様において、不混和性構成要素の不混和性は、例えば、粘度、ガラス転移温度、界面張力、溶解度パラメーター、密度、及び/若しくは構成要素の化学的/構造的非相溶性における差、並びに/又は温度及び/若しくは圧力によって誘発される差等の差に起因する。
【0047】
例えば、組成物を静置したときの不混和性構成要素の不混和性は、例えば、化学的/構造的非相溶性、構成要素間の界面張力の差(例えば、互いに相溶性の溶媒内の相間の界面張力の差など)、粘度の差、各相内のポリマーのガラス転移温度の差並びに/又は温度及び/若しくは圧力によって誘発される差に起因しうる。
【0048】
例えば、組成物を適用したときの不混和性構成要素の不混和性は、例えば、化学的/構造的非相溶性、構成要素間の界面張力の差、溶媒の蒸発後の構成要素の密度における差、並びに/又は温度及び/若しくは圧力によって誘発される差に起因しうる。
【0049】
一又は複数の実施態様において、ケラチン物質への適用直前及び/又は適用中、本発明の組成物をケラチン物質に適用する際に、構成要素A及び構成要素Bが一時的に混和性になるように、本発明の組成物を混合又はブレンドする。
【0050】
本発明の組成物をケラチン物質に適用した後、構成要素Aは構成要素Bから分離する。組成物を適用したケラチン物質上で組成物が乾燥したら、不混和性構成要素A及び構成要素Bは、それぞれ、層A及び層Bを含む多層構造を、例えば以下のようなケラチン物質上に形成する:
【0051】
本発明の一又は複数の実施態様によれば、本発明の組成物をケラチン物質に適用した後、構成要素Bは、平らな層Bをもたらし、すなわち、組成物にツヤを付与するための屈折特性を有するように、層Bは平面である。これらの実施態様によれば、構成要素Bは、セルフレベリング特性を有し、適用後に平らな層Bをもたらす。このような組成物のツヤは、必要に応じて、高屈折率特性を有する一又は複数のツヤ又は光沢強化剤を添加することによって強化することができる。あるいは、このような組成物は、一又は複数のマット化剤を添加することによってマット特性を持つことができる。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物をケラチン物質に適用した後、構成要素Bは、平らでない層Bをもたらし、すなわち、組成物にマット特性が付与されるように、層Bは平面ではない。これらの実施態様によれば、構成要素Bは、セルフレベリング特性を有さず、適用後に平らでない層Bをもたらす。このような組成物のマット特性は、必要に応じて、一又は複数のマット化剤を添加することによって強化することができる。あるいは、このような組成物は、高屈折率特性を有する一又は複数のツヤ又は明るさ又は光沢強化剤を添加することによってツヤ又は明るさ又は光沢の特性を持つことができる。組成物の別の利点は、基層/下塗りとして使用した場合、組成物のセルフレベリングの性質は、滑らかな表面をもたらすことができ、それによって皮膚の欠陥の外観を低減することができることでありうる。
【0053】
本発明によれば、多層構造は、層A及び層Bを含む。場合によっては、成分比率、成分濃度、溶媒蒸発特性、及びポリマーのTg等の要素に応じて、層は、ケラチン物質へ適用した後、互いにわずかに混ざりあうこともあり、より多くの量のA及びより少ない量のBを有する層A、並びに/又はより多くの量のB及びより少ない量のAを有する層Bが生じる。好ましくは、層Aは、層Bを40%以下、好ましくは層Bを30%以下、好ましくは層Bを20%以下、好ましくは層Bを10%以下、好ましくは層Bを5%以下含む(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)。同様に、好ましくは、層Bは、層Aを40%以下、好ましくは層Aを30%以下、好ましくは層Aを20%以下、好ましくは層Aを10%以下、好ましくは層Aを5%以下含む(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)。
【0054】
ケラチン物質に適用した後の構成要素A及び構成要素Bの分離に影響を与える要素としては、例えば、これらに限定されないが、基材の表面エネルギー、各構成要素の密度、溶媒の蒸発特性、成膜剤のTg、及び/又は成膜剤の粘度を含む上記の特性を挙げることができる。
【0055】
特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、構成要素Aは、構成要素Bよりも、適用されるケラチン物質の表面エネルギーの特性に近い表面エネルギー特性を有すると考えられる。例えば、皮膚の表面エネルギーは、36mN/mであると推定される。これに応じて、構成要素Aが約36mN/mの表面エネルギーを有する場合、構成要素Aが皮膚に移動することができると考えられる。構成要素Bは、好ましくは、より低い表面エネルギーを有すると考えられ、空気界面に向かって移動すると考えられる傾向が強くなる。
【0056】
特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、構成要素A及びBの界面張力が、相分離(特に、適用後に構成要素A及びBが分離する比率)に影響を与えると考えられる。このような相分離は、例えば、構成要素A及びBの温度における差、構成要素A及びBのTgにおける差(構成要素のTgが高いほど、相分離にかかる時間が長い)、成膜剤の重量分率における差、並びに/又は構成要素A及びBの圧力における差などの上記のような差によって影響されうると考えられる。
【0057】
このような差は、以下でも更に考察する。
【0058】
ガラス転移温度(Tg)
好ましい実施態様によれば、構成要素A及び/又は構成要素Bは、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F又は37℃)未満の少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤を含む。好ましくは、構成要素A及び/又は構成要素Bは、ヒトの体温(98.6°F又は37℃)未満のガラス転移温度全てを有する少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤を含む。当技術分野で公知の膜形成剤のTgを調節するために可塑剤を添加してもよい。好ましい実施態様によれば、層A及び層Bは両方とも、37℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1つの膜形成剤を含む。
【0059】
Tgを決定する好ましい方法は、層から全ての揮発性溶媒を除去し、示差走査熱量測定法によってTgを決定するものである。
【0060】
密度
好ましい実施態様によれば、構成要素A及び構成要素Bは、異なる密度特性を有し、その差は、構成要素A及び構成要素Bが、本発明の組成物中で不混和性であるようなものである。好ましくは、構成要素A/層A及び構成要素B/層Bは、0.001-1kg/m、好ましくは0.005-0.8kg/m、好ましくは0.01-0.6kg/m(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の密度差を有する。
【0061】
温度
好ましい実施態様によれば、構成要素A及び構成要素Bは、温度による影響を受け、その影響は、当技術分野において公知のように、構成要素A及び構成要素Bが、所定の時間、50℃未満の温度で、本発明の組成物中で不混和性であるようなものであり、このような条件下で安定性であると考えられるエマルションとは異なる。
【0062】
重量分率
好ましい実施態様によれば、構成要素A及び/又は構成要素Bは、例えば、以下のようなエンタングルメントの臨界分子量(M)を有する膜形成剤などの少なくとも1つのポリマーを含む:
【0063】
構成要素A中に存在する場合、少なくとも1つのポリマーは、M<wMwであり、ここでw=重量分率であり、Mw=ポリマーの分子量であり、
【0064】
構成要素B中に存在する場合、少なくとも1つのポリマーは、M≦wMw≦10g/molを有する。
【0065】
更に、好ましい実施態様によれば、構成要素B中の少なくとも1つのポリマーの粘度は、350cSt超、好ましくは500cSt超、好ましくは750cSt超、好ましくは1000cSt超であり、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む。
【0066】
成分
構成要素A及び構成要素Bは、主に層A及び層Bに関連する異なる機能に基づいて様々に異なりうる。例えば、層Aが、耐移り性又は粘着機能を実行する場合、構成要素Aの成分は、耐移り性又は粘着性をもたらすように選択することができる。同様に、層Aが、着色強化機能を実行する場合、少なくとも1つの着色料を構成要素Aに添加してもよい。また、例えば、層Bが、光沢又はツヤ強化機能を実行し、かつ/又はより良好な感触を与え(例えば、より快適な感触を与える)、かつ/又は色移りを阻害するためのバリア層を付与する場合、構成要素Bの成分は、光沢、ツヤ、快適さ、及び/又はバリア層特性をもたらすように選択することができる。しかし、層A及び層Bの界面で、層Aの界面は、より層Bに関連する特性(例えば、ツヤ)を持ち、一方で、層Bは、より層Aに関連する特性(例えば、粘着性)を持つことがあることを理解されたい。
【0067】
好ましい実施態様によれば、構成要素Aは、少なくとも1つのシリコーン及び/若しくは炭化水素含有膜形成剤、少なくとも1つの着色料、又は両方を含み、層Aは、多層構造に対して粘着性、耐移り性、及び/又は色特性をもたらす。このような実施態様によれば、構成要素Bは、少なくとも1つのツヤ強化剤、少なくとも1つの快適さ付与剤、及び/又は少なくとも1つのバリア剤を含んでよく、層Bは、多層構造に対してツヤ、快適さ及び/又はバリア特性をもたらす。
【0068】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、1%未満のワックス及び/又は1%未満のフッ素化化合物を含有する。
【0069】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、0.5%未満のワックス及び/又は0.5%未満のフッ素化化合物を含有する。
【0070】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ワックス及び/又はフッ素化化合物を含まない。
【0071】
好ましい実施態様によれば、同じ溶媒のうちの少なくとも1を構成要素A及び構成要素B中に使用する。好ましくは、各構成要素中に存在する全溶媒のうち、各構成要素中の大部分が同じである。
【0072】
好ましい実施態様によれば、構成要素Aと構成要素Bとの重量比は、例えば、1:50から1.5:1、1:75から1.5:1、1:50から1.5:1、1:20から1.5:1、1:50から50:1、1:75から20:1、1:50から10:1、又は1:20から10:1であり、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む。
【0073】
構成要素A及び/又は構成要素Bに添加される許容可能な成分の例を以下で考察する。
【0074】
膜形成剤(成膜剤)
本発明の組成物は、少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤を含んでよい。シリコーン及び炭化水素含有膜形成剤は、当技術分野において公知であり、任意のシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤を使用してよい。好ましい実施態様によれば、60℃未満の、好ましくは55℃未満の、好ましくは50℃未満、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤が、本発明の組成物中に含まれる。好ましくは、少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤は、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)未満の全ガラス転移温度を有する。少なくとも1つのシリコーン及び/又は炭化水素含有膜形成剤のTg特性は、例えば、シリコーン及び/若しくは炭化水素含有膜形成剤それ自体のTg、Tg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための異なる膜形成剤の組合せ、又はTg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための膜形成剤及び可塑剤の組合せなど、当技術分野で公知の様々な方法から得ることができる。
【0075】
好ましい実施態様によれば、膜形成剤は、好ましくは、膜形成剤を含む構成要素の総重量の約0.05重量%から約90重量%、好ましくは0.08重量%から80重量%、好ましくは0.1重量%から60重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0076】
好ましい実施態様によれば、膜形成剤は、好ましくは、膜形成剤を含む構成要素の総重量の約0.01重量%、0.05重量%、0.08重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%から約20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%の量で存在する。
【0077】
好ましい実施態様によれば、膜形成剤は、好ましくは、組成物の総重量の約0.1重量%から60重量%、好ましくは0.2重量%から55重量%、好ましくは0.3重量%から50重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0078】
炭化水素含有膜形成剤(成膜剤)
本発明の組成物は、少なくとも1つの炭化水素含有膜形成剤を含んでもよい。本明細書で用いる場合、「炭化水素含有膜形成剤」は、少なくとも約2.5、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、又は99重量%の炭化水素を含む膜形成剤を指す。一又は複数の実施態様によれば、炭化水素含有膜形成剤は、約5%未満又は約1%未満のシリコーン基又はシロキサン基を含み、好ましくはシリコーン基もシロキサン基も含まない。
【0079】
炭化水素含有膜形成剤は、当技術分野において公知であり、任意の炭化水素含有膜形成剤を使用してよい。好ましい実施態様によれば、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1つの炭化水素含有膜形成剤が、本発明の組成物中に含まれる。好ましくは、少なくとも1つの炭化水素含有膜形成剤は、60℃未満、好ましくは55℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)より低いガラス転移温度全てを有する。少なくとも1つの炭化水素含有膜形成剤のTg特性は、例えば、炭化水素含有膜形成剤それ自体のTg、Tg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための異なる膜形成剤の組合せ、又はTg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための膜形成剤及び可塑剤の組合せなど、当技術分野で公知の様々な方法から得ることができる。
【0080】
許容可能な部類の炭化水素含有膜形成剤の例としては、アクリルポリマー、アクリレートコポリマー、ビニルピロリドン(VP)含有ホモポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0081】
アクリルポリマー
許容可能なアクリルポリマー膜形成剤は、当技術分野において公知であり、これらに限定されないが、全内容が本明細書に出典明示により援用される米国特許出願第2004/0170586号及び米国特許出願第2011/0020263号に開示されるものが挙げられる。
【0082】
本明細書で用いられる「アクリルポリマー成膜剤」は、膜形成剤であるポリマーを指し、一又は複数の(メタ)アクリル酸(及び/又は対応する(メタ)アクリレート)モノマー又は類似モノマーをベースとする。更なる実施態様において、アクリルポリマー成膜剤は、シリコーン基もシロキサン基も一切含有しない。
【0083】
このような膜形成剤の非限定的な代表例としては、少なくとも1つの無極性モノマー、少なくとも1つのオレフィン系不飽和モノマー、及び少なくとも1つのビニル系官能化モノマーを含有するコポリマーが挙げられる。
【0084】
無極性モノマーには、4から14個のC原子、好ましくは4から9個のC原子で構成されるアルキル基を有するアクリル及びメタクリルエステルを含むアクリルモノマーが好ましい。この種のモノマーの例としては、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ノニル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、及びこれらの分岐鎖異性体(例えば、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)がある。
【0085】
オレフィン系不飽和モノマーには、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン酸基、ホスホン酸基、酸無水物、エポキシド、及びアミンから選択される官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。オレフィン系不飽和モノマーの特に好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸、ベータ-アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、ビニル酢酸、ビニルホスホン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、アリルアルコール、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0086】
ビニル系官能化化合物の場合、好ましいモノマーとしては、前述のモノマーのいずれか又は両方と共重合性のモノマーが挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸tert-ブチルフェニル、メタクリル酸tert-ブチルフェニル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸n-ウンデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸3,5-ジメチルアダマンチル、メタクリル酸4-クミルフェニル、アクリル酸シアノエチル、メタクリル酸シアノエチル、アクリル酸4-ビフェニル、メタクリル酸4-ビフェニル、アクリル酸2-ナフチル、メタクリル酸2-ナフチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸2-ブトキシエチル、メタクリル酸2-ブトキシエチル、アクリル酸メチル3-メトキシ、アクリル酸3-メトキシブチル、アクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2-フェノキシエチル、ブチルジグリコールメタクリレート、アクリル酸エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート350、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート500、プロピレングリコールモノメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングルコールメタクリレート、N-(1-メチルウンデシル)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(n-オクタデシル)アクリルアミド、並びにN,N-ジアルキル置換アミド(例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド等)、N-ベンジルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-オクチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエーテル(ビニルメチルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、塩化ビニル、ハロゲン化ビニル等)、塩化ビニリデン、ハロゲン化ビニリデン、ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルピロリドン、スチレン、a-及びp-メチルスチレン、a-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、マクロモノマー(2-ポリスチレンエチルメタクリレート(分子量Mw:4000-13000g/mol)、ポリ(メチルメタクリレート)エチルメタクリレート(Mw:2000-8000g/mol)等)が挙げられる。
【0087】
アクリルポリマーの例としては、アクリル酸、アクリル酸イソブチル及び酢酸イソボルニルのコポリマー(Pseudoblock(Chimex)及びSynamer-3の名称で販売されているもの等)がある。これら両方の市販製品において、コポリマーが溶媒と1:1の比率(50%固体)で存在する。別の好ましい成膜剤は、50%のオクチルドデシルネオペンタノエート(Chimex製のMexomere PAZ)中、50%の活性物質でのポリ(メタクリル酸イソボルニル-8co-アクリル酸イソボルニル-co-アクリル酸イソブチル-co-アクリル酸)である。
【0088】
ビニルピロリドンポリマー
許容可能なビニルピロリドンポリマーとしては、ビニルピロリドンホモポリマー及びビニルピロリドンコポリマーが挙げられる。このようなホモポリマー及びコポリマーは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。例えば、特に好適なポリマーは、ポリマーACP-10等のビニルピロリドンホモポリマーである。更なる例としては、アルファ-オレフィン及びビニルピロリドンから生成されるコポリマーが挙げられ、コポリマーは、ビニルピロリドン及びアルキル構成要素を含有し、好ましくは少なくとも1つのC4-C30部分(置換又は非置換)を、好ましくはコポリマーの10から80パーセントの濃度で含有する。市販コポリマーの好適な例としては、Ganexの名称でAshlandから入手可能なもの、例えばVP/エイコセン(GANEX V-220)及びVP/トリコンタニルコポリマー(GANEX WP660)等が挙げられる。
【0089】
シリコーン含有膜形成剤(成膜剤)
本発明の組成物は、少なくとも1つのシリコーン含有膜形成剤を含んでもよい。本明細書で用いる場合、「シリコーン含有膜形成剤」は、シリコーンを含有する膜形成剤を指す。一又は複数の実施態様において、「シリコーン含有膜形成剤」は、少なくとも約2.5重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%のシリコーンを含有するポリマーを含む。シリコーン含有膜形成剤は、当技術分野において公知であり、任意のシリコーン含有膜形成剤を使用してよい。好ましい実施態様によれば、60℃未満の、好ましくは55℃未満の、好ましくは50℃未満の、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)より低い少なくとも1つのガラス転移温度を有する少なくとも1つのシリコーン含有膜形成剤が、本発明の組成物中に含まれる。好ましくは、少なくとも1つのシリコーン含有膜形成剤は、60℃未満の、好ましくは55℃未満の、好ましくは50℃未満の、好ましくは正常なヒトの体温(98.6°F)より低いガラス転移温度の全てを有する。少なくとも1つのシリコーン含有膜形成剤のTg特性は、例えば、シリコーン含有膜形成剤それ自体のTg、Tg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための異なる膜形成剤の組合せ、又はTg(例えば、正常なヒトの体温より低いTg)を実現するための膜形成剤及び可塑剤の組合せなど、当技術分野で公知の様々な方法から得ることができる。
【0090】
許容可能な部類のシリコーン含有膜形成剤の例としては、シリコーン樹脂、シリコーンアクリレートコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0091】
シリコーン樹脂
本明細書で用いる場合、用語「樹脂」は、架橋又は非架橋三次元構造を意味する。シリコーン樹脂の命名法は、当技術分野において「MDTQ」命名法として公知であり、それによりシリコーン樹脂は、ポリマーを構成する様々な単量体シロキサン単位に従って説明される。
【0092】
「MDTQ」の各文字は、異なるタイプの単位を意味する。文字Mは、単官能性単位(CHSiO1/2を意味する。この単位は、単官能基と見なされるが、その理由は、単位がポリマーの一部であるとき、シリコーン原子のみが酸素上で共有するからである。「M」単位は、以下の構造で表すことができる:
【0093】
M単位の少なくとも1つのメチル基を別の基で置き換えて、例えば、以下の構造で表されるような式[R(CH]SiO1/2を有する単位を得ることができる:
【0094】
式中、Rは、メチル基以外の基から選択される。メチル基以外のこのような基の非限定的な例としては、メチル基以外のアルキル基、アルケン基、アルキン基、ヒドロキシル基、チオール基、エステル基、酸性基、エーテル基が挙げられ、メチル基以外の基は、更に置換されてもよい。
【0095】
記号Dは、二官能性単位(CHSiO2/2を意味し、シリコーン原子に結合している2個の酸素原子が、ポリマーの残基に結合するために使用される。「D」単位は、ジメチコン油の主要な構成要素であり、以下のように表すことができる:
【0096】
D単位のメチル基のうちの少なくとも1を別の基で置き換えて、例えば、式[R(CH]SiO1/2を有する単位を得ることができる。
【0097】
記号Tは、三官能性単位(CH)SiO3/2を意味し、以下のように表すことができる:
【0098】
T単位のメチル基のうちの少なくとも1を別の基で置き換えて、例えば、式[R(CH]SiO1/2を有する単位を得ることができる。
【0099】
最後に、文字Qは、四官能性単位SiO4/2を意味し、ケイ素原子は、ポリマーの残基にそれら自体で結合する4個の水素原子に結合する。
【0100】
したがって、莫大な数の異なるシリコーンポリマーを製造することが可能である。更に、可能性のあるシリコーンポリマーそれぞれの特性が、モノマーのタイプ、置換基のタイプ、ポリマー鎖のサイズ、架橋度、及び任意の側鎖のサイズによって異なることが、当業者には明確であろう。
【0101】
シリコーンポリマーの非限定的な例としては、シロキシケイ酸及びシルセスキオキサンが挙げられる。
【0102】
シロキシケイ酸の非限定的な例は、以下の式:
[(CHXSiXO]X(SiO4/2
(すなわち、MQ単位)で表すことができるトリメチルシロキシケイ酸であり、式中、x及びyは、例えば、50から80の範囲であってよい。一方、シルセスキオキサンは、以下の式:
(CHSiO3/2
(すなわち、T単位)で表すことができ、式中、xは、例えば、数千までの値を有してよい。
【0103】
樹脂MQは、Wacker、General Electric及びDow Corningから入手可能であり、許容可能な市販のシロキシケイ酸の例である。例えば、トリメチルシロキシケイ酸(TMS)は、General Electricから商標名SR1000で市販され、Wackerから商標名TMS803で市販されている。TMSはまた、例えば、シクロメチコン等の溶媒中でDow Chemicalからも市販されている。しかし、本発明によれば、TMSは、100%活性物質の形態で、すなわち溶媒中に無い形態で使用してもよい。
【0104】
本発明による少なくとも1つのT単位を含む好適なシリコン樹脂は、例えば、全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許出願公開第2007/0166271号、同第2011/0038820号、同第2011/0002869号、及び同第2009/0214458号に開示されている。
【0105】
したがって、シリコーン樹脂が少なくとも1つのT単位を含有する場合、それは、例えば、T、MT、MTQ又はMDTQ樹脂でありうる。
【0106】
好ましい実施態様によれば、シリコーン樹脂の単位組成は、少なくとも50%のT単位、又は少なくとも70%のT単位、又は少なくとも80%のT単位、又は少なくとも90%のT単位であってよい。
【0107】
上に例として挙げたM、D及びT単位において、メチル基のうちの少なくとも1を置換してもよい。好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの(R)SiO3/2の三官能性単位を含む少なくとも1つのシリコーン樹脂は、式((R’)SiO3/2のシルセスキオキサンから選択され、式中、xは100から500の範囲であり、R’は、少なくとも1つのR’が炭化水素系基であるという条件で、三官能性単位より独立して、1-10個の炭素原子を含む炭化水素系基又はヒドロキシル基から選択される。好ましい実施態様によれば、1-10個の炭素原子を含む炭化水素系基は、メチル基である。好ましい実施態様によれば、式(R)SiO3/2の少なくとも1つの三官能性単位を含む少なくとも1つのシリコーン樹脂が、式((R’)SiO3/2のシルセスキオキサンから選択され、式中、xは100-500の範囲であり、R’は、少なくとも1つのR’が炭化水素系基であるという条件で、単位より独立して、CH、2-10個の炭素原子を含む炭化水素系基又はヒドロキシル基から選択される。
【0108】
好ましい実施態様によれば、T樹脂は、シリコーンの総量に対して少なくとも80mol%又は少なくとも90mol%がT単位になるようにM、D及びQ単位を含有してよい。T樹脂は、ヒドロキシル基及び/又はアルコキシ基も含有しうる。T樹脂は、総重量が2%-10%の範囲のヒドロキシル官能基及び総重量が20%以下でありうるアルコキシ官能基を有してよく、いくつかの実施態様では、ヒドロキシル官能基の総重量が4%-8%の範囲であり、アルコキシ官能基の総重量が10%以下でありうる。
【0109】
シリコーン樹脂は、以下の式:((CH)SiO3/2で表されるシルセスキオキサンから選択することができ、T単位の定義で前述したように、式中、xは、数千以下であってよく、CH基は、R基で置き換えてもよい。シルセスキオキサンのT単位の数xは、500以下であってよく、又は50から500の範囲であってよく、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む。シリコーン樹脂の分子量は、約500、1000、5000、10000、15000又は20000g/molから約30000、35000、40000、45000、50000、75000又は100000g/molの範囲であってよく、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む。
【0110】
これらの少なくとも1つのT単位を含有するシリコーン樹脂の好適な例として、以下を挙げることができる:
【0111】
式((R)SiO3/2(T単位)のポリシルセスキオキサン(式中、xは100超であり、R基は、独立に、メチル又は上記で定義された他の置換基であってよい);
【0112】
Rがメチル基であるポリシルセスキオキサンである、ポリメチルシルセスキオキサン。このようなポリメチルシルセスキオキサンは、例えば、全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5246694号に記載されている;
【0113】
Rがプロピル基である、ポリプロピルシルセスキオキサン。これらの化合物及びそれらの合成は、例えば、全内容が本明細書に出典明示により援用される、特許出願国際公開第2005/075567号に記載されている;及び
【0114】
Rがフェニル基である、ポリフェニルシルセスキオキサン。これらの化合物及びそれらの合成は、例えば、全内容が本明細書に出典明示により援用される、特許出願US2004/0180011号に記載されている。
【0115】
挙げることができる市販のポリメチルシルセスキオキサン樹脂の例としては:
【0116】
Wacker社から参照名Resin MKで販売されているもの、例えばBelsil PMS MK:1重量%以下の(CHSiO2/2単位(D単位)も含みうる、CHSiO3/2繰り返し単位(T単位)を含み、平均分子量が約10000g/molのポリマー。ポリマーは、以下の図に表すような「ケージ」及び「ハシゴ」構成であると考えられる。「ケージ」構成中の単位の平均分子量は、536g/molと計算された。大部分のポリマーは、両端にエトキシ基を有する「ハシゴ」構成である。これらのエトキシ基は、ポリマーの4.5質量%を占める。これらの末端基が水と反応することができるため、変動可能な少量のSiOH基も存在しうる;並びに
【0117】
式CHSiO3/2のT単位で構成され、Si-OH(シラノール)末端基を有する、信越化学工業株式会社により参照名KR-220Lで販売されているもの、及び98%のT単位及び2%のジメチルD単位を含み、Si-OH末端基を有する、参照名KR-242Aで販売されているもの、又は代替的には、88%のT単位及び12%のジメチルD単位を含み、Si-OH末端基を有する参照名KR-251で販売されているもの
が含まれる。
【0118】
挙げることができる市販のポリプロピルシルセスキオキサン樹脂の例としては:
【0119】
Dow Corning社により参照名Dow Corning 670 Fluid又は680 Fluidで販売されているものが含まれる。典型的には、このような市販製品は、揮発性炭化水素油等の揮発性油又はD5等のシリコーン油中に希釈されたポリプロピルシルセスキオキサンである。Dow Corning 670及び680 Fluidは、一般式RSiO(4-n)/2を有し、式中、Rは、独立に、水素原子と、3個の炭素原子を含む一価の炭化水素基から選択され、80モル%超のRはプロピル基であり、nは1.0-1.4の値であり、60モル%超のコポリマーは、RSiO3/2単位を含み、0.2-10重量%、例えば1から4重量%の間、好ましくは5から10重量%の間、より好ましくは6から8重量%の間の含量のヒドロキシル又はアルコキシを有する。好ましくは、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂は、約5000、7000、10000、15000、20000、25000から約30000、50000、75000、100000g/molの分子量、約37℃未満の、約-100、-50、-37、又は-20から約37℃のTgを有する。
【0120】
挙げることができる市販のポリフェニルシルセスキオキサン樹脂の例としては:
【0121】
シラノール末端基を有するポリフェニルシルセスキオキサンである、Dow Corning社から参照名Dow Corning 217 Flake Resinで販売されているもの;及び
Wacker社から参照名Belsil SPR 45 VPで販売されているものが含まれる。
【0122】
シリコーンアクリレートコポリマー
好適なシリコーンアクリレートコポリマーは、シロキサン基及び炭化水素基を含むポリマーを含む。いくつかの実施態様では、このようなシリコーンアクリレートコポリマーは、少なくとも約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%のシリコーンを含む。例えば、好適なポリマーは、例えば、ビニルポリマー、メタクリルポリマー、及び/又はアクリルポリマーから選択される主鎖等の炭化水素主鎖、並びにペンダントシロキサン基から選択される少なくとも1つの鎖を含むポリマーと、シロキサン基の主鎖、並びに例えば、ペンダントビニル、メタクリル及び/又はアクリル基等の少なくとも1つのペンダント炭化水素鎖を含むポリマーとを含む。
【0123】
少なくとも1つのシリコーンアクリレートコポリマーは、シリコーン/(メタ)アクリレートコポリマー、例えば、全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5061481号、同第5219560号、及び同第5262087号、並びに米国特許出願第2012/0301415号に記載されるものから選択することができる。
【0124】
少なくとも1つのシリコーンアクリレートコポリマーは、少なくとも1つの極性(メタ)アクリレート単位の繰り返し単位を含む非極性シリコーンコポリマー及び少なくとも1つの非極性シリコーン鎖でグラフトされたビニルコポリマーから誘導されるポリマーから選択することができる。このようなコポリマーの非限定的な例として、アクリレート/ジメチコンコポリマー、例えば信越化学工業株式会社から市販されているもの、例えば、商標名KP-545(シクロペンタシロキサン(及び)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-543(酢酸ブチル(及び)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-549(メチルトリメチコン(及び)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-550(INCI名:イソドデカン(及び)アクリレート/ジメチコンコポリマー)、KP-561(アクリレート/アクリル酸ステアリル/ジメチコンアクリレートコポリマー)、KP-562(アクリレート/アクリル酸ベヘニル/ジメチコンアクリレートコポリマー)で販売されている製品、及びこれらの混合物がある。追加の例としては、Dow Corningから商標名FA4001CM SILICONE ACRYLATE(シクロペンタシロキサン(及び)アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートのコポリマー)及びFA4002ID SILICONE ACRYLATE(イソドデカン(及び)アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレートのコポリマー)で販売されているアクリレート/ジメチコンコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0125】
このようなポリマー及びそれらの合成の更なる非限定的な例は、例えば、全開示が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第4972037号、同第5061481号、同第5209924号、同第5849275号、及び同第6033650号、並びにPCT出願国際公開第93/23446号、国際公開第95/06078号及び国際公開第01/32737号に開示されている。これらのポリマーは、様々な会社から供給されうる。このような会社の一つは、これらのタイプのポリマーを商標名「Silicone Plus」ポリマー(例えば、商標名SA70-5 IBMMFで販売されているポリ(メタクリル酸イソブチル-co-メチルFOSEA)-g-ポリ(ジメチルシロキサン))で販売しているMinnesota Mining and Manufacturing Companyである。
【0126】
有用なシリコーンアクリレートコポリマーのその他の非限定的な例としては、シリコーン/アクリレートグラフトターポリマー、例えば、開示が本明細書に出典明示により援用される、PCT出願国際公開第01/32727号に記載されるコポリマーが挙げられる。
【0127】
その他の有用なポリマーとしては、開示が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5468477号に記載されるものが挙げられる。これらのポリマーの非限定的な例には、3M社から商標名VS70 IBMで市販されている、ポリ(ジメチルシロキサン)-g-ポリ(メタクリル酸イソブチル)がある。
【0128】
好適なシリコーンアクリレートコポリマーとしては、開示が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5061481号、同第5219560号、及び同第5262087号に記載されるもの等のシリコーン/(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる。更に、シリコーン成膜剤の更なる非限定的な例には、少なくとも1つの極性(メタ)アクリレート単位の繰り返し単位を含む非極性シリコーンコポリマー及び少なくとも1つの非極性シリコーン鎖でグラフトされたビニルコポリマーがある。このようなコポリマーの非限定的な例には、信越化学工業株式会社から市販されているもの、例えば、商標名KP-545で販売されている製品等のアクリレート/ジメチコンコポリマーがある。
【0129】
本発明における使用に好適なシリコーン成膜剤のその他の非限定的な例には、開示が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第6045782号、同第5334737号、及び同第4725658号に開示されている、式(A)及び(B)の単位を含むシリコーンエステルがある:
SiO[4-(a+b)/2] (A);及び
R’ SiO1/2 (B)
式中、
R及びR’は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、置換されていてもよい炭化水素基から選択され、
a及びbは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0から3の範囲の数であるが、但しa及びbの合計は1から3の範囲の数であり、
x及びyは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、0から3の範囲の数であるが、但しx及びyの合計は1から3の範囲の数であり、
は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、少なくとも1つのカルボン酸エステルを含む基から選択される。
【0130】
好ましい実施態様によれば、R基は、少なくとも1つの酸と少なくとも1つのアルコールとの反応から形成される少なくとも1つのエステル基を含む基から選択される。好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの酸は、少なくとも2個の炭素原子を含む。好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのアルコールは、少なくとも10個の炭素原子を含む。少なくとも1つの酸の非限定的な例としては、イソステアリン酸等の分岐鎖酸、及びベヘン酸等の直鎖酸が挙げられる。少なくとも1つのアルコールの非限定的な例としては、一価アルコール及び多価アルコール(n-プロパノール等)及び分岐鎖エーテルアルカノール((3,3,3-トリメチロールプロポキシ)プロパン等)が挙げられる。
【0131】
少なくとも1つのシリコーンアクリレートコポリマー成膜剤の更なる非限定的な例としては、液体シロキシケイ酸及びシリコーンエステル、例えば開示が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第5334737号に開示されているもの、例えばジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシケイ酸及びジラウロイルトリメチロールプロパンシロキシケイ酸(それぞれ、General Electricから商標名SF1318及びSF1312で市販されている)が挙げられる。
【0132】
本発明の一又は複数の実施態様によれば、構成要素Aは、少なくとも1つのシリコーンアクリレート及び少なくとも1つのシリコーン樹脂を含む。好ましくは、少なくとも1つのシリコーン樹脂は、ポリプロピルシルセスキオキサン樹脂である。
【0133】
シリコーン化合物
一又は複数の実施態様において、本発明の組成物は、少なくとも1つのシリコーン化合物を含む。好ましくは、構成要素Bは、膜形成剤ではない一又は複数のシリコーン化合物を含む。また、好ましくは、少なくとも1つのシリコーン化合物は、別の構成要素中の膜形成剤より低い表面エネルギーを有する。そのため、例えば、構成要素Bが、膜形成剤ではない少なくとも1つのシリコーン化合物を含有する場合、シリコーン化合物は、好ましくは、構成要素A中の膜形成剤より低い表面エネルギーを有する。
【0134】
シリコーン化合物は、例えば、最低限1個の酸素、より更なる実施態様では2個の酸素に結合したケイ素を含む高分子であってよい。いくつかの実施態様において、ケイ素は、メチル、エチル、プロピル、及びフェニル等の炭化水素(例えば、C1-22直鎖、分岐鎖、及び/又はアリール)に結合している。一又は複数の実施態様において、シリコーン化合物は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。いくつかの実施態様において、シリコーン化合物自体は、直鎖、分岐鎖又は樹枝状であってよい。更なる実施態様において、シリコーン化合物は、直鎖又は実質的に直鎖である。一又は複数の実施態様において、シリコーン化合物は、炭化水素、アルコール、エステル、酸、ケトン、アミン、アミド、エポキシ、ビニル性(例えば、アルケン又はアルキン基)、ハロゲン、水素化物等からなる群から選択される鎖末端を含む。例えば、シリコーン化合物がポリジメチルシロキサンを含む実施態様において、化合物は、OH又はメチル基で終わる鎖末端であってもよい。
【0135】
一又は複数の実施態様において、用語「シリコーン化合物」は、これらに限定されないが、シリコーンゴム、シリコーン溶液、及びシリコーンワックスを含む。シリコーン化合物は、存在する場合、組成物に特性を付与することができる(例えば、ツヤ又はマット感の品質を強化する)。一又は複数の実施態様において、シリコーン化合物は、約1000cSt超及び/又は約22000000cSt未満の粘度を実現するのに十分な量で存在する。いくつかの実施態様において、粘度は、約1000、5000、10000、20000、30000、40000、50000又は60000cStから約100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、5000000、10000000又は22000000cStの範囲であり、これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む。
【0136】
ツヤ/明るさ強化剤
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのツヤ強化剤を、構成要素A、構成要素B、又は両方に添加することができる。好ましくは、ツヤ強化剤は、層のセルフレベリングを促進する作用剤、高い屈折率を有する作用剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。以下に記述するように、このようなツヤ強化剤は、上記のシリコーン化合物であってよい。
【0137】
皮膚用の組成物、特にファンデーション組成物の場合、このようなツヤ強化剤は、本明細書に記載の組成物に発光及び/又はみずみずしさをもたらす効果(dewy effect)を付与することができる。例えば、ファンデーションの一動向は、完全にマットな外観のものではなく、みずみずしさ/輝きを付与するファンデーション(特に輝きが長持ちするもの)である。これは、通常、配合物に油又は真珠を添加することによって実現されるが、このような配合物は長持ちすることができない。本明細書に記載の組成物は、みずみずしさ/輝きのある外観であり、それはまた長持ちであるという両方を兼ねそろえることができる。
【0138】
好適なツヤ強化剤としては、屈折率が約1.45から1.60の範囲であり、重量平均分子量が好ましくは15000未満、好ましくは10000未満、好ましくは2000未満の化合物が挙げられる。このような作用剤の例として、これらに限定されないが、Goldschmidtにより商標名「ABIL AV8853」で市販されているもの、Dow Corningにより商標名「DC554」、「DC555」、「DC556」及び「SF558」で市販されているもの、並びにRhone-Poulencにより商標名「SILBIONE70633V30」で市販されているもの等のフェニル化シリコーンが挙げられる。
【0139】
好適なフェニル化シリコーンの追加の例としては、これらに限定されないが、BELSIL PDM20(25℃での粘度が約20cStのフェニル化シリコーン);BELSIL PDM200(25℃での粘度が約200cStのフェニル化シリコーン);BELSIL PDM1000(25℃での粘度が約1000cStのフェニル化シリコーン)等のWacker Siliconesにより市販されているものが挙げられる。
【0140】
好適なツヤ強化剤の追加の例としては、これらに限定されないが、ポリシクロペンタジエン、ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾエート(nD=1.5345)、アミノプロピルフェニルトリメチコン(nD=1.49-1.51)、ExxonMobilからPURESYN4E68として市販されているペンタエリスリチルテトラオレイン酸(nD=1.473)、及びCroda Inc.からCRODAMOL STSとして市販されているミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル(nD=1.4696)が挙げられる。
【0141】
特に好ましいツヤ強化剤には、フェニルトリメチコン及びトリメチルペンタフェニルトリシロキサン等のフェニル化シリコーン、並びにペンタエリスリチルテトラオレイン酸及びミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル等のエステルがある。
【0142】
好適なツヤ強化剤としては、本発明の組成物にセルフレベリング特性を与えるものが挙げられる。このような組成物の好適な例としては、これらに限定されないが、下記のシリコーンゴムが挙げられる。
【0143】
シリコーンゴムは、次式に対応することができる:
式中:
、R、R11及びR12は、同一又は異なっており、それぞれ、1-6個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
及びR10は、同一又は異なっており、それぞれ、1-6個の炭素原子を含むアルキル基及びアリール基から選択され、
Xは、1-6個の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル基及びビニル基から選択され、
n及びpは、シリコーンゴムに、350cStから50000000cSt、好ましくは500cStから40000000cSt、好ましくは750cStから30000000cSt、好ましくは850cStから20000000cSt、好ましくは950cStから18000000cSt、好ましくは1000cStから10000000cSt(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の粘度を与えるように選択される。特に好ましい範囲は、20000cStから800000cStであり、25000cStから750000cStが最も好ましい。
【0144】
一般に、n及びpは、それぞれ、0から10000、例えば0から5000の範囲の値を取ることができる。
【0145】
本発明に従って使用することができるシリコーンゴムの中でも:
【0146】
General Electric社により名称SE30で販売又は製造されている製品等の、置換基RからR12及びXがメチル基を表し、p=0及びn=2700のもの、
【0147】
Wacker社により名称AK500000で販売又は製造されている製品等の、置換基RからR12及びXがメチル基を表し、p=0及びn=2300のもの、
【0148】
Dow Corning社により名称Q2-1401で販売又は製造されている製品等の、シクロペンタシロキサン中の13%溶液としての、置換基RからR12がメチル基を表し、置換基Xがヒドロキシル基を表し、p=0及びn=2700のもの、
【0149】
Dow Corning社により名称Q2-1403で販売又は製造されている製品等の、ポリジメチルシロキサン中の13%溶液としての、置換基RからR12がメチル基を表し、置換基Xがヒドロキシル基を表し、p=0及びn=2700のもの、並びに
【0150】
ゴムの分子量が約600000になるような、置換基R、R、R11、R12及びXがメチル基を表し、置換基R及びR10がアリール基を表すもの、例えばRhone-Poulenc(Rhodia Chimie)社により名称761で販売又は製造されている製品を挙げることができる。
【0151】
好ましい実施態様において、シリコーンゴムは、次式に対応する:
【0152】
この式中、末端Si(複数)はメチル以外であってもよく、繰り返しSi上の置換基で表すことができ、したがって、R基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、アミル、ヘキシル、ビニル、アリル、シクロヘキシル、フェニル、及びこれらの混合物から選択される直鎖、分岐鎖及び/又は官能化でありうる、1-6個の炭素原子のアルキルである。本発明において用いられるシリコーンゴムは、式R’のトリオルガノシリル基で終わっていてもよく、式中のR’は、1-6個の炭素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基及びこれらの混合物を含有する一価の炭化水素の基である。
【0153】
好ましい実施態様によれば、構成要素B/層Bは、少なくとも1つのツヤ(光沢)強化剤を含む。
【0154】
好ましい実施態様によれば、構成要素B/層Bは、セルフレベリング特性を有し、結果として層A及び層B間並びに/又は層B及び空気間の界面がより平らになり、このより平らな界面は、組成物のツヤを強化する層Bに光回折、屈折及び/又は反射特性をもたらす。
【0155】
本発明の好ましい実施態様によれば、シリコーン溶液(例えば、上記のフェニル化シリコーン)及び/又はシリコーンゴム等の少なくとも2つのシリコーン化合物が、本発明の組成物中に存在する。
【0156】
好ましい実施態様によれば、シリコーンゴム等の層のセルフレベリングを促進する作用剤は、存在する場合、好ましくは、組成物の総重量の約0.01重量%から約90重量%、好ましくは1重量%から85重量%、好ましくは5重量%から80重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0157】
好ましい実施態様によれば、フェニル化シリコーン油等の屈折率が高い作用剤は、存在する場合、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%から約90重量%、好ましくは0.1重量%から75重量%、好ましくは1重量%から50重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0158】
本発明の好ましい実施態様によれば、シリコーン溶液(例えば、上記のフェニル化シリコーン)及び/又はシリコーンゴム等の少なくとも2つのシリコーン化合物が、本発明の組成物中に存在する。
【0159】
好ましい実施態様によれば、ツヤ強化剤は、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%から約90重量%、好ましくは0.1重量%から50重量%、好ましくは1重量%から35重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0160】
マット強化剤(マット化剤)
本発明好ましい実施態様によれば、少なくとも1つのマット強化剤を、構成要素A、構成要素B、又は両方に添加することができる。構成要素Bに関して、構成要素Bがセルフレベリングでないかどうか、かつ/又は層Bが屈折特性を有するかどうかにかかわらず、少なくとも1つのマット強化剤を添加して、上記の組成物にマット特性を付与することができる。
【0161】
好適なマット強化剤としては、これらに限定されないが、例えば、タルク、シリカ、シリコーンエラストマー、及びポリアミド等のマット化フィラー、並びに例えば、蜜蝋及びブラジルロウヤシ(copernicia cerifera、カルナウバ)蝋等のワックスが挙げられる。
【0162】
好ましい実施態様によれば、マット強化剤は、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%から約90重量%、好ましくは0.1重量%から50重量%、好ましくは1重量%から35重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0163】
水性相
本発明の組成物はまた、任意選択的に水も含有してもよい。水は、存在する場合、組成物の総重量に対して約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、又は80重量%から約40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、85重量%又は90重量%の範囲の量で存在してよい。いくつかの実施態様において、組成物は、乳化剤を含まない。したがって、組成物中に存在する水は、構成要素A及びBの相から分離した相を生成することができる。このような実施態様において、組成物は三相性である。いくつかの他の実施態様において、水は、乳化剤が存在していなくても、構成要素A又はBの相のうちの一つに存在していてよい。
【0164】
特定の水溶性作用剤は、水性相に存在しうる。例えば、組成物は、水性相中に、水溶性又は水分散性のラテックス及びポリマーを含みうる。
【0165】
ソフトフォーカス剤
一又は複数の実施態様によれば、本明細書に記載の組成物は、ソフトフォーカス剤を含む。本明細書で用いる場合、用語「ソフトフォーカス」は、皮膚の外観はより均一かつマットであり、皮膚の欠陥の不鮮明化又は隠蔽につながることを意味する。
【0166】
いくつかの実施態様において、少なくともソフトフォーカス剤は、疎水性シリカエーロゲル粒子から選択することができる。シリカエーロゲルは、シリカゲルの液体成分を(乾燥することにより)空気と置き換えることによって得られる多孔質物質である。
【0167】
本開示の実施態様に従って有用な疎水性シリカエーロゲル粒子には、シリル化されたシリカ(INCI名:シリル化シリカ)エーロゲル粒子が挙げられる。シリル化によって表面修飾された疎水性シリカエーロゲル粒子の調製は、本明細書に出典明示により援用される、米国特許第7470725号により完全に記載されている。様々な実施態様において、トリメチルシリル基で表面修飾された疎水性シリカのエーロゲル粒子を選択してもよい。例えば、その粒子が、約1000ミクロンの平均サイズを有し、600-800m/gの範囲の質量単位当たりの比表面積を有する、Dow Corning社により名称VM-2260(登録商標)で販売されているエーロゲル、又はその粒子が、5-15ミクロンの範囲の平均サイズを有し、600-800m/gの範囲の質量単位当たりの比表面積を有する、同様にDow Corning社により名称VM-2270(登録商標)で販売されているエーロゲルを選択することができる。他の実施態様において、Cabot社により名称Aerogel TLD201(登録商標)、Aerogel OGD201(登録商標)、及びAerogel TLD203(登録商標)、CAB-O-SIL TS-530、CAB-O-SIL TS-610、CAB-O-SIL TS-720、Enova Aerogel MT1100(登録商標)、並びにEnova Aerogel MT1200(登録商標)で販売されているエーロゲルを選択してもよい。
【0168】
その他のソフトフォーカス剤は、全内容が本明細書に出典明示により援用される、国際公開第2016/100690号で確認することができる。
【0169】
好ましい実施態様によれば、ソフトフォーカス剤は、存在する場合、好ましくは、組成物の総重量の約0.05重量%から約20重量%、好ましくは0.1重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在する。
【0170】
着色料
本発明の一又は複数の実施態様によれば、少なくとも1つの着色料を更に含む組成物が提供される。好ましくは、このような着色組成物は、例えば、ファンデーション又はアイシャドウ等の化粧用組成物であってもよい。このような実施態様によれば、少なくとも1つの着色料は、顔料、染料、真珠箔、及びパール化剤から選択することができる。
【0171】
本発明に従って使用することができる顔料は、白色、着色、無機、有機、高分子、非高分子、被覆及び非被覆顔料から選択することができる。無機顔料の代表例には、二酸化チタン、任意選択的に表面処理した、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、及びフェリックブルーが挙げられる。有機顔料の代表例には、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、及びカーマイン系レーキ、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、及びアルミニウムが挙げられる。
【0172】
本発明において有用な無機顔料の代表例としては、色指数において参照名CI77891で符号化されたルチル型及びアナターゼ型二酸化チタン;参照名CI77499、77492及び77491で符号化された、黒色、黄色、赤色及び茶色酸化鉄;マンガンバイオレット(CI77742);ウルトラマリンブルー(CI77007);酸化クロム(CI77288);クロム水和物(CI177289);並びにフェリックブルー(CI77510)とこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0173】
本発明において有用な有機顔料及びレーキの代表例としては、これらに限定されないが、D&C赤色19号(CI45170)、D&C赤色9号(CI15585)、D&C赤色21号(CI45380)、D&C橙色4号(CI15510)、D&C橙色5号(CI45370)、D&C赤色27号(CI45410)、D&C赤色13号(CI15630)、D&C赤色7号(CI15850)、D&C赤色6号(CI15850)、D&C黄色5号(CI19140)、D&C赤色36号(CI12085)、D&C橙色10号(CI45425)、D&C黄色6号(CI15985)、D&C赤色30号(CI73360)、D&C赤色3号(CI45430)、及びカーマイン系の染料又はレーキ(CI75570)並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0174】
本発明において有用な真珠光沢顔料の代表例としては、白色真珠光沢顔料(酸化チタンで被覆されたマイカ、二酸化チタンで被覆されたマイカ、オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化チタン等)、着色真珠光沢顔料(酸化鉄、フェリックブルー、酸化クロム等で被覆されたチタンマイカ、上記のタイプの有機顔料で被覆されたチタンマイカ等)、及びオキシ塩化ビスマス系のもの、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0175】
本発明に従って使用できる真珠泊は、白色真珠泊(チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ等)、着色真珠泊(酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、フェリックブルー又は酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、上記のものから選択される有機顔料で被覆されたチタンマイカ等)、及びオキシ塩化ビスマス系の真珠泊から選択することができる。真珠泊は、存在する場合、組成物の総重量の50重量%以下、例えば0.1重量%から20重量%、好ましくは0.1重量%から15重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の範囲の濃度で存在する。
【0176】
着色料は、存在する場合、組成物の総重量の50重量%以下、例えば0.01重量%から40重量%、更には例えば0.1重量%から30重量%の範囲(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の濃度で組成物中に存在してよい。特定の製品の場合、真珠泊を含めた顔料は、例えば、組成物の50重量%以下を占めてよい。
【0177】
着色料(例えば、無機若しくは有機顔料又は真珠光沢剤)を含まない又は比較的少量の着色料しか含まない実施態様が、皮膚用の下塗りとして好適でありうる。本明細書で用いる場合、「下塗り」又は「アンダーコート」は、後続の化粧品層を適用する前の、物質(例えば、皮膚)に塗布される予備被覆である。下塗りは、これらの後続の層の表面への接着を良好にし、耐性を向上させることができる。また、皮膚の下塗りは、特に長寿命の観点で物質の更なる保護ももたらすことができる。皮膚の下塗りは、特に本明細書に開示される組成物を含むものを付けることにより持続する色の強度の退色、しわから後続の化粧層の整合性の保存を助けることもできる。追加として、下塗りは、均一なアンダーコートをもたらし、多くの場合、後続するコーティングの色及びテクスチャーの均一性を向上させることができる。したがって、このような下塗りは、別のファンデーション又はアイシャドウ組成物のベースとして作用することができ、滑らかさを増加する、又は他の組成物のより良好な接着を助ける。このような下塗りはまた、マット化剤又はエラストマー(例えば、シリコーンエラストマー)も含んでよい。
【0178】
油性相
本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの脂肪物質を更に含む組成物が提供される。好適な脂肪物質には、油及び/又はワックスが含まれる。「油」は、環境温度(25℃)及び大気圧(760mmHg)で液体の任意の非水性媒体を意味する。本開示の目的のための「ワックス」は、環境温度(25℃)で固体であり、固体から液体状態に可逆的に変化する親油性脂肪化合物であり、30℃超、例えば45℃超の融点(150℃と同等に高い場合もあり)、環境温度で0.5MPa超の硬度、及び固体状態で異方性結晶組織を有する。ワックスを融点にすることによって、ワックス自体のみでキャリアとして使用することが可能であり、かつ/又はワックスを油と混和性にして、光顕的に均一な混合物を形成することが可能である。
【0179】
好適な油は、揮発性及び/又は不揮発性油を含む。このような油は、これらに限定されないが、シリコーン油及び/又は炭化水素油を含めた任意の許容可能な油であってもよい。
【0180】
特定の実施態様によれば、本発明の組成物は、好ましくは、一又は複数の揮発性シリコーン油を含む。このような揮発性シリコーン油の例としては、室温での粘度が6cSt以下であり、2-7個のケイ素原子を有し、これらのケイ素が1-10個の炭素原子のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい、直鎖又は環状シリコーン油が挙げられる。本発明において使用してもよい特定の油としては、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン及びこれらの混合物が挙げられる。使用可能な他の揮発性油には、粘度が6cStのKF96A、引火点が94℃の信越化学工業株式会社(Shin Etsu)製の市販製品が挙げられる。好ましくは、揮発性シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0181】
揮発性シリコーン油の非限定的な例を、以下の表1に列挙する。
表1
【0182】
更に、揮発性直鎖シリコーン油を本発明において使用してもよい。好適な揮発性直鎖シリコーン油としては、内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第6338839号及び国際公開第03/042221号に記載のものが挙げられる。一実施態様において、揮発性直鎖シリコーン油は、デカメチルテトラシロキサンである。別の実施態様では、デカメチルテトラシロキサンは更に、デカメチルテトラシロキサンより揮発性の別の溶媒と組み合わせられる。
【0183】
本発明の特定の実施態様によれば、組成物は、好ましくは、一又は複数の揮発性非シリコーン油を含み、揮発性炭化水素油、揮発性エステル及び揮発性エーテルから選択することができる。このような揮発性非シリコーン油の例としては、これらに限定されないが、8-16個の炭素原子を有する揮発性炭化水素油及びこれらの混合物、特に分岐鎖C-C16アルカン、例えばC-C16イソアルカン(イソパラフィンとしても公知)、イソヘキサデカン、イソドデカン、イソデカン、並びに、例えば、商標名Isopar又はPermethylで販売されている油が挙げられる。好ましくは、揮発性非シリコーン油は、少なくとも40℃の引火点を有する。
【0184】
揮発性非シリコーン油の非限定的な例を以下の表2に列挙する。
表2
【0185】
溶媒/油の揮発度は、内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第6338839号に記載の蒸発速度を用いて決定することができる。
【0186】
本発明の特定の実施態様によれば、組成物は、少なくとも1つの不揮発性油を含む。本発明において使用してもよい不揮発性油の例としては、これらに限定されないが、極性油、例えば:
- グリセロールの脂肪酸エステルからなり、その脂肪酸が、様々な鎖長を有し得、これらの鎖は直鎖又は分岐鎖であり、飽和又は不飽和でありうる、トリグリセリド含量が高い、炭化水素系植物油(これらの油は、特に、コムギ胚種油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、カリテバター、ヒマシ油、甘扁桃油、マカダミア油、アンズ油、ダイズ油、ナタネ油、綿実油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ油、マロー油、アボカド油、ヘーゼルナッツ油、ブドウ種油、ブラックカラント種子油、月見草油、キビ油、オオムギ油、キノア油、オリーブ油、ライムギ油、サフラワー油、ククイ油、パッションフラワー油若しくはジャコウバラ油;又はカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、例えばStearineries Dubois社により販売されているもの若しくはDynamit Nobel社により名称Miglyol 810、812及び818で販売されているものである);
- 式RCOOR(式中、Rは、1-40個の炭素原子(7-19個の炭素原子を含む)を含有する直鎖又は分岐鎖高級脂肪酸残基を表し、Rは、1-40個の炭素原子(3-20個の炭素原子を含む)を含有する分岐鎖炭化水素系鎖を表し、R+R≧10である)の合成油又はエステル、例えば、Purcellin oil(オクタン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、C12-C15安息香酸アルキル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、及びアルコール又はポリアルコールのオクタン酸、デカン酸又はリシノール酸エステル;ヒドロキシル化エステル、例えば乳酸イソステアリル又はリンゴ酸ジイソステアリル;並びにペンタエリスリトールエステル;
- 10-40個の炭素原子を含む合成エーテル;
- C-C26脂肪アルコール、例えばオレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセテアリルアルコール;並びに
- これらの混合物
が挙げられる。
【0187】
更に、本発明において使用してもよい不揮発性油の例としては、これらに限定されないが、非極性油、例えば分岐鎖及び非分岐鎖炭化水素及び炭化水素ワックス(ポリオレフィン、特にVaseline(ペトロラタム)、パラフィン油、スクアラン、スクアレン、水素化ポリイソブテン、水素化ポリデセン、ポリブテン、鉱油、ペンタヒドロスクアレン、及びこれらの混合物を含む)が挙げられる。
【0188】
一又は複数の実施態様において、本発明の化粧用組成物は、少なくとも1つの高粘度エステルも含有しうる。その例としては、これらに限定されないが、糖及び関連物質のC-C30モノエステル及びポリエステルが挙げられる。これらのエステルは、糖又はポリオール部分及び一又は複数のカルボン酸部分から誘導される。構成要素の酸及び糖によって、これらのエステルは、室温で液体又は固体のいずれかの形態をとることができる。好適な液体エステルには、これらに限定されないが、テトラオレイン酸グルコース、ダイズ油脂肪酸(不飽和)のグルコーステトラエステル、混合ダイズ油脂肪酸のマンノーステトラエステル、オレイン酸のガラクトーステトラエステル、リノール酸のアラビノーステトラエステル、テトラリノール酸キシロース、ペンタオレイン酸ガラクトース、テトラオレイン酸ソルビトール、不飽和ダイズ油脂肪酸のソルビトールヘキサエステル、ペンタオレイン酸キシリトール、テトラオレイン酸スクロース、ペンタオレイン酸スクロース、ヘキサオレイン酸スクロース、ヘプタオレイン酸スクロース、オクタオレイン酸スクロース、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な固体エステルには、これらに限定されないが、カルボン酸エステル部分が、モル比1:2のパルミトレイン酸及びアラキン酸である、ソルビトールヘキサエステル;カルボン酸エステル部分が、モル比1:3のリノール酸及びベヘン酸である、ラフィノースのオクタエステル;エステル化カルボン酸部分が、モル比3:4のヒマワリ種子油脂肪酸及びリグノセリン酸である、マルトースのヘプタエステル;エステル化カルボン酸部分が、モル比2:6のオレイン酸及びベヘン酸である、スクロースのオクタエステル;並びにエステル化カルボン酸部分が、モル比1:3:4のラウリン酸、リノール酸及びベヘン酸である、スクロースのオクタエステルを挙げることができる。実施態様において、エステルは、エステル化度が7-8であり、脂肪酸部分がC18モノ-及び/又はジ-不飽和ベヘン酸のものであり、不飽和物質:ベヘン酸のモル比が1:7から3:5である、スクロースポリエステルである。別の実施態様では、糖ポリエステルは、分子中に約7つのベヘン酸の脂肪酸部分及びオレイン酸部分がある、スクロースのオクタエステルである。その他の物質として、綿実油又はダイズ油のスクロース脂肪酸エステルを含むことができる。
【0189】
一又は複数の実施態様において、高粘度のエステルは、スクロース酢酸イソブチルを含む。好適なスクロース酢酸イソブチル化合物の一例は、Eastman(登録商標)(TN州Kingsport)から市販されているSAIB-100(登録商標)である。このエステルは、30℃で約100000cpsの粘度を有し、20℃で約1.5の屈折率を有する。アクリルポリマー
【0190】
好ましい実施態様によれば、少なくとも1つの油は、存在する場合、組成物の総重量に基づいて、約5から約60重量%、より好ましくは約10から約50重量%、最も好ましくは約15から約35重量%の範囲(これらの範囲内の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で、本発明の組成物中に存在する。
【0191】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1つのワックスを更に含む。本開示に従って使用することができるワックスの好適な例としては、化粧品分野において一般に使用されるものが挙げられ、それらは天然由来のもの、例えば、蜜蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、オウリカリ蝋、木蝋(Japan wax)、コルク繊維蝋又はサトウキビ蝋、コメ蝋、モンタン蝋、パラフィン蝋、亜炭ワックス又は微晶蝋、セレシン又はオゾケライト、及び硬化ヒマシ油又はホホバ油等の硬化油;エチレンの重合又は共重合から得られるポリエチレンワックス等の合成ワックス、及びフィッシャー-トロプシュワックス、あるいはステアリン酸オクタコサニル等の脂肪酸エステル、30℃、例えば40℃で固まるグリセリドを含む。
【0192】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1つのシリコーンワックスを更に含む。好適なシリコーンワックスの例としては、これらに限定されないが、10-45個の炭素原子を範囲とするアルキル又はアルコキシ鎖を有するアルキル又はアルコキシジメチコン、30℃で固体であり、そのエステル鎖が少なくとも10個の炭素原子を含むポリ(ジ)メチルシロキサンエステル、Hetereneにより名称HEST 2T-4Sで販売又は製造されているジ(1,1,1-トリメチロールプロパン)テトラステアレート等のシリコーンワックス;式(RR’SiO1/2(R”SiO3/2(式中、x及びyは、0.05から0.95の値を有し、Rは、1-8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、カルビノール基、又はアミノ基であり、Rは、9-40個の炭素原子を有する一価の炭化水素であり、R”は、1-8個の炭素原子を有する一価の炭化水素基、アリール基である)を有する、少なくとも40モル%のシロキシ単位を含むアルキル化シリコーンアクリレートコポリマーワックス、例えば全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許出願第2007/0149703号に開示されるもの(特に例としてC30-C45アルキルジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン);及びこれらの混合物が挙げられる。
【0193】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1つの長鎖アルコールワックスを更に含む。好ましくは、少なくとも1つの長鎖アルコールワックスの平均炭素鎖長は、約20から約60個の炭素原子、最も好ましくは約30から約50個の炭素原子である。長鎖アルコールワックスの好適な例としては、これらに限定されないが、Baker Hughesから、例えば、Performacol 350、425及び550等のPerformacol商標名で市販されているアルコールワックスが挙げられる。最も好ましくは、長鎖アルコールワックスは、約93℃から約105℃の範囲の融点を有する。
【0194】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、1%未満のワックスしか含有しない。
【0195】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、0.5%未満のワックスしか含有しない。
【0196】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ワックスを含有しない。
【0197】
ワックス(一又は複数)は、存在する場合、組成物の総重量に対して1-30重量%の範囲、例えば2-20重量%、例えば3-10重量%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の量で存在しうる。
【0198】
追加の添加剤
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、皮膚又は口唇等のケラチン物質に適用する組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、化粧用組成物中に典型的に含まれる成分、例えば、水、有効成分、保湿剤、界面活性剤及びフィラー等を含有することができる。したがって本発明の組成物は、検討分野で通常使用される任意の添加剤を含むことができる。例えば、ポリ(12-ヒドロキシステアリン酸)等の分散剤、酸化防止剤、精油、日焼け止め剤、保存剤、香料、フィラー、中和剤、化粧及び皮膚科用有効成分(例えば、皮膚軟化剤、保湿剤、ビタミン、必須脂肪酸、界面活性剤、シリコーンエラストマー、増粘剤、ゲル化剤、粒子、ペースト状化合物、粘性増加剤等)を添加することができる。このような成分の限定的なリストを、全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許出願公開第2004/0170586号で確認することができる。好適な追加の構成要素の更なる例は、本出願に出典明示により援用したその他の参考文献で確認することができる。更に、このような追加の成分の更なる例は、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(第9編、2002年)で確認することができる。
【0199】
当業者は、本発明による組成物の有利な特性が、想定される添加によって悪影響を受けないように、又は実質的に悪影響を受けないように、任意選択的な追加の添加剤及び/又はそれらの量を注意深く選択するであろう。
【0200】
これらの物質は、所望の特性、例えば粘稠性又はテクスチャーを有する組成物を調製するために、当業者によって様々に選択されうる。
【0201】
これらの添加剤は(存在する場合)、組成物の総重量に対して0%から99%(0.01%から90%等)、更には、例えば0.1%から50%(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の比率で、組成物中に存在しうる。
【0202】
一又は複数の実施態様において、本発明の組成物は、化粧又は皮膚科での使用として許容可能であり、すなわち、非毒性の生理的に許容可能な媒体を含有すべきであり、人間の皮膚に適用できるものでなければならない。
【0203】
特に、油性相に好適なゲル化剤には、これらに限定されないが、親油性又は親水性粘土が挙げられる。
【0204】
用語「親水性粘土」は、水中で膨張可能な粘土を意味し、この粘土は、水中で膨張し、水和後にコロイド分散系を形成する。これらの粘土は、それ自体が既に周知の製品であり、例えば、その教示が参照により本明細書に含まれる、書籍「Mineralogie des argiles」、S.Caillere、S.Henin、M.Rautureau、第2編、1982年、Massonに記載されている。粘土は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム及びリチウムカチオン、並びにこれらの混合物から選択することができるカチオンを含有するシリケートである。挙げることができる該製品の例としては、スメクタイト族(モンモリロナイト、ヘクトライト、ベントナイト、バイデライト及びサポナイト等)並びにバーミキュライト、ステベンサイト及びクロライト族の粘土が含まれる。これらの粘土は、天然起源でも合成起源でもよい。
【0205】
挙げることができる親水性粘土には、サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト及びバイデライト等のスメクタイト製品が含まれる。挙げることができる親水性粘土には、合成ヘクトライト(ラポナイトとしても公知)、例えばLaporte社により名称Laponite XLG、Laponite RD及びLaponite RDS(これらの製品は、ケイ酸ナトリウムマグネシウム、特にケイ酸ナトリウムリチウムマグネシウムである)で販売されている製品;ベントナイト、例えばRheox社により名称Bentone HCで販売されている製品;特に水和したケイ酸マグネシウムアルミニウム、例えばVanderbilt社により名称Veegum Ultra、Veegum HS及びVeegum DGTで販売されている製品、又はケイ酸カルシウム、特に会社により名称Micro-cel Cで販売されている合成形態の製品が含まれる。
【0206】
用語「親油性粘土」は、親油性媒体中で膨張可能な粘土を意味し、この粘土は、媒体中で膨張し、それによってコロイド分散系を形成する。挙げることができる親油性粘土の例には、改質ケイ酸マグネシウム(Rheox製のBentone Gel VS38)、C10-C22脂肪酸塩化アンモニウムで修飾されたヘクトライト、例えばRheox社により名称Bentone 38 CE又はElementis社によりBentone 38V(登録商標)で販売されている塩化ジステアリルジメチルアンモニウムで修飾されたヘクトライト(CTFA名:ジステアルジモニウムヘクトライト)等の改質粘土が含まれる。
【0207】
特に、使用してもよいゲル化剤の中でも、シリカ粒子を挙げることができる。好ましくは、シリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子である。
【0208】
好適なシリカとしては、これらに限定されないが、任意選択的に疎水性表面が処理されていてもよい、粒径が1ミクロン未満、好ましくは500nm未満、好ましくは100nm未満、好ましくは5nmから30nm(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の焼成シリカ等の疎水性シリカが挙げられる。実際、シリカの表面上に存在するシラノール基の数を減少させる化学反応によって、シリカの表面を化学的に改質することが可能である。シラノール基は、特に、疎水性基と置き換えることができ、次いで疎水性シリカが得られる。疎水性基は:
【0209】
特にヘキサメチルジシラザンの存在下で焼成シリカを処理することによって得られる、トリメチルシロキシ基(この方法で処理されたシリカは、CTFA(第6編、1995年)に準拠して「シリル化シリカ」と呼ばれる。これらは、例えば、Degussa社製の参照名「AEROSIL R812(登録商標)」、Cabot社製の「CAB-O-SIL TS-530(登録商標)」が市販されている。);
【0210】
特にポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下で焼成シリカを処理することによって得られる、ジメチルシリルオキシル基又はポリジメチルシロキサン基(この方法で処理されたシリカは、CTFA(第6編、1995年)に準拠して「ジメチルシリル化シリカ」と呼ばれる。これらは、例えば、Degussa社製の参照名「AEROSIL R972(登録商標)」、「AEROSIL R974(登録商標)」、Cabot社製の「CAB-O-SIL TS-610(登録商標)」、「CAB-O-SIL TS-720(登録商標)」が市販されている。)
であってもよい。
【0211】
好適な皮膚軟化剤としては、これらに限定されないが、以下:鉱油、植物油及び動物油;脂肪及びワックス;脂肪アルコール及び酸、並びにこれらのエステル;(ポリ)アルキレングリコールのエステル及びエーテル;ペトロラタム及びスクアラン等の炭化水素;ラノリンアルコール及びその誘導体;動物及び植物トリグリセリド;並びにステアリルアルコール等の天然油及び合成油を挙げることができる。非限定的な例としては、これらに限定せず、エステル、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル(Alzo Inc.(Sayreville,NJ)製のWICKENOL 151等)、安息香酸C12-C15アルキル(Innospec Active Chemicals製のFINSOLV TN等)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、鉱油、ジ安息香酸ジプロピレングリコール、安息香酸PPG-15ステアリルエーテル、プロピオン酸PPG-2ミリスチルエーテル、エチルメチコン、ジエチルヘキシルシクロヘキサン、植物起源の炭化水素系油、例えば4-10個の炭素原子を含有する脂肪酸の液体トリグリセリド、例えばヘプタン酸又はオクタン酸トリグリセリド、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、マロー油、ブドウ種油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、アンズ油、マカダミア油、アララ油、コリアンダー油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、シアバター油、カプリリルグリコール;特に脂肪酸の合成エステル及びエーテル、例えば、Purcellin油、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、ヒドロキシル化エステル、例えば乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル又はクエン酸トリイソセチル、ヘプタン酸、オクタン酸又はデカン酸脂肪アルコール、ポリオールエステル、例えばジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール及びジイソノナン酸ジエチレングリコール、ペンタエリスリトールエステル、例えばテトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、ワセリン、ポリデセン、水素化ポリイソブテン、例えばParleam油、並びに/又はBASF社により参照名Cetiol UTで販売されているn-ウンデカンの混合物とn-トリデカンの混合物が挙げられる。
【0212】
好ましくは、皮膚軟化剤は、存在する場合、組成物の総重量に基づいて、概して約0.1重量%から約20重量%、好ましくは約0.25重量%から約15重量%、より好ましくは約0.5重量%から約10重量%の範囲(これらの間の全ての範囲及び部分範囲を含む)の活性材料の量で、本発明の組成物中に存在する。
【0213】
組成物は、皮膚有効成分を含んでもよい。好適な有効成分としては、例えば、抗ニキビ剤、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗紅斑剤(anti-erythemal agents)、止痒剤、抗浮腫剤(antiedermal agents)、抗乾癬剤、抗真菌剤、皮膚保護剤、ビタミン、酸化防止剤、捕捉剤、抗刺激剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、老化防止剤、プロトプロテクション剤(protoprotection agents)、毛髪成長増進剤、毛髪成長抑制剤、除毛剤、フケ防止剤、抗脂漏剤、角質剥離剤(exfoliating agents)、創傷治癒剤、抗外部寄生虫剤、皮脂調節剤、免疫調節剤、ホルモン、植物性成分、保湿剤、収斂剤、洗浄剤、感覚剤(sensates)、抗生物質、麻酔剤、ステロイド、組織治癒物質、組織再生物質、ヒドロキシアルキル尿素、アミノ酸、ペプチド、ミネラル、セラミド、バイオヒアルロン酸、ビタミン、美白剤(skin lightening agents)、セルフタンニング剤、補酵素Q10、ナイアシンイミド、カプサイシン(capcasin)、カフェイン、及び前述のいずれかの任意の組合せが挙げられる。
【0214】
また、いくつかの任意選択的なアジュバントも含まれうる。例としては、pH調節剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、品質改良剤、保湿剤、キレート剤、推進剤、レオロジー調節剤及び乳化剤、例えばゲル化剤、香料、臭気マスキング剤、UV安定剤、保存料、並びに前述のいずれかの任意の組合せが挙げられる。pH調節剤の例としては、これらに限定されないが、アミノメチルプロパノール、アミノメチルプロパンジオール、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、クエン酸、水酸化ナトリウム、酢酸、水酸化カリウム、乳酸、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0215】
好適な品質改良剤としては、これらに限定されないが、シクロメチコン;ペトロラタム;ジメチコン;ジメチコノール;シクロペンタシロキサン及びジイソステアロイルトリメチロールプロパンシロキシケイ酸等のシリコーン;ヒアルロン酸ナトリウム;パルミチン酸イソプロピル;ダイズ油;リノール酸;PPG-12/飽和メチレンジフェニルジイソシアネートコポリマー;尿素;アモジメチコン;トリデセス-12;塩化セキモニウム;ジフェニルジメチコン;プロピレングリコール;グリセリン;ヒドロキシアルキル尿素;トコフェロール;第4級アミン;並びにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0216】
皮膚用組成物の好適な保存料としては、これらに限定されないが、クロロフェネシン、ソルビン酸、エチレンジニトリロテトラ酢酸ジナトリウム、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フィチン酸、イミダゾリジニル尿素、デヒドロ酢酸ナトリウム、ベンジルアルコール、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。熱保護性組成物は、一般に、全熱保護性組成物の100重量%に基づいて、約0.001重量%から約20重量%の保存料を含有する。別の態様では、組成物は、全熱保護性組成物の100重量%に基づいて、約0.1重量%から約10重量%の保存料を含有する。
【0217】
組成物はまた、任意選択的にUVフィルターも含んでよい。UVフィルターは、紫外線を遮断する上での使用が当技術分野において周知である。例えば、UVフィルターは、一又は複数の有機UVフィルター及び/又は一又は複数の無機UVフィルターであってもよい。UVフィルターの非限定的な例としては:
i. やや溶けにくいUVフィルター(水又は油のいずれにも目立って溶けない)、例えば、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、トリスビフェニルトリアジン、メタノン、1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]、及びこれらの混合物;
ii. 油溶性有機UVフィルター(油又は有機溶媒に少なくとも部分的に溶解性)、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(BMBM)、オキシベンゾン、スリソベンゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(DBT)、ドロメトリゾールトリシロキサン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(EHMC)、サリチル酸エチルヘキシル(EHS)、エチルヘキシルトリアゾン(EHT)、ホモサラート、p-メトキシケイ皮酸イソアミル、4-メチルベンジリデンカンファー、オクトクリレン(OCR)、ポリシリコーン-15、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(DHHB);
iii. 無機UVフィルター、例えば、酸化チタン及び酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム並びに酸化セリウム;
iv. 水溶性UVフィルター、例えば、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(PBSA)、スルイソベンゾンナトリウム塩、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーメト硫酸ベンザルコニウム(Camphor Benzalkonium Methosulfate)、シノキセート、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸ジナトリウム(Disodium Phenyl Dibenzylmidazole Tetrasulfonate)、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、PABA、及びPEG-25 PABA
が挙げられる。
【0218】
場合によっては、UVフィルターは、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン又はアミノベンゾフェノン、アントラニル酸誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、ベンジリデンカンファー誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ビスレソルシニルトリアジン、イミダゾリン誘導体、マロン酸ベンザル誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、メロシアニン、マロニトリル又はマロン酸ジフェニルブタジエン誘導体、カルコン、又はこれらの混合物のうちの一又は複数である。
【0219】
好適なUVフィルターは、UVA及びUVB放射線の両方から保護する広域スペクトルUVフィルター、又はUVA若しくはUVB放射線から保護するUVフィルターを含むことができる。場合によっては、一又は複数のUVフィルターは、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルフェノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、被覆又は非被覆酸化亜鉛、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸イソアミル、サリチル酸ホモサラートエチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、アントラニル酸メンチル、及びエチルヘキシルジメチルPABAであってもよい。
【0220】
更に、UVフィルターの組合せを使用してもよい。例えば、UVフィルターの組合せは、全内容が本明細書に出典明示により援用される、米国特許第9107843号に記載されるように、オクトクリレン、アヴォベンゾン(ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3)、オクチサラート(サリチル酸エチルヘキシル)、及びホモサラートであってもよい。
【0221】
方法
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物を、ケラチン物質の処置、ケア及び/又はメーキャップに十分な量で、ケラチン物質に適用することによって、皮膚又は口唇等のケラチン物質を処置、ケア及び/又はメーキャップする方法が提供される。好ましくは、ケラチン物質の「メーキャップ」は、少なくとも1つの着色料を、ケラチン物質に色を付与するために十分な量でケラチン物質に適用することを含む。
【0222】
更にその他の好ましい実施態様によれば、本発明の組成物を、ケラチン物質の外観を向上させるために十分な量で、ケラチン物質に適用することによって、ケラチン物質の外観を向上させる方法方法が提供される。
【0223】
本発明の好ましい実施態様によれば、混和性の構成要素が一時的に混和性になるように組成物を混合又はブレンドすることと、一時的に混和性の構成要素を含む組成物をケラチン物質に適用することとを含む、本発明の組成物をケラチン物質(例えば、皮膚又は口唇)に適用する方法が提供される。一又は複数の実施態様において、組成物を、ミキシングパック中で混合してもよく、又は手で混合してもよい。ケラチン物質に適用された後、構成要素が分離して、ケラチン物質上に多層構造を形成する。
【0224】
本発明の好ましい実施態様によれば、キットは、(1)少なくとも1つの容器;(2)少なくとも1つの塗布器;及び(3)ケラチン物質への適用後に多層構造を形成することができる少なくとも1つの化粧用組成物を含むキットであって、組成物が、適用前に少なくとも2つの不混和性の構成要素を含む。
【0225】
先行する好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ケラチン物質に関連する不具合、皮膚の欠陥若しくは変色を覆う若しくは隠すために、又はケラチン物質の外観を向上させるために、ケラチン物質の処置、ケア及び/又はメーキャップに十分な量で、ケラチン物質の所望領域に局所的に適用される。組成物は、必要に応じて、好ましくは1日1回、所望領域に適用してよく、次いで、衣類又はその他の物体等と接触する前に乾燥させることが好ましい。好ましくは、組成物を約4分間以下、より好ましくは約2分間以下、乾燥させる。
【0226】
また、先行する好ましい実施態様によれば、組成物は、好ましくは、化粧用組成物に好適な容器内に含有される。このような容器の好適な形状としては、これらに限定されないが、例えば、正方形、長方形、ピラミッド形、楕円形、円形、半球形等の任意の幾何学的形状が挙げられる。更に、容器は、可撓性又は非可撓性材料で作られたものでよい。
【0227】
同様に、化粧用組成物の適用に適した任意の塗布器を、本発明に従って使用することができ、塗布器のタイプの好適な例としては、これらに限定されないが、ブラシ、スティック、パッド、ローラー、ローラーボール等が挙げられる。
【0228】
先行する好ましい実施態様によれば、好ましくは、(1)容器は、不混和性の構成要素が一時的に混和性になるように、本発明の組成物を混合又はブレンドすることができる;(2)塗布器は、不混和性の構成要素が一時的に混和性になるように、本発明の組成物を混合又はブレンドすることができる;又は(3)共に作用する容器及び塗布器は、不混和性の校正用が一時的に混和性になるように、本発明の組成物を混合又はブレンドすることができる。例えば、可撓性容器は、その可撓性により、不混和性の構成要素が一時的に混和性になるように、操作して本発明の組成物を一時的に混合又はブレンドすると、十分な力を作り出すことができる;塗布器は、その設計により、不混和性の構成要素が一時的に混和性になるように、本発明の組成物を一時的に混合又はブレンドするために容器から引き出すと、十分な力を作り出すことができる;又は(3)非可撓性容器及び塗布器は、それらの相乗作用的な設計要素から、不混和性の構成要素が一時的に混和性になるように、本発明の組成物を一時的に混合又はブレンドするために塗布器を容器から引き出すと、十分な力を作り出すことができる。
【0229】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、リップスティック、リップグロス又はリップバーム等の、口唇に適用するためのリップ組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、例えば、着色料、ワックス、及びゲル化剤等の、リップ組成物中に典型的に含まれる成分を含有することができる。更に、組成物は、水を含有してもよく、又は無水であってもよい。また、組成物は、固体でも非固体でもよい。
【0230】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、ファンデーション、保湿剤、日焼け止め剤、頬紅、アイシャドウ等の、皮膚に適用するための皮膚用組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、例えば、着色料、有効成分、湿潤剤、界面活性剤及びフィラー等の、皮膚用組成物中に典型的に含まれる成分を含有することができる。更に、組成物は、水を含有してもよく、又は無水であってもよい。また、組成物は、固体でも非固体でもよい。
【0231】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、シャンプー、コンディショナー、スタイリングムース及び染料等の、毛髪に適用するための毛髪用組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、例えば、着色料、界面活性剤、保湿剤、及び有効成分等の、毛髪用組成物中に典型的に含まれる成分を含有することができる。更に、組成物は、水を含有してもよく、又は無水であってもよい。また、組成物は、液体、フォーム、及びペースト等の様々な形態であってもよい。
【0232】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、下塗り組成物、着色組成物又はトップコート組成物等の、爪に適用するための爪用組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、例えば、着色料、重合性化合物、及び溶媒等の、爪用組成物中に典型的に含まれる成分を含有することができる。更に、組成物は、水を含有してもよく、又は無水であってもよい。
【0233】
好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、下塗り、マスカラ及びトップコート等の、睫毛に適用するための睫毛用組成物である。これらの実施態様によれば、本発明の組成物は、例えば、着色料、ワックス、及びゲル化剤等の、睫毛用組成物中に典型的に含まれる成分を含有することができる。更に、組成物は、水を含有してもよく、又は無水であってもよい。また、組成物は、例えば、エマルション又は分散体等の、該組成物に典型的な任意の形態をとっていてもよい。
【0234】
別段の指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲において用いられる、成分の量、反応条件等を表す全ての数は、いずれの場合にも用語「約」によって変更されることを理解されたい。これに応じて、別段の矛盾の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明により得ようとする所望の特性に応じて変動しうる近似値である。
【0235】
広範囲にわたる本発明を説明する数値域及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載の数値は、可能な限り正確に記録されている。しかし、いずれの数値も、各測定において認められる標準偏差から必然的に発生する多少の誤差を本質的に含む。以下の実施例は、本発明を例示することを目的としたものであり、結果としてその範囲を限定するものではない。パーセンテージは、重量基準で挙げる。
【実施例
【0236】
実施例1-ファンデーションの試験
調製
ファンデーションの実施例の発明2、比較3及び比較4を、高速ミキサーを使用して調製した。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを、2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、典型的には、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、QS溶媒に加えて、顔料、顔料分散体、及び任意の他の粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで更に混合した。成分を以下の表に示す。
【0237】
比較1は、市販製品である。比較1は、シリコーン化合物を含有せず、使用したシリコーン樹脂のTが高いため、比較用として考えられる。
【0238】
比較3は、膜形成剤(すなわち、構成要素A)を一切含有しないため、比較用として考えられる。
【0239】
比較4は、シリコーン化合物(すなわち、構成要素B)を含有しないため、比較用として考えられる。
【0240】
摩耗試験
ファンデーションサンプルを、3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)上にキャストした。膜を、最低5時間、乾燥させた。次いで、最下部バーに付着したVelcro(3/4”の白色010 PSA0172)ループ側面部を備えた自動ドローダウン機(Gardco Automatic Drawdown Machine)を使用して、サンプルを摩耗させた。バーに付着したVelcroと膜界面との間で接触させ、次いでバーを、サンプルを横断して自動的に5回ドラッグした(一方向は、ドラッグして横切る方向と見なす)。次いで、サンプルを、製品の除去について評価した(1を最低限の除去とし、2を中程度の除去とし、3を完全な除去として格付けした)。
【0241】
セルフレベリング試験
サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた人差し指でサンプルの界面を端から端まで軽く一打ちこすることによって膜を攪拌した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
1 = Kp550, Shin Etsu
2 = 1515 シリコーンゴム、Dow Corning
【0242】
上の表で確認できるように、膜を破壊させ、自己回復を示す唯一の組成物は、発明1だった。比較1は、膜を破壊せず、したがって自己回復を示さないと考えられる。このような膜のセットは、十分な妨害を受ければ、膜が剥離することがあり、ファンデーションの品質は非常に低くなることを意味する。発明2は、膜を破壊させ、次いで破壊が見つけられなくなる点まで平らにした。比較3は、膜を破壊させたが、部分的にも除去され、この場合もファンデーションに望ましくない効果となった。比較4は、膜をわずかに破壊し、いくらかのセルフレベリングを示したが、発明1ほどではなかった。したがって、発明1が、最も高度なセルフレベリングを示したファンデーションサンプルだった。
【0243】
また、上の表で確認できるように、発明2のみが、摩耗試験で1のスコアを残し、最小限の除去を示した唯一の組成物だったことを意味する。他の全ての比較サンプルは、2をスコアし、中程度の除去に対応した。
【0244】
これらの結果は、膜形成剤及びシリコーン化合物の両方を有することと、良好な摩耗自己回復特性の達成との間の関係を示す。発明2及び比較3は、比較3が一切の膜形成剤を含まず、イソドデカンを増やして、同レベルの顔料及びジメチコノールを維持する点で異なる。同様に、発明2及び比較4は、比較4がジメチコノールを含まず、ここでもイソドデカンを増やして、同レベルの顔料及び膜形成剤を維持する点で異なる。したがって、発明2を比較3と直接比較して、膜形成剤を除去する効果をみることができ、発明2を比較4と直接比較して、シリコーン化合物を除去する効果をみることができる。
【0245】
実際、結果は、構成要素A及びBの両方が存在する(すなわち、相乗効果)場合のみ、自己回復及び良好な摩耗が示されたことを実証する。比較3は、膜が破壊する間に一部が除去され、自己回復を示さず、摩耗試験では2をスコアした。比較4は、わずかに破壊し、自己回復を示し、ここでも摩耗試験では2をスコアするのみであった。発明2の性能は、全ての点で比較3及び4に優っており、その結果、両方の構成要素が必要であることを示し、構成要素A又はBのうちの1つしか含まない組成物と比べて相乗効果を有することが示された。
【0246】
実施例2-下塗り試験
調製
下塗りの実施例を、高速ミキサーを使用して調製した。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを、2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、フィラー粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで再度混合した。
【0247】
比較6は、市販製品である。
【0248】
セルフレベリング試験
サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してByko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた人差し指でサンプルの界面を端から端まで軽く一打ちこすることによって膜を攪拌した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
【0249】
バルク相分離評価
全てのサンプルを、均質性、相分離、及び任意の追加の視覚属性について視覚的に評価した。これらの評価は、バルク配合物を、混合又は攪拌後に24時間、室温で静置させた後で実施した。バルクに相分離が見えるか否か、サンプルを確認した。
【0250】
接着評価
サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK Byko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)にキャストした。サンプルを、最低でも24時間、乾燥させた。一枚のASTMクロスハッチテープ(Permacel 99/PA-28060/51596)を膜に適用し、軽くたたいて確実に膜と接触させた。テープを180度の角度で外し、製品の除去について視覚的に評価した。1を製品の除去がなかった、2を部分的に製品が除去された、3を完全に製品が除去された、とする三点尺度で、製品を評価した。
【0251】
下塗りの上部のアイシャドウの視覚的評価
サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK Byko-Charts Black Scrub Panels P122-10N(6.50×17.00インチ)にキャストした。サンプルを、最低でも24時間、乾燥させた。膜をセットした後、アイシャドウを下塗りサンプルの上部に適用した。色の強度及びバルク製品に対する色濃度について製品を視覚的に評価した。色の強度は、1を非常に高い強度、2を中程度の強度、3を低い強度とする三点尺度に従って評価した。色濃度は、アイシャドウのバルクの色に対する色の効果に基づいて格付けし、1を、バルクに非常に似ているとし、2を、いくらか類似しているとし、3を、バルクとは全く似ていないとした。
1 = 1515 シリコーンゴム、Dow Corning
2 = DOW CORNING VM-2270 エーロゲル微粒子
【0252】
上の表で確認できるように、市販の商業的に入手可能な比較6は、接着評価、色の強度又は色濃度の面で発明5と同等には機能しなかった。その上、発明5は、破壊後にセルフレベリング特性を示したが、比較6は、破壊中に部分的に除去し、経時的にセルフレベリングしなかった。
【0253】
実施例3-無水組成物
サンプルの調製:組成物を、高速ミキサーを使用して調製した。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、典型的には、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、QS溶媒に加えて、顔料、顔料分散体、及び任意の他の粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで更に混合した。
【0254】
膜の破壊及び回復:サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK不透明度チャート(#2812)上にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた指で膜を攪拌した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
【0255】
水接触角:BYK不透明度チャート(#2812)に、3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用して膜をキャストした。測定前に、膜を少なくとも48時間乾燥させた。全ての接触角の測定値は、張力計を使用して獲得した。2-3マイクロリットルの液滴をキャストした膜上に置き、10秒後に平均接触角の値を獲得した。サンプルごとに最低3つの接触角の値を取り、平均を以下の表に示す。
【0256】
以下の表の組成物を調製し、上記のプロトコールに従って試験した。確認できるように、発明1は、攪拌後にセルフレベリング特性を示した。その上、発明1の水接触角は、比較3と同様だった。
1. XIAMETER PMX-200 シリコーン溶液 1000CS
2. Dow Corning 1515 Siゴム
【0257】
以下の表の組成物を調製し、上記のプロトコールに従って試験した。確認できるように、発明1は、攪拌後にセルフレベリング特性を示した。その上、発明1の水接触角は、比較3と同様だった。
【0258】
実施例4-リップオイル組成物の調製
リップオイルの実施例を、高速ミキサーを使用して調製した。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、典型的には、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、QS溶媒に加えて、顔料、顔料分散体、及び任意の他の粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで更に混合した。
【0259】
試験プロトコール
光沢度の試験
サンプルを、光沢計を使用して光沢値について評価した。3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用して、膜をBYK不透明度チャート(#2812)に付着させることによって、サンプル膜を調製した。膜を最低でも1時間乾燥させ、次いで、BYKマイクロ-TRI-グロスメーターを使用して、光沢値について評価した。獲得した値から、60度の値を記録した。10GU未満の値は、低い光沢度と見なし、10-69GUの値は、中程度の光沢度と見なし、70GU以上の値は、高い光沢度と見なした。
【0260】
耐移り性:キス試験
サンプルを、耐移り性について試験した。サンプルはそれぞれ対象により適用され、15分間乾燥させた。15分の乾燥時間の後、各対象は、自分たちの清潔な手の甲にキスし、画像を撮って、移り性のレベルを評価した。完全な移り性の場合、スコアを3とし、一方、いくらかの移り性には2のスコアを付け、わずかから皆無の移り性には1のスコアを付けた。
【0261】
セルフレベリング試験
サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK不透明度チャート(#2812)にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた指で35-55グラムの力によって膜を攪拌した。全てのサンプルに同じ力を適用することを保証するために、コントラストカードをスケール上に置き、その位置に重みをかけて膜を押下し、スケールにタールを塗った。次いで、手袋をはめた人差し指を使ってサンプルを横断した。加える圧力は、35-55gの範囲内の力を維持した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
【0262】
バルク相分離
全てのサンプルを、均質性、相分離、及び任意の追加の視覚属性について視覚的に評価した。これらの評価は、バルク配合物を、混合又は攪拌後に、最低でも1時間-72時間、室温で静置させた後で実施した。
【0263】
発明及び比較の組成物
以下の表の組成物を調製し、上記のプロトコールに従って試験した。確認できるように、発明3及び5は、市販の比較例に対して耐移り性が改善されており、光沢度の値も高かった。加えて、サンプルがバルクに相分離され、固有のセルフレベリング特性も、このサンプル内で見られた。
3. Dow Corning 1515 Siゴム
4. XIAMETER PMX-200 シリコーン溶液 1,000,000 CS
5. XIAMETER PMX-200 シリコーン溶液 1000CS

* 顔料を含まない。
【0264】
実施例5-リップグロスの調製
リップグロス組成物を、高速ミキサーを使用して調製した。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、典型的には、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、QS溶媒に加えて、顔料、顔料分散体、及び任意の他の粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで更に混合した。
【0265】
試験プロトコール
耐移り性:キス試験
サンプルを、耐移り性について試験した。サンプルはそれぞれ対象により適用され、15分間乾燥させた。15分の乾燥時間の後、各対象は、自分たちの清潔な手の甲にキスし、画像を撮影して、移り性のレベルを評価した。完全な移り性の場合、スコアを3とし、一方、いくらかの移り性には2のスコアを付け、わずかから皆無の移り性には1のスコアを付けた。
【0266】
粘着性試験
サンプルの粘着性を評価するために、各サンプルの薄膜を、3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK不透明度チャート(#2812)に置いた。膜を最低でも1時間乾燥させ、テクスチャー分析器を使用して、そのピーク力を測定した。1/2”のステンレス鋼ボールプローブを使用し、標準的接着試験を実施したが、その試験において、最低10秒間、250gの力で、0.5mm/secの速度にて、プローブをサンプルに適用した。プローブは、10mm/secの速度でサンプルから取り除かれた。ピーク力の粘着性を読み取りから獲得した。典型的には、最低でも3回の測定を行ない、平均ピーク力を記録する。全ての測定は、環境温度で実施した。
【0267】
光沢度の試験
サンプルを、光沢計を使用して光沢値について評価した。3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用して、膜をBYK不透明度チャート(#2812)に付着させることによって、サンプル膜を調製した。膜を最低でも1時間乾燥させ、次いで、BYKマイクロ-TRI-グロスメーターを使用して、光沢値について評価した。獲得した値から、60度の値を記録した。10GU未満の値は、低い光沢度と見なし、10-69GUの値は、中程度の光沢度と見なし、70GU以上の値は、高い光沢度と見なした。
【0268】
セルフレベリング試験
サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK不透明度チャート(#2812)にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた指で35-55グラムの力によって膜を攪拌した。全てのサンプルに同じ力を適用することを保証するために、コントラストカードをスケール上に置き、その位置に重みをかけて膜を押下し、スケールにタールを塗った。次いで、手袋をはめた人差し指を使ってサンプルを横断した。加える圧力は、35-55gの範囲内の力を維持した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
【0269】
バルク相分離
全ての配合物を、均質性、相分離、及び任意の追加の視覚属性について視覚的に評価した。これらの評価は、バルク配合物を、混合又は攪拌後に、最低でも1時間から72時間まで、室温で静置させた後で実施した。
【0270】
発明及び比較の組成物
以下の表の組成物を調製し、上記のプロトコールに従って試験した。確認できるように、発明10は、市販の比較例に対して耐移り性が改善されており、光沢度の値も高かった。その上、サンプルの粘着性の値は低かった。加えて、サンプルはバルクに相分離し、固有のセルフレベリング特性も、このサンプル内で見られた。
* 顔料を含まない。
1. Dow Corning 1515 Siゴム
2. XIAMETER PMX-200 シリコーン溶液 1,000,000 CS
3. XIAMETER PMX-200 シリコーン溶液 1000CS
【0271】
実施例6-水含有配合物
発明1の調製
発明1を、高速ミキサーを使用して調製した。発明1の成分を、以下の表に示す。高速ミキサーのカップに、全てのポリマーを添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで混合した。サンプルは、典型的には、混濁していて透明ではなく、均一性は、サンプルの滑らかさによって判断した。混合したてのサンプルに、QS溶媒及び水に加えて、顔料、顔料分散体、及び任意の他の粒子を添加した。サンプルを2500-3500RPMで均一になるまで更に混合した。
【0272】
比較2は、市販製品である。
【0273】
バルク相分離評価
全てのサンプルを、均質性、相分離、及び任意の追加の視覚属性について視覚的に評価した。これらの評価は、バルク配合物を、混合又は攪拌後に24時間、室温で静置させた後で実施した。バルクに相分離が現れた場合、サンプルをPSと記録し、サンプルに均質性が現れた場合、Hと記録した。
【0274】
セルフレベリング試験
サンプルを、その乾燥膜特性について評価した。サンプルを、室温で3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用してBYK不透明度チャート(#2812)にキャストした。サンプルを、最低5時間、乾燥させた。乾燥後、サンプルを、相分離及びセルフレベリング特性について視覚的及び手動的に評価した。相分離を評価するために、手袋をはめた人差し指でサンプルの界面を端から端まで軽く一打ちこすることによって膜を攪拌した。サンプルを粗面化できた場合、それを記録し、セルフレベリングによる膜の回復について更に評価した。サンプルを最低でも24時間の間、静置しておき、次いで界面の質について、いくらかの回復があったかを視覚的に再評価した。粗面化する前、最初の粗面化時、及び粗面化から24時間後のサンプルの画像も撮影しておいた。24時間後、サンプルが回復の兆しを示したか否かを記録した。
【0275】
耐移り性:キス試験
サンプルを、耐移り性について試験した。サンプルはそれぞれ対象により適用され、15分間乾燥させた。15分の乾燥時間の後、各対象は、自分たちの清潔な手の甲にキスし、画像を撮って、移り性のレベルを評価した。完全な移り性の場合、スコアを3とし、一方、いくらかの移り性には2のスコアを付け、わずかから皆無の移り性には1のスコアを付けた。
【0276】
光沢度の試験用のサンプルを、光沢計を使用して光沢値について評価した。3ミルの湿潤ドローダウンバーを使用して、膜をBYK不透明度チャート(#2812)に付着させることによって、サンプル膜を調製した。膜を最低でも1時間乾燥させ、次いで、BYKマイクロ-TRI-グロスメーターを使用して、光沢値について評価した。獲得した値から、60度の値を記録した。
【0277】
上記の試験の結果を以下の表に示す。
1Shinetsu KP55
2Dow Corning 1515ゴム
3Dow Corning Xiameter PMX-200 1000 CS
4Dow Corning Xiameter PMX-200 1,000,000 CS
上の表の結果からわかるように、発明1は、市販製品と比べてより良好なセルフレベリング特性をもたらす。
【0278】
実施例7-サンプル配合物
液体リップスティック
【0279】
液体リップスティック
【0280】
液体リップスティック
【0281】
液体リップスティック
【0282】
リップグロス
【0283】
リップオイル
【0284】
ファンデーション
【0285】
毛髪用組成物