(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電池のセパレータ及びその塗布工程、塗布システム及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/403 20210101AFI20241129BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20241129BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20241129BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/403 A
H01M50/434
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/449
H01M50/417
H01M50/403 F
H01M50/457
(21)【出願番号】P 2023516546
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021118234
(87)【国際公開番号】W WO2022089065
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】202011187428.3
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518289715
【氏名又は名称】上海恩捷新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.155,Nanlu Road,Pudong New District,Shanghai 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】程 躍
(72)【発明者】
【氏名】廖 晨博
(72)【発明者】
【氏名】陳 永楽
(72)【発明者】
【氏名】庄 志
(72)【発明者】
【氏名】単 華靖
(72)【発明者】
【氏名】劉 倩倩
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/157656(WO,A1)
【文献】特開2016-032934(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105702899(CN,A)
【文献】特開2008-146963(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105903648(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111180640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池のセパレータの塗布方法であって、
ポリオレフィンフィルムを初期に熱固定する工程と、
ポリオレフィンフィルム上にオンライン塗布を行う工程と、
ポリオレフィンフィルムのオンライン塗布と同時に、塗布スラリーの液体状態で塗布フィルムがMD方向に0.1~10%収縮するように制御する工程と、
塗布フィルムを熱固定する工程と、を順に備える、
ことを特徴とする電池のセパレータの塗布方法。
【請求項2】
ポリオレフィンフィルムを初期に熱固定する工程では、温度が70℃~120℃に制御され、
塗布フィルムを熱固定する工程では、温度が70℃~130℃に制御される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池のセパレータの塗布方法。
【請求項3】
前記塗布フィルムの塗層は、セラミック塗層、PVDF塗層、ポリアクリル酸系塗層、アラミド塗層のうちのいずれか一種又は二種以上の複合体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池のセパレータの塗布方法。
【請求項4】
ポリオレフィンフィルム上にオンライン塗布を行う塗布方式は、スプレー、ナイフ塗布、グラビア塗布、ワイヤロッド塗布、スリット塗装、押出塗装及び浸漬塗布のうちのいずれか一種又は複数種の組み合わせである、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池のセパレータの塗布方法。
【請求項5】
電池のセパレータの塗布システムであって、
ポリオレフィンフィルムの熱固定を行う進行経路には、多段のオーブンが設けられ、
隣接するオーブンの間には、ポリオレフィンフィルムに塗布スラリーを塗布するための塗布装置が設けられ、
塗布装置とオーブンとの間には、塗布フィルムの収縮を制御するための収縮制御装置が設けられる、
ことを特徴とする電池のセパレータの塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池のセパレータの分野に関し、具体的に、電池のセパレータ及びその塗布工程、塗布システム及び電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、通常、主に正極、負極、セパレータ、電解液、及び電池ハウジングからなる。リチウムイオン電池の構造には、セパレータが重要な内層組立体の一つである。リチウムイオン電池が高エネルギー密度、高容量及び高出力密度の傾向に発展されるにつれて、高性能セパレータに対する要求がますます切迫されてゆく。
【0003】
単層塗布のセパレータについては、従来の工程により作製された電池のセパレータの耐熱性及び水分等の特性をさらに向上させる必要があり、これにより、電池の安全性が保証される。また、従来のセパレータは、空隙率が大体40%であり、厚さの均一性が悪く、低い空隙率及びセパレータの悪い平坦性などの特徴によって、セパレータの内部抵抗が大きくなり、その結果、電池のサイクル及び大倍率放電等の性能が深刻的に影響されてしまう。なお、従来の工程の複雑さ及びセパレータ自体の悪い平坦性などの特徴によっては、最後の分割合格率が低く、コストが大幅に増加されてしまう。
【0004】
セラミック塗層と、接着機能付きのポリマー塗布フィルムとを複合させると、セパレータの耐熱収縮性能を増加させるとともにセパレータの吸液及び保液能力を向上させ、電池のサイクル性能をある程度改善して電池の安全性を向上させることができる。しかし、このような複合塗層製品の各塗層は、いずれも、塗装、乾燥、巻き取り、巻き出しというステップを経る必要があり、生産ラインが長くなって加工コストが高くなり、その複雑な工程によって製品の合格率も低くなってしまう。また、一般的に、2種類の塗層が複合された塗装セパレータは、耐熱性、水分、空隙率、接着能力及び均一性などの性能が所期のものを達成できない。一方、従来技術において複合塗層の塗装量を増加させることにより耐熱や接着性能を向上させると、常にセパレータの内部抵抗が増加し過ぎ、安全性能と電気化学的性能とが両立できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠陥を克服し、高い接着性、及び高い耐熱性を有する塗層電池のセパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る技術案は以下のとおりである。
【0007】
電池のセパレータの塗布工程であって、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定と、ポリオレフィンフィルムのオンライン塗布と、塗布フィルムの熱固定と、を順に備える電池のセパレータの塗布工程。
【0008】
また、電池のセパレータの塗布システムであって、ポリオレフィンフィルムの熱固定の進行経路に設けられた多段のオーブンを備え、隣接するオーブンの間隔位置には、ポリオレフィンフィルムに塗布スラリーを塗装するための塗布装置が設けられる電池のセパレータの塗布システムがさらに提供される。
【0009】
塗層電池のセパレータであって、ポリオレフィン基材と、ポリオレフィン基材の少なくとも一側にある耐熱塗層と、ポリオレフィン基材の少なくとも一側又は耐熱塗層上にあるスプレー塗層と、を備える塗層電池のセパレータがさらに提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従来技術に対して以下のような有益効果を有する。塗層付きの電池のセパレータについては、ポリオレフィン基材の熱固定中に、複数の塗布工程を交互に挿入することにより、塗層とポリオレフィンベースフィルムとの間及び多層複合塗層の間が、いずれも緊密に接触し、その結果、塗布電池のセパレータの耐熱性能が効果的に向上され、従来のスプレーによるセパレータの粉落ち現象が回避される。オンライン塗布方式で作製された複合塗層電池のセパレータは、従来の塗布方式と比べて、耐熱性、水分、空隙率及び均一性が大幅に改善され、最終的に、電池の安全性、サイクル性能、大倍率放電性能及び他の電気化学的性能が効果的に向上され、従来の工程フローよりも簡略化され、分割合格率も顕著に向上される。
【0011】
なお、複合塗層電池のセパレータのオンライン塗布工程には、複数種の塗層がオンラインで一度塗布されることができ、工程フローが明らかに簡略化され、生産コストが低減され、工程が簡略化され、セパレータ生産の不安定要素が減少され、セパレータの生産合格率が効果的に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の実施例1に係る塗布工程のフローチャートである。
【0013】
【
図2】
図2は本発明の実施例1に係る塗布システムの概略図である。
【0014】
【
図3】
図3は本発明の実施例2に係る複合塗層電池のセパレータの構造模式図である。
【0015】
【
図4】
図4は本発明の実施例2に係る複合塗層の塗布工程のフローチャートである。
【0016】
【
図5】
図5は本発明の実施例2に係る複合塗層の塗布システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施方案を詳細に説明する。説明前に、明細書及び添付の特許請求の範囲に使用された用語を一般的な辞書の意味に限定して解釈すべきではなく、本発明者が最もよく解釈するように用語を適切に限定する原則、及び本発明の技術に対応する意味・概念に基づいて解釈すべきであることは、理解すべきである。したがって、ここで提供された説明は、目的を説明するための好ましい例過ぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、よって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の同等物及び修正が成せることは、理解すべきである。
【0018】
本発明に係る電池のセパレータの塗布工程は、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定と、ポリオレフィンフィルムのオンライン塗布と、塗布フィルムの熱固定と、を順に備える。
【0019】
本発明には、塗布工程ステップをポリオレフィンフィルムに対する熱固定の過程に設置し、オンライン塗布及び熱固定における張力及び温度を同期化させるように制御しやすく、複数回の加工によるベースフィルムの内部応力の蓄積及び不均一な分布を回避し、それにより製品塗布膜の平坦性を最適化し、後続塗布フィルムの分割合格率≧90%を保証することができ、また、ポリオレフィン基材は一回の熱固定を経た後にベースフィルムの内部応力を除去し、塗布後の乾燥過程において、再度の高温はさらに塗布過程における引張及び基材と塗布層の不整合による内部応力を除去し、二回の固定を実現し、乾燥と熱固定の両者の間を互いに調整することができ、製造された塗布膜の厚さ、孔隙率、一致性を向上させる。
【0020】
また、塗層とポリオレフィンフィルムとの間の良好な配置に役立ち、ポリオレフィンフィルムと塗層との間の貫通性が大幅に増加され、その結果、セパレータの透気値が低下され、透気値が小さいほど、セパレータの内部抵抗が対応して小さくなり、リチウムイオンの伝送がより容易となり、リチウム電池のサイクル及び大倍率充放電性能に役立つ。
【0021】
上記工程で作製された塗布フィルムの熱収縮性能を向上させるために、より好ましくは、ポリオレフィンフィルムのオンライン塗布後に、塗布フィルムの収縮を制御し、即ち、ポリオレフィンフィルムのオンライン塗布の同時に、塗布スラリーの液体状態で同期の収縮を制御することにより、塗布スラリーとベースフィルムの面との接触をより緊密にし、塗布フィルムの熱収縮性能を効果的に向上させる。
【0022】
具体的に、ポリオレフィンフィルムは、塗布スラリーの液体状態でMD方向に0.1~10%の収縮を行うことができ、その結果、塗布スラリーとポリオレフィンフィルムの面との接触をより緊密にし、塗布後の剥離強度を大幅に向上させる。よい剥離強度によっては、高温での塗布フィルムの熱収縮傾向に耐え、塗布フィルムの耐熱性能を改善することができ、小さい熱収縮率によっては、リチウムイオン電池の高温異常動作による塗布フィルムの収縮ないし正負極の接触短絡による爆発リスクを大幅に低減させることができる。
【0023】
ポリオレフィンフィルムは、特定のタイプに限定されず、それが本分野において通常なものであればよく、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、及びポリオクテンのうちの少なくとも一種の共重合体又は混合体を含むがそれらに限定されない。ポリオレフィンフィルムが超高分子量PEである場合には、超高分子量PEの分子量が30~200万の間であることが好ましい。好ましくは、ポリオレフィン基材の成膜工程は、湿式工程であり、基材から抽出された溶剤の適量の揮発は、塗布及びベースフィルムにおいての貫通孔の形成を促進し、孔詰まり現象の発生を回避し、塗布フィルムの通気性を低下させ、リチウムイオンの伝送に役立つ。
【0024】
ポリオレフィンフィルムの材料が確定された後、対応の上記塗布工程におけるポリオレフィンフィルムの初期熱固定の温度、塗布フィルムの熱固定の温度も制限され、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定の温度は、対応のポリオレフィンフィルム材料の融点を上限とし、塗布後の塗布フィルムの熱固定時に、塗布フィルムにおける大部の水分を除去することにより、後続の乾燥中に低水分のセパレータの取得に役立つために、塗布フィルムの熱固定の温度の上限は、ポリオレフィンフィルム材料の融点に10℃を増加させる温度を上限とする。すなわち、ポリオレフィンフィルムが30~200万の分子量の超高分子量PEである場合には、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定の温度が70℃~120℃に制御され、塗布フィルムの熱固定の温度が70℃~130℃に制御される。
【0025】
塗布フィルム塗層は、特定のタイプに限定されず、それが本分野において通常なものであればよく、セラミック塗層、PVDF塗層、ポリアクリル酸系塗層、アラミド塗層のうちのいずれか一種又は二種以上の複合体を含むがそれらに限定されない。
【0026】
また、各塗層のポリオレフィンフィルムのオンライン塗布の塗布方式は限定されず、スラリーをポリオレフィンフィルムに被覆すればよく、スプレー、ナイフ塗布、グラビア塗布(intaglio coating)、ワイヤロッド塗布(line coating)、スリット塗装、押出塗装及び浸漬塗布のいずれか一種又は複数種の組み合わせであってもよい。
【0027】
塗布フィルムの塗層が多層の複合塗層である場合には、従来の塗布工程に比べて、本発明におけるポリオレフィン基材が初期に微乾燥して固定された後に塗布が行われ、塗布スラリーが基材をよりよく湿潤でき、また、複合塗層の間も完全に乾燥しない場合に接触し、界面でのスラリーが十分な時間で互いに浸透し、同期乾燥の後に、界面での結合力が従来の塗布工程よりも大幅に大きくなる。耐熱性能を有するセラミック塗層は、ベースフィルムとの界面結合がよければよいほど、塗布の剥離強度も大きくなり、基材に対する耐熱性能の向上もより明らかである。スプレー塗層は、不連続であるため、分布の不規則で粉落ちしやすく、塗層が剥離してローラに集まると、フィルムの面に多い顆粒が生成され、その結果、合格率が低下される。オンライン塗布技術によっては、塗布の間が緊密に結合されるため、この現象が効果的に回避される。
【0028】
本発明では、ポリオレフィン基材と複合塗層とが同期して乾燥され、ポリオレフィン基材が完全な熱固定型のものであるため、引き張り抽出中に抽出冷却で残留された内部応力が解放されるため、セパレータがある程度に収縮し、この過程と複合塗層の乾燥による体積変化とが同期して発生し、片面に塗布されたセパレータにおいて発生しやすいカール現象を効果的に回避できる。また、スラリーと基材とが同期して収縮するため、塗層がより密集して畳み、塗層とベースフィルムとの間の接触がより緊密になり、その結果、塗布フィルムの熱収縮性能が効果的に向上される。
【0029】
本発明は、塗布フィルムの熱固定後に、オンライン巻き取り、オンライン分割、巻き出し・乾燥ステップを続いて実施することにより、塗布フィルムの完成品を得て、その結果、オンライン分割により一回の分割だけで適切で幅広い完成品のフィルムが得られ、従来の工程で複数回の分割による原料の無駄遣いが回避される。オンライン巻き取り張力を10~20Nに、巻き取り速度を40m/minに、オンライン分割の張力を3~5Nに、分割速度を70~90m/minに制御することができる。
【0030】
これに対して、上記塗布工程は、該電池のセパレータの塗布システムであって、ポリオレフィンフィルムの熱固定の進行経路に設けられた多段のオーブンを備え、隣接するオーブンの間隔位置には、ポリオレフィンフィルムに塗布スラリーを塗装するための塗布装置が設けられる、電池のセパレータの塗布システムを対応して有する。
【0031】
具体的に、一群又は連続的に設置した複数群のグループは、ポリオレフィンフィルムの熱固定の進行経路に沿って設けられ、各グループは、塗布装置と、塗布装置の上流に位置し、塗布されないポリオレフィンフィルムを初期に乾燥するための初期熱固定オーブンと、塗布装置の下流に位置し、塗布された塗布フィルムを乾燥するための塗布熱固定オーブンと、を備える。
【0032】
あるいは、隣接するオーブンの間隔位置には、複数の塗布装置が連続的に設けられ、塗布装置の塗布方式は、グラビア塗布、ワイヤロッド塗布又は押出塗布、高速遠心分散などの高圧霧化スプレーを含む。
【0033】
塗布装置は、塗布ヘッド、ワイヤロッドなどの本分野において選択可能な複数種の従来の装置を備え、前記塗布装置の塗布速度が30~90m/minに制御され、塗層の厚さを変更する必要がある場合には、塗布速度を対応して調整することができる。
【0034】
上記システムで作製された塗布フィルムの熱収縮性能を向上させるためには、ポリオレフィンフィルムの熱固定の進行経路に沿って、グループにおいて塗布装置の下流に塗布フィルムの収縮を制御するための収縮制御装置が設けられてもよく、該装置は、スラリーが塗布装置でポリオレフィンフィルムに塗布された後、かつスラリーが液体状態にある時に、ポリオレフィンフィルムの収縮を行うことができ、好ましくは、塗布フィルムの収縮を制御するための装置は、スラリーの液体状態でMD方向に0.1~10%の収縮を行うことができ、塗布スラリーがポリオレフィンフィルムと共に収縮して後続の塗布熱固定オーブンで加熱して乾燥されることにより、同期熱固定が達成される。
【0035】
塗布後の剥離強度は大幅に向上され、よい剥離強度によっては、高温での塗布フィルムの熱収縮傾向に耐え、塗布フィルムの耐熱性能を改善することができ、小さい熱収縮率によっては、リチウムイオン電池の高温異常動作による塗布フィルムの収縮ないし正負極の接触短絡による爆発リスクを大幅に低減させることができる。
【0036】
塗布装置と初期熱固定オーブン及び塗布熱固定オーブンとの間には、例示として、ポリオレフィンフィルムの表面に押圧された吸着輪がそれぞれに設けられ、2本の吸着ローラの主な作用は、塗布工程におけるポリオレフィンフィルムの張力変化を制御することにより、塗布の安定性を保証することである。
【0037】
塗布装置の傍には、塗布スラリーを中継するための中継タンク、及びフィルターがさらに配置されてもよく、塗布装置によるポリオレフィンフィルムへのスラリー塗装前のスラリー作製中には、塗布スラリーが中継タンクを介して40μ磁性フィルターに入り、40μ磁性フィルターは、塗布スラリーにおける大顆粒及び金属不純物等の異物を濾過することにより、セパレータに存在する金属異物による電池コア循環の短絡現象が効果的に防止され、サイクルの安定性が向上される。また、磁性フィルターの頻繁てきな停止・洗浄によるセパレータの生産率の低下を回避するために、中継タンクの部位に40μフィルターを同時に取り付けることにより、複数回のフィルターの停止・洗浄の発生が回避され、その結果、セパレータの生産率が向上される。
【0038】
塗布装置の傍には、オンライン厚さ測定計、及び欠陥計がさらに配置されてもよく、厚さ測定計は、主にベースフィルム及び塗布フィルムの厚さをリアルタイムに監視し、欠陥計は、セパレータの異常を検出することができ、その結果、塗布フィルムの完成品の品質が向上される。
【0039】
多段式オーブンの末端には、オンライン巻き取り装置、オンライン分割装置の後に、巻き出し・乾燥装置が設けられていてもよい。
【0040】
上記塗布工程、塗布装置によっては、複合塗層電池のセパレータであって、ポリオレフィン基材13と、ポリオレフィン基材13の少なくとも一側にある耐熱塗層14と、ポリオレフィン基材13の少なくとも一側又は耐熱塗層14上にあるスプレー塗層15と、を備える、複合塗層電池のセパレータを作製することができる。
【0041】
即ち、複合塗層電池のセパレータは、構造1:耐熱塗層14-ポリオレフィン基材13-スプレー塗層15、
図3に示す構造2:スプレー塗層15-耐熱塗層14-ポリオレフィン基材13-耐熱塗層14-スプレー塗層15、又は他の組み合わせ方式となる可能性がある。
【0042】
上記塗布工程や塗布装置に基づき、オンライン多層複合塗布工程には、複合塗層に対して未乾燥又は微乾燥の場合に同時に乾燥熱固定が行われ、多層塗布塗料が塗装又は乾燥熱固定中に互いに過剰に浸透して融合し、複合塗層のセパレータの物性に影響することを回避するために、本発明は、耐熱塗層14の粒径D1がスプレー塗層15の粒径D2よりも小さく、かつD1:D2<2が満たされることを強調する。
【0043】
具体的に、耐熱塗層14は、セラミック塗層であり、セラミック塗層は、耐熱学的不活性を有するか、又はリチウムイオン伝送可能な無機物顆粒を含む。スプレー塗層15は、接着機能付きの高分子ポリマー顆粒を含む。
【0044】
ただし、セラミック塗層は、水、増粘剤、無機物顆粒、接着剤、及び湿潤剤を含み、セラミック塗層のスラリーの固体含有量の範囲は30%~40%であり、無機物顆粒は、SrTiO3、SnO2、Mg(OH)2、MgO、Al(OH)3、Al2O3、SiO2、BaSO4、又はTiO2のうちの一種又は複数種の組み合わせであってもよい。
【0045】
スプレー塗層15は、接着機能付きの高分子ポリマー顆粒、分散剤、増粘剤、接着剤、湿潤剤、及び消泡剤を含み、スプレー塗層のスラリーの固体含有量は、5%~80%の間である。
【0046】
高分子ポリマー顆粒は、PVDF及びその共重合体、アクリレート系の単独重合体又は共重合体のうちの一種又は複数種の組み合わせである。
【0047】
セラミック塗層及びスプレー塗層15の塗布がオンライン同期で行われ、スプレースラリーとセラミックスラリーとが互いに融合し、乾燥中に多くの接着機能付きの高分子ポリマー顆粒がセラミック顆粒に浸透すると、複合塗層電池のセパレータの接着性能に影響する可能性がある。したがって、より好ましくは、セラミック塗層における無機物顆粒の粒径は0.01μm~10μmであり、好ましくは0.02μm~2μmであり、スプレー塗層15における高分子ポリマー顆粒の粒径は0.5μm~10μmであり、好ましくは1μm~5μmである。無機物顆粒の粒径及び高分子ポリマー顆粒の粒径の大きさを制御し、顆粒の大きい高分子ポリマー顆粒の粒径を用いることにより、塗布中にセラミック塗層への高分子ポリマー顆粒の粒径の完全埋入を効果的に回避でき、これにより、電池コアの熱間プレス工程の後に複合塗層電池のセパレータと極片との間に十分な接着力を生成させることが保証される。本発明は、同じスプレー塗層の塗布量の場合、複合塗層電池のセパレータの接着性能をできるだけ向上させることが保証され、また、需要の接着強度に達する時にポリマーの使用量が減少されるため、セパレータのイオン抵抗が効果的に低下され、電池のサイクル及び倍率性能が効果的に向上される。
【0048】
セラミック塗層のスラリーをポリオレフィンベースフィルムの少なくとも一つの表面に塗装する塗装方式は、例示として、グラビア塗布、ワイヤロッド塗布又は押出塗布などのうちの一種を含む。スプレー塗層をポリオレフィンベースフィルムの少なくとも一つの表面にスプレーする方式は、高速遠心分散などの高圧霧化スプレー方法を含む。
【0049】
電池であって、上記方案のいずれか一項に記載の複合塗層電池のセパレータを含む、電池。
【0050】
以下、実施例により本発明を詳細に説明して理解に寄与する。しかしながら、本発明の実施形態は、複数の他の形態を有してもよく、かつ本発明の範囲は以下の実施のみに限定されることを理解すべきではない。本発明の実施の形態は、本発明に関連する当業者が本発明をより十分に解釈するためのものである。
【0051】
実施例1
【0052】
ポリオレフィンフィルムは、200万の分子量の超高分子量PEベースフィルムであり、塗層は、セラミック塗層であり、セラミック塗層は、PEベースフィルムの一つの表面に塗装される。セラミックスラリーは、水、増粘剤、セラミック顆粒、接着剤、及び湿潤剤を含み、かつ固体含有量が32%である。
【0053】
図1に示すように、本実施例の主な工程フローは、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定-セラミックスラリーの作製-セラミックスラリーのオンライン塗装-塗布フィルムの熱固定-収縮制御-オンライン巻き取り-オンライン分割-巻き出し・乾燥である。
【0054】
図2に示すように、本実施例の塗布装置は、欠陥計1、厚さ測定計2、初期熱固定オーブン3、吸着ローラ4、フィルター5、中継タンク6、塗布装置7、収縮制御装置8、塗布熱固定オーブン9、オンライン巻き取り装置10、オンライン分割装置11、及び巻き出し・乾燥装置12を備える。
【0055】
PEフィルムは、
図2に示すように、材料配合、押出、濾過計量、ダイヘッド押出、鋳片冷却成形、二軸引き張り、抽出乾燥とのステップを経て構成され、従来の湿式セパレータ工程の熱固定前のステップに一致する。PEフィルムは、
図2に示す進行方向に沿い、まず、欠陥計1、厚さ測定計2を経てリアルタイム品質監視が行われ、続いて、初期熱固定オーブン3に入り初期熱固定が達成され、この時、PEフィルムが完全に熱固定されなく、フィルター5、中継タンク6に配置されたセラミックスラリーが塗布装置7によりPEフィルムに塗布されるとともに、塗布装置7の上、下流に設けられた吸着ローラ4が塗布中での張力の変化を制御し、セラミックスラリーが液体状態にある時に、収縮制御装置8によりMD方向の収縮が行われることにより、塗布スラリーとベースフィルム面との接触をより緊密にし、収縮制御の完了後、セラミックスラリーが塗装されたPEフィルムが塗布熱固定オーブン9に入り、塗布フィルムの熱固定が完了され、続いて、オンライン巻き取り装置10、オンライン分割装置11、巻き出し・乾燥装置12を経て、セラミック塗布フィルムの完成品が得られる。
【0056】
ただし、乾燥環境の露点Tdは、-49℃であり、湿度Hは、0.31%であり、塗布フィルムの水分試験は180℃/5minであり、水分は、≦800ppmである。本発明は、乾燥環境を制御することにより、低水分の塗布フィルムを取得し、電池内部の副反応を低減させ、電池性能を効果的に改善する。
【0057】
セラミック塗層が50m/minの速度で剥離されると、剥離強度が80N/Mより大きく、大きい剥離強度は、塗層とベースフィルムとの間の接着に役立ち、高温でのセパレータの熱収縮によりよく耐えるにより、セパレータの安全を効果的に向上させる。
【0058】
実施例2
【0059】
本実施例は、複合塗層電池のセパレータであり、
図3に示すように、複合塗層電池のセパレータは、ポリオレフィン基材13と、ポリオレフィン基材13の両側の表面に塗装された耐熱塗層14と、耐熱塗層14上にスプレーされたスプレー塗層15と、を含み、耐熱塗層14はセラミック塗層である。
【0060】
図4に示すように、本実施例の主な工程フローは、ポリオレフィンフィルムの初期熱固定-セラミックスラリーの作製-セラミックスラリーのオンライン塗装-オンラインスプレー塗層-塗布フィルムの熱固定-収縮制御―オンライン巻き取り―オンライン分割―巻き出し・乾燥である。
【0061】
ポリオレフィンフィルムが完全に熱固定されない時には、セラミック塗層の塗布が行われ、セラミック塗層が完全に乾燥されない時には、スプレー塗布が行われる。
【0062】
ただし、固体含有量が38.6%であるセラミック塗層スラリーを配置し、その具体的な成分は、水が61.4%であり、カルボキシメチルセルロースナトリウム系増粘剤が0.5%であり、ポリエーテル系湿潤剤が0.1%であり、酸化アルミニウムが35%であり、アクリレート系接着剤が3%である。スラリーの作製ステップとしては、まず、増粘剤を水に分散して溶解することにより溶液Aを得て、そして、酸化アルミニウムを水に分散して研磨することにより分散液Bを得て、上記溶液Aと分散液Bとを混合してから、接着剤及び湿潤剤スラリーを添加し、十分に混合することにより、セラミックスラリーが得られ、ただし、完成品のスラリーにおける酸化アルミニウムの平均粒径が0.8μmである。
【0063】
固体含有量が10%であるスプレー塗層スラリーを配置し、その具体的な成分は、水が85%であり、PMMA顆粒が13.5%であり、アクリル酸エステル系接着剤が1.3%であり、ポリエーテル系分散剤が0.2%であり、接着剤及び分散剤の含有するPMMAエマルジョンを水に分散することにより、完成品のスラリーが得られ、ただし、スラリーにおけるPMMAの平均粒径が3μmである。
【0064】
図5に示すように、本実施例の塗布装置は、欠陥計1、厚さ測定計2、初期熱固定オーブン3、吸着ローラ4、フィルター5、中継タンク6、塗布装置7、スプレー装置16、収縮制御装置8、塗布熱固定オーブン9、オンライン巻き取り装置10、オンライン分割装置11、及び巻き出し・乾燥装置12を備える。
【0065】
図5に示すように、9μmのPEセパレータを設計し、グラビアローラによりオンラインで両面セラミック塗布を行い、セラミック塗布ヘッドの直後に、高速遠心分散盤により両面スプレーを行い、ただし、塗布前の予備熱固定オーブンの温度を80℃とし、塗布後の塗布熱固定オーブン9を三段式オーブンとし、温度をそれぞれ60℃/80℃/100℃とし、生産ライン速度を50m/minとし、乾燥後の両面セラミックの合計厚さを4μmとし、両面スプレー塗層の搭載量を0.8g/m
2とする。
【0066】
比較例1
【0067】
他のステップは、実施例1と同じであるが、異なる点として、セラミック塗層スラリーにおける酸化アルミニウムの平均粒径が0.8μmであり、スプレー塗層スラリーにおけるPMMAの平均粒径が0.3μmである。
【0068】
9umのPEセパレータを作製し、グラビアローラにより両面セラミック塗層を行い、塗布速度を50m/minとし、三段式オーブンで乾燥し、ただし、オーブン温度を、それぞれ60℃/65℃/70℃とする。完全乾燥のセパレータの厚さを13μmとし、セラミック塗層の厚さを4μmとし、続いて、高速遠心分散盤により両面セラミック塗布フィルムに両面スプレーを行い、両面スプレー塗層の搭載量を0.8g/m2とする。
【0069】
実施例2と比較例1とに対して特性テストを行い、データを表1に示す。
【0070】
【0071】
表1から分かるように、本願に係る実施例及び比較例は、同様の酸化アルミニウムスラリーにより塗布を行い、塗布量が同じである場合には、実施例が、より優れた熱収縮性能を有する。スプレー塗層の塗布量が同じである場合には、オンラインでより大きな顆粒により塗布する実施例が、よりよい接着強度を有する。全体として、オンライン塗布で作製された複合塗層は、通気増加値がより少なくてセパレータ全体の抵抗値もより小さく、耐熱性能がより優れたものである。これから分かるように、本発明における複合塗層のセパレータで作製されたリチウムイオン電池は、安全性、循環倍率等の電池性能等の多くの方面で、従来のリチウム電池の複合セパレータよりも優れ、また、本発明の工程による一体化生産は、生産ステップが簡単であり、コストがより低い。
【0072】
上記は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、なお、本技術分野の当業者にとっては、本発明の構想から逸脱することなく、いくつかの改善及び修飾をさらに行うことができ、これらの改善及び修飾も本発明の保護範囲内と見なされるべきである。