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特許7595787換気空気調和制御システムおよび換気空気調和制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】換気空気調和制御システムおよび換気空気調和制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20241129BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20241129BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20241129BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20241129BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241129BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241129BHJP
   F24F 110/40 20180101ALN20241129BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/64
F24F11/46
F24F7/007 B
F24F7/06 Z
F24F110:10
F24F110:40
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023562019
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2021042469
(87)【国際公開番号】W WO2023089740
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】小森 章太
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247452(JP,A)
【文献】特開2021-071243(JP,A)
【文献】特開2001-153442(JP,A)
【文献】特開2021-032478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 11/64
F24F 11/46
F24F 7/007
F24F 7/06
F24F 110/10
F24F 110/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成機器として、熱源装置が内部に設けられた建屋の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇と、前記建屋の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇と、前記建屋の内部の空気を循環させる循環用送風機と、前記建屋の内部の冷房を行う空気調和機と、のうちの少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇とを含む換気空気調和システムと、
前記建屋の内部における作業員がいる予め決められたエリアであって前記熱源装置の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサからなる温度センサシステムと、
前記換気空気調和システムの前記構成機器の稼働状態を示す機器稼働データおよび前記構成機器の位置を示す機器位置情報と、複数の前記温度センサから得られる温度データおよび複数の前記温度センサの位置を示す温度位置情報とに基づいて、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記熱源装置の発熱が前記作業エリアへ流出しないように、前記換気空気調和システムの前記構成機器を制御
少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇との動作を個別に制御して前記建屋の内部についての給気から排気までの換気流を創出する制御を行うこと、
を特徴とする換気空気調和制御システム。
【請求項2】
前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報から、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置を有すること、
を特徴とする請求項1に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項3】
前記温度データおよび前記温度位置情報を含む推論用データを取得する第2のデータ取得部と、
前記温度データおよび前記温度位置情報から、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論する学習済みモデルを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報に対応する前記制御条件を出力する推論部と、
を備える推論装置を有すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項4】
製品の製造装置が含む前記熱源装置を備え、
前記制御手段が、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とに基づいて、前記熱源装置が稼働して前記熱源装置の周囲温度が上がる前に前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項5】
前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置を有すること、
を特徴とする請求項4に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項6】
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部と、
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論する学習済みモデルを用いて、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記熱源装置の稼働データおよび位置情報とに対応する前記制御条件を出力する推論部と、
を備える推論装置を有すること、
を特徴とする請求項4または5に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項7】
前記建屋の内部の気圧を測定する内部気圧センサと、屋外の気圧を測定する外部気圧センサとを含む複数の気圧センサからなる気圧センサシステムを備え、
前記制御手段が、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、複数の前記気圧センサから得られる気圧データおよび複数の前記気圧センサの位置を示す気圧位置情報とに基づいて、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記建屋の内部を目標気圧に近づけて前記熱源装置の周囲の気圧が前記作業エリアの気圧より常に低くなるように制御を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項8】
前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記気圧データおよび前記気圧位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記気圧データおよび前記気圧位置情報とから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記建屋の内部を目標気圧に近づける前記構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置を有すること、
を特徴とする請求項7に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項9】
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記気圧データおよび前記気圧位置情報とを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部と、
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記気圧データおよび前記気圧位置情報とから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記建屋の内部を目標気圧に近づける前記構成機器の制御条件を推論する学習済みモデルを用いて、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記気圧データおよび前記気圧位置情報とに対応する前記制御条件を出力する推論部と、
を備える推論装置を有すること、
を特徴とする請求項7または8に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項10】
前記制御手段が、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記換気空気調和システムの消費電力を計測する電力計測器から得られる前記換気空気調和システムの消費電力データとに基づいて、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記換気空気調和システムの消費電力量を最小とする制御を行
前記制御手段は、前記作業エリアの温度と、予め決められた目標温度との温度差が予め決められた温度差範囲内に収まる前記換気空気調和システムの複数の稼働停止パターンの中から、前記換気空気調和システムの構成機器の消費電力量の総和が最小となる稼働停止パターンを選定すること、
を特徴とする請求項1に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項11】
前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記消費電力データとを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記消費電力データとから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記換気空気調和システムの消費電力量を最小とする前記構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える学習装置を有すること、
を特徴とする請求項10に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項12】
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記消費電力データとを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部と、
前記温度データおよび前記温度位置情報と、前記消費電力データとから、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに前記換気空気調和システムの消費電力量を最小とする前記構成機器の制御条件を推論する学習済みモデルを用いて、前記機器稼働データおよび前記機器位置情報と、前記消費電力データとに対応する前記制御条件を出力する推論部と、
を備える推論装置を有すること、
を特徴とする請求項10または11に記載の換気空気調和制御システム。
【請求項13】
前記換気空気調和システムが前記循環用送風機を備え、
前記循環用送風機が風向可変機能を有
前記制御手段は、前記温度データと前記温度位置情報とに基づいて、前記建屋内または前記作業エリアの周囲に発生している熱だまりの発生場所へ風向を向けて送風するように前記循環用送風機を制御すること、
を特徴とする請求項1から12のいずれか1つに記載の換気空気調和制御システム。
【請求項14】
熱源装置が内部に設けられた建屋の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇と、前記建屋の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇と、前記建屋の内部の空気を循環させる循環用送風機と、前記建屋の内部の冷房を行う空気調和機と、のうちの少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇とを構成機器として含む換気空気調和システムの前記構成機器の稼働状態を示す機器稼働データおよび前記構成機器の位置を示す機器位置情報と、
前記建屋の内部における作業員がいる予め決められたエリアであって前記熱源装置の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサから得られる温度データおよび複数の前記温度センサの位置を示す温度位置情報と、
を含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報から、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備え、
前記学習済みモデルを用いて推論される前記制御条件に基づいて、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記熱源装置の発熱を前記作業エリアへ流出させずに前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行
少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇との動作を個別に制御して前記建屋の内部についての給気から排気までの換気流を創出する制御を行うこと、
を特徴とする換気空気調和制御装置。
【請求項15】
熱源装置が内部に設けられた建屋の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇と、前記建屋の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇と、前記建屋の内部の空気を循環させる循環用送風機と、前記建屋の内部の冷房を行う空気調和機と、のうちの少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇とを構成機器として含む換気空気調和システムが設けられた前記建屋の内部における、作業員がいる予め決められたエリアであって前記熱源装置の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサから得られる温度データおよび複数の前記温度センサの位置を示す温度位置情報を含む推論用データを取得する第2のデータ取得部と、
前記温度データおよび前記温度位置情報から、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける前記構成機器の制御条件を推論する学習済みモデルを用いて、前記温度データおよび前記温度位置情報に対応する前記制御条件を出力する推論部と、
を備え、
前記推論部が出力した前記制御条件に基づいて、前記換気空気調和システムの前記構成機器の動作を個別に制御して前記熱源装置の発熱を前記作業エリアへ流出させずに前記作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行
少なくとも前記排気用換気扇と前記給気用換気扇との動作を個別に制御して前記建屋の内部についての給気から排気までの換気流を創出する制御を行うこと、
を特徴とする換気空気調和制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋内の換気空気調和を制御する換気空気調和制御システムおよび換気空気調和制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発熱機器のような熱源が設置された建屋の空気調和を管理する空気調和システムでは、冷房のみによる冷却、発熱機器が発生する熱の強制排気、または冷房と排気との組み合わせを用いた手法が用いられている。発熱機器が発生する熱による建屋の内部の温度上昇への対策として、冷房のみによって空気調和管理する場合よりも、排気用換気扇を用いて建屋の内部の熱を屋外へ排出するほうが、一般的に消費電力を低くできる。
【0003】
例えば、特許文献1では、排気系装置によって排気を行う際に、冷気給気系装置によって給気される冷気も過剰に排気されてしまいエネルギーロスが発生する問題について言及されている。このような問題を解決するために、特許文献1では、熱源近傍の温度を参照して排気系装置を稼働するか停止するかを制御するとともに、冷気給気系装置が稼働する環境と停止する環境とで異なる運用基準に基づき排気系装置を稼働するか停止するかを制御する空気調和システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、データセンタなどの空気調和システムの制御をより高精度に行えるようにするため、複数の温度センサより得られた温度の三次元位置情報に基づいて、温度調節された空気を送出する空気調和システムが開示されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2の技術では、予め決められた特定の場所の温度情報に基づいて、建屋内の排気系装置もしくは冷気給気系装置を一律に制御するか、あるいは空気調和機の制御を行うかのいずれかの方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6075512号公報
【文献】特開2019-2596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば工場においては、熱源と作業エリアとが建屋の内部に混在するような環境が存在する。この場合、建屋の内部の排気または給気が一律に制御されると、作業エリアに近い排気系装置により発生する気流に誘導されて作業エリアに熱源付近の高温空気が流れ込む。また、例えば熱源の近くの位置に局所排気装置が設置されていても、局所排気装置で捕集し切れなかった熱が、作業エリアに近い排気系装置が発生する気流に誘導されて作業エリアにも流れ込む。この結果、作業エリアの熱負荷が増大し、作業エリアの温度上昇または作業エリアの温度上昇を防止するための空気調和負荷が増大する、という問題があった。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、建屋の内部における熱源の排熱に起因した、作業員がいる作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる換気空気調和制御システムは、構成機器として、熱源装置が内部に設けられた建屋の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇と、建屋の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇と、建屋の内部の空気を循環させる循環用送風機と、建屋の内部の冷房を行う空気調和機と、のうちの少なくとも排気用換気扇と給気用換気扇とを含む換気空気調和システムを備える。換気空気調和制御システムは、建屋の内部における作業員がいる予め決められたエリアであって熱源装置の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサからなる温度センサシステムを備える。換気空気調和制御システムは、換気空気調和システムの構成機器の稼働状態を示す機器稼働データおよび構成機器の位置を示す機器位置情報と、複数の温度センサから得られる温度データおよび複数の温度センサの位置を示す温度位置情報とに基づいて、換気空気調和システムの構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う制御手段を備える。制御手段は、熱源装置の発熱が作業エリアへ流出しないように、換気空気調和システムの構成機器を制御し、少なくとも排気用換気扇と給気用換気扇との動作を個別に制御して建屋の内部についての給気から排気までの換気流を創出する制御を行う
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、建屋の内部における熱源の排熱に起因した、作業員がいる作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和制御システムが得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムが工場の建屋に適用された例を示す第1の模式図
図2】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムが工場の建屋に適用された例を示す第2の模式図
図3】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムが工場の建屋に適用された例を示す第3の模式図
図4図1に示す工場の建屋の模式平面図
図5】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの機能構成を示すブロック図
図6】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの換気扇の機能構成を示すブロック図
図7】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの循環用送風機の機能構成を示すブロック図
図8】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの空気調和機の機能構成を示すブロック図
図9】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの温度センサの機能構成を示すブロック図
図10】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの制御手段の換気空気調和制御装置の機能構成を示すブロック図
図11】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの制御手段を実現するハードウェア構成例を示す図
図12】実施の形態1にかかる換気空気調和制御システムの動作の手順を示すフローチャート
図13】実施の形態2にかかる換気空気調和制御システムの機能構成を示すブロック図
図14】実施の形態2にかかる換気空気調和制御システムの動作の手順を示すフローチャート
図15】実施の形態3にかかる換気空気調和制御システムの機能構成を示すブロック図
図16】実施の形態3にかかる換気空気調和制御システムの動作の手順を示すフローチャート
図17】実施の形態4にかかる換気空気調和制御システムの機能構成を示すブロック図
図18】実施の形態4にかかる換気空気調和制御システムの動作の手順を示すフローチャート
図19】実施の形態5にかかる学習装置の構成を示すブロック図
図20】実施の形態5にかかる学習装置による学習処理の処理手順を示すフローチャート
図21】実施の形態5にかかる推論装置の構成を示すブロック図
図22】実施の形態5にかかる推論装置による推論処理および換気空気調和制御装置による制御処理の処理手順を示すフローチャート
図23】実施の形態1から5にかかる処理回路のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、実施の形態にかかる換気空気調和制御システムおよび換気空気調和制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100が工場の建屋701に適用された例を示す第1の模式図である。図2は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100が工場の建屋701に適用された例を示す第2の模式図である。図3は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100が工場の建屋701に適用された例を示す第3の模式図である。図1および図2では、換気空気調和制御システム100が工場の建屋701に適用されて、建屋701の内部である室内が換気空気調和対象空間とされる場合について示している。図3では、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の制御手段400が工場の制御室702に配置されている状態を示している。
【0014】
図4は、図1に示す工場の建屋701の模式平面図である。図4では、建屋701の天井を透過して見える建屋701に配置された構成を模式的に示している。また、図4では、理解の容易のため、局所排気用換気扇230およびダクト231が建屋の床面701bの面内方向において製造装置703および熱源装置706の横の位置に記載されているが、実際には、局所排気用換気扇230およびダクト231は、図1および図2に示すように実際には製造装置703および熱源装置706の上方に配置されている。図5は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の機能構成を示すブロック図である。換気空気調和制御システム100は、建屋701の内部の換気および空気調和のうち少なくとも一方を行うシステムである。ダクト231の下端の吸気口には、熱気を集めるためのフードが設けられる。
【0015】
実施の形態1においては、図1における建屋701の幅方向をX方向とし、建屋701の奥行き方向をY方向とし、建屋701の高さ方向をZ方向として説明する。X方向とY方向とは、水平方向に平行な方向である。Z方向は、鉛直方向に平行な方向である。また、X方向においては、図1における左から右に向かう方向をX方向の+方向とし、図1における右から左に向かう方向をX方向の-方向とする。Y方向においては、図1における右上から左下に向かう方向をY方向の+方向とし、図1における左下から右上に向かう方向をY方向の-方向とする。Z方向においては、図1における下から上に向かう方向をZ方向の+方向とし、図1における上から下に向かう方向をZ方向の-方向とする。
【0016】
図2および図3に示すように、工場には、閉鎖系の空間である建屋701と、制御手段400が設置された制御室702と、が設けられている。建屋701と制御室702とは、工場内における同じ場所に設けられてもよい。すなわち、制御室702は、建屋701の内部に設けられてもよい。また、建屋701と制御室702とは、工場内における異なる場所に設けられてもよい。
【0017】
図1および図2に示すように、建屋701の内部には、製造装置703が配置されている。製造装置703は、稼働時に熱を発生する熱源装置706を含んでいる。すなわち、製造装置703が動作することにより、熱が発生する。製造装置703は、建屋701の室内を温めることを目的として配置されている装置ではなく、製品の製造を目的として設置された装置である。
【0018】
図2および図4に示すように、製造装置703から放出される排熱によって建屋701の他の領域よりも相対的に温度が上昇した高温空気705は、製造装置703の周囲に広がる。製造装置703の周囲に広がった高温空気705は、換気空気調和制御システム100の後述する排気用換気扇210または局所排気用換気扇230が稼働することにより、建屋701の外部に排気される。
【0019】
建屋701で用いられる換気空気調和制御システム100は、換気空気調和システム200と、温度センサシステム300と、制御手段400と、を備える。
【0020】
換気空気調和システム200は、建屋701の内部の換気または空気調和を行って建屋701の内部の空気環境を調整する。換気空気調和システム200は、1つ以上の排気用換気扇210と、1つ以上の給気用換気扇220と、1つ以上の局所排気用換気扇230と、1つ以上の循環用送風機240と、1つ以上の空気調和機250と、換気空気調和制御インターフェース260と、を備える。
【0021】
換気空気調和制御インターフェース260は、温度センサシステム300および制御手段400と接続されるインターフェースである。以下では、インターフェースをI/Fと略称する。例えば、以下では、換気空気調和制御インターフェース260を、換気空気調和制御I/F260と略称する。換気空気調和制御I/F260は、排気用換気扇210、給気用換気扇220、局所排気用換気扇230、循環用送風機240および空気調和機250の制御手段400による制御に用いられるI/Fである。すなわち、換気空気調和制御I/F260は、排気用換気扇210、給気用換気扇220、局所排気用換気扇230、循環用送風機240および空気調和機250と、制御手段400との間の情報通信を仲介する。
【0022】
排気用換気扇210は、建屋701の内部の換気を行う換気設備であり、建屋701の内部と建屋701の外部とを仕切る建屋701の外壁701aに設置され、建屋701の内部の空気を建屋701の外部である屋外へ排出するための排気機器である。排気用換気扇210は、一般的な排気用の換気扇に相当する機能を有する。排気用換気扇210は、換気空気調和制御I/F260を介して制御手段400と通信可能とされており、制御手段400による制御が可能とされている。
【0023】
給気用換気扇220は、建屋701の内部の換気を行う換気設備であり、建屋701の外壁701aに設置され、建屋701の屋外の空気である外気を建屋701の内部に給気するための給気機器である。給気用換気扇220は、一般的な給気用の換気扇に相当する機能を有する。給気用換気扇220は、換気空気調和制御I/F260を介して制御手段400と通信可能とされており、制御手段400による制御が可能とされている。
【0024】
局所排気用換気扇230は、建屋701の内部の換気を行う換気設備であり、建屋701の内部において製造装置703の近くの位置に設置され、建屋701の内部の空気をダクト231を介して建屋701の外部である屋外へ排出するための局所排気機器である。ダクト231は、局所排気用換気扇230が発生する気流によって建屋701の内部の空気を吸い込んで建屋701の内部の空気を屋外に流すための導風路である。なお、導風路として、ダクト231の代わりに、建屋701の内部の空気を吸い込むための排気フードが用いられてもよい。
【0025】
図6は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の換気扇10の機能構成を示すブロック図である。以下、排気用換気扇210と給気用換気扇220と局所排気用換気扇230との構成について説明する。排気用換気扇210と給気用換気扇220と局所排気用換気扇230との基本的な構成は同じであるため、ここでは排気用換気扇210と給気用換気扇220と局所排気用換気扇230を換気扇10と総称する。
【0026】
換気扇10は、換気部11と、換気通信部12と、換気記憶部13と、換気制御部14と、を備える。換気部11は、建屋701の内部の換気を行う。なお、排気用換気扇210と局所排気用換気扇230との換気部11は、建屋701の内部の空気を屋外へ排気する。給気用換気扇220の換気部11は、外気を建屋701の内部に給気する。換気通信部12は、制御手段400との間で通信を行う。換気記憶部13は、換気扇10の制御に用いられる各種の情報を記憶する。換気記憶部13は、換気扇10の機器位置情報である、換気扇10が設置された場所の位置情報を記憶する。
【0027】
換気制御部14は、換気扇10の動作を制御する。換気制御部14は、制御手段400から送信される動作指示情報を換気通信部12を介して受信し、動作指示情報に基づいて換気扇10の運転を制御する。すなわち、換気制御部14は、動作指示情報に基づいて換気扇10の稼働、停止、風量の調整といった換気扇10の動作を制御する。換気部11と換気通信部12と換気記憶部13と換気制御部14とは、互いに情報の送受信が可能である。換気通信部12と換気記憶部13と換気制御部14とは、換気扇10の内部に搭載されていてもよく、その他の装置内、例えば換気空気調和制御I/F260あるいは制御手段400の内部に取り込まれていてもよい。
【0028】
循環用送風機240は、建屋701の内部に配置され、建屋701の内部の空気を吸い込んで建屋701の内部に送風することにより建屋701の内部の空気を循環させるための送風機器である。循環用送風機240は、一般的な扇風機またはエアー搬送ファンといった送風機に相当する機能を有する。循環用送風機240は、換気空気調和制御I/F260を介して制御手段400と通信可能とされており、制御手段400による制御が可能とされている。
【0029】
図7は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の循環用送風機240の機能構成を示すブロック図である。循環用送風機240は、送風部241と、送風通信部242と、送風記憶部243と、送風制御部244と、を備える。送風部241は、建屋701の室内の空気を循環させる送風を行う。送風通信部242は、制御手段400との間で通信を行う。送風記憶部243は、循環用送風機240の制御に用いられる各種の情報を記憶する。送風記憶部243は、循環用送風機240の機器位置情報である、循環用送風機240が設置された場所の位置情報を記憶する。
【0030】
送風制御部244は、循環用送風機240の動作を制御する。送風制御部244は、制御手段400から送信される動作指示情報を送風通信部242を介して受信し、動作指示情報に基づいて循環用送風機240の運転を制御する。すなわち、送風制御部244は、動作指示情報に基づいて循環用送風機240の稼働、停止、風量の調整といった循環用送風機240の動作を制御する。送風部241と送風通信部242と送風記憶部243と送風制御部244とは、互いに情報の送受信が可能である。送風通信部242と送風記憶部243と送風制御部244とは、循環用送風機240の内部に搭載されていてもよく、その他の装置内、例えば換気空気調和制御I/F260あるいは制御手段400の内部に取り込まれていてもよい。
【0031】
空気調和機250は、建屋701の内部に配置され、建屋701の内部の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を加熱あるいは冷却して建屋701の内部に供給することで、建屋701の内部の空気を空気調和する空気調和設備である。特に、実施の形態1においては、空気調和機250は、建屋701の内部の冷房を行う。空気調和機250は、一般的な空気調和機に相当する機能を有する。空気調和機250は、一体型の空気調和機であってもよく、セパレート型の空気調和機であってもよい。
【0032】
図8は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の空気調和機250の機能構成を示すブロック図である。空気調和機250は、空気調和部251と、空気調和通信部252と、空気調和記憶部253と、空気調和制御部254と、を有する。
【0033】
空気調和部251は、一般的な空気調和機の空気調和機能を有し、建屋701の内部の空気調和を行う。空気調和部251は、空気調和機250が設置された建屋701の内部の空気と冷媒回路中を流れる冷媒との熱交換を行う熱交換器、熱交換器で熱交換された調和空気を空気調和機250から室内に送り出す送風ファン、調和空気を空気調和機250から送り出す方向を調整する風向調整部などを備えている。空気調和通信部252は、制御手段400との間で通信を行う。空気調和記憶部253は、空気調和機250の運転に用いられる各種の情報を記憶する。空気調和記憶部253は、空気調和機250の機器位置情報である、空気調和機250が設置された場所の位置情報を記憶する。
【0034】
空気調和制御部254は、空気調和機250の動作を制御する。空気調和制御部254は、制御手段400から送信される動作指示情報を空気調和通信部252を介して受信し、動作指示情報に基づいて空気調和機250の運転を制御する。すなわち、空気調和制御部254は、動作指示情報に基づいて空気調和機250の稼働、停止、風量の調整、調和空気の温度の調整といった空気調和機250の動作を制御する。空気調和部251と空気調和通信部252と空気調和記憶部253と空気調和制御部254とは、互いに情報の送受信が可能である。
【0035】
温度センサシステム300は、制御手段400が換気空気調和システム200の制御に用いる情報を収集する情報収集システムである。温度センサシステム300は、建屋701の内部の空気の温度と、屋外の空気の温度と、を測定して収集する。温度センサシステム300は、複数の温度センサ310を備える。温度センサ310は、温度センサ310が設置された場所の温度を測定して収集する環境センサである。具体的に、温度センサ310は、温度センサ310が設置された場所の周囲の空気の温度を測定して収集する。温度センサ310は、測定結果である温度センサ310が設置された場所の温度の情報を、電気信号に変換して制御手段400に温度データとして送信する。温度センサシステム300は、熱源装置706の温度を測定する熱源温度センサを含んでもよい。
【0036】
また、温度センサ310は、温度センサ310の機器位置情報である温度センサ310が設置された場所の位置情報を記憶しておき、温度センサ310が設置された場所の温度の情報と共に、温度センサ310の機器位置情報を電気信号に変換して制御手段400に送信することができる。
【0037】
温度センサ310には、設置が容易である一般的な温度センサを用いることができる。温度センサ310は、建屋701の内部と建屋701の外部とにおける複数個所に設置されている。建屋701の外部に設置された温度センサ310は、例えば給気用換気扇220の近くの位置の外気と接する場所に設置されており、外気の温度を測定する。
【0038】
建屋701の内部に設置された温度センサ310は、例えば建屋701の内部において、予め決められた作業エリアである作業員704が居る場所の近くの位置に設置されており、作業員704の周囲の空気の温度を測定する。また、建屋701の内部に設置された温度センサ310は、例えば建屋701の内部において製造装置703の近くの位置に設置されており、製造装置703の周囲の空気の温度を測定する。建屋701の内部に設置された温度センサ310は、内部温度センサといえる。内部温度センサのうち、作業エリアの温度を測定する温度センサ310は、作業エリア温度センサといえる。建屋701の外部に設置された温度センサ310は、外部温度センサといえる。
【0039】
作業エリアは、建屋701の内部における作業員がいる予め決められたエリアであって、熱源装置706の発熱によって温度の影響を受けるエリアである。作業エリアは、建屋701の内部における予め決められた温度制御対象位置と換言できる。作業エリアの近くの位置に設置された温度センサ310により測定された温度、すなわち、作業員704が居る場所の近くの位置に設置された温度センサ310により測定された温度は、作業エリアの温度といえる。
【0040】
図9は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の温度センサ310の機能構成を示すブロック図である。温度センサ310は、測定部311と、センサ通信部312と、センサ記憶部313と、センサ制御部314と、を有する。
【0041】
測定部311は、温度センサ310が設置された場所の温度を測定する。具体的に、測定部311は、温度センサ310が設置された場所の周囲の空気の温度を測定する。センサ通信部312は、制御手段400との間で通信を行う。センサ制御部314は、温度センサ310の動作を制御する。センサ記憶部313は、温度センサ310の制御に用いられる各種の情報を記憶する。センサ記憶部313は、温度センサ310の機器位置情報である、温度センサ310が設置された場所の位置情報を記憶する。
【0042】
センサ制御部314は、温度センサ310の動作を制御する。センサ制御部314は、制御手段400から送信される動作指示情報をセンサ通信部312を介して受信し、動作指示情報に基づいて温度センサ310の動作を制御する。すなわち、センサ制御部314は、動作指示情報に基づいて温度センサ310稼働、停止の動作を制御する。センサ制御部314は、測定部311における測定結果の情報を、センサ通信部312を介して、制御手段400の後述する制御装置制御部403に送信する。測定部311とセンサ通信部312とセンサ記憶部313とセンサ制御部314とは、互いに情報の送受信が可能である。
【0043】
制御手段400は、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200と温度センサシステム300とから取得したデータに基づいて、製造装置703の近くの位置の高温空気705が建屋701における作業エリアである作業員704が居る場所へ流出しないように、換気空気調和システム200の各構成機器の動作を個別に制御する。すなわち、制御手段400は、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200と温度センサシステム300とから取得したデータに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250とに対して、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う。
【0044】
図10は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の制御手段400の換気空気調和制御装置410の機能構成を示すブロック図である。
【0045】
制御手段400は、換気空気調和制御装置410と、記憶装置420と、を備える。
【0046】
換気空気調和制御装置410は、換気空気調和システム200の動作を制御して換気空気調和制御システム100による建屋701の内部の換気空気調和制御を制御する。換気空気調和制御装置410は、制御装置通信部401と、制御装置記憶部402と、制御装置制御部403と、を備える。
【0047】
制御装置通信部401は、換気空気調和制御システム100における制御手段400以外の機器との間で通信を行う。制御装置通信部401は、換気空気調和システム200の、排気用換気扇210、給気用換気扇220、局所排気用換気扇230、循環用送風機240および空気調和機250との間で、換気空気調和制御インターフェース260を介して通信を行う。また、制御装置通信部401は、温度センサシステム300の温度センサ310との間で通信を行う。
【0048】
制御装置記憶部402は、換気空気調和制御装置410の制御を含む換気空気調和制御システム100全体の制御に用いられる各種の情報を記憶する。
【0049】
制御装置制御部403は、換気空気調和制御装置410の制御を含む換気空気調和制御システム100の全体の動作を制御する。制御装置制御部403は、換気空気調和システム200の各構成機器の稼働状態を示す機器稼働データを取得して記憶する処理と、換気空気調和システム200の各構成機器の位置を示す機器位置情報を取得して記憶する処理と、温度センサシステム300の各温度センサ310において測定された温度データを取得して記憶する処理と、温度センサシステム300の各温度センサ310の位置を示す温度位置情報を取得して記憶する処理と、を制御する。
【0050】
そして、制御装置制御部403は、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200と温度センサシステム300とから取得したデータに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250とに対して、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う。
【0051】
機器稼働データは、換気空気調和システム200の各構成機器の稼働状態を示すデータである。換気空気調和システム200の各構成機器の稼働状態は、各構成機器の稼働条件と換言できる。各構成機器の稼働条件には、稼働、停止、風量といった制御条件が含まれる。換気空気調和システム200の各構成機器の制御部は、予め決められた周期で、制御装置制御部403に機器稼働データを送信する。機器稼働データは、機器によって稼働状態を表すために必要なパラメータが異なる。換気空気調和システム200の各構成機器の稼働データをまとめて、換気空気調和システム200の稼働データと称することができる。機器稼働データの詳細については後述する。
【0052】
機器位置情報は、換気空気調和システム200に含まれる機器の位置情報である。換気空気調和システム200の各構成機器の位置を示す機器位置情報は、換気空気調和システム200に含まれる機器の位置情報である。換気空気調和システム200の各構成機器の制御部は、機器稼働データと共に機器位置情報を制御装置制御部403に送信することができる。また、制御装置制御部403は、後述するデータベース430に記憶されている機器位置情報を取得することも可能である。
【0053】
温度データは、温度センサシステム300の各温度センサ310において測定された温度のデータであり、建屋701の内部に設置された温度センサ310において測定された温度のデータと、建屋701の外部に設置された温度センサ310において測定された温度のデータと、が含まれる。温度センサシステム300の各温度センサ310のセンサ制御部314は、予め決められた周期で、制御装置制御部403に温度データを送信する。
【0054】
温度位置情報は、温度センサシステム300の各温度センサ310の位置を示す位置情報であり、温度センサシステム300の温度センサ310で測定された温度の位置の情報といえる。温度センサシステム300の各温度センサ310のセンサ制御部314は、温度データと共に温度位置情報を制御装置制御部403に送信することができる。また、制御装置制御部403は、後述するデータベース430に記憶されている温度位置情報を取得することも可能である。
【0055】
また、制御装置制御部403は、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、取得した上記の情報に基づいて、製造装置703の近くの位置の高温空気705が建屋701における作業エリアである作業員704が居る場所へ流出しないように、換気空気調和システム200の各構成機器の動作を個別に制御する。すなわち、制御装置制御部403は、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、取得した上記の情報に基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250とに対して、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う。
【0056】
すなわち、制御装置制御部403は、換気空気調和システム200の動作を制御して建屋701の内部の換気空気調和を制御する換気空気調和制御システム100のシステム制御部としての機能を有するといえる。
【0057】
記憶装置420は、換気空気調和制御装置410による換気空気調和システム200の制御に用いられる各種の情報を記憶する記憶部である。記憶装置420は、データベース430を有する。
【0058】
データベース430は、制御装置制御部403が取得した、換気空気調和システム200の制御に用いられる各種の情報が記憶される。すなわち、データベース430には、制御装置制御部403が取得した、機器稼働データ、機器位置情報、温度データ、温度位置情報といった各種の情報が記憶される。また、データベース430には、換気空気調和システム200の各構成機器を個別に制御するために用いられる、複数の異なる稼働停止パターンが記憶されている。
【0059】
稼働停止パターンは、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境における換気空気調和システム200の各構成機器について、稼働、停止、風量といった動作パターンが個別に設定された制御条件である。具体的に、稼働停止パターンは、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、制御装置制御部403が、機器稼働データと、機器位置情報と、温度データと、温度位置情報とに基づいて、製造装置703の近くの位置の高温空気705が建屋701における作業エリアである作業員704が居る場所へ流出しないように、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250との各構成機器の動作を個別に制御する制御条件である。
【0060】
すなわち、稼働停止パターンは、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、制御装置制御部403が、取得した上記の情報に基づいて、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるように換気空気調和システム200の各構成機器の動作を個別に制御する制御条件である。したがって、稼働停止パターンは、機器稼働データと、機器位置情報と、温度データと、温度位置情報との組み合わせに適した、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止するための制御条件である。このとき、外気の温度が作業エリアの温度上昇を防止するにあたって十分低く、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、を稼働させることで作業エリアの温度を目標温度に到達させることができるのであれば、空気調和機250の稼働は必須ではない。すなわち、外気の温度が、建屋701の内部の空気の排気と、建屋701の内部への外気の給気とにより作業エリアの温度を目標温度に到達させることが可能な程度に低温である場合には、空気調和機250の稼働は必須ではない。
【0061】
稼働停止パターンにおいては、排気用換気扇210と給気用換気扇220と循環用送風機240については、例えば稼働、停止、風量の条件が設定される。また、稼働停止パターンにおいては、空気調和機250については、例えば稼働、停止、風量、風向、温度の条件が設定される。
【0062】
制御装置制御部403は、データベース430に記憶された稼働停止パターンを用いて、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、排気用換気扇210、給気用換気扇220、循環用送風機240、空気調和機250の稼働あるいは停止を個別に制御することができる。
【0063】
排気用換気扇210と給気用換気扇220と局所排気用換気扇230と循環用送風機240と空気調和機250との機器位置情報のデータベース430への入力方法は、ユーザが工場の施工図面などから各構成機器の機器位置情報を読み取って、読み取った機器位置情報を、換気空気調和制御装置410を介してデータベース430に記憶させる方法が挙げられる。すなわち、換気空気調和制御装置410の制御装置制御部403が、換気空気調和制御装置410に入力された機器位置情報をデータベース430に記憶させる。
【0064】
また、他の方法として、制御装置制御部403が、排気用換気扇210と給気用換気扇220と局所排気用換気扇230と循環用送風機240と空気調和機250とのそれぞれから送信される機器位置情報を受信して、受信した機器位置情報をデータベース430に記憶させる方法が挙げられる。
【0065】
なお、機器稼働データ、機器位置情報、温度データ、温度位置情報、および稼働停止パターンといった換気空気調和制御装置410による換気空気調和システム200の制御に用いられる各種の情報は、換気空気調和制御装置410の制御装置記憶部402に記憶されてもよい。
【0066】
ここで、制御手段400のハードウェア構成について説明する。図11は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の制御手段400を実現するハードウェア構成例を示す図である。換気空気調和制御装置410は、プロセッサ411、メモリ412、制御インターフェース413、センサインターフェース414、入力インターフェース415、表示部インターフェース416を備える。データベース430は、制御に必要なデータや制御のための設定値をファイル432として格納する。
【0067】
プロセッサ411は、例えば中央演算装置(Central Processing Unit:CPU)である。プロセッサ411は、バス417等を介して換気空気調和制御装置410の他のハードウェアと接続され、当該ハードウェアを制御する。プロセッサ411は、データベース430からプログラム431を読み出してメモリ412に展開し、メモリ412に展開したプログラム431を実行する。制御I/F413は、換気空気調和制御I/F260を介して排気用換気扇210、給気用換気扇220、局所排気用換気扇230、循環用送風機240、空気調和機250を制御するためのI/Fである。センサI/F414は、温度センサシステム300のデータを収集するためのI/Fである。入力I/F415は、キーボードおよびマウス等の入力装置のI/Fである。表示部I/F416は、ディスプレイ等の表示装置とのI/Fである。
【0068】
つぎに、図1および図4を参照して、制御装置制御部403が取得する情報について説明する。まず、換気空気調和システム200の各構成機器の機器位置情報について説明する。換気空気調和システム200の各構成機器の機器位置情報は、各構成機器の英語表記におけるアルファベットの2文字の略号を用いて識別される。同じ機器装置が複数ある場合は、A,B,C,・・・といった3文字目のアルファベットの1文字で識別される。
【0069】
排気用換気扇210は、「Fan-Exhaust」におけるアルファベットの2文字の略号である「FE」を用いて識別される。給気用換気扇220は、「Fan-Supply」におけるアルファベットの2文字の略号である「FS」を用いて識別される。局所排気用換気扇230は、「Fan-Local」におけるアルファベットの2文字の略号である「FL」を用いて識別される。循環用送風機240は、「Fan-Circulation」におけるアルファベットの2文字の略号である「FC」を用いて識別される。空気調和機250は、「Air-Conditioner」におけるアルファベットの2文字の略号である「AC」を用いて識別される。建屋701の内部に設置された温度センサ310は、「Sensor-Indoor」におけるアルファベットの2文字の略号である「SI」を用いて識別される。屋外に設置された温度センサ310は、「Sensor-Outdoor」におけるアルファベットの2文字の略号である「SO」を用いて識別される。製造装置703は、「Product-Equipment」におけるアルファベットの2文字の略号である「PE」を用いて識別される。熱源装置706は、「Heat-Source」におけるアルファベットの2文字の略号である「HS」を用いて識別される。また、作業員704についても、「Work-Person」におけるアルファベットの2文字の略号である「WP」を用いて識別される。
【0070】
機器位置情報は、水平方向の位置情報と垂直方向の位置情報とにより表され、例えば図1および図4における建屋の床面701bの左上の位置を原点とするXYZ座標で与えられる。例えば、排気用換気扇210である排気用換気扇210Aの機器位置情報である位置座標P_FEAは、(P_FEA_X、P_FEA_Y、P_FEA_Z)で表される。また、給気用換気扇220である給気用換気扇220Aの機器位置情報である機器位置座標P_FSAは、(P_FSA_X、P_FSA_Y、P_FSA_Z)で表される。
【0071】
つぎに、換気空気調和システム200の稼働データについて説明する。排気用換気扇210は、建屋701の内部の空気を屋外へ排出する。そこで、排気用換気扇210の稼働状態を示す機器稼働データは、排気用換気扇210の風量と風向きとによって表される。例えば、排気用換気扇210である排気用換気扇210Aの機器稼働データである風量Q_FEAは、(Q1_FEA、QV_FEA_X、QV_FEA_Y、QV_FEA_Z)で表される。Q1_FEAは、風量の絶対値である。(QV_FEA_X、QV_FEA_Y、QV_FEA_Z)は、風量の絶対値が1である風の風向きベクトルである。
【0072】
例えば、発生する風の風向きが建屋701における外壁701aのうちXZ面に沿った面に垂直な方向とされて外壁701aに設置されている排気用換気扇210Aの場合、排気用換気扇210Aの機器稼働データは、(QV_FEA_X、QV_FEA_Y、QV_FEA_Z)=(0、-1、0)となる。排気用換気扇210Aが発生する風の風向きは、建屋701の内部から屋外に向かう方向の風向きとなるため、QV_FEA_Yはマイナスの値となる。
【0073】
換気扇は、一般的には風向きが固定されており、風向きベクトルの方向が機器ごとに固定されている。一方、換気扇は、風量が可変とされており、例えば強運転と弱運転との2段階の風量から選択して運転される。換気扇の風向きが固定されており、風向きベクトルの方向が固定されている機器の場合、風向きベクトルの情報は、予め制御装置制御部403またはデータベース430に記憶しておくことも可能である。
【0074】
給気用換気扇220は、建屋701の屋外の空気である外気を建屋701の内部に給気する。そこで、給気用換気扇220の稼働状態を示す機器稼働データは、排気用換気扇210と同様に、給気用換気扇220の風量と風向きとによって表される。例えば、給気用換気扇220である給気用換気扇220Aの機器稼働データである風量Q_FSAは、(Q1_FSA、QV_FSA_X、QV_FSA_Y、QV_FSA_Z)で表される。Q1_FSAは、風量の絶対値である。(QV_FSA_X、QV_FSA_Y、QV_FSA_Z)は、風量の絶対値が1である風の風向きベクトルである。
【0075】
例えば、発生する風の風向きが建屋701における外壁701aのうちYZ面に沿った面に垂直な方向とされて外壁701aに設置されている給気用換気扇220Aの場合、給気用換気扇220Aの機器稼働データの風向きベクトルは、(QV_FSA_X、QV_FSA_Y、QV_FSA_Z)=(-1、0、0)となる。
【0076】
局所排気用換気扇230は、建屋701の内部の空気をダクト231を介して建屋701の外部である屋外に排気する。局所排気用換気扇230は、設置位置が建屋701の壁面ではなく建屋701の内部である。局所排気用換気扇230の稼働状態を示す機器稼働データのパラメータは、排気用換気扇210と同様に、局所排気用換気扇230の風量と風向きとによって表される。例えば、局所排気用換気扇230である局所排気用換気扇230Aの機器稼働データである風量Q_FLAは、(Q1_FLA、QV_FLA_X、QV_FLA_Y、QV_FLA_Z)で表される。Q1_FLAは、風量の絶対値である。(QV_FLA_X、QV_FLA_Y、QV_FLA_Z)は、風量の絶対値が1である風の風向きベクトルである。
【0077】
局所排気用換気扇230の機器位置情報は、建屋701の内部から空気を吸い込むダクト231の位置で規定される。一般的には、局所排気用換気扇230のダクト231は、熱源装置706の上方に設置される。
【0078】
そして、ダクト231が、図1に示すように熱源装置706の上方から、建屋701における外壁701aのうちYZ面に沿った面まで水平方向において引き回されて建屋701の内部と屋外とを連通させる場合には、建屋701の内部の空気は、上向き、すなわち+Z方向に排気される。この場合の局所排気用換気扇230の機器稼働データの風向きベクトルは、建屋701の内部の空気の吸込み方向が+Z方向であるので、(QV_FLA_X、QV_FLA_Y、QV_FLA_Z)=(0、0、1)となる。
【0079】
また、例えばダクト231が、建屋701の内部から不図示の建屋701の天面まで引き回されて建屋701の内部と屋外とを連通させる場合も、建屋701の内部の空気は、上向き、すなわち+Z方向に排気される。この場合も、局所排気用換気扇230の機器稼働データの風向きベクトルは、建屋701の内部の空気の吸込み方向が+Z方向であるので、(QV_FLA_X、QV_FLA_Y、QV_FLA_Z)=(0、0、1)となる。
【0080】
循環用送風機240は、建屋701の内部の空気を吸い込んで建屋701の内部に循環させる。循環用送風機240の稼働状態を示す機器稼働データは、排気用換気扇210と同様に、循環用送風機240の風量と風向きとによって表される。例えば、循環用送風機240である循環用送風機240Aの機器稼働データである風量Q_FCAは、(Q1_FCA、QV_FCA_X、QV_FCA_Y、QV_FCA_Z)で表される。Q1_FCAは、風量の絶対値である。(QV_FCA_X、QV_FCA_Y、QV_FCA_Z)は、風量の絶対値が1である風の風向きベクトルである。
【0081】
なお、図1および図4では1つの循環用送風機240を示しているが、ここでは理解の容易のため、複数の機器を識別するアルファベットであるAを記載して説明している。
【0082】
また、循環用送風機240は、風向きベクトルが可変とできるものであってもよい。すなわち、循環用送風機240は、風向可変機能を備えていてもよい。循環用送風機240が風向可変機能を備える場合、循環用送風機240の風量と風向きベクトルとの両方のデータが循環用送風機240から制御手段400に送信されて伝達される。上記のように風向きが固定されており、風向きベクトルの方向が固定されている機器の場合、風向きベクトルの情報は予めデータベース430に記憶されていてもよい。一方、循環用送風機240が風向可変機能を備える場合には、風向きベクトルの方向が固定されないため、循環用送風機240の風量と風向きベクトルとの両方のデータが循環用送風機240から制御手段400に送信されて伝達される。
【0083】
空気調和機250は、吸い込んだ建屋701の内部の空気を加熱あるいは冷却した調和空気を建屋701の内部に供給することで、建屋701の内部の空気を空気調和する。空気調和機250の稼働状態を示す機器稼働データは、空気調和機250の風量と風向きとに加えて、空気調和機250から建屋701の内部に供給される空気である供給空気の温度で表される。すなわち、空気調和機250である空気調和機250Aの機器稼働データである風量Q_ACAは、(Q1_ACA、QV_ACA_X、QV_ACA_Y、QV_ACA_Z、T1_ACA)で表される。Q1_ACAは、風量の絶対値である。(QV_ACA_X、QV_ACA_Y、QV_ACA_Z)は、風量の絶対値が1である風の風向きベクトルである。T1_ACAは、供給空気の温度である。
【0084】
空気調和機250では、風量、風向きベクトルおよび供給空気の温度が可変とされており、空気調和機250に備えられた不図示の空気調和機温度センサ等によって取得される温度情報に基づいて供給空気の温度が制御される。
【0085】
なお、図1および図4では1つの空気調和機250を示しているが、ここでは理解の容易のため、複数の機器を識別するアルファベットであるAを記載して説明している。
【0086】
つぎに、温度位置情報について説明する。温度位置情報は、機器位置情報と同様に、水平方向の位置情報と垂直方向の位置情報とにより表され、例えば図1および図4における建屋の床面701bの左上の位置を原点とするXYZ座標で与えられる。例えば建屋701の内部に設置された温度センサ310である温度センサ310Aの温度位置情報である温度位置座標P_SIAは、(P_SIA_X、P_SIA_Y、P_SIA_Z)で表される。
【0087】
つぎに、温度データについて説明する。温度データT_SIは、建屋701の内部に設置された温度センサ310において測定された温度のデータである。例えば建屋701の内部に設置された温度センサ310である温度センサ310Aの温度データである温度データT_SIAは、例えば(T_SIA)で表される。
【0088】
温度データT_SOは、建屋701の外部に設置された温度センサ310において測定された温度のデータである。例えば建屋701の外部に設置された温度センサ310である温度センサ310Cの温度データである温度データT_SOCは、例えば(T_SOC)で表される。
【0089】
つぎに、換気空気調和制御システム100の動作について説明する。図12は、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の動作の手順を示すフローチャートである。
【0090】
ステップS110において、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報とが取得される。具体的に、制御手段400の制御装置制御部403が、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報とを取得する。
【0091】
換気空気調和システム200の各構成機器の制御部は、予め決められた周期で、制御装置制御部403に機器稼働データを送信する。また、換気空気調和システム200の各構成機器の制御部は、機器稼働データと共に機器位置情報を制御装置制御部403に送信する。また、温度センサシステム300の各温度センサ310のセンサ制御部314は、予め決められた周期で、制御装置制御部403に温度データを送信する。温度センサシステム300の各温度センサ310のセンサ制御部314は、温度データと共に温度位置情報を制御装置制御部403に送信する。
【0092】
制御手段400の制御装置制御部403は、換気空気調和システム200および温度センサシステム300から送信された各情報を受信することにより、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、を取得することができる。
【0093】
ステップS120において、制御装置制御部403において取得された情報に基づいて、換気空気調和システム200の動作を制御するための稼働停止パターンが判定される。具体的に、制御装置制御部403が、換気空気調和システム200から取得した機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300から取得した温度データおよび温度位置情報とに基づいて、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行うために適切な稼働停止パターンを、データベース430に記憶されている複数の異なる稼働停止パターンから判定して選択する。
【0094】
ステップS130において、判定された稼働停止パターンに基づいて、換気空気調和システム200の稼働が個別に制御される。具体的に、制御装置制御部403が、判定された稼働停止パターンに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250との各構成機器の動作を個別に制御する。これにより、換気空気調和制御システム100は、製造装置703の近くの位置の高温空気705が建屋701における作業エリアである作業員704が居る場所へ流出しないように、換気空気調和システム200の各構成機器の動作を個別に制御することができ、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるように換気空気調和システム200の各構成機器の動作を個別に制御することができる。
【0095】
図1に示す構成例では、例えば、制御装置制御部403は、熱源装置706を含む製造装置703から離れており、且つ、複数の排気用換気扇210のうち作業員704に相対的に近い位置に配置されている排気用換気扇210Aを停止させる。一方、制御装置制御部403は、複数の排気用換気扇210のうち排気用換気扇210Aと比べて作業員704から相対的に遠い位置に配置されている排気用換気扇210Bおよび排気用換気扇210Cを稼働させる制御を行う。これにより、複数の排気用換気扇210のうち排気用換気扇210Aと比べて作業員704から相対的に遠い位置に配置されている排気用換気扇210Bおよび排気用換気扇210Cによって、製造装置703の近くの位置の高温空気705が建屋701の外部に排気される。
【0096】
排気用換気扇210Aが稼働する場合には、製造装置703の近くの位置の高温空気705は、熱源装置706から+X方向および-Y方向に誘引される。この場合、熱源装置706から+X方向に誘引された高温空気705の一部が、例えば循環用送風機240から送風される気流に起因して+Y方向に流れて作業員704が居る場所へ流れる可能性がある。
【0097】
しかしながら、排気用換気扇210Aを停止させるとともに排気用換気扇210Bおよび排気用換気扇210Cを稼働させることにより、排気用換気扇210Aの稼働に起因して作業員704が居る場所へ製造装置703の近くの位置の高温空気705が流れることを防ぐことができる。この結果、作業員704が居る作業エリアの空気の温度上昇を防止することができる。また、換気空気調和制御システム100では、作業員704が居る作業エリアの空気の温度上昇を防止することにより、作業員704が居る場所の不快な状態を解消するために空気調和機250の設定温度を低くする必要がなくなるため、あるいは空気調和機250を稼働する必要がなくなるため、空気調和機250の消費電力を抑えることができる。
【0098】
したがって、ステップS120において制御装置制御部403は、上記のような稼働停止パターンをデータベース430に記憶されている複数の異なる稼働停止パターンから判定して選択する。
【0099】
ここで、稼働停止パターンを求める方法の例について説明する。制御装置制御部403による排気用換気扇210の制御において、排気用換気扇210が建屋701における複数個所に設置されており、複数の排気用換気扇210の製造装置703からの距離がそれぞれ異なる場合を想定する。この場合は、例えば、熱源装置706を含む製造装置703から最も遠い位置に設置されている排気用換気扇210Aから順番に停止させて、異なる複数の稼働停止パターンにおける作業エリアの温度データが取得される。
【0100】
製造装置703の位置情報は、温度センサシステム300から得られる温度データにおいて最も温度が高い場所として推測されてもよく、ユーザが工場の施工図面などから読み取って予め制御手段400に入力されてもよい。すなわち、熱源装置706の位置情報は、温度センサシステム300から得られる温度データから最も温度が高い場所として推測されてもよく、施工図面などから読み取って予め制御手段400に入力されてもよい。
【0101】
また、作業員704が居る作業エリアの場所は、工場の設備管理者などが、作業エリアの目標温度とともに予め制御手段400に入力しておく必要がある。このとき、作業員704が居る作業エリアの設定方法としては、作業エリアの場所付近に設置された温度センサ310を1つ以上選定することで、制御手段400に選定された温度センサ310の位置を作業員704が居る作業エリアとして認識させる方法がある。
【0102】
これらの温度センサ310での温度データと予め設定した目標温度との比較によって、稼働停止パターンを決定することになるが、比較のために参照する温度センサ310での温度データは、1箇所の特定の温度センサ310の温度データが選定されてもよく、複数の温度センサ310の平均温度、または複数の温度センサ310の最大温度もしくは最小温度が用いられてもよい。
【0103】
そして、複数の稼働停止パターンにおいて取得された、作業エリアの温度データが比較されることで、作業員704が居る作業エリアの温度が予め設定された目標温度との乖離が最も小さかった稼働停止パターンが求められる。このような稼働停止パターンは、工場の設備管理担当者などによるトライアンドエラーによって求められる。このようにして予め決められた複数の異なる稼働停止パターンは、機器稼働データと、機器位置情報と、温度データと、温度位置情報との組み合わせのデータと関連付けられてデータベース430に記憶されている。また、このような稼働停止パターンは、後述する機械学習を用いて求められてもよい。
【0104】
図1では、1つの給気用換気扇220が建屋701に設けられる場合について示しているが、建屋701に複数の給気用換気扇220が設けられてもよい。制御装置制御部403は、複数の給気用換気扇220についても、排気用換気扇210と同様に、製造装置703からの距離によって動作の個別の制御を判断することができる。さらにこの場合、作業員704が居る作業エリアの温度に対して屋外温度が高いか低いかによって、運転あるいは停止の判断基準を変更してもよい。屋外温度は、外気の温度と換言できる。
【0105】
例えば、屋外温度が作業エリアの温度より低い場合には、製造装置703から最も遠い位置にある給気用換気扇220から順番に稼働させ、屋外温度が作業エリアの温度より高い場合には、製造装置703から最も近い位置にある給気用換気扇220から順番に稼働させて、複数の給気用換気扇220について異なる複数の稼働停止パターンを検討する。そして、複数の稼働停止パターンそれぞれにおける温度データを比較し、作業員704が居る作業エリアの温度が予め設定された目標温度との乖離が最も小さかった稼働停止パターンを求めることができる。
【0106】
循環用送風機240については、そもそもの設置目的として、作業員704が居る作業エリアへ製造装置703の近くの位置の高温空気705が流出しないように、作業員704が居る作業エリアへ流れる高温空気705を押し戻す目的での設置、空気調和機250から送出される冷気を作業員704が居る作業エリアへ送り込む目的での設置、涼風目的での設置などがある。循環用送風機240については、基本的にはこれらの目的に準じた運用が行われる場合が多いが、常に稼働させるのではなく、温度センサ310の温度データから必要と判断された場合に限定して稼働させることができる。これにより、不要なタイミングでの循環用送風機240の稼働時間を減らすことができるため、循環用送風機240の稼働による消費電力を低減させることができる。
【0107】
循環用送風機240を稼働させるか停止させるかの判断基準としては、温度センサ310の温度データについて予め閾値を設定しておくことができる。そして、温度センサ310の温度データが閾値を超えた場合に運転させるように自動で動作を切り替えるように設定することができる。また、循環用送風機240は、排気用換気扇210および給気用換気扇220の稼働に合わせて稼働させるように制御されてもよい。また、循環用送風機240の周辺の温度が予め決められた循環用送風機240の目標温度より低く、送風先の温度が予め決められた循環用送風機240の目標温度より高いことが温度センサシステム300から得られた温度データと位置情報とから判明している場合に循環用送風機240を稼働させるという制御を行うことで、作業エリアの温度を下げたり、建屋701内の温度ムラを軽減することが可能である。
【0108】
排気用換気扇210および給気用換気扇220をどのような状態で稼働しても、作業エリアの温度環境が改善しない場合は、建屋701内または作業エリアの周囲に空気のよどみによる熱だまりが発生している可能性がある。この場合、風向可変機能を持つ循環用送風機240を用いて、熱だまりの発生場所へ風向を向けて送風することで、熱だまりを解消することができる。循環用送風機240の風向は、制御装置制御部403により、温度センサシステム300から得られた温度データと温度位置情報とに基づいて制御することができる。
【0109】
なお、製造装置703の位置情報を用いずに、排気用換気扇210および給気用換気扇220といった換気空気調和システム200の複数の構成機器を異なるパターンで稼働あるいは停止させることを繰り返すことによっても、稼働停止パターンを求めることが可能である。ただし、製造装置703の位置情報を用いることにより、機器稼働データと、機器位置情報と、温度データと、温度位置情報との組み合わせにより適した稼働停止パターンを得ることができる。
【0110】
上述したように、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100では、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、製造装置703の位置情報または作業員704が居る作業エリアの位置情報を利用して、制御手段400の制御装置制御部403が、排気用換気扇210、給気用換気扇220、循環用送風機240、空気調和機250の個別制御を行う。これにより、換気空気調和制御システム100では、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した、作業エリアの温度上昇を防止し、作業員704が居る作業エリアの温度環境を改善し、また空気調和機250の消費電力を低減することができる。
【0111】
すなわち、換気空気調和制御システム100では、排気用換気扇210および給気用換気扇220といった換気扇などの稼働あるいは停止を建屋701全体で一律に制御するのではなく、換気扇ごとに個別に制御することで、熱源装置706の排熱が作業エリアなど人のいるエリアに流れ込まないよう給気から排気まで適切な換気流を創出し、作業エリアの温度上昇を防ぐ、あるいは余分な熱を空気調和機250の冷房によって冷やす必要をなくし、空気調和負荷を低減することができる。
【0112】
なお、上記においては、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境での稼働停止パターンを用いる場合について説明したが、局所排気用換気扇230が無い場合についても、上記と同様にして求められる稼働停止パターンを用いることにより、上述した換気空気調和制御システム100と同様の効果が得られる。
【0113】
したがって、本実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100によれば、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した、作業エリアの温度上昇を防止することができる、という効果を奏する。これにより、換気空気調和制御システム100では、作業エリアの温度環境の改善、換気空気調和システム200の消費電力の低減、および換気空気調和システム200の稼働停止に係る作業負荷の低減を実現することができる。
【0114】
実施の形態2.
図13は、実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aの機能構成を示すブロック図である。実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の構成に加えて、熱源装置706を備える。
【0115】
換気空気調和制御システム100aでは、熱源装置706の機器稼働データおよび熱源装置706の位置情報が、制御手段400の制御装置制御部403にデータとして送信される。制御装置制御部403は、センサI/F414を介して熱源装置706の機器稼働データおよび位置情報を収集し、換気空気調和システム200を制御する。熱源装置706の機器稼働データおよび位置情報を収集することで、実施の形態1のように温度センサシステム300にて得られた温度データおよび位置情報から熱源装置706の位置を推定する必要がなくなる。
【0116】
また、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、熱源装置706の稼働データに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250とに対して個別制御を行うことで、先回りした制御を行うことができる。すなわち、制御装置制御部403は、熱源装置706が稼働して若干のタイムラグが発生した後、熱源装置706の周囲温度が上昇してから換気空気調和システム200を制御するのではなく、熱源装置706が稼働して周囲温度が上がる前に先回りして換気空気調和システム200を制御できる。このような制御により、先回り運転による作業エリアの温度上昇抑制のほかに、温度センサシステム300では把握しきれていない箇所の温度上昇を抑制する効果、建屋701への蓄熱を抑える効果が得られる。
【0117】
つぎに、換気空気調和制御システム100aの動作について説明する。図14は、実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aの動作の手順を示すフローチャートである。
【0118】
ステップS210において、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、熱源装置706の稼働データおよび位置情報と、が取得される。具体的に、制御手段400の制御装置制御部403が、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、熱源装置706の稼働データおよび位置情報と、を取得する。
【0119】
熱源装置706の制御部は、予め決められた周期で、制御装置制御部403に稼働データおよび機器位置情報を送信する。また、製造装置703の制御部が、予め決められた周期で、制御装置制御部403に稼働データおよび機器位置情報を送信してもよい。
【0120】
熱源装置706の稼働データとは、熱源装置706の稼働時間帯、熱源装置706で生産する製品または部品などの、時間帯ごとの数量または品名などを示す。
【0121】
ステップS220において、制御装置制御部403において取得された情報に基づいて、換気空気調和システム200の動作を制御するための稼働停止パターンが判定される。具体的に、制御装置制御部403が、換気空気調和システム200から取得した機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300から取得した温度データおよび温度位置情報と、熱源装置706の稼働データおよび位置情報とに基づいて、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行うために適切な稼働停止パターンを、データベース430に記憶されている複数の異なる稼働停止パターンから判定して選択する。
【0122】
制御装置制御部403は、熱源装置706の稼働データに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250とに対して先回りした個別制御を行うための稼働停止パターンを判定して選択する。この場合、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報の組み合わせに、熱源装置706の稼働データを含めたパラメータの組み合わせでの複数の稼働停止パターンが予め決められてデータベース430に記憶されている。
【0123】
ステップS230において、判定された稼働停止パターンに基づいて、換気空気調和システム200の稼働が個別に制御される。具体的に、制御装置制御部403が、判定された稼働停止パターンに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250との各構成機器の動作を個別に制御する。
【0124】
上述したように、実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100と同様の効果を有する。
【0125】
また、換気空気調和制御システム100aは、熱源装置706が稼働して若干のタイムラグが発生した後、熱源装置706の周囲温度が上昇してから換気空気調和システム200を制御するのではなく、熱源装置706が稼働して周囲温度が上がる前に先回りして換気空気調和システム200を制御できる。このような制御により、先回り運転による作業エリアの温度上昇抑制のほかに、温度センサシステム300では把握しきれていない箇所の温度上昇を抑制する効果、建屋701への蓄熱を抑える効果が得られる。
【0126】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bの機能構成を示すブロック図である。実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の構成に加えて、気圧センサシステム600を備える。
【0127】
気圧センサシステム600は、制御手段400が換気空気調和システム200の制御に用いる情報を収集する情報収集システムである。気圧センサシステム600は、建屋701の内部の気圧と、屋外の気圧と、を測定して収集する。気圧センサシステム600は、複数の気圧センサ610を備える。
【0128】
気圧センサ610は、気圧センサ610が設置された場所の気圧を測定して収集する環境センサである。具体的に、気圧センサ610は、気圧センサ610が設置された場所の周囲の気圧を測定して収集する。建屋701の内部に設置されて建屋701の内部の気圧を測定する気圧センサ610は、内部気圧センサといえる。建屋701の外部に設置されて屋外の気圧を測定する気圧センサ610は、外部気圧センサといえる。
【0129】
気圧センサ610は、温度センサ310と同様に、測定部と、センサ通信部と、センサ記憶部と、センサ制御部と、を有する。気圧センサ610の測定部とセンサ通信部とセンサ記憶部とセンサ制御部とのそれぞれは、気圧センサ610が設置された場所の気圧を処理対象とすること以外は、温度センサ310の測定部311とセンサ通信部312とセンサ記憶部313とセンサ制御部314とのそれぞれと同様の機能を有する。
【0130】
気圧センサ610のセンサ制御部は、測定部における測定結果である気圧センサ610が設置された場所の気圧の情報を、電気信号に変換して制御手段400に気圧データとして送信する。
【0131】
また、気圧センサ610は、気圧センサ610の機器位置情報である気圧センサ610が設置された場所の位置情報を記憶しておき、気圧センサ610が設置された場所の気圧の情報と共に、気圧センサ610の機器位置情報を電気信号に変換して制御手段400に送信することができる。すなわち、気圧センサ610のセンサ制御部は、センサ記憶部に記憶された気圧センサ610機器位置情報を電気信号に変換して制御手段400に送信することができる。気圧センサ610の機器位置情報は、気圧位置情報といえる。
【0132】
制御手段400のデータベース430には、気圧センサ610の気圧位置情報が記憶されている。気圧センサ610の気圧位置情報のデータベース430への入力方法は、換気空気調和システム200に含まれる構成機器の機器位置情報のデータベース430への入力方法と同様である。
【0133】
制御手段400の制御装置制御部403は、気圧センサ610から送信された気圧データである気圧センサ610が設置された場所の気圧の情報を受信して、記憶する。また、制御装置制御部403は、気圧センサ610から受信した気圧データをデータベース430に記憶させてもよい。また、制御装置制御部403は、気圧センサ610から送信された気圧位置情報を受信して、記憶する。また、制御装置制御部403は、気圧センサ610から受信した気圧位置情報をデータベース430に記憶させてもよい。
【0134】
気圧センサ610には、設置が容易である一般的な気圧センサを用いることができる。気圧センサ610は、建屋701の内部と建屋701の外部とにおける複数個所に設置されている。
【0135】
制御手段400の制御装置制御部403は、換気空気調和制御システム100bの制御を行うことができる。また、制御装置制御部403は、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報とに基づいて、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに建屋701の内部を目標気圧に近づける制御を行うことができる。目標気圧は、予め決められて制御装置制御部403に記憶されてもよく、ユーザによって制御装置制御部403に入力されてもよい。
【0136】
具体的に、制御装置制御部403は、建屋701の内部の気圧センサ610と屋外の気圧センサ610とから取得される気圧データを比較し、建屋701の内部が常に陽圧となるように、あるいは建屋701の内部が常に負圧となるように、換気空気調和システム200の各構成機器を個別に制御することができる。これにより、換気空気調和制御システム100bでは、製造装置703における処理内容などの諸条件によって建屋701の内部の圧力を大気圧、陽圧、あるいは負圧に制御することができる。
【0137】
また、建屋701の内部に設けられた間仕切りに起因して、建屋701の内部において気圧差が存在する場合がある。作業員704が居る場所の気圧が製造装置703の近くの位置の気圧よりも低い場合には、製造装置703の近くの位置の空気が作業員704が居る場所に流れることにより、製造装置703の排熱が作業員704が居る場所へ流れ込む。
【0138】
この場合、制御手段400の制御装置制御部403は、製造装置703の排熱が作業員704が居る場所へ流れ込まないように、製造装置703の近くの位置の気圧が作業員704が居る作業エリアの気圧より常に低くなるように、換気空気調和システム200の各構成機器を個別に制御することができる。気圧センサ610は、製造装置703の近くの位置と、作業員704が居る作業エリアに配置される。
【0139】
これにより、換気空気調和制御システム100bでは、作業員704が居る作業エリアの気圧が製造装置703の近くの位置の気圧よりも低い場合に作業エリアへ製造装置703の排熱が流れ込むことを防止して、作業エリアの空気の温度上昇を抑えることができる。また、換気空気調和制御システム100bでは、作業エリアの空気の温度上昇を抑制することにより、作業エリアの不快な状態を解消するために空気調和機250の設定温度を低くする必要がなくなるため、あるいは空気調和機250を稼働する必要がなくなるため、空気調和機250の消費電力を抑制することができる。
【0140】
つぎに、換気空気調和制御システム100bの動作について説明する。図16は、実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bの動作の手順を示すフローチャートである。
【0141】
ステップS310において、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報と、が取得される。具体的に、制御手段400の制御装置制御部403が、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報と、を取得する。
【0142】
ステップS320において、制御装置制御部403において取得された情報に基づいて、換気空気調和システム200の動作を制御するための稼働停止パターンが判定される。具体的に、制御装置制御部403が、換気空気調和システム200から取得した機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300から取得した温度データおよび温度位置情報と、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報とに基づいて、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに建屋701の内部を目標気圧に近づける制御を行うために適切な稼働停止パターンを、データベース430に記憶されている複数の異なる稼働停止パターンから判定して選択する。
【0143】
制御装置制御部403は、建屋701の内部を目標気圧に近づけるために、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報に基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240との個別制御を行うための稼働停止パターンを判定して選択する。この場合、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報の組み合わせに、気圧センサ610の気圧データおよび気圧位置情報を含めたパラメータの組み合わせでの複数の稼働停止パターンが予め決められてデータベース430に記憶されている。制御装置制御部403は、建屋701の内部に要求される気圧状態に対応する稼働停止パターンを判定して選択する。
【0144】
ステップS330において、判定された稼働停止パターンに基づいて、換気空気調和システム200の稼働が個別に制御される。具体的に、制御装置制御部403が、判定された稼働停止パターンに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250との各構成機器の動作を個別に制御する。すなわち、制御装置制御部403は、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに建屋701の内部を目標気圧に近づける制御を行う。
【0145】
上述したように、実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100と同様の効果を有する。
【0146】
また、換気空気調和制御システム100bは、製造装置703における処理内容などの諸条件によって建屋701の内部の圧力を大気圧、陽圧、あるいは負圧に制御することができる。
【0147】
実施の形態4.
図17は、実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cの機能構成を示すブロック図である。実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100の構成に加えて、電力計測器インターフェース270を備える。以下では、電力計測器インターフェース270を電力計測器I/F270と略称する。
【0148】
電力計測器I/F270は、換気空気調和制御システム100cの外部に設けられて換気空気調和システム200の消費電力量のデータの収集を行う電力計測器710と、換気空気調和システム200との間を仲介する。電力計測器I/F270は、換気空気調和システム200の各構成機器と電気的に接続されている。
【0149】
電力計測器710は、監視対象機器あるいは監視対象機器に電力を供給する配電盤などに設置されて、監視対象機器において消費される消費電力量を計測して収集するものである。ここでの監視対象機器は、換気空気調和システム200の各構成機器である。電力計測器710には、一般的な電力計測器を用いることができる。電力計測器710は、電力計測器I/F270と電気的に接続されている。電力計測器710は、電力計測器I/F270を介して、稼働している換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量を計測する。電力計測器710は、計測結果である、稼働している換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量の情報を、すなわち稼働している換気空気調和システム200の消費電力量のデータである消費電力データを、制御手段400の制御装置制御部403に送信する。
【0150】
制御装置制御部403は、電力計測器710から送信された計測結果である、稼働している換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量のデータである消費電力データを受信して、記憶する。また、制御装置制御部403は、電力計測器710から受信した、稼働している換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量のデータをデータベース430に記憶させてもよい。
【0151】
電力計測器I/F270が設置される目的は、監視対象機器である換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力データの収集を行う電力計測器710と、換気空気調和システム200の各構成機器との間を仲介して、換気空気調和システム200の消費電力量のデータの収集を可能にすることである。すなわち、電力計測器I/F270は、換気空気調和システム200の消費電力を計測して収集するために設けられている。電力計測器I/F270は、換気空気調和システム200の各構成機器に設置されてもよく、換気空気調和システム200の各構成機器に電力を供給する配電盤に類するものに設置されてもよい。
【0152】
実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cでは、換気空気調和システム200の消費電力量のデータの収集が可能となる。このため、制御手段400の制御装置制御部403は、換気空気調和システム200の消費電力量が最小となる換気空気調和システム200の稼働停止パターンを選定することができる。換気空気調和システム200の消費電力量は、換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量の総和である。これにより、換気空気調和制御システム100cでは、作業員704が居る作業エリアの温度上昇を抑制しつつ、高い省エネルギー効果が得られる。
【0153】
例えば、制御装置制御部403は、建屋701の内部における作業員704が居る作業エリアの温度と、予め決められた目標温度との乖離が予め決められた状態よりも小さくなる、いくつかの換気空気調和システム200の稼働停止パターンの中から、換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量の総和が最小となる稼働停止パターンを選定する。すなわち、制御装置制御部403は、建屋701の内部における作業エリアの温度と、予め決められた目標温度との温度差を算出する。そして、制御装置制御部403は、算出した温度差が予め決められた温度差範囲内に収まる複数の換気空気調和システム200の稼働停止パターンの中から、換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量の総和が最小となる稼働停止パターンを選定する。
【0154】
目標温度は、建屋701の内部における作業員704が居る作業エリアにおいて作業員704が不快感を感じることなく作業を行うことができる温度に設定される。温度差範囲は、作業エリアにおいて作業員704が不快感を感じることなく作業を行うことができる温度範囲に設定される。目標温度および温度差範囲は、予め決められて制御装置制御部403に記憶される。
【0155】
つぎに、換気空気調和制御システム100cの動作について説明する。図18は、実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cの動作の手順を示すフローチャートである。
【0156】
ステップS410において、局所排気用換気扇230が稼働し、空気調和機250が冷房運転で稼働する環境において、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、換気空気調和システム200の消費電力量の情報と、が取得される。具体的に、制御手段400の制御装置制御部403が、換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300の温度データおよび温度位置情報と、換気空気調和システム200の消費電力量の情報と、を取得する。
【0157】
ステップS420において、制御装置制御部403において取得された情報に基づいて、換気空気調和システム200の動作を制御するための稼働停止パターンが判定される。具体的に、制御装置制御部403が、換気空気調和システム200から取得した機器稼働データおよび機器位置情報と、温度センサシステム300から取得した温度データおよび温度位置情報と、換気空気調和システム200の消費電力量の情報と、に基づいて、作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行うために適切な稼働停止パターンをデータベース430に記憶されている複数の異なる稼働停止パターンから判定して選択する。
【0158】
ここで、制御装置制御部403は、建屋701の内部における作業エリアの温度と、予め決められた目標温度との温度差が予め決められた温度差範囲内に収まる複数の換気空気調和システム200の稼働停止パターンの中から、換気空気調和システム200の各構成機器の消費電力量の総和が最小となる稼働停止パターンを選定する。
【0159】
ステップS430において、判定された稼働停止パターンに基づいて、換気空気調和システム200の稼働が個別に制御される。具体的に、制御装置制御部403が、判定された稼働停止パターンに基づいて、排気用換気扇210と、給気用換気扇220と、循環用送風機240と、空気調和機250との各構成機器の動作を個別に制御する。すなわち、制御装置制御部403は、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに換気空気調和システム200の消費電力量が最小とする制御を行う。
【0160】
上述したように、実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cは、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100と同様の効果を有する。
【0161】
また、換気空気調和制御システム100cは、作業員704が居る作業エリアの温度上昇を抑制しつつ、高い省エネルギー効果が得られる。
【0162】
実施の形態5.
<学習フェーズ>
図19は、実施の形態5にかかる学習装置800の構成を示すブロック図である。学習装置800は、実際の建屋701の内部の換気空気調和制御に用いられた換気空気調和システム200の稼働停止条件と、実際の建屋701の内部の換気空気調和において取得された制御結果とに基づいて、学習済みモデル830を生成するコンピュータであり、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和システム200の構成機器の動作を制御する稼働停止条件を学習する。制御結果は、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報を含む。学習済みモデル記憶部900は、学習装置800が生成した学習済みモデル830を記憶する。
【0163】
学習装置800は、第1のデータ取得部810と、モデル生成部820とを備えている。
【0164】
第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とを学習用データとして取得する。
【0165】
換気空気調和制御推定パラメータPrm1は、少なくとも、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報を含む。また、換気空気調和制御推定パラメータPrm1は、さらに、熱源装置706から得られる熱源装置706の稼働データおよび熱源装置706の位置情報と、気圧センサシステム600から得られる気圧データおよび気圧センサ610の位置を示す位置情報である気圧位置情報と、電力計測器710から得られる換気空気調和システム200の消費電力データの情報とのうちのいずれかの情報を含む。第1のデータ取得部810が換気空気調和制御推定パラメータPrm1として取得する情報のうち、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報以外の情報は、学習装置800が用いられる換気空気調和制御システムによって異なる。
【0166】
換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2は、換気空気調和システム200から得られる換気空気調和システム200の機器稼働データおよび機器位置情報を含む。換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2は、換気空気調和システム200の個別の機器の稼働停止条件ともいえ、換気空気調和システム200の構成機器のそれぞれの制御条件ともいえる。
【0167】
モデル生成部820は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とを含む学習用データに基づいて、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を学習する。すなわち、モデル生成部820は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とから建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論する学習済みモデル830を生成する。
【0168】
したがって、モデル生成部820は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とを含む学習用データに基づいて、換気空気調和システム200の個別の機器の稼働停止条件を学習するといえる。すなわち、モデル生成部820は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とから建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和システム200の個別の機器の稼働停止条件を推論する学習済みモデル830を生成するといえる。
【0169】
モデル生成部820が用いる学習アルゴリズムは、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合について、説明する。
【0170】
強化学習では、ある環境内におけるエージェント(行動主体)が、現在の状態(環境のパラメータ)を観測し、取るべき行動を決定する。エージェントの行動により環境が動的に変化し、エージェントには環境の変化に応じて報酬が与えられる。エージェントはこれを繰り返し、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られる行動方針を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-learning)およびTD学習(TD-learning)が知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(s,a)の一般的な更新式は以下の式(1)で表される。
【0171】
【数1】
【0172】
式(1)において、sは時刻tにおける環境の状態を表し、aは時刻tにおける行動を表す。行動aにより、環境の状態はst+1に変わる。rt+1はその状態の変化によってもらえる報酬を表し、γは割引率を表し、αは学習係数を表す。なお、γは0<γ≦1、αは0<α≦1の範囲とする。換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2が行動aとなり、換気空気調和制御推定パラメータPrm1が状態sとなる。学習装置800は、時刻tの状態sにおける最良の行動aを学習する。
【0173】
式(1)で表される更新式は、時刻t+1における最もQ値の高い行動aの行動価値Qが、時刻tにおいて実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、学習装置800は、時刻tにおける行動aの行動価値Qを、時刻t+1における最良の行動価値Qに近づけるように、行動価値関数Q(s,a)を更新する。それにより、ある環境における最良の行動価値Qが、それ以前の環境における行動価値Qに順次伝播していくようになる。
【0174】
上記のように、モデル生成部820が強化学習によって学習済みモデル830を生成する場合、モデル生成部820は、報酬計算部821と、関数更新部822とを備えている。
【0175】
報酬計算部821は、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)および換気空気調和制御推定パラメータPrm1(状態)に基づいて換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2の報酬を計算する。例えば、報酬計算部821は、作業エリアにおける目標温度と温度センサシステム300から得られる温度データに示される作業エリアの温度との乖離度合いに基づいて、報酬rを計算する。例えば、報酬計算部821は、作業エリアにおける目標温度と温度センサシステム300から得られる温度データに示される作業エリアにおける温度との乖離度合いが前回よりも減少する場合には報酬rを増大させ(例えば「1」の報酬を与える)、他方、作業エリアにおける目標温度と温度センサシステム300から得られる温度データに示される作業エリアの温度との乖離度合いが前回よりも増加する場合には報酬rを減少させる(例えば「-1」の報酬を与える)。
【0176】
報酬計算部821は、上述した乖離度合いと比較することによって、適用した換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2に対する報酬を増加させるか、または報酬を減少させるかを判断するための基準値である閾値831を記憶している。閾値831は、ユーザが学習装置800に値を設定することにより、任意の値に変更可能である。
【0177】
実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cに用いられる学習装置800の場合、消費電力データを用いて報酬を計算してもよい。報酬計算部821は、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)および換気空気調和制御推定パラメータPrm1(状態)に基づいて報酬を計算する。報酬計算部821は、上述した乖離度合いに基づいて、報酬rを計算する。
【0178】
例えば、報酬計算部821は、上述した乖離度合いが前回よりも減少する場合には報酬rを増大させ(例えば「1」の報酬を与える)、他方、上述した乖離度合いが前回よりも増加する場合には報酬rを低減する(例えば「-1」の報酬を与える)。
【0179】
また、報酬計算部821は、上述した乖離度合いが予め決められた基準範囲内にある場合は、さらに、換気空気調和システム200の消費電力量を用いて報酬rを計算する。換気空気調和システム200の消費電力量は、換気空気調和システム200における稼働している各構成機器の消費電力量の総和である。換気空気調和システム200の消費電力量が前回よりも減少する場合には報酬rを増大させ(例えば「1」の報酬を与える)、他方、換気空気調和システム200の消費電力量が前回よりも増加する場合には報酬rを低減する(例えば「-1」の報酬を与える)。
【0180】
関数更新部822は、報酬計算部821によって計算される報酬に基づいて、次回の換気空気調和システム200の個別の機器の稼働停止条件である換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を決定するための関数を更新し、学習済みモデル記憶部900に出力する。例えばQ学習の場合、関数更新部822は、式(1)で表される行動価値関数Q(s,a)が稼働停止条件となる換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を算出するための関数として用いる。行動価値関数Q(st,at)は、稼働停止条件を算出するための稼働停止条件生成関数といえる。
【0181】
学習装置800は、以上のような学習を繰り返し実行する。学習済みモデル記憶部900は、関数更新部822によって更新された行動価値関数Q(st,at)、すなわち、学習済みモデル830を記憶する。
【0182】
つぎに、図20を用いて、学習装置800が学習する処理の処理手順について説明する。図20は、実施の形態5にかかる学習装置800による学習処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0183】
ステップS510において、第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とを学習用データとして取得する。
【0184】
実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100に用いられる学習装置800の場合、第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1として、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報を取得する。
【0185】
実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aに用いられる学習装置800の場合、第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1として、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報と、熱源装置706から得られる稼働データおよび位置情報と、を取得する。
【0186】
実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bに用いられる学習装置800の場合、第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1として、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報と、気圧センサシステム600から得られる気圧データおよび位置情報と、を取得する。
【0187】
実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cに用いられる学習装置800の場合、第1のデータ取得部810は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1として、温度センサシステム300から得られる温度データおよび温度位置情報と、電力計測器710から得られる換気空気調和システム200の消費電力量の情報と、を取得する。
【0188】
ステップS520において、モデル生成部820は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2とに基づいて、適用した稼働停止条件である換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2に対する報酬を計算する。具体的には、報酬計算部821は、予め定められた報酬基準である閾値831に基づいて、報酬rを計算する。報酬計算部821は、閾値831と、作業エリアにおける目標温度と温度センサシステム300から得られる温度データに示される作業エリアにおける温度との乖離度合いとに基づいて、適用した稼働停止条件に対する報酬を増加させるか、または報酬を減少させるかを判定する。
【0189】
報酬計算部821は、報酬を増大させると判断した場合に(ステップS520、報酬増大基準)、ステップS530において報酬を増大させる。一方、報酬計算部821は、報酬を減少させると判断した場合に(ステップS520、報酬減少基準)、ステップS540において報酬を減少させる。
【0190】
ステップS550において、関数更新部822は、報酬計算部821によって計算された報酬に基づいて、学習済みモデル記憶部900が記憶する式(1)で表される行動価値関数Q(st,at)を更新する。
【0191】
学習装置800は、以上のステップS510からステップS550までのステップを繰り返し実行し、生成された行動価値関数Q(st,at)を学習済みモデル830として学習済みモデル記憶部900に記憶させる。
【0192】
実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100に用いられる学習装置800は、機器稼働データおよび機器位置情報と、温度データおよび温度位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部810と、学習用データを用いて、温度データおよび温度位置情報から、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部820と、を備える学習装置として実現される。
【0193】
実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aに用いられる学習装置800は、機器稼働データおよび機器位置情報と、温度データおよび温度位置情報と、熱源装置の稼働データおよび位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部810と、学習用データを用いて、温度データおよび温度位置情報と、熱源装置の稼働データおよび位置情報とから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部820と、を備える学習装置として実現される。
【0194】
実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bに用いられる学習装置800は、機器稼働データおよび機器位置情報と、温度データおよび温度位置情報と、気圧データおよび気圧位置情報とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部810と、学習用データを用いて、温度データおよび温度位置情報と、気圧データおよび気圧位置情報とから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに建屋の内部を目標気圧に近づける構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデルを生成するモデル生成部820と、を備える学習装置として実現される。
【0195】
実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cに用いられる学習装置800は、機器稼働データおよび機器位置情報と、温度データおよび温度位置情報と、消費電力データとを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部810と、学習用データを用いて、温度データおよび温度位置情報と、消費電力データとから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに換気空気調和システム200の消費電力量を最小とする構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデル830を生成するモデル生成部820と、を備える学習装置として実現される。
【0196】
なお、実施の形態5にかかる学習装置800は、学習済みモデル830を学習装置800の外部に設けられた学習済みモデル記憶部900に記憶させるものとしたが、学習済みモデル記憶部900は、学習装置800の内部に配置されていてもよい。
【0197】
学習装置800は、上述した乖離度合いを小さくする行動価値関数Q(st,at)の学習済みモデル830を生成することにより、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した、作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論するための、換気空気調和制御推定パラメータPrm1と、換気空気調和制御推定パラメータPrm1に対応する換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2との関係を学習することができる。
【0198】
<活用フェーズ>
図21は、実施の形態5にかかる推論装置の構成を示すブロック図である。推論装置1000は、学習済みモデル830を用いて、換気空気調和制御推定パラメータPrm1から、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止することができる換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論するコンピュータである。
【0199】
推論装置1000は、第2のデータ取得部1010と、推論部1020とを備える。第2のデータ取得部1010は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1を取得する。推論部1020は、学習済みモデル830を用いて、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論し、推論した換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2として制御手段400の制御装置制御部403に出力する。すなわち、推論部1020は、学習済みモデル830に第2のデータ取得部1010が取得した換気空気調和制御推定パラメータPrm1を入力することで、換気空気調和制御推定パラメータPrm1に適した換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論することができる。換気空気調和制御推定パラメータPrm1に適した換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2は、上述した乖離度合いを小さくする換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2といえる。なお、推論装置1000は、換気空気調和制御システムの外部に配置することも可能である。第2のデータ取得部1010は、第1のデータ取得部810と共通であってもよい。また別体として設けてもよい。
【0200】
なお、実施の形態5では、推論装置1000が、モデル生成部820が学習した学習済みモデル830を用いて、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論する場合について説明したが、推論装置1000は、学習装置800以外の他の学習装置から学習済みモデル830を取得し、この学習済みモデル830に基づいて換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論してもよい。
【0201】
つぎに、図22を用いて、推論装置1000が、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を推論する処理の処理手順について説明する。図22は、実施の形態5にかかる推論装置1000による推論処理および換気空気調和制御装置410による制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0202】
ステップS610において、第2のデータ取得部1010は、換気空気調和制御推定パラメータPrm1を推論用データとして取得する。推論部1020は、ステップS620において、学習済みモデル記憶部900に記憶されている学習済みモデル830に、推論用データである換気空気調和制御推定パラメータPrm1を入力し、換気空気調和制御推定パラメータPrm1に適した換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を得る。ステップS630において、推論部1020は、得られたデータである、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を、換気空気調和制御システムの換気空気調和制御装置410の制御装置制御部403に出力する。
【0203】
ステップS630において、実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100に用いられる推論部1020は、得られた換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を、換気空気調和制御システム100における制御手段400の換気空気調和制御装置410の制御装置制御部403に出力する。実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aに用いられる推論部1020は、得られた換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を、換気空気調和制御システム100aの制御装置制御部403に出力する。実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bに用いられる推論部1020は、得られた換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を、換気空気調和制御システム100bの制御装置制御部403に出力する。実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cに用いられる推論部1020は、得られた換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を、換気空気調和制御システム100cの制御装置制御部403に出力する。
【0204】
ステップS640において、換気空気調和制御システム100の制御装置制御部403は、推論部1020から出力された換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)を用いて、換気空気調和システム200の排気用換気扇210、給気用換気扇220、循環用送風機240、空気調和機250の稼働、停止、風量の調整を個別に制御する。これにより、換気空気調和制御システム100では、建屋701の内部における熱源装置706の排熱に起因した作業エリアの温度上昇を防止することができ、作業エリアの温度環境の改善、換気空気調和システム200の最適稼働停止パターンの検討負荷の低減、および換気空気調和システム200の稼働停止に係る作業負荷の低減を実現することができる。
【0205】
また、換気空気調和制御システム100aの制御装置制御部403、換気空気調和制御システム100bの制御装置制御部403および換気空気調和制御システム100cの制御装置制御部403も同様に、推論部1020から出力された換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2を用いて、換気空気調和システム200の排気用換気扇210、給気用換気扇220、循環用送風機240、空気調和機250の稼働、停止、風量の調整、調和空気の温度の調整といった動作を個別に制御する。
【0206】
これにより、換気空気調和制御システム100a、換気空気調和制御システム100bおよび換気空気調和制御システム100cにおいても、作業エリアの温度環境の改善、換気空気調和システム200の最適稼働停止パターンの検討負荷の低減、および換気空気調和システム200の稼働停止に係る作業負荷の低減を実現することができる。また、換気空気調和制御システム100cでは、換気空気調和システム200の消費電力の低減も実現することができる。
【0207】
実施の形態1にかかる換気空気調和制御システム100に用いられる推論装置1000は、温度データおよび温度位置情報を含む推論用データを取得する第2のデータ取得部1010と、温度データおよび温度位置情報から、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論する学習済みモデル830を用いて、温度データおよび温度位置情報に対応する制御条件を出力する推論部1020と、を備える推論装置として実現される。
【0208】
また、実施の形態2にかかる換気空気調和制御システム100aに用いられる推論装置1000は、温度データおよび温度位置情報と、熱源装置の稼働データおよび位置情報とを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部1010と、温度データおよび温度位置情報と、熱源装置の稼働データおよび位置情報とから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論する学習済みモデル830を用いて、機器稼働データおよび機器位置情報と、熱源装置の稼働データおよび位置情報とに対応する制御条件を出力する推論部1020と、を備える推論装置として実現される。
【0209】
実施の形態3にかかる換気空気調和制御システム100bに用いられる推論装置1000は、温度データおよび温度位置情報と、気圧データおよび気圧位置情報とを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部1010と、温度データおよび温度位置情報と、気圧データおよび気圧位置情報とから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに建屋の内部を目標気圧に近づける構成機器の制御条件を推論する学習済みモデル830を用いて、機器稼働データおよび機器位置情報と、気圧データおよび気圧位置情報とに対応する制御条件を出力する推論部1020と、を備える推論装置として実現される。
【0210】
実施の形態4にかかる換気空気調和制御システム100cに用いられる推論装置1000は、温度データおよび温度位置情報と、消費電力データとを含む推論用データを取得する第2のデータ取得部1010と、温度データおよび温度位置情報と、消費電力データとから、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づけるとともに換気空気調和システム200の消費電力量を最小とする構成機器の制御条件を推論する学習済みモデル830を用いて、機器稼働データおよび機器位置情報と、消費電力データとに対応する制御条件を出力する推論部1020と、を備える推論装置として実現される。
【0211】
なお、実施の形態5では、推論部1020が用いる学習アルゴリズムに強化学習を適用した場合について説明したが、これに限られるものではない。学習アルゴリズムについては、強化学習以外にも、教師あり学習、教師なし学習、または半教師あり学習等を適用することも可能である。
【0212】
なお、学習装置800および推論装置1000は、例えば、ネットワークを介して換気空気調和制御システムに接続された、この換気空気調和制御システムとは別個の装置であってもよい。また、学習装置800および推論装置1000は、換気空気調和制御システムに内蔵されていてもよい。さらに、学習装置800および推論装置1000は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0213】
また、例えば学習装置800が換気空気調和制御システム100の制御手段400の換気空気調和制御装置410に内蔵される場合、換気空気調和制御装置410は、第1のデータ取得部810と、モデル生成部820とを備え、モデル生成部820で生成された学習済みモデル830を用いて推論される換気空気調和システム200の構成機器の制御条件に基づいて、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う。
【0214】
この場合、第1のデータ取得部810は、熱源装置706が内部に設けられた建屋701の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇210と、建屋701の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇220と、建屋701の内部の空気を循環させる循環用送風機240と、建屋701の内部の冷房を行う空気調和機250と、のうちの少なくとも1つを構成機器として含む換気空気調和システム200の構成機器の稼働状態を示す機器稼働データおよび構成機器の位置を示す機器位置情報と、建屋701の内部における作業員がいる予め決められたエリアであって熱源装置706の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサ310から得られる温度データおよび複数の温度センサの位置を示す温度位置情報と、を含む学習用データを取得する。
【0215】
また、モデル生成部820は、第1のデータ取得部810で取得された学習用データを用いて、温度データおよび温度位置情報から、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論するための学習済みモデル830を生成する。
【0216】
また、例えば推論装置1000が換気空気調和制御システム100の制御手段400の換気空気調和制御装置410に内蔵される場合、換気空気調和制御装置410は、第2のデータ取得部1010と、推論部1020と、を備え、推論部1020が出力した換気空気調和システム200の構成機器の制御条件に基づいて、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける制御を行う。
【0217】
この場合、第2のデータ取得部1010は、熱源装置706が内部に設けられた建屋701の内部の空気を屋外に排出する排気用換気扇210と、建屋701の内部に屋外の空気を給気する給気用換気扇220と、建屋701の内部の空気を循環させる循環用送風機240と、建屋701の内部の冷房を行う空気調和機250と、のうちの少なくとも1つを構成機器として含む換気空気調和システム200が設けられた建屋701の内部における、作業員がいる予め決められたエリアであって熱源装置706の発熱によって影響を受けるエリアである作業エリアの温度を測定する作業エリア温度センサと、屋外の空気の温度を測定する外部温度センサとを含む複数の温度センサ310から得られる温度データおよび複数の温度センサ310の位置を示す温度位置情報を含む推論用データを取得する。
【0218】
また、推論部1020は、第2のデータ取得部1010で取得された温度データおよび温度位置情報から、換気空気調和システム200の構成機器の動作を個別に制御して作業エリアの温度を予め決められた目標温度に近づける構成機器の制御条件を推論する学習済みモデル830を用いて、温度データおよび温度位置情報に対応する制御条件を出力する。
【0219】
上記のような学習装置800または推論装置1000を備えた換気空気調和制御装置410は、換気空気調和制御システム100から独立して設けられた、換気空気調和制御システム100とは別個の単体の装置として提供されてもよい。
【0220】
また、モデル生成部820は、複数の換気空気調和制御システムから取得される学習用データを用いて、換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)を学習するようにしてもよい。なお、モデル生成部820は、同一のエリアで使用される複数の換気空気調和制御システムから学習用データを取得してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の換気空気調和制御システムから収集される学習用データを利用して換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)を学習してもよい。また、学習装置800は、学習用データを収集する換気空気調和制御システムを途中で対象に追加したり、対象から除去することも可能である。さらに、ある換気空気調和制御システムに関して換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)を学習した学習装置800が、これとは別の換気空気調和制御システムに適用され、当該別の換気空気調和制御システムに関して換気空気調和稼働停止制御パラメータPrm2(行動)を再学習して学習済みモデル830を更新するようにしてもよい。
【0221】
さらに、稼働あるいは停止させる換気扇の選定にあたって、多数の稼働および停止の組合せがある場合、適切な稼働停止パターンを求めるには膨大な量の温度データや稼働データなどを分析する必要があり、分析作業としての負荷が非常に大きくなることが予想される。
【0222】
学習装置800では、機械学習を活用することで、換気扇の適切な稼働停止パターンを求めるための分析負荷の低減をすることも可能である。すなわち、換気空気調和制御システムが学習装置800を構成の一部として備えることにより、機械学習によって個別の換気扇および空気調和機250を個別に制御する制御パターンを容易に決定することが可能となる。
【0223】
換気扇10の換気制御部14と、循環用送風機240の送風制御部244と、空気調和機250の空気調和制御部254と、温度センサ310のセンサ制御部314と、換気空気調和制御装置410の制御装置制御部403と、学習装置800と、推論装置1000との各制御部は、例えば、図23に示したハードウェア構成の処理回路として実現される。図23は、実施の形態1から5にかかる処理回路のハードウェア構成の一例を示す図である。上記の各制御部が図23に示す処理回路により実現される場合、上記の各制御部は、例えば、図23に示すメモリ1102に記憶されたプログラムをプロセッサ1101が実行することにより、実現される。また、複数のプロセッサおよび複数のメモリが連携して上記機能を実現してもよい。また、上記の各制御部の機能のうちの一部を電子回路として実装し、他の部分をプロセッサ1101およびメモリ1102を用いて実現するようにしてもよい。
【0224】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0225】
10 換気扇、11 換気部、12 換気通信部、13 換気記憶部、14 換気制御部、100,100a,100b,100c 換気空気調和制御システム、200 換気空気調和システム、210,210A,210B,210C 排気用換気扇、220,220A 給気用換気扇、230,230A 局所排気用換気扇、231 ダクト、240,240A 循環用送風機、241 送風部、242 送風通信部、243 送風記憶部、244 送風制御部、250,250A 空気調和機、251 空気調和部、252 空気調和通信部、253 空気調和記憶部、254 空気調和制御部、260 換気空気調和制御インターフェース、270 電力計測器インターフェース、300 温度センサシステム、310,310A,310B,310C 温度センサ、311 測定部、312 センサ通信部、313 センサ記憶部、314 センサ制御部、400 制御手段、401 制御装置通信部、402 制御装置記憶部、403 制御装置制御部、410 換気空気調和制御装置、411 プロセッサ、412 メモリ、413 制御インターフェース、414 センサインターフェース、415 入力インターフェース、416 表示部インターフェース、417 バス、420 記憶装置、430 データベース、431 プログラム、432 ファイル、600 気圧センサシステム、610 気圧センサ、701 建屋、701a 外壁、701b 床面、702 制御室、703 製造装置、704 作業員、705 高温空気、706 熱源装置、710 電力計測器、800 学習装置、810 第1のデータ取得部、820 モデル生成部、821 報酬計算部、822 関数更新部、830 学習済みモデル、831 閾値、900 学習済みモデル記憶部、1000 推論装置、1010 第2のデータ取得部、1020 推論部、1101 プロセッサ、1102 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23