(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】浮体、液化二酸化炭素の積込方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20241129BHJP
F17C 6/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B63B25/16 M
F17C6/00
(21)【出願番号】P 2022079224
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2024-10-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】小形 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/092236(WO,A1)
【文献】特開2021-176728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08,25/16
F17C 6/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
前記タンクの内外を上方から下方に向かって貫通し、外部から供給される液化二酸化炭素を前記タンク内に放出する積込配管部と、
前記タンクの外部で、一端が前記積込配管部に接続されるとともに、他端が前記一端よりも下流側で前記積込配管部に接続され、内径が前記積込配管部よりも小さいバイパス配管部と、
前記液化二酸化炭素の流通経路を前記積込配管部と前記バイパス配管部とを切替可能な切替部と、
を備える浮体。
【請求項2】
前記バイパス配管部の前記一端は、前記積込配管部の配管頂部に接続されている
請求項1に記載の浮体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浮体における、液化二酸化炭素の積込方法であって、
前記バイパス配管部を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、
前記タンク内の液化二酸化炭素の液位が予め定められた液位に到達したら、前記積込配管部のみを通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、を含む
液化二酸化炭素の積込方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浮体、液化二酸化炭素の積込方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された燃料タンクは、液化ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を燃料タンクに積み込むための積込配管(パイプライン)を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タンク内に液化二酸化炭素を収容する場合、以下のような理由により、液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される可能性がある。すなわち、タンク内で開口する積込配管や揚荷配管の配管下端における液化二酸化炭素の圧力は、タンク運用圧に応じたものとなる。特許文献1に開示されたような構成では、積込配管や揚荷配管において最も高い位置となる配管頂部は、タンク内の最高液位よりも上方に位置する。配管頂部における液化二酸化炭素の圧力は、配管下端における液化二酸化炭素の圧力に対し、タンク内の液化二酸化炭素の液面と配管頂部との高低差によるヘッド圧に応じた分だけ低くなる。つまり、積込配管や揚荷配管においては、配管頂部における液化二酸化炭素の圧力が、タンク内における液化二酸化炭素の圧力よりも低くなる。
【0005】
液化二酸化炭素は、気相、液相、固相が共存する三重点の圧力(三重点圧力)が、LNGやLPGの三重点圧力に比較して高く、運用時におけるタンク運用圧との差異が小さい。その結果、タンク運用圧(タンクの設計圧力)によっては、液化二酸化炭素の圧力が最も低くなる配管頂部において、液化二酸化炭素の圧力が三重点圧力以下となり、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発が生じることがある。すると、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発の蒸発潜熱により、蒸発せずに残った液化二酸化炭素の温度低下が生じ、配管頂部内で液化二酸化炭素が凝固してドライアイスが生成される。積込配管や揚荷配管内でドライアイスが生成されると、配管内における液化二酸化炭素の流れが阻害され、液化二酸化炭素の積込・揚荷作業に影響を及ぼすことがある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、配管内のドライアイス生成を抑え、液化二酸化炭素の積込・揚荷作業を円滑に行うことができる浮体、液化二酸化炭素の積込方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る浮体は、浮体本体と、タンクと、積込配管部と、バイパス配管部と、切替部と、を備える。前記タンクは、前記浮体本体に配置されている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記積込配管部は、前記タンクの内外を上方から下方に向かって貫通している。前記積込配管部は、外部から供給される液化二酸化炭素を前記タンク内に放出する。前記バイパス配管部は、前記タンクの外部で、一端が前記積込配管部に接続されるとともに、他端が前記一端よりも下流側で前記積込配管部に接続されている。前記バイパス配管部は、内径が前記積込配管部よりも小さい。前記切替部は、前記液化二酸化炭素の流通経路を前記積込配管部と前記バイパス配管部とを切替可能である。
【0008】
本開示に係る液化二酸化炭素の積込方法は、上記したような浮体における、液化二酸化炭素の積込方法である。液化二酸化炭素の積込方法は、前記バイパス配管部を通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、前記タンク内の液化二酸化炭素の液位が予め定められた液位に到達したら、前記積込配管部のみを通して前記タンク内に液化二酸化炭素を積み込む工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の浮体、液化二酸化炭素の積込方法によれば、配管内のドライアイス生成を抑え、液化二酸化炭素の積込・揚荷作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る浮体としての船舶の概略構成を示す平面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられたタンク、積込配管、揚荷配管を示す図であり、
図1のII-II矢視断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法で、バイパス配管部を通して液化二酸化炭素を積み込んでいる状態を示す断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法で、積込配管部のみを通して液化二酸化炭素を積み込んでいる状態を示す断面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る浮体、液化二酸化炭素の積込方法について、
図1~
図5を参照して説明する。
(船舶の構成)
図1に示すように、本開示の実施形態において、浮体である船舶1は、液化二酸化炭素を運搬する。この船舶1は、浮体本体としての船体2と、タンク設備10と、を少なくとも備えている。
【0012】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底(図示せず)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底(図示せず)は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。これら一対の舷側3A,3B及び船底(図示せず)により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0013】
船体2内には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、上甲板5に対して下方の船底に向けて凹み、上方に開口している。
【0014】
(タンク設備の構成)
タンク設備10は、貨物搭載区画8内に、船首尾方向Daに沿って、複数が配置されている。本開示の実施形態において、タンク設備10は、船首尾方向Daに間隔を空けて二個配置されている。
【0015】
図2に示すように、タンク設備10は、タンク11と、積込配管20と、揚荷配管30と、を少なくとも備えている。
この実施形態において、タンク11は、船体2に配置されている。タンク11は、例えば、水平方向に延びる円筒状をなす。タンク11は、その内部に液化二酸化炭素Lを貯留可能である。タンク本体は、筒状部12と、端部球状部13と、を備えている。筒状部12は、水平方向を長手方向Dxとして延びている。この実施形態において、筒状部12は、長手方向Dxに直交する断面形状が円形の、円筒状に形成されている。端部球状部13は、筒状部12の長手方向Dxの両端部にそれぞれ配置されている。各端部球状部13は、半球状で、筒状部12の長手方向Dx両端の開口を閉塞している。なお、タンク11は、円筒状に限られるものではなく、タンク11は球形、方形等であってもよい。
【0016】
積込配管20は、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込む。積込配管20は、積込配管部50と、バイパス配管部53と、切替部55と、を備えている。
【0017】
積込配管部50は、第一積込配管部51と、第二積込配管部52と、を備えている。積込配管部50は、外部から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に放出する。
第一積込配管部51は、船外の液化二酸化炭素供給施設等から液化二酸化炭素が供給される供給管(図示せず)が着脱可能に接続される。第一積込配管部51は、タンク11の外部に配置されている。この実施形態における第一積込配管部51は、タンク11の上下方向Dvの上方で、水平方向に延びている。第一積込配管部51は、内径D1を有している。
【0018】
第二積込配管部52の基端52p(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、第一積込配管部51に接続されている。第二積込配管部52は、タンク11の頂部を貫通し、タンク11の内外を上下方向Dvの上方から下方に向かって延びている。第二積込配管部52の先端52q(言い換えれば、上下方向Dvにおける下側端)は、タンク11内の下部で下方を向いて開口している。第二積込配管部52は、内径D1を有している。第二積込配管部52は、後述するバイパス配管部53の他端53bよりも上流側に位置する第二積込配管上流部52aと、他端53bよりも下流側に位置する第二積込配管下流部52bと、を有している。
【0019】
バイパス配管部53は、タンク11の外部に配置されている。バイパス配管部53の一端53a(言い換えれば、上下方向Dvにおける上側端)は、積込配管部50の配管頂部50tにおいて、第一積込配管部51に接続されている。バイパス配管部53の一端53aは、第二積込配管部52に接続されていてもよい。バイパス配管部53は、一端53aと他端53bとの間で、第二積込配管上流部52aと並行して、上下方向Dvに延びている。バイパス配管部53の他端53b(言い換えれば、上下方向Dvにおける下側端)は、一端53aよりも下流側で、第二積込配管部52に接続されている。バイパス配管部53の他端53bは、タンク11の外部で、第二積込配管部52に接続されている。バイパス配管部53は、内径D1をよりも小さい内径D2を有している。
【0020】
切替部55は、液化二酸化炭素Lの流通経路を、積込配管部50とバイパス配管部53とで切替可能とする。切替部55は、開閉弁56、57を備えている。
開閉弁56は、第二積込配管部52に設けられている。この開閉弁56は、第二積込配管部52を開閉する。開閉弁57は、バイパス配管部53に設けられている。開閉弁57は、バイパス配管部53を開閉する。
【0021】
図3に示すように、切替部55において、開閉弁56を開状態とするとともに、開閉弁57を閉状態とした場合、液化二酸化炭素Lは、積込配管部50(第一積込配管部51、及び第二積込配管部52)のみを流通経路とする。この場合、液化二酸化炭素Lは、第一積込配管部51から、バイパス配管部53を通らずに、第二積込配管部52の第二積込配管上流部52a、第二積込配管下流部52bを通り、タンク11内に放出される。
【0022】
図4に示すように、切替部55において、開閉弁56を閉状態とするとともに、開閉弁57を開状態とした場合、液化二酸化炭素Lの流通経路は、バイパス配管部53に切り替わる。この場合、液化二酸化炭素Lは、第一積込配管部51から、バイパス配管部53、第二積込配管部52の第二積込配管下流部52bを経て、タンク11内に放出される。
【0023】
揚荷配管30は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを、陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外に送出する。揚荷配管30は、タンク11の外部からタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部に延びている。揚荷配管30の先端部は、タンク11内の下部に配置されている。揚荷配管30の先端部には、ポンプ31が設けられている。ポンプ31は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを吸い込む。揚荷配管30は、ポンプ31で吸い込んだ液化二酸化炭素Lを、タンク11外(船外)に送出する。
【0024】
(液化二酸化炭素の積込方法の手順)
図5に示すように、本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の積込方法S10は、バイパス配管部53を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S11と、積込配管部50のみを通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S12と、を含んでいる。
【0025】
バイパス配管部53を通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S11では、
図4に示すように、切替部55において、開閉弁56を閉状態、開閉弁57を開状態とする。これにより、液化二酸化炭素Lの流通経路がバイパス配管部53に切り替わる。この状態で、船外から供給される液化二酸化炭素Lは、第一積込配管部51から、第二積込配管上流部52aを迂回し、バイパス配管部53を経由して第二積込配管部52の第二積込配管下流部52bに流れ込む。液化二酸化炭素Lは、第二積込配管下流部52bの先端52qの開口から、タンク11内に送り込まれる。このとき、バイパス配管部53の内径D2は、一端53aと他端53bとの間でバイパス配管部53と並ぶ、第二積込配管部52の第二積込配管上流部52aの内径D1よりも小さい。そのため、工程S11では、液化二酸化炭素Lの流通経路をバイパス配管部53に切り替えることで、バイパス配管部53における圧力損失ΔPが大きくなる。
【0026】
ここで、積込配管20の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力PLは、下式(1)で表される。
PL=PT-ρg(h2-h1)/1000+ΔP ・・・(1)
ただし、
PL:積込配管20の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力(kPaG)
PT:タンク11の上部における液化二酸化炭素Lの圧力(kPaG)
ρ:液化二酸化炭素Lの液密度(kg/m3)
g:重力加速度(m/s2)
h2:タンク11の最下部から積込配管20の配管頂部50tまでの高さ(m)
h1:タンク11の最下部から液化二酸化炭素Lの液面までの高さ(m)
【0027】
上式(1)により、積込配管20の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力(PL)は、圧力損失ΔPの分だけ高められる。積込配管20の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力が高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管20内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。
【0028】
その後、
図3に示すように、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が、予め定められた液位(閾値)に到達したら、積込配管部50のみを通して液化二酸化炭素Lを積み込む工程S12に移行する。工程S12では、切替部55において、開閉弁56を開状態、開閉弁57を閉状態にする。これにより、バイパス配管部53が閉塞され、第一積込配管部51と第二積込配管52とが連通された状態になる。この状態で、船外から供給される液化二酸化炭素Lは、第一積込配管部51から、バイパス配管部53を通らず、第二積込配管部52の第二積込配管上流部52aと、第二積込配管下流部52bとを通してタンク11内に送り込まれる。つまり、液化二酸化炭素Lは、積込配管部50のみを通る。
【0029】
上記のようにタンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、予め定められた液位に達すると、タンク11内の液化二酸化炭素Lと積込配管20の配管頂部50tとの差圧が小さくなる。これにより、積込配管20の配管頂部50tで液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となる。上記予め定められた液位は、積込配管部50を用いた場合であっても、液化二酸化炭素のフラッシュ蒸発が生じない圧力に積込配管20の配管頂部50tの圧力を維持可能な液位と言い換えることもできる。
このとき、第二積込配管部52の第二積込配管上流部52aの内径D1は、バイパス配管部53の内径D2よりも大きい。そのため、工程S11に比較し、第二積込配管部52を通してタンク11内に供給する液化二酸化炭素Lの流量を増大させることができる。
【0030】
(作用効果)
上述したような船舶1では、液化二酸化炭素Lを、バイパス配管部53を経てタンク11内に積み込むことができる。バイパス配管部53の内径D2は、第二積込配管部52の第二積込配管上流部52aの内径D1よりも小さい。そのため、バイパス配管部53では、第二積込配管52の第二積込配管上流部52aよりも、圧力損失ΔPが大きくなる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管20内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
また、バイパス配管部53の一端53a、及び他端53bは、タンク11の外部で積込配管部50に接続されている。つまり、バイパス配管部53はタンク11の外部に配置されている。このため、積込配管部50のみが、タンク11の内外を貫通することになる。これにより、製造時に、バイパス配管部53をタンク11の内外に貫通させる必要、及び、バイパス配管部53をタンク11内で取り回す必要が無い。したがって、浮体1の製造を容易に行うことができる。また、積込配管部50、及びバイパス配管部53を含む配管の全長を抑え、材料コストの上昇を抑えることができる。
【0031】
また、バイパス配管部53の一端53aが、積込配管部50の配管頂部50tに接続されることで、バイパス配管部53による圧力損失ΔPの影響が、積込配管部50の配管頂部50tに効果的に及ぶ。これにより、積込配管部50内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることを、より有効に抑えられる。
【0032】
上述した液化二酸化炭素Lの積込方法S10では、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が予め定められた液位よりも低いときには、液化二酸化炭素Lを、バイパス配管部53を通してタンク11内に積み込むようにしている。そして、バイパス配管部53の内径D2は、第二積込配管部52の内径D1よりも小さいため、バイパス配管部53で生じる圧力損失ΔPにより、積込配管20の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力が高められる。これにより、積込配管20内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることを抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管20内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
また、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、予め定められた液位に達した後は、バイパス配管部53を通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込むようにしている。これにより、液化二酸化炭素Lの積込を短時間で行うことが可能となる。
【0033】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、二つのタンク11を備える構成としたが、タンク11の個数や配置はこれに限られない。三つ以上のタンク11を備えていてもよい。また、上記各実施形態では、複数のタンク11を船首尾方向Daに並べて配置する場合を例示したが、タンク11は、船幅方向(言い換えれば、左右舷方向)に並べて配置してもよい。
【0034】
さらに、上記実施形態では、積込配管20が陸上の液化二酸化炭素供給施設等、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込む場合について説明した。しかし、積込配管20は、船外から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込むものに限られない。例えば、同一の船舶1に複数のタンク11を備える場合、積込配管20が、所定のタンク11から供給される液化二酸化炭素Lを他のタンク11に積込むようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、浮体として船舶1を例示したが、これに限られない。浮体は、推進機構を備えない洋上浮体設備であってもよい。
【0036】
<付記>
実施形態に記載の浮体1、液化二酸化炭素Lの積込方法S10は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、前記浮体本体2に配置され、液化二酸化炭素Lを貯留可能なタンク11と、前記タンク11の内外を上方から下方に向かって貫通し、外部から供給される液化二酸化炭素Lを前記タンク11内に放出する積込配管部50と、前記タンク11の外部で、一端53aが前記積込配管部50に接続されるとともに、他端53bが前記一端53aよりも下流側で前記積込配管部50に接続され、内径D2が前記積込配管部50よりも小さいバイパス配管部53と、前記液化二酸化炭素Lの流通経路を前記積込配管部50と前記バイパス配管部53とを切替可能な切替部55と、を備える。
浮体1の例としては、船舶1や洋上浮体設備が挙げられる。浮体本体2の例としては、船体2や洋上浮体設備の浮体本体が挙げられる。
【0038】
この浮体1では、切替部55で、液化二酸化炭素Lの流通経路を、積込配管部50に切り替えた場合、液化二酸化炭素Lは、積込配管部50のみを通ってタンク11内に積み込まれる。また、切替部55で、液化二酸化炭素Lの流通経路を、バイパス配管部53に切り替えた場合、液化二酸化炭素Lは、バイパス配管部53を通ってタンク11内に積み込まれる。バイパス配管部53の内径D2は、積込配管部50の内径D1よりも小さい。そのため、バイパス配管部53では、積込配管部50よりも、圧力損失ΔPが大きくなる。これにより、液化二酸化炭素Lをバイパス配管部53に通した場合、タンク11内に積み込まれるまでの間に積込配管部50を流通する液化二酸化炭素Lの圧力が、圧力損失ΔPの分だけ高められる。積込配管部50の配管頂部50tにおける液化二酸化炭素Lの圧力が高められることで、液化二酸化炭素Lの圧力が三重点圧力に近づくことが抑えられる。これにより、積込配管部50内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。その結果、タンク11内に液化二酸化炭素Lを収容する場合において、積込配管部50内のドライアイス生成を抑え、積込作業を円滑に行うことが可能となる。
また、バイパス配管部53の一端53a、及び他端53bは、タンク11の外部で積込配管部50に接続されている。つまり、バイパス配管部53はタンク11の外部に配置されている。このため、積込配管部50のみが、タンク11の内外を貫通することになる。これにおり、製造時に、バイパス配管部53をタンク11の内外に貫通させる必要、及び、バイパス配管部53をタンク11内で取り回す必要が無い。したがって、浮体1の製造を容易に行うことができる。また、積込配管部50、及びバイパス配管部53を含む配管の全長を抑え、材料コストの上昇を抑えることができる。
【0039】
(2)第2の態様に係る浮体1は、(1)の浮体1であって、前記バイパス配管部53の前記一端53aは、前記積込配管部50の配管頂部50tに接続されている。
【0040】
これにより、バイパス配管部53の一端53aが、積込配管部50の配管頂部50tに接続されることで、バイパス配管部53による圧力損失ΔPの影響が、積込配管部50の配管頂部50tに効果的に及ぶ。これにより、積込配管部50内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが、より有効に抑えられる。
【0041】
(3)第3の態様に係る液化二酸化炭素Lの積込方法S10は、(1)又は(2)の浮体1における、液化二酸化炭素Lの積込方法S10であって、前記バイパス配管部53を通して前記タンク11内に液化二酸化炭素Lを積み込む工程S11と、前記タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が予め定められた液位に到達したら、前記積込配管部50のみを通して前記タンク11内に液化二酸化炭素Lを積み込む工程S12と、を含む。
【0042】
これにより、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が低いときには、バイパス配管部53を通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込むことで、積込配管部50内で液化二酸化炭素Lが凝固してドライアイスが生成されることが抑えられる。また、タンク11内の液化二酸化炭素Lの液位が上がり、タンク11内の液化二酸化炭素Lと積込配管部50の配管頂部50tとの差圧が小さくなり、配管頂部50tで液化二酸化炭素Lが凝固しにくい状態となった場合には、積込配管部50のみを通して液化二酸化炭素Lをタンク11に積み込む。これにより、液化二酸化炭素Lの積込を短時間で行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1…船舶(浮体) 2…船体(浮体本体) 2a…船首 2b…船尾 3A,3B…舷側 5…上甲板 7…上部構造 8…貨物搭載区画 10…タンク設備 11…タンク 12…筒状部 13…端部球状部 20…積込配管 30…揚荷配管 31…ポンプ 50…積込配管部 50t…配管頂部 51…第一積込配管部 52…第二積込配管部 52a…第二積込配管上流部 52b…第二積込配管下流部 52p…基端 52q…先端 53…バイパス配管部 53a…一端 53b…他端 55…切替部 56…開閉弁 57…開閉弁 D1…内径 D2…内径 Da…船首尾方向 Dv…上下方向 Dx…長手方向 L…液化二酸化炭素