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特許7595784飛翔体追跡方法、飛翔体追跡システム、衛星コンステレーションおよび地上システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】飛翔体追跡方法、飛翔体追跡システム、衛星コンステレーションおよび地上システム
(51)【国際特許分類】
   B64G 3/00 20060101AFI20241129BHJP
   B64G 1/10 20060101ALI20241129BHJP
   H04B 7/185 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B64G3/00
B64G1/10 100
B64G1/10 328
B64G1/10 600
H04B7/185
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023553805
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037802
(87)【国際公開番号】W WO2023062731
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迎 久幸
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第110412869(CN,B)
【文献】米国特許出願公開第2018/0106898(US,A1)
【文献】国際公開第2020/261481(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0316819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00
B64G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上システムと衛星コンステレーションとを備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記衛星コンステレーションの前記人工衛星である探知衛星が、飛翔体の発射を探知し、前記自己軌道面である探知軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記探知軌道面の各人工衛星に発射探知情報を伝送し、
前記探知軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記探知軌道面において前記地上システムの上空を通る経由軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記経由軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記発射探知情報を伝送し、
前記接続先衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記発射探知情報を伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星が、前記発射探知情報を前記地上システムに伝送する
飛翔体追跡方法。
【請求項2】
地上システムと、飛翔の途中で間欠的に再噴射をして進行方向を変更する飛翔体の発射探知とポストブースト段階の追跡をする衛星コンステレーションと、を備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記地上システムは、間欠的噴射を行う典型的な飛翔体の飛翔経路モデルを生成して格納するサーバを備え、
前記飛翔経路モデルは、飛翔時間と、発射場の位置座標と、着地予測地点の位置座標と、飛翔方向と、時系列飛翔距離と、飛翔高度プロファイルと、から構成され、発射地点が含まれる発射領域と着地予測地点が含まれる着地領域の関係を示し、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記地上システムが、
前記飛翔体の発射時刻と前記飛翔体の発射地点の座標値とを示す発射探知情報を前記衛星コンステレーションから受信し、
前記発射探知情報と前記飛翔経路モデルに基づいて、前記飛翔経路モデルの中の着地予測地点の位置座標に前記飛翔体が到達する着地予測時刻を導出する
飛翔体追跡方法。
【請求項3】
地上システムと、飛翔体の発射を探知する衛星コンステレーションと、を備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記地上システムが、前記飛翔体の発射時刻と前記飛翔体の発射地点の座標値とを示す発射探知情報を前記衛星コンステレーションから受信し、前記飛翔体の着地予測時刻と前記飛翔体の着地予測地点の座標値とを導出し、前記着地予測時刻に前記着地予測地点の上空を通る監視軌道面の各人工衛星に対する監視コマンドを生成し、前記監視コマンドの送信準備が完了した時刻に前記地上システムの上空を通る経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星に前記監視コマンドを送信し、
前記対地衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記監視コマンドを伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記経由軌道面において前記監視軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記監視軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記監視コマンドを伝送し、
前記接続先衛星が、前記監視軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記監視軌道面の各人工衛星に前記監視コマンドを伝送する
飛翔体追跡方法。
【請求項4】
地上システムと衛星コンステレーションとを備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記衛星コンステレーションの前記人工衛星である監視衛星が、飛翔体を監視し、前記自己軌道面である監視軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記監視軌道面の各人工衛星に飛翔体情報を伝送し、
前記監視軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記監視軌道面において前記地上システムの上空を通る経由軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記経由軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記飛翔体情報を伝送し、
前記接続先衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記飛翔体情報を伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星が、前記飛翔体情報を前記地上システムに伝送する
飛翔体追跡方法。
【請求項5】
地上システムと、飛翔の途中で間欠的に再噴射をして進行方向を変更する飛翔体を監視してポストブースト段階の追跡をする衛星コンステレーションと、を備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記地上システムは、間欠的噴射を行う典型的な飛翔体の飛翔経路モデルを生成して格納するサーバを備え、
前記飛翔経路モデルは、飛翔時間と、発射場の位置座標と、着地予測地点の位置座標と、飛翔方向と、時系列飛翔距離と、飛翔高度プロファイルと、から構成され、発射地点が含まれる発射領域と着地予測地点が含まれる着地領域の関係を示し、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記衛星コンステレーションが、
複数の人工衛星によって高温対象を探知して前記飛翔体の飛翔時刻と前記飛翔体の飛翔地点の座標値とを示す複数の飛翔体情報を前記地上システムへ伝送し、
前記地上システムが、
前記複数の飛翔体情報を前記衛星コンステレーションから受信し、
前記複数の飛翔体情報と前記飛翔経路モデルに基づいて前記飛翔体の時系列的な位置情報の変化を分析して前記飛翔体の飛翔予測経路を導出する
飛翔体追跡方法。
【請求項6】
前記地上システムが、前記飛翔体情報と、飛翔方向と時系列飛翔距離と時系列飛翔高度の関係を示す飛翔経路モデルと、に基づいて、前記飛翔体の着地予測時刻と前記飛翔体の着地予測地点とを導出する
請求項5に記載の飛翔体追跡方法。
【請求項7】
地上システムと、飛翔体を監視する衛星コンステレーションと、を備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記地上システムが、前記飛翔体の飛翔時刻と前記飛翔体の飛翔地点の座標値とを示す飛翔体情報を前記衛星コンステレーションから受信し、前記飛翔体の飛翔予測経路を導出し、前記飛翔体の着地予測時刻に前記飛翔体の着地予測地点の上空を通る追跡軌道面の人工衛星である追跡衛星に対する追跡コマンドを生成し、前記追跡コマンドの送信準備が完了した時刻に前記地上システムの上空を通る経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星に前記追跡コマンドを送信し、
前記対地衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記追跡コマンドを伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記経由軌道面において前記追跡軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記追跡軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記追跡コマンドを伝送し、
前記接続先衛星が、前記追跡軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記追跡軌道面の各人工衛星に前記追跡コマンドを伝送する
飛翔体追跡方法。
【請求項8】
前記地上システムが、前記飛翔体情報と、飛翔方向と時系列飛翔距離と時系列飛翔高度の関係を示す飛翔経路モデルと、に基づいて、前記着地予測時刻と前記着地予測地点とを導出する
請求項7に記載の飛翔体追跡方法。
【請求項9】
地上システムと、飛翔体を監視する衛星コンステレーションと、を備える飛翔体追跡システムの飛翔体追跡方法であって、
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記地上システムが、前記飛翔体の飛翔時刻と前記飛翔体の飛翔地点の座標値とを示す飛翔体情報を前記衛星コンステレーションから受信し、前記飛翔体の飛翔予測経路を導出し、前記飛翔体の着地予測時刻に前記飛翔体の着地予測地点の上空を通る追跡軌道面を選択し、前記飛翔体情報の送信準備が完了した時刻に前記地上システムの上空を通る経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星に前記飛翔体情報を送信し、
前記対地衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記飛翔体情報を伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記経由軌道面において前記追跡軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記追跡軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記飛翔体情報を伝送し、
前記接続先衛星が、前記追跡軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記追跡軌道面の各人工衛星に前記飛翔体情報を伝送し、
前記追跡軌道面における少なくともいずれかの前記人工衛星が、前記飛翔体情報を対処アセットに送信する
飛翔体追跡方法。
【請求項10】
前記衛星コンステレーションは、12以上の前記人工衛星群を備えて12以上の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、15機以上の前記人工衛星から成る
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の飛翔体追跡方法。
【請求項11】
各々の前記人工衛星は、地球周縁を指向する赤外監視装置を備える
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の飛翔体追跡方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の飛翔体追跡方法を実行する飛翔体追跡システム。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の飛翔体追跡方法で使用される衛星コンステレーション。
【請求項14】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の飛翔体追跡方法で使用される地上システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、衛星コンステレーションによる飛翔体の追跡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脅威対象である飛翔体の監視には、静止軌道からプルーム監視を行うGEO衛星が有効であった。しかし、間欠的に噴射を繰り返す飛翔体の登場により、ポストブースト段階の追跡が必要となり、GEO衛星が無効になることが課題となった。GEOはGeostationary Orbitの略称である。
米国では、LEOコンステレーションによる発射探知/追跡システムの構想が検討中されている。しかし、数百機規模の人工衛星が必要になるため、コスト規模が課題となる。LEOはLow Earth Orbitの略称である。
LEOでは、監視コンステレーションと通信コンステレーションの連携が必須となる。しかし、時々刻々と飛翔位置が変わるLEO衛星の情報授受に資する通信運用が煩雑である、という課題があった。
発射探知時点では、飛翔体の飛翔方向が不明であるので着地予測ができない。そのため、追跡監視により飛翔経路を予測する必要がある。しかし、継続して監視を行う人工衛星の選定が困難であり、飛翔体情報の伝送が困難である、という課題がある。
光通信で毎週回2度ずつ回線を確立するために、高精度な光軸合せのための技術の確立が必要である。また、ロス時間が大きい、という課題があった。
LEO衛星は任意の地上設備の上空を短時間で通過してしまう。また、軌道面の回転が地球自転と同期していない。そして、特定の地上設備または特定の対処アセットに飛翔体情報を伝送するためには、通信経路のルート探索と、情報を経由させる人工衛星の選択と、情報を授受する時刻と、を設定する必要がある。つまり、運用が煩雑になる、という課題がある。
【0003】
特許文献1は、低軌道を周回する少ない機数で特定緯度の地域を網羅的に監視するための監視衛星を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4946398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、飛翔体が間欠的に噴射を繰り返す場合であっても飛翔体を追跡できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の飛翔体追跡方法は、地上システムと衛星コンステレーションとを備える飛翔体追跡システムによる方法である。
前記衛星コンステレーションは、互いに異なる軌道面で飛翔する複数の人工衛星群を備え、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散された複数の軌道面を形成し、
各々の前記人工衛星群は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する複数の人工衛星から成り、
前記衛星コンステレーションの前記人工衛星である探知衛星が、飛翔体の発射を探知し、前記自己軌道面である探知軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記探知軌道面の各人工衛星に発射探知情報を伝送し、
前記探知軌道面の前記人工衛星である接続元衛星が、前記探知軌道面において前記地上システムの上空を通る経由軌道面に対する通信範囲内を飛翔するときに、前記経由軌道面の前記人工衛星である接続先衛星に前記発射探知情報を伝送し、
前記接続先衛星が、前記経由軌道面における前後の前記人工衛星との通信を介して前記経由軌道面の各人工衛星に前記発射探知情報を伝送し、
前記経由軌道面の前記人工衛星である対地衛星が、前記発射探知情報を前記地上システムに伝送する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、飛翔体が間欠的に噴射を繰り返す場合であっても飛翔体を追跡することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における飛翔体追跡システム100の構成図。
図2】実施の形態1における人工衛星220の構成図。
図3】実施の形態1における飛翔体追跡システム100の動作の手順を示す図。
図4】実施の形態1における飛翔体追跡システム100の動作の手順を示す図。
図5】実施の形態1における特徴(1)の説明図。
図6】実施の形態1における飛翔経路モデル119の情報を示す図。
図7】実施の形態1における飛翔経路モデル119の情報を示す図。
図8】実施の形態1における飛翔経路モデル119の情報を示す図。
図9】実施の形態1における特徴(3)の説明図。
図10】実施の形態1における特徴(4)の説明図。
図11】実施の形態1における特徴(5)の説明図。
図12】同一軌道面における前後衛星の通信の様子を示す図。
図13】隣接軌道間における左右衛星の通信の様子を示す図。
図14】南北端での隣接軌道間における人工衛星の左右の入れ替えを示す図。
図15】実施の形態1における軌道面間の通信の様子を示す図。
図16】実施の形態1における地上システムへの通信の流れを示す図。
図17】赤道上空軌道の人工衛星の視野範囲を示す図。
図18】赤道上空付近からのリム観測の様子を示す図。
図19】傾斜軌道の人工衛星の視野範囲を示す図。
図20】異なる緯度帯からのリム観測の様子を示す図。
図21】中緯度帯において立体角が確保される様子を示す図。
図22】中緯度帯において立体角が確保される様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態および図面において、同じ要素または対応する要素には同じ符号を付している。説明した要素と同じ符号が付された要素の説明は適宜に省略または簡略化する。
【0010】
実施の形態1.
飛翔体追跡システム100について、図1から図22に基づいて説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1に基づいて、飛翔体追跡システム100の構成を説明する。
飛翔体追跡システム100は、飛翔体101を追跡しながら監視するシステムである。
【0012】
飛翔体追跡システム100は、衛星コンステレーション200と、地上システム110と、複数の対処アセット120と、を備える。
【0013】
衛星コンステレーション200は、複数の軌道面を形成する。具体的には、衛星コンステレーション200は、12以上の軌道面を形成する。
複数の軌道面は、互いの法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散される。
【0014】
衛星コンステレーション200は、複数の人工衛星群210を備える。具体的には、衛星コンステレーション200は、12以上の人工衛星群210を備える。
複数の人工衛星群210は、互いに異なる軌道面で飛翔する。各々の人工衛星群210の軌道面を「自己軌道面」と称する。
各々の人工衛星群210は、複数の人工衛星220から成る。具体的には、各々の人工衛星群210は、15機以上の人工衛星220から成る。
複数の人工衛星220は、自己軌道面の傾斜軌道を飛翔する。
【0015】
地上システム110は、衛星通信装置111と、サーバ装置112と、地上通信装置113と、を備える。
衛星通信装置111は、各々の人工衛星220と通信するための通信装置である。各々の人工衛星220との通信は、衛星通信装置111を用いて実行される。
サーバ装置112は、処理回路を備えるコンピュータである。サーバ装置112の記憶装置には、飛翔経路モデル119などが記憶される。飛翔経路モデル119について後述する。
地上通信装置113は、各々の対処アセット120と通信するための通信装置である。各々の対処アセット120との通信は、地上通信装置113を用いて実行される。
【0016】
複数の対処アセット120は、飛翔体101に対処するために互いに異なる場所に配備される。
対処アセット120の具体例は、陸に配備される車両、海に配備される船舶および空に配備される航空機である。
【0017】
処理回路について説明する。
処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサであってもよい。
処理回路において、一部の機能が専用のハードウェアで実現されて、残りの機能がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。つまり、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせで実現することができる。
専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGAまたはこれらの組み合わせである。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。
FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0018】
図2に基づいて、人工衛星220の構成を説明する。
人工衛星220は、赤外監視装置221と、軌道内通信装置222と、軌道間通信装置223と、地上間通信装置224と、視線制御装置225と、を備える。
【0019】
自己軌道面と異なる軌道面において自己軌道面の人工衛星220と通信する人工衛星220の軌道面を「相手軌道面」と称する。
【0020】
赤外監視装置221は、赤外線を利用する監視装置である。具体的には、赤外監視装置221は、地球周縁を指向して飛翔体101を監視する。
軌道内通信装置222は、自己軌道面における前後の人工衛星220と通信するための通信装置である。具体的には、軌道内通信装置222は、飛翔方向の前後方向を指向する通信装置である。自己軌道面において人工衛星群210が通信することにより、自己軌道面に円環状通信網が形成される。自己軌道における前後の人工衛星220との通信は、軌道内通信装置222を用いて実行される。
軌道間通信装置223は、相手軌道面の人工衛星220と通信するための通信装置である。具体的には、軌道間通信装置223は、近傍通信を行う通信装置である。相手軌道面の人工衛星220との通信は、軌道間通信装置223を用いて実行される。
地上間通信装置224は、地上システム110および各対処アセット120と通信するための通信装置である。地上システム110との通信および各対処アセット120との通信は、地上間通信装置224を用いて実行される。
【0021】
視線制御装置225は、赤外監視装置221による監視における視線方向を制御するためのハードウェアである。
視線制御装置225の具体例は、姿勢制御装置、ポインティング機構またはこれらの組み合わせである。
姿勢制御装置は、人工衛星220の姿勢と人工衛星220の角速度といった姿勢要素を制御する。具体的には、姿勢制御装置は、各姿勢要素を所望の方向に変化させる。もしくは、姿勢制御装置は、各姿勢要素を所望の方向に維持する。姿勢制御装置は、姿勢センサとアクチュエータとコントローラとを備える。コントローラは処理回路に相当する。姿勢センサは、ジャイロスコープ、地球センサ、太陽センサ、スター・トラッカ、スラスタおよび磁気センサなどである。アクチュエータは、姿勢制御スラスタ、モーメンタムホイール、リアクションホイールおよびコントロール・モーメント・ジャイロ等である。コントローラは、姿勢センサの計測データまたは地上システム110からの各種コマンドにしたがって、アクチュエータを制御する。
ポインティング機構は、赤外監視装置221の視線方向を変える。例えば、ポインティング機構として、駆動ミラーなどが利用される。
【0022】
***動作の説明***
飛翔体追跡システム100によって実行される方法を飛翔体追跡方法と称する。
図3および図4に基づいて、飛翔体追跡方法を説明する。
【0023】
図3に基づいて、飛翔体101の発射を探知した人工衛星220から地上システム110へ発射探知情報を伝送する手順(A1)~(A5)を説明する。
【0024】
(A1)少なくともいずれかの人工衛星220において、赤外監視装置221は、飛翔体101の発射を探知し、発射探知情報を生成する。
発射探知情報は、飛翔体101の発射時刻と飛翔体101の発射地点の座標値とを示す。発射時刻における人工衛星220からの視線方向と地表面の交点が発射地点となる。
飛翔体101の発射を探知した各人工衛星220を「探知衛星」と称する。
探知衛星の軌道面を「探知軌道面」と称する。
【0025】
(A2)探知衛星は、探知軌道面において前後の人工衛星220に発射探知情報を送信する。送信先の各人工衛星220は、発射探知情報を受信し、前後の人工衛星220に発射探知情報を送信する。これにより、探知軌道面の人工衛星群210において発射探知情報が共有される。
【0026】
2つの軌道面のそれぞれにおいて、他方の軌道面の人工衛星220との衛星間通信が可能な範囲を「軌道面間通信範囲」と称する。具体的には、軌道面間通信範囲は、軌道面間の最接近地点および最接近地点の近傍である。軌道面間の最接近地点は、他方の軌道面に最も近い地点である。最接近地点は、2つの軌道面の交線上に2点形成される。
地上システム110の上空を通る軌道面を「経由軌道面A」と称する。
探知軌道面において経由軌道面Aに対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続元衛星A」と称する。
探知軌道面において接続元衛星Aが経由軌道面Aに対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに経由軌道面Aにおいて探知軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続先衛星A」と称する。
【0027】
(A3)接続元衛星Aは、探知軌道面において経由軌道面Aに対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに、経由軌道面Aの接続先衛星Aに発射探知情報を送信する。接続先衛星Aは、発射探知情報を受信する。これにより、探知軌道面の円環状通信網と経由軌道面の円環状通信網が接続される。
【0028】
(A4)接続先衛星Aは、経由軌道面Aにおいて前後の人工衛星220に発射探知情報を送信する。送信先の各人工衛星220は、発射探知情報を受信し、前後の人工衛星220に発射探知情報を送信する。これにより、経由軌道面Aの人工衛星群210において発射探知情報が共有される。
【0029】
経由軌道面Aにおいて地上システム110の上空を飛翔する人工衛星220を「対地衛星A」と称する。
【0030】
(A5)対地衛星Aは、地上システム110に発射探知情報を送信する。衛星通信装置111は、発射探知情報を受信する。
【0031】
図3に基づいて、地上システム110から飛翔体101を監視させる人工衛星220へ監視コマンドを伝送する手順(B0)から(B4)を説明する。
【0032】
(B0)サーバ装置112は、発射探知情報と飛翔経路モデル119とに基づいて、飛翔体101の着地予測時刻と飛翔体101の着地予測地点の座標値とを導出する。「導出」は「算出」に相当する。
飛翔経路モデル119は、モデルとなる飛翔体の飛翔経路を表すデータである。
飛翔経路モデル119は、飛翔プロファイルを含む。
飛翔プロファイルは、飛翔方向と時系列飛翔距離と時系列飛翔高度の関係を示して飛翔経路を表す。
時系列飛翔距離は、発射からの各径路時間における飛翔距離である。
時系列飛翔高度は、発射からの各経過時間における飛翔高度である。
【0033】
着地予測時刻に着地予測地点の上空を通る軌道面を「監視軌道面」と称する。
サーバ装置112は、監視軌道面を選択する。
【0034】
サーバ装置112は、監視軌道面の各人工衛星220に対する監視コマンドを生成する。
具体的には、監視コマンドは、発射地点の上空を指向して飛翔体101を監視することを指令するためのコマンドである。監視コマンドは、発射地点の座標値を示す。
【0035】
監視コマンドの送信準備が完了した時刻を「準備完了時刻B」と称する。
準備完了時刻Bに地上システム110の上空を通る軌道面を「経由軌道面B」と称する。
サーバ装置112は、経由軌道面Bを選択する。
【0036】
経由軌道面Bにおいて地上システム110の上空を飛翔する人工衛星220を「対地衛星B」と称する。
【0037】
(B1)衛星通信装置111は、経由軌道面Bの対地衛星Bに監視コマンドを送信する。対地衛星Bは、監視コマンドを受信する。
【0038】
(B2)対地衛星Bは、経由軌道面Bにおいて前後の人工衛星220に監視コマンドを送信する。送信先の各人工衛星220は、監視コマンドを受信し、前後の人工衛星220に監視コマンドを送信する。これにより、経由軌道面Bの人工衛星群210において監視コマンドが共有される。
【0039】
経由軌道面Bにおいて監視軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続元衛星B」と称する。
経由軌道面Bにおいて接続元衛星Bが監視軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに監視軌道面において経由軌道面Bに対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続先衛星B」と称する。
【0040】
(B3)接続元衛星Bは、経由軌道面Bにおいて監視軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに、監視軌道面の接続先衛星Bに監視コマンドを送信する。接続先衛星Bは、監視コマンドを受信する。これにより、経由軌道面Bの円環状通信網と監視軌道面の円環状通信網が接続される。
【0041】
(B4)接続先衛星Bは、監視軌道面において前後の人工衛星220に監視コマンドを送信する。送信先の各人工衛星220は、監視コマンドを受信し、前後の人工衛星220に監視コマンドを送信する。これにより、監視軌道面の人工衛星群210において監視コマンドが共有される。
監視軌道面の各人工衛星220は、監視コマンドにしたがって飛翔体101の監視を実行する。
【0042】
図4に基づいて、飛翔体101を監視した人工衛星220から地上システム110へ飛翔体情報を伝送する手順(C1)から(C4)を説明する。
【0043】
(C1)監視軌道面の少なくともいずれかの人工衛星220において、赤外監視装置221は、飛翔体101を監視し、飛翔体情報を生成する。
飛翔体情報は、飛翔体101の飛翔時刻と飛翔体101の飛翔地点の座標値とを示す。
飛翔体101を監視した各人工衛星220を「監視衛星」と称する。
【0044】
(C2)監視衛星は、監視軌道面において前後の人工衛星220に飛翔体情報を送信する。送信先の各人工衛星220は、飛翔体情報を受信し、前後の人工衛星220に飛翔体情報を送信する。これにより、監視軌道面の円環状通信網において飛翔体情報が共有される。
【0045】
地上システム110の上空を通る軌道面を「経由軌道面C」と称する。
監視軌道面において経由軌道面Cに対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続元衛星C」と称する。
監視軌道面において接続元衛星Cが経由軌道面Cに対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに経由軌道面Cにおいて監視軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続先衛星C」と称する。
【0046】
(C3)接続元衛星Cは、監視軌道面において経由軌道面Cに対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに、経由軌道面Cの接続先衛星Cに飛翔体情報を送信する。接続先衛星Cは、飛翔体情報を受信する。これにより、監視軌道面の円環状通信網と経由軌道面Cの円環状通信網が接続される。
【0047】
(C4)接続先衛星Cは、経由軌道面Cにおいて前後の人工衛星220に飛翔体情報を送信する。送信先の各人工衛星220は、飛翔体情報を受信し、前後の人工衛星220に飛翔体情報を送信する。これにより、経由軌道面Cの人工衛星群210において飛翔体情報が共有される。
【0048】
経由軌道面Cにおいて地上システム110の上空を飛翔する人工衛星220を「対地衛星C」と称する。
【0049】
(C5)対地衛星Cは、地上システム110に飛翔体情報を送信する。衛星通信装置111は、飛翔体情報を受信する。
【0050】
図4に基づいて、地上システム110から飛翔体101を監視させる人工衛星220へ追跡コマンドを伝送し、地上システム110から飛翔体101の対処を行わせる対処アセット120へ対処コマンドを伝送する手順(D0)から(D4)を説明する。
【0051】
(D0)サーバ装置112は、飛翔体情報と飛翔経路モデル119とに基づいて、着地予測時刻と着地予測地点の座標値と飛翔予測経路とを導出する。
飛翔予測経路は、着地予測時刻までの各時刻における飛翔予測地点の座標値で示される。
【0052】
着地予測時刻に着地予測地点の上空を通る軌道面を「追跡軌道面」と称する。
サーバ装置112は、追跡軌道面を選択する。
【0053】
サーバ装置112は、追跡軌道面の各人工衛星220に対する追跡コマンドを生成する。
具体的には、追跡コマンドは、各時刻に飛翔地点を指向して飛翔体101を監視することを指令するためのコマンドである。追跡コマンドは、飛翔予測経路を示す。
【0054】
サーバ装置112は、対処アセット120に対する対処コマンドを生成する。
具体的には、対処コマンドは、飛翔体101の対処を指令するためのコマンドである。対処コマンドは飛翔体情報を示す。
【0055】
追跡コマンドおよび対処コマンドの送信準備が完了した時刻を「準備完了時刻D」と称する。
準備完了時刻Dに地上システム110の上空を通る軌道面を「経由軌道面D」と称する。
サーバ装置112は、経由軌道面Dを選択する。
【0056】
経由軌道面Dにおいて地上システム110の上空を飛翔する人工衛星220を「対地衛星D」と称する。
【0057】
(D1)衛星通信装置111は、経由軌道面Dの対地衛星Dに追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。対地衛星Dは、追跡コマンドおよび対処コマンドを受信する。
【0058】
(D2)対地衛星Dは、経由軌道面Dにおいて前後の人工衛星220に追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。送信先の各人工衛星220は、追跡コマンドおよび対処コマンドを受信し、前後の人工衛星220に追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。これにより、経由軌道面Dの人工衛星群210において追跡コマンドおよび対処コマンドが共有される。
【0059】
経由軌道面Dにおいて追跡軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続元衛星D」と称する。
経由軌道面Dにおいて接続元衛星Dが追跡軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに追跡軌道面において経由軌道面Dに対する軌道面間通信範囲内を飛翔する人工衛星220を「接続先衛星D」と称する。
【0060】
(D3)接続元衛星Dは、経由軌道面Dにおいて追跡軌道面に対する軌道面間通信範囲内を飛翔するときに、追跡軌道面の接続先衛星Dに追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。接続先衛星Dは、追跡コマンドおよび対処コマンドを受信する。これにより、経由軌道面Dの円環状通信網と追跡軌道面の円環状通信網が接続される。
【0061】
(D4)接続先衛星Dは、追跡軌道面において前後の人工衛星220に追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。送信先の各人工衛星220は、追跡コマンドおよび対処コマンドを受信し、前後の人工衛星220に追跡コマンドおよび対処コマンドを送信する。これにより、追跡軌道面の人工衛星群210において追跡コマンドおよび対処コマンドが共有される。
追跡軌道面の各人工衛星220は、追跡コマンドにしたがって飛翔体101の監視を実行する。
追跡軌道面において少なくともいずれかの人工衛星220は、少なくともいずれかの対処アセット120に対処コマンドを送信する。
各対処アセット120は、対処コマンドを受信し、対処コマンドにしたがって飛翔体101の対処を行う。
【0062】
***実施の形態1の特徴***
図5に基づいて、実施の形態1の特徴(1)を説明する。
飛翔体追跡システム(100)は、衛星コンステレーション(200)と地上システム(110)とにより構成され、飛翔体(101)の発射探知情報を地上システムに伝送する。
衛星コンステレーションにおいて、複数の人工衛星(220)のそれぞれは、傾斜軌道を飛翔する。複数の人工衛星のそれぞれは、赤外監視装置(221)と、第一の通信装置(222)と、第二の通信装置(224)と、を具備する。第一の通信装置は、同一軌道面の前後の人工衛星と通信する。第二の通信装置は、地上システムと通信する。複数の人工衛星は、同一軌道面の前後の人工衛星と円環状通信網を形成する。
衛星コンステレーションは、法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散した複数の軌道面を具備する。
人工衛星は、第三の通信装置(223)を具備する。第三の通信装置は、人工衛星が軌道の最接近地点の近傍を通過する際に異なる軌道の人工衛星と通信する。最接近地点は、異なる軌道面との交線上に2点形成される。
(A1,A2)第一の軌道面(監視軌道面)で飛翔体の発射を探知した人工衛星は、第一の円環状通信網と情報を共有する。第一の円環状通信網は、飛翔体の発射を探知した人工衛星と、同一軌道面の前後の人工衛星と、により形成される。
(A3~A5)地上システムの上空を通る第二の軌道面(経由軌道面)を飛翔する人工衛星は、第二の円環状通信網で情報を共有し、地上システムと通信する。第二の円環状通信網は、第二の軌道面に形成される。
第一の軌道面の人工衛星と第二の軌道面の人工衛星は、それぞれの軌道の最接近地点の近傍を通過する際に、衛星間で通信することにより、第一の円環状通信網と第二の円環状通信網を接続する。そして、第一の軌道面の人工衛星と第二の軌道面の人工衛星は、飛翔体の発射探知情報を第一の円環状通信網と第二の円環状通信網を経由させて地上システムに伝送する。
【0063】
図6図8に基づいて、実施の形態1の特徴(2)を説明する。
地上システムは、サーバ(112)を具備する。
サーバは、典型的な複数の飛翔体のそれぞれの飛翔経路モデルを生成して格納する。
飛翔経路モデルは、飛翔時間と、発射場の位置座標と、着地予測地点の位置座標と、飛翔方向と、時系列飛翔距離と、飛翔高度プロファイルと、から構成される。飛翔時間は、発射場から着地予測地点までの時間である。時系列飛翔距離は、飛翔体の発射から着地までの距離の時系列である。飛翔高度プロファイルは、飛翔体の発射から着地までの高度の時系列である。
地上システムは、飛翔体の発射時刻T0と発射地点の位置座標を発射探知情報として受信する。そして、地上システムは、飛翔経路モデルの中の着地予測地点Nの位置座標(xn、yn、zn)に飛翔体が到達する時刻Tn(着地予測時刻)を導出する。
図6は、発射地点が含まれる発射領域と着地予測地点が含まれる着地領域の関係を示す。この関係は、飛翔経路モデル119によって示される。
図7は、弾道飛行する飛翔体の飛翔距離と飛翔高度の関係を示す。この関係は、飛翔経路モデル119によって示される。
図8は、間欠的噴射を行う飛翔体の飛翔距離と飛翔高度の関係を示す。この関係は、飛翔経路モデル119によって示される。
【0064】
図9に基づいて、実施の形態1の特徴(3)を説明する。
飛翔体追跡システムは、衛星コンステレーションと地上システムにより構成される。
衛星コンステレーションにおいて、複数の人工衛星のそれぞれは、傾斜軌道を飛翔する。複数の人工衛星のそれぞれは、赤外監視装置と、第一の通信装置と、第二の通信装置と、を具備する。複数の人工衛星は、同一軌道面の前後の人工衛星と円環状通信網を形成する。
衛星コンステレーションは、法線ベクトルのアジマス成分が経度方向に分散した複数の軌道面を具備する。
(B0)まず、地上システムは、飛翔体の発射時刻T0と発射地点の位置座標を飛翔体探知情報として受信する。
地上システムは、飛翔体の着地予測地点Nの位置座標(xn、yn、zn)に飛翔体が到達する時刻Tnを導出する。
地上システムは、時刻Tnにおいて位置座標(xn、yn、zn)の上空を通る第四の軌道面(監視軌道面)を選択する。
次に、地上システムは、発射地点の位置座標の上空を指向することを指令する追跡監視コマンドを生成する。
(B1,B2)地上システムは、コマンドの送信準備を完了した時刻T1において地上システムの上空を通る第三の軌道面(経由軌道面)を飛翔する人工衛星に対して、第四の軌道面の人工衛星に司令する追跡監視コマンドを送信する。
そして、地上システムは、第三の軌道面が形成する第三の円環状通信網と情報を共有する。
(B3)第三の軌道面の人工衛星と第四の軌道面の人工衛星は、それぞれの軌道の最接近地点の近傍を通過する際に、衛星間で通信することにより、第三の円環状通信網と第四の円環状通信網を接続する。最接近地点は、軌道面の交線上に2点形成される。
(B4)第四の軌道面の人工衛星に司令される追跡監視コマンドは、第三の円環状通信網と第四の円環状通信網を経由して第四の軌道面の衛星群に伝送される。
【0065】
飛翔体の発射探知情報が自衛星で取得されてもよいし、飛翔体の発射探知情報をトリガとして飛翔体追跡システムにより飛翔体が追跡されてもよい。自衛星が発射探知を行う場合、地表面を指向する赤外監視装置が具備され、飛翔体の発射時にプルームと呼ばれる高温噴霧が検知されればよい。ただし、中緯度帯から発射される飛翔体の発射を網羅的に探知するためには、必要な衛星数が増加する。
発射探知では、高温噴霧が広域に拡散するため、静止衛星でも赤外監視が可能である。そのため、飛翔体の発射探知情報を静止衛星から取得して追跡のトリガとすることが合理的である。静止衛星は静止軌道を飛翔する人工衛星である。
なお、時刻Tnにおいて位置座標(xn、yn、zn)の上空を通る第四の軌道面は、時刻T1において(xn、yn、zn)異なる経度帯を通ることに留意する必要がある。
傾斜軌道の軌道面は、地球の自転とは同期せずに緩やかに経度方向に回転する。そのため、未来の時刻Tnにおいて着地予測地点の上空を通る第四の軌道面は、時刻T1においては地球上の着地予測位置座標(xn、yn、zn)よりも東側を通ることになる。しかし、この軌道面で飛翔体を待ち受けながら監視することにより、飛翔体が飛来するまでの経過を的確に監視することが可能となる。そのため、着地予測時刻前には、最接近した状態で高精度な監視ができる。
【0066】
図10に基づいて、実施の形態1の特徴(4)を説明する。
(C1,C2)第四の軌道面の衛星群は、時刻T2に赤外監視装置で取得された飛翔体情報を第四の円環状通信網において共有する。
(C3~C5)第五の軌道面(経由軌道面)は、時刻T2以後に地上システムの上空を通過する。
第四の軌道面の人工衛星と第五の軌道面の人工衛星は、それぞれの軌道の最接近地点の近傍を通過する際に、衛星間で通信することにより、第四の円環状通信網と第五の円環状通信網を接続する。最接近地点は、軌道面の交線上に2点形成される。
第四の軌道面の人工衛星と第五の軌道面の人工衛星は、地上システムに対して、第四の円環状通信網と第五の円環状通信網を経由させて飛翔体情報を送信する。
【0067】
実施の形態1の特徴(5)を説明する。
地上システムは、時刻T2以降に第四の軌道面の衛星群により取得された飛翔体情報に基づき、飛翔体の飛翔予測経路の更新情報を導出する。
【0068】
図11に基づいて、実施の形態1の特徴(6)を説明する。
(D0)地上システムは、第四の軌道面(追跡軌道面)の人工衛星に対する追跡監視コマンドを生成する。この追跡監視コマンドは、時刻T3における飛翔体の予測飛翔位置座標を指向することを指令する。
(D1,D2)地上システムは、コマンドの送信準備が完了した時刻T4において地上システムの上空を通過する第六の軌道面(経由軌道面)を飛翔する人工衛星に対して、第四の軌道面の人工衛星に司令する追跡監視コマンドを送信する。そして、地上システムは、第六の軌道面が形成する第六の円環状通信網と情報を共有する。
(D3)第六の軌道面の人工衛星と第四の軌道面の人工衛星は、それぞれの軌道の最接近地点の近傍を通過する際に、衛星間で通信することにより、第六の円環状通信網と第四の円環状通信網を接続する。最接近地点は、軌道面の交線上に2点形成される。
(D4)第六の軌道面の人工衛星と第四の軌道面の人工衛星は、第四の軌道面の人工衛星に司令する追跡監視コマンドを第六の円環状通信網と第四の円環状通信網を経由させて第四の軌道面の衛星群に伝送する。
【0069】
実施の形態1の特徴(7)を説明する。
飛翔体追跡方法が繰り返された後に、地上システムは、着地予測情報を更新し、着地予測地点N2に対する着地予測時刻Tn2と位置座標(xn2、yn2、zn2)を導出する。
【0070】
実施の形態1の特徴(8)を説明する。
地上システムは、対処アセット(120)に対して、着地予測情報の更新値を含む飛翔体情報を生成する。
送信準備を完了した時刻T5において、地上システムは、地上システムの上空を通過する第七の軌道面(経由軌道面)を飛翔する人工衛星に対して、飛翔体情報を送信する。そして、地上システムは、第七の軌道面に形成される第七の円環状通信網と情報を共有する。
第八の軌道面(追跡軌道面)は、時刻Tn2において着地予測地点N2の位置座標(xn2、yn2、zn2)の上空を通過する。
第七の軌道面の人工衛星と第八の軌道面の人工衛星は、それぞれの軌道の最接近地点の近傍を通過する際に、衛星間で通信することにより、第七の円環状通信網と第八の円環状通信網を接続する。最接近地点は、軌道面の交線上に2点形成される。
そして、第七の軌道面の人工衛星と第八の軌道面の人工衛星は、対処アセットに飛翔体情報を送信する。
【0071】
実施の形態1の特徴(9)を説明する。
衛星コンステレーションは、12軌道面以上で構成される。
衛星コンステレーションは、軌道面当たり15機以上の人工衛星を具備する。
【0072】
実施の形態1の特徴(10)を説明する。
赤外監視装置は、地球周縁を指向する。
【0073】
***実施の形態1のまとめ***
低軌道衛星コンステレーションによって飛翔体に対する追跡監視を行うため、発射探知情報と飛翔経路モデルを用いて、着地予測時刻が導出される。飛翔経路モデルは、サーバに予め格納される。そして、着地予測時刻において、着地予測位置座標の上空を通過する軌道面から、飛翔体に対するリム監視が行われる。その後、空中三角測量によって飛翔体の位置座標が導出され、飛翔体情報が対処アセットに送信される。また、2つの軌道面での情報共有のために、2つの軌道面の交線上に形成される2つの交点、ないし、最接近点の近傍、で衛星間通信が実施される。一方の軌道面は、地上システムの上空を通る軌道面である。他方の軌道面は、着地予測時刻において着地予測位置座標の上空を通る軌道面である。これにより、迅速かつ容易に軌道間情報の授受が実現される。
【0074】
***実施の形態1の効果***
地球の自転と軌道面の回転が同期せず時々刻々と上空の人工衛星の飛翔位置が変化する中で、監視と通信を統合する衛星コンステレーションにより、確実かつ迅速に飛翔体情報を伝送できる。
飛翔経路モデルを利用して着地時の予測時刻および位置座標を導出し、将来上空を通る軌道面で飛翔体を待ち受けることで、リム監視による位置座標の計測が可能になり、対処アセットへの飛翔体情報の迅速な伝送が可能になる。
傾斜軌道の複数機からの立体視により、飛翔位置座標の導出の精度が向上する。
円環状通信網と交点近傍通信により、飛翔体情報を迅速かつ容易に伝送できる。
【0075】
***実施の形態1の補足***
***背景の補足****
飛翔体が弾道飛行をすることを前提とした飛翔体対処システムが存在する。この飛翔体対処システムでは、静止衛星に搭載された赤外観測装置によって、発射時の噴霧(プルーム)が探知される。そして、飛翔初期の段階の移動情報に基づいて着地予測がなされ、対処システムによる対処がなされる。
発射時の噴霧によって極めて高温な気体が広域に広がる。そのため、静止軌道からの監視でも探知が可能であった。
しかしながら、飛翔の途中で間欠的に噴射して飛行経路を変更する飛翔体が登場して新しい脅威となっている。噴射を止めた飛翔体の追跡には、温度が上昇した飛翔体本体の温度を検知するために、高分解能かつ高感度の赤外監視が必要となる。そのため、従来の静止衛星による監視では、新たな飛翔体に対応できない。
そこで、LEO衛星群の衛星コンステレーションを使って静止軌道からの距離よりもはるかに近い距離から飛翔体を監視するシステムの研究が始まっている。そして、LEO衛星コンステレーションによって常時監視を行い、飛翔体の発射を探知後に即座に対処アセットに情報を伝達する、という仕組みが待望されている。
【0076】
***課題の補足***
<低軌道衛星コンステレーションの課題>
LEO衛星による常時監視及び通信回線維持のためには、膨大な数の衛星が必要となる。また、静止衛星は地球固定座標系に対してほぼ固定して見えるが、LEO衛星は時々刻々と飛翔位置が移動する。そのため、赤外監視衛星と通信衛星群との構成及びデータ伝送方法が課題となる。赤外監視衛星は、赤外監視装置を具備した監視衛星である。
【0077】
<メッシュ通信網の課題>
図12は、同一軌道面における前後衛星の通信の様子を示している。
図13は、隣接軌道間における左右衛星の通信の様子を示している。
図14は、南北端での隣接軌道間における人工衛星の左右の入れ替えを示している。
近年、低軌道衛星コンステレーションの構想が登場している。この構想では、同一軌道面の前後の人工衛星が互いに通信することによって円環状通信網が形成され、さらに隣接軌道の左右の人工衛星が互いに通信することによってメッシュ状通信網が形成される。ただし、軌道面の南北端において、隣接軌道の左右が入れ替わる。そのため、隣接軌道の左右の人工衛星同士の通信では、毎周2回以上の通信途絶が発生し、その都度、回線の再接続が必要となり、運用が煩雑になる。
また、メッシュ通信網を経由する飛翔体情報の伝送方法では、情報授受が行われる経路上の人工衛星の選択と、情報授受が行われる時刻の設定と、最短通信ルートの探索が必要となる。そのため、運用が複雑となる。
【0078】
<低軌道衛星の課題>
静止衛星の軌道周期は地球自転と同期する。そのため、特定の経度に設置された地上システムは静止衛星と常時通信できる。一方、低軌道衛星の軌道周期は地球自転と同期せず、特定の経度に設置された地上設備の上空を個別の低軌道衛星は短時間で通り過ぎる。そのため、常時通信できる環境を整備するには、多数機の連携が必要になる。
【0079】
<太陽非同期軌道の課題>
太陽同期衛星の軌道面では、地球に対する軌道面の公転周期が太陽に対する地球の公転周期と同期している。そのため、太陽同期衛星の軌道面では、法線ベクトルが地球に同期して地球を1年間に1周回する。そして、太陽同期衛星の軌道面に対する太陽光の入射角度が、年間を通じてほぼ一定の角度を維持する。LST12:00の太陽同期軌道を周回する人工衛星は、世界中のどの国に設置された地上システムに対しても、正午12:00に上空を通過することになる。LSTはLocal Sun Timeの略称である。
一方、太陽同期しない軌道(太陽非同期軌道)では、軌道面に対する太陽入射角が時々刻々と変化する。そのため、特定の位置に設置された地上システムの上空を人工衛星が飛翔する時刻が変化する。
【0080】
<傾斜軌道の課題>
傾斜軌道衛星の軌道面の回転は、地球の自転と太陽に対する地球の公転とのいずれとも同期していない。そのため、特定の緯度経度に設置された地上システムから傾斜軌道衛星の軌道面をみると、軌道面に対する法線ベクトルの経度成分が相対的に移動する。そのため、地上システムの上空を傾斜軌道衛星が通過する時間帯が限定される。さらに、軌道面が地上システムの上空を通過する位置に軌道面があったとしても、人工衛星が地上システムの上空を飛翔しているとは限らない。また、軌道面が地上システムの上空を通過し、人工衛星が地上システムの上空を飛翔する時間帯があっても、その時間帯は変化する。
【0081】
***方策の補足***
<飛翔体の追跡>
実施の形態1は、緊急性を要する飛翔体情報の伝送方法を開示する。その方法では、傾斜軌道コンステレーションにおいて、軌道面内の円環状通信網と、最接近地点の近傍の通過時の衛星間通信と、が利用される。この衛星間通信は、軌道面同士の交線上で行われる。つまり、迅速かつ簡便な運用方法により、異なる軌道間での飛翔体情報の授受が準リアルタイムで実現される。
準リアルタイムでは、情報伝送に資する時間遅れ及び人工衛星が最速タイミングで情報を授受するまでの待ち時間などが考慮される。
【0082】
<発射探知情報の集約>
飛翔体の発射では高温化した噴霧が広域に拡散するので、飛翔体の発射探知のために静止衛星で得られた探知情報が入手されてもよい。また、低軌道衛星コンステレーションにおいて、地表面を指向する赤外監視装置が具備され、発射探知によって得られた情報が入手されてもよい。
【0083】
<地上システムとの常時通信環境>
特定の緯度経度に設置された地上システムに発射探知情報を伝送するため、傾斜軌道衛星コンステレーションでは、15機以上の人工衛星が同一軌道面を飛翔し、地上システムに対する情報伝送が準リアルタイムで行われる。例えば、軌道高度が1000キロメートル程度であれば、人工衛星は100分程度で地球を1周回する。そして、軌道面が地上システムの上空を通過する場合には、先行の人工衛星が地上システムの上空を数分間飛翔した後に後続の人工衛星が飛来する。つまり、同一軌道面の人工衛星が地上システムの通信視野範囲を常に飛翔する。同一軌道面内で円環状通信網が形成されていれば、地上システムと通信している人工衛星が、同一軌道面の人工衛星を代表して、同一軌道面の他の人工衛星からの情報を地上システムと送受信できる。
さらに、コンステレーションは、法線ベクトルの経度方向成分が分散した12軌道面以上の軌道面を具備する。12軌道面において、法線ベクトルの経度方向成分の離角は30度であり、その角度は地球の自転の2時間に相当する。隣接する軌道面のそれぞれで15機以上の人工衛星が約100分で1周回しながら順番に地上システムと通信するときの地球自転効果により、東側の隣接軌道面の人工衛星との通信視野が確保される。そのため、12軌道面以上の軌道面のそれぞれに15機以上の人工衛星が飛翔していれば、特定の緯度経度に設置された地上システムとの常時通信が可能となる。
地上システムの緯度、人工衛星の高度、人工衛星の軌道傾斜角、および通信量に依存して、必要な軌道面数と同一軌道面の衛星数が増減することは言うまでもない。
例えば、地上システムの緯度よりも軌道傾斜角が小さい場合、軌道面の南北端が地上システムの上空に届かない。そのため、通信視野の変更で対処する必要がある。また、必要な軌道面数および必要な衛星数が増加する。
【0084】
<発射探知情報の地上システムへの伝送>
傾斜軌道衛星コンステレーションの任意の人工衛星が飛翔体の発射を探知し、特定の緯度経度の地上システムに飛翔体の発射情報を伝送するためには、発射を探知した人工衛星が飛翔する軌道面(1)から、地上システムの上空を通過する軌道面(2)へ飛翔体情報を伝送する必要がある。実施の形態1は、軌道面(1)と軌道面(2)の交線上の同一軌道高度に2点の交点があることに着目する。そして、交点の近傍を通過する人工衛星同士が近傍通信を行うことにより、軌道面間で飛翔体情報が伝送される。
飛翔体の発射を探知した人工衛星からの情報は、軌道面(1)の円環状通信網を経由して、軌道面(1)で軌道面(2)との交点の近傍を通過する人工衛星に送信される。そして、交点で軌道面(2)の人工衛星によって受信された飛翔体情報は、軌道面(2)の円環状通信網を経由して、地上システムに送信される。
【0085】
<飛翔体着地位置の予測>
地上システムは、飛翔体経路モデルを予め具備する。そして、飛翔体の発射情報に含まれる発射場の位置座標を起点にして、複数の着地候補地点が抽出される。着地候補地点は、着地が予想される地点(例えば主要都市)である。さらに、候補地点の位置座標を終点にして、発射時刻T0に対する着地予測時刻T1が導出される。
【0086】
<地上システムにおける処理>
地上システムは、発射探知情報として、発射時刻T0と地球固定座標系における発射点の位置座標(xt0、yt0、zt0)を入手する。
地上システムは、着地候補地点となる候補都市(A,B,C,・・・,N)の位置座標を、サーバに格納されたデータベースから抽出する。
地上システムは、飛翔経路モデルを使って、候補都市Aへの到達予測時刻Ta1を導出する。
地上システムは、候補都市Aの位置座標(xa、ya、za)を時刻Ta1に通過する軌道面[1]を選択する。
同様に、地上システムは、候補都市Bの位置座標(xb、yb、zb)を時刻Tb1に通過する軌道面[2]を選択し、候補都市Cの位置座標(xc、yc、zc)を時刻Tc1に通過する軌道面[3]を選択する。また、地上システムは、候補都市Nの位置座標(xn、yn、zn)を時刻Tn1に通過する軌道面[N]を選択する。
軌道面[1]から軌道面[N]において、同一の軌道面が重複してもよい
【0087】
<リム監視による深宇宙背景の監視>
飛翔体の発射時の噴霧では高温の大気が拡散するので、飛翔体の発射時の監視は容易にできる。しかし、噴射が止まった後のポストブーストフェーズでは、監視衛星から見た飛翔体本体の立体角が小さく、飛翔体本体の温度上昇が噴霧ほど顕著ではない。そのため、背景に陸域情報が混在すると飛翔体の識別が不能になる、という懸念がある。そこで、地球周縁を指向するリム観測が行われる。リム観測と呼ばれる監視方法では、深宇宙を背景にして、温度が上昇する飛翔体本体が監視される。これにより、飛翔体がノイズに埋もれないため、飛翔体を監視することが可能となる。
【0088】
<着地予測位置に対する追跡司令>
軌道面[1]から軌道面[N]までの人工衛星に対して、発射が探知された位置座標(xt0、yt0、zt0)の上空を指向するリム監視の司令情報が送信される。
送信時点において地上システムの上空を通過する軌道面を軌道面[0]と称する。軌道面[0]とそれぞれ異なる軌道面[1]から軌道面[N]までの軌道面間において、情報授受は、軌道面同士の交点の付近を通過する人工衛星間の近傍通信によって実施される。
【0089】
<軌道面毎のリム監視>
軌道面[1]から軌道面[N]を飛翔する人工衛星群から位置座標(xt0、yt0、zt0)を指向してリム監視が実施される。
【0090】
<時間経過に伴う監視方向の更新>
地上システムにおいて、時間経過に伴うT1における飛翔体の推定の位置座標(t1、xt1、yt1、zt1)が、飛翔経路モデルを使って導出される。
同様に、位置座標(tn、xtn、ytn、ztn)が飛翔経路モデルを使って導出される。そして、軌道面[1]から軌道面[N]を飛翔する人工衛星群から各時刻の位置座標を指向してリム監視が実施される。
【0091】
<飛翔経路予測と更新>
地上システムにおいて、複数の監視衛星によって高温対象を探知して得られた飛翔体情報が解析され、時系列的な位置情報の変化が分析される。これにより、飛翔体の追跡ができ、飛翔経路の予測が可能となる。
飛翔体が飛翔の途中で間欠的に再噴射をして進行方向を変更しても、時系列情報を継続して取得することにより、飛翔体への対処が可能となる。
【0092】
<追跡情報の共有>
輝点を検出した人工衛星は、円環状通信網を使って同一軌道面の人工衛星と飛翔体情報を共有する。
別の軌道面との交点の近傍を通過する人工衛星は、別の軌道面の人工衛星に飛翔体情報を送信する。
別の軌道面において、円環状通信網を使って別の軌道面の人工衛星間で飛翔体情報が共有される。
【0093】
<飛翔体位置座標の導出>
複数の人工衛星が、検知した輝点の視線ベクトルと衛星の位置座標を使って、空中三角測量の原理により、飛翔体の実績の位置座標を導出する。
【0094】
<着地予測情報の更新>
実績の位置座標に基づいて着地予測情報を更新すれば、候補都市の追加および実績の位置座標の更新を繰り返して最終的な着地予測都市を判断できる。
【0095】
<対処アセットに対する飛翔体情報の送信>
対処アセットに対して飛翔体情報が送信される。
空に配備された航空機、海に配備された艦船、陸に配備された車両または地上設置型設備など、多様な対処アセットが存在する。個別アセットに対して直接に情報伝送する手段も存在する。但し、安全保障専用ではないシステムが衛星情報伝送システムとして利用される場合、セキュリティ上の制約などの理由により、個別アセットの位置情報を開示できないことがある。その場合、対処アセットへの指令を送達する対処地上センターに飛翔体情報を集約し、対処地上センターから対処アセットへの指令を実施することが合理的である。
米国では、Link16と呼ばれる専用回線を使って対処アセットとの通信が行われる場合がある。また、艦船のような移動体が対処地上センターの役割を担う場合がある。
【0096】
***効果の補足***
<軌道面交点の近傍通信>
隣接軌道間の通信では、赤道上空などで遠距離の通信が必要となる。そのため、駆動機構を有する大口径アンテナが通信装置として必要になる。光通信の場合には、通信回線を確立するために高精度な光軸合わせが必要になる。
一方、近傍通信は、無指向性アンテナまたは固定アンテナによって実現できる。そのため、システムの低コスト化がされる。また、通信回線の確立のための煩雑な運用が不要になる。
法線ベクトルが異なる2軌道には、必ず2つの交点が存在する。この特徴を利用すると、軌道を跨る通信が1回で済む。これにより、隣接軌道間の通信を複数回繰り返す必要がなくなり、運用が容易になる。
図15は、1つの軌道面と他の全ての軌道面の間の通信の様子を示している。
図16は、衛星コンステレーションから地上システムへの通信の流れを示している。
【0097】
<傾斜軌道からのリム監視>
地球周縁を指向する監視はリム監視と呼ばれる。リム監視は宇宙を背景にして飛翔体を監視できる。そのため、噴射の終了後に温度が上昇した飛翔体本体を赤外監視装置により誤差に埋もれることなく監視できる。
赤道上空軌道では、地球の自転速度と衛星の周回速度が異なっていても、数珠つなぎに隊列飛行する多数の人工衛星により、中緯度帯のリム監視を常時行える。
赤道上空軌道の衛星コンステレーションでは、1軌道面の人工衛星群だけで、中緯度帯をリム監視できる。しかし、複数の人工衛星で立体視をする際に立体角が限定される。そのため、視線ベクトルの奥行方向(即ち緯度方向)において、飛翔体の位置座標の導出精度が悪い。
軌道傾斜角が20度に変化すると、リム監視される緯度帯範囲が変動する。しかし、個別衛星によってリム監視される領域はドーナツ状の領域なので、緯度方向のみならず経度方向にも視線ベクトル成分をもって中緯度帯を監視できる。
図17は、赤道上空軌道の人工衛星の視野範囲を示している。
図18は、(1)直下視の発射探知の様子と(2)赤道上空付近からのリム観測の様子を示している。
実施の形態1では、赤道上空軌道の衛星コンステレーションの軌道面が軌道傾斜角を有する。
図19は、傾斜軌道の人工衛星の視野範囲を示している。
図20は、(1)直下視の発射探知の様子と(2)赤道上空付近と(3)中緯度帯と(4)軌道面の北端付近とのそれぞれからのリム観測の様子を示している。
これにより、飛翔体が複数の人工衛星から監視される場合の視線ベクトルの立体角が広くなる。そのため、飛翔体の位置座標を計測する際の空中三角測量の精度が向上する。
図21および図22は、中緯度帯において立体角が確保される様子を示している。
例えば、地球固定座標系WGS84において人工衛星の飛翔位置が既知であれば、WGS84を使って飛翔体の飛翔位置の位置座標を導出することが可能となる。WGS84は、GPSおよび準天頂測位衛星システムで採用される座標系である。
衛星数が軌道面当たり15機以上であり、軌道面数が12以上であれば、固有の飛翔体を同時に追跡できる人工衛星の数が十分であり、対処の成功確率が高くなる。また、同時に追跡することが可能な飛翔体の数が増える。
軌道傾斜角の効果により、リム監視による監視可能な緯度帯が広がる。そのため、飛翔体の発射点として監視することが可能な範囲を広げることができる。
【0098】
<着地予測位置の軌道面からのリム監視>
第四の軌道面は、着地予測時刻Tnに位置座標(xn、yn、zn)の上空を通過し、時刻T1に位置座標(xn、yn、zn)とは異なる経度帯を通過する。
傾斜軌道の軌道面は、地球の自転とは同期せずに、緩やかに経度方向に回転する。そのため、第四の軌道面は、未来の時刻Tnに着地予測地点の上空を通過し、時刻T1に地球上の着地予測位置座標(xn、yn、zn)よりも東側を通過する。この軌道面で飛翔体を待ち受けながら監視を行うことにより、飛翔体が飛来するまでの経過を的確に監視することが可能となる。そして、着地予測時刻前に、最接近した状態での高精度な監視ができる。
西から東に飛翔する飛翔体を監視するために、傾斜軌道を南西から北東に飛翔する人工衛星群から監視を行うと、視線ベクトルの立体角が分散した複数の監視情報が得られる。これにより、飛翔位置座標を精度よく導出できる。また、飛翔体が着地予測位置に接近してくるので、赤外監視装置による監視で飛翔体情報として得られる輝度が高くなり、位置精度の向上をできる。
複数の着地予測地点を予め想定して赤外監視をした場合、飛翔体情報が取得されない軌道面を着地予測地点から除外できる。そのため、時間経過に伴って飛翔予測経路を絞り込むことができる。
【0099】
実施の形態1は、好ましい形態の例示であり、本開示の技術的範囲を制限することを意図するものではない。実施の形態1は、部分的に実施してもよいし、他の形態と組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0100】
100 飛翔体追跡システム、101 飛翔体、110 地上システム、111 衛星通信装置、112 サーバ装置、113 地上通信装置、119 飛翔経路モデル、120 対処アセット、200 衛星コンステレーション、210 人工衛星群、220 人工衛星、221 赤外監視装置、222 軌道内通信装置、223 軌道間通信装置、224 地上間通信装置、225 視線制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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図22