(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】比例弁を使用したガス密封送気及び再循環のための外科用ガス送達システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20241129BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61B17/94
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2023543338
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022012868
(87)【国際公開番号】W WO2022159422
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-19
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルツ マイケル ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ティムリ ジョナサン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09199047(US,B2)
【文献】特開2000-279378(JP,A)
【文献】実開平05-011910(JP,U)
【文献】特表2015-521913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0147338(US,A1)
【文献】特表2010-502360(JP,A)
【文献】特表2012-505027(JP,A)
【文献】特開2003-153912(JP,A)
【文献】米国特許第09295490(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/94
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス密封送気及び再循環のための外科用ガス送達システムであって、
a)ガス密封アクセスポートと連通するためのガス密封マニホールドと、
b)前記ガス密封アクセスポート及び弁密封アクセスポートと連通するための送気マニホールドと、
c)前記ガス密封マニホールドを介して、前記ガス密封アクセスポートを通して
送気ガスを再循環させるためのコンプレッサと、
d)前記ガス密封アクセスポートへの
前記送気ガスの流れを動的に制御するための、前記送気マニホールドと動作可能に関連付けられた第1の比例出口ライン弁と、
e)前記弁密封アクセスポートへの送気ガスの流れを動的に制御するための、前記送気マニホールドと動作可能に関連付けられた第2の比例出口ライン弁と、
f)前記第1及び第2の比例出口ライン弁への前記送気ガスの流れを制御するために、及び、前記送気マニホールド内の中間圧力を維持するために、前記第1及び第2の比例出口ライン弁の上流に位置し、前記送気マニホールドと動作可能に関連付けられた一次比例弁と、
g)前記一次比例弁の下流かつ前記第1及び第2の比例出口ライン弁の上流に位置する換気排気弁と、
を備え
、
前記換気排気弁が開放され、前記送気ガスを前記外科用ガス送達システムから大気中に放出することにより前記送気マニホールド内の中間圧力が降下すると、前記一次比例弁が開放されて、前記送気マニホールド内の中間圧力が維持されるように構成されている、外科用ガス送達システム。
【請求項2】
前記送気マニホールドが、前記第1の
比例出口ライン弁の下流にある第1の圧力センサと、前記第2の
比例出口ライン弁の下流にある第2の圧力センサと、を含む、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項3】
前記第1及び第2の圧力センサ
とは別の2つの他の圧力センサが、前記送気マニホールドからのガス流量を推定するために使用される圧力差を
測定する
ために、
前記第1及び第2の比例出口ライン弁の上流に位置する、請求項2に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項4】
外科用ガス源が、前記ガス密封マニホールド及び前記送気マニホールドと連通する、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項5】
前記外科用ガス源からの
送気ガスが、高圧調節器及びガスヒーターを通って流れ、その後、前記
送気ガスが、前記ガス密封マニホールド及び前記送気マニホールドに送達される、請求項4に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項6】
前記ガス密封マニホールドが
、外科用ガス源から前記ガス密封マニホールド内に送達される
前記送気ガスを制御するために、前記コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられたガス充填弁を含み、前記ガス充填弁が、比例弁である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項7】
前記ガス密封マニホールドが、特定の動作条件下で、前記ガス密封マニホールドと前記送気マニホールドとの間のガス流を制御するために、前記コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた煙排出弁を含み、前記煙排出弁が、比例弁である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項8】
前記ガス密封マニホールドが、特定の動作条件下で、前記ガス密封マニホールド内のガス流を制御するために、前記コンプレッサの出口側と前記コンプレッサの入口側との間にバイパス弁を含み、前記バイパス弁が、比例弁である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項9】
前記ガス密封マニホールドが、特定の動作条件下で、前記
外科用ガス送達システム内への大気の混入を制御するために、前記コンプレッサの入口側と動作可能に関連付けられた空気換気弁を含み、前記空気換気弁が、比例弁である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項10】
前記ガス密封マニホールドが、特定の動作条件下で、前記
外科用ガス送達システムから大気への
前記送気ガスの放出を制御するために、前記コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた過圧逃し弁を含み、前記過圧逃し弁が、電磁弁である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項11】
前記ガス密封マニホールドが、前記コンプレッサの入口側と動作可能に関連付けられた第1の圧力センサと、前記コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた第2の圧力センサと、を含む、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項12】
前記ガス密封マニホールドが、前記コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられたガス品質センサを含む、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項13】
前記ガス密封マニホールドへの入口と動作可能に関連付けられた第1の遮断弁と、前記ガス密封マニホールドへの出口と動作可能に関連付けられた第2の遮断弁と、を更に備え、前記第1及び第2の遮断弁が、空気作動式である、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項14】
前記第1及び第2の遮断弁が、前記送気マニホールド内に含まれる遮断弁パイロットと連通し、前記遮断弁パイロットが、電磁弁である、請求項13に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項15】
前記送気マニホールドが、特定の動作条件下で、前記
外科用ガス送達システムから大気への
前記送気ガスの放出を制御するために、前記
第1及び第2の比例出口ライン弁の上流にある低圧安全弁を含む、請求項1に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項16】
前記
換気排気弁は、特定の動作条件下で、前記システムから大気へのガスの放出を制御
し、前記換気排気弁が、比例弁である、請求項15に記載の
外科用ガス送達システム。
【請求項17】
前記
一次比例弁が、前記低圧安全弁及び前記換気排気弁の上流に
位置する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
ガス密封送気及び再循環のための外科用ガス送達システムであって、
a)ガス密封アクセスポートと連通するためのガス密封マニホールドと、
b)前記ガス密封マニホールドを介して、前記ガス密封アクセスポートを通して
送気ガスを再循環させるためのコンプレッサと、
c)前記ガス密封アクセスポート及び弁密封アクセスポートと連通するための送気マニホールドであって、前記送気マニホールドが、前記ガス密封アクセスポートへの
前記送気ガスの流れを制御するための第1の出口ライン弁と、前記弁密封アクセスポートへの送気ガスの流れを制御するための第2の出口ライン弁と、を含み、前記第1の出口ライン弁及び第2の出口ライン弁のうちの少なくとも1つが、前記送気ガスの流れを動的に制御するように構成された比例弁である、送気マニホールドと、
d)前記第1及び第2の出口ライン弁への前記送気ガスの流れを制御するために、及び、前記送気マニホールド内の中間圧力を維持するために、前記第1及び第2の出口ライン弁の上流に位置し、前記送気マニホールド内に含まれる一次比例弁と、
e)前記一次比例弁の下流かつ前記第1及び第2の出口ライン弁の上流に位置する換気排気弁と、
を備え
、
前記換気排気弁が開放され、前記送気ガスを前記外科用ガス送達システムから大気中に放出し、かつ前記換気排気弁の開放により前記送気マニホールド内の中間圧力が降下すると、前記一次比例弁が開放されて、前記送気マニホールド内の中間圧力が維持されるように構成されている、外科用ガス送達システム。
【請求項19】
前記第1の出口ライン弁及び前記第2の出口ライン弁の両方が、比例弁である、請求項18に記載の外科用ガス送達システム。
【請求項20】
前記中間圧力は、前記外科用ガス送達システムの動作モードに応じて1~80mmHgの間に調整される、請求項1又は18に記載の外科用ガス送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月22日に出願された米国特許出願第17/155,572号に対する優先権を主張するものであり、この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.技術分野
本発明は、低侵襲手術、より具体的には、内視鏡又は腹腔鏡外科処置中のガス密封送気、及びガスの流れを動的に制御するために1つ以上の比例弁を利用する再循環のための外科用ガス送達システム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
腹腔鏡下又は「低侵襲性」外科的手術技術は、胆嚢摘出、虫垂切除術、ヘルニア修復及び腎摘出などの手術の実施において普及している。そのような処置の利点には、患者への外傷の減少、感染の機会の低減、及び回復時間の短縮が含まれる。腹(腹膜)腔内のこのような手術は、典型的には、トロカール又はカニューレとして知られる装置を通して実施され、これは腹腔鏡器具の患者の腹腔内への導入を促進する。
【0004】
更に、このような処置は、一般に、二酸化炭素などの加圧流体で腹腔の充填又は腹腔に「送気」して、気腹と呼ばれる手術空間を作り出すことを含む。送気は、送気用流体を送達するように装備されたトロカールなどの手術用アクセス装置、又は送気用(ベレス)ニードルなどの別個の送気用装置によって、実施され得る。気腹を維持するために、送気ガスの実質的な損失なしに、外科手術器具の気腹への導入が望ましい。
【0005】
典型的な腹腔鏡下処置中に、外科医は、通常各々約12ミリメートル以下の3、4個所の小さな切開を行い、これは通常、手術用アクセス装置自体を用いて、しばしばその中に配置された別個の挿入器又は閉塞具を使用して行われる。挿入後、閉塞具が取り外され、トロカールは腹腔内に挿入される器具に対するアクセスを可能にする。典型的なトロカールは、外科医が作業する開放内部空間を持つように、腹腔に送気する経路を提供する。
【0006】
トロカールは、トロカールと使用されている外科手術器具の間の密封によって空洞内の圧力を維持する方法を提供しつつも、なお外科手術器具の少なくとも最小量の移動の自由を可能にしなければならない。このような器具には、例えば、はさみ、把持器具及び閉塞具、焼灼ユニット、カメラ、光源及びその他の外科手術器具が含まれ得る。密封要素又は機構は通常、腹腔からの送気ガスの漏れを防ぐためにトロカールに提供される。これらの密封機構は多くの場合、トロカールを通過する外科手術器具の外側表面の周りに密封するために、比較的柔軟な材料で作られたダックビル型弁を含む。
【0007】
ConMed Corporationの完全子会社であるSurgiQuest, Inc.は、例えば米国特許第7,854,724号及び米国特許第8,795,223号に記載されるように、従来の機械的弁シールを必要とせずに、送気された外科手術腔にすぐにアクセスできる、独自のガス密封手術用アクセス装置を開発した。これらのアクセス装置は、内側管状体部分及び同軸外側管状体部分を含むいくつかのネストされた構成要素から構築される。内側管状体部分は、従来の腹腔鏡又は内視鏡外科手術器具を患者の外科手術腔に導入するためのガス密封中央ルーメンを画定し、外側管状体部分は、患者の外科手術腔に送気ガスを送達し、腹圧の定期的な感知を促進するための内側管状体部分を囲む環状ルーメンを画定する。
【0008】
SurgiQuest社はまた、上述の独自のガス密封アクセス装置と併用するためのマルチモード外科用ガス送達システムも開発した。例えば、米国特許第9,199,047号及び米国特許第9,375,539号に開示されているこれらのガス送達システムは、体腔へのガス密封アクセスを提供する第1の動作モード、体腔からの煙排出を実施するための第2の動作モード、及び体腔に送気ガスを提供する第3の動作モードを有する。
【0009】
先行技術であるSurgiQuest社のガス送達システムでは、体腔への送気ガスの送達又は流出は、ガス流量を動的に制御する能力に関して特定の制限を有する電磁弁によって制御される。例えば、6mmの開口部を有する電磁弁は、ゼロ及び差圧の関数としての6mmの開口部流という2つの流れ状態を有する。しかしながら、6mmの開口部の比例弁は、無限数の中間流れ設定、又は同等の開口部直径を有する。
【0010】
流れは開口部直径の二乗の関数であるため、比例弁の追加的な中間弁の位置は、単純な直線関係を超えた微細な制御、並びにより低い圧力で安定した流量を達成し、圧力振動を低減し、空気ハンマーを除去する能力を提供する。更に、弁開口部の最初の10%、又は有効開口部直径0.6mmは、全開流量の1%(10%2)を調節するが、これは小児用途に好都合であり得る。
【発明の概要】
【0011】
内視鏡又は腹腔鏡外科処置中のガス密封送気及び再循環のための、新しく有用な外科用ガス送達システムが開示されている。ガス送達システムは、ガス密封アクセスポートと連通するためのガス密封マニホールドと、ガス密封アクセスポート及び弁密封アクセスポートと連通するための送気マニホールドと、ガス密封マニホールドを介して、ガス密封アクセスポートを通してガスを再循環させるためのコンプレッサと、を含む。
【0012】
システムは、ガス密封アクセスポートへの送気ガスの流れを動的に制御するための、送気マニホールドと動作可能に関連付けられた第1の比例出口ライン弁と、弁密封アクセスポートへの送気ガスの流れを動的に制御するための、送気マニホールドと動作可能に関連付けられた第2の比例出口ライン弁と、を更に含む。加えて、送気マニホールドは、第1の出口ライン弁の下流にある第1の圧力センサと、第2の出口ライン弁の下流にある第2の圧力センサと、を含み、第1及び第2の圧力センサは、アクセスポートの近位のガス流量を推定するために使用される圧力差を維持するように、ベンチャーチューブ内に位置する。
【0013】
システムはまた、ガス密封マニホールド及び送気マニホールドと連通する、外科用ガス源を含む。外科用ガス源からのガスは、高圧調節器及びガスヒーターを通って流れ、その後、そのガスは、ガス密封マニホールド及び送気マニホールドに送達される。
【0014】
ガス密封マニホールドは、外科用ガス源からガス密封マニホールド内に送達されるガスを制御するために、コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられたガス充填弁を含み、ガス充填弁は、比例弁であることが好ましい。ガス密封マニホールドはまた、特定の動作条件下で、ガス密封マニホールドと送気マニホールドとの間のガス流を制御するために、コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた煙排出弁を含み、煙排出弁は、比例弁であることが好ましい。
【0015】
ガス密封マニホールドはまた、特定の動作条件下で、ガス密封マニホールド内のガス流を制御するために、コンプレッサの出口側とコンプレッサの入口側との間に位置する、バイパス弁を含み、バイパス弁は、比例弁であることが好ましい。また、ガス密封マニホールドは、特定の動作条件下で、システム内への大気の混入を制御するために、コンプレッサの入口側と動作可能に関連付けられた空気換気弁を含み、空気換気弁は、比例弁であることが好ましい。
【0016】
ガス密封マニホールドは、特定の動作条件下で、システムから大気へのガスの放出を制御するために、コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた過圧逃し弁を更に含み、過圧逃し弁は、電磁弁であることが好ましい。加えて、ガス密封マニホールドは、コンプレッサの入口側と動作可能に関連付けられた第1の圧力センサと、コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられた第2の圧力センサと、を含む。
【0017】
ガス密封マニホールドはまた、コンプレッサの出口側と動作可能に関連付けられたガス品質センサを含む。また、第1の遮断弁は、ガス密封マニホールドへの入口と動作可能に関連付けられており、第2の遮断弁は、ガス密封マニホールドへの出口と動作可能に関連付けられており、第1及び第2の遮断弁は、空気作動式であることが好ましい。加えて、第1及び第2の遮断弁は、送気マニホールド内に含まれる遮断弁パイロットと連通し、遮断弁パイロットは、電磁弁である。
【0018】
送気マニホールドはまた、特定の動作条件下で、システムから大気へのガスの放出を制御するために、出口ライン弁の上流に位置する、低圧安全弁を含む。送気マニホールドは、特定の動作条件下で、システムから大気へのガスの放出を制御するために、出口ライン弁の上流に位置する、換気排気弁を更に含み、換気排気弁は、比例弁であることが好ましい。送気マニホールドは、システム内の一定中間圧力を維持するために、低圧安全弁及び換気排気弁の上流に位置する、比例弁を含む。
【0019】
本発明はまた、ガス密封送気及び再循環のための外科用ガス送達システムを対象としており、外科用ガス送達システムは、ガス密封アクセスポートと連通するためのガス密封マニホールドと、ガス密封マニホールドを介して、ガス密封アクセスポートを通してガスを再循環させるためのコンプレッサと、ガス密封アクセスポート及び弁密封アクセスポートと連通するための送気マニホールドであって、送気マニホールドが、ガス密封アクセスポートへの送気ガスの流れを制御するための第1の出口ライン弁と、弁密封アクセスポートへの送気ガスの流れを制御するための第2の出口ライン弁と、を含み、第1の出口ライン弁及び第2の出口ライン弁のうちの少なくとも1つが、送気ガスの流れを動的に制御するように構成された比例弁である、送気マニホールドと、を含む。本発明の好ましい実施形態によれば、第1の出口ライン弁及び第2の出口ライン弁の両方は、比例弁である。
【0020】
本発明はまた、外科処置中に外科用ガスを送達する方法を対象としており、方法は、ガス密封アクセスポートを通して外科用ガスを再循環させて、体腔へのガス密封アクセスを提供し、かつ外科処置中に安定した腔内圧を維持するステップと、ガス密封アクセスポートを通して体腔への送気ガスの流出を動的に制御するステップと、を含む。
【0021】
本発明のガス送達システムのこれら及びその他の特徴は、以下の図面の簡単な説明と併せてなされた好ましい実施形態の詳細な説明から、本発明に関連する当業者にはより容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
当業者は、必要以上の実験なしに、本発明のガス送達システム及び方法を製造及び使用する方法を容易に理解するであろうゆえに、その好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0023】
【
図1】
図1は、本発明のマルチモーダルガス送達システムの概略図であり、このシステムは、ガス密封アクセスポートと連通するためのガス密封マニホールドと、ガス密封アクセスポート及び弁密封アクセスポートと連通するための送気マニホールドと、を含み、ガス送達システムは、選択された動作モードに応じて異なる、ガス密封アクセスポート又は弁密封アクセスポートを通して、送気マニホールドから患者の体腔への送気の流出を動的に制御するための比例出口ライン弁を含むいくつかの比例弁を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、同様の参照番号が本発明の類似の構造要素及び特徴を識別する図面を参照すると、内視鏡外科処置中又は腹腔鏡外科処置中にガス密封送気、再循環及び煙排出のために適合及び構成された、新しく有用なマルチモード外科用ガス送達システム10が
図1に図示されている。本発明のマルチモード外科用ガス送達システム10は、ガス密封アクセスポート20と連通するためのガス密封マニホールド110、及びガス密封アクセスポート20及び弁密封アクセスポート30と連通するための送気マニホールド210を含む。
【0025】
ガス密封アクセスポート20は、同一出願人による米国特許第8,795,223号に開示されているタイプのものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。ガス密封アクセスポート20は、体腔内で安定した圧力(例えば、腹膜腔又は腹腔内の安定した気腹)を維持しながら、体腔へのアクセスをガス密封器具に提供するように適合及び構成される。対照的に、弁密封アクセスポート30は、例えば、ダックビル型シール、セプタムシールなどの機械的弁シールを介して体腔へのアクセスを提供するための従来的又は標準的なトロカールである。特定の外科処置の要件に左右されるが、マルチモードガス送達システム10は、ガス密封アクセスポート20、弁密封アクセスポート30、又は両方のアクセスポート20、30のいずれかと同時に利用することができる。
【0026】
ガス送達システム10は、ガス密封マニホールド110によってガス密封アクセスポート20を通して外科用ガスを再循環するためのコンプレッサ又は陽圧ポンプ40を更に含む。コンプレッサ40は、好ましくは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第10,702,306号に開示されるように、ガス送達システム10内のガス圧及び流量を調整するように有利に制御され得るブラシレスDC(直流)モーターによって駆動される。あるいは、コンプレッサ40はACモーターによって駆動され得るが、DCモーターは比較的小さくより軽量であるため、製造の観点からより有利である。
【0027】
中間冷却器及び/又は凝縮器50は、ガス密封マニホールド110を通って再循環するガスを冷却又はその他の方法で調整するために、コンプレッサ40と動作可能に関連付けられる。UVC照射器52は、その中にコンプレッサ40によって形成される内部流路54を通って再循環するガスを滅菌するために、中間冷却器又は凝縮器50と動作可能に関連付けられる。加えて、UVC照射器52は、ガスが中間冷却器/凝縮器50内に流れるガス導管又は流路54の内面を滅菌することを意図している。
【0028】
UVC照射器は、好ましくは、少なくとも1つのLED光源、又は約240~350nm、好ましくは約265nmの波長のUVC放射を生成するように適合及び構成される蛍光光源を含む。このような波長でのこの紫外線光は、システムのガス導管内のウイルス、細菌及び微生物を滅菌することができ、SARS-COV-2を含むコロナウイルスを低減することができる。
【0029】
好ましくは、コンプレッサ40、中間冷却器/凝縮器50、ガス密封マニホールド110及び送気マニホールド210はすべて、共通ハウジング内に囲まれており、これには、例えば、参照により本明細書に組み込まれ、同一出願人による米国特許第9,199,047号に開示されているグラフィカルユーザーインターフェース及び制御電子機器を含む。
【0030】
ガス送達システム10は、ガス密封マニホールド110及び送気マニホールド210と連通する外科用ガス源60を更に含む。ガス源60は、局所的な圧力容器又は病院又は医療施設に関連付けられた遠隔供給タンクであってもよい。好ましくは、外科用ガス源60からのガスは、高圧調節器65及びガスヒーター70を通って流れ、その後、そのガスは、ガス密封マニホールド110及び送気マニホールド210に送達される。高圧調節器65及びガスヒーター70はまた、共通ハウジングのコンプレッサ40、中間冷却器50、ガス密封マニホールド110及び送気マニホールド210で囲まれていることが好ましい。
【0031】
ガス送達システム10は、弁密封アクセスポート30への送気ガスの流れを制御するための送気マニホールド210と動作可能に関連付けられた、第1の出口ライン弁(OLV1)212と、ガス密封アクセスポート20への送気ガスの流れを制御するための送気マニホールド210と動作可能に関連付けられる第2の出口ライン弁(OLV2)214とを更に含む。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、送気マニホールド210の第1の出口ライン弁212及び第2の出口ライン弁214は、患者の体腔で発生する体積変動に合わせて、アクセスポート20、30への送気ガスの流出を動的に変化させるか、又はその他の方法で制御するように構成された比例弁である。第1の比例出口ライン弁212及び第2の比例出口ライン弁214は、送気ガス流量の微細な制御をガス送達システム10に提供し、より低い圧力での安定した流量を達成し、圧力振動を低減し、空気ハンマーを除去する。
【0033】
第1の比例出口ライン弁212及び第2の比例出口ライン弁214は、患者の近位にあり、流量摩擦損失が比較的低いため、ガス送達システム10は、腹膜圧を正確に測定することができる。更に、閉ループ煙排出又はガス密封アクセスポート20のいずれかによって、ガス送達システム10全体にわたり一定のガス再循環があるため、この目的のために比例出口ライン弁を使用することが独特に可能である。
【0034】
比例弁は、最小流れ状態と最大流れ状態との間の無限可変ガス流の調整を可能にする。呼吸などの患者の体腔のいくらかの体積変化が予想され、かつ一貫していることを考えると、比例出口ライン弁を採用することによって、送気マニホールド210は、体腔へのガス流を動的に変化させて、予想される体積変化を逆転させ、体腔内の圧力に対する中立的効果をもたらすことができる。
【0035】
マニホールド210からの送気ガスの流出を制御するために比例弁を使用する更なる利点は、電磁弁のそれと比較して応答時間が短縮されることである。電磁弁は、コイルにエネルギーを印加することによって動作し、これによりピストンを移動させる電磁力を生成する。しかし、コイルの通電にはある程度の時間がかかり、これは、命令された動作とピストンの物理的移動との間に遅延を生じさせる。対照的に、本発明のガス送達システム10で用いられる比例弁には、概して通電の遅延がなく、従って、電磁弁と比較して応答時間が改善された。
【0036】
送気マニホールド210は、第1の出口ライン弁212の下流にある第1の患者圧力センサ(PWS1)222と、第2の出口ライン弁214の下流にある第2の患者圧力センサ(PWS1)224と、を更に含む。これらの2つの患者圧力センサは、それぞれ出口ライン弁212、214を制御するため、腹圧を測定するために使用される。2つの他の圧力センサは、出口ライン弁212、214の上流に位置し、DPS1及びDPS2として表示されている。これらの2つの圧力センサは、送気マニホールド210から患者の体腔への総ガス流量を推定するために使用される圧力差を測定するために、ベンチュリ内に配置される。
【0037】
一次比例弁(PRV)216はまた、送気マニホールド210と動作可能に関連付けられ、第1の出口ライン弁212及び第2の出口ライン弁214の上流に位置し、第1の出口ライン弁212及び第2の出口ライン弁214への送気ガスの流れを制御する。比例弁216は、送気マニホールド210(LPUの中央ノードとして)内の中間圧力を、システム動作モードに応じて、1~80mmHgの間の一定圧力で維持する機能を果たす。PRV 216の開放は、患者の呼吸、PRV 216の下流でのガス漏れ、又は安全弁LSV 227若しくは換気弁VEV 228の開放、すなわち、中間圧力を降下させる任意の事象のいずれかによって、間接的に開始され得る。システム内で、LSV 227及びVEV 228は、以下でより詳細に説明される。
【0038】
ガス密封マニホールド110はまた、コンプレッサ40の出口側と動作可能に関連付けられた高圧ガス充填弁(GFV)112を含む。GFV 112は、外科用ガス60の供給源からガス密封マニホールド110内に送達されるガスを制御するように適合及び構成される。好ましくは、ガス充填弁112は、ガス密封マニホールド110内に送達される外科用ガスを動的に制御することができる比例弁である。
【0039】
ガス密封マニホールド110はまた、例えば、ガス送達装置10が煙排出モードで動作しているときなど、特定の動作条件下で、ガス密封マニホールド110と送気マニホールド210との間のガス流を動的に制御するために、コンプレッサ40の出口側と動作可能に関連付けられた煙排出弁(SEV)114を含む。煙排出弁114は比例弁であることが好ましい。
【0040】
バイパス弁(SPV)116は、特定の動作条件下でガス密封マニホールド110内のガス流を制御するために、コンプレッサ40の出口側とコンプレッサ40の入口側との間に位置付けられる。好ましくは、バイパス弁116は、比例弁であり、比例弁は、ガス密封アクセスポート20内に生成されるガスシールを確立して制御するために可変的に開放される。更に、バイパス弁116は、以下で更に詳細に説明する、圧力センサ122、124からのフィードバックを使用してガスシールへのガス流量を制御する。
【0041】
ガス密封マニホールド110はまた、空気換気弁(AVV)118を含み、これは、特定の動作条件下でのシステム10への大気の混入を制御するために、コンプレッサ40の入口側に動作可能に関連付けられる。例えば、AVV 118は、大気をガス密封回路内に導入して、回路内の空気質量(すなわち、標準体積)を増加させることを可能にする。臨床使用条件の熱力学が、ガス回路内での標準体積の喪失を引き起こす可能性がある。換気弁118は、ポンプ圧力及び流量がガス密封アクセスポート20内のガスシールを維持するのに十分なことを保証するために、ガス送達システム10がこの失われた体積を補うことを可能にする。換気弁118はまた、ガスシール回路の真空側圧力を減少させるために開放され得る。
【0042】
過圧逃し弁(ORV)120は、特定の動作条件下でシステム10から大気へのガス放出を制御するために、コンプレッサ40の出口側に動作可能に関連付けられる。好ましくは、過圧逃し弁120は、特に、ガス送達システム10への電力喪失などの緊急時に、ガスシール回路の陽圧側を減少させるために開かれる比例弁である。逃し弁120の通常開放されている構成は、その弁への電力喪失時の患者体腔への過圧リスクを減少させる。
【0043】
第1の圧力センサ(RLS)122は、コンプレッサ40の入口側に動作可能に関連付けられ、第2の圧力センサ(PLS)124は、コンプレッサ40の出口側に動作可能に関連付けられる。これらの圧力センサ122、124は、連続的にかつ正確に腔内圧を測定するために、患者の腹腔内に遮られることなく、かつ最小限に限定的な連通を有するように位置付けられる。これらの2つの圧力センサ122、124からの信号は、2つの出口ライン弁212及び214の開口部を調節して患者の腔内圧を制御するために、ガス送達システム10のコントローラによって使用される。
【0044】
加えて、ガス密封マニホールド110は、コンプレッサ40の出口側と動作可能に関連付けられたガス品質センサ126を含む。ガス品質センサは、米国特許第9,199,047号に開示されているように、患者の体腔内のCO2濃度に対応する再循環回路内の酸素レベルを監視する。
【0045】
第1の遮断弁(BV1)132は、ガス密封マニホールド110の出口流路と動作可能に関連付けられ、第2の遮断弁(BV2)134は、ガス密封マニホールド110への入口流路と動作可能に関連付けられる。遮断弁132、134は、米国特許第9,199,047号に開示されているように、外科処置前のセルフテスト中に用いられる。第1の遮断弁132及び第2の遮断弁134は、機械作動式又は空気作動式であり得ることが想定される。
【0046】
第1のフィルタ要素142は、コンプレッサ40からガス密封アクセスポート20に流れる加圧ガスをフィルタリングするために第1の遮断弁132の下流に位置付けられ、第2のフィルタ要素144は、ガス密封アクセスポート20からコンプレッサ40に戻るガスをフィルタリングするために、第2の遮断弁134の上流に位置する。好ましくは、フィルタ要素142、144は、例えば、米国特許第9,199,047号に開示されるように、共通フィルタカートリッジ内に収容される。
【0047】
第1の遮断弁132及び第2の遮断弁134は、送気マニホールド210内に含まれる遮断弁パイロット(BVP)226と連通する。遮断弁パイロット226は、電磁弁であることが好ましい。BVP 226は、示されるようにコンプレッサ出口から、又は外科用ガス若しくは空気などのガス源から供給され得ることが想定される。送気マニホールド110は、一次比例弁216の下流及び出口ライン弁212、214の上流に位置する圧力センサ(PMS)225を更に含む。2つの出口ライン弁は、アクセスポート23、30によって患者の体腔に送気ガスを導入するために開放される。このガスの導入には、体腔内の圧力を増加させる効果がある。更に、出口ライン弁212、214は、体腔からガスを放出し、脱気及び腔内圧の低下の影響を有するために、空気換気弁228と併せて開放されることができる。
【0048】
送気マニホールド210は、特定の動作条件下で、システム10から大気へのガスの放出を制御するための、一次比例弁216の下流にあり、第1の出口ライン弁212及び第2の出口ライン弁214の上流にある、低圧安全弁(LSV)227を更に含む。LSV 227は純粋に機械弁であり、停電、圧力コントローラの誤動作、又はLSVの上流に位置する弁が開位置にある場合、マニホールド210内又はLPU(低圧ユニット)内の最大中間圧力を制限するように機能する。
【0049】
加えて、換気排気弁(VEV)228は、特定の動作条件下でシステム10から大気へのガス放出を制御するために、一次比例弁216の下流及び出口ライン弁212、214の上流に位置する。換気排気弁228は、好ましくは、患者の腔内圧を脱気するか、別の方法で低下させるために開放される比例弁である。更に、VEV 228は、LPU内の中間圧力を減少させるために開放され得る。
【0050】
フィルタ要素242は、送気マニホールド210から弁密封アクセスポート30へ流れる送気ガスをフィルタリングするために、第1の出口ライン弁212の下流に位置する。別のフィルタ要素244は、送気マニホールド210からガス密封アクセスポート20へ流れる絶縁ガスをフィルタリングするために、第2の出口ライン弁224の下流に位置する。好ましくは、フィルタ要素244は、共通フィルタカートリッジ内にフィルタ要素142及び144と共に収容され、一方でフィルタ要素242は別々に配置される。
【0051】
本開示のガス送達システムについて好ましい実施形態を参照して示され、記述されてきたが、当業者であれば、変更及び/又は修正が、本開示の範囲から逸脱することなく作成され得ることを容易に理解するであろう。