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特許7595678伝導性シールド及びEMIシールド用途のための炭素ナノ構造体を含有するシリコーンベースの組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】伝導性シールド及びEMIシールド用途のための炭素ナノ構造体を含有するシリコーンベースの組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20241129BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20241129BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241129BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241129BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20241129BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01B1/24 Z
C08J3/22 CFH
C08L83/04
C08K3/04
C08K3/00
C08K7/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022550763
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021019407
(87)【国際公開番号】W WO2021173664
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】62/981,081
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/005,692
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】シアオフォン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ショーン サリバン
(72)【発明者】
【氏名】リーモン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ギャンブル
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリカ エム.サンチェス ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】アガタゲロス キルリディス
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ イー.クトソブスキー
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533187(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136275(WO,A1)
【文献】特表2015-533254(JP,A)
【文献】S. Kumara et al.,Strong linear-piezoresistive-response of carbon nanostructuresreinforced hyperelastic polymer nanocomposites,Composites Part A: Applied Science and Manufacturing,2018年,Vol. 113,Pages 141-149,https://doi.org/10.1016/j.compositesa.2018.07.021
【文献】L James Lee et al.,Highly stretchable and ultrathin nanopaper composites for epidermal strain sensors,Nanotechnology,2018年,Vol. 29,Page 355304,https://doi.org/10.1088/1361-6528/aacc59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 3/22
C01B 32/00- 32/991
H01B 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁干渉シールドのためのポリマー複合体を調製するための方法であって、
炭素ナノ構造体を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択される硬化可能かつ成形可能なポリマーを含む未硬化のポリマーと組み合わせて混合物を形成し、前記炭素ナノ構造体を前記未硬化のポリマー中に分散させ、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせから選択されるCNS由来の材料を生成する組み合わせ工程
を含み、
前記炭素ナノ構造体が、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含み、
前記破壊されたカーボンナノチューブが、前記炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有していて、
前記延伸されたCNSストランドが、前記炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含み、かつ
前記分散されたCNSが、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含み、
前記組み合わせ工程が、前記炭素ナノ構造体を、オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤又は可塑剤から選択される媒体と混合してマスターバッチを形成することと、前記マスターバッチを前記未硬化のポリマーと混合して前記混合物を形成することとを含む、方法。
【請求項2】
組み合わせ工程が、1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積を有する前記混合物の顕微鏡像の観察によって、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが見られるまで、前記炭素ナノ構造体を分散させることを含み、前記混合物が、観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、0.1%のCNS由来の材料の装填量へと前記混合物を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択されるレットダウンポリマーと組み合わせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を前記混合物に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を硬化するか、又は硬化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、触媒、熱、架橋剤、水分、マイクロ波照射、青色LED、紫外光、電子ビーム照射及び光開始剤のうち1つ又は複数の存在の下で硬化される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの魅力的な特性によって特徴づけられるために、シリコーンは、食料及び飲料、自動車、航空宇宙、通信、製薬、パルプ及び紙、コーティング、ペイント、テキスタイル、電子並びに他の産業等の様々な分野において用途を見出されてきた。シリコーンは、接着剤又はシーラント等において、加工助剤として、硬質な又は柔軟な物品を製造するために使用される。シリコーンの普及した使用の概要は、例えば、M.Andriotらによって、Silicones in Industrial Applications,Inorganic Polymers,Gleria,R.D.J.M.,Ed.Nova Science Publishers:2007;pp 61-161において示されている。
【0002】
シリコーンについての1つの新たな用途は、電磁干渉(EMI)又は静電気放電(ESD)の発生に対してシールドするように設計された製品、例えばマット、シート、パッド、ガスケット及び他の物品に関する。EMIは、通信システム、ラジオ、テレビ、電子デバイス、又はこのようなデバイス中の電子回路によって発生する場合がある。EMIに関連する問題は、回路サイズの減少及びより高い動作周波数を達成する継続目標によって悪化する。電磁放射は、機器間の種々の装置中の回路若しくはシステムと干渉するか、及び/又はそれらの動作を中断させる場合がある。幾つかの状況において、電磁スパークが燃焼プロセスを開始させて、深刻な危険を引き起こす場合がある。
【0003】
幾つかの現在ある、シリコーンのEMI用途は、電気伝導性の金属、合金、金属/非金属複合体、並びに炭素添加物、例えばカーボンブラック、グラファイト、グラフェンベース型の材料及びカーボンナノチューブ、の使用を含む。
【0004】
例えば、米国特許第8715533号明細書は、主な材料としてシリコーンラバーを含有する、シリコーンラバーベースの材料中に分散された炭素を有する誘電体原材料を開示している。炭素は、シリコーンラバーベースの材料中に不均質に分配されているか、又は炭素の少なくとも一部が互いに接触するように分配されている。この参考文献によれば、誘電体原材料は、100重量部のシリコーンラバー当たりに150~300重量部の炭素を含有してよい。誘電体原材料は、非架橋状態のシリコーンラバー、非架橋有機ポリマー及び炭素の混合物を架橋及び成形することによって形成される場合がある。異なる形状を有し、球状炭素、平板状炭素、11以下のアスペクト比を有する炭素繊維、カーボンナノチューブ及び伝導性炭素から選択される少なくとも2種類の炭素を組み合わせて混合して、誘電体原材料を形成することができる。
【0005】
米国特許第7479516号明細書によれば、官能化され可溶化されたナノ材料、例えば官能化及び可溶化された単層カーボンナノチューブ、複数層カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンナノシート、カーボンナノファイバー、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノフィブリル、カーボンナノニードル、カーボンナノホーン、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、カーボンナノドット又はそれらの組み合わせ、を含有するナノ複合体は、電気、熱及び機械用途のために使用される。
【0006】
欧州特許出願公開第3546524号明細書は、伝導性フィルターとして用いられて、絶縁性シリコーンラバーに伝導性を付与するカーボンナノチューブを開示している。
【0007】
米国特許出願公開第2010/0308279号明細書によれば、伝導性シリコーンエラストマーは、別個の形態のカーボンナノチューブ、又は綿菓子、鳥の巣、コーマ糸若しくはオープンネットの形状に似たマクロモルフォロジーを有する凝集体の形態のカーボンナノチューブを使用して調製される。好ましい複数層カーボンナノチューブは1ミクロン以下の直径を有し、好ましい単層カーボンナノチューブは5nm未満の直径を有する。
【0008】
さらに、韓国特許第1753845号公報では、ナノチューブを含有する伝導性ポリマー複合体が記載されている。
【0009】
米国特許第9181278号明細書に示されているように、表面に金属粒子を有するカーボンナノチューブ複合体を調製する方法は、表面にアシルハライドを導入する工程、アシルハライド基をポリシロキサンのアミン基と反応させて、アミド基によって表面にポリシロキサンを結合させる工程、及びポリシロキサンの他の官能基に金属粒子を導入して、カーボンナノチューブ複合体の表面に金属粒子を結合させる工程を含む。
【0010】
ANTISTM-SIL 102の商品名の複数層カーボンナノチューブ-シリコーンマスターバッチは、シリコーンベースの静電散逸及び電気伝導用途のための添加物として設計された。
【0011】
米国特許出願公開第2018/0177081号明細書は、架橋されるカーボンナノチューブ(CNT)がポリマー性封入材料中に封入されている炭素ナノ構造フィルターを使用して調製されるEMIシールド複合体を記載している。EMIシールド複合体を得るために、フィルターは、まずポリマー性封入材料の少なくとも一部を除去するように処理され、次いで硬化可能なマトリックス材料と混合される。
【0012】
米国特許出願公開第2019/0352543号明細書では、ポリジメチルシロキサン部分を有する架橋したシリコーン発泡体、及び架橋したシリコーン発泡体中に保持された電磁気的に応答する粒子、例えば架橋した複数層カーボンナノチューブ網目構造、を含む複合体組成物が記載されている。
【0013】
M.F.ArifによるStrong linear-piezoresistive-response of carbon nanostructures reinforced hyperelastic polymer nanocomposites、Composites Part A 113 (2018)、pp.141-149において、炭素ナノ構造体-ポリジメチルシロキサンナノ複合体に基づくセンサーが記載されている。
【0014】
Liying Zhang、Shuguang Bi及びMing Liuらによるthe chapter Lightweight Electromagnetic Interference Shielding Materials and Their Mechanisms(2018年7月23日に提出され、2018年10月26日にレビューされ、2018年12月2日に、Electromagnetic Materials and DevicesのタイトルでIntechOpen book(編集者Man-Gui Han)に発行された)では、EMIシールド用途のために望ましい特性及び種々の現行の材料が記載されている。
【発明の概要】
【0015】
より小さい回路及びより高い動作周波数に向けた継続目標に伴って、伝導性シールド又はEMIシールドを改善する要求が存在し続ける。シリコーンベースの組成物及び物品を特徴づける特性を向上させるための要求もまた存在する。本明細書において使用されるとき、シリコーンベースのポリマーは、ポリシロキサンと、シロキサン(-Si-O-)n部分を含む硬化されたハイブリッドポリマー系との両方を含む。したがって、未硬化のシリコーンベースのポリマー(以下で説明されるCNSマスターバッチ中のポリマーを含む)は、シロキサンの形成によってそれらが硬化するため、シロキサン部分を未だ含まないハイブリッドポリマーを含む場合がある。
【0016】
本発明の幾つかの態様において、本発明は、シリコーンベースのポリマー及び炭素ナノ構造体(CNT)を含有するシリコーンベースの組成物に関する。幾つかの実施態様において、組成物又は物品は、シリコーンベースの構成要素中に分配された、炭素ナノ構造体、炭素ナノ構造体のフラグメント、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含有する。
【0017】
本明細書において使用されるとき、用語「炭素ナノ構造体」又は「CNS」は、多くの場合、互いに噛合わせる、分岐させる、架橋させる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体として存在することができるカーボンナノチューブ(CNT)、複数層(マルチウォールとしても知られている)カーボンナノチューブ(MWCNT)のうち複数をいう。したがって、CNSは、それらのポリマー性構造体のベースモノマー単位として、CNT、例えばMWCNTを有するとみなされる。典型的には、CNSは、CNS成長条件の下で、基材(例えば繊維材料)上に成長する。このような場合において、CNS中のCNTの少なくとも一部は、従来のカーボンナノチューブフォレストに見られる平行なCNT整列と同様に、互いに対して実質的に平行に整列される。
【0018】
典型的には、CNSは、CNS成長条件の下で、基材(例えば繊維材料)上に成長する。それらは、基材から分離されて、CNSフレークを形成することができる。本明細書において説明される実施態様の幾つかは、コーティングされた又は封入されたCNSを使用する。さらに、CNSフレーク、粉末、分散体、又はCNSを初期に提供することができる他の形態も用いることができる。
【0019】
特定の例において、CNSは、配合物の0.01~15wt%で、例えば0.1~10wt%で、又は3~5wt%の装填量で提供される。多くの場合、5wt%以下の装填量は、2Ω・cm未満のシリコーン含有組成物の体積抵抗率をもたらすことができる。さらに、比較的少量(例えば1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満又は0.05wt%未満、例えば0.01wt%~1wt%の装填量)のCNSで、シリコーンベースのポリマーCNS系についての電気パーコレーション閾値に到達するために十分である場合があることが見出された。この効果は、少なくとも部分的には、分岐させられるフラグメントの形成に起因し、それらの間のより良好な接続性を可能とし、向上した伝導性接続を作ると考えられる。
【0020】
幾つかの場合において、さらなる添加剤、例えばカーボンブラック、ヒュームドシリカ、ニッケルコーティングされたグラファイト及び/又は金属フレークとともに用いることができる。他の実施では、シリカ、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属フレーク、粒子、ワイヤ、ナノワイヤ及び繊維、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、及びシリコーンベースの組成物において一般に使用される他の添加剤と、CNSとの組み合わせを用いることができる。さらに他の添加剤及び添加剤の混合物も同様に用いることができる。
【0021】
シリコーンベースのポリマーを目的とする未硬化の前駆体中のCNSsを十分に分散させること、及び良好に又は十分に分散された組成物を形成することは、本発明の重要な態様である場合があり、本明細書において説明される幾つかの実施は、CNSが、(単独で、又は1つ若しくは複数の添加剤と組み合わせて)シリコーンベースのポリマーを目的とする前駆体と組み合わされるモードに関する。封入された又はコーティングされたCNSは、結合剤又はコーティングを除去する必要なく用いることができる。幾つかの実施態様は、マスターバッチ(MB)プロセスによって、液体又は固体媒体中のマスターバッチ濃縮物を調製する。次いで、マスターバッチを希釈して、所望のCNS装填量を有する系を調製する。マスターバッチの調製において使用したのと同じ又は異なる媒体によって濃縮物を希釈する。媒体は、樹脂、樹脂混合物、ポリマー、溶媒、溶媒混合物、溶液又はそれらの組み合わせであってよい。CNSの完全な分散は、非常に少ない装填量であっても、所望の電気特性をもたらすことができる。この効果は、少なくとも部分的には、分岐させられるフラグメントの形成に起因し、それらの間のより良好な接続性を可能とし、向上した伝導性接続を作ると考えられる。
【0022】
シリコーンベースのポリマーを目的とする前駆体は、一構成成分系又は二構成成分系において、過酸化物又は白金触媒添加硬化剤を使用して硬化することができる。シロキサン硬化剤と反応するポリマーのヒドロキシル基による濃縮物の硬化もまた用いることができ、水分ベースの硬化又は照射もまた用いることができる。幾つかの場合において、シリコーンベースの化合物は、アミノ含有硬化剤によって硬化される。当分野において公知である又は将来開発される他の硬化技術及び硬化剤を使用することもできる。代わりに又は加えて、硬化に次いで、例えばさらなるシロキサン結合を形成することができる温度に加熱することによって、シリコーンベースのラバー又はエラストマーを後硬化することができる。
【0023】
本明細書において説明される実施態様の多くは、成形又は押し出ししてある形状又は外形を形成することができる、CNSを含有するシリコーンベースの系(本明細書において「複合体」ともいわれる)に関する。これらの中で、良好な機械特性(引張強度、硬度)、電気伝導性及び/又は熱伝導性を特徴とする系が特に興味深い。
【0024】
CNSは、おそらくはCNSのユニークな構造のために、通常のCNTを超える種々の利点を提供することができる。さらに、CNTとは対照的に、CNSは、産業スケールで取り扱うのが容易かつ安全である形態(例えば粉末)で提供することができる。
【0025】
本明細書において説明される組成物は、ワイヤ及びケーブル用途等のために、ESD及び/又はEMIシールド用途のための、種々の硬質な又は柔軟な物品、成形された部品、フィールドグレーティング、接着剤、シーラント、電極を調製するのに使用することができる。本発明の実施態様による材料は、しばしば、魅力的なコストで容易に調製することができ、成形して減少したサイズ及び/又は重量の部品を製造することができ、良好な機械特性、例えば引張強度、引裂強度等、及び良好なEMIシールド性能、例えば1kHz~300GHzの周波数範囲のEMIシールド性能を提供することができる。
【0026】
1つの実施態様において、硬化されたポリマー複合体は、硬化されたシロキサンポリマー又は硬化されたシリル末端ハイブリッドポリマーと、硬化されたポリマー中に分散していて、かつ炭素ナノ構造体、炭素ナノ構造体のフラグメント、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのCNS由来の材料とを含む。炭素ナノ構造多又は炭素ナノ構造体のフラグメントは、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含む。破壊されたカーボンナノチューブは炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有する。延伸されたCNSストランドは炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含む。分散されたCNSは、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む。
【0027】
硬化されたポリマー複合体は、0.01~15wt%、例えば1~10wt%、3~5wt%、10wt%未満、5wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満又は0.01wt%~1wt%のCNS由来の材料を含んでよい。
【0028】
シロキサンポリマーはMe3SiO(SiMe2O)nMeを含んでよく、式中、nは2以上であり、少なくとも1つのメチル基は、R’及び-(O-SiR’R’’)n-から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’は、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである。シリル末端ハイブリッドポリマーは、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含んでよい。
【0029】
未硬化のポリマー複合体は、0.5MPa超若しくは0.5MPa~10MPaの引張強度、40%~300%の破断伸び、及び105Ω・cm未満の堆積抵抗率のうち1つ又は複数を有することができる。未硬化のポリマーは架橋されていてよい。組成物は、2mm厚さのサンプルについて、1.5GHzにおいて、少なくとも35dBのシールド効率を有する硬化されたポリマー組成物であってよい。炭素ナノ構造体は、結合剤でコーティングされているか、又は結合剤とともに混合物中にあってよい。
【0030】
硬化されたポリマー複合体は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでよい。
【0031】
電磁干渉シールドのための物品は、上記の実施態様のうち任意の硬化されたポリマー複合体を含んでよい。
【0032】
ある他の態様において、電磁干渉シールドのためのポリマー複合体を調製するための方法は、炭素ナノ構造体を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択される硬化可能かつ成形可能なポリマーを含む未硬化のポリマーと組み合わせて混合物を形成し、炭素ナノ構造体を未硬化のポリマー中に分散させ、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせから選択されるCNS由来の材料を生成する組み合わせ工程を含む。炭素ナノ構造体又は炭素ナノ構造体のフラグメントは、分岐される、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含む。破壊されたカーボンナノチューブは、炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有する。延伸されたCNSストランドは、炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含む。分散されたCNSは、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む。
【0033】
組み合わせ工程は、1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積を有する混合物の顕微鏡像の観察によって、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが見られるまで、炭素ナノ構造体を分散させることを含んでよく、混合物は、観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、約0.1%のCNS由来の材料の装填量へと混合物を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製される。
【0034】
ポリシロキサンは、Me3SiO(SiMe2O)nMeを含んでよく、式中、nは2以上であり、少なくとも1つのメチル基は、R’及び-(O-SiR’R’’)n-から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’は、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである。シリル末端ハイブリッドポリマーは、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含んでよい。
【0035】
組み合わせ工程は、炭素ナノ構造体を、オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、水性溶媒、非水性溶媒又は可塑剤から選択される媒体と混合してマスターバッチを形成すること、及びマスターバッチを未硬化のポリマーと混合して混合物を形成することを含んでよい。方法は、混合物を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択されるレットダウン(letdown)ポリマーと組み合わせることをさらに含んでよい。ポリシロキサンは、一構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系又は二構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系の構成成分であってよい。炭素ナノ構造体は、0.01~15wt%、1~10wt%、3~5wt%、10wt%未満、5wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、又は0.01%~1wt%の量で提供されてよい。炭素ナノ構造体は、結合剤でコーティングされているか、又は結合剤との混合物であってよい。
【0036】
コーティングされた炭素ナノ構造体の重量に対する結合剤の重量は、約0.1%~約10%の範囲であってよい。方法は、混合物に少なくとも1つの添加剤を添加することをさらに含んでよく、添加剤は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される。方法は、混合物を硬化するか、又は硬化させることをさらに含んでよい。混合物は、触媒、熱、架橋剤、水分、マイクロ波照射、青色LED、紫外光、電子ビーム照射及び光開始剤のうち1つ又は複数の存在の下で硬化することができる。ポリマー複合体は、上記の方法のうち任意のものに従って調製することができる。1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積を有する混合物の光学顕微鏡像の観察によって、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが見られ、ポリマー複合体は、観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、約0.1%のCNS装填量までポリマー複合体を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製される。
【0037】
ある別の態様において、硬化可能なポリマー組成物は、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択される硬化可能かつ成形可能なポリマーと、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせから選択されるCNS由来の材料とを含む未硬化のポリマーを含んでよい。炭素ナノ構造体又は炭素ナノ構造体のフラグメントは、分岐される、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含む。破壊されたカーボンナノチューブは、炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有する。延伸されたCNSストランドは炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含む。分散されたCNSは、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む。
【0038】
硬化可能なポリマー組成物が、光学顕微鏡における観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、約0.1%のCNS由来の材料の装填量まで組成物を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製されて試料が作られるとき、1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積の試料の面積を示す顕微鏡像は、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントを含有することができる。
【0039】
ポリシロキサンは、Me3SiO(SiMe2O)nMeを含んでよく、式中、nは2以上であり、少なくとも1つのメチル基は、R’及び-(O-SiR’R’’)n-から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’は、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである。シリル末端ハイブリッドポリマーは、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含んでよい。硬化可能なポリマー組成物は、オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、水性溶媒、非水性溶媒又は可塑剤をさらに含んでよい。ポリシロキサンは、一構成成分の硬化可能シリコーンベースポリマー系又は二構成成分の硬化可能シリコーンベースポリマー系の構成成分であってよい。CNS由来の材料は、0.01~15wt%、例えば1~10wt%、3~5wt%、10wt%未満、5wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、又は0.01~1wt%の量で存在していてよい。CNS由来の材料は、結合剤をさらに含んでよい。CNS由来の材料の重量に対する結合剤の重量は、約0.1%~約10%の範囲であってよい。硬化可能なポリマー組成物は、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでよい。
【0040】
要素の組立及び組み合わせの種々の詳細を含む本発明の上記の及び他の特徴、並びに他の利点が、今から、添付の図面を参照してより詳細に説明され、特許請求の範囲において対象とされる。本発明を具体化した特定の方法及び装置が、本発明を限定するものとしてではなく、例示として示されていると理解される。本発明の原理及び特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の及び多数の実施態様において採用することができる。
【0041】
添付の図面において、符号は、異なる図を通して同じ部分を意味する。図面は必ずしもスケール通りではなく、代わりに、本発明の原理を示すに際して強調がされている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】炭素ナノ構造体中のではなく炭素ナノ構造体に由来するY型MWCNT(図2A)と、炭素ナノ構造体中の分岐されたMWCNT(図2B)との間の差を示すダイアグラムである。
図1B】炭素ナノ構造体中のではなく炭素ナノ構造体に由来するY型MWCNT(図2A)と、炭素ナノ構造体中の分岐されたMWCNT(図2B)との間の差を示すダイアグラムである。
図2A】炭素ナノ構造体中に見られる複数層カーボンナノチューブを特徴づける特徴を示すTEM像である。
図2B】炭素ナノ構造体中に見られる複数層カーボンナノチューブを特徴づける特徴を示すTEM像である。
図3A】フレーク材料として得られた例示的な炭素ナノ構造体のSEM像である。
図3B】フレーク材料として得られた例示的な炭素ナノ構造体のSEM像である。
図4】分散されたCNSで充填された未硬化のシリコーンベースの樹脂の光学顕微鏡写真である。
図5】LSR及びHTVポリシロキサン配合物中のCNSについてのパーコレーション曲線を示すグラフである。
図6A】周波数に対する、種々の充填されたポリシロキサン配合物のEMIシールド能力を示すグラフである。
図6B】周波数に対する、種々の充填されたポリシロキサン配合物のEMIシールド能力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
今から、本発明の例示的な実施態様を示す添付の図面を参照して、本発明が、以降で、より十分に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得るものであり、本明細書において規定される実施態様に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が十分かつ完全なものとなり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるために提供されるものである。
【0044】
概して、本発明は、伝導性ポリマー系であって、その中で、ポリマー性構成成分が1つ又は複数のシリコーンベースのポリマーを含み、伝導性が少なくとも1つの炭素添加剤によって提供される伝導性ポリマー系に関する。本明細書において説明される実施態様の多くは、成形可能な系に関する。これらの中で、特に興味深いのは、良好な機械特性(しばしば利用されるポリマーに関連する特性)、例えば引張強度若しくは硬度、及び/又は(炭素添加剤によって付与される)電気伝導性である。さらに、本明細書において説明される材料は、EMIシールド用途において望ましい特徴、例えば光、腐食耐性、製造しやすさ、柔軟性、並びに反射及び/又は吸収メカニズムに基づく魅力的なシールド効率、を有することができる。
【0045】
組成物は、炭素ナノ構造体(CNSs、単数形でCNS)を使用して調製され、本明細書において、炭素ナノ構想体は、分岐されることによって、例えばデンドライト状に、互いにかみ合わせて、絡ませて、及び/又は互いに共通の層を共有して、ポリマー性構造体中で架橋された複数のカーボンナノチューブ(CNT)をいう。本明細書において説明される組成物を調製するために行われる操作は、CNTフラグメント、破壊されたCNT及び/又は延伸されたCNSストランドを生成することができる。CNSのフラグメントはCNSに由来し、より大きいCNSのように、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数のCNTを含む。破壊されたCNTはCNSに由来し、分岐され、互いに共通の層を共有する。延伸されたCNSストランドはCNSに由来する(CNSのフラグメント及び破壊されたCNTに由来することを含む)構造体であり、構成成分CNTは、互いに対して直線的に配置されている。好ましくは、本明細書において説明される組成物を調製するために行われる操作は、より完全に剥離された分散されたCNSを生成し、それらは、CNSの製造の間に作られた構成成分CNTの間の連結部及び交差部を保持することができる。
【0046】
高度に絡まったCNSは巨視的なサイズであり、そのポリマー性構造体の基本モノマー単位としてカーボンナノチューブ(CNT)を有するとみなすことができる。CNS構造体中の多くのCNTについて、CNTの側方層のうち少なくとも1つは、ある別のCNTと共有されている。一般に、CNS中の各カーボンナノチューブは、必ずしも、分岐されるか、架橋されるか、又は他のCNTと共通の層を共有する必要はないが、炭素ナノ構造体中のCNTの少なくとも一部は、互いに、及び/又は炭素ナノ構造体の残部中の、分岐されているか、架橋されているか、又は共通の層を共有するカーボンナノチューブと、噛合わされていてよい。
【0047】
当分野において公知であるように、カーボンナノチューブ(CNT又は複数系でCNTs)は、互いに結合されたsp2混成炭素原子の少なくとも1つのシートを含み、円筒状又はチューブ状構造を形成するハニカム格子を形成する炭素性材料である。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)又は複数層カーボンナノチューブ(MWCNT)であってよい。SWCNTは、フラーレンに類似した、sp2混成炭素の同素体と考えることができる。構造は、六員の炭素環を含む円筒状のチューブである。他方で、似ているMWCNTは、同心円筒状の複数のチューブを有する。これらの同心の層の数は可変であり、例えば2~25以上である。典型的には、MWNTは、10nm以上であってよく、これに対して、典型的なSWNTについては0.7~20nmであってよい。
【0048】
本発明において使用されるCNSの多くにおいて、CNTは、例えば少なくとも2つの同軸のカーボンナノチューブを有するMWCNTである。存在する層の数は、例えば、特定の場合において層の数を分析するために十分な倍率で透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定されるとき、2~30等の範囲内であってよく、例えば4~30;6~30;8~30;10~30;12~30;14~30;16~30;18~30;20~30;22~30;24~30;26~30;28~30;2~28;4~28;6~28;8~28;10~28;12~28;14~28;16~28;18~28;20~28;22~28;24~28;26~28;2~26;4~26;6~26;8~26;10~26;12~26;14~26;16~26;18~26;20~26;22~26;24~26;2~24;4~24;6~24;8~24;10~24;12~24;14~24;16~24;18~24;20~24;22~24;2~22;4~22;6~22;8~22;10~22;12~22;14~22;16~22;18~22;20~22;2~20;4~20;6~20;8~20;10~20;12~20;14~20;16~20;18~20;2~18;4~18;6~18;8~18;10~18;12~18;14~18;16~18;2~16;4~16;6~16;8~16;10~16;12~16;14~16;2~14;4~14;6~14;8~14;10~14;12~14;2~12;4~12;6~12;8~12;10~12;2~10;4~10;6~10;8~10;2~8;4~8;6~8;2~6;4~6;又は2~4であってよい。
【0049】
CNSはポリマー性の、CNTの硬度に分岐された及び架橋された網目構造であるため、個別のCNTで観察された化学構造の少なくとも幾らかは、CNSにも当てはまる。加えて、しばしばCNTを使用することに関連する魅力的な特性の幾つかもまた、CNSを組み込んだ材料において現れる。これらは、数例を挙げると、例えば、電気伝導性、シリコーンベースの組成物中に組み込まれたときに良好な引張強度を維持するか、若しくは可能とすることを含む魅力的な物理特性、(ときにはダイアモンド結晶又は面内グラファイトシートに相当する)熱安定性及び/又は化学安定性を含む。
【0050】
しかしながら、本明細書において使用されるとき、用語「CNS」は、個別の絡まっていない構造体、例えば「モノマー性」フラーレン(用語「フラーレン」は、中空の球体状、楕円体状、チューブ状、例えばカーボンナノチューブ、及び他の形状の形態の炭素の同素体を広く意味する)の同義語ではない。実際には、本発明の多くの実施態様は、CNSの使用によって観察されるか、又は見込まれる、それらのCNTビルディングブロックの使用に対する差及び利点を強調している。理論によって特定の解釈をされることを望むものではないが、CNSにおいて、分岐させること、架橋させること、カーボンナノチューブ間で層を共有することの組み合わせは、個別のカーボンナノチューブを使用するときに、同様に特に凝集を妨げることが望ましいときにしばしば問題となるファンデルワールス力を減少させるか、又は最小化すると考えられる。
【0051】
性能特性に加えて、又は性能特性の代わりに、CNSの一部であるか、又はCNSに由来するCNTは、多くの特性を特徴とすることができ、その少なくとも幾つかは、それらを他のナノ材料、例えば通常のCNT(すなわちCNSに由来せず、個別の、純粋な又はそのままのCNTとして提供される場合があるCNT)から区別することに依拠する場合がある。
【0052】
多くの場合において、CNS中に存在する、又はCNSに由来するCNTは、100ナノメートル(nm)以下、例えば約5~約100nm、例えば約10~約75nm、約10~約50nm、約10~訳30nm、約10~約20nm、の典型的な直径を有する。
【0053】
特定の実施態様において、CNTのうち少なくとも1つは、SEMによって決定した場合に、2ミクロン以上の長さを有する。例えば、CNTのうち少なくとも1つは、2~2.25ミクロン;2~2.5ミクロン;2~2.75ミクロン;2~3.0ミクロン;2~3.5ミクロン;2~4.0ミクロン;2.25~2.5ミクロン;2.25~2.75ミクロン;2.25~3ミクロン;2.25~3.5ミクロン;2.25~4ミクロン;2.5~2.75ミクロン;2.5~3ミクロン;2.5~3.5ミクロン;2.5~4ミクロン;3~3.5ミクロン;3~4ミクロン;又は3.5~4ミクロン以上の長さを有する。幾つかの実施態様において、1つより多くの、例えばCNTの少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも約50%又は半分よりさらに多くのフラクション等の部分は、SEMによって決定される場合に、2ミクロン超の、例えば上で特定される範囲内の長さを有してよい。
【0054】
CNS中に、CNSのフラグメント中に、又はCNSに由来する破壊されたCNT中に存在するCNTの形態は、しばしば、典型的には直径の100倍超の長さ、特定の場合においてはそれより長い長さを有する、高アスペクト比を特徴としている。例えば、CNS(又はCNSフラグメント)において、CNTの直径に対する長さのアスペクト比は、約200~約1000、例えば200~300;200~400;200~500;200~600;200~700;200~800;200~900;300~400;300~500;300~600;300~700;300~800;300~900;300~1000;400~500;400~600;400~700;400~800;400~900;400~1000;500~600;500~700;500~800;500~900;500~1000;600~700;600~800;600~900;600~1000;700~800;700~900;700~1000;800~900;800~1000;又は900~1000であってよい。
【0055】
CNSにおいて、並びにCNSに由来する構造体において(例えばCNSのフラグメントにおいて、又は破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド若しくは分散されたCNSにおいて)、CNTの少なくとも1つは、特定の「分岐密度」を特徴とする。本明細書において使用されるとき、用語「分岐(branch)は、単層カーボンナノチューブが複数(2又はそれより多く)に枝分かれして、連結された複数層カーボンナノチューブとなる特徴をいう。1つの実施態様は、ある分岐密度を有し、それによれば、SEMによって決定した場合に、炭素ナノ構造体の2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐がある。3つ又は4つの分岐もあり得る。
【0056】
(例えばTEM又はSEMを使用して検出される)さらなる特徴を使用して、CNSに由来しないY型CNTなどの構造体に対して、CNS中に見られる分岐のタイプを特徴づけることができる。例えば、Y型CNTは分岐の領域(点)に、又はその近くに触媒粒子を有するが、このような触媒粒子は、CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド又は分散されたCNS中で起こる分岐の領域に、又はその近くにはない。
【0057】
加えて、又は代わりに、CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT又は分散されたCNS中の分岐の領域(点)において観察される層の数は、分岐の一方の側(例えば分岐点の前)から、この領域の他方の側(例えば分岐点の後又は過ぎ去ったところ)までで異なる。このような層の数の変化は、本明細書において、層の数の「非対称」ともいわれ、通常のY型CNTでは観察されない(分岐点の前の領域と後の領域との両方で同じ数の層が観察される)。
【0058】
これらの特徴を示すダイアグラムが、図1A及び1Bに提供されている。CNSに由来しない例示的なY型CNT11が図1Aに示されている。Y型CNT11は、分岐点15に、又はその近くに触媒粒子13を含む。領域17及び19は、それぞれ分岐点15の前及び後に位置している。Y型CNT、例えばY型CNT11の場合、領域17及び19は、同じ数の層、すなわち図中の2つの層によって特徴づけられる。
【0059】
対照的に、CNSにおいて(図1B)、分岐点115において分岐しているCNTビルディングブロック111は、触媒欠乏領域113に見られるように、この点に又はその近くに触媒粒子を含まない。さらに、分岐点115の前に、前方に(又は第一の側)に位置する領域117に存在する層の数は、分岐点115の後に、後方に、又は分岐点115に対して他方の側に位置する領域119の層の数とは異なる。より詳細には、領域117に見られる三層の特徴は、領域119を通しては見られず、上記の非対称を引き起こす。
【0060】
これらの特徴は、図2A及び2BのTEM像において強調されている。
【0061】
より詳細には、図2AのTEM領域40におけるCNS分岐部には、触媒粒子がない。図2BのTEMにおいて、第一のチャネル50及び第二のチャネル52は、分岐されたCNSが特徴とする層の数の非対称を示していて、一方で矢印54は、層の共有を表す領域を示している。
【0062】
1つ、1つより多く又は全てのこれらの特徴は、本明細書において説明されるシリコーンベースの組成物において見られる場合がある。
【0063】
CNSを調製するための適した技術は、例えば2014年4月3日に発行された米国特許出願公開第2014/0093728号明細書、米国特許第8784937号明細書、9005755号明細書、9107292号明細書及び9447259号明細書において説明されている。これらの文献の全体の内容は、この参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
これらの文献において説明されているように、CNSを、適した基材上で、例えば触媒処理された繊維材料上で成長させることができる。製品は繊維含有CNS材料である場合がある。幾つかの場合において、CNSは基材から分離されてフレークを形成する。
【0065】
米国特許出願公開第2014/0093728号明細書に見られるように、フレーク材料(すなわち有限の寸法を有する個々の粒子)として得られた炭素ナノ構造体は、その高度に整列されたカーボンナノチューブの絡み及び架橋のために、三次元のミクロ構造体として存在する。整列された形態は、急速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば数ミクロン毎秒、例えば約2ミクロン毎秒~約10ミクロン毎秒)での成長基材上へのカーボンナノチューブの形成を反映していて、それによって成長基材からの実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長を誘起する。何らかの理論又はメカニズムによって拘束されるものではないが、成長基材上でのカーボンナノチューブの成長の急速な速度は、少なくとも部分的には、炭素ナノ構造体の複雑な構造形態に寄与する場合があると考えられる。加えて、CNSのバルク密度は、炭素ナノ構造体の成長条件を調節することによって、例えばカーボンナノチューブの成長を開始させるために成長基材上に配置される遷移金属ナノ粒子触媒粒子の濃度を変化させることによって、ある程度調節することができる。
【0066】
例えば切断若しくはフラッフィング(fluffing)(機械ボールミリング、摩砕、ブレンドなどを含み得る操作)、化学処理又はそれらの任意の組み合わせによって、フレークをさらに処理することができる。
【0067】
幾つかの実施態様において、用いられるCNSは「コーティングされて」いて、本明細書においては「サイジングされている」又は「封入されている」CNSともいわれる。典型的なサイジングプロセスにおいて、コーティングは、CNSを形成するCNTに適用される。サイジングプロセスは、CNTに非共有結合された部分的な又は完全なコーティングを形成することができ、幾つかの場合においては結合剤として作用することができる。加えて、又は代わりに、サイズ剤は、予め形成されたCNSに、後コーティング(封入)プロセスにおいて適用されてもよい。結合特性を有するサイズ剤を用いることで、例えばより大きい構造体、小粒又はペレット中にCNSを形成することができる。他の実施態様において、小粒又はペレットは、サイジングの機能とは独立して形成される。
【0068】
コーティングの量は可変であってよい。例えば、コーティングされたCNS材料の全体の重量に対して、コーティングは、約0.1wt%~約10wt%(例えば、重量で、約0.1%~約0.5%;約0.5%~約1%;約1%~約1.5%;約1.5%~約2%;約2%~約2.5%;約2.5%~約3%;約3%~約3.5%;約3.5%~約4%;約4%~約4.5%;約4.5%~約5%;約5%~約5.5%;約5.5%~約6%;約6%~約6.5%;約6.5%~約7%;約7%~約7.5%;約7.5%~約8%;約8%~約8.5%;約8.5%~約9%;約9%~約9.5%;又は約9.5%~約10%)であってよい。
【0069】
様々な種類のコーティングを選択することができる。多くの場合において、炭素繊維又はガラス繊維をコーティングするのに一般に使用されるサイジング溶液を、CNSをコーティングするために利用することができた。コーティング材料の具体的な例は、以下に限定するものではないが、例えばポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリイミド等のフッ素化されたポリマー、例えばポリ(エチレン)オキサイド、ポリビニル-アルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でんぷん、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)等の水溶性結合剤、並びにそれらのコポリマー及び混合物を含む。多くの実施において、使用されるCNSは、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリエチレングリコール(PEG)によって処理される。
【0070】
幾つかの場合において、例えばエポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド、ビスマレイミド、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エラストマー、例えばポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルラバー、ニトリルラバー、エチレン-ビニルアセテートポリマー、以下で説明されるものを含むシロキサンベースのポリマー及びフルオロシリコーンポリマー、それらの組み合わせ、又は他のポリマー若しくはポリマー性ブレンド、等のポリマーもまた使用することができる。電気伝導性を向上させるために、伝導性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリピロール及びポリチオフェンもまた使用することができる。
【0071】
コーティング材料は、シリコーンベースの組成物に対して特定の特性に寄与するように、又はシリコーンベースの組成物若しくはそれを製造するために使用される前駆体材料による、シリコーンベースの組成物の分散性、親和性及び/若しくは混和性を理由に選択することができる。幾つかの実施は、未硬化のシリコーンベースの配合物及び/又は本明細書において説明されるCNSマスターバッチについてのマトリックス中のCNS分散体を安定化するのを補助することができるコーティング材料を採用する。
【0072】
多くの実施において、CNSはそれらの成長基材から分離されていて、ばらばらになった粒子状材料(例えばCNSフレーク、小粒、ペレット等)の形態で、又はコーティング又は封入剤をさらに含む組成物で、及び/又は小粒若しくはペレットの形態で提供することができる。本明細書において説明される具体的な実施態様は、97%以上のCNT純度を有するCNS材料を用いる。代わりに、CNS材料は幾らかの量の成長基材を含んでよく、この場合には組成物中にガラス繊維を含むことが望ましい。
【0073】
幾つかの実施態様において、CNSは、炭素ナノ構造体が初期に形成される成長基材から除去された後にフレーク材料の形態で提供される。本明細書において使用されるとき、用語「フレーク材料」は、有限の寸法を有する個々の粒子をいう。例えば図3では、成長基材からのCNSの分離の後のCNS材料の例示的な描写が示されている。フレーク構造体100は、約1nm~約35μm厚さ(その間の任意の値及びその任意の部分を含む)、特には1nm~約500nm厚さの第一の寸法110を有してよい。フレーク構造体100は、約1ミクロン~約750ミクロン高さ(その間の任意の値及びその任意の部分を含む)の第二の寸法120を有してよい。フレーク構造体100は、約1ミクロン~約750ミクロン(その間の任意の値及びその任意の部分を含む)であることができる第三の寸法130を有してよい。寸法110、120及び130のうち2つ又は全ては、同じであるか、又は異なっていてよい。
【0074】
例えば、幾つかの実施態様において、第二の寸法120及び第三の寸法130は、独立して、約1ミクロン~約10ミクロン、約10ミクロン~約100ミクロン、約100ミクロン~約250ミクロン、約250ミクロン~約500ミクロン又は約500ミクロン~約750ミクロン程度であってよい。
【0075】
CNS中のCNTは、約10ナノメートル(nm)~約750ミクロン(μm)又はそれ以上で、可変の長さである。したがって、CNTは、10nm~100nm、10nm~500nm;10nm~750nm;10nm~1ミクロン;10nm~1.25ミクロン;10nm~1.5ミクロン;10nm~1.75ミクロン;10nm~2ミクロン;100nm~500nm、100nm~750nm;100nm~1ミクロン;100~1.25ミクロン;100~1.5ミクロン;100~1.75ミクロン;100~2ミクロン;500nm~750nm;500nm~1ミクロン;500nm~1ミクロン;500nm~1.25ミクロン;500nm~1.5ミクロン;500nm~1.75ミクロン;500nm~2ミクロン;750nm~1ミクロン;750nm~1.25ミクロン;750nm~1.5ミクロン;750nm~1.75ミクロン;750nm~2ミクロン;1ミクロン~1.25ミクロン;1.0ミクロン~1.5ミクロン;1ミクロン~1.75ミクロン;1ミクロン~2ミクロン;1.25ミクロン~1.5ミクロン;1.25ミクロン~1.75ミクロン;1ミクロン~2ミクロン;1.5~1.75ミクロン;1.5~2ミクロン;又は1.75~2ミクロンであってよい。幾つかの実施態様において、CNTのうち少なくとも1つは、SEMによって決定した場合に、2ミクロン以上の長さを有する。
【0076】
図3Bでは、フレーク材料として得られた例示的な炭素ナノ構造体のSEM像が示されている。図3Bに示される炭素ナノ構造体は、その高度に整列されたカーボンナノチューブの絡み及び架橋のために、三次元のミクロ構造体として存在している。整列された形態は、急速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば数ミクロン毎秒、例えば約2ミクロン毎秒~約10ミクロン毎秒)での成長基材上へのカーボンナノチューブの形成を反映していて、それによって成長基材からの実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長を誘起する。何らかの理論又はメカニズムによって拘束されるものではないが、成長基材上でのカーボンナノチューブの成長の急速な速度は、少なくとも部分的には、炭素ナノ構造体の複雑な構造形態に寄与する場合があると考えられる。加えて、炭素ナノ構造体のバルク密度は、炭素ナノ構造体の成長条件を調節することによって、例えばカーボンナノチューブの成長を開始させるために成長基材上に配置される遷移金属ナノ粒子触媒粒子の濃度を変化させることによって、ある程度調節することができる。
【0077】
フレーク構造体は、約15000g/mol~約150000g/mol(その間の全ての値及び任意の部分を含む)の分子量を有するカーボンナノチューブポリマー(すなわち「カーボンナノポリマー」)の形態の、ウェブ状の網目構造のカーボンナノチューブを含んでよい。幾つかの場合において、分子量の範囲の上限は、約200000g/mol、約500000g/mol若しくは約1000000g/molであるか、又はそれより高くてよい。より高い分子量は、寸法的に長い炭素ナノ構造体に関連する。分子量は、炭素ナノ構造体中に存在する、支配的なカーボンナノチューブの直径及びカーボンナノチューブの層の数にも依存する場合がある。炭素ナノ構造体の架橋密度は、約2mol/cm3~約80mol/cm3であってよい。典型的には、架橋密度は、成長基材の表面における炭素ナノ構造体の成長密度、炭素ナノ構造体の成長条件等に依存する。開放ウェブ状配置に保たれた多くのCNTを含有する典型的なCNS構造体は、ファンデルワールス力を除去するか、又はそれらの効果を打ち消すことに注意されたい。この構造体はより容易に剥離することができ、このことは、それらを、分岐された構造体に剥離又は破壊する多くのさらなる工程を、ユニークに、かつ通常のCNTとは異なるものとする。
【0078】
ウェブ状の形態の場合、炭素ナノ構造体は比較的低いバルク密度を有することができる。製造されたままの炭素ナノ構造体は、約0.003g/cm3~約0.015g/cm3の初期バルク密度を有してよい。炭素ナノ構造体フレーク材料又は類似の形態を製造するためのさらなる統合及び/又はコーティングは、バルク密度を約0.1g/cm3~約0.15g/cm3に上昇させることができる。幾つかの実施態様において、炭素ナノ構造体の任意選択のさらなる改質を行って、炭素ナノ構造体のバルク密度及び/又は別の特性を変えることができる。幾つかの実施態様において、炭素ナノ構造体のバルク密度は、炭素ナノ構造体のカーボンナノチューブにコーティングを形成することによって、及び/又は様々な材料で炭素ナノ構造体の内部を浸透させることによって、さらに変更することができる。さらに、カーボンナノチューブのコーティング及び/又は炭素ナノ構造体の内部の浸透は、炭素ナノ構造体の特性を、様々な用途における使用のために調節することができる。さらに、カーボンナノチューブにコーティングを形成することは、炭素ナノ構造体の操作を望ましく容易にすることができる。さらなる緻密化はバルク密度を約1g/cm3の上限に上昇させることができ、炭素ナノ構造体に対する化学的な改質とともにする場合には、バルク密度を約1.2g/cm3の上限に上昇させることができる。
【0079】
上記のフレークに加えて、CNS材料は、約1mm~約1cm、例えば約0.5mm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、約4mm~約5mm、約5mm~約6mm、約6mm~約7mm、約7mm~約8mm、約8mm~約9mm又は約9mm~約10mmの典型的な粒子サイズを有する小粒、ペレット又はばらばらになった粒子状材料の他の形態として提供することができる。
【0080】
商業的には、適したCNS材料の例は、Cabot Corporationの完全所有子会社であるApplied Nanostructured Solutions LLC (ANS)(マサチューセッツ、USA)から入手可能なCNS材料である。
【0081】
本明細書において使用されるCNSは、様々な技術によって特定するか、及び/又は特性評価することができる。例えば透過型電子顕微鏡(TEM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)等の技術を含む電子顕微鏡は、存在する層の具体的な数の周波数、分岐、触媒粒子がないこと等の特徴についての情報を提供することができる。図2A~2Bを参照せよ。
【0082】
ラマン分光法は、不純物に関連するバンドを示すことができる。例えば、Dバンド(1350cm-1付近)は非晶質炭素に関連するものであり;Gバンド(1580cm-1付近)は結晶性グラファイト又はCNTに関連するものである。G’バンド(2700cm-1付近)はDバンドの周波数の約2倍に発生すると予想される。幾つかの場合において、熱重量分析(TGA)によって、CNSとCNT構造体とを識別することができる。
【0083】
幾つかの実施態様において、CNSは、1つ又は複数のさらなる添加剤、例えばカーボンブラック、CNT、伝導性粒子、半導体粒子、ヒュームドシリカ、ニッケルコーティングされたグラファイト、及びシリコーンベースの材料において通常使用される他の添加剤、とともに利用される。このような添加剤は、CNSが添加される前又は後に、シリコーンベースの組成物と組み合わせることができる。CNSマスターバッチが用いられる場合、さらなる添加剤は、マスターバッチに組み込まれるか、又はレットダウンプロセスの間に添加されてよい。
【0084】
適したカーボンブラック粒子は、20~1500m2/g、例えば20~75m2/g、75~150m2/g、100~300m2/g、200~500m2/g、500~1000m2/g又は1000~1500m2/gのBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積を有してよい。代わりに、又は加えて、適したカーボンブラックは、30~350mL/100g、例えば40~80mL/100g、60~150mL/g、100~200mL/g、150~250mL/g、200~300mL/g又は250~350mL/gの吸油量(OAN)を有してよい。
【0085】
適した商業的に入手可能なカーボンブラック粒子は、Cabot Corporationから入手可能である、Regal(登録商標)、Black Pearls(登録商標)、Spheron(登録商標)、Sterling(登録商標)及びVulcan(登録商標)の商標で販売されるカーボンブラック、Birla Carbonから入手可能である(以前はColumbian Cheicalsから入手可能であった)、Raven(登録商標)、Statex(登録商標)、Furnex(登録商標)及びNeotex(登録商標)の商標並びにCD及びHD系列で販売されるカーボンブラック、Lion Specialty Chemicals Co.,Ltd.から入手可能である、Ketjenblackの商標で販売されるカーボンブラック、Orion Engineered Carbons(以前はEvonik and Degussa Industries)から入手可能である、Corax(登録商標)、Durax(登録商標)、Ecorax(登録商標)及びPurex(登録商標)の商標並びにCK系列で販売されるカーボンブラック、並びにDenka and Timcalから入手可能であるカーボンブラックを含む。代わりに、又は加えて、カーボンブラックは、ファーネスカーボンブラック、ガスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック又はランプブラックであってよい。カーボンブラックは、プラスチック又はエラストマー材料から回収された再利用カーボンブラックであってよい。
【0086】
カーボンブラックは、CNSを含まないシリコーンベースの組成物において典型的に使用される任意の濃度で存在していてよい。典型的な濃度は0~30wt%であってよいが、より高い濃度もまた適している。
【0087】
さらなる実施態様において、CNSは、そのままの又は純粋な形態の従来のCNTとともに用いることができる。これらのCNTは、例えば処理の間の、CNSに由来するものではない。適したCNTは、複数層CNT(MWSNT)、単層CNT(SWCNT)及び修飾されたCNTを含む。SWCNTは電気伝導性を改善することができ、CNSとSWCNTとのシナジーは、両方の材料を含有するシリコーンベースの組成物の電気伝導性を、いずれかが同様の装填量でシリコーンベースの組成物に提供することができる電気伝導性を超えて改善することができる。SWCNTは熱伝導性も提供することができる。ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、アルキル、ハロ、金属原子及び他の基を追加するためのCNTに対する適した修飾は、酸化、ジアゾニウム化学反応を介した小さい分子の結合、任意選択で続くメタライゼーション、エステル化、アミド化、ハロゲン化、環化付加を介した基の付加、アルキル化、メタライゼーション及び当業者にとって公知である他の修飾を含む。多くの場合において、CNTは、ChengDu Organic Chemicals Co.,Ltd.、Sigma-Aldrich、Nanocs,Inc.、Skyspring Nanomaterials,Inc.、OCSiAl、Nanocyl SA、Nano-C、Shenzhen Sanshun Nano New Materials Co.,Ltd.等から商業的に入手可能である。CNTの典型的な装填量は20wt%以下であるが、MWCNT及びSWCNTのいずれか又は両方は、当業者によって所望される任意の量で使用することができる。
【0088】
シリカは、本明細書において説明される材料を調製するためにCNSとともに用いることができるさらなる材料である。ヒュームドシリカは、未硬化の樹脂におけるレオロジーを制御し、硬化されたシリコーンベースの組成物における機械特性、例えば破壊靭性、延性、引張強度、弾性及び硬度を改善するためにシリコーンベースの樹脂中に一般的に含められる。ヒュームドシリカの表面処理は、硬化されたシリコーンベースの組成物のクレープ硬化を妨げ、シリカの、未硬化の樹脂との親和性を改善することができる。適した表面処理は、シリコーンベースのポリマー中のヒュームドシリカのために一般的に使用される表面処理を含み、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン及びシロキサンベースのポリマー、例えばPDMS、モノヒドロキシル末端PDMS及びジヒドロキシル末端PDMSを含む。ヒュームドシリカは未硬化のシリコーンベースの樹脂中に組み込まれる前に表面処理されるか、又は表面処理剤がシリコーンベースの樹脂配合物中に含められてもよい。ヒュームドシリカは、CNSを含有しないシリコーンベースの樹脂について当業者によって一般的に使用される割合で、例えば0~50%、2~40%、5~30%又は10~25%で、シリコーンベースの樹脂中に組み込まれてよい。さらに、シリコーンベースの樹脂中のシリカの装填量は、CNSの存在とは独立である。意外なことに、非伝導性粒子、例えばヒュームドシリカのCNSを含有するシリコーンベースの組成物中への添加が、それらの伝導性に影響を与えないことが分かった。ヒュームドシリカの存在は、CNSによる伝導性経路の形成に干渉せず、様々な媒体中のそれらの分散を安定化することができる。特定の理論によって拘束されるものではないが、シリカは分散されたCNS由来の粒子を物理的に分離することができるか、及び/又は未硬化のシリコーンベースの樹脂の粘度を増加させることによって、CNS由来の粒子の移動性を減少させることで再凝集を妨害することができると考えられる。代わりに、又は加えて、シリカは、分散媒体として作用して非凝集化を促進することができる。シリカは、シリコーンベースの組成物のために、及びその所望の最終用途のために適した任意の表面積、例えば50~450m2/gの表面積を有してよい。CNSを含有するシリコーンベースの組成物における使用のために適した商業的に入手可能なヒュームドシリカは、以下に限定するものではないが、Cabot Corporationから入手可能であるCAB-O-SIL TS-530、TS-610、TS-622、M-5、TS-740及びTS-720シリカ、CLARUS 3160シリカ、Ultrabond及びUltrabond 5780シリカ、Evonik Industriesによって販売されるAerosil 200、R972、R805及びR208シリカ、並びにWacker CorporationによってHDKの名称で販売されるシリカを含む。
【0089】
幾つかの組成物は、伝導性を向上させるための導体又は半導体材料を含んでよい。例示的な導体材料は金属粒子、例えば銀、金、パラジウム、アルミニウム、銅、又は当業者にとって公知である他の伝導性金属若しくは金属合金を含む。このような金属は100%の純度である必要はなく、それらが伝導性を保持する限り、種々のレベルの不純物を有してよいことが、当業者によって理解される。代わりに、又は加えて、シリコーンベースの組成物は、半導体金属又は金属合金粒子、例えばケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ドープされたゲルマニウム、ヒ化ガリウム、及び当業者にとって公知である他の半導体金属及び合金を含んでよい。代わりに、又は加えて、シリコーンベースの組成物は、半導体酸化物、例えば酸化銅、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、及び当業者にとって公知である他の半導体酸化物を含んでよい。
【0090】
導体材料及び半導体材料のうち任意の組み合わせも使用することができる。代わりに、又は加えて、導体材料又は半導体材料が粒子の外部に配置された、2つ又は2つより多くの材料を含む複合粒子、例えばニッケルコーティングされたグラファイト、も用いることができる。導体又は半導体粒子は、任意の形状、例えば立方体、フレーク、小粒、不規則な形状、ロッド、針、粉末、球体又はこれらのうち任意の2つ若しくは2つより多くを混ぜたもの、を取ることができる。導体又は半導体粒子は、レーザー回折、SEM、光学顕微鏡、TEM又は個数ベースで粒子サイズを測定する任意の他の装置によって測定した場合に1~200ミクロンのメジアン粒子サイズ(個数ベース)を有してよい。導体又は半導体粒子は、500ミクロン、代わりに200ミクロン、代わりに100ミクロン、代わりに50ミクロン、代わりに30ミクロンの最大粒子サイズと、0.0001ミクロン、代わりに0.0005ミクロン、代わりに0.001ミクロンの最小粒子サイズを特徴とすることができる。このような材料は、それら自体の浸透網目構造を形成するのに十分な濃度で使用することができるか、又は分散されたCNSの網目構造を通して伝導性を向上させるように用いることができる。例えば、銀含有粒子は、しばしば、50wt%から70、80又はさらには80wt%までの装填量で使用される。
【0091】
代わりに、又は加えて、シリコーンベースの材料とともに一般に使用される他の充填剤を含んでよく、以下に限定するものではないが、親水性及び表面処理された沈降シリカ、モンモリロナイト等のクレー、炭化ケイ素及び他の金属炭化物、AlN及びBN等の金属窒化物、リン酸塩、硫酸塩及び炭酸塩、ハロゲン化物及び他の金属塩、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム等の金属水酸化物、ガラス繊維、ガラス粒子、有機繊維(例えばポリマー繊維)及び炭化有機繊維が挙げられる。ヒュームドシリカに関しては、非伝導性充填剤は、CNSが組成物中に含まれていたのと同じ濃度で使用することができる。存在することができる他の成分は、処理補助剤、硬化剤、光開始剤、触媒、さらなるポリマー、及びシリコーンベースの組成物において一般に使用される他の構成成分を含む。ここで又は他で特定されるもの等の成分は、当分野において公知であるとおり、独立して、調製プロセスの適した段階において、又は用いられるシリコーンベースの構成成分の一部として添加することができる。
【0092】
本明細書において提供されるCNSの組み込みから利点を得られるシリコーンベースの材料は、硬化に際して直線の及び/又は分岐のポリシロキサンセグメントを形成するシロキサンポリマー及びシリル末端ハイブリッドポリマーの両方を含み、同様に他の化学物質、例えば、以下に限定するものではないが、アクリレート、ポリウレタン、エポキシ及びポリエーテルをベースとするセグメントを含む。ハイブリッド樹脂中のシロキサンセグメントは、シロキサンポリマー中にあるのと同様にポリマー主鎖の一部であるか、又は分岐鎖若しくは側鎖の一部であってよい。ハイブリッドポリマーは、1つ、2つ又は3つのアルコキシシラン基をそれぞれ独立に有する、ケイ素原子を含む少なくとも2つの末端基を有してよい。アルコキシシラン基は、硬化に際して、加水分解を受けてシロキサン結合(例えば-Si-O-Si-)を形成することができる。シロキサンポリマーについて以下で説明される化学物質と同様に、架橋剤及び触媒を使用してハイブリッドポリマーを硬化することもできる。例示的なハイブリッドポリマーは、米国特許出願公開第2018/0298252号明細書及び米国特許第9765247号明細書において開示されるハイブリッドポリマー及び商業的に入手可能なポリマー、例えばMomentiveから入手可能であるSPUR(登録商標)ポリマー、Kaneka Corporationから入手可能であるMS Polymers、及びWacker Chemie AGのGeniosil(登録商標)ポリマー、を含む。
【0093】
ポリシロキサン又はシロキサンポリマーは、多くの用途において見られる、良く認識された材料である。基本的なポリシロキサン構造体は、ポリジアルキルシロキサン、例えば直鎖ポリジメチルシロキサン(PDMS)に相当し、それはトリメチルシリルオキシ末端:
Me3SiO(SiMe2O)nSiMe3
(式中、n=1、2、3、4...等)であってもよい。鎖に沿ったメチル基の全て又は一部は、様々な有機基、例えば直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル及びシラシクロアルキル基、並びにより反応性の基、例えばアルケニル基、例えばビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、オクテニル、ノネニル及び/又はドデニル基によって置換されていてよい。直鎖及び分岐鎖の基は、1~100個、例えば1~12、1~20又は1~30個の炭素を有してよい。芳香族基は、6~100個、例えば6~12、6~20又は6~30個の炭素を有してよい。極性基、例えばアクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル及び/又はハロ(例えばフルオロ)基を、任意の組み合わせで、シロキサン主鎖のケイ素原子に結合させることができる。代わりに、又は加えて、シロキサンポリマーは分岐していてよい。代わりに、又は加えて、シロキサンは、これらの有機基のうち任意のものを末端とする1つ又は複数の端部を有してよい。
【0094】
シリコーンベースの材料は未硬化であるか、又は硬化されていてよい。未硬化のシリコーンベースの樹脂は、ケイ素に結合された様々な有機ラジカルを有する、交互のケイ素及び酸素原子の構造を有するシロキサンポリマー又はオリゴマーをいう場合がある。代わりに、又は加えて、未硬化のシリコーンベースの樹脂はハイブリッドポリマーであってよい。液体、ゴム又はゲルの形態で初期に提供される未硬化のシリコーンベースの樹脂を硬化して、固体を形成することができる。ゴム及び他の固体樹脂は、硬化を介してそれらの分子量を増加させることができる。硬化は、ポリマー鎖の端部において、又はポリマー鎖の主鎖に沿ってのいずれかでの、ポリマー鎖の間の架橋又は他の連結の形成を含んでよい。例えば、ポリマー鎖又は分岐が形成又は延伸される。
【0095】
様々な技術を用いてシリコーン含有系を硬化することができる。当業者にとって公知であるように、使用される特定の硬化パッケージは、シリコーン含有系の組成に依拠してよい。シロキサン主鎖を有するポリマーは、過酸化物、例えばベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンジルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ジクミルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、及び当業者にとって公知である他の過酸化物、を使用して硬化することができる。例えばスズ、チタン、白金又はロジウムを含む金属含有触媒を用いることができる。代わりに、ヒドロシラン材料及び白金含有化合物を用いる付加ベースの系を使用して、ポリシロキサン、特にビニル含有ポリシロキサンを硬化することができる。アミンベースの硬化系も使用することができる。縮合系は、それら自体を、室温及び周囲湿度で硬化することができる。縮合硬化可能系は、ヒドロキシ官能化又はアルコキシ官能化されていてよい。一要素RTV系において、例えば、周囲空気水分に曝された架橋剤は加水分解工程を受け、ヒドロキシル基又はシラノール基を形成する。別の加水分解可能基とのシラノールのさらなる縮合は、十分に硬化された系が得られるまで行われる。典型的な架橋剤は、アルコキシ、アセトキシ、エステル、エノキシ又はオキシムシランを含む。しばしば、メチルトリメトキシシランがアルコキシ硬化系のために使用され、メチルトリアセトキシシランがアセトキシ硬化系のために使用される。縮合触媒を添加してRTV系を十分に硬化して、タックフリー表面を達成することができる。アルコキシ又はオキシム硬化系は有機チタネート触媒(例えばテトラアルコキシチタネート又はキレートチタネート)を用いることができ、一方でアセトキシ硬化系はスズ触媒、例えばジブチルスズジラウレート(DBTDL)を用いることができる。典型的には、ハイブリッドポリマーは、触媒の存在の下で、加水分解及び縮合工程において硬化される。
【0096】
シロキサン主鎖を有するフリーラジカル硬化可能ポリマーは、アルケニル官能化(例えばビニル)されているか、及び/又はアルキニル官能化されていてよい。このようなポリマーの硬化又は硬化速度は、UV、ブルーライト、過酸化物、熱又はこれらの組み合わせによって改善することができる。
【0097】
典型的には、二要素縮合系は、一要素中に架橋剤又はヒドロシラン材料と縮合又は付加(白金)触媒とを含み、第二の要素中にポリマーを含む。付加ベースの硬化系については、抑制剤を使用して貯蔵寿命を改善することができる。硬化は、2つの要素が混合されるときに起こる。多くの配合物において、CNS及び用いられる任意の他の充填剤又は顔料がポリマーに添加される。
【0098】
電子ビーム(e-ビーム)、ブルーLED、マイクロ波又はUV光を、典型的には光開始剤の存在の下で使用する照射硬化も用いることができる。
【0099】
シリコーンベースの構成成分は、高温加硫(HTV)ポリシロキサン、室温加硫(RTV)ポリシロキサン、高粘度ラバー(HCR)又は液体ポリシロキサンラバー(LSR、液体シリコーンラバー(liquid silicone rubber)の省略形)を含んでよい。ハイブリッドポリマー又は照射硬化可能なポリシロキサンも用いることができる。シラン官能基を含むハイブリッドポリマー、例えばシリル修飾されたポリエーテル、シリル修飾されたポリウレタン、並びに他のシラン末端及びシラン修飾ポリマーも使用することができる。このようなポリマーの硬化は、ポリマー鎖を一体に連結するシロキサンセグメントの形成をもたらす。
【0100】
一般に、ポリシロキサンラバーは、交互のケイ素及び酸素原子の主鎖と、メチル又はビニル側基とを有する熱硬化性エラストマーである。ポリシロキサンラバーはそれらの安定性及び非反応特性で知られていて、ポリシロキサンラバーは、厳しい条件において、例えば-55~300℃(-67~572oF)の温度において、それらの機械特性を維持することができ、安定なままであることができ、使用することができる。多くのポリシロキサンラバーは、比較的製造するのが容易であり、非常に多様な製品の用途が見出される。ポリシロキサンラバー中のメチル基の存在は、これらの材料を非常に疎水性にすることができる。
【0101】
具体的なシリコーン構成成分の選択は、様々な因子に依存する場合がある。例えば、1つの考えは、最終製品において目標とされる特性に関する。当分野において公知であるように、シリコーンベースのポリマーは、しばしば、特定の種類の用途に利点を与える特性を有するように開発される。例えば、向上した付着性は、シリコーンベースの接着剤を開発するときに非常に重要である場合があるので、成形可能部品を製造するために使用されるシリコーンベースのポリマーは、好ましくは良好な機械特性(例えば良好な引張強度及び/又は硬度)を有し、一方でそれらの接着特性はあまり興味を持たれていないか、又は無関係である場合がある。泡は増加した多孔性に依拠する。
【0102】
本明細書において説明される実施態様の多くは、良好な機械安定性(硬度、引張強度)及び良好な電気伝導性を有する製品(例えば成形可能な物品又は部品)を製造するのに使用することができるCNSを含有するシリコーンベースの組成物を調製するために適したシリコーンベースのポリマーを用いる。
【0103】
幾つかの例において、CNSを含有するシリコーンベースの系は、典型的にはRTV材料における中間体として用いられるビニル官能化されたポリジメチルシロキサン、例えばビニル末端ポリジメチルシロキサン、である液体樹脂から調製することができるビニルポリシロキサン構成成分を含む。
【0104】
ベース樹脂の選択には、様々なことが考慮され得る。例えば、幾つかの場合において、ベース樹脂は、CNSの組み込みを維持しない場合があり、このことは不適切な混合の組成物をもたらす。したがって、1つの考慮するべき重要な要素は、シリコーンベースのポリマーに対する前駆体がCNSと、特に所望の濃度のCNS(例えば、シリコーンベースの配合物の合計の重量に対して1、5、10wt%以上のCNS)と分散体を形成するかどうかである。
【0105】
さらなる要素は、シリコーンベースの組成物に対する未硬化の前駆体を特徴づける粘度に関する。当分野において公知であるように、しばしば、粘度はせん断力の関数であり、応力歪曲線によって特徴づけることができる。1cP~10000cP、10cP~50000cP、100cP~100000cP、25000cP~200000cP、100000cP~500000cP、200000~700000cP又は500000cP~1000000cP。
【0106】
分散性についての適した試験は、液滴サイズの量の材料を、手によって2枚の顕微鏡スライドの間で圧縮して、光学顕微鏡でその材料を観察することを含む。50ミクロン超の幅を有する1つ以下のバンドルが、約1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積(すなわち、像において分析される資料の部分の実際の面積が1000ミクロン×1400ミクロンに等しい)を有する像中に観察されるとき、適した分散体が達成されている。より高い装填量において、CNS充填材料は不透明である場合がある。顕微鏡での観察を可能とするために、材料を、例えば約0.1wt%の装填量にレットダウンする必要がある場合がある。
【0107】
本明細書において説明される系を調製するために、硬化の前に、CNSを、シリコーンベースの未硬化の前駆体と組み合わせることができる。CNSを前駆体材料中に組み込むために使用されるプロセスは、従来の配合技術及び/又は設備に依ってすることができる。前駆体材料中へのCNSの分散は、例えばBrabender型のミキサー、プラネタリーミキサー、Waringブレンダー、ミリング(例えば2ロールミル)、超音波等の設備を使用して行うことができる。
【0108】
混合は、添加されるCNSの量及び樹脂特性に依存する場合がある適したせん断力の下で行うことができる。多くの場合において、高速ミキサー又は密閉式ミキサー、例えばBanbury又はBrabenderミキサーを使用することができる。粒子状充填剤を未硬化のシリコーンベースの樹脂と組み合わせるために当業者によって使用される技術を用いることができる。
【0109】
1つの例示として、シリコーンベースの樹脂中のCNSの最終装填量は、約0.01~約15wt%、例えば、0.01~0.05、0.05~0.1、0.1~0.5、0.5~1、1~3、3~5、5~7、7~10、1~10wt%、3~5wt%、10wt%未満、5wt%未満、1wt%未満、0.5wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、0.01%~1wt%又は10~15wt%である。これらの範囲内の、又はこれらの範囲と重複する範囲も用いることができる。
【0110】
好ましい実施は、CNSがシリコーンベースの樹脂の前駆体中に最初に分散されたマスターバッチ又は濃縮物を調製するためのマスターバッチ配合技術に依る。CNSを予備分散するためのマスターバッチの使用は、より低いせん断で、とりわけ液体又は低分子量の樹脂で最終組成物が製造されることを可能とする。マスターバッチは、0.1~15%、例えば5~10%のCNS装填量を有してよい。マスターバッチのマトリックスは、シリコーンベースの樹脂のための前駆体、例えばシロキサン主鎖を有する未硬化のハイブリッドポリマー又はポリマーであってよい。前駆体は、ゲル、ゴム、液体又は固体の形態であってよい。二構成成分系について、マスターバッチは、樹脂構成成分又は第二の構成成分、例えば架橋剤又は硬化剤のいずれかにおいて形成することができる。代わりに、又は加えて、マスターバッチは、異なる添加剤、例えば可塑剤、オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤等において調製することができる。適した反応性希釈剤は、以下に限定するものではないが、マスターバッチ中のシリコーン前駆体の、より低粘度のもの(例えばより低いMW)を含む。代わりに、又は加えて、マスターバッチは、水性又は非水性溶媒中で調製することができる。マスターバッチは、最終のシリコーンベースの組成物中に組み込まれる1つ又は複数のさらなる構成成分又は添加剤、例えば上記の添加剤又は充填剤のうち任意のもの、シランなどの吸着促進剤、及び/又は当業者にとって公知である他の添加剤、を含んでよい。
【0111】
マスターバッチは、添加CNSフリー樹脂中に希釈(レットダウン)されるか、又は適した比で適した可塑剤によって希釈(レットダウン)されて、レットダウン組成物を形成することができる。適した添加比は、(CNSフリー樹脂又は可塑剤に対するマスターバッチの添加比に基づいて)約0.1wt%~約99wt%であってよい。例示的な添加比は、CNSフリー樹脂に対して0.1~20wt%、例えば0.5~15wt%、1~5wt%、5~10wt%、10~20wt%、20~30wt%、30~40wt%又は40~50wt%である。CNSフリー樹脂は、最終のシリコーンベースの組成物中に組み込まれる1つ又は複数のさらなる構成成分又は添加剤を含んでよい。代わりに、又は加えて、このようなさらなる構成成分又は添加剤は、さらなる処理工程においてレットダウン組成物と組み合わせることができる。
【0112】
1つの例示として、CNSは液体ポリシロキサン樹脂と予備混合されて、次いで、過酸化物硬化剤を添加することなく密閉式ミキサー中で処理されて、CNSが十分に分散されたマスターバッチを調製する。CNSは十分に分散されているので、最終硬化可能組成物中の所望のCNS含有量をもたらすように選択された適切な量のマスターバッチ及びCNSフリー樹脂は、次いで、シリコーンベースの組成物を乾燥させることなく、かつCNSの伝導性特性を損なうことなく、硬化剤及び/又はさらなる添加剤を含む他の成分と混合することができる。
【0113】
別の例示において、CNSは、高粘度のポリシロキサン中に、例えば固体ゴム中に、密閉式ミキサーを使用して、過酸化物硬化剤を添加することなく、分散されて、CNSが十分に分散されたマスターバッチを調製する。CNSは十分に分散されているので、最終硬化可能組成物中の所望のCNS含有量をもたらすように選択された適切な量のマスターバッチ及び非希釈の樹脂は、次いで、シリコーンベースの組成物を乾燥させることなく、かつCNSの伝導性特性を損なうことなく、硬化剤及び/又はさらなる添加剤を含む他の成分と混合することができる。
【0114】
同じ方法を使用して、二構成成分のシリコーンベースの系を調製することができる。典型的には、このような系は、樹脂が触媒と組み合わせられている1つの構成成分と、樹脂が架橋剤と組み合わせられている第二の構成成分とを含む。これらの実施において、CNSマスターバッチは、いずれか又は両方の構成成分にレットダウンされていてよい。
【0115】
幾つかの実施態様において、本明細書において説明されるシリコーンベースの系を調製するのに用いられるCNS材料の量は、パーコレーション閾値以上、すなわち絶縁性のシリコーンベースの材料が伝導性材料に変換される最小の濃度以上である。特定の解釈に保持されることを望むものではないが、パーコレーション閾値において、電気の直接伝導を介して、トンネル現象を介して、又はその両方で、サンプルを通じて電気的経路を形成するのに十分なCNS(又はCNS由来の種、例えばCNSフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド若しくは分散されたCNS)が存在すると考えられる。
【0116】
実験的には、パーコレーション閾値は、CNSの様々な装填量で調製した硬化されたサンプルの体積抵抗率を測定して、体積抵抗率が、絶縁体を特徴づける値からEMI又はESD用途のために適した値へと変化する濃度又は濃度範囲を見出すことによって決定することができる。例示のために、約0.5wt%の装填量でCNSをシリコーンベースの樹脂に添加することは、1015ohm・cm程度(CNS添加なしのシリコーンベースの樹脂について)から、105ohm・cmへの、例えば約104ohm・cm未満、又は103ohm・cm未満、例えば100ohm・cm~1000ohm・cmへの体積抵抗率の減少をもたらすことができる。
【0117】
さらなる用途は、CNSと1つ又は複数のさらなる添加剤(例えばカーボンブラック、CNT、シリカ、銀フレーク、ニッケルコーティングされたグラファイト等)との組み合わせを、その組み合わせについてのパーコレーション閾値又はその閾値の直上で用いる。
【0118】
本明細書において説明されるCNSを含有するシリコーンベースの系の調製において行われる処理工程は、CNS由来の種、例えばCNSフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを生成することができ、それらは、CNSを輸送するのに使用される前駆体を通して又は系を通して、個々の形態で(例えば均一に)分配される。例えば、CNSをシリコーンベースの構成成分中に分散させるのに使用される配合操作に関連するせん断力は、初期構造体のフラグメント化及び/又は元のCNSからのカーボンナノチューブの「剥離」をもたらすことができる。
【0119】
それらの減少したサイズを除けば、CNSフラグメント(部分的にフラグメント化されたCNSも含む用語)は、損傷を受けていないCNSの特性を一般に有していて、上記のように、電子顕微鏡及び他の技術によって特定することができる。破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び分散されたCNSは、CNS中のCNT間の架橋が壊れたときに、例えば適当な量の適用されるせん断の下で、形成することができる。
【0120】
CNSを含有するシリコーンベースの系中の例示的なCNSフラグメントのサイズは、約0.5~約20μm、例えば約0.5~約1μm;約1~約5μm;約5~約10μm:約10~約15μm;又は約15~約20μmであってよい。幾つかの場合において、フラグメントのサイズを減少させすぎること、例えば0.5μm未満に減少させることは、CNSを利用することに関連する電気特性を損なう場合がある。使用される場合には、カーボンブラック粒子及び/又はCNTは、約0.1ミクロン~約10ミクロンの範囲であってよい。
【0121】
硬化された製品の多くにおいて、CNS及び/又はCNS由来の種は、例えば図4の光学顕微鏡像において見られるように、シリコーンベースのマトリックスを通じて均一に分配されている。
【0122】
硬化プロセスは、用いられる具体的なシリコーンベースの系について当業者によって典型的に使用される手順、及び硬化剤、触媒、架橋剤、抑制剤、光開始剤等に従って行うことができる。特定の実施態様において、硬化されたシリコーンベースのポリマーは後硬化を受けてよく、後硬化において、硬化されたシリコーンは、特定の時間、特定の温度に設定されたオーブン中でさらに加熱される。当業者にとって公知である後硬化のための時間及び温度の任意の組み合わせ、例えば177℃で2時間、200℃で2時間又は200℃で4時間、が適切である。
【0123】
本発明の多くの態様は、例えば適した成形プロセスで、押し出しプロセス又は注入成形を介して、硬化工程を行うことによって得られる成形可能な組成物に関する。硬化可能なシリコーンベースの組成物は、当業者にとって公知である、シリコーンベースのポリマーのために適した任意の技術によって、成形、硬化及び形状付けすることができる。
【0124】
硬化された後、本明細書において説明されるCNSを含有するシリコーンベースの系は、両方ともにASTM D412に従って測定した場合に、0.5MP超、例えば0.5MPa~10MPaの引張強度、及び/又は40%~300%、例えば45%~120%の破断伸びを有することができる。
【0125】
本発明の幾つかの態様は、シリコーンベースの構成成分並びにCNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含有するが、発泡体ではない硬化された組成物に関する。実際に、幾つかの例において、製造の間の空気(又は別のガス)の取り込みを最小化するように測定が行われている。一般に、サンプルの破壊表面に肉眼で観察することができる(例えば約0.1mm以上の)空気泡がないことが望ましい。
【0126】
軽量材料は、幾つかの用途、例えばEMI又はESDシールドのために重要である。これに関して、CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含有する硬化されたシリコーンベースの系は、2g/cm3以下、例えば1.5g/cm3以下又は1.2g/cm3以下の密度を有してよく、好ましくは、2mm厚さのサンプルについて、1.5GHzで、少なくとも35dB、例えば少なくとも40dBのシールド効率を達成する。
【0127】
幾つかの実施態様において、シリコーンベースのポリマー中に分配されたCNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含有する硬化された組成物は、その堆積(又はバルク)抵抗率(すなわち、同じ密度を有する材料における電流に関する電位勾配の比によって計算される、そのボディを通る漏洩電流に対する材料の抵抗)によって特徴づけることができる。1立方メートルの材料の対向する面間の直中電流抵抗が、SI単位の体積抵抗率(ohm・m又はohm・cm)に等しい。体積抵抗率を測定するためのプロトコルは、ASTM-D257-07に提供されている。
【0128】
幾つかの実施において、本明細書において説明されているもの等の硬化された材料の体積抵抗率(VR)は、電気伝導体、半導体又は絶縁体を特徴づけるものである。他の実施において、シリコーンベースのポリマーと、CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSとを含有する硬化された系は、約1011ohm・cm未満、例えば108ohm・cm未満、107ohm・cm未満、106ohm・cm未満、約104ohm・cm未満、1000ohm・cm未満、又は約100ohm・cm未満の体積抵抗率を有することができる。特定の例において、CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含む硬化されたシリコーンベースの系は、約50ohm・cm、35ohm・cm未満、10ohm・cm未満、5ohm・cm未満、4ohm・cm未満、3ohm・cm未満、2ohm・cm未満、又は1ohm・cm未満のバルク抵抗率を有する。
【0129】
様々なCNS装填量で調製された、分散されたCNS及び/又はCNS由来の種を含有する2つのビニルシロキサンの体積抵抗率の例示的なプロットが図5に示されている。
【0130】
当分野において公知であるように、EMIシールドは、以下のメカニズム:反射、吸収及び多重反射のうち1つ又は複数によって行うことができる。EMIシールド用途について、本明細書において説明される硬化されたシリコーンベースのポリマー-CNS系は、それらのシールド効率(SE)(デシベル(dB)で表されるパラメータ)によって特徴づけられることができ、以下の式:
SE=10log(Pi/Po)
に従って、電磁波の入力電力(Pi)と出力電力(Po)との比で定義することができる。
【0131】
CNS、CNSのフラグメント、破壊されたCNT、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSを含有する硬化されたシリコーンベースの系のSEを評価するための適した試験は、ASTM D4935に特定される試験である。
【0132】
硬化されたシロキサンベースの組成物中のCNS、CNSのフラグメント、破壊されたナノチューブ、延伸されたCNSストランド及び/又は分散されたCNSの存在は、CNSを用いずに(及びカーボンブラック、CNT、シリカ又は銀フレーク等の他の伝導性添加剤も添加せずに)調製された硬化されたシリコーンベースの組成物と比較して改善されたEMIシールドを示すことができることが見出された。改善されたEMIシールドは、カーボンブラック又はヒュームドシリカ等のEMIシールドに寄与しない充填剤と組み合わせてCNSが使用されたときであっても維持される。
【0133】
本明細書において説明される組成物は、様々な成形された物品、エラストマー、コーティング、ポッティング又はギャップ充填配合物、ガスケッティング、膜又はメンブレン、航空機、宇宙又は自動車部品、タービン又は他のエンジン構成要素、ボート又は船の部品、タービンブレード、医療機器等を調製するのに使用することができる。
【0134】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに例示される。
【実施例
【0135】
伝導性試験
電圧電流計(DC増幅、検電器)を使用して、106ohm以下の体積抵抗Rv又は106ohm・cm以下の体積抵抗率を測定した。システムは、ASTM D257-07に一致する測定方法を用いて、抵抗/抵抗率試験を行う。
【0136】
180℃で10分、20000ポンドでのホットプレスにおいて、2.5インチ×0.5インチ×0.05インチ(63.5mm×12.7mm×1.18mm)の寸法を有する型中でサンプルを硬化した。次いで、20トンフォースの圧縮の下で5分間、型を冷却した。冷却プレスを50oF(10℃)以下の温度で維持した。硬化の後、20000ポンドでのコールドプレスにおいてサンプルを冷却し、次いでサンプルの厚さ(t)及び幅(W)を正確に測定した。
【0137】
伝導性試験の前に、成形したバーの両方の端部に銀ペイントの層を適用して、23度で20分間乾燥した。成形したバー(サンプル)を、43mm離れた(L)2つの黄銅電極の間に固定した。
【0138】
電圧電流計を使用して、ペイントされた電極の間で電気抵抗(ohm)を測定した。
【0139】
以下の式:
ρv=(RvxA)/L(ohm・cm)
(式中、A=Wxt(cm2))を使用して、体積抵抗率を計算した。
【0140】
Keithley 8009抵抗率試験装置を有するKeithley 6517抵抗計を使用して、ASTM D257-07に従って、106ohmを超える体積抵抗Rv、又は106ohm・cmを超える体積抵抗率を測定した。
【0141】
2mmの直径及び2mmの厚さを有する円形のダイ中で、ポリマーサンプルを硬化した。硬化条件は、106ohm以下の体積抵抗又は106ohm・cm以下の体積抵抗率を有するサンプルについての条件と同じであった。Keithley Model 8009抵抗率試験装置の導入マニュアルに従って、体積抵抗率を測定した。交流電圧を5~10Vとして設定した。試料毎に8回の試験からの平均の結果を記録した。
【0142】
EMIシールド試験
電磁干渉(EMI)シールド効率(SE)試験標準ASTM D4395-1を使用して、30MHz~1.5GHzの周波数範囲で、硬化したエラストマー化合物を評価した。EMIシールド試験のための硬化したエラストマーサンプルの構成は、ASTM D4935に準拠していた。180℃で20分、20000ポンドでのホットプレスにおいて、EMI試験サンプルを6インチ×6インチ(15cm×15cm)のシリコーンベースのプラークから型抜きした。次いで、20トンフォースの圧縮の下で5分間、型を冷却した。冷却プレスを50oF(10℃)の温度で維持した。IEEE標準299に従って、2.0GHz~18GHzの周波数範囲で、成形したままの試験プラークに対して、さらなるEMIシールド効率試験を行った。硬化したサンプルの厚さは1~2mmであった。効率測定の要素として、正確な寸法を測定した。試験器具は、信号生成器(Marconi、モデル10874-83-1)、スペクトル分析器(Hewlett Packard、モデル8564E)、ASTMシールド効率試験装置(Electro Metrics、EM-2107A)、及びコンピュータにインストールされたQuantum Change Tileソフトウエア(Version 3.4.k.6)を備えていた。シールド効率(SE)をデシベル(dB)で測定した。
【0143】
これらの試験の実行に利用した測定及び試験設備は、参照標準又は暫定標準を利用する、Keystone Compliance,LLCによる、ANSI/NCSL Z540-3-2006に従って校正し、その校正はアメリカ国立標準技術研究所(NIST)に起因して認証されている。
【0144】
機械特性試験
180℃で10分、20000ポンドでのホットプレスにおいて、サンプルを硬化して、2mm厚さのサンプルを形成した。硬化の後、20000ポンドでのコールドプレスにおいてサンプルを冷却した。Die-C標準ダイを使用して、ダンベル型のサンプルを型抜きした。ASTM D412に従って引張特性を測定し、歪速度は500mm/分であった。
【0145】
分散性試験
未硬化のサンプルの一部を回収し、重量を量り、サンプルを調製するのに使用したレジンとおおよそ同じ粘度を有する非希釈未硬化のシリコーンベースの樹脂で、0.1%の合計のCNS装填量までレットダウンした。滴サイズの量の材料をレットダウンから回収し、手によって、2枚の顕微鏡スライドの間で圧縮した。像は200倍で取られ、おおよそ1000ミクロン×1400ミクロンの寸法を有していた。必要な場合には、炭素ナノ構造体フラグメントの幅を手で測定するか、又は像分析ソフトウエアを使用した。50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが観察されたとき、分散は許容可能であった。
【0146】
例1~9
以下の混合手順に従って、硬化可能なシリコーンベースの化合物を調製した。ビニル官能化ポリジメチルシロキサン(VGM-021 ジメチルメチルビニルシロキサンゴム、0.2~0.3% ビニルメチルシロキサン、Gelest)を、ローラーブレードを有する680ccのBrabenderミキサー中で(60℃、60rpm、充填率0.7)、8分間で、下の表1に記載される充填剤と混合して、第一の混合経路における分散体を形成して、次いで室温に冷却した。カーボンブラックは、Cabot CorporationのVULCAN SC72Rであった。Cabot CorporationのCAB-O-SIL TS-530ヒュームドシリカもまた利用可能である。ニッケルコーティングされたグラファイト(NiGr;E-Fill 2701)をOerlikon Metcoから入手した。FS8グレードの銀フレークを、Johnson Mattheyから入手した。PEGコーティングされたCNSを、Cabot Corporationから入手した。第二の経路において、対応する量の過酸化物触媒(Luperox(登録商標) 101XL45)を、第一の経路からの化合物に添加して、同じ条件の下で追加の2分間混合した。得た材料を室温に冷却して、2ロールミルにおいて、2分間処理して、硬化可能なシートを作製した。
表1:例1~9の硬化可能なビニルシロキサン組成物
【表1】
表2:例1~9についての硬化したビニルシロキサンの特性
【表2】
*VR-堆積抵抗率
a-ASTM D4935方法
b-IEEE 299方法
【0147】
例10~15
例10~15における硬化可能なシリコーンベースの化合物を、マスターバッチ(MB)を高粘度ビニルシロキサンゴムと組み合わせることによって調製した。680ccのBrabenderミキサーを使用して(60℃、充填率0.7、60rpm、8分間)、表3に記載されるように、CNS粒子をVGM-021ポリシロキサンビニルゴムに直接分散させることによって5%CNSマスターバッチ(MB)を調製して、室温に冷却した。5%CNSのMB混合物を、2ロールミルで追加の2分間さらに処理して、マスターバッチシートを形成した。マスターバッチシートからサンプルを切断して、重量を図って、0.05%~1.0%の最終CNS充填量を有するレットダウンサンプルを調製した。例11~15について、5%CNSのマスターバッチサンプルを、Brabenderミキサー中で(60℃、充填率0.7、60rpm、8分間)、表4に記載されるように、さらなるビニルゴムと混合して、次いでLuperox(登録商標)101XL45過酸化物触媒を混合物に添加した。Brabenderミキサー中で(60℃、充填率0.7、60rpm)、2分間、最終組成物を混合して、2ロールミルに移して、2分間処理して、硬化可能なシリコーンベースのシートを作製した。マスターバッチのルートによって調製した例11は、CNSをポリシロキサンラバーゴムに直接混合することによって調製した例2よりも低い抵抗率を示し、このことは、マスターバッチルートが優れた製品をもたらすことができることを示している。例11の高いレベルのCNSの分散は、図4に示されている。
表3:ビニルゴム中のCNSマスターバッチ(5%)
【表3】
表4:ビニルゴム中のCNSレットダウン配合物、例11~15
【表4】
表5:例11~15の硬化したHTVエラストマーの特性
【表5】
【0148】
以下のように、液体シロキサン樹脂を使用して、硬化可能なシリコーンベースの化合物を調製した。表6の配合に従って、Flacktek Max 200 Longカップ(Part number 501-220LT、Flacktek,Inc.)中で、ビニル官能化ポリジメチルシロキサン(DMS-V41 ビニルメチルシロキサン、分子量62700g/mol、Gelest,Inc.)をCNSペレットと予備混合して、DAC 600Speedmixer(登録商標)(Flacktek,Inc)によって、1500RPMで15秒間混合した。CNS-シロキサン予備混合ペーストをBrabenderミキサー中で、8分間の第一の混合経路(60℃、60rpm、充填率0.7)で混合して、樹脂中のCNSを分散させて、次いで室温に冷却した。第二の混合経路において、対応する量のLuperox(登録商標)101XL45過酸化物触媒をBrabenderミキサーに添加して、第一の経路と同じ条件の下で2分間、配合物を混合し、次いで材料を2ロールミルに移し、2分間処理して、硬化可能なシートを作製した。最終的な硬化可能なポリシロキサン組成物を表6に記載する。
表6:過酸化物によって硬化した液体シロキサン中に分散されたCNS(5%)
【表6】
【0149】
例17~21
マスターバッチ(MB)を液体シロキサン(DMS-V41 液体シロキサン樹脂、Gelest,Inc.)と組み合わせることによって、例18~21の硬化可能なシリコーンベースの化合物を調製した。表7の配合及び例16の方法を使用して、5%のCNSマスターバッチ(例17)を調製した。マスターバッチシートからサンプルを切断して、重量を量って、0.05%~1.0%の最終CNS充填量を有するレットダウンサンプルを調製した。例18~21のレットダウンを調製するために、切断し、重量を量った5%のCNSマスターバッチサンプルを、Flacktek DAC 600プラネタリースピードミキサー中で、さらなるビニルゴムと混合した(表8の配合;合計のバッチサイズ165g)。以下:1500rpmにおける2回30秒のラン(run)、1500rpmにおける5回60秒のラン、2000rpmにおける2回30秒のラン、及び2000rpmにおける3回60秒のラン、の複数のランで混合を行った。ランの間にサンプルを冷却して、硬化を加速させ粘度を低下させ得る熱の増大を妨げた。マスターバッチがレットダウンに十分に分散された後、表8に記載されるようにLuperox(登録商標)101XL45過酸化物触媒を添加して、1500rpmで、2回の1分間のインターバルで、プラネタリーミキサー中で、最終組成物をさらに混合した。それぞれの混合ランの間に温度を監視し、80℃未満に保持した。2つの混合ランの間に、サンプルを室温に冷却して、過熱を回避した。第二の混合ランの間に、混合速度を下げて、新たな気泡が発生するのを妨げ、真空を使用して残存する気泡をサンプルから除去した。混合の後、レットダウン混合物を2ロールミルに移して、2分間処理して、硬化可能なシートを作製した。サンプルについての体積抵抗率及びシールド効率を表9に記録する。
表7:ビニル液体樹脂中のCNSマスターバッチ(5%)の調製
【表7】
表8:液体シロキサン樹脂中のCNSレットダウン配合物、例18~21
【表8】
表9:例16~21の硬化したポリシロキサンの特性
【表9】
【0150】
例22~23
表10に木佐される配合に従って、白金硬化(Pt硬化)液体シロキサンラバー(LSR)によって、例22~23を調製した。非希釈のLSR樹脂(DMS-V41 シロキサン樹脂、Gelest,Inc.)又は例17によって調製したマスターバッチのいずれかを、CAB-O-SIL TS-530ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)と組み合わせた。
【0151】
ブランク(CNSフリー)Pt硬化可能のシリコーンベースの化合物には、DAC 200ミキサーカップを備えるFlacktek DAC600プラネタリースピードミキサーを使用した。5分間、2000rpmで、TS-539ヒュームドシリカをDMS-V41樹脂と組み合わせた。シリカ-シリコーンベースの分散体を室温に冷却した。HMS-301架橋剤及びSIT 7900.2抑制剤(ともにGelest,Inc.)を混合物に添加して、1分間、2000rpmで分散させた。最後に、白金触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液、CAS#68478-92-2)を添加して、30秒間、1000rpmで最終配合物を混合した。得た硬化可能なシリコーンベースのサンプルを、上記の圧縮型中で硬化して、機械試験及び抵抗率測定のためのサンプルを製造した。体積抵抗率及びシールド効率を表11に記録する。
表10:Pt硬化可能なLSR配合物
【表10】
表11:白金硬化可能なLSR配合物
【表11】
【0152】
CNSを含有する、白金硬化可能なLSR化合物を、マスターバッチプロセスを使用して調製した。例17の5%のCNS-ポリシロキサンマスターバッチを切断して、重量を量って、例23のレットダウンサンプルを調製した。表10に示される量のマスターバッチ、さらなるポリシロキサン、及びTS-530シリカを、8分間で、ローラーブレードを有する680ccのBrabenderミキサー中で(60℃、60rpm、充填率0.7)組み合わせて、第一の混合経路の分散体を形成して、次いで室温に冷却した。第二の経路において、対応する量の架橋剤及び抑制剤を第一の経路からの化合物に添加して、追加の4分間、Brabenderミキサー中で(室温、60rpm、充填率0.7)混合した。材料を室温に冷却した。Brabenderにおける最終混合工程において、対応する量の触媒をミキサー中に添加して、2分間(室温、60rpm、充填率0.7)混合した。硬化可能なシロキサン混合物を、2分間、2ロールミル中で混合して、硬化可能なシリコーンシートを作製した。得た硬化可能なポリシロキサンサンプルを、上記の圧縮型中で硬化して、機械試験及び抵抗率試験のためのサンプルを製造した。体積抵抗率及びシールド効率を表11に記録する。
【0153】
図5は、例11~16及び18~21のCNSを含有するシリコーンベースのサンプルについてのパーコレーション曲線を示している。データは、触媒の選択又はシリカの添加のいずれかによっては、電気伝導性が劇的には影響を受けないことを示している。抵抗率は、少量のCNSの添加であっても劇的に減少し、パーコレーションが達成された後であっても減少を続ける。図6は、様々な実験例(白抜き)及び比較例(黒塗り)についての、周波数に対するシールド効率の変化を示している。結果は、CNSが優れたシールド能力を提供すること、及びこのシールドが高い周波数において、より際立っていることを示している。
【0154】
例24
硬化可能なハイブリッドポリマー配合物を、マスターバッチをさらなるシリル末端プレポリマーと組み合わせることによって調製する。例16と同様に、CNS粒子を、KANEKA MS POLYMER(登録商標)S303Hシリル末端ポリエーテル樹脂に直接予備混合することによって5%CNSマスターバッチを調製して、次いでローラーブレードを備える680ccのBrabenderミキサーを使用して(60℃、充填率0.7、60rpm、8分間)、窒素ブランケットの下で分散させた。次いで、マスターバッチを室温に冷却して、サンプルを切断して、重量を量って、0.05%~5.0%の最終CNS装填量を有するレットダウンサンプルを調製した。サンプルの秤量及びサンプリングを、湿度制御した乾燥ボックス(例えば3%未満の相対湿度)中で行う。1%の最終CNS装填量について、マスターバッチサンプルを、さらなるS303Hポリマー(合計のポリマー57%)、CAB-O-SIL TS-530疎水性シリカ(10wt%、Cabot Corporation)及びポリプロピレングリコール可塑剤(PPG3000、31.4wt%、Sigma-Aldrich)と組み合わせる。まず、ヒュームドシリカを105℃で2時間乾燥させて水分を除去する。Flacktek DAC 600プラネタリースピードミキサー中で、2000rpmで、1分間のインターバルで合計10分間、構成成分をブレンドし、そのインターバルの間にサンプルを冷却して、硬化又はより低い粘度を促進する場合がある発熱を妨げた。ジブチルスズ触媒(0.6wt%)を混合物に添加して、次いで、完全な混合物(合計の質量=165g)を、追加の2分間、1500rpmでさらに混合する。水分硬化可能な化合物を、室温で、カートリッジに充填するか、又は成形する。室温において、水分によって(23度、50%の相対湿度、7日間)サンプルを硬化して、高い伝導性及び望ましい機械特性を有する材料を提供することができる。
【0155】
例25
マスターバッチを、架橋剤シリコーンを含有する別の部を有するさらなるビニル官能化シリコーンと組み合わせることによって、硬化可能な二部(「A」及び「B」)シリコーン配合物を調製する。例16に記載されるように、CNS粒子をDMS-V41シリコーンに直接予備混合することによって5%CNSマスターバッチを調製し、次いでローラーブレードを備える680ccのBrabenderミキサーを使用して(60℃、充填率0.7、60rpm、8分間)、窒素ブランケットの下で分散させた。次いで、マスターバッチを室温に冷却して、サンプルを切断して、重量を量って、(最終A+B配合物中のシリコーン合計の質量に対して)0.05%~5.0%の最終CNS装填量と、0.19%の白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体溶液とを有するレットダウンサンプルを調製した。Flacktek DAC 600プラネタリースピードミキサー中で、2000rpmで、1分間のインターバルで合計10分間、構成成分をブレンドすることによってレットダウンを調製し、そのインターバルの間にサンプルを冷却して、混合効率を低下させるか、又は構成成分を分解する場合がある発熱を妨げた。
【0156】
「A」及び「B」構成成分を1:1の比で組み合わせるとき、「B」構成成分は、5%CNSマスターバッチと、ポリメチルヒドロシロキサン(トリメチルシリル末端、HMS-992シロキサン、Gelest)と、所望のCNS装填量(0.05~5.0%)及び(質量基準で)10:1のDMS-V41/HMS-992の比を達成するのに十分な非希釈のDMS-V41シリコーンとの混合物を含有する。「A]構成成分と同様に、Flacktek DAC-600プラネタリースピードミキサー中で、構成成分を混合する。「B」部に対しては、混合の各工程中に水分を除去することを確実にするよう注意しなければならない。なぜなら、水分はヒドロシランとの架橋反応を開始させて、その活性を低下させる場合があるからである。「A」及び「B」構成要素を、手で1:1の比で混合して、室温で、典型的には室内条件(23℃、10~50%の相対湿度)で硬化して、高い伝導性及び所望の機械特性を有する材料を提供する。
【0157】
本発明は、その好ましい実施態様を参照して、具体的に示され説明されたが、当業者は、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更をすることができると理解するだろう。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
硬化されたシロキサンポリマー又は硬化されたシリル末端ハイブリッドポリマーを含む硬化されたポリマーと、
前記硬化されたポリマー中に分散されていて、かつ炭素ナノ構造体、炭素ナノ構造体のフラグメント、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのCNS由来の材料と
を含み、
前記炭素ナノ構造体又は炭素ナノ構造体のフラグメントが、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含み、
前記破壊されたカーボンナノチューブが、前記炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有していて、
前記延伸されたCNSストランドが、前記炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含み、かつ
前記分散されたCNSが、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む、硬化されたポリマー複合体。
(付記2)
前記組成物が、0.01~15wt%のCNS由来の材料を含む、付記1に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記3)
前記シロキサンポリマーが、Me 3 SiO(SiMe 2 O) n Meを含み、式中、nが2以上であり、少なくとも1つのメチル基が、R’及び-(O-SiR’R’’) n -から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’が、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである、付記1又は2に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記4)
前記シリル末端ハイブリッドポリマーが、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含む、付記1~3のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記5)
0.5MPa超又は0.5MPa~10MPaの引張強度、40%~300%の破断伸び、及び10 5 ohm・cm未満の体積抵抗率のうち1つ又は複数を有する、付記1~4のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記6)
前記硬化されたポリマーが架橋されている、付記1~5のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記7)
前記組成物が、2mm厚さのサンプルについて、1.5GHzにおいて、少なくとも35dBのシールド効率を有する硬化されたポリマー組成物である、付記1~6のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記8)
前記炭素ナノ構造体が、結合剤でコーティングされているか、又は結合剤とともに混合物中にある、付記1~7のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記9)
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、付記1~8のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体。
(付記10)
付記1~9のいずれか1項に記載の硬化されたポリマー複合体を含む、電磁干渉シールドのための、物品。
(付記11)
電磁干渉シールドのためのポリマー複合体を調製するための方法であって、
炭素ナノ構造体を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択される硬化可能かつ成形可能なポリマーを含む未硬化のポリマーと組み合わせて混合物を形成し、前記炭素ナノ構造体を前記未硬化のポリマー中に分散させ、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせから選択されるCNS由来の材料を生成する組み合わせ工程
を含み、
前記炭素ナノ構造体が、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含み、
前記破壊されたカーボンナノチューブが、前記炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有していて、
前記延伸されたCNSストランドが、前記炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含み、かつ
前記分散されたCNSが、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む、方法。
(付記12)
組み合わせ工程が、1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積を有する前記混合物の顕微鏡像の観察によって、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが見られるまで、前記炭素ナノ構造体を分散させることを含み、前記混合物が、観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、約0.1%のCNS由来の材料の装填量へと前記混合物を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製される、付記11に記載の方法。
(付記13)
前記ポリシロキサンが、Me 3 SiO(SiMe 2 O) n Meを含み、式中、nは2以上であり、少なくとも1つのメチル基は、R’及び-(O-SiR’R’’) n -から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’は、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである、付記11又は12に記載の方法。
(付記14)
前記シリル末端ハイブリッドポリマーが、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含む、付記11~13のいずれか1項に記載の方法。
(付記15)
組み合わせ工程が、前記炭素ナノ構造体を、オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、水性溶媒、非水性溶媒又は可塑剤から選択される媒体と混合してマスターバッチを形成することと、前記マスターバッチを前記未硬化のポリマーと混合して前記混合物を形成することとを含む、付記11~14のいずれか1項に記載の方法。
(付記16)
前記混合物を、ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択されるレットダウンポリマーと組み合わせることをさらに含む、付記11~15のいずれか1項に記載の方法。
(付記17)
前記ポリシロキサンが、一構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系又は二構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系の構成成分である、付記11~16のいずれか1項に記載の方法。
(付記18)
前記炭素ナノ構造体が、0.01~15wt%の量で提供される、付記11~17のいずれか1項に記載の方法。
(付記19)
前記炭素ナノ構造体が、結合剤でコーティングされているか、又は結合剤とともに混合物中にある、付記11~18のいずれか1項に記載の方法。
(付記20)
前記コーティングされた炭素ナノ構造体の重量に対する前記結合剤の重量が、約0.1%~約10%である、付記19に記載の方法。
(付記21)
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を前記混合物に添加することをさらに含む、付記11~20のいずれか1項に記載の方法。
(付記22)
前記混合物を硬化するか、又は硬化させることをさらに含む、付記1~21のいずれか1項に記載の方法。
(付記23)
前記混合物が、触媒、熱、架橋剤、水分、マイクロ波照射、青色LED、紫外光、電子ビーム照射及び光開始剤のうち1つ又は複数の存在の下で硬化される、付記11~22のいずれか1項に記載の方法。
(付記24)
付記11~23のいずれか1項に記載の方法によって調製された、ポリマー複合体。
(付記25)
1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積を有する前記ポリマー複合体の光学顕微鏡像の観察によって、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントが見られ、前記ポリマー複合体が、観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、0.1%のCNSの装填量へと前記ポリマー複合体を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製される、付記24に記載のポリマー複合体。
(付記26)
ポリシロキサン又はシリル末端ハイブリッドポリマーから選択される硬化可能かつ成形可能なポリマーと、破壊されたカーボンナノチューブ、延伸されたCNSストランド、分散されたCNS及びそれらの任意の組み合わせから選択されるCNS由来の材料とを含む未硬化のポリマーを含み、
前記炭素ナノ構造体が、分岐させる、互いにかみ合わせる、絡ませる、及び/又は共通の層を共有することによってポリマー性構造体中で架橋されている複数の複数層カーボンナノチューブを含み、
前記破壊されたカーボンナノチューブが、前記炭素ナノ構造体に由来し、分岐され、互いに共通の層を共有していて、
前記延伸されたCNSストランドが、前記炭素ナノ構造体に由来し、互いに対して直線的に配置されたCNTを含み、かつ
前記分散されたCNSが、互いに共通の層を共有していない剥離した破壊されたCNTを含む、硬化可能なポリマー組成物。
(付記27)
前記硬化可能なポリマー組成物が、光学顕微鏡における観察のために、さらなる未硬化のポリマーで、約0.1%のCNS由来の材料の装填量まで前記組成物を希釈して、2枚のガラス顕微鏡スライドの間で滴サイズ分量を圧縮することによって調製されて試料が作られるとき、1000ミクロン×1400ミクロン又は同等の面積の試料の面積を示す顕微鏡像が、50ミクロン超のバンドル幅を有する炭素ナノ構造体の1つ以下のフラグメントを含有する、付記26に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記28)
前記ポリシロキサンが、Me 3 SiO(SiMe 2 O) n Meを含み、式中、nは2以上であり、少なくとも1つのメチル基は、R’及び-(O-SiR’R’’) n -から選択される基によって任意選択で置換されていて、R’及びR’’は、独立に、直鎖又は分岐鎖のアルキル、直鎖又は分岐鎖のハロアルキル、アリール、ハロアリール、アルコキシ、アラルキル、シラシクロアルキル、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、エポキシ、エステル、アルコキシ、イソシアネート、フェノール、ポリウレタンオリゴマー、ポリアミドオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマー、ポリオール、カルボキシプロピル又はハロである、付記26又は27に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記29)
前記シリル末端ハイブリッドポリマーが、アルコキシシラン末端ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ又はポリエーテルを含む、付記26~28のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記30)
オイル、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、水性溶媒、非水性溶媒又は可塑剤をさらに含む、付記26~29のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記31)
前記ポリシロキサンが、一構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系又は二構成成分の硬化可能なシリコーンベースポリマー系の構成成分である、付記26~30のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記32)
前記CNS由来の材料が、0.01~15wt%の量で存在する、付記26~31のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記33)
前記CNS由来の材料が、結合剤をさらに含む、付記26~32のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記34)
前記CNS由来の材料の重量に対する前記結合剤の重量が、約0.1%~約10%である、付記33に記載の硬化可能なポリマー組成物。
(付記35)
ヒュームドシリカ、沈降シリカ、半導体酸化物、ニッケルコーティングされたグラファイト、金属、金属合金、炭素繊維、CNT、グラフェン、グラファイト、カーボンブラック、クレー、金属炭化物、金属窒化物、金属リン酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属ハライド、金属水酸化物、ガラス及び有機繊維からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、付記26~34のいずれか1項に記載の硬化可能なポリマー組成物。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B