(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】コンクリート混合物内で二酸化炭素を全体的に拡散させる方法
(51)【国際特許分類】
C04B 20/02 20060101AFI20241129BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241129BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20241129BHJP
B28C 9/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C04B20/02 Z ZAB
B01D53/14 100
C04B28/02
B28C9/02
(21)【出願番号】P 2022531030
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 GR2019000083
(87)【国際公開番号】W WO2021105726
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハマド、アーマド ディー
(72)【発明者】
【氏名】アル-フナイディ、アリ シャキル
(72)【発明者】
【氏名】ファデル、バンダル エー
(72)【発明者】
【氏名】アムル、イッサム ティー
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510274(JP,A)
【文献】特開平05-254910(JP,A)
【文献】特開2014-051422(JP,A)
【文献】特開2005-097059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28C 1/00- 9/04
B01D 53/14-53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート混合物内でCO
2を拡散させる方法であって、前記方法が、
コンクリート調製システムの前処理チャンバ内で骨材材料をCO
2ガスと混合して、CO
2吸着骨材材料を形成する工程であって、前記骨材材料が、火山灰、軽石、軽石粉、イグニンブライト、膨張頁岩、ゼオライト、メタカオリン、植物灰、またはそれらの組み合わせから選択されるポゾラン材料を含み、前記前処理チャンバ内の前記ポゾラン材
料が、
CO
2
流量300ml/分および25℃で、4.85グラムのポゾラン材料当たり6.0×10
-4モル/秒以上のピークCO
2吸着速度を有し、かつ前記ポゾラン材料が、30℃~60℃の温度で吸着されたCO
2を放出する、工程と、
前記CO
2吸着骨材材料を前記前処理チャンバから前記コンクリート調製システムのセメント混合チャンバに移送する工程と、
30℃~60℃の温度で前記CO
2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合して前記コンクリート混合物を形成する工程であって、前記ポゾラン材料を含むCO
2吸着骨材材料のセメントおよび水との混合が、前記ポゾラン材料を含むCO
2吸着骨材材料からCO
2を放出し、かつCO
2を前記コンクリート混合物に拡散して炭酸化コンクリート混合物を形成する、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記ポゾラン材料が、0.4ミリモル/グラム以上のCO
2吸着能力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンクリート調製システムが、CO
2投入パイプによって前記前処理チャンバに結合されたCO
2源をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンクリート調製システムが、前記CO
2投入パイプに流体結合され、前記前処理チャンバに入るCO
2ガスの流量を測定するように構成された上流流量計をさらに備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記前処理チャンバ内で前記骨材材料を前記CO
2ガスと混合する工程が、
前記骨材材料を前記前処理チャンバに送ることと、
前記CO
2ガスを前記CO
2源から前記前処理チャンバに送ることと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記CO
2ガスが、前記CO
2源から前記前処理チャンバに、300ml/分~1400ml/分の流量で送られる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記前処理チャンバ内で前記骨材材料を前記CO
2ガスと混合する工程が、前記前処理チャンバ内で前記骨材材料を攪拌することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コンクリート調製システムが、セメント投入パイプによって前記セメント混合チャンバに結合されたセメント源と、水投入パイプによって前記セメント混合チャンバに結合された水源と、をさらに備え、
前記CO
2吸着骨材材料を前記セメント混合チャンバ内で前記セメントおよび前記水と混合する工程が、
前記セメント源から前記セメント混合チャンバに前記セメントを送ることと、
前記水源から前記セメント混合チャンバに前記水を送ることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記CO
2吸着骨材材料が、前記前処理チャンバから、チャンバ接続パイプを介して前記セメント混合チャンバに移送される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コンクリート調製システムが、前記チャンバ接続パイプに結合された下流流量計をさらに備え、
前記下流流量計が、前記セメント混合チャンバに入るCO
2吸着骨材材料の流量を測定するように構成されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
コンクリート混合物内でCO
2を拡散させる方法であって、前記方法が、
コンクリート調製システムの前処理チャンバ内で、骨材材料をCO
2ガスと混合して、CO
2吸着骨材材料を形成する工程であって、前記骨材材料が、火山灰、軽石、軽石粉、イグニンブライト、膨張頁岩、ゼオライト、メタカオリン、植物灰、またはそれらの組み合わせから選択されるポゾラン材料を含み、前記前処理チャンバ内の前記ポゾラン材
料が、
CO
2
流量300ml/分および25℃で、4.85グラムのポゾラン材料当たり6.0×10
-4モル/秒以上のピークCO
2吸着速度を有し、かつ前記ポゾラン材料が、30℃~60℃の温度で吸着されたCO
2を放出する、工程と、
前記CO
2吸着骨材材料を前記前処理チャンバからチャンバ接続パイプを介して前記コンクリート調製システムのセメント混合チャンバに移送する工程と、
前記CO
2吸着骨材材料をセメントおよび水と30℃~60℃の温度で混合して前記コンクリート混合物を形成する工程であって、前記CO
2吸着骨材材料のセメントおよび水との混合が、前記CO
2吸着骨材材料からCO
2を放出し、かつCO
2を前記コンクリート混合物に拡散して炭酸化コンクリート混合物が形成される、工程と、
を含む方法。
【請求項12】
前記ポゾラン材料が、0.4ミリモル/グラム以上のCO
2吸着能力を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コンクリート調製システムが、CO
2投入パイプによって前記前処理チャンバに結合されたCO
2源をさらに備え、前記前処理チャンバ内で前記骨材材料を前記CO
2ガスと混合する工程が、
前記骨材材料を前記前処理チャンバに送ることと、
前記CO
2ガスを前記CO
2源から前記前処理チャンバに送ることと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記コンクリート調製システムが、セメント投入パイプによって前記セメント混合チャンバに結合されたセメント源と、水投入パイプによって前記セメント混合チャンバに結合された水源と、をさらに備え、
前記CO
2吸着骨材材料を前記セメント混合チャンバ内で前記セメントおよび前記水と混合する工程が、
前記セメント源から前記セメント混合チャンバに前記セメントを送ることと、
前記水源から前記セメント混合チャンバに前記水を送ることと、を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般に、コンクリート混合物内で二酸化炭素(CO2)を拡散させるための方法に関する。より具体的には、本開示は、CO2吸着骨材材料を使用してコンクリート混合物内でCO2を拡散させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート硬化は、プレキャスト構造またはスラリーコンクリートからのレンガなどの硬化コンクリート製品を製造する際のプロセスステップの1つである。コンクリート混合物の硬化に使用される典型的な硬化剤は、蒸気または水であるが、代替の硬化剤としてCO2ガスがますます使用されている。硬化剤としてCO2ガスを使用すると、機械的強度が向上し、恒久的な隔離のためのCO2吸収量が増加し、製造時間が短縮された硬化コンクリート製品の製造に役立つ。これらの利点は、コンクリート混合物内のCO2の浸透レベルに比例するが、現在の技術では、CO2とコンクリート混合物との間の気固接触面積が限られているため、CO2の浸透が制限される。
【0003】
したがって、コンクリート混合物全体に均一に分布する、CO2浸透が増加したコンクリート混合物を炭酸化するシステムおよび方法が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態によれば、コンクリート混合物内でCO2を拡散させる方法は、コンクリート調製システムの前処理チャンバ内でリサイクルされていない骨材材料をCO2ガスと混合して、CO2吸着骨材材料を形成することと、CO2吸着骨材材料を前処理チャンバからコンクリート調製システムのセメント混合チャンバに移送することと、CO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合して、コンクリート混合物を形成することと、を含み、ここで、CO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合すると、CO2吸着骨材材料からCO2を放出し、CO2をコンクリート混合物に拡散させて、炭酸コンクリート混合物を形成する。
【0005】
本開示の別の実施形態によれば、コンクリート混合物内でCO2を拡散させる方法は、コンクリート調製システムの前処理チャンバ内で、ポゾラン材料であるリサイクルされていない骨材材料をCO2ガスと混合して、CO2吸着骨材材料を形成することと、前処理チャンバからチャンバ接続パイプを介してコンクリート調製システムのセメント混合チャンバにCO2吸着骨材材料を移送することと、CO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合して、コンクリート混合物を形成することと、を含み、ここで、CO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合すると、CO2吸着骨材材料からCO2が放出され、CO2がコンクリート混合物に拡散して、炭酸コンクリート混合物の体積全体で10%以下で変動する炭素の分布を有する炭酸コンクリート混合物を形成する。
【0006】
本明細書に記載のプロセスおよびシステムのさらなる特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、部分的には、説明から当業者には容易に明らかになるか、または以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0007】
前述の発明の概要および以下の発明を実施するための形態の両方が、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図することを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示し、説明と併せて、特許請求される主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号で示されている以下の図面と併せて読むと最もよく理解することができる。
【0009】
【
図1】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、前処理チャンバおよびセメント混合チャンバを有するコンクリート調製システムを概略的に示す。
【
図2A】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、リサイクルされていない骨材材料を含むコンクリート混合物を概略的に示す。
【
図2B】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、コンクリート混合物へのCO
2ガスの表面導入後の、
図2Aのコンクリート混合物の炭酸化硬化を概略的に示す。
【
図2C】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、CO
2ガスと予混合されたリサイクルされていない骨材材料を含む別のコンクリート混合物を概略的に示す。
【
図2D】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、
図2Cのコンクリート混合物の炭酸化硬化を概略的に示す。
【
図3】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、ポゾランおよび2つの比較CO
2吸着材料を含むリサイクルされていない骨材材料の吸着能力をグラフで示す。
【
図4】本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態による、ポゾランおよび2つの比較CO
2吸着材料を含むリサイクルされていない骨材材料の吸着速度をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、CO2吸着骨材材料を使用してコンクリート混合物内でCO2を拡散させてコンクリート混合物の炭酸化を促進する方法について詳細に言及する。この方法は、前処理チャンバおよびセメント混合チャンバを含むコンクリート調製システムを使用する。この方法は、前処理チャンバ内でCO2ガスと、ポゾラン材料などのリサイクルされていない骨材材料を混合することを含み、ここで、CO2ガスは、リサイクルされていない骨材材料に吸着される。次に、CO2吸着骨材材料を前処理チャンバからセメント混合チャンバに移送し、セメントおよび水と混合してコンクリート混合物を形成する。混合ステップの間、CO2吸着骨材材料からCO2が放出され、コンクリート混合物を均一に炭酸化する。次に、コンクリート混合物およびコンクリート調製システム内でCO2を拡散させる方法の実施形態を説明し、可能な場合はいつでも、同じまたは類似の部分を指すために同じ参照番号を図面全体で使用する。
【0011】
ここで
図1を参照すると、前処理チャンバ110およびセメント混合チャンバ140を含むコンクリート調製システム100が概略的に示されている。前処理チャンバ110は、リサイクルされていない骨材材料をCO
2ガスと混合して、CO
2吸着骨材材料を形成するためのチャンバを提供する。セメント混合チャンバ140は、前処理チャンバ110で形成されたCO
2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合して、コンクリート混合物を形成し、特に炭酸コンクリート混合物を形成するためのチャンバを提供する。前処理チャンバ110は、前処理チャンバ110内に形成されたCO
2吸着骨材材料をセメント混合チャンバ140に供給できるように、チャンバ接続パイプ130によりセメント混合チャンバ140に結合されている。チャンバ接続パイプ130は、前処理チャンバ110の混合物出口116およびセメント混合チャンバ140の混合物入口142に結合されている。セメント混合チャンバ140は、セメント混合チャンバ140から炭酸コンクリート混合物を出力するためのコンクリート出力パイプ170に接続され得るコンクリート出口148をさらに備える。
【0012】
前処理チャンバ110は、CO2ガスを受け入れるためのCO2入口112と、リサイクルされていない骨材材料を受け入れるための骨材入口114とを備える。コンクリート調製システム100は、CO2源120と、前処理チャンバ110のCO2源120とCO2入口112との間に延びるCO2投入パイプ122とをさらに備え得る。いくつかの実施形態では、CO2源120は、煙道ガス源またはCO2容器を含み得る。動作中、CO2源120は、CO2ガスを前処理チャンバ110に供給することができる。さらに、上流流量計121は、CO2投入パイプ122に流体的に結合され得る。上流流量計121は、前処理チャンバ110に入るCO2ガスの流量を測定するように構成される。ポンプおよびバルブなどの追加の流れ制御構成要素もまた、CO2投入パイプ122に流体結合されて、CO2投入パイプ122を通って前処理チャンバ110に入るCO2ガスの流量を増加または減少させることができる。CO2源120自体もまた、流れ制御を提供し得る。
【0013】
コンクリート調製システム100は、骨材供給源124と、骨材供給源124と前処理チャンバ110の骨材入口114との間に延びる骨材投入パイプ126とをさらに備え得る。動作中、骨材供給源124は、リサイクルされていない骨材材料を前処理チャンバ110に供給することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、リサイクルされていない骨材材料は、骨材入口114を使用して前処理チャンバ110に直接供給され、この実施形態は、骨材投入パイプ126および骨材供給源124を含まない場合があることを理解されたい。
【0014】
動作中、リサイクルされていない骨材材料およびCO2ガスが前処理チャンバ110内で混合されてCO2吸着骨材材料を形成すると、CO2吸着骨材材料は、前処理チャンバ110からチャンバ接続パイプ130を介してセメント混合チャンバ140に移送される。さらに、下流流量計131は、チャンバ接続パイプ130に結合され得る。下流流量計131は、チャンバ接続パイプ130を通って移動し、セメント混合チャンバ140に入るCO2吸着骨材材料の流量を測定するように構成される。ポンプおよびバルブなどの追加の流れ制御構成要素もまた、セメント混合チャンバ140に入るCO2吸着骨材材料の流量を増加または減少させるために、チャンバ接続パイプ130に結合され得る。
【0015】
図1に示されるように、コンクリート調製システム100は、セメント源150および水源160をさらに備え、それぞれがセメント混合チャンバ140に結合されている。セメント源150は、セメント投入パイプ152によってセメント混合チャンバ140に結合され、水源160は、水投入パイプ162によってセメント混合チャンバ140に結合される。特に、セメント投入パイプ152は、セメント混合チャンバ140のセメント入口144に結合され、水投入パイプ162は、セメント混合チャンバ140の水入口146に結合される。動作中、セメント源150は、セメント混合チャンバ140にセメントを供給し得、水源160は、セメント混合チャンバ140に水を供給し得る。さらに、CO
2吸着骨材材料は、混合物入口142を通ってセメント混合チャンバ140に入ることができる。
【0016】
さらに
図1を参照すると、コンクリート調製システム100を使用してコンクリート混合物内にCO
2を拡散させる方法は、最初に、前処理チャンバ110においてリサイクルされていない骨材材料をCO
2ガスと混合して、CO
2吸着骨材材料を形成することを含む。特に、前処理チャンバ110内でリサイクルされていない骨材材料をCO
2ガスと混合することは、リサイクルされていない骨材材料を前処理チャンバ110に送ることと、CO
2ガスをCO
2源120から前処理チャンバ110に送ることと、を含む。リサイクルされていない骨材材料は、CO
2ガスが制御された量のリサイクルされていない骨材材料全体に均一に分配されて、CO
2吸着骨材材料に吸着されるCO
2の量を制御し、CO
2吸着骨材材料内のCO
2分布の均一性を高めることができるように、バッチで前処理チャンバ110に送られ得る。
【0017】
CO2ガスは、CO2源120から前処理チャンバ110に、300ml/分~1400ml/分、例えば、400ml/分~1200ml/分、500ml/分~1000ml/分など、例えば、350ml/分、400ml/分、450ml/分、500ml/分、550ml/分、600ml/分、650ml/分、700ml/分、750ml/分、800ml/分、850ml/分、900ml/分、950ml/分、1000ml/分、1050ml/分、1100ml/分、1150ml/分、1200ml/分、1250ml/分、1300ml/分、1350ml/分などの流量で送られる。前処理チャンバ110内でリサイクルされていない骨材材料をCO2ガスと混合することは、例えば、前処理チャンバ110を回転させ、前処理チャンバ110を振とうし、前処理チャンバ110に配置された混合装置を使用してリサイクルされていない骨材材料を攪拌すること、またはこれらの攪拌技術のうちの2つ以上の組み合わせによって、前処理チャンバ110内でリサイクルされていない骨材材料を攪拌することをさらに含み得る。
【0018】
次に、この方法は、CO2吸着骨材材料を前処理チャンバ110からセメント混合チャンバ140に移送することと、例えば、セメント源150からセメントをセメント混合チャンバ140に送ること、および水源160から水をセメント混合チャンバ145に送ることによって、CO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合することと、を含む。CO2吸着骨材材料を水およびセメントと混合すると、コンクリート混合物が形成される。これはコンクリートペーストの場合があり、熱を発生する。いくつかの実施形態では、セメント混合チャンバ140内でCO2吸着骨材材料を水およびセメントと混合することは、例えば、セメント混合チャンバ140を回転させること、セメント混合チャンバ140を振とうすること、セメント混合チャンバ140に配置された混合装置を使用してCO2吸着骨材材料、水、およびセメントを攪拌すること、またはこれらの攪拌技術のうちの2つ以上の組み合わせによって、CO2吸着骨材材料、水、およびセメントをセメント混合チャンバ140内で攪拌することをさらに含み得る。
【0019】
セメント混合チャンバ140内で混合するときに発生する熱および攪拌は、CO2吸着骨材材料からCO2を放出し、これがコンクリート混合物と混合して炭酸化し、炭酸コンクリート混合物を形成する。理論によって制限されることを意図するものではないが、混合ステップ中に、コンクリート混合物は、40℃~60℃などの、30℃~60℃の温度に達する。コンクリート混合物は、CO2をCO2吸着骨材材料から放出することによって炭酸化されるので、CO2は、炭酸コンクリート混合物中を均一に拡散する。例えば、いくつかの実施形態では、炭酸コンクリート混合物は、炭酸コンクリート混合物の体積全体にわたって25%以下、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下などで変動する炭素の分布を含む。
【0020】
ここで
図2Aおよび2Bを参照すると、以前の炭酸化技術は、コンクリート混合物内のCO
2の全体的な浸透および分布の欠如に悩まされた。例えば、
図2Aは、CO
2と予混合されておらず、したがってCO
2吸着骨材材料ではない、リサイクルされていない骨材材料104を概略的に示している。代わりに、
図2Bに示されるように、CO
2ガス106は、CO
2が、層の深さDLを有するCO
2浸透ゾーン105を形成するためのコンクリート混合物の一部にのみ浸透するように(この非CO
2吸着骨材材料、セメント、および水から形成された)コンクリート混合物の表面に送られる。
【0021】
ここで
図2Cおよび2Dを参照すると、本明細書に記載の技術は、コンクリート混合物全体にわたるCO
2拡散の均一性を高める。例えば、
図2Cは、CO
2吸着骨材材料を形成するための前処理混合プロセス中のリサイクルされていない骨材材料104’およびCO
2ガス106を示し、
図2Dは、コンクリート混合物を形成するための水およびセメントとのCO
2吸着骨材材料の混合を示す。
図2Dに示す混合ステップでは、CO
2吸着骨材材料からCO
2を放出し、コンクリート混合物を炭酸化する。炭酸コンクリート混合物は、コンクリート混合物全体に分散された複数のCO
2浸透ゾーン105’によって概略的に示されている。さらに、炭酸コンクリート混合物の全体がCO
2浸透ゾーン105’に含まれ得、CO
2が炭酸コンクリート混合物全体に均一に分布され得ることを理解されたい。理論に限定されることを意図するものではないが、炭酸コンクリート混合物全体にCO
2を均一に分配することにより、炭酸コンクリート混合物は、硬化剤として蒸気または水で形成されたコンクリート製品と比較した場合、および炭酸コンクリート混合物全体に不均一に分布しているCO
2硬化剤で形成されたコンクリート製品と比較した場合、機械的強度が向上し、恒久的な隔離のためのCO
2吸収量が増加し、製造時間が短縮された硬化コンクリート製品を製造できる。
【0022】
CO2の吸着および放出を促進し、したがってコンクリート混合物中の炭素の均一な拡散を促進するために、リサイクルされていない骨材材料は、CO
2
を吸着し、セメントの混合および硬化中に発生する発熱反応によって発生した熱に起因して吸着したCO2をコンクリート混合物に放出することができる骨材材料を含む。いくつかの実施形態では、リサイクルされていない骨材材料は、CO2を吸着および放出することができる骨材材料であるポゾラン材料を含む。例えば、ポゾラン材料は、30℃の温度で吸着されたCO2を放出し、したがって、CO2吸着骨材材料がCO2吸着ポゾラン材料を含む場合、CO2吸着骨材材料は、セメント混合チャンバ140においてCO2吸着骨材材料をセメントおよび水と混合する間に到達する温度(すなわち、30℃~60℃の温度)でCO2を放出する。リサイクルされていない骨材材料のポゾラン材料は、天然ポゾラン材料、人工ポゾラン材料、またはそれらの組み合わせであり得る。天然ポゾラン材料の例には、火山灰、軽石、軽石粉(軽石質軽石など)、軽石、イグニンブライト、膨張頁岩、ゼオライト、メタカオリン、ならびに籾殻灰およびナツメヤシの木灰を含むシリカを含有する植物灰からの天然ポゾランが含まれる。人工ポゾラン材料の例には、フライアッシュ、スラグ、ガラス化カルシウムアルミノケイ酸塩(VCAS)、およびシリカフュームが含まれる。
【0023】
ここで
図3を参照すると、グラフ20は、ポゾラン材料および2つの比較CO
2吸着材料を含むリサイクルされていない骨材材料の吸着能力を示す。
図3は、CO
2ガスが、流量300ml/分、温度25℃で、4.85グラムのCO
2吸着材料(すなわち、ライン22はポゾラン材料であり、ライン24および26は2つの比較CO
2吸着材料である)を収容する、前処理チャンバ110に送られるプロセス中の時間の関数として前処理チャンバ110中に存在するCO
2のパーセンテージを示す。特に、ライン22は、CO
2吸着材料がポゾラン材料(本明細書に記載の方法で使用されたリサイクルされていない骨材材料のポゾラン材料など)である場合の時間の関数としての前処理チャンバ110中に存在するCO
2のパーセンテージを示し、ライン24は、CO
2吸着材料がK-42活性炭を含む比較CO
2吸着材料である場合の時間の関数としての前処理チャンバ110中に存在するCO
2のパーセンテージを示し、ライン26は、CO
2吸着材料が、BAZ-1活性炭を含む比較CO
2吸着材料である場合の時間の関数としての前処理チャンバ110中に存在するCO
2のパーセンテージを示す。
【0024】
グラフ20は、CO2吸着材料が前処理チャンバ110に送られたCO2ガスを吸着するにつれて、前処理チャンバ110中に存在するCO2のパーセンテージが最初に減少することを示している。CO2吸着材料がそのCO2吸着能力に達すると、追加のCO2ガスが前処理チャンバ110に送られるにつれて、前処理チャンバ110中に存在するCO2のパーセンテージが増加し始める。さらに、ポゾラン材料は、2つの比較CO2吸着材料ほど前処理チャンバ110中に存在するCO2のパーセンテージを減少させないが、これらの2つの比較CO2吸着材料は、骨材材料ではない。実際、ライン22~26は、ポゾラン材料の吸着能力がK-42およびBAZ-1と比べて遜色がないことを示している。K-42活性炭およびBAZ-1活性炭はすべて炭素で構成されている。ポゾラン材料は、次の成分の一部またはすべてで構成することができる:酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、五酸化リン、三酸化硫黄、塩素、酸化カリウム、酸化カルシウム、二酸化チタン、酸化マンガン(II)、および酸化鉄(III)。本発明者らは、ポゾラン材料の20~95%の範囲であり得るポゾラン材料のシリカ成分が、K-42およびBAZ-1と比較した場合に、ポゾラン材料の増加した吸収能力を提供し得ることを認識した。
【0025】
ここで
図4を参照すると、グラフ30は、
図3で測定されたポゾラン材料および2つの比較CO
2吸着材料を含むリサイクルされていない骨材材料の吸着速度を示している。
図4は、CO
2ガスが、流量300ml/分および温度25℃で、4.85グラムのCO
2吸着材料(すなわち、ライン32はポゾラン材料であり、ライン34および36は2つの比較CO
2吸着材料である)を収容する、前処理チャンバ110に送られるプロセス中の時間の関数としての1秒当たりのCO
2のモル数でのCO
2の吸着速度を示す。特に、ライン32は、CO
2吸着材料がポゾラン材料(本明細書に記載の方法で使用されるリサイクルされていない骨材材料のポゾラン材料など)である場合の時間の関数として、CO
2の吸着速度を示し、ライン34は、CO
2吸着材料がK-42活性炭を含む比較CO
2吸着材料である場合のCO
2の吸着速度を示し、ライン26は、CO
2吸着材料がBAZ-1活性炭を含む比較CO
2吸着材料である場合の時間の関数としてのCO
2の吸着速度を示す。
【0026】
図4に示すように、各CO
2吸着材料の吸着速度は、ピークCO
2吸着速度まで増加し、その後、CO
2吸着能力に達するまで減少する。ライン32は、ポゾラン材料が6.0x10
-4モル/秒以上のピークCO
2吸着速度を含むことを示し、ライン34は、K-42活性炭を含む比較CO
2吸着材料が1.0x10
-3モル/秒以上のピークCO
2吸着速度を含むことを示し、ライン36は、BAZ-1活性炭を含む比較CO
2吸着材料が、1.3x10
-3モル/秒以上のピークCO
2吸着速度を含むことを示す。さらに、ライン32で示されるポゾラン材料は、0.4ミリモル/グラム以上、例えば、0.45ミリモル/グラム以上のCO
2吸着能力を有し、ライン34で示されるK-42活性炭を含む比較CO
2吸着材料は、0.9ミリモル/グラム以上、例えば、0.97ミリモル/グラム以上のCO
2吸着能力を有し、ライン36で示されるBAZ-1活性炭を含む比較CO
2吸着材料は、1.2ミリモル/グラム以上、例えば、1.23ミリモル/グラム以上のCO
2吸着能力を有する。ポゾラン材料は、2つの比較CO
2吸着材料ほど高いピークCO
2吸着速度またはCO
2吸着能力を有さないが、これら2つの比較CO
2吸着材料は骨材材料ではない。実際、ライン32~36は、ポゾラン材料の吸着能力がK-42およびBAZ-1と比べて遜色がないことを示している。前述のように、K-42活性炭およびBAZ-1活性炭は、完全に、つまり100%の炭素で構成されている。ポゾラン材料は、次の成分の一部またはすべてで構成することができる:酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、五酸化リン、三酸化硫黄、塩素、酸化カリウム、酸化カルシウム、二酸化チタン、酸化マンガン(II)、および酸化鉄(III)。この場合も、本発明者らは、ポゾラン材料の20~95%の範囲であり得るポゾラン材料のシリカ成分が、K-42およびBAZ-1と比較した場合、ポゾラン材料の増加した吸収能力を提供し得ることを認識した。
【0027】
前述の説明を考慮して、本明細書に記載のCO2吸着骨材材料を使用してコンクリート混合物内にCO2を拡散させる方法は、このコンクリート混合物から形成される硬化コンクリート製品の機械的強度を向上させ、以前の方法と比較して生産時間を短縮しながら、硬化コンクリート材料内の増加した量のCO2を隔離する。この方法は、前処理チャンバ内でCO2ガスと、ポゾラン材料などのリサイクルされていない骨材材料を混合することを含み、ここで、CO2ガスは、リサイクルされていない骨材材料に吸着される。次に、CO2吸着骨材材料を前処理チャンバからセメント混合チャンバに移送し、セメントおよび水と混合してコンクリート混合物を形成する。混合ステップ中、CO2は、CO2吸着骨材材料によって放出されて、コンクリート混合物を均一に炭酸化し、得られる硬化コンクリート製品の上記の改善された特性を引き起こす。
【0028】
本発明の技術を説明し、定義する目的のために、本明細書ではパラメータまたは他の変数の「機能」である変数への言及は、その変数が排他的に列挙されたパラメータまたは変数の関数であることを示すものではない。むしろ、列挙されたパラメータの「関数」である変数への本明細書での言及は、変数が単一のパラメータまたは複数のパラメータの関数であり得るように限定のないことを意図している。
【0029】
「少なくとも1つ」の構成要素、要素などのこの開示における記述は、「a」または「an」という冠詞の代替使用が単数の構成要素、要素などに限定されるべきであるという推測を作成するために使用されるべきではないことにも留意されたい。
【0030】
特定の性質を具現化するように、または特定の方式で機能するように、特別に「構成」されている本開示の構成要素の本明細書での記述が、意図した使用の記述とは対照的に構造的記述であることに留意されたい。より具体的には、本明細書における構成要素が「構成されている」という様式の参照は、その構成要素の現存する物理的状態を示し、したがって、構成要素の構造的特徴の明確な列挙として解釈されるべきである。
【0031】
本発明の技術を説明し、定義する目的のために、「実質的に」および「約」という用語が、本明細書では、任意の数量的な比較、値、測定値、または他の表現に付随し得る固有の不確かさ程度を表すために利用されることに留意されたい。「実質的に」および「約」という用語は、本明細書ではまた、問題になっている主題の基本的機能の変更をもたらすことなく、数量的表現が表示基準とは異なり得る程度を表すために利用される。
【0032】
本開示の発明の対象を詳細に、またその具体的な実施形態に触れて、説明してきたが、本発明の説明が伴う図面のそれぞれに特定の要素が示されている場合でも、これらの細目が本明細書に記載の様々な実施形態の不可欠な構成要素である要素を指すことを意味していると、本明細書に開示の様々な細目が見なされるべきではないことが分かる。また、添付の特許請求の範囲で定義された実施形態を含むがそれに限定されるわけではない、本開示の範囲を逸脱しない限り、修正形態および変形形態があり得ることが明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様が本明細書では好ましいまたは特別な利点と見なされているが、本開示がこれらの態様に必ずしも限定されるわけではない可能性が受け入れられている。
【0033】
以下の請求項のうちの1つ以上では、「この場合(wherein)」という用語を移行句として使用していることが分かる。本発明の技術を定義する目的のために、この用語は、構造の一連の特性の列挙を導入するために使用される非限定型の移行句として、特許請求の範囲に導入され、より一般的に使用される非限定型の前提事項用語「備える(comprising)」と同様に解釈されるべきであることに留意されたい。