(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20241129BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2023218985
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-086289(JP,A)
【文献】特開2021-149898(JP,A)
【文献】特開2023-054841(JP,A)
【文献】国際公開第2022/065028(WO,A1)
【文献】伊藤穣一,SB新書583 テクノロジーが予測する未来 web3、メタバース、NFTで世界はこうなる,初版,SBクリエイティブ株式会社,2022年06月15日,pp. 038~043, 170~181
【文献】亀井聡彦,Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」 ,株式会社かんき出版,2022年07月04日,pp.158~170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定する投票権比率特定部と、
所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定する行動比率特定部と、
前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、
前記組織に関連付けられた前記トークンの総数と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出する投票権比率算出部と、
を有
し、
前記投票権比率算出部は、前記第1時点における前記投票権比率に前記第1時点における前記総数を乗算し、前記期間における前記行動比率に前記第2時点における前記総数を乗算することにより、前記投票権比率を算出する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記行動比率特定部は、前記第2時点以前の所定の長さの前記期間における前記行動比率を特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記投票権比率算出部は、前記第1時点及び前記第2時点それぞれにおける前記組織の価値に対応する価値指標を特定し、前記第1時点の前記価値指標と前記第2時点の前記価値指標との差に応じて、前記第2時点における前記投票権比率に対する、前記第1時点における前記投票権比率と前記期間における前記行動比率との影響を異ならせる、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記投票権比率算出部は、前記第2時点の前記価値指標が前記第1時点の前記価値指標より大きい場合に前記行動比率を前記投票権比率に反映し、前記第2時点の前記価値指標が前記第1時点の前記価値指標より大きくない場合に前記行動比率を前記投票権比率に反映しない、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記価値指標は、前記トークンの取引価格と、前記組織が行う事業の売上と、前記事業の利益と、前記事業の利用者数と、前記事業の利用件数と、前記事業の市場占有率と、前記事業の顧客満足度と、のうちいずれかである、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記トークンが前記対象ユーザから他ユーザに移転された場合に、移転された前記トークンに対応する前記対象ユーザの前記投票権比率を前記他ユーザの前記投票権比率に変更する投票権比率変更部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記トークンが前記対象ユーザから他ユーザに移転された場合に、移転された前記トークンに対応する前記投票権比率を前記対象ユーザから剥奪するとともに、移転された前記トークンの数が反映された前記投票権比率であって前記対象ユーザの前記行動比率が反映されていない前記投票権比率を前記他ユーザに付与する投票権比率変更部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記トークンは、分散型自立組織(Decentralized Autonomous Organization)である前記組織の意思決定に対する投票の権利を前記トークンの保有者に与えるガバナンストークンである、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
プロセッサが実行する、
第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定するステップと、
所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定するステップと、
前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、
前記組織に関連付けられた前記トークンの総数と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出するステップと、
を有
し、
前記算出するステップにおいて、前記第1時点における前記投票権比率に前記第1時点における前記総数を乗算し、前記期間における前記行動比率に前記第2時点における前記総数を乗算することにより、前記投票権比率を算出する、
情報処理方法。
【請求項10】
プロセッサに、
第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定するステップと、
所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定するステップと、
前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、
前記組織に関連付けられた前記トークンの総数と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出するステップと、
前記算出するステップにおいて、前記第1時点における前記投票権比率に前記第1時点における前記総数を乗算し、前記期間における前記行動比率に前記第2時点における前記総数を乗算することにより、前記投票権比率を算出する、
を実行さ
せ、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の意思決定に対する投票に関する情報を処理する情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、家族や会社等の組織に属している複数のユーザそれぞれのガバナンストークンの所有量に応じて、組織における投票イベント等でユーザが投票可能な票数を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、ユーザが他のユーザ等からガバナンストークンの譲渡を受けることによって組織の意思決定に対するユーザの影響が大きくなるが、組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を直接的に大きくすることはできなかった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を変えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定する投票権比率特定部と、所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定する行動比率特定部と、前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出する投票権比率算出部と、を有する。
【0007】
前記行動比率特定部は、前記第2時点以前の所定の長さの前記期間における前記行動比率を特定してもよい。
【0008】
前記投票権比率算出部は、前記第1時点及び前記第2時点それぞれにおける前記組織の価値に対応する価値指標を特定し、前記第1時点の前記価値指標と前記第2時点の前記価値指標との差に応じて、前記第2時点における前記投票権比率に対する、前記第1時点における前記投票権比率と前記期間における前記行動比率との影響を異ならせてもよい。
【0009】
前記投票権比率算出部は、前記第2時点の前記価値指標が前記第1時点の前記価値指標より大きい場合に前記行動比率を前記投票権比率に反映し、前記第2時点の前記価値指標が前記第1時点の前記価値指標より大きくない場合に前記行動比率を前記投票権比率に反映しなくてもよい。
【0010】
前記価値指標は、前記トークンの取引価格と、前記組織が行う事業の売上と、前記事業の利益と、前記事業の利用者数と、前記事業の利用件数と、前記事業の市場占有率と、前記事業の顧客満足度と、のうちいずれかであってもよい。
【0011】
前記投票権比率算出部は、前記第1時点における前記投票権比率及び前記期間における前記行動比率に加えて、前記組織に関連付けられた前記トークンの総数に基づいて、前記第2時点における前記投票権比率を算出してもよい。
【0012】
前記投票権比率算出部は、前記第1時点における前記投票権比率に前記第1時点における前記総数を乗算し、前記期間における前記行動比率に前記第2時点における前記総数を乗算することにより、前記投票権比率を算出してもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、前記トークンが前記対象ユーザから他ユーザに移転された場合に、移転された前記トークンに対応する前記対象ユーザの前記投票権比率を前記他ユーザの前記投票権比率に変更する投票権比率変更部をさらに有してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記トークンが前記対象ユーザから他ユーザに移転された場合に、移転された前記トークンに対応する前記投票権比率を前記対象ユーザから剥奪するとともに、移転された前記トークンの数が反映された前記投票権比率であって前記対象ユーザの前記行動比率が反映されていない前記投票権比率を前記他ユーザに付与する投票権比率変更部をさらに有してもよい。
【0015】
前記トークンは、分散型自立組織(Decentralized Autonomous Organization)である前記組織の意思決定に対する投票の権利を前記トークンの保有者に与えるガバナンストークンであってもよい。
【0016】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、プロセッサが実行する、第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定するステップと、所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定するステップと、前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出するステップと、を有する。
【0017】
本発明の第3の態様のプログラムは、プロセッサに、第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する前記組織の意思決定に対する投票権のうち、前記複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、前記対象ユーザによる前記トークンの保有数が反映された投票権比率を特定するステップと、所定の期間において前記複数のユーザが行った前記組織に関する行動のうち前記対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定するステップと、前記第1時点における前記投票権比率と、前記期間における前記行動比率と、に基づいて、前記第1時点より後の第2時点における前記投票権比率を算出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を変えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】情報処理装置が投票権比率を算出する時点を説明するための模式図である。
【
図4】投票権比率算出部が今回の投票権比率を算出する方法を説明するための模式図である。
【
図5】投票権比率算出部が今回の投票権比率を算出する方法を説明するための模式図である。
【
図6】情報処理装置が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。
【
図7】ユーザ間で組織トークンが移転される状況を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[情報処理システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る情報処理システムSの模式図である。情報処理システムSは、情報処理装置1と、情報端末2と、を含む。情報処理システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0021】
情報処理装置1は、ブロックチェーン上に記憶された情報に基づいて、組織の意思決定に対する投票に関する処理を行うコンピュータである。組織は、複数のユーザが属する集団である。組織は、例えば、分散型自立組織(DAO: Decentralized Autonomous Organization)である。複数のユーザそれぞれは、組織の意思決定に対する投票権を有しており、組織が行う施策に対して投票(多数決等)を行うことができる。
【0022】
ブロックチェーンは、情報処理装置1の記憶部又は情報処理装置1とは異なる装置の記憶部に構築される。ブロックチェーンは複数の装置の記憶部に構築されており、情報処理装置1は当該複数の装置のうちいずれかであってもよい。
【0023】
ブロックチェーン上に記憶される情報は、例えば、ユーザが組織に参加していることを示す組織トークンを含む。組織トークンは、例えば、DAOである組織の意思決定に対する投票の権利を当該トークンの保有者に与えるガバナンストークンである。組織トークンは、組織によってユーザに付与され、又はユーザ間で移転(譲渡)されることにより、各ユーザに保有される。
【0024】
組織トークンは、例えば、ネットワーク上の一又は複数の記憶部上のブロックチェーンによって、保有者であるユーザを識別するためのユーザ識別情報(ユーザID(Identifier))と関連付けて記憶される。ブロックチェーンは複数のデータのブロックを含み、各ブロックはトークンの保有者が移転されたことを示す一又は複数のトランザクションを含む。ブロックチェーン内の各ブロックには所定の規則で生成されたハッシュ値が含まれており、ブロック間のハッシュ値の整合性を確認することによりブロックチェーン全体の正しさが担保される。
【0025】
情報端末2は、ユーザが利用するコンピュータである。情報端末2は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末である。情報端末2は、操作を受け付けるためのタッチパネルやキーボード等の操作部と、情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部と、を有する。情報端末2は、ネットワークを介して情報処理装置1と通信可能である。
【0026】
本実施形態に係る情報処理システムSが実行する処理の概要を以下に説明する。情報処理装置1は、第1時点における、複数のユーザが有する組織の意思決定に対する投票権のうち、複数のユーザのうちいずれかのユーザである対象ユーザの投票権の比率である投票権比率を特定する。第1時点の投票権比率には、対象ユーザによる組織トークンの保有数が反映されている。
【0027】
情報処理装置1は、所定の対象期間において複数のユーザが行った組織に関する行動のうち対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定する。組織に関する行動は、組織に関する経済的活動、非経済的活動及び社会的活動を含む。対象期間は、例えば、後述の第2時点以前の所定の長さの期間である。
【0028】
情報処理装置1は、第1時点における投票権比率と、対象期間における行動比率と、に基づいて、第1時点より後の第2時点における対象ユーザの投票権比率を算出する。すなわち、情報処理装置1は、対象ユーザによる組織トークンの保有数が反映された投票権比率に、対象ユーザが行った組織に関する行動をさらに反映する。
【0029】
このように、情報処理システムSは、ユーザが組織に参加していることを示す組織トークンの保有数と、ユーザが行った組織に関する行動の比率と、に基づいて、ユーザの投票権比率を算出する。これにより、情報処理システムSは、組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を変えることができる。
【0030】
[情報処理システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る情報処理システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示したもの以外のデータの流れがあってもよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0031】
情報処理装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を有する。情報処理装置1は、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。また、情報処理装置1は、コンピュータ資源の集合であるクラウドによって構成されてもよい。
【0032】
通信部11は、ネットワークを介して情報端末2との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部11は、情報端末2からネットワークを介して受信したデータを制御部13に通知する。また、通信部11は、ネットワークを介して、制御部13から出力されたデータを情報端末2に送信する。
【0033】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部12は、情報処理装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部13との間でデータの授受を行ってもよい。
【0034】
制御部13は、データ取得部131と、投票権比率算出部132と、出力部133と、投票権比率特定部134と、行動比率特定部135と、投票権比率変更部136と、を有する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部131、投票権比率算出部132、出力部133、投票権比率特定部134、行動比率特定部135及び投票権比率変更部136として機能する。
【0035】
以下、情報処理システムSが実行する処理について詳細に説明する。第1に、情報処理装置1が1回目に投票権比率を算出する処理について説明する。
図3(a)は、情報処理装置1が1回目に投票権比率を算出する時点を説明するための模式図である。
図3(a)の横軸は時間経過を表している。
【0036】
情報処理装置1が1回目に投票権比率を算出する時点を初回算出時点tとする。初回算出時点tは、複数のユーザが参加する組織が形成された後の任意の時点であり、例えば組織が形成された直後の時点、又は組織の意思決定に対する投票が行われる時点等である。
【0037】
データ取得部131は、初回算出時点tにおける、投票権比率の算出対象とする組織に参加している複数のユーザそれぞれによる、当該ユーザが当該組織に参加していることを示す組織トークン(例えば、ガバナンストークン)の保有数を取得する。データ取得部131は、例えば、ブロックチェーンにおいて、複数のユーザそれぞれのユーザIDに関連付けられた組織トークンの数を数えることにより、当該ユーザの組織トークンの保有数を取得する。
【0038】
投票権比率算出部132は、データ取得部131が取得した組織トークンの保有数に基づいて、初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを算出する。投票権比率Oは、初回算出時点tにおける、組織の意思決定に対する複数のユーザそれぞれが有する投票権の比率である。投票権比率算出部132は、例えば、複数のユーザそれぞれの組織トークンの保有数を組織トークンの発行数(複数のユーザの組織トークンの保有数の総数)で除算した値を、当該ユーザの投票権比率Oとして算出する。これにより、初回算出時点tの投票権比率Oに、複数のユーザそれぞれによる組織トークンの保有数が反映される。
【0039】
投票権比率算出部132は、ここに示した具体的な算出方法に限られず、その他の方法で投票権比率Oを算出してもよい。投票権比率算出部132は、例えば、ユーザ属性等の所定の情報を用いて組織トークンの保有数を重み付けし、重み付けした組織トークンの保有数を用いて投票権比率Oを算出してもよい。投票権比率算出部132は、初回算出時点tの投票権比率Oを算出した後にユーザに1つの組織トークンが新たに付与された場合に、当該ユーザに組織トークンの総数であるトークン発行数Na分の1の投票権比率を付与してもよい。
【0040】
出力部133は、投票権比率算出部132が算出した初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを、当該ユーザが利用する情報端末2に送信する。情報端末2は、情報処理装置1から受信した投票権比率Oを表示部上に表示する。また、出力部133は、投票権比率算出部132が算出した初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを、当該ユーザのユーザID及び初回算出時点tと関連付けて記憶部12に記憶させる。
【0041】
第2に、情報処理装置1が2回目以降に投票権比率を算出する処理について説明する。
図3(b)は、情報処理装置1が2回目以降に投票権比率を算出する時点を説明するための模式図である。
図3(b)の横軸は時間経過を表している。
【0042】
情報処理装置1は、組織に参加している複数のユーザそれぞれを対象ユーザとして以降の処理を行う。情報処理装置1が2回目以降に投票権比率を算出する時点を今回算出時点ta(第2時点ともいう)とする。また、今回算出時点taの1回前に投票権比率を算出した時点を前回算出時点tb(第1時点ともいう)という。前回算出時点tbは、今回が2回目の場合に初回算出時点tであり、今回が3回目以降の場合に1回前に投票権比率が算出された際の今回算出時点taである。
【0043】
今回算出時点taは、前回算出時点tbより後の任意の時点であり、例えば前回算出時点tbから所定時間(1か月、6か月、1年等)が経過した時点、各ユーザによる組織トークンの保有数が変動した時点、又は組織の意思決定に対する投票が行われる時点等である。
【0044】
データ取得部131は、今回算出時点ta及び前回算出時点tbそれぞれにおける、投票権比率の算出対象とする組織に参加している複数のユーザそれぞれによる、当該ユーザが当該組織に参加していることを示す組織トークン(例えば、ガバナンストークン)の保有数を取得する。データ取得部131は、例えば、ブロックチェーンにおいて、複数のユーザそれぞれのユーザIDに関連付けられた組織トークンの数を数えることにより、複数のユーザそれぞれの組織トークンの保有数を取得する。
【0045】
データ取得部131は、今回算出時点ta及び前回算出時点tbそれぞれにおける、組織の価値に対応する価値指標を示す価値指標データを取得する。価値指標は、例えば、組織トークンの取引価格と、組織が行う事業の売上と、事業の利益と、事業の利用者数と、事業の利用件数と、事業の市場占有率と、事業の顧客満足度と、のうちいずれかである。
【0046】
データ取得部131は、例えば、記憶部12又はその他の記憶装置から、今回算出時点ta及び前回算出時点tbそれぞれの価値指標データを取得する。価値指標データは、記憶部12又はその他の記憶装置において、データベースとして記憶されていてもよく、ブロックチェーン上に記憶されていてもよい。記憶部12又はその他の記憶装置には、人間によって入力された価値指標データ、又は自動的に収集された価値指標データが記憶されている。
【0047】
データ取得部131は、所定の対象期間Tにおける複数のユーザそれぞれが行った組織に関する行動を示す行動データを取得する。対象期間Tは、今回算出時点ta以前の所定の長さ(1か月、6か月、1年等)の期間である。対象期間Tは、例えば、前回算出時点tbから今回算出時点taまでの期間であってもよい。対象期間Tは、例えば、今回算出時点ta又は今回算出時点taより前の所定時点から遡って所定の長さの期間であってもよい。
【0048】
組織に関する行動は、組織に関する経済的活動、非経済的活動及び社会的活動を含む。経済的活動は、例えば、組織が提供する商品(物品又はサービス)の購入、利用又は保有、組織に対する寄付、組織が催すイベントへの参加等を含む。非経済的活動は、例えば、組織の管理及び運営に関する作業、組織への技能又は資源の提供、組織との協力関係の締結、組織に関する物品又はサービスの提供、組織に関するイベントの実施、SNS(Social Networking Service)への組織に関する投稿等を含む。社会的活動は、組織が属する業界を活性化させる行動等を含む。
【0049】
データ取得部131は、例えば、記憶部12又はその他の記憶装置から、対象期間Tの行動データを取得する。行動データは、記憶部12又はその他の記憶装置において、データベースとして記憶されていてもよく、ブロックチェーン上に記憶されていてもよい。記憶部12又はその他の記憶装置には、人間によって入力された行動データ、又は自動的に収集された行動データが記憶されている。
【0050】
行動データは、例えば、ユーザのユーザIDと、ユーザが行った行動の種類と、ユーザが行動を行った日時と、を示す。さらに行動データは、ユーザが行った行動の量(回数、成果物の数量等)を示してもよい。
【0051】
投票権比率特定部134は、前回算出時点tbにおける対象ユーザの投票権比率(前回の投票権比率Obともいう)を特定する。投票権比率特定部134は、例えば、記憶部12において対象ユーザのユーザID及び前回算出時点tbに関連付けられた投票権比率を取得し、取得した投票権比率を前回の投票権比率Obとして特定する。
【0052】
前回の投票権比率Obは、今回が2回目の場合に初回に算出された投票権比率Oであり、今回が3回目以降の場合に1回前に算出された投票権比率Oaである。初回に算出された投票権比率O及び1回前に算出された投票権比率Oaには対象ユーザによる組織トークンの保有数が反映されているため、前回の投票権比率Obにも対象ユーザによる組織トークンの保有数が反映されているといえる。
【0053】
行動比率特定部135は、対象期間Tにおいて複数のユーザが行った組織に関する行動のうち対象ユーザが行った行動の比率である行動比率Vを特定する。行動比率特定部135は、例えば、データ取得部131が取得した対象期間Tの行動データに基づいて、対象ユーザの行動の量を複数のユーザの行動の量の合計値で除算した値を、対象ユーザの行動比率Vとして算出する。行動比率特定部135は、行動データにおける1回の行動を1として集計することによって対象ユーザの行動の量を特定してもよく、行動データが示す行動の量(回数、成果物の数量等)を集計することによって対象ユーザの行動の量を特定してもよい。これにより、情報処理装置1は、対象期間T中に複数のユーザの中で対象ユーザが行った組織に関する行動の量の程度を数値化することができる。
【0054】
投票権比率算出部132は、投票権比率特定部134が特定した前回算出時点tbにおける投票権比率Obと、行動比率特定部135が特定した対象期間Tにおける行動比率Vと、に基づいて、今回算出時点taにおける対象ユーザの投票権比率(今回の投票権比率Oaともいう)を算出する。
【0055】
図4、
図5(a)、
図5(b)は、投票権比率算出部132が今回の投票権比率Oaを算出する方法を説明するための模式図である。
図4、
図5(a)、
図5(b)において、縦軸は価値指標を表しており、横軸は組織トークンの発行数を表している。
【0056】
投票権比率算出部132は、価値指標として、データ取得部131が取得した価値指標データに基づいて、今回算出時点taの価値指標(今回の価値指標Paともいう)と、前回算出時点tbの価値指標(前回の価値指標Pbともいう)と、を用いる。
図4の例は今回の価値指標Paと前回の価値指標Pbとが等しい状態を表しており、
図5(a)の例は前回の価値指標Pbよりも今回の価値指標Paが大きい状態を表しており、
図5(b)の例は今回の価値指標Paよりも前回の価値指標Pbが大きい状態を表している。
【0057】
投票権比率算出部132は、組織トークンの発行数として、データ取得部131が取得した組織トークンの保有数に基づいて、今回算出時点taの複数のユーザによる組織トークンの保有数の総数(今回のトークン発行数Naともいう)と、前回算出時点tbの複数のユーザによる組織トークンの保有数の総数(前回のトークン発行数Nbともいう)と、を用いる。
【0058】
投票権比率算出部132は、例えば、以下の式(1)を用いて、複数のユーザのうちいずれかの対象ユーザ(ユーザi)の今回の投票権比率Oaiを算出する。
【0059】
【0060】
式(1)は、
図4、
図5(a)、
図5(b)において、組織の価値指標及びトークン発行数に対応する点線領域の面積に対する、行動比率Viに対応する領域Aの面積と前回の投票権比率Obiに対応する領域Bの面積との合計値の比率が、今回の投票権比率Oaiになることを表している。
【0061】
式(1)において、前回の投票権比率Obiは、投票権比率特定部134が特定した対象ユーザ(ユーザi)の投票権比率Obである。行動比率Viは、行動比率特定部135が特定した対象ユーザ(ユーザi)の行動比率Vである。なお、全ユーザの行動比率Viを合計すると1(比率がパーセントで定義される場合には100%)になり、全ユーザの投票権比率Obiを合計すると1になり、全ユーザの投票権比率Oaiを合計すると1になる。
【0062】
式(1)において、前回算出時点tbにおける投票権比率Obiには前回算出時点tbにおけるトークン発行数Nbが乗算されており、今回算出時点taにおける行動比率Viには今回算出時点taにおけるトークン発行数Naが乗算されている。これにより、情報処理システムSは、前回算出時点tbと今回算出時点taとの間で組織トークンの総数が変動した場合であっても、各時点の組織トークンの総数を今回の投票権比率Oaiに反映できる。
【0063】
考慮比率βは、今回の投票権比率Oaiに対する前回の投票権比率Obiと行動比率Viとの影響を指定するための係数であり、0より大きく1より小さい所定の数値である。考慮比率βが大きいほど今回の投票権比率Oaiに対する行動比率Viの影響が大きくなり、考慮比率βが小さいほど今回の投票権比率Oaiに対する行動比率Viの影響が小さくなる。考慮比率βは、記憶部12に予め記憶されていてもよく、情報処理装置1が投票権比率を算出する度に組織に参加するいずれかのユーザが利用する情報端末2において指定されてもよい。これにより、情報処理システムSは、今回の投票権比率Oaiに対する前回の投票権比率Obiと行動比率Viとの影響を調整できる。
【0064】
投票権比率算出部132が式(1)を用いた投票権比率の算出を繰り返すことにより、前回の投票権比率Obiに対象ユーザによる組織トークンの保有数が反映されるため、情報処理システムSは、対象ユーザによる組織トークンの保有数と、対象ユーザの行動比率と、に基づいて、対象ユーザの今回の投票権比率Oaを算出することができる。
【0065】
投票権比率算出部132は、今回算出時点taの価値指標(今回の価値指標Pa)と前回算出時点tbの価値指標(前回の価値指標Pb)との差に応じて、今回の投票権比率Oaiに対する、前回の投票権比率Obiと行動比率Viとの影響を異ならせてもよい。この場合に、投票権比率算出部132は、例えば、データ取得部131が取得した価値指標データが示す今回の価値指標Pa及び前回の価値指標Pbを特定する。
【0066】
投票権比率算出部132は、例えば、式(2)を用いて、式(1)における考慮比率βを決定する。
【0067】
【0068】
式(2)において、重み係数γは、今回の投票権比率Oaiに対する価値指標の変動の影響を指定する係数である。重み係数γが大きいほど今回の投票権比率Oaiに対する今回の価値指標Paと前回の価値指標Pbとの差の影響が大きくなり、重み係数γが小さいほど当該差の影響が小さくなる。重み係数γは、記憶部12に予め記憶されていてもよく、情報処理装置1が投票権比率を算出する度に組織に参加するいずれかのユーザが利用する情報端末2において指定されてもよい。
【0069】
式(2)によれば、今回の価値指標Paと前回の価値指標Pbとの差が大きいほど今回の投票権比率Oaiに対する行動比率Viの影響(すなわち考慮比率β)が大きくなり、当該差が小さいほど今回の投票権比率Oaiに対する行動比率Viの影響が小さくなる。これにより、情報処理システムSは、ユーザが行った行動の行動比率Viを組織の価値の変動に対する貢献とみなして、各ユーザの貢献に応じた投票権比率を設定することができる。
【0070】
別の方法として、投票権比率算出部132は、今回の価値指標Paが前回の価値指標Pbより大きい場合に行動比率Viを今回の投票権比率Oaiに反映し、今回の価値指標Paが前回の価値指標Pbより大きくない場合に行動比率Viを今回の投票権比率Oaiに反映しなくてもよい。投票権比率算出部132は、例えば、式(3)を用いて、式(1)における考慮比率βを決定する。
【0071】
【0072】
式(3)において、今回の価値指標Paが前回の価値指標Pbより大きい場合の考慮比率βは式(2)と同じであり、今回の価値指標Paが前回の価値指標Pbより大きくない場合の考慮比率βはゼロである。そのため、前回算出時点tbから今回算出時点taまでに組織の価値が上昇した場合には今回の投票権比率Oaiに対して行動比率Viを影響させ、組織の価値が上昇しなかった場合には今回の投票権比率Oaiに対して行動比率Viを影響させない。これにより、情報処理システムSは、組織の価値が向上した場合に限定して、ユーザが行った行動の行動比率Viを組織の価値の向上に対する貢献とみなして、各ユーザの貢献に応じた投票権比率を設定することができる。
【0073】
出力部133は、投票権比率算出部132が算出した今回算出時点taにおける複数のユーザそれぞれの今回の投票権比率Oaを、当該ユーザが利用する情報端末2に送信する。情報端末2は、情報処理装置1から受信した今回の投票権比率Oaを表示部上に表示する。また、出力部133は、投票権比率算出部132が算出した今回算出時点taにおける複数のユーザそれぞれの今回の投票権比率Oaを、当該ユーザのユーザID及び今回算出時点taと関連付けて記憶部12に記憶させる。これにより、情報処理システムSは、ユーザによる組織トークンの保有数及びユーザの行動比率に基づいて算出した今回の投票権比率Oaを、ユーザに通知するとともに、次回の投票権比率の算出に用いることができる。
【0074】
[情報処理方法のフロー]
図6は、本実施形態に係る情報処理装置1が実行する例示的な情報処理方法のフローチャートを示す図である。
図6のフローは、情報処理装置1が投票権比率を算出する際に開始される。今回が投票権比率の初回の算出である場合に(S11のYES)、データ取得部131は、初回算出時点tにおける、投票権比率の算出対象とする組織に参加している複数のユーザそれぞれによる、当該ユーザが当該組織に参加していることを示す組織トークンの保有数を取得する(S12)。
【0075】
投票権比率算出部132は、データ取得部131が取得した組織トークンの保有数に基づいて、初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを算出する(S13)。
【0076】
出力部133は、所定の方法で、複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを出力する(S14)。ここで出力部133は、投票権比率算出部132が算出した初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを当該ユーザが利用する情報端末2に送信する。また、出力部133は、投票権比率算出部132が算出した初回算出時点tにおける複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを、当該ユーザのユーザID及び初回算出時点tと関連付けて記憶部12に記憶させる。
【0077】
今回が投票権比率の初回の算出でない場合に(S11のNO)、データ取得部131は、各種データを取得する(S15)。ここでデータ取得部131は、今回算出時点ta及び前回算出時点tbそれぞれにおける、投票権比率の算出対象とする組織に参加している複数のユーザそれぞれによる、当該ユーザが当該組織に参加していることを示す組織トークンの保有数を取得する。また、データ取得部131は、今回算出時点ta及び前回算出時点tbそれぞれにおける、組織の価値に対応する価値指標を示す価値指標データを取得する。また、データ取得部131は、所定の対象期間Tにおける複数のユーザそれぞれが行った組織に関する行動を示す行動データを取得する。
【0078】
投票権比率特定部134は、前回算出時点tbにおける対象ユーザの投票権比率(前回の投票権比率Ob)を特定する(S16)。行動比率特定部135は、対象期間Tにおいて複数のユーザが行った組織に関する行動のうち対象ユーザが行った行動の比率である行動比率Vを特定する(S17)。
【0079】
投票権比率算出部132は、投票権比率特定部134が特定した前回算出時点tbにおける投票権比率Obと、行動比率特定部135が特定した対象期間Tにおける行動比率Vと、に基づいて、今回算出時点taにおける対象ユーザの投票権比率(今回の投票権比率Oa)を算出する(S18)。
【0080】
出力部133は、所定の方法で、複数のユーザそれぞれの投票権比率Oを出力する(S14)。ここで出力部133は、投票権比率算出部132が算出した今回算出時点taにおける複数のユーザそれぞれの今回の投票権比率Oaを、当該ユーザが利用する情報端末2に送信する。また、出力部133は、投票権比率算出部132が算出した今回算出時点taにおける複数のユーザそれぞれの今回の投票権比率Oaを、当該ユーザのユーザID及び今回算出時点taと関連付けて記憶部12に記憶させる。
【0081】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る情報処理システムSによれば、情報処理装置1は、ユーザが組織に参加していることを示す組織トークンの保有数と、ユーザが行った組織に関する行動の比率と、に基づいて、ユーザの投票権比率を算出する。これにより、情報処理システムSは、組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を変えることができる。
【0082】
[変形例]
本変形例に係る情報処理装置1は、2人のユーザの間で組織トークンが移転された場合に、各ユーザの投票権比率を変更する処理を実行する。以下、情報処理システムSにおいて上述の実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0083】
図7は、ユーザ間で組織トークンが移転される状況を説明するための模式図である。
図7は、対象ユーザ(ユーザi)から他ユーザ(ユーザj)に1つの組織トークンを移転する状況を表している。対象ユーザは、例えば、情報端末2において、他ユーザに組織トークンを移転するための操作を行う。情報端末2は、ブロックチェーンに、対象ユーザのユーザID及び他ユーザのユーザIDを示す移転指示を送信する。ブロックチェーンは、情報端末2が送信した移転指示に従って、対象ユーザが保有する組織トークンの保有者を他ユーザに変更する情報を記憶する。
【0084】
情報処理装置1において、投票権比率変更部136は、ブロックチェーン上で組織トークンが対象ユーザから他ユーザに移転されたことを検知する。投票権比率変更部136は、組織トークンが対象ユーザから他ユーザに移転されたことを検知したことを条件として、投票権比率特定部134が特定した投票権比率を用いて、以下のいずれかの方法で各ユーザの投票権比率を変更する。
【0085】
第1の方法として、投票権比率変更部136は、以下の式(4)を用いて、移転された組織トークンに対応する対象ユーザの投票権比率を、当該組織トークンの移転先である他ユーザの投票権比率に変更する。ここで移転された組織トークンに対応する投票権比率は対象ユーザから剥奪される。
【0086】
【0087】
投票権比率Obiは移転前の対象ユーザ(ユーザi)の投票権比率であり、投票権比率Oajは移転後の他ユーザ(ユーザj)の投票権比率である。すなわち、他ユーザには、対象ユーザの行動比率が反映された投票権比率が付与される。これにより、情報処理システムSは、組織トークンがユーザ間で移転された場合に、移転前の対象ユーザの行動比率が反映された投票権比率を、移転先の他ユーザに引き継がせることができる。なお、この変更により複数のユーザの投票権比率の合計値は変動しないため、複数のユーザのうち対象ユーザ及び他ユーザとは異なるユーザの投票権比率は変更されない。
【0088】
第2の方法として、投票権比率変更部136は、以下の式(5)を用いて、移転された組織トークンの数が反映された投票権比率であって対象ユーザの行動比率が反映されていない投票権比率を他ユーザに付与する。ここで移転された組織トークンに対応する投票権比率は対象ユーザから剥奪される。
【0089】
【0090】
移転トークン数Naiは対象ユーザ(ユーザi)から移転されたトークンの数であり、トークン発行数Naは組織トークンの総数であり、投票権比率Oajは移転後の他ユーザ(ユーザj)の投票権比率である。すなわち、他ユーザには、対象ユーザの行動比率が反映されていない、トークン発行数Na分の移転トークン数Naiの投票権比率が付与される。これにより、情報処理システムSは、組織トークンがユーザ間で移転された場合に、移転前の対象ユーザの行動比率を移転先の他ユーザに引き継ぐことなく、移転された組織トークンの数に応じた投票権比率を他ユーザに新たに付与することができる。
【0091】
この変更により複数のユーザの投票権比率の合計値が変動するため、投票権比率変更部136は、以下の式(6)を用いて、複数のユーザのうち対象ユーザ及び他ユーザとは異なる各ユーザの投票権比率を変更する。
【数6】
【0092】
移転トークン数Naiは対象ユーザ(ユーザi)から移転されたトークンの数であり、トークン発行数Naは組織トークンの総数であり、投票権比率Obiは移転前の対象ユーザ(ユーザi)の投票権比率であり、投票権比率Obkは移転前の各ユーザ(ユーザk)の投票権比率であり、投票権比率Oakは移転後の各ユーザ(ユーザk)の投票権比率である。これにより、情報処理システムSは、組織トークンの移転により対象ユーザから行動比率が反映された投票権比率が剥奪されたことに伴って、複数のユーザそれぞれの投票権比率を補正することができる。
【0093】
出力部133は、投票権比率変更部136が変更した複数のユーザそれぞれの投票権比率を、当該ユーザが利用する情報端末2に送信する。情報端末2は、情報処理装置1から受信した変更後の投票権比率を表示部上に表示する。また、出力部133は、投票権比率変更部136が変更した複数のユーザそれぞれの投票権比率を、当該ユーザのユーザIDと関連付けて記憶部12に記憶させる。
【0094】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0095】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0096】
S 情報処理システム
1 情報処理装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
131 データ取得部
132 投票権比率算出部
133 出力部
134 投票権比率特定部
135 行動比率特定部
136 投票権比率変更部
2 情報端末
【要約】
【課題】組織に対するユーザの貢献に応じて組織の意思決定に対するユーザの影響を変えられるようにする。
【解決手段】情報処理装置1は、第1時点における、組織に参加していることを示すトークンをブロックチェーン上で保有する複数のユーザが有する組織の意思決定に対する投票権のうち、複数のユーザのうち対象ユーザが有する投票権の比率である投票権比率であって、対象ユーザによるトークンの保有数が反映された投票権比率を特定する投票権比率特定部134と、所定の期間において複数のユーザが行った組織に関する行動のうち対象ユーザが行った行動の比率である行動比率を特定する行動比率特定部135と、第1時点における投票権比率と、期間における行動比率と、に基づいて、第1時点より後の第2時点における投票権比率を算出する投票権比率算出部132と、を有する。
【選択図】
図2