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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】EHTのためのP行列
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20241129BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H04B7/0413
H04L27/26 114
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022516017
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019074736
(87)【国際公開番号】W WO2021052562
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-05-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100150670
【弁理士】
【氏名又は名称】小梶 晴美
(74)【代理人】
【識別番号】100199705
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(72)【発明者】
【氏名】ロペス, ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルムソン, レイフ
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519407(JP,A)
【文献】Miguel Lopez (Ericsson),Remarks on P matrices for EHT,IEEE 802.11-19/1555r0 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-1555-00-00be-remarks-on-p-matrices-for-eht.pptx>,2019年09月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04L 27/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている複数のサブキャリアを使用してシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する方法であって、
各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されるシンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列のそれぞれの行の要素で乗算されるように、前記複数のアンテナから前記シンボルを伝送することを含み、前記行はアンテナに関連付けられており、
前記行列は、各アンテナから、1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、別のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択され、前記サブキャリアの1つに関連付けられた前記行列が、前記サブキャリアの他のサブキャリアに関連付けられた前記行列とは異なり、
サブキャリアの第1の部分集合が第1の直交行列に関連付けられており、前記第1の部分集合とは異なるサブキャリアの第2の部分集合が、前記第1の直交行列とは異なる第2の直交行列に関連付けられており、
各サブキャリアに関連付けられた前記行列が、直交基本行列と置換行列との乗算で得られる、
方法。
【請求項2】
サブキャリアごとに、各アンテナから伝送される前記シンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列の列のそれぞれの要素で乗算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
サブキャリアごとに、各アンテナから伝送される前記シンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列の前記列の異なる要素で乗算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている複数のサブキャリアを使用してシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する方法であって、
各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されるシンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列のそれぞれの列の要素で乗算されるように、前記複数のアンテナから前記シンボルを伝送することを含み、前記列はアンテナに関連付けられており、
前記行列は、各アンテナから、1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、別のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択され、前記サブキャリアの1つに関連付けられた前記行列が前記サブキャリアの他のサブキャリアに関連付けられた前記行列とは異なり、
サブキャリアの第1の部分集合が第1の直交行列に関連付けられており、前記第1の部分集合とは異なるサブキャリアの第2の部分集合が、前記第1の直交行列とは異なる第2の直交行列に関連付けられており、
各サブキャリアに関連付けられた前記行列が、直交基本行列と置換行列との乗算で得られる、
方法。
【請求項5】
サブキャリアごとに、各アンテナから伝送される前記シンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列の行のそれぞれの要素で乗算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サブキャリアごとに、前記複数のアンテナから伝送される前記シンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列の前記行の異なるそれぞれの要素で乗算される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
伝送することは、各アンテナから、所定の総伝送電力または最大総伝送電力で前記複数のサブキャリアを使用して前記シンボルを伝送することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のアンテナが少なくとも10個ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記行列が10×10、12×12、14×14、または16×16の行列である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シンボルは、OFDMシンボルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記シンボルは、長期訓練フィールド(LTF)シンボルを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サブキャリアに関連付けられた前記行列のそれぞれの各行および/または各列には、少なくとも1つのゼロ要素がある、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
サブキャリアごとに、そのサブキャリアにおいて少なくとも1つのアンテナから伝送されるシンボルが非ゼロ要素で乗算され、そのサブキャリアにおける少なくとも1つの他のアンテナから伝送されるシンボルがゼロ要素で乗算されるように、前記行列が選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのプロセッサにおいて実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を行わせる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている複数のサブキャリアを使用してシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する装置であって、前記装置がプロセッサおよびメモリを備え、前記メモリには前記プロセッサによって実行可能な命令が入っており、
前記装置が、
各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されるシンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列のそれぞれの行の要素で乗算されるように、前記複数のアンテナから前記シンボルを伝送するように動作可能であり、前記行はアンテナに関連付けられており、
前記行列は、各アンテナから、1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、別のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択され、前記サブキャリアのうちの1つに関連付けられた前記行列が、前記サブキャリアの他のサブキャリアに関連付けられた前記行列とは異なり、
サブキャリアの第1の部分集合が第1の直交行列に関連付けられており、前記第1の部分集合とは異なるサブキャリアの第2の部分集合が、前記第1の直交行列とは異なる第2の直交行列に関連付けられており、
各サブキャリアに関連付けられた前記行列が、直交基本行列と置換行列との乗算で得られる、
装置。
【請求項16】
各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている複数のサブキャリアを使用してシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する装置であって、前記装置がプロセッサおよびメモリを備え、前記メモリには、前記プロセッサによって実行可能な命令が入っており、
前記装置が、
各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されるシンボルが、前記サブキャリアに関連付けられた前記行列のそれぞれの列の要素で乗算されるように、前記複数のアンテナから前記シンボルを伝送するように動作可能であり、前記列はアンテナに関連付けられており、
前記行列は、各アンテナから、1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、別のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択され、前記サブキャリアのうち1つに関連付けられた前記行列が、前記サブキャリアのうちの他のサブキャリアに関連付けられた前記行列とは異なり、
サブキャリアの第1の部分集合が第1の直交行列に関連付けられており、前記第1の部分集合とは異なるサブキャリアの第2の部分集合が、前記第1の直交行列とは異なる第2の直交行列に関連付けられており、
各サブキャリアに関連付けられた前記行列が、直交基本行列と置換行列との乗算で得られる、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例は、例えば、複数のアンテナから複数のサブキャリアからなるようなシンボルを伝送することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度なアンテナシステムは、アップリンク(UL:Uplink)およびダウンリンク(DL:Downlink)の両方向で無線通信システムの性能を大幅に向上させるために使用され得る。例えば、高度なアンテナは、複数の空間ストリーム(時空間ストリームとも呼ばれる)を使用して伝送することなどにより、チャネルの空間領域を使用して、伝送の信頼性および/またはスループットを改善する可能性を提供し得る。
【0003】
例えば、802.11~16規格では、行(および列)が直交ベクトルの集合を規定する、しばしばP行列と呼ばれる、行列の集合を指定しており、複数の時空間ストリーム(例えば、非多入力多出力、MIMO、操作)を利用するときにチャネルとパイロット推定のために直交カバーコードとして採用される。これらのP行列の行または列は、長期訓練フィールド(LTF:Long Training Field)に適用され、伝送時にデータシンボルに埋め込まれたパイロットに適用され得る。
【0004】
802.11システムが多入力多出力(MIMO:Multiple-Input Multiple-Output)モード(例えば、シングルユーザSU-MIMOまたはマルチユーザMU-MIMO)で動作する場合、パケットの物理層プリアンブルに長期訓練フィールド(LTF)の数NLTFが含まれる。NRX受信アンテナを有する受信機は、サブキャリアkに対応する周波数領域チャネル行列Hの推定値
を以下のように生成し得る。
ここで、PはP行列であり、
はk番目のサブキャリアとn番目のLTFシンボルに対応する受信信号ベクトル
を集めた次元NRX×NLTFの行列、LTFはk番目のサブキャリアに対応する周波数領域LTFシンボルである。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送する方法を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられている。この方法は、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの行の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送することを含み、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0006】
本開示の別の態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送する方法を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられている。この方法は、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送することを含み、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0007】
本開示のさらなる態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送するための装置を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられている。この装置は、プロセッサとメモリとを備える。メモリは、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの行の要素によって乗算されるように、装置が複数のアンテナからシンボルを伝送することが使用可能なように、プロセッサによって実行可能な命令を含み、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送するための装置を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられる。この装置は、プロセッサとメモリとを備える。メモリは、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送することが使用可能なように、装置がプロセッサによって実行可能な命令を含み、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0009】
本開示の追加の態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送するための装置を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられる。装置は、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの行の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送するように使用可能であり、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0010】
本開示の別の態様は、複数のサブキャリアを含むマルチキャリアシンボルを複数のアンテナから同時に伝送するための装置を提供する。各サブキャリアは、それぞれの直交行列と関連付けられる。装置は、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送するように使用可能であり、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。
【0011】
本開示の例のより良い理解のために、および例がどのように実施され得るかをより明確に示すために、次に、例としてのみ、以下の図面を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】次数n=10のカンファレンス行列の例を示す。
図2】次数n=14のカンファレンス行列の例を示す。
図3】次数n=2のP行列の例を示す。
図4】次数n=8のP行列の例を示す。
図5a】マルチキャリアシンボルを伝送する方法の例を示すフローチャートである。
図5b】マルチキャリアシンボルを伝送する方法の例を示すフローチャートである。
図6】次数n=16の直交(±1,0)行列の例を示す。
図7】次数n=6のカンファレンス行列の例を示す。
図8】次数n=12の直交(±1,0)行列の例を示す。
図9】置換行列と次数n=16のP行列の例を示す。
図10】置換行列と次数n=12のP行列の例を示す。
図11】置換行列と次数n=10のP行列の例を示す。
図12】次数n=16のアダマール行列による乗算に対応する蝶形図の例を示す。
図13図6に示す行列による乗算に対応する蝶形図の例を示す。
図14】マルチキャリアシンボルを伝送するための装置の例を示す概略図である。
図15】マルチキャリアシンボルを伝送する装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明のために特定の実施形態や例などの具体的な詳細を説明するが、これに限定されるものではない。これらの具体的な詳細とは別に、他の例を採用し得ることが、当業者には理解されよう。例によっては、不要な詳細で説明を曖昧にしないために、周知の方法、ノード、インターフェース、回路、およびデバイスの詳細説明は省略される。当業者は、説明された機能は、ハードウェア回路機構(例えば、特殊な機能を実行するために相互接続されたアナログおよび/または離散論理ゲート、ASIC、PLAなど)を使用して、ならびに/または、1つもしくは複数のデジタルマイクロプロセッサもしくは汎用コンピュータと組み合わせてソフトウェアプログラムおよびデータを使用して、1つまたは複数のノードで実装され得ることを理解するであろう。また、エアインターフェースを用いて通信するノードは、適切な無線通信回路機構を備えている。さらに、適切な場合には、技術は、さらに、プロセッサに本明細書に記載の技術を実行させるであろう適切なコンピュータ命令のセットを含む固体メモリ、磁気ディスク、または光ディスクなどの、任意の形態のコンピュータ可読メモリ内に完全に具現化されると考えることができる。
【0014】
ハードウェア実装は、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)ハードウェア、縮小命令セットプロセッサ、以下に限定されないが、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)を含むハードウェア(例えば、デジタルまたはアナログ)回路機構、ならびに(必要に応じて)そのような機能を実行できる状態機械を含みまたは網羅し得る。
【0015】
この開示の例は、ある種の直交行列を利用したものである。以下、いくつかの関連する規定と性質について説明する。(±1)行列は、成分が値{-1,+1}に制限される行列である。同様に、(±1,0)行列は、そのすべての成分が集合{-1,+1,0}に含まれる。n×n次の正方行列Mは、M・M=αIの場合、直交行列である。ここで、上付き文字(.)はエルミート行列転置、Iはn×n次の恒等行列、αは正の定数であることを表す。Mが次数nを有すると言うこともできる。Mがn次の直交(±1)行列である場合、nは1、2または4で割り切れる偶数(すなわちn=1、2、4、8、12、16、...)であることが知られている。その結果、次数10と14の直交(±1)行列は存在しないことになる。次数nのいわゆるカンファレンス行列またはC行列は、対角線上に0を持ち、その他の要素がすべて±1である直交(±1,0)行列である。カンファレンス行列は次数10と14について存在することが知られており、次数nの直交(±1,0)行列は、n個より少ない0を持つことはあり得ないことが示されることができる。
【0016】
(±1,0)行列の直交性は、以下の演算により保存されることが確認することができる。
演算1:行または列の否定。
演算2:任意の2つの行または任意の2つの列の並べ替え(すなわち、スワッピング)。
【0017】
IEEE802.11規格の拡張機能として、超高速スループット(EHT:Extremely High Throughput)が提案されている。特に、EHTは、16時空間ストリームまでのサポートを提供し得る。したがって、9≦n≦16の次数のP行列に興味が持たれている。
【0018】
また、EHTは、チャネル帯域幅を320MHzに拡大し、マルチリンクオペレーションすることも提案している。マルチリンクでは、いくつかのチャネルを使用した合計のアグリゲートされた帯域幅が1GHzを超える可能性がある。サブキャリアの間隔が78.125kHzなので、約12800個のチャネル行列を推定する必要があり、各チャネル行列の推定には2つの行列の乗算が必要なので、チャネルの推定のために受信機で約12800*16=204800個のP行列-ベクトル乗算が必要になる可能性があることを意味する。MU-MIMOの場合、802.11ac/axの受信機は、ストリーム間干渉をキャンセルするために、伝送されたすべての空間ストリームのチャネルを推定することがしばしばある。つまり、NRX個の受信アンテナを持つ受信機では、完全なP行列と受信サンプルのベクトルの乗算をNRX回行う必要がある。言い換えれば、受信アンテナの少ない局でも、多くのP行列-ベクトル乗算を行う必要があり得る。
【0019】
新しいP行列を設計する簡単な方法は、DFT行列を使用することである。しかし、IEEE802.11は、従来、+1と-1のみからなるP行列を好んできたが、これは、送信機と受信機の両方で計算の複雑さおよび/またはメモリ使用量を減らし、加算だけで済むので効率的なハードウェア実装を可能にするためである。例えば、3つまたは7つの時空間ストリームに対して、802.11規格は、それぞれ3×4と7×8の次元のP行列を利用するが、これは実際には一定のオーバーヘッドが導入されるものの、次数4と8の(±1)P行列のサブ行列である。実際、より小さな3×3および7×7のDFT行列が適していたが、(±1)P行列ではない。
【0020】
そのため、低複雑性の送信機および/または受信機の実装をサポートする9≦n≦16の次元のP行列が求められている。従来、IEEE802.11は、偶数次のP行列のみを標準化しており、したがって、本開示の特定の例は、n=10、12、14、16の場合に関するものである。奇数次のP行列は、偶数次のP行列から1つまたは複数の行を削除することによって生成することができる。n=10、14の場合、直交(±1)行列を求めることは不可能であるが、直交(±1,0)行列を求めることは可能である。n=12、16の場合、直交(±1)行列を求めることが可能であるが、代わりに(±1,0)行列を使用することが望ましくあり得、なぜなら、ゼロによる乗算を行う必要がないため、受信機での複雑さが大幅に軽減される可能性があるからである。
【0021】
P行列に直交(±1,0)行列を採用した場合の問題点は、P行列の(m,k)成分に0があると、k番目のLTFに対応する期間にm番目の送信機チェーンがミュートされることになるので、最大出力可能電力に対して総伝送電力が減少することである。
【0022】
本開示の実施例は、P行列として直交(±1,0)行列の使用を提案し、P行列におけるゼロ(0)の存在に関連する送信機電力の減少を回避する方法を提供する。一般に、本開示の例は、異なるサブキャリアに対して異なるP行列を適用することを提案する。P行列は、例によっては、2つの基準に基づいて選択され得る。
1)すべての送信機チェーンおよびすべてのLTFに対して、前記送信機チェーンおよび前記LTFで示される列および行に、非ゼロの成分を持つ関連P行列を持つ、少なくとも1つのサブキャリアが存在する。
2)様々なP行列は、すべて、互いに、および/または、基本P行列に関連し得る。例えば、ベクトルと任意のP行列との乗算の結果は、ベクトルに基本P行列を乗算し、その後、無視できる複雑さを有する演算を適用することによって計算することができる。
【0023】
第1の基準により、LTFの伝送時に送信機チェーンが何もミュートにされなくすることを確実にすることができる。信号を正しくスケーリングすることにより、すべてのTXチェーンで最大出力電力が使用され得る。第2の基準により、1つより多いP行列による乗算を実施する回路機構もソフトウェアも備えなくても済むことを確実にすることができる。
【0024】
したがって、本開示の例では、IEEE802.11に9~16時空間ストリームに対応するのを可能にさせる直交カバーコードを提案する。提案する直交カバーコードの例は、受信機における効果的なチャネル推定アルゴリズムの実施に対応する(±1,0)行列に関して規定される。高速アダマール変換や高速フーリエ変換などの他の効果的なアルゴリズムに比べて、好ましい計算上の複雑さを示す例を与える。
【0025】
本開示の例では、(±1,0)行列をP行列として活かすことを提案する。次数n=10、n=14の直交(±1)行列をP行列として活かすことが望ましい場合があるが、そのような行列は存在しない。代替案として、例えばカンファレンス行列など、直交(±1,0)行列をP行列として採用することを挙げることができる。
【0026】
図1は、次数n=10のカンファレンス行列100の例を示す。図2は、次数n=14のカンファレンス行列200の例を示す。以下、これらの行列をそれぞれP10、P14と呼ぶ。図1および図2では、マイナス符号(-)は、値-1を表す一方、プラス符号(+)は、値+1を表す。他の例では、マイナス符号がどのような負の値でも表し、プラス符号がどのような正の値でも表すことがあり、ならびに/またはマイナス符号およびプラス符号がどのような複素数値(大きさ1の複素数値を含む)も表すことがある。行列におけるゼロ(0)は、値ゼロを表す。
【0027】
また、次数n=12、n=16の(±1)行列が存在し、高速行列乗算アルゴリズムが使用可能であることが知られているが、送信機および/または受信機における費用、シリコン面積、消費電力、および/または計算時間の低減に対応するために、行列乗算複雑さがより一層低いP行列を考案することが望ましい場合がある。これを達成する1つのやり方は、次数n=12、n=16に対してP行列として(±1,0)行列を採用することである。
【0028】
IEEE802.11~16規格では、より高次のP行列を引き出すのに使用され得る次数2のP行列Pと次数8のP行列Pとを規定する。行列300を図3に示し、行列400を図4に示す。
【0029】
図5aは、マルチキャリアシンボルを伝送する方法500の例のフローチャートである。マルチキャリアシンボルは、複数のサブキャリアで構成され、このシンボルは、同時に複数のアンテナから伝送される。各サブキャリアは、それぞれの直交行列に関連付けられる。例えば、少なくとも2つの異なる直交行列がある。
【0030】
方法500は、ステップ502において、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送することを含み、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。したがって、例えば、同時に複数のアンテナから伝送されたシンボルでは、各アンテナからの少なくとも1つのサブキャリアにゼロ要素を乗算することによって、送信機および/または受信機における複雑さを緩和する一方、各アンテナからの少なくとも1つのサブキャリアに非ゼロ要素を乗算し、全積が各アンテナから伝送されるのを可能にする(例えば、非ゼロサブキャリアに電力を増やし、いくつかのサブキャリアにゼロを乗算する)。
【0031】
方法500の例によっては、サブキャリアごとに、各アンテナから伝送されたシンボルにそのサブキャリアに関連付けられた行列の列のそれぞれの要素を乗算する。例によっては、サブキャリアごとに、各アンテナから伝送されたシンボルにそのサブキャリアに関連付けられた行列の列の異なる要素を乗算する。
【0032】
図5bは、マルチキャリアシンボルを伝送する方法510の例のフローチャートである。マルチキャリアシンボルは、複数のサブキャリアで構成され、このシンボルは、同時に複数のアンテナから伝送される。各サブキャリアは、それぞれの直交行列に関連付けられる。例えば、少なくとも2つの異なる直交行列がある。
【0033】
方法510は、ステップ512において、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送することを含み、列はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送されるシンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。したがって、例えば、同時に複数のアンテナから伝送されたシンボルでは、各アンテナからの少なくとも1つのサブキャリアにゼロ要素を乗算することによって、送信機および/または受信機における複雑さを緩和する一方、各アンテナからの少なくとも1つのサブキャリアに非ゼロ要素を乗算し、全パワーが各アンテナから伝送されるのを可能にする(例えば、非ゼロサブキャリアに電力を増やし、いくつかのサブキャリアにゼロを乗算する)。
【0034】
方法510の例によっては、サブキャリアごとに、各アンテナから伝送されたシンボルにそのサブキャリアに関連付けられた行列の行のそれぞれの要素を乗算する。例によっては、サブキャリアごとに、各アンテナから伝送されたシンボルにそのサブキャリアに関連付けられた行列の行の異なる要素を乗算する。
【0035】
本明細書に開示の例および特徴は、適宜、方法500にも方法510にも当てはめることができる。
【0036】
例によっては、各サブキャリアに関連付けられた行列は、直交基本行列、または少なくとも1つの他のサブキャリアに関連付けられた行列を、置換行列に掛ける乗算によって得られ得る。このように行列が得られる例があるが、他の例では、これは、単に行列間の関係に過ぎず、行列は、例えば、以下に述べるように、巡回シフトまたは並べ替えなど、適切などのようなやり方でも得られ得る。
【0037】
一例において、次数16の高度構造化直交(±1,0)行列P16が式
に従って起こされ得、ここで、
は、クロネッカー行列積を示す。図6にこの行列600を示す。次数12の構造化直交(±1,0)行列P12は、図3に示す行列P300および式
により図7に示すカンファレンス行列700Uから起こされ得る。図8にこの行列P12800を示す。
【0038】
本開示の例によっては、直交(±1,0)行列は、P行列として採用される。P行列として直交(±1,0)行列を採用した場合の問題点は、P行列の(m,k)成分に0があると、k番目のLTFに対応する期間にm番目の送信機チェーンがミュートされることになるので、最大出力可能電力に対して総伝送電力が減少することである。この問題を解消するために、サブキャリア特有P行列を適用することを提案する。すなわち、P行列ごとに異なるサブキャリアが適用され得る。特定の例において、どのような送信機チェーンm、どのようなLTFシンボルkでも、mとkとに対応するその成分(例えば、行列における特定の要素配置例では、第m行、第k列にある成分)が非ゼロである、P行列が少なくとも1つある。これにより、LTFの伝送時に送信機チェーンが何にもミュートにされなくすることを確実にする。また、例によっては、どのようなP行列にもよる行列乗算も、例えば、基本行列による行列乗算の計算から計算され得るように、すべてのP行列を基本P行列(例によっては、サブキャリアのうちの1つに関連付けられたP行列であってもよい)から引き出すことを提案する。これによって、例えば、基本行列にベクトルを乗算する積をコンピュータで計算するのに採用されたソフトウェアユニットおよび/または回路機構が再使用され得ることを確実にするができる。
【0039】
基本P行列から新しいP行列を起こす1つのやり方は、基本P行列に置換行列を乗算することである。置換は、単に、行列の行および/または列の並べ替えである。一例では、次数nの置換行列Gは、各列および各行に値が1である要素が1つしかない一方、その他の成分がゼロであるという性質を備える(1,0)行列である。置換行列の第1の例は、反対角線に沿って1の値の要素があり、他のどこにでも0の値の要素(すなわち、複数のゼロ)がある時間反転行列である。置換行列の第2の例は、巡回シフト行列である。巡回シフトが線形演算であり、それにより行列に関して記述され得る、ということに留意する。1段による巡回シフトは、下位対角線にあるもの、第1の行の最後の要素におけるものを除いて、ゼロ|全要素を有するnの次数の行列Cで記述され得、それは1である(すなわち、C(i+1,i)=1、C(1,n)=1を除き、Cの成分のすべてがゼロである)。この注記では、k段による巡回シフト
は、以下によって与えられる。
【0040】
周期性:
がある、ということにも留意する。言い換えれば、長さnのベクトルにn回の立て続けの1段巡回シフトを適用すると、元のベクトルをもたらす。どのような置換行列GにもG・G=Iの性質がある。そのため、Pが次数nの直交行列であり、Gが同じ次数の置換行列であるとすると、積G・Pも直交行列
になる。行列G・Pと受信サンプルのベクトル
との積が
となる、ということにも留意する。それ故、例によっては、ベクトルに基本行列
を乗算した積をコンピュータで計算し、その結果を並べ替えると、ベクトルに特定の行列を乗算した積と同じ結果になる可能性がある(特定の行列は、基本行列と置換行列との積である)。
【0041】
例によっては、行列のすべてが異なるが、他の例では、サブキャリア数よりわずかに少ない異なる行列、例えば、少なくとも2つの異なる行列がある可能性がある。例えば、第1のサブキャリア集合が、第1の行列に関連付けられ、第2のサブキャリア部分集合が第1の部分集合とは異なる第2の行列に関連付けられる。他の例では、それぞれが別の異なる行列に関連付けられるサブキャリア部分集合がさらにあってもよい。
【0042】
特定の例では、次数n=16(例えば、アンテナが16個ある)の場合を考えてみる。図9に示す行列P16600は、基本行列として選択されてもよく、置換行列Gが時間反転行列であってもよい。どのような整数kに対してもP行列P(k)は、以下のように規定され得る。
【0043】
また、P行列P(k)がサブキャリア数kに関連付けられてもよい(例えば、周波数が(kΔf+F)であるサブキャリア、この場合、Δfはサブキャリア間隔であり、Fは中心周波数である)。図9には、置換行列900と2つのP行列902(kが偶数の場合)、904(kが奇数の場合)を示す。例によっては、各送信機からのLTFの伝送時のいつでもサブキャリアの半分がミュートにされるので、LTFシンボルをすべての送信機チェーンでブーストする(例えば、3dB)ことが可能である。例えば、ベクトルにkが偶数であるP(k)を乗算すると、ベクトルにkが奇数であるP(k)を乗算するのに等しくなり、反対の順番の結果(最後の成分が最初に、最初の成分が最後に)の読み取りとなる。反対の順番の読み取りは、例によっては、複雑さを何ら増すことなく実施され得る(例えば、ポインタ算術演算を使用し、データが正しい順番に縦走するように、ポインタを設定する)。
【0044】
別の例において、次数n=12(例えば、送信アンテナが12個ある)の場合を考えてみる。図8に示す行列P12800は、基本行列として選択され、時間反転行列が置換行列として選択され、どのような整数kに対してもP行列P(k)は、以下のように規定される。
【0045】
また、P行列P(k)がサブキャリア数kに関連付けられる。図10は、置換行列1000と2つのP行列1002(kが偶数の場合)、1004(kが奇数の場合)を示す。前の例とは違って、サブキャリアが何もミュートにされないLTFおよび送信機チェーンがある。例えば、P(k)(2、1)=すべてのkに対して1。これは、第2の送信機チェーンが、第1のLTFの伝送時にどのようなサブキャリアに対しても決してミュートにされないことを意味する。それ故、例えば、このようなLTFに対応する信号を電力ブーストし、これらの送信機チェーンを通して伝送する必要はない。その一方、サブキャリアの一部が、P行列の0成分に対応するLTFおよび送信機チェーンにおいてミュートにされる。例えば、P(1)(3,4)=0、ここで、P(2)(3,4)=-1。これは、第3の送信機チェーンが、第4のLTFの伝送時にサブキャリアの半分をミュートにすることを意味する。したがって、例えば、このLTFを3dBブーストすることが可能である。同様に、例えば、特定のサブキャリアで、P行列がゼロの場合に対応する成分に起因して、特定の送信機チェーンでLTFがミュートにされる場合、この送信機チェーンでは、LTFが3dBブーストされ得る。
【0046】
別の例において、次数n=10の場合を考えてみる。図1に示す行列P10100は、基本行列として選択され、巡回シフト行列
が置換行列として選択される。P行列P(k)は、どのような整数kに対しても以下のように規定される。
【0047】
どのようなkに対しても、異なるP行列が10個しかないように、P(k)=P(k+10)である、ということに留意する。図11は、置換行列1100と、0~9のkの値にそれぞれ対応するP行列1102~1120を示す。
【0048】
また、P行列P(k)がサブキャリアkに関連付けられてもよい。どのような行r、どのような列cでも、P(k)(c,r)=0であるようなkが1つしかないことから、各送信機チェーンにおいて、各LTFにあるサブキャリアの1/10がミュートにされる、ということに留意する。したがって、例によっては、10*log10(10/9)=0.46dBの電力ブーストがすべてのLTFで各送信機チェーンに印加され得る。さらに、どのようなP行列による乗算も基本行列による乗算に等しくなり、この結果の巡回シフトが続く。それ故、この結果が巡回ポインタ算術演算を使用して読み取られ得ることから、例によっては、ベクトルへの巡回シフトの適用は、例えば複雑さをほとんど増すことなく、非常に効率良く実施され得る(例えば、サブキャリアがそれぞれの行列に関連付けられていない場合に比べて)。
【0049】
別の例において、次数n=14の場合を考えてみる。図2に示す行列P14200は、基本行列として選択され、巡回シフト行列が置換行列として選択される。P行列P(k)は、どのような整数kに対しても以下のように規定される。
【0050】
どのようなkに対しても、異なる行列が14個しかないように、P(k)=P(k+14)である、ということに留意する。各送信機チェーンでは(すなわち、各アンテナからの)、各LTFにあるサブキャリアの1/14がミュートされる(すなわち、対応するP行列の対応する要素がゼロである)。したがって、例によっては、10*log10(14/13)=0.32dBの電力ブーストが、すべての送信機チェーンに印加され得る。さらに、どのようなP行列による乗算も基本行列による乗算に等しくなり、この結果の巡回シフトが続く。それ故、例によっては、ベクトルへの巡回シフトの適用は、しばしば複雑さをほとんど増すことなく、非常に効率良く実施され得る。
【0051】
例によっては、伝送することは、各アンテナから、所定の総伝送電力または最大総伝送電力で複数のサブキャリアからシンボルを伝送することを含む。これは、例えば、関連付けられた行列における相応の位置にあるゼロ要素に起因してミュートにされるどのようなサブキャリアも考慮に入れることができる。
【0052】
方法500および方法510に戻って見てみると、複数のアンテナは、少なくとも10個ある。それにより、行列の次数は、少なくとも10とすることができる。例によっては、各アンテナに関連付けられる行列は、10×10、12×12、14×14、または16×16の行列であるが、代わりに奇数次数、例えば、9×9、11×11、13×13、または15×15の行列が使用されてもよい。
【0053】
例によっては、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの各行および/または各列には、ゼロ要素が少なくとも1つある。これは、ハードウェアの縮小ならびに/または送信機および/もしくは受信機における計算上の複雑さの緩和に寄与し得る。例によっては、サブキャリアごとに、少なくとも1つのアンテナからそのサブキャリアにおいて伝送されたシンボルに非ゼロ要素が乗算され、そのサブキャリアにおける少なくとも1つの他のアンテナから伝送されたシンボルにゼロ要素が乗算されるように、行列が選択される。例によっては、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの各行および/または各列には、複素非ゼロ要素が少なくとも1つある。
【0054】
次に、P行列による乗算の計算上の複雑さを考えてみる。この複雑さを比較する1つのやり方は、行列による乗算に対応する蝶形図を描き、性能指数として総辺数を使用することである。低性能指数は、より低い計算上の複雑さを示すので、高低能指数よりも良い。基準点として、
で規定される次数16のよく知られたアダマール行列を考えてみるが、この行列は、極めて効率の良い実施に対応し、アダマール変換では乗算が何もなくても済むことから、同じ次数の高速フーリエ変換よりも一層効率的であることが知られている。図12には、H16による乗算を表す蝶形図1200を示す。この蝶形図には、128個の辺がある。図13には、行列P16600(図6に示す)による乗算を表す蝶形図1300を示す。この蝶形図には、96個の辺がある。したがって、行列P16の性能指数は、アダマール行列の性能指数よりもかなり良い。P16と同じ性能指数である別の基本行列は、
であり、これは、クロネッカー積構成を継承したH16と同じ対称性があるが、H16よりもゼロが多く、それにより、P16と同じく、高速アダマール変換よりもかなり素早い乗算アルゴリズムに対応している。同様に、同じ次数のFFTよりも良い性能指数である、次数が異なる他の行列も示すことができる。
【0055】
図14は、各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている、複数のサブキャリアで構成されているマルチキャリアシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する装置1400の例の概略図である。装置1400は、処理回路1402(例えば、1つまたは複数のプロセッサ)と、処理回路1402と通信しているメモリ1404とで構成されている。メモリ1404には、処理回路1402によって実行可能である命令が入っている。装置1400は、処理回路1402と通信しているインターフェース1406も備える。インターフェース1406、処理回路1402、およびメモリ1404を直列につながって示しているが、これらは、代替として、他のどのようにも、例えばバスを介して相互接続されていてもよい。
【0056】
ある実施形態において、メモリ1404には命令が入っており、この命令は、装置1400が、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの行の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送するように使用可能であるように、処理回路1402によって実行可能であり、行はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送される前記シンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。例によっては、装置1400は、図5aを参照しながら上で述べた方法500を行うのに使用することができる。
【0057】
図15は、各サブキャリアがそれぞれの直交行列に関連付けられている、複数のサブキャリアで構成されているマルチキャリアシンボルを同時に複数のアンテナから伝送する装置1500の例の概略図である。装置1500は、処理回路1502(例えば、1つまたは複数のプロセッサ)と、処理回路1502と通信しているメモリ1504とで構成されている。メモリ1504には、処理回路1502によって実行可能である命令が入っている。装置1500は、処理回路1402と通信しているインターフェース1506も備える。インターフェース1506、処理回路1502、およびメモリ1504は、直列につながって示しているが、これらは、代替として、他のどのようにも、例えばバスを介して相互接続されていてもよい。
【0058】
ある実施形態において、この命令は、複数のアンテナからシンボルを伝送するのに装置1500が使用することができ、この命令は、装置1500が、各アンテナについて、各サブキャリアから伝送されたシンボルが、サブキャリアに関連付けられた行列のそれぞれの列の要素によって乗算されるように、複数のアンテナからシンボルを伝送するように使用可能であるように、処理回路1502によって実行可能であり、列はアンテナに関連付けられる。行列は、各アンテナから、少なくとも1つのサブキャリアから伝送されるシンボルに非ゼロ要素が乗算され、少なくとも1つの他のサブキャリアから伝送される前記シンボルにゼロ要素が乗算されるように選択される。例によっては、装置1500は、図5bを参照しながら上で述べた方法510を行うのに使用することができる。
【0059】
これまで述べた例が本発明を限定するものではなく説明するものであり、当業者であれば、添付の特許請求の範囲を外れない限り、多くの代替例を考案することができる、ということに留意すべきである。「comprising(備える)」という語は、請求項に挙げたもの以外の要素やステップの存在を排除するものではなく、「a」または「an」が複数を排除するものではなく、1つのプロセッサや他のユニットが以下の特許請求の範囲に挙げたいくつかのユニットの機能を果たすことができる。「first(第1の)」、「second(第2の)」などの用語が使用されている場合、特定の特徴の都合の良い同定の単にラベルとして理解すべきである。具体的には、明らかにそうではないと述べていない限り、これらの用語は、複数のこのような特徴のうちの第1の特徴または第2の特徴を描写するものとして解釈されるべきではない(すなわち、このような特徴のうちの第1の特徴または第2の特徴が、時間内にまたは間隔を空けて起こる)。本明細書に開示の方法におけるステップは、明らかにそうではないと述べていない限り、どのような順番でも行われてよい。本明細書におけるどのような参照符号も、それらの範囲を限定すると解釈されないものとする。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15