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特許7595662アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット
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  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図1
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図2
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  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図4A
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図4B
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  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図5
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図6A
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図6B
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  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図11
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図12
  • 特許-アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニット
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/40 20060101AFI20241129BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20241129BHJP
   B21B 27/00 20060101ALI20241129BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20241129BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20241129BHJP
   C22C 24/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B21B1/40
B21B3/00 L
B21B27/00 B
B21B27/10 B
B21B45/02 310
C22C24/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022528673
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 CA2020051571
(87)【国際公開番号】W WO2021097568
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】62/936,806
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/936,809
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/936,814
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518203836
【氏名又は名称】ブルー・ソリューションズ・カナダ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・デュベ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・デレイエ
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-148606(JP,A)
【文献】特開昭60-227906(JP,A)
【文献】特開2000-135502(JP,A)
【文献】特開2004-298938(JP,A)
【文献】特表2005-538850(JP,A)
【文献】特開2011-25284(JP,A)
【文献】特開2012-243454(JP,A)
【文献】特開2018-126780(JP,A)
【文献】特表2018-503716(JP,A)
【文献】特表2019-519375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/40
3/00
27/00 - 27/10
45/02
C22C 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属または前記アルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機であって、前記圧延機は、
フレームと、
前記フレームに回転可能に備え付けられる第1の加工ローラであって、第1の薄化表面を有する、第1の加工ローラと、
前記フレームに回転可能に備え付けられ、前記第1の加工ローラの下方に配置され、第2の薄化表面を有する第2の加工ローラであって、前記第1の加工ローラおよび前記第2の加工ローラは、前記第1の加工ローラおよび前記第2の加工ローラの間に前記シートを受け入れるように位置決めされる、第2の加工ローラと、
潤滑剤を前記第2の薄化表面へ供給するための薄化用潤滑剤分注ユニットであって、前記薄化用潤滑剤分注ユニットは、
横方向に延びる壁を定める分注ユニット本体、
前記横方向に延びる壁から前方に延びる第1の側壁および第2の側壁、ならびに、
前記横方向に延びる壁の下端に接続され、前記横方向に延びる壁から前方に延びる棚部
を備え、
前記棚部は、前記第1の側壁および前記第2の側壁の下端に接続され、前記第1の側壁および前記第2の側壁の間で延び、
前記棚部と、前記第1の側壁および前記第2の側壁と、前記横方向に延びる壁と、は、開放側を有する凹部を定め、
前記棚部は、前記第2の薄化表面に当接する前縁を有し、
前記棚部の少なくとも一部分が、前記前縁から前記横方向に延びる壁に向けて上向きおよび後向きに延びる斜め部分であり、
前記分注ユニット本体は、前記横方向に延びる壁において定められる出口を有する少なくとも1つの潤滑剤通路を定める、
薄化用潤滑剤分注ユニットと、
薄化用潤滑剤を保持するための潤滑剤貯留部と、
薄化用潤滑剤を前記潤滑剤貯留部から前記少なくとも1つの潤滑剤通路へと供給するために、前記潤滑剤貯留部と前記少なくとも1つの潤滑剤通路との間で流体接続されるポンプと、
を備え、
前記少なくとも1つの潤滑剤通路の前記出口から、薄化用潤滑剤が、前記棚部に沿って前記棚部の前記前縁へと流れ、前記前縁から前記第2の薄化表面へと流れる、圧延機。
【請求項2】
前記棚部は、横方向に延びる溝を前記棚部の前記斜め部分において定め、前記溝は前記棚部の前記前縁から離間される、請求項1に記載の圧延機。
【請求項3】
前記溝の端は前記第1の側壁および前記第2の側壁から離間される、請求項2に記載の圧延機。
【請求項4】
前記棚部の前記前縁は前記第2の薄化表面より幅広である、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項5】
前記少なくとも1つの潤滑剤通路は単一の潤滑剤通路である、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項6】
前記単一の潤滑剤通路の前記出口は、前記横方向に延びる壁において横方向で中央にある、請求項5に記載の圧延機。
【請求項7】
前記少なくとも1つの潤滑剤通路の前記出口の底部が、前記棚部の隣接する部分と鉛直方向において並べられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項8】
前記棚部の前記斜め部分と前記棚部の前記前縁との間のコーナーが弓状である、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項9】
前記棚部は、前記棚部の前記斜め部分と前記横方向に延びる壁との間で延びる概して水平の部分を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項10】
前記斜め部分は、水平から5度から25度の間の角度にある、請求項1から9のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項11】
前記第1の加工ローラおよび前記第2の加工ローラは、前記第1の薄化表面および前記第2の薄化表面にクロムコーティングを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項12】
前記第1の薄化表面および前記第2の薄化表面は、0.025ミクロンのRaから0.5ミクロンのRaの間の範囲で表面粗さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項13】
前記範囲は0.05ミクロンのRaから0.3ミクロンのRaの間である、請求項12に記載の圧延機。
【請求項14】
前記フレームに回転可能に備え付けられる第1のバックアップローラであって、圧力を前記第1の加工ローラに加えるために前記第1の加工ローラと接触している、第1のバックアップローラと、
前記フレームに回転可能に備え付けられる第2のバックアップローラであって、圧力を前記第2の加工ローラに加えるために前記第2の加工ローラと接触している、第2のバックアップローラと、
をさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項15】
前記薄化用潤滑剤分注ユニットは第2の潤滑剤分注ユニットであり、
前記圧延機は、潤滑剤を前記第1の薄化表面に供給するための第1の薄化用潤滑剤分注ユニットをさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項16】
前記第1の薄化用潤滑剤分注ユニットは、薄化用潤滑剤を前記第1の薄化表面に噴霧するための複数のノズルを備える、請求項15に記載の圧延機。
【請求項17】
前記棚部の前記前縁は、前記第2の加工ローラの中心軸の鉛直方向で下方の位置において前記第2の薄化表面に当接する、請求項1から16のいずれか一項に記載の圧延機。
【請求項18】
アルカリ金属または前記アルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニットであって、前記薄化用潤滑剤分注ユニットは、
横方向に延びる壁を定める分注ユニット本体と、
前記横方向に延びる壁から前方に延びる第1の側壁および第2の側壁と、
前記横方向に延びる壁の下端に接続され、前記横方向に延びる壁から前方に延びる棚部と、
を備え、
前記棚部は、前記第1の側壁および前記第2の側壁の下端に接続され、前記第1の側壁および前記第2の側壁の間で延び、
前記棚部と、前記第1の側壁および前記第2の側壁と、前記横方向に延びる壁と、は、開放側を有する凹部を定め、
前記棚部は、前記加工ローラの薄化表面に当接する前縁を有し、
前記棚部の少なくとも一部分が、前記前縁から前記横方向に延びる壁に向けて上向きおよび後向きに延びる斜め部分であり、
前記分注ユニット本体は、前記横方向に延びる壁において定められる出口を有する少なくとも1つの潤滑剤通路を定める、薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項19】
前記棚部は、横方向に延びる溝を前記棚部の前記斜め部分において定め、前記溝は前記棚部の前記前縁から離間される、請求項18に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項20】
前記溝の端は前記第1の側壁および前記第2の側壁から離間される、請求項19に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項21】
前記少なくとも1つの潤滑剤通路は単一の潤滑剤通路である、請求項18から20のいずれか一項に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項22】
前記単一の潤滑剤通路の前記出口は、前記横方向に延びる壁において横方向で中央にある、請求項21に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項23】
前記少なくとも1つの潤滑剤通路の前記出口の底部が、前記棚部の隣接する部分と鉛直方向において並べられる、請求項18から22のいずれか一項に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項24】
前記棚部の前記斜め部分と前記棚部の前記前縁との間のコーナーが弓状である、請求項18から23のいずれか一項に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項25】
前記棚部は、前記棚部の前記斜め部分と前記横方向に延びる壁との間で延びる概して水平の部分を有する、請求項18から24のいずれか一項に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【請求項26】
前記斜め部分は、水平から5度から25度の間の角度にある、請求項18から25のいずれか一項に記載の薄化用潤滑剤分注ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年11月18日に出願された米国仮特許出願第62/936,806号、2019年11月18日に出願された米国仮特許出願第62/936,809号、および2019年11月18日に出願された米国仮特許出願第62/936,814号の便益を主張し、それらのすべての開示は、その全体において、本明細書で参照により組み込まれている。
【0002】
本技術は、アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニットと、このような薄化用潤滑剤分注ユニットを有する圧延機と、に関する。
【背景技術】
【0003】
固体高分子電解質と薄膜のアノードおよびカソードとの積層体から製造される充電式電池は、従来の液体電解質の電池に対して多くの利点を呈する。これらの利点には、より小さい電池全体の重量、高い比エネルギー、より長い耐用期間、および、毒性の液体が環境に漏れる危険性が排除されることによる環境適合性がある。
【0004】
固体高分子電池の構成要素には、正の電極と、負の電極と、電極同士の間に挟まれる固体高分子電解質など、イオン伝導を可能とすることができる絶縁材料と、がある。アノードまたは負の電極は、リチウム金属、リチウム-アルミニウム合金などといったアルカリ金属およびアルカリ金属の合金など、軽量な金属膜から通常は作られる。複合カソードまたは正の電極は、遷移金属酸化物などの活性物質の混合物と、通常は炭素粒子である導電性フィラーと、イオン電導性高分子電解質材料と、アルミニウムの薄いシートである集電材と、から通常は形成される。複合カソード薄膜は、集電材にコーティングすることで通常は得られる。
【0005】
素早く信頼できる工程を用いて、例えば10センチメートル以上といった幅の帯の形態で、数百メートルの長さで、100ミクロン未満の厚さを有するリチウムの薄膜の生産は、化学反応性、可鍛性、低い機械的強度、接触だけによる急速な自己融着、および、ほとんどの固体材料における強い付着など、この金属の極端な物理的および化学的な特性に起因する重要な技術的困難に直面する。
【0006】
冷間押出しが、100ミクロン以上のシートの連続的な生産のために使用される。この厚さは、液体電解質を利用するリチウム電池の生産に概して適合させられる。より小さい厚さについて、押出しによって得られた膜は、その後、硬い材料から作られた加工ローラ同士の間で薄化させられる。
【0007】
大規模な生産工程では、高分子電解質電池の生産のために、20ミクロンから100ミクロンの間で変化する厚さへの高密度のリチウムの効率的な薄化を達成するときの難しさは、いくつもある。
【0008】
薄化されたリチウム金属は、薄化工程の間に接触する加工ローラと反応し、かつ/または変形し、加工ローラに付着することが多い。この問題は、特許文献1~3に記載されているような潤滑剤の使用によって解決でき、これら文献の各々の全体が、本明細書において参照により組み込まれている。潤滑剤は、薄化された薄いリチウム膜が、反応するのを防止する、または、加工ローラに過剰に付着するのを防止する添加物を含み、結果的にできた電気化学電池の電気化学性に影響を与えない。しかしながら、薄化工程の間に潤滑剤の適切で効率的な適用に対する要求がある。
【0009】
リチウムまたはリチウムの合金の過剰な延性は、加工ローラを出るリチウム膜における極小さい引っ張り張力だけを許容する。そのため、引っ張り張力は、リチウム膜の破壊または引き裂き、およびその結果としての多大の損失となる生産の中断を防止するために、正確に監視および制御されなければならない。
【0010】
20ミクロンから100ミクロンの間の厚さの場合、リチウムまたはリチウムの合金の膜を、膜の全幅にわたり、膜の広げられた長さにわたって、一定の厚さへと薄化することは困難である。厚さの変化が、従来の薄化工程では、薄化されたリチウム膜の幅にわたって起こり、これは、薄化作業の間にリチウム膜の破壊を助長し、電気化学電池にとって適切とは言えない薄化リチウム膜を結果的に提供する。
【0011】
加工ローラは、リチウムと相性の良い(つまり、リチウムと反応しない)硬いプラスチック材料であるポリアセタールから従来は作られている。しかしながら、大規模な生産に対して、ポリアセタールのローラはすぐに摩耗し、摩耗したローラの頻繁な交換および廃棄を必要とし、それによってコストを大幅に増加させている。これは、薄化製造工程を経済的に難しくさせている。
【0012】
したがって、上記問題のうちの少なくとも一部に対処する、アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化することに適合された圧延機に対する要求がある。このような圧延機によって生産され、膜の幅および長さにわたって望ましい特性を保つアルカリ金属膜に対する要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5837401号明細書
【文献】米国特許第5528920号明細書
【文献】米国特許第6019801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行技術に存在する不都合のうちの少なくとも一部を改善することが、本技術の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本技術の一態様によれば、アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機が提供される。圧延機は、フレームと、フレームに回転可能に備え付けられる第1の加工ローラであって、第1の薄化表面を有する、第1の加工ローラと、フレームに回転可能に備え付けられ、第1の加工ローラの下方に配置され、第2の薄化表面を有する第2の加工ローラであって、第1の加工ローラおよび第2の加工ローラは第1の加工ローラおよび第2の加工ローラの間にシートを受け入れるように位置決めされる、第2の加工ローラと、潤滑剤を第2の薄化表面へ供給するための薄化用潤滑剤分注ユニットと、を有する。薄化用潤滑剤分注ユニットは、横方向に延びる壁を定める分注ユニット本体と、横方向に延びる壁から前方に延びる第1の側壁および第2の側壁と、横方向に延びる壁の下端に接続され、横方向に延びる壁から前方に延びる棚部と、を備える。棚部は、第1の側壁および第2の側壁の下端に接続され、第1の側壁および第2の側壁の間で延びる。棚部と、第1の側壁および第2の側壁と、横方向に延びる壁と、は、開放側を有する凹部を定める。棚部は、第2の薄化表面に当接する前縁を有する。棚部の少なくとも一部分が、前縁から横方向に延びる壁に向けて上向きおよび後向きに延びる斜め部分である。分注ユニット本体は、横方向に延びる壁において定められる出口を有する少なくとも1つの潤滑剤通路を定める。圧延機は、薄化用潤滑剤を保持するための潤滑剤貯留部と、薄化用潤滑剤を潤滑剤貯留部から少なくとも1つの潤滑剤通路へと供給するために、潤滑剤貯留部と少なくとも1つの潤滑剤通路との間で流体接続されるポンプと、を備えもする。少なくとも1つの潤滑剤通路の出口から、薄化用潤滑剤が、棚部に沿って棚部の前縁へと流れ、前縁から第2の薄化表面へと流れる。
【0016】
本技術のある態様によれば、棚部は、横方向に延びる溝を棚部の斜め部分において定め、溝は棚部の前縁から離間される。
【0017】
本技術のある態様によれば、溝の端は第1の側壁および第2の側壁から離間される。
【0018】
本技術のある態様によれば、棚部の前縁は第2の薄化表面より幅広である。
【0019】
本技術のある態様によれば、少なくとも1つの潤滑剤通路は単一の潤滑剤通路である。
【0020】
本技術のある態様によれば、単一の潤滑剤通路の出口は、横方向に延びる壁において横方向で中央にある。
【0021】
本技術のある態様によれば、少なくとも1つの潤滑剤通路の出口の底部が、棚部の隣接する部分と鉛直方向において並べられる。
【0022】
本技術のある態様によれば、棚部の斜め部分と棚部の前縁との間のコーナーが弓状である。
【0023】
本技術のある態様によれば、棚部は、棚部の斜め部分と横方向に延びる壁との間で延びる概して水平の部分を有する。
【0024】
本技術のある態様によれば、斜め部分は、水平から5度から25度の間の角度にある。
【0025】
本技術のある態様によれば、第1の加工ローラおよび第2の加工ローラは、第1の薄化表面および第2の薄化表面にクロムコーティングを有する。
【0026】
本技術のある態様によれば、第1の薄化表面および第2の薄化表面は、0.025ミクロンのRaから0.5ミクロンのRaの間の範囲で表面粗さを有する。
【0027】
本技術のある態様によれば、範囲は0.05ミクロンのRaから0.3ミクロンのRaの間である。
【0028】
本技術のある態様によれば、第1のバックアップローラがフレームに回転可能に備え付けられる。第1のバックアップローラは、圧力を第1の加工ローラに加えるために第1の加工ローラと接触している。第2のバックアップローラがフレームに回転可能に備え付けられ、第2のバックアップローラは、圧力を第2の加工ローラに加えるために第2の加工ローラと接触している。
【0029】
本技術のある態様によれば、薄化用潤滑剤分注ユニットは第2の潤滑剤分注ユニットである。圧延機は、潤滑剤を第1の薄化表面に供給するための第1の薄化用潤滑剤分注ユニットも有する。
【0030】
本技術のある態様によれば、第1の薄化用潤滑剤分注ユニットは、薄化用潤滑剤を第1の薄化表面に噴霧するための複数のノズルを備える。
【0031】
本技術のある態様によれば、棚部の前縁は、第2の加工ローラの中心軸の鉛直方向で下方の位置において第2の薄化表面に当接する。
【0032】
本技術の別の態様によれば、アルカリ金属またはアルカリ金属の合金のシートを膜へと薄化するための圧延機の加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニットが提供される。潤滑剤分注ユニットは、横方向に延びる壁を定める分注ユニット本体と、横方向に延びる壁から前方に延びる第1の側壁および第2の側壁と、横方向に延びる壁の下端に接続され、横方向に延びる壁から前方に延びる棚部と、を備える。棚部は、第1の側壁および第2の側壁の下端に接続され、第1の側壁および第2の側壁の間で延びる。棚部と、第1の側壁および第2の側壁と、横方向に延びる壁と、は、開放側を有する凹部を定める。棚部は、加工ローラの薄化表面に当接する前縁を有する。棚部の少なくとも一部分が、前縁から横方向に延びる壁に向けて上向きおよび後向きに延びる斜め部分である。分注ユニット本体は、横方向に延びる壁において定められる出口を有する少なくとも1つの潤滑剤通路を定める。
【0033】
本技術のある態様によれば、棚部は、横方向に延びる溝を棚部の斜め部分において定め、溝は棚部の前縁から離間される。
【0034】
本技術のある態様によれば、溝の端は第1の側壁および第2の側壁から離間される。
【0035】
本技術のある態様によれば、少なくとも1つの潤滑剤通路は単一の潤滑剤通路である。
【0036】
本技術のある態様によれば、単一の潤滑剤通路の出口は、横方向に延びる壁において横方向で中央にある。
【0037】
本技術のある態様によれば、少なくとも1つの潤滑剤通路の出口の底部が、棚部の隣接する部分と鉛直方向において並べられる。
【0038】
本技術のある態様によれば、棚部の斜め部分と棚部の前縁との間のコーナーが弓状である。
【0039】
本技術のある態様によれば、棚部は、棚部の斜め部分と横方向に延びる壁との間で延びる概して水平の部分を有する。
【0040】
本技術のある態様によれば、斜め部分は、水平から5度から25度の間の角度にある。
【0041】
本出願の目的に関して、表面粗さは、メートル法で表され、明確にはミクロンで表された粗さ平均(Ra)で提供され、角度は度で表される(つまり、完全な回転については360度)。本出願の目的に関して、硬度は、変形が機械的な押し込みまたは摩耗のいずれかによって導入される材料(例えば、シートおよび膜)の局所的な変形に対する抵抗を表している。本出願の目的に関して、引張強度(TS)は、このような材料を細長くしようとする荷重に抵抗するための材料(例えば、シートおよび膜)の能力に言及している。引張強度は、材料が破壊の前に引き伸ばされまたは引っ張られている間に耐えることができる最大応力によって測定される。
【0042】
「約」という用語が、明示的であろうがなかろうが、本明細書において使用されており、本明細書で提供されているあらゆる数量は、実際の提供された値に言及するように意味されており、また、このような提供された値についての実験条件および/または測定条件による同等および近似を含め、通常の技術的な技量に基づいて合理的に推量される、このような所与の値への近似に言及するようにも意味されている。例えば、提供された値または範囲の文脈における「約」という用語は、提供された値または範囲の20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、より好ましくは9%以内、より好ましくは8%以内、より好ましくは7%以内、より好ましくは6%以内、およびより好ましくは5%以内である値または範囲に言及している。
【0043】
本技術の実施形態は、上記の目的および/または態様のうちの少なくとも1つをそれぞれ有し、必ずしもそれらのすべてを有していない。前述した目的を達成しようとする試みから生じた本技術のある態様が、この目的を満たさない可能性があること、および/または、本明細書において明示的に提唱されていない他の目的を満たす可能性があることは、理解されるべきである。
【0044】
本技術の実施形態の追加および/または代替の特徴、態様、および利点は、以下の記載、添付の図面、および添付の請求項から明らかとなる。
【0045】
本技術に加え、本技術の他の態様およびさらなる特徴のより良い理解のために、添付の図面と併せて用いられる以下の記載が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】リチウムまたはリチウム合金のシートを薄膜へと薄化するための圧延機および関連する構成要素の側方からの概略的な断面図である。
図2】薄化されたリチウムまたはリチウム合金の膜の厚さおよび形の制御を可能にする、図1の圧延機の主要な構成要素を示す側方からの概略的な立面図である。
図3図2の圧延機の主要な構成要素の前方からの概略的な立面図である。
図4A】加工ローラの円錐台部分の角度と、加工ローラの曲げの度合いと、が、図示の目的のために誇張されている、異なる調整で示された図2の圧延機のバックアップローラおよび加工ローラの前方からの概略的な立面図である。
図4B】加工ローラの円錐台部分の角度と、加工ローラの曲げの度合いと、が、図示の目的のために誇張されている、異なる調整で示された図2の圧延機のバックアップローラおよび加工ローラの前方からの概略的な立面図である。
図4C】加工ローラの円錐台部分の角度と、加工ローラの曲げの度合いと、が、図示の目的のために誇張されている、異なる調整で示された図2の圧延機のバックアップローラおよび加工ローラの前方からの概略的な立面図である。
図5図2の圧延機の1つの加工ローラの前方からの立面図である。
図6A図5のローラの一実施形態による図5の区域6の拡大図である。
図6B図5のローラの別の実施形態による図5の区域6の拡大図である。
図7図2の圧延機に供給されるリチウムまたはリチウム合金のシートの概略的な断面輪郭図である。
図8図1の圧延機の上方加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニットの斜視図である。
図9図1の圧延機の下方加工ローラを潤滑するための薄化用潤滑剤分注ユニットの斜視図である。
図10図9の薄化用潤滑剤分注ユニットの上平面図である。
図11図9の薄化用潤滑剤分注ユニットの前方からの立面図である。
図12図10の線12-12を通って切り取られた図9の薄化用潤滑剤分注ユニットの断面図である。
図13図12の部分13の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、約100ミクロン~500ミクロンの厚さの事前に押出しされたリチウムまたはリチウム合金のシート14から、100ミクロン未満の厚さのリチウムまたはリチウム合金の薄い膜12を生産するように適合された圧延機10および関連する構成要素を、概略的に示している。本技術の実施形態は、リチウムまたはリチウム合金のシート14からのリチウムまたはリチウム合金の薄い膜12の生産に関連して説明されるが、本技術の少なくともいくつかの態様は、他のアルカリ金属またはアルカリ金属合金のシートからの他のアルカリ金属またはアルカリ金属合金の薄い膜の生産のために使用できることが、考えられる。
【0048】
圧延機10は、主フレーム16と、加工ローラ18aおよび18bの対と、加工ローラ18aに隣接して接触するバックアップローラ20aと、加工ローラ18bに隣接して接触するバックアップローラ20bと、加工ローラ18bに潤滑剤を分注するための薄化用潤滑剤分注ユニット22と、加工ローラ18aに潤滑剤を分注するための薄化用潤滑剤分注ユニット200と、を有する。見て取れるように、加工ローラ18aは加工ローラ18bの下方に配置される。加工ローラ18a、18bおよび薄化用潤滑剤分注ユニット22、200は、後でより詳細に説明される。加工ローラ18a、18bおよびバックアップローラ20a、20bは、後でより詳細に説明されるように、支持フレーム50および52(図2)に回転可能に備え付けられている。
【0049】
巻かれた押出しされたリチウムまたはリチウム合金のシート14のロール24が、加工ローラ18aおよび18bに到達する前に、リチウムシート14の引っ張りを制御するように適合された駆動モータ制御ユニット(図示されていない)を備える送りローラ26に配置される。シート14は、進行するシート14の正確な速度を測定するエンコーダローラ41に一連の自由ローラ28を通り、薄化装置10に入るシート14における引っ張りを正確に測定するように適合されたロードセルが搭載された引っ張りローラ43へと蛇行していく。引っ張りローラ43のロードセルは、シート14に与えられる引っ張りを自動的に調整するために、ロール24の駆動モータの制御ユニットに電子的に連結され得る。次に、シート14はストレートナ30へと送り込まれ、ストレートナ30は密に詰め込まれた一連のローラ32を通じてシート14を素早く巻き、一連のローラ32は、シート14の横方向の変位を排除し、シート14のジグザグの動きを防止することで、シート14が、薄化工程にとって有害となる横方向の曲がりくねる動きなしで、加工ローラ18aおよび18bの中央部分へと真っ直ぐ送り込まれることを確保する効果を有する。そのため、シート14は、加工ローラ18aおよび18bへと、ローラ18a、18bの間の固定位置において送り込まれる。
【0050】
圧延機10の入口において、潤滑剤分注ユニット22および200は、シート14が適切に潤滑された加工ローラ18aおよび18bで薄化され、それによって、加工ローラ18a、18bのいずれかへの薄化された膜12の望ましくない付着を防止するように、リチウムと相性の良い薄化用潤滑剤を適切な量で、薄化領域の上流において各々の加工ローラ18aおよび18bの加工面へと排出する。1つの適切な潤滑剤が、特許文献1および3に記載されており、それらの全体が、本明細書において参照により組み込まれている。一実施形態では、潤滑剤は、トルエン、ヘキサン、およびポリオキシエチレンディステリエート(polyoxyethylene distereate)をベースとし、加工ローラ18aおよび18bのいずれかへの薄化された膜12の過剰な付着を防止するために、十分な量で各々の加工ローラ18aおよび18bに使用される。
【0051】
シート14は2つの加工ローラ18aおよび18bの間を通り、そこでシート14の厚さは、膜12の所望の最終的な厚さに応じて、約100ミクロン~500ミクロンから約20ミクロン~100ミクロンへと低減させられる。圧力が、バックアップローラ20aおよび20bによって加工ローラ18aおよび18bへと加えられ、加工ローラ18aおよび18bはさらに、シート14の厚さを低減し、シート14を膜12へと変形するのに十分な圧力を、シート14に与える。薄化の圧力は、膜12の形および厚さに反映される加工ローラ18aおよび18bの望ましくない曲げを回避するのを助けるために、加工ローラ18aおよび18bへと直接的に加えられる代わりに、バックアップローラ20aおよび20bを通じて加えられる。後で説明されるように、加工ローラ18aおよび18bの表面粗さは、高品質の薄膜12を生産するために最小である必要がある。バックアップローラ20aおよび20bによって加工ローラ18aおよび18bに加えられる圧力は、各々のローラ18aおよび18bの表面に均一に分配され、それによって、加工ローラ18aおよび18bの形を乱さないままにする。しかしながら、加工ローラ18aおよび18bが十分に剛性のある場合、シート14の厚さを低減するために、かつ、シート14を膜12へと変形するために要求される必要な圧力は、バックアップローラを使用することなく、加工ローラ18aおよび18bによって直接的に加えられてもよい。複数のバックアップローラが、加工ローラ18aおよび18bの各々に均一な圧力を加えるために使用できることも、考えられる。例えば、バックアップローラの2つの対が、加工ローラ18aおよび18bの両側に位置決めされてもよい。
【0052】
薄化された膜12は、膜12の表面の均一性を測定し、膜12における孔または膜12の縁に沿っての割れも検出する光学耐熱システム36を通じて、引っ張られる。光学システムは、膜12の厚さを測定するために使用することもできる。制御された引っ張りは、膜12が適切に巻かれることを確保するために、被駆動巻き付けローラ38によって膜12へと適用される。巻き付けローラ38に到達する前に、薄化された膜12は、一連のローラを通じて、制御された引っ張りの下で蛇行していく。これらのローラのうちの第1のものは、圧延機10を出て行く薄化された膜12における引っ張りを正確に測定するように適合されたロードセルが搭載された引っ張りローラ45である。引っ張りローラ45のロードセルは、膜12に与えられる引っ張りを自動的に調整するために、巻き付けローラ38の駆動モータの制御ユニットに電子的に連結され得る。次に、膜12は、進行する膜12の正確な速度を測定するエンコーダローラ47の上を通過する。次に、膜12は、巻き付けローラ38へと繋がる一連の自由ローラ34を通過する。
【0053】
ポリプロピレン膜などの薄い絶縁膜90も、膜12が互いに付着しないように膜12の層を分離するために、巻き付けローラ38の周りに巻き付けられる。絶縁膜90は、巻き付けローラ38によってロール92から引っ張られる。ロール92から、絶縁膜90は、ローラ38に到達する前に引っ張りローラ94の上を通過する。引っ張りローラ94には、絶縁膜90における引っ張りを正確に測定するように適合されたロードセルが搭載されている。この引っ張り測定は、巻き付けローラ38によって与えられた引っ張りが膜12と絶縁膜90との間で分けられるため、巻き付けローラ38によって膜12に与えられる引っ張りを制御するために使用される。
【0054】
エンコーダローラ41および47は、圧延機10に入るシート14の速度と、圧延機10を出る薄化された膜12の速度と、をそれぞれ測定する。シート14の進入速度と、薄化された膜12の退出速度と、の間の関係は、最初のシート14から膜12への厚さ低減に直接的に比例する。それによって、薄化された膜12の厚さは、最初のシート14の厚さが分かっているとき、数学的に決定できる。したがって、薄化された膜12の厚さは、エンコーダローラ41および47によって測定された速度の速度差を通じて、制御および確認される。薄化された膜12の厚さが異なるように制御および確認され得ることも、考えられる。
【0055】
一実施形態では、薄化工程は、リチウム膜12を電気化学電池における使用に対して不適当にさせる水粒子とのリチウム膜12の望ましくない化学反応を防止するために、1%未満の相対湿度を含む無水雰囲気において実行される。
【0056】
ここで図2および図3を見て、薄化される膜12の厚さおよび形の制御を可能にする圧延機10の主構成要素が説明される。図示されている圧延機10が、薄化された膜12の形および厚さを制御するために適合された圧延機の1つの例示の実施形態であることと、他の実施形態が考えられることと、は、理解されるべきである。例えば、支持部材およびフレームは異なる構成を有してもよく、様々な液圧システム構成が使用されてもよい。
【0057】
バックアップローラ20aおよび20bは、それぞれ支持フレーム50および52の軸受けに回転可能に備え付けられている。支持フレーム52は、スライド通路または軸受けなどの任意の適切な手段を通じて、主フレーム16の鉛直部材にスライド可能に備え付けられている。支持フレーム50は、主フレーム16の鉛直部材に固定的に備え付けられている。そのため、支持フレーム52は鉛直方向に移動することができる。加工ローラ18aおよび18bは、電気式または液圧式のモータ(図示されていない)によってそれぞれ駆動される。加工ローラ18a、18bは、摩擦によってバックアップローラ20aおよび20bを駆動させる。液圧式線形アクチュエータ66の対が、主フレーム16の上方の水平部材に備え付けられている。液圧式アクチュエータは支持フレーム52に接続されている。液圧式線形アクチュエータ66は、支持フレーム52の上下の移動を制御すると共に、加工ローラ18aおよび18bへと加えられる圧力を制御する。加工ローラ18aおよび18bはそれぞれ支持部材54および56に回転可能に備え付けられる。支持部材54および56はそれぞれ支持フレーム50および52に動作可能に繋げられる。支持部材54の端部分58および59は、液圧式線形アクチュエータ60および61の対を介して支持フレーム50に動作可能に接続され、支持部材56の端部分62および63は、液圧式線形アクチュエータ64および65の対を介して支持フレーム52に動作可能に接続されている。
【0058】
動作中、薄化の速度は加工ローラ18aおよび18bの速度によって設定される。膜12を所望の厚さに低減するために必要な圧力Pは、液圧式線形アクチュエータ66を制御する液圧弁を通じて調整される。バックアップローラ20bは圧力Pを加工ローラ18bに伝達する。所望の圧力Pが設定されると、薄化された膜12の最終的な形は、後でより詳細に説明されているように、液圧式線形アクチュエータ60、61、64、および65によっての各々への流体圧力を調節し、それによって、液圧式線形アクチュエータ60、61、64、および65の各々によって支持部材54および56に与えられる力を調整することで、細かくチューニングされる。液圧式線形アクチュエータ60、61、64、65、および66は、電気式アクチュエータなど、十分な力を発生させることができる他の種類のアクチュエータによって置き換えられてもよい。代替の実施形態では、追加の液圧式線形アクチュエータが支持部材54、56の間に接続される。このような実施形態では、液圧式線形アクチュエータ60、61、64、65、および66は、支持部材54、56を互いに向けて押すために使用され、追加の液圧式線形アクチュエータが支持部材54、56を互いに向けて押すために使用される。
【0059】
薄化工程の間、加工ローラ18aおよび18bを若干膨張させる影響により薄化表面において発生させられる摩擦を通じて、熱が加工ローラ18aおよび18bへと蓄積する。薄化領域における数ミクロンでの加工ローラ18a、18bの膨張は、薄い膜の電気化学電池に対して不適当である不均一な厚さの膜12を生産するのに十分である。この問題を緩和し、均一な厚さの膜12を確保するのを助けるために、膨張した加工ローラ18aおよび18bの中央部分100(図4A)が、中央部分100を真っ直ぐにし、均一な厚さのリチウムの膜12を生産するために、加工ローラ18aおよび18bを曲げることによって調整される。この制御工程は、図4A図4Cに関連して後で説明される。図4A図4Cに示されている加工ローラ18aおよび18bの形が明確にするために大きく誇張されていることに留意されたく、加工ローラ18a、18bの端部分の先細り、および曲げの輪郭は、完全な線形の輪郭からほんの数ミクロンのずれを表しているため、実際には裸眼では視認できないことは、理解されるべきである。
【0060】
図4Aは、中立位置における加工ローラ18aおよび18bを示している。バックアップローラ20aおよび20bは、シート14の厚さを膜12の所望の厚さへと低減するのに十分な圧力Pを加工ローラ18aおよび18bに加えるが、横方向の力は、加工ローラ18a、18bの支持部材54および56に加えられない。
【0061】
図4Bでは、バックアップローラ20aおよび20bは、シート14の厚さを膜12の所望の厚さへと低減するのに十分な圧力Pを加工ローラ18aおよび18bになおも加える。しかしながら、熱膨張のため、加工ローラ18aおよび18bの中央部分は、シート14と接触する中央部分100の摩擦によって発生させられる熱の蓄積を通じて拡張している。加工ローラ18aおよび18bを変形させたこの熱膨張を相殺するために、内向きに配向された横方向の力Fxが支持部材54および56に加えられる。横方向の力Fxは、加工ローラ18aおよび18bを若干外向きに曲げ、それによって、中央部分100を図4Bに描写されているように平坦にする。加工ローラ18aおよび18bの外側の縁は、中央部分100を真っ直ぐにするために内向きに曲げられる。そのため、結果的にできた薄化された膜12は、平坦であり、均一な厚さを有する。加工ローラ18a、18bの熱膨張は、加工ローラ18a、18bへの薄化用潤滑剤の付与によって、いくらか弱められる。加工ローラ18a、18bを冷却する追加の手段が、加工ローラ18a、18bの熱膨張を弱めるのを助けるために使用できることも考えられる。
【0062】
薄化されているシート14の縁がシート14の中央部分より厚いとき、膜12の幅にわたって均一な厚さを有する膜12を薄化するために、より大きな圧力が、加工ローラ18aおよび18bによってシート14の外側縁に加えられ、そのため中央部分100の外側縁に加えられることになる。そのようにするために、同じ横方向の力Fxが支持部材54および56に加えられ、それによって加工ローラ18aおよび18bの外側縁を内向きに若干曲げ、より大きな圧力を、シート14の中央部分よりも縁に加える。結果として、薄化された膜12は、その幅にわたって均一な厚さを有する。シート14と接触する中央部分100の摩擦を通じて加工ローラ18aおよび18bにおいて熱が蓄積するにつれて、加工ローラ18aおよび18bの中央部分は僅かに膨張する。加工ローラ18aおよび18bの中央部分の直径を僅かに増加させるこの熱膨張を相殺するために、横方向の力Fxは、結果的にできた薄化された膜12がその全体の幅にわたって均一な厚さを有するように、中央部分100を真っ直ぐに保つために比例的に減少させられる。
【0063】
そのとき、薄化させられるシート14の中央部分は、その縁より厚くなる可能性がある。膜12の幅にわたって均一な厚さを有する膜12を薄化するために、より大きな圧力が、加工ローラ18aおよび18bによってシート14の中央部分に加えられる必要があり、そのため中央部分100の中央部分に加えられることになる。図4Cに示されているように、そのようにするために、外向きに配向された横方向の力Fyが支持部材54および56に加えられる。横方向の力Fyは、加工ローラ18aおよび18bの中央部分を内向きに若干曲げ、中央部分100の中央部分を内向きに押し、それによって、より大きな圧力をシート14の中央部分に加え、膜12の全体の幅にわたって均一な厚さを有する膜12を薄化する。
【0064】
ある状況において、シート14と接触する中央部分100の摩擦によって発生させられる熱は、加工ローラ18aおよび18bの直面する表面同士の外側部分において蓄積し、それら外側部分を膨張させ、中央部分100の中央部分に小さい隙間を開ける。この熱膨張を相殺するために、外向きに配向された横方向の力Fyが、加工ローラ18aおよび18bの支持部材54および56に加えられる。横方向の力Fyは、中央部分100の中央部分を若干曲げ、中央部分100を真っ直ぐにする。加工ローラ18a、18bの中央部分100の輪郭は、結果的にできた薄化された膜12が平坦であり、その全体の幅にわたって均一な厚さを有するように、真っ直ぐな線へと戻るように曲げられる。
【0065】
加工ローラ18a、18bの対称的な調整だけが図4Bおよび図4Cに示されているが、支持部材54および56は互いから独立しているため、他の調整が可能である。例えば、加工ローラ18a、18bが、一方の側において他方の側より膨張する場合、左または右の支持部材54、56は、多数の細かく調整するチューニングが可能となるように、反対側の支持部材54、56の力FxまたはFyを超える力FxまたはFyを有してもよい。
【0066】
光学耐熱システム36などの適切な測定装置の正確な測定と組み合わされる中央部分100の形の調整は、全体の長さおよび幅にわたってほぼ一定の厚さを呈する、20ミクロン~100ミクロンの厚さの範囲で高品質の薄化された膜12を、圧延機10に生産させることができる。
【0067】
薄化された膜12の輪郭および厚さの調整は、バックアップローラ20aおよび20bによって加えられる圧力、ならびに、支持部材54および56に加えられる圧力を細かくチューニングする現場における操作者によって実施されるか、または、この作業は、測定読取りと、バックアップローラ20a、20bおよび加工ローラ18a、18bの様々な圧力および力を制御するアクチュエータと、を、これらのパラメータのリアルタイム調整を提供するコンピュータへと繋げることで、電子的に実施される。
【0068】
ここで図5図6Bを見て、加工ローラ18aがより詳細に説明される。本実施形態では、加工ローラ18bは加工ローラ18aと同一であり、そのため加工ローラ18bは本明細書において別個に説明されることはない。加工ローラ18bが加工ローラ18aと一部で異なり得ることが、考えられる。
【0069】
先に言及されているように、加工ローラ18aは中央部分100を有する。中央部分100は円筒形の中央部分100である。中央部分100の外面102は、薄化工程の間にシート14にわたって転がる薄化表面を定める。それによって、中央部分100は、薄化させられるシート14の幅W2(図7)より若干広い幅W1を有する。中央部分100は加工ローラ18aの中心軸104を定める。
【0070】
円錐台部分106が中央部分100の端から延びている。円錐台部分106同士は互いの鏡像となっている。図5では、円錐台部分106の外面110は、先細りとなるように見えない。これは、先細りの角度が非常に小さく、裸眼では見えないためである。この角度は、加工ローラ18aの2つの異なる実施形態を示している図6Aおよび図6Bにおいて誇張されており、後で説明される。各々の円錐台部分106は幅W3を有する。中央部分100の幅W1は、各々の円錐台部分106の幅W3より大きい。中央部分100の幅W1は、両方の円錐台部分106の幅W3の合計より小さい(つまり、W1<W3+W3)。ある実施形態では、幅W1は125mmから210mmの間であり、幅W3は65mmから110mmの間である。
【0071】
図6Aに示されている一実施形態では、円錐台部分106は、中央部分100から離れるように延びるにつれて先細りとなっている。この実施形態は、先細りが誇張された図4A図4Cに示されたものである。この実施形態では、肩部108が、中央部分100と、各々の円錐台部分106(図6Aでは1つの円錐台部分について示されている)と、の間に定められている。ある実施形態では、肩部108は、0.05mmより小さい高さH1を有する。ある実施形態では、高さH1は0.02mmより小さい。肩部108が省略され得ることが考えられる。中心軸104が真っ直ぐであるとき(つまり、加工ローラ18aが図4Aにあるような中立位置にあるとき)、中央部分100の外面102と円錐台部分106の外面110との間の角度Aは0.05度より小さい。ある実施形態では、角度Aは0.03度より小さい。ある実施形態では、角度Aは0.02度より小さい。ある実施形態では、角度Aは0.02度より小さいが、0.01度より大きい。ある実施形態では、中央部分100は、70mmから90mmの間の直径D1を有する。ある実施形態では、各々の円錐台部分106の最小直径D2と最大直径D3との間の差は0.03mmから0.17mmの間である。この実施形態による加工ローラ18aおよび18bの輪郭は、加工ローラ18aおよび18bの端が中央部分100を望まれるように曲げるために移動させられ得るように、円錐台部分106同士の間の自由ゾーン84(図4A)と、円錐台部分106とバックアップローラ20aおよび20bとの間の自由ゾーン85(図4A)と、を提供することで、加工ローラ18aおよび18bの曲げを容易にしている。自由ゾーン84は、過剰な薄化用潤滑剤を薄化工程の間に横方向に排出させることもできる。図6Aに示されている実施形態の加工ローラ18aは、圧延機10において行われ得る調整のおかげで(図4A図4Cに関連して詳述されているように)、多くの異なる輪郭を有するシート14で使用できるが、加工ローラ18aのこの実施形態は、中央部分112がシート14の側方部分114(図7)の高さH3より小さい高さH2(図7)を有して押出しされたシート14を薄化するのに特に良好に適合されている。ここでも、図7では、高さH2およびH3は、差が裸眼では見えないため、違いとなって現れていない。ある実施形態では、高さH2は、高さH3より15ミクロン未満だけ小さい。
【0072】
図6Bに示されている他の実施形態では、各々の円錐台部分106は、その外側端から中央部分100に向けて延びるにつれて先細りとなる(つまり、D2はD3より大きい)。中心軸104が真っ直ぐであるとき(つまり、加工ローラ18aが中立位置にあるとき)、中央部分100の外面102と円錐台部分106の外面110との間の角度Bは0.05度より小さい。ある実施形態では、角度Bは0.03度より小さい。ある実施形態では、角度Bは0.02度より小さい。ある実施形態では、角度Bは0.02度より小さいが、0.01度より大きい。ある実施形態では、中央部分100は、70mmから90mmの間の直径D1を有する。ある実施形態では、各々の円錐台部分106の最大直径D2と最小直径D3との間の差は0.03mmから0.17mmの間である。図6Bに示されている実施形態の加工ローラ18aは、圧延機10において行われ得る調整のおかげで(図4A図4Cに関連して詳述されているように)、多くの異なる輪郭を有するシート14で使用できるが、加工ローラ18aのこの実施形態は、中央部分112がシート14の側方部分114(図7)の高さH3より大きい高さH2(図7)を有して押出しされたシート14を薄化するのに特に良好に適合されている。ある実施形態では、高さH2は、高さH3より15ミクロン未満だけ大きい。
【0073】
図5に戻って、加工ローラ18aは、円錐台部分106の端から延びる支持シャフト116、118を有する。支持シャフト116、118は、加工ローラ18aを支持部材54に(または、加工ローラ18bのための支持部材56に)回転可能に備え付けるための軸受け(図示されていない)に受け入れられる。支持シャフト118は、加工ローラ18bを駆動するためのモータへの接続のために適合されている延長部120を有する。部分100、106と支持シャフト116、118とは一体的に形成されている。
【0074】
先に言及されているように、加工ローラ18aおよび18bに分注された薄化用潤滑剤は、膜12が真っ直ぐな線で加工ローラ18a、18bを出るように、加工ローラ18a、18bへのリチウムの膜12の付着を防止するのを助ける。潤滑剤の使用は、リチウムへの付着のため通常は適切ではない材料から作られた加工ローラ18a、18bで、リチウムおよびリチウム合金を薄化することを可能にする。潤滑剤はこの制限を無効にする。そのため、大規模な生産については、加工ローラ18a、18bは、鋼鉄、ステンレス鋼、さらにはセラミックなど、耐久性のある硬い材料から好ましくは作られる。ある実施形態では、鋼鉄またはステンレス鋼のローラ18a、18bは、追加の硬度のために薄いクロムコーティングを有する。クロムコーティングは、少なくとも加工ローラ18a、18bの中央部分100および円錐台部分106に適用される。ある実施形態では、クロムコーティングは硬いクロムコーティングである。膜12に所望の表面仕上げを提供するために、かつ、加工ローラ18a、18bへの薄化用潤滑剤のいくらかの付着を許容するために、ある実施形態では、中央部分100の外面102および円錐台部分106の外面110は、0.025ミクロンのRaから0.5ミクロンのRaの間の範囲での表面粗さを有する。他の実施形態では、表面粗さは0.05ミクロンのRaから0.30ミクロンのRaの間の範囲にある。
【0075】
ここで図8を見て、薄化用潤滑剤分注ユニット22がより詳細に説明される。薄化用潤滑剤分注ユニット22は、レール152に備え付けられた4つのノズル150を備える。薄化用潤滑剤分注ユニット22は、5つ以上または3つ以下のノズル150を有してもよいことが考えられる。薄化用潤滑剤が、吸入コネクタ154を介してレール152の内部の通路(図示されていない)に供給される。吸入コネクタ154は、薄化用潤滑剤を保持する潤滑剤貯留部(図示されていない)から吸入コネクタ154に潤滑剤を供給するポンプ(図示されていない)に流体接続されている。4つのノズル150はレール152の内部の通路と流体連通している。図1において見て取れるように、薄化用潤滑剤分注ユニット22は、薄化領域の上流に配置されており、加工ローラ18bから離間されている。薄化用潤滑剤分注ユニット22は、加工ローラ18bの中心軸104の上方に配置されており、ノズル150が加工ローラ18bの薄化表面に薄化用潤滑剤を連続的に噴霧するように斜めにされている。ノズル150からの噴霧は、薄化表面より若干広い領域を網羅する。
【0076】
各々のノズル150は、ノズル本体156と、フィルタと、ノズルヘッド158と、ナット160と、を有する。ノズル本体156はレール152へと捩じ込まれる。フィルタは、ノズル本体156の内部に配置される。ノズルヘッド158は、噴霧開口162を定めており、ノズル本体156の端に配置されている。ナット160は、ノズル本体156に配置されており、ノズルヘッド158とフィルタとを所定位置で保つためにノズル本体156に捩じ込まれる。
【0077】
ここで図9図13を見て、薄化用潤滑剤分注ユニット200が説明される。本実施形態では、薄化用潤滑剤分注ユニット200は、静電気散逸アセタール共重合体の単一品から作られている。例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ塩化ビニル、真鍮、およびアルミニウムなど、他の種類の材料が使用されてもよいことが考えられる。他の材料も考えられる。薄化用潤滑剤分注ユニット200が、互いに結合または他に接続された複数の部品から作られ得ることも、考えられる。
【0078】
薄化用潤滑剤分注ユニット200は分注ユニット本体202を有する。分注ユニット本体202の各々の後コーナー部分は、2つの開口206を定めている。留め具(図示されていない)が、分注ユニット本体202を、加工ローラ18aとストレートナ30との間の位置において圧延機10のフレーム16に留め付けるために、開口206に受け入れられる。分注ユニット本体202は、横方向に延びる壁208を定めている。単一の潤滑剤通路210が、図12において最もよく見られるように、分注ユニット本体202において定められている。潤滑剤通路210は、分注ユニット本体202の後壁214において定められた入口(図示されていない)と、横方向に延びる壁208において定められた出口216と、を有する。見て取れるように、出口216は、横方向に延びる壁208において横方向で中央にあり、壁208の底に配置されている。複数の潤滑剤通路210が、これらの通路の出口が横方向に延びる壁208に沿う異なる位置にある状態で、分注ユニット本体202に定められてもよいことが、考えられる。これらの複数の潤滑剤通路210のうちの少なくとも一部が共通の入口を有してもよいことも、考えられる。
【0079】
2つの側壁218が、横方向に延びる壁208から前方に延びている。図10において見て取れるように、側壁218同士は互いに平行である。図12において見て取れるように、側壁218の前端220は、加工ローラ18aと干渉しないように鉛直から斜めにされている。
【0080】
薄化用潤滑剤分注ユニット200は棚部222も有する。棚部222は、横方向に延びる壁208の下端に接続されており、底から前方に延びている。棚部222は、側壁218の下端にも接続されており、それらの間で延びている。棚部222、側壁218、および、横方向に延びる壁208は、薄化用潤滑剤分注ユニット200の前に開放側を有する凹部224を一緒になって定めている。棚部222は、図12において見て取れるように、加工ローラ18aの中心軸104の鉛直方向で下方の位置において、加工ローラ18aの薄化表面に当接する前縁226を有する。前縁226は、薄化用潤滑剤が薄化表面の幅全体にわたって適用されることを確保するのを助けるために、加工ローラ18aの薄化表面の幅W1より大きい幅W4(図10)を有する。
【0081】
図13を参照すると、棚部222は、前縁226から横方向に延びる壁208に向けて上向きおよび後向きに延びる斜め部分228を有する。斜め部分228と前縁226との間のコーナー230は弓状である。ある実施形態では、斜め部分228は、水平から5度から25度の間の角度Cで延びる。ある実施形態では、角度Cは、水平から10度から20度の間である。棚部222は、斜め部分228と横方向に延びる壁208との間で延びる概して水平の部分232も有する。部分232は、側方から見られるとき(つまり、図12および図13で見られるように見られるとき)、水平である。しかしながら、部分232の前方から見たとき(つまり、図11で見られるように見られるとき)、部分232は、その横方向中央の両側において若干下向きに傾斜しており、そのため、その横方向中央は部分232の頂点に対応する。ある実施形態では、部分232の横方向中央の両側における表面同士の間の角度D(図11)は、180度より大きいが185度より小さく、ある実施形態では、182度より小さい。部分232は、部分232の前方から見たとき(つまり、図11で見られるように見られるとき)、平坦であってもよい(つまり、角度Dは180度である)ことも考えられる。図11および図12において見て取れるように、潤滑剤通路210の出口216は、部分232の頂点と横方向において並べられ、出口216の底部は、そこに隣接する棚部222の部分232の上部と鉛直方向において並べられる。部分232が省略できることと、斜め部分228が前縁226から横方向に延びる壁208へと延び得ること、とが、考えられる。
【0082】
横方向に延びる溝234が、棚部222の斜め部分228に定められている。図10において最もよく見られるように、溝234の端は側壁218から離間されている。溝234は棚部222の前縁226から離間されている。図13において見て取れるように、溝234は、棚部222の部分232より前縁226の近くにある。
【0083】
図12を参照すると、潤滑剤通路210の入口はポンプ236に流体接続されており、ポンプ236自体は、潤滑剤貯留部238に流体接続されている。潤滑剤貯留部238は、そこで薄化用潤滑剤を保持している。潤滑剤貯留部238が、薄化用潤滑剤を、先に記載されている薄化用潤滑剤分注ユニット22に供給するためにも使用され得ることが、考えられる。ポンプ236は、薄化用流体を潤滑剤貯留部238から潤滑剤通路210へと汲み上げる。潤滑剤通路210の出口216から、潤滑剤は棚部の部分232に沿って前方向および横方向(角度Dのため)に流れる。次に、潤滑剤は斜め部分228に沿って下へと流れる。潤滑剤のうちの一部は、棚部222の幅にわたって、潤滑剤の均一な分配を確保するのを助ける溝234へと流れる。次に、潤滑剤は、加工ローラ18aの薄化表面との接触を行う前縁226へと流れる。加工ローラ18aの上向きに移動する薄化表面は潤滑剤を取り上げ、潤滑剤は、シート14と接触する薄化表面を効果的にコーティングする。
【0084】
ある実施形態では、本技術のアルカリ金属またはアルカリ金属合金の膜は、本明細書で定められているような圧延機および加工ローラを用いて得られた薄化されたリチウム膜または薄化されたリチウム合金膜である。
【0085】
本技術の膜を準備するために使用され得るリチウム合金には、限定されることはないが、リチウム-シリコン、リチウム-アルミニウム、リチウム-マグネシウム、リチウム-ストロンチウム、リチウム-バリウムなどがある。
【0086】
本技術のリチウムまたはリチウム合金の膜は、ある量の金属元素を含む。リチウムまたはリチウム合金の膜への金属元素の添加は、膜の全体の厚さを低減し、膜の全体の機械的強度を向上させることができる。ある例では、金属元素は、膜の幅、厚さ、および長さにわたって機械的強度を向上させる量で、リチウムまたはリチウム合金の膜に存在する。
【0087】
本技術のリチウムまたはリチウム合金の膜の準備で使用され得る金属要素は、好ましくは導電性である。金属元素の存在がリチウムまたはリチウム合金の膜の導電性を妨げるべきではないことは、理解されるものである。例えば、アルミニウムは、リチウムまたはリチウム合金の膜において使用され得る金属元素である。ある例では、アルミニウムは、約3000ppmから約10000ppmの間、約3000ppmから約9000ppmの間、約3000ppmから約8000ppmの間、約3000ppmから約7000ppmの間、約3000ppmから約6000ppmの間、または、約3000ppmから約5000ppmの間の範囲にある量で膜に存在する。ある例では、アルミニウムは、3000ppm以上である量で膜に存在する。
【0088】
ある例では、本技術のリチウムまたはリチウム合金の膜は、約50から約85の間、約60から約80の間、約60から約75の間、約50から約70の間、約60から約75の間、約65から約75の間、約66から約70の間、または、約66から約69の間の範囲にある、ショア押し込み硬度計(ショアAスケール)によって測定された硬度を有する。ある例では、硬度は少なくとも65である。ある他の例では、硬度は少なくとも約66である。ある例では、硬度は、リチウムまたはリチウム合金の膜全体を通じて均一である。
【0089】
本明細書で定められている技術によって得られるリチウム膜は、約140mmから約200mmの間、約150mmから約200mmの間、約160mmから約180mmの間、約160mmから約175mmの間、約160mmから約170mmの間、または約160mmから約165mmの間の範囲にある幅(薄膜の一方の縁から他方の縁への距離に相当する)を有し、約20ミクロンから約100ミクロンの間、約20ミクロンから約90ミクロンの間、約20ミクロンから約75ミクロンの間、約20ミクロンから約50ミクロンの間、または約20ミクロンから約30ミクロンの間の範囲にある厚さを有する。リチウムまたはリチウム合金の膜の厚さは、膜の幅全体にわたって均一である。膜の幅全体にわたって均一である厚さは、約±2ミクロンの厚さの変化を包含する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書で定められている技術によって得られたリチウムまたはリチウム合金の膜は、約1x10-4から約7x10-4の間である幅に対する厚さの比(t/w)を有する。ある例では、このt/wは、膜の長さ全体にわたって維持される。
【0091】
具体的には、本技術は、引き伸ばされた膜の長さにわたっても、リチウムまたはリチウム合金の膜の幅、厚さ、および硬度を維持することができる。例えば、本技術のリチウムまたはリチウム合金の膜は、少なくとも約15000メートルにわたって、少なくとも約10000メートルにわたって、少なくとも約9000メートルにわたって、少なくとも8000メートルにわたって、少なくとも7000メートルにわたって、少なくとも6000メートルにわたって、少なくとも5000メートルにわたって、少なくとも4000メートルにわたって、少なくとも3000メートルにわたって、少なくとも2000メートルにわたって、または、少なくとも1000メートルにわたって、その幅、厚さ、および硬度を維持する。
【0092】
(実施例)
以下の例は、本技術の様々な実施形態の実施を示すように提供されている。これらの例は、本技術の範囲全体を限定または定義するように意図されていない。本技術が、本明細書に記載および図示されている具体的な実施形態に限定されず、添付の実施形態に定められているような本開示の範囲内にあるすべての変更および変形を含むことは理解されるべきである。
【0093】
(実施例1)
薄化されたリチウム合金膜の生産(3000ppm)
薄化されたリチウム膜が、本明細書に定められているような加工ローラを備える圧延機を用いて準備された。得られたリチウム膜は、170mmの幅、60ミクロンの厚さ、および3000ppmのアルミニウム含有量を有していた。膜の硬度は、ショア押し込み硬度計(PTCモデル320-Aスケール)を用いて評価された。結果は、表1に提示されている。
【0094】
【表1】
【0095】
(実施例2)
薄化されたリチウム合金膜の生産(5000ppm)
薄化されたリチウム膜が、本明細書に定められているような加工ローラを備える圧延機を用いて準備された。得られたリチウム膜は、170mmの幅、60ミクロンの厚さ、および5000ppmのアルミニウム含有量を有していた。膜の硬度は、ショア押し込み硬度計(PTCモデル320-Aスケール)を用いて評価された。結果は、表2に提示されている。
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例3)
薄化されたリチウム合金膜の引張強度を評価する(3000ppm)
薄化されたリチウム-アルミニウム膜が、本明細書に定められているような加工ローラを備える圧延機を用いて準備された。リチウム膜は、170mmの幅、60ミクロンの厚さ、および3000ppmのアルミニウム含有量を有していた。リチウム膜の引張強度が、Testometric M500の25kNを用いて評価された。結果は、表3に提示されている。
【0098】
【表3】
【0099】
(実施例4)
薄化されたリチウム合金膜の引張強度を評価する(5000ppm)
薄化されたリチウム-アルミニウム膜が、本明細書に定められているような加工ローラを備える圧延機を用いて準備された。リチウム膜は、170mmの幅、60ミクロンの厚さ、および5000ppmのアルミニウム含有量を有していた。リチウム膜の引張強度が、Testometric M500の25kNを用いて評価された。結果は、表4に提示されている。
【0100】
【表4】
【0101】
本技術の前述の実施形態への変更および改良は、当業者には明らかとなり得る。先の記載は、限定ではなく例示となるように意図されている。したがって、本技術の範囲は、添付の請求項の範囲のみによって限定されるように意図されている。
【符号の説明】
【0102】
10 圧延機、薄化装置
12 リチウムまたはリチウム合金の薄い膜
14 リチウムまたはリチウム合金のシート
16 主フレーム
18a、18b 加工ローラ
20a、20b バックアップローラ
22 薄化用潤滑剤分注ユニット
24 ロール
26 送りローラ
28 自由ローラ
34 自由ローラ
41 エンコーダローラ
43、45 引っ張りローラ
47 エンコーダローラ
50、52 支持フレーム
54、56 支持部材
58、59、62、63 端部分
60、61、64、65、66 液圧式線形アクチュエータ
84、85 自由ゾーン
90 絶縁膜
92 ロール
94 引っ張りローラ
100 中央部分
102 中央部分100の外面
104 中心軸
106 円錐台部分
108 肩部
110 円錐台部分106の外面
112 シート14の中央部分
114 シート14の側方部分
116、118 支持シャフト
120 延長部
150 ノズル
152 レール
154 吸入コネクタ
156 ノズル本体
158 ノズルヘッド
160 ナット
162 噴霧開口
200 薄化用潤滑剤分注ユニット
202 分注ユニット本体
206 開口
208 横方向に延びる壁
210 潤滑剤通路
214 後壁
216 出口
218 側壁
220 前端
222 棚部
224 凹部
226 前縁
228 斜め部分
230 コーナー
232 概して水平の部分
234 溝
236 ポンプ
238 潤滑剤貯留部
D 角度
D1 中央部分100の直径
D2、D3 円錐台部分106の最小直径または最大直径
Fx 横方向の力
Fy 横方向の力
H1 肩部108の高さ
H2 中央部分112の高さ
H3 側方部分114の高さ
W1 中央部分100の幅
W2 シート14の幅
W3 円錐台部分106の幅
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13