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特許7595777占有面積検出システム、占有面積検出方法、及び、エレベーターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】占有面積検出システム、占有面積検出方法、及び、エレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20241129BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B66B3/00 P
B66B3/00 L
B66B1/14 L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023548066
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034342
(87)【国際公開番号】W WO2023042380
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】納谷 英光
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138853(JP,A)
【文献】特開2017-026533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
B66B 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内における積載物の占有面積を検出する占有面積検出システムにおいて、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する占有面積検出部と、を備え、
前記有効エリアは、前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている
占有面積検出システム。
【請求項2】
乗りかご内における積載物の占有面積を検出する占有面積検出システムにおいて、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する占有面積検出部と、を備え、
前記有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、前記データベースの前記設計データから取得される、前記乗りかご内に設置される障がい物を有効エリアから除く
占有面積検出システム。
【請求項3】
前記センサ情報抽出部は、前記距離センサの解像度を抽出し、
前記占有面積検出部は、前記有効エリアを前記解像度で分割し、前記分割された単位領域毎に、前記単位領域の距離データが所定の閾値以上であるか否かを判定し、前記距離データが所定の閾値以上である単位領域の和を占有面積として算出する
請求項1または請求項2に記載の占有面積検出システム。
【請求項4】
前記占有面積検出部は、前記有効エリアの有効面積に対する前記占有面積の割合から、占有度を算出する
請求項3に記載の占有面積検出システム。
【請求項5】
前記有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、前記データベースの前記設計データから取得される、前記乗りかご内の寸法、及び、前記距離センサの取付位置座標に基づいて有効エリアを設定する
請求項1または請求項2に記載の占有面積検出システム。
【請求項6】
乗りかご内における積載物の占有面積を検出する占有面積検出方法において、
乗りかご内に積載物が無い状態において、積載物を積載可能な有効エリアを前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定して、前記有効エリアを算出し、
乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出し、
前記距離センサで検知された距離データと、前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する
占有面積検出方法。
【請求項7】
エレベーターの運行を制御するエレベーターシステムにおいて、
乗りかごを昇降移動させるエレベーターと、
前記乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内に積載物が無い状態において、積載物を積載可能な有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する占有面積検出部と、を備え、
前記有効エリアは、前記乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている
エレベーターシステム。
【請求項8】
エレベーターの運行を制御するエレベーターシステムにおいて、
乗りかごを昇降移動させるエレベーターと、
前記乗りかご内の天井側に設けられ、前記乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサと、
前記乗りかご内に積載物が無い状態において、積載物を積載可能な有効エリアを算出する有効エリア設定部と、
前記距離センサの取付位置座標を抽出し、前記取付位置座標を基準として、前記有効エリアに対応した前記距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部と、
前記距離センサで検知された距離データと前記データ取得範囲とに基づいて、前記有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する占有面積検出部と、を備え、
前記有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、前記データベースの前記設計データから取得される、前記乗りかご内に設置される障がい物を有効エリアから除く
エレベーターシステム。
【請求項9】
前記占有面積検出部で検出された検出結果に基づいて、割り当て可能と判定されたエレベーターを、乗場呼び要求のある乗場階に割り当てる割り当て演算処理部を有する
請求項7または請求項8に記載のエレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗りかご内における空きスペース又は乗客や積載物による占有スペースの状況を検出する占有面積検出システム、占有面積検出方法、及び、エレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの制御システムにおいて、かご内の積載量を乗りかごに設けた重量検出部(荷重検出装置)で検出し、その積載量に応じて乗車率を算出する構成が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、表示装置における点灯状態を乗りかごの積載量に応じて段階的に変化させることで、乗りかごの乗車率をわかりやすく表示することができる。
【0003】
また、特許文献2では、複数のエレベーターを1つのグループとして制御し、利用者により効率的な運行サービスを提供するための群管理装置を有するエレベーターシステムに関する発明が開示されている。特許文献2では、複数のエレベーターのうち、荷重検出装置で検出された荷重値が所定の閾値以下であるエレベーターに空きスペースがあると判断し、そのエレベーターを目的階に停止させるサービスエレベーターとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-98577号公報
【文献】特開2018-167921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベーターシステムにおいて、荷重検出装置で乗りかごの荷重を検出し、その検出結果に基づいて、乗りかごの空きスペースがあるか否かを判断する場合、その荷重値から想定される空きスペースと、実際の空きスペースが異なる場合がある。例えば、大きくて軽い積載物が乗りかご内のスペースを占有している場合、実際には空きスペースが少ないにも関わらず、荷重値判断により、空きスペースが有ると判断される場合がある。
【0006】
この結果、例えば、エレベーターの群管理システムにおいて、荷重値判断による空きスペースの算出を行った場合、実際には空きスペースが無い乗りかごを、所定の乗場階に、停止させてしまう事例が発生する。また、乗りかごの乗車率状況を表示する構成においても、誤った情報を表示する事例が発生する。
【0007】
そこで、本発明は、乗りかご内における空きスペース又は乗客や積載物による占有スペースの状況をより正確に検出することができる占有面積検出システム、占有面積検出方法、及び、エレベーターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の占有面積検出システムは、乗りかご内の天井側に設けられ、乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサを備える。また、乗りかご内の有効エリアを算出する有効エリア設定部と、距離センサの取付位置座標を抽出し、取付位置座標を基準として、有効エリアに対応した距離センサのデータ取得範囲を算出するセンサ情報抽出部とを備える。また、距離センサで検知された距離データとデータ取得範囲とに基づいて、有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する占有面積検出部を備える。
第1の本発明の占有面積検出システムは、さらに、有効エリアが乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定されている。
第2の本発明の占有面積検出システムは、さらに、有効エリア設定部は、設計データが格納されているデータベースと接続され、データベースの設計データから取得される、乗りかご内に設置される障がい物を有効エリアから除く。
【0009】
本発明の占有面積検出方法は、積載物を積載可能な有効エリアを乗りかごの側壁から所定の距離だけ離れた位置に設定して、有効エリアを算出し、乗りかご内の天井側に設けられ、乗りかご内の積載物との距離を計測可能な距離センサの取付位置座標を抽出する。そして、取付け位置座標を基準として、有効エリアに対応した距離センサのデータ取得範囲を算出し、距離センサで検知された距離データと、データ取得範囲とに基づいて、有効エリア内にある積載物の占有面積を算出する。
【0010】
本発明のエレベーターシステムは、乗りかごを昇降移動させるエレベーターと、上記占有面積検出システムとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗りかご内における空きスペース又は乗客や積載物による占有スペースの状況をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム100の概略構成図である。
図2】乗りかご2を内部側から見たときの概略構成図である。
図3】乗りかご2を上面からみたときの概略構成図である。
図4】乗りかご2に設置される距離センサ3のデータ取得範囲の設定方法を示すフローである。
図5図4のステップS1における有効エリア40の抽出方法を示すフローである。
図6】距離センサ3のデータ取得範囲の抽出方法を示すフローである。
図7】センサ情報取得部24における距離センサ3の距離データ取得に係る設定方法を示すフローである。
図8】ステップS33及びステップS34によって取得された情報を、距離センサ3で検知した距離データに反映させたときの概略図である。
図9】占有面積検出部25における占有面積算出方法を示したフローである。
図10】距離センサ3で取得される距離データの様子を示した概略構成図である。
図11】本発明の一実施形態におけるエレベーターの割り当て演算処理方法を示すフローである。
図12】割り当てしたエレベーターが満員状態か判定し、サービス不可であれば、通過指令を行うフローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る占有面積検出システム、占有面積検出方法、及び、エレベーターシステムの一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0014】
<エレベーターシステムの構成>
まず、本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態とする)に係るエレベーターシステム100の概略構成図である。なお、本実施形態のエレベーターシステム100は、本発明の占有面積検出システムを含むものであり、図1に示すエレベーターシステム100が占有面積検出システムであってもよく、また、図1に示すエレベーターシステム100の一部において、占有面積検出システムが構成されてもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のエレベーターシステム100は、エレベーター1と、エレベーター運行管理部11と、エレベーター制御部10と、かご内カメラ制御部18と、距離センサ制御部19とを有する。さらに、エレベーターシステム100は、通信中継部17及び通信網16を介して接続されるホストコンピューター14と、統計データベース(DB)12と、保全データベース(DB)13とで構成されている。
【0016】
[エレベーター]
エレベーター1は、建物建造物内に形成された昇降路(図示を省略する)内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物(以下、積載物)を乗せる乗りかご2と、主ロープ35と、釣合い錘33と、巻上機34と、を備える。巻上機34は、主ロープ35に巻き掛けられており、後述するエレベーター制御部10の昇降制御部21の制御の下、乗りかご2を昇降させる。また、乗りかご2は、主ロープ35を介して釣合い錘33と連結され、昇降路内を昇降する。
【0017】
図2に、乗りかご2を内部側から見たときの概略構成図を示す。また、図3に、乗りかご2を上面からみたときの概略構成図を示す。図3では、積載物の一例として、乗客P1、P2、P3と、荷物Bを図示している。また、乗りかご2において、乗りかご2の奥行方向をY方向とし、乗りかご2の高さ方向をZ方向とし、Y方向及びZ方向に垂直な方向をX方向として示す。
【0018】
図2に示すように、乗りかご2は、かご床2aと、かご床2aの周囲に立設する側壁2bと、かご床2aに対してかご室を介して対向する位置に設けられる天井2cとを備える。そして、かご床2a、側壁2b、天井2cに囲まれる空間が積載物を収容できるかご室となる。また、側壁2bのうち乗場側の側壁2bに設けられたかご側三方枠内には、かごドア31が設けられている。かごドア31は、乗りかご2が各階のフロアに停止した際に、フロア側に設けられた乗場ドア(図示を省略する)に対応する位置に設けられている。かごドア31及び乗場ドアは、後述する戸開閉制御部22の制御の下、開閉動作が為される。
【0019】
かごドア31付近の側壁2bには、利用者が行先階を登録するための行先階登録ボタンや、登録された行先階や乗りかご2の現在位置の情報を表示する入出力装置28が設けられている。
【0020】
また、乗りかご2の側壁2bには、乗客の移動を補助する手すり30が設けられている。手すり30は棒状の部材で構成されており、乗客が捕まることができる程度に側壁2bから離した位置に取り付けられている。
【0021】
さらに、エレベーター1の乗りかごの天井2c側には、かご内カメラ4(図1)、及び、距離センサ3が設けられている。かご内カメラ4は、例えば監視の用途に用いられるものであり、乗りかご2内を撮像可能な画像センサで構成されている。かご内カメラ4は後述するかご内カメラ制御部18の制御の下、乗りかご2内を適宜撮像する。
【0022】
距離センサ3は、図2に示すように、天井2c側において、側壁2bから所定の距離だけ離れた位置に設けられており、天井2cに設けられる照明器具(図示を省略する)よりも、上下方向における上方に設置される。距離センサ3は、乗りかご2内の積載物P1、P2、P3、Bまでの距離を検知するセンサである。距離センサ3としては、例えば、ToF(Time of Flight)センサや、ミリ波センサで構成されている。ToFセンサは、特定波長の光に変調をかけて放射し、該放射光が積載物で反射した光を受信して処理することで、該積載物までの距離を計測できるセンサである。距離センサとして、ToFセンサを用いる場合には、特定波長の光を照射するために、別途ライトが必要である。
【0023】
ミリ波センサは、特定周波数の電波に変調をかけて送信し、該送信が積載物に衝突して生じる反射波を受信して処理することで、該積載物までの距離を計測できるセンサである。本実施形態では、距離センサ3は、照明器具よりも上下方向における上方に設置されるため、ミリ波センサで構成されることが好ましい。
【0024】
上述したエレベーター1を構成する各部は、適宜、エレベーター運行管理部11、エレベーター制御部10、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19に接続され、それぞれ制御されている。なお、図1では、1機のエレベーター1のみを図示しているが、本実施形態のエレベーターシステム100では、1号機からN号機までの複数のエレベーターを備え、それらのエレベーター1が、エレベーター運行管理部11によって群管理制御されている。この場合、エレベーター制御部10、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19は、エレベーター1毎に設けられると共に、各エレベーター1を制御する。一方、エレベーター運行管理部11は、全ての号機のエレベーター1を群管理する。
【0025】
[エレベーター制御部]
エレベーター制御部10は、例えば、昇降制御部21、戸開閉制御部22、及び、距離センサ設定部23を有する。昇降制御部21は、乗りかご2の運行を担う巻上機34(主機)等を制御する。上述したように、巻上機34には、一端に、人や物を乗せる乗りかご2が接続され、他端に釣合いおもり33が接続された主ロープ35が巻き掛けられている。本実施形態では、昇降制御部21の制御の下、巻上機34が動作し、乗りかご2が昇降路を昇降移動する。これにより、エレベーターシステム100では、乗りかご2に乗った人や物に対して、エレベーター1の昇降移動に係るサービスを提供する。
【0026】
戸開閉制御部22は、所定の乗場階のフロアに乗りかご2が到着した場合には、各乗りかご2のかごドア31を駆動制御するドア駆動制御部(図示せず)に、かごドア31及び乗場ドア(図示せず)の開閉動作の指示を出力する。
【0027】
距離センサ設定部23は、距離センサ3で距離データを取得するタイミングを設定し、その情報を、距離センサ制御部19のセンサ情報取得部24に送信する。距離センサ設定部23は、かごドア31の戸閉時や、乗りかご2の昇降開始時のタイミング等、予め設定された情報を基に、距離センサ3の距離データの取得タイミングを生成する。そして、距離センサ設定部23は、生成した距離データの取得タイミングに関する情報を、センサ情報取得部24に送信する。また、距離センサ設定部23には、距離センサ3における距離データのデータ取得範囲及び解像度の初期設定値が保持されている。
【0028】
[エレベーター運行管理部]
エレベーター運行管理部11は、割り当て演算処理部20を有する。割り当て演算処理部20は、後述する占有面積検出部25で算出された乗りかご2の占有度又は空きスペースの情報に基づいて、乗場呼び要求のあった乗場階に停止させるエレベーター1の号機を決定する。割り当て演算処理部20における割り当て方法については後で詳述する。
【0029】
[かご内カメラ制御部]
かご内カメラ制御部18は、エレベーター制御部10の制御の下、かご内カメラ4を駆動制御する。かご内カメラ4で取得された画像は、例えば、かご内カメラ制御部18に設けられた記憶部(図示を省略する)に記憶される。その他、かご内カメラ4で取得された画像は、通信路190、通信中継部17、通信網16、及びホストコンピューター14を介して、統計DB12又は/及び保全DB13に記憶される構成としてもよい。なお、かご内カメラ4における撮像は、常時行われるものであってもよく、また、積載物を感知した際に撮像するものであってよい。かご内カメラ4の撮像タイミングについては、種々の変更が可能である。
【0030】
[距離センサ制御部]
距離センサ制御部19は、センサ情報取得部24と、占有面積検出部25とを備える。センサ情報取得部24は、後述する距離センサ設定部23から送信されてくる所定のタイミング(以下、距離データ取得タイミング)で、距離センサ3で検知される距離データを取得する。この所定の距離データ取得タイミングとは、例えば、かごドア31が戸閉したタイミングや、乗りかご2が昇降動作を始めるタイミング等である。センサ情報取得部24は、エレベーター制御部10からその距離データ取得タイミングに関する信号を受信することで、距離データ取得タイミングに応じた距離情報を取得する。なお、図3の構成の場合、距離センサ3で取得された距離データについて通信路190を介して距離センサ制御部19にて、データ加工をする構成とするが、構成については、これに限らない。例えば、距離センサ制御部19の機能を距離センサ3に入れ込み、加工されたデータをエレベーター制御部10と通信路190を介してやり取りする構成でもよい。
【0031】
占有面積検出部25は、距離センサ3で取得された距離データと、後述するセンサ情報取得部24において取得したセンサ情報に基づいて、乗りかご2内の積載物の占有面積を算出する。占有面積検出部25における占有面積の算出方法については、後で詳述する。
【0032】
[ホストコンピューター]
ホストコンピューター14は、エレベーター1、かご内カメラ制御部18、距離センサ制御部19、エレベーター制御部10、及びエレベーター運行管理部11を繋ぐ通信路190と、通信中継部17及び通信網16を介して接続されるコンピューターである。ホストコンピューター14は、有効エリア設定部15と、センサ情報抽出部26とを備える。
【0033】
有効エリア設定部15は、乗りかご2内において、人や荷物等の積載物を乗せることができる空間において、距離センサ3で検知する測定範囲(以下、有効エリア40)を設定する。有効エリア設定部15では、保全DB13に記憶されている乗りかご2の情報を抽出し、その情報から、有効エリア40を設定している。有効エリア設定部15における有効エリア40の設定方法については、後で詳述する。
【0034】
センサ情報抽出部26は、保全DB13に記憶されている距離センサ3の情報から、距離センサ3の解像度を抽出する。また、センサ情報抽出部26は、距離センサ3の取付位置座標の情報や、有効エリア設定部15で設定された有効エリア40の情報から、距離センサ3におけるデータ取得範囲を抽出する。距離センサ3におけるデータ取得範囲の抽出方法については、後で詳述する。
【0035】
[保全DB]
保全DB13は、保全対象の全エレベーター1の識別番号、機種、構成機器の仕様に関する情報が蓄積されたデータベースである。本実施形態では、保全DB13に蓄積された情報のうち、乗りかご2の図面及びその3D情報と、乗りかご2に設置された距離センサ3の解像度、及び、距離センサ3の取付位置座標の情報とを用いる。
【0036】
[統計DB]
統計DB12は、保全対象の全エレベーター1における乗車人数に関する統計、停止階に関する統計、故障内容に関する統計等、様々な統計に関する情報を蓄積している。本実施形態では、占有面積検出部25で算出され占有面積に関する統計が随時更新されて記憶されている。
【0037】
<占有面積検出方法>
本実施形態における占有面積検出方法について説明する。まず、乗りかご2内における積載物の占有面積を検出するにあたって、乗りかご2に設置される距離センサ3の検出範囲(以下、データ取得範囲)を設定する。図4は、乗りかご2に設置される距離センサ3のデータ取得範囲の設定方法を示すフローである。
【0038】
まず、ホストコンピューター14において、有効エリア設定部15に、保全DB13に蓄積された乗りかご2の図面及びその3D情報が入力される(ステップS1)。有効エリア設定部15は、入力された3Dの図面情報を用いて、乗りかご2の有効エリア40、及び有効エリア40の面積(以下、有効面積)を抽出する(ステップS2)。有効エリア40は、図3に示すように、側壁2b及びかごドア31から所定の距離だけ離れた範囲であって、手すり30等の乗りかご2内に予め設置されている障害物を除いた範囲に設定されている。すなわち、有効エリア40は、乗りかご2内において、積載物が実際に積載されると予想される範囲に設定されている。有効エリア40及び有効面積の設定方法に関する詳細は後述する。なお、本実施形態では、図面及びその3D情報を入力情報としているが、これに限らず、設計情報をデジタル化したデータと連携して、得られる設定情報を入力情報とする構成としてもよい。
【0039】
次に、センサ情報抽出部26は、有効エリア設定部15で設定された有効エリア40と、保全DB13から受信した距離センサ3の取付位置座標との情報から、有効エリア40に対応するデータ取得範囲を抽出する(ステップS3)。データ取得範囲とは、距離センサ3の取付位置座標を基準として設定される有効エリア40に対応した距離センサ3のデータ取得範囲である。データ取得範囲を抽出することで、距離センサ3によるデータ取得範囲を有効エリア40に紐づけることができる。データ取得範囲の抽出方法については、後で詳述する。
【0040】
また、ステップS3では、センサ情報抽出部26は、保全DB13から、距離センサ3の解像度に関する情報についても抽出する。
【0041】
そして、ステップS2及びステップS3の処理で抽出された有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度の情報は、保全DB13にフィードバックされ、保全DB13内において、距離センサ3の設定情報が更新される。
【0042】
図4のフローで示した有効エリア40、距離センサ3におけるデータ取得範囲及び解像度の抽出は、保全DB13に蓄積された情報に基づいてホストコンピューター14内で行うことができる。このため、エレベーター1の出荷前に、これらの情報を予め抽出しておくことができる。有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度の抽出は、乗りかご2の情報が保全DB13に蓄積された時点で自動的に行われる仕様としてもよい。また、本実施形態では、保全DBを活用する構成としたが、図面類を格納する設計DBと連携する構成でも良い。
【0043】
また、有効エリア40、データ取得範囲、及び解像度に関する情報は、エレベーター1の乗りかご2の仕様が変更になった場合や、距離センサ3の取付位置座標の変更があった場合等は、随時更新される。
【0044】
図5は、図4のステップS1における有効エリア40の抽出方法を示すフローである。まず、有効エリア設定部15は、乗りかご2の水平方向であるX方向、及び、Y方向において、かごドア31を含む側壁2bから距離センサ3における距離データの取得開始位置までの閾値を設定する。側壁2bから距離データの取得開始位置までの閾値は、距離センサ3において、側壁2bを積載物として検出しないために設けられる値であり、実際に積載物が積載される位置を想定して決定されている。これらの閾値は、予め定められ、保全DB13に蓄積されている。有効エリア設定部15では、X方向及びY方向における閾値の情報を保全DB13から抽出する。
【0045】
次に、有効エリア設定部15は、保全DB13に蓄積された図面情報から手すりなど、側壁2bよりも内側に存在する障害物30を抽出する(ステップS12)。
【0046】
そして、有効エリア設定部15は、ステップS11で設定された側壁2bから距離データの取得開始位置までの閾値及び、ステップS12で抽出された障害物の情報から、X方向の有効寸法Xed、Y方向の有効寸法Yed、及び有効エリア40を抽出する(ステップS13)。ステップS13では、有効寸法Xed及びYedの値から有効エリア40における有効面積も算出される。以上のようにして、有効エリア40及び有効エリア40の有効面積が抽出される。
【0047】
次に、図6を用いて、距離センサ3のデータ取得範囲の抽出(図4のステップS3に相当)について説明する。図6は、距離センサ3のデータ取得範囲の抽出方法を示すフローである。
【0048】
まず、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、距離センサ3のXY平面における取付位置座標(Xs,Ys)を抽出する(ステップS21)。距離センサ3の取付位置座標とは、乗りかご2の天井2cに取付られる距離センサ3の中心位置をXY平面において座標表示したものである。
【0049】
次に、センサ情報抽出部26は、距離センサ3の取付位置座標(Xs,Ys)と、有効エリア40とを照らし合わせ、距離センサ3の取付座標位置(Xs,Ys)を基準として、距離センサ3で取得する距離データのデータ取得範囲を抽出する(ステップS22)。距離センサ3の取付座標位置(Xs,Ys)=(0,0)としたとき、X方向におけるデータ取得範囲は、図3に示す-X1(mm)から+X2(mm)の範囲に設定される。また、Y方向におけるデータ取得範囲は、図3に示す-Y1(mm)から+Y2(mm)の範囲に設定される。
【0050】
次に、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、距離センサ3のZ方向における取付位置高さZsを抽出する(ステップS23)。距離センサ3のZ方向における取付位置高さZsは、乗りかご2の床から距離センサ3の取付位置までの高さである。
【0051】
次に、センサ情報抽出部26は、保全DB13に蓄積された情報から、Z方向における高さ方向の閾値を設定する。Z方向における閾値は、Z方向における有効寸法を決定するために設けられる値であり、Z方向において、天井2c側と床2a側に設けられている。天井2c側に設定される閾値は、距離センサ3よりも上下方向における下方に設けられた照明板を距離センサ3が検知しないために設けられる値である。また、床2a側に設定される閾値は、乗客が上がれるように設置された低い台など、占有面積に影響しない積載物を距離センサ3が検知してしまうことを防ぐために設けられる値である。閾値が設定されることにより、床2aから閾値分だけ離れた位置から、照明板から閾値分だけ離れた位置までの寸法がZ方向におけるZ方向の有効寸法Zedとなる。
【0052】
次に、センサ情報抽出部26は、距離センサ3のZ方向における取付位置座標Zsと、有効寸法Zedとを照らし合わせて、距離センサ3の高さ方向の取付座標位置Zsを基準として、Z方向におけるデータ取得範囲を抽出する。距離センサ3の高さ方向の取付位置座標Zs=0としたとき、距離センサ3におけるZ方向のデータ取得範囲は、図3に示すMAX+Z1(mm)から、MIN+Z2(mm)までの範囲である。
【0053】
以上のようにして、距離センサ3における有効エリア40に対応するデータ取得範囲がX、Y、Z方向で抽出される。なお、当該有効エリア40については、製品出荷時に、保全DB13と接続し設定しても、現地にセンサを設置した際に設定されるような構成でも良い。更に、保全DB13と連携することで、仮に取付位置が修正になった場合も、出荷元の設計データを反映すると自動的に有効エリアも設定可能となる。前述したToFセンサや、ミリ波センサでは、不要な箇所へのビームや、電磁波の放出を抑えることや、反射を考慮したエリアの閾値設定が重要である。さらに、センサから得られたデータを活用したエリアの設定でなく、事前に有効エリアを設定して、当該エリアに応じた処理を行うことが重要である。
【0054】
次に、距離センサ制御部19のセンサ情報取得部24におけるセンサ情報設定方法について説明する。図7は、センサ情報取得部24における距離センサ3の距離データ取得に係る設定方法を示すフローである。
【0055】
まず、センサ情報取得部24は、センサ情報抽出部26から距離センサ3の設定に関する情報(データ)を正常に受信できたか否かを判定する(ステップS31)。ここで、センサ情報抽出部26から、センサ情報取得部24に送信されるデータは、X方向、Y方向、及びZ方向におけるデータ取得範囲と、距離センサ3のXY平面における解像度である。
【0056】
ステップS31において、「NO」と判定された場合、すなわち、データを正常に受信できていないと判定された場合、エレベーター制御部10の距離センサ設定部23に予め記憶されている距離センサ3に関する初期設定値を抽出する(ステップS32)。この初期設定値は、図6と同様にして得られた距離センサ3のデータ取得範囲の初期値と、解像度の初期値である。
【0057】
一方、ステップS31において、「YES」と判定された場合、すなわち、データを正常に受信できたと判断された場合、センサ情報取得部24は、距離センサ3で検知される距離データのデータ取得範囲(X方向、Y方向、Z方向)を設定する。距離データのデータ取得範囲は、X方向において、-X1(mm)~+X2(mm)、Y方向において、-Y1(mm)~+Y2(mm)、Z方向において、MIN+Z1(mm)~MAX+Z2(mm)である。
【0058】
次に、センサ情報取得部24は、センサ情報抽出部26で抽出された距離センサ3の解像度を取得する(ステップS34)。図8に、ステップS33及びステップS34によって取得された情報を、距離センサ3で検知した距離データに反映させたときの概略図を示す。図8において、図3に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0059】
図8に示すように、センサ情報取得部24で取得した距離センサ3のデータ取得範囲は、有効エリア40と同一の範囲となる。また、解像度の設定により、XY平面における有効エリア40内の距離データは、所定の単位領域41に区分される。そして、本実施形態では、有効エリア40内において区分された単位領域41毎に、積載物の有無を判定し、占有面積を算出する。以下に、占有面積の算出方法について説明する。
【0060】
図9は、占有面積検出部25における占有面積算出方法を示したフローである。所定のタイミングで距離センサ3が距離データを取得した後、占有面積検出部25では、有効エリア40を距離センサ3の解像度で分割した単位領域41毎に積載物の有無判定を行う「解像度ループ」を開始する(ステップS41)。まず、距離センサ3で検出された距離データから、所定の単位領域41における距離データを抽出する(ステップS42)。
【0061】
次に、単位領域41における距離データが、閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS43)。ステップS43の閾値は、例えば距離センサ3で検知される反射光の強度によって決められた値であり、反射光の強度が閾値よりも大きい場合には、積載物があると判定され、閾値よりも小さい場合には、積載物はないと判定される。
【0062】
図10は、距離センサ3で取得される距離データの様子を示した概略構成図である。距離センサ3では、X、Y、Z軸におけるデータがそれぞれ取得される。X軸及びY軸方向で検出される値からは、積載物の有無が判定され、Z軸方向で検出される値からは積載物の高さが検出される。
【0063】
図10に示すように、それぞれの単位領域41に、積載物P1、P2、P3、Bの一部又は全部が存在している部分は、領域D1、D2、D3で示される。この領域D1、D2、D3にあるそれぞれの単位領域41が、ステップS43の処理において積載物があると判定される単位領域41となる。また、本実施形態では、取得される距離データが所定の閾値よりも大きいか否かを判定することにより、距離センサ3の誤検知を防ぐことができる。
【0064】
ステップS43において、「YES」と判定された場合、すなわち、単位領域41に積載物があると判定された場合には、占有値が+1される(ステップS45)。ここで、占有値は、積載物が有ると判定された単位領域41の和である。すなわち、ステップS45では、積載物があると判定され単位領域41の数が積算される。
【0065】
ステップS43において、「NO」と判定された場合、すなわち、単位領域41に積載物が無いと判定された場合には、占有値は積算されない。ステップS42~ステップS44の処理は、有効エリア40の全ての単位領域41に対して行われ、有効エリア40の全ての単位領域41における積載物の有無の判定が終了した場合に、解像度ループを終了する(ステップS45)。
【0066】
ステップS41~ステップS45の解像度ループが終了した後、占有面積検出部25は、積算された占有値から、占有度を求める(ステップS46)。占有度を求める場合、まず、積算された占有値と、単位領域の面積とから、占有面積を算出する。その後、有効面積に対する占有面積の割合を算出することで、占有度(%)が算出される。
【0067】
なお、本実施形態では、ステップS46において、占有度を求める例としたが、空きスペースを求める手順としてもよい。空きスペースを求める場合には、占有面積を算出した後、有効面積と占有面積との差を算出することで、空きスペースを算出することができる。図9を用いて説明した占有面積検出方法により、エレベーター運行管理部11が群管理するすべての号機のエレベーター1における乗りかごの占有面積が随時検出される。
【0068】
そして、本実施形態では、割り当て演算処理部20において、図9で求められた占有度に基づいて、複数の号機のエレベーター1のうち、どの号機のエレベーター1を乗り場呼び要求のある乗場階に停止させるか(割り当てるか)について演算処理する。図11は、本実施形態におけるエレベーターの割り当て演算処理方法を示すフローである。
【0069】
まず、乗場階において、割り当て演算処理部20は、乗場呼び要求があるか否かを判定する(ステップS51)。乗場呼び要求とは、乗場階にいる乗客が、乗場階に設置された操作部(図示を省略する)を操作することによって発生する要求である。
【0070】
ステップS51において、「NO」と判定された場合、すなわち、乗場呼び要求が無いと判定された場合には、割り当て演算処理部20における処理は終了する。
【0071】
一方、ステップSにおいて「YES」と判定された場合、すなわち、乗場呼び要求が有ると判定された場合には、割り当て演算処理部20は、エレベーター1の号機毎に割り当て判定を行う「エレベーター号機数ループ」を開始する(ステップS52)。
【0072】
割り当て演算処理部20は、判定対象となるエレベーター1において、占有面積検出部25で算出された占有値に基づいて、割り当て可能か否かを判定する。ステップS53における判定方法は、例えば、エレベーターが故障中や、保守点検中であった場合は、割り当て不可となり、「NO」判定となる。その他にも、エレベーターが当該乗り場要求階を通過予定であり、途中で降車が予測されないエレベーターにて満員と判定されているエレベーターについては、「NO」判定となる。具体的には、乗り場要求階が3階のUP方向で合った場合、1階から、かご内の行先階登録が5階登録済のエレベーターがいた場合、途中階の2階で降車することは予測されない。このため、当該エレベーターにおいて、満員状態を判定されるほど利用者が乗車していた場合、3階到着時も満員が継続と判定する。なお、当該満員判定は、後述する占有度を利用する方式や、荷重での満員判定、或いはどちらかの判定手段を利用する形でも良い。
【0073】
ステップS53において、「NO」と判定された場合、すなわち、割り当てが不可であると判定された場合には、そのエレベーター1における割り当て判定を終了し、次の号機のエレベーターの割り当て判定ループに戻る。
【0074】
一方、ステップS53において、「YES」と判定された場合、すなわち、割り当て可能であると判定された場合には、そのエレベーター1が、乗場呼び要求のある乗場階に到達するまでの時間(待ち時間)に関する評価を行う(ステップS54)。ステップS54における待ち時間評価では、待ち時間に応じてエレベーター1の割り当ての優先度を評価する。
【0075】
そして、エレベーター運行管理部11で群管理されるすべての号機数のエレベーター1における割り当て判定が終了したら、「エレベーター号機数ループ」を終了する(ステップS55)。
【0076】
次に、割り当て演算処理部20は、割り当て判定ループで算出された判定結果に基づいて総合評価を行い、割り当てるエレベーター1の号機を決定する(ステップS56)。ここでは、割り当てが可能であると判定されたエレベーター1のうち、待ち時間評価において待ち時間が少なく、優先度が最も高いと評価された号機のエレベーター1を割り当て対象号機となるエレベーターに決定する。
【0077】
そして、割り当て演算処理部20は、ステップS56で算出された割り当て対象号機のエレベーター1に対応するエレベーター制御部10に、乗場呼びに対する応答指令を送信する(ステップS57)。これにより、割り当て対象となった号機のエレベーター1が、乗場呼び要求のある乗場階に停止するように、対応するエレベーター制御部10によって制御される。
【0078】
図12は、割り当てしたエレベーターが満員状態か判定し、サービス不可であれば、通過指令を行うフローである。
【0079】
まず、割り当て演算処理部20は、判定対象である号機のエレベーター1において、次の停止階に乗場呼び要求があるかを判定する(ステップS61)。ステップS61において、「NO」と判定された場合、すなわち、次の停止階に乗場呼び要求が無いと判定された場合には、そのエレベーター1に乗り込む人や物が無いため、占有度が増加することが無い。この場合、そのエレベーター1においては、割り当て評価値において、「サービス可能」を維持した状態で処理を終了する。この場合、図11のステップS53では、「YES」の判定が為される。
【0080】
一方、ステップS61において、「YES」と判定された場合、すなわち、次の停止階に乗場呼び要求が有ると判定された場合には、割り当て演算処理部20において、そのエレベーター1の荷重が「満員」の基準を満たしている否かを判定する(ステップS62)。ステップS62において用いられる荷重値判定は、乗りかご2に設けられた荷重検知装置(図示を省略する)によって検出される荷重値に基づいて為される判定である。乗りかご2で検出された荷重値が規定された重量以上であれば「満員である」と判定され、規定された重量よりも小さい場合には、「満員でない」と判定される。
【0081】
ステップS62において、「NO」と判定された場合、すなわち、荷重値上「満員でない」と判定された場合には、そのエレベーター1における占有度が80%以上であるか否かを判定する(ステップS63)。なお、本実施形態例では、占有度の割合閾値を80%にした例を説明したが、これに限定されるものではなく、90%以上や70%等、占有度の割合閾値は任意に設定できるものである。
【0082】
ステップS63において、「NO」と判定された場合、すなわち、占有度が80%未満であると判定された場合には、そのエレベーター1の割り当て評価値において、「サービス可能」を維持した状態で処理を終了する。この場合は、図11のステップS53では、「YES」の判定が為される。
【0083】
一方、ステップS62において、「YES」と判定された場合、すなわち、「満員である」と判定された場合、及び、ステップS63において、「YES」と判定された場合、すなわち、占有度が80%以上あった場合には、ステップS64に進む。
【0084】
ステップS64では、割り当て演算処理部20は、そのエレベーター1のエレベーター制御部10に対して、乗場呼び通過指令を発信する(ステップS64)。乗場呼び通過指令とは、ステップS51の乗場呼びに対して、そのエレベーター1を停止させずに通過させる指令である。
【0085】
その後、割り当て演算処理部20は、占有度が80%以上であると判定された場合、サービス予定のエレベーターは、満員にて「サービス不可」のため、当該乗り場呼び要求に対して再評価が必要となるため、再割り当て評価を行う。この場合、図11のステップS53では、「NO」の判定が為される。
【0086】
図12のフローにより、判定対象となる号機のエレベーター1が割り当て可能であるか不可能であるかが判定される。以上のようにして、図11のステップS53では、割り当て評価が、「割り当て可能」であるか、「割り当て不可能」であるかに応じて、その判定結果が決定される。
【0087】
本実施形態によれば、エレベーター1の乗りかご2の荷重検知装置で検出される荷重値に基づく判定が、満員でないとされた場合でも、占有度が所定の割合(本実施形態では80%以上)以上であった場合には、乗場呼び要求のある乗場階に停止させない。これにより、荷重値判定のみによる無駄な停止を防ぐことができ、より適切な号機のエレベーター1を乗場呼び要求のある乗場階に停止させることができる。
【0088】
本実施形態では、ステップS63において、占有度に応じて割り当て可能か否かを判定する例としているが、空きスペースの割合に応じて割り当て可能か否かを判定する構成としてもよい。
【0089】
本実施形態において、乗りかご2内に常時設置してある手すり等の障害物を予め有効エリア40から外すことで、障害物が存在する領域を演算する必要が無いため、例えば、図9における演算速度の向上を図ることができる。例えば、エレベーター1の据え付け後に、観葉植物や、小さい椅子等、常時設置されるような障害物が乗りかご2内に設置された場合には、図9の演算処理により、常にそれらの障害物が検知されることとなる。この場合には、常時、積載物ありとして検出されるエリアを有効エリア40から外す構成としてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、有効エリア設定部15と、センサ情報抽出部26とをホストコンピューター14に備える例としたが、これらの構成は、エレベーター制御部10や、距離センサ制御部19側に備える例としてもよい。
【0091】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0092】
100…エレベーターシステム、1…エレベーター、3…距離センサ、2…乗りかご、3…距離センサ、4…かご内カメラ、10…エレベーター制御部、11…エレベーター運行管理部、12…統計データベース、13…保全データベース、14…ホストコンピューター、15…有効エリア設定部、16…通信網、17…通信中継部、18…かご内カメラ制御部、19…距離センサ制御部、20…割り当て演算処理部、21…昇降制御部、22…戸開閉制御部、23…距離センサ設定部、24…センサ情報取得部、25…占有面積検出部、26…センサ情報抽出部、28…入出力装置、30…障害物、31…かごドア、33…釣合い錘、34…巻上機、35…主ロープ、40…有効エリア、41…単位領域、50…距離センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12