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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241129BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241129BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20241129BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241129BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20241129BHJP
   H10B 99/00 20230101ALI20241129BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L29/78 616V
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 H
H01L27/088 331E
H01L27/092 G
H01L27/04 G
H01L29/78 618C
H01L29/78 616U
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L21/28 301R
H10B12/00
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
H10B99/00 441
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023039787
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2021144540の分割
【原出願日】2017-01-17
(65)【公開番号】P2023078278
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2016015730
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 安孝
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】羽持 貴士
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-054951(JP,A)
【文献】特開2008-276211(JP,A)
【文献】特開2015-130488(JP,A)
【文献】特開2014-022492(JP,A)
【文献】特開2015-133479(JP,A)
【文献】特開2010-008758(JP,A)
【文献】特開2011-164369(JP,A)
【文献】特開2014-032999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 21/8238
H01L 21/822
H01L 21/28
H01L 29/417
H10B 12/00
H10B 41/70
H10B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタを有する半導体装置であって、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、
前記ゲート電極上の領域を有するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を間に挟んで前記ゲート電極と重なる領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜上と接する領域を有するソース電極と、
前記酸化物半導体膜上と接する領域を有するドレイン電極と、
前記酸化物半導体膜上の領域、前記ソース電極上の領域及び前記ドレイン電極上の領域を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上の領域を有する画素電極と、
第2の絶縁膜を介して前記画素電極と重なる領域を有するコモン電極と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、第1の酸化物半導体膜と、前記第1の酸化物半導体膜上と接する領域を有する第2の酸化物半導体膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記ソース電極と重なる第1の領域を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記ドレイン電極と重なる第2の領域を有し、
前記第1の領域において、前記第2の酸化物半導体膜の膜厚は、前記第1の酸化物半導体膜の膜厚よりも大きく、
前記第2の領域において、前記第2の酸化物半導体膜の膜厚は、前記第1の酸化物半導体膜の膜厚よりも大きく、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極のそれぞれは、第1の導電膜と、前記第1の導電膜上に接する領域を有する第2の導電膜と、を有し、
前記トランジスタのチャネル長方向の断面視において、前記第1の導電膜の端部は、前記第2の導電膜の端部よりも突出した領域を有し、
前記第1の絶縁膜は、前記第1の導電膜の上面と接する領域と、前記第1の導電膜の側面と接する領域と、を有し、
前記画素電極は、前記ソース電極又は前記ドレイン電極の一方と常に導通し、
前記コモン電極は、前記第1の絶縁膜を介して前記酸化物半導体膜と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、チタンを有し、
前記第2の導電膜は、銅を有し、
前記第2の導電膜の端部は、銅を含む化合物を有する領域を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の酸化物半導体膜及び前記第2の酸化物半導体膜は、それぞれ、Inと、Znと、M(Mは、Al、Ga、Y、またはSnを表す)と、を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置、及び該当半導体装置を有する
表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野
としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶
装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げるこ
とができる。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
基板上に形成された半導体膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)また
は電界効果トランジスタ(FET)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トラ
ンジスタは、集積回路(IC)や画像装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用
されている。トランジスタに適用可能な半導体膜として、シリコン系半導体材料が広く知
られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0005】
例えば、酸化物半導体として、In-Ga-Zn系酸化物を用いてトランジスタを作製
する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、配線や信号線などに用いる材料として、従来アルミニウムが広く用いられていた
が、さらなる低抵抗化のために銅(Cu)を用いる開発が盛んに行われている。しかしな
がら、銅(Cu)は、下地に用いられる膜との密着性が悪いことや、トランジスタの半導
体膜に拡散してトランジスタ特性を悪化させやすいといった欠点を有する。
【0007】
また、インジウムを含む酸化物半導体膜上に形成されるオーミック電極の材料として、
Cu-Mn合金が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-96055号公報
【文献】国際公開第2012/002573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の構成によると、酸化物半導体膜上にCu-Mn合金膜を被着させた
後、該Cu-Mn合金膜に対し熱処理を行い、酸化物半導体膜とCu-Mn合金膜との接
合界面にMn酸化物を形成する。該Mn酸化物は、Cu-Mn合金膜中のMnが酸化物半
導体膜に向けて拡散し、酸化物半導体膜を構成する酸素と優先的に結合することで形成さ
れる。また、Mnによって還元された酸化物半導体膜中の領域は酸素欠損となり、キャリ
ア濃度が増加して高導電性を有する。また、酸化物半導体膜に向けてMnが拡散しCu-
Mn合金が純Cuとなることで、電気抵抗の小さいオーミック電極を得ている。
【0010】
しかしながら、上述の構成においては、オーミック電極を形成した後、オーミック電極
からのCuの拡散の影響が考慮されていない。例えば、酸化物半導体膜上にCu-Mn合
金膜を含む電極を形成したあとに、熱処理を行うことで、酸化物半導体膜とCu-Mn合
金膜との接合界面にMn酸化物を形成する。該Mn酸化物が形成されることによって、酸
化物半導体膜に接するCu-Mn合金膜から酸化物半導体膜中へ拡散しうるCuが抑制で
きたとしても、Cu-Mn合金膜の側面、並びにCu-Mn合金膜中のMnが脱離して純
Cu膜となった膜の側面または表面から酸化物半導体膜の表面にCuが再付着してしまう
【0011】
酸化物半導体膜を用いるトランジスタとして、例えば、ボトムゲート構造を用いる場合
、酸化物半導体膜の表面の一部は、所謂バックチャネル側となり、該バックチャネル側に
Cuが再付着した場合、トランジスタの電気特性(例えば、オン電流、電界効果移動度、
周波数特性等)が劣化するという問題や、トランジスタの信頼性試験の一つであるゲート
BTストレス試験において、トランジスタ特性が劣化するといった問題があった。
【0012】
上述課題に鑑み、本発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を
有する導電膜を用いる新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本
発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用いて
、電気特性(例えば、オン電流、電界効果移動度、周波数特性等)の優れたトランジスタ
を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様では、
酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用いて、電気特性の変動が
抑制されたトランジスタを有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または
、本発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用
いて、信頼性の高いトランジスタを有する半導体装置を提供することを課題の一つとする
。または、本発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導
電膜を用いて、製造コストが抑制された半導体装置を提供することを課題の一つとする。
または、本発明の一態様では、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電
膜を用いて、生産性が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発
明の一態様では、新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明
の一態様では、新規な半導体装置の作製方法を提供することを課題の一つとする。
【0013】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必
ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載
から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジスタは、ゲー
ト電極と、ゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜を間に挟んでゲート電極と重な
る領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるソース電極と、
酸化物半導体膜と電気的に接続されるドレイン電極と、酸化物半導体膜上、ソース電極上
、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、を有し、ソース電極及びドレイン電極は、それ
ぞれ銅を有し、ソース電極の端部及びドレイン電極の端部は、それぞれ銅とシリコンとを
含む領域を有する半導体装置である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜を間に挟んでゲート
電極と重なる領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるソー
ス電極と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるドレイン電極と、酸化物半導体膜上、ソ
ース電極上、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、を有し、ソース電極及びドレイン電
極は、それぞれ銅を有し、ソース電極の端部及びドレイン電極の端部は、それぞれ銅とシ
リコンとを含む化合物を有する領域を有する半導体装置である。
【0016】
上記各構成において、ソース電極の端部及びドレイン電極の端部は、それぞれ第2の絶
縁膜と接する領域を有すると好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜を間に挟んでゲート
電極と重なる領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるソー
ス電極と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるドレイン電極と、酸化物半導体膜上、ソ
ース電極上、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、を有し、ソース電極及びドレイン電
極は、それぞれ第1の導電膜と、第1の導電膜上に接する第2の導電膜と、第2の導電膜
上に接する第3の導電膜と、を有し、第2の導電膜は、銅を有し、第1の導電膜及び第3
の導電膜は、銅の拡散を抑制する材料を有し、第2の導電膜の端部は、銅とシリコンとを
含む領域を有する半導体装置である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜を間に挟んでゲート
電極と重なる領域を有する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるソー
ス電極と、酸化物半導体膜と電気的に接続されるドレイン電極と、酸化物半導体膜上、ソ
ース電極上、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、を有し、ソース電極及びドレイン電
極は、それぞれ第1の導電膜と、第1の導電膜上に接する第2の導電膜と、第2の導電膜
上に接する第3の導電膜と、を有し、第2の導電膜は、銅を有し、第1の導電膜及び第3
の導電膜は、銅の拡散を抑制する材料を有し、第2の導電膜の端部は、銅とシリコンとを
含む化合物を有する領域を有する半導体装置である。
【0019】
上記各構成において、第2の導電膜の端部は、第2の絶縁膜と接する領域を有すると好
ましい。
【0020】
また、上記各構成において、第1の導電膜及び第3の導電膜は、チタン、タングステン
、タンタル、及びモリブデンの少なくとも一を有すると好ましい。また、第1の導電膜及
び第3の導電膜は、酸化物を有し、酸化物は、InまたはZnのうち少なくとも一を有す
ると好ましい。
【0021】
また、上記各構成において、酸化物半導体膜は、Inと、Znと、M(Mは、Al、G
a、Y、またはSnを表す)と、を有すると好ましい。また、酸化物半導体膜は、結晶部
を有し、結晶部は、c軸配向性を有すると好ましい。
【0022】
また、本発明の他の一態様は、上記各態様の半導体装置と、表示素子とを有する表示装
置である。また、本発明の他の一態様は、上記態様の表示装置とタッチセンサとを有する
表示モジュールである。また、本発明の他の一態様は、上記各態様の半導体装置、上記態
様の表示装置、または上記態様の表示モジュールと、操作キーまたはバッテリの少なくと
も一とを有する電子機器である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を
用いる新規な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、酸化
物半導体膜を用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用いて、電気特性(例えば、オ
ン電流、電界効果移動度、周波数特性等)の優れたトランジスタを有する半導体装置を提
供することができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いるトランジ
スタに、銅を有する導電膜を用いて、電気特性の変動が抑制されたトランジスタを有する
半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を
用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用いて、信頼性の高いトランジスタを有する
半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を
用いるトランジスタに、銅を有する導電膜を用いて、製造コストが抑制された半導体装置
を提供することができる。または、本発明の一態様により、酸化物半導体膜を用いるトラ
ンジスタに、銅を有する導電膜を用いて、生産性が高い半導体装置を提供することができ
る。または、本発明の一態様により、新規な半導体装置を提供することができる。または
、本発明の一態様により、新規な半導体装置の作製方法を提供することができる。
【0024】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、
必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書
、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載
から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図2】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図3】半導体装置の一態様を示す断面図。
図4】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図5】半導体装置の一態様を示す断面図。
図6】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図7】半導体装置の一態様を示す断面図。
図8】半導体装置の一態様を示す断面図。
図9】半導体装置の一態様を示す断面図。
図10】半導体装置の一態様を示す断面図。
図11】半導体装置の一態様を示す断面図。
図12】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図13】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
図14】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図15】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図16】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図17】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図18】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図19】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図20】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
図21】本発明の一態様に係る酸化物半導体の原子数比の範囲を説明する図。
図22】InMZnOの結晶を説明する図。
図23】酸化物半導体の積層構造におけるバンド図。
図24】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図、ならびにCAAC-OSの制限視野電子回折パターンを示す図。
図25】CAAC-OSの断面TEM像、ならびに平面TEM像およびその画像解析像。
図26】nc-OSの電子回折パターンを示す図、およびnc-OSの断面TEM像。
図27】a-like OSの断面TEM像。
図28】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
図29】表示装置の一態様を示す上面図。
図30】表示装置の一態様を示す断面図。
図31】表示装置の一態様を示す断面図。
図32】表示装置の一態様を示す断面図。
図33】表示装置の一態様を示す断面図。
図34】表示装置の一態様を示す断面図。
図35】表示装置の一態様を示す断面図。
図36】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
図37】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図38】本発明の一態様を説明するためのグラフおよび回路図。
図39】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図40】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図41】本発明の一態様を説明するためのブロック図、回路図および波形図。
図42】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
図43】本発明の一態様を説明するための回路図。
図44】本発明の一態様を説明するための回路図。
図45】表示モジュールを説明する図。
図46】電子機器を説明する図。
図47】電子機器を説明する図。
図48】表示装置を説明する斜視図。
図49】本発明の一態様に係る半導体装置の構成を説明する断面図および回路図。
図50】本発明の一態様に係るCPUの構成を説明するブロック図。
図51】本発明の一態様に係る記憶素子の構成を説明する回路図。
図52】撮像装置の一例を示す回路図。
図53】撮像装置の構成例を示す図。
図54】実施例に係る、試料のSTEM写真を説明する図。
図55】実施例に係る、試料のXPS分析結果を説明する図。
図56】実施例に係る、試料のXPS分析結果を説明する図。
図57】実施例に係る、トランジスタのId-Vg特性。
図58】実施例に係る、トランジスタのId-Vg特性。
図59】実施例に係る、試料のSTEM写真を説明する図。
図60】実施例に係る、試料のEDX分析結果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内
容に限定して解釈されない。
【0027】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0028】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、
工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又
は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載され
ている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合が
ある。
【0029】
また、本明細書において、「上に」「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置
関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係
は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化する。従って、明細書で説明した語句に限定
されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0030】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
【0031】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。また
は、本明細書等に記載の「絶縁体」を「半絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある
【0032】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0033】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すこ
とができる。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として流れる領域
をいう。
【0034】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる。
【0035】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトラ
ンジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重
なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース
電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つ
のトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、
一つのトランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明
細書等では、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大
値、最小値または平均値とする。
【0036】
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中
で電流の流れる部分)とゲート電極とが互いに重なる領域、またはチャネルが形成される
領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つの
トランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、
一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明
細書等では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大
値、最小値または平均値とする。
【0037】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0038】
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位
)との電位差のことを示す場合が多い。そのため、電圧を電位と言い換えることが可能で
ある。
【0039】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸
素の含有量が多い膜を指し、好ましくは酸素が55原子%以上65原子%以下、窒素が1
原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原
子%以上10原子%以下の範囲で含まれる膜をいう。窒化酸化シリコン膜とは、その組成
として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指し、好ましくは窒素が55原子%以上65
原子%以下、酸素が1原子%以上20原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%
以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の濃度範囲で含まれる膜をいう。
【0040】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角
度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。ま
た、「略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態
をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されて
いる状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直
」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0042】
また、本明細書等において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として
表す。
【0043】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法につ
いて、図1乃至図20を用いて以下説明する。
【0044】
<1-1.半導体装置の構成例1>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図である
。また、図1(B)は、図1(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図
に相当し、図1(C)は、図1(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面
図に相当する。なお、図1(A)においては明瞭化のため、トランジスタ100の構成要
素の一部(基板102及び絶縁膜等)を省略して図示している。
【0045】
また、図1(A)における一点鎖線X1-X2方向をトランジスタ100のチャネル長
方向、一点鎖線Y1-Y2方向をトランジスタ100のチャネル幅方向と呼称する場合が
ある。
【0046】
トランジスタ100は、基板102上のゲート電極として機能する導電膜104と、基
板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107と、絶縁
膜107上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に電気的に接続される一対
の電極として機能する導電膜112a、112bと、酸化物半導体膜108上及び導電膜
112a、112b上の絶縁膜114及び絶縁膜116と、絶縁膜116上の絶縁膜11
8と、を有する。
【0047】
酸化物半導体膜108は、インジウム(In)と、亜鉛(Zn)と、M(Mは、アルミ
ニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、またはスズ(Sn)を表す)
と、を有すると好ましい。
【0048】
また、トランジスタ100において、絶縁膜106、107は、トランジスタ100の
ゲート絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100において、一対の電極と
して機能する導電膜112a、112bは、一方がソース電極としての機能を有し、他方
がドレイン電極としての機能を有する。
【0049】
また、導電膜112aは、導電膜112a_1と、導電膜112a_1上に接する導電
膜112a_2と、導電膜112a_2上に接する導電膜112a_3と、を有し、導電
膜112bは、導電膜112b_1と、導電膜112b_1上に接する導電膜112b_
2と、導電膜112b_2上に接する導電膜112b_3と、を有する。また、導電膜1
12a_2は、領域112a_2aと、領域112a_2bとを有る。また、導電膜11
2b_2は、領域112b_2aと、領域112b_2bとを有する。
【0050】
導電膜112a_2及び導電膜112b_2は、それぞれ銅を含み、領域112a_2
b及び領域112b_2bは、それぞれ銅とシリコンとを含み、導電膜112a_1、導
電膜112a_3、導電膜112b_1、及び導電膜112b_3は、それぞれ銅の拡散
を抑制する材料を含む。また、領域112a_2bは、導電膜112a_2の端部に位置
し、絶縁膜114と接する領域を有し、領域112b_2bは、導電膜112b_2の端
部に位置し、絶縁膜114と接する領域を有する。また、導電膜112a_1の端部は、
導電膜112a_2の端部より外側に位置する領域を有し、導電膜112b_1の端部は
、導電膜112b_2の端部より外側に位置する領域を有する。また、導電膜112a_
3は、導電膜112a_2の上面を覆い、導電膜112b_3は、導電膜112b_2の
上面を覆う。したがって、導電膜112a_2aは、導電膜112a_1、領域112a
_2b、及び導電膜112a_3に覆われる構造を有し、導電膜112b_2aは、導電
膜112b_1、領域112b_2b、及び導電膜112b_3に覆われる構造を有する
【0051】
また、領域112a_2b、及び領域112b_2bは、銅シリサイド(銅ケイ化物)
を形成すると好ましい。銅シリサイドは、銅とシリコンとの結合を有するため、銅と比較
して安定であり、銅が外部に拡散することを抑制する機能を有する。また、絶縁膜114
がシリコンを有する場合、領域112a_2b、112b_2bが銅とシリコンとを有す
ることで、導電膜112a_2、112b_2と、絶縁膜114との密着性が高まる効果
を奏する。
【0052】
また、領域112a_2b、112b_2bは、銅とシリコンと窒素とを含んでいても
良く、銅シリサイドナイトライド(銅ケイ化窒化物)を形成してもよい。領域112a_
2b、112b_2bが銅シリサイドナイトライドを有することで、銅が外部に拡散する
ことを抑制することができる。
【0053】
導電膜112a及び導電膜112bが、それぞれ銅を含む導電膜112a_2及び導電
膜112b_2を有することで、導電膜112a、112bの抵抗を低くすることが可能
となる。また、導電膜112a、112bを上記構成とすることで、銅元素を導電膜11
2a、112bの外部に拡散すること、特に酸化物半導体膜108に拡散することを抑制
することができる。したがって、電気特性の優れたトランジスタを有する半導体装置を提
供することができる。
【0054】
<1-2.半導体装置の構成例2>
次に、図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100と異なる構成例について、図
2乃至図11を用いて説明する。なお、以下の図2乃至図11において、トランジスタ1
00と同様の機能を有する場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場
合がある。
【0055】
図2(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Aの上面図であ
り、図2(B)は、図2(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相
当し、図2(C)は、図2(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に
相当する。
【0056】
トランジスタ100Aは、基板102上の第1のゲート電極として機能する導電膜10
4と、基板102及び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107
と、絶縁膜107上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に電気的に接続さ
れる一対の電極として機能する導電膜112a、112bと、酸化物半導体膜108上及
び導電膜112a、112b上の絶縁膜114及び絶縁膜116と、絶縁膜116上に設
けられ、且つ絶縁膜114、116に設けられた開口部152cにおいて導電膜112a
、112bの一方(図2(B)においては導電膜112b)と電気的に接続される導電膜
120aと、絶縁膜116上に設けられ、第2のゲート電極として機能する導電膜120
bと、絶縁膜116及び導電膜120a、120b上の絶縁膜118と、を有する。
【0057】
トランジスタ100Aにおいて、絶縁膜106、107は、トランジスタ100Aの第
1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、トランジスタ100A
の第2のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100Aの保
護絶縁膜としての機能を有する。なお、本明細書等において、絶縁膜106、107を第
1のゲート絶縁膜と、絶縁膜114、116を第2のゲート絶縁膜と、呼称する場合があ
る。また、トランジスタ100Aにおいて、一対の電極として機能する導電膜112a、
112bは、一方がソース電極としての機能を有し、他方がドレイン電極としての機能を
有する。また、導電膜120aは、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。
【0058】
≪s-channel構造≫
図2に示すトランジスタ100Aにおける酸化物半導体膜108は、第1のゲート絶縁
膜と、第2のゲート絶縁膜とを間に挟んで、導電膜104と、導電膜120bとに挟持さ
れる。導電膜104のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体
膜108のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長い。また、
導電膜120bのチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さは、酸化物半導体膜1
08のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さよりもそれぞれ長い。そのため、
酸化物半導体膜108の全体は、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を間に挟ん
で導電膜104及び導電膜120bに覆われている。
【0059】
別言すると、トランジスタ100Aのチャネル幅方向において、導電膜104及び導電
膜120bは、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を間に挟んで酸化物半導体膜
108を囲む構成である。
【0060】
このような構成を有することで、トランジスタ100Aが有する酸化物半導体膜108
を、導電膜104及び導電膜120bの電界によって電気的に囲むことができる。トラン
ジスタ100Aのように、導電膜104及び導電膜120bの電界によって、チャネル領
域が形成される酸化物半導体膜を電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をsurro
unded channel(s-channel)構造と呼ぶことができる。
【0061】
トランジスタ100Aは、s-channel構造を有するため、導電膜104及び導
電膜120bによってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導体膜108
に印加することができる。したがって、トランジスタ100Aの電流駆動能力が向上し、
高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能である
ため、トランジスタ100Aを微細化することが可能となる。また、トランジスタ100
Aは、導電膜104及び導電膜120bによって酸化物半導体膜108が囲まれた構造を
有するため、トランジスタ100Aの機械的強度を高めることができる。
【0062】
また、上記構成とすることによって、酸化物半導体膜108においてキャリアの流れる
領域が、酸化物半導体膜108の第1のゲート絶縁膜側と、及び酸化物半導体膜108の
第2のゲート絶縁膜側と、さらに酸化物半導体膜108の膜中の広い範囲となるため、ト
ランジスタ100Aはキャリアの移動量が増加する。その結果、トランジスタ100Aの
オン電流が大きくなると共に、電界効果移動度が大きくなり、具体的には電界効果移動度
が10cm/V・s以上となる。なお、ここでの電界効果移動度は、酸化物半導体膜の
物性値としての移動度の近似値ではなく、トランジスタの飽和領域における電流駆動力の
指標であり、見かけの電界効果移動度である。
【0063】
また、図3(A)(B)に示すトランジスタ100Bのように、導電膜120a、12
0bが、絶縁膜118上に設けられてもよい。この場合、絶縁膜114、116、118
に設けられた開口部152cにおいて、導電膜120aと、導電膜112a、112bの
一方とが電気的に接続される。なお、トランジスタ100Bの上面図は、図2(A)に示
すトランジスタ100Aと同様であり、図3(A)は、図2(A)に示す一点鎖線X1-
X2間における切断面の断面図に相当し、図3(B)は、図2(A)に示す一点鎖線Y1
-Y2間における切断面の断面図に相当する。また、トランジスタ100Bの他の構成と
しては、トランジスタ100Aと同様であるため、トランジスタ100Aの構成を参酌す
ればよい。
【0064】
また、図3(C)に示すトランジスタ100Cのように、導電膜112a、112bに
おいて、導電膜112a_1の端部と、導電膜112a_2の端部とが揃う領域があって
も良く、導電膜112b_1の端部と、導電膜112b_2の端部とが揃う領域があって
も良い。
【0065】
また、図4(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Dのように、第2のゲート電
極として機能する導電膜120bが、第1のゲート絶縁膜(絶縁膜106、107)、及
び第2のゲート絶縁膜(絶縁膜114、116)に設けられた開口部152a、152b
において、第1のゲート電極として機能する導電膜104と接続する構成としてもよい。
なお、図4(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Dの上面図
である。また、図4(B)は、図4(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の
断面図に相当し、図4(C)は、図4(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面
の断面図に相当する。また、トランジスタ100Dの他の構成としては、トランジスタ1
00Aと同様であるため、トランジスタ100Aの構成を参酌すればよい。
【0066】
トランジスタ100Dにおいては、導電膜104と導電膜120bとが第1のゲート絶
縁膜、及び第2のゲート絶縁膜に設けられる開口部152a、152bにおいて接続する
ため、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の側面は、第1のゲート絶縁膜及び第2の
ゲート絶縁膜を間に挟んで導電膜120bと対向している。また、導電膜104と、導電
膜120bとが、同じ電位が与えられる。そのため、効果的にトランジスタ100Dが有
する酸化物半導体膜108を、導電膜104及び導電膜120bの電界によって電気的に
囲むことができる。なお、開口部152a及び開口部152bについては、いずれか一方
のみを設ける構成であってもよい。
【0067】
また、図5(A)(B)に示すトランジスタ100Eのように、導電膜120a、12
0bが、絶縁膜118上に設けられてもよい。この場合、絶縁膜114、116、118
に設けられた開口部152cにおいて、導電膜120aと、導電膜112a、112bの
一方とが電気的に接続され、絶縁膜106、107、114、116、118に設けられ
た開口部152a、152bにおいて、第2のゲート電極として機能する導電膜120b
と、第1のゲート電極として機能する導電膜104とが電気的に接続される。なお、トラ
ンジスタ100Eの上面図は、図4(A)に示すトランジスタ100Dと同様であり、図
5(A)は、図4(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、
図5(B)は、図4(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当す
る。また、トランジスタ100Eの他の構成としては、トランジスタ100Dと同様であ
るため、トランジスタ100Dの構成を参酌すればよい。
【0068】
また、図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Fのように、第2のゲート電
極として機能する導電膜120bが、接続電極として機能する導電膜112cを介して、
第1のゲート電極として機能する導電膜104と接続する構成としてもよい。なお、図6
(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Fの上面図である。ま
た、図6(B)は、図6(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相
当し、図6(C)は、図6(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に
相当する。
【0069】
図6(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Fは、絶縁膜107上に設けられ、
且つ第1のゲート絶縁膜(絶縁膜106、107)に設けられた開口部151において導
電膜104と電気的に接続される導電膜112cを有し、導電膜120bが、絶縁膜11
6上に設けられ、且つ第2のゲート絶縁膜(絶縁膜114、116)に設けられた開口部
152dにおいて導電膜112cと電気的に接続される点が、トランジスタ100Aと異
なる。
【0070】
トランジスタ100Fにおいては、導電膜104と導電膜120bとが導電膜112c
を介して電気的に接続し、酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の側面の一方は、第1
のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜を間に挟んで導電膜112cと対向している。ま
た、導電膜104と、導電膜120bとが、同じ電位が与えられる。そのため、効果的に
トランジスタ100Fが有する酸化物半導体膜108を、導電膜104及び導電膜120
bの電界によって電気的に囲むことができる。
【0071】
一方、例えば、トランジスタ100Aやトランジスタ100Bのように、導電膜104
と導電膜120bとを接続しない構成の場合、導電膜104と、導電膜120bには、そ
れぞれ異なる電位を与えることができる。
【0072】
また、導電膜120bのチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さの一方または
双方は、酸化物半導体膜108のチャネル長方向の長さ及びチャネル幅方向の長さよりも
それぞれ長くなくてもよい。
【0073】
導電膜112cは、導電膜112a、112bと同じ工程によって、形成することがで
きる。この場合、導電膜112cは、導電膜112c_1と、導電膜112c_1上に接
する導電膜112c_2と、導電膜112c_2上に接する導電膜112c_3と、を有
する。また、導電膜112c_2は、領域112c_2aと、領域112c_2bとを有
する。
【0074】
導電膜112c_2は、銅を含み、領域112c_2bは、銅とシリコンとを含み、導
電膜112c_1及び導電膜112c_3は、それぞれ銅の拡散を抑制する材料を含む。
また、領域112c_2bは、導電膜112c_2の端部に位置し、絶縁膜114と接す
る領域を有する。また、導電膜112c_1の端部は、導電膜112c_2の端部より外
側に位置する領域を有する。また、導電膜112c_3は、導電膜112c_2の上面を
覆う。したがって、導電膜112c_2aは、導電膜112c_1、領域112c_2b
、及び導電膜112c_3に覆われる構造を有する。
【0075】
また、領域112c_2bは、領域112a_2b、112b_2bと同様の材料及び
工程により形成することができる。
【0076】
上記構成とすることで、導電膜112cの抵抗を低くすることが可能となる。また、銅
元素を導電膜112cの外部に拡散すること、特に酸化物半導体膜108に拡散すること
を抑制することができる。
【0077】
なお、トランジスタ100Fの他の構成としては、トランジスタ100Aと同様である
ため、トランジスタ100Aの構成を参酌すればよい。
【0078】
<1-3.半導体装置の構成例3>
図7(A)(B)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Gの断面
図であり、トランジスタ100Gの上面図は、図1(A)に示すトランジスタ100と同
様であり、図7(A)は、図1(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面
図に相当し、図7(B)は、図1(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断
面図に相当する。
【0079】
トランジスタ100Gは、酸化物半導体膜108が、導電膜104側の酸化物半導体膜
108aと、酸化物半導体膜108a上の酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜1
08b上の酸化物半導体膜108cを有する点でトランジスタ100と異なる。すなわち
、酸化物半導体膜108は、3層構造を有する。それ以外の構成については、トランジス
タ100と同様であり、同様の効果を奏する。以下では、トランジスタ100と異なる構
成について説明する。
【0080】
酸化物半導体膜108a、108b、108cは、それぞれ、Inと、Znと、M(M
はAl、Ga、Y、またはSn)と、を有する。
【0081】
例えば、酸化物半導体膜108bとしては、Inの原子数比がMの原子数比より多い領
域を有すると好ましい。また、酸化物半導体膜108a、108cとしては、酸化物半導
体膜108bよりもInの原子数が少ない領域を有すると好ましい。
【0082】
酸化物半導体膜108bが、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すること
で、トランジスタ100Gの電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トラ
ンジスタ100Gの電界効果移動度が10cm/Vsを超える、さらに好ましくはトラ
ンジスタ100Gの電界効果移動度が30cm/Vsを超えることが可能となる。
【0083】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートド
ライバ(とくに、ゲートドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマル
チプレクサ)に用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)半導体装置または表示装
置を提供することができる。
【0084】
一方で、酸化物半導体膜108bが、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有
する場合、光照射時にトランジスタ100Gの電気特性が変動しやすくなる。しかしなが
ら、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108b上に酸化物半導体
膜108cが形成されている。酸化物半導体膜108cは、酸化物半導体膜108bより
もInの原子数比が少ない領域を有するため、酸化物半導体膜108bよりもEgが大き
くなる。したがって、酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108cとの積層構造
である酸化物半導体膜108は、光負バイアスストレス試験による耐性を高めることが可
能となる。
【0085】
また、酸化物半導体膜108中、特に酸化物半導体膜108bのチャネル領域に混入す
る水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。し
たがって、酸化物半導体膜108b中のチャネル領域においては、水素または水分などの
不純物が少ないほど好ましい。また、酸化物半導体膜108b中のチャネル領域に形成さ
れる酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、酸化物半導
体膜108bのチャネル領域中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、
キャリア供給源となる。酸化物半導体膜108bのチャネル領域中にキャリア供給源が生
成されると、酸化物半導体膜108bを有するトランジスタ100Gの電気特性の変動、
代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、酸化物半導体膜108bのチャ
ネル領域においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0086】
そこで、本発明の一態様においては、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜、具体的に
は、酸化物半導体膜108の上方に形成される絶縁膜114、116が過剰酸素を含有す
る構成である。絶縁膜114、116から酸化物半導体膜108へ酸素または過剰酸素を
移動させることで、酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0087】
また、図8(A)(B)に示すトランジスタ100Hのように、酸化物半導体膜108
が、酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜108cを有する2層構造を有する構成
としてもよい。なお、トランジスタ100Hの上面図は、図1(A)に示すトランジスタ
100と同様であり、図8(A)は、図1(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切
断面の断面図に相当し、図8(B)は、図1(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における
切断面の断面図に相当する。また、トランジスタ100Hの他の構成としては、トランジ
スタ100Gと同様であるため、トランジスタ100Gの構成を参酌すればよい。
【0088】
また、図9(A)(B)に示すトランジスタ100Jのように、第2のゲート電極とし
て機能する導電膜120bを有し、酸化物半導体膜108が、酸化物半導体膜108b及
び酸化物半導体膜108cを有する構成としてもよい。なお、トランジスタ100Jの上
面図は、図2(A)に示すトランジスタ100Aと同様であり、図9(A)は、図2(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図9(B)は、図2
A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。また、トランジス
タ100Jの他の構成としては、トランジスタ100Aと同様であるため、トランジスタ
100Aの構成を参酌すればよい。
【0089】
また、図9(C)に示すトランジスタ100Kのように、導電膜112a、112bに
おいて、導電膜112a_1の端部と、導電膜112a_2の端部とが揃う領域があって
も良く、導電膜112b_1の端部と、導電膜112b_2の端部とが揃う領域があって
も良い。
【0090】
また、図10(A)(B)に示すトランジスタ100Lのように、導電膜120a、1
20bが、絶縁膜118上に設けられてもよい。また、図10(C)に示すトランジスタ
100Mのように、導電膜112a、112bにおいて、導電膜112a_1の端部と、
導電膜112a_2の端部とが揃う領域があっても良く、導電膜112b_1の端部と、
導電膜112b_2の端部とが揃う領域があっても良い。
【0091】
トランジスタ100J、100K、100L、100Mのように、s-channel
構造を有することによって、酸化物半導体膜108においてキャリアの流れる領域が、酸
化物半導体膜108bの第1のゲート絶縁膜側と、及び酸化物半導体膜108bの第2の
ゲート絶縁膜側と、さらに酸化物半導体膜108の膜中の広い範囲となるため、これらの
トランジスタはキャリアの移動量が増加する。その結果、トランジスタのオン電流が大き
くなると共に、電界効果移動度が大きくなる。
【0092】
また、トランジスタ100が有する酸化物半導体膜108は図面において、導電膜11
2a、112bから露出した領域の酸化物半導体膜が薄くなる、別言すると酸化物半導体
膜の一部が凹部を有する形状について例示している。ただし、本発明の一態様はこれに限
定されず、導電膜112a、112bから露出した領域の酸化物半導体膜が薄くならず、
凹部を有さなくてもよい。この場合の一例を図11(A)(B)に示す。図11(A)(
B)は、半導体装置の一例を示す断面図である。なお、図11(A)(B)は、先に示す
トランジスタ100の酸化物半導体膜108が凹部を有さない構造を有するトランジスタ
100Nの断面図である。
【0093】
<1-4.半導体装置の構成例4>
図12(A)は、トランジスタ100Pの上面図であり、図12(B)は、図12(A
)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図12(C)は、図1
2(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0094】
図12に示すトランジスタ100Pは、基板102上の導電膜104と、基板102及
び導電膜104上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107と、絶縁膜107上
の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108上の絶縁膜114と、絶縁膜114上
の絶縁膜116と、絶縁膜114及び絶縁膜116に設けられる開口部151aを介して
酸化物半導体膜108に電気的に接続される導電膜112aと、絶縁膜114及び絶縁膜
116に設けられる開口部151bを介して酸化物半導体膜108に電気的に接続される
導電膜112bとを有する。また、トランジスタ100P上、より詳しくは、導電膜11
2a、112b、及び絶縁膜116上には絶縁膜118が設けられる。
【0095】
なお、トランジスタ100Pにおいて、絶縁膜106、107は、トランジスタ100
Pのゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108
の保護絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100Pの保護絶縁膜
としての機能を有する。また、トランジスタ100Pにおいて、導電膜104は、ゲート
電極としての機能を有し、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜1
12bは、ドレイン電極としての機能を有する。
【0096】
図1に示すトランジスタ100においては、チャネルエッチ型の構造であったのに対し
図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ100Pは、チャネル保護型の構造であ
る。本発明の一態様の半導体装置には、チャネル保護型のトランジスタも好適に用いるこ
とができる。なお、トランジスタ100Pの他の構成としては、トランジスタ100と同
様であるため、トランジスタ100の構成を参酌すればよい。
【0097】
また、図13(A)は、トランジスタ100Qの上面図であり、図13(B)は、図1
3(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当し、図13(C)は
図13(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相当する。
【0098】
図13に示すトランジスタ100Qは、図12(A)(B)(C)に示すトランジスタ
100Pと絶縁膜114、116の形状が相違する。具体的には、トランジスタ100Q
の絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108のチャネル領域上に島状に設けられる
。その他の構成は、トランジスタ100Pと同様である。
【0099】
また、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のそれぞれを自由に組み合わせ
ることが可能である。
【0100】
<1-5.半導体装置の構成要素>
以下に本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0101】
≪基板≫
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度
の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サ
ファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材
料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体
基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けら
れたものを、基板102として用いてもよい。
【0102】
なお、基板102として、ガラス基板を用いる場合、第6世代(1500mm×185
0mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×240
0mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2950mm×34
00mm)等の大面積基板を用いることで、大型の表示装置を作製することができる。
【0103】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ10
0を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けても
よい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より
分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐
熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0104】
≪導電膜≫
第1のゲート電極として機能する導電膜104、ソース電極として機能する導電膜11
2a、ドレイン電極として機能する導電膜112b、接続電極として機能する導電膜11
2c、第2のゲート電極として機能する導電膜120b、及び画素電極として機能する導
電膜120aとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au
)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti
)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト
(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した
金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0105】
また、導電膜104、112a、112b、112c、120a、120bには、Cu
を用いることが好ましい。また、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co
、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用いることで、ウエッ
トエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0106】
また、導電膜112aが有する導電膜112a_2、導電膜112bが有する導電膜1
12b_2、及び導電膜112cが有する導電膜112c_2には、Cuまたは上述のC
u-X合金膜を好適に用いることができる。Cu-X合金膜としては、Cu-Mn合金膜
が特に好ましい。ただし、本発明の一態様において、これに限定されず、導電膜112a
_2、112b_2、及び導電膜112c_2は、少なくとも銅を有していればよい。
【0107】
また、領域112a_2b、112b_2b、112c_2bは、CuとSiとを含む
ことが好ましく、銅シリサイドを有することが好ましい。領域112a_2b、112b
_2b、112c_2bが銅シリサイドナイトライドを有することで、銅が外部に拡散す
ることを抑制することができる。銅シリサイドは、CuまたはCuを有する合金を成膜後
に、例えばシランガスと反応させることで形成する。また、シランガスと反応後に、例え
ば窒素を含むプラズマと反応させることでCuとSiとNとを有する銅シリサイドナイト
ライドを形成してもよい。なお、銅または銅を有する合金の表面が酸化膜によって被覆さ
れている場合は、上記反応前に水素またはアンモニア等を用いて酸化膜を除去する還元処
理を行うことが好ましい。
【0108】
また、導電膜112aが有する導電膜112a_1、112a_3、導電膜112bが
有する導電膜112b_1、112b_3、及び導電膜112cが有する導電膜112c
_1、112c_3には、上述の金属元素の中でも、特にチタン、タングステン、タンタ
ル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。導
電膜112a_1、112a_3、112b_1、112b_3、112c_1、112
c_3がチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一
つまたは複数を有すると、導電膜112a_2、112b_2、112c_2が有する銅
の外部への拡散を抑制することができる。すなわち、導電膜112a_1、112a_3
、112b_1、112b_3、112c_1、112c_3は、所謂バリアメタルとし
ての機能を有する。
【0109】
また、導電膜112a_1、112a_3、112b_1、112b_3、112c_
1、112c_3には、窒素とタンタルを含む、所謂窒化タンタル膜を用いると好適であ
る。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対して、高いバリア性
を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が少ないため、酸化物
半導体膜108と接する導電膜として、最も好適に用いることができる。
【0110】
また、導電膜104、112a_1、112a_3、112b_1、112b_3、1
12c_1、112c_3、120a、120bには、インジウムと錫とを有する酸化物
、タングステンとインジウムとを有する酸化物、タングステンとインジウムと亜鉛とを有
する酸化物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタンとインジウムと錫とを有する
酸化物、インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとインジウムと錫とを有する酸化
物、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等の酸化物導電体を適用することもで
きる。導電膜112a_1、112a_3、112b_1、112b_3、112c_1
、及び112c_3は、InまたはZnのうち少なくとも一を含む酸化物を有することで
、導電膜112a_2、112b_2、112c_2が有する銅の外部への拡散を抑制す
ることができる。
【0111】
特に、導電膜120aには、上述の酸化物導電体を好適に用いることができる。また、
導電膜120aと、酸化物半導体膜108(酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜
108c)と、が同一の金属元素を有する構成とすると好適である。当該構成とすること
で、製造コストを抑制することが可能となる。
【0112】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC
(Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば
、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナ
ー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電
体化された酸化物半導体を、酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は
、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電
体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体
は、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光
性を有する。
【0113】
≪第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜≫
トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107として
は、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chem
ical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化
シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニ
ウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜
、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネ
オジム膜を一種以上含む絶縁層を、それぞれ用いることができる。なお、絶縁膜106、
107の積層構造とせずに、上述の材料から選択された単層の絶縁膜、または3層以上の
絶縁膜を用いてもよい。
【0114】
また、絶縁膜106は、酸素の透過を抑制するブロッキング膜としての機能を有する。
例えば、絶縁膜107、114、116及び/または酸化物半導体膜108中に過剰の酸
素を供給する場合において、絶縁膜106は酸素の透過を抑制することができる。
【0115】
なお、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接す
る絶縁膜107は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸
素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜1
07は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜107に酸素過剰領域
を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜107を形成すればよい。または、成膜
後の絶縁膜107を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0116】
また、絶縁膜107として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化
ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、
酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜107の膜厚を大きくできるため、トンネル
電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジ
スタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造
を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さい
トランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい
。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態
様は、これらに限定されない。
【0117】
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107
として酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電
率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トラン
ジスタ100のゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を厚膜化するこ
とができる。よって、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を
向上させて、トランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
【0118】
≪酸化物半導体膜≫
酸化物半導体膜108としては、先に示す材料を用いることができる。
【0119】
酸化物半導体膜108bがIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜
するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たす
ことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、I
n:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4
.1等が挙げられる。
【0120】
また、酸化物半導体膜108a、108cがIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-
Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、
In≦Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原
子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:
M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、等
が挙げられる。
【0121】
また、酸化物半導体膜108(108a、108b、及び108c)が、それぞれIn
-M-Zn酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn-M-Zn
酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn-M-Zn酸化物を含むター
ゲットを用いることで、結晶性を有する酸化物半導体膜108a、108b、及び108
cを形成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108a、108b、及び10
8cの原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子
数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、酸化物半導体膜108bのスパッタ
リングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、
成膜される酸化物半導体膜108bの原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍と
なる場合がある。
【0122】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5
eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸
化物半導体を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。特
に、酸化物半導体膜108bには、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2eV
以上3.0eV以下の酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108a、108cには、
エネルギーギャップが2.5eV以上3.5eV以下の酸化物半導体膜を用いると、好適
である。また、酸化物半導体膜108bよりも酸化物半導体膜108a及び108cのエ
ネルギーギャップが大きい方が好ましい。
【0123】
また、酸化物半導体膜108a、108b、及び108cの厚さは、それぞれ3nm以
上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm以上
50nm以下とする。
【0124】
また、酸化物半導体膜108a、108cとしては、キャリア密度の低い酸化物半導体
膜を用いる。例えば、酸化物半導体膜108a、108cは、キャリア密度が1×10
cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013
cm-3以下、より好ましくは1×1011cm-3以下とする。
【0125】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜108のキャリア密度や不純
物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとする
ことが好ましい。
【0126】
なお、酸化物半導体膜108としては、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物
半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することが
でき好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)
ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真
性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすること
ができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、しき
い値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低
いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×10μm
でチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレ
イン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザ
の測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。
【0127】
したがって、上記高純度真性、または実質的に高純度真性の酸化物半導体膜にチャネル
領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタ
とすることができる。なお、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失す
るまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、
トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電
気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、または
アルカリ土類金属等がある。
【0128】
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に
、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損
に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が
金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って
、水素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となり
やすい。このため、酸化物半導体膜108は水素ができる限り低減されていることが好ま
しい。具体的には、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られる水素濃
度を、2×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm
以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、5×1018atoms
/cm以下、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1
17atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下
とする。
【0129】
また、酸化物半導体膜108bは、酸化物半導体膜108cよりも水素濃度が少ない領
域を有すると好ましい。酸化物半導体膜108bの方が、酸化物半導体膜108cよりも
水素濃度が少ない領域を有すことにより、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0130】
また、酸化物半導体膜108bにおいて、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が
含まれると、酸化物半導体膜108bにおいて酸素欠損が増加し、n型化してしまう。こ
のため、酸化物半導体膜108bにおけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体膜10
8bとの界面近傍のシリコンや炭素の濃度(SIMS分析により得られる濃度)を、2×
1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とす
る。
【0131】
また、酸化物半導体膜108bにおいて、SIMS分析により得られるアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×
1016atoms/cm以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物
半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大して
しまうことがある。このため、酸化物半導体膜108bのアルカリ金属またはアルカリ土
類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0132】
また、酸化物半導体膜108bに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、
キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜
を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体膜に
おいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、SIMS分析により
得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm以下にすることが好ましい。
【0133】
また、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜108cは、それぞれ非単結晶構
造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Ali
gned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結
晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最
も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0134】
≪第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜≫
絶縁膜114、116は、トランジスタ100の第2のゲート絶縁膜として機能する。
また、絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。
すなわち、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過
することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形
成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0135】
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50
nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0136】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が3×1017spins/cm以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に
含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素
の透過量が減少してしまう。
【0137】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜11
4の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が
入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁
膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過するこ
とができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から
脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる
【0138】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形
成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価
電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー
(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の
放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミ
ニウム膜等を用いることができる。
【0139】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法におい
て、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニア
の放出量が1×1018個/cm以上5×1019個/cm以下である。なお、アン
モニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上55
0℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0140】
窒素酸化物(NO、xは0を越えて2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的には
NOまたはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜
108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び
酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をト
ラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半導
体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさ
せてしまう。
【0141】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114
に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応
するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及
び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0142】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧
のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することが
できる。
【0143】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上350℃未満の加
熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルに
おいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2
.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグ
ナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第
2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5
mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.
001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下
である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/cm未満であ
り、代表的には1×1017spins/cm以上1×1018spins/cm
満である。
【0144】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以
下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値
が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計は、窒素酸
化物(NO、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルに相
当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が
2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下
の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのス
ピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないと
いえる。
【0145】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms
/cm以下である。
【0146】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPEC
VD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を
形成することができる。
【0147】
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を
用いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、
加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む
酸化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×10
atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm以上である
酸化物絶縁膜である。なお、上記TDSにおける膜の表面温度としては100℃以上70
0℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0148】
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上
400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0149】
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が1.5×1018spins/cm未満、さらには1×1018spins/cm
以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導
体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0150】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁
膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の
形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本
実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、こ
れに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造として
もよい。
【0151】
≪保護絶縁膜として機能する絶縁膜≫
絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜として機能する。
【0152】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁膜1
18は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ
金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けるこ
とで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含ま
れる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを
防ぐことができる。
【0153】
絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜
としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム
等がある。
【0154】
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜などの様々な膜は、スパッタリン
グ法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD(Ch
emical Vapor Deposition)法により形成してもよい。熱CVD
法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor
Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposi
tion)法などが挙げられる。
【0155】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0156】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0157】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次チャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。
【0158】
MOCVD法、ALD法などの熱CVD法は、上記実施形態の導電膜、絶縁膜、酸化物
半導体膜、金属酸化膜などの様々な膜を形成することができ、例えば、In-Ga-Zn
O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜
鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CHである。また、
トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CHである。また、ジメチル亜鉛の化学式
は、Zn(CHである。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリ
ウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C)を用いることもでき、ジ
メチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C)を用いることもできる。
【0159】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチル
アミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸
化剤としてオゾン(O)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハ
フニウムの化学式はHf[N(CHである。また、他の材料液としては、テト
ラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0160】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を
気化させた原料ガスと、酸化剤としてHOの2種類のガスを用いる。なお、トリメチル
アルミニウムの化学式はAl(CHである。また、他の材料液としては、トリス(
ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2
,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などがある。
【0161】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0162】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF
ガスとBガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF
ガスとHガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、Bガスに代えてS
iHガスを用いてもよい。
【0163】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-ZnO
膜を成膜する場合には、In(CHガスとOガスを順次繰り返し導入してIn-
O層を形成し、その後、Ga(CHガスとOガスとを用いてGaO層を形成し、
更にその後Zn(CHガスとOガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これ
らの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを用いてIn-Ga-O層やIn
-Zn-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、Oガス
に変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたHOガスを用いても良いが、H
を含まないOガスを用いる方が好ましい。また、In(CHガスに変えて、In
(Cガスを用いても良い。また、Ga(CHガスに変えて、Ga(C
ガスを用いても良い。また、Zn(CHガスを用いても良い。
【0164】
<1-6.トランジスタの作製方法1>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Jの作製方法について、
図14乃至図17を用いて説明する。なお、図14乃至図17は、半導体装置の作製方法
を説明する断面図であり、図14(A)(C)(E)、図15(A)(C)(E)、図1
6(A)(C)(E)、図17(A)(C)(E)は、X1-X2に示すチャネル長方向
であり、図14(B)(D)(F)、図15(B)(D)(F)、図16(B)(D)(
F)、図17(B)(D)(F)は、Y1-Y2に示すチャネル幅方向の断面図である。
【0165】
≪第1のゲート電極及び第1のゲート絶縁膜の形成工程≫
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工
程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導
電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107を形成する(図
14(A)(B)参照)。
【0166】
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、第1のゲート電極として機能
する導電膜104として、厚さ10nmのチタン膜と、厚さ100nmの銅膜と、厚さ5
0nmの窒化タンタル膜とを、それぞれスパッタリング法により形成する。
【0167】
また、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化シリコン膜をPECVD法により形成
し、絶縁膜107として厚さ15nmの酸化窒化シリコン膜をPECVD法により形成す
る。なお、絶縁膜106としては、窒化シリコン膜の積層構造とすることができる。具体
的には、絶縁膜106を、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第3の窒
化シリコン膜との3層積層構造とすることができる。該3層積層構造の一例としては、以
下のように形成することができる。
【0168】
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD
装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周
波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すればよ
い。
【0169】
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccm
の窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の
反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源
を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
【0170】
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sc
cmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100
Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚
さが50nmとなるように形成すればよい。
【0171】
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜
形成時の基板温度は350℃以下とすることができる。
【0172】
絶縁膜106を、窒化シリコン膜の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜10
4に銅(Cu)を含む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
【0173】
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅(Cu)元素の拡散を抑制することが
できる。第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は、第3の窒化シリ
コン膜からの水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散
を抑制することができる。
【0174】
絶縁膜107としては、後に形成される酸化物半導体膜108(より具体的には、酸化
物半導体膜108b)との界面特性を向上させるため、酸素を含む絶縁膜で形成されると
好ましい。また、絶縁膜107の形成後に、絶縁膜107に酸素を添加してもよい。絶縁
膜107に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子
イオン等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズ
マ処理法等がある。
【0175】
≪酸化物半導体膜の形成工程≫
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜108cを形成す
る(図14(C)(D)参照)。
【0176】
図14(C)(D)は、絶縁膜107上に後に酸化物半導体膜108となる酸化物半導
体膜を形成する際の成膜装置内部の断面模式図である。図14(C)(D)では、成膜装
置としてスパッタリング装置を用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲッ
ト191と、ターゲット191の下方に形成されたプラズマ192とが、模式的に表され
ている。
【0177】
まず、酸化物半導体膜を形成する際に、第1の酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放
電させる。その際に、酸化物半導体膜の被形成面となる絶縁膜107中に、酸素が添加さ
れる。また、酸化物半導体膜を形成する際に、第1の酸素ガスの他に、不活性ガス(例え
ば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。
【0178】
第1の酸素ガスとしては、少なくとも酸化物半導体膜を形成する際に含まれていればよ
く、酸化物半導体膜を形成する際の成膜ガス全体に占める第1の酸素ガスの割合としては
、0%より大きく100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに好ましくは
30%以上100%以下である。
【0179】
なお、図14(C)(D)において、絶縁膜107に添加される酸素または過剰酸素を
模式的に破線の矢印で表している。
【0180】
なお、酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108cの形成時の基板温度は、同
じでも異なっていてもよい。ただし、酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108
cとの、基板温度を同じとすることで、製造コストを低減することができるため好適であ
る。
【0181】
例えば、酸化物半導体膜108を成膜する際の基板温度としては、室温以上340℃未
満、好ましくは室温以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さら
に好ましくは100℃以上200℃以下である。酸化物半導体膜108を加熱して成膜す
ることで、酸化物半導体膜108の結晶性を高めることができる。一方で、基板102と
して、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用いる場合、酸化物半導
体膜108を成膜する際の基板温度を150℃以上340℃未満とした場合、基板102
が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、大型のガラス基板を用いる場合にお
いては、酸化物半導体膜108の成膜する際の基板温度を100℃以上150℃未満とす
ることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【0182】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとし
て用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、よ
り好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを
用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる
【0183】
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜を成膜する場合、スパッタリング装置におけ
るチャンバーは、酸化物半導体膜にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクラ
イオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(5×10-7Paから1×
10-4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプとコールド
トラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を含む気体
が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0184】
また、後に酸化物半導体膜108bとなる酸化物半導体膜が形成した後、続けて、後に
酸化物半導体膜108cとなる酸化物半導体膜が形成する。なお、これらの酸化物半導体
膜の形成時においては、第2の酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させればよい。
【0185】
なお、後に酸化物半導体膜108bとなる酸化物半導体膜を形成する際の第1の酸素ガ
スの割合と、後に酸化物半導体膜108cとなる酸化物半導体膜を形成する際の第2の酸
素ガスの割合とは同じでも異なっていてもよい。
【0186】
本実施の形態では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:
2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により後に酸化物半導体膜108
bとなる酸化物半導体膜を形成し、その後真空中で連続して、In-Ga-Zn金属酸化
物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])を用いて、スパッタリ
ング法により後に酸化物半導体膜108cとなる酸化物半導体膜を形成する。また、これ
らの酸化物半導体膜の形成時の基板温度を170℃とする。また、後に酸化物半導体膜1
08bとなる酸化物半導体膜の形成時の成膜ガスとしては、流量15sccmの酸素ガス
と、流量35sccmのアルゴンガスと、を用いる。また、後に酸化物半導体膜108c
となる酸化物半導体膜の形成時の成膜ガスとしては、流量25sccmの酸素ガスと、流
量25sccmのアルゴンガスと、を用いる。
【0187】
次に、成膜した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、島状の酸化物半導体膜
108b及び島状の酸化物半導体膜108cを形成する(図14(E)(F)参照)。な
お、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜108cで
酸化物半導体膜108を構成する(図14(E)(F)参照)。
【0188】
また、酸化物半導体膜108を形成した後に、加熱処理(以下、第1の加熱処理とする
)を行うと好適である。第1の加熱処理により、酸化物半導体膜108に含まれる水素、
水等を低減することができる。なお、水素、水等の低減を目的とした加熱処理は、酸化物
半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。なお、第1の加熱処理は、酸化物半
導体膜の高純度化処理の一つである。
【0189】
第1の加熱処理としては、例えば、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200
℃以上450℃以下、さらに好ましくは250℃以上350℃以下とすることができる。
【0190】
また、第1の加熱処理は、電気炉、RTA(Rapid Thermal Annea
l)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、短時間に限り基板の歪み
点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため、加熱時間を短縮することが可能と
なる。また、第1の加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下
、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴ
ン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または
希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱
処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、酸化物半導体膜
中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体膜中に酸素を供給することが
できる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損を低減することができる。
【0191】
≪ソース電極及びドレイン電極の形成工程≫
次に、絶縁膜107及び酸化物半導体膜108上に、後にソース電極及びドレイン電極
となる、導電膜112をスパッタリング法によって形成する(図15(A)(B)参照)
【0192】
本実施の形態では、導電膜112として、導電膜112_1、112_2、及び112
_3を積層する。導電膜112_1として厚さ50nmのタングステン膜と、導電膜11
2_2として厚さ200nmの銅膜と、導電膜112_3として厚さ5nmのタングステ
ン膜とを、順に積層した積層膜をスパッタリング法により成膜する。なお、本実施の形態
においては、導電膜112_1と導電膜112_3とが同じ材料を用いて成膜するが、こ
れに限定されない。例えば、導電膜112_1として厚さ50nmのタングステン膜と、
導電膜112_2として厚さ200nmの銅膜と、導電膜112_3として厚さ50nm
のチタン膜とを、順に成膜した積層膜を用いても良い。また、導電膜112の3層の積層
構造としたが、これに限定されない。例えば、導電膜112として、2層の積層構造とし
てもよく、4層以上の積層構造としてもよい。
【0193】
次に、導電膜112_3上の所望の領域にマスク141a、141bを形成する。続け
て、マスク141a、141bを用いて、導電膜112_2、112_3を加工すること
で、それぞれ互いに分離された島状の導電膜112a_2、112b_2、112a_3
、112b_3を形成する(図15(C)(D)参照)。
【0194】
なお、本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜112_2、
112_3を加工する。ただし、導電膜112の加工方法としては、これに限定されず、
例えば、ドライエッチング装置を用いてもよい。なお、ドライエッチング装置を用いて、
導電膜112を加工するよりも、ウエットエッチング装置を用いて導電膜112を加工し
た方が、製造コストを低減することができる。
【0195】
次に、導電膜112a_2、112b_2の端部をシリサイド化させることで、銅を有
する領域112a_2a、112b_2aと、銅シリサイドを有する領域112a_2b
、112b_2bとを形成する。
【0196】
図15(E)(F)は、導電膜112a_2、112b_2の端部をシリサイド化させ
る際のプラズマ装置内部の断面模式図である。図15(E)(F)では、プラズマ装置と
してPECVD装置を用い、当該PECVD装置内部に発生したプラズマ195が、模式
的に表されている。
【0197】
導電膜112a_2、112b_2の端部で露出した銅は、表面に容易に酸化膜を形成
する。したがって、銅をシリサイド化する前処理として、銅の表面を被覆している酸化膜
を除去するために還元性を有するガス(例えば、水素ガス、アンモニアガスなど)を含む
雰囲気にてプラズマを放電させる。その際、銅表面を覆う酸化膜が還元され、導電膜11
2a_2、112b_2の端部に銅が露出する。なお、当該酸化膜を除去するための還元
方法としては、プラズマ処理に限定されない。例えば、還元性を有するガス(例えば、水
素ガス、アンモニアガスなど)を含む雰囲気に銅の表面を曝し、加熱処理をすることで還
元してもよい。また、上記プラズマ処理および加熱処理を行う際の基板温度としては、好
ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上である。本実施の形態において、銅
表面を覆う酸化膜を除去する際の基板温度としては350℃とする。
【0198】
続いて、シランガスを含む雰囲気に曝し、銅とシランガスとを反応させることで、導電
膜112a_2、112b_2の端部に銅とシリコンとを有する銅シリサイドを形成し、
領域112a_2b、112b_2bを形成する。また、導電膜112a_2、112b
_2において銅シリサイドを形成しない領域を領域112a_2a、112b_2aとす
る。銅シリサイドを形成する際の基板温度としては、好ましくは200℃以上400℃以
下、より好ましくは220℃以上350℃以下である。本実施の形態において、銅シリサ
イドを形成する際の基板温度としては220℃とし、流量300sccmのシランガスと
、流量500sccmの窒素ガスと、を用いる。
【0199】
また、銅表面の酸化膜を除去する際の基板温度と、銅シリサイドを形成する際の基板温
度を揃えることは、酸化膜除去と銅シリサイド形成を同一装置内あるいは同一チャンバー
内で行えるため好ましい。この場合、銅シリサイドを形成する際の基板温度を350℃に
することが好ましい。
【0200】
なお、銅シリサイドを形成する際のガスとしては、少なくともシリコンが含まれていれ
ばよく、銅シリサイドを形成する際のガス全体に占めるシリコンを含むガスの割合として
は、0%より大きく100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに好ましく
は30%以上100%以下である。
【0201】
なお、図15(E)(F)において、導電膜112a_2、112b_2に添加される
シリコンまたはシランを模式的に破線の矢印で表している。
【0202】
なお、銅シリサイドを形成した後、窒素を含むガスの雰囲気にてプラズマを放電させて
、導電膜112a_2、112b_2に、銅とシリコンと窒素とを含む銅シリサイドナイ
トライドを形成してもよい。また、窒素を含むガスの雰囲気に基板を曝し、加熱処理を行
うことで、導電膜112a_2、112b_2に銅とシリコンと窒素とを含む銅シリサイ
ドナイトライドを形成してもよい。
【0203】
次に、導電膜112_1上の一部、及び導電膜112a_2、112b_2、112a
_3、112b_3上の所望の領域にマスク142a、142bを形成する。続けて、マ
スク142a、142bを用いて、導電膜112_1を加工することで、それぞれ互いに
分離された島状の導電膜112a_1、112b_1を形成する。この工程を行うことで
、導電膜112a_1と、領域112a_2a及び領域112a_2bを有する導電膜1
12a_2と、導電膜112_3とを有する導電膜112a、及び導電膜112b_1と
、領域112b_2a及び領域112b_2bを有する導電膜112b_2と、導電膜1
12b_3とを有する導電膜112b、が形成される(図16(A)(B)参照)。
【0204】
なお、本実施の形態においては、ドライエッチング装置を用い、導電膜112_1を加
工する。ただし、導電膜112_1の加工方法としては、これに限定されず、例えば、ウ
エットエッチング装置を用いてもよい。なお、ウエットエッチング装置を用いて、導電膜
112_1を加工するよりも、ドライエッチング装置を用いて導電膜112_1を加工し
た方が、より微細なパターンを形成することができる。
【0205】
また、導電膜112a、112bの形成後に、酸化物半導体膜108(より具体的には
酸化物半導体膜108b)の表面(バックチャネル側)を洗浄してもよい。当該洗浄方法
としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用いて
洗浄を行うことで、酸化物半導体膜108bの表面に付着した不純物(例えば、導電膜1
12a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、当該洗浄を必ずし
も行う必要はなく、場合によっては、洗浄を行わなくてもよい。
【0206】
また、導電膜112a、112bを形成する工程、及び上記洗浄工程のいずれか一方ま
たは双方において、酸化物半導体膜108の導電膜112a、112bから露出した領域
が、薄くなる場合がある。
【0207】
≪第2のゲート絶縁膜の形成工程≫
次に、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、及び
絶縁膜116を形成する(図16(C)(D)参照)。
【0208】
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成
することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高
周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶
縁膜114と絶縁膜116との界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することが
できるとともに、絶縁膜114、116に含まれる酸素を酸化物半導体膜108に移動さ
せることが可能となり、酸化物半導体膜108の酸素欠損量を低減することが可能となる
【0209】
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する
ことができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体
を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラ
ン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素、二酸化窒
素等がある。また、上記の堆積性気体の流量に対して酸化性気体の流量を20倍より大き
く100倍未満、好ましくは40倍以上80倍以下とし、処理室内の圧力を100Pa未
満、好ましくは50Pa以下とするPECVD法を用いることで、絶縁膜114が、窒素
を含み、且つ欠陥量の少ない絶縁膜となる。
【0210】
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃
とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスと
し、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56M
Hz、100W(電力密度としては1.6×10-2W/cm)とするPECVD法を
用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0211】
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を
180℃以上350℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力
を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし
、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm以上0.5W/cm以下、さらに好
ましくは0.25W/cm以上0.35W/cm以下の高周波電力を供給する条件に
より、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0212】
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力
が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物
絶縁膜を形成することができる。
【0213】
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護
膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の
高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
【0214】
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気
体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的
には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現
れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm未満、好ましくは3×1017
spins/cm以下、好ましくは1.5×1017spins/cm以下である欠
陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果、トランジスタ100の信
頼性を高めることができる。
【0215】
また、絶縁膜114、116を成膜した後に、加熱処理(以下、第2の加熱処理とする
)を行うと好適である。第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸
化物を低減することができる。または、第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に
含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれ
る酸素欠損量を低減することができる。
【0216】
第2の加熱処理の温度は、代表的には、400℃未満、好ましくは375℃未満、さら
に好ましくは、150℃以上350℃以下とする。第2の加熱処理は、窒素、酸素、超乾
燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb
以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、
上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい該
加熱処理には、電気炉、RTA装置等を用いることができる。
【0217】
次に、絶縁膜116上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜114、11
6の所望の領域に開口部152cを形成する。なお、開口部152cは、導電膜112b
に達するように形成される(図16(E)(F)参照)。
【0218】
≪第2のゲート電極の形成工程≫
次に、開口部152cを覆うように、絶縁膜116上に導電膜120a、120bを形
成する(図17(A)(B)(C)(D)参照)。
【0219】
なお、図17(A)(B)は、絶縁膜116上に導電膜120a、120bを形成する
際の、成膜装置内部の断面模式図である。図17(A)(B)では、成膜装置としてスパ
ッタリング装置を用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット193と、
ターゲット193の下方に形成されたプラズマ194とが、模式的に表されている。
【0220】
まず、導電膜120a、120bを形成する際に、第3の酸素ガスを含む雰囲気にてプ
ラズマを放電させる。その際に、導電膜120a、120bの被形成面となる絶縁膜11
6中に、酸素が添加される。また、導電膜120a、120bを形成する際に、第3の酸
素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)
を混合させてもよい。例えば、アルゴンガスと、第3の酸素ガスと、を用い、アルゴンガ
スの流量よりも第3の酸素ガスの流量を多くするのが好ましい。第3の酸素ガスの流量を
多くすることで、好適に絶縁膜116に酸素を添加することができる。一例としては、導
電膜120a、120bの形成条件としては、成膜ガス全体に占める第4の酸素ガスの割
合を、50%以上100%以下、好ましくは、80%以上100%以下とすればよい。
【0221】
なお、図17(A)(B)において、絶縁膜116に添加される酸素または過剰酸素を
模式的に破線の矢印で表している。
【0222】
また、導電膜120a、120bを成膜する際の基板温度としては、室温以上340℃
未満、好ましくは室温以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さ
らに好ましくは100℃以上200℃以下である。導電膜120a、120bを加熱して
成膜することで、導電膜120a、120bの結晶性を高めることができる。一方で、基
板102として、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用いる場合、
導電膜120a、120bを成膜する際の基板温度を150℃以上340℃未満とした場
合、基板102が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、大型のガラス基板を
用いる場合においては、導電膜120a、120bの成膜する際の基板温度を100℃以
上150℃未満とすることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【0223】
本実施の形態では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:
2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により導電膜120a、120b
を形成する。また、導電膜120a、120bの形成時の基板温度を170℃とする。ま
た、導電膜120a、120bの形成時の成膜ガスとしては、流量100sccmの酸素
ガスを用いる。
【0224】
なお、導電膜120a、120bとしては、例えば、先に記載の酸化物半導体膜(例え
ば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]、In:Ga:Zn=1:3:2[原子
数比]、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=1:3:6[
原子数比]、In:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:
3[原子数比]、In:Ga:Zn=5:1:6[原子数比]など)を用いればよい。
【0225】
本実施の形態では、導電膜120a、120bを成膜する際に、絶縁膜116に酸素を
添加する方法について例示したがこれに限定されない。例えば、導電膜120a、120
bを形成後に、さらに絶縁膜116に酸素を添加してもよい。
【0226】
絶縁膜116に酸素を添加する方法としては、例えば、インジウムと、錫と、シリコン
とを有する酸化物(ITSOともいう)ターゲット(In:SnO:SiO
85:10:5[重量%])を用いて、膜厚5nmのITSO膜を酸化物導電膜として形
成する。
【0227】
この場合、酸化物導電膜の膜厚としては、1nm以上20nm以下、または2nm以上
10nm以下とすると好適に酸素を透過し、且つ酸素の放出を抑制できるため好ましい。
その後、酸化物導電膜を通過させて、絶縁膜116に酸素を添加する。酸素の添加方法と
しては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等が挙げられる。また、酸
素を添加する際に、基板側にバイアス電圧を印加することで効果的に酸素を絶縁膜116
に添加することができる。上記バイアス電圧としては、例えば、アッシング装置を用い、
該アッシング装置の基板側に印加するバイアス電圧の電力密度を1W/cm以上5W/
cm以下とすればよい。また、酸素を添加する際の基板温度としては、室温以上300
℃以下、好ましくは、100℃以上250℃以下とすることで、絶縁膜116に効率よく
酸素を添加することができる。
【0228】
次に、成膜した導電膜を所望の形状に加工することで、島状の導電膜120a、及び島
状の導電膜120bを形成する(図17(C)(D)参照)。
【0229】
≪保護絶縁膜の形成工程≫
次に、絶縁膜116、及び導電膜120a、120b上に絶縁膜118を形成する(図
17(E)(F)参照)。
【0230】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。絶縁膜118とし
ては、例えば、窒化シリコン膜を用いると好適である。また、絶縁膜118としては、例
えば、スパッタリング法またはPECVD法を用いて形成することができる。例えば、絶
縁膜118をPECVD法で成膜する場合、基板温度は400℃未満、好ましくは375
℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下である。絶縁膜118を成膜する場
合の基板温度を、上述の範囲にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。また、
絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、絶縁膜114、1
16中の酸素または過剰酸素を、酸化物半導体膜108に移動させることが可能となる。
【0231】
また、絶縁膜118形成後に、先に記載の第1の加熱処理または第2の加熱処理と同等
の加熱処理(以下、第3の加熱処理とする)を行ってもよい。このように、絶縁膜118
の成膜の際に、絶縁膜116に酸素を添加した後に、400℃未満、好ましくは375℃
未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下の温度で、加熱処理を行うことで、絶
縁膜116中の酸素または過剰酸素を酸化物半導体膜108(特に酸化物半導体膜108
b)中に移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。
【0232】
また、絶縁膜107の下方には、絶縁膜106が設けられており、絶縁膜114、11
6の上方には、絶縁膜118が設けられている。絶縁膜106、118を酸素透過性が低
い材料、例えば、窒化シリコン等により形成することで、絶縁膜107、114、116
中に含まれる酸素を酸化物半導体膜108側に閉じ込めることができるため、好適に酸化
物半導体膜108に酸素を移動させることが可能となる。
【0233】
また、絶縁膜118は、を水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。そのため
、絶縁膜118を形成することで、絶縁膜118に接する導電膜120a、120bは、
水素及び窒素のいずれか一方または双方が添加されることで、キャリア密度が高くなり、
酸化物導電膜として機能することができる。
【0234】
また、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコ
ンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒
素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性
種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結
合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シ
リコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することが
できる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒
素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な
窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対
する窒素の流量比を5倍以上50倍以下、10倍以上50倍以下とすることが好ましい。
【0235】
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒
素、及びアンモニアを原料ガスして用いて、厚さ100nmの窒化シリコン膜を形成する
。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100
sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MH
zの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD
装置は電極面積が6000cmである平行平板型のPECVD装置であり、供給した電
力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10-1W/cmである
【0236】
以上の工程で図9(A)(B)に示すトランジスタ100Jを作製することができる。
【0237】
また、トランジスタ100Jの全ての作製工程において、基板温度を400℃未満、好
ましくは375℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下とすることで、大面
積の基板を用いても基板の変形(歪みまたは反り)を極めて少なくすることができるため
好適である。なお、トランジスタ100Jの作製工程において、基板温度が高くなる工程
としては、代表的には、絶縁膜106、107の成膜時の基板温度(400℃未満、好ま
しくは250℃以上350℃以下)、酸化物半導体膜108の成膜時の基板温度(室温以
上340℃未満、好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上
150℃未満)、絶縁膜116、118の成膜時の基板温度(400℃未満、好ましくは
375℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下)、酸素を添加後の第1の加
熱処理または第2の加熱処理(400℃未満、好ましくは375℃未満、さらに好ましく
は180℃以上350℃以下)などが挙げられる。
【0238】
<1-7.トランジスタの作製方法2>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100Mの作製方法について、
図18乃至図20を用いて説明する。なお、図18乃至図20は、半導体装置の作製方法
を説明する断面図であり、図18(A)(C)(E)、図19(A)(C)、図20(A
)は、X1-X2に示すチャネル長方向であり、図18(B)(D)(F)、図19(B
)(D)、図20(B)は、Y1-Y2に示すチャネル幅方向の断面図である。
【0239】
導電膜104、絶縁膜106、107、酸化物半導体膜108、導電膜112_1、導
電膜112a_2(領域112a_2a、112a_2b)、導電膜112b_2(領域
112b_2a、112b_2b)、導電膜112a_3、及び導電膜112b_3の形
成方法としては、先のトランジスタ100Jの形成方法と同じであるため、図14及び図
15を参酌すればよい。
【0240】
なお、本実施の形態では、導電膜112に用いる導電膜112_1として厚さ50nm
のタングステン膜と、導電膜112_2として厚さ200nmの銅膜と、導電膜112_
3として厚さ50nmのチタン膜とを、順に積層した積層膜を用いる。
【0241】
次に、導電膜112a_2、112b_2、112_3をマスクとして、導電膜112
_1を加工することで、それぞれ互いに分離された島状の導電膜112a_1、112b
_1を形成する。この工程を行うことで、導電膜112a_1、導電膜112a_2(領
域112a_2a、112a_2b)、及び導電膜112a_3を有する導電膜112a
と、導電膜112b_1、導電膜112b_2(領域112b_2a、112b_2b)
、及び導電膜112b_3を有する導電膜112bと、が形成される(図18(A)(B
)参照)。
【0242】
導電膜112a、112bの形成方法としては、トランジスタ100Jと同様の方法を
用いることができる。
【0243】
次に、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114、11
6、及び絶縁膜118を形成する(図18(C)(D)(E)(F)参照)。絶縁膜11
4、116、118の形成方法としては、トランジスタ100Jと同様の方法を用いるこ
とができる。
【0244】
また、絶縁膜118形成後に、先に記載の第1の加熱処理または第2の加熱処理と同等
の加熱処理(以下、第3の加熱処理とする)を行ってもよい。このように、絶縁膜118
の成膜の際に、絶縁膜116に酸素を添加した後に、400℃未満、好ましくは375℃
未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下の温度で、加熱処理を行うことで、絶
縁膜116中の酸素または過剰酸素を酸化物半導体膜108(特に酸化物半導体膜108
b)中に移動させ、酸化物半導体膜108中の酸素欠損を補填することができる。
【0245】
ここで、酸化物半導体膜108中に移動する酸素について、図20を用いて説明を行う
図20は、絶縁膜118成膜時の基板温度(代表的には375℃未満)、または絶縁膜
118の形成後の第2の加熱処理(代表的には375℃未満)によって、酸化物半導体膜
108中に移動する酸素を表すモデル図である。なお、図20中において、酸化物半導体
膜108中に示す酸素(酸素ラジカル、酸素原子、または酸素分子)を破線の矢印で表し
ている。
【0246】
図20に示す酸化物半導体膜108は、酸化物半導体膜108に近接する絶縁膜(ここ
では、絶縁膜107、及び絶縁膜114)から酸素が移動することで、酸素欠損が補填さ
れる。特に、本発明の一態様の半導体装置において、酸化物半導体膜108bのスパッタ
リング成膜時に、酸素ガスを用い、絶縁膜107中に酸素を添加するため、絶縁膜107
は過剰酸素領域を有する。また、酸化物導電膜のスパッタリング成膜時に、酸素ガスを用
い、絶縁膜116中に酸素を添加するため、絶縁膜116は過剰酸素領域を有する。よっ
て、該過剰酸素領域を有する絶縁膜に挟まれた酸化物半導体膜108は、酸素欠損が好適
に補填される。
【0247】
次に、絶縁膜118上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、絶縁膜114、11
6、118の所望の領域に開口部152cを形成する。なお、開口部152cは、導電膜
112bに達するように形成される(図19(A)(B)参照)。
【0248】
次に、開口部152cを覆うように、絶縁膜116上に導電膜120a、120bを形
成する(図19(C)(D)参照)。導電膜120a、120bとしては、トランジスタ
100Jと同様の方法を用いることができる。
【0249】
以上の工程で図10(C)に示すトランジスタ100Mを作製することができる。
【0250】
以上、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0251】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様に用いることのできる、酸化物半導体の組成
、及び酸化物半導体の構造等について、図21乃至図28を参照して説明する。
【0252】
<2-1.酸化物半導体の組成>
まず、酸化物半導体の組成について説明する。
【0253】
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジ
ウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム
、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン
、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウ
ム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ば
れた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0254】
ここで、酸化物半導体が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお、
元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元
素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウ
ム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル
、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組
み合わせても構わない場合がある。
【0255】
まず、図21(A)、図21(B)、および図21(C)を用いて、本発明の一態様に
係る酸化物半導体が有するインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲につい
て説明する。なお、図21には、酸素の原子数比については記載しない。また、酸化物半
導体が有するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M
]、および[Zn]とする。
【0256】
図21(A)、図21(B)、および図21(C)において、破線は、[In]:[M
]:[Zn]=(1+α):(1-α):1の原子数比(-1≦α≦1)となるライン、
[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):2の原子数比となるライン、[
In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):3の原子数比となるライン、[I
n]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):4の原子数比となるライン、および
[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):5の原子数比となるラインを表
す。
【0257】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比(β≧0)と
なるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In
]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn
]=1:4:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原
子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比となるラ
インを表す。
【0258】
また、二点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+γ):2:(1-γ)の原子
数比(-1≦γ≦1)となるラインを表す。また、図21に示す、[In]:[M]:[
Zn]=0:2:1の原子数比またはその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構
造をとりやすい。
【0259】
図21(A)および図21(B)では、本発明の一態様の酸化物半導体が有する、インジ
ウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0260】
一例として、図22に、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1である、InMZn
の結晶構造を示す。また、図22は、b軸に平行な方向から観察した場合のInMZ
nOの結晶構造である。なお、図22に示すM、Zn、酸素を有する層(以下、(M,
Zn)層)における金属元素は、元素Mまたは亜鉛を表している。この場合、元素Mと亜
鉛の割合が等しいものとする。元素Mと亜鉛とは、置換が可能であり、配列は不規則であ
る。
【0261】
InMZnOは、層状の結晶構造(層状構造ともいう)をとり、図22に示すように
、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)が1に対し、元素M、亜鉛、およ
び酸素を有する(M,Zn)層が2となる。
【0262】
また、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。そのため、(M,Zn)層の元
素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と表すこともできる。その場合、In
層が1に対し、(In,M,Zn)層が2である層状構造をとる。
【0263】
[In]:[M]:[Zn]=1:1:2となる原子数比の酸化物半導体は、In層が
1に対し、(M,Zn)層が3である層状構造をとる。つまり、[In]および[M]に
対し[Zn]が大きくなると、酸化物半導体が結晶化した場合、In層に対する(M,Z
n)層の割合が増加する。
【0264】
ただし、酸化物半導体中において、In層が1に対し、(M,Zn)層が非整数である
場合、In層が1に対し、(M,Zn)層が整数である層状構造を複数種有する場合があ
る。例えば、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1.5である場合、In層が1に対
し、(M,Zn)層が2である層状構造と、(M,Zn)層が3である層状構造とが混在
する層状構造となる場合がある。
【0265】
例えば、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比
からずれた原子数比の膜が形成される。特に、成膜時の基板温度によっては、ターゲット
の[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。
【0266】
また、酸化物半導体中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。
例えば、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比の近傍値である原子数比で
は、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、[In]:
[M]:[Zn]=1:0:0を示す原子数比の近傍値である原子数比では、ビックスバ
イト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物半導体中に複数の相
が共存する場合、異なる結晶構造の間において、粒界(グレインバウンダリーともいう)
が形成される場合がある。
【0267】
また、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物半導体のキャリア移動度(電子移
動度)を高くすることができる。これは、インジウム、元素M及び亜鉛を有する酸化物半
導体では、主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有率
を高くすることにより、s軌道が重なる領域がより大きくなるため、インジウムの含有率
が高い酸化物半導体はインジウムの含有率が低い酸化物半導体と比較してキャリア移動度
が高くなるためである。
【0268】
一方、酸化物半導体中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度
が低くなる。従って、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0を示す原子数比、および
その近傍値である原子数比(例えば図21(C)に示す領域C)では、絶縁性が高くなる
【0269】
従って、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、粒界が少な
い層状構造となりやすい、図21(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ま
しい。
【0270】
また、図21(B)に示す領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4
.1、およびその近傍値を示している。近傍値には、例えば、原子数比が[In]:[M
]:[Zn]=5:3:4が含まれる。領域Bで示される原子数比を有する酸化物半導体
は、特に、結晶性が高く、キャリア移動度も高い優れた酸化物半導体である。
【0271】
なお、酸化物半導体が、層状構造を形成する条件は、原子数比によって一義的に定まら
ない。原子数比により、層状構造を形成するための難易の差はある。一方、同じ原子数比
であっても、形成条件により、層状構造になる場合も層状構造にならない場合もある。従
って、図示する領域は、酸化物半導体が層状構造を有する原子数比を示す領域であり、領
域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
【0272】
<2-2.酸化物半導体をトランジスタに用いる構成>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0273】
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、粒界におけるキャリア散乱等
を減少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することがで
きる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0274】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。
例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm未満、好ましくは1×1
11/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9
/cm以上とすればよい。
【0275】
なお、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が
少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高
純度真性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる
場合がある。
【0276】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が
長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高
い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場
合がある。
【0277】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度
を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、
近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0278】
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0279】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化
物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭
素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法
(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によ
り得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017
toms/cm以下とする。
【0280】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を
形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属
が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減すること
が好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属または
アルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×10
16atoms/cm以下にする。
【0281】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリ
ア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体
に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体にお
いて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素
濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×10
18atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さ
らに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0282】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるた
め、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電
子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キ
ャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用
いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素
はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SI
MSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×
1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満
、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0283】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いるこ
とで、安定した電気特性を付与することができる。
【0284】
<2-3.酸化物半導体の積層構造>
続いて、該酸化物半導体を2層構造、または3層構造とした場合について述べる。酸化
物半導体S1、酸化物半導体S2、および酸化物半導体S3の積層構造に接する絶縁体の
バンド図と、酸化物半導体S2および酸化物半導体S3の積層構造に接する絶縁体のバン
ド図と、について、図23を用いて説明する。
【0285】
図23(A)は、絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S
3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、図23
(B)は、絶縁体I1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2を有する
積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。なお、バンド図は、理解を容易にするため
絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2
の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
【0286】
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2よりも伝導帯下端のエネル
ギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体S2の伝導帯下端のエネルギー準
位と、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0
.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であること
が好ましい。すなわち、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の電子親和力よりも、酸化
物半導体S2の電子親和力が大きく、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の電子親和力
と、酸化物半導体S2の電子親和力との差は、0.15eV以上、または0.5eV以上
、かつ2eV以下、または1eV以下であることが好ましい。
【0287】
図23(A)、および図23(B)に示すように、酸化物半導体S1、酸化物半導体S
2、酸化物半導体S3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換
言すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようなバンド図
を有するためには、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2との界面、または酸化物半導体
S2と酸化物半導体S3との界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くすると
よい。
【0288】
具体的には、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体
S3が、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混
合層を形成することができる。例えば、酸化物半導体S2がIn-Ga-Zn酸化物半導
体の場合、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3として、In-Ga-Zn酸化物半導体
、Ga-Zn酸化物半導体、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0289】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物半導体S2となる。酸化物半導体S1と酸化
物半導体S2との界面、および酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面における欠
陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく
、高いオン電流が得られる。
【0290】
トラップ準位に電子が捕獲されることで、捕獲された電子は固定電荷のように振る舞う
ため、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。酸化物半導体S1
、酸化物半導体S3を設けることにより、トラップ準位を酸化物半導体S2より遠ざける
ことができる。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフ
トすることを防止することができる。
【0291】
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2と比較して、導電率が十分
に低い材料を用いる。このとき、酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体S
1との界面、および酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面が、主にチャネル領域
として機能する。例えば、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3には、図21(C)にお
いて、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の酸化物半導体を用いればよい。なお、図
21(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、またはその近傍
値である原子数比を示している。
【0292】
特に、酸化物半導体S2に領域Aで示される原子数比の酸化物半導体を用いる場合、酸
化物半導体S1および酸化物半導体S3には、[M]/[In]が1以上、好ましくは2
以上である酸化物半導体を用いることが好ましい。また、酸化物半導体S3として、十分
に高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である酸化物
半導体を用いることが好適である。
【0293】
<2-4.酸化物半導体の構造>
以下では、酸化物半導体の構造について説明する。
【0294】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分け
られる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(c-axis-aligne
d crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化
物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semicon
ductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-
like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などが
ある。
【0295】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC
-OS、多結晶酸化物半導体およびnc-OSなどがある。
【0296】
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配
置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さ
ない、などといわれている。
【0297】
即ち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorphou
s)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期
構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a-l
ike OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造である
。不安定であるという点では、a-like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体に近
い。
【0298】
≪CAAC-OS≫
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0299】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一種である。
【0300】
CAAC-OSをX線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって
解析した場合について説明する。例えば、空間群R-3mに分類されるInGaZnO
の結晶を有するCAAC-OSに対し、out-of-plane法による構造解析を行
うと、図24(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピ
ークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OS
では、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC-OSの膜を形成する面(被形成面とも
いう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、空間群Fd-3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAA
C-OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
【0301】
一方、CAAC-OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、
InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定
し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)
を行っても、図24(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGa
ZnOに対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、図24(C)に示す
ように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、
XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは、a軸およびb軸の配向が不規則である
ことが確認できる。
【0302】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、CAAC-OSの被形成面に平行にプロ
ーブ径が300nmの電子線を入射させると、図24(D)に示すような回折パターン(
制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、I
nGaZnOの結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子
回折によっても、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成
面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面
に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図24(E
)に示す。図24(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プロ
ーブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC-OSに含まれるペ
レットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、図24(E)における
第1リングは、InGaZnOの結晶の(010)面および(100)面などに起因す
ると考えられる。また、図24(E)における第2リングは(110)面などに起因する
と考えられる。
【0303】
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron M
icroscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析
像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができ
る。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAA
C-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0304】
図25(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能
TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical A
berration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高
分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は
、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどに
よって観察することができる。
【0305】
図25(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認すること
ができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることが
わかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこ
ともできる。また、CAAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned na
nocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAA
C-OSの膜を被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面ま
たは上面と平行となる。
【0306】
また、図25(B)および図25(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAA
C-OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。図25(D)および図25(E)は
、それぞれ図25(B)および図25(C)を画像処理した像である。以下では、画像処
理の方法について説明する。まず、図25(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast
Fourier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取
得したFFT像において原点を基準に、2.8nm-1から5.0nm-1の間の範囲を
残すマスク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT
:Inverse Fast Fourier Transform)処理することで画
像処理した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFT
フィルタリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格
子配列を示している。
【0307】
図25(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が
、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部で
ある。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペ
レットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
【0308】
図25(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間を点
線で示している。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線
近傍の格子点を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形や、五角形または/および七
角形などが形成できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制し
ていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において原子配列が稠密
でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって
、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0309】
以上に示すように、CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において
複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、C
AAC-OSを、CAA crystal(c-axis-aligned a-b-p
lane-anchored crystal)と称することもできる。
【0310】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の
混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥
(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0311】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0312】
≪nc-OS≫
次に、nc-OSについて説明する。
【0313】
nc-OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc-OSに対
し、out-of-plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れな
い。即ち、nc-OSの結晶は配向性を有さない。
【0314】
また、例えば、InGaZnOの結晶を有するnc-OSを薄片化し、厚さが34n
mの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、図2
6(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測さ
れる。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(
ナノビーム電子回折パターン)を図26(B)に示す。図26(B)より、リング状の領
域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc-OSは、プローブ径が50nm
の電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を
入射させることでは秩序性が確認される。
【0315】
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると
図26(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンを観
測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc-OSが秩
序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いている
ため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
【0316】
図26(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc-OSの断面のCs補正高
分解能TEM像を示す。nc-OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所な
どのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできな
い領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさ
であり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが
10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(micr
o crystalline oxide semiconductor)と呼ぶことが
ある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場
合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレットと起源を同じくする可能
性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
【0317】
このように、nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特
に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS
は、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見
られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶
質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0318】
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc-OSを
、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化
物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0319】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0320】
≪a-like OS≫
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0321】
図27に、a-like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、図27(A)
は電子照射開始時におけるa-like OSの高分解能断面TEM像である。図27
B)は4.3×10/nmの電子(e)照射後におけるa-like OSの
高分解能断面TEM像である。図27(A)および図27(B)より、a-like O
Sは電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。ま
た、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低
密度領域と推測される。
【0322】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すた
め、電子照射による構造の変化を示す。
【0323】
試料として、a-like OS、nc-OSおよびCAAC-OSを準備する。いず
れの試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0324】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有する。
【0325】
なお、InGaZnOの結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn
-O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られてい
る。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と
同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、
以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZ
nOの結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnOの結晶のa-b面に対応
する。
【0326】
図28は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図28より、a-lik
e OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなって
いくことがわかる。図28より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大き
さだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e)の累積照射量が4.2×10
/nmにおいては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、n
c-OSおよびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
/nmまでの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。図28
より、電子の累積照射量によらず、nc-OSおよびCAAC-OSの結晶部の大きさは
、それぞれ1.3nm程度および1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射
およびTEMの観察は、日立透過電子顕微鏡H-9000NARを用いた。電子線照射条
件は、加速電圧を300kV、電流密度を6.7×10/(nm・s)、照射領
域の直径を230nmとした。
【0327】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとん
ど見られない。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて
、不安定な構造であることがわかる。
【0328】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比
べて密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結
晶の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc-OSの密度およびCAA
C-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結
晶の密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0329】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnOの密度は6.357g/cmである。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm以上5.9g/cm未満である。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度およびCAAC-OSの密度は5.9g/cm以上6.3g/cm
未満である。
【0330】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合
わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。
所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して
、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を
組み合わせて見積もることが好ましい。
【0331】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0332】
<2-5.酸化物半導体のキャリア密度>
次に、酸化物半導体のキャリア密度について、以下に説明を行う。
【0333】
酸化物半導体のキャリア密度に影響を与える因子としては、酸化物半導体中の酸素欠損
(Vo)、または酸化物半導体中の不純物などが挙げられる。
【0334】
酸化物半導体中の酸素欠損が多くなると、該酸素欠損に水素が結合(この状態をVoH
ともいう)した際に、欠陥準位密度が高くなる。または、酸化物半導体中の不純物が多く
なると、該不純物に起因し欠陥準位密度が高くなる。したがって、酸化物半導体中の欠陥
準位密度を制御することで、酸化物半導体のキャリア密度を制御することができる。
【0335】
ここで、酸化物半導体をチャネル領域に用いるトランジスタを考える。
【0336】
トランジスタのしきい値電圧のマイナスシフトの抑制、またはトランジスタのオフ電流
の低減を目的とする場合においては、酸化物半導体のキャリア密度を低くする方が好まし
い。酸化物半導体のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体中の不純物濃
度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、
欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。高純度真性の酸
化物半導体のキャリア密度としては、8×1015cm-3未満、好ましくは1×10
cm-3未満、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm
-3以上とすればよい。
【0337】
一方で、トランジスタのオン電流の向上、またはトランジスタの電界効果移動度の向上
を目的とする場合においては、酸化物半導体のキャリア密度を高くする方が好ましい。酸
化物半導体のキャリア密度を高くする場合においては、酸化物半導体の不純物濃度をわず
かに高める、または酸化物半導体の欠陥準位密度をわずかに高めればよい。あるいは、酸
化物半導体のバンドギャップをより小さくするとよい。例えば、トランジスタのId-V
g特性のオン/オフ比が取れる範囲において、不純物濃度がわずかに高い、または欠陥準
位密度がわずかに高い酸化物半導体は、実質的に真性とみなせる。また、電子親和力が大
きく、それにともなってバンドギャップが小さくなり、その結果、熱励起された電子(キ
ャリア)の密度が増加した酸化物半導体は、実質的に真性とみなせる。なお、より電子親
和力が大きな酸化物半導体を用いた場合には、トランジスタのしきい値電圧がより低くな
る。
【0338】
上述のキャリア密度が高められた酸化物半導体は、わずかにn型化している。したがっ
て、キャリア密度が高められた酸化物半導体を、「Slightly-n」と呼称しても
よい。
【0339】
実質的に真性の酸化物半導体のキャリア密度は、1×10cm-3以上1×1018
cm-3未満が好ましく、1×10cm-3以上1×1017cm-3以下がより好ま
しく、1×10cm-3以上5×1016cm-3以下がさらに好ましく、1×10
cm-3以上1×1016cm-3以下がさらに好ましく、1×1011cm-3以上
1×1015cm-3以下がさらに好ましい。
【0340】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または他の実施例に示す構成と適宜
、組み合わせて用いることができる。
【0341】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の
一例について、図29乃至図35を用いて以下説明を行う。
【0342】
図29は、表示装置の一例を示す上面図である。図29に示す表示装置700は、第1
の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドラ
イバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と
、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、
第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すな
わち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は
、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお
図29には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設
けられる。
【0343】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びゲートドライバ回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端
子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられ
る。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画
素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号
等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC
716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースド
ライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられ
る。
【0344】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法など
を用いることができる。
【0345】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。
【0346】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、
例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有
機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光す
るトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクト
ロウェッティング素子、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレク
トロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバルブ(G
LV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャッター
(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子など)
、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0347】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子
放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FE
D)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conductio
n Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用い
た表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶
ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプ
レイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、
電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを
実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するよ
うにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを
有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路
を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0348】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色
を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上
追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい
。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表
示の表示装置に適用することもできる。
【0349】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光
(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともい
う。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B
)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで
、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層
を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない
領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配
置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2
割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発
光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有
する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よ
りも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0350】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通
すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青
色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や
緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0351】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
図30及び図32を用いて説明する。なお、図30は、図29に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、図32は、図
29に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0352】
まず、図30及び図32に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0353】
<3-1.表示装置の共通部分に関する説明>
図30及び図32に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と
、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配
線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び
容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を
有する。
【0354】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ100と同様の
構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先の
実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0355】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像
信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長
く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電
力を抑制する効果を奏する。
【0356】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0357】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と機能する導電膜と
同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有する
ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て
形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ
750が有する第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程
を経て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘
電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0358】
また、図30及び図32において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0359】
平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂
、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料
を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで
、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成とし
てもよい。
【0360】
また、図30及び図32においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソ
ースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを
用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソース
ドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部7
02にスタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704に実施の形態1に示
す逆スタガ型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702に実施の形態1に示す
逆スタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にスタガ型のトランジス
タを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲート
ドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0361】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素
を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可
能となる。
【0362】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は
、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0363】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0364】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0365】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する
絶縁膜734が設けられる。
【0366】
<3-2.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図30に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜
772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705
側に設けられ、対向電極としての機能を有する。図30に示す表示装置700は、導電膜
772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わること
によって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0367】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成
され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、
反射電極としての機能を有する。図30に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜7
72で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置で
ある。
【0368】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0369】
なお、図30においては、導電膜772をトランジスタ750のドレイン電極として機
能する導電膜に接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、図31
に示すように、導電膜772を接続電極として機能する導電膜777を間に挟んでトラン
ジスタ750のドレイン電極として機能する導電膜と電気的に接続させる構成としてもよ
い。なお、導電膜777としては、トランジスタ750の第2のゲート電極として機能す
る導電膜と同じ導電膜を加工する工程を経て形成されるため、製造工程を増やすことなく
形成することができる。
【0370】
また、図30に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示した
が、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜
を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。あるいは、反射型のカラー液
晶表示装置と、透過型のカラー液晶表示装置と、を組み合わせた所謂半透過型のカラー液
晶表示装置としてもよい。
【0371】
ここで、透過型のカラー液晶表示装置の一例を図33に示す。図33は、図29に示す
一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。ま
た、図33に示す表示装置700は、液晶素子の駆動方式として横電界方式(例えば、F
FSモード)を用いる構成の一例である。図33に示す構成の場合、画素電極として機能
する導電膜772上に絶縁膜773が設けられ、絶縁膜773上に導電膜774が設けら
れる。この場合、導電膜774は、共通電極(コモン電極ともいう)としての機能を有し
、絶縁膜773を介して、導電膜772と導電膜774との間に生じる電界によって、液
晶層776の配向状態を制御することができる。
【0372】
また、図30及び図33において図示しないが、導電膜772または導電膜774のい
ずれか一方または双方に、液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成とし
てもよい。また、図30及び図33において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位
相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトな
どを用いてもよい。
【0373】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0374】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、
応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなく
てもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電
破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することがで
きる。また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0375】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
【0376】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用し
た透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが
、例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment
)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モー
ド、ASVモードなどを用いることができる。
【0377】
<3-3.発光素子を用いる表示装置>
図32に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜
772、EL層786、及び導電膜788を有する。図32に示す表示装置700は、発
光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができ
る。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0378】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙
げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット
材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、
などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元
素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(P
b)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子
ドット材料を用いてもよい。
【0379】
また、図32に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶
縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子
782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、E
L層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション
構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出す
るボトムエミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュ
アルエミッション構造にも適用することができる。
【0380】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、図32
に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これ
に限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色
膜736を設けない構成としてもよい。
【0381】
<3-4.表示装置に入出力装置を設ける構成例>
また、図32及び図33に示す表示装置700に入出力装置を設けてもよい。当該入出
力装置としては、例えば、タッチパネル等が挙げられる。
【0382】
図32及び図33に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成を図34
図35に示す。
【0383】
図34図32に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図であ
り、図35図33に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図で
ある。
【0384】
まず、図34及び図35に示すタッチパネル791について、以下説明を行う。
【0385】
図34及び図35に示すタッチパネル791は、基板705と着色膜736との間に設
けられる、所謂インセル型のタッチパネルである。タッチパネル791は、遮光膜738
、及び着色膜736を形成する前に、基板705側に形成すればよい。
【0386】
なお、タッチパネル791は、遮光膜738と、絶縁膜792と、電極793と、電極
794と、絶縁膜795と、電極796と、絶縁膜797と、を有する。例えば、指やス
タイラスなどの被検知体が近接することで、電極793と、電極794との相互容量の変
化を検知することができる。
【0387】
また、図34及び図35に示すトランジスタ750の上方においては、電極793と、
電極794との交差部を明示している。電極796は、絶縁膜795に設けられた開口部
を介して、電極794を挟む2つの電極793と電気的に接続されている。なお、図34
及び図35においては、電極796が設けられる領域を画素部702に設ける構成を例示
したが、これに限定されず、例えば、ソースドライバ回路部704に形成してもよい。
【0388】
電極793及び電極794は、遮光膜738と重なる領域に設けられる。また、図34
に示すように、電極793は、発光素子782と重ならないように設けられると好ましい
。また、図35に示すように、電極793は、液晶素子775と重ならないように設けら
れると好ましい。別言すると、電極793は、発光素子782及び液晶素子775と重な
る領域に開口部を有する。すなわち、電極793はメッシュ形状を有する。このような構
成とすることで、電極793は、発光素子782が射出する光を遮らない構成とすること
ができる。または、電極793は、液晶素子775を透過する光を遮らない構成とするこ
とができる。したがって、タッチパネル791を配置することによる輝度の低下が極めて
少ないため、視認性が高く、且つ消費電力が低減された表示装置を実現できる。なお、電
極794も同様の構成とすればよい。
【0389】
また、電極793及び電極794が発光素子782と重ならないため、電極793及び
電極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。または、電極7
93及び電極794が液晶素子775と重ならないため、電極793及び電極794には
、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。
【0390】
そのため、可視光の透過率が高い酸化物材料を用いた電極と比較して、電極793及び
電極794の抵抗を低くすることが可能となり、タッチパネルのセンサ感度を向上させる
ことができる。
【0391】
例えば、電極793、794、796には、導電性のナノワイヤを用いてもよい。当該
ナノワイヤは、直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50n
m以下、より好ましくは5nm以上25nm以下の大きさとすればよい。また、上記ナノ
ワイヤとしては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、またはAlナノワイヤ等の金属ナノ
ワイヤ、あるいは、カーボンナノチューブなどを用いればよい。例えば、電極793、7
94、796のいずれか一つあるいは全部にAgナノワイヤを用いる場合、可視光におけ
る光透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/□以上100Ω/□以下とすることが
できる。
【0392】
また、図34及び図35においては、インセル型のタッチパネルの構成について例示し
たが、これに限定されない。例えば、表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタ
ッチパネルや、表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネル
としてもよい。
【0393】
このように、本発明の一態様の表示装置は、様々な形態のタッチパネルと組み合わせて
用いることができる。
【0394】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0395】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図36
用いて説明を行う。
【0396】
<4.表示装置の回路構成>
図36(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502と
いう)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路50
6という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成とし
てもよい。
【0397】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504
の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0398】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回
路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ
504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0399】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲート
ドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ50
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0400】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路
501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0401】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0402】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また。複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ
504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ
504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0403】
図36(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路5
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドラ
イバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配
線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0404】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0405】
図36(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路50
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに
保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成
とすることもできる。
【0406】
また、図36(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bに
よって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成
された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実
装する構成としても良い。
【0407】
また、図36(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図36(B)に示す構成
とすることができる。
【0408】
図36(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容
量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを
適用することができる。
【0409】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定
される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複
数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位
(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の
電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0410】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA
(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。
また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electric
ally Controlled Birefringence)モード、PDLC(P
olymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC
(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホ
ストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様
々なものを用いることができる。
【0411】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイ
ン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、データ信号のデータの書き込みを
制御する機能を有する。
【0412】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される
。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0413】
例えば、図36(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図36(A)
に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ
550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0414】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0415】
また、図36(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、図36(C)に示す構成
とすることができる。
【0416】
また、図36(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素
子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554
のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる
【0417】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ55
2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気
的に接続される。
【0418】
トランジスタ552は、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0419】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0420】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0421】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0422】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0423】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0424】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0425】
図36(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、図36(A)に示すゲ
ートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0426】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0427】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0428】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したトランジスタの適用可能な回路構成の
一例について、図37乃至図40を用いて説明する。
【0429】
なお、本実施の形態においては、先の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトラ
ンジスタを、OSトランジスタと呼称して以下説明を行う。
【0430】
<5.インバータ回路の構成例>
図37(A)には、駆動回路が有するシフトレジスタやバッファ等に適用することがで
きるインバータの回路図を示す。インバータ800は、入力端子INの論理を反転した信
号を出力端子OUTに出力する。インバータ800は、複数のOSトランジスタを有する
。信号SBGは、OSトランジスタの電気特性を切り替えることができる信号である。
【0431】
図37(B)は、インバータ800の一例である。インバータ800は、OSトランジ
スタ810、およびOSトランジスタ820を有する。インバータ800は、nチャネル
型トランジスタのみで作製することができるため、CMOS(Complementar
y Metal Oxide Semiconductor)でインバータ(CMOSイ
ンバータ)を作製する場合と比較して、低コストで作製することが可能である。
【0432】
なお、OSトランジスタを有するインバータ800は、Siトランジスタで構成される
CMOS上に配置することもできる。インバータ800は、CMOSの回路に重ねて配置
できるため、インバータ800を追加する分の回路面積の増加を抑えることができる。
【0433】
OSトランジスタ810、820は、フロントゲートとして機能する第1ゲートと、バ
ックゲートとして機能する第2ゲートと、ソースまたはドレインの一方として機能する第
1端子と、ソースまたはドレインの他方として機能する第2端子とを有する。
【0434】
OSトランジスタ810の第1ゲートは、OSトランジスタ810の第2端子に接続さ
れる。OSトランジスタ810の第2ゲートは、信号SBGを供給する配線に接続される
。OSトランジスタ810の第1端子は、電圧VDDを与える配線に接続される。OSト
ランジスタ810の第2端子は、出力端子OUTに接続される。
【0435】
OSトランジスタ820の第1ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジス
タ820の第2ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ820の第1端
子は、出力端子OUTに接続される。OSトランジスタ820の第2端子は、電圧VSS
を与える配線に接続される。
【0436】
図37(C)は、インバータ800の動作を説明するためのタイミングチャートである
図37(C)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの
信号波形、信号SBGの信号波形、およびOSトランジスタ810のしきい値電圧の変化
について示している。
【0437】
信号SBGをOSトランジスタ810の第2ゲートに与えることで、OSトランジスタ
810のしきい値電圧を制御することができる。
【0438】
信号SBGは、しきい値電圧をマイナスシフトさせるための電圧VBG_A、しきい値
電圧をプラスシフトさせるための電圧VBG_Bを有する。第2ゲートに電圧VBG_A
を与えることで、OSトランジスタ810はしきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさ
せることができる。また、第2ゲートに電圧VBG_Bを与えることで、OSトランジス
タ810は、しきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることができる。
【0439】
前述の説明を可視化するために、図38(A)には、トランジスタの電気特性の一つで
ある、Id-Vgカーブを示す。
【0440】
上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電圧VBG_A
ように大きくすることで、図38(A)中の破線840で表される曲線にシフトさせるこ
とができる。また、上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を
電圧VBG_Bのように小さくすることで、図38(A)中の実線841で表される曲線
にシフトさせることができる。図38(A)に示すように、OSトランジスタ810は、
信号SBGを電圧VBG_Aあるいは電圧VBG_Bというように切り替えることで、し
きい値電圧をプラスシフトあるいはマイナスシフトさせることができる。
【0441】
しきい値電圧をしきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることで、OSトランジス
タ810は電流が流れにくい状態とすることができる。図38(B)には、この状態を可
視化して示す。
【0442】
図38(B)に図示するように、OSトランジスタ810に流れる電流Iを極めて小
さくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がハイレベルでOSトラン
ジスタ820はオン状態(ON)のとき、出力端子OUTの電圧を急峻に下降させること
ができる。
【0443】
図38(B)に図示したように、OSトランジスタ810に流れる電流が流れにくい状
態とすることができるため、図37(C)に示すタイミングチャートにおける出力端子の
信号波形831を急峻に変化させることができる。電圧VDDを与える配線と、電圧VS
Sを与える配線との間に流れる貫通電流を少なくすることができるため、低消費電力での
動作を行うことができる。
【0444】
また、しきい値電圧をしきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさせることで、OSト
ランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることができる。図38(C)には、この
状態を可視化して示す。図38(C)に図示するように、このとき流れる電流Iを少な
くとも電流Iよりも大きくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号が
ローレベルでOSトランジスタ820はオフ状態(OFF)のとき、出力端子OUTの電
圧を急峻に上昇させることができる。図38(C)に図示したように、OSトランジスタ
810に流れる電流が流れやすい状態とすることができるため、図37(C)に示すタイ
ミングチャートにおける出力端子の信号波形832を急峻に変化させることができる。
【0445】
なお、信号SBGによるOSトランジスタ810のしきい値電圧の制御は、OSトラン
ジスタ820の状態が切り替わる以前、すなわち時刻T1やT2よりも前に行うことが好
ましい。例えば、図37(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がハイレベ
ルに切り替わる時刻T1よりも前に、しきい値電圧VTH_Aから、しきい値電圧VTH
_BにOSトランジスタ810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。また、図3
7(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がローレベルに切り替わる時刻T
2よりも前に、しきい値電圧VTH_Bからしきい値電圧VTH_AにOSトランジスタ
810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。
【0446】
なお、図37(C)のタイミングチャートでは、入力端子INに与える信号に応じて信
号SBGを切り替える構成を示したが、別の構成としてもよい。例えば、しきい値電圧を
制御するための電圧は、フローティング状態としたOSトランジスタ810の第2ゲート
に保持させる構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、図39
(A)に示す。
【0447】
図39(A)では、図37(B)で示した回路構成に加えて、OSトランジスタ850
を有する。OSトランジスタ850の第1端子は、OSトランジスタ810の第2ゲート
に接続される。またOSトランジスタ850の第2端子は、電圧VBG_B(あるいは電
圧VBG_A)を与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第1ゲートは、信
号Sを与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第2ゲートは、電圧VBG
_B(あるいは電圧VBG_A)を与える配線に接続される。
【0448】
図39(A)の動作について、図39(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
【0449】
OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御するための電圧は、入力端子INに与え
る信号がハイレベルに切り替わる時刻T3よりも前に、OSトランジスタ810の第2ゲ
ートに与える構成とする。信号SをハイレベルとしてOSトランジスタ850をオン状
態とし、ノードNBGにしきい値電圧を制御するための電圧VBG_Bを与える。
【0450】
ノードNBGが電圧VBG_Bとなった後は、OSトランジスタ850をオフ状態とす
る。OSトランジスタ850は、オフ電流が極めて小さいため、オフ状態にし続けること
で、一旦ノードNBGに保持させたしきい値電圧VBG_Bを保持することができる。そ
のため、OSトランジスタ850の第2ゲートに電圧VBG_Bを与える動作の回数が減
るため、電圧VBG_Bの書き換えに要する分の消費電力を小さくすることができる。
【0451】
なお、図37(B)及び図39(A)の回路構成では、OSトランジスタ810の第2
ゲートに与える電圧を外部からの制御によって与える構成について示したが、別の構成と
してもよい。例えば、しきい値電圧を制御するための電圧を、入力端子INに与える信号
を基に生成し、OSトランジスタ810の第2ゲートに与える構成としてもよい。当該構
成を実現可能な回路構成の一例について、図40(A)に示す。
【0452】
図40(A)では、図37(B)で示した回路構成において、入力端子INとOSトラ
ンジスタ810の第2ゲートとの間にCMOSインバータ860を有する。CMOSイン
バータ860の入力端子は、入力端子INに接続される。CMOSインバータ860の出
力端子は、OSトランジスタ810の第2ゲートに接続される。
【0453】
図40(A)の動作について、図40(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
図40(B)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信
号波形、CMOSインバータ860の出力波形IN_B、及びOSトランジスタ810の
しきい値電圧の変化について示している。
【0454】
入力端子INに与える信号の論理を反転した信号である出力波形IN_Bは、OSトラ
ンジスタ810のしきい値電圧を制御する信号とすることができる。したがって、図38
(A)乃至図38(C)で説明したように、OSトランジスタ810のしきい値電圧を制
御できる。例えば、図40(B)における時刻T4となるとき、入力端子INに与える信
号がハイレベルでOSトランジスタ820はオン状態となる。このとき、出力波形IN_
Bはローレベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れにくい状態とす
ることができ、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に下降させることができる。
【0455】
また、図40(B)における時刻T5となるとき、入力端子INに与える信号がローレ
ベルでOSトランジスタ820はオフ状態となる。このとき、出力波形IN_Bはハイレ
ベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることがで
き、出力端子OUTの電圧を急峻に上昇させることができる。
【0456】
以上説明したように本実施の形態の構成では、OSトランジスタを有するインバータに
おける、バックゲートの電圧を入力端子INの信号の論理にしたがって切り替える。当該
構成とすることで、OSトランジスタのしきい値電圧を制御することができる。入力端子
INに与える信号によってOSトランジスタのしきい値電圧を制御することで、出力端子
OUTの電圧を急峻に変化させることができる。また、電源電圧を与える配線間の貫通電
流を小さくすることができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0457】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0458】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトランジスタ(
OSトランジスタ)を、複数の回路に用いる半導体装置の一例について、図41乃至図4
4を用いて説明する。
【0459】
<6.半導体装置の回路構成例>
図41(A)は、半導体装置900のブロック図である。半導体装置900は、電源回
路901、回路902、電圧生成回路903、回路904、電圧生成回路905および回
路906を有する。
【0460】
電源回路901は、基準となる電圧VORGを生成する回路である。電圧VORGは、
単一の電圧ではなく、複数の電圧でもよい。電圧VORGは、半導体装置900の外部か
ら与えられる電圧Vを基に生成することができる。半導体装置900は、外部から与え
られる単一の電源電圧を基に電圧VORGを生成できる。そのため半導体装置900は、
外部から電源電圧を複数与えることなく動作することができる。
【0461】
回路902、904および906は、異なる電源電圧で動作する回路である。例えば回
路902の電源電圧は、電圧VORGと電圧VSS(VORG>VSS)とによって印加
される電圧である。また、例えば回路904の電源電圧は、電圧VPOGと電圧VSS
POG>VORG)とによって印加される電圧である。また、例えば回路906の電源
電圧は、電圧VORGと電圧VNEG(VORG>VSS>VNEG)とによって印加さ
れる電圧である。なお電圧VSSは、グラウンド(GND)と等電位とすれば、電源回路
901で生成する電圧の種類を削減できる。
【0462】
電圧生成回路903は、電圧VPOGを生成する回路である。電圧生成回路903は、
電源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VPOGを生成できる。そのため
、回路904を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動
作することができる。
【0463】
電圧生成回路905は、電圧VNEGを生成する回路である。電圧生成回路905は、
電源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VNEGを生成できる。そのため
、回路906を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動
作することができる。
【0464】
図41(B)は電圧VPOGで動作する回路904の一例、図41(C)は回路904
を動作させるための信号の波形の一例である。
【0465】
図41(B)では、トランジスタ911を示している。トランジスタ911のゲートに
与える信号は、例えば、電圧VPOGと電圧VSSを基に生成される。当該信号は、トラ
ンジスタ911を導通状態とする動作時に電圧VPOG、非導通状態とする動作時に電圧
SSとする。電圧VPOGは、図41(C)に図示するように、電圧VORGより大き
い。そのため、トランジスタ911は、ソース(S)とドレイン(D)との間を導通状態
とする動作を、より確実に行うことができる。その結果、回路904は、誤動作が低減さ
れた回路とすることができる。
【0466】
図41(D)は電圧VNEGで動作する回路906の一例、図41(E)は回路906
を動作させるための信号の波形の一例である。
【0467】
図41(D)では、バックゲートを有するトランジスタ912を示している。トランジ
スタ912のゲートに与える信号は、例えば、電圧VORGと電圧VSSを基にして生成
される。当該信号は、トランジスタ911を導通状態とする動作時に電圧VORG、非導
通状態とする動作時に電圧VSSとする。また、トランジスタ912のバックゲートに与
える電圧は、電圧VNEGを基に生成される。電圧VNEGは、図41(E)に図示する
ように、電圧VSS(GND)より小さい。そのため、トランジスタ912の閾値電圧は
、プラスシフトするように制御することができる。そのため、トランジスタ912をより
確実に非導通状態とすることができ、ソース(S)とドレイン(D)との間を流れる電流
を小さくできる。その結果、回路906は、誤動作が低減され、且つ低消費電力化が図ら
れた回路とすることができる。
【0468】
なお、電圧VNEGは、トランジスタ912のバックゲートに直接与える構成としても
よい。あるいは、電圧VORGと電圧VNEGを基に、トランジスタ912のゲートに与
える信号を生成し、当該信号をトランジスタ912のバックゲートに与える構成としても
よい。
【0469】
また図42(A)(B)には、図41(D)(E)の変形例を示す。
【0470】
図42(A)に示す回路図では、電圧生成回路905と、回路906と、の間に制御回
路921によって導通状態が制御できるトランジスタ922を示す。トランジスタ922
は、nチャネル型のOSトランジスタとする。制御回路921が出力する制御信号SBG
は、トランジスタ922の導通状態を制御する信号である。また回路906が有するトラ
ンジスタ912A、912Bは、トランジスタ922と同じOSトランジスタである。
【0471】
図42(B)のタイミングチャートには、制御信号SBGと、トランジスタ912A、
912Bのバックゲートの電位の状態をノードNBGの電位の変化で示す。制御信号S
がハイレベルのときにトランジスタ922が導通状態となり、ノードNBGが電圧V
EGとなる。その後、制御信号SBGがローレベルのときにノードNBGが電気的にフロ
ーティングとなる。トランジスタ922は、OSトランジスタであるため、オフ電流が小
さい。そのため、ノードNBGが電気的にフローティングであっても、一旦与えた電圧V
NEGを保持することができる。
【0472】
また、図43(A)には、上述した電圧生成回路903に適用可能な回路構成の一例を
示す。図43(A)に示す電圧生成回路903は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタ
C1乃至C5、およびインバータINVを有する5段のチャージポンプである。クロック
信号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与え
られる。インバータINVの電源電圧を、電圧VORGと電圧VSSとによって印加され
る電圧とすると、クロック信号CLKによって、電圧VORGの5倍の正電圧に昇圧され
た電圧VPOGを得ることができる。なお、ダイオードD1乃至D5の順方向電圧は0V
としている。また、チャージポンプの段数を変更することで、所望の電圧VPOGを得る
ことができる。
【0473】
また、図43(B)には、上述した電圧生成回路905に適用可能な回路構成の一例を
示す。図43(B)に示す電圧生成回路905は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタ
C1乃至C5、およびインバータINVを有する4段のチャージポンプである。クロック
信号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与え
られる。インバータINVの電源電圧を、電圧VORGと電圧VSSとによって印加され
る電圧とすると、クロック信号CLKによって、グラウンド、すなわち電圧VSSから電
圧VORGの4倍の負電圧に降圧された電圧VNEGを得ることができる。なお、ダイオ
ードD1乃至D5の順方向電圧は0Vとしている。また、チャージポンプの段数を変更す
ることで、所望の電圧VNEGを得ることができる。
【0474】
なお、上述した電圧生成回路903の回路構成は、図43(A)で示す回路図の構成に
限らない。例えば、電圧生成回路903の変形例を図44(A)乃至図44(C)に示す
。なお、電圧生成回路903の変形例は、図44(A)乃至図44(C)に示す電圧生成
回路903A乃至903Cにおいて、各配線に与える電圧を変更すること、あるいは素子
の配置を変更することで実現可能である。
【0475】
図44(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至M10、キャパシ
タC11乃至C14、およびインバータINV1を有する。クロック信号CLKは、トラ
ンジスタM1乃至M10のゲートに直接、あるいはインバータINV1を介して与えられ
る。クロック信号CLKによって、電圧VORGの4倍の正電圧に昇圧された電圧VPO
を得ることができる。なお、段数を変更することで、所望の電圧VPOGを得ることが
できる。図44(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至M10をO
Sトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき、キャパシタC11乃至C14に保持
した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電圧VORGから電圧VPOGへの昇
圧を図ることができる。
【0476】
また、図44(B)に示す電圧生成回路903Bは、トランジスタM11乃至M14、
キャパシタC15、C16、およびインバータINV2を有する。クロック信号CLKは
、トランジスタM11乃至M14のゲートに直接、あるいはインバータINV2を介して
与えられる。クロック信号CLKによって、電圧VORGの2倍の正電圧に昇圧された電
圧VPOGを得ることができる。図44(B)に示す電圧生成回路903Bは、トランジ
スタM11乃至M14をOSトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき、キャパシ
タC15、C16に保持した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電圧VORG
から電圧VPOGへの昇圧を図ることができる。
【0477】
また、図44(C)に示す電圧生成回路903Cは、インダクタInd1、トランジス
タM15、ダイオードD6、およびキャパシタC17を有する。トランジスタM15は、
制御信号ENによって、導通状態が制御される。制御信号ENによって、電圧VORG
昇圧された電圧VPOGを得ることができる。図44(C)に示す電圧生成回路903C
は、インダクタInd1を用いて電圧の昇圧を行うため、変換効率の高い電圧の昇圧を行
うことができる。
【0478】
以上説明したように本実施の形態の構成では、半導体装置が有する回路に必要な電圧を
内部で生成することができる。そのため半導体装置は、外部から与える電源電圧の数を削
減できる。
【0479】
なお、本実施の形態で示す構成等は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0480】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器
について、図45乃至図48を用いて説明を行う。
【0481】
<7-1.表示モジュール>
図45に示す表示モジュール7000は、上部カバー7001と下部カバー7002と
の間に、FPC7003に接続されたタッチパネル7004、FPC7005に接続され
た表示パネル7006、バックライト7007、フレーム7009、プリント基板701
0、バッテリ7011を有する。
【0482】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル7006に用いることができる。
【0483】
上部カバー7001及び下部カバー7002は、タッチパネル7004及び表示パネル
7006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0484】
タッチパネル7004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
7006に重畳して用いることができる。また、表示パネル7006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル7
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0485】
バックライト7007は、光源7008を有する。なお、図45において、バックライ
ト7007上に光源7008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例
えば、バックライト7007の端部に光源7008を配置し、さらに光拡散板を用いる構
成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射
型パネル等の場合においては、バックライト7007を設けない構成としてもよい。
【0486】
フレーム7009は、表示パネル7006の保護機能の他、プリント基板7010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム7009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0487】
プリント基板7010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ7011による電源であってもよい。バッテリ7011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0488】
また、表示モジュール7000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0489】
<7-2.電子機器1>
次に、図46(A)乃至図46(E)に電子機器の一例を示す。
【0490】
図46(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示
す図である。
【0491】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッター
ボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り
付けられている。
【0492】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換す
ることが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体が一体となっていてもよい。
【0493】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができ
る。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチ
することにより撮像することも可能である。
【0494】
カメラ8000の筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー810
0のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0495】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する
【0496】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントを有しており、ファイ
ンダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該マウントには電極
を有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示さ
せることができる。
【0497】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部
8102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0498】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本
発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0499】
なお、図46(A)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器と
し、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、表示装置を備
えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0500】
図46(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0501】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体82
03、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バ
ッテリ8206が内蔵されている。
【0502】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体82
03は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示さ
せることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動
きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を
入力手段として用いることができる。
【0503】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい
。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、
使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知す
ることにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部820
1には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使
用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭
部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させて
もよい。
【0504】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0505】
図46(C)(D)(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図で
ある。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バ
ンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0506】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。
なお、表示部8302を湾曲して配置させる好適である。表示部8302を湾曲して配置
することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。
【0507】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明
の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、図46(E)のよ
うにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、よ
り現実感の高い映像を表示することができる。
【0508】
<7-3.電子機器2>
次に、図46(A)乃至図46(E)に示す電子機器と、異なる電子機器の一例を図4
7(A)乃至図47(G)に示す。
【0509】
図47(A)乃至図47(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、ス
ピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端
子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、
光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、
流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォ
ン9008、等を有する。
【0510】
図47(A)乃至図47(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能
、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)
によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータ
ネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行
う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示す
る機能、等を有することができる。なお、図47(A)乃至図47(G)に示す電子機器
が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。ま
た、図47(A)乃至図47(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部
を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能
、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する
機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0511】
図47(A)乃至図47(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0512】
図47(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9
100は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上
の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0513】
図47(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情
報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3
つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001
の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部900
1の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールや
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、
電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッ
テリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位
置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0514】
図47(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0515】
図47(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0516】
図47(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、図47(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図47
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、図47(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0517】
また、図48(A)(B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。な
お、図48(A)は、複数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、図48(B
)は、複数の表示パネルが展開された状態の斜視図である。
【0518】
図48(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9
511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域
9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0519】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネ
ル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの
表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の
表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用
状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表
示装置とすることができる。
【0520】
また、図48(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル950
1で離間する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル9
501の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502と
してもよい。
【0521】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機
器にも適用することができる。
【0522】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0523】
(実施の形態8)
本実施の形態では、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き
込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)、およびそれを含むCPUについて図4
9乃至図51を用いて説明する。本実施の形態で説明するCPUは、例えば、先の実施の
形態で説明する電子機器に用いる事が出来る。
【0524】
<8-1.記憶装置>
電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が
無い半導体装置(記憶装置)の一例を図49に示す。なお、図49(B)は図49(A)
を回路図で表した図である。
【0525】
図49(A)及び(B)に示す半導体装置は、第1の半導体材料を用いたトランジスタ
3200と第2の半導体材料を用いたトランジスタ3300、および容量素子3400を
有している。
【0526】
第1の半導体材料と第2の半導体材料は異なるエネルギーギャップを持つ材料とするこ
とが好ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料(シリコン(
歪シリコン含む)、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素
、アルミニウムガリウムヒ素、インジウムリン、窒化ガリウム、有機半導体など)とし、
第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の材料として単
結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導
体を用いたトランジスタは、オフ電流が低い。
【0527】
トランジスタ3300は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトラ
ンジスタである。トランジスタ3300は、オフ電流が小さいため、これを用いることに
より長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必
要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ない半導体記憶装置とすること
が可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。
【0528】
図49(B)において、第1の配線3101はトランジスタ3200のソース電極と電
気的に接続され、第2の配線3102はトランジスタ3200のドレイン電極と電気的に
接続されている。また、第3の配線3103はトランジスタ3300のソース電極または
ドレイン電極の一方と電気的に接続され、第4の配線3104はトランジスタ3300の
ゲート電極と電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート電極、お
よびトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子3400
の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線3105は容量素子3400の電極の他方
と電気的に接続されている。
【0529】
図49(A)に示す半導体装置では、トランジスタ3200のゲート電極の電位が保持
可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能で
ある。
【0530】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3104の電位を、ト
ランジスタ3300がオン状態となる電位にして、トランジスタ3300をオン状態とす
る。これにより、第3の配線3103の電位が、トランジスタ3200のゲート電極、お
よび容量素子3400に与えられる。すなわち、トランジスタ3200のゲートには、所
定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(
以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるとする。そ
の後、第4の配線3104の電位を、トランジスタ3300がオフ状態となる電位にして
、トランジスタ3300をオフ状態とすることにより、トランジスタ3200のゲートに
与えられた電荷が保持される(保持)。
【0531】
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ3200のゲート
の電荷は長時間にわたって保持される。
【0532】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3101に所定の電位(定電位)を
与えた状態で、第5の配線3105に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジ
スタ3200のゲートに保持された電荷量に応じて、第2の配線3102は異なる電位を
とる。一般に、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ3200の
ゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは
、トランジスタ3200のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見かけ
のしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、ト
ランジスタ3200を「オン状態」とするために必要な第5の配線3105の電位をいう
。したがって、第5の配線3105の電位をVth_HとVth_Lの間の電位V0とす
ることにより、トランジスタ3200のゲートに与えられた電荷を判別できる。例えば、
書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3105
の電位がV0(>Vth_H)となれば、トランジスタ3200は「オン状態」となる。
Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3105の電位がV0(<Vt
h_L)となっても、トランジスタ3200は「オフ状態」のままである。このため、第
2の配線3102の電位を判別することで、保持されている情報を読み出すことができる
【0533】
図49(C)に示す半導体装置は、トランジスタ3200を設けていない点で図49
A)と相違している。この場合も上記と同様の動作により情報の書き込みおよび保持動作
が可能である。
【0534】
次に、図49(C)に示す半導体装置の情報の読み出しについて説明する。トランジス
タ3300がオン状態となると、浮遊状態である第3の配線3103と容量素子3400
とが導通し、第3の配線3103と容量素子3400の間で電荷が再分配される。その結
果、第3の配線3103の電位が変化する。第3の配線3103の電位の変化量は、容量
素子3400の電極の一方の電位(または容量素子3400に蓄積された電荷)によって
、異なる値をとる。
【0535】
例えば、容量素子3400の電極の一方の電位をV、容量素子3400の容量をC、第
3の配線3103が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の第3の配線3103
の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の第3の配線3103の電位は、(CB
×VB0+C×V)/(CB+C)となる。従って、メモリセルの状態として、容量素子
3400の電極の一方の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、電位
V1を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C×V1)/(CB
+C))は、電位V0を保持している場合のビット線BLの電位(=(CB×VB0+C
×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0536】
そして、第3の配線3103の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すこ
とができる。
【0537】
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体材料が適用され
たトランジスタを用い、トランジスタ3300として第2の半導体材料が適用されたトラ
ンジスタを駆動回路上に積層して設ける構成とすればよい。
【0538】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電
流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持す
ることが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ
動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することがで
きる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)で
あっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0539】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、
素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲー
トへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため
、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、本実施の形態に示す半導
体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、
信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報
の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0540】
なお、上記の記憶装置は、例えば、CPU(Central Processing
Unit)の他に、DSP(Digital Signal Processor)、カ
スタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のL
SI、RF-ID(Radio Frequency Identification)
にも応用可能である。
【0541】
<8-2.CPU>
以下で、上記の記憶装置を含むCPUについて説明する。
【0542】
図50は、上記の記憶装置を含むCPUの一例の構成を示すブロック図である。
【0543】
図50に示すCPUは、基板2190上に、ALU2191(ALU:Arithme
tic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ2192、インストラ
クションデコーダ2193、インタラプトコントローラ2194、タイミングコントロー
ラ2195、レジスタ2196、レジスタコントローラ2197、バスインターフェース
2198(Bus I/F)、書き換え可能なROM2199、及びROMインターフェ
ース2189(ROM I/F)を有している。基板2190は、半導体基板、SOI基
板、ガラス基板などを用いる。ROM2199及びROMインターフェース2189は、
別チップに設けてもよい。もちろん、図50に示すCPUは、その構成を簡略化して示し
た一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例えば
図50に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数含み
、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演算回
路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、64ビ
ットなどとすることができる。
【0544】
バスインターフェース2198を介してCPUに入力された命令は、インストラクショ
ンデコーダ2193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ2192、イン
タラプトコントローラ2194、レジスタコントローラ2197、タイミングコントロー
ラ2195に入力される。
【0545】
ALUコントローラ2192、インタラプトコントローラ2194、レジスタコントロ
ーラ2197、タイミングコントローラ2195は、デコードされた命令に基づき、各種
制御を行なう。具体的にALUコントローラ2192は、ALU2191の動作を制御す
るための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ2194は、CPUのプログ
ラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマス
ク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ2197は、レジスタ2196のア
ドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ2196の読み出しや書き込みを行なう
【0546】
また、タイミングコントローラ2195は、ALU2191、ALUコントローラ21
92、インストラクションデコーダ2193、インタラプトコントローラ2194、及び
レジスタコントローラ2197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタ
イミングコントローラ2195は、基準クロック信号を元に、内部クロック信号を生成す
る内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号を上記各種回路に供給する。
【0547】
図50に示すCPUでは、レジスタ2196に、記憶装置が設けられている。
【0548】
図50に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ2197は、ALU2191から
の指示に従い、レジスタ2196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ2
196が有する記憶装置において、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容量
素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持が
選択されている場合、レジスタ2196内の記憶装置への、電源電圧の供給が行われる。
容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが
行われ、レジスタ2196内の記憶装置への電源電圧の供給を停止することができる。
【0549】
図51は、レジスタ2196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である
。記憶素子2200は、電源遮断で記憶データが揮発する回路2201と、電源遮断で記
憶データが揮発しない回路2202と、スイッチ2203と、スイッチ2204と、論理
素子2206と、容量素子2207と、選択機能を有する回路2220と、を有する。回
路2202は、容量素子2208と、トランジスタ2209と、トランジスタ2210と
、を有する。なお、記憶素子2200は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダ
クタなどのその他の素子をさらに有していても良い。
【0550】
ここで、回路2202には、上述した記憶装置を用いることができる。記憶素子220
0への電源電圧の供給が停止した際、回路2202のトランジスタ2209のゲートには
接地電位(0V)、またはトランジスタ2209がオフする電位が入力され続ける構成と
する。例えば、トランジスタ2209のゲートが抵抗等の負荷を介して接地される構成と
する。
【0551】
スイッチ2203は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ2213を用
いて構成され、スイッチ2204は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)
のトランジスタ2214を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ2203の第1の
端子はトランジスタ2213のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ2203の第
2の端子はトランジスタ2213のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ2203
はトランジスタ2213のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2
の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ2213のオン状態またはオフ状
態)が選択される。スイッチ2204の第1の端子はトランジスタ2214のソースとド
レインの一方に対応し、スイッチ2204の第2の端子はトランジスタ2214のソース
とドレインの他方に対応し、スイッチ2204はトランジスタ2214のゲートに入力さ
れる制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、
トランジスタ2214のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0552】
トランジスタ2209のソースとドレインの一方は、容量素子2208の一対の電極の
うちの一方、及びトランジスタ2210のゲートと電気的に接続される。ここで、接続部
分をノードM2とする。トランジスタ2210のソースとドレインの一方は、低電源電位
を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッチ
2203の第1の端子(トランジスタ2213のソースとドレインの一方)と電気的に接
続される。スイッチ2203の第2の端子(トランジスタ2213のソースとドレインの
他方)はスイッチ2204の第1の端子(トランジスタ2214のソースとドレインの一
方)と電気的に接続される。スイッチ2204の第2の端子(トランジスタ2214のソ
ースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続さ
れる。スイッチ2203の第2の端子(トランジスタ2213のソースとドレインの他方
)と、スイッチ2204の第1の端子(トランジスタ2214のソースとドレインの一方
)と、論理素子2206の入力端子と、容量素子2207の一対の電極のうちの一方と、
は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子2207の一対
の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電
源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる
。容量素子2207の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配
線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子2208の一対の電極のうちの他
方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND等
)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子220
8の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGND
線)と電気的に接続される。
【0553】
なお、容量素子2207及び容量素子2208は、トランジスタや配線の寄生容量等を
積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0554】
トランジスタ2209の第1ゲート(第1のゲート電極)には、制御信号WEが入力され
る。スイッチ2203及びスイッチ2204は、制御信号WEとは異なる制御信号RDに
よって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方のスイ
ッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と第2
の端子の間は非導通状態となる。
【0555】
トランジスタ2209のソースとドレインの他方には、回路2201に保持されたデー
タに対応する信号が入力される。図51では、回路2201から出力された信号が、トラ
ンジスタ2209のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ2203
の第2の端子(トランジスタ2213のソースとドレインの他方)から出力される信号は
、論理素子2206によってその論理値が反転された反転信号となり、回路2220を介
して回路2201に入力される。
【0556】
なお、図51では、スイッチ2203の第2の端子(トランジスタ2213のソースと
ドレインの他方)から出力される信号は、論理素子2206及び回路2220を介して回
路2201に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ2203の第2の端子
(トランジスタ2213のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を反
転させられることなく、回路2201に入力されてもよい。例えば、回路2201内に、
入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場合
に、スイッチ2203の第2の端子(トランジスタ2213のソースとドレインの他方)
から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0557】
また、図51において、記憶素子2200に用いられるトランジスタのうち、トランジ
スタ2209以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板21
90にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層また
はシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素
子2200に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体膜で形成されるト
ランジスタとすることもできる。または、記憶素子2200は、トランジスタ2209以
外にも、チャネルが酸化物半導体膜で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残り
のトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板2190にチャネルが形
成されるトランジスタとすることもできる。
【0558】
図51における回路2201には、例えばフリップフロップを用いることができる。ま
た、論理素子2206としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いるこ
とができる。
【0559】
本実施の形態に示す半導体装置では、記憶素子2200に電源電圧が供給されない間は
、回路2201に記憶されていたデータを、回路2202に設けられた容量素子2208
によって保持することができる。
【0560】
また、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい
。例えば、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を
有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そ
のため、酸化物半導体膜にチャネルが形成されるトランジスタをトランジスタ2209と
して用いることによって、記憶素子2200に電源電圧が供給されない間も容量素子22
08に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶素子2200は電源電
圧の供給が停止した間も記憶内容(データ)を保持することが可能である。
【0561】
また、スイッチ2203及びスイッチ2204を設けることによって、プリチャージ動
作を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路2201が
元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0562】
また、回路2202において、容量素子2208によって保持された信号はトランジス
タ2210のゲートに入力される。そのため、記憶素子2200への電源電圧の供給が再
開された後、容量素子2208によって保持された信号を、トランジスタ2210の状態
(オン状態、またはオフ状態)に変換して、回路2202から読み出すことができる。そ
れ故、容量素子2208に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信
号を正確に読み出すことが可能である。
【0563】
このような記憶素子2200を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなど
の記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐ
ことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復
帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、ま
たは複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力
を抑えることができる。
【0564】
なお、本実施の形態では、記憶素子2200をCPUに用いる例として説明したが、記
憶素子2200は、DSP(Digital Signal Processor)、カ
スタムLSI、PLD(Programmable Logic Device)等のL
SI、RF-ID(Radio Frequency Identification)
にも応用可能である。
【0565】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0566】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を用いることができる撮像装置につい
図52及び図53を用いて説明する。
【0567】
図52(A)乃至図52(C)に、撮像装置の回路構成例を示す。
【0568】
<9.撮像装置>
図52(A)に示す回路を有する撮像装置610は、光電変換素子601、トランジス
タ602、トランジスタ604、および容量素子606を有する。トランジスタ602の
ソースまたはドレインの一方は光電変換素子601と電気的に接続される。トランジスタ
602のソースまたはドレインの他方はノード607(電荷蓄積部)を介してトランジス
タ604のゲートと電気的に接続されている。
【0569】
トランジスタ602として、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジ
スタは、オフ電流を極めて小さくすることができるため、容量素子606を小さくするこ
とができる。または、図52(B)に示すように、容量素子606を省略することができ
る。また、トランジスタ602としてOSトランジスタを用いると、ノード607の電位
が変動しにくい。よって、ノイズの影響を受けにくい撮像装置を実現することができる。
トランジスタ602として、例えば先の実施の形態に例示したトランジスタなどを用いる
ことができる。なお、トランジスタ604にOSトランジスタを用いてもよい。
【0570】
光電変換素子601には、シリコン基板においてpn型やpin型の接合が形成された
ダイオード素子を用いることができる。または非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜など
を用いたpin型のダイオード素子などを用いてもよい。または、ダイオード接続のトラ
ンジスタを用いてもよい。また、光電効果を利用した可変抵抗などをシリコン、ゲルマニ
ウム、セレンなど用いて形成してもよい。
【0571】
また、光電変換素子として、放射線を吸収して電荷を発生させることが可能な材料を用
いて形成してもよい。放射線を吸収して電荷を発生させることが可能な材料としては、ヨ
ウ化鉛、ヨウ化水銀、ガリウムヒ素、CdTe、CdZnなどがある。
【0572】
図52(C)に示す回路を有する撮像装置610は、光電変換素子601としてフォト
ダイオードを用いる場合を示している。図52(C)に示す撮像装置610は、光電変換
素子601、トランジスタ602、トランジスタ603、トランジスタ604、トランジ
スタ605、および容量素子606を有する。トランジスタ602のソースまたはドレイ
ンの一方は光電変換素子601のカソードと電気的に接続され、他方はノード607と電
気的に接続されている。光電変換素子601のアノードは、配線611と電気的に接続さ
れている。トランジスタ603のソースまたはドレインの一方はノード607と電気的に
接続され、他方は配線608と電気的に接続されている。トランジスタ604のゲートは
ノード607と電気的に接続され、ソースまたはドレインの一方は配線609と電気的に
接続され、他方はトランジスタ605のソースまたはドレインの一方と電気的に接続され
ている。トランジスタ605のソースまたはドレインの他方は配線608と電気的に接続
されている。容量素子606の一方の電極はノード607と電気的に接続され、他方の電
極は配線611と電気的に接続される。
【0573】
トランジスタ602は転送トランジスタとして機能できる。トランジスタ602のゲー
トには、転送信号TXが供給される。トランジスタ603はリセットトランジスタとして
機能できる。トランジスタ603のゲートには、リセット信号RSTが供給される。トラ
ンジスタ604は増幅トランジスタとして機能できる。トランジスタ605は選択トラン
ジスタとして機能できる。トランジスタ605のゲートには、選択信号SELが供給され
る。また、配線608にVDDが供給され、配線611にはVSSが供給される。
【0574】
次に、図52(C)に示す回路を有する撮像装置610の動作について説明する。まず
、トランジスタ603をオン状態にして、ノード607にVDDを供給する(リセット動
作)。その後、トランジスタ603をオフ状態にすると、ノード607にVDDが保持さ
れる。次に、トランジスタ602をオン状態とすると、光電変換素子601の受光量に応
じて、ノード607の電位が変化する(蓄積動作)。その後、トランジスタ602をオフ
状態にすると、ノード607の電位が保持される。次に、トランジスタ605をオン状態
とすると、ノード607の電位に応じた電位が配線609から出力される(選択動作)。
配線609の電位を検出することで、光電変換素子601の受光量を知ることができる。
【0575】
トランジスタ602およびトランジスタ603には、OSトランジスタを用いることが
好ましい。前述した通り、OSトランジスタはオフ電流を極めて小さくすることができる
ため、容量素子606を小さくすることができる。または、容量素子606を省略するこ
とができる。また、トランジスタ602およびトランジスタ603としてOSトランジス
タを用いると、ノード607の電位が変動しにくい。よって、ノイズの影響を受けにくい
撮像装置を実現することができる。
【0576】
図52(A)乃至図52(C)に示したいずれかの回路を有する撮像装置610をマト
リクス状に配置することで、解像度の高い撮像装置が実現できる。
【0577】
例えば、撮像装置610を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆる
フルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、「2K」などとも言われる。)の解
像度で撮像可能な撮像装置を実現することができる。また、例えば、撮像装置610を4
096×2160のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K
解像度」、「4K2K」、「4K」などとも言われる。)の解像度で撮像可能な撮像装置
を実現することができる。また、例えば、撮像装置610を8192×4320のマトリ
クス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、
「8K」などとも言われる。)の解像度で撮像可能な撮像装置を実現することができる。
表示素子を増やすことで、16Kや32Kの解像度で撮像可能な撮像装置を実現すること
も可能である。
【0578】
上述したトランジスタを用いた撮像装置610の構造例を図53(A)(B)に示す。
図53(A)(B)は撮像装置610の断面図である。
【0579】
図53(A)に示す撮像装置610は、基板641としてn型半導体を用いている。ま
た、基板641中に光電変換素子601のp型半導体1221が設けられている。また、
基板641の一部が、光電変換素子601のn型半導体1223として機能する。
【0580】
また、トランジスタ604は基板641上に設けられている。トランジスタ604はn
チャネル型のトランジスタとして機能できる。また、基板641の一部にp型半導体のウ
ェル1220が設けられている。ウェル1220はp型半導体1221の形成と同様の方
法で設けることができる。また、ウェル1220とp型半導体1221は同時に形成する
ことができる。
【0581】
図53(B)に示す撮像装置610は、基板641上にトランジスタ604とトランジ
スタ605が設けられている。トランジスタ604はnチャネル型のトランジスタとして
機能できる。トランジスタ605はpチャネル型のトランジスタとして機能できる。
【0582】
また、図53(B)に示す撮像装置610は、基板641上に光電変換素子601が設
けられている。
【0583】
図53(B)に示す光電変換素子601は、金属材料などで形成された電極686と透
光性導電層682との間に光電変換層681を有する。図53(B)では、セレン系材料
を光電変換層681に用いた形態を示している。セレン系材料を用いた光電変換素子60
1は、可視光に対する外部量子効率が高い特性を有する。当該光電変換素子では、アバラ
ンシェ現象により入射される光量に対する電子の増幅が大きい高感度のセンサとすること
ができる。また、セレン系材料は光吸収係数が高いため、光電変換層681を薄くしやす
い利点を有する。
【0584】
セレン系材料としては、非晶質セレンまたは結晶セレンを用いることができる。結晶セ
レンは、一例として、非晶質セレンを成膜後、熱処理することで得ることができる。なお
、結晶セレンの結晶粒径を画素ピッチより小さくすることで、画素ごとの特性ばらつきを
低減させることができる。また、結晶セレンは、非晶質セレンよりも可視光に対する分光
感度や光吸収係数が高い特性を有する。
【0585】
なお、光電変換層681は単層として図示しているが、セレン系材料の受光面側に正孔
注入阻止層として酸化ガリウムまたは酸化セリウムなどを設け、電極686側に電子注入
阻止層として酸化ニッケルまたは硫化アンチモンなどを設ける構成とすることもできる。
【0586】
また、光電変換層681は、銅、インジウム、セレンの化合物(CIS)を含む層であ
ってもよい。または、銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物(CIGS)を含む層
であってもよい。CISおよびCIGSでは、セレンの単層と同様にアバランシェ現象が
利用できる光電変換素子を形成することができる。
【0587】
また、CISおよびCIGSはp型半導体であり、接合を形成するためにn型半導体の
硫化カドミウムや硫化亜鉛等を接して設けてもよい。
【0588】
アバランシェ現象を発生させるためには、光電変換素子に比較的高い電圧(例えば、1
0V以上)を印加することが好ましい。OSトランジスタは、Siトランジスタよりもド
レイン耐圧の高い特性を有するため、光電変換素子に比較的高い電圧を印加することが容
易である。したがって、ドレイン耐圧の高いOSトランジスタと、セレン系材料を光電変
換層とした光電変換素子とを組み合わせることで、高感度、かつ信頼性の高い撮像装置と
することができる。
【0589】
透光性導電層682には、例えば、インジウム錫酸化物、シリコンを含むインジウム錫
酸化物、亜鉛を含む酸化インジウム、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、アルミニウム
を含む酸化亜鉛、酸化錫、フッ素を含む酸化錫、アンチモンを含む酸化錫、またはグラフ
ェン等を用いることができる。また、透光性導電層682は単層に限らず、異なる膜の積
層であっても良い。
【0590】
また、光電変換素子601には、非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜などを用いたp
in型のダイオード素子などを用いてもよい。当該フォトダイオードは、n型の半導体層
、i型の半導体層、およびp型の半導体層が順に積層された構成を有している。i型の半
導体層には非晶質シリコンを用いることが好ましい。また、p型の半導体層およびn型の
半導体層には、それぞれの導電型を付与するドーパントを含む非晶質シリコンまたは微結
晶シリコンなどを用いることができる。非晶質シリコンを光電変換層とするフォトダイオ
ードは可視光の波長領域における感度が高く、微弱な可視光を検知しやすい。
【0591】
なお、pn型やpin型のダイオード素子は、p型の半導体層が受光面となるように設
けることが好ましい。p型の半導体層を受光面とすることで、光電変換素子601の出力
電流を高めることができる。
【0592】
上述したセレン系材料や非晶質シリコンなどを用いて形成した光電変換素子601は、
成膜工程、リソグラフィ工程、エッチング工程などの一般的な半導体作製工程を用いて作
製するこができる。
【0593】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施すること
が可能である。
【実施例1】
【0594】
本実施例においては、本発明の一態様の半導体装置に用いることができる導電膜を有す
る試料を作製し、当該試料の断面形状を走査透過型電子顕微鏡(Scanning Tr
ansmission Electron Microscope:STEM)により観
察を行った。また、当該試料のXPS(X線光電子分光法)分析を行った。
【0595】
<試料の作製>
試料A1としては、720mm×600mmサイズのガラス基板上に、厚さが35nm
の窒化タンタルと、厚さが200nmの銅とを、スパッタリング装置を用いて順に成膜し
た。
【0596】
試料A2としては、720mm×600mmサイズのガラス基板上に、厚さが35nm
の窒化タンタルと、厚さが200nmの銅とを、スパッタリング装置を用いて順に成膜し
た。次に、銅表面のシリサイド化を行った。シリサイド化処理の条件としては、まず銅表
面に形成される酸化膜を除去するため、PECVD装置を用いてアンモニアガスを含む雰
囲気にてプラズマを放電させた。続いて、シランガスをPECVD装置内に導入し、シラ
ンガスを銅表面に曝すことで、銅シリサイドを形成させた。なお、銅表面の酸化膜を除去
する際の基板温度としては350℃とした。また、銅シリサイドを形成する際の基板温度
としては、220℃とし、流量300sccmのシランガスと、流量500sccmの窒
素ガスとを用いた。
【0597】
<断面観察>
上記作製した試料A1及び試料A2を、STEMにより断面形状の観察を行った。図5
4(A)は、試料A1の断面STEM写真であり、図54(B)は、試料A2の断面ST
EM写真である。
【0598】
図54(A)(B)の断面STEM写真により、試料A2においては膜の最表面に銅と
異なる膜(銅シリサイド層)が形成されていることを確認した。
【0599】
<XPS分析>
次に、試料A2の表面のXPS分析を行った。表1に、XPSで求めた組成を示す。な
お、表面のXPSにおける検出深さは、5nm程度である。
【0600】
【表1】
【0601】
試料A2の表面では、銅とシリコンとが検出され、銅に対するシリコンの比(Si/C
u)は0.47であった。
【0602】
次に、試料A2の深さ方向のXPS分析を行った結果を図55に示す。図55は、試料
A2の膜表面からガラス基板までの深さ方向の銅(Cu)、シリコン(Si)、タンタル
(Ta)、酸素(O)、及び窒素(N)のプロファイルを示している。
【0603】
図55に示すように、膜の表面付近において、銅(Cu)とシリコン(Si)とが検出
された。
【0604】
次に、試料A2の深さ方向のXPS分析で求められたCu2p3/2のスペクトル、及
びSi2pのスペクトルを図56(A)(B)にそれぞれ示す。なお、横軸は、束縛エネ
ルギー(Binding Energy)を表す。
【0605】
図56(A)において、931eV以上934eV以下の範囲のピークは、Cu-Si
基に帰属される。また、図56(B)において、98eV以上100eV以下の範囲のピ
ークは、金属-Si基に帰属される。
【0606】
以上より、試料A2において、膜の表面にCuとSiとの結合を有する銅シリサイド(
銅ケイ化物)が形成されていることを確認した。
【0607】
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例2】
【0608】
本実施例においては、本発明の一態様のトランジスタを作製し、電気特性の評価を行っ
た。
【0609】
電気特性を評価するトランジスタとして、図10(A)(B)で示すトランジスタ10
0Lに相当する試料B1及びB2を作製した。なお、試料B1が本発明の一態様のトラン
ジスタであり、試料B2が比較用のトランジスタである。
【0610】
トランジスタ100Lは、基板102上のゲート電極として機能する導電膜104と、
基板102及び導電膜104上の第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、10
7と、絶縁膜107上の酸化物半導体膜108と、酸化物半導体膜108に電気的に接続
されるソース電極として機能する導電膜112aと、酸化物半導体膜108に電気的に接
続されるドレイン電極として機能する導電膜112bと、酸化物半導体膜108及び導電
膜112a、112b上の第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜114、116と、
絶縁膜116上の保護絶縁膜として機能する絶縁膜118と、絶縁膜118上の第2のゲ
ート電極として機能する120bと、を有する。また、酸化物半導体膜108は、酸化物
半導体膜108b、108cを有する。
【0611】
また、導電膜112aは、導電膜112a_1、導電膜112a_2、及び112a_
3を有し、導電膜112bは、導電膜112b_1、112b_2、及び112b_3を
有する。また、導電膜112a_2は、端部で絶縁膜114と接する領域112a_2b
を有し、導電膜112b_2は、端部で絶縁膜114と接する領域112b_2bを有す
る。
【0612】
<トランジスタの作製方法>
次に、試料B1及び試料B2に相当するトランジスタの作製方法について説明する。な
お、トランジスタの作製方法は、実施の形態1を参酌すればよい。
【0613】
≪試料B1の作製≫
基板102上に導電膜104を形成した。基板102としては、ガラス基板を用いた。
また、導電膜104としては、厚さが10nmのチタン膜と、厚さが100nmの銅膜と
、厚さが50nmの窒化タンタル膜とを、スパッタリング装置を用いて順に形成した。
【0614】
次に、基板102及び導電膜104上に、絶縁膜106、107を形成した。絶縁膜1
06としては、厚さが400nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した
。また、絶縁膜107としては、厚さが15nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装
置を用いて形成した。
【0615】
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108を形成した。
【0616】
酸化物半導体膜108として、In-Ga-Zn酸化物(IGZOともいう)を用いた
。酸化物半導体膜108が有する酸化物半導体膜108bとしては、厚さが10nmのI
GZO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。なお、IGZO膜の成膜条件として
は、基板温度を170℃とし、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比における酸素ガスの比
率が30%になるようチャンバー内に導入し、圧力を0.2Paとし、金属酸化物スパッ
タリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に1500Wの
AC電力を投入して成膜した。続いて、酸化物半導体膜108cとしては、厚さが20n
mのIGZO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。なお、IGZO膜の成膜条件
としては、基板温度を170℃とし、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比における酸素ガ
スの比率が50%になるようチャンバー内に導入し、圧力を0.2Paとし、金属酸化物
スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])に500
WのAC電力を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜108の形成後、350℃で1
時間の熱処理を行った。
【0617】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108上に後に導電膜112a、112bとなる
導電膜を形成した。該導電膜としては、厚さが50nmのタングステン膜と、厚さが20
0nmの銅膜と、厚さが5nmのタングステン膜を、スパッタリング装置を用いて真空中
で連続して形成した。次に、該導電膜上にレジストマスクを形成し、厚さが5nmのタン
グステン膜と、厚さが200nmの銅膜との所望の領域をエッチングした。レジストマス
クの除去後、露出した銅表面のシリサイド処理を行った。シリサイド化処理の条件として
は、まず銅表面に形成される酸化膜を除去するため、PECVD装置を用いてアンモニア
ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させた。続いて、シランガスをPECVD装置内に
導入し、シランガスを銅表面に曝すことで、銅シリサイドを形成させた。なお、銅表面の
酸化膜を除去する際の基板温度としては350℃とした。また、銅シリサイドを形成する
際の基板温度としては、220℃とし、流量300sccmのシランガスと、流量500
sccmの窒素ガスとを用いた。ま次に、シリサイド処理を行った導電膜上にレジストマ
スクを形成し、厚さが50nmのタングステン膜の所望の領域をエッチングすることで、
導電膜112a、112bを形成した。なお、導電膜112a、112bの形成後レジス
トマスクを除去した。
【0618】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上から、
リン酸水溶液(リン酸の濃度が85%の水溶液を、さらに純水で100倍に希釈した水溶
液)を塗布し、導電膜112a、112bから露出した酸化物半導体膜108の表面の一
部を除去した。
【0619】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁
膜114及び絶縁膜116を形成した。絶縁膜114としては、厚さが40nmの酸化窒
化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。また、絶縁膜116としては、厚さ
が400nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。なお、絶縁膜
114及び絶縁膜116としては、PECVD装置により真空中で連続して形成した。
【0620】
絶縁膜114の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシラ
ンガスと、流量2000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を2
0Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に100WのRF電力を供
給して成膜した。また、絶縁膜116の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流
量160sccmのシランガスと、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバ
ー内に導入し、圧力を200Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間
に1500WのRF電力を供給して成膜した。
【0621】
次に、窒素を含む雰囲気下で300℃、1時間の熱処理を行った。
【0622】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成した。絶縁膜118としては、厚さが10
0nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。絶縁膜118の成膜条件
としては、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシランガスと、流量5000s
ccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスをチャンバー内に導入し、圧
力を100Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に1000WのR
F電力を供給して成膜した。
【0623】
次に、絶縁膜118上に導電膜として、厚さが100nmのITSO膜を、スパッタリ
ング装置を用いて形成した。該ITSO膜の成膜条件としては、基板温度を室温とし、流
量72sccmのアルゴンガスと、流量5sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、
圧力を0.15Paとした。なお、ITSO膜に用いた金属酸化物ターゲットの組成は、
In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]とした。
【0624】
以上の工程で試料B1に相当するトランジスタを作製した。
【0625】
≪試料B2の作製≫
基板102上に導電膜104を形成した。基板102としては、ガラス基板を用いた。
また、導電膜104としては、厚さが100nmのタングステン膜を、スパッタリング装
置を用いて形成した。
【0626】
次に、基板102及び導電膜104上に、絶縁膜106、107を形成した。絶縁膜1
06としては、厚さが400nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した
。また、絶縁膜107としては、厚さが50nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装
置を用いて形成した。
【0627】
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108を形成した。
【0628】
酸化物半導体膜108が有する酸化物半導体膜108bとしては、厚さが20nmのI
GZO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。なお、IGZO膜の成膜条件として
は、基板温度を170℃とし、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比における酸素ガスの比
率が30%になるようチャンバー内に導入し、圧力を0.2Paとし、金属酸化物スパッ
タリングターゲット(In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比])に1500Wの
AC電力を投入して成膜した。続いて、酸化物半導体膜108cとしては、厚さが30n
mのIGZO膜を、スパッタリング装置を用いて形成した。なお、IGZO膜の成膜条件
としては、基板温度を170℃とし、アルゴンガスと酸素ガスとの流量比における酸素ガ
スの比率が50%になるようチャンバー内に導入し、圧力を0.2Paとし、金属酸化物
スパッタリングターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])に500
WのAC電力を投入して成膜した。また、酸化物半導体膜108の形成後、350℃で1
時間の熱処理を行った。
【0629】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108上に導電膜を形成し、該導電膜上にレジス
トマスクを形成し、所望の領域をエッチングすることで、導電膜112a、112bを形
成した。導電膜112a、112bとしては、厚さ50nmのタングステン膜と、厚さ2
00nmの銅膜とを、スパッタリング装置を用いて真空中で連続して形成した。なお、導
電膜112a、112bの形成後レジストマスクを除去した。
【0630】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁
膜114及び絶縁膜116を形成した。絶縁膜114としては、厚さが40nmの酸化窒
化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。また、絶縁膜116としては、厚さ
が400nmの酸化窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。なお、絶縁膜
114及び絶縁膜116としては、PECVD装置により真空中で連続して形成した。
【0631】
絶縁膜114の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシラ
ンガスと、流量2000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバー内に導入し、圧力を2
0Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に100WのRF電力を供
給して成膜した。また、絶縁膜116の成膜条件としては、基板温度を220℃とし、流
量160sccmのシランガスと、流量4000sccmの一酸化二窒素ガスをチャンバ
ー内に導入し、圧力を200Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間
に1500WのRF電力を供給して成膜した。
【0632】
次に、窒素を含む雰囲気下で300℃、1時間の熱処理を行った。
【0633】
次に、絶縁膜116上に絶縁膜118を形成した。絶縁膜118としては、厚さが10
0nmの窒化シリコン膜を、PECVD装置を用いて形成した。絶縁膜118の成膜条件
としては、基板温度を220℃とし、流量50sccmのシランガスと、流量5000s
ccmの窒素ガスと、流量100sccmのアンモニアガスをチャンバー内に導入し、圧
力を100Paとし、PECVD装置内に設置された平行平板の電極間に1000WのR
F電力を供給して成膜した。
【0634】
次に、絶縁膜118上に導電膜として、厚さが100nmのITSO膜を、スパッタリ
ング装置を用いて形成した。該ITSO膜の成膜条件としては、基板温度を室温とし、流
量72sccmのアルゴンガスと、流量5sccmの酸素ガスをチャンバー内に導入し、
圧力を0.15Paとした。なお、ITSO膜に用いた金属酸化物ターゲットの組成は、
In:SnO:SiO=85:10:5[重量%]とした。
【0635】
以上の工程で試料B2に相当するトランジスタを作製した。
【0636】
なお、当該トランジスタのサイズとしてはそれぞれ、チャネル長が2μm且つチャネル
幅が50μm、チャネル長が3μm且つチャネル幅が50μm、及びチャネル長が6μm
且つチャネル幅が50μm、という3種類のサイズを有するトランジスタを作製した。以
下では、チャネル長が2μmの試料B1を試料B1-1と、チャネル長が3μmの試料B
1を試料B1-2と、チャネル長6μmの試料B1を試料B1-3と呼称する。試料B2
についても同様である。
【0637】
<トランジスタの電気特性評価>
上記作製した試料B1及び試料B2に相当するトランジスタの電気特性の評価を行った
。トランジスタの電気特性としては、ドレイン電流(Id)-ゲート電圧(Vg)特性、
およびId-Vg特性における電界効果移動度(μFE)とした。試料B1及び試料B2
のトランジスタの電気特性を図57及び図58に示す。また、図57(A)及び図58
A)はチャネル長が2μm且つチャネル幅が50μmのトランジスタ特性を、図57(B
)及び図58(B)はチャネル長が3μm且つチャネル幅が50μmのトランジスタ特性
を、図57(C)乃至図58(C)はチャネル長が6μm且つチャネル幅が50μmのト
ランジスタ特性を、それぞれ示す。
【0638】
また、図57及び図58において、ソース電極とドレイン電極間の電圧(Vd)を0.
1V及び20Vとし、-15Vから20Vまで0.25V間隔でVgを印加した結果を示
している。また、図57及び図58において、第1縦軸がドレイン電流(Id)を、第2
縦軸がVd=20Vにおける電界効果移動度(μFE)を、横軸がゲート電圧(Vg)を
、それぞれ表している。また、10個のトランジスタのデータを各々重ねて示している。
いずれのトランジスタについても、バラツキが少なくノーマリーオフ特性を示すトランジ
スタ特性が得られている。
【0639】
また、図57及び図58に示すように、試料B2は、Vdが0.1VとVdが20Vで
しきい値電圧が異なる結果となった。また、試料B2より試料B1の方がトランジスタの
電界効果移動度(μFE)が高い結果となった。このことから、ソース電極及びドレイン
電極に銅を有するトランジスタにおいて、ソース電極及びドレイン電極の端部にシリサイ
ド処理を行うことで、優れた電気特性を有するトランジスタを提供できることが示された
【0640】
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【実施例3】
【0641】
本実施例においては、本発明の一態様の半導体装置に用いることができる導電膜を有す
る試料を作製し、当該試料の断面形状を走査透過型電子顕微鏡(Scanning Tr
ansmission Electron Microscope:STEM)により観
察を行った。また、当該試料のXPS(X線光電子分光法)分析を行った。
【0642】
<試料の作製>
試料C1としては、720mm×600mmサイズのガラス基板上に、厚さが100n
mの酸化窒化シリコン(SiON)膜を、PECVD装置を用いて成膜した。次に、酸化
窒化シリコン膜上に導電膜を形成し、該導電膜上にレジストマスクを形成し、所望の領域
をエッチングした。該導電膜としては、厚さ5nmのタングステン(W)膜と、厚さ20
0nmの銅(Cu)膜と、厚さ5nmのタングステン(W)膜とを、スパッタリング装置
を用いて真空中で連続して形成した。なお、該導電膜の形成後レジストマスクを除去した
【0643】
試料C2としては、720mm×600mmサイズのガラス基板上に、厚さが100n
mの酸化窒化シリコン(SiON)膜を、PECVD装置を用いて成膜した。次に、酸化
窒化シリコン膜上に酸化物半導体膜として厚さが50nmのIGZO膜を、スパッタリン
グ装置を用いて形成した。次に、酸化物半導体膜上に導電膜を形成し、該導電膜上にレジ
ストマスクを形成し、所望の領域をエッチングした。該導電膜としては、厚さが5nmの
タングステン膜と、厚さが200nmの銅膜と、厚さが5nmのタングステン膜を、スパ
ッタリング装置を用いて真空中で連続して形成した。なお、該導電膜の形成後レジストマ
スクを除去した。次に、銅表面のシリサイド化を行った。シリサイド化処理の条件として
は、まず銅表面に形成される酸化膜を除去するため、PECVD装置を用いてアンモニア
ガスを含む雰囲気にてプラズマを放電させた。続いて、シランガスをPECVD装置内に
導入し、シランガスを銅表面に曝すことで、銅シリサイドを形成させた。なお、銅表面の
酸化膜を除去する際の基板温度としては350℃とした。また、銅シリサイドを形成する
際の基板温度としては、350℃とし、流量10sccmのシランガスと、流量1000
sccmの窒素ガスとを用いた。
【0644】
<断面観察及びEDX分析結果>
上記作製した試料C1及び試料C2を、STEMにより断面形状の観察を行った。図5
9(A)は、試料C1の断面STEM写真であり、図59(B)は、試料C2の断面ST
EM写真である。
【0645】
図59(B)の断面STEM写真により、試料C2においては導電膜の端部に銅と異な
る層(銅シリサイド層)が形成されていることを確認した。
【0646】
また、試料C2の導電膜端部のEDX(Energy Dispersive X-r
ay Spectoroscopy、エネルギー分散型X線分析法)を用いて元素分析を
行った。EDX分析結果を図60に示す。
【0647】
図60に示すように、試料C2の導電膜端部からは、銅(Cu)とシリコン(Si)と
が検出された。すなわち、試料C2において、導電膜端部にCuとSiとを有する銅シリ
サイドが形成されていることを確認した。
【0648】
以上、本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【符号の説明】
【0649】
I1 絶縁体
I2 絶縁体
S1 酸化物半導体
S2 酸化物半導体
S3 酸化物半導体
100 トランジスタ
100A トランジスタ
100B トランジスタ
100C トランジスタ
100D トランジスタ
100E トランジスタ
100F トランジスタ
100G トランジスタ
100H トランジスタ
100J トランジスタ
100K トランジスタ
100L トランジスタ
100M トランジスタ
100N トランジスタ
100P トランジスタ
100Q トランジスタ
102 基板
104 導電膜
106 絶縁膜
107 絶縁膜
108 酸化物半導体膜
108a 酸化物半導体膜
108b 酸化物半導体膜
108c 酸化物半導体膜
112 導電膜
112_1 導電膜
112_2 導電膜
112_3 導電膜
112a 導電膜
112a_1 導電膜
112a_2 導電膜
112a_2a 領域
112a_2b 領域
112a_3 導電膜
112b 導電膜
112b_1 導電膜
112b_2 導電膜
112b_2a 領域
112b_2b 領域
112b_3 導電膜
112c 導電膜
112c_1 導電膜
112c_2 導電膜
112c_2a 領域
112c_2b 領域
112c_3 導電膜
114 絶縁膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120a 導電膜
120b 導電膜
141a マスク
141b マスク
142a マスク
142b マスク
151 開口部
151a 開口部
151b 開口部
152a 開口部
152b 開口部
152c 開口部
152d 開口部
191 ターゲット
192 プラズマ
193 ターゲット
194 プラズマ
195 プラズマ
501 画素回路
502 画素部
504 駆動回路部
504a ゲートドライバ
504b ソースドライバ
506 保護回路
507 端子部
550 トランジスタ
552 トランジスタ
554 トランジスタ
560 容量素子
562 容量素子
570 液晶素子
572 発光素子
601 光電変換素子
602 トランジスタ
603 トランジスタ
604 トランジスタ
605 トランジスタ
606 容量素子
607 ノード
608 配線
609 配線
610 撮像装置
611 配線
641 基板
681 光電変換層
682 透光性導電層
686 電極
700 表示装置
701 基板
702 画素部
704 ソースドライバ回路部
705 基板
706 ゲートドライバ回路部
708 FPC端子部
710 信号線
711 配線部
712 シール材
716 FPC
730 絶縁膜
732 封止膜
734 絶縁膜
736 着色膜
738 遮光膜
750 トランジスタ
752 トランジスタ
760 接続電極
770 平坦化絶縁膜
772 導電膜
773 絶縁膜
774 導電膜
775 液晶素子
776 液晶層
777 導電膜
778 構造体
780 異方性導電膜
782 発光素子
786 EL層
788 導電膜
790 容量素子
791 タッチパネル
792 絶縁膜
793 電極
794 電極
795 絶縁膜
796 電極
797 絶縁膜
800 インバータ
810 OSトランジスタ
820 OSトランジスタ
831 信号波形
832 信号波形
840 破線
841 実線
850 OSトランジスタ
860 CMOSインバータ
900 半導体装置
901 電源回路
902 回路
903 電圧生成回路
903A 電圧生成回路
903B 電圧生成回路
903C 電圧生成回路
904 回路
905 電圧生成回路
906 回路
911 トランジスタ
912 トランジスタ
912A トランジスタ
912B トランジスタ
921 制御回路
922 トランジスタ
1220 ウェル
1221 p型半導体
1223 n型半導体
2189 ROMインターフェース
2190 基板
2191 ALU
2192 ALUコントローラ
2193 インストラクションデコーダ
2194 インタラプトコントローラ
2195 タイミングコントローラ
2196 レジスタ
2197 レジスタコントローラ
2198 バスインターフェース
2199 ROM
2200 記憶素子
2201 回路
2202 回路
2203 スイッチ
2204 スイッチ
2206 論理素子
2207 容量素子
2208 容量素子
2209 トランジスタ
2210 トランジスタ
2213 トランジスタ
2214 トランジスタ
2220 回路
3101 配線
3102 配線
3103 配線
3104 配線
3105 配線
3200 トランジスタ
3300 トランジスタ
3400 容量素子
7000 表示モジュール
7001 上部カバー
7002 下部カバー
7003 FPC
7004 タッチパネル
7005 FPC
7006 表示パネル
7007 バックライト
7008 光源
7009 フレーム
7010 プリント基板
7011 バッテリ
8000 カメラ
8001 筐体
8002 表示部
8003 操作ボタン
8004 シャッターボタン
8006 レンズ
8100 ファインダー
8101 筐体
8102 表示部
8103 ボタン
8200 ヘッドマウントディスプレイ
8201 装着部
8202 レンズ
8203 本体
8204 表示部
8205 ケーブル
8206 バッテリ
8300 ヘッドマウントディスプレイ
8301 筐体
8302 表示部
8304 固定具
8305 レンズ
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 テレビジョン装置
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
9500 表示装置
9501 表示パネル
9502 表示領域
9503 領域
9511 軸部
9512 軸受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60