(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】神経反応記録を自動評価するためのシステム、方法、および非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/388 20210101AFI20241129BHJP
【FI】
A61B5/388
(21)【出願番号】P 2022501298
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 AU2020050725
(87)【国際公開番号】W WO2021007615
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-10
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・オブラドヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・カラントニス
(72)【発明者】
【氏名】アイヴァン・グエルトン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・アスコネ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ナラヤナン
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0069996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0287609(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228391(US,A1)
【文献】特開2005-084860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/388
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経反応記録を自動評価するためのシステムであって、
(a)複合活動電位基底関数及び(b)アーティファクト基底関数の少なくとも1つを含む1組の基底関数を記憶するメモリと、
神経組織内の電気的活動の複数の神経記録を受け付けるための入力であって、前記複数の神経記録は刺激及び記録の単一の構成を使用して刺激を繰り返し加えることによって得られる、入力と、
プロセッサであって、
神経記録内で、誘発複合活動電位(ECAP)及びアーティファクトの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを決定することによって、前記1組の基底関数を使用して各神経記録を分解し、
前記複数の神経記録のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータの複数の値を繰り返し決定し、
前記複数の値の拡散を決定し、
前記拡散が所定の閾値より小さい場合は前記神経反応記録の品質が高いという指示を出力し、前記拡散が前記所定の閾値より大きい場合は前記神経反応記録の品質が低いという指示を出力する
ように構成される、プロセッサと
を含む、システム。
【請求項2】
前記神経反応記録の前記品質の前記指示が前記拡散と前記所定の閾値の比較に基づく高品質又は低品質のバイナリ指示である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記神経反応記録の前記品質の前記指示が前記拡散と前記所定の閾値の比較に基づく高品質から低品質までの連続体に基づいて定められる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記神経反応記録の前記品質の前記指示が、神経記録の試験セットの臨床医によるスコアリングを参照することによって較正される、請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
刺激及び記録の1つ又は複数の他の構成に関して得られる神経反応記録の前記品質の別個の指示を出力するように前記プロセッサが更に構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
各構成の品質スコアを比較することにより、進行中の治療に関する刺激及び記録の構成を選択するように前記プロセッサが更に構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記拡散が前記パラメータの標準偏差であるものとして計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記拡散が前記パラメータのバリアンスであるものとして計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記拡散が前記パラメータの四分位数範囲であるものとして計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記拡散が前記パラメータの十分位数範囲であるものとして計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つのパラメータが、観察ECAPと解析的に定義された複合活動電位の基底関数を含む定義済み基底関数との相関を含む、請求項1乃至10の何れか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパラメータが観察ECAPの周波数を含む、請求項1乃至11の何れか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのパラメータが前記刺激の時点に対する観察ECAPの時間オフセットを含む、請求項1乃至12の何れか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記基底関数が解析的に定義された複合活動電位の基底関数を含み、前記神経反応記録の品質を定めるために前記複数の神経記録内でECAPが検出される割合を使用するように前記プロセッサが更に構成される、請求項1乃至13の何れか一項に記載のシステム。
【請求項15】
各ECAPの2つ以上の神経記録を得るように、及び前記2つ以上の記録を比較することによって導出される1つ又は複数の比較パラメータを使用してECAPの品質を評価するように前記プロセッサが更に構成される、請求項1乃至14の何れか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記比較パラメータがECAPの2つ以上の神経記録から決定される各ECAPの伝導速度を含み、ECAP信号品質を導出するために前記伝導速度の拡散が使用される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
複数のパラメータが得られ、単一の品質スコアを生成するために前記複数のパラメータが定義済み関数によって処理される、請求項1乃至16の何れか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記品質スコアが以下のように、つまり:
スコア=(検出率
*相関)/(周波数の拡散+オフセットの拡散)
として決定され、
前記検出率は、ECAPが前記複数の神経記録内で検出される率であり、前記相関は、観察ECAPと解析的に定義された複合活動電位の基底関数を含む定義済み基底関数との相関であり、前記周波数の拡散は、観察ECAPの周波数の拡散であり、前記オフセットの拡散は、刺激の時点に対する観察ECAPの時間オフセットの拡散である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記品質スコアを[0:1]の範囲に正規化するように前記プロセッサが更に構成される、請求項
18に記載のシステム。
【請求項20】
250ms以内に
前記品質スコアをもたらすように前記プロセッサが構成される、請求項
18に記載のシステム。
【請求項21】
神経反応記録を自動評価するための方法であって、前記方法は、システムのプロセッサによって実行され、前記方法は、
少なくとも1つの複合活動電位基底関数及び少なくとも1つのアーティファクト基底関数を含む1組の基底関数を記憶するステップと、
神経組織内の電気的活動の複数の神経記録を受け付けるステップであって、前記複数の神経記録は刺激及び記録の単一の構成を使用して刺激を繰り返し加えることによって得られる、受け付けるステップと、
神経記録内で、誘発複合活動電位及びアーティファクトの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを決定することによって、前記1組の基底関数を使用して各神経記録を分解するステップと、
前記複数の神経記録のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータの複数の値を繰り返し決定するステップと、
前記複数の値の拡散を決定するステップと、
前記拡散が所定の閾値より小さい場合は前記神経反応記録の品質が高いという指示を出力し、前記拡散が前記所定の閾値より大きい場合は前記神経反応記録の品質が低いという指示を出力するステップと
を含む、方法。
【請求項22】
神経反応記録を自動評価するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、
1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとき、
少なくとも1つの複合活動電位基底関数及び少なくとも1つのアーティファクト基底関数を含む1組の基底関数を記憶するステップと、
神経組織内の電気的活動の複数の神経記録を受け付けるステップであって、前記複数の神経記録は刺激及び記録の単一の構成を使用して刺激を繰り返し加えることによって得られる、受け付けるステップと、
神経記録内で、誘発複合活動電位及びアーティファクトの少なくとも1つを特徴付ける少なくとも1つのパラメータを決定することによって、前記1組の基底関数を使用して各神経記録を分解するステップと、
前記複数の神経記録のそれぞれについて前記少なくとも1つのパラメータの複数の値を繰り返し決定するステップと、
前記複数の値の拡散を決定するステップと、
前記拡散が所定の閾値より小さい場合は前記神経反応記録の品質が高いという指示を出力し、前記拡散が前記所定の閾値より大きい場合は前記神経反応記録の品質が低いという指示を出力するステップと
を含む方法を実行させる命令を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に援用する、2019年7月12日に出願された豪州仮特許出願第2019902485号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、神経刺激によって誘発される複合活動電位等の神経活動の電気的記録に関し、具体的には刺激アーティファクト、雑音等がある中で記録が得られる場合に記録内の神経反応の検出を改善するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
慢性痛、パーキンソン病、及び偏頭痛を含む様々な疾患を治療するために、並びに聴覚機能及び運動機能等の機能を回復するために電気神経調節が使用され又はその使用が想定される。神経調節システムは治療効果を生じさせるために神経組織に電気パルスを印加する。かかるシステムは、典型的には埋め込み電気パルス発生器及び経皮的な誘導転送によって充電可能な電池等の電源を含む。電極アレイがパルス発生器に接続され、関心のある神経経路の近くに配置される。電極によって神経組織に印加される電気パルスはニューロンの脱分極を引き起こし、かかる脱分極は治療効果を実現するための逆行性、順行性、又はその両方の伝播活動電位を発生させる。
【0004】
例えば慢性痛を軽減するために使用される場合、電気パルスが脊髄の脊柱(DC)に印加され、電極アレイが脊椎硬膜外腔内に配置される。このように脊柱線維に繰り返し刺激を与えることは、脊髄内のその部分から脳への痛覚の伝達を抑える。
【0005】
概して神経調節システム内で生成される電気刺激は、抑制効果又は興奮効果を有する神経活動電位を引き起こす。抑制効果は痛覚の伝達等の不所望のプロセスを調節するために使用することができ、又は興奮効果は筋肉の収縮又は聴神経の刺激等の所望の効果を引き起こすために使用することができる。
【0006】
多数の線維の間で生成される活動電位が合計して複合活動電位(CAP)を形成する。CAPは多数の単線維活動電位からの反応の合計である。CAPを電気的に記録する場合、測定は多数の異なる線維が脱分極した結果を含む。伝播速度は主に線維直径によって決定され、脊髄後根進入部(DREZ)及び背柱付近で見られる大きな有髄線維では速度が60ms-1を超えることがある。同様の線維のグループの発火から生成されるCAPは、記録電位内の正のピークP1、次いで負のピークN1、その後の第2の正のピークP2として測定される。これは個々の線維に沿って活動電位が伝播するとき、記録電極を通る活性化領域によって引き起こされ、ピークが3つある典型的な反応プロファイルをもたらす。刺激の極性及び記録電極の構成にもよるが、一部のCAPの測定プロファイルは負のピークが2つあり、正のピークが1つある逆極性のものであり得る。
【0007】
神経調節及び/又は他の神経刺激の効果をより十分に理解するために、及び例えば神経反応フィードバックによって制御される刺激器を提供するために刺激によって誘発されるCAPを正確に検出し記録することが望ましい。誘発CAP(ECAP)は、アーティファクトよりも後の時点で現れる場合又は信号対雑音比が十分高い場合は検出がより容易である。アーティファクトは刺激から1~2ms後の時間に限定されることが多く、そのため神経反応がこの時間窓の後で検出されるという条件で反応の測定をより容易に得ることができる。これは刺激電極と記録電極との間に遠い距離(例えば60ms-1で伝導する神経では12cmを超える)があり、そのため刺激部位から記録電極までの伝播時間が2msを超える手術モニタリングの場合に該当する。
【0008】
但し、脊柱からの反応を特徴付けるために、高い刺激電流及び電極間の近接性が求められる。同様に、如何なる埋め込み神経調節装置も必然的にサイズがコンパクトであり、そのためかかる装置が印加刺激の効果をモニタするには刺激電極と記録電極とが必然的に近接する。そのような状況において測定プロセスがアーティファクトを直接克服しなければならない。しかし、神経測定内で観察されるECAP信号成分は典型的にはマイクロボルトの範囲内の最大振幅を有するので、そのようにアーティファクトを克服することは困難な課題であり得る。対照的に、ECAPを誘発するために印加される刺激は典型的には数ボルトであり、ECAP信号と部分的に又は完全に同時である数ミリボルトの減衰出力として神経測定内で明白な電極アーティファクトを発生させ、関心のあるはるかに小さいECAP信号を分離し更には検出することに対する著しい障害を示す。
【0009】
この問題の難しさは、埋め込み装置内でCAPの検出を実装しようと試みるとき更に悪化する。典型的な移植物は、所望の電池寿命を保つために1つの刺激当たり限られた数の、例えば数百又は数千のプロセッサ命令を認めるパワーバジェットを有する。従って埋め込み装置用のCAP検出器を定期的に(例えば1秒に1回程度)使用しようとする場合、検出器がパワーバジェットの僅かな部分しか消費しないものとするように取り計らう必要がある。
【0010】
神経刺激装置の刺激モード及び記録モードの構成可能性が高まることによって更なる複雑性が生じる。変動要素は、埋め込み電極アレイに基づく潜在的に多数の利用可能電極からの刺激電極及び/又は記録電極の選択、複数の刺激パラメータ、及び複数の記録パラメータを含む。神経刺激装置の適切な動作を臨床的に検証することは、理想的には最適な治療効果を得るためにかかる変動要素の最適な設定を識別することを含むべきだが、検査しなければならない組み合わせの数が非常に多くある可能性があり、現在は臨床医によって大部分が行われなければならず、臨床適合プロセスを時間と費用がかかるものにしている。
【0011】
本明細書に含まれている文献、行為、材料、装置、又は記事等についての如何なる解説も本発明の脈絡を提供するためのものに過ぎない。それらは本願の各請求項の優先日よりも前に存在していたからといって、それらの内容の何れか又は全てが従来技術の基礎の一部を形成する、又は本発明に関連する分野におけるありふれた一般知識であったということを認めたと解釈すべきではない。
【0012】
本明細書の全体を通して「含む(comprise)」という語又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変形は、述べられる要素、整数、若しくはステップ、又は要素群、整数群、若しくはステップ群を含むことを含意するが、他の任意の要素、整数、若しくはステップ、又は要素群、整数群、若しくはステップ群を排除しないことが理解されよう。
【0013】
本明細書では、或る要素が選択肢の一覧の「少なくとも1つ」であり得るという記述は、その要素が挙げられた選択肢の何れか1つであり得ること、又は挙げられた選択肢の2つ以上の任意の組み合わせであり得ることを理解すべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本発明は神経反応記録を自動評価するためのシステムを提供し、このシステムは
(a)複合活動電位基底関数及び(b)アーティファクト基底関数の少なくとも1つを含む1組の基底関数を記憶するメモリと、
神経組織内の電気的活動の複数の神経記録を受け付けるための入力であって、神経記録は刺激及び記録の単一の構成を使用して刺激を繰り返し加えることによって得られる、入力と、
1組の基底関数から複合活動電位及びアーティファクトの少なくとも1つを推定する少なくとも1つのパラメータを決定することによって各神経記録を分解するように構成されるプロセッサであって、複数の神経記録のそれぞれについて少なくとも1つのパラメータの複数の値を繰り返し決定するように更に構成され、複数の値の拡散を決定するように更に構成され、拡散が小さい場合は神経反応記録の品質が高いという指示を出力するように更に構成され、拡散が大きい場合は神経反応記録の品質が低いという指示を出力するように更に構成される、プロセッサと
を含む。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は神経反応記録を自動評価するための方法を提供し、この方法は
少なくとも1つの複合活動電位基底関数及び少なくとも1つのアーティファクト基底関数を含む1組の基底関数を記憶するステップと、
神経組織内の電気的活動の複数の神経記録を受け付けるステップであって、神経記録は刺激及び記録の単一の構成を使用して刺激を繰り返し加えることによって得られる、受け付けるステップと、
1組の基底関数から複合活動電位及びアーティファクトの少なくとも1つを推定する少なくとも1つのパラメータを決定することによって各神経記録を分解し、複数の神経記録のそれぞれについて少なくとも1つのパラメータの複数の値を繰り返し決定するステップと、
複数の値の拡散を決定するステップと、
拡散が小さい場合は神経反応記録の品質が高いという指示を出力し、拡散が大きい場合は神経反応記録の品質が低いという指示を出力するステップと
を含む。
【0016】
更なる態様によれば、本発明は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されるとき第2の態様の方法を実行させる命令を含む、神経反応記録を自動評価するための非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。
【0017】
プロセッサによって出力される神経反応記録の品質の指示は高品質又は低品質のバイナリ指示とすることができ、例えば拡散が閾値と比較される。或いは神経反応記録の品質の指示は3つ以上の品質指示レベルの尺度で定めることができ、又は高品質から低品質までの実質的連続体に基づいて定めることができる。例えば品質スコアを出力することができ、[0:1]等の所望の範囲内の何処かに含まれるように正規化することができる。品質スコアの決定は、神経記録の試験セットの臨床医によるスコアリングを参照することによって較正することができる。同様に、品質スコアの正規化は神経記録の試験セットの臨床医によるスコアリングを参照することによって較正することができ、例えば臨床医は試験セットを使用してシグモイド等の正規化関数の中間点、拡散、又は成長率等を定めることができる。
【0018】
ECAP品質スコアは、刺激及び記録の選択された構成を評価するために使用することができる。例えば刺激電極の選択及び/又は記録電極の選択を変更し、新たな構成に関して新たなECAP品質スコアを生成することにより、刺激及び記録の1つ又は複数の他の構成に関して別個のECAP品質スコアを追加で得ることができる。各構成の品質スコアを比較することにより、進行中の治療に関する刺激及び記録の構成の選択を行うことができる。好ましい実施形態は刺激及び記録のあり得る全ての構成を自動化されたやり方で検査するように構成される移植物及び/又は関連する臨床ソフトウェアを含むことができ、埋め込み電極アレイ全体のECAP品質スコアの行列又は組をもたらすために、全ての埋め込み電極が刺激のために逐次的に使用され、それぞれの刺激及び記録構成のECAP品質スコアを得るためにかかる刺激構成ごとにあり得る全ての記録電極が逐次的に使用される。従ってかかる実施形態は、1組のECAP品質スコアを参照することによって刺激及び記録の最適な構成を素早く識別することができる自動化された手段を提供する。従ってかかる実施形態は、人手による困難な臨床作業を省き、神経刺激器を最適に適合させる時間と費用を改善し、及び/又は埋め込まれた人の治療効果を改善することができる。加えて又は或いは、一部の実施形態は埋め込み装置の動作中にあり得る一部の又は全ての電極構成についてECAP品質スコアの行列又は組が継続的に作成され又は更新されることを可能にし得る。例えば埋め込み装置のプロセッサは、ECAP品質スコアの行列又は組を既定の時間間隔で、又は一定数の刺激を届けた後で、及び/又は必要に応じて他の時点において作成し又は更新するように構成され得る。装置の進行中の動作中に作成されるかかるECAP品質スコアに基づき、進行中の治療用の刺激電極としてどの電極を使用するのかの選択等の更新済みの刺激構成を採用し、更新済みの刺激構成に関連する最適な又は好ましいECAP品質スコアを活用するように装置を構成することができる。加えて又は或いは、装置の進行中の動作中に作成されるかかるECAP品質スコアに基づき、進行中の治療中に記録電極としてどの電極を使用するのかの選択等の更新済みの記録構成を採用し、更新済みの記録構成に関連する最適な又は好ましいECAP品質スコアを活用するように装置を構成することができる。
【0019】
拡散は、パラメータの標準偏差、パラメータのバリアンス、パラメータの四分位数範囲又は十分位数範囲として計算することができ、又はデータ拡散の他の任意の適切な統計的測度を含み得る。
【0020】
一部の実施形態では、少なくとも1つのパラメータが、観察ECAPと解析的に定義された複合活動電位基底関数を含む定義済み基底関数との相関を含むことができ、本明細書ではかかるパラメータを相関パラメータと呼ぶ。かかる実施形態は、記録の品質を決定する際、観察ECAPが事前定義された解析的又は「理想的」なECAPと如何によく相関するのかを検討することが有利だと認識する。
【0021】
加えて又は或いは、少なくとも1つのパラメータは、例えば観察ECAPの1つ若しくは複数のローブの持続時間から、及び/又は記録内のECAPピークの時間オフセットから、及び/又は記録のスペクトル解析から測定される観察ECAPの周波数を含むことができ、本明細書ではかかるパラメータを周波数パラメータと呼ぶ。刺激ごとのECAP周波数における大きなばらつきが不十分なECAP信号品質及び次善の治療と相関することが発見されているので、かかる実施形態は周波数がモニタするのに特に有用なパラメータだと認識する。
【0022】
加えて又は或いは、少なくとも1つのパラメータは刺激の時点に対する観察ECAPの時間オフセットを含むことができ、本明細書ではかかるパラメータをオフセットパラメータと呼ぶ。刺激ごとのECAPオフセットにおける大きなばらつきが不十分なECAP信号品質及び次善の治療と相関することが発見されているので、かかる実施形態はオフセットがモニタするのに特に有用なパラメータだと認識する。
【0023】
一部の実施形態では、基底関数は解析的に定義された複合活動電位基底関数である。かかる実施形態では、神経反応記録の品質を定めるために複数の記録内でECAPが検出される割合を更に使用することができる。本明細書ではこの割合を検出率と呼ぶ。
【0024】
一部の実施形態では、各ECAPについて2つ以上の神経記録を得ることができ、そのため2つ以上の記録を比較することによって導出される比較パラメータを追加で又は代わりに使用してECAPの品質を評価することができる。例えば各ECAPの伝導速度及び/又は分散をそのECAPの2つ以上の神経記録から決定することができ、伝導速度の拡散及び/又は分散の拡散を使用してECAP信号品質を導出することができる。
【0025】
複数のパラメータが得られる実施形態では、単一の品質スコアを生成するために複数のパラメータを任意の適切な定義済み関数によって処理することができる。例えば一実施形態では、品質スコアを以下のように決定することができる:
スコア=(検出率*相関)/(周波数の拡散+オフセットの拡散)。
【0026】
かかる実施形態では、臨床医の意見に合わせて出力をよりよく較正するために、任意の適切なチューニング定数又は倍率等によって関数の各要素をスケールし又は調節することができる。例えばオフセットの拡散がms単位で測定される場合、上記の関数においてこのパラメータを100倍することができる。
【0027】
検出率が高いこと及び相関が高いことはECAP信号品質が上がることに相当することに留意し、好ましい関数はこれらのパラメータに比例し及び/又はこれらのパラメータを関数の分子に配置する。逆に、周波数の拡散が大きいこと及びオフセットの拡散が大きいことはECAP信号品質が下がることに相当することに留意し、好ましい関数はこれらのパラメータに反比例し及び/又はこれらのパラメータを関数の分母に配置する。従って他の実施形態はこれらの見解と合致する他の任意の適切な関数を利用することができる。
【0028】
ディファレンシャル測定増幅器への2つのセンス電極入力を使用することによってディファレンシャルECAP記録を利用する実施形態では、ディファレンシャルECAP記録の正のECAP成分及びディファレンシャルECAP記録の負のECAP成分の両方に関して上述のパラメータの一部又は全てを得ることができる。
【0029】
ECAP信号品質スコアは、シグモイド関数等の任意の適切な関数によって例えば[0:1]の範囲に正規化することができる。正規化済みスコアは例えば次式によって決定することができる:
正規化済みスコア=1-1/(1+α*スコア)。
【0030】
かかる実施形態では、臨床医の意見に合わせて正規化済みスコアの出力を較正するためにチューニング定数aを選択することができ、例えば一実施形態ではa=800である。代替的実施形態では、任意の適切なチューニング定数又は倍率等によってaを置換することができる。例えば人間の臨床医が指定するスコアが「不満足」、「最低限」、及び「満足」から選択される場合、熟練した臨床医によって「不満足」とラベル付けされた信号セットの少なくとも90%について生成される正規化済みスコアが0.4未満であるようにa又は他の定数を必要に応じて選択することができる。この形態は、どの刺激器の構成を使用するのかを決定する際に現場の臨床工学技士が参照し得る実装と独立した閾値を示し、0.4未満の正規化済みスコアは追加のプログラミングが必要であることを示す一方、0.6を上回る正規化済みスコアは既存の刺激及び記録構成プログラムが臨床的に使用可能な成長曲線をもたらすことを予測する。かかる実施形態では、0.4~0.6の間の正規化済みスコアが出力される場合、刺激器の構成が最低限と見なされ、それは刺激器の構成が臨床的に使用可能な成長曲線をもたらすかどうか不明であることを意味する。
【0031】
重要なことには、本発明の実施形態は神経反応記録を自動評価するためのシステムが、好ましくは使用される刺激電流に反応しない出力をもたらすべきだと認識する。ECAPの振幅は刺激電流に依存するので、この要件はシステムがより大きいECAPの振幅を刺激及び記録構成の品質がより優れていることと間違って同一視しないことを保証する。本発明の好ましい実施形態において選択されるパラメータは有利にはECAPの振幅だけに依存せず、従ってかかる実施形態はECAPの振幅を刺激及び記録構成の品質と間違って同一視しない。刺激電極から神経までの距離が変わること及び神経から記録電極までの距離が変わることの両方により、ECAPの大きさは姿勢に依存することに更に留意すべきであり、記録されるECAPの振幅だけを表さないパラメータを選択するのが有利である別の理由を与えている。
【0032】
本明細書での推定又は決定への言及は、既定の推定又は決定手続きを実行するために動作するプロセッサによってデータに対して実行される自動化されたプロセスを指すものと理解すべきである。本明細書で示す手法は、ハードウェアによって(例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して)、又はソフトウェアによって(例えば上記のステップをデータ処理システムに実行させるためのコンピュータ可読媒体上に有形に記憶される命令を使用して)、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実装することができる。本発明はコンピュータ可読媒体上のコンピュータ可読コードとして実施することもできる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータシステムによって後に読み出し可能なデータを記憶することができる任意のデータ記憶装置を含み得る。コンピュータ可読媒体の例は、読取専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、CD-ROM、DVD、磁気テープ、光学データ記憶装置、フラッシュ記憶装置、又は他の任意の適切な記憶装置を含む。コンピュータ可読コードが分散式に記憶され実行されるように、コンピュータ可読媒体はネットワークに結合されるコンピュータシステムにわたって分散されてもよい。
【0033】
従って本発明の実施形態は、刺激の変動要素の複数の組み合わせ又は全ての組み合わせを検査するための自動化されたプロセスを使用し、ECAP信号品質を参照することによって神経刺激装置の適切な動作を臨床的に検証するための部分的に又は完全に自動化されたプロセスを、臨床的に適合させる時間及び対価を低減した計算効率のよいやり方で提供することができる。具体的には、記載する実施形態は大部分が自動化されたプロセスによって高速に取得され得るデータパラメータを活用するプロセスを提供し、かかるパラメータを特に活用し、人間の臨床専門家の関与を必要とするステップを回避し又は最低限に抑えることにより、本発明のそれらの実施形態は、装置の最適な治療設定を明らかにするために関連する各姿勢においてECAP記録を臨床的に観察すること及び/又はECAP成長曲線を臨床的に導出することを含む従来の手法のかなりの時間と犠牲を有利に回避する。一部の実施形態は、例えば信号品質スコアを250ms以内等のほんの一瞬で生成することができ、62.5ms以内に1回等の高速で反復的に更新され得る。
【0034】
本発明の更なる実施形態は、埋め込み神経調節装置のフィードバックループの動作を継続的に制御するために信号品質スコアを利用することができる。例えばかかる実施形態は、ECAP信号品質スコアが低いときにフィードバックループに動作を停止させること又はより遅く反応させることができる。加えて又は或いは、かかる実施形態は、ECAP信号品質スコアが高いときにフィードバックループに動作を開始させること又はより素早く反応させることができる。
【0035】
次に本発明の例を添付図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】埋め込み刺激器の神経との相互作用を示す略図である。
【
図6】ECAP及びアーティファクト基底関数並びにその成果を示す。
【
図7】ECAP及びアーティファクト推定のためのシステムを示す。
【
図8】本発明の一実施形態による信号品質インジケータのためのアーキテクチャを示す。
【
図9】本発明の一実施形態による臨床システムを示す。
【
図10】本発明の一実施形態による、測定電極走査(MES)の一実装を表す状態機械図である。
【
図11】移植物によって実行されるMES手続きの流れ図である。
【
図12】stim電極がE2である場合のMES位置構成方法の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、埋め込み脊髄刺激器100を概略的に示す。刺激器100は、患者の下腹部又は上後臀部内の適切な位置に埋め込まれる電子モジュール110と、硬膜外腔内に埋め込まれ、適切なリードによってモジュール110に接続される電極アセンブリ150とを含む。埋め込み神経装置100の動作の数多くの側面が外部の制御装置192によって再構成可能である。更に、埋め込み神経装置100はデータを集める役割を果たし、集められたデータは外部装置192に伝達される。
【0038】
図2は、埋め込み神経刺激器100のブロック図である。モジュール110は、電池112と遠隔測定モジュール114とを含む。本発明の実施形態では、外部装置192と電子モジュール110との間で電力及び/又はデータを転送するために赤外線(IR)、電磁、容量性、及び誘導性の転送等の任意の適切な種類の経皮通信190が遠隔測定モジュール114によって使用され得る。
【0039】
モジュールコントローラ116が、患者設定120、制御プログラム122等を記憶する関連するメモリ118を有する。メモリ118は、ECAP品質スコアに基づく装置動作の適合又は洗練を助けるための、(a)複合活動電位基底関数及び(b)アーティファクト基底関数の少なくとも1つを含む1組の基底関数も記憶する。外部装置192は、ECAP品質スコアに基づく臨床適合を可能にするための(a)複合活動電位基底関数及び(b)アーティファクト基底関数の少なくとも1つを含む1組の基底関数も記憶する。コントローラ116は、患者設定120及び制御プログラム122に従って電流パルスの形で刺激を発生させるためにパルス発生器124を制御する。電極選択モジュール126は、被選択電極を取り巻く組織に電流パルスを届けるために電極アレイ150の適切な電極に生成パルスを切り替える。測定回路128は、電極選択モジュール126によって選択される電極アレイのセンス電極において検知される神経反応の測定を捕捉するように構成される。
【0040】
図3は、埋め込み刺激器100の神経180との相互作用を示す略図であり、神経180はこの事例では脊髄だが、末梢神経、内蔵神経、副交感神経系、又は脳構造を含む所望の任意の神経組織に隣接して代替的実施形態を配置することができる。電極選択モジュール126は神経180を含む周囲組織に三相性電流パルスを届けるために電極アレイ150の刺激電極2を選択するが、他の実施形態は二相性三極刺激を追加で又は代替的に届けることができる。電極選択モジュール126は、刺激電流を回復してゼロの正味電荷移動を維持するためにアレイ150の戻り電極4も選択する。
【0041】
神経180に適切な刺激を届けることは、慢性痛のための脊髄刺激器の場合は所望の位置において感覚性錯覚を作り出すことであり得る治療目的で、図示のように神経180に沿って伝播する複合活動電位を含む神経反応を誘発する。そのために30Hzで刺激を届けるために刺激電極が使用される。装置を適合させるために、利用者が感覚性錯覚として経験する感覚をもたらす刺激を臨床医が加える。感覚性錯覚が、痛みの影響を受ける利用者の身体領域と一致する位置にありサイズのものである場合、臨床医は継続的使用のためにその構成を推薦する。この臨床適合プロセスは従来労力を要したが、本明細書に記載する実施形態はこの適合プロセスの効率を改善するために刺激構成及び記録構成を含む、ECAP品質スコアに基づいて装置の適合を自動評価するための手段を提供する。
【0042】
装置100は、神経180に沿って伝播する複合活動電位(CAP)の存在及び電気的プロファイルを、そのCAPが電極2及び電極4からの刺激によって誘発されようと又は他の方法で誘発されようと検知するように更に構成される。そのために、測定電極6及び測定参照電極8として働くようにアレイ150の任意の電極が電極選択モジュール126によって選択され得る。刺激器の事例は測定若しくは参照電極又は刺激電極としても使用することができる。測定電極6及び8が検知した信号は測定回路128に伝えられ、測定回路128は、例えば参照によりその内容を本明細書に援用する本発明の出願人による国際公開第2012155183号パンフレットの教示に従って動作することができる。本発明は記録電極が刺激部位に近い
図3に示すような状況では、刺激アーティファクトが複合活動電位の正確な記録を得ることへの著しい障害を示すが、信頼できる正確なCAP記録が一連の神経調節技法のための重要なイネーブラだと認識する。
【0043】
具体的には、ECAPの記録は装置が閉ループフィードバックモードに入ることを可能にし、標的ECAPレベルが装置によって継続的に求められ、装置は姿勢変化等のフィードバックループの乱れに対して将来の刺激パルスを調節することによって反応する。しかし、フィードバック操作は装置によって得られる反応記録の品質に決定的に依存する。品質は適切に経験を積んだ人間の臨床医によって確実に評価できるが、かかる評価は労力を要する。品質は構成ごとに完全な成長曲線を得ることによっても評価することができ、かかる成長曲線は刺激電流の増加に応じたECAP振幅の成長を表す。そのように評価することは、その構成が明確な閾値(それ未満ではECAPが生じない刺激電流)を伴う成長曲線をもたらすかどうかを確認できるようにし、成長曲線が閾値を上回って単調増加しているかどうか(フィードバックループの安定性にとって重要である)も確認できるようにする。しかし、成長曲線を取得し評価することも労力を要する。
【0044】
従って本発明は、神経反応記録の品質を自動評価するためのシステム及び方法を提供する。
【0045】
より詳細には、本発明の実施形態はメモリ内の1組の基底関数を使用し、複合活動電位及びアーティファクトの少なくとも1つを推定する少なくとも1つのパラメータを決定することによって各神経記録を分解する。従ってこれは、別個の基底セットによって表現され得る信号の閉空間に信号成分が属する場合に合成信号を分離するための方法である。神経調節では、これを使用して記録信号の「ECAP部分」と「アーティファクト部分」とを分離する。
【0046】
合成信号は、本明細書では基本信号と呼ぶ他の信号の合計によって構築される信号である。本発明の基底要素信号分離手法は、合成信号だけを所与とし、正確な基本信号の知識なしに合成信号の基本信号を推定する。本発明の実施形態は、基本信号に関する幾らかの知識を推定することができるブラインド信号分離アルゴリズムを提供する。つまり本発明の実施形態は、各基本信号を1組の基底関数によって表せると仮定できることを認識する。複数の入力及び1つの出力を伴うブラインド信号分離アルゴリズムと異なり、本発明の実施形態はこの仮定を活用することによって基本信号の確定的な推定をもたらす。
【0047】
神経刺激の分野では、混合信号はECAPと刺激アーティファクトとの組み合わせであり得る。一部の例では信号を分解し、成分を解析することが必要になる。個々の成分を解析することは、数多くの有利な方法で使用することができる信号成分の特性を明らかにすることができる。一部の事例では、混合信号の成分を分析することがシステム内の誤りを明らかにし得る。更に、必須の成分を隠す優勢だが余計な成分を混合信号又は合成信号が有する状況があり得る。かかる事例では、混合信号をその成分に分解し、余計な成分をなくし、必須の成分及びその特性を解析する必要がある。
【0048】
本発明の実施形態は、1組の基底関数から合成信号を構成する複数の信号の少なくとも1つを決定することによって混合信号を分解する。この実施形態は、基底を用いて各基本成分をモデリングすることによって合成信号をその基本成分に分離する。この実施形態は、アーティファクト波形(並びに雑音)からECAP波形を分離する際、それらの信号の混合である信号記録を所与として神経調節において適用され得る。そのように分離することはECAPからよりロバストに特徴を抽出することをもたらし、特徴は
図1~
図3の閉ループ制御システムによって使用される特徴であるECAPの大きさを含む。ECAPのピーク位置等の追加の特徴もよりロバストに測定することができ、それは科学的な利益である。本発明の実施形態はアーティファクト及びECAPの両方を同時に推定し、ECAP及びアーティファクトの信号の寄与を平衡させて記録信号を「最良」に表現する。本発明の実施形態は雑音のないECAP推定をもたらし、ECAP基底セットの定義を条件として一定の信号特性(例えば0Vのベースライン)を課すことができる。更に本発明の実施形態は効率的であり(O(n))、(非確定的な方法と異なり)確定的な時間で実行され、それは本発明の実施形態がファームウェアに潜在的に組み込まれ、人間によってチューニングされるフィルタを必要とすることなしに改善されたリアルタイムのECAPの大きさ推定を与え得ることを意味する。
【0049】
図4は、スクラッバプロセス400を示す。スクラッバとは、410に示す何らかの合成信号のECAP成分及びアーティファクト成分を推定するアルゴリズムである。合成信号は複数の別個の要素の合計で構成される信号として定義される。ECAP測定の脈絡では、合成測定の成分はアーティファクト、刺激に対する神経生理学的反応(ECAP)、及び他の全てのものである。スクラッバ420の主な目標はECAPを分離することである。しかし、アーティファクトの推定は通常このタスクの副産物であり、アーティファクトのメカニズムに関する洞察は将来の設計においてアーティファクトを最低限に抑えるのを助けるのでそれ自体が有用である。後に残されるものは、刺激と無関係な電子雑音及び神経生理学的雑音で構成される。
【0050】
本発明の実施形態は以下のプロセスを採用する。各基本信号は基底関数の線形結合として表される。2つの基本信号を有する合成信号を検討されたい。
【0051】
【0052】
基底関数は、経験及び基本信号の代替モデルに基づいて経験的に導出される。説明のためにそれらは定数だと考える。基底関数のペアワイズ内積及び各基底関数と合成信号との間の内積を計算し、係数アルファ及びベータの組を得るために行列反転によって解くことができる1組の線形方程式を書くことができる。アルファ係数を所与としてf(x)の基底表現を書き、従ってf(x)を推定することができる。同様にベータ係数を所与としてg(x)を推定することができる。この方法は2つの成分を含む合成信号に限定されないが、記載した神経調節分野においてこの方法が適用される問題は2つの成分だけを有する。
【0053】
本発明の実施形態の基底要素信号分離手法は、合成信号を分解するための数学的ツールである。ECAP成分f(t)及びアーティファクト成分g(t)を含む信号を検討されたい。従って患者内で測定する信号σ(t)は
【数2】
で表すことができ、但しe(t)は何らかの雑音である。所与の信号のECAP成分は減衰振動の2つの期間に似た規則的な形を有するので閉ループ刺激が機能する。同様の状態において、信号のアーティファクト成分が規則的な形を有さない場合は閉ループ刺激が機能しない。ECAP振幅を測定するために検出器を使用してアーティファクトの殆どをフィルタで除去し、そのように除去することはアーティファクトが規則的な指数関数様の形を有すると仮定する。
【0054】
本発明の実施形態は、ECAP及びアーティファクトの信号成分が別個の関数族に属するという仮定に基づいて機能する。つまりECAPは常に短い振動事象であるのに対し、アーティファクトは指数関数的に見える信号である。別個の関数族ごとに、それを表す基底を事前定義することができる。適切な基底関数について基底係数を計算することができ、ECAP及びアーティファクトの基底展開をそれぞれ分離することができる。ECAPの基底展開はアーティファクトがないECAP成分の推定を与える。
【0055】
基底係数の計算は、全体的な信号が可能な限り最良に概算されるやり方で基底関数のそれぞれの寄与を平衡させる。換言すれば、記録されている信号を最良にモデリングするように、推定されるECAP及びアーティファクトの寄与が平衡される。より優れた性能を実現するために、本発明の実施形態は全てのECAPが一定の関数族に属し、その族の外のECAPの形が存在しないと仮定する。書き込みの時点において、国際公開第2015070281号パンフレットに記載されているような遅い反応を有するECAPは本発明の実施形態によって使用されるECAP関数族の外にあり、従って適切に推定することができない。従って、その時点で使用されているECAP基底によって十分にモデリングされない信号を扱う場合は他のスクラッバを使用した方が適切な場合がある。
【0056】
上記の方法は
図5の信号流れ図内のブロックを形成する。一部の実施形態では、信号推定を改善するために前処理及び後処理を使用する。例えば信号内の高周波雑音を減らすために前処理を使用することができる。但し、基底セットの構築を改善するためにフィードバックメカニズムが使用される。信号を概算するために粗い「第1推測」基底を使用し、もたらされる推定を使用してその後のパス上で基底セットを洗練させることができる。例えば第1のパスはアーティファクトの優れた推定を得るためにECAP基底を推測することができる。ECAP基底の選択を洗練させるために、信号からアーティファクトを減じ、信号補正方法を使用することが使用され得る。改善された基底を用いてアルゴリズムを再実行することでECAP及びアーティファクトの両方のより優れた推定がもたらされる。
【0057】
本発明の実施形態により、以下の3つの基底関数を使用してアーティファクトをモデリングする:
【数3】
【0058】
単位基底関数φ1は測定信号のDCコンテンツを捕捉する。線形基底関数φ2は増幅器のドリフトによるアーティファクトの成分を捕捉する。指数基底関数φ3はアーティファクトの化学的な電荷緩和成分を捕捉する。指数成分の減衰定数は任意の適切な変数とすることができ、上記の値は人間のアーティファクトの記録のライブラリに対するモデルの性能に基づいて経験的に決定された。異なる装置は異なるアーティファクト及び/又はECAPの結果を示す場合があり、その結果同様に経験的に得ることができる異なる定数を必要とし得る。
【0059】
本発明の実施形態のアルゴリズムが適用されると、信号のアーティファクト成分が次式によって表される。
A(t)=αφ1(t)+βφ2(t)+γφ3(t)
【0060】
このモデルは簡単だが数千もの代表的なヒト患者の神経記録に適用されており、上手く機能することが分かっている。ECAP基底関数と組み合わせて、複合モデルは記録信号を正確に推定する。
【0061】
バックグラウンドニューロン活動又は遅い反応等の異常な神経学的アーティファクトは本発明の実施形態ではモデリングされないが、本発明の代替的実施形態に従って組み込むことができる。本発明の実施形態の手法から得られる推定はそのような特徴を除去し、従って少なくともこの実施形態では非ECAP神経学的特徴の測定において結果を当てにすることはできない。
【0062】
ECAP基底関数は、k=1.7及びθ=0.60のパラメータを有するガンマ確率密度関数の積を使用して定められる。
φ(t)=(ft)k-1・e-ft/θ
【0063】
これは正弦波の1つの期間とその後に続く指数関数で構成される区分的関数であり、そのため導関数はその境界において連続的であり:
【数4】
但しC=0.37である。2つの成分及びその積を
図6に示す。このFPAPモデル内には1つのモフォロジパラメータ、正弦波成分の周波数つまりfしかない。上記で見て取れるように、ガンマPDFの時間尺度がしかるべくスケーリングされている。このモデルは、シミュレートされるECAPモデルに対して初等関数を手動設定することによって到達された。
【0064】
時間軸をνによってスケールし、ν(t-t0)にオフセットを適用することにより、ECAP基底関数を時間の点でストレッチ及びシフトすることができる。そのようにストレッチ及びスケールされたECAPをパラメトリックECAP基底関数と呼ぶ:φν,t0(t)。
【0065】
2つの別個のECAPモデルがある。1つはシングルエンド測定用であり、もう1つはディファレンシャル測定用である。シングルエンドECAP基底は1つのパラメトリックECAP基底関数で構成され、ECAP Eは次式で表される。
【0066】
【0067】
ディファレンシャルECAP基底は、以下のECAPモデルを与える2つのパラメトリックECAP基底関数の差によって形成される。
【0068】
【0069】
何れのモデルでも、κ又はκ+が正でありκ-が負であるように(ECAP振動周波数に対応する)時間ストレッチ及び時間オフセットが選択される。この条件が成立することを保証するために一陣のECAP周波数及びオフセットが本発明の実施形態によって検査される。記録信号のECAP成分をモデリングするために選択される周波数及びオフセットは、ECAPモデル及びアーティファクトモデルの両方を使用する記録への適合が可能な限り優れているように選択される。
【0070】
シングルエンドECAPモデルは、ピーク高さとピーク時間との間の固定比率を仮定することに留意すべきである。半分の高さにおける幅又はn1:p2の比率等の神経生理学的パラメータは、パラメトリック基底関数に適用される時間的なストレッチνによって完全に決定される。
【0071】
アーティファクトと同様に、実世界のシングルエンド測定にパラメトリック基底関数を適合させることによってこの仮定が検証されている。
【0072】
ディファレンシャルモデルの場合、かかる神経生理学的パラメータはν+及びν-と独立に変わることができ、加えてECAP推定の合成に依存する。つまりκ+及びκ-は追加の自由度を与える。相対的な神経生理学的パラメータは変わることができるが、それらはより自由な形のECAPモデルと比較して限られた自由度を有する。シングルエンドECAPの仮定と同様に、このモデルの制約は実世界のディファレンシャル測定にディファレンシャルECAP基底を適合させることによって検証されている。
【0073】
パラメトリックECAP周波数の範囲は、500Hz~2kHzの1組の線形間隔の周波数に限定される。2kHzの上限はパラメータ選択手続きに対する広帯域(最大8kHz)雑音の干渉を最低限に抑えるために選択された。500Hzの下限は、パラメータ選択手続きに対するアーティファクトの干渉を制限するために選択された。十分遅いパラメトリックECAPは、限られた時間窓の中でアーティファクトに酷似する。検査されるオフセットの範囲は、実世界のECAPをモデリングするために著しく幅広だが計算性能を維持するために適度に制約されるように選択された。
【0074】
ここまでは各記録信号がECAPを含むと仮定した。しかし実践では閾値下の信号、つまり加えられる刺激が任意の神経反応をリクルートする(recruit)のに不十分だった場合はそれが決して該当せず、そのためそのような状況では記録信号が必然的に如何なるECAPも含まない。閾値下の信号のためにECAP基底関数をモデルに含めることは問題を生じさせ、それはECAPが信号内の雑音に適合され、推定が無意味になるからである。加えて信号のアーティファクト成分がECAPとして誤って表現され、アーティファクトの特徴が複合モデル内で平衡される。
【0075】
従って、基礎を成すECAPが本物である場合にのみECAP基底が全体的なモデルに含まれ得るように、信号内のECAPの存在を検出するメカニズムを含むことが望ましい。本発明の実施形態はかかるメカニズムを組み込む。アーティファクトだけの基底と、複合のECAP及びアーティファクトの基底とを使用して信号がモデリングされる。両方のモデルによってもたらされる推定から1組の信号特徴が導出され、記録信号からの信号特徴と組み合わせられる。ECAP及びアーティファクトの両方又はアーティファクトだけを含むことが分かっている一連の信号が本発明の実施形態によって解析され、導出される1組の特徴が保存される。「ECAP」又は「ECAPなし」のカテゴリを有する分類器を訓練するために機械学習が使用される。十分な訓練の後、結果として生じる分類器は信号内のECAPの存在を自動で判断することができる。本発明の実施形態は、ECAPを含む信号内でECAPを85%の精度で検出すること、及びアーティファクトだけを含む信号内のECAPを95%の精度で却下することに関する。
【0076】
これらの概念を組み合わせて、
図7に示す本発明の実施形態の完全なアルゴリズムに到達する。
【0077】
ECAPを含まないという仮定の下、アーティファクトだけの基底を使用して記録信号を最初にモデリングする。ECAPの存在に関係なく、かかるモデリングは基底係数によるアーティファクトの推定をもたらす。ECAPが存在する場合、ECAP基底も含めることによってこの推定を洗練させることができる。パラメトリックECAP基底をより上手く決定するのを助けるために、最初のアーティファクト推定を記録信号から減じる。推定されるアーティファクト及び導出される特徴は、後で使用するために「ECAP存在分類」(又はECAP検出器)ブロックに渡される。
【0078】
パラメトリックECAP基底のためのパラメータを決定したら、組み合わさったECAP及びアーティファクト基底の係数を決定する。その結果生じる推定及び特徴の組をECAP検出器に渡す。
【0079】
ECAP検出器は、記録信号内のECAPの存在を分類するのに必要な全てのものを今では有する。その判断に基づいてECAP及びアーティファクトの推定が返され、又はアーティファクトだけの推定が返される。
【0080】
この方法のステップは以下の通りである:
a.合成信号を捕捉/記録することであって、合成信号は2つ以上の付加成分を有する。
b.第1の信号成分に対応する第1の基底セットを基底セットのプールから選択する。第2の信号成分に対応する第2の基底セットを基底セットの別個のプールから選択する。
c.基底関数に基づいて合成関数の第1の成分及び第2の成分を決定する。第1の成分の推定を第1の基底セットの線形展開として決定し、第2の成分の推定を第2の基底セットの線形展開として決定する。
d.過去の反復からの推定済み成分を使用して基底セットを反復的に改善する。
【0081】
以下の説明は、本発明の実施形態の背後にある数学を掘り下げて考える。係数の決定は以下の通りである。記録する信号をσ(t)とし、基礎を成すECAP成分及びアーティファクト成分をそれぞれf(t)及びg(t)とする。解こうと試みている問題は、知っている記録信号σ(t)を使用して知らないf(t)及びg(t)の推定を見つけることである。簡単にするために信号内に雑音がないと仮定する。従って次式が成立する。
【0082】
【0083】
次に1組の有限の基底関数
【数8】
を使用してf(t)を表すことができると仮定する。同様に、f(t)を表すために使用した組と全て異なる1組の有限の基底関数
【数9】
を使用してg(t)を表すことができると仮定する。するとf(t)及びg(t)をそのそれぞれの基底上で展開することができる。
【0084】
【0085】
次いで簡単な代入によって次式が得られる:
【数11】
【0086】
問題のこの段階では、基底セットが分かっているが特定の信号σ(t)の係数は分かっていない。係数を用いてf(t)及びg(t)の推定を回復することができる。次にそれらを回復する。
【0087】
fφ
i(t)の任意の基底関数に関する以下の関数の内積を検討し、内積の線形性によって次式が得られる:
【数12】
【0088】
同様に、g:φ
l(t)の任意の基底関数に関する関数の内積を検討されたい。
【数13】
【0089】
方程式(4)及び(5)は、n+mの未知数(係数ak及びbj)を伴うn+mの線形方程式系を与える。従って、係数を決定することは以下の線形方程式を解くことに関する問題であり:
Hv=b
但し次式が成立する。
【0090】
【0091】
従ってH-1bによって係数を解くことができる。行列Hは、ECAP基底からの基底関数の何れもアーティファクト基底のスパンに属さず(逆の場合も同じ)、ECAP及びアーティファクト基底を有する基底関数が別個である時且つその時に限り可逆的である。比較的大きい又は小さい内積がHの反転中に計算誤差を生じさせないように、基底関数は単位倍率(unit power)にスケールすべきである。
【0092】
実際には何れの基底によってもモデリングされない雑音が信号内にある。しかし生じる誤差は軽微であり、それは無限の時間間隔にわたって取られる内積に関して独立した雑音源と任意の信号との内積がゼロだからである。bを計算するとき内積を有限数のサンプルに限定することは幾らかの誤差を伝播させるが、この誤差は有意ではない。
【0093】
ECAPパラメータ決定は次の通りである。初期アーティファクトが除去され、任意の残余ベースラインが減じられた記録信号を使用してパラメトリックECAP基底を決定する。この信号を「洗練済み記録」と呼ぶこととする。一連の基底ECAP周波数及びオフセットをスイープし、洗練済み記録と各パラメトリック基底関数との間のドット積を取ることによって相関メッシュを決定する。
【0094】
シングルエンドモード及びディファレンシャルモードでは、本発明の実施形態は800Hz~2kHzの16個の線形間隔の周波数及び-7サンプル~-1サンプルの間のオフセットをサンプリングする。この周波数及びオフセットの範囲はヒト被験者内で観察される試験信号に対して上手く機能することが分かっているが、これらの範囲は拡張してもよい。これらの範囲を拡張し過ぎることはパラメトリックECAPが雑音又はアーティファクトに結び付くことを可能にするので、拡張は慎重に行われたい。相関メッシュの最も高い正の定留点が第1のECAP基底要素のパラメータを決定する。測定がシングルエンドである場合、これが唯一のECAP基底要素である。
【0095】
ディファレンシャルECAP測定の場合、500Hzと過去に決定された基底要素の周波数の間の16個の線形間隔の周波数をサンプリングして新たな相関メッシュを計算する。参照は記録電極よりも刺激から常に離れていると考える。ECAP周波数は記録距離と共に単調減少するので、そのようにすることで人間の神経生理学が活用できるようになる。同様の状態において、過去のECAP基底オフセットと12個のサンプルとの間でオフセットを検査する。この場合もやはり、これらの範囲は人間からの良好な信号と共に上手く機能するように経験的に選択されている。相関メッシュの最も高い正の定留点を使用するのではなく、最も負の定留点が二次基底関数のパラメータを代わりに決定する。負の定留点がない場合は一次基底関数だけを利用する。
【0096】
ブラインド信号分離アルゴリズムの大部分は基本信号が統計的に独立していると仮定し、統計的な信号処理技法を使用して基本信号を推定する。基本信号は本質的に互いに依存するので、このやり方ではECAP及びアーティファクト推定の問題を解決することができない。代わりに本発明の実施形態は、各基本信号を基底関数の一次結合として表せると仮定し(より強い仮定)、合成信号の形で記録される前に基本信号についての幾らかの知識が既にあるプロセスにその適用を限定する。
【0097】
アーティファクトモデルは、ハードウェア/記録内に存在するアーティファクトをモデリングするために使用される基底関数を列挙する。FPAPモデルは、合計のECAP基底セット内で使用される特異基底関数である。実際にはシングルエンド測定では1つのFPAPを使用し、ディファレンシャル測定では2つの記録電極間で取られるディファレンシャル測定と共に生じる参照電極効果に対処するために2つのFPAPを使用する。
【0098】
代替的実施形態を更に示す。この実施形態では、
図4のプロセスを以下のように代わりに実装する。
【0099】
アーティファクト推定スクラッバは、信号のアーティファクト成分g(t)だけを推定しようと試み、σ(t)-g(t)を使用してECAP推定を導出するスクラッバである。指数スクラッバは、アーティファクトを指数関数の和としてモデリングする。ここではそのようなモデルを3つ想定する。
【0100】
【0101】
シンプレックス山登りNelder Meadアルゴリズムを使用して非線形最適化が行われ、パラメータa、b、c、d、e、f、g及びhは費用関数の値を最小化するように全てチューニングされる。非線形最適化は、推定アーティファクトサンプルと記録信号のサンプルとの間の二乗和誤差を最小化する。数学的に費用関数は以下のように定義される:
【数15】
【0102】
非線形最適化は非決定性アルゴリズムであり、予測可能又は事前に決定可能な時間内に終了しないことを意味する。これは、妥当な時間枠内でスクラブすることができない信号をかかるスクラッバに与えることが可能であることを意味する。更に、非線形最適化は極小で行き詰り、真の最適解を見つけることができない場合がある。実際にはこのスクラッバは上手く機能するが、一般的に使用する前に知っておくべき制限がある。それでもなお、かかる実施形態は一定の応用における用途を有する。
【0103】
更なる実施形態は、指数スクラッバと同じ原理に基づいて機能するフラクショナル極(fractional pole)スクラッバであり、以下のアーティファクトモデルのパラメータa、k、α及びhを定めるために非線形最適化が使用される:
g(t)=αexp(-kt)・t1.0-α+h。
【0104】
更に別の実施形態は複素極スクラッバである。アーティファクトが二次反応(二重指数関数はこの種の反応のサブセットである)だと仮定した場合、生信号に適合する二次反応のパラメータを推定することができる。離散信号では、アーティファクトgが以下のモデルに従う:
g[n]=b・g[n-1]+c・g[n-2]。
【0105】
一連のサンプルを所与とし、行列方程式:
【数16】
を書くことができ、但し次式
【数17】
が成立する。
【0106】
従って、
【数18】
を計算することによって係数b及びcを決定することができる。
【0107】
次いで先の解析は信号品質インジケータ(SQI)と呼ばれるアルゴリズムにフィードし、SQIは同じ刺激器プログラムの下で記録される1組のECAPに品質スコアを割り当てる。かかるアルゴリズムは、臨床データ解析ソフトウェア及び臨床ユーザインタフェースソフトウェア内の信号品質インジケータに使用することができる。
【0108】
信号の品質を自動評価するためのシステムを構築するために、信号を「不良」に対して「優良」とする信号の特性を定義する必要がある。「優良」対「不良」の範囲に関するテストケースを使用してSQIの性能を評価することができる。但し、個々の信号のどの特性が閉ループ脊髄刺激における不十分な臨床結果を招くのかは不明確なので、信号品質についてのそのような定義は存在しない。対照的に、閉ループ患者に関する臨床的成功の知られているインジケータである成長曲線の品質を評価することは比較的簡単である。
【0109】
従って、同じ刺激器構成の下で記録される信号群の品質は、同じ刺激器構成を使用して測定される成長曲線の品質の予測として定義される。しかし成長曲線を集めるには時間がかかる。従って、満足な成長曲線をプログラムが生む、成長曲線を集める前の客観的指針が現場の臨床工学技士によって求められている。
【0110】
刺激器プログラムは、刺激波形パラメータ、刺激周波数、及び電極配置の組み合わせとして定義される。これらの量が一定に保たれる場合、信号は同じ刺激器プログラムを用いて測定される。本発明の実施形態はECAPモフォロジが刺激電流と共に変化せず、ECAPのピークツーピークの大きさだけが電流と共に変化するという仮定の下で動作するので、刺激電流は信号によって変わり得る。
【0111】
本発明の実施形態の信号品質インジケータ(SQI)は、開ループモード(即ちフィードバックは有効化されない)で同じ刺激器プログラムを用いて記録される複数の信号の品質を評価し、予測される成長曲線の品質の測度を0~1の単数として出力する。高いスコアは、前述のプログラムを用いて記録される信号の品質が高く、成長曲線の測定で使用するのにより適していることを示す。品質の推定は独特な品質の個々の信号に対してロバストであるべきなので、評価を行うために複数の記録(又は信号)が必要である。代わりに、刺激器プログラムの全般的な信号品質の指示をSQIが提供するのが望ましい。
【0112】
図8は、本発明の一実施形態によるSQIシステムのアーキテクチャを示す。
【0113】
他の手段によって導出される参照ECAPを参照することによって代替的実施形態がECAP信号品質スコアを導出できることに留意すべきである。例えば記録信号からアーティファクト推定を減じることによって残余信号を得ることができ、適合の時点から装置内に保存される臨床的に検証されたテンプレートECAPと単純に比較することができる。臨床的に検証されたテンプレートECAPは、例えばSNRを改善するための閾値を著しく上回って取得され、かかるテンプレートの役割を果たすために装置内に記憶するのに適していると臨床医によって検証されたECAP記録を含み得る。
【0114】
様々な品質の成長曲線が閉ループSCS治療におけるその有用性に関して経験を積んだ臨床医によってスコア付けされた。それらの成長曲線をもたらすために使用される同じプログラムを用いて記録される信号のサブセットが信号品質試験ライブラリとして使用された。SQIの性能は、信号品質試験ライブラリ内のプログラムに割り当てられる品質スコアに対して一貫したランキングを与える品質スコアをもたらすSQIの能力によって評価される。アルゴリズムのチューニング/学習は信号品質試験ライブラリに対して行われず、むしろ信号品質訓練ライブラリに対して行われる。
【0115】
SQIは各入力信号をサンプルの一覧として受け付ける。SQIは、各入力信号と一緒に刺激電流も受け付ける。SQIは複数の信号を使用し、4つ以上の信号を入力として受け付けたとき品質推定をもたらす。プログラムの品質を評価するためにSQIを使用し、そのため高品質のプログラムを臨床用により容易に選択することができる。
【0116】
加えて、信号の推定ECAP成分の一貫性を測定することによって品質を評価することができる。一貫性のない推定は、信号品質が不十分であり、その結果ECAP推定が不十分であること、又は劣化した信号を与えられたとき生じ得るように信号成分のモデリングが不十分であることを示す。SQIは0~1の10進数の形で品質推定を出力する。
【0117】
品質インジケータの意図は、FCEが信号品質に関する経験及び培われた直感に依拠する必要なしに患者用の優れたプログラムをより素早く見つけられるようにすることである。複数の出力を提示することはFCEが負う精神的/体験的な負担を減らし得るが、複数のインジケータの意味を集約する際に訓練又は培われた直感が依然として必要である。従って、本発明の実施形態によって提供されるように単一のインジケータを提供することが望ましい。
【0118】
本発明の実施形態の手法は以下の疑似コードによって表すことができる:
score=(scoreParams.DetectionRate*scoreParams.MeanPositiveCorrelation)
/((scoreParams.StdPosFreq+100*scoreParams.StdPosOff)+30/(scoreParams.DetectionRate+1e-3));
return 1.0-1.0/(1.0+alpha*score);//[0,inf]からのスコアを[0,1]からのスコアに変換する。
【0119】
信号品質インジケータ(SQI)は、プログラミングパラメータを選択する際にFCEを導くために使用されるツールである。SQIは0~1の数字であり、様々な患者プログラムにわたって測定されるSQIと組み合わせてそれらのプログラムのどれが最も上手く機能するのかに関する洞察を与える。例えばプログラムAが0.9のSQIを有し、プログラムBが0.5のSQIを有する場合、臨床工学技士はプログラムAを選ぶことになる。この意味で、SQIは患者予後の予測変数だと考えることができる。
【0120】
信号品質は2つのやり方、つまり客観的及び主観的のうちの1つによって解釈することができる。客観的信号品質は信号対雑音等の客観的な信号特性によって表され、信号の如何なる量も処理が除去することはできない。主観的な信号品質は、使用中の移植物の能力を所与として信号からどれ位多くの情報を抽出できるのかについての測度である。この主観的な信号品質のカテゴリは、信号対アーティファクト比等の信号特徴を対象として含む。処理時間及び容量によって限定されない理想的なアーティファクト除去手法は主観的信号品質を改善することができるが、実際的な移植物で及び実際的な臨床プログラミングセッションで利用可能な限られたフィルタ機能を所与とし、本発明の実施形態は代わりにかかる応用の制約の範囲内で患者予後の予測を行う。本発明の様々な実施形態で使用される信号品質インジケータは客観的信号品質と主観的信号品質との組み合わせを含み得る。神経生理学的反応はモフォロジではなく時間を通じた振幅でのみ変化するという仮定の下、主観的SQIは一定の信号特徴の変動性を考慮に入れ、従って信号の時間系列を必要とする。但し客観的SQIは個々の信号に基づいてスコアをもたらすことができる。
【0121】
記載する実施形態のSQIは信号特徴の時間系列から導出される。利用する特徴は以下の通りである:
・先に記載した基底要素信号分離メカニズムによって決定されるECAPの検出
・先の適合方法において記載したメカニズムによっても推定されるモデルパラメータ
・先に記載したメカニズムによっても計算されるモデル相関
・刺激電流。
【0122】
特徴の時間系列を所与とし、導出されるSQIの時間系列が決定される。本発明の実施形態は様々な時間尺度上で変化する信号品質インジケータを提供する。一定の信号特徴の変動性の推定は、推定をもたらすことができる前に幾らかのサンプルサイズを必要とする。小さいサンプルサイズを使用することは、大きいサンプルサイズと比較して高速に更新されるSQIを与える。本発明の実施形態によって使用される高速に更新されるSQIは:
【数19】
として定義され、但し
【数20】
は検出率であり、
【数21】
はスクラブされた信号と選択された参照電極ECAPモデルとの間で測定される平均相関であり、f+及びd+はそれぞれ参照電極ECAPモデルについて推定される周波数及び遅延パラメータであり、α及びβはバリアンス推定の寄与に適切に重み付けするために使用される実験定数である。
【0123】
32個のサンプルにわたって信号統計が計算され、最初のSQIスコアsを計算できる前に少なくとも32個の信号が必要とされる。このステップの後、スコアsは[0;1]の指定の範囲に限定されないが、両方のパラメータのバリアンスが0である場合は代わりに∞まで広がり得る。従って次のステップで、以下のように正規化スコアをもたらすためにsに正規化を適用する:
【数22】
【0124】
今度はs’∈:[0,1]である。臨床設定における品質スコア間の最大の差別化を与えるように、定数γ及びτが臨床経験を使用してチューニングされている。これらのパラメータが誤って選択される場合、大部分の時間にわたってスコアが不適切に1に近く又は0に近く存在する傾向がある。
【0125】
遅く更新されるSQIも利用される。遅く変化するSQIの利点は、スコアが信号の長い履歴にわたって割り当てられ、局所的な信号の変化に過度に敏感でないことである。そのため臨床工学技士は安定したスコアを有し、局所的な信号の特性に基づいてプログラムの「最良」の選択を絶えず変更するSQIと比較してプログラムを選択する態勢がより整っている。遅く変化するSQIは上記のサンプルサイズを増加することによって得ることができる。但し、この実施形態では加重アンサンブル平均を採用する。n(=32)サンプルごとに、s’を計算する。次いで、遅く変化するSQIが加重平均から導出され:
【数23】
但し
【数24】
は過去n個のサンプルにわたって取られた時点jにおける平均電流であり、s’’は電流によって重み付けされたs’の履歴的進化を表す。電流によって品質に重み付けする動機は、電流が増加するときノイズフロアに対する神経生理学的反応のサイズが増加することが期待されるので、客観的信号品質の改善が期待されることである。代替的実施形態は、他の任意のプログラムパラメータを使用して、前述のプログラムパラメータが客観的信号品質又は主観的信号品質を改善することが分かっているという知識に基づくやり方で加重平均を定めることができる。
【0126】
一実施形態では、臨床設定において4つの異なる患者プログラムの代替策について信号品質が提示され、新たな信号が観察されるとき各品質スコアが進化するように構成されるようにシステムが構成される。各品質スコアの数字表示は0~100のパーセンテージにスケーリングされ、臨床工学技士は閉ループ制御プログラミング手続きを遂行し、臨床的有効性を評価する前にSQI予測を使用して患者プログラムを絞り込むことができる。
【0127】
本発明の代替的実施形態は、信号対アーティファクト比(SAR)、信号対雑音比(SNR)、又はスペクトルピーク位置等の周波数領域の特徴を含む信号特徴の任意の時間系列から導出されるSQIを同様に実装することができる。一部の実施形態では、他の装置のプログラムパラメータの時間系列も信号品質の推定に含めることができる。
【0128】
従って本発明の実施形態は、個々の患者用の装置のプログラミングを可能な限り自動化する際に特に支援的であり得る。
【0129】
本発明の実施形態は、ECAP振幅等の観察される結果に基づいて閉ループフィードバックを利用する神経調節に関して特に利益を与えることができる。かかるフィードバックシステムでは、ループの可能な振る舞いは、ECAP信号が何らかの理由で(例えば著しいリードの移行又は追加の雑音源によって)失われ又は信号対雑音比が低くなり過ぎ、その効果によって(しかし必ずしもリクルートの実際の低減によってではなく)測定ECAP振幅が低減する場合、システムは測定ECAP振幅を特定の標的まで戻すために刺激電流を増加することである。このことは過度のリクルートを生じさせる可能性がある。更にECAP測度が全喪失する場合、最大電流制限又はコンプライアンス電圧制限に当たるまで刺激電流を増加するようにフィードバックループが動作する。これらの終点の何れも患者に対する幾らかの不快感及び意図したよりも多くの後柱活性化を招く可能性がある。逆の事例では、測定されるECAP振幅が何らかの理由で実際のリクルートよりも高い場合は電流が0mAに駆動され、患者は如何なる治療も受けず及び/又は苛立たしく不快であることが多い間欠刺激を感じ得る。本発明によるECAP信号品質決定をかかるフィードバックループに統合することにより、ECAP信号品質が低い場合にそのような不所望のループエクスカーションが発生するのを抑制し又は防ぐようにループを修正することでフィードバックループの動作を改善することができる。例えば簡単なステップは、ECAP信号品質が閾値未満であるときにフィードバックループの動作を完全に停止し、ECAP信号品質がその閾値又は別の閾値を上回るときにフィードバックループの動作を再開することである。患者はかかる発生を通知され得る。
【0130】
図9は本発明の一実施形態による臨床システムを示し、ここでは臨床医である利用者に関連するプログラミングアプリケーションが、あり得る全ての記録電極の構成の自動化走査を神経刺激器が実行し、それによりあり得る全ての電極構成に関するECAP品質スコアの行列又は組を得る手はずを整える。
【0131】
本明細書では自動化走査を測定電極走査(MES)とも呼ぶ。とりわけこの実施形態ではMESが埋め込み装置によって実行され、そのことは自動化MESのより迅速な実行を可能にし、それにより臨床適合を促進し、更に患者の姿勢変化が比較結果に影響を及ぼし得る可能性を最小化する。
【0132】
臨床医である利用者が複数の電極位置の信号品質指示(SQI)をリアルタイムで見ることを可能にするために、MESの結果はプログラミングアプリケーションによって視覚的に提示される。具体的には、プログラミングアプリケーションは、現在選択されている刺激及び記録構成において測定される刺激に対する推定神経反応も視覚的に提示するように構成されるが、臨床医が検討したい場合がある複数の代替策に関するSQIも同時に提示する。
【0133】
測定電極の走査は、複数の電極構成からのECAPが同時に表示されることを可能にする。測定電極及び設定の選択を最適化するのを支援することを意図する。既定では、測定電極の走査は刺激の開始時に自動で開始される。測定電極の走査は最大4つの測定電極構成で構成される:利用者によって選択される構成及び他の3つの構成。走査に使用される電極は電極表示ウィンドウ内で選択される刺激、測定、及び参照電極の位置に基づき、
図12を参照されたい。
【0134】
電極を選択し、MESを行うための設定は下記の通りである。
【0135】
【0136】
図10は、本発明の一実施形態によるMESの一実装を表す状態機械図である。一次位置は、刺激に対する神経反応を計算するために神経刺激器によって使用される位置として定義する。NecapはECAPの平均化に使用される測定の数として定義する。平均化が無効化される場合、Necapは1に等しい。Nmeasurementは、被定義位置において必要とされる平均化ECAPの数として定義する。N+はECAP測定電極の位置として定義する。N-はECAP参照電極の位置として定義する。
【0137】
図11は、移植物によって実行されるMES手続き1100の流れ図である。最初のステップ1102で、MESプログラムに電極構成を割り当てる。これは予め決定されていても、又は利用者によって決定されてもよい。1104で、利用者が選択した設定に関連する全ての電極構成のECAP測定を移植物のファームウェアが捕捉する。例示的実装では、電極を選択する間の検討事項は選択される刺激、測定、及び参照電極が同じリード上になければならないことであり得る。又は1つの刺激電極だけが選択されることである。この実施形態では測定電極が刺激電極に隣接してはならず、参照電極が埋め込み可能なパルス発生器のケース上にあってはならないが、かかる条件は他の実施形態では認められる場合がある。測定電極は刺激電極と参照電極との間になければならない。一部の事例では、利用者によって設定される一次位置が優れた品質のECAP記録を捕捉するのに最良の位置ではない場合がある。するとMESプログラムがロバストなECAPを得るのに最良の電極構成を提案する。
【0138】
図12は、stim電極がE2である場合のMES位置構成方法の例を示す。MESプログラムは、設定したECAP数がたまるまで選択された電極位置のそれぞれにおいてECAPを測定するように構成される。その後、各電極位置においてSQIアルゴリズムを使用してSQIスコアが計算される。SQIスコアは、
図12に示すような固定距離及び固定参照等の戦略に基づいてプログラミングソフトウェアによって様々な電極位置について計算される。MESプログラムは、利用者の介入時に又は全ての被選択電極のスコアを計算した後で停止する。複数の電極におけるECAP品質スコアが利用者に与えられ、そのことは最も優れた品質のECAPを捕捉するあり得る最良の電極の組み合わせを利用者が選択することを可能にする。
【0139】
図13~
図16に出力の例を示す。
図13は、4つの固定距離記録電極構成のSQIを示す測定電極走査GUIウィンドウを示す。この例ではE7に対して参照されるE3が最良の記録電極だと簡単な観察によって明らかにすることができる。
図14は、MES走査が何らかの理由で停止されるときの出力を示す。
【0140】
図15は、ECAPが検出されないときにもたらされるSQI=0%の出力を示す。参照電極の選択に関係なくECAPが観察されないので、これらの結果はE7が記録電極の芳しくない選択であることを示唆する。
図16は、記録電極としてE4を使用するとき、どの参照電極が最適なのかを調査する場合のMES出力を示す。
【0141】
広範に記載した本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなしに、特定の実施形態の中で示した本発明に多数の改変及び/又は修正を加えることができることが当業者によって理解されよう。従って本発明の実施形態は、あらゆる点で限定又は制限ではなく例示と見なすべきである。
【符号の説明】
【0142】
112 電源
114 遠隔測定モジュール
116 コントローラ
120 患者設定
122 制御プログラム
124 パルス発生器
126 電極選択
128 増幅器&ADC
150 電極