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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のリヤサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/20 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
B62K25/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022178727
(22)【出願日】2022-11-08
(65)【公開番号】P2024068350
(43)【公開日】2024-05-20
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】早川 公視
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】土橋 光
(72)【発明者】
【氏名】細野 彰
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-103380(JP,A)
【文献】特開2011-046240(JP,A)
【文献】特開2012-025180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/00 - 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバ(41)及びリンク機構(42)により後輪(3)用のスイングアーム(5)を車体フレーム(6)に弾性的に支持する鞍乗型車両(1)のリヤサスペンション装置(40)において、
前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)は、車両上下方向に沿うようにエンジン(7)の後側に配置され、
前記ショックアブソーバ(41)の下端部は、前記リンク機構(42)に回動自在に連結され、
前記ショックアブソーバ(41)の上端部は、前記車体フレーム(6)に回動自在に連結され、
前記リンク機構(42)は、
前記ショックアブソーバ(41)の前記下端部と前記スイングアーム(5)とを連結する第1リンク部材(50)と、
前記第1リンク部材(50)と前記車体フレーム(6)とを連結する第2リンク部材(60)と、を備え、
前記第2リンク部材(60)は、前記第1リンク部材(50)と前記車体フレーム(6)とを繋ぎ且つ車両前後方向に沿うように延びる左右一対のアーム部(70)と、
前記左右一対のアーム部(70)同士を前記アーム部(70)の前端部と後端部との間の途中で繋ぎ且つ車幅方向に沿うように延びる横架部(80)と、を備える、
鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【請求項2】
前記ショックアブソーバ(41)は、車幅方向において前記左右一対のアーム部(70)の間に配置され、
前記横架部(80)は、前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)に沿う方向において前記アーム部(70)のうち前記ショックアブソーバ(41)とは反対側寄りに設けられている、
請求項1に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【請求項3】
前記横架部(80)は、車両側面視において前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)に沿う方向に長手を有する形状である、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【請求項4】
前記横架部(80)は、前記アーム部(70)のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部(90)に設けられている、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【請求項5】
前記横架部(80)は、前記アーム部(70)のうち前記車体フレーム(6)との連結部(71)の近傍に設けられている、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【請求項6】
車両側面視において、前記横架部(80)の前後寸法は、車両下側に向かうにつれて大きくなっている、
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のリヤサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ショックアブソーバ及びリンク機構により後輪用のスイングアームを車体フレームに弾性的に支持する鞍乗型車両のリヤサスペンション装置が開示されている。ショックアブソーバの軸線は、車両前後方向に沿うようにエンジンの下側に配置されている。ショックアブソーバの後端部は、リンク機構に回動自在に連結されている。ショックアブソーバの前端部は、車体フレームに回動自在に連結されている。リンク機構は、ショックアブソーバの後端部とスイングアームとを連結する第1リンク部材と、第1リンク部材と車体フレームとを連結する第2リンク部材と、を備える。第2リンク部材は、鳥居型の形状を有する。第2リンク部材は、車体フレームに回動自在に連結されるフレーム側連結部を備える。
【0003】
特許文献1のリヤサスペンション装置は、鳥居型の形状を有するリンク機構により車体側に設けられた左右の支持部が連結される構造である(鳥居型構造)。鳥居型構造は、車体側の左右支持部が車幅方向に沿うように延びる部分(フレーム側連結部に相当する第1の部分)で連結される。鳥居型構造は、第1の部分とは別に車幅方向に沿うように延びる第2の部分(フレーム側連結部と第1リンク部材との間に配置される部分)を更に備える。
一方、U字形状を有するリンク機構により車体側の左右支持部が連結される構造がある(U字型構造)。U字型構造は、車体側の左右支持部が車幅方向に沿うように延びる部分(第1の部分に相当)で連結されない構造に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6150284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車体側の構造やショックアブソーバのレイアウト次第では、以下の課題が生じる。
例えば、鳥居型構造の場合、ショックアブソーバが最伸長時から最圧縮時に移動する際に、鳥居型構造の一部(例えば、第2の部分)がショックアブソーバの配置自由度を狭める可能性がある。
一方、U字型構造の場合、車体側の左右支持部との連結部で内向き(車幅方向)の応力が生じ、連結部におけるフリクションが増加する可能性がある。
そのため、車体フレームとの連結部でのフリクションの増加を抑制しつつ、ショックアブソーバのレイアウトの自由度を確保することが望まれている。
【0006】
本願は上記課題の解決のため、車体フレームとの連結部でのフリクションの増加を抑制しつつ、ショックアブソーバのレイアウトの自由度を確保することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る鞍乗型車両のリヤサスペンション装置は、ショックアブソーバ(41)及びリンク機構(42)により後輪(3)用のスイングアーム(5)を車体フレーム(6)に弾性的に支持する鞍乗型車両(1)のリヤサスペンション装置(40)において、前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)は、車両上下方向に沿うようにエンジン(7)の後側に配置され、前記ショックアブソーバ(41)の下端部は、前記リンク機構(42)に回動自在に連結され、前記ショックアブソーバ(41)の上端部は、前記車体フレーム(6)に回動自在に連結され、前記リンク機構(42)は、前記ショックアブソーバ(41)の前記下端部と前記スイングアーム(5)とを連結する第1リンク部材(50)と、前記第1リンク部材(50)と前記車体フレーム(6)とを連結する第2リンク部材(60)と、を備え、前記第2リンク部材(60)は、前記第1リンク部材(50)と前記車体フレーム(6)とを繋ぎ且つ車両前後方向に沿うように延びる左右一対のアーム部(70)と、前記左右一対のアーム部(70)同士を前記アーム部(70)の前端部と後端部との間の途中で繋ぎ且つ車幅方向に沿うように延びる横架部(80)と、を備える。
【0008】
(2)上記(1)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置では、前記ショックアブソーバ(41)は、車幅方向において前記左右一対のアーム部(70)の間に配置され、前記横架部(80)は、前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)に沿う方向において前記アーム部(70)のうち前記ショックアブソーバ(41)とは反対側寄りに設けられていてもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置では、前記横架部(80)は、車両側面視において前記ショックアブソーバ(41)の軸線(SL)に沿う方向に長手を有する形状であってもよい。
【0010】
(4)上記(1)から(3)の何れかに記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置では、前記横架部(80)は、前記アーム部(70)のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部(90)に設けられていてもよい。
【0011】
(5)上記(1)から(4)の何れかに記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置では、前記横架部(80)は、前記アーム部(70)のうち前記車体フレーム(6)との連結部(71)の近傍に設けられていてもよい。
【0012】
(6)上記(1)から(5)の何れかに記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置では、車両側面視において、前記横架部(80)の前後寸法は、車両下側に向かうにつれて大きくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記(1)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、ショックアブソーバ及びリンク機構により後輪用のスイングアームを車体フレームに弾性的に支持する鞍乗型車両のリヤサスペンション装置において、ショックアブソーバの軸線は、車両上下方向に沿うようにエンジンの後側に配置され、ショックアブソーバの下端部は、リンク機構に回動自在に連結され、ショックアブソーバの上端部は、車体フレームに回動自在に連結され、リンク機構は、ショックアブソーバの下端部とスイングアームとを連結する第1リンク部材と、第1リンク部材と車体フレームとを連結する第2リンク部材と、を備え、第2リンク部材は、第1リンク部材と車体フレームとを繋ぎ且つ車両前後方向に沿うように延びる左右一対のアーム部と、左右一対のアーム部同士をアーム部の前端部と後端部との間の途中で繋ぎ且つ車幅方向に沿うように延びる横架部と、を備えることで、以下の効果を奏する。
第2リンク部材は、横架部により左右一対のアーム部同士がアーム部の前後間の途中で繋がれることで、H字形状を有する構造となる。そのため、U字型構造の場合と比較して、第2リンク部材の剛性が向上する。これにより、左右一対のアーム部と車体フレームとの連結部で車幅方向の応力が生じることに起因するフリクションの増加を抑制することができる。加えて、第2リンク部材は、横架部とは別に車幅方向に沿うように延びる部分(鳥居型構造の第2の部分に相当)を有しない。そのため、鳥居型構造の場合と比較して、リンク構造がショックアブソーバの配置自由度を狭める可能性は低い。したがって、車体フレームとの連結部でのフリクションの増加を抑制しつつ、ショックアブソーバのレイアウトの自由度を確保することができる。
【0014】
本発明の上記(2)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、ショックアブソーバは、車幅方向において左右一対のアーム部の間に配置され、横架部は、ショックアブソーバの軸線に沿う方向においてアーム部のうちショックアブソーバとは反対側寄りに設けられていることで、以下の効果を奏する。
横架部がショックアブソーバの軸線に沿う方向においてアーム部のうちショックアブソーバと同じ側寄りに設けられている場合と比較して、横架部がショックアブソーバの配置自由度を制約しにくくすることができる。
【0015】
本発明の上記(3)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、横架部は、車両側面視においてショックアブソーバの軸線に沿う方向に長手を有する形状であることで、以下の効果を奏する。
横架部が車両側面視においてショックアブソーバの軸線と直交する方向に長手を有する形状である場合と比較して、ショックアブソーバの伸縮時に生じる応力が加わる方向に高い剛性を持たせることができる。加えて、ショックアブソーバの配置スペースを確保することができる。
【0016】
本発明の上記(4)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、横架部は、アーム部のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部に設けられていることで、以下の効果を奏する。
横架部がアーム部のうち他部(厚肉部よりも薄肉に形成された薄肉部)に設けられている場合と比較して、第2リンク部材の剛性が更に向上する。したがって、車体フレームとの連結部でのフリクションの増加を更に抑制することができる。
【0017】
本発明の上記(5)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、横架部は、アーム部のうち車体フレームとの連結部の近傍に設けられていることで、以下の効果を奏する。
横架部がアーム部のうち車体フレームとの連結部とは反対側(例えば、第1リンク部材との連結部の近傍)に設けられている場合と比較して、車体フレームとの連結部におけるガタツキを抑制することができる。したがって、車体フレームとの連結部でのフリクションの増加を更に抑制することができる。
【0018】
本発明の上記(6)に記載の鞍乗型車両のリヤサスペンション装置によれば、車両側面視において、横架部の前後寸法は、車両下側に向かうにつれて大きくなっていることで、以下の効果を奏する。
車両側面視において横架部の前後寸法が車両上側に向かうにつれて大きくなっている場合と比較して、ショックアブソーバの伸縮時に生じる応力が加わる方向に高い剛性を持たせることができる。加えて、ショックアブソーバの配置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
図2】第1実施形態に係るリヤサスペンション装置の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る第2リンク部材の上面図である。
図4図3の矢視IVから見た第2リンク部材の左側面図である。
図5図3の矢視Vから見た第2リンク部材の後面図である。
図6】第2実施形態に係るリヤサスペンション装置の斜視図である。
図7】第2実施形態に係る第2リンク部材の上面図である。
図8図7の矢視VIIIから見た第2リンク部材の左側面図である。
図9図7の矢視IXから見た第2リンク部材の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、車両の一例としての自動二輪車(鞍乗型車両の一例)を挙げて説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0021】
<第1実施形態>
<自動二輪車>
図1に示すように、自動二輪車1は、オフロードタイプの自動二輪車である。自動二輪車1は、前輪2および後輪3と、前輪2を支持するフロントフォーク4と、後輪3を支持するスイングアーム5と、フロントフォーク4およびスイングアーム5を支持する車体フレーム6と、車体フレーム6に支持されるエンジン7(内燃機関、原動機)と、を備える。
【0022】
左右一対のフロントフォーク4の上部は、ステアリングステム10を介して車体フレーム6のヘッドパイプ11に操舵可能に支持されている。ステアリングステム10のトップブリッジ上には、バータイプのハンドル12が取り付けられている。
【0023】
車体フレーム6は、ツインスパー型のクレードルフレームを構成している。車体フレーム6は、ヘッドパイプ11と、左右一対のメインチューブ15と、左右一対のピボットフレーム16と、ダウンフレーム17と、左右一対のロアフレーム18と、シートフレーム19と、を備える。
【0024】
ヘッドパイプ11は、車両側面視において、ヘッドパイプ11の上端がヘッドパイプ11の下端よりも車両後方に位置するように傾斜している。
メインチューブ15は、車両側面視において、ヘッドパイプ11の後上部から後下がりに傾斜している。メインチューブ15の後端部は、車体前後中間部においてピボットフレーム16の上端部に連なっている。
ピボットフレーム16は、車両側面視において、メインチューブ15の後端部から前下がりに傾斜している。
【0025】
ダウンフレーム17は、ヘッドパイプ11の後下部からメインチューブ15よりも急傾斜をなして斜め後下方へ延びている。
ロアフレーム18は、ダウンフレーム17の下端部から左右に分岐して後方へ延びている。ロアフレーム18の後部は、ピボットフレーム16の下端部に接続されている。
シートフレーム19は、メインチューブ15の後部に接続されている。
【0026】
ピボットフレーム16の下部には、スイングアーム5の前端部が上下揺動可能に支持されている。スイングアーム5の後端部には、後輪3が支持されている。スイングアーム5の前下部には、リンク機構42を介してショックアブソーバ41の下端部が連結されている。ショックアブソーバ41の上端部は、左右メインチューブ15の後端部近傍の間に渡るクロスメンバ(不図示)に連結されている。
【0027】
エンジン7は、ツインスパー型のクレードルフレームを構成する車体フレーム6の内側部に搭載されている。例えば、エンジン7は、車幅方向(車両左右方向)に平行なクランク軸を有する単気筒エンジンである。エンジン7の下部は、クランクケース20を構成している。クランクケース20の前上部には、シリンダ21が略垂直に設けられている。
【0028】
シリンダ21の後部には、エンジン吸気系のスロットルボディ(不図示)が接続されている。シリンダ21の前部には、エンジン排気系の排気管(不図示)が接続されている。
クランクケース20の後部は、クラッチ及びトランスミッションを収容する変速機ケースを兼ねている。クランクケース20後部の左側部には、変速機の出力軸が突出している。出力軸と後輪3とは、チェーン式伝動機構25を介して連結されている。
【0029】
シリンダ21の上方であって左右メインチューブ15の間には、燃料タンク30が設けられている。メインチューブ15の後方であってシートフレーム19上には、シート31が設けられている。シート31は、車両前後方向に延在している。シート31の前部は、燃料タンク30の後部上面に支持されている。
【0030】
<リヤサスペンション装置>
図2に示すように、エンジン7の後側には、リヤサスペンション装置40が設けられている。リヤサスペンション装置40は、ショックアブソーバ41及びリンク機構42により後輪3用のスイングアーム5を車体フレーム6に弾性的に支持する。
【0031】
ショックアブソーバ41は、自動二輪車1に作用する衝撃を吸収する衝撃吸収装置である。ショックアブソーバ41の軸線SL(以下「ショック軸線SL」ともいう。)は、車両上下方向に沿うようにエンジン7の後側に配置されている。ショック軸線SLは、車両上下方向に対して若干前下がりに傾斜している。ショックアブソーバ41は、車両側面視において、ショックアブソーバ41の下端部よりもショックアブソーバ41の上端部が車両前方に位置するように傾斜して延びている。
【0032】
ショックアブソーバ41の下端部は、リンク機構42に回動自在に連結されている。ショックアブソーバ41の上端部は、車体フレーム6に回動自在に連結されている。例えば、ショックアブソーバ41の上端部は、左右一対のメインチューブ15の間に設けられた上側支持部(不図示のクロスメンバ)に回動自在に連結されている。
【0033】
リンク機構42は、ショックアブソーバ41の下端部とスイングアーム5とを連結する第1リンク部材50と、第1リンク部材50と車体フレーム6とを連結する第2リンク部材60と、を備える。
【0034】
第1リンク部材50は、車両側面視において、全体的にL字形状を有している。第1リンク部材50は、第1リンク部材50の一端部となる前端のショック側連結部51と、第1リンク部材50の他端部となる上端のスイング側連結部52と、ショック側連結部51とスイング側連結部52との間に設けられる第2リンク側連結部53と、を備える。
【0035】
ショック側連結部51は、ショックアブソーバ41の下端部に回動自在に連結されている。スイング側連結部52は、スイングアーム5の前部下側に設けられたスイング側リンク支持部55に回動自在に連結されている。第2リンク側連結部53は、第2リンク部材60の後端部に回動自在に連結されている。
【0036】
図3から図5を併せて参照し、第2リンク部材60は、車両上面視において、全体的にH字形状を有している。第2リンク部材60は、第1リンク部材50と車体フレーム6とを繋ぎ且つ車両前後方向に沿うように延びる左右一対のアーム部70と、左右一対のアーム部70同士をアーム部70の前端部と後端部との間の途中で繋ぎ且つ車幅方向に沿うように延びる横架部80と、を備える。
【0037】
アーム部70は、アーム部70の一端部となる前端の車体側連結部71と、アーム部70の他端部となる後端の第1リンク側連結部72と、車体側連結部71と第1リンク側連結部72とを繋ぐように車両前後方向に沿うように延びるアーム本体部73と、を備える。
【0038】
車体側連結部71は、左右一対のピボットフレーム16の下端部に設けられた車体側リンク支持部75に回動自在に連結されている。第1リンク側連結部72は、第1リンク部材50の第2リンク側連結部53に回動自在に連結されている。例えば、リンク機構42における各連結部は、車幅方向に延びる連結ピン等を介して互いに連結されることで、相対回動自在に構成されている。
【0039】
横架部80は、車両上下方向においてアーム部70のうちショックアブソーバ41とは反対側寄りに設けられている。横架部80は、車両側面視において、アーム部70の前側下部と重なるように設けられている。横架部80の一部は、車両側面視においてアーム部70の軸線AL(以下「アーム軸線AL」ともいう。)とアーム部70の下縁との間に設けられている。アーム軸線ALは、車両側面視において車体側連結部71の回動中心と第1リンク側連結部72の回動中心とを通る仮想直線に相当する。
【0040】
横架部80は、ショック軸線SLに沿う方向に長手を有する形状である。例えば、ショックアブソーバ41が最伸長時の状態では、横架部80の長手は、車両側面視においてショック軸線SLに対して若干斜めに交差していてもよい。一方、ショックアブソーバ41が最圧縮時の状態では、横架部80の長手は、車両側面視においてショック軸線SLに対して実質的に平行となることが好ましい。例えば、ショックアブソーバ41が最伸長時から最圧縮時に移動する過程において、横架部80の長手に沿う仮想直線とショック軸線SLとのなす角度は、0度以上45度未満の範囲内の角度となっていればよい。
【0041】
横架部80は、車両側面視において、角丸を有する矩形形状をなしている。横架部80の後上部は、車両側面視において、アーム軸線ALと重なる。横架部80は、車両側面視において、アーム軸線ALと重なる部分から前上方に傾斜して延びる第1辺部81と、第1辺部81の前上端から下方に延びる第2辺部82と、第2辺部82の下端から後上方に傾斜して延びる第3辺部83と、第3辺部83の後上端から上方に延びる第4辺部84と、を備える。
【0042】
第4辺部84は、車両側面視において、第4辺部84の下端(第3辺部83の後上端に繋がる部分)よりも第4辺部84の上端(第1辺部81の後下端に繋がる部分)が車両前方に位置するように傾斜して延びている。車両側面視において、第3辺部83と第4辺部84との前後間隔(横架部80の前後寸法)は、車両下側に向かうにつれて大きくなっている。
【0043】
横架部80は、アーム部70のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部90に設けられている。厚肉部90は、車両側面視において、アーム本体部73の前後中央部(アーム部70のうち他部)と車体側連結部71との間に設けられている。厚肉部90は、車両側面視において、円環状に形成された車体側連結部71の外周縁と滑らかに繋がる厚肉上縁91及び厚肉下縁92を有する。車両側面視において、厚肉上縁91及び厚肉下縁92の上下間隔(厚肉部90の上下寸法)は、車両後側に向かうにつれて小さくなり、アーム本体部73の前後中央部の上下寸法と実質的に同じになっている。
【0044】
厚肉部90は、車両上面視において、車体側連結部71の車幅方向内縁及び車幅方向外縁と繋がる厚肉内縁93及び厚肉外縁94を有する。車両上面視において、厚肉内縁93及び厚肉外縁94の車幅方向の間隔(厚肉部90の車幅方向寸法)は、車両後側に向かうにつれて小さくなり、アーム本体部73の前後中央部の車幅方向寸法と実質的に同じになっている。車両上面視において、厚肉外縁94は、車両前側かつ車幅方向内側に向かって湾曲する湾曲形状を有している。
【0045】
横架部80は、アーム部70のうち車体フレーム6との連結部である車体側連結部71の近傍に設けられている。横架部80は、車両側面視において、車体側連結部71の後縁と厚肉部90の後縁との間に設けられている。厚肉部90の後縁は、車両上面視において湾曲形状を有する厚肉部90の後端に相当する。
【0046】
横架部80のうちアーム部70に繋がる車幅方向外端部は、横架部80の車幅方向中央部より厚肉に形成されている。車両上面視において、横架部80の車幅方向外端部は、アーム部70(厚肉部90)の厚肉内縁93と繋がる前縁85及び後縁86を有する。車両上面視において、横架部80の車幅方向外端部の前縁85及び後縁86の前後間隔(横架部80の車幅方向外端部の前後寸法)は、車幅方向内側に向かうにつれて小さくなり、横架部80の車幅方向中央部の前後寸法と実質的に同じになっている。
【0047】
横架部80は、第2リンク部材60の後面視において、アーム部70の上下中央位置よりも若干下側寄りに配置されている。横架部80は、第2リンク部材60の後面視において、アーム部70のうち第1リンク側連結部72の上下寸法の範囲内に配置されている。
【0048】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の自動二輪車1のリヤサスペンション装置40は、ショックアブソーバ41及びリンク機構42により後輪3用のスイングアーム5を車体フレーム6に弾性的に支持する自動二輪車1のリヤサスペンション装置40において、ショックアブソーバ41の軸線SLは、車両上下方向に沿うようにエンジン7の後側に配置され、ショックアブソーバ41の下端部は、リンク機構42に回動自在に連結され、ショックアブソーバ41の上端部は、車体フレーム6に回動自在に連結され、リンク機構42は、ショックアブソーバ41の下端部とスイングアーム5とを連結する第1リンク部材50と、第1リンク部材50と車体フレーム6とを連結する第2リンク部材60と、を備え、第2リンク部材60は、第1リンク部材50と車体フレーム6とを繋ぎ且つ車両前後方向に沿うように延びる左右一対のアーム部70と、左右一対のアーム部70同士をアーム部70の前端部と後端部との間の途中で繋ぎ且つ車幅方向に沿うように延びる横架部80と、を備える。
この構成によれば、第2リンク部材60は、横架部80により左右一対のアーム部70同士がアーム部70の前後間の途中で繋がれることで、H字形状を有する構造となる。そのため、U字型構造の場合と比較して、第2リンク部材60の剛性が向上する。これにより、左右一対のアーム部70と車体フレーム6との連結部で車幅方向の応力が生じることに起因するフリクションの増加を抑制することができる。加えて、第2リンク部材60は、横架部80とは別に車幅方向に沿うように延びる部分(鳥居型構造の第2の部分に相当)を有しない。そのため、鳥居型構造の場合と比較して、リンク構造がショックアブソーバ41の配置自由度を狭める可能性は低い。したがって、車体フレーム6との連結部でのフリクションの増加を抑制しつつ、ショックアブソーバ41のレイアウトの自由度を確保することができる。
【0049】
上記実施形態では、ショックアブソーバ41は、車幅方向において左右一対のアーム部70の間に配置され、横架部80は、ショックアブソーバ41の軸線SLに沿う方向においてアーム部70のうちショックアブソーバ41とは反対側寄りに設けられている。
この構成によれば、横架部80がショックアブソーバ41の軸線SLに沿う方向においてアーム部70のうちショックアブソーバ41と同じ側寄りに設けられている場合と比較して、横架部80がショックアブソーバ41の配置自由度を制約しにくくすることができる。
【0050】
上記実施形態では、横架部80は、ショックアブソーバ41の軸線SLに沿う方向に長手を有する形状である。
この構成によれば、横架部80がショックアブソーバ41の軸線SLと直交する方向に長手を有する形状である場合と比較して、ショックアブソーバ41の伸縮時に生じる応力が加わる方向に高い剛性を持たせることができる。加えて、ショックアブソーバ41の配置スペースを確保することができる。
【0051】
上記実施形態では、横架部80は、アーム部70のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部90に設けられている。
この構成によれば、横架部80がアーム部70のうち他部(厚肉部90よりも薄肉に形成された薄肉部)に設けられている場合と比較して、第2リンク部材60の剛性が更に向上する。したがって、車体フレーム6との連結部でのフリクションの増加を更に抑制することができる。
【0052】
上記実施形態では、横架部80は、アーム部70のうち車体フレーム6との連結部である車体側連結部71の近傍に設けられている。
この構成によれば、横架部80がアーム部70のうち車体フレーム6との連結部(車体側連結部71)とは反対側(例えば、第1リンク部材50との連結部である第1リンク側連結部72の近傍)に設けられている場合と比較して、車体フレーム6との連結部(車体側連結部71)におけるガタツキを抑制することができる。したがって、車体フレーム6との連結部(車体側連結部71)でのフリクションの増加を更に抑制することができる。
【0053】
上記実施形態では、車両側面視において、横架部80の前後寸法は、車両下側に向かうにつれて大きくなっている。
この構成によれば、車両側面視において横架部80の前後寸法が車両上側に向かうにつれて大きくなっている場合と比較して、ショックアブソーバ41の伸縮時に生じる応力が加わる方向に高い剛性を持たせることができる。加えて、ショックアブソーバ41の配置スペースを確保することができる。
【0054】
<第2実施形態>
第1実施形態では、車両側面視において横架部80の後上部がアーム軸線ALと重なる例を挙げて説明したが、これに限らない。図6から図9に示すように、第2実施形態では、第2リンク部材260における横架部280の態様が上述した第1実施形態と相違している。以下の説明においては、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0055】
横架部280は、車両側面視において、アーム部70の前側下部と繋がるように設けられている。横架部280の全部は、車両側面視においてアーム軸線ALよりも下側に設けられている。横架部280は、アーム部70において厚肉下縁92に繋がるように設けられている。
【0056】
横架部280は、車両後面視において、U字形状を有している。横架部280のうちアーム部70に繋がる車幅方向外端部は、横架部280の車幅方向中央部より厚肉に形成されている。車両後面視において、横架部280の車幅方向外端部は、アーム部70(厚肉部90)の厚肉内縁93及び厚肉外縁94と繋がる内側縁281及び外側縁282を有する。車両後面視において、横架部280の車幅方向外端部の内側縁281及び外側縁282の車幅方向の間隔(横架部280の車幅方向外端部の車幅方向寸法)は、横架部280の車幅方向中央部の上下寸法よりも大きくなっており、厚肉部90の車幅方向寸法と実質的に同じになっている。
【0057】
第2実施形態では、横架部280の全部は、車両側面視においてアーム軸線ALよりも下側に設けられている。
この構成によれば、車両側面視において横架部280がアーム軸線ALと重なる場合と比較して、横架部280がショックアブソーバ41の配置自由度を更に制約しにくくすることができる。
【0058】
<変形例>
上記実施形態では、横架部は、ショックアブソーバの軸線に沿う方向においてアーム部のうちショックアブソーバとは反対側寄りに設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、横架部は、ショックアブソーバの軸線に沿う方向においてアーム部のうちショックアブソーバと同じ側寄りに設けられていてもよい。例えば、ショックアブソーバの軸線に沿う方向においてアーム部に対する横架部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0059】
上記実施形態では、横架部は、ショックアブソーバの軸線に沿う方向に長手を有する形状である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、横架部は、ショックアブソーバの軸線と直交する方向に長手を有する形状であってもよい。例えば、横架部は、ショックアブソーバの軸線に沿う方向と交差する方向に長手を有する形状であってもよい。例えば、横架部の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0060】
上記実施形態では、横架部は、アーム部のうち他部よりも厚肉に形成された厚肉部に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、横架部は、アーム部のうち他部(厚肉部よりも薄肉に形成された薄肉部)に設けられていてもよい。例えば、アーム部に対する横架部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
上記実施形態では、横架部は、アーム部のうち車体フレームとの連結部の近傍に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、横架部は、アーム部のうち車体フレームとの連結部とは反対側(例えば、第1リンク部材との連結部の近傍)に設けられていてもよい。例えば、アーム部に対する横架部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上記実施形態では、車両側面視において、横架部の前後寸法は、車両下側に向かうにつれて大きくなっている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車両側面視において、横架部の前後寸法は、車両上側に向かうにつれて大きくなっていてもよい。例えば、車両側面視において、横架部の前後寸法は、車両上下方向において一様であってもよい。例えば、横架部の前後寸法は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上記実施形態では、エンジンが単気筒エンジンである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、エンジンは、多気筒エンジンであってもよい。例えば、エンジンの態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上記実施形態では、鞍乗型車両の一例としての自動二輪車を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、本発明は、自動二輪車以外の鞍乗型車両に適用してもよい。例えば、鞍乗型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪(四輪バギー等)の車両にも適用可能である。
また、本発明は、原動機に電気モータを含む鞍乗型車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
3 後輪
5 スイングアーム
6 車体フレーム
7 エンジン
40 リヤサスペンション装置
41 ショックアブソーバ
42 リンク機構
50 第1リンク部材
60,260 第2リンク部材
70 アーム部
71 車体側連結部(アーム部のうち車体フレームとの連結部)
80,280 横架部
90 厚肉部
SL ショック軸線(ショックアブソーバの軸線)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9