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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】中央工具保管デバイス
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20241129BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20241129BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q3/155 F
B65G1/00 501C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023507268
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2021075463
(87)【国際公開番号】W WO2022058417
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】102020211672.5
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508268090
【氏名又は名称】デッケル マホ プフロンテン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DECKEL MAHO Pfronten GmbH
【住所又は居所原語表記】DECKEL-MAHO-Strasse 1, 87459 Pfronten, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】ユンク、ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】トレンクル、ミヒャエル
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188588(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019102226(DE,U1)
【文献】特開昭62-259738(JP,A)
【文献】特開昭61-067108(JP,A)
【文献】特開昭58-192774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155、157
B23Q 7/04、14
B23Q 11/00
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工作機械のための工具供給のために構成された中央工具保管デバイス(WL)であって、
工具(W)を保管するための工具保管庫(S)であって、前記工具保管庫(S)は、それぞれが前後方向の回転軸を有するとともに、互いに前後に配置された少なくとも2つのホイールマガジン(S3)を有し、前記ホイールマガジン(S3)のそれぞれは工具(W)を保持するための工具保持位置を有する、工具保管庫(S)と、
前記工具を、前記中央工具保管デバイス(WL)から前記工作機械(WM)まで及び逆方向に搬送するために構成された少なくとも1つのモバイル搬送ユニット(E)と、
前記ホイールマガジン(S3)から工具を取り外し、戻すための少なくとも1つの可動式マニピュレータ(S12)と、
前記工具保管庫(S)と前記モバイル搬送ユニット(E)とに工具(W)を供給するための少なくとも1つの供給ステーション(S2)と、
を備え、
前記中央工具保管デバイス(WL)は、工作機械(WM)のために工具(W)を前記工具保管庫(S)から供給するために、マニピュレータ(S12)が、少なくとも1つの工具(W)を取り外して前記供給ステーション(S2)に移し替え、前記モバイル搬送ユニット(E)が前記マニピュレータ(S12)により移し替えられた前記工具(W)を前記供給ステーション(S2)から取り外すように構成され、
前記中央工具保管デバイス(WL)は、前記工具保管庫(S)内に工具(W)を保管するために、前記モバイル搬送ユニット(E)が少なくとも1つの工具(W)を前記供給ステーション(S2)に移し替え、前記マニピュレータ(S12)が、移し替えられた前記工具(W)を前記供給ステーション(S2)から取り外し前記工具保管庫(S)に加えるように構成され、
前記モバイル搬送ユニット(E)は、
前記供給ステーション(S2)との工具交換のための移し替えデバイス(E4)と、
前記移し替えデバイス(E4)を受け取るための、少なくとも1つの受け具(E6)を含む無軌道フロアコンベア(E8)と、
を有し、
前記移し替えデバイス(E4)は、フロアコンベア(E8)上に取り外し可能に取り付けられ、
前記移し替えデバイス(E4)は、
前記モバイル搬送ユニット(E)に工具(W)を保管するための複数の搬送ブラケットを含む可動式工具搬送バー(E2)と、
前記工具交換の間に、前記モバイル搬送ユニット(E)の移し替え位置で前記工具(W)を把持するための少なくとも1つの把持部(E5)と、
を有し、
前記移し替えデバイス(E4)は、少なくとも前記供給ステーション(S2)の方向と、縦方向とに可動である、
中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項2】
前記供給ステーション(S2)は、前記モバイル搬送ユニット(E)を前記供給ステーション(S2)で配置するための少なくとも1つの位置合わせ部(S10)を有し、前記少なくとも1つの位置合わせ部(S10)は、前記モバイル搬送ユニット(E)に組み込まれた位置合わせインタフェース(E10)に接続可能であり、
前記位置合わせ部(S10)は、前記位置合わせ部(S10)での配置のために、前記モバイル搬送ユニット(E)を前記移し替え位置において配置するよう構成されている、
請求項1に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項3】
前記モバイル搬送ユニット(E)は、移動自在であり、前記中央工具保管デバイス(WL)から少なくとも1つの前記工作機械(WM)まで及び逆方向に、前記工具(W)を搬送するよう構成され、
前記モバイル搬送ユニット(E)は、無人で前記モバイル搬送ユニット(E)を制御するための制御ユニット(E7)及び/又は外部制御デバイスへの無線接続のための通信デバイスを有する、
請求項1又は2に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項4】
前記供給ステーション(S2)は、可動式の工具供給バー(S4)を有し、
前記工具供給バー(S4)は、前記モバイル搬送ユニット(E)との工具交換のための第1位置(P1)から前記マニピュレータ(S12)との工具交換のための第2位置(P2)まで及び逆方向に可動であり、
前記工具供給バー(S4)は、少なくとも前記第2位置(P2)で、前記マニピュレータ(S12)の方向に旋回可能である、
請求項1に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項5】
可動式の前記工具供給バー(S4)は、前記工具供給バー(S4)上で工具(W)を配置するための少なくとも1つの供給ブラケット(S6)を含み、
前記供給ブラケット(S6)は、前記供給ブラケット(S6)内の前記工具(W)を強固に固定するとともに前記工具(W)の取り外しのために再び前記工具(W)を解放することができる保持デバイスを含み、
前記供給ブラケット(S6)は、前記モバイル搬送ユニット(E)を介して前記工具(W)を交換するために前記工具(W)上の工具インタフェース(S7)を露出させるよう構成されている、
請求項4に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項6】
前記モバイル搬送ユニット(E)の前記移し替えデバイス(E4)は、
前記工具(W)を前記工具供給バー(S4)から取り外すための前記移し替えデバイス(E4)の前記把持部(E5)が、前記工具インタフェース(S7)で前記工具(W)を囲い込み、かつ、囲い込まれた前記工具(W)を、工具搬送バー(E2)において前記工具供給バー(S4)及び/又は前記工具搬送バー(E2)のリフティング動作により、ピックアップするように構成され、
前記工具(W)を前記工具供給バー(S4)に移し替えるための前記移し替えデバイス(E4)の前記把持部(E5)は、前記工具(W)を、前記工具供給バー(S4)の上方で前記工具インタフェース(S7)に配置するとともに、前記工具(W)を、前記工具供給バー(S4)及び/又は前記工具搬送バー(E2)のリフティング動作により、前記工具供給バー(S4)の前記供給ブラケット(S6)に届ける、
請求項5に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項7】
前記マニピュレータ(S12)は、少なくとも前記工具供給バー(S4)との工具交換のための第1交換位置から前記ホイールマガジン(S3)との工具交換のための第2交換位置(WP2)まで及び逆方向に可動であり、
前記マニピュレータ(S12)は、前記少なくとも2つのホイールマガジン(S3)の回転軸と平行に配置されたガイドレール(S13)により、前記第1交換位置から前記第2交換位置(WP2)まで及び逆方向に可動である、
請求項4に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項8】
前記工具供給バー(S4)は、少なくとも前記第2位置(P2)で、前記供給ステーション(S2)の表面に直交する回転軸周りで、元の位置から、前記マニピュレータ(S12)との前記工具交換のために前記工具供給バー(S4)を供給するための引き渡し位置(P2b)に移し替え角度の分だけ回転させられ、
前記元の位置にある前記工具供給バー(S4)の元の角度から開始して前記移し替え角度は、前記マニピュレータ(S12)の方向に45°から120°の間の回転角度である、
請求項4に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項9】
前記少なくとも2つのホイールマガジン(S3)は互いに前後に取り付けられ、前記供給ステーション(S2)の表面に直交して方向付けられた共通の回転軸を有し、
各ホイールマガジン(S3)は工具(W)の取り外し及び装填のために独立して回転でき、
各ホイールマガジン(S3)は、前記工具(W)を支持するために、径方向における前記工具の長手軸に沿って工具(W)を収容し、
前記ホイールマガジン(S3)はフレームシステム(S17)を介してモジュール式に相互交換可能であり、
互いに前後に取り付けられるホイールマガジン(S3)の数は増やすことができる、
請求項1に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項10】
前記供給ステーション(S2)の前記少なくとも1つの位置合わせ部(S10)は、前記供給ステーション(S2)で前記モバイル搬送ユニット(E)を留めるとともに位置合わせするために前記供給ステーション(S2)に沿って力学的接続部を介して前記モバイル搬送ユニット(E)の動きを固定するように構成され、
前記移し替えデバイス(E4)は、前記供給ステーション(S2)の方向への動きのために前記モバイル搬送ユニット(E)を固定することにより解放され、又は、前記モバイル搬送ユニット(E)は、前記供給ステーション(S2)の方向への前記移し替えデバイス(E4)の動きの間に固定されている、
請求項2に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項11】
前記供給ステーション(S2)は、前記モバイル搬送ユニット(E)に組み込まれた位置合わせインタフェース(E10)へ前記供給ステーション(S2)の位置合わせ部(S10)を接続することにより、又は、中央サーバシステムにより、少なくとも1つの工作機械(WM)が必要とする工具(W)に関する工具データ及び/又は前記モバイル搬送ユニット(E)から移し替えられる工具(W)に関する工具データを受け取り、前記供給ステーション(S2)は、受け取った前記工具データを内部データメモリに転送するよう構成され、及び/又は
前記供給ステーション(S2)は、前記内部データメモリに含まれる前記中央工具保管デバイス(WL)の工具在庫と受け取った工具データを比較するよう構成され、
必要とされる工具(W)を前記中央工具保管デバイス(WL)の前記工具在庫に見つけると、前記供給ステーション(S2)は、前記必要とされる工具(W)を含む前記ホイールマガジン(S3)と、前記マニピュレータ(S12)と、前記供給ステーション(S2)の前記工具供給バー(S4)とを制御して、前記必要とされる工具(W)を前記ホイールマガジン(S3)から前記モバイル搬送ユニット(E)に移し替えさせ、
前記供給ステーション(S2)は、前記モバイル搬送ユニット(E)から受け取った工具(W)の工具データを前記工具在庫に含め、前記ホイールマガジン(S3)と、前記マニピュレータ(S12)と、前記供給ステーション(S2)の前記工具供給バー(S4)とを制御して、前記受け取った工具(W)を前記ホイールマガジン(S3)の前記工具保持位置に挿入させる、
請求項4から8のいずれか一項に記載の中央工具保管デバイス(WL)。
【請求項12】
請求項4から8のいずれか一項に記載の中央工具保管デバイス(WL)により複数の工作機械(WM)のために工具を供給する方法であって、
ホイールマガジン(S3)の工具保持位置から前記供給ステーション(S2)の前記工具供給バー(S4)に前記マニピュレータ(S12)により工具(W)を移し替える工程と、
前記工具供給バー(S4)から前記モバイル搬送ユニット(E)に前記工具(W)を移し替える工程と、
前記中央工具保管デバイス(WL)から前記工作機械(WM)のうち少なくとも1つまでモバイル搬送ユニット(E)により前記工具(W)を搬送する工程と
を備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の中央工具保管デバイス(WL)による複数の工作機械(WM)からの工具の中央的保管のための方法であって、
前記工作機械(WM)のうち少なくとも1つから前記中央工具保管デバイス(WL)まで前記モバイル搬送ユニット(E)により工具(W)を搬送する工程と、
前記モバイル搬送ユニット(E)から前記供給ステーション(S2)の前記工具供給バー(S4)に前記工具(W)を移し替える工程と、
前記工具供給バー(S4)からホイールマガジン(S3)の前記工具保持位置に前記マニピュレータ(S12)により前記工具(W)を移し替える工程と
をさらに備える、方法。
【請求項14】
前記マニピュレータ(S12)の方向に、前記第2交換位置(WP2)にある前記マニピュレータ(S12)により前記工具(W)を交換すべく前記供給ステーション(S2)の前記工具供給バー(S4)を回転させる工程と、
前記供給ステーション(S2)の位置合わせ部(S10)に前記モバイル搬送ユニット(E)を配置する、又は、前記位置合わせ部(S10)から前記モバイル搬送ユニット(E)を取り外す工程と、
前記工具保管庫(S)から移し替えられる、又は前記工具保管庫(S)からピックアップされる前記工具(W)の工具データを取得し、前記工具データをデータメモリへ転送する工程と、
をさらに備える、請求項7に従属する請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の中央工具保管デバイス(WL)と、少なくとも1つの工作機械(WM)とを備える製造システムであって、
前記中央工具保管デバイス(WL)は、少なくとも1つの前記工作機械(WM)のために工具(W)を供給するため、前記工具保管庫(S)から工具(W)を取り外し、前記供給ステーション(S2)を介してモバイル搬送ユニット(E)に前記工具(W)を移し替えるよう構成され、
前記モバイル搬送ユニット(E)は、前記中央工具保管デバイス(WL)と前記工作機械(WM)とに配置可能であり、かつ、受け取った前記工具(W)を前記少なくとも1つの工作機械(WM)まで搬送し、前記工具(W)を前記工作機械(WM)に移し替えるよう構成され、
前記中央工具保管デバイス(WL)は、前記少なくとも1つの工作機械(WM)からの工具(W)を前記中央工具保管デバイス(WL)に保管するために、前記モバイル搬送ユニット(E)により前記少なくとも1つの工作機械(WM)から工具(W)を取り外し、前記モバイル搬送ユニット(E)によって前記中央工具保管デバイス(WL)まで前記工具(W)が搬送された後に前記中央工具保管デバイス(WL)の前記供給ステーション(S2)に前記工具(W)を移し替え、前記供給ステーション(S2)から前記工具(W)を取り外し、前記工具保管庫(S)に前記工具(W)を移し替えるよう構成されている、
製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、1又は複数の工作機械との工具交換のためのホイールマガジンを含む工具保管庫を備えた中央工具保管デバイスに関し、交換対象の工具は、工具保管庫から対応する工作機械まで、及び逆方向に移動自在なモバイル搬送ユニットにより少なくとも部分的に自動で搬送できる。
【背景技術】
【0002】
工作機械から工具を保管する又は工作機械のために工具を供給するための、先行技術から公知である一般的な工具保管デバイスは、通常、1又は複数の工具マガジンを備える。それら1又は複数の工具マガジンは、シェルフシステムにより、又は任意の他の整理して並べられた工具保持デバイスが複数の工具を固定することにより、対応する工具マガジンに工具を固定し配置するための工具マガジンに組み込まれた保持機構により、及び工具マガジンと工作機械との間での工具交換を可能とする可動式交換デバイスにより実現される。
【0003】
EP0144912A2は、ミリング/ドリル機械のための工具保管デバイスを示しており、同工具保管デバイスは、水平方向に取り付けられたラジアルマガジン内の工具を供給し、スライドレールを介して工作機械の工具主軸に接続されている。スライドレール上で可動であるグリッパーのヘッド部分がさらに、ラジアルマガジン及び工作主軸から、又はそれらへ工具を取り外すこと、届けること、及び搬送することを可能とする。
【0004】
DE102011082050A1も工作機械上で工具を交換及び挿入又は準備するための工具交換システムを示しており、同工具交換システムも垂直方向に取り付けられた回転可能なホイールマガジンを含む。工具はホイールマガジンにおいて、それら工具の本体の大きい一部がホイールマガジンから径方向に突出し、したがって同じくシステムに含まれるマニピュレータにより取り外せるようにそれら工具の長手軸に沿って保持される。このマニピュレータも、水平面で動かせるリニアガイドレール上に取り付けられ、これにより、ホイールマガジンから取り外された工具を工作機械まで搬送でき、工作機械から受け取った工具をホイールマガジンに戻すことができる。
【0005】
それらは多数の工具を保管する性能を有していて、また必要な場合にはそれらを工具交換デバイスにより迅速に、また大抵の場合には自動で、対応する工作機械が利用可能な状態とする性能を有しているので、現在の工具保管デバイスは既に、加工のためにより一層多くの工具を必要とする今日の工作機械におけるますます複雑な連続処理にとって高い価値を有している。
【0006】
しかし先行技術の工具保管デバイスの場合、大抵の場合、特に保管対象の工具の数が増加していることにより、工具保管庫を効率よく用いることがもはやできないという問題が生じる。例えば工具保管デバイスは通常、1台の工作機械のみのために、又は少なくとも2台又は3台程度の工作機械のみのために多数の工具を保管し、このことの結果として、対応する工具を複数回取得することにより不要な保管時間及びさらなる費用が生じる。他方、経験から次のようなことが分かっている。つまり、今日の工具保管施設の大規模な中央管理は大きな問題も抱えており、特にその理由は、工具保管施設といくつかの工作機械との間での大抵の場合において剛性であり、また多くの場合において互いに干渉し合う接続要素により、対応する工具搬送及び交換通路は直ぐに非効率的となる、ということである(例えば、EP0144912A2のスライドレールを参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本願発明の課題は、先行技術の前述の問題を解決し、可能な限り効率よく、及び簡略化した形態で、保管済みの工具を複数の工作機械へ分配することを可能とする、又は複数の工作機械からの工具を保管することを可能とする、可能な限り中央的に管理する工具保管デバイス、及び中央工具保管デバイスにより工具を交換するための方法を供給することである。また課題は、工具保管デバイスが占有する領域を工具交換の上述した効率に関連して可能な限り最適に使用することができるよう中央工具保管デバイスの構造を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した問題を解決すべく、独立請求項の特徴が提案される。従属請求項は、本願発明の好ましい実施形態に関する。
【0009】
複数の工作機械のための工具供給のための中央工具保管デバイスは、垂直方向に、平行に、及び互いに前後に配置された少なくとも2つのホイールマガジンを含む工具保管庫を備えていてもよく、工具は、ホイールマガジンに組み込まれた、径方向に位置合わせされた工具保持位置に載置されてもよく、工具は堅固に固定されており、それぞれが保持機構によって重力による抜け落ちから保護される。工具保管庫での工具の効果的な取り外し及び保管のために、好ましくはホイールマガジンの外側表面に隣接してマニピュレータを配置することもできる。好ましくはマニピュレータは、少なくとも2つのホイールマガジンの共通の回転軸と平行に可動であり、したがって、ホイールマガジンの工具保持位置からの工具供給のために工具を取り外しでき、又はそれらを工具保持位置での保管のために配置でき、またそれらを上述した軸に沿って搬送することを可能とする。さらに1又は複数の工作機械との効率的な工具交換のために工具保管デバイスは、工具保管デバイスと工作機械との間で移動自在である少なくとも1つのモバイル搬送ユニット、及び工具保管デバイス及びモバイル搬送ユニットのために工具を供給するために用いられる少なくとも1つの供給ステーションを提供してもよい。この場合、工具保管デバイスは好ましくは、工具保管デバイスから工作機械に工具を移し替えるために、まず、マニピュレータによりホイールマガジンから取り外された少なくとも1つの工具を供給ステーションがピックアップし、モバイル搬送ユニットのためにそれを利用可能な状態にできるように構成されてもよい。これに続いてモバイル搬送ユニットは、供給ステーションにより供給された工具をモバイル搬送ユニットに組み込まれた移し替えデバイスにより自分の方に移し替えることができ、それを何らレールを用いず、すなわち広大なレール網が引き起こす更なる待ち時間なしで、工作機械まで搬送できる。同様に、同処理は好ましくは工具保管庫に工具を保管するために逆順序で制御されてもよく、これによりモバイル搬送ユニットは、1又は複数の工作機械から工具を取り、それらを搬送して供給ステーションに移し替えることにより工具保管庫がアクセス可能である状態とし得る。さらにマニピュレータは好ましくは、モバイル搬送ユニットにより移し替えられる工具を例えば供給ステーションの移し替えデバイスからピックアップし、効率的な保管のために、それらをホイールマガジンの空いている工具保持位置に加えることもできる。
【0010】
したがって、中央工具保管デバイスのこの設計は、特に複数の工作機械のために工具を供給し、それらからの工具を保管するための効率的かつ同時に費用を節約できる方法を提供する。特に、少なくとも1つの移動自在なモバイル搬送ユニットにより工具を移し替え搬送することにより、最先端の技術と比べてより多くの工作機械に工具を供給するより単純かつ同時により高速な方法を実現する:モバイル搬送ユニットの自由な動きにより、個々の工具の移し替え及び搬送は、例えば、中央レールシステムの場合にそうであるように1つずつ順番に実行される必要がなくなり、例えばいくつかのモバイル搬送ユニットが同時に動作することにより独立かつ同時進行で実行され得る。このことは、一方では中央工具保管デバイスにおける処理待ち時間、特に工具保管時間を大幅に短縮でき、したがって、さらなる工具及び工具保管デバイスが必要ではないので工具をより効率よく使用することができ、費用を節約できるという結果ももたらす。他方、工具保管デバイスのモバイル搬送ユニットは、工具保管デバイス及び工作機械の数に依存せず、また好ましくは完全に自動で工具交換を実行できるというさらなる利点を有している。レール又は同様のガイドデバイスを備えたシステムと対照的に、モバイル搬送ユニットを備えた工具保管システムにおいては、既存の複雑なガイド網を観察する必要がなく、さらなる工具保管ユニット又は工作機械を簡単にモジュール式に加える、又は取り外すことができる。結局は、対応する工具保管デバイス及び工作機械のために用いられる作業空間を、本明細書で示す工具保管デバイスにより最適に利用することもできる。
【0011】
交換処理の間の作業者及び保管済みの工具又は保管済みの要素の保護を確実にするために、工具保管庫、好ましくはホイールマガジン及びマニピュレータの両方が常に、壁部が設けられたベースフレームにより少なくとも2つの側面から取り囲まれてもよい。好ましくはベースフレームは、工具保管デバイス全体を囲い込み、少なくとも、内部に囲い込まれた最も高いホイールマガジンよりも高く延在してもよく、これにより外部に立っている作業者を、起こるかもしれない工具保管デバイスの不具合の間であっても完全に保護することができる。またベースフレーム及びその壁部は、軽金属、硬化プラスチック、又は他の軽量かつ堅牢な材料で作られてもよく、壁部は好ましくは、ネジ、凹凸部、又は他の取り外し可能な接続技術で一体的にベースフレームに取り付けられてもよい。取り外し可能な接続技術は、工具保管庫内でさらなるホイールマガジンを加える、又は取り外すために、ベースフレームにより囲い込まれた領域を容易に変更し、したがって必要とされる保管領域に最適に適合させることができる利点を有している。
【0012】
好ましくは、ベースフレームにより囲い込まれた領域内に位置するホイールマガジンは、それらの長手軸がベースフレーム壁部の1つと平行な状態で、特に好ましい実施形態においてはベースフレームの後壁部又は前壁部と平行な状態で配置することもできる。言い換えると、ホイールマガジンを直立した状態で保持し、好ましくはベースフレームの前壁部から後壁部まで互いに前後に配置することができ、工具保管庫の最も高いコンパクト性を達成することができる。ホイールマガジンのその配置は、規定された間隔で列を成すように配置された軸受けにより、例えば中心に位置するラジアル軸受けにより、又は三角形の枠上に位置する三点軸受けにより、さらに確実にでき、ここでホイールマガジンは、起こり得る取り外し、又は別の工具保管庫への交換のために常に取り外し可能に固定されてもよい。ここで当然、個々のホイールマガジンの取り付けは一点又は三点軸受けシステムに限定されず、例えば四点又は多点軸受けシステムにより等しく実現できる。さらに、対応する軸受けを保持するフレームを追加でベースフレームの要素に、又は既存の軸受けフレームに接続することができ、このことは、ホイールマガジンの安定した保持を確実にし、それらを存在工具保管システムに対する拡張として使用することを可能とする。
【0013】
工具保管庫の各ホイールマガジンの工具保持位置は好ましくは、各ホイールマガジンの回転軸周りで均等かつ径方向に配置されてもよく、すなわち、工具を挿入するために使用される保持位置は、好ましくは常に対応するホイールマガジンの径ベクトルと平行な方向を向く。このことは、後に挿入される工具を径方向に長手軸に沿って固定することもでき、したがって保管庫にコンパクトに挿入することができるという利点を有する。同じく、保管済みの工具が保管の間に、特にホイールマガジンを動かす場合に工具保持位置で堅固に配置されたままとなり、それでいて工具を供給するための機構の単純な解放を可能とするように、戻り止め接続、歯止め機構、又は連結機構等の解放可能な保持機構を工具保持位置に組み込み得る。
【0014】
特に好ましい実施形態において、個々のホイールマガジンは、互いに独立して回転させることもでき、好ましくは、保管の間、保管済みの工具の少なくとも一部、いわゆる工具インタフェースがマニピュレータのための取り外し部分として露出されるよう工具を保持できる。このやり方で、工具保管庫へ、又は工作機械移し替えへと挿入される前に受け取った工具を例えばさらなるセンサにより識別するのに用いられる工具領域を同時に規定しつつ、マニピュレータによる工具の取り外しの簡単な可能性を実現できる。
【0015】
好ましくは、上記の工具インタフェースは、凹んだシャンク状のテーパ、急なテーパ、又はモールステーパに対応してもよい。
【0016】
好ましくはマニピュレータは、特に好ましくは互いに前後に配置されたホイールマガジンの回転軸に沿って横方向にベースフレームに取り囲まれる領域内で配置されてもよく、ここで特にマニピュレータと、それぞれのホイールマガジンの工具保持位置との間の距離を最短にでき、したがって工具をピックアップする/届ける間のマニピュレータの動きの時間も最短にできる。またマニピュレータは好ましくは、例えば、関連付けられたホイールマガジンの回転軸と平行に延在する、空気圧で、電気的に、又は機械的に制御可能なリニアガイドレールにより直線軸上で可動であり、これによりマニピュレータは、工具の取り外し又は移し替えのために使用されるホイールマガジンの真正面に配置でき、したがって最も高い効率で動作する。
【0017】
さらにリニアガイドレールを用いることは、工具交換の費用及び時間をさらに最小化できるという利点がある。例えば、ホイール保管庫及び可動式マニピュレータの完全に自動化された実施形態において、リニアガイドを搭載したシェルフマガジン等の従来の工具マガジン機器と比べて大きな時間的利点を得られるよう、工具交換処理の間に同時進行で両方の要素をタイミングよく動かすこと、又は配置することができる。同様に、同時進行処理により得られる自由度を利用して、マニピュレータ等の重要な、通常高コストを要する要素の構造をさらに簡略化し、したがって、工具保管庫のための供給費用を最小限まで削減することもできる。特に好ましい実施形態において、例えば、マニピュレータは単に、ラジアルマガジンのホイール軸と平行に位置合わせされ回転方向に可動である一次元のマニピュレータとして設計されてもよく、これにより、工具交換処理の効率に影響を大幅に与えることなく、より複雑なマニピュレータの設置と比べて費用を大幅に削減できる。
【0018】
またマニピュレータは好ましくは、ホイールマガジン又は供給ステーションから取り外された工具の同時搬送のための少なくとも1つのマニピュレータ受け具を有し得る、工具保管デバイスのホイールマガジン又は供給ステーションから工具を取り外す、又はそこに工具を移し替えるための可動式旋回アーム上に設けられた少なくとも1つの把持デバイスを備える。好ましくは把持デバイスは、工具マガジン又は供給ステーションの工具を、露出した工具インタフェースにおいて把持できるダブルグリッパーとして、又はいくつかの受け具が設けられた交換可能なグリッパーとして設計されていてもよい。好ましくはグリッパーは、旋回又は回転する動きにより工具保持位置から工具をピックアップし、又は工具保持位置に工具を挿入し、マニピュレータの処理の間にマニピュレータ受け具内に工具を安全に保管する。
【0019】
特に好ましい実施形態において、交換対象の工具を分析するためのセンサをマニピュレータに取り付けることもできる。例えばセンサは、光学的、音響的、又は機械的センサであってもよく、付加的な分析ソフトウェアと共にカメラ等のいくつかの要素を含み得る。そのようなセンサの利点は、保管対象又は供給対象の工具の状態を実際の工具交換処理の前にチェックでき、これにより、摩耗又は故障した部品を効果的に見つけ出せるということである。同様にセンサは、取り外し済みの、又は供給対象の工具の正確さを確認するのに用いることができ、これにより効果的かつ信頼性の高い安全性チェックを工具交換処理の間に行うことができる。
【0020】
好ましくはマニピュレータはさらに、工作機械のために工具を供給するために、又は工作機械から工具を保管するために、工具保管デバイスの供給ステーションとの工具交換のための第1交換位置から、少なくとも、互いに前後に配置されたホイールマガジンのうち少なくとも1つとの工具交換のための第2交換位置まで、少なくとも行ったり来たりしてリニアガイドデバイスにより動かされるよう構成されていてもよい。これにより、横断処理を好ましく自動で実行でき、したがって、工具保管デバイスと工具保管デバイスの供給ステーションとの間で工具の効率的な交換が可能となる。
【0021】
したがって、マニピュレータにより、工具保管庫の少なくとも2つのホイールマガジンから工作機械が必要とする工具を取り外すことができ、それら工具を、モバイルユニットへのさらなる供給のために供給ステーションに移し替えることができ、又は、供給ステーションにおいてモバイルユニットから受け取った工具をピックアップでき、それら工具をホイールマガジンに加えることができる最適な中間部品を設け得る。特に好ましくはこの処理は、工作機械への工具供給のために、リニアガイドデバイスを通じて少なくとも第1交換位置にマニピュレータが動かされ、自身に組み込まれた把持デバイスによるリフティング動作を介してホイールマガジンの工具保持位置から必要とされる工具を取り外すように実現されてもよい。それから、マニピュレータは好ましくは、使用される工具が常に把持デバイスの対応するマニピュレータ受け具に堅固に固定された状態で第1交換位置へ動くことができ、例えばマニピュレータ受け具から工具を解放することにより、再び把持デバイスを用いて工具を供給ステーションに移し替え得る。逆も当てはまるが、しかし、マニピュレータを工具保管庫での工具の保管のために第1交換位置に動かすこともでき、これによりこの場合、供給ステーションにより供給される工具は、把持デバイスがピックアップでき、続いて行われる第1交換位置までの搬送、及びホイールマガジンの対応する工具保持位置における工具の配置を通じてマニピュレータにより工具保管庫へ加えられ得る。
【0022】
マニピュレータと供給ステーションとの間での工具の移し替え又は取り外しのために供給ステーションは好ましくは、工具供給バーでもあり得る可動式供給バーを備え得る。好ましくは供給バーは、少なくとも1つの組み込まれた供給ブラケットにより供給バー上に工具を配置してもよく、したがって、最適に工具をマニピュレータに与えてもよく、又は工具を供給バーに移し替えるための最適な移し替え位置を与え得る。供給バー内で工具を固定するために、供給ブラケットは好ましくは、ホイールマガジンの前述した保持機構と同様に保持デバイスを含み得、これにより、工具移し替えの際に単純な解放を行うことを同時に確保しつつ、供給バーに移し替えられた工具は強固かつ堅固に保持され得る。
【0023】
同様に少なくとも1つの供給ブラケットは好ましくは、工具がピックアップされるときにその少なくとも1つの供給ブラケットが、好ましくはホイールマガジンの工具保持位置における該当するものと同じである工具インタフェースを露出させ、工具インタフェースが等しく、マニピュレータによるピックアップのために用いられ得るが、モバイルユニット等の他の要素にも用いられ得るように構成され得る。特に後者の特徴は、全ての処理工程において同じ方式で規定される工具インタフェースであれば、個々の移し替えデバイスとの対応する工具の相互動作面が明らかに示されることになり、例えば工具を分析するのに用いられるさらなるセンサのために工具のより正確な配置を可能とし、したがって、工具交換処理がさらに最適化されるという利点を有する。
【0024】
特に好ましい実施形態において、供給バーはさらに、少なくとも、モバイルユニットとの工具交換のための第1位置と、工具保管庫に配置されたマニピュレータとの工具交換のための第2位置との間で可動である。このことにより、工具保管庫からモバイルユニットへの工具の供給、又はモバイルユニットから対応する工具保管庫への工具の供給を最適に行うことが確保され、さらに、モバイルユニットのピックアップ位置と、マニピュレータの持ち上げ位置との間の高さの違いが補われる。
【0025】
好ましくは、よって供給バーは特に垂直方向に可動であってもよく、その場合、供給バーはこの目的のためにチェーン又はレールガイド等の供給ガイド上に配置されてもよく、したがって依然として、上述した交換位置間で供給ガイドの動きを介して正確かつ制御可能に可動である。
【0026】
同様に、特に好ましい実施形態において、マニピュレータが工具を最適に受け取り保持するために、供給バーは少なくとも第2交換位置でマニピュレータの方向に旋回又は回転してもよく、この場合、モバイルユニットに対するマニピュレータ又はホイールマガジンの工具保持角度のあらゆる違いを最適に補正でき、したがって、マニピュレータ又はホイールマガジンは、工具保管デバイス内でのそれらの設計及び配置に関してより大きな自由度が与えられ得る。
【0027】
好ましくは、供給バーの旋回又は回転により生じる供給バーの移し替え角度は、マニピュレータの方向に45°~120°の回転角度に対応してもよく、特に好ましい例においては80°~110°の回転角度に対応し得る。この場合、ここで特定される移し替え角度は、供給バーの元の位置、すなわち、供給バーが第2位置まで動かされ、好ましくはそれでいて第1位置における向きと同じ向きである位置、マニピュレータとの工具交換のために用いられる移し替え位置、すなわち、供給バーが第2位置まで動かされ、好ましくはそれでいて例えば第1位置における向きと同じ向きである位置、及びマニピュレータとの工具交換のために用いられる引き渡し位置からの角度変化である。同様に好ましい場合においては、移し替え角度の回転軸は、供給ステーションの表面に直交して位置することもでき、これにより、交換対象の工具は供給ステーションと平行にしか回転できず、したがって、何らかの不具合が起こった際にも供給ステーションの要素から損傷を受け得ない。
【0028】
さらに工具保管デバイスの供給ステーションは好ましくは、工具保管デバイスの前方及び/又は後方に配置されてもよく、ホイールマガジンの回転軸と直交して供給バーと共に位置合わせされてもよい。言い換えると、供給ステーションの長手軸は、個々のホイールマガジンの長手軸と平行になるよう設計されてもよく、これにより、ホイールマガジンのベース部分、マニピュレータの動き、及び供給ステーション又は供給レールの長手軸を90°の倍数のみで互いに位置合わせさせられる。特にそのような設計は、効率的な、すなわち高速な連続処理の構築を可能とし、この場合、工具保管デバイスが占有する領域は、最小限まで削減できる。
【0029】
好ましくは、供給ステーションは工具保管デバイスの側面全体をさらに備えてもよく、この場合、供給ガイドを含む供給バーが、供給ステーションの中心に配置されてもよい。さらに、特に好ましい実施形態において、供給ステーションはその近くの移し替え位置でのモバイル搬送ユニットの正確な配置のための少なくとも1つの位置合わせ部を備えてもよく、これにより、第1位置での供給バーとの工具交換のためにモバイル搬送ユニットはまず、モバイル搬送ユニットを用いた工具の移し替え又は取り外しが開始され得る前に位置合わせ部まで動かされなくてはならない。そのような実施形態により、モバイル搬送ユニットは対応する供給ステーションに正確に配置されることができ、このことは、供給ステーションとモバイル搬送ユニットとの間での工具交換処理の正確性及び速度を最適化するのみであり、またさらに、重い工具を移し替える際に特にモバイル搬送ユニットを安定化させる。
【0030】
例えば、好ましい実施形態において、モバイル搬送ユニットはさらに自身を、モバイル搬送ユニットに配置された位置合わせインタフェースを通じて位置合わせ部に接続してもよく、この場合、その接続は、ポジティブロック要素等により機械的に、電気的に、又は他のロック解除可能な方式で確立されてもよい。また、供給ステーションの位置合わせ部とモバイル搬送ユニットの位置合わせインタフェースとの間の接続は、特に供給ステーションの長手軸に沿ったモバイル搬送ユニットの動きを妨げるよう構成されていてもよく、これにより、自身の損傷を引き起こしかねないモバイル搬送ユニットのずれを防ぎ、工具交換処理の間のモバイル搬送ユニット上の重み分布をさらに安定化させる。
【0031】
さらに、モバイル搬送ユニットは好ましくは、位置合わせインタフェースを供給ステーションの位置合わせ部に配置しつつ、例えば誘電により電気的に、又は光学的に供給ステーションから信号を受け取るよう構成されてもよく、この場合、供給レールへの工具の移し替え又は取り外しが、モバイル搬送ユニットのために開始され得る。特に、そのような信号経路によって、工具交換処理のさらなる安全性機能が可能となり、これにより、モバイル搬送ユニットの配置が不正確である場合には、特に工具保管デバイスの自動作業において、工具移し替えが停止されてもよく、好ましくはある時間の経過後、エラーメッセージを出すことができる。
【0032】
供給レールとの工具交換のために、モバイル搬送ユニットは好ましくは移し替えデバイスを備えてもよく、その移し替えデバイスは少なくとも1つの可動式搬送バーを有し、その少なくとも1つの可動式搬送バーは、モバイル搬送ユニット上で工具を支持するための複数の搬送ブラケットと、工具交換の間に工具を把持するための少なくとも1つの把持部とを備えた工具搬送バーであり得る。この文脈で、移し替えデバイスは好ましくは、モバイル搬送ユニットの移し替え位置において少なくとも供給ステーションの方向に、すなわち特に好ましい実施形態においては垂直な回転軸を有して、垂直方向と併せて供給レールの方向に水平方向に可動であり得る。それだけの数の自由度によって、供給レールにおいて工具をピックアップするための、又は工具を移し替えるための効率的な方法を実現できる。
【0033】
好ましい実施形態において、モバイル搬送ユニットはまず自身を、好ましくは供給ステーションの方向に、位置合わせインタフェースにより供給ステーションの位置合わせ部の正面に位置合わせし、この場合、モバイル搬送ユニットは移し替え位置に正確に配置される。次の工程において、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスはそれから、工具交換処理に応じて把持部及び任意の保管対象の工具と共に供給バーの方向に工具搬送バーを動かすことができ、これにより、把持部又は保管対象の工具は最終的に、工具供給バーの対応する供給ブラケットに配置される。この文脈で、把持部は、例えば多次元で可動であるマニピュレータアームにより各交換対象の工具を個別に搬送するよう、又は工具搬送バーに載置されている全ての工具を同時に搬送するよう設計され得る。特に好ましい実施形態において、把持部は、各搬送ブラケットが個別の、別々に制御可能な把持要素を備えるよう、工具搬送バーの搬送ブラケットに連結されてもよく、この場合、工具供給バーの供給ブラケット上方に工具搬送バーを配置することにより、選択された工具のみを同時に取り外すこと、又は移し替えることができる。
【0034】
そして、保管対象の工具は、(搬送バー下方から)好ましくは供給ブラケットに垂直方向に近づくことで、把持部を通じてそれらの工具インタフェースが供給ブラケットに挿入され得る。したがって、取り外しストローク/ピックアップストロークは、中央工具保管デバイスの入力バー又は工作機械により行われる。好ましいさらなる発展形において、搬送バーのみが上方から垂直方向に供給バーに近づくこともでき、又は特に好ましいさらなる発展形において、供給バー及び搬送バーが(例えば同時に)近づくことができる。工作機械への工具の供給のために、前述の移し替え処理を逆の手順で実行することができ、したがって、供給バーから工具を取り外し、その工具をモバイル搬送ユニットの搬送バーに移し替えるために前述の移し替え処理を逆の手順で用いることができる。好ましくは、移し替えデバイスはいくつかの側面に位置する搬送バーを備えてもよく、これにより、工具交換に使用される搬送バーを、工具交換処理内での移し替えデバイスの単純な回転により迅速かつ効率よく変更できる。最終工程において、移し替えデバイスは好ましくは、工具交換の後にその元の位置に戻ってもよく、この場合、工作機械への供給のために取り上げられた工具は搬送ブラケットに固定でき、したがって、対応する工作機械への搬送のために留められる。同様に、工具インタフェースは、供給ステーションの位置合わせ部との接続が、搬送バーを元の位置に戻すよう動かすことによって解除でき、したがって、次のターゲット、特に工作機械又は別の工具保管デバイスの方向にモバイル搬送ユニットが自由に動けるように構成され得る。
【0035】
交換対象の工具の、工具保管庫から少なくとも1つの工作機械までの、及び逆方向の自由な搬送のために、モバイル搬送ユニットは好ましくは無軌道フロアコンベア、例えば、フォークリフト、自動リフトトラック、又は少なくとも1つのフォークを搭載した別の移動自在な車両デバイスを備えてもよく、この場合、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスは好ましくは、接続可能かつ取り外し可能な方式でこのフロアコンベアに取り付けられる。そのような実施形態は特に、機械工具保管システムの性質に応じて、移し替えデバイスを切り離し、例えば手動フロアコンベアから自動フロアコンベアに移し替えられるという利点を有している。後者のケースの実現のために、さらに、フロアコンベア又はモバイル搬送ユニットも同じく、モバイル搬送ユニットの無人又は自動制御のための制御デバイス、及び/又は、例えばW-LAN、Bluetooth(登録商標)、又は赤外線信号等の無線接続を介し外部制御デバイスに接続される通信デバイスを備え得る。
【0036】
したがって、ここで説明される工具保管デバイスは、非常に動的かつ効率的な方式で特に複数の工作機械のために工具を供給する可能性を表している。一方で、独立して回転可能なホイールマガジンと、工具保管と同時進行で動かせるマニピュレータとの組み合わせは、シェルフマガジンのような従来の工具マガジンと比べて、対応するホイールマガジンでの工具の保管及び取り外しをかなりより迅速かつ同時進行で実行でき、工具交換の間の不要な待ち時間を削減できるという利点を有している。他方で、供給ステーション及びモバイル搬送ユニットにおける複数の供給又は移し替え保持具により大量の工具を同時に移し替えられ、これにより工具交換の回転率が増加し、対応する要素自体をアイドリング時間に事前装填でき、したがってさらなる処理工程のために効率よく準備できる。
【0037】
また、移動自在なモバイル搬送ユニットによる工具交換及び搬送は、対応する工具保管デバイスを中心に配置できるという大きな利点を有する。言い換えると、特に好ましい実施形態において、工作機械に(全く)依存せず、特にそこから距離を置いて、使用される工具保管デバイスを配置でき、これにより多数の工作機械に可能な限り最適に対応できる。他方で、しかし、複数の工作機械及び工具保管デバイスが設けられたシステムに関して特に、工作機械及び/又は工具保管デバイスの独立した配置により、これらの要素により占有される空間を可能な限りモジュール式に、かつ効果的に使用することが可能となる。
【0038】
特に好ましい実施形態において、工具保管デバイスは、工具交換処理全体、すなわち、工作機械からの、又は工作機械への工具の搬送から、その保管、又は工具保管デバイスへの移し替えまでを完全に自動化してもよく、さらに処理全体の効率を高めるようにも構成され得る。この場合、工具保管デバイスの個々の要素の処理は例えば外部制御モジュールにより同時進行で行うことができ、特に同期化でき、工具保管デバイス及び工作機械の集合体を相互運用可能にできる。特に好ましい実施形態において、例えば、工具保管デバイスは、工作機械が次に必要とする工具を事前に、好ましくは中央ネットワークシステムを介して要求でき、したがってそれら工具が使用される直前になる前に供給できるように構成され得る。同様に、モバイル搬送ユニットは好ましくは、例えば、中央ネットワークシステムを通じて事前に工作機械の工具要求事項を要求し、それらを個別の工具保管デバイスの工具在庫と比較でき、又は工具保管デバイスの供給時間を確認することができ、これにより、工作機械から工具保管デバイスまでの、及び逆方向のモバイル搬送ユニットの動きを最適に適合させられる。好ましくは、工具交換処理を可能な限り効率的にするために、工具保管デバイスのホイールマガジン、マニピュレータ、供給ステーション及びモバイル搬送ユニットは、工作機械と、及び互いに通信もできる。
【0039】
好ましくは、モバイル搬送ユニットの位置合わせインタフェースへの位置合わせ部の接続を通じて供給ステーションはさらに、モバイル搬送ユニットからの移し替え対象の、又は少なくとも1つの工作機械が必要とする工具に関する工具データを例えば位置合わせインタフェースと位置合わせ部との間の誘電送信を介し、又は同じく中央ネットワークシステムを通じて得ることができ、それらを、特に好ましい実施形態においては内部データメモリへ転送できる。
【0040】
さらに供給ステーションは好ましくは、受け取った工具データを好ましくは内部データメモリに含まれる工具保管デバイスの工具在庫と比較でき、自身の工具在庫にその工具が見つかった場合、その必要とされる工具をホイールマガジンからモバイル搬送ユニットに移し替えるために、その必要とされる工具を含むホイールマガジン、マニピュレータ、及び供給ステーションの供給レールを工具供給のために制御できるよう構成され得る。同様に、工具保管庫での保管のためにモバイル搬送ユニットから受け取った工具の場合、好ましくは、対応する供給ステーションは工具在庫内の対応する工具の工具データを含むことができてもよく、ホイールマガジン、マニピュレータ、及び供給レールを制御して、その受け取った工具をこの目的のために設けられた対応する工具保持位置に移し替える。
【0041】
少なくとも部分的に自動化された工具交換処理のより正確な観察及び制御のために、供給ステーションは好ましくは、ディスプレイが設けられた少なくとも1つの制御ユニットを備えてもよく、この場合、作業者は例えば、ホイールマガジンの現在の工具在庫、マニピュレータに組み込まれたセンサが検出する個々の工具の工具品質、又は制御ユニットを通じた次の連続処理を確認することができる。特に好ましい実施形態において、制御ユニット上の制御コンソールは、工具のピックアップ又は移し替えを手動制御するのに用いることもでき、これにより、自動作業においても、例えば、エラーメッセージが出た際に、又は工具のサンプルが工具保管庫から取り外された場合、工具交換処理を手動制御すること、又は続行することができる。制御コンソールを介して手動作業と自動作業との間で切り換えることもでき、又はそれらを同時進行で実行することもでき、これにより、要求事項に応じて、手動制御されるモバイル搬送ユニットを自動工具交換システムに組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】モバイル搬送ユニットを含む本願発明に係る工具保管デバイスの第1の3次元図を、モバイル搬送ユニットが移し替え位置にある状態で示す。
図1B図1Aの工具保管デバイスを、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスが供給ステーションの供給バーに近づいた状態で示す。
図1C図1Aの工具保管デバイスを、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスが工具の取り外しの後で約45°の角度の分だけ回転した状態で示す。
図1D図1Aの工具保管デバイスを、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスが工具の取り外しの後、及び回転した後の状態で示す。
図2A】モバイル搬送ユニットの手動で可動である実施形態を示す。
図2B】モバイル搬送ユニットの別の実施形態を示す。
図3A】工具保管デバイスの供給ステーションの詳細図を示す。
図3B】供給ステーションバーの詳細図を示す。
図4A】供給ステーションの供給バーに工具を移し替えている2Bのモバイル搬送ユニットを、モバイル搬送ユニットの移し替えデバイスが供給ステーションの位置合わせ部と位置合わせした状態で示す。
図4B図4Aの搬送ユニット供給バーシステムを、位置合わせした移し替えデバイスの下方で垂直方向に供給バーを動かした状態で示す。
図4C図4Bの移し替えユニット供給レールシステムを、位置合わせした移し替えデバイスが供給レールの方向に水平方向に動いた状態で示す。
図4D図4Cの搬送ユニット供給バーシステムを、移し替えデバイスに保管済みの工具を供給ブラケットに挿入するために搬送バーの方向に垂直方向に上方に供給バーを動かした状態で示す。
図4E図4Dの搬送ユニット供給バーシステムを、工具の配置後に供給バーから離れるよう水平方向に移し替えデバイスを動かした状態で示す。
図5A図1Aの工具保管デバイスを、壁部とモバイル搬送ユニットとがない状態で示す。
図5B図5Aの工具保管デバイスの描写を回転させた状態で示す。
図6A図5Bの工具保管デバイスの描写を、壁部はあるが供給ステーションの移し替え側が開いた状態で示す。
図6B図6Aの工具保管デバイスの描写を回転させた状態で示す。
図7A図5Aの工具保管デバイスの描写を、供給バーが第2位置にありマニピュレータの方向に旋回した状態で示す。
図7B図7Aの工具保管デバイスの描写を回転させた状態で示す。
図8A図7Aの工具保管デバイスの描写を、壁部はあるが供給ステーションの移し替え側が開いた状態で示す。
図8B図8Aの工具保管デバイスの描写を回転させた状態で示す。
図9】工具交換の直前の、供給ステーションの供給バーが第2位置にありマニピュレータアームと共に旋回した状態の詳細図を示す。
図10】工作機械と工具保管デバイスとの間で対応する工具を交換するための自動化されたモバイル搬送ユニットを備える例示的な工具保管/工作機械システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
続いて例示的な図面を参照し、本願発明の実施形態を詳細に説明する。実施形態の特徴は全体的に、又は部分的に組み合わされてもよく、本願発明は説明される実施形態に限定されない。図1Aは、工具保管デバイスWLの第1実施形態の外部から見える形状を、工具保管庫S及びモバイル搬送ユニットEの例示的実施形態と共に示す。この場合、工具保管庫Sは、互いに前後に配置され、互いに独立して回転可能な一連のホイールマガジンS3を備えている。一連のホイールマガジンS3は、作業者を保護すべくベースフレームS5(図5Aを参照)に留められた壁部S18により全側面から囲い込まれる。ホイールマガジンS3内では工具Wは、ホイールマガジンS3の隣に配置されたマニピュレータS12により、径方向に位置合わせされた工具保持位置で挿入されることができ、及び取り外されることができる(図5Bを参照)。工具保持位置に対応する工具Wを挿入した後、大抵の場合工具のヘッド部分でもある少なくともその工具インタフェースS7がホイールマガジンS3において露出させられ、ホイールマガジンS3の最適化したアクセス可能性を確実にする。また、ホイールマガジンS3は、それらの回転軸に沿って互いに前後に平行に配置され、このことにより、可能な限りコンパクトな工具保管庫Sが実現可能となる。
【0044】
さらに、工具保管デバイスの前方には、コンパクトな壁部デバイスとして工具保管デバイスの側壁と同一平面に供給ステーションS2が取り付けられ、これにより、特に工具保管デバイスWLの前壁部は特に安定した形状を有する。しかし、指摘しておくべきことは、本実施形態に示される供給ステーションS2の形状は、後に実現される供給ステーションS2の概して有効な描写又は位置に従わなくてもよいということである。例えば工具保管デバイスWLの別の例示的実施形態において、前面及び後面に位置するいくつかの供給ステーションS2があってもよく、又はこれらは工具保管庫壁部S18の一部のみを占有してもよい。
【0045】
供給ステーションS2の中央には、したがって工具保管庫Sの対応するホイールマガジンS3の真正面には、供給バーS4が、供給ステーションS2内に凹み供給バーS4に適合した窪み内に配置されている。ここで供給バーS4は、供給ステーションS2へと最適に組み込むことができ、さらなるスライドドアS9により全側面から囲い込むことができる。これにより、供給バーS4をあらゆる外的影響から守り、供給ステーションS2に位置する窪みを閉じることによって、壁部S18により囲い込まれる工具保管デバイスWLの全領域をロックすることも可能である。したがって、特に長い待機時間の間に、工作機械WMの近くで生じた埃又は他の残留物から、工具保管デバイスSに位置する工具Wを保護することも可能である。またスライドドアS9は、好ましくは電気的又は光学的に動作するドアセンサデバイス(図示せず)を含む。これによりスライドドアS9は、工具交換処理の進捗に応じて自動で開くよう又は閉じるよう、供給ステーションS2の前方にモバイル搬送ユニットEが到着したこと又は配置されたことを判断できる。さらに、閉じられている場合であっても、供給対象の工具Wを詳細に検査できるように、丈夫で、特に透明な材料からなる観察窓S15を含むことも可能である。
【0046】
供給バーS4に加えて、供給ステーションS2の上面及び下面に取り付けられた2つのリニアガイドで表される2つの垂直方向に位置合わせされたガイドレールS8が、供給ステーションS2の凹部に取り付けられている。それらガイドレールS8はさらに供給バーS4に接続され、したがって供給バーS4は、モバイル搬送ユニットEとの工具交換のためのより低い第1の位置P1と、工具Wの供給及び保管のためのマニピュレータS12との工具交換のためのより高い第2の位置P2との間での移動が可能となる。ガイドレールS8は供給ステーションS2の凹部内で移動可能である。さらに窪みに組み込まれた位置センサシステム(図示せず)が供給バーS4の動きの分析を、また必要な場合その自動化を可能とし、これにより例えば、モバイル搬送ユニットEとの、又はマニピュレータS12との工具交換のために供給バーS4の位置を最適に適合させることができ、又はさらなる機構と連係させることができる。
【0047】
第1位置P1に位置する図1Aの供給バーS4には、供給バーS4の供給ブラケットS6も見ることができる。供給ブラケットS6は列を成すよう配置され、本実施形態によれば、8つの異なる工具Wを、例としてモバイル搬送ユニットEにより又はマニピュレータS12によりピックアップするために配置でき、設けることができる。この点に関して供給ブラケットS6は具体的には、ホイールマガジンの工具保持位置と同様に、(例えば図1Aにおいて黒い円で示される)個々の工具WのインタフェースS7が常に露出したままであり、モバイル搬送ユニットE及びマニピュレータS12による取り外しのために接触可能なままであり、これにより、簡略化した誤りのない工具交換処理が可能となるように構成される。同様に、供給ブラケットS6のそれぞれは、自動化可能な、電気的又は機械的に制御可能な保持デバイスも有する。これにより保管済みの工具Wを、供給バーS4の供給ブラケットS6内で強固に固定しつつも、モバイル搬送ユニットEによる、又はマニピュレータS12による取り外しのために各自の保持具から容易に解放することができる。
【0048】
供給ステーションS2に対してモバイル搬送ユニットEを配置するために、2つの位置合わせ部S10が供給バーS4に取り付けられる。例として、両方の位置合わせ部S10には、円錐形状(図3Bを参照)に繋がるドッキング要素S20,S21が設けられている。これらドッキング要素S20,S21により、モバイル搬送ユニットEの位置合わせインタフェースE11を、位置合わせ部S10に近づけそれと位置合わせする最も単純な方式で配置又は位置合わせできる。また供給バーS4への位置合わせ部S10の取り付けには特に次のような利点がある。つまりドッキング要素の位置を、供給バーS4の垂直方向への動きにより対応する搬送ユニットEに適合させることができ、このことは工具交換処理をさらに簡略化し、多数の異なるモバイル搬送ユニットとの適合性によってより費用対効果を高められるということである。
【0049】
対照的に、位置合わせ部S10に合ったモバイル搬送ユニットEの位置合わせインタフェースE11は、本例示的実施形態においては、移し替えデバイスE4上に配置され、無人の自動化可能な無軌道フロアコンベアE8(例えば、フォークリフトトラック又は昇降機)の2つのフォークE6上に置かれている(同図では見られない。図2Bを参照)。この場合、移し替えデバイスE4は、第一に無軌道フロアコンベアE8のフォークE6に直接接続されたベース本体E16上に移し替えデバイスE4があり、供給ステーションS2の位置合わせ部S10上に位置合わせインタフェースE11を選択的に位置合わせする目的で供給ステーションS2へ向かうガイドレールを介し供給バーS4の方向へ一次元的に移動可能に配置される。特に、移し替えデバイスの動きは、モバイル搬送ユニットEに組み込まれた移し替え制御ユニット(図示せず)により制御できるのが好ましい。これにより、最適化した工具交換のために移し替えデバイスE4を供給バーS4へ近づけること、又は配置することを全体的に自動で実行できることが好ましい。
【0050】
無軌道フロアコンベアに接続されたさらなる搬送/制御ユニットE7により、外部の手動又は自動制御システムを介したモバイル搬送ユニットEの制御が可能となる。非常に好ましい例において、好ましくは外部サーバシステムが、全てのモバイル搬送ユニットEの軌道を同時に制御でき、したがって非常に効率的な搬送処理を実現できるように、搬送/制御ユニットE7は例えば無線、赤外線信号、WLAN又は同様のインタフェースを介して外部に位置するサーバシステムを通じて搬送指示を受け取ることも可能である。
【0051】
位置合わせされたモバイル搬送ユニットEによる工具Wの例示的な取り外し処理をさらに、図1A~1Dに示す。この場合、まず、モバイル搬送ユニットEは、好ましくは搬送/制御ユニットE7により操作されて、工具交換のために設けた供給ステーションS2に沿って位置する移し替え位置まで動き、供給ステーションの供給バーS4は好ましくは既に、図1Aに示すように第1位置P1まで動いている。
【0052】
次の工程では、図1Bに示すように、移し替えデバイスE4は、次いで、供給バーS4の方向に前述のガイドレールに沿って、対応する位置合わせインタフェースE11が供給ステーションS2の位置合わせ部S10と位置合わせされるまで動かされる。工具Wの取り外しのために、これにより、垂直方向に回転及び調整可能である2つの搬送バーE2が、供給バーS4に対応する搬送ブラケットの列を備えた移し替えデバイスE4上に取り付けられる。ここで搬送ブラケットは、取り外された工具を把持し固定するために、工具インタフェースS7に適合した把持部E5と、組み込まれたクランプ機構とを含んでいる。さらに本例示的実施形態において、搬送バーE2の搬送ブラケットと供給バーS4の供給ブラケットS7とは、垂直方向に各自の長手軸に沿って工具Wを保持するよう配置されている。交換対象の工具Wの、取り外しのために使用される工具インタフェースS7は、供給バーS4の場合、供給ブラケットS7に露出させられる工具部分の下端に配置されている。
【0053】
モバイル搬送ユニットEの位置合わせインタフェースE11が供給ステーションS2の位置合わせ部S10に配置される場合(図1B)、搬送ブラケットE2は、好ましくは、搬送バーE2のうち1つの個々の搬送ブラケットの把持部E5が移し替えデバイスE4の位置合わせのための動きの間に既に、ピックアップ対象の工具Wの露出させられた工具インタフェースS7と同一平面になり、その時点では概ねペンチのように(事前の垂直方向への平行移動及び回転により)囲い込んで動いてしまっているように、搬送ブラケットと共に動く。この時点で、工具Wを安全に工具交換の間にモバイル搬送ユニットEに既に移し替えられるように、工具Wを、クランプ機構により移し替えデバイスE4の搬送ブラケットに既に固定できていることが好ましい。
【0054】
結果として生じる、搬送バーE2の把持部E5の固定的な接触により、交換対象の工具Wは、その後、供給バーS4の単純な垂直方向への動き(言い換えると、搬送バーE2に対して相対的な供給バーS4のリフティング動作)によって、供給バーS4の供給ブラケットS6から取り外すことができる。これにより工具Wは、工具Wの安定した配置を保証できるように、いつでも工具インタフェースS7において搬送バーE2の把持部E5上にある。ここで例えば、リフティング動作の寸法/高さは、位置合わせ部の形状により規定される。好ましい実施形態においてさらに、取り外し対象の工具Wの選択に応じて、供給バーS4に既に存在する個々の工具Wのみを取り外すことができ、これによりいくつかのモバイル搬送ユニットEのための工具Wが供給バーS4に存在することができ、工具交換処理の最適化した同時進行化をもたらすよう、把持部E5又は関連付けられたクランプ機構を個別に制御できる。
【0055】
工具Wが取り外された後、次いで、移し替えデバイスE4に取り付けられたガイドレールを用いて、取り外された工具Wと共に搬送バーE2をモバイル搬送ユニットEの方向に戻すように動かすことができ、これにより移し替えデバイスE4は工具交換処理の終了時に、初期位置又は搬送配置に再び位置することができる。図1C及び1Dは考えられる例示的実施形態を示す。ここでは移し替えデバイスE4を元の位置に戻るよう動かした後、搬送バーE2をさらに時計方向に、最初は45°(図1C)だけ、そしてさらに90°の角度だけ(図1D)回転させ、したがって工具Wは最適に工作機械WMへの搬送のために配置される。同時に、特に2以上の搬送バーE2が移し替えデバイスE4に含まれる場合、例えばこの目的のために用いられる搬送バーE2を供給ステーションS2の方向に回転させることにより、及び供給ステーションS2に再び近づけることにより、既に工作機械WMから取り外された工具Wを空の供給バーS4に加えることも当然可能である。
【0056】
図2Aは、特に手動で用いるために設計されたモバイル搬送ユニットEのさらなる実施形態を示す。図1A~1Dに示した実施形態とは異なり本実施形態の例示は、簡略化され、またそれに対応してより軽量化された形状を有しており、これにより作業者Mは容易に、さらなる要素を用いずモバイル搬送ユニットWを動かせる。さらにこの目的のために、特に支持バーE14がモバイル搬送ユニットEの後面に取り付けられ、対応する作業者Mは支持バーE14で自分自身を支えることができ、自分の前方にあるモバイル搬送ユニットEを押すことができる。
【0057】
さらに本例示的実施形態において、移し替えデバイスE4の本体は、単に、ベース本体E16上のガイドプレートとして、及び、水平方向に変位可能な二次元ガイドプレートとして設けられ、ここでは例として前方領域に工具Wと共に4つの搬送ブラケットE2(実施形態においては、4つの搬送ブラケットに限定されない)が取り付けられるよう設計されている。搬送ブラケットE2をモバイル搬送ユニットEの前方に配置することは、作業者Mが搬送バーE2を対応する供給ステーションS2の工具保管デバイスまでより容易に動かせるというここでの目的を充足させ、これにより、最適化された工具交換処理、特にはより正確な工具交換処理が起こり得る。同様に、4つの円形で適合した要素としてここでは実現される位置合わせインタフェースE11、及び供給ステーションS2との電気的、光学的、又は力学的な信号による例示的な工具データの通信及び交換のためのさらなる通信インタフェースE15もベース本体E16の前方に取り付けられる。ここで作業者は、工具保管デバイスWLの位置合わせ部S6に非常に効率よくかつ正確にモバイル搬送ユニットEを配置でき、同時に、工具保管デバイスSから工具保管デバイスWLに移し替え対象又は取り外し対象の工具Wについての情報の転送が可能である。最後に、ベース本体E16の下方に取り付けられた無軌道フロアコンベアE8は、効率的な手動搬送のために設計されている。したがって作業者の安全性のために、フロアコンベアE8のベース本体は、ベース本体に接続されたフォークE6及びそのタイヤE12と同一平面において閉じており、これによりひいてしまうこと、又は本体部品の破壊が実際的に不可能である。
【0058】
図2Bも、自動及び手動で可動であるモバイル搬送ユニットEとして設計されたモバイル搬送ユニットEの別の実施形態を示す。この場合、工具Wを保持するために使用される搬送バーE2はここでも移し替えデバイスE4に載っており、しかし、工具保管デバイスWLの供給ステーションS2の方向にモバイル搬送ユニットEの前方に向けられたガイドレールE13により移し替えデバイスE4とは独立して動かせる。さらに図1A~1Dに示された実施形態と同様に、位置合わせインタフェースE11が移し替えデバイスE4上に、ここでも前方に強固に配置される。これにより本例示的実施形態においてそのようなモバイル搬送ユニットEは、位置合わせ部S10と位置合わせインタフェースE11との間での接続を実現するために、工具保管デバイスWLの位置合わせ部S10まで動かされなければならない。データ送信のために使用される通信インタフェースE15はここでは同じ方式で実装され、すなわち、ばねが事前装填された、位置合わせインタフェースE11に取り付けられた押下ボタンデバイスのような方式で実装される。
【0059】
さらに、ベース本体E16及びベース本体E16に接続されたフロアコンベアE8は、工具の手動搬送及び自動搬送に最適に適合している。この場合ベース本体E16は、閉じた本体として取り付けられ、自動作業のために使用される搬送/制御ユニット等の必要な電子要素を効率よく収納できる。同時に、移し替えデバイスE4は搬送バーE2の上面に支持部E18を有し、作業者Mは搬送バーE2で自分自身を支えることができ、モバイル搬送ユニットEを動かすことができる。またここでもフロアコンベアE8は、フォークE6及びホイールE12と同一平面に嵌まるよう設計されており、これにより既に説明した安全性の利点が本実施形態でもたらされる。
【0060】
また本実施形態において、スタビライザーギアに接続された2つのタイヤE12のみが設けられており、これによりモバイル搬送ユニットEは、工具交換を目的として傾けること、又は角度をつけて接続することもでき、このことは容易に設計可能なさらなる自由度をもたらす。好ましくは、タイヤはメカナムホイールであり得、これにより例えば、モバイル搬送ユニットEを操縦するのにさらなる車軸を用いる必要がない。
【0061】
図3A及び3Bはさらに、工具保管システムWLの供給バーS4及び供給ステーションS2の別の実施形態の詳細図をそれぞれ示す。この場合、複数のモバイル搬送ユニットEとの同時進行で行われる工具交換のために、いくつかの位置合わせ部S10が供給バーS4に取り付けられ、全体的な処理をここでも最適化できる。特に本例示的実施形態において、2つのモバイル搬送ユニットEが互いに隣同士で配置されたとすれば、それぞれが供給バーS4から少なくとも4つの工具Wを取り外すことができ、又はそれらを同時進行で自身に移し替えることができる。ここで同時に使用されるモバイル搬送ユニットE及び取り外し対象の工具Wの数は、ここで示す例示的実施形態を参照しているだけであって、よって一般的に有効であるものとは理解されない。
【0062】
対応するモバイル搬送ユニットEの効果的な配置のために、操作対象のモバイル搬送ユニットEごとに複数の位置合わせ部、示されている場合においては2つの位置合わせ部が等間隔で供給バーS4に取り付けられ、これにより、対応するモバイル搬送ユニットEの搬送バーE2は、独立して、互いに接触することなく供給バーS4と相互動作することができる。位置合わせ部S10に接続されたディスプレイS16が、供給保持部分S6に保管済みの工具Wの状態又は工具データを表示でき、モバイル搬送ユニットEによる供給ステーションS2への接続が成功したとき、及び成功したかを表示できる。
【0063】
図3Bはさらに、図3Aの供給バーS4の位置合わせ部S10の構造をより詳細に描写する。図1A~1Dのように、各位置合わせ部は、漏斗形状又は円錐形状の挿入点S19をその下部に有することができ、モバイル搬送ユニットEの位置合わせインタフェースE11は、その挿入点S19で位置合わせ部S10に挿入されてもよく、したがって供給ステーションS2に沿ったモバイル搬送ユニットEの動きを妨げる。続いて生じる工具Wの取り外し又は移し替えの間のリフティング動作は、供給ステーションS2の供給バーS4の垂直方向へのリフティング動作である。ここでも、位置合わせ部S10の漏斗形状の形態は単に、モバイル搬送ユニットEを供給ステーションS2に配置し、留めておくための任意の例であるものと理解されるべきである。例えば他の位置合わせ部S10が実現され得る。そのような位置合わせ部S10も、円形又は多角形で供給バーS4に取り付けられ得、機械的に、例示として電気的に、例えば誘電又は電磁石により、油圧式に又は圧力制御方式で、例えば吸引/真空でモバイル搬送ユニットEを固定できる。また例えば図1A~1Dに示すようにモバイル搬送ユニットEを用いることができる。そのような搬送ユニットにより、モバイル搬送ユニットの位置合わせ及び配置を直接的に物理的に工具保管デバイスと接触することなく行うことができる。接触は、工具の実際の移し替えの間にのみ起こってもよい。例えば工具移し替え処理のためにモバイル搬送ユニットEの動きを妨げることは、例えば工具保管デバイスの前方に正確に配置されたモバイル搬送ユニットのホイールの動きを妨げることにより、工具保管デバイスとの直接的な接触なしで達成できる。
【0064】
さらに図4A~4Eは、図2Bに示したモバイル搬送ユニットE、及び図3A及び3Bに既に示した供給バーS4による工具Wの例示的な移し替え処理を示す。図1A~1Dに既に示したように、モバイル移し替えユニットEはまず、工具交換のために規定された移し替え位置まで動く。モバイル移し替えユニットEはこの目的のために対応する供給バーS4の前方正面に配置され、移し替えデバイスE4の前面に取り付けられた位置合わせインタフェースE10が、好ましくは、供給バーS4の位置合わせ部S10下方で供給バーに接触するまで供給バーS4にゆっくりと近づく(図1A)。
【0065】
供給バーS4を下げた結果、モバイル搬送ユニットEの搬送バーE2が位置合わせインタフェースE11と共に供給バーS4に対して相対的に持ち上げられ、これにより、位置合わせインタフェースE11が位置合わせ部S10のガイド形状へと下がり、したがってモバイル搬送ユニットEの動きが全側面から妨げられる(4B。よりよい視認性のため、位置合わせインタフェースE11はここでは位置合わせ部S10の前方に示されている。)。さらに、位置合わせインタフェースE11が位置合わせ部S10の上端まで達すると、搬送バーS2も移し替え対象の工具Wもさらに下方に動くこともできず、位置合わせ部S10の形状及び配置により、得られるリフティング機構の動きが妨げられ、結果としてそれによって規定を受ける。
【0066】
それから次の工程において、搬送ブラケットに位置する工具Wが供給バーS4の空の供給ブラケットS6上方に正確に配置されるまで、移し替えデバイスE4に組み込まれたガイドレールE13により、ロックされた搬送バーE2が供給バーS4の方向に動かされる(図4C)。好ましくは、工具Wの正確な配置のために、搬送レールE2がまず、供給ステーションS2の供給バーS4まで、ガイドレールE13の最も後方の位置まで動かされ、ガイドレールE13の最も前方の位置まで搬送レールE2を動かすことにより工具Wが供給バーS4の供給ブラケットS6の正確に上方に動かされるように移し替えデバイスE4を構成することもできる。別の実施形態において、好ましくは、供給ブラケットS6に対する工具Wの位置の判定をさらにより正確にできるようにするために、動き及び位置センサ、例えば光学的赤外線センサ又は音響測定センサが搬送バーE2に取り付けられていてもよい。
【0067】
供給バーS4の供給ブラケットS6を介して工具Wを配置した後、工具本体が対応する搬送ブラケットS6の底部に載り工具Wが搬送バーE2の搬送ブラケットによって支えられなくなるまで供給バーS4を再びリフティングすることで、工具Wは供給ブラケットS6に挿入される(図4D)。好ましくは、この時点で、搬送ブラケットに位置するさらなる保持機構により、搬送ブラケットは、組み込まれた圧力機構により又は好ましくは上述の位置センサにより解放することもできる。
【0068】
この状態では搬送ブラケット又はそこに取り付けられた把持部E5にはもはや工具Wが装填されていないので、工具Wが供給バーS4に残った状態で搬送ブラケットE2は、最終的にガイドレールE13を用いてどのような困難もなく引っ込めることができる(図4E)。供給バーS4をさらにリフティングすることによって、位置合わせ部S10のガイドから移し替えデバイスE4の位置合わせインタフェースE11をさらに解放することになり、モバイル搬送ユニットEは再び可動となり、次の移し替え又は取り外し処理を開始できる。
【0069】
図5Aは、図1A~1Dの工具保管デバイスをここでも示すがこの場合、モバイル搬送ユニットE、及び保護のために工具保管デバイスSの周囲に配置された壁部S18の明らかな描写がない状態で示す。特にこの描写形態では工具保管庫Sのコンパクト性を見てとることができ、そのコンパクト性は、列をなすように配置されたホイールマガジンS3の特別な取り付けと、それと関連付けられたフレーム構造とによって特に実現されている。特に、コンパクトであり、かつモジュール式である工具保管庫Sを構築するために、工具保管庫のベースフレームS5に接続され、互いに平行に位置合わせさせた三角形の枠S17上の三点軸受けによりホイールマガジンS3が取り付けられており、各ホイールマガジンS3は相互交換可能にこの軸受けに接続され、他のホイールマガジンS3との容易な交換のために、又は修理のためにそこから取り外すことができる。
【0070】
同様にそのようなフレーム形状の利点としては、個々のホイールマガジンS3のサイズが均一である必要がないということがある。したがって図5Aに示す実施形態と対照的に、例えば、ベースフレームS5のサイズ、壁部S18、及びマニピュレータS12から推測される空間が許容する限り、実質的により小さい、又はより大きいホイールマガジンS3を三角形の枠S17又はその軸受けに挿入することもでき、又は既存のホイールマガジンS3と入れ替えることもできる。
【0071】
さらにフレームS17は、さらなるフレーム構造を、したがってホイールマガジンS3を、対応する工具保管庫の両端に取り付けることもでき、これにより工具保管庫Sが最良のケースとしては無限に拡張可能であるように設計される。したがってそのような設計は、工具保管庫の最も高いモジュール性を達成し、その場合、非常にコンパクトであり互いに接続された個々のフレーム構造S17の形状によって、ホイールマガジンS3を特に効率よく堅固に配置できる。
【0072】
図5Bは、図5Aの中央工具デバイスWLの描写をここでも示し、しかし水平面で90°だけ回転した状態を示す。特にここでの描写では初めてマニピュレータS12が示されている。マニピュレータS12は、工具マガジンS3と供給バーS4との間での工具Wの搬送を担い、本実施形態においてはホイールマガジンS3の回転軸と平行に位置合わせされたガイド又は走行レールS13上に位置し、これによってホイールマガジンS3に沿って移動可能である。さらに本例示的実施形態においてマニピュレータS12は、伸縮デバイスS28が設けられ伸縮デバイスに沿って回転軸と位置合わせされた回転可能な把持デバイスS26のみが、モバイル搬送ユニットEの搬送ブラケットと同様の2つの対向して配置されたマニピュレータブラケットS14と共にマニピュレータベース本体S30に取り付けられ、マニピュレータベース本体S30自体が走行レールに接続されている点で、非常に費用がかからない効率的な構造を有している。描写されているマニピュレータS12の実施形態は、選択された例を表しているだけであって、他の実施形態においては、ここで示されているものとは異なってもよい。例えば、他の例において、マニピュレータS12は、1つより多くの把持デバイスS26を有してもよく、又は、追加の自由度を提供することにより、それを横方向及び回転方向にどの方向にも動かしてもよい。他の例においてマニピュレータS12は、例えば走行車軸及びホイールを含む内蔵モータによりホイールマガジンS3間で独立して動いてもよく、これによりマニピュレータS12の動きの可能性を最大限に最適化してもよい。
【0073】
対照的に、走行レールS13を備える、マニピュレータS12の例示されている実施形態は、時間効率的かつ可能な限り費用効率的な形態を優先する。したがって、マニピュレータS12に取り付けられた把持デバイスS26は好ましくはその初期位置で、ホイールマガジンS3により水平方向に支持される工具Wの高さに位置し、ベース部分が工具Wの長手軸に直交する面に延在するように構成される。言い換えると把持デバイスS26の長手軸は、ホイールマガジンS3の水平方向に支持される工具Wに対して常に直交しており、これにより、マニピュレータ支持部S14のうち1つによる工具インタフェースS7の把持後の伸縮デバイスS28を単純に引く動きで、対応するホイールマガジンS3の工具保持位置から工具を取り外すことができる。
【0074】
この理由から、本例示的実施形態においてホイールマガジンS3のうち1つから工具Wを取り外すために、又は1つに工具Wを移し替えるために、走行レールS13を備えたマニピュレータS12の動きは、好ましくは、自動化したシステムを介して個々のホイールマガジンS3の回転と連動する:把持デバイスS26はその初期位置において、特にホイールマガジンS3に保管されている個々の工具Wに近接していることにより、把持デバイスS26が水平方向に位置合わせされたとき、走行レールを用いて横方向に近づくことによりマニピュレータブラケットS14のうち1つを、対応する工具Wの工具インタフェースS7に同一平面に挿入できるように設定されている。好ましい実施形態において、ホイールマガジンS3は最初に、特定の工具保持位置における工具交換のために、マニピュレータS12の把持デバイスS26のための水平方向の通路が、占有されていない工具保持位置によって形成されるよう自動で動かされる。続いて、好ましくは水平方向にマニピュレータブラケットS14と位置合わせされた把持デバイスS26は、マニピュレータS12に接続された走行レールS13を用いてこの通路を動くことができ、例えば、水平方向に取り付けられた工具Wの取り外しのためにいわゆる第2交換位置WP2に近づくことができる。既に上記にて説明した、続いて行われるマニピュレータブラケットS14への対応する工具Wの挿入により、及びマニピュレータベース本体S30へ向けて把持デバイスS26を引くことによる続いて行われるリフティング動作により、したがって工具WをホイールマガジンS3内のその工具保持位置から取り外すことができ、マニピュレータに移し替えられる。
【0075】
しかし逆に、工具保持位置への工具Wの挿入は、既に説明した取り外し処理が逆方向に行われるものと理解できる。独立した工具保持位置の新しい通路を形成することにより、保管対象の工具Wを含むマニピュレータ位置はまず、保管のために意図された、既に水平方向に位置合わせされた工具保持位置へ走行レールS13を介して動かされる。この場合のマニピュレータS12のそれぞれの把持デバイスS26は、工具Wを留めるためにマニピュレータベース本体S30の方向に引っ込められロックされる。工具Wは、その後、第2交換位置WP2における特定の工具保持位置に達すると、特定の工具保持位置の空洞全体が満たされるようになり、再び走行レールS13により動かすことによりマニピュレータブラケットS14を工具Wから分離できるようになるまで継続される、ホイールマガジンS3の方向への伸縮デバイスS28の、又は伸縮デバイスS28に接続されたマニピュレータブラケットS14の伸長により工具保持位置に導入される。好ましくは、工具Wのより正確な挿入のために、モバイル搬送ユニットEの移し替えデバイスE4と同様のセンサ、例えば圧力又は位置センサをマニピュレータS12に取り付けることもできる。これにより、ホイールマガジンS3の方向への工具Wの動きの間、工具Wの現在の位置を好ましく工具保持位置の位置と比較することができ、又は、工具保持位置の復元力から生じるある抵抗圧をマニピュレータS12が感知するか、又はそのような抵抗圧を受ければ挿入の停止を実行できる。したがってそのようなセンサ要素は、工具交換をより静かな、したがって、特に壊れやすい工具Wにとってより安全なものとすることができるプラスの影響をもたらす。
【0076】
さらに図6A及び6Bは、図1Aから1Dの工具保管デバイスWLをここでも示す。ここでは供給ステーションS2の一部分、より正確には右壁部分が取り外されているか、又は透明な状態で示されている。特にこの透視図において見ることができるのは次のようなことである。高さが高く、凹んだ工具保管庫壁部S18の場合であっても、供給ステーションS2にあり供給バーS4を含む窪みは全側面において供給ステーションS2のさらなる構造体には接続されておらず、供給バーS4の両側において、特にマニピュレータS12に面する側面において供給バーS4に適合した開口部を備えている。
【0077】
この場合この開口部は、少なくとも最初は垂直方向に位置合わせされたガイドレールS8を用いて、モバイル搬送ユニットEとの既に述べた工具交換のための第1位置P1から第2位置P2aまで上方に供給バーS4を動かせるよう使用される。そこで、移し替え位置P2bまで、少なくともマニピュレータS12の方向に供給ステーションS2と平行な、ある移し替え角度だけさらに旋回させることが出来る。言い換えると、したがって開口部は、供給バーS4と、工具交換のために予め定められた第1交換位置までこの目的のために走行レールS13により動かせるマニピュレータS12との間での直接的な接触を可能とする。
【0078】
図7A及び7B、並びに図8A及び8Bは同じく上記した工具保管デバイスWLをここでも、供給バーS4が引き渡し位置P2bとも呼ばれる第2の、既に旋回した位置P2bにあり、壁部が挿入された状態(図8A及び8B)とされていない状態(図7A及び7B)で示しており、もう一度より詳細にこの引き渡し処理を例示する。供給ステーションS4とマニピュレータ支持部S14との間での工具支持部の幾何学的な違いにより(供給ステーションS2及びモバイル搬送ユニットEでは、工具Wは好ましくは垂直方向に支持され、他方マニピュレータS12では水平方向に支持される)、最適な移し替え状況をもたらすために、中間の処理では、移し替え対象の工具の向きWを各工具保管デバイス要素に合わせるのが有利である。本実施形態においてこのことは、工具Wが装填された供給バーS4をマニピュレータS12との相互動作を意図した引き渡し位置P2bへ旋回又は回転させることにより行われる。
【0079】
この目的のために、ラジアル軸受けにより実装され自動で制御可能な旋回デバイスS11が供給バーS4に取り付けられ、旋回デバイスS11は、供給バーS4に接続された旋回アームを介して特定の移し替え角度だけ供給バーS4を回転させることができ、したがって供給バーS4をマニピュレータS12と最適に位置合わせできる。この文脈で、旋回デバイスS11は、引き渡し位置では供給バーS4 P2b、特に供給バーS4 P2bに保管済みの、又は保管対象の工具Wが供給ステーションS2の開口部に突出し、したがってさらに供給ステーションS2の壁部によって保護されるようにも設計される。したがって、供給バーS4の旋回の利点としては、マニピュレータS12との工具交換のために各工具Wを最適に位置合わせし、工作機械WMが生じさせる埃又は残留物等の外的影響からマニピュレータS12を効率よく保護できるということがある。
【0080】
さらに回転又は旋回距離を規定する供給バーの移し替え角度は、マニピュレータS12の設定に応じて旋回デバイスS11によって正確に設定できる。これにより、好ましい例示的実施形態において、このことは45°~120°の回転角度となり、特に好ましい例示的実施形態において80°~110°にもなる。ここでは、角度に関する仕様は、旋回デバイスS11の元の位置、垂直方向に位置合わせされた第2位置から引き渡し位置P2bまでの又は逆方向の旋回デバイスS11により生じる供給バーS4の回転角度であると理解される。
【0081】
一方で図9は、第1交換位置の近くにあるマニピュレータS12と、工具保管庫Sに属するホイールマガジンS3と、引き渡し位置P2bにある供給バーS4の一部の例示的な詳細な描写を示し、ここでは供給バーS4とマニピュレータS12との間の工具交換をさらにより明確に示すことができている。ここで引き渡し位置P2bにある供給バーS4は最初は、ホイールマガジンS3の工具保持位置におけるものと同様に、工具インタフェースS7において工具Wが、マニピュレータS12の把持デバイスS26の、横方向に工具Wに向かう動きによってマニピュレータブラケットS14により取り囲まれるよう設定される。したがってそれらは、伸縮デバイスS28を用いて把持デバイスS26を引っ込めることによる水平方向のリフティング動作を介し供給ブラケットS6から取り外すことができる。したがって、結果として生じるマニピュレータS12と供給バーS4との間の工具交換処理は、ホイールマガジンS3のうち1つとのマニピュレータS12の工具交換処理と略同等であると理解することができる。
【0082】
マニピュレータS12を供給バーS4に近づけるために、全てのホイールマガジンがまず再び回転させられ、これによりそれらによって、マニピュレータS12の水平方向に位置合わせされた把持デバイスS26のための通路が形成される。そして把持デバイスS26は工具交換のために設けられた第1交換位置まで走行レールS13により動き、そこで、工具の取り外しの場合には把持デバイスS26の高さに位置する供給バーS4の垂直方向に位置合わせされた工具Wのうち少なくとも1つに、工具インタフェースにおいてマニピュレータブラケットS14が接触でき、その少なくとも1つの工具Wは、既に前記した処理に従って取り外すことができる。さらに本例示的実施形態において、供給バーS4の供給ブラケットS6への工具Wの挿入も、工具保管挿入を説明するために既に述べた処理と同様である。ここで、マニピュレータブラケットS14において接触された工具Wは安全かつ効率よく、事前に引っ込められた把持デバイスS26による供給バーS4の方向への接近を介して、対応する供給ブラケットへ挿入することができる。
【0083】
好ましくは、供給バーS4は、引き渡し位置P2bにおいて少なくともその高さに関して、垂直方向に位置合わせされたガイドレールS8によってまだ動くことができ、これにより最適化した工具交換のためにマニピュレータS12との取り外し又は移し替えに必要とされる高さに各供給ブラケットS6が近づくことができ、したがって供給バーS4からの異なる工具Wの取り外しのために不要な、繰り返しの旋回を避けられるようにも構成され得る。
【0084】
したがって、ここで示されている工具保管デバイスWLは、同時にコンパクトであり簡略で効率的な工具交換用のデバイス、特には複数の工作機械WMを交換するためのデバイスを表している。さらに工具保管デバイスWLの前述の要素、及びそこから結果として生じる工具交換及び搬送処理は、次のような大きな利点を有する。それは、工具保管デバイスWLと、それに関連付けられた工作機械WMとの間で工具Wを交換するための手順全体を全体的に自動で又は少なくとも半自動で実行でき、ここで複数の工作機械WMから距離を置いた中央工具保管システムに関して特に、最大の効率を達成できる、ということである。
【0085】
図10は、そのような考えらえる工具保管システムの選択された略図の例を示しており、ここでは中央工具保管デバイスWL、及びそれらにモバイル搬送ユニットEを介して接続された工作機械WMの両方が使用されている。特に好ましい本実施形態において見ることができるように、中央搬送ラインに沿って動くモバイル搬送ユニットEが工作機械WM及び工具保管デバイスWLの両方に近づき、ここでは各モバイル搬送ユニットEが、レールなしで、そしてなによりも何らガイドなしで1つの目的地から次の目的地へ独立して動かせる。したがってそのようなシステムであれば、工具保管庫WLと工作機械WMとの間での搬送に関する制限により引き起こされる待ち時間を避けることができ、また最大限に効率的であり、エラーが最少化され、全体的にモジュール式であり、連続的に拡張可能なシステム構造を可能とする。
【0086】
個々のシステム要素の自動制御は好ましくは、個々の工作機械WMの処理を観察することができ工作機械WMが最適に操作されるよう、対応する要素に取り付けられた制御ユニットを介しモバイル搬送ユニットEと共に特定の工具保管デバイスWLを制御できる外部サーバシステムにより実行される。この目的のために、例えば、各工具保管庫Sはそれ自体の、工具保管庫の現在の工具在庫を記録可能であり、外部サーバシステムがアクセス可能な内部メモリも含み得る。同じくサーバシステムは好ましくは、それら内部メモリの上書き権を有していてもよく、それらを更新してもよく、特に内部メモリに含まれる情報により、工具保管庫Sに含まれるホイールマガジンS3、マニピュレータS12、並びに供給ステーションS2及び少なくとも1つのモバイル搬送ユニットEを、それらが自律して工具Wを工具保管庫Sから工作機械WMまで又は逆方向に例えば上述した工具交換処理の後に移し替えられるよう制御し得る。
【0087】
さらなる実施形態において、供給ステーションS2の位置合わせ部S10は、工作機械WMと、又はモバイル搬送ユニットEと情報を交換するために使用することもでき、したがって外部サーバシステムの代替的な、又は追加的な支持部として見なすことができる。したがって好ましくは、モバイル搬送ユニットEの位置合わせインタフェースE11を工具保管デバイスWLの位置合わせ部S10に配置することにより、特に工作機械WMにおける位置合わせ部に配置することにより、例えば工作機械WMが必要とする工具Wに関する工具データを供給ステーションS2から得ることができ、同じく、工具保管デバイスSの内部保管庫に位置する工具在庫と比較できる。そのような情報交換により、ホイールマガジンS3、マニピュレータS12、及び供給ステーションS2の要素、並びにモバイル搬送ユニットEを好ましくは供給ステーションS2により制御して、少なくとも1つの工作機械WMが必要とする工具Wを工具保管庫Sから取り、それを自動で工作機械WMに加えることができる。逆も当てはまり、工作機械WMにより保管される工具Wを当然、等しく自動化された処理で工具保管庫Sへ加えることもでき、その際、供給ステーションS2は位置合わせ部S10にモバイル搬送ユニットEを配置することにより得られる工具データを、内部保管庫の工具在庫に加える。

図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10