(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20241129BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20241129BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20241129BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241129BHJP
F24F 110/40 20180101ALN20241129BHJP
【FI】
F24F7/06 L
F24F7/007 B
F24F7/10 Z
F24F11/74
F24F7/007 Z
F24F110:40
(21)【出願番号】P 2022183846
(22)【出願日】2022-11-17
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中園 慎治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】大島 光生
(72)【発明者】
【氏名】小崎 雄大
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-210421(JP,A)
【文献】特開2000-291992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/007
F24F 7/10
F24F 11/74
F24F 110/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と、第2空間と、前記第1空間及び前記第2空間に連通する第3空間と、を有する建物に設置される空調システムであって、
前記第1空間に設置され、前記第1空間の暖房又は冷房を行う空気調和装置と、
前記第1空間に設置され、前記第1空間へ外気を流入させる給気装置と、
前記第2空間に設置され、前記第2空間の空気を屋外に排出する第1排気装置と、
前記第1空間と前記第3空間とを接続する風路に設けられ、前記第1空間の空気を前記第3空間に送る送風装置と、を備え、
前記風路の吸込み口は前記第1空間
の天井に設けられ、前記風路の吹出し口は前記第3空間
の天井に設けられており、
前記第1空間を平面視した状態で、前記第1空間の中心を通り互いに直交する第1境界線及び第2境界線によって前記第1空間を4つの領域に分割した場合、前記吸込み口は、前記空気調和装置が設けられた領域の対角に位置する領域に配置されて
おり、
前記風路は、前記第1空間及び前記第3空間の天井裏に設けられ、ダクトによって構成されている空調システム。
【請求項2】
前記給気装置は、前記4つの領域のうち、前記空気調和装置と同じ領域に設置されている請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第1空間に設置され、前記第1空間の空気を屋外に排出する第2排気装置をさらに備え、
前記第2排気装置は、前記4つの領域のうち、前記空気調和装置及び前記吸込み口とは異なる領域に配置されている請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第1空間に設置され、被加熱物を加熱する加熱機器をさらに備え、
前記加熱機器は、前記4つの領域のうち、前記吸込み口とは異なる領域に設置されている請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記第1空間に設置され、前記第1空間の空気を屋外に排出する第2排気装置をさらに備え、
前記第2排気装置は、前記4つの領域のうち、前記加熱機器と同じ領域に配置されている請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記送風装置が運転している場合に、前記第3空間の圧力が前記第1空間の圧力よりも大きくなるよう調整する調整手段をさらに備える請求項1又は2に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物内の空調及び換気を行う空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅などの建物内の空調及び換気を行う空調システムにおいて、空気調和装置が設置された空調対象空間の空気を、空気調和装置が設置されていない非空調対象空間へ送ることで、建物内の温熱環境を改善することが知られている。例えば、特許文献1には、空調対象空間である居室から非空調対象空間である脱衣室へ、ダクトファンによって空気を送風する空調システムが開示されている。特許文献1の空調システムでは、暖房装置の暖房能力の余力及び非空調対象空間の暖房の必要性に基づきダクトファンを制御することで、複数の空間を効率的に暖房する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空調システムのように、居室から脱衣室へ送風する場合、居室におけるダクトの吸込口と暖房装置の位置が近いと、暖められた空気がすぐに吸込口から脱衣室に送風されてしまい、居室の温度ムラが大きくなる。この場合、居室の空調負荷の増加につながるとともに、居室にいる利用者の快適性が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、温熱環境を改善するとともに利用者の快適性の低下を抑制することができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る空調システムは、第1空間と、第2空間と、第1空間及び第2空間に連通する第3空間と、を有する建物に設置される空調システムであって、第1空間に設置され、第1空間の暖房又は冷房を行う空気調和装置と、第1空間に設置され、第1空間へ外気を流入させる給気装置と、第2空間に設置され、第2空間の空気を屋外に排出する第1排気装置と、第1空間と第3空間とを接続する風路に設けられ、第1空間の空気を第3空間に送る送風装置と、を備え、風路の吸込み口は第1空間の天井に設けられ、風路の吹出し口は第3空間の天井に設けられており、第1空間を平面視した状態で、第1空間の中心を通り互いに直交する第1境界線及び第2境界線によって第1空間を4つの領域に分割した場合、吸込み口は、空気調和装置が設けられた領域の対角に位置する領域に配置されており、風路は、第1空間及び第3空間の天井裏に設けられ、ダクトによって構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示における空調システムによれば、第1空間の空気を第3空間に送ることで温熱環境が改善される。また、吸込み口を空気調和装置が設けられた領域の対角に位置する領域に配置することで、第1空間の温度ムラが抑制され、利用者の快適性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る空調システムの概略構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る空調システムが設置された建物を
図1のA-A線で切断した場合の断面模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る空調システムが設置された建物を
図1のB-B線で切断した場合の断面模式図である。
【
図4】実施の形態1に係る空調システムにおける風路の吸込み口の配置を説明する図である。
【
図5】実施の形態1に係る空調システムの制御ブロック図である。
【
図6】送風装置が停止している場合の空気の流れを示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る空調システムにおける圧力調整の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1における圧力調整が実施されている場合の空気の流れを示す図である。
【
図9】実施の形態2に係る空調システムにおける給気装置の配置を説明する図である。
【
図10】実施の形態3に係る空調システムにおける第2排気装置の配置を説明する図である。
【
図11】実施の形態4に係る空調システムにおける加熱機器の配置を説明する図である。
【
図12】変形例に係る空調システムにおける第2排気装置及び加熱機器の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ及び配置等は、本開示の範囲内で適宜変更することができる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空調システム100の概略構成図である。実施の形態1の空調システム100は、住宅などの建物200に設置される。
図1は、建物200の平面図と、建物200に設置された空調システム100の各構成とを示している。
図2は、実施の形態1に係る空調システム100が設置された建物200を
図1のA-A線で切断した場合の断面模式図である。
図3は、実施の形態1に係る空調システム100が設置された建物200を
図1のB-B線で切断した場合の断面模式図である。
図1~
図3を用いて、本実施の形態の空調システム100の構成及び配置について説明する。
【0011】
空調システム100は、建物200の第1空間R1に設置された空気調和装置11及び給気装置12と、第2空間R2に設置された第1排気装置21と、第1空間R1と第3空間R3とを接続する風路4に設置された送風装置41と、制御装置5と、を備える。
【0012】
第1空間R1は、例えば居室である。第1空間R1は第3空間R3と隣接しており、第1空間R1と第3空間R3との間には、居室扉10が設けられている。
図2に示すように、空気調和装置11は、第1空間R1の壁に設置されている。なお、空気調和装置11は、第1空間R1の天井に設置されてもよいし、床置き型であってもよい。空気調和装置11は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器、膨張弁及び室内熱交換器からなる冷媒回路を備え、第1空間R1の暖房又は冷房を行う。空気調和装置11の制御部(不図示)によって、圧縮機の運転周波数、室外熱交換器に空気を送る室外ファンの風量、及び室外熱交換器に空気を供給する室内ファンの風量を変更することで、空気調和装置11の空調能力が制御される。
【0013】
図2に示すように、給気装置12は、第1空間R1の壁に設けられている。給気装置12は、外気を第1空間R1へ流入させる給気口である。また、給気装置12は、外気を第1空間R1へ吸い込むための給気ファンを備えてもよい。
【0014】
第2空間R2は、例えば脱衣室である。第2空間R2は第3空間R3と隣接しており、第2空間R2と第3空間R3との間には、脱衣室扉20が設けられている。
図3に示すように、第1排気装置21は、第2空間R2の壁に設置されている。第1排気装置21は、第2空間R2の空気を屋外へ排出する排気ファンである。第1排気装置21の排気風量は固定であってもよいし、可変であってもよい。
【0015】
第3空間R3は、例えば玄関である。第3空間R3は、第1空間R1及び第2空間R2と隣接し、第1空間R1及び第2空間R2と連通している。また、第3空間R3には、屋外に連通する玄関扉30が設けられている。
【0016】
図1及び
図2に示すように、第1空間R1及び第3空間R3の天井裏には、ダクトによって構成される風路4が設けられている。風路4の吸込み口42は第1空間R1の天井に設けられ、風路4の吹出し口43は第3空間R3の天井に設けられている。送風装置41は、風路4内に設置され、第1空間R1から第3空間R3へ空気を搬送する。送風装置41は、インバータを備えた送風ファンであり、回転数が可変に制御されることで、第1空間R1から第3空間R3への送風量が制御される。
【0017】
なお、建物200における第1空間R1、第2空間R2、及び第3空間R3の配置は、
図1~
図3の例に限定されるものではなく、各空間が互いに連通していれば、配置は任意である。ここで、「連通する」とは、居室扉10及び脱衣室扉20が開かれた状態だけでなく、各扉が閉じられた状態においても、各扉の隙間もしくは各扉又は壁に設けられた通気口などを通って空気の流動が可能であることをいう。
【0018】
図4は、実施の形態1に係る空調システム100における風路4の吸込み口42の配置を説明する図である。
図4に示すように、第1空間R1を平面視した状態で、第1空間R1の中心を通り互いに直交する第1境界線L1及び第2境界線L2によって第1空間R1を4つの領域R11、R12、R13、R14に分割したとする。この場合、風路4の吸込み口42は、空気調和装置11とは異なる領域に配置される。詳しくは、風路4の吸込み口42は、空気調和装置11が配置された領域R11の対角に位置する領域R14に配置される。言い換えると、吸込み口42は、空気調和装置11から離れた位置に配置される。
【0019】
ここで、仮に吸込み口42が、空気調和装置11が配置された領域R11と同じ領域R11に配置された場合、送風装置41の運転が開始されると、空気調和装置11から吹き出された空調空気が直ちに吸込み口42から吸い込まれ、第3空間R3に送風される。これにより、空気調和装置11から吹き出された空調空気が第1空間R1のその他の領域R12、R13及びR14に拡散されにくくなり、第1空間R1において温度分布が不均一となる温度ムラが発生してしまう。その結果、第1空間R1内にいる利用者の快適性が低下してしまう。
【0020】
そこで、本実施の形態では、風路4の吸込み口42を、空気調和装置11から離れた位置、すなわち空気調和装置11が配置された領域R11の対角に位置する領域R14に配置している。これにより、空気調和装置11から吹き出された空調空気が、第1空間R1内の領域R11、R12、R13、及びR14に拡散された後に吸込み口42から吸い込まれる。その結果、送風装置41による送風が行われる場合も、第1空間R1における温度ムラが抑制され、利用者の快適性が維持される。
【0021】
図1に戻って、制御装置5は、空気調和装置11、第1排気装置21及び送風装置41と無線通信可能に接続され、空気調和装置11及び第1排気装置21の運転情報に基づいて、送風装置41の運転を制御する。制御装置5は、例えば、CPU及びメモリを備えたスマートフォンなどの情報通信端末である。
【0022】
図5は、実施の形態1に係る空調システム100の制御ブロック図である。
図5に示すように、制御装置5は、情報取得部51と、送風制御部52とを有する。情報取得部51及び送風制御部52は、制御装置5のCPUがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、情報取得部51及び送風制御部52の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0023】
情報取得部51は、空気調和装置11及び第1排気装置21から運転情報を取得する。空気調和装置11の運転情報は、空気調和装置11の運転、停止、冷房又は暖房などの運転モード、及び連続運転又は断続運転などの運転状態に関する情報である。なお、連続運転は、空気調和装置11の圧縮機が連続して運転している状態であり、断続運転は、空調負荷が低い場合に圧縮機の運転と停止とを断続的に繰り返している状態である。また、第1排気装置21の運転情報は、第1排気装置21の運転、停止、及び運転時の排気風量に関する情報である。情報取得部51は、定期的(例えば数分毎)に空気調和装置11及び第1排気装置21から運転情報を取得して送風制御部52に出力する。
【0024】
送風制御部52は、情報取得部51が取得した空気調和装置11及び第1排気装置21の運転情報に基づき、送風装置41の運転、停止、及び運転時の送風量を制御する。送風制御部52による送風制御について、以下に説明する。
【0025】
図6は、送風装置41が停止している場合の空気の流れを示す図である。
図6では、空気調和装置11及び第1排気装置21が運転しており、送風装置41が停止している状態の空気の流れを示している。
図6に示すように、まず、給気装置12を通って第1空間R1に外気が流入し、空気調和装置11によって第1空間R1内の空気が加熱又は冷却される。第1空間R1の空気は、居室扉10の隙間又は通気口等を通って第3空間R3に流入する。そして、第3空間R3に流入した空気は、脱衣室扉20の隙間又は通気口等を通って第2空間R2に流入し、第1排気装置21から屋外に排出される。
【0026】
ここで、空気調和装置11及び第1排気装置21が駆動し、送風装置41が停止している場合、第1空間R1の圧力P1と、第2空間R2の圧力P2と、第3空間R3の圧力P3との関係は、P1>P3>P2となる。給気装置12を通って外気が流入する第1空間R1の圧力P1は大気圧と略同じとなることから、圧力P3は大気圧よりも低くなる。そのため、玄関扉30の隙間又は通気口などから第3空間R3へ外気が流入する。これにより、第3空間R3の温度が外気温度に応じて変化するとともに、花粉又はPM2.5が第3空間R3内に侵入することで、建物200内の利用者の快適性が低下する。
【0027】
また、送風装置41を運転した場合も、送風装置41の送風量が第1排気装置21の排気風量以下であると、第1空間R1~第3空間R3の圧力P1~P3の関係は、P1>P3>P2となり、
図6に示す空気の流れとなる。この場合も、玄関扉30の隙間又は通気口などから第3空間R3へ外気が流入するため、第1空間R1の空気を第3空間R3へ送風することによる温熱環境の改善効果が低下し、建物200内の利用者の快適性も低下する。
【0028】
そこで、本実施の形態の空調システム100は、第3空間R3の圧力P3が第1空間R1の圧力P1よりも大きくなるように各空間の圧力を調整する調整手段を備えている。本実施の形態においては、送風制御部52が調整手段として機能する。送風制御部52は、送風装置41の送風量が第1排気装置21の排気風量よりも大きくなるよう送風装置41の回転数を制御する。これにより、第3空間R3の圧力P3を第1空間R1の圧力P1よりも大きくすることができる。より詳しくは、第1空間R1の圧力P1と、第2空間R2の圧力P2と、第3空間R3の圧力P3との関係を、P3>P1>P2とすることができる。これにより、第3空間R3の圧力が大気圧よりも大きくなるため、玄関扉30の隙間又は通気口などから第3空間R3への外気の流入を抑制することができる。
【0029】
図7は、実施の形態1に係る空調システム100における圧力調整の流れを示すフローチャートである。本実施の形態では、送風装置41の送風制御によって圧力調整が行われる。
図7のフローは制御装置5によって実行される。まず、制御装置5の情報取得部51は、空気調和装置11及び第1排気装置21の運転情報を取得する(S1)。
【0030】
ここで取得される運転情報は、空気調和装置11の運転状態、及び第1排気装置21の排気風量である。空気調和装置11は、利用者がリモートコントローラ(不図示)などを操作することで運転が開始される。空気調和装置11は、第1空間R1の温度が利用者によって設定された設定温度となるように、冷房運転又は暖房運転を実施する。また、第1排気装置21は、予め設定された排気風量で運転し、第2空間R2の空気を屋外に排気する。ここで、第1排気装置21の排気風量は、例えば建物200内の換気回数が0.5回/hを満たす風量に設定される。
【0031】
制御装置5の送風制御部52は、情報取得部51が取得した運転情報に基づき、送風装置41の送風の開始条件が満たされるか否かを判断する(S2)。ここでは、空気調和装置11の空調能力に余力があること、言い換えると第1空間R1における空調負荷が小さいことが、送風の開始条件とされる。空気調和装置11の空調能力に余力がない状態で、第3空間R3への送風を行った場合、第1空間R1を充分に暖房又は冷房できず、第1空間R1にいる利用者の快適性が低下してしまうためである。具体的には、開始条件は下記の条件(A)又は条件(B)の何れかとする。
(A)空気調和装置11の運転開始後、予め設定された第1時間(例えば15分)が経過したこと
(B)空気調和装置11が断続運転をしていること
【0032】
開始条件が満たされない場合(S2:NO)、開始条件が満たされるまで待機する。開始条件が満たされた場合(S2:YES)、送風制御部52は、送風装置41を運転させ、第1空間R1から第3空間R3への送風を開始する(S3)。このとき、送風制御部52は、送風装置41の送風量が第1排気装置21の排気風量よりも大きくなるよう、送風装置41の回転数を制御する。ここで、送風装置41の送風量の上限は任意であるが、第1空間R1の空気調和装置11の空調負荷が増加しない程度とする。
【0033】
図8は、実施の形態1における圧力調整が実施されている場合の空気の流れを示す図である。すなわち、
図8は、空気調和装置11及び第1排気装置21が駆動しており、さらに送風装置41の送風量が第1排気装置21の排気風量よりも大きくなるよう、送風装置41が駆動している状態の空気の流れを示している。
図8に示すように、まず、給気装置12を通って第1空間R1に外気が流入し、空気調和装置11によって第1空間R1内の空気が加熱又は冷却される。第1空間R1の空気は、送風装置41によって風路4を通って第3空間R3に送風される。そして、第3空間R3に流入した空気は、脱衣室扉20の隙間又は通気口等を通って第2空間R2に流入し、第1排気装置21から屋外に排出される。
【0034】
ここで、送風装置41の送風量が第1排気装置21の排気風量よりも大きいことにより、第1空間R1の圧力P1と、第2空間R2の圧力P2と、第3空間R3の圧力P3との関係は、P3>P1>P2となる。これにより、玄関扉30の隙間又は通気口などから第3空間R3への外気の流入が抑制される。その結果、第1空間R1からの送風により第3空間R3の温熱環境が改善されるとともに、花粉又はPM2.5が第3空間R3内に侵入することが抑制され、建物200内の利用者の快適性が向上する。また、第3空間R3の空気は、居室扉10の隙間又は通気口等を通って第1空間R1に流入して循環する。これにより、建物200内の空調空気が循環する領域が増加し、建物200内全体の温熱環境が改善する。
【0035】
図7に戻って、送風制御部52は、終了条件が満たされたか否かを判断する(S4)。ここでは、第1空間R1から第3空間R3への送風効果が低下したことが、送風の終了条件とされる。具体的には、終了条件は、空気調和装置11が停止してから予め設定された第2時間(例えば10分)経過したことである。空気調和装置11の停止後も、空気調和装置11による空調が行われていた第1空間R1からの送風を第2時間が経過するまで継続することで、建物200内の空気の循環が継続され、温熱環境を改善することができる。終了条件が満たされない場合(S4:NO)、終了条件が満たされるまで送風を継続する。そして、終了条件が満たされた場合(S4:YES)、送風制御部52は、送風装置41を停止させる(S5)。
【0036】
以上のように、本実施の形態の空調システム100では、風路4に設けられた送風装置41により第1空間R1の空調空気を第3空間R3へ送風することにより、建物200の温熱環境が改善する。また、風路4の吸込み口42を空気調和装置11が設けられた領域R11の対角に位置する領域R14に設けることで、第1空間R1における温度ムラの発生を抑制することができ、利用者の快適性の低下を抑制できる。また、送風装置41の運転時における送風量を第1排気装置21の排気風量よりも大きくすることで、第3空間R3の圧力P3を第1空間R1の圧力P1よりも大きくすることができる。これにより、建物200内の循環気流を形成すること、及び外気の流入を抑制することが可能となり、建物200における温熱環境の改善効果の低下が抑制され、利用者の快適性を向上させることができる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2の空調システム100Aについて説明する。実施の形態2の空調システム100Aは、給気装置12の位置が実施の形態1と相違する。空調システム100Aのその他の構成、及び送風装置41の送風制御については、実施の形態1と同じである。
【0038】
図9は、実施の形態2に係る空調システム100Aにおける給気装置12の配置を説明する図である。
図9に示すように、第1空間R1を平面視した状態で、第1空間R1の中心を通り互いに直交する第1境界線L1及び第2境界線L2によって第1空間R1を4つの領域R11~R14に分割した場合、給気装置12は、空気調和装置11と同じ領域R11に配置される。言い換えると、給気装置12は、空気調和装置11の近くに配置される。
【0039】
以上のように、本実施の形態の空調システム100Aでは、給気装置12を空気調和装置11と同じ領域に配置することにより、給気装置12から給気された空気と空調空気とが混ざりやすくなるため、第1空間R1内の温度ムラが解消されやすくなる。これにより、実施の形態1の効果に加え、第1空間R1内の温度ムラの発生をより抑制することができる。また、空気調和装置11が給気装置12から給気された外気を早めに吸い込むことで、温度差のある新鮮な外気による空調を促すことが可能となる。
【0040】
実施の形態3.
実施の形態3の空調システム100Bについて説明する。実施の形態3の空調システム100Bは、第1空間R1に設けられた第2排気装置13をさらに備える点において、実施の形態2と相違する。空調システム100Bのその他の構成、及び送風装置41の送風制御については、実施の形態2と同じである。
【0041】
図10は、実施の形態3に係る空調システム100Bにおける第2排気装置13の配置を説明する図である。第2排気装置13は、第1空間R1の壁に設置されている。第2排気装置13は、第1空間R1の空気を屋外へ排出する排気ファンである。第2排気装置13の排気風量は固定であってもよいし、可変であってもよい。
【0042】
図10に示すように、第1空間R1を平面視した状態で、第1空間R1の中心を通り互いに直交する第1境界線L1及び第2境界線L2によって第1空間R1を4つの領域R11~R14に分割した場合、第2排気装置13は、空気調和装置11及び風路4の吸込み口42とは異なる領域に配置される。詳しくは、第2排気装置13は、空気調和装置11が配置された領域R11及び吸込み口42が配置された領域R14とは異なる領域R12に配置される。なお、第2排気装置13は、領域R13に配置されてもよい。言い換えると、第2排気装置13は、空気調和装置11及び吸込み口42から離れた位置に配置される。
【0043】
ここで、仮に第2排気装置13が、空気調和装置11と同じ領域R11に配置された場合、空気調和装置11から吹き出された空調空気が、第2排気装置13に誘引され第2排気装置13から排気されてしまう。これにより、空気調和装置11から吹き出された空調空気がその他の領域R12、R13、R14に拡散されにくくなり、第1空間R1において温度ムラが発生してしまう。また、第2排気装置13が、風路4の吸込み口42と同じ領域R14に配置された場合、空調空気が吸込み口42から吸い込まれる前に第2排気装置13から排気されてしまう。これにより、第3空間R3に空調空気を送ることができず、温熱環境の改善効果が低下してしまう。
【0044】
そこで、本実施の形態では、第2排気装置13を、空気調和装置11及び吸込み口42とは異なる領域に配置することで、空気調和装置11によって空調された空気の排気を低減することができる。これにより、第3空間R3の温熱環境の改善効果の低下及び第1空間R1内の温度ムラを抑制し、利用者の快適性を維持することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態の空調システム100Bでは、第1空間R1に第2排気装置13を設けた場合も、第2排気装置13を空気調和装置11及び吸込み口42とは異なる領域に配置することにより、利用者の快適性を維持し、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0046】
実施の形態4.
実施の形態4の空調システム100Cについて説明する。実施の形態4の空調システム100Cは、第1空間R1に設けられた加熱機器14をさらに備える点において、実施の形態2と相違する。空調システム100Cのその他の構成、及び送風装置41の送風制御については、実施の形態2と同じである。
【0047】
図11は、実施の形態4に係る空調システム100Cにおける加熱機器14の配置を説明する図である。加熱機器14は、第1空間R1に設置されている。加熱機器14は、ガス又は電気を熱源として食材などの被加熱物を加熱するガスコンロ又はIHクッキングヒータなどである。
【0048】
図11に示すように、第1空間R1を平面視した状態で、第1空間R1の中心を通り互いに直交する第1境界線L1及び第2境界線L2によって第1空間R1を4つの領域R11~R14に分割した場合、加熱機器14は、風路4の吸込み口42とは異なる領域に配置される。詳しくは、加熱機器14は、吸込み口42が配置された領域R14とは異なる領域R12に配置される。なお、加熱機器14は、領域R11又はR13に配置されてもよい。言い換えると、加熱機器14は、吸込み口42から離れた位置に配置される。
【0049】
ここで、仮に加熱機器14が、風路4の吸込み口42と同じ領域R14に配置された場合、加熱機器14により加熱された空気及び加熱機器14による食材の調理によって発生した臭気などが吸込み口42から吸い込まれ、第3空間R3に送風されてしまう。そこで、本実施の形態では、加熱機器14を、吸込み口42とは異なる領域に配置することで、加熱機器14による加熱又は臭気の影響がない空調空気を第3空間R3へ送風することができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態の空調システム100Cでは、第1空間R1に加熱機器14を設けた場合も、加熱機器14を、吸込み口42とは異なる領域に配置することで、利用者の快適性を維持し、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0051】
以上が実施の形態の説明であるが、上記の実施の形態は変形及び組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態4の空調システム100Cにおいて、実施の形態3の第2排気装置13をさらに備える構成としてもよい。
図12は、変形例に係る空調システム100Dにおける第2排気装置13及び加熱機器14の配置を説明する図である。
図12に示すように、第2排気装置13は、加熱機器14と同じ領域R12に配置される。言い換えると、第2排気装置13は加熱機器14の近くに配置される。これにより、加熱機器14により加熱された空気及び加熱機器14による食材の調理によって発生した臭気を第2排気装置13によって効率的に排気でき、利用者の快適性が向上する。
【0052】
また、制御装置5の構成及び所属は上記実施の形態に限定されない。例えば、制御装置5は、空気調和装置11の制御装置であってもよいし、送風装置41に内蔵された制御装置であってもよい。また、制御装置5の各機能部は、それぞれ異なる制御装置で実現されてもよい。また、上記実施の形態では、送風装置41の送風量を制御することで第3空間R3の圧力P3が第1空間R1の圧力P1よりも大きくなるよう調整したが、これに限定されるものではない。例えば、第2空間R2に配置された第1排気装置21の排気風量を送風装置41の送風量よりも小さくなるよう制御することで、第3空間R3の圧力P3を第1空間R1の圧力P1よりも大きくしてもよい。
【0053】
また、送風装置41による送風の開始条件及び終了条件は、上記実施の形態の例に限定されるものではない。例えば、制御装置5の情報取得部51によって外部機器から外気温度又は気象情報を取得し、これらを開始条件に加えてもよい。具体的には、空気調和装置11が冷房運転を行っている場合は、上記の条件(A)又は条件(B)の何れかを満たすこと、且つ外気温度が予め設定された第1温度(例えば30℃)以上であることを開始条件とする。また、空気調和装置11が暖房運転を行っている場合は、条件(A)又は条件(B)の何れかを満たすこと、且つ外気温度が予め設定された第2温度(例えば10℃)以下であることを開始条件とする。又は、空気調和装置11が冷房運転を行っている場合は、条件(A)又は条件(B)の何れかを満たすこと、且つ晴天であることを開始条件とする。
【0054】
このように、送風の開始条件として、外気温度又は天気に関する情報などの環境情報を加えることで、第3空間R3の空調が必要な場合に送風を行って温熱効果を改善できるとともに、無駄な送風を抑制し、消費電力を削減することができる。
【0055】
また、送風制御部52は、第3空間R3の状況を送風の終了条件に加えてもよい。例えば、玄関扉30が開かれている場合は、外気が第3空間R3に流入しているため、第1空間R1の空気を第3空間R3に送風した場合も、温熱効果が低く、且つ空気調和装置11の空調負荷が増加する。そのため、送風制御部52は、第3空間R3の玄関扉30が予め設定された第3時間(例えば5分)開いていることを、送風の終了条件としてもよい。
【0056】
玄関扉30が開いているか否かは、送風装置41のモータのトルクの変化を検知して判断することができる。又は、玄関扉30が開いているか否かを、玄関扉30に設けた開閉センサで検知してもよいし、第3空間R3に温度センサを設け、第3空間R3の温度が急変した場合に、玄関扉30が開けられたと判定してもよい。
【0057】
さらに、送風制御部52は、吹出し口43から吹き出される空気の温度を送風の終了条件に加えてもよい。例えば、空気調和装置11が冷房運転を行っている場合であって、吹出し口43から吹き出される空気の温度が第3空間R3の温度よりも高いことを終了条件としてもよい。また、空気調和装置11が暖房運転を行っている場合であって、吹出し口43から吹き出される空気の温度が第3空間R3の温度よりも低いことを終了条件としてもよい。これにより、風路4の破損などの異常が発生した場合に、送風装置41を停止することができ、無駄な送風を抑制できる。その結果、空気調和装置11の負荷の増加を抑制し、消費電力を削減することができる。
【0058】
また、送風制御部52は、冬季の晴天時には、空気調和装置11の運転の有無にかかわらず、昼間の予め定められた時間帯に、送風装置41を運転し、第1空間R1から第3空間R3への送風を行ってもよい。これにより、第1空間R1の室温過昇を抑制し、空気調和装置11による空調を用いずに建物200内全体の温熱環境を改善することができる。
【0059】
また、送風制御部52は、晴天時の日没前後に送風装置41が運転している場合は、運転を停止させる、又は送風量を低下させる制御を行ってもよい。晴天時は、昼間の太陽光発電量と日没後の太陽光発電量の差が大きくなり、日没前後には太陽光発電以外の電力の需要が急増することで、需給バランスが崩れる恐れがある。そのため、晴天時の日没前後に送風装置41の運転を停止させることで、消費電力量を削減することができ、電力供給の安定化に寄与することができる。
【0060】
また、上記の説明における「屋外」は、建物200の外だけでなく、建物200内の駐車場などの非空調対象空間である室外も含んでもよいまた、「外気」は建物200の外の空気だけでなく、非空調対象空間である室外の空気も含んでもよい。
【0061】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0062】
(付記1)
第1空間と、第2空間と、前記第1空間及び前記第2空間に連通する第3空間と、を有する建物に設置される空調システムであって、
前記第1空間に設置され、前記第1空間の暖房又は冷房を行う空気調和装置と、
前記第1空間に設置され、前記第1空間へ外気を流入させる給気装置と、
前記第2空間に設置され、前記第2空間の空気を屋外に排出する第1排気装置と、
前記第1空間と前記第3空間とを接続する風路に設けられ、前記第1空間の空気を前記第3空間に送る送風装置と、を備え、
前記風路の吸込み口は前記第1空間に設けられ、前記風路の吹出し口は前記第3空間に設けられており、
前記第1空間を平面視した状態で、前記第1空間の中心を通り互いに直交する第1境界線及び第2境界線によって前記第1空間を4つの領域に分割した場合、前記吸込み口は、前記空気調和装置が設けられた領域の対角に位置する領域に配置されている空調システム。
(付記2)
前記給気装置は、前記4つの領域のうち、前記空気調和装置と同じ領域に設置されている付記1に記載の空調システム。
(付記3)
前記第1空間に設置され、前記第1空間の空気を屋外に排出する第2排気装置をさらに備え、
前記第2排気装置は、前記4つの領域のうち、前記空気調和装置及び前記吸込み口とは異なる領域に配置されている付記1又は2に記載の空調システム。
(付記4)
前記第1空間に設置され、被加熱物を加熱する加熱機器をさらに備え、
前記加熱機器は、前記4つの領域のうち、前記吸込み口とは異なる領域に設置されている付記1~3の何れか一つに記載の空調システム。
(付記5)
前記第1空間に設置され、前記第1空間の空気を屋外に排出する第2排気装置をさらに備え、
前記第2排気装置は、前記4つの領域のうち、前記加熱機器と同じ領域に配置されている付記4に記載の空調システム。
(付記6)
前記送風装置が運転している場合に、前記第3空間の圧力が前記第1空間の圧力よりも大きくなるよう調整する調整手段をさらに備える付記1~5の何れか一つに記載の空調システム。
【符号の説明】
【0063】
4 風路、5 制御装置、10 居室扉、11 空気調和装置、12 給気装置、13 第2排気装置、14 加熱機器、20 脱衣室扉、21 第1排気装置、30 玄関扉、41 送風装置、42 吸込み口、43 吹出し口、51 情報取得部、52 送風制御部、100、100A、100B、100C、100D 空調システム、200 建物、R1 第1空間、R2 第2空間、R3 第3空間。