IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20241129BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20241129BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H05K1/02 P
H05K1/02 Q
H05K1/14 D
H05K1/14 E
H05K9/00 R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023520992
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2022019517
(87)【国際公開番号】W WO2022239698
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2021080372
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 幹人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太
(72)【発明者】
【氏名】清永 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森本 祐輔
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110711(JP,A)
【文献】特開2016-067115(JP,A)
【文献】特開2019-176088(JP,A)
【文献】特開2018-152407(JP,A)
【文献】特開2020-005365(JP,A)
【文献】特開平01-170086(JP,A)
【文献】特許第4231626(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 1/14
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2面以上の内面を有する筐体と、
前記筐体の前記内面に固定された第1プリント基板と、
前記筐体の前記内面に固定され、前記第1プリント基板と交差するように配置された第2プリント基板と、
前記第2プリント基板に沿うように配置された制御回路基板とを備え、
前記制御回路基板は、回路配線と、前記回路配線とは異なる層において前記回路配線に対向するシールドパターンとを含み、
前記シールドパターンが前記回路配線に対向する対向方向から見て、前記シールドパターンは前記回路配線に少なくとも一部重なっている、電力変換装置。
【請求項2】
第1内面および第2内面を有し、前記第1内面と前記第2内面とが交差するように構成されている筐体と、
前記筐体の前記第1内面に固定された第1プリント基板と、
前記第2内面に沿うように配置された制御回路基板とを備え、
前記制御回路基板は、回路配線と、前記回路配線とは異なる層において前記回路配線に対向するシールドパターンとを含み、
前記シールドパターンが前記回路配線に対向する対向方向から見て、前記シールドパターンは前記回路配線に少なくとも一部重なっている、電力変換装置。
【請求項3】
前記第2内面に固定された第2プリント基板をさらに備え、
前記制御回路基板は、前記第2プリント基板に沿うように配置されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
少なくとも第1内面および第2内面を有する筐体と、
第1部品および第2部品を含む電子部品と、
前記電子部品の前記第1部品が搭載された第1主面と前記第1主面に対向する第2主面とを有する第1プリント基板と、
前記電子部品の前記第2部品が搭載された第3主面と前記第3主面に対向する第4主面とを有する第2プリント基板と、
制御回路基板とを備え、
前記第1プリント基板の前記第2主面は、前記第1内面に熱的に接続され、
前記第2プリント基板の前記第4主面は、前記第2内面に熱的に接続され、
前記第2プリント基板は、前記第1プリント基板の前記第2主面から前記第1主面に向かう方向に延びており、
前記制御回路基板は、前記第2内面に沿うように設けられ、回路配線と、前記回路配線とは異なる層において前記回路配線に対向するシールドパターンとを含み、
前記シールドパターンが前記回路配線に対向する対向方向から見て、前記シールドパターンは前記回路配線に少なくとも一部重なっている、電力変換装置。
【請求項5】
前記対向方向から見て、前記シールドパターンは、前記回路配線よりも拡張されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記対向方向から見て、前記シールドパターンは、前記回路配線の外端に対して、前記対向方向での前記回路配線と前記シールドパターンとの間の厚みの3倍以上拡張されている、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記シールドパターンの電位は、前記制御回路基板のグラウンドと同電位である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御回路基板の前記グラウンドの電位は、前記筐体と同電位である、請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1プリント基板は、前記シールドパターンと同電位の第1プリント基板回路配線を含み、
前記制御回路基板は、拡張シールドパターンを含み、
前記シールドパターンは、前記第1プリント基板回路配線および前記拡張シールドパターンに電気的に接続されており、
前記第2プリント基板は、前記シールドパターンと同電位の第2プリント基板回路配線を含み、
前記シールドパターンは、前記第2プリント基板回路配線および前記拡張シールドパターンに電気的に接続されている、請求項1、3、4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第2プリント基板に実装された電子部品と、
前記第2プリント基板と前記制御回路基板との間に配置された抑え板をさらに備え、
前記抑え板は、前記電子部品を前記第2プリント基板に対して押し当てるように構成されている、請求項1、3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第2プリント基板に実装された電子部品と、
前記第2プリント基板と前記制御回路基板との間に配置された抑え板をさらに備え、
前記抑え板は、前記電子部品を前記第2プリント基板に対して押し当てるように構成されている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記抑え板は、前記第2プリント基板に沿うように延在しかつ前記第1プリント基板に沿うように延在している、請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記第2プリント基板に実装された電子部品をさらに備え、
前記制御回路基板は、前記電子部品を前記第2プリント基板に対して押し当てるように構成されている、請求項1、3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記第2プリント基板に実装された電子部品をさらに備え、
前記制御回路基板は、前記電子部品を前記第2プリント基板に対して押し当てるように構成されている、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記筐体により取り囲まれた空間に充填された封止部材をさらに備えた、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC(Direct Current)/DC変換装置といった電力変換装置には、スイッチング素子、整流素子、トランスまたはリアクトルといった磁性部品などの電子部品のほか、スイッチング素子を制御する制御回路基板が含まれる。
【0003】
スイッチング素子などの電子部品と、制御回路基板とが立体的に配置されることにより電力変換装置を小型化することできる。このように小型化することができる電力変換装置の一例として、特許第4231626号公報(特許文献1)には、自動車用モータ駆動装置が記載されている。この自動車用モータ駆動装置では、電力変換素子は筐体底面に配置されている。制御素子はプリント基板に実装されている。電力変換素子と、制御素子が実装されたプリント基板とは、積み重なるように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4231626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイッチング素子などの電子部品はノイズを発生させるノイズ源として振る舞うため、スイッチング素子などの電子部品が制御回路基板に近づけられると、制御回路基板に電子部品で発生したノイズが重畳する。これにより、制御回路基板の回路の誤動作が生じやすい。したがって、電力変換装置が小型化される際には、制御回路基板のノイズ耐性を高める必要がある。
【0006】
上記公報に記載された自動車用モータ駆動装置では、電力変換素子と、制御素子が実装されたプリント基板とが積み重なるように配置されている。このため、制御素子が筐体外に設置されたものと比較して、電力変換素子と制御素子を結ぶ配線を短くすることが可能である。このように電力変換素子と制御素子を結ぶ配線を短くすることによりノイズの影響を受け難くすることが考慮されている。
【0007】
しかしながら、上記公報に記載された自動車用モータ駆動装置のように電力変換素子と制御素子を結ぶ配線を短くするだけでは、電力変換装置が小型化される際に多面的に配置される電子部品によるノイズを低減することはできない。したがって、制御回路基板のノイズ耐性を高めることは困難である。
【0008】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化することができるとともにノイズ耐性に優れた制御回路基板を有する電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の電力変換装置は、筐体と、第1プリント基板と、第2プリント基板と、制御回路基板とを備えている。筐体は、少なくとも2面以上の内面を有する。第1プリント基板は、筐体の内面に固定されている。第2プリント基板は、筐体の内面に固定され、第1プリント基板と交差するように配置されている。制御回路基板は、第2プリント基板に沿うように配置されている。制御回路基板は、回路配線と、回路配線とは異なる層において回路配線に対向するシールドパターンとを含んでいる。シールドパターンが回路配線に対向する対向方向から見て、シールドパターンは回路配線に少なくとも一部重なっている。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電力変換装置によれば、小型化することができるとともにノイズ耐性に優れた制御回路基板を有する電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る電力変換装置の上面図である。
図4図3の線IV-IVに沿う切断面の断面図である。
図5】実施の形態1に係る第1プリント基板モジュールの斜視図である。
図6】実施の形態1に係る第2プリント基板モジュールの斜視図である。
図7】実施の形態1に係る制御回路モジュールの透視図である。
図8】実施の形態1に係る制御回路モジュール表面の上面視図である。
図9】実施の形態1に係る制御回路モジュール裏面の上面視図である。
図10図7の線X-Xに沿う切断面の断面図である。
図11】制御回路基板が多層基板の場合の図7の線X-Xに沿う切断面の断面図である。
図12】ノイズの入射角を示す制御回路モジュールの断面図である。
図13】シールドパターンの拡張によるノイズ遮蔽効果を示すグラフである。
図14】実施の形態1の変形例1に係る制御回路モジュールの透視図である。
図15図14の線XV-XVに沿う切断面の断面図である。
図16】実施の形態1の変形例2に係る制御回路モジュールの透視図である。
図17図16の線XVII-XVIIに沿う切断面の断面図である。
図18】実施の形態1の変形例3に係る制御回路モジュールの透視図である。
図19】実施の形態1の変形例3に係る制御回路モジュール表面の上面視図である。
図20】実施の形態1の変形例3に係る制御回路モジュール裏面の上面視図である。
図21図18の線XXI-XXIに沿う切断面の断面図である。
図22図18の線XXII-XXIIに沿う切断面の断面図である。
図23】実施の形態2に係る電力変換装置の斜視図である。
図24】実施の形態2に係る電力変換装置の上面図である。
図25図24の線XXV-XXVに沿う切断面の断面図である。
図26】実施の形態2に係る制御回路モジュール表面の上面視図である。
図27】実施の形態2に係る制御回路モジュール裏面の上面視図である。
図28図26の線XXVIII-XXVIIIに沿う切断面の断面図である。
図29】実施の形態2の変形例の図28に対応する切断面の断面図である。
図30】実施の形態3に係る電力変換装置の斜視図である。
図31】実施の形態3に係る電力変換装置の上面図である。
図32図31の線XXXII-XXXIIに沿う切断面の断面図である。
図33】実施の形態4に係る電力変換装置の斜視図である。
図34】実施の形態4に係る電力変換装置の上面図である。
図35図34の線XXXV-XXXVに沿う切断面の断面図である。
図36】実施の形態4に係る制御回路モジュール裏面の上面図である。
図37】実施の形態5に係る電力変換装置の上面図である。
図38】実施の形態5に係る制御回路モジュール表面の上面視図である。
図39】実施の形態5に係る制御回路モジュール裏面の上面視図である。
図40図38の線XL-XLに沿う切断面の断面図である。
図41】実施の形態6に係る電力変換装置の上面図である。
図42】実施の形態7に係る電力変換装置の斜視図である。
図43】実施の形態7に係る電力変換装置の上面図である。
図44図43の線XLIV-XLIVに沿う切断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態に係る電力変換装置を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。また、図を見やすくするため、適宜、部品の図示が省略されている。
【0013】
実施の形態1.
まず、実施の形態1に係る電力変換装置について説明する。図1は、実施の形態1に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
【0014】
図1に示す、電力変換装置1は、DC/DC変換装置である。電力変換装置1は、インバータ回路2と、トランス回路3と、整流回路4と、平滑回路5と、制御回路100とを備える。電力変換装置1は、入力端子10から入力される直流電圧Viを直流電圧Voに変換して出力端子11から出力する。
【0015】
インバータ回路2は、スイッチング素子7a,7b,7c,7dを備える。スイッチング素子7a,7b,7c,7dのそれぞれは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などである。スイッチング素子7a,7b,7c,7dのそれぞれは、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)または窒化ガリウム(GaN)などを材料として形成されている。
【0016】
トランス回路3は、トランス21を備える。トランス21は、インバータ回路2と接続する1次側高電圧側巻線とフェライトなどのコア材と2次側低電圧側巻線とを備える。
【0017】
整流回路4は、ダイオード8a,8b,8c,8dを備える。ダイオード8a,8b,8c,8dのそれぞれは、Si、SiCまたはGaNなどを材料として形成されている。
【0018】
平滑回路5は、平滑コイル20と、コンデンサ9aとを備える。
制御回路100は、インバータ回路2を制御する制御信号を生成および出力する制御素子101と、インバータ回路2に接続するためのコネクタなどの接続部材102と、直流電圧Voを検出するフィードバック用のコネクタなどの接続部材103と、コンデンサまたは抵抗などの電子部品とを備える。
【0019】
パルストランス回路6は、パルストランス22a,22bを備える。パルストランス回路6は、制御回路100から出力される制御信号を電気的に絶縁させ、インバータ回路2のスイッチング素子7a,7b,7c,7dを制御する。
【0020】
直流電圧Viが入力される入力端子10と、直流電圧Voを出力する出力端子11と、スイッチング素子7a,7b,7c,7dと、ダイオード8a,8b,8c,8dと、コンデンサ9a,9bとは、プリント基板に搭載されている。プリント基板は、支持体に取り付けられている。支持体は、電力変換装置1の筐体である。筐体は、金属製であり、冷却器としての役割も有する。電力変換装置1のグラウンド(GND)は、支持体に接続されている。プリント基板には、他の電子部品が搭載されてもよい。
【0021】
電力変換装置1には、たとえば100Vから600Vの直流電圧Viが入力される。電力変換装置1は、たとえば12Vから16Vの直流電圧Voを出力する。具体的には、入力端子10に入力された直流電圧Viは、インバータ回路2とこれを制御する制御回路100によって第1の交流電圧に変換される。第1の交流電圧は、トランス回路3によって第1の交流電圧よりも低い第2の交流電圧に変換される。第2の交流電圧は、整流回路4によって整流される。平滑回路5は、整流回路4から出力された電圧を平滑する。電力変換装置1は、平滑回路5から出力された直流電圧Voを出力端子11から出力する。規定の直流電圧Voを得るために、直流電圧Voが制御回路100に帰還され、制御回路100は、直流電圧Voに応じて制御信号を生成し、インバータ回路2を制御し、直流電圧Voを規定値に保つ。
【0022】
このように構成された図1の回路図に示される電力変換装置1では、直流電圧Viを交流電圧に変換するインバータ回路2など、電圧の時間変化(dV/dt)、電流の時間変化(di/dt)が大きい電子部品はノイズ発生源となる。これらの電子部品に接続されたプリント基板上の回路配線などからノイズが放射される。放射されるノイズは、近接した回路に誘導される。制御回路100にノイズが誘導されると、本来とは異なる制御信号が出力される。これにより、インバータ回路2にてスイッチング素子7a,7b,7c,7dを制御するタイミングが変化する。その結果、直流電圧Voの変動が生じることがある。最悪の場合には、スイッチング素子7a,7c,もしくは7b,7dが同時にオンとなることでスイッチング素子7a,7b,7c,7dに過電流が流れることにより、スイッチング素子7a,7b,7c,7dを損傷させることがある。
【0023】
図2は、実施の形態1に係る電力変換装置1の斜視図である。図3は、図2の上面図である。図4は、図3の線IV-IVに沿う切断面の断面図である。図5は、電力変換装置1に含まれる第1プリント基板モジュール40の斜視図である。図6は、電力変換装置1に含まれる第2プリント基板モジュール50の斜視図である。
【0024】
図2に示されるように、実施の形態1に係る電力変換装置1は、筐体30と、第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、制御回路モジュール100aとを備えている。第1プリント基板モジュール40と第2プリント基板モジュール50は図示しないハーネス等で電気的に接続される。また、図2では、電力変換装置1は、プリント基板モジュールを2つ備えているが、プリント基板モジュールを3つ備えてもよい。
【0025】
図2図4に示されるように、電力変換装置1は、筐体30と、第1プリント基板41と、第1絶縁部材42と、第1固定部材43と、第2プリント基板51と、第2絶縁部材52と、第2固定部材53と、制御回路モジュール100aの基板として制御回路基板100bと、接続部材102と、接続部材103とを備える。なお、図2図4において、筐体30の底面側、例えば、第1プリント基板41が固定される部分の底面には、図示しない外部冷却体が接続されている。これにより、放熱性が優れる。第1プリント基板41には、発熱量が大きい電子部品として、スイッチング素子7a,7b,7c,7dが搭載されている。
【0026】
筐体30は、少なくとも2面以上の内面を有している。本実施の形態では、筐体30は、2面の内面を有している。筐体30は、2面の内面が交差するように構成されている。
【0027】
第1プリント基板41は、筐体30の内面に固定されている。第1プリント基板41は、電子部品が搭載された表面と、筐体30と対向する裏面を有する。第1絶縁部材42は、第1プリント基板41と筐体30の間に配置されている。第1プリント基板41は、熱的に筐体30と接続されている。第1固定部材43は、第1プリント基板41を、筐体30に固定するように構成されている。第1プリント基板41は、第1固定部材43により筐体30と接続されている。
【0028】
第2プリント基板51は、筐体30の内面に固定されている。第2プリント基板51は、第1プリント基板41と交差するように配置されている。本実施の形態では、第2プリント基板51は、第1プリント基板41に対して垂直に配置されている。第2プリント基板51は、電子部品が搭載された表面と、筐体30と対向する裏面を有する。第2プリント基板51は、第1プリント基板41と図示しない接続部材で電気的に接続されている。第2絶縁部材52は、第2プリント基板51と筐体30の間に配置されている。第2プリント基板51は、熱的に筐体30と接続されている。第2固定部材53は、第2プリント基板51を、筐体30に固定するように構成されている。第2プリント基板51は、第2固定部材53により筐体30と接続されている。
【0029】
制御回路基板100bは、第2プリント基板51に沿うように配置されている。本実施の形態では、制御回路基板100bは、スイッチング素子7a,7b,7c,7dが搭載される第1プリント基板41に対して垂直に配置され、第2プリント基板51に対して平行に配置されている。制御回路基板100bは、コネクタなどの接続部材102によって、第1プリント基板41に固定されるとともに電気的に接続されている。
【0030】
筐体30は、1.0W/(m・K)以上、好ましくは10.0W/(m・K)以上、さらに好ましくは100.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する。筐体30は、銅、鉄、アルミニウム、鉄合金、アルミニウム合金などの金属材料で形成される。筐体30は、内部に冷却水を通すための配管を備えても良い。また、筐体30は、周囲の大気への放熱を促進するため、放熱フィン等を備えてもよい。また、筐体30は、図示しない外部冷却体と接触されていてもよい。また、筐体30は、必ずしも一体成型されたものでなく、複数の金属板を組み合わせ、これらを接続して立体化されたものでもよい。
【0031】
第1プリント基板41、第2プリント基板51は、その表面または内部に、図示しない回路配線が形成されていてもよい。制御回路基板100bは、導体層を少なくとも2層備え、その表面または内部に図示しない回路配線が形成されていてもよい。この回路配線は、厚みが1μm以上2000μm以下である。また、この回路配線は、導電性材料から形成され、例えば、銅、ニッケル、金、アルミニウム、銀、錫などまたはそれらの合金などから形成される。以後の実施の形態において、第1プリント基板41、第2プリント基板51、制御回路基板100bなど、プリント基板を構成する材料は、たとえばガラス繊維強化エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などとすればよい。言い換えると、第1プリント基板41、第2プリント基板51、制御回路基板100bは、一般に熱伝導率が低いとされる材料で構成されていてもよい。つまり、第1プリント基板41、第2プリント基板51、制御回路基板100bの各々は、汎用のプリント基板であってもよい。また、第1プリント基板41、第2プリント基板51、制御回路基板100bの各々は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化珪素などのセラミックスで構成されてもよい。
【0032】
第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、電気絶縁性を有している。また、第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、弾性を有してもよい。また、第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、1MPa以上100MPa以下のヤング率を有してもよい。第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、0.1W/(m・K)以上、好ましくは1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する。第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、たとえば、シリコーン、ウレタンなどのゴム材、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリフェニレンサルファニド(PPS)、フェノールなどの樹脂材、ポリイミドなどの高分子材料、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウムなどのセラミックス材料、シリコーンを主原料とするフェイズチェンジマテリアルなどから構成されてもよい。また、第1絶縁部材42、第2絶縁部材52は、シリコーン樹脂に酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの粒子を混入させた材料から構成されてもよい。
【0033】
第1固定部材43、第2固定部材53の材質は、金属製であってもよいし、非金属製であってもよい。例えば、第1プリント基板41、第2プリント基板51に形成される回路配線が、固定部材の接続先の回路配線または筐体30と同電位とされる場合には、金属製の固定部材が使用されて回路配線が電気的に接続される。一方で、同電位とすべきでない回路配線であれば、樹脂ネジなど非金属製の固定部材が用いられればよい。言い換えれば、第1固定部材43および第2固定部材53は、製品の仕様に合わせて使いわけられればよい。
【0034】
続いて、図5および図6を参照して、第1プリント基板モジュール40、第2プリント基板モジュール50の一例を説明する。
【0035】
図5に示されるように、第1プリント基板モジュール40は、第1プリント基板41と、第1絶縁部材42と、第1固定部材43と、電子部品(第1部品)とを備えている。電子部品(第1部品)は、第1プリント基板41の上に搭載される。電子部品(第1部品)は、特に高発熱部品であるスイッチング素子7a、7b、7c、7dと、コンデンサ9bと、図示しない入力端子10と、図示しないパルストランス22a、22bなどである。第1絶縁部材42は、第1プリント基板41と筐体30の間に設けられる。第1絶縁部材42は、第1プリント基板41と、筐体30とに、面接触することが好ましい。第1固定部材43は、第1プリント基板41を筐体30に固定する。
【0036】
図6に示されるように、第2プリント基板モジュール50は、第2プリント基板51と、第2絶縁部材52と、第2固定部材53と、電子部品(第2部品)とを備えている。電子部品(第2部品)は、第2プリント基板51の上に搭載される。電子部品(第2部品)は、トランス21と、ダイオード8a、8b、8c、8dと、平滑コイル20と、コンデンサ9aと、出力端子11などである。第2プリント基板51には、スイッチング素子7a、7b、7c、7dと、制御回路100を除き、電力変換装置を構成する電子部品が搭載されていてもよい。第2絶縁部材52は、第2プリント基板51と筐体30の間に設けられる。第2絶縁部材52は、第2プリント基板51と、筐体30とに、面接触することが好ましい。第2固定部材53は、第2プリント基板51を筐体30に固定する。
【0037】
なお、図2図6はプリント基板モジュールが第1プリント基板モジュール40と第2プリント基板モジュール50との2枚の場合を図示したものである。電子部品を搭載するプリント基板モジュールが3枚以上ある場合、第1プリント基板モジュール40に搭載されるスイッチング素子7a、7b、7c、7dを除き、第2プリント基板モジュール50と、第Nプリント基板モジュール(Nは3以上)には、その他電子部品が任意に搭載されていてもよい。
【0038】
続いて、図7図11を参照して、制御回路モジュール100aの一例を説明する。図7は、電力変換装置1に含まれる制御回路モジュール100aの透視図である。図8は、図7の制御回路モジュール100a表面の上面視図である、図9は、図7の制御回路モジュール100a裏面の上面視図である。図10は、図7の線X-Xに沿う切断面の断面図である。図11は、制御回路基板100bが両面基板でなく、多層基板である場合の図7線の線X-Xに沿う切断面の断面図である。なお、図7図11は、制御回路モジュール100aの模式図である。
【0039】
図7に示されるように、制御回路モジュール100aは、制御回路基板100bと、制御素子101と、接続部材102と、接続部材103と、フィードバック配線104と、基準GND配線105と、制御素子用電子部品110とを備える。制御回路基板100bは、アナログ信号配線群(回路配線)120と、デジタル信号配線群130と、シールドパターン140とを含んでいる。
【0040】
制御素子101は、スイッチング素子7a、7b、7c、7dを制御する制御信号を出力する半導体素子である。制御素子101で出力される制御信号は、電力変換装置1の制御方式によるが、例えば、スイッチング周波数、デューティー比、デッドタイムなどが設計パラメータとして挙げられる。制御素子101は、基準GND配線105または基準GND配線105と同電位であるシールドパターン140に対するフィードバック配線104の電位差と、制御素子用電子部品110の部品またはその定数とに応じて、制御信号の波形を変化させる。
【0041】
接続部材102は、制御回路モジュール100aと第1プリント基板モジュール40とを固定する。接続部材102は、制御回路基板100bと第1プリント基板41の間にて制御信号を伝達する。接続部材102は、例えば、基板間コネクタ、取り付けソケット、フィンガー、クリップなどである。また、接続部材102は、基板間コネクタなど制御回路基板100bに実装する接続部材と、制御回路基板100bとは別に回路配線を備えたプリント基板を組み合わせた接続部材であってもよい。図7における接続部材102は1つの構造物であるが、接続部材102は複数個に分けて取り付けられていてもよい。また、それらの実装位置は、制御回路基板100bにて第1プリント基板41と接続される少なくとも1辺以上に配置されればよい。
【0042】
接続部材103は、電力変換装置1の出力端子11近傍における直流電圧Voを監視するためのフィードバック配線104と、出力端子11のGNDと接続される基準GND配線105とを、制御回路基板100bに接続するために用いられる。接続部材103は、例えば、端子台、基板間コネクタ、取り付けソケット、フィンガー、クリップなどの構造部品であってもよい。また、フィードバック配線104または基準GND配線105が電線である場合は、はんだ付けで接続されたものであってもよい。図7における接続部材103は一体化したものであるが、接続部材103は複数個に分けて取り付けられていてもよい。接続部材103の位置は一意に限定されるものではない。
【0043】
フィードバック配線104は、電力変換装置1の出力端子11近傍と接続部材103の間を接続するものである。例えば、フィードバック配線104は、ケーブルでもよいし、基板間コネクタでもよい。
【0044】
基準GND配線105は、電力変換装置1の出力端子11近傍と接続部材103の間を接続するものである。例えば、基準GND配線105は、ケーブルでもよいし、基板間コネクタであってもよい。基準GND配線105は、GNDと称しているが、その電位はアースまたはフレームGNDに限られるものでない。基準GND配線105は、フィードバック配線104の電位を規定するための基準電位を与えるものである。例えば、車載機器におけるDC/DC変換装置のように、出力端子の他端が筐体30と同電位である場合、基準GND配線105の電位はGND電位、言い換えれば筐体30と同電位となる。
【0045】
制御素子用電子部品110は、制御素子101に接続される電子部品である。制御素子用電子部品110は、例えば、チップ抵抗、セラミックコンデンサなどである。搭載する部品種類、部品配置、部品数などは、制御素子101、制御信号の出力先である図示しないドライバ素子、パルストランス回路6、スイッチング素子7a、7b、7c、7dなど、出力先の回路仕様に合わせればよく、図示しない電子部品が搭載されていてもよい。
【0046】
アナログ信号配線群120は、制御素子101と、第1プリント基板41に搭載されたスイッチング素子7a、7b、7c、7dを制御する制御信号のスイッチング周波数、デューティー比、デッドタイムなどを設定するための制御素子用電子部品110の間の回路配線である。また、制御素子101と接続部材103の間の回路配線もアナログ信号配線群120に該当する。制御回路基板100bにおいて、アナログ信号配線群120の配線層は、プリント基板の表層であってもよいし、内層であってもよい。ただし、アナログ信号配線群120は、後述するシールドパターン140と異なる層において対向した構成を備える。また、アナログ信号配線群120の配線領域は、対向するシールドパターン140との間に備えられる絶縁層150の厚みHに対して、少なくとも1倍分(1H)内側に配線される。アナログ信号配線群120の配線領域は、絶縁層150の厚みHに対して、3倍分(3H)以上内側に配線されることが望ましい。なお、アナログ信号配線群120は、意図せずとも、寄生インダクタンスおよびノイズ放射源との相互インダクタンスによって磁界を受信するアンテナ、または、ノイズ放射源との寄生キャパシタンスによって電界を受信するアンテナとして機能する。その結果、回路配線にノイズが重畳する。これにより、本来の設計仕様とは異なる制御信号が出力される場合があるため、アナログ信号配線群120は特にノイズを重畳しづらい配線仕様を有する必要がある。
【0047】
デジタル信号配線群130は、制御信号を伝達する配線である。デジタル信号配線群130は、制御素子101と接続部材102の間の配線である。制御回路基板100bにおいて、デジタル信号配線群130の配線層は、表層であってもよいし、内層であってもよく、限定されるものでない。また、制御素子101と接続部材102の間には、例えばドライバIC(Integrated Circuit)など図示しない電子部品が搭載されていてもよい。
【0048】
シールドパターン140は、基準GND配線105と同電位の回路配線である。シールドパターン140の電位は、制御回路基板100bのグラウンドと同電位である。制御回路基板100bのグラウンドの電位は、筐体30と同電位である。
【0049】
シールドパターン140は、少なくとも制御回路基板100bに備えられればよく、必ずしも、第1プリント基板モジュール40および第2プリント基板モジュール50、ならびに、後述する第3プリント基板モジュール60、第4プリント基板モジュール70および第5プリント基板モジュール80を構成する各プリント基板に備えられる必要はない。
【0050】
シールドパターン140は、アナログ信号配線群120とは異なる層においてアナログ信号配線群120に対向する。シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140はアナログ信号配線群120に少なくとも一部重なっている。
【0051】
ただし、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120と異なる層で対向する最小領域であるため、アナログ信号配線群120とは別の信号配線群の直下などに、シールドパターン140と同電位の回路配線があってもよい。また、アナログ信号配線群120と同層にシールドパターン140と同電位の回路配線があってもよい。
【0052】
また、シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120よりも拡張されている。つまり、シールドパターン140の投影領域は、アナログ信号配線群120の配線領域を覆い、かつアナログ信号配線群120の配線領域の外端から外側に張り出している。本実施の形態では、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120の配線層とシールドパターン140の間の絶縁層150の厚みHに対して、アナログ信号配線群120の配線領域端部から少なくとも1倍分(1H)を拡張された回路配線を、アナログ信号配線群120とは異なる層に備える。言い換えれば、アナログ信号配線群120は、対向するシールドパターン140の配線領域より、少なくとも1Hは内側に配線された構成を備える。
【0053】
また、シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120の外端に対して、対向方向でのアナログ信号配線群120とシールドパターン140との間の厚みHの3倍以上拡張されている。つまり、シールドパターン140の投影領域は、アナログ信号配線群120の配線領域を覆い、かつアナログ信号配線群120の配線領域の外端に対して厚みHの3倍以上外側に張り出している。例えば、両面基板においてその板厚が1.6mmであり、アナログ信号配線群120が部品面に配線されているとする。シールドパターン140は、アナログ信号配線群120の端部から3H、つまり4.8mm(3×1.6mm)分、拡張された回路配線を、はんだ面に備えている。多層基板で層数が増えるほど、また、アナログ信号配線群120とシールドパターン140の配線層を隣接させることで、これら絶縁層150の厚みHは相対的に薄くなるため、アナログ信号配線群120の配線領域に対して、シールドパターン140が拡張される領域を小さくすることができる。
【0054】
このように、シールドパターン140をアナログ信号配線群120の配線領域より拡張することで、シールドパターン140に対して垂直に入射するノイズだけでなく、斜め方向から入射するノイズを遮蔽することができる。結果、アナログ信号配線群120へのノイズの重畳を抑制することができる。
【0055】
ノイズの成分が電界の場合、シールドパターン140の表面の電界は法線方向成分のみとなるため、シールドパターン140をアナログ信号配線群120より拡張せずとも、ノイズ放射源の波動インピーダンスとシールドパターン140の固有インピーダンスの差によって、電界を反射させることができるため、高い遮蔽効果が得られる。
【0056】
しかしながら、ノイズの成分が磁界の場合、シールドパターン140に対して、法線方向成分のみでなく、ノイズ放射源となる電流経路に対して円弧を描くように磁界が形成される。磁界はノイズ放射源からの距離に応じた入射角を伴った成分を持ち、法線方向成分は相対的に小さい。また、ノイズの周波数が低周波かつノイズ放射源の近傍における磁界では、上述した媒質間のインピーダンス差を利用した反射による遮蔽効果は得られにくい。さらに、低周波における非磁性金属の表皮深さは深いため、渦電流を発生させることによって磁界を減衰させることは難しい。このような場合、ファラデーの電磁誘導の法則に従い、アナログ信号配線群120とシールドパターン140の間で形成されるループを鎖交する磁界を低減することで、電磁誘導による誘導電圧を抑制することが有効となる。
【0057】
図11に示されるように、制御回路基板100bが多層基板である場合、制御回路モジュール100aの表層および内層のアナログ信号配線群120はビア142を介して電気的に接続されている。
【0058】
図12に示されるように、絶縁層150の厚みHとし、シールドパターン140をアナログ信号配線群120の配線領域より拡張した際に、アナログ信号配線群120とシールドパターン140間を鎖交できる磁界の入射角αを考える。1H拡張する場合は45度(角度=arctan(1H/1H))~90度、2H拡張する場合は26.6度(角度=arctan(1H/2H))~90度、3H拡張すると18.4度(角度=arctan(1H/3H))~90度までの入射角αの磁界を遮蔽できる。つまり、シールドパターン140をアナログ信号配線群120の配線領域より拡張するほど、広範な入射角αを伴った磁界を遮蔽できる。さらに、多層基板において、アナログ信号配線群120がプリント基板の内層に配置され、シールドパターン140がこれを上下層で覆うことで、全方位に対して非常に高いノイズ遮蔽効果が得られる。結果、アナログ信号配線群120と、シールドパターン140で形成されるループを鎖交する磁界を低減することで、アナログ信号配線群120へのノイズの重畳を抑制することができる。これにより、制御素子101の誤動作を防止することができる。
【0059】
図13に、シールドパターン140をアナログ信号配線群120の配線領域より拡張することによるノイズ重畳量の抑制効果の一例を示す。シールドパターン140をアナログ信号配線群120と対向する異なる層に備えた状態で、シールドパターン140をアナログ信号配線群120の配線領域端部から拡張するほどノイズ遮蔽効果は高まる。さらに、3H拡張した場合、3H以上拡張した場合と同等のノイズ遮蔽効果を示す結果が得られている。このことより、シールドパターン140が制御回路基板100bの導体層一面に備えられない場合であっても、局所的にアナログ信号配線群120の配線領域より3H拡張したシールドパターン140が備えられることで、ノイズを遮蔽することができる。
【0060】
次に、本実施の形態に係る電力変換装置1の作用効果について説明する。
本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、第2プリント基板51は第1プリント基板41と交差するように配置され、制御回路基板100bは第2プリント基板51に沿うように配置されている。このため、電力変換装置1を小型化することができる。また、シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140はアナログ信号配線群120に少なくとも一部重なっている。このため、シールドパターン140によってノイズを遮断することができる。したがって、ノイズ耐性に優れた制御回路基板100bを提供することができる。ひいては、ノイズ耐性に優れ、誤動作しにくい電力変換装置1を提供することができる。
【0061】
本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120よりも拡張されている。このため、シールドパターン140に対して垂直に入射するノイズだけでなく、斜め方向から入射するノイズを遮蔽することができる。結果、アナログ信号配線群120へのノイズの重畳を抑制することができる。
【0062】
また、シールドパターン140をアナログ信号配線群120と対向させ、かつその配線領域より拡張させた回路配線を備えることで、アナログ信号配線群120の寄生インダクタンスを低減することができる。結果、第1プリント基板41または第2プリント基板51に搭載される電子部品およびこれらに関連した配線との相互インダクタンスも低減することができる。これにより、アナログ信号配線群120とスイッチング素子7a、7b、7c、7dなどとの誘導結合を抑制できるため、アナログ信号配線群120に重畳するノイズ量を抑制することができる。
【0063】
本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、シールドパターン140がアナログ信号配線群120に対向する対向方向から見て、シールドパターン140は、アナログ信号配線群120の外端に対して、対向方向でのアナログ信号配線群120とシールドパターン140との間の厚みHの3倍以上拡張されている。このため、シールドパターン140に対して垂直に入射するノイズだけでなく、斜め方向から入射するノイズをさらに遮蔽することができる。
【0064】
本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、シールドパターン140の電位は、制御回路基板100bのグラウンドと同電位である。このため、シールドパターン140は、静電結合を防止する静電シールドとしての機能を備えたものとなる。
【0065】
本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、制御回路基板100bのグラウンドの電位は、筐体30と同電位である。シールドパターン140が、基準GND配線105を介して、筐体30と同電位で接続されている場合、シールドパターン140は静電結合を防止する静電シールドとしての機能も備えたものとなる。このため、ノイズ耐性に優れた制御回路モジュール100a、ひいてはノイズ耐性に優れ、誤動作しない電力変換装置1を提供することができる。
【0066】
次に、実施の形態1の変形例として図14図22を参照して、制御回路モジュール100aの例を3種類示す。図14図22は、実施の形態1とは、シールドパターン140の形状、拡張シールドパターン141の有無が異なる。特に説明しない限り、実施の形態1の変形例は、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有している。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0067】
まず、実施の形態1の変形例1を図14および図15を参照して説明する。図14は、実施の形態1の変形例1に係る制御回路モジュール100aの透視図である。図15は、図14の線XV-XVに沿う切断面の断面図である。なお、実施の形態1との違いに着目し、同一の構成、動作および効果については説明を繰り返さない。
【0068】
実施の形態1の変形例1におけるシールドパターン140は、アナログ信号配線群120に加え、制御素子101も異なる層において対向している。シールドパターン140は、アナログ信号配線群120の配線領域および制御素子101の部品配置領域の端部から、アナログ信号配線群120の配線層と対向したシールドパターン140の間に備えられる絶縁層150の厚みHに対して、少なくとも1倍分(1H)、望ましくは3倍(3H)拡張されている。言い換えれば、アナログ信号配線群120および制御素子101は、対向するシールドパターン140の配線領域より、少なくとも3Hは内側に配線されている。
【0069】
このように、シールドパターン140を、アナログ信号配線群120および制御素子101の配線領域より拡張することで、シールドパターン140に対して垂直に入射するノイズだけでなく、斜め方向から入射するノイズを遮蔽することができる。結果、アナログ信号配線群120および制御素子101へのノイズの重畳を抑制することができる。
【0070】
また、制御回路基板100bを設計するときに、アナログ信号配線群120の配線長を短くすることで、ノイズの重畳量を低減することができる。しかし、制御素子101のノイズ耐性はチップメーカーに依存し、そのノイズ耐性は制御素子101のパッケージ内部のインターポーザー上の回路配線の影響を受ける。実施の形態1の変形例1には、チップメーカーに依存する制御素子101のノイズ耐性を、制御回路基板100bの設計により高められる利点がある。
【0071】
次に、実施の形態1の変形例2を図16および図17を参照して説明する。図16は、実施の形態1の変形例2に係る制御回路モジュール100aの透視図である。図17は、図16の線XVII-XVIIに沿う切断面の断面図である。なお、実施の形態1との違いに着目し、同一の構成、動作および効果については説明を繰り返さない。
【0072】
実施の形態1の変形例2におけるシールドパターン140は、アナログ信号配線群120、デジタル信号配線群130、制御素子101などとは異なる層において、その一面に設けられている。言い換えれば、接続部材102および接続部材103を除き、制御回路基板100b上の全ての信号配線、電子部品の領域を覆う、制御回路基板100bの外形と同サイズのシールドパターン140が備えられている。
【0073】
このように、シールドパターン140を制御回路基板100bの一面に備えることで、シールドパターン140に対して垂直に入射するノイズだけでなく、斜め方向から入射するノイズを遮蔽することができる。結果、アナログ信号配線群120、デジタル信号配線群130、制御素子101、図示しない回路配線および電子部品へのノイズの重畳を抑制することができる。
【0074】
上述した変形例1との違いとして、デジタル信号配線群130の配線層とは異なる層にて基板サイズと同等のシールドパターン140を備えることで、スイッチング素子7a、7b、7c、7dのスイッチング動作で生じるスパイク状のノイズが制御信号に重畳しづらい。結果、制御信号の波形歪みによる、スイッチング素子7a、7b、7c、7dの誤制御を抑制することができる。
【0075】
最後に、実施の形態1の変形例3を図5図18図22を参照して説明する。図18は、実施の形態1の変形例3に係る制御回路モジュール100aの透視図である。図19は、制御回路モジュール表面の上面視図である。図20は、制御回路モジュール裏面の上面視図である。図21は、図18の線XXI-XXIに沿う切断面の断面図である。実施の形態1との違いに着目し、同一の構成、動作および効果については説明を繰り返さない。
【0076】
実施の形態1の変形例3における電力変換装置1では、スイッチング素子7a、7b、7c、7dが搭載された第1プリント基板41が制御回路基板100bのシールドパターン140と同電位の回路配線を備え、制御回路基板100bが第1プリント基板41の回路配線とシールドパターン140を電気的に接続するための拡張シールドパターン141を備える点で、実施の形態1と異なる。
【0077】
第1プリント基板41は、シールドパターン140と同電位の回路配線(第1プリント基板回路配線41a)を含んでいる。制御回路基板100bは、拡張シールドパターン141を含んでいる。シールドパターン140は、回路配線(第1プリント基板回路配線41a)および拡張シールドパターン141に電気的に接続されている。
【0078】
拡張シールドパターン141は、制御回路基板100bのシールドパターン140と、第1プリント基板41のシールドパターン140と同電位の回路配線を電気的に接続するために、接続部材102とシールドパターン140の間を接続するための回路配線である。拡張シールドパターン141の配線層、配線幅、配線の引き回しは、シールドパターン140と同一の配線層、デジタル信号配線群130の配線領域を覆う配線幅、最短で配線することが望ましいが、これらに限定されるものではなく、図18に示すように接続部材102とシールドパターン140を電気的に接続できればよい。
【0079】
このような拡張シールドパターン141を備えることで、実施の形態1に記載した効果に加え、制御回路基板100bのシールドパターン140を、電位変動の少ない安定した第1プリント基板41のシールドパターン140と同電位の回路配線(第1プリント基板回路配線41a)に、基準GND配線105を併せて複数点で接続することができる。これにより、シールドパターン140のインピーダンスが小さくなるため、シールドパターン140の静電シールドとしての機能が向上する。よって、電界を遮蔽する効果が高まる。
【0080】
また、拡張シールドパターン141を備えることで、デジタル信号配線群130に重畳するスイッチングノイズを低減する効果が高まる。スイッチング素子7a、7b、7c、7dによって生じるスパイク状のノイズは、スイッチング素子7a、7b、7c、7dを制御する制御信号を伝搬するデジタル信号配線群130に重畳する。拡張シールドパターン141は、スイッチング素子7a、7b、7c、7dが搭載された第1プリント基板41上の回路配線と電気的に接続されているため、デジタル信号配線群130に重畳したノイズをスイッチング素子7a、7b、7c、7dに帰還する経路としても機能する。これにより、デジタル信号配線群130に重畳したノイズが、デジタル信号配線群130と近接した、制御素子101、アナログ信号配線群120などへ二次結合することを防止できる。さらに、拡張シールドパターン141が異なる層にて、デジタル信号配線群130の配線領域を覆う回路配線を備える場合、デジタル信号配線群130の寄生インダクタンスを低減できるため、第1プリント基板41または第2プリント基板51に備えられる電子部品およびこれらに関連した配線との相互インダクタンスが低減する。これにより、デジタル信号配線群130とスイッチング素子7a、7b、7c、7dなどとの誘導結合を抑制することができるため、デジタル信号配線群130に重畳するノイズ量を抑制することができる。
【0081】
実施の形態2.
次に、図6図23~29図を参照して、実施の形態2に係る電力変換装置1について説明する。実施の形態2は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1と同一の構成、動作および効果を有する。したがって、上記の実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0082】
実施の形態2に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態1に係る電力変換装置1と同様の構成を備える。図23は、実施の形態2に係る電力変換装置1の斜視図である。図24は、実施の形態2に係る電力変換装置1の上面図である。図25は、図24の線XXV-XXVに沿う切断面の断面図である。図26図29は、実施の形態2に係る制御回路モジュール100aを図示している。実施の形態2に係る電力変換装置1は、実施の形態1と比較して、固定部材160と、スペーサー161と、制御回路モジュール100aの拡張シールドパターン141と、ビア142と、ランド143とを備える点が異なる。
【0083】
第2プリント基板51は、シールドパターン140と同電位の回路配線(第2プリント基板回路配線51a)を含んでいる。シールドパターン140は、回路配線(第2プリント基板回路配線51a)および拡張シールドパターン141に電気的に接続されている。
【0084】
固定部材160およびスペーサー161は、制御回路モジュール100aをこれと対向する第2プリント基板モジュール50に固定するために用いられる。固定部材160およびスペーサー161の材質は制限されるものではない。また、拡張シールドパターン141と、ビア142と、ランド143の有無も限定されるものではない。したがって、第2プリント基板51に設けられた回路配線と同電位とするために、固定部材160およびスペーサー161が電気的に接続される場合は、金属製の固定部材160およびスペーサー161が使用されればよい。一方で、同電位とすべきでない配線仕様であれば、樹脂など非金属製の固定部材160およびスペーサー161が使用されればよい。言い換えれば、固定部材160およびスペーサー161は、製品の仕様に合わせて固定のみの用途としてもよいし、固定に加え、電気的に接続できるようにしてもよい。また、実施の形態1の変形例3で示すように、シールドパターン140が、拡張シールドパターン141と接続部材102を介して、第1プリント基板上の回路配線と接続されてもよい。
【0085】
本実施の形態によれば、制御回路モジュール100aを、第2プリント基板モジュール50に固定部材160およびスペーサー161により固定することで、耐振動性が高まる。さらに、固定部材160およびスペーサー161を、第2プリント基板51に対して、一か所に偏りなく、バランスよく等間隔で固定することで、制御回路モジュール100aはたわみにも強くなる。また、制御回路モジュール100aが第2プリント基板モジュール50に固定されることで、制御回路モジュール100aと第1プリント基板モジュール40との接続は、必ずしも構造的に強固に固定する必要はなく、制御信号を伝達さえできればよい。言い換えれば、接続部材102として、ケーブル等を用いることもできる。
【0086】
固定部材160およびスペーサー161が非金属製である場合、電気的には、制御回路モジュール100aへの寄与は実施の形態1と同じであるため、以降の説明では固定部材160およびスペーサー161は金属製と仮定して説明する。
【0087】
図26図29を参照して、実施の形態2に係る制御回路モジュール100aを説明する。図26は、実施の形態2に係る制御回路モジュール100a表面の上面視図である。図27は、実施の形態2に係る制御回路モジュール100a裏面の上面視図である。図28は、図26の線XXVIII-XXVIIIに沿う断面図である。図29は、実施の形態2に係る制御回路モジュール100aの変形例の図28に対応する切断面での断面図である。実施の形態2に係る制御回路モジュール100aは、実施の形態1と比較して、制御回路基板100bが固定部材160、ビア142、ランド143を備える点と、これに応じて拡張シールドパターン141が変形される点で異なる。
【0088】
ビア142は、制御回路基板100bの表層にあるランド143と、ランド143とは異なる層にある拡張シールドパターン141とを電気的に接続するためのものである。
【0089】
ランド143は、拡張シールドパターン141を、ビア142を介して、固定部材160と電気的に接続するための回路配線である。スペーサー161を固定部材160がなくとも制御回路基板100bと電気的に接続かつ構造的に固定できる場合などは、ビア142およびランド143は必ずしも備えられる必要はなく、接続方法に応じて任意に設けられればよい。
【0090】
拡張シールドパターン141は、実施の形態1に示した例を組み合わせても良く、図示した仕様に限定されるものでない。固定部材160とシールドパターン140の間のインピーダンスを下げるために、拡張シールドパターン141の配線幅は太くすることが望ましく、制御回路基板100bの一面にベタとして配置されることがさらに望ましい。また、拡張シールドパターン141は、接続部材102と第1プリント基板41上に設けられたGNDとに接続されてもよい。また、図29に示されるように、拡張シールドパターン141とランド143の間が受動性の電子部品111、たとえばコンデンサで電気的に接続されてもよい。
【0091】
本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、上述した耐振動性、固定の観点から構造的に優れる。さらに、制御回路基板100bのシールドパターン140を、電位変動の少ない安定した第2プリント基板51のシールドパターン140と同電位の回路配線(第2プリント基板回路配線51a)に複数点で接続することができる。これにより、シールドパターン140のインピーダンスが小さくなるため、シールドパターン140の静電シールドとしての機能が向上する。よって、電界を遮蔽する効果が高まる。
【0092】
実施の形態3.
次に、図30図32を参照して、実施の形態3に係る電力変換装置1について説明する。実施の形態3は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1および実施の形態2と同一の構成、動作および効果を有する。したがって、上記の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0093】
実施の形態3に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態1および実施の形態2に係る電力変換装置1と同様の構成を備える。図30は、実施の形態3に係る電力変換装置1の斜視図である。図31は、実施の形態3に係る電力変換装置1の上面図である。図32は、図31の線XXXII-XXXIIに沿う切断面の断面図である。実施の形態3に係る電力変換装置1は、実施の形態1および実施の形態2と比較して、抑え板170を備える点が異なる。
【0094】
抑え板170は、第2プリント基板51に実装された電子部品、たとえばトランス回路3および平滑コイル20(図1参照)などの高発熱部品と熱的に接続され、電子部品を冷却するように構成されている。また、抑え板170は、トランス回路3および平滑コイル20を構成するコア材を、第2プリント基板51に押し当てて固定する。抑え板170は、第2プリント基板51と制御回路基板100bとの間に配置されている。抑え板170は、第2プリント基板51と略水平に配置されている。抑え板170は、電子部品を第2プリント基板51に対して押し当てるように構成されている。また、抑え板170は、第2プリント基板51および制御回路基板100bと対向するように構成されている。抑え板170は、1.0W/(m・K)以上、好ましくは10.0W/(m・K)、さらに好ましくは100.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する。抑え板170は、銅、鉄、アルミニウム、鉄合金、アルミニウム合金などの金属材料で形成される。また、抑え板170は、周囲の大気への放熱を促進するため、放熱フィン等を備えてもよい。また、抑え板170は、必ずしも一体成型されたものでなく、複数の金属板を組み合わせ、これらを接続して立体化されたものでもよい。また、抑え板170と高発熱部品の間に、第1絶縁部材42および第2絶縁部材52と同様な絶縁部材があってもよい。
【0095】
本実施の形態によれば、実施の形態1および2の効果に加え、抑え板170と熱的に接続された電子部品の放熱性を高め、かつ電子部品を固定できる。さらに、制御回路モジュール100aに対して、抑え板170がノイズを遮蔽するシールドとしても機能する。特に、抑え板170で固定される電子部品が発するノイズが効果的に遮蔽される。よって、制御回路モジュール100aへのノイズの重畳を抑制することができる。したがって、ノイズを発生させる電子部品と、制御回路基板100bとを近接して実装することができる。結果、制御回路モジュール100aのアナログ信号配線群120および制御素子101にノイズが重畳しづらくなるため、電力変換装置1の誤動作を抑制しつつ、電力変換装置1を小型化することができる。
【0096】
実施の形態4.
次に、図33図36を参照して、実施の形態4に係る電力変換装置1について説明する。実施の形態4は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1~3と同一の構成、動作および効果を有する。したがって、上記の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0097】
実施の形態4に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態1~3に係る電力変換装置1と同様の構成を備える。図33は、実施の形態4に係る電力変換装置1の斜視図である。図34は、実施の形態4に係る電力変換装置1の上面図である。図35は、図34の線XXXV-XXXVに沿う切断面の断面図である。図36は、実施の形態4に係る制御回路モジュール100a裏面の上面視図である。実施の形態4に係る電力変換装置1は、実施の形態3と比較して、抑え板170の代わりに、制御回路基板100bによって、第2プリント基板51上の電子部品を放熱かつ固定している点で異なる。また、第2プリント基板51上の電子部品を効率的に熱拡散して放熱するために、制御回路基板100b上の拡張シールドパターン141が第2プリント基板51と対向する基板表面に配置されている点が異なる。
【0098】
実施の形態4に係る制御回路モジュール100aは、放熱および固定する必要のある電子部品が搭載されたプリント基板、例えば図33図35における第2プリント基板51と対向して実装される。制御回路モジュール100aの拡張シールドパターン141は、第2プリント基板51と対向する面に備えられている。
【0099】
拡張シールドパターン141は、その形状および配線領域を限定するものではないが、第2プリント基板51上に搭載された電子部品を効率よく放熱するために、図36に示されるように面積が広いほど望ましく、制御回路基板100bの一面に回路配線を備えることが望ましい。また、拡張シールドパターン141と電子部品を絶縁しつつも、熱的に密に接続するために、これらの間に第1絶縁部材42および第2絶縁部材と同様な絶縁部材が用いられてもよい。
【0100】
制御回路基板100bは、第2プリント基板51に実装された電子部品を第2プリント基板51に対して押し当てるように構成されている。制御回路基板100bは、第2プリント基板51と略水平に配置されている。
【0101】
本実施の形態によれば、実施の形態1および2の効果に加え、実施の形態3で示した抑え板170がなくとも、電子部品を放熱でき、かつ電子部品を固定できる。また、実施の形態3で示した抑え板170を必要としないため、抑え板170の体積分、第2プリント基板51と制御回路基板100bを近接して実装することができる。これにより、電力変換装置1をさらに小型化することができる。
【0102】
実施の形態5.
次に、図37図40を参照して、実施の形態5に係る電力変換装置1について説明する。実施の形態5は、特に説明しない限り、上記の実施の形態1~4と同一の構成、動作および効果を有する。したがって、上記の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0103】
実施の形態5に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態1~4に係る電力変換装置1と同様の構成を備える。図37は、実施の形態5に係る電力変換装置1の上面図である。図38は、実施の形態5に係る制御回路モジュール100a表面の上面視図である。図39は、実施の形態5に係る制御回路モジュール100a裏面の上面視図である。図40は、図38の線XL-XLに沿う断面図である。
【0104】
実施の形態5に係る電力変換装置1は、実施の形態1~4と比較して、制御回路基板100bの短辺側に電子部品が搭載されたプリント基板モジュールを備え、これらと第3接続部材61と、第4接続部材71と、ビア142と、ランド143とを備える点が異なる。
【0105】
図37に示されるように、実施の形態5に係る電力変換装置1は、筐体30と、第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80と、制御回路モジュール100aとを備えている。第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80とは、各々、プリント基板と、絶縁部材と、固定部材によって筐体30に固定されている。これらのプリント基板モジュールは、図示しないハーネス等で電気的に接続される。
【0106】
また、実施の形態5の上面図である図37では、筐体30が5面を有し、プリント基板モジュールが5枚あり、プリン基板モジュールが筐体30の各々の内壁に固定されている。この構成は一例であり、第1プリント基板モジュール40のほかに、第3接続部材61または第4接続部材71の接続先として、電子部品を搭載したプリント基板モジュールが備えられればよく、筐体30の面数およびプリント基板モジュールの枚数には寄らない。ただし、実施の形態5の説明では、図38に示すように、5面を有する箱型の筐体30と、この各面には第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80とが備えられていると仮定して説明する。また、制御回路モジュール100aは、第3接続部材61および第4接続部材71によって、それぞれ第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と固定される。これらは電気的に接続されてもされなくてもよいが、ここでは第3接続部材61および第4接続部材71によって、電気的に制御回路モジュール100aと第3プリント基板モジュール60および第4プリント基板モジュール70とが接続される場合について説明する。
【0107】
第3接続部材61は、制御回路基板100bと第3プリント基板モジュール60とを固定するものである。第3接続部材61は、制御回路基板100bと第3プリント基板モジュール60の同電位の回路配線を接続するものである。第3接続部材61は、例えば、基板間コネクタ、取り付けソケット、フィンガー、クリップなどである。また、第3接続部材61は、基板間コネクタなどの制御回路基板100bに実装する接続部材と、プリント基板とを組み合わせた接続部材としてもよい。第3接続部材61は、図37では1つの構造物であるが、複数個に分けて取り付けられていてもよいし、それらの実装位置においても限定されるものでなく、制御回路基板100bにて第3プリント基板モジュール60と接続される少なくとも1辺以上に備えられればよい。
【0108】
第4接続部材71は基本的に第3接続部材61と同様であるが、第3接続部材61との差異は、第4プリント基板モジュール70との固定、および制御回路基板100bと第4プリント基板モジュール70の同電位の回路配線を接続させる点である。
【0109】
本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、制御回路基板100bを複数点で固定できるため、耐振動性が優れる。さらに、制御回路基板100b上のシールドパターン140を、基準GND配線105だけでなく、拡張シールドパターン141ならびに第3接続部材61および第4接続部材71を介して第3プリント基板モジュール60および第4プリント基板モジュール70に接続することができる。これによって、筐体30に対するシールドパターン140のインピーダンスが小さくなるため、シールドパターン140の静電シールドとしての機能が向上する。よって、電界を遮蔽する効果が高まる。
【0110】
実施の形態6.
実施の形態6に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態1~5に係る電力変換装置と同様の構成を備える。図41は、実施の形態6に係る電力変換装置1の上面図である。実施の形態6に係る電力変換装置1は、筐体30が5面を有し、筐体30に囲まれた空間に、封止部材180が充填されている点で異なる。
【0111】
実施の形態6に係る電力変換装置1は、箱型で5面を有する筐体30と、筐体30の内壁に固定された第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80と、制御回路モジュール100aと、封止部材180とを備えている。プリント基板モジュールの枚数は、電力変換装置1として機能を実現できればよく、制限されるものではない。ここでは、枚数は第1プリント基板モジュール40から第5プリント基板モジュール80の5枚と仮定して説明する。
【0112】
封止部材180は、筐体30により取り囲まれた空間に充填されている。具体的には、封止部材180は、箱型の筐体30によって取り囲まれた空間に充填されている。封止部材180は、第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80と、制御回路モジュール100aの各々に搭載された電子部品を封止している。
【0113】
封止部材180は、0.1W/(m・K)以上、好ましくは1.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する材料からなってもよい。封止部材180は、1×1010Ω・m以上、好ましくは1×1012Ω・m以上、さらに好ましくは、1×1014Ω・m以上の体積抵抗率を有する材料からなる。言いかえると、封止部材180は、電気的絶縁性を有する。封止部材180は、1MPa以上のヤング率を有してもよい。封止部材180は、弾性を有する樹脂材料で構成されてもよい。封止部材180は、熱伝導性フィラーを含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)もしくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料で構成されてもよい。封止部材180は、シリコーンまたはウレタンなどのゴム材料で構成されてもよい。
【0114】
本実施の形態によれば、実施の形態1から実施の形態5に係る電力変換装置1と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態6に係る電力変換装置1では、プリント基板の、表面または内部に形成された回路配線で発生した熱と、プリント基板に搭載される電子部品で発生した熱を、放熱する放熱経路として、封止部材180を介して筐体30に放熱する放熱経路を形成できる。このため、プリント基板の、表面または内部に形成された回路配線で発生した熱と、プリント基板に搭載される電子部品で発生した熱に対する電力変換装置1の放熱性を向上できる。その結果、電力変換装置1は、高出力で動作できる。
【0115】
また、一般に電子部品同士の間は、沿面放電を防止するため、電子部品同士の間で、各電子部品に印加される電圧に応じた沿面距離を確保する必要がある。実施の形態6に係る電力変換装置1では、電子部品同士の間に、電気的絶縁性を有する封止部材180が充填されるため、沿面放電が起こりにくくなる。したがって、電子部品同士の間の沿面距離を短くすることができる。また、空間放電も起こりにくくなるため、プリント基板同士の空間距離を短くすることができる。このため、実施の形態6に係る電力変換装置1は、実施の形態1~5に係る電力変換装置1と比較して、第1プリント基板モジュール40と、第2プリント基板モジュール50と、第3プリント基板モジュール60と、第4プリント基板モジュール70と、第5プリント基板モジュール80とを小型化することができる。さらに、これらプリント基板モジュールおよび制御回路モジュール100a同士の空間距離を短くすることができる。その結果、実施の形態6に係る電力変換装置1を小型化することができる。
【0116】
また、封止部材180を、プリント基板と筐体30の間に充填する場合、プリント基板と冷却体との間に配置される絶縁部材を不要にすることができる。したがって、電力変換装置1を構成する部品点数を削減することができる。
【0117】
実施の形態7.
実施の形態7に係る電力変換装置1は、基本的には実施の形態3の変形例である。また実施の形態7に係る電力変換装置1は、実施の形態1および実施の形態2に係る電力変換装置1と同様の構成を備える。図42は、実施の形態7に係る電力変換装置1の斜視図である。図43は、実施の形態7に係る電力変換装置1の上面図である。図44は、図43の線XLIV-XLIVに沿う切断面の断面図である。
【0118】
実施の形態7に係る電力変換装置1は、実施の形態3と比較して、第2プリント基板モジュール50に実装された、たとえばトランス回路3および平滑コイル20などの高発熱部品上のみでなく、第1プリント基板モジュール40など、他のプリント基板モジュールまで抑え板170が延伸した構成を備える点で異なる。
【0119】
抑え板170は、第2プリント基板51と制御回路基板100bとの間に配置されている。抑え板170は、第2プリント基板51に沿うように延在しかつ前記第1プリント基板41に沿うように延在している。抑え板170は、第2プリント基板51と略水平に配置されてから湾曲して少なくとも最も発熱量の多い第1プリント基板41上まで延伸している。言い換えれば、抑え板170の構造は、少なくともL字型となり、全てのプリント基板モジュールに対して延伸することで、制御回路基板100bの1面を除いた全面を覆う構成(浴槽型)となってもよい。また、延伸した抑え板170を固定するために、延伸した領域と対向したプリント基板と固定部材によって接続されていてもよい。また、抑え板170の延伸した領域に、接続部材102のように延伸を妨げる構造物があれば、抑え板170をくり抜いたり、迂回させたりし、構造物と物理的に干渉しないようにする。
【0120】
抑え板170は、第2プリント基板51および第1プリント基板41の電子部品に対して押し当てるように構成されている。また、抑え板170は、少なくとも、第2プリント基板51と対向し、第1プリント基板41に対しても対向する構成をとる。抑え板170の第1プリント基板41まで拡張した部分は、第1プリント基板41と略水平となり、制御回路基板100bに対して略垂直となる。抑え板170は、1.0W/(m・K)以上、好ましくは10.0W/(m・K)、さらに好ましくは100.0W/(m・K)以上の熱伝導率を有する。抑え板170は、銅、鉄、アルミニウム、鉄合金、アルミニウム合金などの金属材料で形成される。また、抑え板170は、周囲の大気への放熱を促進するため、放熱フィン等を備えてもよい。また、抑え板170は、必ずしも一体成型されたものでなく、複数の金属板を組み合わせ、これらを接続して立体化されたものでもよい。また、抑え板170と高発熱部品の間に、第1絶縁部材42および第2絶縁部材52と同様の絶縁部材があってもよい。
【0121】
本実施の形態によれば、実施の形態3の効果に加え、さらに熱的に接続された電子部品の放熱性を高めることができる。また、実施の形態3の構成に加え、抑え板170は少なくとも第1プリント基板モジュール40を覆うことで第1プリント基板モジュール40から発せられるノイズに対するシールドとして振る舞うため、制御回路基板100bへ重畳するノイズ量を抑制することができる。
【0122】
また、本実施の形態は、第2プリント基板モジュール50と対向する第5プリント基板モジュール80に実装された、たとえばトランス回路3および平滑コイル20などの高発熱部品上のみでなく、第1プリント基板モジュール40など、他のプリント基板モジュールまで抑え板170が延伸した構成を備えていてもよい。この場合、抑え板170は、第5プリント基板モジュール80と制御回路基板100bとの間に配置されている。抑え板170は、第5プリント基板モジュール80と略水平に配置されてから湾曲して少なくとも最も発熱量の多い第1プリント基板41上まで延伸している。抑え板170は、第5プリント基板モジュール80の電子部品に対して押し当てるように構成されている。また、抑え板170は、少なくとも第5プリント基板モジュール80と対向し、第1プリント基板41に対しても対向する構成をとる。
【0123】
また、上記の各実施の形態を適宜組み合わせることが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 電力変換装置、30 筐体、40 第1プリント基板モジュール、41 第1プリント基板、50 第2プリント基板モジュール、51 第2プリント基板、60 第3プリント基板モジュール、61 第3接続部材、70 第4プリント基板モジュール、71 第4接続部材、80 第5プリント基板モジュール、100a 制御回路モジュール、100b 制御回路基板、110 制御素子用電子部品、120 アナログ信号配線群、130 デジタル信号配線群、140 シールドパターン、141 拡張シールドパターン、150 絶縁層、160 固定部材、170 抑え板、180 封止部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44