(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/10 20060101AFI20241129BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
F04B39/10 K
F04C29/12 E
(21)【出願番号】P 2022003170
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2017055712の分割
【原出願日】2017-03-22
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善彰
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-099066(JP,A)
【文献】特開平08-338368(JP,A)
【文献】韓国公開特許第1998-0037768(KR,A)
【文献】実開平01-162089(JP,U)
【文献】特開2016-014326(JP,A)
【文献】特開2014-040827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮側と吐出側とを仕切るベース部と、
前記ベース部を貫通する吐出ポートと、
一端が前記ベース部に固定され、他端が前記ベース部と対向して前記吐出ポートを閉じ、前記圧縮側の圧力が前記吐出側の圧力より大きくなると前記他端が弾性変形して前記吐出ポートを開く弁体と、
前記ベース部と前記弁体との間に配置されて前記弁体の前記ベース部側の表面に当接して前記弁体を支持する着座プレートと、を備え、
前記着座プレートは、前記ベース部より硬質の
金属のみからなり、前記吐出ポートに対応した貫通孔と、前記貫通孔の中心に対して延在方向の両側の位置に複数設けられた前記ベース部との固定部と、を有し、
前記着座プレートの両面は平面状に形成されており、
前記着座プレートの前記貫通孔は、前記吐出ポートの吐出口よりも大きく形成され、該吐出口を外周から囲むように設けられていることで、前記着座プレートの前記両面のうち一方の面の全領域は、前記着座プレートの一方の面よりも面積の大きい前記ベース部の平面状に形成された面に直接的に当接して気密に密着しており、
前記着座プレートの一方の面と前記ベース部の前記面との間には他の部材が介在されていない圧縮機。
【請求項2】
前記固定部の少なくとも一つでは、前記弁体の前記一端とともに前記着座プレートが前記ベース部に固定されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記着座プレートと前記ベース部との間には、前記吐出ポートを環状に囲んでシール部材が装着されている請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記貫通孔は前記弁体側の縁部に面取り部を有している、請求項1から3の何れか一項に記載の圧縮機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機、冷凍機などには冷媒等の流体を圧縮するための圧縮機が設けられている。ここで圧縮機の一種であるスクロール圧縮機、ロータリ圧縮機などでは、冷媒が圧縮される圧縮側と圧縮された冷媒を吐出する吐出側との間にリード弁等を用いた吐出弁機構が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1の冷媒圧縮機では、圧縮側で圧縮要素により圧縮された冷媒が、吐出弁機構を備えた吐出ポートから吐出側へ吐出されるように構成されている。この冷媒圧縮機では、圧縮側と吐出側とを仕切る主軸受等を貫通して吐出ポートが設けられており、吐出ポートが吐出側に設けられた弁座及び弁体により開閉可能となっている。
このような特許文献1の冷媒圧縮機では、吐出弁の弁体が繰り返し弁座に当接して開閉するため、吐出ポートの吐出側に設けられた弁座の硬度を吐出ポートより高くすることで叩き摩耗が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吐出ポートに弁座を設けた従来の圧縮機では、例えば圧縮側と吐出側との差圧を高くしたり、開閉速度を速くしたり、より過酷な条件で運転すると、弁体や弁座が損傷し易かった。そして弁座は他の部位と一体となっているため補強や交換が容易でなく、特許文献1のように別部材に弁座を形成して圧入するとしても、使用時に位置ずれ、浮き、変形などが生じ易く、十分な圧縮性能を確保することが容易でなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、より過酷な条件で運転しても損傷を防止できるとともに圧縮性能を確保することが可能な圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様の圧縮機によれば、圧縮側と吐出側とを仕切るベース部と、前記ベース部を貫通する吐出ポートと、一端が前記ベース部に固定され、他端が前記ベース部と対向して前記吐出ポートを閉じ、前記圧縮側の圧力が前記吐出側の圧力より大きくなると前記他端が弾性変形して前記吐出ポートを開く弁体と、前記ベース部と前記弁体との間に配置されて前記弁体の前記ベース部側の表面に当接して前記弁体を支持する着座プレートと、を備え、前記着座プレートは、前記ベース部より硬質の金属のみからなり、前記吐出ポートに対応した貫通孔と、前記貫通孔の中心に対して延在方向の両側の位置に複数設けられた前記ベース部との固定部と、を有し、前記着座プレートの両面は平面状に形成されており、前記着座プレートの前記貫通孔は、前記吐出ポートの吐出口よりも大きく形成され、該吐出口を外周から囲むように設けられていることで、前記着座プレートの前記両面のうち一方の面の全領域は、前記着座プレートの一方の面よりも面積の大きい前記ベース部の平面状に形成された面に直接的に当接して気密に密着しており、前記着座プレートの一方の面と前記ベース部の前記面との間には他の部材が介在されていない。
【0008】
本発明によれば、ベース部より硬質の材料からなる着座プレートが、ベース部と弁体との間に配置され、弁体のベース部側の表面が当接支持されている。そのため開閉時に弁体が直接ベース部に当接せず、ベース部の損傷を防止できる。
またベース部と弁体との間に配置された別部材の着座プレートが、吐出ポートに対応した貫通孔の中心に対して、着座プレートの延在方向の両側の固定部でベース部に固定されている。そのため着座プレートをベース部に容易に装着できる上、圧縮流体の圧力や弁体の開閉時の振動等により、着座プレートがベース部に対して位置ずれ、浮き、変形、隙間などを生じることを回避できる。
【0009】
本発明の第二の態様の圧縮機によれば、上記第一の態様において、前記固定部の少なくとも一つでは、前記弁体の前記一端とともに前記着座プレートが前記ベース部に固定されていてもよい。
この構成によれば、弁体の一端とともに着座プレートがベース部に固定されているので、着座プレートの固定位置及び固定手段を弁体の一端と共通化でき、構造を簡素化できる。
【0010】
本発明の第三の態様の圧縮機によれば、上記第一又は第二の態様において、前記着座プレートの前記貫通孔は、前記吐出ポートの吐出口よりも大きく形成され、該吐出口を外周から囲むように設けられていてもよい。
この構成によれば、着座プレートの貫通孔が吐出ポートの吐出口よりも大きいので、着座プレートの製作誤差や、着座プレート取付時の位置ズレ、圧縮機の動作時の着座プレートのガタ等によって、吐出ポートの吐出口が着座プレートにより僅かでも閉塞されるようなことを回避でき、圧縮流体を吐出させる際に吐出口における圧力損失を抑制できる。
【0011】
本発明の第四の態様の圧縮機によれば、上記第一から第四の何れか一つの態様において、前記着座プレートの前記貫通孔は、前記吐出ポートの吐出口より小さく形成され、該吐出口によって外周側から囲まれるように設けられていてもよい。
この構成によれば、着座プレートの貫通孔が吐出ポートの吐出口より小さく形成されているので、吐出ポートの圧縮側で開口面積を大きくして、吐出ポートの吐出側で着座プレートにより開口面積を小さくできる。そのため圧縮側で十分な開口面積を確保し易く、圧縮流体を吐出ポートに導入する際の圧力損失を抑制できる。また、このような開口面積が吐出方向に二段階に変化するような構造を、着座プレートを用いることで容易に実現できる。
さらに吐出ポートの開口面積を大きく確保した状態で弁体により閉塞する面積を小さくできるので、弁体により貫通孔を閉じた際、弁体が貫通孔内に入り込むような変形を発生しにくくでき、弁体と貫通孔周囲との間のシール性を向上できる。
また、着座プレートの貫通孔を小さくできることで、着座プレートおよび弁体の強度を向上できる。
【0012】
本発明の第五の態様の圧縮機によれば、上記第一から第四の何れか一つの態様において、前記着座プレートと前記ベース部との間には、前記吐出ポートを環状に囲んでシール部材が装着されていてもよい。
この構成によれば、シール部材によって着座プレートとベース部との隙間を無くし、着座プレートとベース部との間から圧縮流体が漏れることを防止でき、圧縮性能を確保し易くできる。
【0013】
本発明の第六の態様の圧縮機によれば、上記第一から第五の何れか一つの態様において、前記貫通孔は前記弁体側の縁部に面取り部を有していてもよい。
この構成によれば、前記貫通孔が前記弁体側に面取り部を有しているので、弁体が着座プレートに着座した際、弁体に傷がつくことを回避できる。さらに、吐出側に向かって漸次吐出口の開口面積を増大できるので、吐出時の流体の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧縮機によれば、より過酷な条件で運転しても損傷を防止できるとともに圧縮性能を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構を示し、(a)は上面図、(b)は縦断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の着座プレートを示す上面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第一変形例を示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第二変形例を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第三変形例を示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第四変形例を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第五変形例を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る吐出弁機構の第六変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る圧縮機Aについて説明する。
ここで、本実施形態では、圧縮機Aが空気調和機、冷凍機などに設けられる縦型のスクロール圧縮機であるものとして説明を行う。
【0017】
本実施形態の圧縮機Aは、
図1に示すように、ハウジング1と、ハウジング1内に設けられる電動モータ2と、同じくハウジング1内に設けられ、電動モータ2の駆動によって冷媒等の流体を圧縮するスクロール圧縮機構3とを備えて構成されている。
【0018】
ハウジング1は、円筒状のハウジング本体1aと、ハウジング本体1aの上端の開口を閉塞する上部カバー1bと、ハウジング本体1aの下端の開口を閉塞する下部カバー1cとを備えている。ハウジング1には、ハウジング本体1aの側面にアキュムレータ(不図示)などからハウジング1内に冷媒などの流体を供給するための吸入管4が設けられている。また、上部カバー1bにスクロール圧縮機構3で圧縮した流体を外部に吐出するための吐出管5が設けられている。
【0019】
電動モータ2は、ステータ6とロータ7とを備え、電源からステータ6に給電されるとともにロータ7が上下方向S1に延びる軸線O1回りに回転する。
ロータ7には、回転軸8が軸線O1方向を上下方向S1に向けて一体に取り付けられている。回転軸8は、軸線O1方向上端側が上部軸受10に、下端側が下部軸受11にそれぞれ軸支され、ロータ7の回転とともに軸線O1周りに回転するように設けられている。上部軸受10及び下部軸受11はそれぞれハウジング本体1aに一体に固定して設けられている。
回転軸8の上端部には、その軸線O2を上下方向S1に向け、且つ回転軸8の軸線O1に対して偏心(オフセット)させて、偏心ピン12が一体に設けられている。
【0020】
スクロール圧縮機構3は、固定スクロール15(ベース部)と、電動モータ2により固定スクロール15に対して偏心して公転旋回する旋回スクロール16と、ディスチャージカバー17(ベース部)とを備えている。
【0021】
固定スクロール15は、円盤状の端板15aと、端板15aの下面から下方に突出するとともに渦巻状に設けられた固定ラップ15bとを備えている。固定スクロール15は、上部軸受10にボルト接合するなどしてハウジング1内に固定して配設されている。
【0022】
旋回スクロール16は、円盤状の端板16aと、端板16aの上面から上方に突出するとともに渦巻き状に配設された旋回ラップ16bとを備えて形成されている。旋回スクロール16の旋回ラップ16bは固定スクロール15の固定ラップ15bの間に収容されている。
【0023】
また、旋回スクロール16の端板16aの下面にボス20が一体に設けられ、ボス20には偏心ピン12が嵌合されている。
これにより、旋回スクロール16は、回転軸8に偏心して接続され、回転軸8の軸線O1周りの回転に従動し、回転軸8の軸線(軸心)O1からの偏心距離を半径として回転(公転)するように設けられている。また旋回スクロール16は自転せずに公転するようになっている。
【0024】
固定スクロール15と旋回スクロール16は、上下に重なるように固定ラップ15bと旋回ラップ16bを噛合させている。固定スクロール15と旋回スクロール16は、互いに所定量だけ偏心し、180度位相をずらして固定ラップ15bと旋回ラップ16bが噛合し、旋回スクロール16の回転角に応じて固定ラップ15bと旋回ラップ16bが複数箇所で接触している。
【0025】
固定スクロール15の下面と旋回スクロール16の上面との間、すなわち、固定ラップ15bと旋回ラップ16bとを噛合した部分が冷媒などの流体を圧縮する圧縮室21とされている。本実施形態のスクロール圧縮機構3においては、この圧縮室21が固定ラップ15b及び旋回ラップ16bの渦巻きの中心部に対して点対称に形成され、旋回スクロール16の旋回運動に応じてその容積を減少させながら漸次内周側に遷移することにより、渦巻きの中心部で流体が最大に圧縮されるように構成されている。
【0026】
固定スクロール15の端板15aには、圧縮室21の中心部に対応する位置に、端板15aを貫通して上下の空間を連通する吐出ポート15cが設けられ、吐出ポート15cの上面側に吐出弁機構Cが構成されている。吐出弁機構Cは、固定スクロール15とディスチャージカバー17との間の中間チャンバ19と圧縮室21との圧力差に応じて吐出ポート15cの吐出口15dを開閉する機構である。
【0027】
ディスチャージカバー17は、固定スクロール15の上方に配設され、吸入管4が接続された下部側の空間及び中間チャンバ19と、吐出管5が接続された上部側の吐出チャンバ22と、にハウジング1内を仕切って区画している。
ディスチャージカバー17には、ディスチャージカバー17を貫通して上下の空間を連通する吐出ポート17cが設けられ、吐出ポート17cの上面側に吐出弁機構Bが構成されている。吐出弁機構Bは、中間チャンバ19と吐出チャンバ22との圧力差に応じて吐出ポート17cの吐出口17dを開閉する機構である。
【0028】
吐出弁機構B及び吐出弁機構Cは、
図2(a)(b)に示すように、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17を貫通する吐出ポート15c,17cと、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17の上面に設けられた弁座15e,17eと、吐出ポート15c,17cの吐出口15d,17dと対向して閉塞する弁体25と、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17と弁体25との間に配置された着座プレート28と、弁体25及び吐出口17dの上方に重なるように配置されたリテーナ26とを備えている。
【0029】
弁座15e,17eは、固定スクロール15の端板15aの上面とディスチャージカバー17の上面とに直接形成されている。弁座15e,17eはそれぞれ対向する弁体25の表面形状に対応した表面形状を有しており、本実施形態では弁体25と対向する略全領域で平面形状に形成されている。端板15a、弁座15e、ディスチャージカバー17、及び弁座17eは例えば鋳鉄製である。
【0030】
弁体25は、例えばステンレス製のリード弁からなり、一端25aが固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17の上面に固定されている。他端25bは弁座15e,17eと対向当接した状態で吐出ポート15c,17cを閉じている。
この弁体25は、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17の上面に固定された一端25aを支点として弾性変形可能に形成されている。
【0031】
着座プレート28は、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17より硬質の金属等の材料(例えば炭素工具鋼鋼材(SK材)等)からなる。着座プレート28の両面は平面状に形成されており、一方の面が弁体25の一方側の表面を当接して支持し、他方の面が弁座15e,17eに当接して気密に密着している。
【0032】
図3に示すように、着座プレート28は、吐出ポート15c,17cに対応した貫通孔28aと、貫通孔28aの中心に対して両側の位置に複数設けられた固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17との固定部28b,28cと、を有している。固定部28b,28cは着座プレート28を貫通する孔である。
【0033】
詳細には、一方の固定部28bにおける中心の位置P1が、貫通孔28aの中心P2を通るとともに他方の固定部28cの中心P3と貫通孔28aの中心P2とを結ぶ線O3と直交する直線O4を挟んで中心P3とは反対側に配置されている。即ち、固定部28bと固定部28cとは、貫通孔28aの中心P2を挟んで、着座プレート28の延在方向の両側に配置されている。さらに着座プレート28は、貫通孔28aの中心P2と固定部28cの中心P3とが線O3上に一直線上に配置されており、固定部28bにおける中心の位置P1は、線O3上には配置されていない。これにより、着座プレート28は上面視でL字状をなしている。
本実施形態では、一方の固定部28cが弁体25の一端25aとともに固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に固定されている。
【0034】
特に限定されるものではないが、本実施形態では
図4に示すように、着座プレート28の貫通孔28aは、吐出ポート15c,17cの吐出口15d,17dよりも大きく形成されていてもよい。貫通孔28aと吐出口15d,17dとが同心上に設けられ、貫通孔28aが吐出口15d,17dを外周側から囲むように、貫通孔28aが吐出口15d,17dよりもひとまわり大きく形成されている。
【0035】
また、本実施形態では
図5に示すように、貫通孔28aの弁体25側の縁部には面取り部28eが設けられていてもよい。面取り部28eは、端板15a又はディスチャージカバー17に向かうに従って貫通孔28aの径方向内側に向かって傾斜する面である。
図5の例では、面取り部28eは貫通孔28aの弁体25側の縁部から貫通孔28aの延在方向の中途位置まで形成されている。面取り部28eは貫通孔28aの縁部を機械加工によって形成してもよいし、貫通孔28aを打ち抜く際に形成されたプレスダレをそのまま面取り部28eとしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では
図6に示すように、着座プレート28と固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17との間には、吐出ポート15c,17cを環状に囲んでシール部材28dが装着されていてもよい。シール部材28dはガスケットやOリング等である。
【0037】
リテーナ26は、一端側をディスチャージカバー17に固定して支持させ、他端側に向かうに従い上方に傾斜して弁体25及び吐出口17dの上方に重なるように設けられている。リテーナ26は一端側から他端側に向かって傾斜して形成されていることで、弁体25が圧力差で弾性変形してリフトアップした際に各位置のリフト量を規制するものである。
本実施形態では、着座プレート28と弁体25とリテーナ26とが一方側の同じ位置で固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に共締め固定されている。
【0038】
以上のような圧縮機Aでは、電動モータ2により固定スクロール15に対して旋回スクロール16が偏心した位置で旋回することで公転すると、渦巻き状の固定ラップ15bと旋回ラップ16bとの間の圧縮室21で冷媒が圧縮されながら渦巻きの中心部で最大に圧縮される。
吐出弁機構Bでは、圧縮室21の圧力が中間チャンバ19の圧力以下のとき、他端25b側が吐出口17dを閉じた状態に保たれている。そして圧縮室21の圧力が中間チャンバ19の圧力よりも大きくなると、一端25a側の固定部分を支点とし、圧力差に応じて弾性変形し、他端25b側が弁座15e及び着座プレート28からリフトアップして吐出口17dを開く。これにより圧縮室21から中間チャンバ19に吐出口17dを通じて圧縮流体が給送される。圧縮室21の圧力が中間チャンバ19の圧力以下になると、弁体25の他端25b側が元の状態まで復元し、吐出口17dを閉じる。
【0039】
また吐出弁機構Cでは、中間チャンバ19の圧力が吐出チャンバ22の圧力以下のとき、他端25b側が吐出口17dを閉じた状態に保たれている。そして中間チャンバ19の圧力が吐出チャンバ22の圧力よりも大きくなると、一端25a側の固定部分を支点とし、圧力差に応じて弾性変形し、他端25b側が弁座15e及び着座プレート28からリフトアップして吐出口17dを開く。これにより中間チャンバ19から吐出チャンバ22に吐出口17dを通じて圧縮流体が給送される。圧縮室21の圧力が中間チャンバ19の圧力以下になると、弁体25の他端25b側が元の状態まで復元し、吐出口17dを閉じる。
これらが連続することで圧縮流体が順次吐出管5から吐出されて利用に供される。
【0040】
以上のような圧縮機Aによれば、固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17より硬質の材料からなる着座プレート28が固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17と弁体25との間に配置され、弁体25の一方側表面が当接支持されている。そのため開閉時に弁体25が直接固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に当接することがない。これにより固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に設けられた弁座15e,17eが弁体25の開閉時の衝撃で損傷することを確実に防止できる。
【0041】
また固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17と弁体25との間に配置された別部材の着座プレート28が、吐出ポート15c,17cに対応した貫通孔28aの中心P2を挟んで着座プレート28の延在方向の両側の位置に設けられた複数の固定部28b、28cによって固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に固定されている。そのため着座プレート28を固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に容易に装着できる。さらに、吐出ポート15c,17cから放出される圧縮流体の圧力や弁体25の開閉時の振動等により、着座プレート28が弁座15e,17eに対して位置ずれ、浮き、変形、隙間などを生じることを回避できる。
従って弁座15e,17eの損傷を防止しつつ、過酷な使用条件(回転数が高い状態の運転条件等)でも圧縮機Aの圧縮性能を容易に確保できる。
【0042】
また本実施形態の圧縮機Aでは、固定部28bの一つにおいて、弁体25の一端25aとともに着座プレート28が固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17に固定されているので、着座プレート28の固定位置及び固定手段を弁体25の一端25aと共通化でき、構造を簡素化できる。
【0043】
また本実施形態の圧縮機Aでは、
図4に示すように着座プレート28の貫通孔28aが吐出ポート15c,17cの吐出口15d,17dよりも大きく形成されていてもよい。この場合には、着座プレート28の製作誤差や、着座プレート28の取付時の位置ズレ、圧縮機Aの動作時の着座プレート28のガタ等によって、吐出ポート15c,17cの吐出口15d,17dが着座プレート28により僅かでも閉塞されるようなことを回避でき、圧縮流体を吐出させる際に吐出口15d,17dにおける圧力損失を抑制できる。
【0044】
また本実施形態の圧縮機Aでは、
図5に示すように着座プレート28に面取り部28eが設けられていてもよい。この場合には、弁体25が着座プレート28に着座した際、弁体25に傷がつくことを回避できる。さらに、吐出側に向かって漸次吐出口15d,17dの開口面積を増大できるので、吐出時の流体の圧力損失を低減することができる。
【0045】
また本実施形態の圧縮機Aでは、
図6に示すように着座プレート28と固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17との間には、吐出ポート15c,17cを環状に囲んでシール部材28dが装着されていてもよい。この場合には、着座プレート28と固定スクロール15の端板15a又はディスチャージカバー17との間から圧縮流体が漏れることを防止でき、圧縮機Aでの圧縮性能を確保し易くできる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、
図7に示すように端板15a又はディスチャージカバー17には、着座プレート28の形状に対応し、着座プレート28の厚みと同等の深さの凹部15f,17fが形成されていてもよい。凹部15f,17fには着座プレート28が嵌り込んでいる。この場合、端板15a又はディスチャージカバー17に対して着座プレート28の位置ズレをさらに回避することができる。
【0047】
また、
図8に示すように着座プレート28の貫通孔28aが吐出ポート15c,17cの吐出口15d,17dより小さく形成されていてもよい。貫通孔28aと吐出口15d,17dとは同軸上に設けられ、貫通孔28aが吐出口15d,17dによって外周側から囲まれるように設けられている。この場合、着座プレート28の貫通孔28aが吐出口15d,17dより小さく形成されているので、吐出ポート15c,17cの圧縮側で開口面積を大きくして、吐出ポートの吐出側で着座プレート28により開口面積を小さくできる。そのため圧縮側で十分な開口面積を確保し易く、圧縮流体を吐出ポート15c,17cに導入する際の圧力損失を抑制できる。また、このような開口面積が吐出方向に二段階に変化するような構造を、着座プレート28を用いることで容易に実現できる。さらに圧縮側で吐出ポート15c,17cの開口面積を大きく確保した状態で弁体25により閉塞する面積を小さくできるので、弁体25により貫通孔28aを閉じた際、弁体25が貫通孔28a内に入り込むような変形を発生しにくくでき、弁体25と貫通孔28a周囲との間のシール性を向上できる。また、着座プレート28の貫通孔28aを小さくできることで、着座プレート28および弁体25の強度を向上できる。
【0048】
また、
図9に示すように、着座プレート38では各中心P1,P2,P3が一直線状に並んでおり、着座プレート38がL字状をなしておらず直線状をなしていてもよい。即ち着座プレートの形状は特に限定されるものではなく、少なくとも貫通孔28aの中心P2を挟んで、着座プレートの延在方向の両側に固定部が設けられていればよい。
【0049】
また、上記では吐出ポート15c,17cなどの各種孔形状を円形に形成した例について説明したが、特に限定されるものではなく、長孔、楕円孔、角孔等であってもよい。
【0050】
また、吐出弁機構B及び吐出弁機構Cの両方に上記実施形態の構成を適用する必要はなく、少なくとも一方に上記実施形態の構成を適用してもよい。
【0051】
また、上記では圧縮機Aはスクロール圧縮機であるとして説明したが、上述の各構成をロータリ圧縮機や、その他の圧縮機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ハウジング
1a ハウジング本体
1b 上部カバー
1c 下部カバー
2 電動モータ
3 スクロール圧縮機構
4 吸入管
5 吐出管
6 ステータ
7 ロータ
8 回転軸
10 上部軸受
11 下部軸受
12 偏心ピン
15 固定スクロール(ベース部)
15a 端板
15b 固定ラップ
15c 吐出ポート
15d 吐出口
15e 弁座
15f 凹部
16 旋回スクロール
16a 端板
16b 旋回ラップ
17 ディスチャージカバー(ベース部)
17c 吐出ポート
17d 吐出口
17e 弁座
17f 凹部
19 中間チャンバ
20 ボス
21 圧縮室
22 吐出チャンバ
25 弁体
25a 一端
25b 他端
26 リテーナ
28 着座プレート
28a 貫通孔
28b 固定部
28c 固定部
28d シール部材
28e 面取り部
38 着座プレート
A 圧縮機
B,C 吐出弁機構
O1 軸線
O2 軸線
O3 中心を結ぶ線
O4 直交する線
S1 上下方向
P1 一方の固定部の中心
P2 貫通孔の中心
P3 他方の固定部の中心