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特許7595657人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20241129BHJP
   A47C 31/12 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
A61B5/107 300
A47C31/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022522638
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 AT2020060343
(87)【国際公開番号】W WO2021072461
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】A50895/2019
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】522149315
【氏名又は名称】サンラス ホールディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼンズメイヤー、コーネリア
【審査官】阿部 知
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-005761(JP,A)
【文献】特開平04-170685(JP,A)
【文献】特開2009-165588(JP,A)
【文献】Paul van Geffen, et al,Decoupled pelvis rotation in sitting: A passive motion technique that regulates buttock load associated with pressure ulcer development ,Journal of Biomechanics,2009年06月19日,vol. 42, no. 9,1288-1294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A47C 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席(10)に座っている又はラウンジャー若しくは支持体に座っている若しくは横たわっている人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定する方法(100)であって、
a)前記座席(10)、前記ラウンジャー、又は、前記支持体に配置された表面センサ(11)を用いて、本質的に直立して座っている人の坐骨結節及び尾骨によって又はうつ伏せに横たわっている人の腸骨稜及び恥骨によって前記座席(10)、前記ラウンジャー、又は、前記支持体に及ぼされる座圧/接触圧を検出するステップと、
b)コンピュータユニット(20)により、人の第1の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第1のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する前記表面センサ(11)上の第1の位置(P)を決定するステップと、
c)前記コンピュータユニット(20)により、人の第2の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第2のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する前記表面センサ(11)上の第2の位置(P)を決定するステップであって、前記第2の位置(P)が前記第1の位置(P)から所定の距離範囲A内にある、ステップと、
d)前記コンピュータユニット(20)により、前記第1の位置(P)と前記第2の位置(P)との間の距離Bを決定するステップと、
e)前記コンピュータユニット(20)により、人の尾骨/恥骨によって及ぼされる第3のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する前記表面センサ(11)上の第3の位置(P)を決定するステップであって、前記第3の位置(P)が前記第1の位置(P)と前記第2の位置(P)との間にあり、前記第3の位置(P)が、実質的にそれらの共通の接続線(C)上にある又は前記接続線(C)に対して略垂直に延びる線(D)上の所定の距離範囲内にある、ステップと、
f)前記コンピュータユニット(20)により、座圧及び接触圧を検出する前記表面センサ(11)の領域(E)を制限するステップと、
g)前記コンピュータユニット(20)により、座圧及び接触圧を検出する前記制限領域(E)における人の骨盤の座圧及び接触圧を評価するステップと、
を含み、
座圧及び接触圧を検出する前記領域(E)を絞り込むために、前記コンピュータユニット(20)は、マンデルブロ集合(30)を描く反復アルゴリズムを実行することを特徴とする方法(100)。
【請求項2】
所定の数に達したときに前記反復が中断されることを特徴とする、請求項に記載の方法(100)。
【請求項3】
座圧及び接触圧を検出する前記表面センサ(11)の前記制限領域(E)の形状及び大きさが反復回数に依存することを特徴とする、請求項に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記コンピュータユニット(20)がプログラムを実行するときに請求項1に記載の方法(100)のステップを実行するように前記コンピュータユニット(20)に促すコマンドを含む、コンピュータプログラムプロダクト。
【請求項5】
請求項に記載のコンピュータプログラムプロダクトが記憶されるコンピュータ可読データキャリア。
【請求項6】
コンピュータユニット(20)と表面センサ(11)とを備える、座席(10)に座っている又はラウンジャー若しくは支持体に座っている若しくは横たわっている人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定するための装置(200)であって、前記表面センサ(11)は、前記コンピュータユニット(20)に接続されて、前記座席(10)、前記ラウンジャー、又は、前記支持体に配置されるとともに、人の骨盤によって前記表面センサ(11)に及ぼされる座圧及び接触圧を検出するように設計され、前記コンピュータユニット(20)は、請求項1に記載の方法(100)のステップを実行するように設計される、装置(200)。
【請求項7】
前記表面センサ(11)は、機械的、電気的、空気圧的、又は、液圧的なセンサから成るグループから選択されるセンサ(15)のアレイであることを特徴とする、請求項に記載の装置(200)。
【請求項8】
前記表面センサ(11)は、人の骨盤に少なくとも部分的に適合されるように成形されることを特徴とする、請求項又はに記載の装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に座る又はラウンジャー若しくは支持体に座る若しくは横たわる人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の骨盤は、機能的な脊椎と下肢の中立方向の位置コントローラであると見なされる。骨盤は、長さと角度の比率に関して年齢及び性別に固有の違いを示すが、その姿勢位置に関連する応力については、普遍的に有効で均一な説明を与えることができる。座席システムでは、人の骨盤は、一般に、座席システムの着座面及び背もたれによって支えられる。それによって、坐骨結節は、上半身と下肢の一部の重量を吸収するのに役立ち、人が人間工学的に正しい、本質的に直立した座位にあるときに高い座圧を吸収することができるが、尾骨及び仙骨は、この直立した座位では、本質的に応力を受けないままである。人間工学的に正しい人の水平背臥位にあるリクライニングシステムでは、脊椎と仙骨が上半身の重量を支え、それによって、骨盤領域において人の重量により及ぼされる接触圧が仙骨で実質的に最大になり、尾骨は本質的に応力がないままである。人間工学的に正しい腹臥位では、人の恥骨は骨盤領域でその体の部分の重量の最大部分を占める。
【0003】
しかしながら、人々は、立ったり、座ったり、横臥したりするときに自分自身の個々の姿勢に気づかず、片側の痛みを伴う筋肉収縮を引き起こす可能性があるとともに、長期的には椎間板ヘルニアを含む摩耗プロセスにつながる、又は、少なくとも、脊椎と骨盤の構造の、特にその移行領域、仙腸関節で誤った負荷がかかった場合には、特に脊椎の圧迫と捻挫につながる可能性がある姿勢をとることがよくある。特に長時間座っていると、多くの場合、誤った姿勢で十分な代償運動を伴わなければ、筋肉からの恒久的な静的作業が必要になり、それにより、筋肉の不均衡が生じ、四肢でも広範な身体的愁訴が促進される。
【0004】
人間工学的に正しい姿勢を作り出して継続的に維持しようと努める多くの手段及び方法が従来技術から知られている。例えば、ドイツ特許出願公開第10 2012 017 681(A1)号、米国特許出願公開第2002/0193707(A1)号、及び、欧州特許出願第1 093 755(A1)号は、座っているとき又は横になっているときのそれぞれにおいて人の接触圧を測定するための方法及び装置を示す。しかしながら、そのような方法及びそれぞれの装置では、人の骨盤の姿勢位置及び場所の決定を実行することができない。
【0005】
例えば、本特許出願の時点で未だ公開されていなかった特許出願第A 50386/2019号は、座席要素及び背面要素に配置される制御要素及びセンサを伴う人の体を位置決めするための装置を開示する。この特許出願では、直立から水平リクライニング位置への人の移動中の人の転がりプロセスが言及されており、この場合、人の骨盤は、矢状軸、水平軸、及び、長手方向軸の周りでの回転を介した線形調整運動によって位置決めされる。
【0006】
特許出願第A 50386/2019号では、骨盤の姿勢位置は、間接的にのみ且つ不十分な精度で決定される。これは、所定の座圧差及び/又は接触圧差に達すると直ぐに人の骨盤が既に位置決めされるからである。更に、この装置は、混合移動、つまり、人の少なくとも2つの体軸の周りで同時に発生する運動を検出できず、矢状軸、水平軸、又は、長手方向軸の周りでの運動のみを検出する。しかしながら、座席又はリクライニングシステム上の人の人間工学的な位置付けを達成するためには、座席又はリクライニングシステム上の人の全ての位置で骨盤の姿勢位置を正確に決定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ特許出願公開第10 2012 017 681(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2002/0193707(A1)号
【文献】欧州特許出願第1 093 755(A1)号
【文献】特許出願第A 50386/2019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、人の骨盤の姿勢位置及び場所を決定するための方法及び装置を提供することであり、該方法及び装置は、既存の座席システム又はリクライニングシステム又は支持体に組み込むことができ、先行技術の不都合を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1に係る人の骨盤の姿勢位置及び場所を決定する方法と、請求項8の特徴を有する人の骨盤の姿勢位置及び場所を決定するための装置とを提供することによって提示された目的を達成する。
【0010】
更なる態様において、本発明は、請求項6に係るコンピュータプログラムプロダクト及び該コンピュータプログラムプロダクトが記憶されるコンピュータ可読データキャリアを提供する。
【0011】
本発明に係る方法は、以下のステップ、すなわち、座席、ラウンジャー、又は、支持体に配置された表面センサを用いて、本質的に直立して座っている人の坐骨結節及び尾骨によって又はうつ伏せに横たわっている人の腸骨稜及び恥骨によって座席、ラウンジャー、又は、支持体に及ぼされる座圧/接触圧を検出するステップと、コンピュータユニットにより、人の第1の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第1のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する表面センサ上の第1の位置を決定するステップと、コンピュータユニットにより、人の第2の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第2のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する表面センサ上の第2の位置を決定するステップであって、第2の位置が第1の位置から所定の距離範囲内にある、ステップと、コンピュータユニットにより、第1の位置と第2の位置との間の距離を決定するステップと、コンピュータユニットにより、人の尾骨/恥骨によって及ぼされる第3のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する表面センサ上の第3の位置を決定するステップであって、第3の位置が第1の位置と第2の位置との間にあり、第3の位置が、実質的にそれらの共通の接続線上にある又は接続線に対して略垂直に延びる線上の所定の距離範囲内にある、ステップと、コンピュータユニットにより、座圧及び接触圧を検出する表面センサの領域を制限するステップと、コンピュータユニットにより、座圧及び接触圧を検出する制限領域における人の骨盤の座圧及び接触圧を評価するステップとを含む。
【0012】
本発明に係る方法に起因して、座席又はラウンジャー上の人の骨盤の場所及び姿勢位置をいつでも決定することが可能であり、それにより、人の体軸のうちの1つの周りでの人の個々の動きを検出できるだけでなく、特に最初に述べた種類の混合移動も検出できる。この目的のため、前述の3つの位置と、表面センサに対して人の骨盤により及ぼされる座圧及び接触圧の大きさとが決定される。これは、好ましくは、座圧及び接触圧の最大値のパターン認識によってコンピュータユニットにより実行される。更に、座圧及び接触圧の最大値により、上半身の重量力について、及び、アームレストを伴う又は伴わない座席の設計に応じて、人の上肢の重量力を含めて/除いて、結論を導き出すことができる。これは、本質的に直立した座位では、坐骨結節が上半身の重さの大部分を表面センサに伝達するからである。この座位では、人の下肢から表面センサに伝達されるとともに座圧及び接触圧のオフセットの形で目立つより小さな重量力の比率は、制限された検出領域に起因してコンピュータユニットによって補償され得る。表面センサが特に背面要素の後方傾斜位置に関して座席の背面要素に配置される場合、人の呼吸によって引き起こされる圧力変動を表面センサによって動的に検出することができる。このようにして、呼吸の変化、例えば、頻呼吸を検出することができる。
【0013】
骨盤、尾骨、仙骨の座圧及び接触圧は、座圧及び接触圧を検出する領域でのみ検出されるため、表面センサの他の領域に及ぼされる圧力が表面センサに対して人の骨盤により及ぼされる座圧及び接触圧に影響を与えないという利点がある。装置が例えば病院のベッドで使用される場合、病院のベッドにある物体、例えば訪問者からのバッグ、看護師又は医師からの機器は、病院のベッドに位置される患者の骨盤の座圧及び接触圧の評価とは関係がない。これは、装置が、本質的に骨盤の形状を考慮に入れており、背もたれで支持を必要とする脊椎の部分的に固定された位置異常の影響を受けないままだからである。したがって、骨盤の場所及び姿勢位置は、表面センサ上の人の全ての位置に関して正確に決定することができる。
【0014】
本発明に係る方法によって、姿勢位置に関連する重量力の影響とは無関係に、また、背面要素の人の上半身の重量の支持とは無関係に、座席要素、特にその座席表面と背面要素との間の相対角度を決定できることは、更なる利点である。これは、座圧及び接触圧を検出する表面センサの領域で発生する各座圧及び接触圧に対してコンピュータユニットによって位置を割り当てることができるため、座圧及び接触圧の全ての位置に関して圧力分布が分かるという点で達成される。
【0015】
座圧及び接触圧を検出する表面センサの領域を絞り込むことができるようにするために、コンピュータユニットは、再帰シーケンス
【数1】

を使用してマンデルブロ集合を表す反復アルゴリズムを実行する。初期条件はZ=0である。この目的のために、表面センサはガウス平面として認識され、この場合、人の骨盤によって及ぼされる座圧及び接触圧はガウス平面内の点Cである。再帰シーケンスに異なる点Cを挿入することにより、ガウス平面のどの点Cがマンデルブロ集合に属し、どの点Cが属していないかを確認できる。この場合、マンデルブロ集合には、シーケンスが制限されたままである、すなわち収束する、つまり制限値に益々近づくポイントが含まれる。座標C(0/0)を伴うガウス数平面内の点Cの場合、シーケンスが
【数2】

に縮小されるため、座圧及び接触圧を検出する円形領域が発生する。この円形領域の外側の点Cでは、数が無限大になる傾向があり、シーケンスはもはや制限されなくなる。再帰シーケンスによって設定されたマンデルブロ集合をマッピングすることにより、人の骨盤の3次元構造を、例えば表面センサ上の平らな接触面に2次元的にマッピングすることができる。そうすることで、骨盤の2次元構造は、マンデルブロ集合で表わすことができるカーディオイドの形状に本質的に対応する。骨盤の2次元カーディオイド形状は、平らな接触面での骨盤のローリングプロセスによって作成される。人の直立座位に対応する骨盤の第1の姿勢位置から開始して、この人の骨盤は、水平軸の周りで第2の姿勢位置へと90°前方に傾斜し、次に第3の姿勢位置へと後方に傾斜する。第3の姿勢位置に到達するために、骨盤は、水平軸の周りで骨盤の第1の位置に対して90°又は骨盤の第2の位置に対して180°それぞれ後方に傾けられる。第3の姿勢位置は、人の水平背臥位に対応する。水平背臥位から始めて、骨盤は両側の腸骨稜の上を転がる。これは、骨盤の混合回転又はリクライニング位置での長手方向軸の周りの純粋な回転に対応する。このように、平らな接触面上の全ての接触点の接続部にカーディオイド形状が形成される。したがって、カーディオイドは、人の3次元骨盤の外側の輪郭の2次元表示に対応する。この場合、骨盤の仙骨構造もカーディオイドの内側に2次元的に描かれる。
【0016】
座圧及び接触圧を検出する領域の形状及び大きさ、したがってマンデルブロ集合の形状及び大きさを決定する反復回数に応じて、人の骨盤が表面センサに及ぼす座圧及び接触圧は、前記カーディオイド内で発生する。数回の反復、例えば2回の反復では、座圧及び接触圧を検出する領域、この場合には楕円形の領域が大きくなるが、反復回数が多いと、座圧及び接触圧を検出するカーディオイド型の領域など、より限定された領域がもたらされる。従来技術から知られている手段及び方法、例えば、A 50386/2019の手段及び方法によって人の骨盤を位置決めするために、より多くの反復が、より少ない数よりも好ましい。わずか5回の反復で、座圧及び接触圧を検出するカーディオイド型の限られた領域をマッピングできる。これは、前述の手段及び方法で骨盤を位置決めするのに十分である。所定の数に達すると、現在実行中の反復が中断される。前記反復回数は、例えば、第三者によって、例えば、看護師又は医師などの資格のある要員によって、コンピュータユニット上で指定及び設定することができる。しかしながら、反復回数は、主に装置の使用目的によって異なる。手術台に組み込む場合には、座圧と接触圧を可能な限り正確に検出する必要があり、そのため、これにはより多くの反復が選択される。
【0017】
前述の発明に係るステップは、コンピュータユニットがプログラムを実行するときに、前記ユニットにこれらのステップを実行するように促すコマンドを含むコンピュータプログラムプロダクトによって実施される。この場合、コンピュータプログラムプロダクトは、コンピュータ可読データキャリアに記憶される。
【0018】
プログラムのサポートにより、例えば、アルゴリズムの反復回数による前述の設定など、装置をそのそれぞれの意図された用途に適合させることができるようにする設定を装置上で行なうことができる。
【0019】
座席に座っている人又はラウンジャー若しくは支持体に座っているか横になっている人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定するための装置は、コンピュータユニット及びコンピュータユニットに接続された表面センサを備える。表面センサは、座席、ラウンジャー、又は、支持体に配置され、人の骨盤、尾骨、仙骨によって表面センサに及ぼされる座圧及び接触圧を検出するように設計され、この場合、コンピュータユニットは、本発明に係る前述の方法のステップを実行するように設計される。
【0020】
装置を既存の座席若しくはラウンジャーに組み込むことができる又は椅子若しくはベッドの座席カバーとして使用することができることが有利である。これにより、装置が以下の例に限定されない、様々な想定し得る用途が得られる。例を挙げると、装置を、以下のエンティティに、すなわち、オフィスチェア、車椅子、車両座席、チャイルド座席、トレーニング機器、治療ベッド、マットレスに組み込むことができ、並びに/又は、装置を、リハビリテーション及び治療部門で、特にスタンディングベッド、スタンディングボード、及び/若しくは、操作ベッドで使用できる。本発明の手術台への組み込みは、特に腹臥位又は背臥位で行われる手技にとって意味がある。これは、これらの手技が、傾斜した手術台で行われることが多く、その結果、手術台にいる人の望ましくない再配置、又は、脊椎、特に腰部の脊椎が圧縮若しくは伸ばされた位置に強制される、脊椎の中立方向に対する骨盤の不適切な配置の結果がそれぞれ起こり得るからである。このように配置された骨盤の手術は、様々な問題を引き起こす可能性がある。本発明により、人の骨盤の変位又は回転は、特に表面センサに作用する最大座圧及び接触圧の変位を検出することによって迅速に識別され得る。骨盤の変位又は回転のそれぞれを打ち消すことができ、また、骨盤の当初の位置を、従来技術から知られている手段及び方法によって、例えば、冒頭で引用した装置によって復元することができる。したがって、手術の過程で、可能な限り最高の精度で手技を実行することができ、想定し得る外科的リスク及び機能的脊椎の誤った配置の痛みを伴う結果のそれぞれを、最小限に抑えることができる又は更には特に骨盤の位置に適合される方法で腰椎を支持することによって排除することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施例において、表面センサは、機械的、電気的、空気圧的、又は、液圧的なセンサから成るグループから選択されるセンサのアレイである。結果として、骨盤の位置を座席上又はラウンジャー上の人の全ての位置で検出できる。センサの数を変えることにより、センサによる座圧及び接触圧の検出精度に影響を与えることができる。多数のセンサにより、人の骨盤の座圧及び接触圧を正確に検出できる。
【0022】
本発明の好ましい実施例において、表面センサは、それが少なくとも部分的に人の骨盤に適合するように成形される。したがって、座圧及び接触圧をより高い感度で検出することができ、それにより、特に骨盤体部分の領域における重心のわずかなシフトでさえ、センサによって検出することができる。
【0023】
ここで、非限定的で典型的な実施例を使用する図面を参照して本発明について更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の請求項1に係る方法のステップを好ましい順序で示すブロック図である。
図2】本発明の請求項8に係る一体型表面センサを伴う座席の概略斜視図である。
図3図1に示される座席の着座面の概略図であり、本発明の請求項1に係る第1の位置、第2の位置、及び、第3の位置が示される。
図4】座圧及び接触圧を検出する表面センサの領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図3を参照する。最初に図2を参照すると、座席10に座る又はラウンジャー若しくは支持体に座る若しくは横たわる人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定するための本発明に係る装置200が示される。ラウンジャー、支持体、及び、人は図示されていない。装置200は、コンピュータユニット20と、コンピュータユニット20に接続された表面センサ11とを備える。表面センサ11は、座席要素12上及び座席10の背面要素13内に配置され、特にその中に組み込まれ、この場合、座席10の脚要素14は表面センサ11を有さない。図示されていない更なる実施例において、脚要素14は、座席要素12及び背面要素13に加えて、表面センサ11を有することもできる。同じく示されていない更なる他の実施例においては、座席要素12又は背面要素13のみが表面センサ11を有することができる。前述の実施例は、組み合わせ可能であり、このことは、例えば、脚要素14及び座席要素12が表面センサ11を有し、背面要素13が表面センサ11を有さないことを意味する。図2に例示される表面センサ11は、比較的大規模な個々のセンサを有するため、距離の決定は比較的大まかにしか行なうことができない。したがって、本発明に関連して使用される表面センサは、図2に示されるものよりもはるかに多くの個別のセンサをより細かいグリッド又はアレイを成して有することもできる。
【0026】
センサ15の高い感度を得るために、表面センサ11は、それが人の骨盤に少なくとも部分的に適合するように成形される。結果として、人の骨盤、尾骨及び仙骨によって表面センサ11に及ぼされる座圧及び接触圧を検出するように設計される表面センサ11は、高い精度レベルで座圧及び接触圧を検出することができる。図2に見られるように、表面センサ11は、機械的、電気的、空気圧的又は液圧的なセンサから成るグループから選択されるセンサ15のアレイである。特に、表面センサは、座席10の座席要素12及び背面要素14を完全に占有するセンサ15の2次元アレイである。アレイに配置されるセンサ15の数は、変えることができ、特定の数に限定されない。5×5センサ15を伴うアレイが図3に示される。結果として、人の骨盤、尾骨、仙骨によって及ぼされる座圧及び接触圧の位置、したがって人の骨盤の全ての位置を十分な精度で決定できる。表面センサ11のセンサ15は、好ましくは、流体、例えば、空気又は水で満たされた平らなチャンバとして設計される。この場合、表面センサ11は、図には示されていない流体伝送チャネルを介してコンピュータユニット20に接続される。電気的又は機械的なセンサは、座圧及び接触圧を検出するために使用することもでき、したがって、一例として前述したセンサに限定されない。したがって、センサ15は、アレイに配置することができるひずみゲージにもなり得る。この場合、コンピュータユニット20は、表面センサ11に電気的に接続される。
【0027】
以下では、図1図3を参照する。図1には、座席10に座る又はラウンジャー若しくは支持体に座る若しくは横たわる人の骨盤の場所及び姿勢位置を決定するための本発明に係る方法100のステップ101、102、103、104、105、106、107を示すブロック図が示される。方法100の第1のステップ101において、本質的に直立して座っている人の坐骨結節及び尾骨によって又はうつ伏せに横たわっている人の腸骨稜及び恥骨によって座席10、ラウンジャー、又は、支持体に及ぼされる座圧/接触圧が、座席10、ラウンジャー又は支持体に配置された表面センサ11によって検出される。次のステップ102において、人の第1の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第1のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する表面センサ11上の第1の位置Pが、コンピュータユニット20によって決定される。図3において、第1の位置Pは、一例として、2行2列のアレイを成すセンサによって検出される。更なるステップ103において、人の第2の坐骨結節/腸骨稜によって及ぼされる第2のピーク座圧/ピーク接触圧に到達する表面センサ11上の第2の位置Pが、コンピュータユニット20によって決定され、第2の位置Pは、第1の位置Pから所定の距離範囲A内にある。図3において、第2の位置Pは、4行4列のアレイを成すセンサによって検出される。所定の距離範囲Aは、人の坐骨結節又は腸骨稜のそれぞれの幾何学的配置によって定義され、坐骨結節については100mm~150mmであり、腹臥位における腸骨稜については200mm~250mmである。性別固有の違いに加えて、特に人の尾骨の領域における年齢や病理学的変化などの他のパラメータも骨盤の形状又は仙骨構造のそれぞれに影響を与えるため、したがって距離範囲Aに影響を与えるため、指定された距離範囲Aは例示的なものと見なされる。方法100の後続のステップ104では、第1の位置Pと第2の位置Pとの間の距離Bが、コンピュータユニット20によって決定される。この場合、この距離Bは、人の第1の仙骨結節/腸骨稜と第2の仙骨結節/腸骨稜との間の真の距離に対応し、腸骨稜間の距離Bは、仙骨結節間の距離よりも大きい。「真の距離」という用語は、人のそれぞれの骨盤に対応して表面センサ11によって検出される坐骨結節間の実際の距離又は腸骨稜間の実際の距離のそれぞれを指すと理解される。
【0028】
第1の位置P、第2の位置P、及び、前記位置P、P間の距離Bがコンピュータユニット20によって決定された場合、人の尾骨/恥骨によって及ぼされる第3のピーク座圧力/ピーク接触圧に到達する表面センサ11上の第3の位置Pがその後にコンピュータユニット20によって決定される。この場合、第3の位置Pは、第1の位置Pと第2の位置Pとの間にあり、また、第3の位置Pは、実質的にそれらの共通の接続線C上にある又は接続線Cに対して略垂直に延びる線D上の図示しない所定の距離範囲内にある。図3において、第3の位置Pは、3行3列のアレイを成すセンサによって検出される。
【0029】
第3の位置Pが決定された後、座圧及び接触圧を検出する制限領域Eが、次のステップ106においてコンピュータユニット20によって決定され、この領域は、図3に概略的に示され、図4においてマンデルブロ集合30の形で示される。座圧及び接触圧を検出する領域Eを制限するために、コンピュータユニット20は、前記マンデルブロ集合30をマッピングする反復アルゴリズムを実行する。
【0030】
方法100の最終ステップ107において、制限領域Eにおける人の骨盤の座圧及び接触圧は、コンピュータユニット20によって評価される。この範囲E外の座圧及び接触圧は、更にコンピュータユニット20によって何ら評価されない。
【0031】
この場合、装置100のコンピュータユニット20は、前述の方法200のステップ101、102、103、104、105、106、107を実行するように設計され、この場合、方法100の順序は図1に示されるような好ましい順序に限定されない。例えば、方法100のステップ102、103は、逆の順序で行なうこともできる。
【0032】
以下、図4を参照する。図4は、座圧及び接触圧を検出する制限領域E又は異なる形状及びサイズのマンデルブロ集合30をそれぞれ示す。更に、図4は、座圧及び接触圧を検出する制限領域Eで発生するとともに骨盤及び尾骨又は仙骨によって表面センサ11に及ぼされる座圧及び接触圧37、38、39を示し、これに基づき、骨盤の場所に加えて姿勢位置も決定できる。既に述べたように、座圧と接触圧とを検出する領域Eは前述の反復アルゴリズムによって制限される。説明のために、座圧及び接触圧を検出する円形領域Eを形成するアルゴリズムの第1の反復31、座圧及び接触圧を検出する楕円領域Eを形成する第2の反復32、及び、第3の反復33が言及されるべきである。図4に見られるように、座圧と接触圧とを検出する領域Eは、反復の増加に伴って益々制限され、この場合、領域Eは、本質的にカーディオイドの形状又はマンデルブロ集合30の形状をそれぞれ有する座圧及び接触圧を既に5回の反復34で検出する。骨盤構造の長方形座標系に従って、-2~0の範囲の矢状軸と0~2の範囲の長手方向軸とが横軸にプロットされ、人の骨盤の水平軸が縦軸にプロットされる。横軸と縦軸との交点に示されている原点35は、仙骨構造に応力がかかった安定した平衡位置を表わしており、マンデルブロ集合30のエッジ41から距離Gを隔てて示される。原点35は、人の体の部分の重量の重心に対応し、また、表面センサ11が組み込まれるときには、人の水平背側位置を表わし、又は、長手方向軸若しくは人の上半身の正面平面のそれぞれが例えば図に示されていない立ち板などの支持構造に対して平行な向きを有する場合には、その点は仙骨によって最大接触圧で負荷される。
【0033】
骨盤のローリングプロセス、すなわち、水平軸の周りの骨盤の回転の間、坐骨結節は、最初に、表面センサ11上の人の直立座位から開始して、表面センサ11にピーク座圧37、38を及ぼす。そうすることで、ピーク座圧37、38は、互いから前述した距離Aにあり、座圧及び接触圧を検出する制限領域Eの外側で発生する。坐骨結節に非対称応力がかかると、表面センサ11によってピーク座圧37、38間の圧力差を検出できる。これらの圧力差により、人の矢状軸を中心とした骨盤の回転角度をコンピュータユニット20によって決定することができ、それにより、坐骨結節の真の長さ、腹臥位の場合には腸骨稜の真の長さを、及び、これから、座圧及び接触圧を検出するアルゴリズムの第1の反復31の円形領域Eの半径を、コンピュータユニット20によって決定することができる。下部構造の柔軟性及び尾骨の病理学的変化に応じて、本質的に10°以上の水平軸周りの骨盤の傾斜の場合、人の尾骨は、本質的にピーク座圧37、38によって形成される共通の接続線C上に位置される表面センサ11に座圧39を及ぼす。この場合、座圧39は、ピーク座圧37、38から距離Fを隔てることができる。骨盤のこの姿勢位置では、ピーク座圧37、38の距離範囲Aは、アルゴリズムの第1の反復31の円形領域Eの半径の半分に対応し、この領域は座圧及び接触圧を検出する。
【0034】
尾骨によって表面センサ11に及ぼされる座圧は、人の仙骨が表面センサ11に接触圧を及ぼす移行部40に至るまでローリングプロセス中に増大する。すなわち、人の水平リクライニング位置において、水平軸を中心に90°傾いた骨盤の姿勢位置で、仙骨によって及ぼされる接触圧は、原点35で最大に達する。人の水平リクライニング位置から開始して、前記人が横に移動する場合、つまり、側方位置がとられるように自分の骨盤を混合移動又は長手方向軸の周りの回転で側方に転がす場合、骨盤は表面センサ11に接触圧を及ぼす。これらの接触圧は、図4において、人の30°の混合横方向運動を示す線36によって示される。水平リクライニング位置にいる人が混合移動で180°回転する場合、座圧と接触圧とを検出する領域は、その回転の最初の90°以内、つまり、座圧及び接触圧を検出する第1の反復31の円形領域E内で発生する座圧及び接触圧のみを検出する。表面センサ11に生じ且つこの90°回転を超える、したがって、座圧及び接触圧を検出する第1の反復31の円形領域Eを超える座圧及び接触圧は、前記領域によって検出されない。それでも人のそのような動きを検出するために、コンピュータユニット20は、座圧及び接触圧を検出する領域Eを記憶するように設計される。骨盤によって及ぼされる座圧及び接触圧が、座圧及び接触圧を検出する第1の反復31の円形領域Eの周辺領域で生じる場合、図には示されていない、座圧及び接触圧を検出する第2の領域が、座圧及び接触圧を検出する領域Eに隣接して示される。この場合、座圧及び接触圧を検出する第2の領域は、座圧及び接触圧を検出する領域Eのコピーである。このプロセスは、コンピュータユニットによって数回繰り返すことができるので、人の動きごとに、座圧及び接触圧を検出する領域Eの外側の骨盤によって及ぼされる動き又は座圧及び接触圧のそれぞれを検出することができる。
【0035】
長手方向軸の周りの動き又は混合移動での骨盤の更なる横方向のローリング、すなわち、水平な腹臥位をとる人では、骨盤構造のみに応力がかかる。恥骨及び腸骨稜は、表面センサ11に最大の接触圧を及ぼすことができる。数学的には、これらの接触圧は背臥位の人の接触圧に対応し、この場合、仙骨構造には背臥位で応力がかかり、また、骨盤構造には腹臥位で応力がかかる。原点35の水平背臥位の仙骨又は移行部40の領域の水平腹臥位の恥骨にそれぞれ最大負荷がかかると、安定した平衡位置に到達する。
【0036】
距離F及び距離Gは、基本的に同じサイズであるが、例えば尾骨の領域の人の解剖学的構造の病理学的変化に起因して異なる場合がある。距離F及び距離Gが等しくなく、他の特徴的なポイント、又はそれぞれ図に示されていない圧力領域が分かっている場合、距離Fは計算によって修正でき、人間工学的に正しい又は正しくない座位又はリクライニング位置について正確な結論を導き出すことができる。
【0037】
本発明に係る方法は、例えばコスト上の理由で、センサの感度が非常に狭い範囲に低下した場合にも数学的に正確な結果を提供し、その結果、センサによって検出されない又は最大の圧力値のみが得られることに言及され得る。
【0038】
更に、表面センサは、坐骨結節と尾骨及び仙骨との接触領域でのみ直接着座面に組み込むこともできると言うことができる。これが可能なのは、評価可能なパラメータに基づく計算方法では、骨盤の姿勢位置を評価するためにそれに依存する幾何学的不動点のみが使用されるが、実際に物理的に存在する必要はないからである。これは、例えば、純粋な座席システムの場所を決定する場合に興味深い。
図1
図2
図3
図4