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特許7595800酸味抑制剤、その添加物あるいは原料としての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-28
(45)【発行日】2024-12-06
(54)【発明の名称】酸味抑制剤、その添加物あるいは原料としての使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20241129BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241129BHJP
   A23L 2/68 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241129BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241129BHJP
   A23K 20/10 20160101ALI20241129BHJP
   A23K 20/22 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/52
A23L2/00 D
A61K47/12
A61K47/02
A23K20/10
A23K20/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024111616
(22)【出願日】2024-07-11
【審査請求日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2023124552
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519173336
【氏名又は名称】ハルナプロデュース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 あやの
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 夕子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-046600(JP,A)
【文献】国際公開第2020/209300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/60
A23L 2/00-2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸含有液状経口組成物の原料あるいは添加物として使用するためのクエン酸由来酸味抑制剤であって、
クエン酸と、
クエン酸カリウムと、を含み、
前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、
クエン酸由来酸味抑制剤由来のクエン酸が、クエン酸由来酸味抑制剤に含まれる前記クエン酸およびクエン酸カリウム由来のクエン酸からなり、
前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物における前記クエン酸由来酸味抑制剤由来のクエン酸の含有量が、0.05~1.0質量%であり、
前記クエン酸由来酸味抑制剤由来のクエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であり、
前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物は、甘味料を含有しないか、又は、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さであることを特徴とするクエン酸由来酸味抑制剤。
【請求項2】
請求項1に記載のクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品または飼料であって、
前記請求項1に記載のクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品または飼料のpHが5~8であり、
請求項1に記載のクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品または飼料に含まれる総クエン酸の含有量が、該請求項1に記載のクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品または飼料全量に対して0.05~1.0質量%であり、
該総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であり、
前記飲食品、医薬品または飼料は、甘味料を含有しないか、又は、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さである、
請求項1に記載のクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品または飼料
【請求項3】
クエン酸含有液状経口組成物におけるクエン酸由来酸味の抑制方法であって、
前記クエン酸含有液状経口組成物が、
クエン酸およびクエン酸カリウムを含み、
前記クエン酸含有液状経口組成物が、甘味料を含有しないか、又は、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さであり、
前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、
前記クエン酸およびクエン酸カリウム由来のクエン酸からなる総クエン酸の含有量が、該クエン酸含有液状経口組成物全量に対して0.05~1.0質量%であり、
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であるように調整する工程を含む、クエン酸由来酸味の抑制方法。
【請求項4】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物であって、
クエン酸と、
クエン酸カリウムと、
を含み、
前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、
前記クエン酸および前記クエン酸カリウム由来のクエン酸からなる総クエン酸の含有量が、該クエン酸含有液状経口組成物全量に対して0.05~1.0質量%であり、
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であり、
該容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、甘味料を含有しないか、又は、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さである
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸味抑制剤に関する。具体的には、クエン酸による酸味を抑制するクエン酸由来酸味抑制剤に関する。そのクエン酸由来酸味抑制剤を含有する、飲食品、医薬品、飼料に関する。そのクエン酸由来酸味抑制剤をクエン酸含有飲食品、医薬品、飼料などの添加物としての使用すること、あるいは原料(一部も含む)として使用することに関する。
また、クエン酸による酸味が抑制された容器詰めクエン酸含有液状経口組成物(例えば、飲料、液体ゼリー、スラリー状物、ゾル-ゲル状物など)に関する。
【背景技術】
【0002】
クエン酸には、疲労を軽減する効果が知られており、例えば、市販のスポーツ飲料や清涼飲料等において配合されている。
【0003】
しかしながら、クエン酸には飲用時の口腔内や喉への刺激性があり、強い酸味を有しているため、抗疲労を目的として高用量で配合することは難しい。よって、クエン酸の配合は、一気に飲んで喉の渇きを癒やしたいというニーズには沿わない場合がある。
【0004】
特許文献1では、クエン酸含有飲料において、クエン酸濃度1(重量)に対して、コハク酸ナトリウムを1/200~1/10またはフマル酸ナトリウムを1/200~1/10の濃度で含有せしめることによって、クエン酸の酸味を緩和し得ることが提案されている。しかしながら、その効果は十分でなく、クエン酸含有飲料の風味が悪くなるおそれがあった。
【0005】
特許文献2は、クエン酸濃度が0.4~1.5重量%の容器詰めクエン酸高含有酸性飲料において、クエン酸カリウム塩をクエン酸濃度に対するカリウム濃度の比が0.001~0.37となるように添加し、かつ甘味成分を多く配合することによって、クエン酸由来の異味が低減され得ることが提案されている。しかしながら、その効果は十分でなく、容器詰めクエン酸高含有酸性飲料の風味が悪くなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-261395号公報
【文献】特開2017-46600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クエン酸含有飲料において、クエン酸による酸味を抑制する技術の開発は未だに充分ではなく、市販品においては、高甘味度甘味料等の糖質を所定量配合し、糖質によるマスキング効果により酸味を緩和していることが多い状況である。
【0008】
そこで、本発明は、クエン酸による酸味を抑制できるクエン酸由来酸味抑制剤、その添加物あるいは原料としての使用を提供する。
また、容器詰めクエン酸含有液状経口組成物中のクエン酸の酸味を抑制した容器詰めクエン酸含有液状経口組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、クエン酸とクエン酸カリウムの配合量を調整することで、甘味料によるマスキング作用によらずに、クエン酸による酸味を抑制あるいは低減できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の態様を含む。
【0011】
本開示のクエン酸による酸味を抑制したクエン酸由来酸味抑制剤は、
クエン酸と、
クエン酸カリウムと、
を含む。
【0012】
前記クエン酸由来酸味抑制剤は、さらに添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤は、例えば、賦形剤、安定化剤、甘味剤、矯味剤、結合剤、香味剤であってもよい。
【0013】
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であってもよい。
【0014】
前記クエン酸由来酸味抑制剤を添加物として使用する方法であって、
クエン酸を含有していない食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料へ添加することで、クエン酸による酸味が抑制されたクエン酸が添加された食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料を構成する。
【0015】
前記クエン酸由来酸味抑制剤を原料として使用する方法であって、
クエン酸を含有させたい食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料のクエン酸原料として使用することで、クエン酸による酸味が抑制されたクエン酸含有食品(飲料も含む)、クエン酸含有医薬品(医薬部外品を含む)またはクエン酸含有飼料を構成する。
【0016】
本開示の容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、
クエン酸と、
クエン酸カリウムと、
を含み、
前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、
前記クエン酸および前記クエン酸カリウム由来のクエン酸からなる総クエン酸の含有量が、該クエン酸含有液状経口組成物全量に対して0.05~1.0質量%であり、
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部である。
【0017】
前記クエン酸含有液状経口組成物は、前記クエン酸由来酸味抑制剤を原料の一部として使用されている場合に、添加剤(例えば、賦形剤)を含んでいてもよい。
【0018】
前記クエン酸含有液状経口組成物は、
甘味料を含有しないか、又は、該クエン酸含有液状経口組成物全量に対して5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さであってもよい。
【0019】
本開示のクエン酸由来酸味の抑制方法は、
前記クエン酸由来酸味抑制剤を、クエン酸を含有させたい食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料の原料の一部あるいは主部として構成する。
【0020】
本開示のクエン酸含有液状経口組成物におけるクエン酸由来酸味の抑制方法は、
前記クエン酸含有液状経口組成物が、
クエン酸およびクエン酸カリウムを含み、
前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、
前記クエン酸およびクエン酸カリウム由来のクエン酸からなる総クエン酸の含有量が、該クエン酸含有液状経口組成物全量に対して0.05~1.0質量%であり、
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部である。
【0021】
本開示のクエン酸含有液状経口組成物におけるクエン酸由来酸味の抑制方法は、
前記クエン酸含有液状経口組成物の原料の一部あるいは主部として、前記クエン酸由来酸味抑制剤を使用することである。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、クエン酸とクエン酸カリウムの配合量を調整することで、甘味料によるマスキング作用によらずに、クエン酸由来の酸味を抑制あるいは低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[クエン酸由来酸味抑制剤]
クエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸、クエン酸カリウムおよび添加剤を含有する。
本実施形態では、添加剤として賦形剤を使用し、粉体、造粒顆粒などの形態にできる。
クエン酸由来酸味抑制剤は、1から複数回使用量あたりの包装形態で流通されてもよい。
クエン酸由来酸味抑制剤は、固形、液状のいずれの形態でもよい。本実施形態では固形である。液状の場合は、水(添加剤に相当する)に溶解された状態、ゾル-ゲル状態、ゼリー状態の構成であってもよい。クエン酸由来酸味抑制剤は、添加剤として長期品質保持のために、品質安定化剤、酸化防止剤などが含まれていてもよい。
【0024】
(使用方法:添加剤)
上記クエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸を含有していない食品(飲料も含む)や医薬品(医薬部外品を含む)または飼料へ添加されることで、クエン酸による酸味が抑制されたクエン酸が添加された食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料を構成する。
これにより、クエン酸を含有していない食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料に前記クエン酸由来酸味抑制剤を添加することで、それらと一緒にクエン酸由来の酸味の抑制されたクエン酸を効果的に摂取することができる。
上記クエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸をすでに含有されている食品(飲料も含む)や、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料へ添加されてもよい。
これにより、すでに含有されているクエン酸由来の酸味を変化させることなく、付加的にクエン酸由来酸味抑制剤由来のクエン酸をさらに含有させることができる。
固形のクエン酸由来酸味抑制剤が添加剤として使用される場合、上記食品、医薬品、飼料は液状であることが好ましい。
液状のクエン酸由来酸味抑制剤が添加剤として使用される場合、上記食品、医薬品、飼料は固形でも液状でもよい。
【0025】
(使用方法:原料)
上記クエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸を含有させたい食品(飲料も含む)、医薬品(医薬部外品を含む)または飼料のクエン酸原料として使用されることで、クエン酸による酸味が抑制されたクエン酸含有食品(飲料も含む)、クエン酸含有医薬品(医薬部外品を含む)またはクエン酸含有飼料を構成する。
これにより、全成分原料中のクエン酸原料の一部(1質量部から99質量部をいう)あるいは全部(100質量部)に前記クエン酸由来酸味抑制剤中のクエン酸を使用できるため、クエン酸由来の酸味を効果的に抑制したクエン酸含有食品、医薬品、飼料を構成できる。
クエン酸由来酸味抑制剤が原料として使用される場合、固形であってもよく、液状であってもよい。
【0026】
(クエン酸)
クエン酸は、例えば、クエン酸(結晶)、クエン酸(無水)であってもよい。
クエン酸由来酸味抑制剤100質量部中のクエン酸含有量が、0.5~20質量部であってもよい。
【0027】
(クエン酸カリウム)
クエン酸カリウムは、例えば、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム(一水和物(C・HO))など等の水和物であってもよく、又はそれらの混合物であってもよい。
クエン酸由来酸味抑制剤100質量部中のクエン酸カリウム含有量が、20~80質量部であってもよい。
【0028】
クエン酸カリウムの含有量は、特に限定されないが、より高い本発明の効果を得る観点から、クエン酸由来酸味抑制剤全量100質量部を基準として、例えば、0.1質量部以上、1質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上等が挙げられる。
【0029】
また、クエン酸カリウムの含有量は、より高い本発明の効果を得る観点から、クエン酸由来酸味抑制剤全量100質量部を基準として、例えば、99.99質量部以下、99質量部以下、95質量部以下、90質量部以下、85質量部以下、80質量部以下等が挙げられる。
【0030】
クエン酸カリウムの含有量は、より高い本発明の効果を得る観点から、クエン酸由来酸味抑制剤全量100質量部を基準として、例えば、0.1~99.99質量部、0.1~99質量部、0.1~95質量部、0.1~90質量部、0.1~85質量部、0.1~80質量部、1~99.99質量部、1~99質量部、1~95質量部、1~90質量部、1~85質量部、1~80質量部、5~99.99質量部、5~99質量部、5~95質量部、5~90質量部、5~85質量部、5~80質量部、10~99.99質量部、10~99質量部、10~95質量部、10~90質量部、10~85質量部、10~80質量部、15~99.99質量部、15~99質量部、15~95質量部、15~90質量部、15~85質量部、15~80質量部、20~99.99質量部、20~99質量部、20~95質量部、20~90質量部、20~85質量部、20~80質量部等が挙げられる。
【0031】
(添加剤:賦形剤)
賦形剤は、特に限定されないが、例えば、糖アルコール類、デキストリン類、ショ糖、ブドウ糖、又はデンプン類等が挙げられる。
糖アルコール類としては、マルチトールが好ましい。
これらの中から少なくとも1種又は2種以上を組合わせて使用してもよい。
クエン酸由来酸味抑制剤100質量部中の添加剤(あるいは賦形剤)の含有量が、20~80質量部であってもよい。
【0032】
(pH)
クエン酸由来酸味抑制剤3gを、中性水(pH7)100ml~500mlに溶解させたときのpHが、5~8であってもよい。
中性水(pH7)に対してクエン酸由来酸味抑制剤を0.5~3質量%で溶解させたときのpHが、5~8であってもよい。
【0033】
(総クエン酸とカリウムの質量比)
総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部である。
クエン酸由来酸味抑制剤を含むクエン酸含有液状経口組成物の総クエン酸含有量が、0.1~1.0質量%、好ましくは0.2~1.0質量%、より好ましくは0.25~1.0質量%である。
総クエン酸の含有量は、クエン酸およびクエン酸カリウム由来のクエン酸の総量である。
クエン酸とクエン酸カリウム由来のクエン酸との質量比は、例えば10~30:90~70である。
クエン酸とクエン酸カリウムとの質量比は、例えば5~20:95~80である。
クエン酸カリウムと賦形剤との質量比は、例えば25~60:75~40である。
【0034】
[容器詰めクエン酸含有液状経口組成物]
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、クエン酸とクエン酸カリウムとを含む。この組成物には、組成物の使用用途に応じて、その他の成分が含まれる。本実施形態において、クエン酸は、クエン酸由来酸味抑制剤のクエン酸と同じ構成である。クエン酸カリウムは、クエン酸由来酸味抑制剤のクエン酸カリウムと同じ構成である。
容器は、特に制限されず、プラスチック製、紙製、金属製の各容器でもよい。
【0035】
(pH)
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物のpHは、例えば、4.3~7.8の範囲、4.3~7.6の範囲、4.3~7.4の範囲、4.4~7.8の範囲、4.4~7.6の範囲、4.4~7.4の範囲、4.5~7.8の範囲、4.5~7.6の範囲、4.5~7.4の範囲、4.6~8の範囲、4.6~7.8の範囲、4.6~7.6の範囲、4.6~7.4の範囲、4.8~8の範囲、4.8~7.8の範囲、4.8~7.6の範囲、4.8~7.4の範囲、5~8の範囲、5~7.8の範囲、5~7.6の範囲、5~7.4の範囲等が挙げられる。別の実施形態において、限定はされないが、本発明の組成物は、pH4.6以下の酸性食品を含まないことが好ましく、又は、pH4.6超の低酸性食品を含むことが好ましい。別の実施形態において、限定はされないが、本発明の組成物は、低酸性乃至中性とすることも可能である。
【0036】
上記pHの測定は、公知の測定方法により実行され、特に限定されないが、例えば、20℃において、市販のpHメーター(例えば株式会社堀場製作所製、F-52(登録商標)型等)を使用して測定することが可能である。
【0037】
(クエン酸)
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物に含まれる総クエン酸の含有量は、本発明の効果を得る観点から、前記組成物全量に対して、0.05~1.0質量%とすることができ、例えば、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下等が挙げられる。
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸の含有量は、前記組成物全量に対して、例えば、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上等が挙げられる。
総クエン酸は、クエン酸由来酸味抑制剤中のクエン酸と組成物(食品、医薬、飼料)中にすでに含まれているクエン酸のすべてのクエン酸である。ただし、組成物に含まれていない場合もある。以下特に異なる記載がなければ同様の定義である。
【0038】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸の含有量は、前記組成物全量に対して、例えば、0.05~0.9質量%、0.05~0.8質量%、0.05~0.7質量%、0.05~0.6質量%、0.05~0.5質量%、0.08~1質量%、0.08~0.9質量%、0.08~0.8質量%、0.08~0.7質量%、0.08~0.6質量%、0.08~0.5質量%、0.09~1質量%、0.09~0.9質量%、0.09~0.8質量%、0.09~0.7質量%、0.09~0.6質量%、0.09~0.5質量%、0.1~0.9質量%、0.1~0.8質量%、0.1~0.7質量%、0.1~0.6質量%、0.1~0.5質量%等が挙げられる。
【0039】
(クエン酸カリウム)
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物に含まれるクエン酸カリウムの含有量は、本発明の効果を得る観点から、前記組成物全量に対して、0.1~1.5質量%とすることができ、例えば、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下等が挙げられる。
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物におけるクエン酸カリウムの含有量は、前記組成物全量に対して、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上等が挙げられる。
【0040】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物におけるクエン酸カリウムの含有量は、前記組成物全量に対して、例えば、0.1~1.4質量%、0.1~1.3質量%、0.1~1.2質量%、0.1~1.1質量%、0.1~1.0質量%、0.2~1.5質量%、0.2~1.4質量%、0.2~1.3質量%、0.2~1.2質量%、0.2~1.1質量%、0.2~1.0質量%、0.3~1.5質量%、0.3~1.4質量%、0.3~1.3質量%、0.3~1.2質量%、0.3~1.1質量%、0.3~1.0質量%等が挙げられる。
【0041】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウム由来のカリウムの含有量は、本発明の効果を得る観点から、0.4~1.0質量部とすることができ、例えば、0.9質量部以下、0.8質量部以下、0.7質量部以下、0.6質量部以下、0.5質量部以下等が挙げられる。
【0042】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウム由来のカリウムの含有量は、例えば、0.4質量部以上、0.5質量部以上、0.6質量部以上、0.7質量部以上等が挙げられる。
【0043】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウム由来のカリウムの含有量は、例えば、0.4~0.9質量部、0.4~0.8質量部、0.4~0.7質量部、0.4~0.6質量部、0.4~0.5質量部、0.5~1質量部、0.5~0.9質量部、0.5~0.8質量部、0.5~0.7質量部、0.5~0.6質量部、0.6~1質量部、0.6~0.9質量部、0.6~0.8質量部、0.6~0.7質量部、0.7~1質量部、0.7~0.9質量部、0.7~0.8質量部等が挙げられる。
【0044】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、限定はされないが、甘味料を含有しないか、又は、甘味料が低減されていることが好ましい。後述の実施例において、甘味料の添加量に依存して、甘味料による酸味の抑制効果が奏されることが確認されている。一方で、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さを有するクエン酸含有飲料では、甘味料による酸味の抑制効果は発揮されにくく、クエン酸が有する酸味が際立つという課題が見出されている。
【0045】
よって、容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、例えば、甘味料を含有する場合であっても、前記組成物全量に対して5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さであることが好ましい。甘味料によるマスキングをせずとも、クエン酸による酸味を効果的に抑制できる。
【0046】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、上記クエン酸及び上記クエン酸カリウム以外のクエン酸塩を更に含有していてもよい。
上記クエン酸及び上記クエン酸カリウム以外のクエン酸塩は、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、果汁由来のクエン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0047】
上記クエン酸及び上記クエン酸カリウム以外のクエン酸塩としては、これらを含有する素材を用いてもよく、例えば、果実、野菜等が挙げられ、好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、スダチ等の柑橘類等が挙げられる。柑橘類由来の素材を使用する場合、好ましくは柑橘類の果汁等の搾汁又はその濃縮物が用いられる。
例えば、果汁由来のクエン酸が含まれていても、原料あるいは添加物としてクエン酸由来酸味抑制剤を使用することで、すでに含有されているクエン酸由来の酸味を変化させることなく、付加的にクエン酸由来酸味抑制剤由来のクエン酸をさらに含有させることができる。
【0048】
<クエン酸由来酸味抑制剤の実施形態例>
本発明において、クエン酸由来酸味抑制剤の形態は、特に制限されず、固形製剤であってもよく、水性製剤(基剤又は担体として水性ないしは親水性のものを主に含む)であってもよく、油性製剤(基剤又は担体として油性ないしは疎水性のものを主に含む)であっても良い。
【0049】
水性製剤の場合の水の含有量は、製剤全量100質量部を基準として、例えば、50質量部以上が好ましく、75質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらにより好ましい。また、95質量部以上、又は98質量部以上であってもよい。また、基剤又は担体が水のみからなっていてもよい。
【0050】
油性製剤の場合の水の含有量は、製剤全量100質量部を基準として、例えば、50質量部未満が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0051】
<飲食品、医薬品、又は飼料>
本発明において、容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、ヒト又は動物用の医薬組成物、医薬部外品、飲食品組成物、又は飼料組成物であってもよい。あるいは、容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、まず、当該医薬組成物、医薬部外品、飲食品組成物又は飼料組成物に配合して使用されるための原料製剤とした後に、これらに配合されてもよい。
【0052】
<飲食品組成物>
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物は、飲料品組成物として構成され、機能性食品(機能性表示食品を含む)、病者用食品、特定保健用食品であってもよく、これら以外の一般の飲食品であってもよい。
【0053】
上記飲食品組成物の形態としては、フレーバーウォーター、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果実飲料(例:果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果汁入り炭酸飲料、果肉飲料)、野菜飲料、野菜及び果実飲料、リキュール類等のアルコール飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料等の飲料類;
紅茶飲料、緑茶、ブレンド茶等の茶飲料類(なお、飲料類と茶飲料類は、「飲料」に包含される。);
カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等の液状のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等の液状のデザート類;
コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;
セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソース等の液状調味料類;
ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ、シロップ等の液状ジャム類;
赤ワイン等の果実酒;
などを包含する。
当該飲食品組成物の例は、これらの製品の半製品、及び中間製品等も包含する。さらには、医薬品と同様の形態である、ドリンク剤、シロップ等の栄養補給用組成物も飲食品組成物の例として挙げられる。
【0054】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物には、通常の飲食品と同様に、食品添加物として用いられるものを添加することもできる。限定はされないが、特に、好適な添加物として、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、サッカリン、ネオテーム、ソーマチン、モネリン、モナチン、羅漢果抽出物、甘草抽出物、グリチルリチン、ステビア抽出物、ステビア酵素処理物、レバウディオサイドAおよびステビオサイド等の高甘味度甘味料が挙げられる。その他にも、酸類、脂肪酸、上記以外の糖類、上記以外のアルコール類、抗酸化剤、タンパク質、ペプチド類、アミノ酸類、ビタミン類、ミネラル類、増粘安定剤;キレート剤等の助剤;香料;香辛料抽出物;防腐剤;保存料;pH調整剤;安定剤;上記以外の界面活性剤等を含有させることができる。
【0055】
容器詰めクエン酸含有液状経口組成物の原料あるいは添加剤として使用されるクエン酸由来酸味抑制剤の含量は、前記容器詰めクエン酸含有液状経口組成物全量に対し、0.01~100質量%であることが好ましく、0.1~50質量%であることがさらに好ましく、0.2~30質量%であることがさらにより好ましい。
【0056】
<医薬組成物>
医薬組成物(医薬部外品も含む)の剤型は、ドリンク剤、シロップ剤等の液剤を挙げることができる。
「医薬部外品」の例としては、栄養助剤、各種サプリメント、歯磨き剤、洗口剤、口中清涼剤、臭予防剤等を挙げることができる。
【0057】
また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤、他の薬効成分等を適宜組み合わせることができる。また、これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口用液体製剤は、嬌味剤、緩衝剤、安定化剤等を加えて常法により調製することができる。
【0058】
医薬組成物の原料あるいは添加剤として使用されるクエン酸由来酸味抑制剤の含量は、前記医薬組成物全量に対し、0.01~100質量%であることが好ましく、0.1~50質量%であることがさらに好ましく、0.2~30質量%であることがさらにより好ましい。
【0059】
<飼料>
飼料としては、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫等に用いる液状のペットフード等の飼料等が挙げられ、ペットが摂食できる限り、上記飲食品組成物と同様の形態に調製できる。
【0060】
飼料の原料あるいは添加剤として使用されるクエン酸由来酸味抑制剤の含量は、前記飼料全量に対し、0.01~100質量%であることが好ましく、0.1~50質量%であることがさらに好ましく、0.2~30質量%であることがさらにより好ましい。
【0061】
(飲食品組成物、医薬組成物、又は飼料組成物の製造方法)
飲食品組成物、医薬組成物、又は飼料組成物の製造方法に制限はなく、任意の公知方法で製造することができる。
【0062】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」、「部数」等の数値は、質量基準の数値を表す。
【0063】
(クエン酸測定方法)
試料1gに5体積%過塩素酸1mLを加えて攪拌し、純水で10mLに定容し、これを試料溶液とした。試料溶液をフィルトレーションし、下記条件の液体クロマトグラフィー(HPLC)で試料中のクエン酸の含有量を測定した。本測定ではクエン酸標準品としてクエン酸三ナトリウム標準品を用いた。

〈液体クロマトグラフィー(HPLC)測定条件〉
使用カラム:InertSustain AQ-C18(5μm、4.6 i.d×150mm)(ジーエルサイエンス株式会社)
移動相:10mM KHPO(リン酸でpH2.1に調整済み):isocratic
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:UV-Vis Detector(株式会社日立ハイテク)
検出波長:210nm
注入量:10μL
【0064】
(カリウム測定方法)
試料2~4gに10体積%塩酸10mLを加え、純水で100mLに定容し、30分間振とうした。振とう後の溶液をNo.5Aのろ紙を用いてろ過を行った。ろ紙に残った試料を10%塩酸で1~10倍希釈となるように定容し、下記条件の原子吸光光度計で試料中のカリウム含有量を測定した。

(原子吸光光度計測定条件)
測定機器:Agilent 240FS AA(アジレント・テクノロジー株式会社)
光源:カリウム ホロカソードランプ(アジレント・テクノロジー株式会社)
測定波長:766.5nm
フレーム:アセチレン 2.00L/min、空気 13.50L/min
【0065】
[参考試験例1.甘味料による酸味低減効果の確認試験]
下記表1~3に示される処方に従い、甘味料を含有したクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物に相当する)を常法により調製(混合)した。各成分の種類、及び、含有量等は下記表の通りである。
【0066】
(官能評価方法1)
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト(6名又は8名)で行った。事前に酸味に関する官能評価の訓練を行い、各自の識別能力の確認を行っている。
【0067】
(評価基準1)
サンプルの詳細を伏せたままパネリストに各サンプルを順不同で提示し、酸味の強さに関して、下記の評価基準に従い点数を付けさせた。評点の平均値を下記表に併せて示した。Steel検定を行い、評価結果を下記表に併せて示した。

酸味が非常に強い:1点
(中間の酸味) :1.5点
酸味を強く感じる:2点
(中間の酸味) :2.5点
酸味を中程度に感じる:3点
(中間の酸味) :3.5点
酸味を弱く感じる:4点
(中間の酸味) :4.5点
酸味を感じない :5点
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
表1~3に示される通り、甘味料の添加量に依存して、甘味料による酸味の抑制効果が奏されることが確認された。具体的には、5質量%を超えるショ糖溶液に相当する甘味の強さを有するクエン酸含有飲料では、甘味料による酸味の抑制効果が十分に奏されることが確認された。
【0072】
[試験例1.クエン酸含有飲料における酸味低減効果の確認試験1]
上記の参考試験例1を行った結果、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さを有するクエン酸含有飲料では、甘味料による酸味の抑制効果は発揮されにくく、クエン酸が有する酸味が際立つという課題が見出された。
【0073】
そこで、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さを有するクエン酸含有飲料において、その総クエン酸による酸味を低減できるクエン酸由来酸味抑制剤の検討を行った。
【0074】
下記表4-1から4-3に示されるクエン酸由来酸味抑制剤とクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物に相当する)を常法により調製(混合)した。各成分の種類、及び、含有量等は下記表の通りである。
【0075】
(官能評価方法2)
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト(7名)で行った。事前に酸味に関する官能評価の訓練を行い、各自の識別能力の確認を行っている。
【0076】
(評価基準2)
サンプルの詳細を伏せたままパネリストに各サンプルを順不同で提示し、酸味の強さに関して、下記の評価基準に従い点数を付けさせた。3点以上であった場合にクエン酸カリウムを添加したことによる酸味抑制効果が見られたものと判断し、4点以上であった場合はさらに酸味抑制効果が見られたものと判断した。評価結果を下記表に併せて示した。

各基準となる比較例と同程度の酸味:1点
(中間の酸味) :2点
各基準となる比較例に対して酸味が弱く感じる:3点
(中間の酸味) :4点
各基準となる比較例に対して酸味が非常に弱い:5点

上記の評価基準に従い酸味抑制度を5段階で評価し、平均値を求めた。この酸味抑制度の平均値をもとに、酸味低減効果を×(1~2未満)、△(2以上~3未満)、〇(3以上~4未満)、◎(4~5)とした。
【0077】
表4-1は、クエン酸由来酸味抑制剤の配合処方を示す。
【0078】
【表4-1】
【0079】
表4-1のクエン酸由来酸味抑制剤では、賦形剤を含んでいるが、賦形剤を含まない配合でも実施可能であり、賦形剤以外の添加物を配合しても実施できる。
賦形剤は、甘味が抑制されているため、全量中5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味にもほとんど影響を与えない。
【0080】
表4-2は、クエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物)の配合処方を示す。ここでは、賦形剤を含まないクエン酸由来酸味抑制剤を原料として使用した。
【0081】
【表4-2】
【0082】
表4-3は、ショ糖にかわりアセスルファムKを含むクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物)の配合処方を示す。ここでは、賦形剤を含まないクエン酸由来酸味抑制剤を原料として使用した。
【0083】
【表4-3】
【0084】
表4-2及び4-3に示される通り、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さを有するクエン酸含有飲料では、pHが4.5~8において、総クエン酸の含有量が、0.1~1.0質量%であり、総クエン酸1質量部に対するクエン酸カリウム由来カリウムの含有量が、0.2~1.0質量部となるように、クエン酸およびクエン酸カリウムが原料として配合される。これによって、クエン酸による酸味を低減でき、好ましくは0.35質量部以上、より好ましくは0.4質量部で顕著に低減できることが確認された。
【0085】
[試験例2.クエン酸含有飲料における酸味低減効果の確認試験2]
下記表5-1及び5-2に示される処方に従い、ショ糖などの甘味料を含まないクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物に相当する)を常法(混合)により調製した。各成分の種類、及び、含有量等は下記表の通りである。
【0086】
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト(7名)で行った。官能評価方法及び評価基準は、試験例1と同様である。
実施例2-1から実施例2-4については、クエン酸のみを含む比較例2-1の酸味を基準とした。
実施例2-5から実施例2-8については、クエン酸のみを含む比較例2-2の酸味を基準とした。
【0087】
【表5-1】
【0088】
【表5-2】
【0089】
[試験例3.クエン酸含有飲料における酸味低減効果の確認試験3]
下記表6-1及び表6-2に示される処方に従い、甘味料を含むクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物)を常法(混合)により調製した。各成分の種類、及び、含有量等は下記表の通りである。ここでは、試験例2とは異なり、造粒のためにマルチトールを賦形剤として含むクエン酸由来酸味抑制剤を原料として使用した。ここで使用するマルチトールの甘味度はショ糖の甘味度を1とすると、0.75~0.85であり、甘味の閾値は0.5%であった。
【0090】
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト(7名)で行った。官能評価方法及び評価基準は、試験例1と同様である。
実施例3-1から実施例3-4については、比較例3-1の酸味を基準とした。
実施例3-5から実施例3-8については、比較例3-2の酸味を基準とした。
【0091】
【表6-1】
【0092】
【表6-2】
【0093】
下記表6-3及び表6-4に示される処方に従い、ショ糖又はショ糖にかわりアセスルファムKを含む甘味料を含むクエン酸含有飲料(クエン酸含有液状経口組成物)を常法(混合)により調製した。各成分の種類、及び、含有量等は下記表の通りである。ここでは、マルチトールを添加剤(賦形剤)として含むクエン酸由来酸味抑制剤を原料として使用した。ここで使用するマルチトールの甘味度はショ糖の甘味度を1とすると、0.75~0.85であり、甘味の閾値は0.5%であった。
【0094】
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト(7名)で行った。官能評価方法及び評価基準は、試験例1と同様である。
実施例3-9から実施例3-12については、比較例3-3の酸味を基準とした。
実施例3-13から実施例3-16については、比較例3-4の酸味を基準とした。
【0095】
【表6-3】
【0096】
【表6-4】
【0097】
[試験例4.クエン酸由来酸味抑制剤を添加した各飲料の風味試験]
スティック状個包装したクエン酸由来酸味抑制剤(3g)を開封し、下記の各飲料に、添加した。
ここで、前記クエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸、クエン酸カリウム及び還元麦芽水飴が、0.155:1.36:1.5の質量部で含まれるクエン酸由来酸味抑制剤である。また、クエン酸由来酸味抑制剤を飲料全体に対して1.1%添加することで、飲料全体に対して無水クエン酸を0.34質量%添加した飲料との各飲料中の総クエン酸最終濃度が等しくなる。
【0098】
(官能評価方法3)
被験者は酸味に関して十分な識別能力のあるパネリスト5名で行った。事前に酸味に関する官能評価の訓練を行い、各自の識別能力の確認を行っている。
【0099】
(評価基準3)
サンプルの詳細を伏せたままパネリストに各サンプルを順不同で提示し、酸味の強さに関して、下記の評価基準に従い点数を付けさせた。なお、無添加である各飲料を比較例とし、比較例と同程度の酸味の強さである場合を3点として、各添加剤有りの各飲料を評価した。

比較例より酸味が非常に弱い:1点
(中間の酸味) :1.5点
比較例より酸味が弱い :2点
(中間の酸味) :2.5点
比較例と同程度の酸味 :3点
(中間の酸味) :3.5点
比較例より酸味が強い :4点
(中間の酸味) :4.5点
比較例より酸味が非常に強い:5点
【0100】
【表7】
【0101】
表7に示される通り、総クエン酸を同濃度となるように添加した場合、無水クエン酸を添加した飲料と比較して、クエン酸由来酸味抑制剤を添加した飲料では、酸味は弱く感じ、クエン酸由来酸味抑制剤による酸味軽減効果が示された。また、クエン酸由来酸味抑制剤を添加した飲料と無添加の飲料は、同程度の酸味であった。
【0102】
表4-1のクエン酸由来酸味抑制剤及びショ糖などの甘味料を含まないクエン酸由来酸味抑制剤を原料として、果汁入り飲料、スポーツドリンク、ゼリー飲料に使用した。いずれも、クエン酸由来の酸味を感じなかった。
【要約】      (修正有)
【課題】クエン酸による酸味を抑制できるクエン酸由来酸味抑制剤を提供する。
【解決手段】クエン酸含有液状経口組成物の原料あるいは添加されるためのクエン酸由来酸味抑制剤は、クエン酸と、クエン酸カリウムと、を含み、前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物のpHが5~8であり、前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物における総クエン酸の含有量が、0.05~1.0質量%であり、総クエン酸1質量部に対する前記クエン酸カリウムに由来するカリウムの含有量が、0.4~1.0質量部であり、前記クエン酸由来酸味抑制剤を含む前記クエン酸含有液状経口組成物は、甘味料を含有しないか、又は、5質量%以下のショ糖溶液に相当する甘味の強さである。
【選択図】なし