(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】運転支援装置および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241129BHJP
B60W 40/076 20120101ALI20241129BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241129BHJP
B60K 35/215 20240101ALI20241129BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/076
B60K35/23
B60K35/215
B60Q1/00 G
(21)【出願番号】P 2023514211
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015267
(87)【国際公開番号】W WO2022219700
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】下谷 光生
(72)【発明者】
【氏名】宮原 直志
(72)【発明者】
【氏名】上野 義典
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191369(JP,A)
【文献】特開2019-012483(JP,A)
【文献】特開2019-211416(JP,A)
【文献】特開2019-180068(JP,A)
【文献】特開2020-097399(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073636(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0253609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/00 ~ 50/16
B60K 35/00 ~ 35/90
B60Q 1/00 ~ 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する勾配情報取得部と、
前記車両に設けられた照射装置に対して、前記道路の前記勾配情報に基づく少なくとも1つの図形であって、前記車両の前方に存在しかつ前記道路に沿って延伸する対象物の延伸方向に沿って配置される前記少なくとも1つの図形を含む勾配認知パターンを、前記対象物上に照明装置により投影させる制
御を行う支援制御部と、を備え、
前記支援制御部は、予め定められた条件に基づいて支援制御方法を決定する、運転支援装置。
【請求項2】
前記照射装置は、
前記勾配認知パターンを前記対象物上に直接投影する前記照明装置と、
前記勾配認知パターンを
前記車両の運転席の前方に設けられた投影面に投影するHUD(Head-Up Display)の光源部と、を含み、
前記支援制御部は、予め定められた条件に基づいて、前記照明装置によって前記勾配認知パターンを前記対象物上に投影するか、前記HUDの前記光源部によって前記勾配認知パターンを前記投影面に投影するかを決定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記HUDは、3次元立体表示が可能であり、
前記支援制御部は、前記HUDの前記光源部に対して、前記勾配認知パターンとしての前記3次元立体表示を前記投影面に投影させる前記制御を行う、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記対象物は、前記道路の路面を含み、
前記勾配認知パターンは、前記車両の車線領域に基づく予め定められた忌避範囲を避けて投影される、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記支援制御部は、前記車両である第1車両の周辺情報に基づいて、前記勾配認知パターンが前記第1車両の周辺の第2車両に投影されないように、前記照射装置に対して前記制御を行う、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記対象物は、前記道路に沿って設けられた側壁を含み、
前記支援制御部は、前記照明装置に対して前記側壁上に投影させる制御を行う、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記側壁は、トンネルの側壁である、請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記対象物は、前記道路の路面を含み、
前記側壁に対する前記勾配認知パターンは、前記路面に対する前記勾配認知パターンとは異なる、請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記側壁に対する前記勾配認知パターンは、前記少なくとも1つの図形として、前記道路の路面の勾配よりも水平線に近い線分を含む、請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記側壁に対する前記勾配認知パターンは、前記少なくとも1つの図形として、前記道路の路面に対する垂線の傾きよりも重力方向を示す鉛直線に近い線分を含む、請求項6に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記勾配認知パターンの前記少なくとも1つの図形は、前記道路の勾配の角度に応じた図形を含む、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記道路の勾配が変化する勾配変化地点よりも手前の第1地点に投影される前記勾配認知パターンは、前記勾配変化地点よりも先の第2地点に投影される前記勾配認知パターンとは異なる、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記対象物は、前記道路の路面を含み、
前記勾配認知パターンは、前記少なくとも1つの図形として、前記道路の車線の両側端の各々に沿って延伸する複数の線分を含み、
前記道路が水平である場合、前記複数の線分は互いに平行であり、
前記道路が下り勾配である場合、前記複数の線分の間隔は前記車両から離れるにつれて狭くなり、
前記道路が上り勾配である場合、前記複数の線分の間隔は前記車両から離れるにつれて広くなる、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項14】
前記対象物は、前記道路の路面を含み、
前記勾配認知パターンは、前記少なくとも1つの図形として、前記道路の車線の両側端の各々に沿って投影される多角形を含み、
前記多角形は、前記車両から近い方に位置する第1辺と前記車両に遠い方に位置する第2辺とを含み、
前記道路が水平である場合、前記第1辺の長さは前記第2辺の長さと同じであり、
前記道路が下り勾配である場合、前記第1辺は前記第2辺よりも長く、
前記道路が上り勾配である場合、前記第1辺は前記第2辺よりも短い、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項15】
前記車両の位置情報と前記道路の前記勾配情報とに基づいて、前記ドライバに対する前記勾配錯視の発生を推定する勾配錯視推定部を、さらに備える、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項16】
前記車両の位置情報と過去に勾配錯視が発生したことを示す勾配錯視発生エリア情報とに基づいて、前記ドライバに対する前記勾配錯視の発生を推定する勾配錯視推定部を、さらに備える、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項17】
前記車両の位置情報と前記道路の前記勾配情報と前記ドライバの生理状態または心理状態とに基づいて、または、前記車両の位置情報と勾配錯視発生エリア情報と前記ドライバの状態とに基づいて、前記ドライバに対する前記勾配錯視の発生を推定する勾配錯視推定部を、さらに備える、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項18】
車両のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得し、
前記車両に設けられた照射装置に対して、前記道路の前記勾配情報に基づく少なくとも1つの図形であって、前記車両の前方に存在しかつ前記道路に沿って延伸する対象物の延伸方向に沿って配置される前記少なくとも1つの図形を含む勾配認知パターンを、前記対象物上に照明装置により投影させる制
御を行い、
予め定められた条件に基づいて支援制御方法を決定する、運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドライトによる照明以外に、車両の周辺に文字または図形を投影する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、車両の自動走行制御に関する予告情報を、車両の前方の路面または車両のウィンドウに表示する車両用照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行環境によっては、ドライバは、実際の勾配とは異なる勾配の道路を車両が走行していると錯覚する場合がある。この現象は、勾配錯視と言われる。勾配錯視の発生しやすい道路であっても、ドライバにはその道路の勾配に応じた適切な運転が求められる。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するため、道路の勾配に関する情報をドライバに対して視覚的に知らせる運転支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る運転支援装置は、勾配情報取得部および支援制御部を備える。勾配情報取得部は、車両のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する。支援制御部は、車両に設けられた照射装置に対して、勾配認知パターンを、対象物上に照明装置により投影させる制御を行う。その対象物は、車両の前方に存在しかつ道路に沿って延伸している。勾配認知パターンは、道路の勾配情報に基づく少なくとも1つの図形を含む。その少なくとも1つの図形は、対象物の延伸方向に沿って配置されている。支援制御部は、予め定められた条件に基づいて支援制御方法を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、道路の勾配に関する情報をドライバに対して視覚的に知らせる運転支援装置が提供される。
【0008】
本開示の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における運転支援装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
【
図5】勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
【
図6】勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
【
図7】勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
【
図8】勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
【
図9】勾配認知パターンが投影されていない路面を示す図である。
【
図10】勾配認知パターンが投影されている路面を示す図である。
【
図11】運転支援装置が含む処理回路の構成の一例を示す図である。
【
図12】運転支援装置が含む処理回路の構成の別の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態2における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図20】勾配認知パターンの別の一例を示す図である。
【
図21】勾配認知パターンの別の一例を示す図である。
【
図22】勾配認知パターンの別の一例を示す図である。
【
図23】勾配認知パターンの別の一例を示す図である。
【
図24】実施の形態2における運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図25】実施の形態3における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図26】実施の形態4における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図27】実施の形態5における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図28】実施の形態6における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図29】実施の形態6における運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図36】実施の形態7における運転支援装置および運転支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図37】実施の形態7における運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図38】実施の形態8における運転支援装置およびそれに関連して動作する装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における運転支援装置101の構成を示す機能ブロック図である。
図1には、運転支援装置101と関連して動作する装置として、測位装置110、地図データベース(地
図DB)記憶装置120、勾配錯視推定装置130および照射装置140が示されている。
【0011】
測位装置110は、車両に搭載されており、車両の位置を検出する。測位装置110は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、車両センサ等を含む。測位装置110は、例えば、GNSS受信機を介して測位データを受信して、車両の位置を検出する。さらに、測位装置110は、地
図DB記憶装置120から地図情報を取得し、マップマッチングを実行してもよい。測位装置110は、各種車両センサによって取得されるセンサ情報を取得して、車両の位置情報を補正してもよい。
【0012】
地
図DB記憶装置120は、高精度地
図DBを記憶している。高精度地
図DBは、例えば、道路の車線における地点ごとに勾配情報を含む。勾配情報とは、縦断勾配の情報である。高精度地
図DBは、勾配錯視発生エリア情報を含んでいてもよい。勾配錯視発生エリア情報とは、過去に、勾配錯視がドライバに発生したエリアに関する情報である。
【0013】
勾配錯視推定装置130は、車両のドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。勾配錯視推定装置130は、例えば、車両の位置情報と道路の勾配情報とに基づいて、勾配錯視の発生を推定する。具体的には、勾配錯視推定装置130は、例えば、車両の走行軌跡における各地点の勾配情報と、車両の進行方向における各地点の勾配情報と、に基づいて、勾配錯視の発生を推定する。勾配錯視推定装置130は、車両の位置情報と勾配錯視発生エリア情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定してもよい。
【0014】
勾配錯視は、以下に示される状態を含む。
図2および
図3は、勾配錯視が生じる得る状況を示す図である。
図2は現実の状態を示し、
図3は勾配錯視の状態を示す。車両1が長い下り坂を走行している場合において、ドライバは勾配のない道路を走行していると錯覚する。図示は省略するが、道路が上り坂である場合も同様である。車両1が長い上り坂を走行している場合、ドライバは勾配のない道路を走行していると錯覚することがある。
【0015】
図4および
図5は、勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
図4は現実の状態を示し、
図5は勾配錯視の状態を示す。
図4に示されるように、下り坂の先には、その下り坂よりも勾配が緩やかな道路が続いている。車両1の前方には、勾配が変化する地点(以下、勾配変化地点2と言う。)が存在する。
図5に示されるように、ドライバは、現在、勾配のない道路を走行しており、その車両1の前方に上り坂が存在していると錯覚する。図示は省略するが、道路が上り坂である場合も同様である。例えば、車両1が緩やかな上り坂を走行しており、車両1の前方にさらに急な上り坂が続いている場合、ドライバは、現在、勾配のない道路を走行しており、車両1の前方に上り坂が存在すると錯覚することがある。
図2から
図5に示される勾配錯視は、縦断勾配錯視と言われる。
【0016】
図6から
図8は、勾配錯視が生じ得る別の状況を示す図である。
図6は、道路の平面構成を示している。
図7および8は、道路の勾配の程度を示している。その勾配の程度に関して、
図7は現実の状態を示し、
図8は勾配錯視の状態を示す。
図6に示されるように、車両1は本線3を走行しており、車両1の前方には分岐車線4が存在する。本線3および分岐車線4ともに下り坂であるが、分岐車線4の勾配は本線3の勾配よりも急である。この場合、
図8に示されるように、ドライバは、車両1が現在走行している本線3の勾配と分岐車線4の勾配とが同じであり、分岐点から先に延伸する本線3の勾配が緩やかであると錯覚する。言い換えると、ドライバは、分岐車線4の下り勾配が、現実よりも緩やかであると錯覚する。ここでは、図示は省略するが、本線3および分岐車線4が上り坂である場合も同様である。
【0017】
照射装置140は、車両1に設けられている。照射装置140は、例えば、室外照明装置である。室外照明装置は、車両1の室外に取り付けられている。室外照明装置は、ヘッドライトと兼用であってもよいし、ヘッドライトとは別の照明装置であってもよい。照射装置140は、HUD(Head-Up Display)の光源部であってもよい。HUDは、車両1の室内に設けられている。
【0018】
運転支援装置101は、勾配情報取得部10および支援制御部20を備える。
【0019】
勾配情報取得部10は、車両1のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する。例えば、勾配情報取得部10は、勾配錯視推定装置130によって勾配錯視の発生が推定された場合に、車両1の進行方向における車線の勾配情報を、地
図DB記憶装置120から取得する。
【0020】
支援制御部20は、照射装置140に対して、勾配認知パターンを対象物上に投影させる制御を行う。その対象物は、車両1の前方に存在しかつ道路に沿って延伸している。勾配認知パターンは、道路の勾配情報に基づく少なくとも1つの図形を含む。その少なくとも1つの図形は、対象物の延伸方向に沿って配置されている。対象物は、例えば、その道路の路面、路面に描かれた車線の境界線、または、その道路の側方に設けられた側壁等である。
【0021】
支援制御部20は、照射装置140に対して、勾配認知パターンを車両1の運転席の前方に設けられた投影面に投影させて、対象物に重畳表示させる制御を行ってもよい。投影面は、HUDのスクリーンであってもよいし、車両1のフロントウィンドウであってもよい。
【0022】
照射装置140は、支援制御部20の制御に従い、勾配認知パターンを車両1の前方の対象物上に投影する、または、勾配認知パターンを車両1の前方の投影面に投影する。
【0023】
図9は、勾配認知パターンが投影されていない路面を示す図である。車両1は道路の右側の車線6を走行しており、車両1の前方の路面はヘッドライトによって照明されている。
【0024】
図10は、勾配認知パターン5が投影されている路面を示す図である。ヘッドライトの照明に加え、照射装置140による勾配認知パターン5が路面に投影されている。ここでは、勾配認知パターン5は、車両1が走行している右側の車線6の両側端に沿った1対の直線パターンである。なお、照射装置140が勾配認知パターン5を投影することを、以下、アシスト照射とも言う。
【0025】
このように、勾配認知パターン5が路面に投影されることにより、ドライバは、道路の勾配を視覚的に認知する。言い換えると、勾配認知パターン5は、ドライバに道路の勾配を認知させるためのパターンである。例えば、ドライバは勾配認知パターン5によって道路の勾配を認知し、ドライバが勾配錯視の状態であることを認識する、または、勾配錯視の状態に陥りそうであることを予め認識する。
【0026】
図11は、運転支援装置101が含む処理回路90の構成の一例を示す図である。勾配情報取得部10および支援制御部20の各機能は、処理回路90により実現される。言い換えると、処理回路90は、勾配情報取得部10および支援制御部20を有する。
【0027】
処理回路90が専用のハードウェアである場合、処理回路90は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた回路等である。勾配情報取得部10および支援制御部20の各機能は、複数の処理回路により個別に実現されてもよいし、1つの処理回路によりまとめて実現されてもよい。
【0028】
図12は、運転支援装置101が含む処理回路の構成の別の一例を示す図である。処理回路は、プロセッサ91とメモリ92とを有する。プロセッサ91がメモリ92に格納されたプログラムを実行することにより、勾配情報取得部10および支援制御部20の各機能が実現される。例えば、プログラムとして記載されたソフトウェアが、プロセッサ91によって実行されることにより、各機能が実現される。このように、運転支援装置101は、プログラムを格納するメモリ92と、そのプログラムを実行するプロセッサ91とを有する。
【0029】
プログラムには、運転支援装置101が、車両1のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する機能が記載されている。さらにプログラムには、運転支援装置101が、車両1に設けられた照射装置140に対して、勾配認知パターン5を、対象物上に投影させる制御を行う機能が記載されている。または、プログラムには、運転支援装置101が、照射装置140に対して、勾配認知パターン5を、車両1の運転席の前方に設けられた投影面に投影させて対象物に重畳表示させる制御を行う機能が記載されている。その対象物は、車両1の前方に存在しかつ道路に沿って延伸している。勾配認知パターン5は、道路の勾配情報に基づく少なくとも1つの図形を含む。その少なくとも1つの図形は、対象物の延伸方向に沿って配置されている。プログラムは、勾配情報取得部10および支援制御部20の手順または方法をコンピュータに実行させるものである。
【0030】
プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等である。メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリである。または、メモリ92は、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体であってもよい。
【0031】
上記の勾配情報取得部10および支援制御部20の各機能は、一部が専用のハードウェアによって実現され、他の一部がソフトウェアにより実現されてもよい。処理回路は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって、上記の各機能を実現する。
【0032】
図13は、実施の形態1における運転支援方法を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS1にて、勾配情報取得部10は、車両1のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する。例えば、勾配情報取得部10は、勾配錯視推定装置130によって勾配錯視の発生が推定された場合に、車両1の進行方向における車線6の勾配情報を、地
図DB記憶装置120から取得する。
【0034】
ステップS2にて、支援制御部20は、照射装置140に対して、勾配認知パターン5を対象物上に投影させる制御を行う。または、支援制御部20は、照射装置140に対して、勾配認知パターン5を運転席の前方の投影面に投影させて、対象物に重畳表示させる制御を行う。
【0035】
照射装置140は、支援制御部20の制御に従ってアシスト照射を行う。すなわち、照射装置140は、勾配認知パターン5を対象物上に投影する。または、照射装置140は、勾配認知パターン5を投影面に投影する。
【0036】
以上をまとめると、実施の形態1における運転支援装置101は、勾配情報取得部10および支援制御部20を備える。勾配情報取得部10は、車両1のドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する。支援制御部20は、車両1に設けられた照射装置140に対して、勾配認知パターン5を、対象物上に投影させる制御を行う。または、支援制御部20は、照射装置140に対して、勾配認知パターン5を車両1の運転席の前方に設けられた投影面に投影させて対象物に重畳表示させる制御を行う。その対象物は、車両1の前方に存在しかつ道路に沿って延伸している。勾配認知パターン5は、道路の勾配情報に基づく少なくとも1つの図形を含む。その少なくとも1つの図形は、対象物の延伸方向に沿って配置されている。
【0037】
このような運転支援装置101は、道路の勾配に関する情報をドライバに対して視覚的に知らせる。ドライバは、運転支援装置101によって道路の勾配を、視覚を通じて認知する。
【0038】
例えば、上記のように車両の走行環境によっては、ドライバは、実際の勾配とは異なる勾配の道路を車両が走行していると錯覚する。その場合、ドライバは、適切なアクセル操作またはブレーキ操作を行わない可能性がある。しかし、運転支援装置101によれば、ドライバは勾配認知パターン5によって実際の勾配を認知することから、アクセルおよびブレーキを適切に操作する。
【0039】
<実施の形態2>
実施の形態2における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態2は実施の形態1の下位概念である。実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0040】
図14は、実施の形態2における運転支援装置102および運転支援システム202の構成を示すブロック図である。運転支援システム202は、運転支援装置102、測位装置110、地
図DB記憶装置120および照射装置140を含む。照射装置140は、室外照明装置141を含む。
【0041】
運転支援装置102は、勾配錯視推定部30、勾配情報取得部10および支援制御部20を含む。勾配錯視推定部30は、実施の形態1における勾配錯視推定装置130に対応する。
【0042】
勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と道路の車線6の勾配情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。勾配錯視推定部30は、ドライバに勾配錯視が既に発生していることを推定してもよいし、ドライバに勾配錯視が発生する可能性を推定してもよい。勾配錯視推定部30は、例えば、車両1の走行軌跡における各地点の勾配情報と、車両1の進行方向における各地点の勾配情報と、に基づいて、勾配錯視の発生を推定する。以下に、勾配錯視推定手法(a)から(e)を例示する。
【0043】
(a)勾配錯視推定部30は、車両1が予め定められた勾配以上の車線6を予め定められた距離以上走行しており、かつ、その予め定められた勾配以上の車線6が車両1の進行方向に続いている場合、ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いと推定する。下り坂の傾斜がマイナスの値(例えばマイナスの角度)で表され、上り坂の傾斜がプラスの値(例えばプラスの角度)で表される場合、勾配とはそれらの絶対値である。予め定められた距離は、例えば、100mである。その距離は、例えば、車両1の速度が遅いほど短い距離に設定される。予め定められた勾配は、例えば、下り坂および上り坂ともに5%である。上り坂に設定される勾配と下り坂に設定される勾配とは、互いに同一でなくてもよい。車両1の速度は、上り坂よりも下り坂において出やすいことから、下り坂における予め定められた勾配は4%であってもよい。予め定められた勾配は、予め定められた距離における勾配の平均値、中央値、移動平均値など、統計的に算出された値であってもよい。これら予め定められた勾配および距離は、勾配錯視の発生しやすさに応じて、つまり道路ごとに異なっていてもよい。
【0044】
(b)勾配錯視推定部30は、車両1が予め定められた勾配以上の車線6を予め定められた時間以上走行しており、かつ、その予め定められた勾配以上の車線6が車両1の進行方向に続いている場合、ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いと推定してもよい。予め定められた時間は、例えば10秒である。
【0045】
(c)勾配錯視推定部30は、車両1が予め定められた勾配以上の車線6を予め定められた距離以上走行しており、かつ、車両1の進行方向において本線3から分かれる分岐車線4の勾配と本線3の勾配とに予め定められた勾配差が存在する場合、ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いと推定してもよい。予め定められた勾配差とは、例えば、4%である。
【0046】
(d)勾配錯視推定部30は、車両1が予め定められた勾配以上の車線6を予め定められた距離以上走行しており、かつ、車両1の前方の予め定められた範囲に勾配変化地点2が存在する場合、ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いと推定してもよい。予め定められた範囲とは、例えば、50m以上100m以内である。
【0047】
(e)勾配錯視推定部30は、刊行物に記載の方法によって、勾配錯視の発生を推定してもよい。刊行物とは、例えば、對梨成一、北岡明佳、「縦断勾配錯視の研究」、Japanese Psychological Review, 2012, Vol. l56, NO.3, p. 400-409、北岡明佳、「坂道錯視はなぜ起きる?どこで見られる?」、VISION, 2020, Vol. 32, No. 2, p. 45-46、である。
【0048】
勾配情報取得部10は、勾配錯視推定部30によって、ドライバに既に勾配錯視が発生している、または、今後ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いと推定された場合に、車両1の進行方向における車線6の勾配情報を、地
図DB記憶装置120から取得する。
【0049】
支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を対象物上に投影させる制御を行う。実施の形態2における対象物は路面、または、路面に描画された車線6の境界線(例えば白線)である。勾配認知パターン5は、道路の勾配情報に基づく図形を含み、その図形は、対象物の延伸方向に沿って配置される。支援制御部20は、例えば、高精度地
図DBに含まれる道路形状データに基づいて、勾配認知パターン5の図形を道路の延伸方向に配置してもよい。道路形状データとは、道路リンク、車線リンク等である。
【0050】
勾配認知パターン5は、車線6の勾配の大きさおよび勾配の方向に応じた図形、つまり勾配の角度に応じた図形を含む。
図15から
図19は、勾配認知パターン5の一例をそれぞれ示す図である。
図15から
図19は、車線6が下り坂である場合の勾配認知パターン5を示している。ただし、
図15から
図19には、車線6の図示を省略している。
【0051】
図15に示される勾配認知パターン5は、車線6の両側端の各々に沿って投影される複数の多角形を含む。言い換えると、複数の多角形が車線6の両側端に沿って配置されている。複数の多角形が配置される領域の長さは、例えば、20mである。各多角形は、車両1に近い方に位置する第1辺と、車両1から遠い方に位置する第2辺とを含む。ここでは、車線6が下り坂であることから、各多角形は第1辺が第2辺よりも長い台形である。第1辺の長さと第2辺の長さとの差は、勾配の大きさに対応していてもよい。図示は省略するが、車線6の勾配が水平である場合、支援制御部20は、第1辺の長さと第2辺の長さとが互いに同じである矩形を勾配認知パターン5として採用する。車線6が上り坂である場合、支援制御部20は、第1辺が第2辺よりも短い台形を勾配認知パターン5として採用する。また、車線6が下り坂である場合、多角形の大きさが車両1から離れるにつれて小さく投影され、車線6が上り坂である場合、多角形の大きさが車両1から離れるにつれて大きく投影されてもよい。
【0052】
図16に示される勾配認知パターン5は、車線6の両側端に沿って投影される1対の細長い台形である。
【0053】
図17に示される勾配認知パターン5は、
図16に示される細長い台形に、車線6の勾配に対応する影が付加された態様を有する。
【0054】
図18に示される勾配認知パターン5は、車線6の両側端の各々に沿って投影される複数の横線を含む。ここでは、車線6が下り坂であることから、複数の横線のうち、車両1に近い方の第1横線は、車両1から遠い方の第2横線よりも長い。また、第1横線は、第2横線よりも太い。好ましくは、各横線の端部のうち、車線6の内側に位置する端部は車線6の延伸方向に揃っている。車線6の外側に位置する端部は、
図18における破線矢印に示されるように、車両1から離れるにつれて車線6の内側にカーブするように配置される。図示は省略するが、車線6の勾配が水平である場合、第1横線の長さおよび太さは、第2横線の長さおよび太さとそれぞれ同じである。車線6が上り坂である場合、第1横線は第2横線よりも短くかつ細い。
【0055】
図19に示される勾配認知パターン5は、図形に加えて、勾配情報に基づく文字パターンを含む。ここでは、文字パターンは、勾配の大きさ「5%」および方向「下り」を示す文字を含む。
【0056】
図20から
図23は、勾配認知パターン5の別の一例をそれぞれ示す図である。
図20から
図23は、車両1の前方に勾配変化地点2が存在する場合の勾配認知パターン5を示している。勾配変化地点2よりも手前の第1地点に投影される勾配認知パターン5は、勾配変化地点2よりも先の第2地点に投影される勾配認知パターン5とは異なる。なお、
図20から
図23には、車線6の図示を省略している。
【0057】
図20に示される勾配認知パターン5は、
図15と同様に、複数の多角形を含む。
図20においては、車線6の勾配が勾配変化地点2を境に下りから水平に変化している。勾配変化地点2よりも手前の第1地点には台形が投影される。その台形の第1辺の長さは第2辺の長さよりも長い。勾配変化地点2よりも先の第2地点には矩形が投影される。支援制御部20は、実際の車線6の勾配変化地点2と勾配認知パターン5の投影態様の変化点とが一致するように、室外照明装置141を制御する。また、支援制御部20は、第1地点の台形の色彩と第2地点の矩形の色彩とが互いに異なるように、室外照明装置141を制御してもよい。図示は省略するが、第1地点が下り坂であり第2地点がさらに勾配が急な下り坂である場合、または、第1地点が下り坂であり第2地点が上り坂である場合も、多角形の第1辺の長さと第2辺の長さとによって、車線6の勾配の方向および大きさとが表される。
【0058】
図21に示される勾配認知パターン5は、第1地点の下り坂を表す台形と、第2地点の上り坂を表す台形とを含む。各台形は、車線6の勾配に応じた色または模様で表示される。
図20の勾配認知パターン5は、グラディエーションの強弱および変化の方向によって、勾配の大きさおよび方向を表している。
【0059】
図22に示される勾配認知パターン5は、
図18と同様に、複数の横線を含む。以下、勾配変化地点2よりも手前の領域つまり第1地点を含む領域を第1領域、勾配変化地点2よりも先の領域つまり第2地点を含む領域を第2領域と言う。
図22のいては、車線6の勾配が勾配変化地点2を境に下りから水平に変化している。第1領域に投影される複数の横線の長さは、車両1から離れるにつれて短くなる。第2領域に投影される複数の横線の長さは、一定である。
【0060】
図23に示される勾配認知パターン5は、車線6の両側端の各々に沿って延伸する複数の線分を含む。
図23においては、車線6の勾配が勾配変化地点2を境に下りから水平に変化している。第1領域に投影される複数の線分の間隔は、車両1から離れるにつれて狭くなる。第2領域に投影される複数の線分は、互いに平行である。図示は省略するが、車線6が上り坂である場合、複数の線分の間隔は車両1から離れるにつれて広くなる。
【0061】
実施の形態2における支援制御部20は、勾配認知パターン5が車線6における予め定められた忌避範囲を避けて投影されるように、室外照明装置141を制御する。
【0062】
忌避範囲は、例えば、車線6の両側端よりも内側の領域、つまり車線6の中央部である。支援制御部20は、例えば、車両1が車線6の中央を走行していると仮定して、勾配認知パターン5の図形が車線6の両側端の境界線(例えば白線)に沿って投影されるように、各図形の投影位置を決定する。この場合、
図10に示されるように、勾配認知パターン5は車線6の中央部には投影されない。支援制御部20は、高精度地
図DBに含まれる道路形状データと、高精度のGNSS情報とに基づいて、車両1の車線6における横方向の位置を検出して、勾配認知パターン5を投影する位置を決定してもよい。例えば、支援制御部20は、道路形状データとGNSS情報とに基づいて、勾配認知パターン5を投影する道路上の境界線の位置を認識してもよい。
【0063】
忌避範囲は、車両1の前端から予め定められた忌避距離以内の領域であってもよい。忌避距離は、例えば、50mである。この場合、
図10に示されるように、勾配認知パターン5は、車両1の前端に近い領域には投影されない。その結果、ドライバは、車両1の前方を認識しやすくなる。
【0064】
図15から
図19は、直線の車線6の路面に対して投影される勾配認知パターン5をそれぞれ示している。車線6がカーブしている場合であっても、支援制御部20はその車線6のカーブに沿って勾配認知パターン5が投影されるように、室外照明装置141を制御する。
【0065】
勾配認知パターン5は、車線6の両側端に沿って投影される図形に限定されるものではない。勾配認知パターン5は、車線6の中央部に投影される1つの図形であってもよい。勾配認知パターン5は、車線6の両側端のうちいずれか一方の側端に投影されてもよい。勾配認知パターン5は、複数の図形が1列または2列に配置されたパターンに限定されるものではなく、複数の図形が3列以上に配置されたパターンであってもよい。勾配認知パターン5を構成する図形は多角形に限定されるものではなく、円形であってもよい。勾配認知パターン5の図形には、種々の形状が適用可能である。支援制御部20は、車両1の走行環境等に応じて、ドライバに視覚的に認知されやすい勾配認知パターン5を採用することが好ましい。
【0066】
以上の勾配錯視推定部30、勾配情報取得部10および支援制御部20の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0067】
図24は、実施の形態2における運転支援方法を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS10にて、勾配錯視推定部30は、測位装置110で検出された車両1の位置情報を取得する。
【0069】
ステップS20にて、勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報に基づいて、地
図DB記憶装置120から勾配情報を取得する。
【0070】
ステップS30にて、勾配錯視推定部30は、ドライバに勾配錯視が発生する可能性が高いか否かを推定する。勾配錯視が発生する可能性が高いと推定された場合、ステップS40が実行される。勾配錯視が発生する可能性が高くないと推定された場合、ステップS60が実行される。
【0071】
ステップS40にて、勾配情報取得部10は、ドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を取得する。勾配情報取得部10は、地
図DB記憶装置120または勾配錯視推定部30から車両1の進行方向における車線6の勾配情報を取得する。
【0072】
ステップS50にて、支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を路面上に投影させる制御を行う。この際、支援制御部20は、勾配認知パターン5と、その勾配認知パターン5を投影する位置および範囲を決定する。例えば、支援制御部20は、
図15から
図19に示される勾配認知パターン5のうちいずれかを選択し、その投影位置を車線6の両側端の境界線(例えば白線)上に決定する。室外照明装置141は、支援制御部20の制御に従ってアシスト照射を行う。つまり、室外照明装置141は、勾配認知パターン5を、車線6の境界線上に投影する。
【0073】
ステップS60にて、支援制御部20は、室外照明装置141つまり照射装置140が既にアシスト照射を行っているか否かを判定する。照射装置140が既にアシスト照射を行っている場合、ステップS70が実行される。照射装置140がアシスト照射を行っていない場合、ステップS80が実行される。
【0074】
ステップS70にて、支援制御部20は、照射装置140に対して、アシスト照射を終了するように、つまり、勾配認知パターン5の投影を終了するように制御する。
【0075】
ステップS80にて、支援制御部20は、車両1の走行が終了したか否かを判定する。車両1の走行が終了していない場合、再びステップS10が実行される。車両1の走行が終了している場合、運転支援方法は終了する。
【0076】
(実施の形態2の変形例1)
地
図DB記憶装置120に記憶される高精度地
図DBは、過去に、複数の車両のドライバに勾配錯視が発生したことを示す勾配錯視発生エリア情報を含む。その複数の車両のドライバには、勾配認知パターン5を投影する車両1のドライバが含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。言い換えると、勾配錯視発生エリア情報は、過去に、不特定のドライバに勾配錯視が発生したことを示す情報である。勾配錯視発生エリア情報は、不特定のドライバに対する勾配錯視の発生に応じて、適宜更新される。地
図DB記憶装置120は、サーバに設けられていてもよいし、車両1に設けられていてもよい。勾配錯視発生エリア情報は、例えば、勾配錯視が発生しやすい道路の区間の情報を含む。高精度地
図DBは、例えば、勾配錯視発生エリア情報を道路リンクデータに格納する。勾配錯視発生エリア情報は、勾配錯視発生確率のデータを含んでいてもよい。
【0077】
勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と勾配錯視発生エリア情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。勾配錯視推定部30は、例えば、勾配錯視発生確率が予め定められた値以上である場合、ドライバに勾配錯視が発生する確率が高いと推定する。
【0078】
勾配錯視推定部30は、勾配錯視発生確率のデータに基づいて、勾配錯視の発生についての推定基準を変更してもよい。例えば、実施の形態2に記載された勾配錯視推定手法において、勾配錯視推定部30は、勾配錯視の発生確率に応じて、予め定められた勾配、距離、時間、勾配差、範囲等を変更する。
【0079】
(実施の形態2の変形例2)
勾配錯視推定部30は、車両1に設けられた傾斜センサ(図示せず)によって検出される勾配データを、車線6の勾配情報として取得してもよい。勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報とその勾配データとに基づいて、車両1が予め定められた勾配以上の車線6を予め定められた距離以上走行したか否かを判定してもよい。
【0080】
勾配錯視推定部30は、後述する周辺情報検出装置が画像処理によって認識した車両1の前方の道路の勾配情報に基づいて、勾配錯視の発生を推定してもよい。
【0081】
<実施の形態3>
実施の形態3における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態3は実施の形態1の下位概念である。実施の形態3において、実施の形態1または2と同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0082】
図25は、実施の形態3における運転支援装置103および運転支援システム203の構成を示すブロック図である。運転支援システム203は、運転支援装置103、測位装置110、地
図DB記憶装置120、周辺情報検出装置150および照射装置140を含む。照射装置140は、室外照明装置141を含む。
【0083】
周辺情報検出装置150は、車両1の周辺情報を検出する。周辺情報検出装置150は、例えば、車両1に搭載されたカメラ、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等である。周辺情報検出装置150は、例えば、画像処理によって境界線(例えば白線)の位置および車線6の領域を車両1の周辺情報として検出する。または、周辺情報検出装置150は、車両1の周辺を走行する他車両との相対位置を車両1の周辺情報として検出する。他車両とは、車両1の前方を走行する車両、隣接車線を走行する車両、反対車線を走行する車両等である。周辺情報検出装置150は、他車両に代えて、車両1の周辺に存在する歩行者との相対位置を検出してもよい。
【0084】
支援制御部20は、車両1の周辺情報に基づいて、勾配認知パターン5が車線6における予め定められた忌避範囲を避けて投影されるように、室外照明装置141を制御する。
【0085】
例えば、支援制御部20は、車線6の白線の位置情報を取得し、勾配認知パターン5を投影する位置を決定する。支援制御部20は、車線6の両側端の白線上に、勾配認知パターン5が投影されるように室外照明装置141を制御する。この場合、忌避範囲は、車線6の両側端よりも内側の領域、つまり車線6の中央部である。
【0086】
支援制御部20は、他車両との相対位置の情報を取得し、勾配認知パターン5が他車両を避けて投影されるように、室外照明装置141を制御してもよい。この場合、忌避範囲は、他車両の周辺の領域である。
【0087】
支援制御部20は、歩行者との相対位置の情報を取得し、勾配認知パターン5が歩行者を避けて投影されるように、室外照明装置141を制御してもよい。この場合、忌避範囲は、歩行者の周辺の領域である。
【0088】
このような支援制御部20の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0089】
<実施の形態4>
実施の形態4における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態4は実施の形態1の下位概念である。実施の形態4において、実施の形態1から3のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0090】
図26は、実施の形態4における運転支援装置104および運転支援システム204の構成を示すブロック図である。運転支援システム204は、運転支援装置104、測位装置110、地
図DB記憶装置120、周辺情報検出装置150および照射装置140を含む。照射装置140は、室外照明装置141である。
【0091】
周辺情報検出装置150は、画像処理等によって、車両1の周辺の地物を検出する。地物とは、道路以外の動産または不動産であり、例えば、樹木、道路設置物、建物などである。
【0092】
勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報および道路の勾配情報に加えて、車両1の周辺の地物情報に基づいて、勾配錯視の発生を推定する。より詳細には、勾配錯視推定部30は、地物情報に基づいて、車両1の前方に基準地物が存在するか否かを判定する。基準地物とは、その外形に垂直または水平の線分を含む地物である。
【0093】
車両1の前方に存在する基準地物が少ない場合、勾配錯視の発生する可能性が高い。勾配錯視推定部30は、基準地物の個数が予め定められた個数よりも少ない場合、実施の形態2に示された勾配錯視推定手法における予め定められた距離を、より短い距離に変更する、または、予め定められた勾配を、より小さな勾配に変更する。勾配錯視推定部30は、基準地物が予め定められた個数よりも少ない場合、実施の形態2に示された勾配錯視推定手法における勾配錯視発生エリアを、より広いエリアに変更してもよい。つまり、勾配錯視推定部30は、勾配錯視が発生しやすい区間をより長い区間に変更してもよい。
【0094】
周辺情報検出装置150によって、(1)車両1が上り坂を走行しており車両1の前方の大部分には空が検出される場合、(2)車両1がトンネルを走行している場合、または、(3)走行時間帯が夜間であり車線6が検出されにくい場合、勾配錯視推定部30は、基準値物が存在しないと判断してもよい。
【0095】
地
図DB記憶装置120が、地物情報を含む高精度地
図DBを格納している場合、勾配錯視推定部30は、地物情報を、周辺情報検出装置150に代えて、高精度地
図DBから取得してもよい。
【0096】
このような勾配錯視推定部30の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0097】
<実施の形態5>
実施の形態5における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態5は実施の形態1の下位概念である。実施の形態5において、実施の形態1から4のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0098】
図27は、実施の形態5における運転支援装置105および運転支援システム205の構成を示すブロック図である。運転支援システム205は、運転支援装置105、測位装置110、地
図DB記憶装置120、ドライバ状態検出装置160および照射装置140を含む。照射装置140は、室外照明装置141を含む。
【0099】
ドライバ状態検出装置160は、ドライバの状態を検出する。ドライバの状態は、生理状態、心理状態などを含む。生理状態は、例えば、ドライバの覚醒度に基づいている。心理状態は、例えば、ドライバの注意力および慌て具合に関連する。
【0100】
勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と道路の勾配情報とドライバの状態とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。または、勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と勾配錯視発生エリア情報とドライバの状態とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。より詳細には、勾配錯視推定部30は、ドライバの状態が予め定められた状態よりも悪くなるほど、勾配錯視が発生しやすいと推定する。例えば、勾配錯視推定部30は、ドライバの覚醒度が予め定められた程度以下に低下した場合に、または、ドライバの疲労度が予め定められた程度以上に上昇した場合に、勾配錯視が発生しやすいと推定する。勾配錯視推定部30は、ドライバの覚醒度の低下程度が予め定められた低下程度以上である場合に、勾配錯視が発生しやすいと推定してもよい。言い換えると、勾配錯視推定部30は、ドライバの状態に応じて、勾配錯視の発生を推定するための判定条件を変更する。
【0101】
このような勾配錯視推定部30の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0102】
(実施の形態5の変形例)
ドライバ状態検出装置160は、ドライバの運転履歴情報を記憶している。運転履歴情報は、ドライバの年齢、運転操作履歴等を含む。運転操作履歴は、誤発進、逆走、迷走等の誤操作の履歴情報を含む。誤操作とは、ドライバによる勘違いの運転操作を含む。
【0103】
勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と道路の勾配情報とドライバの運転履歴情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。または、勾配錯視推定部30は、車両1の位置情報と勾配錯視発生エリア情報とドライバの運転履歴情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。より詳細には、勾配錯視推定部30は、ドライバの誤操作の回数が予め定められた基準よりも多いほど、勾配錯視が発生しやすいと判断する。言い換えると、勾配錯視推定部30は、ドライバの運転履歴情報に応じて、勾配錯視の発生を推定するための判定条件を変更する。
【0104】
このような勾配錯視推定部30の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0105】
<実施の形態6>
実施の形態6における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態6は実施の形態1の下位概念である。実施の形態6において、実施の形態1から5のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0106】
図28は、実施の形態6における運転支援装置106および運転支援システム206の構成を示すブロック図である。運転支援システム206は、運転支援装置106、測位装置110、地
図DB記憶装置120、周辺情報検出装置150および照射装置140を含む。照射装置140は、室外照明装置141を含む。
【0107】
周辺情報検出装置150は、道路に沿って設けられた側壁を検出する。周辺情報検出装置150は、例えば、画像処理によって側壁の大きさおよび位置を認識する。側壁は、例えば、防音壁、トンネルの側壁、切り通しの山肌等、道路構造物である。側壁は、勾配認知パターン5が投影可能な地物であればよい。周辺情報検出装置150または支援制御部20は、その側壁に勾配認知パターン5を投影可能であるか否かを判定する。
【0108】
支援制御部20は、周辺情報検出装置150から、側壁の情報を取得する。支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を、側壁上に投影させる制御を行う。勾配認知パターン5は、
図15から
図23に示されるパターンと同様である。ただし、実施の形態6においては、1対のパターンのうち一方のパターンが側壁に投影される。例えば、側壁が車両1の左側に検出された場合、支援制御部20は、左側の列のパターンを側壁に投影するよう、室外照明装置141を制御する。対象物がトンネルの側壁である場合、支援制御部20は、トンネル内の照明の色に対して目立つ色調で、勾配認知パターン5を側壁に投影するように、室外照明装置141を制御する。支援制御部20は、側壁だけでなく、路面にも勾配認知パターン5を投影するように、室外照明装置141を制御してもよい。支援制御部20は、他車両との相対位置の情報に基づいて、勾配認知パターン5が他車両に投影されないように、室外照明装置141を制御してもよい。
【0109】
このような支援制御部20の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0110】
図29は、実施の形態6における運転支援方法を示すフローチャートである。ステップS10からS40までは、実施の形態2のそれらと同様である。ステップS40の後に、ステップS42が実行される。
【0111】
ステップS42にて、支援制御部20は、側壁の情報に基づいて、側壁に勾配認知パターン5を投影可能であるか否かを判定する。勾配認知パターン5が投影可能でない場合、ステップS50が実行される。勾配認知パターン5が投影可能である場合、ステップS52が実行される。
【0112】
ステップS50にて、支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を路面上に投影させる制御を行う。このステップS50は、実施の形態2におけるステップS50と同様である。
【0113】
ステップS52にて、支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を側壁上に投影させる制御を行う。この際、支援制御部20は、勾配認知パターン5と、その勾配認知パターン5を投影する位置および範囲を決定する。室外照明装置141は、支援制御部20の制御に従ってアシスト照射を行う、つまり勾配認知パターン5を側壁上に投影する。
【0114】
ステップS60からS80は、実施の形態2のそれらと同様である。
【0115】
地
図DB記憶装置120が、側壁の情報を含む高精度地
図DBを格納している場合、支援制御部20は、側壁の位置情報を、周辺情報検出装置150に代えて、高精度地
図DBから取得してもよい。
【0116】
(実施の形態6の変形例)
側壁に対する勾配認知パターン5は、路面に対する勾配認知パターン5とは異なっていてもよい。例えば、側壁に対する勾配認知パターン5は、路面の勾配よりも水平線に近い線分を含む。その線分の傾きは、好ましくは、道路の勾配の半分以下である。例えば、道路の勾配が下り5%である場合、勾配認知パターン5の線分の傾斜は0以上2.5%以下である。
図30から
図32は、勾配認知パターン5の一例をそれぞれ示す図である。
図30および
図32は、道路が下り坂である場合の勾配認知パターン5を示している。
図31は、道路が上り坂である場合の勾配認知パターン5を示している。
【0117】
図30および
図31に示される勾配認知パターン5は、路面の勾配よりも水平線に近い線分を含む。
図32に示される勾配認知パターン5は、その線分に加えて道路勾配線5Aを含む。道路勾配線5Aは、路面に平行な線分からなる。また、勾配認知パターン5は、勾配情報に基づく文字パターンを含んでいてもよい。
図32においては、「傾斜10%」の文字が側壁に投影されている。
【0118】
側壁に対する勾配認知パターン5は、例えば、路面に対する垂線の傾きよりも鉛直線に近い線分を含んでいてもよい。鉛直線とは、重力方向を示す線である。その線分の傾斜は、好ましくは、垂線と鉛直線とがなす角度の半分以下である。
図33から
図35は、勾配認知パターン5の一例をそれぞれ示す図である。いずれの図においても、車両1は下り坂を走行している。
【0119】
図33に示される勾配認知パターン5は、鉛直線に近い複数の矢印を含む。複数の矢印の始端は、路面に平行な基準線7に沿っている。矢印の向きは、勾配の方向を示す。道路が下り坂である場合、矢印は下向きであり、道路が上り坂である場合、矢印は上向きである。勾配認知パターン5の図形は、複数の矢印に限定されるものではなく、1本の矢印であってもよい。矢印の外形は、鉛直線に近い線分を含んでいる限り、
図33に示される外形に限定されるものではない。
【0120】
図34に示される勾配認知パターン5は、
図33と同様に、鉛直線に近い複数の矢印を含む。複数の矢印の始端は、路面の勾配よりも水平線に近い基準線7に沿っている。
図34においては、複数の矢印の始端は、水平方向に揃っている。道路が下り坂であることから、車両1から遠い矢印ほど、矢印の長さは長い。そのため、道路が下り坂であることが強調される。道路が上り坂である場合、車両1から遠い矢印ほど、矢印の長さは短い。同様に、道路が上り坂であることが強調される。
【0121】
図35に示される勾配認知パターン5は、複数の樹木がデフォルメされた図形を含む。勾配認知パターン5は、複数の樹木図形に限定されるものではなく、1本の樹木図形であってもよい。複数の樹木図形は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、複数の樹木図形は、高さおよび大きさが互いに異なっていてもよい。
【0122】
図示は省略するが、勾配認知パターン5は、樹木のような自然物ではなく、街灯など人工物がデフォルメされた図形を含んでもよい。デフォルメされる図形は、鉛直線に近い線分を含んでいればよい。
【0123】
支援制御部20は、道路が下り坂の場合には、警告色で勾配認知パターン5を投影し、道路が上り坂の場合には、警告色とは異なる色で勾配認知パターン5を投影するよう、室外照明装置141を制御してもよい。警告色とは、赤色、橙色など目立つ色である。警告色とは異なる色とは、青色、緑色など警告色の補色である。勾配変化地点2の前後で、投影態様が異なってもよい。例えば、勾配変化地点2から先の車線6には、ドライバに警告を想起させるような図形またはアニメーションが投影されてもよい。ドライバに警告を想起させるような図形とは、勾配変化地点2の手前の図形よりも大きな図形、鋭角を含む図形等である。
【0124】
側壁に投影される勾配認知パターン5は、上記の図形に限定されるものではない。勾配認知パターン5を構成する図形は、路面の勾配よりも水平線に近い線分、および、路面に対する垂線の傾きよりも鉛直線に近い線分のうち、少なくとも一方を含んでいればよい。
【0125】
<実施の形態7>
実施の形態7における運転支援装置、運転支援システムおよび運転支援方法を説明する。実施の形態7は実施の形態1の下位概念である。実施の形態7において、実施の形態1から6のいずれかと同様の構成要素には、同一の参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0126】
図36は、実施の形態7における運転支援装置107および運転支援システム207の構成を示すブロック図である。運転支援システム207は、運転支援装置107、測位装置110、地
図DB記憶装置120、周辺情報検出装置150および照射装置140を含む。
【0127】
周辺情報検出装置150は、照度センサ151を含む。照度センサ151は、車両1に搭載されており、車両1の周辺情報として、車両1の周辺の照度を検出する。
【0128】
照射装置140は、室外照明装置141およびHUDの光源部142を含む。HUDは、車両1の室内に設けられる。HUDの光源部142は、表示オブジェクトを投影面に投影する。投影面は、HUDのスクリーンであってもよいし、車両1のフロントウィンドウであってもよい。
【0129】
支援制御部20は、HUDの光源部142に対して、勾配認知パターン5を車両1の運転席の前方に設けられた投影面に投影させる制御を行う。勾配認知パターン5が投影面に投影される場合、勾配認知パターン5を構成する図形を表示オブジェクトと言う。支援制御部20は、表示オブジェクトが投影面を介して対象物に重畳表示されるように、投影面における表示オブジェクトの位置を決定する。つまり、支援制御部20は、HUDの光源部142に対して、勾配認知パターン5を対象物に重畳表示させる制御を行う。
【0130】
実施の形態7における支援制御部20は、予め定められた条件に基づいて、室外照明装置141によって勾配認知パターン5を対象物上に投影するか、HUDの光源部142によって勾配認知パターン5を投影面に投影するかを決定する。その条件は、例えば、車両1の周辺の照度に関する条件である。
【0131】
このような支援制御部20の機能は、
図11または
図12に示される処理回路によって実現される。
【0132】
図37は、実施の形態7における運転支援方法を示すフローチャートである。ステップS10からS40までは、実施の形態2のそれらと同様である。ステップS40の後に、ステップS44が実行される。
【0133】
ステップS44にて、支援制御部20は、車両1の周辺の照度が予め定められた基準照度以上であるか否かを判定する。基準照度は、例えば、車両1のヘッドライトによる照明が必要となる照度であり、100ルクス程度ある。
【0134】
基準照度は、室外照明装置141によって投影される勾配認知パターン5の輝度に応じた照度である。例えば、勾配認知パターン5の輝度が高いほど、上記判定に用いられる基準照度は高い値に設定される。すなわち、車両1の周辺の照度が高くても、高い輝度で投影される勾配認知パターン5はドライバに明確に認知されることから、上記判定に用いられる基準照度は高い値に設定される。
【0135】
基準照度は、室外照明装置141によって投影される勾配認知パターン5の投影位置に応じた照度であってもよい。例えば、投影位置が車両1に近いほど、上記判定に用いられる基準照度は高い値に設定される。すなわち、車両1の周辺の照度が高くても、車両1の近くに投影される勾配認知パターン5はドライバに明確に認知されることから、上記判定に用いられる基準照度は高い値に設定される。
【0136】
このステップS44において、車両1の周辺の照度が基準照度未満である場合、ステップS50が実行される。車両1の周辺の照度が基準照度以上である場合、ステップS54が実行される。
【0137】
ステップS50にて、支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を路面上に投影させる制御を行う。このステップS50は、実施の形態2におけるステップS50と同様である。
【0138】
ステップS54にて、支援制御部20は、HUDの光源部142に対して、勾配認知パターン5を投影面に投影させて、対象物に重畳表示させる制御を行う。この際、支援制御部20は、勾配認知パターン5と、その勾配認知パターン5を投影する位置および範囲を決定する。HUDの光源部142は、支援制御部20の制御に従ってアシスト照射を行う。例えば、
図10および
図15から
図23に示される勾配認知パターン5のうち、いずれかのパターンが投影面に投影される。その投影面上の勾配認知パターン5の図形、すなわち表示オブジェクトは、ドライバの前方の車線6の境界線(例えば白線)上に重畳表示される。
【0139】
ステップS60からS80は、実施の形態2のそれらと同様である。
【0140】
(実施の形態7の変形例1)
支援制御部20は、室外照明装置141に対して、勾配認知パターン5を対象物上に投影させる制御を行い、かつ、HUDの光源部142に対して、勾配認知パターン5を投影面に投影させる制御を行ってもよい。車両1の前方の対象物および運転席の前方の投影面の両方に、勾配認知パターン5が投影される。
【0141】
(実施の形態7の変形例2)
予め定められた条件は、車両1のヘッドライトのオンオフに関する条件であってもよい。ヘッドライトがオンの場合、支援制御部20は、室外照明装置141に対して、アシスト照射の実行を制御する。ヘッドライトがオフの場合、支援制御部20は、HUDの光源部142に対して、アシスト照射の実行を制御する。
【0142】
予め定められた条件は、ユーザによって設定された条件であってもよい。言い換えると、ドライバは、室外照明装置141によるアシスト照射を実行するか、HUDの光源部142によるアシスト照射を実行するか、選択可能である。
【0143】
(実施の形態7の変形例3)
勾配認知パターン5が投影面に投影される場合、支援制御部20は、勾配認知パターン5の表示オブジェクトの虚像距離が、対象物の実像距離と一致するように制御する。虚像距離とは、ドライバの眼から表示オブジェクトの虚像までの距離である。実像距離とは、ドライバの眼から対象物の実像までの距離である。ドライバの眼の位置は、例えば、ドライバモニタリングシステムのような検出装置によって検出される。または、ドライバの眼の位置は、運転席のシートの位置およびシートの傾きの情報に基づいて推定される運転席上の1つの点であってもよい。
【0144】
このような制御により、勾配認知パターン5の表示オブジェクトが、車両1の外部に存在する対象物に重畳されるように、投影面に表示される。
【0145】
(実施の形態7の変形例4)
HUDは、3次元立体表示機能を有する。支援制御部20は、HUDの光源部142に対して、勾配認知パターン5を、3次元立体表示で投影面に投影させる制御を行う。HUDは、例えば、
図30から
図35に示されるような線分、矢印、樹木図形等を、3次元表示オブジェクトとして投影面に投影する。ドライバは、表示オブジェクトの奥行きを知覚する。その結果、必ずしも道路の側壁が存在しなくても、ドライバは、表示オブジェクトの奥行きを知覚し、空間の水平または垂直を認識する。
【0146】
(実施の形態7の変形例5)
図36に示されるように、周辺情報検出装置150は、カメラ152を含む。周辺情報検出装置150は、カメラ152の画像を処理して、車両1とその周辺の他車両との相対位置、または、車両1とその周辺の歩行者との相対位置を、車両1の周辺情報として検出する。カメラ152に代えて、ミリ波レーダ、LIDAR等が、周辺情報検出装置150として車両1に搭載されていてもよい。
【0147】
支援制御部20は、それら相対位置の情報に基づいて、勾配認知パターン5が他車両または歩行者に投影されるか否か判定する。勾配認知パターン5が他車両または歩行者に投影される場合、支援制御部20は、HUDの光源部142による勾配認知パターン5の投影を決定する。
【0148】
(実施の形態7の変形例6)
支援制御部20は、勾配認知パターン5が予め定められた忌避範囲を避けて投影されるように、HUDの光源部142を制御する。忌避範囲とは、車両1の前端から予め定められた忌避距離以内の範囲である。忌避範囲内においては、表示オブジェクトは対象物に重畳表示されないため、ドライバは車両1の前方を認識しやすくなる。
【0149】
<実施の形態8>
以上の各実施の形態に示された運転支援装置は、車両1に搭載されたナビゲーション装置と、通信端末と、サーバと、これらにインストールされるアプリケーションの機能とを適宜に組み合わせて構築されるシステムにも適用することができる。ここで、ナビゲーション装置とは、例えば、PND(Portable Navigation Device)などを含む。通信端末とは、例えば、携帯電話、スマートフォンおよびタブレットなどの携帯端末を含む。
【0150】
図38は、実施の形態8における運転支援装置101およびそれに関連して動作する装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0151】
運転支援装置101、勾配錯視推定装置130、地
図DB記憶装置120および通信装置170がサーバ300に設けられている。勾配錯視推定装置130は、測位装置110で検出される車両1の位置情報と、地
図DB記憶装置120に格納された道路の勾配情報とに基づいて、ドライバに対する勾配錯視の発生を推定する。運転支援装置101は、ドライバに勾配錯視が発生すると推定される道路の勾配情報を、例えば、地
図DB記憶装置120から取得する。運転支援装置101は、車両1の照射装置140に対して、勾配認知パターン5を対象物上に投影させる制御を、通信装置170および通信装置180を介して行う。または、運転支援装置101は、車両1の照射装置140に対して、勾配認知パターン5を車両1の運転席の前方に設けられた投影面に投影させて、対象物に重畳表示させる制御を、通信装置170および通信装置180を介して行う。
【0152】
運転支援装置101がサーバ300に配置されることにより、車載装置の構成が簡素化される。
【0153】
また、運転支援装置101の機能あるいは構成要素の一部がサーバ300に設けられ、他の一部が車両1に設けられるなど、それらは分散して配置されてもよい。
【0154】
本開示は、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0155】
本開示は、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 車両、2 勾配変化地点、3 本線、4 分岐車線、5 勾配認知パターン、5A 道路勾配線、6 車線、7 基準線、10 勾配情報取得部、20 支援制御部、30 勾配錯視推定部、90 処理回路、91 プロセッサ、92 メモリ、101~107 運転支援装置、110 測位装置、120 地
図DB記憶装置、130 勾配錯視推定装置、140 照射装置、141 室外照明装置、142 光源部、150 周辺情報検出装置、151 照度センサ、152 カメラ、160 ドライバ状態検出装置、170 通信装置、180 通信装置、202~207 運転支援システム、300 サーバ。