IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

特許7595684抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル
<>
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図1
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図2
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図3
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図4
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図5
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図6
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図7
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図8
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図9
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図10
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図11
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図12
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図13
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図14
  • 特許-抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】抵抗素子を有するクローバ分岐を含むセル
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20241129BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241129BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/48 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022576182
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2020066368
(87)【国際公開番号】W WO2021249657
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モハナベラマニ,アラビンド
(72)【発明者】
【氏名】スタマティオウ,ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】アソーダー,モフセン
(72)【発明者】
【氏名】イバニェス,マルタ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインク,ユルゲン
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0348925(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0173393(US,A1)
【文献】特開2015-050852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧源コンバータ(10)のためのセル(12)であって、前記セル(12)は、
第1のセル接続端子(CC1)と、
第2のセル接続端子(CC2)と、
中点が前記第1のセル接続端子(CC1)を形成する、2つのスイッチ(T1,T2)の第1の直列接続と、
コンデンサ(C)を含むエネルギ蓄積分岐(ESB)と、
前記エネルギ蓄積分岐(ESB)と並列接続されたクローバ分岐とを備え、前記クローバ分岐は、
短絡故障の検出に基づいて前記エネルギ蓄積分岐(ESB)の前記コンデンサ(C)を短絡させるように作動されるように適合された第1のスイッチング素子(SCB1)と、
前記第1のスイッチング素子と直列接続された非線形抵抗を有するサージアレスタ(RDA)とを含み、前記サージアレスタ(RDA)は、前記コンデンサ(C)の定格電圧よりも10~20倍低いクランプ電圧(Vclamp)を有することにより、前記クローバ分岐の減衰を改善し、
前記クローバ分岐は第2のスイッチング素子(SCB2)をさらに含み、前記第1のスイッチング素子(SCB1)は前記クローバ分岐の上部に配置され、前記第2のスイッチング素子(SCB2)は前記クローバ分岐の下部に配置され、前記上部とスイッチング素子(SCB2;SCB3)を有する隣接部との間の接合部は、2つのスイッチ(T1,T2)の前記第1の直列接続の中点に接続され、2つのスイッチ(T1,T2)の前記直列接続の第1の端は前記第2のセル接続端子(CC2)を形成する、セル(12)。
【請求項2】
前記サージアレスタは、前記第1のスイッチング素子の作動から10~200μs以内などの短い期間で前記コンデンサのエネルギを消散させるように構成されている、請求項1に記載のセル(12)。
【請求項3】
前記セル接続端子(CC1,CC2)の間に接続されたバイパススイッチ(BPS)をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のセル(12)。
【請求項4】
記サージアレスタ(RDA)は前記クローバ分岐の前記下部において接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載のセル(12)。
【請求項5】
記サージアレスタ(RDA)は前記クローバ分岐の前記上部において接続される、請求項1~3のいずれか1項に記載のセル(12)。
【請求項6】
前記エネルギ蓄積分岐(ESB)と並列接続された2つのスイッチ(T3,T4)の第2の直列接続をさらに備え、2つのスイッチ(T3,T4)の前記第2の直列接続の中点は前記第2のセル接続端子(CC2)を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載のセル(12)。
【請求項7】
セルを備えるモジュラーマルチレベルコンバータ(10)であって、少なくとも1つのセルは請求項1~6のいずれか1項に記載のセル(12)である、モジュラーマルチレベルコンバータ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、パワーコンバータ、特に電圧源コンバータ(VSC)の分野に関する。本願は、より具体的には、モジュラーマルチレベルコンバータ(MMC)において使用することができるセルに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
MMC等のVSCは、スイッチを含む。これらのスイッチは、セルが、DCバスバーを介してコンデンサに接続された2つのスイッチの直列接続を含み得る、いわゆるハーフブリッジまたはフルブリッジセルとして構成され得る。スイッチとして、半導体、特にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のようなトランジスタが使用される。MMCは、モジュール性、スケーラビリティが高く、高調波性能に優れ、損失が少ないため、グリッド接続コンバータに対して広く用いられる選択肢となっている。
【0003】
MMCセル内の半導体モジュール(たとえばIGBTモジュール)が故障すると、大規模な損傷のリスクが高くなり得る。多くの場合、ハーフブリッジまたはフルブリッジ回路内の1つのIGBTが故障すると、隣接するIGBTが、結果として生じるDCコンデンサからの故障電流を除去できる場合がある。しかしながら、この故障電流を防止できない場合もある。
【0004】
IGBTとDCコンデンサとの間の浮遊インダクタンスは(許容可能なコンバータ性能/IGBTコレクタ-エミッタ端子における低い過渡過電圧/低いIGBTスイッチング損失を実現するために)意図的に非常に低い場合があり、セルDCコンデンサ内の蓄積エネルギは高い場合があるので、予想故障電流は、数百kAの範囲であるなど、高い場合がある。
【0005】
MMCの場合、実電力/無効電力伝達の結果と生じるリップルエネルギをバッファリングするために、大きなセルコンデンサが必要であることが多い。半導体の短絡故障時には、セルコンデンサエネルギは半導体を介して放出されるので、セルの爆発/重大な破壊につながる可能性がある。
【0006】
対策を講じなければ、IGBTモジュール内のボンドワイヤ(半導体チップを金属接点に接続するワイヤ)は直ちに故障し、結果として電気アークが発生する。このアークは、DCコンデンサに蓄積された高エネルギによって供給される。これによってIGBTモジュールが爆発し、結果として大規模な破壊が起こる。DCコンデンサに蓄積されるエネルギが増加するにつれて、この問題に対処することは難しくなる。
【0007】
この問題に取り組む1つの方法は、いわゆるDCクローバ(crowbar)を用いてセルコンデンサエネルギの大部分をサイリスタ等のクローバ素子に放出することにより、半導体スイッチへのエネルギ放出を制限することである。しかしながら、この場合、故障電流が大きくなりすぎてクローバでは処理できなくなることがある。
【0008】
上述したことに鑑みて、DCクローバを含むセルにおいて短絡電流が処理される方法を改善することが必要である。
【0009】
したがって、改善されたクローバが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明の第1の局面は、電圧源コンバータのためのセルであって、セルは、第1のセル接続端子と、第2のセル接続端子と、中点が第1のセル接続端子を形成する、2つのスイッチの第1の直列接続と、コンデンサを含むエネルギ蓄積分岐と、エネルギ蓄積分岐と並列接続されたクローバ分岐とを含み、クローバ分岐は、短絡故障の検出に基づいてエネルギ蓄積分岐のコンデンサを短絡させるように作動されるように適合された第1のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子と直列接続されるとともにクローバ分岐の減衰を改善するように設定された抵抗素子とを含む、セルを開示し得る。
【0011】
抵抗素子はさらに、第1のスイッチング素子の作動から10~200μs以内などの短い期間でコンデンサのエネルギを消散させるように構成されている。コンデンサの静電容量がCであり、コンデンサの両端の電圧がVである場合、抵抗素子は、第1のスイッチング素子の作動から10~200μs以内に0.5*C*Vのエネルギを消散できる必要があり得る。
【0012】
加えて、セルは、セル接続端子の間に接続されたバイパススイッチを含んでもよく、このバイパススイッチは機械的なものであってもよく、または電子的なものであってもよい。
【0013】
一実現例において、素子は、サージアレスタ等の、非線形抵抗を有する素子である。加えて、サージアレスタは、コンデンサの定格電圧よりも低いクランプ電圧を有し得る。抵抗素子のクランプ電圧は、コンデンサの定格電圧よりも10~20倍低い範囲であってもよい。言い換えれば、コンデンサの定格電圧は、抵抗素子のクランプ電圧よりも10~20倍高い範囲であってもよい。
【0014】
代替案として、抵抗素子は、線形抵抗Rを有する素子であってもよい。
抵抗Rは、所望の減衰ζにセルのインダクタンスLとセルの静電容量Cとに依存する定数を掛けた値に設定されてもよい。定数は、より具体的には、セル静電容量をセルインダクタンスで割ったものとして形成される式の平方根に依存し得る。定数は、より具体的には、2をこの式の平方根で割ったものとして設定されてもよい。
【0015】
線形抵抗は、ディスク抵抗器を用いて実現されてもよい。
代替案として、線形抵抗は、長手方向軸に沿って延びるクローバ分岐の導体片を用いて実現され、導体片は、長手方向軸に沿って両側に交互に形成された窪みを含むことにより、その端部で相互接続されるとともにスロットによって分離されたバーを有する蛇行構造を形成してもよい。
【0016】
加えて、導体片は第1および第2のセクションを含み、一方のセクションが他方のセクションに積み重ねられ、窪みはセクションの両側に設けられてもよい。加えて、2つのセクションは絶縁体によって分離されてもよい。2つのセクションは長手方向軸に沿って延在してもよい。電流は、一方のセクションを通って構造に入り、他方のセクションを通って構造から出てもよい。電流は、セクション同士が絶縁されている第1の端で構造に出入りしてもよく、2つのセクションは、戻り経路を形成するために、反対端で互いに電気的に接合されてもよい。スロット数は、所望の抵抗を実現するように選択されてもよい。
【0017】
上述の導体片は、アルミニウム等の従来の導体材料で形成されてもよい。代替案として、導体セクションは、ニクロム等の高抵抗材料で形成されてもよい。
【0018】
加えて、導体片は、第1のスイッチング素子を機械的にクランプするために使用されるクランプ素子の一部であることが可能である。第1のスイッチング素子は、たとえば、2つのクランプ素子の間に機械的にクランプされてもよい。この場合、蛇行構造は、クランプ素子のクランプ本体から外へ延在してもよい。加えて、他方のクランプ素子も高抵抗材料で構成されることが可能である。
【0019】
クローバ分岐は、分割クローバ分岐であってもよい。そのため、クローバ分岐は第2のスイッチング素子をさらに含み、第1のスイッチング素子はクローバ分岐の上部に配置され、第2のスイッチング素子はクローバ分岐の下部に配置されてもよい。上部とスイッチング素子を有する隣接部との間の接合部は、2つのスイッチの第1の直列接続の中点に接続され、抵抗素子は、クローバ分岐の上部において接続されてもよく、または下部において接続されてもよい。
【0020】
セルは、2つのスイッチの第1の直列接続の中点が第1のセル接続端子を形成し、2つのスイッチの第1の直列接続の第1の端またはスイッチの第1の直列接続の第2の端のいずれかが第2のセル接続端子を形成する、ハーフブリッジセルであってもよい。
【0021】
ハーフブリッジセルにおける分割クローバ分岐の場合、スイッチング素子を有する隣接部は、第2のスイッチング素子を有する下部であってもよい。抵抗素子はまた、スイッチの第1の直列接続の第2の端が第2のセル接続端子を形成する場合は、クローバ分岐の上部において接続され、2つのスイッチの第1の直列接続の第1の端が第2のセル接続端子を形成する場合は、クローバ分岐の下部において接続される。
【0022】
代替案として、セルは、エネルギ蓄積分岐と並列接続された2つのスイッチの第2の直列接続をさらに含むフルブリッジセルであってもよい。この場合、2つのスイッチの第1の直列接続の中点は第1のセル接続端子を形成し、2つのスイッチの第2の直列接続の中点は第2のセル接続端子を形成する。
【0023】
フルブリッジセルにおける分割クローバ分岐の場合、クローバ分岐は、上部と下部との間に接続された中間部に第3のスイッチング素子を含んでもよい。この場合、スイッチング素子を有する隣接部は、第3のスイッチング素子を有する中間部である。この場合、中間部と下部との間の接合部はまた、2つのスイッチの第2の直列接続の中点に接続されてもよい。
【0024】
さらなる局面は、少なくとも1つのセルが、セルであるこのようなアセンブリである、セルを含むモジュラーマルチレベルコンバータに向けられる。
【0025】
添付の図面を参照して、以下に本開示の実施形態を例示の意味で提示し、それらの利点をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】セルを含むモジュラーマルチレベルコンバータの第1の変形例を示す図である。
図2】ダンピング抵抗を有するクローバ分岐の第1の変形例を含むハーフブリッジセルを示す図である。
図3】ダンピング抵抗を有するクローバ分岐の第1の変形例を含むフルブリッジセルを示す図である。
図4】セルに発生する故障を概略的に示す図である。
図5】共振の正の半周期中の、ダンピング抵抗を有さないセル内の故障電流を示す図である。
図6】共振の負の半周期中の、セル内の故障電流を示す図である。
図7】ダンピング抵抗が非線形抵抗素子を通して実現される第1のクローバ分岐を実現したハーフブリッジセルを示す図である。
図8】非線形抵抗素子の非線形抵抗特性を概説する曲線を示す図である。
図9】ダンピング抵抗が線形抵抗として実現される第1のクローバ分岐変形例を有するハーフブリッジセルを示す図である。
図10】線形ダンピング抵抗の第1の実現例を示す図である。
図11】線形ダンピング抵抗の第2の実現例を示す図である。
図12】ダンピング抵抗を有するクローバ分岐の第2の変形例を含むハーフブリッジセルの実現例を示す図である。
図13】ダンピング抵抗を有するクローバ分岐の第3の変形例を含むフルブリッジセルの実現例を示す図である。
図14】セルを含むモジュラーマルチレベルコンバータの第2の変形例を概略的に示す図である。
図15】セルを含むモジュラーマルチレベルコンバータの第3の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態の詳細な説明
以下、説明のための実施形態を参照して、本開示の原理および精神を説明する。これらの実施形態はすべて、当業者が本開示をより良く理解してさらに実施できるように与えられているに過ぎず、本開示の範囲を限定するために与えられているのではないことを理解されたい。たとえば、一実施形態の一部として図示または記載されている特徴を別の実施形態とともに使用することで、さらに他の実施形態を得ることができる。明確にするために、実際の実装形態のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当然のことながら、いずれかのこのような実際の実施形態の開発時に、実装形態によって異なるであろうシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守などの開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装形態特有の決定が下されるはずであることが理解されるであろう。さらに、このような開発努力は複雑で時間がかかり得るが、それでもやはり、本開示の利益を受ける当業者にとっては日常的な取り組みであることが、理解されるであろう。
【0028】
添付の図面を参照して、開示されている主題を以下に説明する。さまざまな構造、システムおよびデバイスが、説明のためにのみ、当業者に周知である詳細事項でその説明を不明瞭にしないように、図面に概略的に示されている。それでもやはり、添付の図面は、開示されている主題の説明のための例を記載および説明するために含まれている。本明細書において使用する語および語句は、当業者によるそれらの語および語句の理解と一致する意味を有するものと理解および解釈されるべきである。用語または語句の特別な定義、すなわち、当業者によって理解されるような通常の一般的な意味とは異なる定義はいずれも、本明細書中で当該用語または語句を一貫して使用することによって暗示されるよう意図されるものではない。用語または語句が特別な意味、すなわち当業者によって理解される以外の意味を有することが意図される範囲で、このような特別な定義は、用語または語句の特別な定義を直接的にかつ明確に提供する定義的な形式で明細書中に明示的に記載されるであろう。
【0029】
本主題は、セルのクローバ分岐を流れる短絡電流を減衰させることを意図している解決策を提供するものであり、この解決策を用いて、クローバ分岐を作動させてセルコンデンサを放電してバイパスする際の爆発を防止することができる。
【0030】
図1は、上述のピーク短絡電流制限が実現され得るセルを含むコンバータ10を示す。
コンバータ10は電圧源コンバータ(VSC)であり、モジュラーマルチレベルコンバータ(MMC)として実現されてもよい。図1に示される例では、コンバータ10はMMCである。この場合、MMCはいくつか(ここでは3つ)の平行な相脚で構成されており、各相脚はいくつかのカスケード式セル12を含む。そして相脚の中点は、コンバータ10のAC出力を形成してもよい。3つの相脚があるので、コンバータは3相ACシステムに接続されてもよい。そして次にセル12は、フルブリッジセルであってもよく、またはハーフブリッジセルであってもよい。したがって、セルは、エネルギ蓄積素子と、最大2つの異なる極性のうちの一方を有するエネルギ蓄積素子を相脚に挿入するようにまたはエネルギ蓄積素子をバイパスするように構成されたスイッチとを含む。有利には、エネルギ蓄積素子はコンデンサであってもよい。これにより、各セルはセル電圧も有する。したがってこのセル電圧は、波形を形成するために、相脚に挿入されるかまたはバイパスされる。
【0031】
示されているコンバータ10は、セルが使用され得るMMCの一例に過ぎない。相脚は、2つの相脚の間の接合部が3相ACシステムの対応相に接続される、ワイ結線またはデルタ結線であることも可能である。
【0032】
コンバータ10の一変形例では、各相脚はフルブリッジセルで構成される。別の変形例では、各相脚はハーフブリッジセルで構成される。他の変形例では、各相脚はフルブリッジセルとハーフブリッジセルとの混合体で構成されてもよい。
【0033】
本発明の局面は、故障電流を減衰させるために使用される抵抗を有する素子を含むクローバ分岐を提供することに向けられる。
【0034】
図2は、ハーフブリッジを実現したセル12を概略的に示す。このセルは、MMCのハーフブリッジセルとして使用されてもよい。
【0035】
セル12は、コンデンサCを含むとともに第1の端および第2の端を有する、エネルギ蓄積分岐ESBを含む。セル12はまた、2つのスイッチT1およびT2の第1の直列接続(直列回路)を含み、2つのスイッチの第1の直列接続はエネルギ蓄積分岐ESBと並列接続される。本例では、エネルギ蓄積分岐ESBはさらに、コンデンサCCと直列接続されたインダクタンスLを含み、このインダクタンスはエネルギ蓄積分岐ESBの浮遊インダクタンスである。
【0036】
2つのスイッチT1およびT2の第1の直列回路(直列接続)の第1の端は、バスバーインダクタンスLを有するバスバーを介してエネルギ蓄積分岐ESBの第1の端に接続される。
【0037】
2つのスイッチT1およびT2の直列接続は、おそらくエネルギ蓄積分岐ESBとともに、たとえば、いわゆるLinPakまたはHipakモジュールのようなプレスパックまたはボンドワイヤベースのモジュールの形態の、半導体パッケージまたはハーフブリッジモジュール等のモジュールに設けられてもよい。この場合、エネルギ蓄積分岐に接続するために使用される2つのスイッチの直列回路の端子は、半導体パッケージまたはモジュールの内部に設けられてもよい。
【0038】
図2のセルは、直列接続された2つのスイッチT1およびT2を含むハーフブリッジとして実現されている。一般に、スイッチは、トランジスタおよび逆並列ダイオードのような半導体を含み得る。したがって、直列回路において使用されるスイッチは、半導体を含み得る。半導体は、たとえば、炭化ケイ素金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(SiC MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、またはバイモード絶縁ゲートトランジスタ(BIGT)であってもよい。半導体の種類は限定されず、本願に係るパワーコンバータまたはセルのニーズを満たすのに適した将来の半導体も含まれ得る。
【0039】
ダイオードは、トランジスタの導通方向と逆平行にスイッチングされる。ダイオードは、トランジスタ(パワートランジスタ)の一体部分であってもよい。
【0040】
トランジスタは、この場合はコレクタからエミッタへの一方向における電流の流れのみを可能にする。半導体としてのダイオードは、トランジスタT1およびT2が可能にする方向とは反対の方向における電流の流れを可能にする。好ましくは、ダイオード(「フリーホイールダイオード」)は、トランジスタと同じ電力(または電流)を担うように適合されている。
【0041】
2つのスイッチT1およびT2の第1の直列回路のスイッチ間の中点は、第1のセル接続端子CC1を形成する。図2のハーフブリッジセル構造では、2つのスイッチT1およびT2の第1の直列回路の第2の端は、第2のセル接続端子CC2を形成する。代替案として、2つのスイッチT1およびT2の第1の直列回路の第1の端は、代わりに第2のセル接続端子CC2を形成してもよい。
【0042】
スイッチT1およびT2は、スイッチ状態を変更することができる電圧を印加する、対応するゲートドライバGDまたはゲート制御ユニットを通して作動される。
【0043】
加えて、セルは、エネルギ蓄積分岐ESBと並列接続されたクローバ分岐CBBを含む。図2に見ることができるように、クローバ分岐は、クローバ分岐の浮遊インダクタンスであるインダクタンスLと直列接続されたDCクローバとして機能する、第1のスイッチング素子SCB1を含む。加えて、クローバ分岐は、第1のスイッチング素子SC1と直列接続されるとともにクローバ分岐の減衰を改善するように設定された、抵抗素子Rを含む。示されているクローバ分岐は、エネルギ蓄積分岐と並列接続するために2つの接続点のみを含むソリッドクローバ分岐である。後で示すように、他のタイプのクローバ分岐も存在する。クローバSCB1は、短絡故障の検出に基づいてエネルギ蓄積分岐ESBを短絡させ、次に特にコンデンサCを短絡させるように外部から作動されるように適合されている。クローバを形成するスイッチング素子SCB1は、半導体、好ましくはサイリスタであってもよく、これをスイッチング信号によって作動させることによってコンデンサCを短絡させることができる。
【0044】
図2に見ることができるように、セル14はバイパススイッチBPSも含む。バイパススイッチBPSは、2つのセル接続端子CC1とCC2との間に接続される。バイパススイッチBPSは機械スイッチとして実現されてもよい。しかしながら、バイパススイッチBPSはサイリスタ等の電子スイッチとして実現されてもよい。バイパススイッチBPSは、クローバを使用してコンデンサを放電した後にセル全体をバイパスするように制御されてもよい。バイパススイッチBPSを追加することにより、セルが設けられたコンバータの使用を継続することが可能であり得る。ここで、バイパススイッチは任意であり、多くの場合省略可能であることを認識されたい。
【0045】
図3は、フルブリッジを実現したセル12を概略的に示す。このセルは、MMCのフルブリッジセルとして使用されてもよい。先に示したハーフブリッジセルとの違いは、エネルギ蓄積分岐ESBと並列接続された2つのスイッチT3およびT4の第2の直列接続が存在することである。この場合、2つのスイッチの第1の直列接続の第1の端は、バスバーインダクタンスLBAを有する第1のバスバーを介してエネルギ蓄積分岐ESBの第1の端に接続され、2つのスイッチT3およびT4の第2の直列回路(直列接続)の第1の端は、バスバーインダクタンスLBBを有する第2のバスバーを介してエネルギ蓄積分岐ESBの第1の端に接続される。この場合、2つのスイッチT1およびT2の第1の直列接続の中点は第1のセル接続端子CC1を形成し、2つのスイッチT3およびT4の第2の直列接続の中点は第2のセル接続端子CC2を形成する。
【0046】
クローバは、セル故障の場合にセルコンデンサを短絡させるために設けられている。ここで、問題となり得る故障について、任意のバイパススイッチおよびクローバ分岐が省略されている図4を参照してさらに詳細に説明する。この場合の例では、第2のスイッチが故障しており、連続オン状態(短絡モード)にある。
【0047】
第2のスイッチT2が短絡モードで故障している場合、すなわちコレクタとエミッタが常に互いに電気的に接触している場合、第1のスイッチT1をオンにすると、セルコンデンサCが短絡して放電する。次に、短絡電流が2つのスイッチT1およびT2を流れる。そして次にこれによって、クローバSCR1の作動がトリガされる(図示せず)。短絡電流は共振しているので、第1の正の半周期および第2の負の半周期を有しており、セルコンデンサが放電するまで交互に流れ続ける。
【0048】
バイパス分岐に減衰抵抗素子がなく、バスバーインダクタンスが2つの部分LBTおよびLBDに分割されているセルについての第1の正の半周期における電流を図5に示す。図5ではまた、クローバ分岐のスイッチング素子が抵抗Rとして示されており、2つのスイッチT1およびT2が電流源IT1+T2として示されている。第2の負の半周期における電流を図6に示す。図6では、電流はスイッチT1およびT2の逆並列ダイオードを通過しており、したがってこの一対のスイッチはこれらのダイオードの抵抗Rによって表されている。
【0049】
共振の正の半周期中に、一対のスイッチT1およびT2を流れる電流は、トランジスタT1および/またはT2が故障し得るまで、トランジスタT1および/またはT2の非飽和電流IT1+T2にクランプされる。クローバ分岐の第1のスイッチング素子SCB1は、ピークコンデンサ放電電流を取る短絡故障モード(SCFM)になり得る。共振の負の半周期中に、クローバ分岐のインダクタンスLとクローバ分岐をエネルギ蓄積分岐に接続するバスバーインダクタンスLBTの部分とに蓄積されたエネルギは、コンデンサ放電によって生じる大きなピーク電流に起因して、スイッチT1およびT2のダイオードを介して大きな逆電流を押し出す。(クランプ回路に起因する)クローバ分岐におけるインダクタンスLはエネルギ蓄積分岐におけるインダクタンスLよりも大きいため、この効果は顕著である。共振の負の半周期中にダイオードを介して流れる電流が大きくなると、アーク放電および爆発が発生する可能性がある。
【0050】
したがって、トランジスタT1は、オンになると非飽和状態になり、直ちに故障することはない。トランジスタがオンになった直後に、クローバ分岐のスイッチング素子がトリガされる。クローバ分岐のスイッチング素子内の電流は、高いピーク値に達する。コンデンサ電圧は、共振の負の半周期中に反転する。コンデンサ上の負電圧により、高電流がトランジスタのダイオードを流れる。このような大電流はアーク放電およびセルの爆発につながる。トランジスタがIGBTである場合、ダイオード電流が大きくなると、すなわち近傍のIGBTチップが極度に加熱されることが原因で、IGBTゲート酸化物層も故障して短絡する可能性がある。
【0051】
共振回路の減衰ζは、以下の式に従って、静電容量Cと、L、LBTおよびLの和として形成されるループインダクタンスLと、クローバ分岐の抵抗Rとに依存する。
【0052】
【数1】
【0053】
この減衰は一般的に低すぎるので、改善する必要がある。本発明の局面は、クローバ分岐の抵抗を増加させることによってこの減衰を増加させることに関する。
【0054】
加えて、導入される抵抗は、クローバの作動後10~200マイクロ秒以内などの短い期間でセルコンデンサのエネルギを処理できる必要がある。
【0055】
本発明の局面は、このような減衰を改善することに関する。
本発明の第1の局面は、クローバ分岐において第1のタイプの抵抗素子を使用することによって上述の問題に対処し、この第1の素子は非線形抵抗を有する。この第1のタイプの抵抗素子RDA図7に見ることができる。図7において、セルはバイパススイッチBPSも含む。素子RDAは、DCクローバSCB1がトリガされると余分な非線形抵抗を導入する効果があるサージアレスタであってもよい。この非線形抵抗は、この非線形抵抗の両端の電圧をクランプ電圧にクランプする効果がある。クローバ素子SCB1は通常動作時はDC電圧を阻止するので、アレスタの定格電圧はセルコンデンサの定格電圧よりも低くてもよい。アレスタはまた、高いエネルギレベルを処理することが可能であり得る。したがって、クランプ電圧はコンデンサCの定格電圧よりも低く、有利には、コンデンサCの定格電圧よりも10~20倍低い範囲である。言い換えれば、コンデンサCの定格電圧は典型的に、サージアレスタRDAのクランプ電圧よりも10~20倍高い。サージアレスタはまた、コンデンサCのエネルギを短い期間で消散することができるように寸法決めされている。クランプ電圧をVclamp、セル静電容量をC、コンデンサCの両端の電圧をVとすると、V=n*Vclampであり、10≦n≦20であり、サージアレスタは、クローバSCB1の作動から10~200μs以内に0.5*C*Vのエネルギを消散できる必要があり得る。
【0056】
【数2】
【0057】
故障電流が基準電流よりも100~200倍大きいなどかなり大きく、この例では100~200kAである場合、アレスタ電圧は、基準電圧Vrefよりも少し高いクランプ電圧Vclampにクランプされることになる。
【0058】
サージアレスタを導入することにより、コンデンサのエネルギの大部分はサージアレスタにおいて消散し、クローバおよびセルの破壊が回避される。エネルギが消散した後、次にバイパススイッチBPSを作動させることが可能である。これにより、セルをバイパスしながらコンバータの使用を継続することができる。その後、サージアレスタは、この継続使用における損失に影響を及ぼさない。
【0059】
このような動作により、クローバ分岐を流れるピーク電流が大幅に減少し得るので、セル爆発を回避することが可能である。これにより、単純化されたプレスパックモジュールおよび爆発ボックスを有するセル、またはさらにはプレスパックモジュールおよび爆発ボックスがないセルを実現することが可能である。またこれにより、SiCベースのパワーエレクトロニクスビルディングブロック(PEBB)にDCクローバ保護を使用する可能性が開ける。
【0060】
非線形抵抗素子の代替案として、クローバ分岐において線形抵抗素子を使用することが可能である。1つのこのような素子RDBが、図9においてクローバスイッチSCB1と直列に概略的に示されている。この場合、セルはまた、バイパス分岐なしで設けられている。
【0061】
したがって、減衰を増加させる別の方法は、線形抵抗を有する素子をバイパス分岐に導入することによる。これは、過減衰回路を得るために、すなわち共振の負のサイクルを回避するために行われる。またここでは、素子は、上記と同様にセルコンデンサからのエネルギを消散できることが重要である。減衰は、一例として、素子がない場合と比較して少なくとも4倍であってもよい。一例として、最大9mΩの抵抗を導入することが可能であり、これにより、一例として、減衰ζの値が0.136から0.6に改善され得る。
【0062】
減衰は以下のように決定される。
【0063】
【数3】
【0064】
抵抗Rは、所望の減衰ζにセルのインダクタンスLとセルの静電容量Cとに依存する定数を掛けた値に設定され得ることが分かる。定数は、より具体的には、セル静電容量をセルインダクタンスで割ったものとして形成される式の平方根に依存し得る。定数は、より具体的には、2をこの式の平方根で割ったものとして設定され得る。
【0065】
このように、セルの破壊を回避する十分な減衰が実現されて、コンデンサのエネルギの大部分が線形抵抗RDBにおいて消散し、クローバおよびセルの破壊が回避される。さらに、抵抗が低いので、セルコンデンサ放電後にセルをバイパスする際の運転損失に対する抵抗の寄与は低いままである。
【0066】
好適な抵抗器RDB1の第1の例を図10に示す。抵抗器RDB1は、いわゆるディスク/ワッシャ抵抗器である。このタイプは、爆発の危険がなく、短い期間で大きなピークエネルギを処理する優れた能力を有する。加えて、クローバスイッチは、同様にディスク形状のスイッチング素子の両側にクランプ素子が設けられた機械的なクランプ構造に設けられてもよい。これにより、スイッチング素子は2つのクランプ素子の間に機械的にクランプされる。ディスク抵抗器は、このクランプ構造内に容易に配置される。
【0067】
導入される線形抵抗素子を構成するかまたはその一部である構造を形成する別のタイプの抵抗RDB2を、図11に概略的に示す。この構造は、長手方向軸AXに沿って延在する導体片を設けることによって形成される。
【0068】
導体片には、スロットを形成するために、長手方向軸AXに沿って窪みが設けられてもよい。窪みは、軸AXに沿って構造の両側に交互に形成または提供されてもよく、それによって導体構造は蛇行している。これにより、構造は、長手方向軸AXに対して垂直であるとともにその端部で相互接続されたバーを形成し得るものであり、加えて、バーはバー幅BWを有する。したがってバーはスロットによって分離され、スロットはまた、長手方向軸AXに対して垂直に方向付けられており、SWを有するスロットを有している。そして、スロットによって分離された2つこのようなバーを相互接続する端部は、端部幅EWを有し得るものであり、この端部は、同様に軸AXに対して垂直な端部である。そして、スロットは、導体板幅と端部幅EWの差である深さを有する。
【0069】
抵抗は、第1の導体セクションのみを使用して上記のように形成されてもよい。
加えて、導体片が第2の導体セクションをさらに含み、2つの導体セクションまたは導電板は互いに積み重ねられること、すなわち絶縁体によって分離された状態で重なり合うことが可能である。そして、2つの板は長手方向軸AXに沿って延在してもよい。そして、電流は、上部セクションを流れて底部セクションを経由して戻ってくるか、またはその逆である。つまり、電流は、板同士が絶縁されている軸AXに沿った構造の第1の端で構造に出入りすることになる。そして、2枚の板は、戻り経路を形成するために、軸AXに沿った構造の反対端で互いに電気的に接合されることになる。こうして、板はこの反対端で互いにガルバニック接触することになる。こうして、導電体の2つのセクションは、構造の長手方向軸に沿った順方向電流輸送経路と反対方向の戻り電流経路とを形成するために、互いに積み重ねられた状態で互いに接合されてもよい。
【0070】
このタイプの構造では、一例として、抵抗を30倍増加させ、インダクタンスを8倍増加させることが可能である。選択されたスロット、バー、および端部幅では、インダクタンスが1倍増加すると抵抗は4倍増加し得る。この比率は、(絶縁限界を超えることなく)より小さなスロット幅を選択することでさらに高めることができる。さらに、スロット数を増減させることで抵抗を線形に変化させることが可能である。そして、スロットは対で変更することができ、このような対は、構造の異なる側に形成された一対のスロットである。繰り返し可能なスロット対が1つ増えるたびに、抵抗は一例として1.5mΩ増加し得る。この特徴により、コストが大幅に増加することなく減衰素子のスケーラビリティが向上する。
【0071】
導体構造は、アルミニウムで構成されてもよい。しかしながら、代替案として、ニッケルおよびクロムで構成される合金であるニクロム等の高抵抗材料を用いて導体構造を実現することが可能である。加えて、構造は、クローバ分岐のスイッチング素子を機械的にクランプするために使用される前述のクランプ素子のうちの一方の一部であることが可能である。この場合、構造は、クランプ素子のクランプ本体から外へ延在してもよい。加えて、他方のクランプ素子も高抵抗材料で構成されることが可能である。このようにニクロムを使用することで、導体構造におけるスロット数を減らし、アルミニウムの例における抵抗と同じ抵抗を実現することができる。これにより、インダクタンスの増加を最小限に抑えることができる。蛇行スロットに加えられる機械力は短絡時に非常に大きくなるため、重大な変形につながる可能性がある。構造的完全性を保証するために、非導電性材料の支持構造を導体構造の両側に設けて、バーを所定位置に保持してもよい。
【0072】
クローバ分岐の第2の変形例を含むハーフブリッジセルの実現例を示す図12に見ることができるように、抵抗素子Rは分割DCクローバ保護の実現例において実装することもできる。この実現例では、クローバ分岐は、クローバ分岐の上部にある第1のスイッチング素子SCB1および第1のインダクタンスLT1と、クローバ分岐の下部にある第2のスイッチング素子SCB2および第2のインダクタンスLT2とを含む。この場合、クローバ分岐の上部と下部との間の接合部はまた、2つのスイッチT1,T2の第1の直列接続の中点に接続される。これにより、第1のスイッチング素子を有する上部と別のスイッチング素子を有する隣接部との間の接合部は、2つのスイッチの第1の直列接続の中点に接続され、この場合、別のスイッチング素子を有する隣接部は、第2のスイッチング素子を有する下部であることが分かる。分割DCクローバは、特にボンドワイヤベースの半導体モジュールのための、DCクローバ保護概念の改良版である。この保護概念は、セルバイパスのためのスイッチにおけるダイオードの機能には依存しない。この場合、有利には、抵抗素子Rはバイパス分岐の上部に配置される。これは、素子RDがバイパス経路の外側にあるため、セルコンデンサ放電後のセルバイパス時の運転損失を低く抑えることができるという利点がある。見ることができるように、したがってこの場合はバイパススイッチを省略することも可能である。2つのスイッチの第1の直列接続の第1の端が第2のセル接続端子を形成する場合は、抵抗素子は代わりにバイパス分岐の下部に配置されることを認識されたい。
【0073】
クローバ分岐の第3の変形例を含むフルブリッジセルの実現例を示す図13に、分割DCクローバ分岐の別の例を示す。ハーフブリッジセルの分割DCクローバ分岐と比較して、この場合のクローバ分岐は、第1のスイッチSCB1と第2のスイッチSCB2との間の分岐において接続された第3のスイッチング素子SCB3を含む。この場合、第1のスイッチング素子SCB1を含む分岐の上部と第3のスイッチング素子SCB3を含む分岐の中間部との間の接合部は、2つのスイッチT1およびT2の第1の直列接続の中点に接続され、第3のスイッチング素子SCB3を含む分岐の中間部と第2のスイッチング素子SCB2を含む分岐の下部との間の接合部は、スイッチT3およびT4の第2の直列接続間の中点に接続される。これにより、ここでも、第1のスイッチング素子を有する上部と別のスイッチング素子を有する隣接部との間の接合部は、2つのスイッチの第1の直列接続の中点に接続され、この場合、別のスイッチング素子を有する隣接部は、第3のスイッチング素子を有する中間部であることが分かる。第3/第2のスイッチング素子SCB3,SCB2は、ダイオード故障の場合に信頼性の高いセルバイパスを保証する。図12のセルと同様に、抵抗素子はクローバ分岐の上部に配置される。これにより、抵抗素子はまた、セルコンデンサ放電後に使用される任意のバイパス分岐の外側に配置される。抵抗素子を下側分岐に配置することも可能である。
【0074】
クローバ分岐に導入される抵抗は、こうして故障電流の負のサイクルを減少させ、すなわち正の半周期中にセルコンデンサを放電し、これによりクローバおよびセルが保護される。加えて、セル放電後のセルバイパス時の運転損失を制限するために、さまざまな解決策が提示されている。
【0075】
コンバータは、たとえば、HVDC送電、FACTSシステム、または静的周波数変換器システムにおいて使用されるようなパワーコンバータであってもよい。
【0076】
上述のように、図1のMMCコンバータは1つのコンバータタイプの変形例に過ぎない。図14はワイ結線された相脚を有する第2の変形例を示し、図15はデルタ結線された相脚を有する第3の変形例を示す。
【0077】
概して、本発明は、セルのクローバ分岐において抵抗素子を設けることを開示している。
【0078】
さらに、一実施形態の一部として図示または記載されている特徴を他の実施形態上でまたは他の実施形態とともに使用することで、さらに他の実施形態を得ることができる。本明細書はこのような変更および変形を含むことが意図され得る。
【0079】
上記は本開示の実施形態に向けられているが、本開示の他のおよびさらなる実施形態が本開示の基本的範囲から逸脱することなく考案され得るものであり、その範囲は以下の請求項によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15