(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】発電機構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20241129BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20241129BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H02K9/06 F
H02K7/14 A
H02K7/18 B
(21)【出願番号】P 2022054577
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 渉
(72)【発明者】
【氏名】中西 龍一
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063651(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132719(WO,A1)
【文献】特開2009-250131(JP,A)
【文献】特開2018-107955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
H02K 7/14
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸(31)と、前記駆動軸(31)と一体に回転するフライホイール(45)と、前記フライホイール(45)の内側に配置される回転電機(46)とを備え、前記フライホイール(45)の軸方向外側の面を構成する壁部(45a)に開口(45e)が設けられる発電機構造において、
前記壁部(45a)における前記駆動軸(31)の軸方向外側の面(45f)に、前記フライホイール(45)と一体に回転して送風する遠心ファン(51)が設けられ、
前記遠心ファン(51)の羽部(63)は、軸方向外側から前記壁部(45a)に向けて立設され、前記壁部(45a)に対向
し、
前記羽部(63)は、前記遠心ファン(51)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
前記遠心ファン(51)は、前記壁部(45a)に対し位置決めされる位置決め突起(66)を備え、
前記位置決め突起(66)は、前記羽部(63)上に設けられ、
前記位置決め突起(66)と、前記位置決め突起(66)が設けられた前記羽部(63a)に隣接する他の羽部(63b)との間には、周方向に隙間(G)が形成されることを特徴とする発電機構造。
【請求項2】
前記羽部(63)は、前記フライホイール(45)の径方向において、前記開口(45e)よりも外側まで延びることを特徴とする請求項1記載の発電機構造。
【請求項3】
前記羽部(63)は、前記遠心ファン(51)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
隣り合う前記羽部(63)同士を周方向に接続するリブ(68a,68b,68c)が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の発電機構造。
【請求項4】
前記駆動軸(31)は、動力発生装置(12)の駆動軸であり、
前記遠心ファン(51)は、前記羽部(63)を支持するベース部(60)を備え、前記羽部(63)は、前記ベース部(60)から前記壁部(45a)に向けて立設され、
前記遠心ファン(51)は、前記ベース部(60)から前記羽部(63)とは反対側に向けて立設される第2の羽部(64)を備え、
前記第2の羽部(64)は、前記動力発生装置(12)に向けて送風することを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の発電機構造。
【請求項5】
前記第2の羽部(64)は、前記遠心ファン(51)の周方向に間隔をあけて複数設けられ、
前記遠心ファン(51)の周方向において、前記羽部(63)と前記第2の羽部(64)とは同じ位置に設けられることを特徴とする請求項
4に記載の発電機構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動軸と一体に回転するフライホイールと、フライホイールの内側に配置される回転電機とを備え、フライホイールの軸方向の面を構成する壁部に開口が設けられる発電機構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構造では、開口を介し、フライホイールの内側から外側に空気を流し、回転電機の冷却を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の発電機構造では、開口を介してフライホイールの内側から外側に空気を流すことで回転電機を冷却できるが、回転電機をさらに効果的に冷却することが望まれる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、発電機構造において、フライホイールの内側に配置される回転電機を効果的に冷却できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発電機構造は、駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するフライホイールと、前記フライホイールの内側に配置される回転電機とを備え、前記フライホイールの軸方向外側の面を構成する壁部に開口が設けられる発電機構造において、前記壁部における前記駆動軸の軸方向外側の面に、前記フライホイールと一体に回転して送風する遠心ファンが設けられ、前記遠心ファンの羽部は、軸方向外側から前記壁部に向けて立設され、前記壁部に対向し、前記羽部は、前記遠心ファンの周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記遠心ファンは、前記壁部に対し位置決めされる位置決め突起を備え、前記位置決め突起は、前記羽部上に設けられ、前記位置決め突起と、前記位置決め突起が設けられた前記羽部に隣接する他の羽部との間には、周方向に隙間が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
発電機構造において、フライホイールの内側に配置される回転電機を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図4】ファンをクランク軸の軸方向外側から見た図である。
【
図5】ファンをクランク軸の軸方向内側から見た図である。
【
図7】ファンをクランク軸の軸方向内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
鞍乗り型車両10は、自動二輪車である。鞍乗り型車両10は、車体フレーム11等の車体を覆う車体カバー30を備える。
パワーユニット12(動力発生装置)は、上記内燃機関とスイングアーム16とが一体に設けられたユニットスイングエンジンである。フロントフレーム19は、パワーユニット12の前方に位置する。リアフレーム20は、パワーユニット12の上方に位置する。
フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から下方に延出するダウンフレーム19aと、ダウンフレーム19aの下部から後方に延びるロアフレーム19bとを備える。
リアフレーム20は、ロアフレーム19bの後端部から後上方に延びる。
【0016】
図2は、パワーユニット12の断面図である。
図2は、シリンダー部24の動弁装置のカム軸36、クランクピン35、クランク軸31、変速機構41、及び減速機構43の各軸の軸線を通る断面を上方側から見た図である。
クランクケース23は、車幅方向に延びるクランク軸31(駆動軸)を収容するクランク室32を備える。クランク室32は、クランク軸31に直交する支持壁32a,32bを左右一対備える。クランク軸31は、ベアリングを介し、支持壁32a,32bに支持される。クランク軸31の軸線31cは、水平に車幅方向に延びる。
ピストン33は、シリンダー部24内をシリンダー軸線24aの軸方向に往復する。ピストン33は、コンロッド34及びクランクピン35を介し、クランク軸31に連結される。シリンダー軸線24aは、略水平に車両前後方向に延びる。
シリンダー部24の前端部には、動弁装置が設けられる。動弁装置のカム軸36は、クランク軸31と平行である。
【0017】
クランクケース23は、クランク室32における左右の一方側(左側)の側部から後方に延びる変速機ケース部38を一体に備える。変速機ケース部38は、クランク室32の側方の部分から後輪15の左側方まで延びる。
変速機ケース部38は、車幅方向の外側面が開放したケース状に形成される。変速機ケース部38の外側面の開放部は、変速機ケース部38の外側面に取り付けられるケースカバー39によって塞がれる。
【0018】
スイングアーム16は、変速機ケース部38とケースカバー39とによって構成される。
スイングアーム16内には、クランク軸31の回転を変速して後輪15側に伝達する変速機構41と、遠心式のクラッチ機構42と、複数のギヤで構成される減速機構43とが設けられる。
クランク軸31の駆動力は、変速機構41、クラッチ機構42、及び減速機構43を介し、車軸15aに伝達される。
【0019】
クランク軸31の一端部31aは、左側の支持壁32aを貫通してスイングアーム16内に位置する。
変速機構41は、ベルト式の無段変速機であり、クランク軸31の一端部31aに設けられるドライブプーリー41aと、スイングアーム16の後部に設けられる出力軸41bと、出力軸41bに支持されるドリブンプーリー41cと、ドライブプーリー41aとドリブンプーリー41cとを接続するVベルト41dとを備える。クラッチ機構42は、出力軸41b上に設けられる。出力軸41bは、減速機構43を介し車軸15aに接続される。
【0020】
クランク軸31の他端部31bは、右側の支持壁32bを貫通してクランクケース23の外側方に延びる。
他端部31bには、クランク軸31と一体に回転するフライホイール45が固定される。
フライホイール45は、他端部31bから径方向外側に延出する円板状の壁部45aと、壁部45aの外周部から車幅方向内側に延出する筒状部45bとを備える。
【0021】
フライホイール45の内側には、クランク軸31の回転によって発電する回転電機46が設けられる。回転電機46は、筒状部45bの内周に固定されるローター46aと、ローター46aに対しフライホイール45の径方向内側に配置されるステーター46bとを備える。ステーター46bは、クランクケース23に固定される。
回転電機46は、ローター46aとステーター46bとの相対回転によって発電する発電機である。なお、回転電機46は、回転電機46に供給される電力によってクランク軸31を回転させるスターターとして用いられることもできる。
【0022】
パワーユニット12は、送風によってパワーユニット12を空冷する送風装置50を備える。
送風装置50は、クランク軸31と、クランク軸31と一体に回転するファン51(遠心ファン)と、ファン51を外側から覆うファンカバー52と、シリンダー部24を覆うシリンダー部カバー53とを備える。
【0023】
シリンダー部カバー53は、シリンダー部24のシリンダー及びシリンダーヘッドをシリンダー軸線24aの周囲から囲うように設けられ、シリンダー部24を略全周に亘って覆う。
シリンダー部カバー53とシリンダー部24の外周との間に形成される空間は、ファン51によって送られる気流が通る前側風路54である。前側風路54内において、シリンダー部24の外面には、冷却フィン24bが設けられる。
【0024】
図3は、送風装置50を示す断面図である。
フライホイール45の壁部45aは、フライホイール45の軸方向の面を構成する円板状である。壁部45aの中心には、固定孔部45cが設けられる。
フライホイール45は、固定孔部45cを他端部31bの外周のテーパー部に嵌合させて組み付けられ、他端部31bの先端部に締結されるナット31dによって他端部31bに固定される。
【0025】
壁部45aは、フライホイール45におけるクランク軸31の軸方向外側の面を形成する。フライホイール45におけるクランク軸31の軸方向内側の面は、筒状部45bによって区画される開口面45dである。
フライホイール45は、壁部45aをフライホイール45の軸方向に貫通する開口45eを複数備える。開口45eは、固定孔部45cと筒状部45bとの間に位置する。開口45eは、クランク軸31の軸方向外側から開口45eがステーター46bに重なるように配置される。
クランク軸31の軸方向及びフライホイール45の軸方向は、車幅方向に一致する。
【0026】
ファン51は、フライホイール45の壁部45aにおけるクランク軸31の軸方向外側の面である外側面45fに取り付けられる。すなわち、ファン51は、フライホイール45を介し、クランク軸31の軸方向の端部に固定される。ファン51は、フライホイール45に対し、クランク軸31の軸方向外側に位置する。
フライホイール45及びファン51は、クランク軸31と同軸の位置関係に配置され、クランク軸31と一体に回転する回転体である。
フライホイール45の径方向とファン51の径方向とは一致する。フライホイール45の軸方向とファン51の軸方向とは一致する。
【0027】
図2及び
図3を参照し、ファンカバー52は、クランクケース23における車幅方向の外側面部23aに取り付けられ、外側面部23aを車幅方向外側から覆う。ファンカバー52の前縁部は、シリンダー部カバー53の後縁部に接続され、ファンカバー52の内側の空間は、前側風路54に連通する。
【0028】
ファンカバー52は、ファン51を車幅方向外側、及び、ファン51の径方向外側から覆う。すなわち、ファンカバー52は、ファン51をクランク軸31の軸方向の外側、及びファン51の周囲から覆う。
ファンカバー52は、ファン51を車幅方向外側から覆うカバー側壁部52aと、ファン51の径方向外側に配置される周壁部52bと、カバー側壁部52aに設けられるメッシュ状の通風口52cとを備える。周壁部52bは、ファン51を周囲から覆う。空気は、通風口52cを通ってファンカバー52内に流入する。
ファンカバー52は、周壁部52bの車幅方向内側の端面がクランクケース23の外側面部23aに突き当てられる。
【0029】
ファン51は、クランク軸31と一体に回転することで、ファンカバー52を通じて車幅方向外側から空気を吸い込み、ファンカバー52の内側に吸い込んだ空気をファン51の径方向外側に吹き出す。すなわち、ファン51は遠心ファンである。
ファン51が吹き出す風は、前側風路54を通ってシリンダー部24の周囲に到達し、シリンダー部24を冷却する。
すなわち、パワーユニット12は、クランク軸31が駆動するファン51の送風によってシリンダー部24を強制的に空冷する強制空冷式である。
前側風路54の風は、シリンダー部カバー53に設けられる排出口(不図示)から外側に排出される。
【0030】
図4は、ファン51をクランク軸31の軸方向外側から見た図である。
図5は、ファン51をクランク軸31の軸方向内側から見た図である。
図6は、ファン51を径方向外側から見た図である。
図7は、ファン51をクランク軸31の軸方向内側から見た斜視図である。
図8は、フライホイール45及びファン51の断面図である。
図3~
図8を参照し、ファン51は、円板状のベース部60を備える。ベース部60は、フライホイール45の壁部45aの外側面45fに対し、クランク軸31の軸方向外側から対向する。
ベース部60は、クランク軸31と同軸の位置関係で配置される。
【0031】
ベース部60は、フライホイール45の外側面45fに対向する第1の面60aと、ベース部60における第1の面60aとは反対側の面である第2の面60bとを備える。
第1の面60aは、ベース部60におけるクランク軸31の軸方向内側の面である。第2の面60bは、ベース部60におけるクランク軸31の軸方向外側の面である。
【0032】
また、ファン51は、軸方向視で、ベース部60の中心に、軸方向に延びる筒状部61を備える。筒状部61におけるクランク軸31の軸方向内側の端面は開口部61aである。筒状部61におけるクランク軸31の軸方向外側の端面は閉塞している。
ナット31dは、開口部61a内に収納される。
ファン51は、筒状部61が、クランク軸31の軸線31c上に位置するように配置される。
【0033】
さらに、ファン51は、ベース部60の第1の面60aから壁部45aに向けて立設される複数の羽部63と、ベース部60の第2の面60bからクランク軸31の軸方向外側に向けて立設される複数の第2の羽部64とを備える。
羽部63は、ベース部60からクランク軸31の軸方向内側に向けて立設される。第2の羽部64は、ベース部60から、羽部63とは反対側に向けて立設される。
【0034】
また、ファン51は、第1の面60aから壁部45aに向けて立設される複数のボス部65と、第1の面60aから壁部45aに向けて立設される位置決め突起66と、複数の第2の羽部64同士をファン51の周方向に接続する円環状のトップブレード67とを備える。
なお、図面の煩雑化を避けるため、羽部63及び第2の羽部64については、一部のみに符号を付す。
【0035】
軸方向視では、羽部63は、ベース部60の中心部側からベース部60の径方向外側に延びる板状である。羽部63は、ファン51の周方向に略等間隔で並べて複数設けられる。羽部63は、筒状部61に対し径方向外側に配置される。
図3及び
図8を参照し、羽部63は、フライホイール45の径方向において、開口45eよりも外側まで延出する。このため、羽部63におけるフライホイール45の径方向の外端63cは、開口45eよりも径方向外側に位置する。
【0036】
ファン51は、隣り合う羽部63同士を周方向に接続するリブとして、第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cを備える。第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cは、第1の面60aに立設される。
第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cは、軸方向視では、ベース部60の中心を中心とする円環状である。
第2のリブ68bは、第1のリブ68aよりも径方向外側に設けられ、第3のリブ68cは、第2のリブ68bよりも径方向外側に設けられる。
第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cの高さは、羽部63の高さよりも低い。
【0037】
ボス部65は、ファン51の径方向において、羽部63が設けられる領域に重ねて配置される。ボス部65は、ファン51の周方向に略等間隔で並べて複数設けられる。第1の面60aにおいて、ボス部65が配置される部分には、羽部63は設けられていない。
ボス部65は、ファン51を貫通する筒状部である。ファン51は、クランク軸31の軸方向外側からボス部65に挿通される複数のファン締結具69(
図3)によって、壁部45aに締結される。ボス部65の端面は、外側面45fに当接する。
第1の面60aを基準に、ボス部65の高さは、羽部63の高さよりも大きい。このため、ファン51が外側面45fに取り付けられた状態では、羽部63の先端と外側面45fとの間には隙間(
図3)が形成される。
【0038】
位置決め突起66は、複数の羽部63の内の一つの羽部63上に設けられ、この羽部63と一体に形成されている。位置決め突起66は円筒状である。
位置決め突起66は、ファン51の軸方向における羽部63の長手方向において、長手方向の中間部に設けられる。
第1の面60aを基準に、位置決め突起66の高さは、羽部63の高さ及びボス部65の高さよりも大きい。
ファン51は、壁部45aに形成された位置決め孔(不図示)に位置決め突起66が係合することで、壁部45aに対し位置決めされる。
【0039】
位置決め突起66と、位置決め突起66が設けられた羽部63aに隣接する他の羽部63bとの間には、周方向に隙間Gが形成される。羽部63a及び羽部63bは、複数の羽部63の内の一つである。
【0040】
軸方向視では、第2の羽部64は、ベース部60の中心部側からベース部60の径方向外側に延びる板状である。第2の羽部64は、ファン51の周方向に略等間隔で並べて複数設けられる。第2の羽部64は、筒状部61に対し径方向外側に配置される。
【0041】
第2の羽部64は、ファン51の径方向において、ベース部60よりも外側まで延出する。このため、第2の羽部64の径方向外側の端部64aは、径方向においてベース部60よりも外側に位置する。ファン51の径方向において、第2の羽部64は、羽部63よりも外側に延出する。
トップブレード67は、端部64aにおけるクランク軸31の軸方向外側の端に設けられ、隣接する端部64a同士をファン51の周方向に接続する。
トップブレード67は、ベース部60の外周に対し径方向外側に配置される円環状である。
【0042】
ファン51の周方向において、羽部63と第2の羽部64とは、ベース部60上で同じ位置に設けられる。すなわち、ファン51の軸方向視では、ベース部60上において、羽部63と第2の羽部64とは軸方向に重なる。羽部63と第2の羽部64とは、ファン51の軸方向に繋がっている。
【0043】
羽部63が設けられるベース部60の外径は、第2の羽部64の端部64aが設けられるトップブレード67の内径よりも小さい。これにより、羽部63及び端部64aは、ファン51におけるクランク軸31の軸方向内側の面に位置する。このため、ファン51を、ファン51の軸方向に分割される金型で樹脂成型する場合に、金型の構造を簡単にできる。
なお、ベース部60を径方向においてトップブレード67の位置まで拡大し、羽部63を端部64aの位置まで径方向外側に延長しても良い。この場合の金型の構造は、上記金型の構造よりも複雑になる。
【0044】
ここで、ファン51による送風について説明する。
図3及び
図8を参照し、通風口52cからファン51に吸い込まれた空気W1は、第2の羽部64の回転によってファン51の径方向外側に吹き出され、前側風路54に流れ、シリンダー部24を冷却する。第2の羽部64は、空気W1をシリンダー部24に向けて送風する。
【0045】
ファン51では、羽部63によっても送風される。ファン51の回転に伴い、羽部63よって送られる空気W2は、壁部45aの外側面45fに沿ってフライホイール45の径方向外側に吹き出す。空気W2の流れによって、フライホイール45の内側の空気は、壁部45aの開口45eを通ってフライホイール45の外側に引き抜かれる。このため、フライホイール45の内側の空気を効率良く排出でき、フライホイール45の内側の回転電機46を効果的に冷却できる。また、空気W2は、前側風路54に流れ、シリンダー部24を冷却する。このため、シリンダー部24を効果的に冷却できる。
【0046】
羽部63は、フライホイール45の径方向において、開口45eよりも外側まで延びる。これにより、羽部63に沿って流れる空気W2は、フライホイール45の径方向において開口45eよりも外側まで流れる。このため、フライホイール45の内側の空気を、開口45eを介してフライホイール45の外側に効果的に引き抜くことができる。
【0047】
位置決め突起66と他の羽部63bとの間には、周方向に隙間Gが形成されるため、位置決め突起66を設けた場合であっても、空気W2は隙間Gを通ってフライホイール45の外側に流れることができる。このため、空気W2によって、フライホイール45の内側の空気を外側へ効果的に引き抜くことができる。
【0048】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、発電機構造は、駆動軸としてのクランク軸31と、クランク軸31と一体に回転するフライホイール45と、フライホイール45の内側に配置される回転電機46とを備える。フライホイール45の軸方向の面を構成する壁部45aに開口45eが設けられ、壁部45aにおけるクランク軸31の軸方向外側の面である外側面45fに、フライホイール45と一体に回転して送風するファン51が設けられ、ファン51の羽部63は、軸方向外側から壁部45aに向けて立設され、壁部45aに対向する。
この構成によれば、ファン51の羽部63が壁部45aに対向するため、羽部63によって送られる空気W2は、壁部45aに沿ってフライホイール45の径方向外側に吹き出す。この空気W2の流れによって、フライホイール45の内側の空気は、壁部45aの開口45eを介してフライホイール45の外側に引き抜かれる。このため、フライホイール45の内側の空気を効率良く排出でき、回転電機46を効果的に冷却できる。
【0049】
また、羽部63は、フライホイール45の径方向において、開口45eよりも外側まで延びる。
この構成によれば、羽部63に沿って流れる空気W2は、フライホイール45の径方向において開口45eよりも外側まで流れる。このため、フライホイール45の内側の空気を、開口45eを介してフライホイール45の外側に効果的に引き抜くことができる。
【0050】
また、羽部63は、ファン51の周方向に間隔をあけて複数設けられ、隣り合う羽部63同士を周方向に接続する第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cが設けられる。
この構成によれば、羽部63の剛性を第1のリブ68a、第2のリブ68b、及び第3のリブ68cによって増加させることができる。
【0051】
さらに、羽部63は、ファン51の周方向に間隔をあけて複数設けられ、ファン51は、壁部45aに対し位置決めされる位置決め突起66を備え、位置決め突起66は、羽部63上に設けられ、位置決め突起66と、位置決め突起66が設けられた羽部63aに隣接する他の羽部63bとの間には、周方向に隙間Gが形成される。
この構成によれば、位置決め突起66によって、ファン51を壁部45aに対し適切な位置に位置決めできる。位置決め突起66と他の羽部63bとの間に隙間Gが形成されるため、羽部63bによる送風が位置決め突起66によって妨げられることを抑制できる。
【0052】
また、クランク軸31は、パワーユニット12の駆動軸であり、ファン51は、羽部63を支持するベース部60を備え、羽部63は、ベース部60から壁部45aに向けて立設され、ファン51は、ベース部60から羽部63とは反対側に向けて立設される第2の羽部64を備え、第2の羽部64は、パワーユニット12に向けて送風する。
この構成によれば、第2の羽部64が発生させる風によって、パワーユニット12を冷却できる。すなわち、一つのファン51によって、回転電機46及び動力発生装置12を効果的に冷却できる。
【0053】
また、第2の羽部64は、ファン51の周方向に間隔をあけて複数設けられ、ファン51の周方向において、羽部63と第2の羽部64とは同じ位置に設けられる。
この構成によれば、羽部63及び第2の羽部64の剛性を高くできる。また、羽部63及び第2の羽部64を容易に形成できる。
【0054】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、自動二輪車である鞍乗り型車両10の発電機構造を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備える3輪の鞍乗り型車両、4輪以上を備える鞍乗り型車両、及びその他の車両に適用可能である。
【0055】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0056】
(構成1)駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するフライホイールと、前記フライホイールの内側に配置される回転電機とを備え、前記フライホイールの軸方向の面を構成する壁部に開口が設けられる発電機構造において、前記壁部における前記駆動軸の軸方向外側の面に、前記フライホイールと一体に回転して送風する遠心ファンが設けられ、前記遠心ファンの羽部は、軸方向外側から前記壁部に向けて立設され、前記壁部に対向することを特徴とする発電機構造。
この構成によれば、遠心ファンの羽部が壁部に対向するため、羽部によって送られる空気は、壁部に沿ってフライホイールの径方向外側に吹き出す。この空気の流れによって、フライホイールの内側の空気は、壁部の開口を介してフライホイールの外側に引き抜かれる。このため、フライホイールの内側の空気を効率良く排出でき、回転電機を効果的に冷却できる。
【0057】
(構成2)前記羽部は、前記フライホイールの径方向において、前記開口よりも外側まで延びることを特徴とする構成1記載の発電機構造。
この構成によれば、羽部に沿って流れる空気は、フライホイールの径方向において開口よりも外側まで流れる。このため、フライホイールの内側の空気を、開口を介してフライホイールの外側に効果的に引き抜くことができる。
【0058】
(構成3)前記羽部は、前記遠心ファンの周方向に間隔をあけて複数設けられ、隣り合う前記羽部同士を周方向に接続するリブが設けられることを特徴とする構成1または2記載の発電機構造。
この構成によれば、羽部の剛性をリブによって増加させることができる。
【0059】
(構成4)前記羽部は、前記遠心ファンの周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記遠心ファンは、前記壁部に対し位置決めされる位置決め突起を備え、前記位置決め突起は、前記羽部上に設けられ、前記位置決め突起と、前記位置決め突起が設けられた前記羽部に隣接する他の羽部との間には、周方向に隙間が形成されることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の発電機構造。
この構成によれば、位置決め突起によって、遠心ファンを壁部に対し適切な位置に位置決めできる。位置決め突起と他の羽部との間に隙間が形成されるため、羽部による送風が位置決め突起によって妨げられることを抑制できる。
【0060】
(構成5)前記駆動軸は、動力発生装置の駆動軸であり、前記遠心ファンは、前記羽部を支持するベース部を備え、前記羽部は、前記ベース部から前記壁部に向けて立設され、前記遠心ファンは、前記ベース部から前記羽部とは反対側に向けて立設される第2の羽部を備え、前記第2の羽部は、前記動力発生装置に向けて送風することを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の発電機構造。
この構成によれば、第2の羽部が発生させる風によって、動力発生装置を冷却できる。すなわち、一つの遠心ファンによって、回転電機及び動力発生装置を冷却できる。
【0061】
(構成6)前記第2の羽部は、前記遠心ファンの周方向に間隔をあけて複数設けられ、前記遠心ファンの周方向において、前記羽部と前記第2の羽部とは同じ位置に設けられることを特徴とする構成5記載の発電機構造。
この構成によれば、羽部及び第2の羽部の剛性を高くできる。また、羽部及び第2の羽部を容易に形成できる。
【符号の説明】
【0062】
12 パワーユニット(動力発生装置)
31 クランク軸(駆動軸)
45 フライホイール
45a 壁部
45e 開口
45f 外側面(壁部における駆動軸の軸方向外側の面)
46 回転電機
51 ファン(遠心ファン)
60 ベース部
63 羽部
63b 他の羽部
64 第2の羽部
66 位置決め突起
68a 第1のリブ(リブ)
68b 第2のリブ(リブ)
68c 第3のリブ(リブ)
G 隙間