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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20241129BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20241129BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20241129BHJP
   F21V 9/40 20180101ALI20241129BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20241129BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241129BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20241129BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241129BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20241129BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
F21V14/04
F21V7/00 590
F21V9/40 400
B60Q1/26 Z
B60R11/02 C
F21W103:60
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022501858
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005361
(87)【国際公開番号】W WO2021166814
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020024282
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020033672
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】多々良 直樹
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0297470(US,A1)
【文献】特開2016-101797(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031915(WO,A1)
【文献】特開2004-306894(JP,A)
【文献】特開2019-018681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/138842(WO,A1)
【文献】特開2010-032906(JP,A)
【文献】特開2012-247369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
F21V 14/04
F21V 7/00
F21V 9/40
B60Q 1/26
B60R 11/02
F21W 103/60
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記路面描画ランプを制御し、前記ビームによって、車両前方の路面にパターンを描画するランプ制御部と、
を備え、
前記ランプ制御部は、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を含む第1パターンを描画し、当該イベントの開始とともに、当該イベントに対応する第2情報を含む第2パターンを描画し、
前記所定のイベントは、幅員減少であり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、車両の幅であることを特徴とする灯具システム。
【請求項2】
ヘッドアップディスプレイと、
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記ヘッドアップディスプレイを制御し、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を前記ヘッドアップディスプレイに表示するHUD制御部と、
前記路面描画ランプを制御し、前記イベントの開始とともに、前記イベントに対応する第2情報を含むパターンを車両前方の路面に描画するランプ制御部と、
を備え
前記所定のイベントは、幅員減少であり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、車両の幅であることを特徴とする灯具システム。
【請求項3】
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記路面描画ランプを制御し、前記ビームによって、車両前方の路面にパターンを描画するランプ制御部と、
を備え、
前記ランプ制御部は、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を含む第1パターンを描画し、当該イベントの開始とともに、当該イベントに対応する第2情報を含む第2パターンを描画し、
前記所定のイベントは、一時停止であり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、一時停止指示であることを特徴とする灯具システム。
【請求項4】
ヘッドアップディスプレイと、
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記ヘッドアップディスプレイを制御し、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を前記ヘッドアップディスプレイに表示するHUD制御部と、
前記路面描画ランプを制御し、前記イベントの開始とともに、前記イベントに対応する第2情報を含むパターンを車両前方の路面に描画するランプ制御部と、
を備え
前記所定のイベントは、一時停止であり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、一時停止指示であることを特徴とする灯具システム。
【請求項5】
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記路面描画ランプを制御し、前記ビームによって、車両前方の路面にパターンを描画するランプ制御部と、
を備え、
前記ランプ制御部は、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を含む第1パターンを描画し、当該イベントの開始とともに、当該イベントに対応する第2情報を含む第2パターンを描画し、
前記所定のイベントは、進行方向の切り替えであり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、進行方向の切り替え指示であることを特徴とする灯具システム。
【請求項6】
ヘッドアップディスプレイと、
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記ヘッドアップディスプレイを制御し、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を前記ヘッドアップディスプレイに表示するHUD制御部と、
前記路面描画ランプを制御し、前記イベントの開始とともに、前記イベントに対応する第2情報を含むパターンを車両前方の路面に描画するランプ制御部と、
を備え
前記所定のイベントは、進行方向の切り替えであり、
前記第1情報は、減速指示であり、
前記第2情報は、進行方向の切り替え指示であることを特徴とする灯具システム。
【請求項7】
ビームを路面に照射する路面描画ランプと、
前記路面描画ランプを制御し、前記ビームによって路面にパターンを描画する制御部と、を備え、
前記制御部は、パーキングブレーキの解除を条件として第1パターンを描画し、アクセルブレーキの解除を条件として描画するパターンを前記第1パターンから発進通知パターンとしての第2パターンに変更することを特徴とする灯具システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2パターンが描画されてから所定の時間が経過したこと、車両が発進してから所定の時間が経過したこと、車速が所定値以上になったこと、のいずれか条件として第2パターンを消灯することを特徴とする請求項に記載の灯具システム。
【請求項9】
前記第2パターンはアニメーションであり、
前記制御部は、アニメーションの速度を車速に応じて変化させることを特徴とする請求項7または8に記載の灯具システム。
【請求項10】
前記第2パターンは、車幅方向に図形が引き伸ばされるアニメーションであることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の灯具の高機能化が進んでおり、その一例として、路面に光ビームのパターンを照射し、図形や文字を描画するランプが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2015/133302号公報
【文献】特開2016-055691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、交通安全に寄与する灯具システムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1. 本発明のある態様の灯具システムは、ビームを路面に照射する路面描画ランプと、路面描画ランプを制御し、ビームによって、車両前方の路面にパターンを描画するランプ制御部と、を備える。ランプ制御部は、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報を含む第1パターンを描画し、当該イベントの開始とともに、当該イベントに対応する第2情報を含む第2パターンを描画する。
【0006】
本発明の別の態様もまた、灯具システムである。この灯具システムは、ヘッドアップディスプレイと、ビームを路面に照射する路面描画ランプと、ヘッドアップディスプレイを制御し、所定のイベントの開始に先だって、運転者が当該イベントに対応できるように運転者に予め提示すべき第1情報をヘッドアップディスプレイに表示するHUD制御部と、路面描画ランプを制御し、イベントの開始とともに、イベントに対応する第2情報を含むパターンを車両前方の路面に描画するランプ制御部と、を備える。
【0007】
2. 本発明のある態様の灯具システムは、ビームを路面に照射する路面描画ランプと、路面描画ランプを制御し、ビームによって路面にパターンを描画する制御部と、を備える。制御部は、パーキングブレーキの解除、アクセルブレーキの解除、車両の発進、アクセルがオン状態になったこと、のいずれかを条件として、路面に発進通知パターンを描画する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、交通安全に寄与する灯具システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る灯具システムのブロック図である。
図2図2(a)~(d)は、幅員減少イベントに関する灯具システムの動作を説明する図である。
図3図3(a)~(d)は、進行方向の切り替えイベントに関する灯具システムの動作を説明する図である。
図4図4(a)~(d)は、一時停止イベントに関する灯具システムの動作を説明する図である。
図5図5(a)~(d)は、第1情報をHUDに表示する場合における、幅員減少イベントに関する灯具システムの動作を説明する図である。
図6】実施の形態2に係る灯具システムのブロック図である。
図7図6の配光可変ランプが路面に描画するパターンの一例を示す図である。
図8図8(a)~(d)は、発進通知に関する灯具システムの動作を時系列で説明する図である。
図9図9(a)~(e)は、変形例に係る第2パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ(路面描画ランプ)110と、ランプ制御部120と、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)130と、HUD制御部140と、カメラ150と、を備える。実際の灯具システム100は、ハイビーム、ロービームなどを備えるが、ここでは省略している。
【0013】
配光可変ランプ110は、ランプ制御部120から路面900に描画すべきパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布を有するビームBMを車両前方の路面900に照射し、路面900にパターンPTNを描画する。
【0014】
配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0015】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも路面900をカバーするように定められる。したがって配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービームの照射エリアの一部とオーバーラップしてもよい。したがって配光可変ランプ110は、ロービームよりも明るい照度でパターンPTNを照射してもよい。
【0016】
ランプ制御部120は、配光可変ランプ110を制御する。ランプ制御部120はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0017】
より詳しくは、ランプ制御部120は、配光可変ランプ110を制御し、ビームBMによって路面900に運転の支援のためのパターンPTNを描画する。描画されるパターンPTNは特に限定されないが、たとえば、法定速度、道路標識などを、運転者が見やすいように描画してもよい。あるいは、他の車両の運転を支援するために、自車の進行方向を描画してもよい。いずれにせよ、パターンPTNは、ロービームのような単なる照明ではなく、運転者あるいはその他の交通参加者に提示すべき情報を含む。
【0018】
HUD130は、ディスプレイであり、たとえばフロントウィンドウによって構成される。HUD制御部140は、走行シーンに応じて、HUD130に適切な情報を表示させる。
【0019】
より詳しくは、HUD制御部140は、HUD130による表示を制御して、運転者に、運転支援のための情報を提示する。この情報は、(i)車両が遵守すべき外的な情報、(ii)カーナビゲーションシステムと連動した情報、(iii)自車の情報、が例示されるがその限りでない。(i)外的な情報には、制限速度、車両進入禁止、一時停止などが含まれ、カメラ150によって道路標識を撮影することにより取得してもよいし、カーナビゲーションシステムから取得してもよい。(ii)カーナビゲーションシステムと連動した情報には、進路、曲がるべき交差点の名称やそこまでの距離などが含まれる。(iii)自車の情報には、車速、エンジンの回転数、燃料の残量、車両の各種警告が含まれる。
【0020】
カメラ150は、車両前方を撮像する。ランプ制御部120は、カメラ150が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110が路面900に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。また、HUD制御部140は、カメラ画像IMGにもとづいて、HUD130に表示すべき情報を制御してもよい。
【0021】
ECU(Electronic Control Unit)200は、灯具システム100を統括的に制御する。たとえば、ECU200は、配光可変ランプ110のオン、オフなどの指令を発生する。また配光制御に必要な情報をランプ制御部120に送信する。
【0022】
図1に示すように、ランプ制御部120とHUD制御部140とをバスで接続して、直接的に連携するようにしてもよい。あるいは、ランプ制御部120とHUD制御部140との間に、ホストとなるプロセッサ(たとえばECU200)を介在させて、ランプ制御部120とHUD制御部140とを間接的に連携するようにしてもよい。
【0023】
灯具システム100は、所定のイベントEVT_#(#はイベントを区別する文字であり、たとえば#=1,2,…のように表記する)の開始に先だって、運転者がイベントEVT_#に対応できるように運転者に予め提示すべき情報(以下、第1情報という)を含むパターンPTNを描画する。あるいは、灯具システム100は、所定のイベントEVT_#の開始に先だって第1情報をHUD130に表示する。第1情報は、イベントEVT_#の内容を示す情報であってもよい。イベントEVT_#の開始に先だってイベントEVT_#の内容を提示することにより、運転者は、イベントEVT_#への対応のためにイベントEVT_#の開始前にとるべき行動対処をとることができる。あるいは第1情報は、運転者がイベントEVT_#の開始前にとるべき行動対処を示す情報であってもよい。第1情報は、イベントEVT_#の発生の予告の役割を果たすとも捉えることができる。
【0024】
また灯具システム100は、イベントEVT_#の開始とともにイベントEVT_#に対応する情報(以下、第2情報という)を含むパターンPTNを描画し、イベントEVT_#の終了とともにパターンPTNを消灯する。第2情報は、イベントEVT_#での運転の支援のために運転者に提示すべき情報であってもよい。
【0025】
イベントEVT_#の発生および終了の判定は、ランプ制御部120が行ってもよいし、ECU200が行ってもよい。
【0026】
以下では、灯具システム100の動作について、いくつかの実施例をもとに具体的に説明する。
【0027】
(実施例1)
実施例1において所定のイベントEVT_1は、幅員減少である。図2(a)~(d)は、幅員減少イベントEVT_1に関する灯具システム100の動作を説明する図である。
【0028】
幅員減少の道路標識912を撮影したカメラ画像IMGにもとづいて、あるいはカーナビゲーションシステムから取得する情報にもとづいて、イベントEVT_1が近々発生する予定であると判定されると、図2(a)に示すように、イベントEVT_1が幅員減少であることを示す情報(第1情報)を含むパターンPTN_Aが路面900に描画される。図2(a)では、パターンPTN_Aは、幅員減少の道路標識を模した図形(第1情報)を含む。
【0029】
続いて、図2(b)に示すように、イベントEVT_1の開始前に運転者がとるべき行動対処である減速を指示する情報(第1情報)を含むパターンPTN_Bが路面900に描画される。図2(b)では、パターンPTN_Bは、減速を指示する文字(第1情報)を含む。
【0030】
図2(a)、(b)のパターンPTN_A,Bが路面900に描画されることによって、運転者は、幅員減少イベントすなわち幅の狭い道路を走行するというイベントに対応できるようにするべく、当該イベントの開始前に減速するという行動対処をとることができ、安全にイベントを迎えることができる。なお、第1情報を含むパターンPTNとして、図2(a)および図2(b)のいずれか一方のパターンPTNだけが路面900に描画され、他方のパターンPTNは描画されなくてもよい。
【0031】
続いて、幅員減少地点までの距離がある程度以下となると、イベントEVT_1の発生(開始)と判定され、図2(c)に示すように、幅員減少イベントでの運転を支援するための情報(第2情報)を含むパターンPTN_Cが路面900に描画される。図2(c)では、パターンPTN_Cは、車両の幅を示す図形(第2情報)を含む。車両の幅は、左右のタイヤの所定部分間の幅であっても、車体の幅であっても、左右のミラーの所定部分間の幅であってもよい。タイヤの所定部分は、タイヤの車幅方向における最外端部であってもよいし、タイヤの車幅方向の中央部であってもよい。ミラーの所定部分は、ミラーの車幅方向における最外端部であってもよい。
【0032】
車両の幅を示すパターンPTN_Cを路面描画することにより、運転者に車両の幅を把握させることができ、脱輪、壁などの障害物との接触のおそれを低減できる。また、交通参加者(歩行者や他車両)に自車両の接近を報知でき、回避行動を促すことができる。
【0033】
イベントEVT_1の終了と判定されると、図2(d)に示すように、車両の幅を示すパターンPTN_Cが消灯する。
【0034】
(実施例2)
実施例2において所定のイベントEVT_2は、進行方向の切り替え、すなわち右左折である。図3(a)~(d)は、進行方向の切り替えイベントEVT_2に関する灯具システム100の動作を説明する図である。
【0035】
カーナビゲーションシステムから取得する情報にもとづいて、イベントEVT_2が近々発生する予定であると判定されると、図3(a)に示すように、イベントEVT_2が進行方向の切り替えであることを示す情報(第1情報)を含むパターンPTN_Aが路面900に描画される。図3(a)では、パターンPTN_Aは、進行方向を切り替えるべき方向を示す矢印と、進行方向を切り替える地点までの距離とを示す文字とを含む。
【0036】
続いて、図3(b)に示すように、イベントEVT_2の開始前に運転者がとるべき行動対処である減速を指示する情報(第1情報)を含むパターンPTN_Bが路面900に描画される。図3(b)では、パターンPTN_Bは、減速を指示する文字(第1情報)を含む。
【0037】
図3(a)、(b)のパターンPTN_A,Bが路面900に描画されることによって、運転者は、進行方向の切り替えイベントに対応できるようにすべく、当該イベントの開始前に減速するという行動対処をとることができ、安全にイベントを迎えることができる。なお、第1情報を含むパターンPTNとして、図3(a)および図3(b)のいずれか一方のパターンPTNだけが路面900に描画され、他方のパターンPTNは描画されなくてもよい。
【0038】
続いて、進行方向の切り替え地点までの距離がある程度以下となると、イベントEVT_2の発生(開始)と判定され、図3(c)に示すように、進行方向を切り替えるべき方向を示す情報(第2情報)を含むパターンPTN_Cが路面900に描画される。図3(c)では、左折すべきことを示す矢印を含むパターンPTN_Cが路面900に描画されている。
【0039】
イベントEVT_2の終了と判定されると、図3(d)に示すように、進行方向の切り替えを示すパターンPTN_Cが消灯する。
【0040】
(実施例3)
実施例3において所定のイベントEVT_3は、一時停止である。図4(a)~(d)は、一時停止イベントEVT_3に関する灯具システム100の動作を説明する図である。
【0041】
一時停止の道路標識914を撮影したカメラ画像IMGにもとづいて、あるいはカーナビゲーションシステムから取得する情報にもとづいて、イベントEVT_3が近々発生する予定であると判定されると、図4(a)に示すように、イベントEVT_3が一時停止であることを示す情報(第1情報)を含むパターンPTN_Aが路面900に描画される。図4(a)では、パターンPTN_Aは、一時停止の道路標識を模した図形(第1情報)を含む。
【0042】
続いて、図4(b)に示すように、イベントEVT_3の開始前に運転者がとるべき行動対処である減速を指示する情報(第1情報)を含むパターンPTN_Bが路面900に描画される。図4(b)では、パターンPTN_Bは、減速を指示する文字(第1情報)を含む。
【0043】
図4(a)、(b)のパターンPTN_A,Bが路面900に描画されることによって、運転者は、一時停止イベントに対応できるようにするために、当該イベントの開始前に減速するという行動対処をとることができ、安全にイベントを迎えることができる。なお、第1情報を含むパターンPTNとして、図4(a)および図4(b)のいずれか一方のパターンPTNだけが路面900に描画され、他方のパターンPTNは描画されなくてもよい。
【0044】
続いて、イベントEVT_3の発生が検出されると、図4(c)に示すように、一時停止すべきことを示す図形(第2情報)を含むパターンPTN_Cが路面900に描画される。
【0045】
イベントEVT_3の終了と判定されると、図4(d)に示すように、車両の幅を示すパターンPTN_Cが消灯する。
【0046】
上述の実施例1~3では、路面描画によって第1情報を運転者に提供する場合について説明したが、HUD130に表示することによって第1情報を運転者に提供してもよい。
【0047】
図5(a)~(d)は、第1情報をHUD130に表示する場合における、幅員減少イベントEVT_1に関する灯具システム100の動作を説明する図である。図5(a)~(d)には、運転者の視野が示される。ここでは、幅員減少イベントEVT_1を例に、第1情報をHUD130に表示する場合について説明するが、他のイベントについても同様に、第1情報をHUD130に表示すればよい。
【0048】
イベントEVT_1が近々発生する予定であることが検出されると、図5(a)に示すように、イベントEVT_1が幅員減少であることを示す情報(第1情報)132がHUD130に表示される。図5(a)では、情報132は、幅員減少の道路標識を模した図形である。
【0049】
続いて、図5(b)に示すように、イベントEVT_1の開始前に運転者がとるべき行動対処である減速を指示する情報(第1情報)134がHUD130に表示される。図5(b)では、情報134は、減速を指示する文字である。
【0050】
なお、図5(a)および図5(b)のいずれか一方の情報だけがHUD130に表示され、他方の情報はHUD130に表示されなくてもよい。
【0051】
また、図5(a)のHUD130への表示の代わりに、図2(a)のパターンPTN_Aが路面900に描画されてもよい。あるいは、図5(b)のHUD130への表示の代わりに、図2(b)のパターンPTN_Bが路面900に描画されてもよい。
【0052】
つまり、図2(a)のようにイベントの内容を示すパターンPTNが路面900に描画され、続いて図5(b)のようにイベントの開始前に運転者がとるべき行動対処を示す情報がHUD130に表示されてもよい。あるいは、図5(a)のようにイベントの内容がHUD130に表示され、続いて図2(b)のようにイベントの開始前に運転者がとるべき行動対処を示す情報を含むパターンPTNが路面900に描画されてもよい。
【0053】
続いて、イベントEVT_1の発生と判定されると、図5(c)に示すように、幅員減少イベントでの運転を支援するための情報(第2情報)を含むパターンPTNが路面900に描画され、イベントEVT_1の終了と判定されると、パターンPTNが消灯する。
【0054】
頻繁に路面900に描画されると、運転者にも他の交通参加者にも煩わしさを与える場合があるが、第1情報はHUD130によって提示し、第2情報は路面描画によって提示することで、煩わしさを軽減できる。また、HUD130に表示される像の位置は、車両前方の物体(車両、歩行者、道路標識)よりも手前である。したがって運転者が運転中にHUD130を注視するためには、焦点を移動させる必要がある。そのため運転者はHUD130の表示に気がつかない場合もあり得る。これに対し、路面900は、HUD130よりも、車両前方の物体からの視線の移動距離が短い上に、焦点の移動も小さくて済む。そのため、より重要な情報である第2情報をHUD130ではなく路面描画によって提示することで、第2情報を運転者に確実に伝達できる。
【0055】
以上、実施の形態1について説明した。続いて実施の形態1に関連する変形例を説明する。
【0056】
(変形例1-1)
実施の形態1では、配光可変ランプ110が、ロービームおよびハイビームに対する付加的な光源であったが、ロービームおよびハイビームの少なくとも一方の機能と、配光可変ランプ110とを統合してもよい。
【0057】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る灯具システム100のブロック図である。灯具システム100は、配光可変ランプ(路面描画ランプ)110と、ランプ制御部120と、ロービーム102と、ハイビーム104と、カメラ150と、を備える。これらはすべて同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は、筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
【0058】
本実施の形態では、配光可変ランプ110は、ロービーム102およびハイビーム104とは別に、追加で設けられている。したがって配光可変ランプ110を、追加ビームと称してもよい。
【0059】
配光可変ランプ110は、ランプ制御部120から路面900に描画すべきパターンPTNを指示する制御信号SCTRLを受け、制御信号SCTRLに応じた強度分布902を有するビームBMを車両前方の路面900に照射し、路面900にパターンPTNを描画する。パターンPTNは、ビームBMの照射エリア904内に形成される。
【0060】
配光可変ランプ110の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含みうる。配光可変ランプ110は、パターンPTNに応じた照度分布の形成のために、DMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイスなどのマトリクス型のパターン形成デバイスを含んでもよい。あるいは配光可変ランプ110は、発光素子のアレイ(μ-LEDともいう)であってもよい。
【0061】
配光可変ランプ110による照射エリアは、少なくとも路面900をカバーするように定められる。したがって配光可変ランプ110による照射エリアは、ロービーム102の照射エリアの一部とオーバーラップしてもよい。したがって配光可変ランプ110は、ロービームよりも明るい照度でパターンPTNを照射してもよい。
【0062】
カメラ150は、車両前方を撮像する。ランプ制御部120は、カメラ150が撮影した画像(以下、カメラ画像IMGという)にもとづいて、配光可変ランプ110が路面900に描画すべきパターンPTNを制御してもよい。
【0063】
ハイビーム104は、配光可変ランプ110と同様に、配光可変であってもよい。この場合、ランプ制御部120は、カメラ画像IMGにもとづいて、ハイビーム104の配光を制御してもよい。
【0064】
車両ECU(Electronic Control Unit)201から灯具システム100には、配光可変ランプ110、ロービーム102、ハイビーム104のオン、オフなどの指令が送信される。また配光制御に必要な情報が送信される。
【0065】
また、車両ECU201には、パーキングブレーキセンサ202、アクセルブレーキセンサ204、アクセルセンサ206および車速センサ208が接続される。パーキングブレーキセンサ202は、パーキングブレーキのON/OFFの切り替えを検出する。アクセルブレーキセンサ204は、アクセルブレーキ(例えばフットブレーキ)のON/OFFの切り替えを検出する。アクセルセンサ206は、アクセルペダルに対する操作量を検出する。車速センサ208は、車輪の回転速度を検出することで車速を検出する。角センサは、検出結果を所定の周期でランプ制御部120に送信する。
【0066】
ランプ制御部120はデジタルプロセッサで構成することができ、たとえばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
【0067】
より詳しくは、ランプ制御部120は、配光可変ランプ110を制御し、ビームBMによって路面900にパターンPTNを描画する。たとえば、ランプ制御部120は、自車両が発進することを示すパターンPTN、右左折の方向を示すパターンPTNを描画する。
【0068】
以上が灯具システム100の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0069】
図7は、配光可変ランプ110が路面900に描画するパターンPTNの一例(PTN_A)を示す図である。図7は走行中の1シーンを示しており、路面900に描画されるパターンPTN_Aは、右左折の方向を示すパターンである。パターンPTN_Aは、複数の水玉を含み、複数の水玉が集まってできる形状によって右左折の方向を示す。ランプ制御部120は、方向指示器(ウィンカー)の操作に連動して、パターンPTN_Aを表示すればよい。複数の水玉の描画で右左折の方向を示すことで、歩行者や他車両の運転者の目を引き、右左折の方向を確実に知らせることができる。
【0070】
図8(a)~(d)は、発進通知に関する灯具システム100の動作を時系列で説明する図である。図8(a)では、灯具システム100を搭載する車両906は停車している。図8(b)では、車両906の前方の路面900に、第1パターンPTN_1が描画されている。ランプ制御部120は、第1条件が成立すると、第1パターンPTN_1を描画する。第1条件は、イグニッションスイッチがオン状態になったこと、またはパーキングブレーキの解除、である。第1パターンPTN_1は、この例では、進行方向に延びる矩形状の図形を含む。
【0071】
図8(c)では、車両906の前方の路面900に、第2パターンPTN_2が描画されている。ランプ制御部120は、第2条件が成立すると、路面900に描画するパターンを第1パターンPTN_1から第1パターンPTN_2に変更する。第2条件は、パーキングブレーキの解除、アクセルブレーキの解除、車両の発進(すなわち車速センサ208の検出値が0を超えたこと)、またはアクセルがオン状態になったこと、である。つまり、第2パターンPTN_2は、車両が発進したこと又は発進することを通知するための発進通知パターンである。なお、第1条件がパーキングブレーキの解除の場合、パーキングブレーキの解除は第2条件から除外される。
【0072】
第2パターンPTN_2は、この例では、車幅方向に図形が繰り返し引き伸ばされるアニメーションである。第2パターンPTN_2は、図8(b)の図形が引き伸ばされるアニメーションであってもよい。第2パターンPTN_2は、図形が車両906の幅と同じ幅まで引き伸ばされてもよい。車両906の幅は、車両906の車体の幅であっても、左右のタイヤの所定部位(例えば最外端)間の幅であっても、左右のミラーの所定部位(例えば最外端)間の幅であってもよい。車両906の発進後は、第2パターンPTN_2のアニメーションの速度、図8(c)の例では図形が引き伸ばされる速度を、車両906の速度に応じて変化させてもよい。
【0073】
なお、第2パターンPTN_2は、第1パターンPTN_1と異なるパターンであればよく、アニメーションであることには限定されてない。第2パターンPTN_2が第1パターンPTN_1と異なるとは、それぞれのパターンに含まれる図形の形状、大きさ、色、アニメーションの有無、アニメーション内容、点滅の有無の少なくともいずれかが異なることをいう。
【0074】
図8(d)では、第2パターンPTN_2が消灯している。ランプ制御部120は、第3条件が成立すると、第2パターンPTN_2を消灯する。第3条件は、第2パターンが描画されてから所定の時間が経過したこと、車両が発進してから所定の時間が経過したこと、車速が所定値以上になったこと、である。
【0075】
路面900に描画するパターンが第1パターンPTN_1から第2パターンPTN_2に変更されることで、周囲の歩行者や他の車両の運転者は車両906が発進した又は発進することをいち早く知ることができ、いち早く回避行動をとることができる。また第2パターンPTN_2に先んじて第1パターンPTN_1が描画されるため、発進の可能性を事前に知ることができ、歩行者等はそれを考慮した行動をとることができる。
【0076】
以上、実施の形態2について説明した。続いて実施の形態2に関連する変形例を説明する。
【0077】
(変形例2-1)
図9(a)~(e)は、変形例に係る第2パターンPTN_2を示す図である。第2パターンPTN_2を構成する図形は矩形に限定されない。たとえば、第2パターンPTN_2を構成する図形は、図8(a)に示すように矢印であってもよく、図8(b)に示すように三角形であってもよい。また、第2パターンPTN_2は、複数の図形により構成されてもよい。たとえば、第2パターンPTN_2は、図8(c)に示すように逆V字状の複数の図形を含んでもよく、図8(d)に示すように逆V字状に並んだ複数の水玉の図形を含んでもよい。また、第2パターンPTN_2は、文字を含んでもよい。たとえば、第2パターンPTN_2は、図8(e)に示すように発進する旨を示す文字を含んでもよい。
【0078】
第1パターンPTN_1を構成する図形も矩形には限定されない。第1パターンPTN_1を構成する図形は、第2パターンPTN_2と同様に、矢印や三角形であってもよく、複数の図形を含んでもよく、文字を含んでもよい。
【0079】
(変形例2-2)
灯具システム100が搭載される車両は、自動運転可能な車両であってもよい。第1パターンPTN_1および第2PTN_Bは、自動運転中の場合も、手動運転の場合と同様に描画されればよい。本変形例によれば、実施の形態2と同様の効果を奏することができる。また、自動運転中の車両が周囲を気に掛けていることが歩行者等に伝わり、歩行者等に安心感を与えることができる。
【0080】
(変形例2-3)
実施の形態2では、配光可変ランプ110が、ロービーム102およびハイビーム104に対する付加的な光源であったが、ロービーム102およびハイビーム104の少なくとも一方の機能と、配光可変ランプ110とを統合してもよい。
【0081】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、灯具システムに関する。
【符号の説明】
【0083】
100 灯具システム、 110 配光可変ランプ、 120 ランプ制御部、 130 HUD、 140 HUD制御部、 900 路面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9