IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本エアーテック株式会社の特許一覧

特許7595729安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法
<>
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図1
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図2
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図3
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図4
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図5
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図6
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図7
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図8
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図9
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図10
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図11
  • 特許-安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20241129BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20241129BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
B01L1/00 A
G21F9/02 551Z
C12M1/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023184413
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591066465
【氏名又は名称】日本エアーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】恵良 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】板倉 一生
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000779(JP,A)
【文献】特開2019-188320(JP,A)
【文献】特開2018-187107(JP,A)
【文献】米国特許第06368206(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0107679(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00 - 99/00
G21F 9/00 - 9/36
C12M 1/00 - 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全キャビネットの耐圧検査治具であって、
前記安全キャビネットの前面開口部に、当該前面開口部を塞ぐように配置される塞ぎ板と、
前記前面開口部に設けられる受け部とを備え、
前記塞ぎ板は、前記受け部よりも前記安全キャビネットのキャビネット内部側に配置され、
前記塞ぎ板の周縁部にパッキン材が設けられ、
前記受け部は、前記前面開口部に配置された前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面密着可能であり、
前記受け部は、前記安全キャビネットに固定され、
前記塞ぎ板は、前記前面開口部を塞ぎ、かつ前記受け部に前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置され、
前記安全キャビネットのキャビネット内部にエアー供給されると、当該エアーの圧力によって、前記パッキン材の表面が前記受け部に気密に密着する
ことを特徴とする安全キャビネットの耐圧検査治具。
【請求項2】
前記受け部は、前記前面開口部の開口横縁部に沿って一体的に設けられる横受け部と、前記前面開口部の開口縦縁部に沿って取り付けられる縦受け部とを有することを特徴とする請求項1に記載の安全キャビネットの耐圧検査治具。
【請求項3】
前記塞ぎ板は、当該塞ぎ板を前記縦受け部に仮止めする仮止め部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載の安全キャビネットの耐圧検査治具。
【請求項4】
前記塞ぎ板は、前記キャビネット内部にエアーを供給するための供給管が接続される接続部を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の安全キャビネットの耐圧検査治具。
【請求項5】
安全キャビネットの前面開口部を塞ぐように配置される塞ぎ板と、前記前面開口部に設けられる受け部と、を備え、前記塞ぎ板が前記受け部よりも前記安全キャビネットのキャビネット内部側に配置され、前記塞ぎ板の周縁部にパッキン材が設けられ、前記受け部が前記前面開口部に配置された前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面と密着可能であり、前記受け部が前記安全キャビネットに固定される耐圧検査治具を用いる安全キャビネットの耐圧検査方法であって、
前記前面開口部に、前記塞ぎ板を、前記前面開口部に設けられた前記受け部に前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置し、
次に、前記安全キャビネットの前記キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記パッキン材の表面を前記受け部に気密に密着させることによって、前記キャビネット内部の圧力が所定値以上に維持される
ことを特徴とする安全キャビネットの耐圧検査方法。
【請求項6】
前記受け部は、前記前面開口部の開口横縁部に沿って一体的に設けられる横受け部と、前記前面開口部の開口縦縁部に沿って取り付けられる縦受け部とを有し、
まず、前記キャビネット内部に前記塞ぎ板を前記前面開口部から入れておき、
次に、前記開口縦縁部に前記縦受け部を取り付け、
次に、前記前面開口部に前記塞ぎ板を配置して、前記横受け部に前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置するとともに、前記縦受け部に前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置し、
次に、前記キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を、前記横受け部および前記縦受け部に気密に密着させることを特徴とする請求項5に記載の安全キャビネットの耐圧検査方法。
【請求項7】
前記塞ぎ板は、当該塞ぎ板を前記縦受け部に仮止めする仮止め部材を備え、
前記横受け部に前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置するとともに、前記縦受け部に前記塞ぎ板の前記パッキン材の表面を当接または近接させて配置する際に、前記仮止め部材によって前記塞ぎ板を前記縦受け部に仮止めすることを特徴とする請求項6に記載の安全キャビネットの耐圧検査方法。
【請求項8】
前記塞ぎ板は、前記キャビネット内部にエアーを供給するための供給管が接続される接続部を備え、
前記キャビネット内部にエアーを供給する場合に、前記接続部に前記供給管を接続することを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の安全キャビネットの耐圧検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全キャビネットは、その内部に作業用開口部を除き準密閉状態の作業室を形成するとともに、当該作業室内で発生する汚染エアロゾルを吸引し、作業者側に流出させないようにする一方、吸引回収した汚染空気はHEPAフィルタで無菌・清浄化して排気する機能を備えており、取り扱える病原体のレベルによって、クラスI、II、IIIに分類されている。
【0003】
このような安全キャビネットの一例として特許文献1に記載のものが知られている。このような従来の安全キャビネットとしては、例えば図11に示すように、作業台1の上側に作業室2が設けられ、この作業室2は、前面下部に作業用開口部(前面開口部)3を有し、シャッター4により開閉可能となっている。
また、作業台1の前端縁および後端縁に沿って、それぞれスリット状の吸込口5が設けられ、この吸込口5から吸い込まれた空気は、送風機6によって空気流路7を流通し、その一部はHEPAフィルタ等の空気清浄部8によって清浄化されて、再び作業室2に供給され、残りはHEPAフィルタ等の空気清浄部9によって清浄化されて、排気口17から外部に排気される。なお、図11において空気の流れ(気流)を矢印で示している。
【0004】
このような安全キャビネットは耐圧検査が行われる。この耐圧検査は、安全キャビネットを実際に使用した際、キャビネット内部の汚染空気が外部に漏出する恐れが無いか、気密性を確認するための検査であり、キャビネット内部を500Pa以上に加圧した上で、キャビネットの外郭の継ぎ目や配線貫通部に漏洩検査液(石鹸水のようなもの)を吹き付け、エアー漏れによる泡の発生が無いか確認する。
このような耐圧検査では、キャビネット内部(作業室)を500Pa以上に加圧する際、前面開口部を矩形板状の塞ぎ板で密閉する必要がある。
【0005】
図12に示すように、従来、安全キャビネット10の前面開口部11を塞ぎ板12で密閉する場合、前面開口部11を覆うようにして塞ぎ板12を配置したうえで、塞ぎ板12の表面に押え棒13,13を横方向に渡し、当該押え棒13の両端部をPPバンド等の締付けバンド14によって、安全キャビネット10に縛り付けて、塞ぎ板12を安全キャビネット10の前面に押え付けることによって、塞ぎ板12を前面開口部11に押し付け、さらに、塞ぎ板12の周縁部と安全キャビネット10の前面とに亘ってガムテープ等の粘着テープ15を三重程度に重ねて貼り付けて、塞ぎ板12の周囲を粘着テープ15で目張りすることによって、キャビネット内部の加圧によるエアーの漏れを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-130412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような塞ぎ板12の取付作業には非常に手間がかかっていた。
すなわちまず、押え棒13の両端部をPPバンド等の締付けバンド14によって、安全キャビネット10に縛り付ける作業は、作業者一人では困難である。
また、塞ぎ板12の周縁部と安全キャビネット10の前面とに亘って粘着テープ15を貼り付けて目張りする作業は、手間がかかり作業者二人で10分程度要している。
さらに、耐圧検査中にキャビネット内部の加圧によりエアー漏れが生じる場合が多く、この場合、粘着テープ15で追加の目張り作業を行う必要がある。
加えて、耐圧検査後は、締付けバンド14および粘着テープ15が大量のごみとなるので、これらを廃棄する必要がある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、塞ぎ板の取付作業が容易であるとともに耐圧検査中にエアー漏れが無く、さらに、ごみの廃棄作業が不要な安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の安全キャビネットの耐圧検査治具は、
安全キャビネットの前面開口部に、当該前面開口部を塞ぐように配置される塞ぎ板と、
前記前面開口部に設けられ、当該前面開口部に配置された前記塞ぎ板の周縁部の表面が密着可能な受け部とを備え、
前記塞ぎ板は、前記前面開口部を塞ぎ、かつ前記受け部に前記周縁部の表面を当接または近接させて配置した状態で、前記安全キャビネットのキャビネット内部にエアーを供給し、当該エアーの圧力によって、前記周縁部の表面が前記受け部に気密に密着することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の安全キャビネットの耐圧検査方法は、
安全キャビネットの前面開口部に、塞ぎ板を、前記前面開口部に設けられた受け部に前記塞ぎ板の周縁部の表面を当接または近接させて、配置し、
次に、前記安全キャビネットのキャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記周縁部の表面を前記受け部に気密に密着させることによって、前記キャビネット内部の圧力が所定値以上に維持されることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、安全キャビネットの耐圧検査治具が、前面開口部を塞ぐ塞ぎ板と前面開口部に設けられた受け部とを備えており、耐圧検査する際に、前面開口部に、塞ぎ板を受け部に塞ぎ板の周縁部の表面を当接または近接させて、配置し、次に、キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板の周縁部の表面を前記受け部に気密に密着させることによって、キャビネット内部の圧力が所定値以上に維持される。
したがって、従来と異なり、押え棒、締付けバンドおよび粘着テープが不要となるので、塞ぎ板の取付作業が容易となる。
また、エアーの圧力によって、塞ぎ板の周縁部の表面を受け部に気密に密着させるので、つまり、エアーによるキャビネット内部の圧力の力を利用して、従来エアー漏れのリスクがあるエアーの圧力を密閉する力に変えたので、耐圧検査中にエアー漏れが無く、粘着テープで追加の目張り作業を行う必要がない。
さらに、締付けバンドおよび粘着テープが不要となるので、廃棄すべきごみが生じるこことがなく、廃棄作業が不要となる。
【0012】
また、本発明の前記構成において、前記受け部は、前記前面開口部の開口横縁部に沿って一体的に設けられる横受け部と、前記前面開口部の開口縦縁部に沿って取り付けられる縦受け部とを有していてもよい。
この場合、前記キャビネット内部に前記塞ぎ板を前記前面開口部から入れておき、
次に、前記開口縦縁部に前記縦受け部を取り付け、
次に、前記前面開口部に塞ぎ板を配置して、前記横受け部に前記塞ぎ板の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、前記縦受け部に前記塞ぎ板の縦縁部の表面を当接または近接させて配置し、
次に、前記キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、前記塞ぎ板の前記横縁部および前記縦縁部の表面を、前記横受け部および前記縦受け部に気密に密着させる。
【0013】
このような構成によれば、キャビネット内部に前面開口部から入れたおいた塞ぎ板を前面開口部に配置する際に、前面開口部の開口縦縁部に縦受け部を取り付け、次に、前面開口部に塞ぎ板を配置して、横受け部に塞ぎ板の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、縦受け部に前記塞ぎ板の縦縁部の表面を当接または近接させて配置することで、塞ぎ板を容易に前面開口部に配置できる。その後、キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板の横縁部および縦縁部の表面を横受け部および縦受け部に気密に密着させることによって、エアー漏れなく確実に耐圧検査を行える。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記塞ぎ板は、当該塞ぎ板を前記縦受け部に仮止めする仮止め部材を備えていてもよい。
この場合、前記横受け部に塞ぎ板の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、前記縦受け部に塞ぎ板の縦縁部の表面を当接または近接させて配置する際に、仮止め部材によって塞ぎ板を縦受け部に仮止めする。
【0015】
このような構成によれば、横受け部に塞ぎ板の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、縦受け部に塞ぎ板の縦縁部の表面を当接または近接させて配置する際に、仮止め部材によって塞ぎ板を縦受け部に仮止めするので、キャビネット内部に供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板の横縁部および縦縁部の表面を横受け部および縦受け部に気密に密着させる前に、塞ぎ板を前面開口部の所定の位置に位置決めできる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、前記塞ぎ板は、前記キャビネット内部にエアーを供給するための供給管が接続される接続部を備えていてもよい。
この場合、キャビネット内部にエアーを供給する場合に、接続部に前記供給管を接続する。
【0017】
このような構成によれば、耐圧検査する際に、接続部に供給管を接続したうえで、供給管および接続部を通してキャビネット内部にエアーを容易に供給できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塞ぎ板の取付作業が容易であるとともに耐圧検査中にエアー漏れが無く、さらに、ごみの廃棄作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る耐圧検査を行う安全キャビネットの一例を示すもので、正面図である。
図2】同、図1におけるA-A線断面図である。
図3】同、図1におけるB-B線断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る耐圧検査治具の塞ぎ板を示すもので、正面図である。
図5】同、図4におけるA-A線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る耐圧検査治具の縦受け部を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
図7】本発明の実施形態に係る耐圧検査治具を取り付けた安全キャビネットを示すもので、(a)は断面図、(b)は(a)におえるb円部の拡大図、(c)は(a)におけるc縁部の拡大図である。
図8】本発明の実施形態に係る耐圧検査治具を取り付けた状態を示すもので、要部の正面図である。
図9】同、図8におけるB-B線矢視図である。
図10】同、図8におけるD縁部の拡大図である。
図11】従来の安全キャビネットの一例を示す断面図である。
図12】従来の安全キャビネットの耐圧検査方法を説明するもので、安全キャビネットの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法の実施形態について説明する。
まず、本実施形態の安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法を説明する前に、安全キャビネットについて説明する。
【0021】
図1図3は、安全キャビネットの一例を示すもので、図1は正面図、図2図1におけるA-A線断面図、図3図1におけるB-B線断面図である。図1図3に示す安全キャビネット20は、本実施形態に係る安全キャビネットの耐圧検査治具を使用して耐圧検査が行われる。
【0022】
安全キャビネット20は、内部が空洞のキャビネット本体21を備え、このキャビネット本体21の内部(キャビネット内部)に作業室22が設けられている。キャビネット本体21は、前面に作業用の開口部となる前面開口部23を備えている。前面開口部23は矩形状に形成され、上下にスライド可能に設けられたシャッター24によって開閉可能となっている。シャッター24は、前面開口部23の左右両縁部に設けられたシャッターレール27,27(図3参照)に上下にスライド可能に設けられている。
作業室22は、前面開口部23から作業者が手を挿入して作業可能な作業用空間であり、作業台22aの上側に設けられている。
【0023】
また、作業台22aの前端縁および後端縁に沿って、それぞれスリット状の吸込口25が設けられ、この吸込口25から吸い込まれた空気は、送風機28によって空気流路29を流通し、その一部はHEPAフィルタ等の空気清浄部29aによって清浄化されて、再び作業室22に供給され、残りはHEPAフィルタ等の空気清浄部29bによって清浄化されて、排気口(図示略)から外部に排気される。
【0024】
また、安全キャビネット20は、前面側に前面カバー30を備えている。キャビネット本体21の前面上部には制御盤31が設けられ、作業室22の入口上部には照明灯32が設けられている。制御盤31および照明灯32は前面カバー30によって覆われているが、前面開口部23は覆われておらず、当該前面開口部23の左右両縁部、つまりシャッターレール27,27が設けられている部位がシャッターレール27,27とともに前面カバー30によって覆われている。また、作業室22の奥側の壁面上部には殺菌灯33が設けられている。
【0025】
なお、安全キャビネット20は底部に4つキャスタ34を備えており、当該キャスタ34によって移動可能である。また、安全キャビネット20は底部には、各キャスタ34の隣に脚部35が設けられており、当該脚部35を伸ばして、キャスタ34を浮かすことで、安全キャビネット20を所望の位置に設置可能となっている。
【0026】
このような構成の安全キャビネット20は、耐圧検査を行う際に本実施形態に係る耐圧検査治具40を使用する。上述したように、耐圧検査では、キャビネット内部を500Pa以上に加圧する。キャビネット内部とは、作業室22を含むキャビネット本体21の内部空間の全てを意味する。
【0027】
耐圧検査治具40は、図4および図5に示すような、塞ぎ板41を備えている。塞ぎ板41は、矩形板状に形成された塞ぎ板本体42と、塞ぎ板本体42の下端部中央に設けられた接続部43と、塞ぎ板本体42の表面側の四隅部にそれぞれ設けられた仮止め部材44とを備えている。
【0028】
塞ぎ板本体42は矩形板状のアルミ板によって形成されており、当該アルミ板の四周縁部のうち、上縁部と左右両縁部は裏側に略直角に折曲げられており、断面L字形に形成されている。また、アルミ板の下縁部は、裏側に斜めに折曲げられており、断面く字形に形成されている。
このような塞ぎ板本体42の表面の4つの辺部にはそれぞれパッキン材45が設けられている。パッキン材45は矩形枠状に配置されている。また、塞ぎ板本体42の下辺部に設けられているパッキン材45は、く字形に折り曲げられたアルミ板の下縁部に沿って塞ぎ板本体42の裏側に傾斜して設けられている。
【0029】
接続部43は、キャビネット内部にエアーを供給するための供給管60(図7(a)参照)が接続されるものであり、円筒状に形成されている。塞ぎ板本体42の下端部中央には、接続部43を取り付けるための取付孔が形成されており、この取付孔に接続部43の基端部が挿入されたうえで、基端部に設けられたフランジが塞ぎ板本体42の裏面に固定されている。この状態において、接続部43は塞ぎ板本体42の表面からほぼ直角に突出している。
また、塞ぎ板本体42の短辺方向中央部には、長辺方向に沿って延在する補強部材46が固定されている。この補強部材46は、作業者が塞ぎ板41を取り扱う際の取手としても使用される。
【0030】
前記仮止め部材44は、塞ぎ板41を安全キャビネット20の前面開口部23(に設けられた後述する縦受け部52)に仮止めする際に使用されるものであり、帯状の両面オス型の面ファスナーによって形成されている。仮止め部材44は、塞ぎ板本体42の長辺方向に沿って配置され、その基端部44aが塞ぎ板本体42の表面に固定されている。また、仮止め部材44の先端部は、塞ぎ板本体44の表面に固定されたメス型の面ファスナー47に仮止めされている。そして、仮止め部材44は、塞ぎ板41を前面開口部23の縦受け部52に仮止めする際に、先端部を面ファスナー47から取り外すことによって使用される。
このような構成の塞ぎ板41は、例えば3.6Kg程度であり、従来の塞ぎ板の約半分程度の重さとなっている。
【0031】
また、耐圧検査治具40は、前記塞ぎ板41の他に、塞ぎ板41の周縁部の表面が密着可能な受け部50を備えている。受け部50は、横受け部51と縦受け部52とを有している。
横受け部51は、図7に示すように、キャビネット本体21の前面開口部23の上下の開口横縁部23a,23aにキャビネット本体21と一体的に設けられている。上側の開口横縁部23aに設けられている横受け部51は、図7(b)に示すように、断面L字形に形成されており、その一片部が開口横縁部23aにおいてキャビネット本体21に固定され、他片部が開口横縁部23aに位置している。下側の開口横縁部23aに設けられている横受け部51は、図7(c)に示すように、作業室22側に向けて斜め下方に傾斜して形成されており、その上端部は開口横縁部23aにおいてキャビネット本体21に接続されている。
【0032】
耐圧検査の際に、キャビネット本体21の前面開口部23に塞ぎ板41を配置する場合、塞ぎ板41を前面開口部23より若干作業室22側に配置するとともに、横受け部51,51に、塞ぎ板41の上下の横縁部(上下縁部)の表面を当接または近接させて配置する。その際、塞ぎ板41の上下のパッキン材45,45が横受け部51,51に当接または近接する。
【0033】
縦受け部52は、耐圧検査の際に、図9に示すように、安全キャビネット20の前面開口部23の左右の開口縦縁部23b,23bに沿って取り付けられるものであり、以下のように構成されている。
すなわち、図6に示すように、縦受け部52は、縦受け部本体53と、パッキン材54と、止着材55と、仮止部56とを有している。
【0034】
縦受け部本体53は、ステンレス製であり、上下に長尺な帯板状に形成されるとともに、上下方向に沿う一方の縁部(図6(a)において左縁部)が裏面側に略直角に折曲げられて、構成されている。また、縦受け部本体53の上下方向の長さは、前記前面開口部23の縦方向に沿う開口縦縁部23bの長さとほぼ等しくなっている。
【0035】
パッキン材54は、縦受け部本体53の裏面に、当該裏面全体に亘って設けられている。止着材55は、縦受け部52を安全キャビネット20の前面開口部23の開口縦縁部23bに止着固定するための部材であり、本実施形態では蝶ネジによって構成されている。止着材55には、脱落防止ワイヤ57の一端部が連結されており、脱落防止ワイヤ57の他端部は縦受け部本体53にボルト58によって固定されている。したがって、止着材55は脱落防止ワイヤ57によって縦受け部本体53に連結されることで、縦受け部本体53からの脱落が防止されている。
【0036】
縦受け部本体53の長手方向に沿う一縁部(図6(a)において左縁部)には、縦受け部52を安全キャビネット20の前面開口部23の開口縦縁部23b(に設けられたシャッターレール27)にねじ止め固定する際に使用される貫通孔53aが縦受け部本体53の長手方向に所定間隔で3個形成されている。また、各貫通孔53aは、前記ボルト58に対して縦受け部本体53の短手方向に所定間隔で配置されている。
縦受け部52を開口縦縁部23bに固定するには、当該開口縦縁部23bに設けられているシャッターレール27にねじ穴を前記貫通孔53aと同軸に形成しておき、止着材55を貫通孔53aを通して前記ねじ穴にねじ込むことによって行う。
【0037】
仮止部56は、帯状のメス型の面ファスナーによって形成されており、縦受け部本体53の表面に、長手方向に沿う縁部(図6(a)において右縁部)に沿って設けられている。仮止部56は、前記塞ぎ板41に設けられている仮止め部材44が係合することによって、塞ぎ板41を安全キャビネット20の前面開口部23の開口縦縁部23bに仮止めするようになっている。
【0038】
このような構成の縦受け部52は、左右一対あるが、図6に示す縦受け部52は、前面開口部23の左側の開口縦縁部23bに取り付けられるものである。右側の開口縦縁部23bに取り付けられる縦受け部52は、左側の開口縦縁部23bに取り付けられる縦受け部52と左右対称に形成されている。
【0039】
塞ぎ板41を安全キャビネット20の前面開口部23の開口縦縁部23b,23bに仮止めする場合、図8図10に示すように、塞ぎ板41を前面開口部23に配置するとともに、塞ぎ板41に設けられた仮止め部材44の先端部を面ファスナー47から取り外して、縦受け部52,52に設けられている仮止部56,56に係合することによって行う。
【0040】
次に安全キャビネットの耐圧検査方法について説明する。
まず、図1図3に示す安全キャビネット20から前面カバー30を取り外すとともに、シャッター24を取り外す。これによって、安全キャビネット20は、図7に示すように、前面側が露出し、これに伴ってシャッターレール27,27(図3参照)も露出する。
【0041】
次に、塞ぎ板41を前面開口部23からキャビネット本体21の作業室22に入れておく。この場合、塞ぎ板41の補強部材46を作業者が取手として把持して、当該塞ぎ板41を作業室22に入れる。
次に、図8に示すように、前面開口部23の左右の開口縦縁部23b,23bに縦受け部52,52を取り付ける。この場合、止着材55を縦受け部52に形成されている貫通孔53aに挿通するとともに、シャッターレール27に形成されているねじ穴(図示略)にねじ込むことによって、縦受け部52をシャッターレール27に固定する。
【0042】
次に、塞ぎ板41を、その補強部材46を作業者が取手として把持して、前面開口部23に配置するとともに、塞ぎ板41の横縁部(上下縁部)を横受け部51,51に、横縁部の表面を当接または近接させて配置する。この際、図7(b)に示すように、塞ぎ板41の上縁部(上側の横縁部)に設けられているパッキン材45が横受け部51に当接するとともに、図7(c)に示すように、塞ぎ板41の下縁部(下側の横縁部)に設けられているパッキン材45が横受け部51に当接する。
また、図9および図10に示すように、塞ぎ板41の両縦縁部を縦受け部52,52に、縦縁部の表面を当接または近接させて配置する。この際、縦受け部52のパッキン材54が塞ぎ板41の縦縁部の表面に設けられたパッキン材45に当接または近接する。
【0043】
このようにして、横受け部51に塞ぎ板41の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、縦受け部52に塞ぎ板41の縦縁部の表面を当接または近接させて配置する際に、仮止め部材44によって塞ぎ板41を縦受け部52に仮止めする。
この仮止めは、仮止め部材44の先端部を面ファスナー47から取り外して、縦受け部52に設けられている仮止部56に係合することによって行う。これによって、塞ぎ板41は前面開口部23に仮固定される。
【0044】
次に、キャビネット本体21の内部にエアーを供給するが、この供給の前にキャビネット本体21の上部に設けられている上部の排気口(図示略)を閉塞する。安全キャビネット20の機種やオプション設定により排気口の形状が異なるため、この排気口に金属製のフタを付ける場合もあれば、ビニールシートを貼る場合もある。
キャビネット本体21の内部にエアーを供給する場合、図7(a)に示すように、塞ぎ板41に設けられた接続部43に、エアーを供給するための供給管60を接続し、この供給管60から接続部43を介して、キャビネット本体21の内部にエアーを供給する。
【0045】
そうすると、この供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ塞41が外側に向けて押圧されるので、当該塞ぎ板41の横縁部および縦縁部の表面が横受け部51および縦受け部52に気密に密着する。すなわち、図7(b)に示すように、塞ぎ板41の上の横縁部に設けられたパッキン材45が横受け部51に密着するとともに、図7(c)に示すように、塞ぎ板41の下の横縁部に設けられたパッキン材45が横受け部51に密着する。
また、図10に示すように、塞ぎ板41の縦縁部に設けられたパッキン材45が縦受け部52に設けられたパッキン材54に密着する。これによって、キャビネット本体21の内部の圧力が所定値(500Pa)以上に維持される。
そして、この状態で、安全キャビネット20の外郭の継ぎ目や配線貫通部に漏洩検査液(石鹸水のようなもの)を吹き付け、エアー漏れによる泡の発生が無いか確認する。
【0046】
以上ように本実施形態によれば、安全キャビネット20の耐圧検査治具40が、前面開口部23を塞ぐ塞ぎ板41と前面開口部23に設けられた受け部50とを備えており、耐圧検査する際に、前面開口部23に、塞ぎ板41を受け部50に塞ぎ板41の周縁部の表面を当接または近接させて、配置し、次に、キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板41の周縁部の表面を受け部50に気密に密着させることによって、キャビネット内部の圧力が所定値以上に維持される。
したがって、従来と異なり、押え棒、締付けバンドおよび粘着テープが不要となるので、塞ぎ板の取付作業が容易となる。
従来、耐圧検査に作業者2人で10分の計20分必要であったのに対し、作業者1人で3分程度に抑えることができた。
【0047】
また、エアーの圧力によって、塞ぎ板41の周縁部の表面を受け部50に気密に密着させるので、つまり、エアーによるキャビネット内部の圧力の力を利用して、従来エアー漏れのリスクがあるエアーの圧力を密閉する力に変えたので、耐圧検査中にエアー漏れが無く、粘着テープで追加の目張り作業を行う必要がない。
さらに、締付けバンドおよび粘着テープが不要となるので、廃棄すべきごみが生じるこことがなく、廃棄作業が不要となる。
【0048】
また、受け部50が、前面開口部23の開口横縁部23aに沿って一体的に設けられる横受け部51と、前面開口部23の開口縦縁部23bに沿って取り付けられる縦受け部52とを有しているので、キャビネット内部に前面開口部23から入れたおいた塞ぎ板41を前面開口部23に配置する際に、前面開口部23の開口縦縁部23bに縦受け部52を取り付け、次に、前面開口部23に塞ぎ板41を配置して、横受け部51に塞ぎ板41の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、縦受け部52に塞ぎ板41の縦縁部の表面を当接または近接させて配置することで、塞ぎ板41を容易に前面開口部23に配置できる。その後、キャビネット内部にエアーを供給し、この供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板41の横縁部および縦縁部の表面を横受け部51および縦受け部52に気密に密着させることによって、エアー漏れなく確実に耐圧検査を行える。
【0049】
さらに、塞ぎ板41は、当該塞ぎ板41を縦受け部52に仮止めする仮止め部材44を備えているので、横受け部51に塞ぎ板41の横縁部の表面を当接または近接させて配置するとともに、縦受け部52に塞ぎ板41の縦縁部の表面を当接または近接させて配置する際に、仮止め部材44によって塞ぎ板41を縦受け部52に仮止めするので、キャビネット内部に供給されたエアーの圧力によって、塞ぎ板41の横縁部および縦縁部の表面を横受け部51および縦受け部52に気密に密着させる前に、塞ぎ板41を前面開口部23の所定の位置に位置決めできる。
【0050】
また、塞ぎ板41が、キャビネット内部にエアーを供給するための供給管60が接続される接続部43を備えているので、耐圧検査する際に、接続部43に供給管60を接続したうえで、供給管60および接続部43を通してキャビネット内部にエアーを容易に供給できる。
【符号の説明】
【0051】
20 安全キャビネット
21 キャビネット本体
23 前面開口部
23a 開口横縁部
23b 開口縦縁部
40 耐圧検査治具
41 塞ぎ板
43 接続部
44 仮止め部材
50 受け部
51 横受け部
52 縦受け部
60 供給管
【要約】
【課題】塞ぎ板の取付作業が容易であるとともに耐圧検査中にエアー漏れが無く、さらに、ごみの廃棄作業が不要な安全キャビネットの耐圧検査治具および耐圧検査方法を提供する。
【解決手段】安全キャビネットの耐圧検査治具40は、安全キャビネットの前面開口部23に、当該前面開口部を塞ぐように配置される塞ぎ板41と、前面開口部41に設けられ、当該前面開口部に配置された塞ぎ板41の周縁部の表面が密着可能な受け部50とを備え、塞ぎ板41は、前面開口部23を塞ぎ、かつ受け部50に塞ぎ板41の周縁部の表面を当接または近接させて配置した状態で、安全キャビネットのキャビネット内部にエアーを供給することによって、当該エアーの圧力によって、前記周縁部の表面が受け部50に気密に密着する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12